文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、建設を通じて社会における相互補完の一翼を担うことを経営理念とし、お客様、お取引先、株主様をはじめとするステークホルダーの皆様はもちろん、地域社会を含めた全ての人々に対し、グループ会社がそれぞれの事業を通じて高い評価を得ることを目指し、もってグループトータルの企業価値の増大を計ることを経営目標に掲げております。
この経営目標達成のため、よりビッグでよりハイプロフィットなグループを目指しておりますが、不正や不当な手段による社益の追求は勿論のこと、浮利を追うなどの利益第一主義に陥ってはならないことを経営の基本姿勢としております。
当連結会計年度におけるわが国経済は、引き続き新型コロナウイルス感染症の影響下にありましたが、ウィズコロナの生活様式が浸透してきたことにより、経済活動は比較的堅調に推移しました。一方で、サプライチェーンの分断や円安の進行、ウクライナ情勢等に起因する資源価格の高騰が懸念されており、先行きは不透明となっております。
このようななか、国内建設市場においては、公共事業を中心とした政府建設投資は前年度に比べ微減いたしましたが、民間建設投資は企業の設備投資の回復、首都圏における住宅需要の回復をうけ微増、建設投資全体としては前年度に比べ微増いたしました。一方、北米に端を発したいわゆるウッドショックや鉄、セメントなどの資材価格の高騰による建設コストの上昇、働き方改革への対応、建設技能者の担い手不足にともなう労務費の上昇など、利益面では厳しい状況が続きました。
当社グループは2019年5月に中期経営計画「Create! 2022」を策定いたしました。本中期経営計画においては、1) 高成長、高収益企業を創る 2)グループの新規事業領域を創る 3)多様性尊重、コンプライアンス重視の企業文化の創出 4)シナジー効果の創出 5)経済・社会や環境への価値創造の5つの「創る」を柱としました。中期経営計画最終年度の2022年3月期においては、売上高3,000億円、営業利益180億円を目指しておりましたが、新型コロナウイルス感染症の影響等により数値目標は未達となりました。今後の国内経済につきましても、コロナ禍の終息は未だ見通せず、ウクライナ情勢に起因する資源価格の高騰や円安の進行等、景気の不透明感がぬぐえない状況が続いております。
このようななか、当社グループは2023年3月期~2025年3月期を対象とする中期経営計画「共創×2025」を策定いたしました。中期経営計画最終年度の2025年3月期において、売上高3,700億円、営業利益180億円の実現を目指す計画としております。本中期経営計画のもと、建設請負事業を伸ばしつつも、より高い成長が見込まれる川上領域にあたるソリューション提供型事業に進出するとともに、川下領域においてはストックビジネスの強化をはかってまいります。また、グループ第3の柱として木造戸建住宅事業を軌道に乗せるとともに、インフラ維持工事に関する技術力の向上やICT化による生産性向上の推進、建設テック企業への投資や協業にも取り組み、当社グループの成長をはかってまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、こうした事業を取り巻くリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジを実施することにより企業活動への影響について最小限にとどめるべく対応をはかっております。
<特に重要なリスク>
(1) 受注環境の変化によるリスク
2020年初に顕在化した新型コロナウイルスの感染拡大防止にともなう各種の自粛要請等の影響により、国内の民間設備投資や住宅投資の減少が想定されます。感染の完全な終息の目途はたっておらず、感染拡大により営業活動を縮小せざるを得ない状況が生じた場合には、主に民間工事受注の減少要因となり、当社グループの業績および財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、財政健全化等を目的として公共投資の削減がおこなわれた場合も、当社グループの業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 自然災害(感染症等を含む)によるリスク
地震、台風等の自然災害の発生や火災等の人災により、施工中の物件に被害が生じた場合、本社、本店、営業所等の営業拠点に被害が生じた場合、さらには大規模災害や復興に長時間を要する場合には資材価格の高騰など事業環境の変化により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、新型コロナウイルス等の感染症の拡大により、営業活動の自粛や資材の調達の遅れ、さらには工事現場の一時停止など、受注や施工に何らかの制限が生じた場合には、当社グループの業績や財政状況に影響を及ぼす可能性がありますが、その影響額を合理的に見積ることは困難であります。
なお、今般の新型コロナウイルス感染症の拡大への対応として、グループ各社に対策室を設け、新型コロナウイルス感染症に関する状況を的確に把握し、徹底した感染対策とテレワークの推進などにより、事業活動への影響を最小限に抑えるよう対策を講じております。
(3) コンプライアンスに関するリスク
