第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、「企業は社会の公器、企業の社会的責任遂行」という言葉を明確に自覚し、株主を始め、顧客、当社グループ社員、協力会社並びに地域社会からの信頼を得て、社会資本整備を通して「信頼と利益」の調和の取れた企業経営を目指しております。企業である限り競争は必然であり、そのためにより高度で特化した技術が必要であることを認識し、人材教育と技術開発を推進しております。

 

(経営理念)

・福祉国家建設の一翼を担って社会に奉仕する

・技術を究め創意をこらし自己の責任を完遂する

・和信協同し企業の繁栄と共に幸福を創り出す

 

(経営方針)

技術の研鑽と創意に努め、安全と安心の企業ブランドのもと、社会資本整備を通して国家建設に貢献するとともに、利益追求と社会的責任の調和を実現する。

 

(2)経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題

 当社グループが事業対象とする市場環境について、土木分野では引き続き災害復旧事業や「防災・減災、国土強靭化」関連の整備事業が堅調に推移すると見込んでおります。しかしながら、市場の約4割を占める高速道路の大規模更新事業については、発注者側の働き方改革や事業財源の制約などにより、整備スピードがこれまでと比較して鈍化することを予想しております。また、この分野には多くの企業が参入意欲を示しており、受注環境の競争激化が懸念されます。一方、建築事業分野では首都圏を中心とした旺盛な再開発需要が継続しており、当社の主力製品であるハーフプレキャスト工法用のプレキャストPC板「FR板」は、現場作業員や技能労働者の減少といった課題を背景に、さらなる需要拡大が期待されています。

 このような市場環境を確実に事業として取り込み、収益性を確保しながら安定的な成長を実現するためには、以下の課題に適切に対応する必要があります。

①生産体制の拡充に向けた設備投資

 当社グループは2021年に発表した「VISION2030」において、中間ゴールとして事業規模を売上高350億円まで引き上げることを目標としています。その達成に向けて、「人材、生産設備、財務」の充実を主軸とした施策を進めています。しかし、人口減少社会における担い手不足の影響で人材確保が困難を極めており、計画通りの達成が難しい状況です。このため、生産性の維持・向上を図る手段として、生産の機械化や自動化など省人化技術の導入が重要となります。特に、対応が比較的容易な工場を中心に設備投資を進め、生産性の確保を図る必要があります。一方で、これらの設備投資に伴う資金需要への対応が課題です。借入金の増大を抑制しつつ、設備投資資金を確保するため、引き続き保有資産の有効活用や売却を進め、本業への資本シフトを推進していきます。

②人的リソース拡充のための就業環境の改善

 当社は経済産業省が推進する「健康経営優良法人認定制度」において、2025年3月10日付で「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」の「ホワイト500」に認定されました。社員の健康維持をサポートし、最大限のパフォーマンスを発揮していただくことを目的に、健康環境の整備をさらに進めていきます。また、4年前から進めている「富士ピー・エス版 リ・ブランディング活動」では、現場で働く社員の働きやすさをハード・ソフト両面から整備し、モチベーション向上を図ることで、生産性や品質、安全性の向上を目指しています。これらの取り組みをさらに深化させることで、新規入職者の確保にもつなげていきたいと考えています。

③収益性の向上

 当社グループが最優先で取り組むべき課題は、収益性の向上です。「VISION2030」で掲げた目標として、2026年3月期に営業利益率5%を達成することを目指しています。株主の皆様や社員をはじめとするステークホルダーへの利益還元、さらには必要な設備投資や技術開発の原資を確保することは、企業としての使命であり責任です。しかし、世界的なパンデミックやインフレなどの外的要因により、目標達成は1年遅れの2027年3月期に先送りする見通しです。それでも、売上高350億円・営業利益率5%という目標は必ず達成し、通過点としたいと考えています。第72~73期に実施した「工事工場利益改善プロジェクト」で得た成果を展開し、目標達成に向けた具体的な対応を進めてまいります。

 

④財務体質の健全化

 営業キャッシュ・フローが3期連続でマイナスとなったことは、当社グループにとって大きな課題です。建設業の特性上、完工時点での最終清算による変更工事費用の一括回収が多く、工事途中ではキャッシュ・フローがマイナスとなるケースがみられます。今後は設計変更やスライドによる単価変更を適時実施し、収益性の平準化を図ることでキャッシュ・フローの改善を目指し、財務状況の健全性を確保していきます。

 以上、これらの課題を着実に解決し、まずは東京証券取引所が求めるPBR1.0以上を達成することで株主の皆様のご期待にお応えするとともに、投資家の皆様から評価される企業へと成長してまいります。

 

(3)中期経営計画「VISION2030」について

 当社グループは、2021年に向こう10年を見据えて、「新たな成長戦略に向けた経営リソース(人材、技術・生産設備、財務)の拡充」をメインテーマとした「VISION2030」を策定いたしました。

 「VISION2030」では、通過点である2025年までの5年間で高収益体制の実現、経常的に経営資源を充実させていく体制・文化の構築を目指すべきゴールとして、「稼ぐ力」を蓄えるためのハード・ソフト両面での環境整備を集中的に行い、その後、2030年に向かってこれをテコに「急成長を成し遂げる期間」としております。

 2030年にあるべき姿として「価値を創造するエンジニアリング企業」「顧客の要望にワンストップで応える企業」「世界レベルのSDGs達成に貢献する企業」を目標としております。

 

 この「VISION2030」を達成するための方針として、次の4つを掲げております。

事業方針:

  (ⅰ)2030年度のゴールに向けて、2025年度までに高収益体質が実現し、経常的に経営資源を充実させていく体制・文化の構築している状態を目指す

  (ⅱ)2030年度のゴールを、売上高450億円超・営業利益率5%超とし、2025年度に売上高350億円超・営業利益率5%超を目指し、選別受注及び利益優先主義を継続する

  (ⅲ)人員増加施策だけでなく、生産性の向上を図るため、大規模な設備増強や現場負荷軽減のための仕組みづくりに注力する

投資方針:

  (ⅰ)工場を中心に5年間で集中的な投資を行い、生産性の向上、製品売上比率の向上を図る

  (ⅱ)将来の工場製品売上の増加見通しに伴い、必要な時期において工場の生産能力の増強を検討する

  (ⅲ)継続的な研究開発を行うために売上高の0.3%を開発費に充てる

財務方針:

  (ⅰ)財務の健全性を重視し、投資は利益の範囲内とする

  (ⅱ)将来、大規模な投資が必要となった場合は、保有資産の活用も視野に入れる

  (ⅲ)ROEは7%超の維持を目標とする

株主還元方針:配当性向20%超の維持

 

