文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営基本方針
当社は、創業50年を機に、これまで託されてきた想いを次世代へとつなぎながら、この先も更なる企業成長を続けていくため、グループパーパス「託すをつなぎ、未来をひらく。」を策定いたしました。ステークホルダーの皆さまからの信頼と期待に応えながら、次の50年、100年を共に未来を切り開くパートナーであり続けるために、これからも変革と挑戦を重ね成長してまいります。
また、事業活動における具体的な指針とするため、当社では以下の5項目を経営基本方針として定めています。
① 顧客第一主義に徹する(CS重視の経営)
② 重点主義に徹する(経営資源の重点的な投入)
③ 顧客の要望に合わせ、当社を創造(造り変え)する(市場環境への適応)
④ 現金取引主義を貫徹する(キャッシュ・フロー重視)
⑤ 高い生産性を背景とした高賃金主義に徹する(成果主義の人事処遇)
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、「売上高営業利益率7%以上」「ROE(自己資本当期純利益率)20%」を確保することを重要な経営指標目標として定めています。当期においては、売上高営業利益率6.5%、ROE21.5%となっています。
(3) 経営環境と対処すべき課題
当連結会計年度における国内経済は、企業業績の回復を背景とした設備投資の増加や賃上げの浸透によって個人消費の持ち直しも見られ、景気は緩やかに回復いたしました。一方で、物価高への継続した懸念に加え、地政学リスクや各国の貿易政策による世界経済の減速懸念など、依然として先行き不透明な状況が続いております。
新設住宅着工戸数は、2024年4月~2025年3月累計で816,018戸、前年同期比2.0%の増加となりました。一方、当社グループが主力とする賃貸住宅分野においては、2024年4月~2025年3月累計では前年同期比4.8%増加の356,893戸となりました。
このような環境の中、当社は中期経営計画(2024年度~2026年度)の1年目として各事業の強化・拡大を推進しました。建設事業においては、ZEH賃貸住宅の販売注力により累計販売戸数が121,678戸まで伸長しました。また、不動産賃貸事業ではハウスコム社の完全子会社化、不動産開発事業ではアスコット社の取得など、成長投資を実施しました。
(4) 中長期的な会社の経営戦略
当社は昨年度、“DAITO Group VISION 2030”実現へのロードマップの最初の3ヵ年である、2024年度~2026年度を対象とする新たな中期経営計画を策定し、2030年へ向け、「グループ一丸新たな挑戦」をスローガンに、企業価値の最大化へ向けた経営を推進しております。
本中期経営計画では、人的資本経営の推進、強固なコア事業の確立、新たな注力分野への対応という3つの柱を軸としております。最終年度の目標として、売上高2兆円、営業利益1,400億円、ROE20%以上を設定いたしました。パーパスに基づく考動を基盤に、グループ全社員の力を最大化し、VISION2030の実現に向けて取り組んでまいります。
セグメント別の中長期的な経営戦略は以下のとおりです。
① 建設事業
建設事業では、都市部を重点とするエリア戦略や、情報開拓のデジタル化促進、法人営業の強化等により受注を拡大するとともに、施工体制の効率化による利益率の確保を図ってまいります。
また、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)などの環境配慮型賃貸住宅の供給にも引き続き積極的に取り組んでまいります。
② 不動産賃貸事業
不動産賃貸事業では、高いマーケティング力と入居斡旋力を背景に、高水準の入居率を維持しつつ、入居者様のライフスタイルに合わせた良質な住空間と暮らしのサービスを引き続き提供いたします。
また、仲介事業では、これまでの主力である賃貸仲介事業に加えて売買仲介事業の強化にも取り組み、売り上げの拡大を図ってまいります。
③ 不動産開発事業
他社が管理する物件の買い取りを強化し、現在は一部のエリアで行っている買取再販事業を、全国の主要都市へ展開してまいります。一方、住宅だけでなく、物流施設やホテル、ヘルスケア施設など、非住宅物件の開発・販売を更に促進してまいります。
また、北米を起点に海外での不動産管理・販売を開始し、「世界一の大家さん」を目指してグローバル展開を進めてまいります。
④ その他の事業(金融事業+その他事業)
エネルギー事業や介護・保育事業など、グループ間のシナジーを追求しつつ、事業領域拡大に向けた新規事業の育成・強化等にも引き続き取り組んでまいります。
また、自治体や企業との共同事業や業務提携につきましても、積極的に模索してまいります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) サステナビリティ全般に関する取り組み
[大東建託グループのサステナビリティ経営について]
当社グループは、創業50年を迎えた2023年に、社会の持続可能性の一翼を担う価値を提供し続けるために、グループパーパス「託すをつなぎ、未来をひらく。」を策定しました。このパーパスに基づき、2030年のありたい姿「DAITO Group VISION 2030(以下ビジョン)」と、その実現に向けた「中期経営計画(2024-2026)」を打ち出しています。また、取り組むべき重要課題として「7つのマテリアリティ」を設定しています。
パーパスの具現化に向けたビジョンの実現、中計経営計画の達成を目指す当社グループの事業は、サステナビリティ経営そのものです。事業活動を通じて社会の課題を解決し、人々が暮らしやすいまちづくりと、まちの活性化を目指すことこそ、当社グループのサステナビリティの考え方となります。
① サステナビリティ基本方針
当社グループのサステナビリティ基本方針は、「大東建託グループは、豊かな暮らしを支える企業として、社会の変化を成長の機会と捉え、ステークホルダーのみなさまと共に、事業活動の発展と持続可能な社会の実現を目指します。」です。この方針は、当社グループの価値創造ストーリーでもあり、ビジョンの実現とパーパスの体現により、事業を通じた持続可能な社会の実現を目指します。
⇒サステナビリティに関する取り組みは、下記
サステナビリティサイト:https://www.kentaku.co.jp/corporate/csr/
統合報告書:https://www.kentaku.co.jp/corporate/ir/report.html
② サステナビリティ推進体制(サステナビリティ・ガバナンス)
当社グループのサステナビリティ経営を推進する体制は、サステナビリティ経営方針の決定と監督を担う「取締役会」と、事業を通じたマテリアリティ対応を推進する「サステナビリティ推進会議」、そして、これらの経営と執行の橋渡しを行う「サステナビリティ推進課」の3組織により構成されています。「サステナビリティ推進会議」は代表取締役社長執行役員CEOを議長、マテリアリティの推進責任者である取締役上席執行役員をメンバー、監査等委員会委員長をオブザーバーとして構成し、サステナビリティに関する施策の協議・決議を行っています。同会議での決議事項は、「取締役会」へ定期的に報告を行い、適宜指示を受け推進しています。
③ サステナビリティ推進に向けた取り組み(戦略)
当社グループのサステナビリティ経営は、事業活動を通じたマテリアリティ(重要課題)の解決により、持続可能な社会の実現と、企業成長の両立を目指しています。