当社グループが属する建設業界は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法、さらには環境、労務関連の法令など様々な法的規制を受けており、万が一違法な行為があった場合には、業績や企業評価に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、コンプライアンスに関するリスクに対応するため、グループ憲章、経営理念、企業理念のもと、社員の考え方や意識の方向性を明確にするものとして「行動指針」を定め、コンプライアンスの重要性を浸透させるとともに、eラーニングの活用や研修等を通じ、役員・社員への啓蒙活動につとめております。
(4) 資産の保有リスク
当社グループでは2022年3月期において、国内および海外に販売用不動産を137億円、投資有価証券を94億円保有しており、これらについて予想を上回る市場価格の下落や為替相場の変動等が生じた場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクを低減するため、一定額の資産等を取得する際は、取締役会にてその必要性や見通しを十分に協議のうえ、取得を決定することとしております。
(5) 施工上の不具合や重大な事故によるリスク
設計施工などで重大な瑕疵があった場合や、人身・施工物などに重大な事故が生じた場合には、その改修や損害賠償および信用失墜により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに備えるため、グループ各社において安全衛生に関する教育を定期的におこない、また、内部監査において業務手順の遵守状況を確認するなど問題の早期発見と改善につとめております。
(6) 建設資材価格・労務単価の上昇および人手不足のリスク
建設資材価格や労務単価などが請負契約締結後に大幅に上昇し、競争激化によりそれを請負金額に反映することが困難な場合、および建設技術者・技能労働者の確保が困難な場合は利益率の低下などを招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクを低減するため、各事業会社を中心に仕入先や発注者との協議、交渉をおこなうなど対応を進めております。
<重要なリスク>
(1) 新規事業(海外、M&A)に関するリスク
海外での事業展開の中で、進出国での政治・経済状況、為替や法的規制等に著しい変化が起こった場合や、不動産市況等の変化等が起こった場合には、工事進捗や利益確保に影響を及ぼす恐れがあります。新型コロナウイルスの感染拡大が進出国で発生した場合には、一時的な事業停止など事業に影響を及ぼす可能性があります。また、M&Aで取得した企業との融合によるシナジー効果が実現されない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 税制改正および金融環境の変化によるリスク
当社グループが優位性を発揮してきた個人資産家に対するマンション建築事業について、相続税・資産課税強化や金融機関の融資スタンスの変化および金利上昇等の金融情勢に変化があった場合、ならびにマンションの空室率等に変化があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績の分析
当連結会計年度の受注高は312,889百万円(前期比22.0%増)となり、コロナ禍からの回復が顕著となったものの、前期の受注高の落込みが響き、売上高は263,907百万円(前期比6.8%減)となりました。利益につきましては、営業利益は11,225百万円(前期比8.0%減)、経常利益は11,490百万円(前期比5.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は前期に比べて9.9%減の6,727百万円となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりです。
なお、セグメント利益は、連結損益計算書の営業利益と調整をおこなっております。
(建築事業)
受注高は166,206百万円(前期比26.6%増)、完成工事高は125,136百万円(前期比11.0%減)となり、セグメント利益は5,011百万円(前期比17.0%減)となりました。
(土木事業)
受注高は104,235百万円(前期比10.4%増)、完成工事高は98,826百万円(前期比11.6%減)となり、セグメント利益は7,297百万円(前期比10.6%減)となりました。
(不動産事業)
不動産の売買および賃貸等による売上高は木造戸建住宅事業の伸張により、39,944百万円(前期比30.0%増)となり、セグメント利益も3,227百万円(前期比71.1%増)と大幅に増加しました。
当連結会計年度における受注および売上の実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
売上実績
(注) 当社グループ(当社および連結子会社)では生産実績を定義することが困難であるため、「生産の状況」は記載しておりません。
なお、提出会社個別の事業の状況につきましては、持株会社であるため、記載を省略しています。
(2) 財政状態の分析
(資産の部)