また、「VISION2030」においては、SDGs<持続可能な開発目標>の17の目標への取り組みについても掲げております。

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 当社グループは、2015年に国連サミットで採択されたSDGsに対し、当社事業の重要な様相としてSDGsを位置付け、「世界レベルのSDGs達成に貢献する企業グループ」を目標に掲げ、SDGsが描く未来の現実に取り組むことで、さらなる社会貢献を図ること、及び事業活動を通じて、課題抽出と技術革新に取り組み環境負荷軽減を達成することは重要な課題と捉えております。

 

 また、外部環境の変化を受け中期経営計画「VISION2030」の一部をアップデートし、中長期的な企業価値の向上に向けて、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を行うことを2024年5月15日に公表いたしました。

 世界的なインフレによる原材料、労務費、輸送費等の建設コストの高騰など外部環境の変化の影響を受け、「VISION2030」に掲げたROE7%超の維持が2期連続未達、PBR(株価純資産倍率)が1.0を割り込んでいる状況であることから、主要セグメントである土木事業・建築事業の収益性確保により「VISION2030」の業績目標を達成し、株主還元の充実、IR活動の強化などによる株価の向上に向けた取り組みの実施により、ROEとPBRの改善・向上に繋げてまいります。

 具体的な目標・取り組みは以下のとおりです。

(ⅰ)利益確保によるROEの改善

 「VISION2030」に計画する工場設備投資等による既存事業の充実に加え、新規事業への挑戦・拡大を図るとともに、「工事工場利益改善プロジェクト」にて策定した諸施策の遂行により、売上高350億円超、営業利益率5%超の実現することにより、ROE8%超の実現を目指す

 

(ⅱ)株価向上施策によるPBRの向上

①配当政策の見直し

株主還元強化による株価向上施策の一環として、配当性向40%を目指す

②自己株式の取得

資本効率向上と株主還元強化の一環として、自己株式の取得を検討

③IR活動の強化

積極的な情報開示とIR活動の強化

 

(ⅲ)他社との協業による企業価値の向上

 当社は、2025年6月12日開催の取締役会において、主力分野の異なる大豊建設株式会社と将来的な企業価値の向上を目指す施策の一環として、業務提携を行うことを決議いたしました(契約締結予定日:2025年6月20日)。

 主力分野の異なる企業との協業は、シナジー効果によって企業価値を安定的に高め、対象市場を拡大し、コスト競争力を強化できるものと考えております。

 業務提携の主な目的と内容等は次のとおりです。

①プレキャスト化の推進

②メンテナンス工事におけるトータル対応の実現

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループでは、「世界レベルのSDGs達成に貢献する企業グループ」を活動方針とし、第5次中期経営計画「VISION2030」において、この方針に基づく取り組みのゴールとして以下の2点を挙げております。

SDGsが描く未来の実現に取り組むことで、さらなる社会貢献を図ること

事業活動を通じて、課題抽出と技術革新に取り組み環境負荷軽減を達成すること

当社グループは上記の取り組みを達成することで事業活動を通じて環境問題、社会問題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、当社グループの持続的な成長に努めてまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、ESG(環境(E: Environment)、社会(S: Social)、ガバナンス(G: Governance))の観点から5つの重要課題(マテリアリティ)を策定し、事業活動を通じて具体な取り組みを推進することで、サステナブル(持続可能)な社会の実現を目指しております。

当社グループにおいては、各業務執行部門が取締役会で定められた経営方針に基づき重要課題(マテリアリティ)の解決を目指した具体な活動計画書である「業務遂行計画マトリックス」を策定し、取締役・執行役員で構成する「業務遂行計画レビュー会議」において、各業務執行部門が立案・実施した活動報告を四半期ごとに行い、それをモニタリング、進捗管理することにより実効性を担保し、確実な遂行を確保できる体制を整備しております。

 

(2)戦略

当社グループは、ESGの観点から策定した重要課題(マテリアリティ)に対して、各業務執行部門において活動方針(アクションプラン)を作成し、取り組んでおります。

 

重要課題

活動方針

戦略

低炭素社会の実現

 (1)地球温暖化の原因となる温室効果ガス排出量

 を削減する

(2)新たなシステムを導入し再生可能エネルギーの創出を図る

(3)環境マネジメントシステムへの取り組み

低炭素を目指した原材料の見直しを行うとともに、プレストレストコンクリート技術が用いられ、再生可能エネルギーを創出する「風力発電ハイブリッドタワー」の実用化に向けた取り組みの実施

持続可能かつ強靭なインフラ整備

 (1)高品質で耐久性に優れたインフラ整備

(2)100年先も持続可能な住宅技術

(3)自然災害に強いまちづくりに向けて

(4)BCP(事業継続計画)への取り組み

防災・減災への取り組みとして、河川堤防の補強に用いるPC矢板の技術開発を推進するとともに、耐久性に優れた建築用プレキャスト製品の需要拡大を図る

安心・安全なまちづくり

 (1)構造物のライフサイクルに寄り添う

(2)地域とともに災害からまちを守る

(3)LDC(後発開発途上国)での技術支援

真のダイバーシティ化の達成

 (1)ジェンダーレスで働きやすい職場環境の形成

(2)社員一人ひとりに寄り添った健康経営の促進

(3)障がい者雇用の促進

(4)すべての人が働きがいを持ち、自己成長を実現する

人材の確保と育成、労働環境の整備等について、重要課題を設定し、方針・戦略を立て達成を目指しております。詳細は下記の<多様性の確保に向けた人材育成方針、社内環境整備方針>を参照ください。

持続的な協力関係の構築

 (1)グループ会社、協力会社との関わり

(2)一人ひとりの環境保護への意識向上を図る

(3)ステークホルダーとのパートナーシップ

コンプライアンス経営を重視し、社会課題の解決に向けた取り組みを、事業活動を通じて行うことで企業価値の向上を図る

 

 

<多様性の確保に向けた人材育成方針、社内環境整備方針>

当社グループは、会社の持続的な成長に向けた経営リソースの一つである「人材」について、多様な人材が集まることで生まれる可能性を考慮のうえ、個々のスキルやオリジナリティを通して社員が「プロフェッショナル」として、働きがいという豊かさを感じる環境づくりに向けて、研修や適正配置などに取り組むことを人材育成方針としております。

また、社員が「誇り・魅力・やりがい」を感じて心身ともに健康で生き生きと活躍し能力を最大限に発揮できる環境整備として、働き方改革や健康経営の推進、ハラスメントの撲滅、並びに多様な勤務制度の導入、福利厚生制度の充実、処遇の改善などを図ることで、多様性の確保や個性を尊重し協働する企業文化を浸透させながら持続的な成長を目指し、真のダイバーシティ化の達成に向け取り組んでおります。

 具体的なテーマと活動方針、取り組みは以下のとおりとなります。

 