当社グループのマテリアリティは、執行役員および経営企画・事業戦略部門の責任者を中心とした次世代を担うメンバーによるプロジェクトチームによって、2021年に特定を進めました。当社グループを取り巻く、社内外の現状および社会変化等を踏まえ「あるべき姿」を抽出し、現状と理想のギャップ分析を実施し、マテリアリティ要素を洗い出しました。その上で、キャッシュ・フローおよび環境・社会へのインパクト評価を実施し、最終的に「7つのマテリアリティ」として特定しています。
④ サステナビリティに関するリスク管理体制(リスク管理)
当社グループでは、経営戦略に関するリスクを取締役会で、オペレーションリスクを取締役会の諮問機関であるリスクマネジメント委員会にて管理しています。
環境、社会、人材・組織、ガバナンスは、経営マテリアリティに掲げ、サステナビリティ推進会議にて、各KPIの進捗管理、リスクの抽出、課題の設定、対策実施のサイクルを議論し、定期的に取締役会へ報告しています。また、事業マテリアリティのKPIについても同様に管理しています。
他方、オペレーションリスクは、当社が事業を通じた社会への価値を提供することを阻害するものと捉え、リスクマネジメント委員会で管理しています。同委員会で、当社グループ事業に影響を与える「あらゆるオペレーションリスク項目」を各事業部門にて洗い出し、集約し、短・中・長期における発生可能性と当社事業への影響度等を踏まえスコアリングを行い、「重要リスク項目リスト」を作成しています。その項目の中から、特に重大な財務上または戦略的な影響を及ぼす項目を「重点管理リスク項目」と定め、定期的に取締役会へ報告し、モニタリングを実施しています。
⑤ マテリアリティのKPIと長期目標(指標と目標)
「7つのマテリアリティ」に対し、KPIおよび長期目標を設定し進捗を管理しています。中期経営計画(2024-2026)の非財務KPI・目標は、マテリアリティKPIより抽出しており、事業活動を通じたサステナビリティ経営に取り組んでいきます。
(2) 気候変動への取り組みとTCFDへの対応
① 基本方針
当社グループは、気候変動を中心とした環境への取り組みを、企業価値を高めるための取り組みとして捉え、2020年に環境経営戦略「DAITO 環境ビジョン2050『環境トップランナーとして、事業活動を通して持続可能な社会の実現に貢献する』」を策定し、「建築」「暮らし」「ごみ」「企業」「自然」「人」の6つの領域における環境配慮の取り組みの方向性を示しました。さらに、当社グループのマテリアリティ(重要課題)に、「事業活動による環境課題への対応」を掲げ、気候変動課題の重要な指標である「温室効果ガス排出量削減率」をKGIに設定しています。さらに、中期経営計画2024-2026の非財務指標にも設定し、事業活動を通じて、気候変動リスクへの対応を積極的に取り組んでいきます。なお、昨今の社会情勢と環境課題の変化を踏まえ、環境ビジョンを2025年度中に見直す予定です。
また、当社は、2019年4月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同し、これまで、気候変動が事業に与える「リスク」と「機会」の把握に努めるとともに、統合報告書やサステナビリティブックなどにおいて透明性の高い情報開示を行っています。
⇒気候変動に関する主な取り組みは、
統合報告書:https://www.kentaku.co.jp/corporate/ir/report.html
サステナビリティブック:https://www.kentaku.co.jp/corporate/ir/esg/sustainability_report.html
② 気候変動対応に関する推進体制(ガバナンス)
当社グループでは、(1) サステナビリティ全般に関する取り組みでも記載のとおり、特に重点的に取り組むべき課題であるマテリアリティの推進に向け、代表取締役社長執行役員CEOを議長とする「サステナビリティ推進会議」を設置し、課題解決に向けた具体的な取り組みの協議、推進を行っています。その経過は定期的に取締役会へ報告を行い、方針や取り組みへの助言と進捗管理を行っています。サステナビリティ推進会議で協議した、気候変動、生物多様性、水リスク、汚染・廃棄物、サプライチェーンなどの環境に関する課題や取り組みは、グループ横断型の組織として設置している「環境経営プロジェクト委員会」に連携され、グループ会社も含めた環境経営体制の構築を強化しています。当委員会では、定期的な全体会議を通して、現状の把握と課題解決に向けた議論を行い、グループ全体の環境に関する気候変動への対応を中心とした取り組みを推進しています。
③ 事業リスク・機会の認識と事業戦略(戦略)
当社グループは、マテリアリティでもある「事業活動による気候危機の対応」を企業として重要な課題として認識しています。特に気候変動は当社グループの事業活動に対して、さまざまな「リスク」と「機会」をもたらす可能性があり、企業としてそれらに対応していくことが重要であると考えています。今後、当社グループが長期的に存続・成長していくために、これらの「リスク」と「機会」を見極め、企業としての強み(経営資源・専門性など)を活かしながら経営戦略への反映が必要であると考えています。
<事業リスク・機会の認識>
a.気候変動におけるリスクと機会
気候変動におけるリスクと機会を評価するため、気候変動シナリオ(1.5℃シナリオ、2℃未満シナリオ、4℃シナリオ)に基づき、短期・中期・長期の事業への影響を評価・分析しています。なお、気候変動におけるリスク・機会の分析は、これまでの取り組みから抽出された新たな課題や、昨今の社会情勢、環境課題の変化を踏まえ、2025年度中の見直しを予定しています。
●移行リスク
●物理的リスク
●機会
b.財務的影響の分析・算定
気候変動におけるリスクと機会を評価するため、財務的影響についても算定しています。
[前提要件]
・実施時期:2023年1月(1.5℃シナリオを新たに採用)
・対象期間:2023年~2050年(短期:2025年、中期:2030年、長期:2050年)
・対象範囲:大東建託グループにおける建築・不動産事業
・算定要件:気候変動シナリオ(STEPS、NZE、RCP等)に基づき分析項目別に対象期間内に想定される利益影響額を算定リスクは事象が発生した際の影響額で算定
●移行リスク
炭素税導入による営業活動、施工現場管理、物流などに対する課税や、材料コストの増加が想定されます。コスト増加に伴う販売価格高騰により、オーナー様の賃貸事業へのマインド低下につながり、売り上げ減少になることを政策・法規制リスクとして想定しています。また、電動車両(EV)の普及及び再生可能エネルギーへの移行に伴うコスト増加を技術リスクとして想定しています。

●物理的リスク
気温によって、突発的な風水害が多発し、太陽光パネルの破損等による修繕費の発生することを急性リスクとして認識しています。また、気温上昇により、工事現場の環境が悪化し、現場労働効率の低下や、事務所の空調費用の増加などを、慢性リスクと認識しています。

●機会
当社グループが、先行してZEH賃貸住宅を標準化し、LCCM賃貸住宅を開発・販売している現状は、将来に向けた準備と捉えることができ、市場シェア拡大などに有利となる機会になると認識しています。

④ 気候変動対応に関するリスク管理体制(リスク管理)
気候変動に関しては、TCFDに基づき気候リスク、機会のシナリオ分析を行った上、財務への影響を算出し、前述の通りまとめています。この中から、リスク発生の防止と、機会への転換を行い、実施状況をマテリアリティKPIの進捗確認と合わせてサステナビリティ推進会議で議論した上で、定期的に取締役会へ報告をしています。
