第2 【事業の状況】

(注) 「第2 事業の状況」における各事項の記載金額については、消費税等抜きの金額で表示しております。

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、建設を通じて社会における相互補完の一翼を担うことを経営理念とし、お客様、お取引先、株主様をはじめとするステークホルダーの皆様はもちろん、地域社会を含めた全ての人々に対し、グループ会社がそれぞれの事業を通じて高い評価を得ることを目指し、もってグループトータルの企業価値の増大を計ることを経営目標に掲げております。

この経営目標達成のため、よりビッグでよりハイプロフィットなグループを目指しておりますが、不正や不当な手段による社益の追求は勿論のこと、浮利を追うなどの利益第一主義に陥ってはならないことを経営の基本姿勢としております。

(2) 経営環境

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともない、経済活動および海外との人々の往来が著しく抑制されたことにより、極めて厳しい状況となりました。第2四半期の半ばから段階的に再開された経済活動や経済対策によって、徐々に持ち直しの動きが見られたものの、感染の再拡大にともない個人消費が弱含みに転じるなど、依然として経済や景気の先行きは不透明となっております。

また、当連結会計年度に発令された2度の緊急事態宣言は、新常態(ニューノーマル)という言葉とともに人々の暮らしや働き方に変化を迫りました。自由が制限され第4波の勢いが増すなかでは「自粛疲れ」も見受けられます。2021年度は、新型コロナウイルスに対するワクチン接種の本格化により、感染者の減少が期待される反面、変異株の拡散による事態の長期化が懸念される等先行き不透明な状況が続くと思われます。このようななか、国内建設市場においては、公共事業を中心とした政府建設投資は前年度並みを維持すると見込まれますが、民間の建設投資は投資マインドの低下から大幅に減少することが予想されます。また、働き方改革への対応や、建設業界の担い手不足にともなう労務費の上昇なども課題となっております。

(3) 経営戦略および優先的に対処すべき事業上および財務上の課題等

当社グループは2019年5月に新中期経営計画「Create! 2022」を策定いたしました。本中期経営計画においては、1)高成長、高収益企業を創る 2)グループの新事業領域を創る 3)多様性尊重、コンプライアンス重視の企業文化の創出 4)シナジー効果の創出 5)経済・社会や環境への価値創造 の5つの「創る」を柱とし、グループの中核企業である髙松建設㈱をメインエンジンに据え、「高成長」を継続し、グループを挙げ高収益企業を創ることを目指します。この実現に向け、「多様性尊重・コンプライアンス重視の企業文化の創出」を続けながらも、グループ内での「シナジー効果の創出」を最大化し、M&Aを中心とした「グループの新規事業を創る」こととしております。こうした活動を通じ、「経済・社会や環境への価値創造」を継続し、中期経営計画最終年度の2022年3月期に売上高3,000億円、営業利益180億円の実現を目指す計画です。

このようななか、2021年2月に大阪府の高槻・北摂地域を地盤とする大昭工業㈱およびその子会社のTSKハウジング㈱を髙松建設㈱が子会社化いたしました。髙松建設㈱および大昭工業㈱のそれぞれが保有する営業情報を活用して、互いに得意とする規模の建築工事受注の増加を目指すとともに、シナジー効果の発揮により当社グループ全体での企業価値の向上を目指してまいります。

また、みらい建設工業㈱を分社化した新潟みらい建設㈱は、新潟県の魚沼地域を地盤として堅調な業績を上げてきましたが、同社の今後の発展のためにも新潟県内に強い基盤をもつ会社への譲渡が最善であると考え、本年3月に本間道路㈱に全株式を譲渡いたしました。

引き続き、激変する経営環境の変化に柔軟に対応すべく、髙松建設グループでは非マンション領域における競争力強化に加え、新たにデベロッパー事業への参入なども検討してまいります。また、木造戸建住宅事業への参入を目的として2019年4月に設立したタカマツハウスは、十分な商品在庫の確保が完了して立ち上げ期を終えたため、新たな中核会社となることを目指して2021年度より本格始動いたします。

青木あすなろ建設グループにおいては、国土強靭化に代表されるインフラ修繕工事などへの対応として、耐震ダンパーなど技術提案力の向上をはかるとともに、施工BIM・CIM等のICT化による生産性の向上の推進、ケミカル・医療プラント等新規分野での受注、カーボンニュートラル事業の開拓などをおこなってまいります。

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループでは、こうした事業を取り巻くリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジを実施することにより企業活動への影響について最小限にとどめるべく対応をはかっております。

 