   ①人材の確保と育成

活動方針

取り組み

新卒・中途を両輪とする要員計画を立案のうえ、多様性確保の観点から、女性・外国人・中途採用の人材を積極的に活用するとの認識に立ち、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な人材を確保し、育成する。

また、シニア人材のモチベーション向上とさらなる活躍を促進し、経験値の高い労働力を確保するとともに将来を担う若手技術者の離職を低減する。

▶キャリアモデル「人材開発レベルマップ」に基づく専門能力の習得及び資格取得の支援

▶階層別研修(入社時~各等級別)や安全・技術などの研修会による個々の成長支援

▶定年延長

▶役割と貢献の明確化やコミュニケーションの充実を図るための人事評価制度の整備

 

 

   ②労働環境の整備

活動方針

取り組み

労働力供給が減少し、働く人々の価値観が変化している中で、働き方を見直すことによりワークライフバランスと生産性向上との好循環を生み出す。

 

▶時差出勤、在宅勤務、サテライトオフィス勤務の推進

▶生産現場の業務を支援するバックオフィスの導入

▶生産現場の安全・衛生面を女性の視点でチェック、改善し、女性技術者の労働環境の整備を促す

▶労働時間短縮によるワークライフバランスの促進

▶法定以上の育児・介護休暇制度の導入

▶女性活躍推進に関する取り組みの実施状況等が優良な企業として「えるぼし」認定(2段階目)を取得

 

   ③健康経営の推進

活動方針

取り組み

社員の健康が経営の基盤であるという考えのもと、健康経営最高責任者(社長)による「健康経営宣言」を制定し、心身ともに健康で、個性や能力を最大限に発揮できる職場環境を構築する。

 

▶健康診断結果やメンタルヘルスチェックを踏まえた保健師・産業医の指導

▶健康を意識した自社企画イベント(健康づくり習慣化チャレンジ)の実施や福利厚生(カフェテリアプラン)の整備

▶ハラスメント防止及びメンタルヘルスケアに関するe-ラーニングや研修の定期実施

▶毎日ストレッチの実施

▶経済産業省が健康経営の普及促進のため設計した健康経営優良法人認定制度の継続認定

 

 

   ④パートナーとの協働

活動方針

取り組み

担い手不足が大きな問題となる中で、「人づくり」の重要性を鑑み、全国各地における様々な取引先とさらなる連携強化、信頼関係の構築に注力する。

 

▶経済産業省や中小企業庁が提唱する「パートナーシップ構築宣言」に賛同し、宣言

▶優良技能者の育成と待遇改善を考慮し、国土交通省が進めるキャリアアップシステムの基準を加味した当社独自のマイスター制度の導入

▶安全衛生教育、安全パトロール、各種表彰などの様々な活動を通じて、協力会社と一体となった安全衛生の向上

 

(3)リスク管理

 当社グループの重要課題(マテリアリティ)の達成を阻害するリスクとしては、気候変動、異常気象などによる自然災害の増加や原材料・燃料の価格高騰、長時間労働やステークホルダーとの関係悪化など様々なリスク要因がありますが、当社グループのリスク管理体制は、あらゆる経営危機に対して予防策を講じ、発生を未然に防ぐとともに、万一、経営危機が発生した場合はその損害を最小限に止め、信用・企業イメージの失墜、売上高の著しい減少、社会からの非難など二次的な危機を引き起こすことのないよう、2000年にリスク管理規程を制定し、組織的なリスク管理を行っております。
 リスク管理においては、リスクを重要度により分類し、経営トップを始め各責任者への迅速・確実な報告の徹底と、組織的かつ速やかな対応、原因究明、再発防止策の策定・実行する体制を整備しております。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは創業以来、新製品や現場工事における施工方法の開発、製造技術の合理化など、社会のニーズに対応できるよう研究開発活動を行ってまいりました。

 引き続きこれらの研究開発を進めていくとともに、政府が2050年を目標としているカーボンニュートラルへの対応や、近年頻発し激甚化している風水害への対応を目指したプレストレストコンクリート構造物の研究開発を進めてまいります。

 

<カーボンニュートラルへの取り組み>

 当連結会計年度においては、過年度に発足した当社グループ全体で取り組みを本格化させるための代表取締役直下の組織「カーボンニュートラル推進プロジェクト」において、SBT(Science Based Targets)認定取得に向け、外部コンサルタントからのアドバイスを受けながら、詳細な検討を行いました。その結果、より正確に二酸化炭素排出量の削減率を把握していくために削減目標の基準年度を2020年度から2023年度にあらため、以下の通りの目標設定といたしました。

・Scope1,2の中長期での削減目標の設定は、2023年度を基準年度とし、2030年度までに42%の削減

・Scope3については、2023年度を基準年度とし、2030年度までに25%の削減

 また、企業が「Science Based Targets initiative (SBTi)」に対し、2年以内に科学的根拠に基づいた温室効果ガス排出削減目標を設定し、SBTiの承認を得ることを約束する意思表明「コミットメント」を完了させました。

 工場における取り組みとして、材料由来の二酸化炭素排出量を低減するために産業副産物を活用したコンクリートの開発、養生時の燃料の変更、再エネ電源の使用などの取り組みを行ってまいります。

 工事現場における取り組みとしては、省エネ機材の活用、再エネ電源の使用、事務所のZEB化などの取り組みの実施に加え、現場でのエネルギー使用を低減するためのプレキャスト化の推進にも取り組んでまいります。

 

<多様性の確保に向けた考え方、自主的かつ測定可能な目標及びその状況>

 当社グループは、上記「(2)戦略」において認識した、人材の多様性確保の観点から、女性・外国人・中途採用の人材を積極的に活用するとの認識に立ち、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な人材を確保し、会社の持続的な成長が図れるよう努めており、次のような指標を用いて管理しております。

 

指標

目標

当連結会計年度

前連結会計年度

技術職員における女性技術者の割合

10以上

8.1

7.9%

技術職員における外国人技術者の割合

10以上

8.7

7.0%

新規雇用者における中途採用者の割合

40以上

34.4

44.4%

 

 技術職員における女性技術者の割合及び外国人技術者の割合を指標としておりますのは、当社グループの土木事業・建築事業、また現場施工・工場製作など全ての局面におきまして「技術者」が中心となるものであり、当社グループの事業を遂行する上で最も重要なものであります。さらに、性別や国籍などに捉われないジェンダーレスな職場環境を構築するために女性技術者、外国人技術者が重要であり、その割合を指標としております。

 また、中途採用者の割合に関しては、担い手不足による人材の確保の観点もありますが、社内に異なる経験・技能を有した多様な人材を確保することが、会社の持続的な成長につながるとの考えにより指標の一つとしております。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