また、昨今、気候変動に起因して増大する豪雨などの自然災害リスクに関しては、オペレーションリスクを管理するリスクマネジメント委員会でも評価・管理しています。大規模な自然災害により、お客様・従業員・管理建物・建築建物・事業所が被災し、復旧に多大な時間とコストを要することで、個々の事業継続に支障をきたすだけでなく、地域での持続的な生活を困難にする重大な事象と捉え、リスク発生への対策を行っていくことで、事業を通じて地域のレジリエンスに大きく貢献できることと捉え、リスクを管理しています。
⑤ 気候変動関連の中長期目標(指標と目標)
<温室効果ガス削減目標>
温室効果ガスの削減に向けて、2024年2月にSBT「ネットゼロ基準」として認定を取得した温室効果ガス削減目標を設定しています。
●温室効果ガス排出量(スコープ1+2・3)
― 2030年までに(2017年度比)55%削減
― 2050年までにネットゼロ
*2024年2月にSBT「ネットゼロ基準」として認定を取得
<再生可能エネルギー導入目標>
事業活動に必要なエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄うことを目指して「RE100」に加盟し、目標を設定しています。
●2040年までに、当社グループの事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーに
●賃貸住宅での太陽光発電設備拡大による再生可能エネルギー普及促進に貢献
<エネルギー効率目標>
エネルギー消費量の削減などを目指して「EP100」に加盟し、目標を設定しています。
●2030年までに当社グループのエネルギー効率を2倍(2017年度比)に
※エネルギー効率=売上高/エネルギー消費量
<内部炭素価格>
2025年4月より、当社グループ全体の新規事業や設備投資の対象を拡大し、内部炭素価格(ICP:インターナルカーボンプライシング)制度を本格導入しました。
●社内炭素価格:5,500円/t-CO2
対象事業:大東建託グループで行う脱炭素に向けた新規事業や設備投資
※Scope1(直接排出)およびScope2(間接排出)
<報酬制度>
取締役の報酬制度のうち業績連動報酬の係数には、財務指標に加え、複数の非財務指標を導入しています。気候変動に関連する指標としては、「CO2排出量の削減目標達成率」および「ZEH供給割合」を設定しています。
※詳細は
(3) 人的資本に関する開示
当社グループの中期経営計画の主要な柱として「人的資本経営の推進」を掲げております。パーパスの実現に向けて、「“グループ全社員の力”最大化=働きやすさ×働きがい」を具現化すべく、人的資本に関する多種多様な各種取組みを展開しております。
※組織再編にて2025年4月より「人的資本経営本部」を設置
(人事・DE&I・総務・情報システム・DX推進・広報・ブランド推進部門などより構成)
<全体体系図(経営戦略に連動した人事戦略の企画・実行)>

[人材育成の方針]
① 採用・定着
a.新卒採用・中途採用・専門職制度・シニア活躍支援
当社は新卒採用及び中途採用により事業に必要な人材を確保しており、優秀な人材の採用に向けて、市場環境に対応した採用手法の改善や訴求方法の見直し(インターンシッププログラムの多様化・リクルーター活動の強化・SNSを活用した採用ブランディング強化・新たな募集層や募集ルートの拡大など)を行っています。
さらに特定分野においては、市場価値の高い公的資格や高度な知識・技能を有した従業員を認定する「専門職制度」(エキスパート・スペシャリスト職)を導入しており、新技術や新製品の開発、新規事業の開拓、大規模プロジェクトの遂行といった事業優位性の向上に大きく寄与する領域で多数の専門職が活躍しています。
また、シニア層の活躍推進を目的として、定年制度の見直し・処遇改善を行っています。最長で70歳まで正社員と同等の処遇が継続する制度や働き方を選択できる制度(週休3日制、グループ会社への転籍など)の導入によりモチベーション高く、長く働き続けられる職場環境を構築しています。
(60歳以上社員の雇用継続率 2023年度93.3%→2024年度94.6%)
② キャリア・育成
a.当社の人材育成プログラム
2016年4月から8年間実施してきた人材育成プログラムを2024年4月に刷新しました。
当社は取り巻く環境変化に適応するべく中長期的なビジョンを掲げ、そこに到達する新たな経営戦略を打ち出しています。外部・内部の環境変化に適応して継続的に成長するためには、その戦略を実現できる人材の育成が重要と考えております。
例えば、人口減少や少子高齢化による労働力不足といった外部環境変化に対しては、採用等の外部調達だけでなく、既存社員が業務上の問題を解決して遂行するスキルを向上させながらモチベーション高くパフォーマンスを発揮することが今まで以上に必要となります。また事業領域拡張を目指した組織体制の構築といった内部環境変化に対しては、新規事業展開に必要なスキルを開発できる人材やボトムアップを実現できる自主自律の風土醸成が必要となります。
今回の人材育成プログラムの刷新は、このような人材を育成することを目的としています。
プログラム設計においては、まず当社が目指す方向を実現できる組織像より、組織を構成する従業員の要件(人材要件)を再定義のうえ、階層毎に求める役割、行動、能力(人材要件)を定め、求める能力・スキルを習得できる研修プログラムにしました。
特長としては、①「ヒューマンスキル」「問題解決スキル」「経営スキル」を3本柱として担当層からスキルが積み上がるカリキュラム、②いつでも、どこでも好きな時に学べて先端技術のリスキルもできるWEBオンデマンド学習コンテンツを希望者全員に提供する自律的学習の環境整備、③多様な価値観を持つメンバーのモチベーションをマネジメントできる人材を客観的指標で評価する管理職登用試験の導入、があります。一方、事業特性に応じた職種別のスキルの習得は、職種毎に教育機能を組織化した部門でカリキュラムを構築し、OJTを中心に展開をしています。
<人材育成プログラムにおける考え方>

<人材育成関連の指標>
人材育成プログラムにおける、リーダーの育成や社員の自主・自律的な学習への取組み、新しいスキルの獲得・リスキリングの状況などを検証しながら、施策の充実化を図っております。
b.建託士 試験制度
当社では、社業や建物賃貸事業に関する知識習得を目的として、オリジナルの社内資格として認定する「建託士」試験制度を導入しています。当社グループの「賃貸経営受託システム」を中心に、市場関連知識、商品知識、税務知識、専門用語など、土地の有効活用を提案する上で必要な幅広い知識習得を支援しています。
c.資格取得者数
通信教育や事業との関連性が高い資格(一級建築士・1級建築施工管理技士など)の取得に向けた各種支援を実施しています。また、資格取得者には一定要件のもと、資格技能手当を支給しています。
〔主な資格取得者数〕
(注)1.大東建託・大東建託パートナーズ・大東建託リーシングの合計数となります。
2.取得者数には資格試験合格者も含みます。
d.[挑戦風土の醸成]社内ベンチャー制度「HIRAKU」
当社グループでは、2020年4月より新規事業の創出によるグループ売上利益の拡大と、それに必要な社内起業家支援、それを支える当社グループ従業員が能動的に企画立案できる企業風土の創出を目指した、社内ベンチャー制度「ミライノベーター」を継続的に開催して参りました。2025年度より「HIRAKU」という名称にリニューアルし、人的資本経営の観点で従業員には自らのアイデアを提案できる場、そして自らの成長を会社の成長とともに実感できるチャレンジングな環境づくりを提供し続ける制度として更なる拡大を目指しています。本制度は、段階に応じたワークショップや個別相談会とインセンティブに加え、事業化に向けて社内外のメンターや執行役員クラスが提案者のサポートを行うことで、事業の蓋然性を高めるとともに、提案者の経営目線も養っていきます。当社の新規事業提案制度ではこれまで、過去6回の選考で、延べ1,174件の応募があり、そのうち最終審査を通過したアイデア21件※が事業化に向けて実証実験を行っております。