総資産は、前連結会計年度末に比べ15,887百万円増加し、236,719百万円となりました。
その主な要因は、収益認識基準適用の影響等により、受取手形・完成工事未収入金等が9,000百万円増加、また、木造戸建住宅事業の伸張にともなう仕入れの増加により不動産事業支出金が5,122百万円、販売用不動産が2,060百万円増加、東京事務所ビルの建設にともない、建設仮勘定が4,225百万円増加したことによるものです。
(負債の部)
負債は、前連結会計年度末に比べ10,172百万円増加し、115,247百万円となりました。
その主な要因は、収益認識基準適用の影響等により、未成工事受入金が6,513百万円増加、また、工事未払金が1,631百万円、短期借入金が1,200百万円増加したことによるものです。
(純資産の部)
純資産は、前連結会計年度末に比べ5,715百万円増加し、121,471百万円となりました。
その主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益6,727百万円を計上、剰余金の配当2,193百万円、その他の包括利益累計額が1,183百万円増加したことによるものです。
以上の結果、純資産の額から非支配株主持分を控除した自己資本の額は121,433百万円となり、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ1.1ポイント減少し51.3%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度末の連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末より5,217百万円減少の67,407百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により資金は2,513百万円の増加(前連結会計年度は4,116百万円の減少)となりました。これは、税金等調整前当期純利益11,316百万円の計上、未成工事受入金の増加6,513百万円等の収入があった一方、売上債権の増加9,000百万円、棚卸資産の増加6,101百万円、法人税等の支払額4,883百万円等の支出があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により資金は6,547百万円の減少(前連結会計年度は7,298百万円の減少)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出4,397百万円、投資有価証券の取得による支出2,302百万円等があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により資金は1,179百万円の減少(前連結会計年度は12,336百万円の増加)となりました。これは、短期借入金の純増加1,200百万円があった一方、配当金の支払額2,192百万円等の支出があったことによるものです。
(4) 当社グループの資本の財源および資金の流動性
当社グループの主な資金需要は、建設工事の施工にともなう材料費・外注費等の営業費用であり、これらの支出は回収した工事代金によって賄っております。また、事業用固定資産の取得についてもグループ内の資金を効率的に運用するとともに、金融機関からの借入、および社債の発行により調達を実施する方針としております。前連結会計年度において、当社初の起債となります普通社債(第1回債)の発行により50億円、また、当社が建設中の環境性能に優れた東京事務所ビル(TCGビル)の建築資金を調達するため、サステナビリティ・リンク・ボンドとグリーン・ボンドを組み合わせた、国内初となるサステナビリティ・リンク・グリーンボンド(第2回債)の発行により100億円の計150億円を調達いたしました。
当社グループは永続的な発展に向けた経営基盤の強化拡充と着実な株主還元の最適なバランスをはかる規律ある資本政策を遂行するため、財務の安全性を重視しつつ、成長に必要な資金については手元流動性を確保しながら、金融機関を中心とした借入および社債の発行等により、資金調達を実施してまいります。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大が継続し、営業活動の自粛、工事施工の中断等が生じた場合、資金の流動性に影響を及ぼす可能性がありますが、当社グループでは当座貸越契約をおこなうなど、手元資金を確保する施策を講じております。また、コミットメント型シンジケートローンには財務制限条項が付されておりますが、これに抵触する可能性は低いと考えております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準にもとづき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定にもとづく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社は、グループ全体の技術向上を図るため、髙松コンストラクショングループ技術研究所を設けております。中核子会社の髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱は、当研究所内で、その他の子会社は自社施設で、各社が得意とする技術分野において研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は