)公共事業の市場環境の影響について

 当社グループの事業は公共土木事業への依存度が7割程度であります。国土強靭化策などにより公共事業は増加基調にありますが、わが国の財政事情などから、この増加基調が中長期的に継続するか否かは不透明であります。当社グループは公共事業に偏らない土木・建築を両輪とした安定的な事業構造への転換を進めておりますが、建築事業の拡大が進展しない場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、公共事業以外の受注活動も強化することで、リスクの軽減を図っております。

 

)現場での労災事故について

 建設業界は高所作業など危険作業が多く、産業界でも重大事故発生率が最も高い産業であります。当社グループは「安全なくして生産なし」をスローガンとして掲げ、グループを挙げてゼロ災害に取り組んでおります。しかしながら、万一、労災事故が発生した場合は、工事成績評点へのマイナス影響や、関係発注機関から指名停止を受けるなど業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、各支店に安全衛生委員会を設置し、安全パトロールや作業員に対する安全衛生教育を定期的に実施するとともに、日常の安全衛生活動では、安全朝礼、ツールボックス・ミーティング、危険予知活動(KY活動)を行い労災事故の防止に努めております。

 

)契約不適合責任及び製造物責任について

 「安全と安心」を企業ブランドとして掲げ、品質管理にはグループを挙げて万全を期しておりますが、万一、契約不適合責任及び製造物責任による損害賠償や補修工事などが発生した場合は、多額の補修費用の発生や関係発注機関から指名停止を受けるなど業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、工事受注後から設計照査を行い、品質パトロールを定期的に実施するなど、プロセスチェックを実施する品質管理体制により、厳密な品質管理を徹底することで、リスクの軽減を図っております。

 

)PC建築製品製作のための工場設備について

 当社グループの事業安定化のためには建築事業の拡大が不可欠であり、その主力製品は工場部材であることから、各地域市場に供給する工場設備の保有が必要であります。民間建築投資は景気、物価、賃金、雇用動向等に大きく影響を受けることから、景気の低迷等による需要低下で工場の稼働率が落ちるなど業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、公共事業を中心とする土木事業のプレキャスト化を推進することで、民間建築投資に過度に依存しない体制を構築し、リスクの軽減を図っております。

 

)官公需法の影響について

 官公需法とは、地元企業育成のために地元中小企業に優先的に公共事業を発注する制度を定めた法律であります。特に地方自治体は地域振興策を強化しており、官公需法の運用が堅持・強化された場合は、当社グループはこれら地元中小企業の下請けになるケースや地元企業との共同企業体となるケースが増加することなどが考えられます。

 元請けや共同企業体構成員となった地元企業が信用不安に陥った場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、契約前に取引先の信用調査を適切に実施することで、リスクの軽減を図っております。

)資材価格や外注労務単価変動の影響について

 様々な要因で資材の購入単価や外注労務単価が高騰し、契約条件にある請負金額のスライド条項などが適用されない場合は、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、発注者との交渉を密にし、スライド条項が適用されるように働きかけることで、リスクの軽減を図っております。

(7)建設技術者や技能労働者の不足について

 少子高齢化の進展や建設産業の構造的な問題により、建設技術者や技能労働者の不足が顕著な問題となっております。労働者不足に関しては国をあげた課題として取り組まれており、この問題に適切に対応できない場合は施工能力が落ちるなど業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、建設技術者や技能労働者不足に対応するために、現場工事のプレキャスト化の推進や、女性技術者及び外国人技術者の採用を積極的に行うことで、リスクの軽減を図っております。

 

(8)大規模自然災害等

 地震や台風等大規模な自然災害の発生や感染症の流行により、当社グループの事業遂行に直接的または間接的な影響を受ける可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、事業継続に重大な影響を及ぼす大規模自然災害や感染症等の不測の事態に備え事業継続計画を策定するとともに、大規模災害を想定した避難訓練、安否確認訓練を実施し、リスクの軽減を図っております。

 

(9)法的規制等について

 当社グループの事業は、建設業法、建築士法、建築基準法等の法的規制を受けております。主要な事業であります土木・建築事業は、建設業法に基づき、特定建設業許可を受けておりますが、不正な手段による許可の取得や経営管理者・専任技術者等の欠格条項違反に該当した場合は、建設業法第29条により許可の取り消しとなります。

 当社グループでは、当該許可の諸条件や法令等の遵守に努めており、現時点において、これらの免許の取消事由に該当する事実はないと認識しております。しかしながら、万一、法令違反等によって許可が取り消された場合、当社グループの業績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、法務部門が当該許可の諸条件や法令等を遵守していることを定期的に確認することでリスクの軽減を図っております。

 

  (許認可等の状況)

法令等

許認可等

有効期限

取消事由

建設業法

特定建設業の許可

国土交通大臣許可

(特—4)第2301号

2022年11月26日から

2027年11月25日まで

(5年ごとの更新)

建設業法第29条

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

   当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」と

  いう。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、賃上げによる雇用・所得環境の改善や訪日旅行者数の増加によるインバウンド需要の拡大に加え、政府による各種政策の効果により内需の回復が進むとともに企業収益も堅調に推移しており、物価上昇の中でも緩やかな回復基調が続いております。一方で、中東やウクライナ情勢の長期化の影響による原材料・エネルギー価格は依然として高止まりの状況にあることに加え、米国による関税の引き上げ政策などの影響による景気の下振れが懸念されることから、今後も引き続き国内外の様々な環境変化を注視していく必要があります。

 当建設業界におきましては、土木分野は公共事業の発注が後ろ倒しとなった案件が見受けられるものの、高速道路の老朽化に伴う維持更新事業や暫定2車線区間の4車線化事業など道路ネットワーク整備を中心に堅調に推移いたしました。土木分野の先行きにつきましては、従来の公共事業関係費に加え、2021年度からスタートした政府主導の「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」や高速道路会社の「中期事業見通し」などから、引き続きインフラ老朽化対策など必要性の高い事業を中心に一定量の発注が想定され、底堅く推移していくと見込まれます。

 また、建築分野につきましても堅調な企業収益等を背景に、首都圏を中心とした再開発事業への投資増加や民間設備投資に持ち直しの動きがみられ、今後も堅調に推移するものと予想しております。一方で、労務費・建設資材・輸送費の高騰など建設コストが総じて高い価格水準で推移していることに加え、深刻な人手不足は業界全体における喫緊の課題であり、人材の確保や生産性の向上に向けた施策が必須となっております。