※2025年3月末時点の定時応募及び随時応募件数
e.DX人材の育成(当社グループ)
当社グループ全社員が自主・自律的に挑戦するDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しており、従業員が自らデジタル変革を立案・実践する企業文化の醸成を図っています。
現場主体のDXを推進するため、全社員のリスキリングに注力し、必要なナレッジ・スキル・マインドを備えたDX人材を引き続き育成するとともに、DX社内認定資格の当社グループ全従業員取得を目指しています。
また、2025年度より当社グループ内で生成AIを使ったコンテスト「DAITO DX Award」を開催し、自ら考えた業務変革アイデアの早期実現及び横展開により、当社グループのDX推進をさらに加速させていきます。
<DX社内資格認定者数>
f.サクセッションプラン
パーパスを実現するうえで経営者として明確なビジョンと必要な資質を持ち、既存事業の深化及び新規事業の創出などを牽引できる次世代経営者を計画的に発掘・育成するため、CEOサクセッションプランを展開しております。
・新CEO要件定義書、CEO育成マイルストン(長期)の策定
・次々期CEO候補者プールの構築(2年目)
・キャリア検討委員会の開催(評価、育成計画の策定、タフアサインメントの実施)
・経営幹部向けの外部アセスメントの実施・分析・個別フォローへの活用
③ 評価・報酬
a.評価・報酬制度
当社は経営基本方針に「高い生産性を背景とした高賃金主義に徹する(成果主義の人事処遇)」を掲げており、従来の成果主義を導入し、属性に関係なく、役割・貢献・成果に応じた適正な処遇の配分を実施しています。
職種毎の事業特性に応じた諸手当の充実化にも柔軟に対応しています。評価制度においては、経営計画と各組織及び従業員の個人目標との連動性を高めるため、目標管理制度を導入しています。
今後も社会情勢を踏まえながら、採用競争力や人材定着力を高める適正な報酬水準の実現と従業員の目標達成意欲につながる評価制度の運用を強化していきます。

b.株式報酬
当社グループ従業員の働きがいの向上及び会社の成長=社員の成長・株主との価値共有を図るため、譲渡制限付株式の付与を実施しております。
[社内環境整備の方針]
④ 成長エンジン
a.多様性に関する取り組み
当社グループは、サステナビリティ経営を推進していく上で、企業として持続的な成長をし続けるためには、個を尊重し、認め合い活かしていく、ダイバーシティが必要不可欠だと考えています。社員の成長が会社の成長であり、優秀な人材の確保(採用・就業継続)、育成が経営上の最重要課題と考え、当社ではダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進し、「みんなの個性を、会社の力に。」をテーマに「多様性が強みとなる」組織づくりを目指しています。
<ダイバーシティ推進体制>
当社では2015年にダイバーシティ推進専門組織として人事部内にダイバーシティ推進課を新設し、更なる推進強化のため、2022年度より人事部から独立させ、部として取り組みを進めています。多種多様なバックグラウンドを持つ人材が、お互いに尊重し合い、いきいきと活躍できる組織づくりの実現には、トップダウンだけではなくボトムアップも必要不可欠であると考えています。そのため、当社グループは従業員からの声を収集しやすい風土や体制づくりに注力し、集められた声をもとに制度の見直しや職場環境の改善に取り組んでいます。2024年度には運動促進と社内のコミュニケーション活性化を目的とした「社内運動サークル支援制度」を導入し、2025年度には新たに男性の育児休業取得促進のための「育児介護応援手当」や「配偶者の出産予定日の早期報告制度」を導入します。
<ダイバーシティ推進に向けた取り組み>
2024年度より中期経営計画がスタートし、ダイバーシティ推進においても中期経営計画~ダイバーシティ推進編~を掲げて取り組みをスタートしています。具体的には「個性を活かす(自分らしさ)、つながる(タテ・ヨコ・ナナメ)、対話・考動(理解を深めて動く)、Well Being(幸せ)」の4つを主軸として、多様性が強みとなる “十人十色を活かす”組織づくりと、多様な目線で挑戦する“コミュニケーションの質”の両輪で「みんなの個性を、会社の力に」できる環境を目指しています。初年度である2024年は、自身の体調不良時やペットの有事に有給の休暇を取得できる「ケア休暇」の導入や、申請することで同性パートナーを家族とみなし社内制度を利用できる「ファミリーシップ制度」において、同性パートナーだけではなく、適応範囲を広げ事実婚パートナーも配偶者と認め、家族向けの人事・福利厚生制度を利用できるようにしました。今後も4つの主軸のもと、ダイバーシティを推進してまいります。
<ダイバーシティ関連の指標・目標> 各年3月31日現在
(注)1.女性管理職割合は、4月1日(翌事業年度開始日)を算出基準日としています。
各事業年度の取組みや定期昇格・降格が一番反映される日であるためです。
2.「障がい者雇用率」はグループの数値です。
b.健康・Well-being経営に関する取り組み
当社は、老若男女を問わず多様な従業員が心身ともに健康で活き活きと働けることが企業の持続的な成長において重要であると考えています。従業員の健康保持・増進に積極的に取り組み、健康・Well-being経営を推進します。
<健康・Well-being経営推進体制>
当社では、従業員の健康保持増進を重要な経営上の課題とし健康と安全に関する取り組みを推進しています。人事部とダイバーシティ推進部が中心となり、健康保険組合等と連携しながら課題の抽出や施策の実施から評価改善まで戦略的に取り組んでいます。また、従業員の心身の健康や労働環境の向上に努めるために、現場の意見を速やかに取り入れられるよう、全国200以上の支店に約1,000名にものぼる衛生管理者を健康経営推進担当者として配置し、産業医や保健師と連携を図っています。
<健康・Well-being経営に関する取り組み>
「大東建託健康宣言」に基づき、健康を自分事化すること・ヘルスリテラシーの向上を目標として、特に肥満対策に力を入れ、各健康施策を推進しています。また、健康保険組合と連携し、ヘルスケアアプリを活用導入した情報提供、ウォーキングキャンペーンなどを実施しています。昨年度は経営層も一丸となって取り組んだことにより、従業員のモチベーションが高まり、1,000歩以上平均歩数が増加しました。さらに、独自のウォーキングキャンペーンを実施する事業部が出てくるなど従業員発のボトムアップも見られました。また、手上げ式の卒煙プロジェクトは自力にも関わらず、約50%の成功率となっています。
<健康経営関連の指標・目標> 各年3月31日現在
c.従業員エンゲージメント・職場環境向上に関する取り組み
(a) 従業員エンゲージメント
当社グループは2021年度より「従業員エンゲージメント調査」を実施しています。全社及び各部署における組織の強み・弱みといった組織状態を明確にし、全社組織課題の解決に対しては本社が主導し、各部署に応じた組織課題には各管理職が主導するという両輪で、各種施策の検証や職場改善活動に取り組んでいます。今後も、自主自律の精神の元、従業員一人ひとりが主役となって、自らの仕事を喜んで、楽しんで取り組める企業を目指し、「働きやすさ」と「働きがい」を増進し、社員の力の最大化に向けて取り組んでいきます。