 <特に重要なリスク>

(1) 受注環境の変化によるリスク

2020年初に顕在化した新型コロナウイルスの感染拡大防止にともなう各種の自粛要請等の影響により、国内の民間設備投資や住宅投資の減少が想定されます。感染の完全な終息の目途はたっておらず、感染拡大により営業活動を縮小せざるを得ない状況が生じた場合には、主に民間工事受注の減少要因となり、当社グループの業績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、財政健全化等を目的として公共投資の削減がおこなわれた場合も、当社グループの業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 自然災害(感染症等を含む)によるリスク

地震、台風等の自然災害の発生や火災等の人災により、施工中の物件に被害が生じた場合、本社、本店、営業所等の営業拠点に被害が生じた場合、さらには大規模災害や復興に長時間を要する場合には資材価格の高騰など事業環境の変化により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

また、新型コロナウイルス等の感染症の拡大により、営業活動の自粛や資材の調達の遅れ、さらには工事現場の一時停止など、受注や施工に何らかの制限が生じた場合には、当社グループの業績や財政状況に影響を及ぼす可能性がありますが、その影響額を合理的に見積ることは困難であります。

なお、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大への対応として、グループ各社に対策室を設け、新型コロナウイルス感染症に関する状況を的確に把握し、徹底した感染対策とテレワークの推進などにより、事業活動への影響を最小限に抑えるよう対策を講じております。

(3) コンプライアンスに関するリスク

当社グループが属する建設業界は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法、さらには環境、労務関連の法令など様々な法的規制を受けており、万が一違法な行為があった場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、コンプライアンスに関するリスクに対応するため、グループ憲章、経営理念、企業理念のもと、社員の考え方や意識の方向性を明確にするものとして「行動指針」を定め、コンプライアンスの重要性を浸透させるとともに、eラーニングの活用や研修等を通じ、役員・社員への啓蒙活動につとめております。

(4) 資産の保有リスク

当社グループでは2021年3月期において、国内および海外に販売用不動産を116億円、投資有価証券を65億円保有しており、これらについて予想を上回る市場価格の下落や為替相場の変動等が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクを低減するため、一定額の資産等を取得する際は、取締役会にてその必要性や見通しを十分に協議のうえ、取得を決定することとしております。

(5) 施工上の不具合や重大な事故によるリスク

設計施工などで重大な瑕疵があった場合や、人身・施工物などに重大な事故が生じた場合には、その改修や損害賠償および信用失墜により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに備えるため、グループ各社において安全衛生に関する教育を定期的におこない、また、内部監査において業務手順の遵守状況を確認するなど問題の早期発見と改善につとめております。

 <重要なリスク>

(1) 建設資材価格・労務単価の上昇および人手不足のリスク

建設資材価格や労務単価などが請負契約締結後に大幅に上昇し、競争激化によりそれを請負金額に反映することが困難な場合、および建設技術者・技能労働者の確保が困難な場合は利益率の低下などを招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新規事業(海外、M&A)に関するリスク

海外での事業展開の中で、進出国での政治・経済状況、為替や法的規制等に著しい変化が起こった場合や、不動産市況等の変化等が起こった場合には、工事進捗や利益確保に影響を及ぼす恐れがあります。また、新型コロナウイルスの感染拡大が進出国で発生した場合には、一時的な事業停止など事業に影響を及ぼす可能性があります。また、M&Aで取得した企業との融合によるシナジー効果が実現されない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 税制改正および金融環境の変化によるリスク

当社グループが優位性を発揮してきた個人資産家に対するマンション建築事業について、相続税・資産課税強化や金融機関の融資スタンスの変化および金利上昇等の金融情勢に変化があった場合、ならびにマンションの空室率等に変化があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営成績の分析

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大にともない、経済活動および海外との人々の往来が著しく抑制されたことにより、極めて厳しい状況となりました。第2四半期の半ばから段階的に再開された経済活動や経済対策によって、徐々に持ち直しの動きが見られたものの、感染の再拡大にともない個人消費が弱含みに転じるなど、依然として経済や景気の先行きは不透明となっております。

当社グループにおきましては、特に受注面で大きな影響を受けることとなり、個人のお客様を中心に対面での営業を自粛したことで、第1四半期から第2四半期にかけて受注高が大きく減少いたしました。第2四半期の半ばからはWebを利用した面談も軌道に乗り始め、対面での営業も徐々に戻ったため大きく挽回いたしましたが、第1四半期の出遅れを取り戻すまでには至りませんでした。また、法人のお客様につきましては、一部の発注において、景気の先行きの不透明感による保留や、在宅勤務の導入にともなう後ろ倒しが発生しました。これらにより、当連結会計年度の受注にかかる売上高は減少しましたが、施工面における新型コロナウイルス感染症の影響は少なく、手持ち工事については順調に進捗しております。