 このような経営環境のもと、当社グループは「新たな成長戦略に向けた経営リソース(人材、技術・生産設備、財務)の拡充」をメインテーマとした第5次中期経営計画「VISION2030」の4年目を迎え、新時代への完全適合と全ての業務分野におけるハード・ソフト両面でのさらなる「革新」を進めるため、資産譲渡による資産の有効活用や財務体質の強化、工事工場利益改善プロジェクトによる採算性の改善、既存工場のリニューアルによる労働環境の改善や生産性の向上、専門部署による「DX」の推進・普及、生産現場の業務を支援するバックオフィスの機能向上、カーボンニュートラル等の環境対策や補修補強・防災分野に関する研究開発、子会社を核としたメンテナンス事業の拡大などに取り組みながら企業活動を進めてまいりました。また、昨年4月より適用された時間外労働の上限規制への対応を実施するとともに、多様性を重視したリクルート活動、生産現場の働きがい改革「リ・ブランディング」の推進、所定労働時間の短縮などワークライフバランスの充実、経済産業省が推進する健康経営優良法人(ホワイト500)の認定取得、「SDGs」の全社的展開を通じた社会的な企業価値向上のための取り組みなど、生産性の向上とあわせて社員及び協力会社従業員の働き方改革の実現に向けて様々な施策を実施してまいりました。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ4,086百万円増加し、37,756百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ2,185百万円増加し、25,447百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,901百万円増加し、12,308百万円となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の受注高は土木事業における契約が翌年度にずれ込んだことなどから26,416百万円(前期比11.2%減)、売上高は潤沢な手持ち工事が順調に進捗したことから33,771百万円(前期比18.2%増)となりました。損益につきましては、建設コストの上昇などにより工事採算性が悪化したものの、売上高が増加したことなどから、営業利益は885百万円(前期比56.8%増)、経常利益は851百万円(前期比54.8%増)となりました。また、保有資産の譲渡に伴う譲渡益を特別利益に計上したこと及び法人税等調整額(益)を82百万円計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純利益は2,187百万円(前期比426.6%増)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

土木事業

 土木事業は、高速道路株式会社が発注する工事を中心に官庁発注物件の大型化・長期化が進む中、手持ち工事確保による安定経営を目指し公入札、民間営業による受注活動に取り組みました。その結果、公入札では国土交通省四国地方整備局発注の大型PC上部工工事や高速道路株式会社が進める高速道路における4車線化工事、工場製品であるプレキャストPC床版を使用した維持更新工事を受注し、地方自治体では地元福岡県発注の大型PC上部工工事を複数件受注しました。また、民間営業では高速道路株式会社が発注する維持更新工事でのゼネコンに対するプレキャストPC床版の供給、鉄道事業におけるPCまくらぎなど工場製品の受注も進めました。しかしながら、計画していた高速道路株式会社発注のECI工事の契約が翌連結会計年度以降に後ろ倒しとなった影響などにより、受注高は18,314百万円(前連結会計年度比9.3%減)となりました。

 売上高につきましては、近年顕著化している大型工事の準備期間が長期化する傾向の影響はあるものの、関東・関西地区での高速道路株式会社発注工事の最終設計変更契約が円滑に実施できたこと、及び手持ち工事が大型工事を中心に現場・工場ともに順調に進捗したことにより、22,719百万円(前連結会計年度比5.3%増)となりました。

 セグメント利益につきましては、関東・関西地区での高速道路株式会社発注工事の最終設計変更契約が円滑に実施できたことや工事原価率改善施策への取り組み効果による売上原価率の改善などにより、3,416百万円(前連結会計年度比19.6%増)となりました。

 

建築事業

 建築事業は、関西・中部地区におけるマンション事業の発注が順調に推移しましたが、関東地区で前連結会計年度において大型再開発事業の早期受注ができたことによる反動減、及び手持ち工事の増加に伴う計画的な受注の実施により受注高は7,809百万円(前連結会計年度比15.7%減)となりました。

 売上高につきましては、関西・中部地区で耐震補強工事等の進捗好転があったこと、並びに首都圏及び近畿圏の大型再開発現場が滞りなく進捗したことで当社製品の供給も順調に行えたことなどにより、建築事業で過去最高額の10,769百万円(前連結会計年度比60.0%増)となりました。

 セグメント利益につきましては、受注時における物価高騰分の価格転嫁はできましたが、民間取引を主としている当事業においては、受注後の各種資材、製品運送費、人件費等の建設コスト高騰の価格転嫁に難航したこと、及び一部の製品製造を外注したことなどにより採算性が悪化いたしました。従いまして、売上高は大幅に増加したものの、セグメント利益は731百万円(前連結会計年度比2.9%減)となりました。

 

不動産賃貸事業

 不動産賃貸事業は、オフィスビルの入居率が高水準を維持し、賃料の一部値上げによる収益確保を目指して営業活動を展開した結果、受注高及び売上高は271百万円(前連結会計年度比2.1%増)となりました。

 セグメント利益につきましては、修繕費等の増加により157百万円(前連結会計年度比2.1%減)となりました。

 なお、当連結会計年度において、賃貸用オフィスビルとして保有していた固定資産(土地・建物)を売却しております。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は881百万円増加し、期末残高は3,083百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、使用した資金は2,334百万円(前連結会計年度は1,086百万円の使用)となりました。収入の主な要因は、税金等調整前当期純利益及び減価償却費の計上などによるものであります。支出の主な要因は、売上債権の増加、仕入債務の減少などによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、獲得した資金は1,701百万円(前連結会計年度は1,457百万円の使用)となりました。主な内容は、有形固定資産の売却による収入及び取得による支出であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、調達した資金は1,514百万円(前連結会計年度は2,425百万円の調達)となりました。短期借入金の増加及び長期借入金の減少が主な要因であります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.受注実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

土木事業

18,314

△9.3

建築事業

7,809

△15.7

不動産賃貸事業

271

2.1

その他

21

1,713.1

合計

26,416

△11.2

 

b.売上実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

(百万円)

前年同期比(%)

土木事業

22,719

5.3

建築事業

10,769

60.0

不動産賃貸事業

271

2.1

その他

12

937.9

合計

33,771

18.2

(注)1.当社では生産実績を定義することが困難であるため、「生産実績」は記載しておりません。

2.売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は、次のとおりであります。

 

相手先

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

 

 

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

 

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

西日本高速道路㈱

3,862

13.5

3,320

9.8

中日本高速道路㈱

2,367

8.3

4,453

13.2

 

 

 (参考)提出会社の建設事業における受注工事高及び完成工事高の実績は次のとおりであります。

 

(1)受注工事高、完成工事高及び繰越工事高

期別

区分

前期繰越
工事高

(百万円)

当期受注
工事高

(百万円)

(百万円)

当期完成
工事高

(百万円)

次期繰越

工事高

(百万円)