●調査結果を踏まえた組織風土改革への取り組み
(b) 社内評価指標「健全経営ランキング」
当社では、組織活性施策として、従業員エンゲージメントのほか、2018年8月より営業成績や収益という短期的な業績結果だけではなく、「生産性」「人材育成」「働きやすい職場環境づくり」など、プロセスや就労環境といった支店・部門の中長期的な健全経営に欠かせない要素にも着目した独自の評価指標「健全経営ランキング」を導入・展開しています。評価項目毎に共通の基準・計算式に従って評価ポイントを算出した上で各支店・部門のランキングを決定・開示し、従業員主導の就労環境改善につなげています。また、優良支店の従業員とそのご家族様が一緒に使える褒賞制度の導入や、組織運営において特に影響力の大きい支店長に対する評価指標への組み込み(経営視点意識・人的資本経営力の向上)など、制度の浸透・運用力強化につながる工夫なども行っています。
<主な評価項目>
d.「人的資本アンケート」の実施・結果
外部調査機関を活用し、当社の人的資本経営に関する取組みに対する従業員の実態調査を2024年12月に実施しました。従業員の声として、総合的には良好な結果であり、特に「働きやすさ」領域に関しては調査機関レポートで「優良」という評価でした。「働きがい」領域についても概ね良好な結果であるものの、キャリア自律など更に向上の余地があることから、今後はキャリア自律に向けた全社的な推進や人的資本の可視化を目的としたタレントマネジメントシステムの強化に取組み、「働きやすさ」と「働きがい」の両立を図ります。
<領域別スコア>
※調査機関のレポートより抜粋。10点満点で7.0以上が優良、5.0が標準レベル。
⑤ 風土醸成
a.体質強化プロジェクト(パーパス具現化に向けた組織風土改革)
パーパスに基づき、従業員が自律的に考動できる組織風土づくりを目的に、経営層・事業部長・現場社員等による100名規模の全社プロジェクトを2024年4月より立ち上げ(大東建託パートナーズ・大東建託リーシングも参画)、持続的成長・全社最適の視点より組織・役割などの枠を超えた議論を行いながら、社員行動指針の策定や各種制度の見直しなどを実施しております。
<主な取組み事項>
・社員行動指針の策定 → グループ経営計画説明会で社員へ発表(2025年4月実施済)
・各種制度の見直し → 評価・報酬、キャリア・育成など(今後)
・現場浸透施策 → 現場への発信・啓発・定着、各種コミュニケーション施策の展開など(今後)
<全体指標/従業員エンゲージメント>
(注)株式会社リンクアンドモチベーション「エンゲージメントサーベイ」において調査を実施した、同社の算定基準による当社の評価及び偏差値になります。
「CD課単位組織割合」とは、会社や上司、職場と社員の信頼関係に不安がある低エンゲージメント組織の割合を表しています。
〔参考〕
グループ3社数値(大東建託・大東建託パートナーズ・大東建託リーシング)
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 原材料費等の高騰による原価の上昇、利益率の低下
当社は、賃貸建物の建設において、当社が元請けとなり、当社の現場監督(施工技術者)が直接施工業者に分離分割発注を行い、完成工事原価の抑制を実施しています。しかしながら、各種建設資材の価格上昇や労務費の上昇などにより、売上総利益率が低下する可能性があります。
(2) 税制改正による業績への影響
当社は、土地所有者に土地有効活用として賃貸マンション・アパートの建設を提案するコンサルティング営業を行い、建設受注を獲得しています。現在において土地活用の有効な手段は、建物賃貸事業経営とされていますが、税制改正により建物賃貸事業に関連する税負担等に変更があった場合、受注高が変動し業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 金利の急上昇による受注キャンセル
土地所有者が建物賃貸事業を行う際、建物の建築代金は金融機関からの借入れにて調達することが一般的です。現在、長期金利は、依然、低金利状況が続いており、土地所有者が建物賃貸事業に踏み切る一つの要因となっています。金利が急激に上昇した場合、採算悪化を懸念した土地所有者が発注キャンセルを申し出るケースや建築プランの見直しが必要となるケースが発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 法施行・法改正等に伴う経費増
当社グループは、建設業許可、建築士事務所登録及び宅地建物取引業免許等の許認可を受けて事業を展開し、またこれらの関連法令をはじめその他各種の法令等に基づいた企業活動を行っています。これらの法令等を遵守するためにコーポレートガバナンス及びコンプライアンス推進体制を強化していますが、新たな法令等が施行された場合、当該法令等に対応するための経費が追加的に発生し、業績に影響を与える可能性があります。
(5) 個人情報の漏洩等のリスク
当社グループは、土地所有者や入居者等、様々なお客様の個人情報をお預りしています。個人情報保護には特に配慮し対策を進め事業活動を行っていますが、万一、個人情報の漏洩等があれば、信用を大きく毀損することとなり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 自然災害によるリスク
大規模な地震や台風等の自然災害が発生した場合、被災した当社グループの建築現場・事業所・情報設備等の修復やお客様の建物の点検、被災したお客様への支援活動等により、多額の費用が発生する可能性があります。また、被災地域において、社会インフラが大規模に損壊し、相当期間に亘り生産・流通活動が停止することで建築資材・部材の供給が一時的に途絶えたり、多数の社員が被災し勤務できなくなることにより、契約締結・工事着工・工事進捗や入居者斡旋活動が滞り、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(7) 品質管理等に関するリスク
当社グループでは、施工基準書に定めた品質の確保に対して、施工業者、工事監督、設計者(工事監理者)による確認を行い品質確保に努めています。検査時には特に各工程の隠蔽部の確認を行い、完成時には施工状況を施工品質記録にまとめ「自主検査報告書」をお施主様へ開示しています。しかしながら、予期せぬ事情により重大な品質問題が発生した場合、レピュテーションの著しい低下により、業績に影響を与える可能性があります。
(8) 建設技能労働者減少に関するリスク
建設技能労働者数は年々減少しており、2025年には286万人まで減少(2015年対比16%減)すると予測されています。建設技能労働者数減少を見据えた対策として、部材のユニット化による現場作業の省力化や、作業補助機などによる作業員の効率化、および外国人技能実習制度を通した協力業者に対して技能実習生の受入れの支援などを行っています。しかしながら、想定を超える建設技能労働者の減少や超高齢化の進行によって業務の生産性低下や工期の長期化等が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。
(9) 気候変動に関するリスク
当社グループは、気候変動が事業活動に与える「リスク」へ適切に対応し、気候変動による「機会」を成長の機会として捉え事業活動を行っていますが、シナリオ分析で想定した以上の気候危機や、法改正や新たな法令などが施行された場合、業績に影響を与える可能性があります。詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方と取組 (2)気候変動への取り組みとTCFDへの対応」に記載しています。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1) 経営成績