この結果、当連結会計年度の受注高は256,453百万円(前期比13.6%減)と大幅な減少となったものの、売上高は283,080百万円(前期比0.3%増)となり、9期連続増収、7期連続過去最高となりました。利益につきましては、建築工事において低採算案件が発生したことにより、営業利益は12,198百万円(前期比17.1%減)、経常利益は12,112百万円(前期比15.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べて14.2%減の7,467百万円となりました。

 

セグメント別の業績は、次のとおりです。

なお、セグメント利益は、連結損益計算書の営業利益と調整をおこなっております。

(建築事業

受注高は新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、対面での営業活動を自粛した影響等により、前期比20.3%減の131,290百万円となりました。完成工事高は手持ち工事が順調に進捗した一方、当期の売上に寄与する受注高が減少した結果、前期比6.9%減の140,537百万円となりました。セグメント利益は大型の低採算工事があったことにより、前期比26.7%減の6,035百万円となりました。

(土木事業)

受注高は官庁工事の発注が後ろ倒しになった影響により、前期比10.0%減の94,445百万円となりました。一方、完成工事高は手持ち工事が順調に進捗した結果、前期比7.2%増の111,826百万円となりました。セグメント利益は前年度の好採算工事の反動により、前期比4.4%減の8,166百万円となりました。

(不動産事業)

不動産の売買および賃貸等による売上高は賃貸物件の増加および木造戸建て住宅の販売開始等により前期比13.5%増の30,717百万円となりました。セグメント利益は人件費の増加により、前期比1.8%減の1,886百万円となりました。

 

 

当連結会計年度における受注および売上の実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

受注実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

前期比(%)




建築事業

(百万円)

131,290

△20.3

土木事業

(百万円)

94,445

△10.0

  計

(百万円)

225,736

△16.3

不動産事業

(百万円)

30,717

13.5

  計

(百万円)

256,453

△13.6

 

 

売上実績

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

前期比(%)




建築事業

(百万円)

140,537

△6.9

土木事業

(百万円)

111,826

7.2

  計

(百万円)

252,363

△1.2

不動産事業

(百万円)

30,717

13.5

  計

(百万円)

283,080

0.3

 

(注) 当社グループ(当社および連結子会社)では生産実績を定義することが困難であるため、「生産の状況」は記載しておりません。

 

なお、提出会社個別の事業の状況につきましては、持株会社であるため、記載を省略しています。

 

(2) 財政状態の分析

(資産の部)

総資産は前連結会計年度末に比べ9,400百万円増加し、220,831百万円となりました。

その主な要因は、売上債権の回収等により受取手形・完成工事未収入金等が3,372百万円減少した反面、たな卸資産の仕入れにより販売用不動産が4,287百万円、当社が建設中の東京事務所ビルの建設および賃貸用不動産の取得により有形固定資産が5,790百万円、保有株式の時価評価益等により投資有価証券が1,950百万円増加したことによるものです。

(負債の部)

負債は前連結会計年度末に比べ3,783百万円増加し、105,075百万円となりました。

その主な要因は、前連結会計年度末に計上した工事未払金の支払い等により工事未払金が6,704百万円、また、未成工事受入金が4,028百万円減少した反面、当社初の起債であります、普通社債およびサステナビリティ・リンク・グリーンボンドの発行により、社債が15,000百万円増加したことによるものです。

(純資産の部)

純資産は、前連結会計年度末に比べ5,617百万円増加し、115,756百万円となりました。

その主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益7,467百万円の計上と配当金の支払2,193百万円により利益剰余金が5,274百万円増加したことによるものです。

以上の結果、純資産の額から非支配株主持分を控除した自己資本の額は115,715百万円となり、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.3ポイント増加し52.4%となりました。

 

 

(3) キャッシュ・フローの分析

当連結会計年度末の連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末より894百万円増加の72,625百万円となりました。

各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により資金は4,116百万円の減少(前連結会計年度は21,791百万円の増加)となりました。これは、税金等調整前当期純利益12,028百万円の計上等の収入があった一方、たな卸資産の増加5,385百万円、仕入債務の減少7,259百万円、法人税等の支払6,029百万円等の支出があったことによるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により資金は7,298百万円の減少(前連結会計年度は11,988百万円の減少)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出3,450百万円、投資有価証券の取得による支出1,551百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出2,286百万円等があったことによるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により資金は12,336百万円の増加(前連結会計年度は65百万円の減少)となりました。これは、社債の発行による収入15,000百万円があった一方、配当金の支払額2,191百万円等の支出があったことによるものです。