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

土木工事

40,787

15,157

55,944

17,111

38,832

建築工事

989

1,432

2,421

1,162

1,259

41,776

16,589

58,366

18,274

40,092

その他

9,142

11,807

20,949

8,965

11,983

合計

50,919

28,396

79,315

27,240

52,075

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

土木工事

38,832

12,882

51,715

17,489

34,225

建築工事

1,259

928

2,188

1,236

951

40,092

13,811

53,903

18,726

35,176

その他

11,983

11,406

23,389

13,580

9,809

合計

52,075

25,217

77,293

32,306

44,986

(注)前事業年度以前に受注した工事で、契約の更改により請負金額に変更のあるものについては、当期受注工事高にそ

   の増減額を含んでおります。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれます。

 

(2)受注工事高の受注方法別比率

工事の受注方法は、特命と競争に大別されます。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

土木工事

16.8

83.2

100

建築工事

100

100

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

土木工事

34.3

65.7

100

建築工事

100

100

(注) 百分比は請負金額比であります。

 

(3)完成工事高

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

前事業年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

土木工事

16,982

128

17,111

建築工事

958

203

1,162

17,941

332

18,274

当事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

土木工事

17,454

34

17,489

建築工事

870

366

1,236

18,325

401

18,726

(注)1.前事業年度の完成工事のうち請負金額2億円以上の主なものは、次のとおりであります。

独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構

北陸新幹線、動橋川橋りょう他

西日本高速道路㈱

令和3年度 宮崎自動車道(特定更新等)池島川橋(上り線)床版取替工事

九州地方整備局

熊本3号袋川橋上部工工事

中部地方整備局

令和3年度 東海環状北勢第二高架橋1PC上部

西松建設㈱

浜松市2号橋梁上部工工事

 

 2.当事業年度の完成工事のうち請負金額2億円以上の主なものは、次のとおりであります。

中日本高速道路㈱

北陸自動車道(特定更新等)九頭竜川橋他2橋床版取替工事(その2)

中国地方整備局

令和4年度三隅・益田道路木部高架橋PC上部工事

㈱大林組

新東名高速道路大御神西跨道橋他3橋(PC上部工)工事

㈱大林組

東名阪津島高架橋拡幅梁外ケーブル工事

四国地方整備局

令和4-6年度 横断道江田高架橋上部PA27-PA32工事

 

3.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。

前事業年度

西日本高速道路㈱

3,862百万円

21.1%

 

中日本高速道路㈱

2,367百万円

13.0%

当事業年度

中日本高速道路㈱

4,246百万円

22.7%

 

西日本高速道路㈱

3,320百万円

17.7%

 

(4)次期繰越工事高(2025年3月31日現在)

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

土木工事

34,225

-

34,225

建築工事

823

127

951

35,049

127

35,176

(注) 次期繰越工事のうち請負金額4億円以上の主なものは次のとおりであります。

中日本高速道路㈱

岡谷高架橋改良工事

西日本高速道路㈱

令和2年度 佐世保道路 佐世保高架橋(拡張)工事

西日本高速道路㈱

新名神高速道路 城陽第二高架橋東(PC上部工)工事

中日本高速道路㈱

名神高速道路(特定更新等)木曽川橋床版取替工事

中日本高速道路㈱

新名神高速道路錐ヶ瀧橋他1橋(PC上部工)拡幅工事

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。重要な会計方針については、本報告書「第一部 企業情報 第5 経理の状況」に記載しております。この連結財務諸表の作成に当たっては、会計上の見積りを行う必要があり、のれん、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、株式給付引当金、退職給付に係る負債、収益認識に関する会計基準に基づく収益認識などの判断につきましては、過去の実績や合理的な方法により見積りを行っております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 上記のうち、見積り及び仮定の重要度が高いものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等

1)財政状態

 当連結会計年度末における資産合計は37,756百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,086百万円の増加となりました。

 流動資産は、27,865百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,532百万円の増加となりました。主な要因といたしましては、現金預金が881百万円、受取手形・完成工事未収入金等が3,988百万円増加したことなどによるものであります。

 

 固定資産は、9,891百万円となり、前連結会計年度末に比べ445百万円の減少となりました。主な要因といたしましては、九州小竹工場リニューアル工事の進捗に伴い建物・構築物を取得したことなどによる増加がありましたが、保有していた賃貸用オフィスビルの土地・建物を売却したため有形固定資産が480百万円減少いたしました。また、のれんの償却などにより無形固定資産が48百万円の減少、繰延税金資産の増加などにより投資その他の資産が82百万円増加したことによるものであります。

 負債合計は25,447百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,185百万円の増加となりました。

 流動負債は、23,929百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,657百万円の増加となりました。主な要因といたしましては、下請法の運用ルールの変更に対応するため支払サイトの短縮などにより支払手形・工事未払金等が177百万円、電子記録債務640百万円減少いたしましたが、短期借入金が3,064百万円、未払法人税等が762百万円、未成工事受入金が265百万円増加したことなどによるものであります。

 固定負債は、1,517百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,472百万円の減少となりました。主な要因といたしましては、長期借入金が1,299百万円減少したことなどによるものであります。

 純資産合計は12,308百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,901百万円の増加となりました。主な要因といたしましては、親会社株主に帰属する当期純利益2,187百万円の計上、退職給付に係る調整累計額の減少45百万円、自己株式の株式報酬としての取得及び処分による増加37百万円、剰余金の配当による減少198百万円によるものであります。

 以上の結果、自己資本比率は32.6%となり、前連結会計年度末に比べ1.7%上昇いたしました。

2)経営成績

(売上高)

 当連結会計年度における売上高は、潤沢な手持ち工事が順調に進捗したことから前連結会計年度に比べ5,205百万円増加(前連結会計年度比18.2%増)の33,771百万円となりました。

 なお、セグメント別の分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」の項目をご参照ください。

 

(売上原価、販売費及び一般管理費)

 当連結会計年度における売上原価は、売上高の増加に加え、土木事業、建築事業ともに各種原材料、輸送費、労務費など様々な建設コストの高騰の影響を受け、前連結会計年度に比べ4,667百万円増加(前連結会計年度比18.8%増)の29,460百万円となりました。

 売上総利益は、建設コストの高騰による工事採算性の低下はあったものの、売上高の増加により、前連結会計年度に比べ538百万円増加(前連結会計年度比14.3%増)の4,311百万円となりました。売上総利益率は前連結会計年度13.2%に対し、0.4ポイント悪化し12.8%となりました。

 なお、セグメント別の分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」の項目をご参照ください。

 販売費及び一般管理費は、各種経費の節減や業務効率化による残業時間の削減などに努めましたが、賃金上昇による労務費の増加などにより、前連結会計年度に比べ217百万円増加(前連結会計年度比6.8%増)の3,425百万円となりました。

 

(営業利益)

 営業利益は、売上総利益の増加により前連結会計年度に比べ320百万円増加(前連結会計年度比56.8%増)の885百万円となりました。営業利益率は2.6%となり、前連結会計年度に比べ0.6ポイント好転いたしました。

 

(営業外損益)

