文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2024年3月31日)現在において、当社が判断したものであります。
(1) 会社の経営方針等
① 基本的な経営方針
当社は「健全な建設事業の経営を通じて会社の永続的な発展を図り、それによって社会国家の繁栄に寄与するとともに、株主各位の負託に応え、社員の人間成長と福祉を増進する」ことを経営理念として、また「安全第一、技術と信用、誠実と努力、経営の健全」を社是として掲げ、永年にわたり良質な社会資本の整備並びに提供に向けて努力しております。
② 目標とする経営指標
当社が目標とする経営指標といたしましては、株主価値の向上や安定した経営の持続に向けて、売上高総利益率、売上高営業利益率、自己資本比率、自己資本利益率、配当性向などの指標の向上を目指しております。
これら各指標の推移は以下のとおりであります。
(注) 「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を2022年3月期の期首から適用しており、2022年3月期以降に係る経営指標については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。
(2) 経営環境、優先的に対処すべき課題及び中長期的な会社の経営戦略等
今後のわが国経済は、企業収益の回復に伴い雇用・所得環境が改善する中で、景気は緩やかな回復傾向が続くことが期待されます。一方で、中国経済の先行き不安、中東情勢などの景気下振れリスクのほか、過度な円安による物価上昇が及ぼす影響など、依然として先行き不透明な状況が続くことが予想されます。
建設業界におきましては、公共投資は防災・減災対策や防衛関連事業、社会インフラの維持・更新などにより、引き続き堅調に推移すると見込まれます。また、民間設備投資も堅調な企業収益を背景に持ち直しの動きが続くとされ、全体として高い水準を維持するものと期待されます。一方で、建設資材価格の高止まりや労務逼迫などによる建設コストの上昇や投資マインドの減退、競争環境の悪化等が懸念されます。
このような事業環境のもと、当社といたしましては、リスク管理を徹底し、これまで築いてきた信用と健全な財務力などを一層強化するとともに、人材育成に注力し、事業環境の変化にしなやかに対応できるよう、総合力の更なる向上を図ってまいります。
また、当社は会社設立第100期にあたる2036年度に向けた「長期ビジョン2036」及びその実現に向けたフェーズ1としての「中期経営計画(2024〜2026年度)」を策定しました。本計画の達成に向け、収益基盤の強化を最優先としつつ、事業戦略、財務・資本戦略、非財務戦略それぞれの推進に全社を挙げて取り組み、企業価値の更なる向上を図ってまいります。
そして、社会から高い信頼を寄せていただける企業であり続けるべく、全社を挙げて企業価値の更なる向上を目指してまいります。
「長期ビジョン2036」及び「中期経営計画(2024~2026年度)」、経営目標の概要は、以下のとおりであります。
① 「長期ビジョン2036」

② 「中期経営計画(2024~2026年度)」

③ 経営目標
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2024年3月31日)現在において当社が判断したものであります。
(1) ガバナンス
当社は、2023年4月1日付けで取締役会の監督に基づいてサステナビリティに係る課題の特定や対応方針等を審議・決定する機関として「サステナビリティ委員会」を設置しております。当委員会は、代表取締役を委員長、各事業部門長等を委員として構成され、年2回開催し、サステナビリティに係る基本的な方針や具体的な行動計画、関連課題への対応施策等を審議するとともに必要な事項を取締役会へ報告しております。また、当委員会の指示により活動を推進・フォローする部門横断的な組織としてサステナビリティ部会を設置しており、重要な事項等は事業部門及び各支店等に適宜共有されており、サステナビリティに係る全社的なガバナンス体制を構築しております。
当社のガバナンス体制の詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項」に記載のとおりであります。

(2) 戦略
① 気候変動
当社は「地球環境保全の重要性を認識し、サステナビリティへの取組みを推進するとともに、健全な建設事業の経営を通じて、持続可能な社会の実現に向けて環境課題の解決に貢献する」ことを基本的な環境方針に定めています。また、環境への影響を適切に考慮し、環境保全活動及び環境負荷低減活動を推進するとともに、環境に関する法規制等及び利害関係者の要求事項を順守することとしております。具体的な環境管理活動につきましては、CO2削減等の地球環境への負荷低減、廃棄物の発生抑制とリサイクル推進、資源とエネルギー使用の効率化、環境配慮設計、技術開発の推進を主な管理活動として、それぞれの取組みを推進しております。また、気候変動につきましては、サステナビリティ委員会及び部会を中心として気候変動に関連するリスクや機会が当社に与える影響について情報収集、分析及び検討を行った上で必要な対応を実施するとともに、TCFDもしくはそれらと同等の枠組みに基づき情報開示の充実に努めてまいります。