 

(4) 当社グループの資本の財源および資金の流動性

当社グループの主な資金需要は、建設工事の施工にともなう材料費・外注費等の営業費用であり、これらの支出は回収した工事代金によって賄っております。また、事業用固定資産の取得についてもグループ内の資金を効率的に運用するとともに、金融機関からの借入、および社債の発行により調達を実施する方針としております。当連結会計年度においては、当社初の起債となります普通社債(第1回債)の発行により50億円、また現在、当社が建設中の環境性能に優れた東京事務所ビル(TCGビル)の建築資金を調達するため、サステナビリティ・リンク・ボンドとグリーン・ボンドを組み合わせた、国内初となるサステナビリティ・リンク・グリーンボンド(第2回債)の発行により100億円の計150億円を調達いたしました。

当社グループは永続的な発展に向けた経営基盤の強化拡充と着実な株主還元の最適なバランスをはかる規律ある資本政策を遂行するため、財務の安全性を重視しつつ、成長に必要な資金については手元流動性を確保しながら、金融機関を中心とした借入および社債の発行等により、資金調達を実施してまいります。

なお、新型コロナウイルス感染症の拡大が継続し、営業活動の自粛、工事施工の中断等が生じた場合、資金の流動性に影響を及ぼす可能性がありますが、当社グループでは当座貸越契約をおこなうなど、手元資金を確保する施策を講じております。また、コミットメント型シンジケートローンには財務制限条項が付されておりますが、これに抵触する可能性は低いと考えております。

 

(5) 重要な会計方針および見積りおよび当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準にもとづき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定にもとづく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、当社の技術研究所(髙松コンストラクショングループ技術研究所)内に、中核子会社の髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱のそれぞれ研究開発部門があり、各社が得意とする技術分野において、研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は523百万円であります。なお、研究開発費につきましては各セグメントに配分しておりません。

 

(1) 髙松建設㈱

① TAS(Takamatsu Aoki-asunaro Support)工法の開発

TAS工法とは、コンクリート打設後の型枠支保工のうち一部のサポートを残し、数日で全てを解体できる工法であり、青木あすなろ建設㈱と共同開発しました。FEM解析といわれる高度な構造計算をおこなうことで、最低限必要な支保工を算出し、サポート本数の大幅な削減を実現、次工程への早期着手や型枠材の転用等による工期の短縮、材料等のコスト削減をはかりました。

当社では2016年より、数多くの新築物件にて本工法を採用し、施工効率の改善に取り組んでおります。

② 外壁診断調査システムの開発

建築基準法では「タイル張り外壁、モルタル塗り外壁」の定期診断が定められており、建築物の所有者、管理者または占有者は経年劣化等による外壁剥離の診断が義務付けられております。しかし、外壁の診断は足場やゴンドラ等の高所作業で危険を伴うことが多く、仮設や安全対策が大がかりとなり診断費用は割高になります。

そのため、外壁を走行できるロボットを用い、外壁の打診診断や目視調査が実施できるシステムを非破壊検査㈱と共同開発し、2019年度より、実際の建物で運用を開始しており、定期診断の効率化に貢献しております。

③ ロングスパン建物の最適設計手法の開発

流通施設や工場等の広い無柱空間が必要とされる建築物だけでなく、近年、事務所ビルや診療施設においても開放的な間取りの要求される事例が増加しており、鉄骨造による柱スパンの大きい空間が求められております。これらの設計においては、建物毎に最適な梁の断面、柱から梁の接合部の形状等、また製造しやすく施工性の優れた設計が必要となります。FEM解析であれば一般の構造計算プログラムではできない、部材の変形能力や変形状態を再現し解析することができるため、応力状態に応じた最適な設計が可能となります。

解析結果を基にロングスパン建物の構造設計指針を策定し、柱スパンの大きい倉庫・工場・事務所ビルや診療施設等の建築物の設計に活用していきます。

④ サイホン排水システムの開発

サイホン排水システムとは、従来の重力排水システムと異なり、排水管内を満流にし、その排水の落差(サイホン作用)を活用する小口径で無勾配の排水管設置が可能となる排水システムです。キッチン等の水回り設備の自由な配置が可能となり、将来の改装時も既存の設備配置にとらわれない大幅な間取り変更が可能となります。また、強力なサイホン作用による満流で高速の排水は自浄作用もあり、排水管内の汚れが付きにくくメンテナンス性にも優れた排水システムです。