当連結会計年度における国内経済は、企業業績の回復を背景とした設備投資の増加や賃上げの浸透によって個人消費の持ち直しも見られ、景気は緩やかに回復いたしました。一方で、物価高への継続した懸念に加え、地政学リスクや各国の貿易政策による世界経済の減速懸念など、依然として先行き不透明な状況が続いております。
新設住宅着工戸数は、2024年4月~2025年3月累計で816,018戸、前年同期比2.0%の増加となりました。一方、当社グループが主力とする賃貸住宅分野においては、2024年4月~2025年3月累計では前年同期比4.8%増加の356,893戸となりました。
このような環境の中、当社は中期経営計画(2024年度~2026年度)の1年目として各事業の強化・拡大を推進しました。建設事業においては、ZEH賃貸住宅の販売注力により累計販売戸数が121,678戸まで伸長しました。また、不動産賃貸事業ではハウスコム社の完全子会社化、不動産開発事業ではアスコット社の取得など、成長投資を実施しました。
以上の結果、当社グループの連結業績は、売上高1兆8,423億57百万円(前期比6.4%増)、利益面では、営業利益1,188億75百万円(前期比13.4%増)、経常利益1,294億55百万円(前期比19.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益938億58百万円(前期比25.7%増)となりました。
売上高は、前連結会計年度に比べ1,108億90百万円(6.4%)増加し、1兆8,423億57百万円となりました。これは主に、工事が順調に進捗したこと等により完成工事高が485億40百万円(9.9%)増加し、一括借上物件の増加等に伴い不動産賃貸事業売上高が355億07百万円(3.1%)増加し、投資用マンションや買取再販事業が好調に推移したことなどにより不動産開発事業売上高が201億88百万円(64.8%)増加したことによるものです。売上総利益は、前連結会計年度に比べ310億78百万円(10.9%)増加し、3,158億56百万円となりました。これは主に、完成工事高の増加等により、完成工事総利益が213億86百万円(18.5%)増加し、一括借上物件の増加等により不動産賃貸事業総利益が12億25百万円(0.9%)増加し、不動産開発事業売上高の増加等により不動産開発事業総利益が54億46百万円(86.2%)増加したことによるものです。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べ170億22百万円(9.5%)増加し、1,969億81百万円となりました。これは主に人件費が78億67百万円増加、控除不能消費税が20億85百万円増加、広告宣伝費が14億12百万円増加したこと等によるものです。
この結果、営業利益は、前連結会計年度に比べ140億55百万円(13.4%)増加し、1,188億75百万円となり、経常利益は、前連結会計年度に比べ207億35百万円(19.1%)増加し、1,294億55百万円となりました。
当連結会計年度より、報告セグメントを従来の「建設事業」「不動産事業」「金融事業」の区分から、「建設事業」「不動産賃貸事業」「不動産開発事業」「金融事業」の区分に変更しています。
不動産開発事業の拡大に伴い、「不動産開発事業」を独立した報告セグメント区分とし、また従来の「不動産事業」を「不動産賃貸事業」に名称変更しました。
なお、以下の前期比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
建設事業は、工程の順調な進捗および施工量平準化等により、完成工事高が5,409億75百万円(前期比9.9%増)となりました。また、完成工事総利益率は、価格改定効果の寄与により、前期比1.9ポイント増加の25.3%となりました。また、営業利益は、471億43百万円(前期比63.1%増)となりました。
建物種別の完成工事高及び次期繰越工事高は、次のとおりです。
(注)前事業年度及び当事業年度において完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はありません。
受注工事高は、販売エリアの中心部へのシフト、および建替案件や中層物件の販促に注力したこと、キャンセル額が引き続き低水準で推移したこと等により、5,969億10百万円(前期比1.1%増)となり、2025年3月末の受注工事残高は、8,024億54百万円(前期比2.0%増)となりました。
受注実績は、次のとおりです。
(注)当社グループでは、建設事業及び不動産賃貸事業の一部以外は受注生産を行っていません。
生産実績を定義することが困難であるため、「生産の状況」は記載していません。
②不動産賃貸事業
不動産賃貸事業は、「賃貸経営受託システム」による一括借上物件の増加等を背景に、一括借上を行う大東建託パートナーズ株式会社の家賃収入が増加したことや「連帯保証人不要サービス」を提供するハウスリーブ株式会社の収入拡大等により、不動産賃貸事業売上高が1兆1,646億72百万円(前期比3.1%増)となり、営業利益は803億24百万円(前期比2.1%減)となりました。
不動産賃貸事業の売上実績の内訳は、次のとおりです。
管理戸数は、前期比2.5%増の1,321,596戸となりました。
入居者斡旋件数(注1)は、前期比2.1%増の344,855件となりました。2025年3月の家賃ベース入居率(注2)は、居住用で前年同月比0.1ポイント減少の97.8%、事業用で前年同月比同水準の99.4%となりました。
(注) 1.大東建託リーシング㈱、大東建託パートナーズ㈱の合計件数(他社管理物件含む)
2.家賃ベース入居率=1-(空室物件の借上家賃支払額/家賃総額)
③不動産開発事業
不動産開発事業につきましては、投資用マンションや買取再販事業が好調に推移したことなどにより、不動産開発事業売上高は513億29百万円(前年同期比64.8%増)となりました。営業利益は、51億51百万円(前年同期比142.0%増)となりました。
不動産開発事業の売上実績の内訳は、次のとおりです。
(単位:百万円)
④金融事業
金融事業は、土地オーナー様、入居者様へ家賃や家財を補償する少額短期保険ハウスガード株式会社の契約数の増加等により、売上高が前期比4.8%増の121億82百万円、営業利益は前期比8.1%増の66億84百万円となりました。
⑤その他
その他の事業は、LPガスの供給戸数増加およびマレーシアホテルの客室単価の改善等により、その他の事業売上高は731億98百万円(前期比9.1%増)、営業利益は131億93百万円(前期比8.4%増)となりました。
(2) 財政状態
当連結会計年度末の総資産は、前期末比1,427億13百万円増加の1兆2,227億83百万円となりました。これは主に、販売用不動産774億円、仕掛販売用不動産585億28百万円が増加したことによるものです。
セグメントごとの資産は、次のとおりです。
①建設事業
建設事業の総資産は、前連結会計年度末に比べ12億18百万円減少し、1,129億90百万円となりました。これは主に、現金預金の減少によるものです。
②不動産賃貸事業
不動産賃貸事業の総資産は、前連結会計年度末に比べ7億20百万円減少し、3,841億53百万円となりました。これは主に、現金預金の減少によるものです。
③不動産開発事業