② 人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針
a. 人材の育成に関する方針
当社は経営方針の中で、社員の人間成長と福祉の増進を定めており、有能で活力ある人材の確保・育成を経営基本方針のひとつとしております。また「長期ビジョン2036」及び「中期経営計画(2024~2026年度)」において、「人的資本経営の推進」を重要施策と位置付け、社員エンゲージメントの向上を図るとともに、人材の育成、知識・技術の普及への寄与並びに働き方改革の推進を含む従業員の働きやすい環境の整備を主な取組み項目として推進しております。
当社の営む建設業においては、建設現場の移動性という特性があり、永年蓄積された知見や技術の習得には、日々の業務を通じた人材育成が有効であることから、職場での「OJT(職場内研修)」を主体としております。加えて、それらを集合研修で補完するため、入社時をはじめとした職務遂行能力に応じた階層ごとの研修、各職種に求められる専門的な知識の習得を目的とした職種別研修や安全衛生教育など、より実践に近い社員教育の実施により理解度の向上を図っております。また、各種コンプライアンス研修やハラスメント教育、人事評価制度に係る評価者研修など、多面的な人材育成を実施しております。
また当社は、女性や中途採用者の管理職への登用を積極的に推進しており、特に女性につきましては女性活躍推進法に基づき、2016年から2019年までの3年間で女性管理職比率を0.5%から3.0%に引き上げる目標を達成し、その後も同水準を維持しており、2026年度までに女性管理職比率4.0%以上の目標を定めております。なお、外国人の登用につきましては、建設工事現場における言葉の壁や能力、技術面において不安材料が払拭できないことから見送っております。多様性の確保に向けた方針の展開につきましては、今後の検討課題として取り組んでまいります。
b. 社内環境整備に関する方針
当社は、安全第一を経営方針に掲げて、全ての関係者に対する「安全」と「健康」の確保を実現し、快適な職場環境の形成を目指すことを安全衛生方針として定めており、心身の健康の保持増進及び快適な職場環境形成に努めることを行動指針のひとつに定めております。また、公正な雇用システム、人事システム、人材育成プログラム等を構築・改善し、社員が主体性や創造性を最大限に発揮できる企業風土の醸成に努めております。加えて、仕事と子育ての両立がしやすい環境整備、労働時間の短縮、有給休暇の取得促進等に継続的に取り組み、メンタルヘルス活動指針を示した上で、従業員のこころの健康の保持・増進に向けて組織的な活動に取り組むとともに、活力ある職場の形成に努めております。総合的な社内環境整備方針の整理、運用につきましては今後の検討課題として継続的に取り組んでまいります。
(3) リスク管理
リスク管理体制につきましては、「第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 b.リスク管理体制の整備の状況」に記載のとおりであります。
気候変動を含むサステナビリティ領域におけるリスク管理につきましては、ISO14001に準拠した環境マネジメントシステムにおけるリスク及び機会の管理により、当社の事業活動等に与える影響や必要な対応等についてのデータ収集と分析及び見直しを実施しております。また、サステナビリティ委員会においてリスクの特定や目標及び戦略の設定等を行い、取締役会との連携を含めてリスク管理に係るガバナンスの実効性向上を目指してまいります。
自然災害等の発生に係るリスク管理につきましては、災害発生時における社員の安全と経営の存続を確保するとともに、建設業の社会的使命として被災地域の救援活動及び復旧・復興への支援を可能とするべく、「事業継続計画(BCP)」を策定しております。BCPでは、災害発生時に設置する組織及び実施事項を定め、平常時の管理・改善を継続的に実施し社内に浸透させることにより、事業継続力を維持していくこととしております。
情報セキュリティに係るリスクにつきましては、「情報セキュリティ規程」を制定しており、保有する情報資産を不正アクセス、盗難、漏洩、改ざん、紛失や人為災害、自然災害などのその他の脅威から保護するための対策を行っております。情報セキュリティ対策マニュアルの策定、標的型攻撃メールに備えた疑似メールによる対応訓練、サイバー攻撃による注意喚起など、制度の定期的な見直しを行うとともに、従業員への周知を徹底し、定期的な対策訓練を実施するなど、意識の向上を図っております。
(4) 指標及び目標
① 気候変動