(1) 髙松建設㈱
① 流動化コンクリートによる施工品質向上技術の研究開発
近年、建物の形状の複雑化や鉄筋量の増加など、コンクリートを密実に充填することが難しくなっています。2019年に新たにJIS規格化された流動化コンクリートは、施工現場においてコンクリートに流動化剤を添加するものであり、施工性の大幅な向上が期待できます。そこで、髙松建設㈱では、2020~2021年度に流動化コンクリートの実大施工実験を行い、その施工性と品質を検証しました。実験で得られた知見を基に施工マニュアルを整備し、今後、実用化を拡大していきます。
② コンクリートのひび割れ低減対策に関する研究開発
建物の主要な材料であるコンクリートにおいては、様々な要因でひび割れが発生し、美観や耐久性が問題となるケースがあります。多くの検討課題がある中で、特に、マスコンクリートといわれる大断面コンクリートを対象とした研究開発を実施しております。マスコンクリートでは、表面と内部の水和熱による温度差により体積変化に差が生まれ、表面上のひび割れが早期に発生しやすくなります。事前の温度応力解析により温度分布性状を予測できれば、材料・調合の設定変更、打設量の制限などにより、良質なコンクリートが実現できます。髙松建設㈱の実現場において、コンクリート内部温度の実測値と温度応力解析値との比較により、解析の有用性を検証しております。
③ 限界耐力計算に基づく耐震設計高度化研究
髙松建設㈱では、建築基準法で定められる地震力を15%上回る厳しい耐震設計基準を設けています。しかし、10階を超える中高層建物では、配筋が過密化し、杭の設計に苦慮する場合が多くなっています。この問題を解決するために、限界耐力計算の導入を検討しております。限界耐力計算は、従来の保有水平耐力計算と比べて高度で難解な計算方法ですが、10階建て程度以上では保有水平耐力計算よりも合理的な耐震設計が可能であると言われています。限界耐力計算に関する技術ノウハウを蓄積し、地震応答変形に立脚した耐震性能の明確化と配筋設計の適正化を図っていきます。
④ スラブ重量低減技術の開発
設計地震力は建物の重量に比例するため、建物の重量を減らすことができれば、柱・梁をスリム化し、鉄筋量を削減することが可能になります。そこで、スラブの軽量化に着目し、集成材とコンクリートの合成構造によるスラブを開発します。本来コンクリートだけが担う曲げモーメントとせん断力を集成材にも負担をさせることで、コンクリートを減らし、建物重量を削減します。合成構造の細部の検討をすすめ、各種性能(構造・耐火・遮音)試験を実施していきます。
⑤ サイホン排水システムの開発
サイホン排水とは、1つ下の階に排水を落とすことでサイホン力を発生させて、強い水流により排水性能を向上させる技術です。従来の重力式排水システムと異なり、小口径で無勾配の配管システムであるため、水回り設備の自由な配置が可能となります。将来の改装時も既存の設備配置にとらわれない大幅な間取り変更が可能です。満流で高速に排水されるため自浄作用もあり、排水管内の汚れが付きにくくメンテナンス性にも優れた排水システムです。髙松建設㈱の賃貸マンション仕様に適合するシステムの構築、実験検証を進めております。
⑥ 配筋検査システムの開発
近年、熟練工の減少や品質管理の厳格化から、ICT技術活用による省人化、生産性向上が急務となっています。髙松建設㈱では、他社ゼネコンと共同で、AI(人工知能)および画像解析を活用した配筋検査システムを開発しております。撮影された画像より、鉄筋の径と本数、ピッチ等を算出、図面データと照合し、配筋検査の半自動化を図るものです。現在、試作デバイスによるテスト運用段階であり、2022年度中の完成をめざしております。
(2) 青木あすなろ建設㈱
(建築事業)
① 制震ブレースを用いた耐震補強工法
日本大学と共同開発した摩擦ダンパーを用いた既存建物の制震補強工法は、高性能・居ながら(居住しながら)補強がおこなえ、短工期・低コストを特長としており、制震補強工法として、我が国で初めて日本建築防災協会技術評価を取得しております(累計施工実績 97件)。
2022年3月期は、実施済みの適用物件に対する補強効果の確認およびデータの蓄積をはかるとともに、新築建物の制震化に摩擦ダンパーを適用するための繰返し性能確認試験をおこないました。
② 折返しブレースを用いた耐震補強工法
折返しブレースは、断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示すので、耐震性に優れた合理的な鉄骨造建物を建設できます。2022年3月期は、制震部材としての適用性を検討するため、多数回繰り返し実験をおこない、限界性能を確認しました(累計実績 8件)。
③ 耐震天井工法(AA-TEC工法)の開発
大地震時の大空間建物の天井脱落被害を軽減するため、耐震天井の開発に取り組んでおります。従来の耐震天井よりも約1.5倍の耐震性能に優れた工法を開発し、2016年10月には建築技術性能証明を取得しております。2022年3月期は、建物の柱、梁、壁との隙間をなくした天井の性能確認をおこない、建築技術性能証明の取得に向けた審査を開始しました(累計施工実績 2件)。