不動産開発事業の総資産は、前連結会計年度末に比べ1,638億38百万円増加し、2,266億51百万円となりました。これは主に、仕掛販売用不動産及び販売用不動産の増加によるものです。
④金融事業
金融事業の総資産は、前連結会計年度末に比べ254億86百万円増加し、1,765億67百万円となりました。これは主に、大東ファイナンス株式会社による貸付金の増加によるものです。
⑤その他
その他事業の総資産は、前連結会計年度末に比べ259億73百万円減少し、1,402億77百万円となりました。これは主に、賃貸等不動産の保有目的変更によるものです。
当連結会計年度末の負債は、前期末比810億81百万円増加の7,553億50百万円となりました。これは主に、1年以内返済予定の長期借入金、前受金、短期借入金の増加によるものです。
当連結会計年度末の純資産は、前期末比616億32百万円増加の4,674億33百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により938億58百万円が増加した一方、配当金の支払いにより379億22百万円減少したことによるものです。
この結果、自己資本比率は前期末比0.7ポイント増加して38.3%となりました。
(3) キャッシュ・フロー
当連結会計年度において現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比54億64百万円減少し、当連結会計年度末の残高は2,235億73百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、856億12百万円の獲得(前連結会計年度は908億76百万円の獲得)となりました。主な獲得要因は、税金等調整前当期純利益の計上1,300億55百万円(前連結会計年度は税金等調整前当期純利益1,106億7百万円)、減価償却費173億81百万円及び前受金の増加額171億38百万円です。一方、主な使用要因は、仕掛販売用不動産の増加額320億75百万円及び法人税等の支払額320億55百万円です。
投資活動によるキャッシュ・フローは、465億5百万円の使用(前連結会計年度は131億14百万円の使用)となりました。主な獲得要因は、定期預金の払戻による収入374億70百万円及び投資有価証券の売却及び償還による収入111億89百万円です。一方、主な使用要因は、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得支出286億22百万円、定期預金の預入による支出327億円及び有形固定資産の取得による支出174億48百万円です。
財務活動によるキャッシュ・フローは、458億39百万円の使用(前連結会計年度は967億87百万円の使用)となりました。主な獲得要因は、自己株式の処分による収入29億40百万円です。一方、主な使用要因は、配当金の支払額378億87百万円及び長期借入金の返済による支出116億61百万円です。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、営業活動によるキャッシュ・フローにより獲得した資金及び金融機関からの借入れ及び社債発行により調達した資金を運転資金、投資資金並びに配当金の支払等に投入しています。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
(注)1.自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
2.いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。
3.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。
4.キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。
5.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象としています。また利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しています。
(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いていますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
2024年4月1日前に締結されたシンジケートローン契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。
当社は、土地所有者の皆様に建物賃貸経営を総合的にお任せいただき、その価値を高めていくために、事業効率の高い賃貸建物を提案しています。そして、多様化する入居者様ニーズに対応するため、商品開発部・技術開発部を主幹担当部門として、新工法・資材の開発を含め、商品ラインナップの充実に積極的に取り組んでいます。
当連結会計年度の研究開発活動に係る投資総額は
商品開発部においては、「環境」「防災」「ライフスタイル」をはじめ「少子高齢化」など社会的課題も軸にした「新しい価値」を創造する賃貸住宅のラインナップを充実させるため、上半期7タイプ(7商品)、下半期9タイプ(5商品)の計16タイプ(12商品)を新たに開発いたしましたので、その一部をご紹介いたします。
「環境」に配慮した商品『フォルターブⅢ』は、コンクリートに匹敵する強度を持つ木質系材料「CLT」を採用した3階建商品で、当社オリジナルのCLTパネル工法により中層建築物を可能とした環境配慮型の商品です。
標準でZEHオリエンテッド基準に対応し、太陽光パネルや建物の高断熱化によりZEHにも対応しており、構造体と合わせまして脱炭素社会の実現に大きく貢献ができる商品です。また、鉄筋コンクリート造でもZEHオリエンテッドに対応した4階建商品『リグノZEH』も開発しております。
「防災」「少子高齢化」に配慮した『シエルクラス』は1階住戸を2LDKとすることで、子育て世帯や高齢者世帯といった幅広い世代へ床段差の少ない日常生活や、災害時の避難のしやすさを考慮した長屋形式の商品です。2階を単身者・カップル向けの1LDKとした新しい住戸構成とすることで特許も出願中です。また国土交通省の「子育て支援型共同住宅事業」に対応した商品『こそだてニューライズ』をはじめ、有料老人ホーム『ソエルガーデン』や障がい者グループホーム『パートナーガーデン』といった商品も拡充することで、多様な入居者様に対応し、安心して暮らせる住まいを開発するとともに、社会課題解決に関与して参ります。
「ライフスタイル」に配慮した『ニューライズアドヴァンス』は、リビングにデスク付きの「多用途ライブラリー」を設けるなど家族の集まる暮らしを考えた新しい住まいです。また都市部向け3階建て長屋商品『ニューデフィⅢ』は、忙しいシングル層向けに最近の部屋干ニーズを反映した「サンルーム」を1階住戸に採用するなど、ライフスタイルニーズを取り入れた商品です。その他にもシングル・カップル向けの『ニューデフィ』など社会環境変化や多様な市場・入居者様ニーズを取り入れた商品ラインナップを取りそろえ、地域に根付く賃貸住宅を供給して参ります。
デジタル技術を活用したDX戦略の1つとしてBIMの研究開発も継続して進めております。BIMによる商品開発により営業・工事・管理までグループ全体で活用し、総合賃貸業の強化を図っていきます。