気候変動対策に関連する指標及び目標につきましては、施工における温室効果ガスの削減、環境配慮設計の推進について指標及び目標を定めております。今後、TCFDもしくはそれらと同等の枠組みに準拠した開示を検討してまいります。また、気候変動に関するリスク及び機会の運用を定期的に見直し、温室効果ガス削減の達成に向けた実効的な取組みについて検討を進めてまいります。
② 人的資本
人的資本関連の指標及び目標につきましては、以下のとおりであります。
上記以外の指標につきましては、定期的にモニタリングを行い、多様性の確保について明確な目標数値や達成までのスケジュールを検討してまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、当社では、事業等のリスクを、将来の経営成績等に与える影響の程度や発生の蓋然性等に応じて、「特に重要なリスク」「重要なリスク」に分類しております。
文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2024年3月31日)現在において当社が判断したものであります。
(特に重要なリスク)
(重要なリスク)
(1) 経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当事業年度のわが国経済は、社会経済活動の正常化等により個人消費や設備投資などで持ち直しの動きが見られ、景気は緩やかな回復傾向となりました。一方で、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢の長期化や円安の持続などを背景とする原材料・エネルギー価格の高止まり、世界的な金融引き締めによる海外景気の下振れリスクなど、景気の先行きは依然として不透明な状況が続きました。
建設業界におきましては、国土強靭化政策の推進によるインフラ整備等により、公共投資は引き続き堅調に推移したほか、企業収益の改善等により、民間設備投資も持ち直しの動きが見られました。一方で、建設資材価格の高止まりや供給制限などの影響により、収益環境は引き続き厳しい状況で推移しました。
こうした経営環境の中で当社は、全社を挙げて品質管理及び安全管理並びにコンプライアンス確保の徹底に努めるとともに、技術力、提案力等の総合力の更なる向上と安定的な収益基盤の構築を目指して積極的な営業活動を展開してまいりました。
これらの結果、売上高は前期比12.1%減の830億60百万円となりましたが、利益面では営業利益が前期比190.6%増の16億86百万円、経常利益が前期比126.8%増の19億27百万円、当期純利益は前期比97.9%増の10億21百万円となりました。受注高は前期比10.0%減の774億2百万円となりました。
(財政状態)
当事業年度末の資産合計は、993億74百万円(前年同期比37億62百万円減)となりました。
流動資産は、完成工事未収入金の減少等により、前年同期比54億77百万円の減少、固定資産は、保有株式の株価の上昇に伴う投資有価証券の増加等により、前年同期比17億14百万円の増加となりました。
当事業年度末の負債合計は、321億14百万円(前年同期比53億99百万円減)となりました。
流動負債は、工事未払金の減少等により、前年同期比77億71百万円の減少、固定負債は、退職給付引当金の増加等により、前年同期比23億71百万円の増加となりました。
当事業年度末の純資産合計は、前年同期比16億37百万円増の672億60百万円となりました。これは、その他有価証券評価差額金の増加等によるものであります。
セグメントごとの経営成績及び財政状態は、以下のとおりであります。
・建築事業
建築事業の当事業年度のセグメント受注高は320億29百万円(前年同期比44.3%減)となりました。セグメント売上高は467億53百万円(前年同期比19.2%減)となり、セグメント利益は45億40百万円(前年同期比148.7%増)となりました。当事業年度末のセグメント資産は、完成工事未収入金の減少等により225億34百万円(前年同期比44.5%減)となりました。
当事業年度の事業環境は、堅調な企業収益を背景に民間設備投資で持ち直しの動きが見られました。受注高は一部工事における受注時期のずれ込みの影響等により前年同期比で減少となりました。受注高の減少や手持工事の施工状況等から売上高は前年同期比で減少となりましたが、資材価格急騰の影響による不採算工事の受注が重なった前年同期に比べ、収益環境の回復から完成工事総利益率が改善し、利益面では前年実績を上回る結果となりました。
・土木事業
土木事業の当事業年度のセグメント受注高は453億73百万円(前年同期比59.2%増)となりました。セグメント売上高は363億7百万円(前年同期比0.8%減)となり、セグメント利益は32億86百万円(前年同期比1.3%減)となりました。当事業年度末のセグメント資産は、完成工事未収入金の増加等により350億9百万円(前年同期比14.1%増)となりました。
当事業年度の事業環境は、国土強靭化政策の推進によるインフラ整備等により、公共投資を中心として引き続き底堅く推移しました。受注高は民間工事及び官公庁工事とも堅調に推移し前年同期比で増加となりました。売上高は手持工事の施工状況等から前年同期比で微減となりました。利益面では好採算工事の竣工が重なった前年同期の反動減により前年実績を下回る結果となりました。