④ レンズダンパーの設計合理化
レンズダンパーは建物の耐震性を高める制震部材の一つであり、これを広く普及させることを目的とした改良と応用技術の開発に取り組んでおります。使用材料の変更を試行し、限界性能の評価や建物の設計を汎用ソフトで実施するなどの検討をおこなっております。2022年3月期は、レンズダンパーを組み込んだ建物の設計方法をマニュアル化し、関連する特許を1件出願しました。また、第三者機関による構造性能評価書を取得しております。
⑤ 鉄骨梁の横補剛材省略構法の開発
鉄骨造建物の施工合理化およびコストダウンを図るため、鉄骨梁にとりつくスラブによる補剛効果を適切に評価することによって小梁を省略できる構法を開発しております。2022年3月期は既往の研究結果を整理して設計指針を作成し、第三者機関による技術評価取得に向けた審査を開始しました。
(土木事業)
① 既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究
2013年6月より首都高速道路株式会社と、摩擦ダンパーを既設橋梁の耐震性向上に応用する共同研究を実施しています。その成果により、これまで1000kN摩擦ダンパー4基および650kN摩擦ダンパー2基が首都高速道路11号台場線において設置され、初めて実工事での採用に至りました。2023年3月期は首都高速道路1号上野線において1200kN摩擦ダンパー24基、800kN摩擦ダンパー2基が設置される予定です。また、橋軸方向の地震動の直角方向への影響を解消する新たなメカニズムの開発に取り組み、あらゆる支承部への設置を可能にします。2023年3月期は大型振動台を用いた実橋梁に近い条件での動的載荷実験により、実際の地震動に対して開発したメカニズムが適正に可動することを検証する予定です。
② トンネル覆工コンクリートの充填性向上技術の開発
当社開発の「排気排水・注入ホース」を使用した技術により、覆工コンクリートの充填性が良くなり品質が向上します。国土交通省発注の立野ダム仮排水路工事、掛田トンネル工事やニューマチックケーソン基礎等において効果が検証され、当技術をNETIS(新技術情報提供システム)へ登録申請しております。
③ アワビ種苗生産及び陸上養殖の実用化に向けた技術開発
アワビ種苗生産プロセスにおけるエネルギーコスト低減を目指し、玉川大学との共同研究を実施しております。実証試験により「半循環システムによる飼育方法」は、従来の「かけ流しによる飼育方法」に対して使用電気料金を大幅に削減可能という研究結果を得ることができました。2023年3月期以降は、松江市・玉川大学の産官学共同で実用化に向けて展開する予定です。
④ 拡幅トンネル技術の研究
国立研究開発法人土木研究所との「トンネルの更新技術に関する共同研究」において、施工性がよく経済的に既設トンネルの断面を拡大する工法を研究しております。施工中にトンネル内を走行する一般車両を防護するプロテクタを改良し、出願中の関連する特許2件において、国内優先権主張出願をおこないました。
⑤ AI(人工知能)を用いた省力化技術の開発
AIを用いたトンネル施工の省力化技術を開発しております。AIの学習には教師データ(訓練データ)の質と量が重要となるため、施工現場での各種データ蓄積後にデータ間の解析、紐づけをおこないディープラーニング(深層学習)に供する予定です。
(3) みらい建設工業㈱
① 発泡ウレタンによる空港プレストレストコンクリート版下面の空洞充填技術の開発
国土交通省国土技術政策総合研究所との共同研究として、発泡ウレタンによる空港プレストレストコンクリート版下面の空洞充填技術の開発に取り組んでおります。
空港の抱える課題の一つとして、コンクリート舗装版の下に数mmの空洞が生じ航空機の滑走によって目地部から水が噴き出す現象があります。その対策としてコストのかかるコンクリート舗装版の打ち換えや空洞にグラウトを充填する方法がありますが、グラウトが割れて泥化してしまい再度空洞が発生する場合があります。
そのため、空洞に強度が大きく割れにくいウレタン樹脂を充填することで、航空機の荷重が繰返し加わっても空洞ができないようにする技術を開発し、特許を出願しております。
(4) 東興ジオテック㈱
① 高圧噴射撹拌工法の開発
近年、高圧噴射撹拌工法は適用範囲が広がりつつあり、河川水域部や大径化、大深度での適用例が多くなってきております。これらに対応するため、当社の独自工法であるウルトラジェット工法の基本技術をベースにバージョンアップをはかり、受注機会の拡大を目指しております。
河川水域部への対応としては、ゲルタイム(注入材と湧水が触れてから固化するまでの反応時間)を有する硬化材を使用した新たなウルトラジェット工法の実用化を目指しております。また大径化については、同工法の特徴である2方向噴射方式を二重管化し、硬化材+エアーあるいは硬化材+高圧水による工法の改良実験を進めております。
② 新型乾式吹付工法(改良型ニュージャストショット工法)の開発
岩盤接着工法であるニュージャストショット(NJS)工法の受注拡大を目指し、曲げ接着強度や凍結融解などに対する耐久性向上のため、コンクリート補修・補強分野で実績のあるポリマーセメントモルタル技術を取り入れた改良型NJS工法の開発に取り組んでおります。