 営業外収益は、前連結会計年度に比べ21百万円増加の88百万円となりました。鉄屑等の売却による物品売却益及び固定資産の経常的な入れ替え等に伴う処分益の計上が主なものとなります。

 営業外費用は、前連結会計年度に比べ41百万円増加の122百万円となりました。借入金の増加に伴う支払利息の増加が主な要因となります。

 

(特別損益)

 特別利益は、当社が保有していた賃貸用オフィスビル(土地・建物)を譲渡したことに伴う売却益を特別利益に計上した結果、2,297百万円となりました。

 特別損失は、九州小竹工場リニューアル工事に伴う固定資産除却損を計上した結果、44百万円となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 親会社株主に帰属する当期純利益は、営業利益の増加及び特別利益の計上などにより前連結会計年度に比べ1,772百万円増加(前連結会計年度比426.6%増)の2,187百万円となりました。

 

b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営に影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境並びに事業上及び財務上の対処すべき課題」、及び「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

c.資本の財源及び資金の流動性

1)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

2)資金需要

当社グループの資金需要は、運転資金、投資資金及び株主還元に分けられます。

運転資金需要の主なものは、工事の施工及び工場の製品製造のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用や管理費用であります。

投資資金需要の主なものは、設備資金であり、工場における製造設備、工事現場における建設機材等固定資産の購入によるものであります。

また、株主還元については、財務健全性等に留意しつつ、配当政策に基づき実施しております。

 

3)資金調達

当社グループは、資金の効率的な活用と金融費用の削減を目的として、子会社(非連結・持分法非適用)を含めた資金調達は、原則として当社が一元管理しており、必要に応じて当社より子会社へ貸付けを行っております。

運転資金及び株主還元につきましては、主として営業活動から得られるキャッシュ・フローを源泉とする内部資金により充当しておりますが、運転資金において不足が生じた場合には金融機関からの借入金を利用しております。

設備資金につきましては、設備投資計画に基づき資金計画を作成し、内部資金で不足する場合には金融機関からの借入金を利用しております。なお、工場建設等の大規模な設備投資の場合には、内部資金に加え長期借入金を始めとした複数の調達方法を検討しております。

当社は、健全な財務体質、継続的な営業活動によるキャッシュ・フローの創出を維持するとともに、長期・短期の借入金のバランスを考慮した安定的な資金調達を行いながら、今後の事業成長に資するため事業運営上必要な手元流動性を高めることに努めております。

 

 

d.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、「新たな成長戦略に向けた経営リソース(人材、技術・生産設備、財務)の拡充」をメインテーマとした第5次中期経営計画「VISION2030」を2022年3月期よりスタートさせ、当連結会計年度は4年目となりました。

この「VISION2030」における前半の5年間(「稼ぐ力」を蓄える期間)における具体的な数値計画は以下のとおりとなっております。

(百万円)

 

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

(当期)

2026年3月期

売上高

28,160

29,400

31,200

33,000

35,300

営業利益

980

1,160

1,250

1,500

1,750

(営業利益率)

(3.5%)

(3.9%)

(4.0%)

(4.5%)

(5.0%)

 

 売上高及び営業利益(率)は、企業経営の基本的な指標であり、会社の本来の業務における収益性の判断材料として、重要な指標としております。当連結会計年度の実績との比較は以下のとおりであります。

 

 

 

(百万円)

 

VISION2030

実績値

差額

売上高

33,000

33,771

+771

営業利益

1,500

885

△614

(営業利益率)

(4.5%)

(2.6%)

(△1.9%)

 

当連結会計年度における実績は、計画に対し売上高は771百万円上回り33,771百万円となりました。

この主な要因は、当連結会計年度は、過去最高額となる手持ち工事を背景に、土木事業では、この潤沢な手持ち工事を現場・工場ともに順調に進捗させたことに加え、関東や関西地区における高速道路株式会社発注工事の最終設計変更契約が円滑に進んだことなどにより売上高が増加しました。また、建築事業においては、関西・中部地区で耐震補強工事等の進捗が順調であったこと、並びに首都圏や近畿圏における大型再開発現場が滞りなく進捗したことで当社製品の供給も順調に行えたことなどにより、建築事業で過去最高額となる売上高を計上することになりました。以上の要因により、当連結会計年度では「VISION2030」の目標値を上回る結果となりました。

営業利益は、上記計画を614百万円下回り885百万円となりました。これは、売上高は計画を上回りましたが、海外の政情不安や供給不足、金融資本市場の変動、急激な円安による物価上昇など様々な要因により各種原材料、輸送費、労務費など諸々の建設コストの高騰が続き、その影響を受け、土木事業、建築事業ともに採算性が計画より悪化し売上総利益率が低下、その結果、売上総利益が計画に対し下回ったことによるものであります。現場・工場等において原価低減に努め、販売費及び一般管理費の節減なども行いましたが、営業利益率は2.6%となり、「VISION2030」の目標値を下回る結果となりました。

 

(投資方針及びその分析)

投資につきましては、当社グループが建設業界に属していることから工事用機材の適切な維持更新は安全な施工を行うために不可欠であり、また、工場においても生産性の向上、省人・省力化等のために継続的な設備投資は不可欠と考えております。従って、設備投資額を重要な指標の一つとしております。

当連結会計年度における設備投資額は、1,302百万円であります。

老朽化設備の更新に加え、大型機材や工場製造設備といった設備増強、安全性・生産性の向上のための設備の取得などの設備投資が467百万円となりました。

さらに、生産力アップのため既存工場の本格的なリニューアル工事として、九州小竹工場リニューアル工事を2022年3月期からスタートさせており、4年目を迎えた当連結会計年度においては、セグメント製造棟、プレキャスト床板製造棟の上屋の建設を行い、マクラギ製造設備、新マクラギベンチの養生配管などの機械装置の設置など行い、合わせて835百万円の設備投資を実施いたしました。今後の計画については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載しております。

 

研究開発につきましては、設立以来、新製品の開発、製造技術の合理化、現場工事における施工方法の開発、施工上の問題解決等の課題に挑戦しながら、社会のニーズに対応できるよう研究開発活動を実施していることから研究開発投資も重要な指標としております。研究所での技術開発などを行った結果、当連結会計年度における開発費の額は132百万円で、売上高の0.4%となり、方針としている売上高の0.3%を達成する結果となりました。

 

(財務方針及びその分析)

財務につきましては、ROE(自己資本利益率)は投下した資本に対しどれだけの利益を獲得できたかを示す指標であり、重要な指標としております。

当連結会計年度においては、保有資産の売却の影響により当期純利益が「VISION2030」の計画値を大きく上回る結果となったことに伴い連結で19.3%、個別で20.2%となり、方針としている7%超の目標を上回る結果となりました。