当事業年度末における「現金及び現金同等物の期末残高」は、前事業年度末残高から69億68百万円増加し、185億68百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期の△211億36百万円に対し122億79百万円となりました。これは、主に売上債権の減少等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期の29億33百万円に対し△16億円となりました。これは、主に定期預金の払戻による収入の減少等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期の89億71百万円に対し△37億10百万円となりました。これは、主に短期借入金の純増減額が減少したことによるものであります。
(注) 当社では生産実績を定義することが困難であるため、「生産の状況」は記載しておりません。
(注) 1.前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含んでおります。したがって、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれております。
2.次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)であります。
工事受注方法は、特命と競争に大別されます。
(注) 百分比は請負金額比であります。
(注) 1.完成工事のうち主なものは、次のとおりであります。
第86期 請負金額10億円以上の主なもの
第87期 請負金額10億円以上の主なもの
2.完成工事高総額に対する割合が100分の10以上に該当する相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりであります。
第86期
第87期
(注) 手持工事のうち請負金額10億円以上の主なものは、次のとおりであります。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末(2024年3月31日)現在において当社が判断したものであります。
財政状態及び経営成績の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当社が目標とする経営指標といたしましては、株主価値向上及び安定した経営を持続していくため、売上高総利益率、売上高営業利益率、自己資本比率、自己資本利益率、配当性向などの指標の向上を目指しております。
当事業年度における各経営指標の実績及び推移につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)会社の経営方針等 ②目標とする経営指標」に記載のとおりであります。
また、当事業年度に設定した経営成績目標とその達成状況は以下のとおりであります。
(注) 1株当たり当期純利益につきましては、2023年10月1日を効力発生日として、普通株式1株につき3株の割合で株式分割を実施したため、当事業年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、算定しております。
a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b. 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の運転資金の主な使途は、建設工事に係る材料費、外注費、人件費等の経費や販売費及び一般管理費などの営業費用であります。通常の運転資金及び設備投資資金につきましては、営業活動により生じた手元流動資金及び内部資金を充てることとしておりますが、不足が生じた場合には金融機関から借入金の調達を行っております。効率的な調達を行うため取引金融機関9社と借入枠50億円の貸出コミットメント契約を締結しております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
財務諸表の作成にあたっては、当事業年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える見積り及び予測を必要としております。当社は財務諸表作成の基礎となる見積り及び予測を過去の実績や状況に応じて合理的と判断される一定の前提に基づいて継続的に検証し、意思決定を行っております。そのため、実際の結果は、見積り及び予測に伴う不確実性などにより異なる場合があります。
当社の財務諸表で採用した重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。
a. 一定の期間にわたり収益を認識する方法による収益認識
「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