技術開発部においては、持続可能な社会、脱炭素社会の実現に向けた取り組みとして、継続した賃貸集合住宅の省エネルギー化を推進しており、地域特性に合わせたZEH賃貸住宅の開発に取り組みました。北海道エリアにおいては、積雪量やガスの種類に関わらずZEH基準を満たすパネルヒーター仕様の開発を行いました。また関西電力エリアにおいては、電力単価の影響を受けないよう、低圧一括受電ではなく各戸受電方式を採用したZEH賃貸住宅の開発を完了し、運用を開始致しました。更なる販売エリアの拡大のために塩害の影響を受けやすいエリア向けに塩害対応パワーコンディショナー仕様の開発にも取り組みました。
さらに、現在運用している2×4工法、鉄骨造のZEH賃貸住宅に加え、鉄筋コンクリート造と2×4戸建のZEH賃貸住宅の開発も完了し、主な構造タイプにおいて、ZEH標準仕様での賃貸住宅商品の提供が可能となりました。
また、LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)基準を満たす賃貸集合住宅(以下LCCM賃貸住宅)においても、2023年度に引き続き、2024年度も国土交通省所管の補助金事業(サステナブル建築物等先導事業(省CO2先導型)LCCM低層共同住宅部門)の採択を受けました。本補助事業の採択を受けたのは3年連続して当社だけとなります。今後もZEH賃貸住宅並びにLCCM賃貸住宅等の普及促進を目指し、新仕様の開発に取り組んで参ります。
脱炭素社会への実現に向けた取り組みとして、国産木材の更なる有効活用を推進するために、2019年にリリースしたCLTパネルを採用した商品『フォルターブ(4階建て耐火木造)』に加え、新たに木の現しを室内外に設けて木を身近に感じられる商品『フォルターブⅢ(3階建て準耐火木造)』の販売を2024年5月に開始致しました。
なお『フォルターブ』・『フォルターブⅢ』ともにZEH-Oriented基準を標準仕様としており、ZEH-Ready基準以上を達成させるため、太陽光発電設備を搭載しても建物意匠性を大きく変更する必要が無い新屋根仕様を開発し2024年10月から運用を開始しました。炭素を固定化するCLTパネルと再生可能エネルギーを創出する太陽光発電設備の相乗効果によりカーボンニュートラル社会の実現に向けて販売促進を図って参ります。
また更なる国産木材の有効活用と2×4構造材のBCP対策として群馬県並びに鹿児島県での国産スギ材の活用拡大を行いました。
オーナー様の事業性向上、入居者様の利便性・セキュリティの向上、当社グループ会社の管理業務削減を目的とし、大東建託オリジナルスマートロック(以下スマートDKロック)の開発を行い、2024年10月から全国運用を開始致しました。スマートDKロックはオートロック機能を標準で実装し、戸別玄関鍵の「DKロック」、エントランス集合玄関機の「DKエントランス」、通用口の「DKゲート」にて構成されます。現行の当社戸別玄関鍵はシリンダー錠仕様ですが、「DKロック」は入居者様のスマートフォンや交通系ICカード等で解錠が可能な仕様となっており、「DKエントランス」も同様にスマートフォンや交通系ICカードなどで解錠が可能な仕様、「DKゲート」は「DKロック」・「DKエントランス」と同じ交通系ICカードで解錠ができる仕様となっております。今後も入居者様のライフスタイルの変化に対応できる仕様の開発を継続して参ります。
オーナー様提案力向上並びに資材安定調達を目的として、2024年10月からお施主様への外壁ご提案資料をメーカー作成から外壁パースセンターに一元化致しました。今後は更なる業務効率化とオーナー様により良いご提案が出来るシステム開発を進めて参ります。
現場省力化の取り組みとして、2×4工法において、軒の出が短い従来仕様に比べて2つの工程を削減できる「軒ゼロ金物」を開発致しました。また、従来では軒天材と下貼りが必要だった告示仕様を、準耐火45分の性能を持つ「軒天材一枚貼り仕様」に簡略化し、大臣認定を取得しました。さらに、従来の遮音性能を維持しながら資材を軽量化した「直階段」も開発し、運用を開始しています。今後も引き続き、現場の省力化を図るための資材開発を進めて参ります。
構造開発分野における取り組みとして、2×4工法における「国産材の利活用」、「現場の省力化向上」、「スケルトンインフィル空間の実現」を目的に林野庁補助事業「令和6年度 都市木造建築技術実証事業」に採択された「2×4材を利用した重ね床根太」および「自社実験棟新築工事の建築実証」を継続しています。このプロジェクトでは、住宅だけでなく、木材利用がこれまで少なかった非住宅建築物や中高層建築物にも木材の使用を促進し、建築物全体における木材の利用割合を向上させることを目指し、炭素の貯蔵能力を高めつつ、二酸化炭素の排出削減を通じて脱炭素社会の実現に貢献します。また、都市や地域における快適な生活空間の形成や地域経済の活性化にも大きく寄与することを目指しています。
環境分野における取り組みとして、「省エネルギー住宅のCO2排出削減量」をクレジット化する方法論を2021年1月に日本で初めてJクレジット制度に登録し、2023年度は498tを創出しました。2024年度においても昨年同様に「いい部屋ネットレディス2024(ゴルフ大会)」、「大東建託オープン2024(テニス大会)」で発生するCO2排出量を算定し、カーボンオフセットを実施しました。
また、2023年9月に2030年を見据えた次世代型賃貸住宅「ゼロカーボンハウス」が東京都青梅市に完成いたしました。ゼロカーボンハウスは、LCCM住宅に蓄電池として利用する「電気自動車」や昼間の太陽光電力でお湯を沸かす「おひさまエコキュート(オール電化)」、電力需給を自動管理する「EMS(エネルギーマネジメントシステム)」などを導入し、市場電力の調達をできるだけ避け、太陽光発電による創エネ電力で最大限自給自足する住宅です。自給自足率は約80%となり、それでも不足する電力は、木質バイオマス発電の再エネ電力を調達することで、再エネ100%(ゼロカーボン)を実現しています。
その他の環境分野の取り組みとして、当社グループは2023年6月にサステナブルな世界の実現を目指すイニシアティブ、国連グローバル・コンパクト(以下UNGC)に署名しました。UNGCは、企業が人権、労働、環境保護、腐敗防止の4つの分野において、国際的な原則を遵守することを約束するものです。当社グループはこれに賛同し、持続可能な発展に貢献するためのさまざまな取り組みを進めてまいります。
また、RE100達成に向け兵庫県朝来市にある「大東バイオエナジー株式会社」は2024年4月より朝来バイオマス発電所の営業運転を開始しました。朝来バイオマス発電所で発電した電力は西日本エリアの自社グループ274拠点に再生可能エネルギーを供給することで、国内RE100達成率50%を達成する見込みとなっております。
その他、2020年より、弊社品川本社ビルを使いながらZEB(ゼブ:ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化に向けた改修工事を試験的にすすめ、2023年3月、建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)のZEB認証を取得しました。
当社も、2050年までにバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指しており、今回のZEB化改修計画により同ビルは、事務所用途部分で基準一次エネルギー消費量から40%以上、建物全体では20%以上削減することができます。国内でZEBの認証を取得した物件の内、10万m2超の既存ビル改修のZEB化は国内初の事例となります。改修工事は2025年度より、当社グループ使用フロアから開始し、順次全フロアに拡大いたします。本社ビルの運用を通じてエネルギー収支を引き続き検証するとともに、2050年ネットゼロ目標の着実な達成と脱炭素社会実現に貢献します。