なお、今後は「第2 事業の状況 (3)中期経営計画「VISION2030」について」に記載した通り、利益確保によるROEの改善を図り、ROE8%超の実現を目指してまいります。

また、当連結会計年度の設備投資資金につきましては、設備投資総額で1,685百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益2,187百万円の範囲内となっております。従って、当連結会計年度の設備投資資金は、基本として自己資金によっております。なお、九州小竹工場リニューアル関連投資に係る今後の資金については、基本的に自己資金よると考えておりますが、大型・長期の設備投資と言うこともあり、借入金等による調達も視野に入れ検討しております。

 

(株主還元方針及びその分析)

当社グループは、株主に対する利益還元を経営の最重要課題の一つと位置付け、財務体質の強化と積極的な事業展開に必要な内部留保の充実を図りながら、安定配当を実施することを基本方針としております。当社の中期経営計画「VISION2030」においても、配当性向を重要な指標としており、2024年5月15日に公表いたしました「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」において配当性向40%超を目指すこととしております。また、期間損益に影響を受けやすいという特性がある配当性向に加え、安定配当の指標として株主資本配当率(DOE)を配当検討の際の指標として加えております。

当連結会計年度においては、前連結会計年度の普通配当9円から4円増配の1株当たり13円の普通配当といたしました。しかしながら、当連結会計年度においては、保有不動産の譲渡に伴う売却益を特別利益に計上したことから、親会社株主に帰属する当期純利益が大幅に増加し、その結果、配当性向は10.5%となりした。なお、もう一つの指標としている株主資本配当率は前連結会計年度の1.9%から0.1ポイント上昇し2.0%となりました。

なお、今後は「第2 事業の状況 (3)中期経営計画「VISION2030」について」に記載した通り、PBR向上のため、株主還元強化を株価向上施策の一環と捉えており、翌連結会計年度の配当は、当連結会計年度の普通配当より1円増配し、1株当たり14円の普通配当を予定しております(配当性向31.9%)。今後も株主還元を強化し、配当性向は40%を目指していく方針としております。

 

(SDGsへの取り組み)

「VISION2030」においては、SDGs<持続可能な開発目標>の17の目標への取り組みについても掲げております。「世界レベルのSDGs達成に貢献する企業グループ」を2030年に目指す姿の一つと定め、その実現に向けて、基本理念に基づいた重要と思われる5つの課題(マテリアリティ)及びその課題を解決するための活動方針(アクションプラン)を策定しております。

当連結会計年度において、当社グループではSDGs研修の実施をはじめとして、SDGsに寄与するため下記のような取り組みを実施いたしました。

① 福岡市・北九州市における「福岡市SDGs登録制度」認定継続取得

② 6年連続で「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」の認定取得及び当連結会計年度において初めて上

位500法人を顕彰する「ホワイト500」の認定取得

③ スポーツエールカンパニー2025として認定を継続取得

④ 「健康づくり優良事業所」ゴールド認定取得

⑤ 「カーボンニュートラル推進プロジェクト」により検討を進め、グループ全体としての取り組みを実施

 

「スポーツエールカンパニー」とは、従業員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取り組みを行っている企業としてスポーツ庁が認定を行う制度です。社員がスポーツに親しめる環境づくりを進めることで、社員が心身ともに健康で個性や能力を最大限に発揮できる職場環境の実現を目指し、健康経営を推進しています。

 

また、前連結会計年度において発足した「カーボンニュートラル推進プロジェクト」において、CO2削減目標、ロードマップの策定及び具体的なCO2削減策の立案と検討を進め、当連結会計年度においてSBT(Science Based Targets)認定を申請いたしました。

このほかにも、脱炭素・低炭素につながるコンクリートの材料・配合選定・養生方法などの研究開発の実施、風力発電ハイブリッドタワーの実用化に向けた取り組み、工場で使用する蒸気養生ボイラーの燃料を重油から天然ガスに転換することで、有害排気ガスの排出削減の実施など様々な地球温暖化対策に積極的に取り組んでおり、今後も継続して取り組みを実施してまいります。

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5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、設立以来より新製品の開発、製造技術の合理化、現場工事における施工方法の開発、施工上の問題解決等の課題を解決するため、社会のニーズに対応できるよう研究開発活動を行ってまいりました。

 当社グループでは、いわき研究所を中心とした研究開発活動を行っており、いわき研究所の設備整備として、2019年に構造実験棟、2021年に事務所や材料試験設備等を有する研究棟の建設を行いました。今後も研究開発体制のさらなる整備を行う計画であります。
 当連結会計年度における土木事業・建築事業の研究開発費総額は132百万円であり、主な内容は次のとおりであります。

 なお、研究開発費はセグメント別に管理しておりませんので、セグメント別の研究開発費の金額の記載は省略しております。

(1)土木事業、建築事業共通

① 省力化製造方法の開発

 近年、わが国では少子高齢化の影響により建設作業員の不足が顕在化し、今後もその傾向は強まるものと予想されています。当社グループでは、かねてより工場における製造方法の自動化・省人化に取り組み、製造効率の向上に努めてまいりました。引き続きICTやAIを活用した製造方法の開発を進めております。さらに現場施工における生産性の向上と作業環境の改善を目指し、ICTを活用した施工方法の開発を進めております。

 

(2)土木事業

① 環境保全・防災に対応した製品・工法の開発

 政府は2050年を目標としたカーボンニュートラル達成に向けて、再生可能エネルギーの導入加速を求めています。当社グループでは、国・地方自治体・学協会と連携して風力発電の導入拡大の一端を担うべく、陸上並びに洋上風力発電施設の発電コスト低減に寄与するプレストレトコンクリート構造物(ハイブリッドタワー・コンクリート製浮体)の研究開発を進めております。また、CO2の排出低減につながるコンクリート製品の製造方法の改良や製品の開発を進めております。

 近年頻発し激甚化している風水害に対応する防災インフラの製品・工法(PC矢板を用いた堤防強化構造)の開発を進めております。

 

② 各種メンテナンス工法の開発

 わが国では、構造物の老朽化が進む中、その長寿命化のためのメンテナンス工法の開発が求められています。当社グループでは新しい床版補修工法等に関する高速道路会社等との共同開発など、高速道路リニューアルプロジェクトに対応した工法の開発を進めております。今後増加が見込まれる維持更新市場の中で、社会に求められる技術開発を進めます。

 

(3)建築事業

① 環境負荷低減型コンクリートを用いたプレキャスト部材の開発

 政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」を受け、建設業界においても低炭素化に対する取り組みが積極的に行われる中で、建築物におけるコンクリート躯体の低炭素化を実現すべく、低炭素型コンクリートを用いたプレキャスト部材の開発を進めており、早期の商品化を目指しています。

 

(4)不動産賃貸事業、その他の事業

研究開発活動は行っておりません。