b. 工事損失引当金
「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
c. 貸倒引当金
債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しております。債権の回収可能性について疑義が生じた場合、追加引当が必要となる可能性があります。
d. 繰延税金資産
繰延税金資産は将来の課税所得の見込等を勘案して、回収可能性を慎重に検討し計上しております。回収可能性に疑義が生じた場合、適正と考えられる金額まで減額する可能性があります。
該当事項はありません。
当社は、研究開発部門においても益々多様化するニーズに応えるべく、関連する各分野で幅広く研究を行い、技術の確立と新技術の開発に努めております。また、異業種、大学等の研究機関、公共機関との共同研究も積極的に推進しております。なお、当事業年度における研究開発費は
セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。
(建築事業、土木事業)
a ニューマチックケーソン工法関連技術
・地耐力試験機の効率化
現行の平板載荷試験機にて仕様の再検討や改良改善を行い、試験精度の保証された遠隔操作式平板載荷試験装置の開発を進めております。まずは有人での作業を更に短時間で行えるよう機器の改善を図る予定であります。
・救護設備開発
大深度化が進む中、完全無人化や掘削の自動化技術等の開発と併せて人命尊重(=リスク回避)の観点から、緊急脱出(救護)設備の重要性・必要性が増大しております。共同開発にて救護設備を開発し現場での運用を開始しました。これによりニューマチックケーソン工法の安全性が向上し、今後は短時間での緊急脱出実現のための改善を行う予定であります。
・総合施工管理システムの開発
施工中の各種計測データを取得し、そのデータからケーソンの挙動予測を可能にするシステムの開発を目的としております。当事業年度は継続して、掘削形状の3Dデータや各種計測データを複数の工事において取得し、データの蓄積を行いました。今後も継続してデータの取得を進めてまいります。
・掘削機の自動(自律)運転システムの開発
函内気圧0.18MPa以深の掘削は遠隔操作による無人化施工で行っております。今後は自動(自律)による掘削を可能とするシステムの開発を目指しております。システムでは3D地盤形状データより掘削位置を自動選定し、掘削した土砂を指定した位置に移動して排土を行いますが、さらに掘削した土砂を地上に搬出するために排土バケットの形状及び位置を自動認識して直接排土バケットへ投入することを可能とするシステムの開発と現場実証を当事業年度に実施しました。また、自動(自律)運転を目指すにあたり、掘削機制御のための基礎データの取得及びシミュレーターの開発を行いました。今後は、自動掘削制御方法を再度検討し、収集した地盤データ等の分析によるシステムの改良を行う予定であります。
b 生産性向上技術の開発
国土交通省で推進しているi-Construction(建設生産システム全体の生産性向上を図り、魅力ある建設現場を目指す取り組み)への対応を進めております。
・ 造成工事等において、ドローンによる3次元測量、3次元設計データを使用したマシンガイダンスやマシンコントロールによるICT施工、3次元点群データによる出来形管理及びデータ納品といった全てのプロセスで3次元モデルを活用することによって、生産性の向上を図っております。また、携帯端末による3次元データを活用した測量の試行検証を進めております。
・ 仮設を含む構造物等工事等において、3次元モデルを活用したBIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling / Management)により工事関係者間の情報共有・連携を深め、作業性や安全性の向上について利用を進めております。
・ 3次元データを基に施工等の状況を投影可視化する技術については、汎用性が高く他工種での利用可能性が認められたため、今後は、別工種に応用した場合の有効性の確認を進める予定であります。
c 地震対策技術
・ 当社で開発したスマート制震システムを用いた大型賃貸マンションの耐震改修工事が、2015年3月に竣工しました。この工事では、外付けフレームと建物を接続する後施工アンカーである「ピン支承対応型ディスクアンカー」と、既存構造体の耐震性能向上に適した高い引張抵抗力とせん断力を発揮できる接合部材である「プレミアムアンカー」を新たに適用し、当工事の施工実績を踏まえて、2018年3月には一般財団法人ベターリビングの一般評定(2度目のバージョンアップ版)を取得しました。また、2020年9月には『プレミアムアンカーを使用した柱梁構面内へのブレース型(ダンパー)ブレースの直接接合に依る組込み方法』の発明名称を「柱・梁架構の補強構造」として特許を出願し、特許査定を取得しました。当該技術アイデアは国立大学法人東京大学との調整・協議の上、米国においても特許登録を完了しました(当事業年度)。また、2023年3月には一般財団法人ベターリビングの一般評定の更新を実施しております。