キッチン系統については、昨年度より、実際の計画賃貸マンションで設備設計に取込み、施工を実施し検証を進めております。さらに、洗面・洗濯・ユニットバス等のサニタリ系統も加えて検証を進めていきます。

⑤ 配筋検査システムの開発 ― 他社ゼネコンとの共同開発

建築の躯体工事は、近年、熟練工の減少や品質管理の厳格化から、ICT技術活用による省人化、生産性向上が急務となっております。そこで、AI(人工知能)および画像解析を活用した配筋検査システムを開発し、撮影された配筋の径と本数、ピッチ等の算出、三次元的に配筋形状の自動計測、図面データとの照合、配筋検査帳票への自動入力を可能とし、配筋検査の半自動化をはかります。

ICT技術の活用が課題となるため、他社ゼネコンと共同で試行、改良を繰り返しながら開発を進めており、本年度より試作のテスト運用を開始し、順次、本格運用を目指しております。

⑥ 流動化コンクリートによる施工品質向上技術の開発

鉄筋コンクリート造建物においては、近年、建物の形状の複雑化や鉄筋量の増加など、コンクリートを密実に充填することが難しくなっております。こうした課題を解決するため、流動化コンクリートの活用に向けた検討を進めております。流動化コンクリートとは、施工現場においてアジテータ車内のコンクリートに流動化剤を添加し、コンクリートの流動性を高め、施工性および品質の向上をはかるものです。

昨年度は、流動化コンクリートの実大施工実験を実施し、工事施工性と施工品質を確認した上で、実験で得られた知見を基に流動化コンクリートの施工マニュアルを整備しました。さらに検証を進め、流動化コンクリートの実用化を拡大していきます。

 

 

(2) 青木あすなろ建設㈱

① 既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究

2013年6月に首都高速道路㈱が公募した共同研究テーマ「既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究」に採択され、摩擦ダンパーを既設橋梁の耐震性向上に応用する研究を実施しています。その成果によりこれまで1000kN摩擦ダンパー4基および650kN摩擦ダンパー2基が首都高速道路11号台場線において設置され、初めて実工事での採用に至りました。来期は首都高速道路1号上野線において1200kN摩擦ダンパー24基、800kN摩擦ダンパー2基が採用される予定です。また、橋軸方向の地震動の影響を低減し、橋軸直角方向の地震動に対してのみ可動する新たなメカニズムの開発に取り組み、小型の振動台上の動的載荷実験によって、適切に可動する条件について検討しました。今後、大型の振動台を用いたより実橋梁に近い条件での動的載荷実験を実施し、実際の地震動に対して開発したメカニズムが適正に可動することを検証する予定です。

② 拡幅トンネル技術の研究

国立研究開発法人土木研究所との「トンネルの更新技術に関する共同研究」において、施工性がよく経済的に既設トンネルの断面を拡大する工法を研究しております。今期は、施工中にトンネル内を走行する一般車両を防護するプロテクタを改良して設置撤去時の施工性向上をはかり、関連する特許を2件出願しました。

③ 制震ブレースを用いた耐震補強工法

日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法は、高性能・居ながら(居住しながら)補強がおこなえ、短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しております。

今期は実施適用物件に対する振動測定をおこない、補強効果の確認およびデータの蓄積をはかりました。また、新築建物の制震化に摩擦ダンパーを適用するための解析検討をおこないました。施工は今期2件で、累計施工実績は95件です。

④ 折返しブレースを用いた耐震補強工法

折返しブレースは、断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示すので、耐震性に優れた合理的な鉄骨造建物を建設できます。今期は円形鋼管タイプの信頼性向上に向け、短柱芯材の多数回繰り返し載荷実験をおこないました。累計実績は8件です。

⑤ 耐震天井工法(AA-TEC工法)の開発

大地震時の大空間建物の天井被害を軽減するため、耐震天井の開発に取り組んでいます。従来の耐震天井よりも約1.5倍の耐震性能に優れた工法を開発し、2016年10月には建築技術性能証明を取得しました。今期は、天井裏配管の施工性向上に向け、ブレース配置の自由度を拡大する実験などをおこないました。累計施工実績は2件です。

⑥ メンテフリー緑化工法の開発

既存の法面緑化工法では、植生の過剰な生育が望ましくない場所において、草刈り等の定期的な管理作業をおこなう必要があるため、植物の生長する高さを抑制し維持管理費を節減できる緑化工法を開発し、受注機会の拡大をはかりました。