また、2016年4月14日に発生した巨大地震である「熊本地震」では、2日後に更なる巨大地震が発生し、大きな被害が発生しました。このように連続した巨大地震が発生した場合でも、スマート制震システムの採用により安全性の確保が可能となる設計が実施できることが判ってきました。スマート制震システム構法の実用化・普及を目指すとともに、顧客にも適切に新技術適用前後の建物の耐震性能の向上程度とそれに伴う必要金額を同時並行的に提示して、顧客に納得いただける新たな設計(手)法である性能設計の構築も進めていく予定であります。
・ 岡山県内の耐震改修工事において、当社で開発したスマート制震システムを事業主指定の設計者に技術提案し、採用されました。事業主による一般財団法人ベターリビングの個別評定取得を経て一般競争入札にて公告となり、当社が受注し2022年2月に竣工しました。この工事においても「ピン支承対応型ディスクアンカー」と「プレミアムアンカー」を適用しております。
・ 当社は2020年4月から2年間の予定で、「オープン・イノベーションによる建築新技術実用化のための『ビジネスモデル』に関する研究(ディスク・ジョイントを例として)」を題目として共同研究を進めておりましたが、その共同研究対象範囲を「スマート制震システム&ディスク・ジョイントを例として」に拡大したため、研究期間を2年間延長し、2024年1月には、米国ロサンゼルスにおいて、ストラクチャーエンジニアとのヒアリングを実施するなどして、国立大学法人東京大学と進めてまいりました共同研究を2024年3月に終結しました。当該特許技術を根拠とした「広く・あまねく」の将来展開と普及を目標として、現在、報告書のまとめを進めております。
・ 今後は「プレミアムアンカー」など個別特許技術も含めて、新たな適用範囲開拓も見据え「広く・あまねく」の将来展開を、発明者である東京大学塩原等教授(当事業年度末現在)や他の発明者との連携を取りながら検討を進めていく予定であります。
・ アクティブ制振装置を設置した青山OHMOTOビルが2016年2月に竣工しました。国立大学法人東京農工大学、株式会社構造計画研究所、特許機器株式会社と共同開発した「実時間シミュレーションを用いた建物の振動制御(RTCS制御)」を新たに採用し、特許権の設定登録が行われました。
・ パッシブ制振装置(TMD)を設置した岡山本店ビルの新棟新築工事が2018年12月に完了しました。従来のガイドレール式の装置に加速度センサーによるトリガー機構を有した空気浮上式の機構を併用し、特許権の設定登録が行われました。
d 建築技術の共同研究
ゼネコン35社で技術開発・調査研究を行う共研フォーラムに参加し、「コンクリート品質向上検討会」のテーマについて調査と検討を行っております。また、共同研究開発した「建築物のLCサポートシステム」を運用し、システムの改修と保守を共同で行っております。
e 建築設計BIM・施工BIM実用化
当社は2010年からBIMソフトを導入していますが、発注者に対する提案力の強化、業務時間短縮及び競争力の強化を目的として、2022年4月より本格的にBIM研究開発に着手しました。
・ 2022年4月よりBIMを利用するための環境整備に着手し、BIMソフトライセンス数の増強や個人パソコンからリモートデスクトップによりBIMソフトを利用出来るなどの環境整備を行いました。
・ 2022年6月よりBIMコンサルティング及びBIM操作トレーニングプログラムの受講を開始し、BIMの効果的な利用方法などを学んでおります。
・ 2024年度以降は、設計施工一貫利用BIMを目指すとともに、設計プロセスの効率化、ビジュアルプレゼンテーション力の強化、構造計算書と図面・数量の整合確認など、より具体的で実践的な取り組みを開始する予定であります。
・ BIMモデルを作成することで、精度の高い土量算出を行い、無駄のない残土の転用計画を実現しました。面積が広く高低差のある敷地の場合は、外構勾配を考慮した土量の把握が工事計画・コストに大きく影響するため、今後も関係部署間で連携を図りBIM運用を進めてまいります。
f 現場作業省力化関連
「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」に関連し、現場作業の省力化を推進する目的で、レンタル会社と協力して省力化につながる各種作業機械や計測機器を試験導入し、その評価とフィードバックを行うことで、機器の改善を図る研究を行っております。
g その他
その他の主な研究開発テーマを下記に示します。
・ニューマチックケーソン工法の安全性・施工性向上技術の開発
・CO2削減(カーボンニュートラル対策)技術の実証研究
h 特許に関する事項
当事業年度の特許登録は米国におけるSmart&Disc-joint関連を含めて3件、特許出願は1件であります。
当事業年度における建築事業及び土木事業の研究開発費の金額は、135百万円であります。