文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、建設を通じて社会における相互補完の一翼を担うことを経営理念とし、お客様、お取引先様、株主様をはじめとするステークホルダーの皆様はもちろん、地域社会を含めた全ての人々に対し、グループ会社がそれぞれの事業を通じて高い評価を得ることを目指し、もってグループトータルの企業価値の増大をはかることを経営目標に掲げております。
この経営目標達成のため、よりビッグでよりハイプロフィットなグループを目指しておりますが、不正や不当な手段による社益の追求は勿論のこと、浮利を追うなどの利益第一主義に陥ってはならないことを経営の基本姿勢としております。
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用の改善や、名目賃金の増加がみられ、景気は緩やかな回復基調が続いている一方、物価上昇の継続、米国の通商政策等による景気の下振れリスクが高まっており、依然として先行き不透明な状況が続いております。
建設市場においては国土強靭化対策等により公共建設投資は底堅く、民間建設投資においても企業の設備投資意欲が堅調であり、全体として底堅い受注環境を維持しているものの、原材料価格や資機材価格の高騰、労務需給の逼迫等により、利益面では厳しい事業環境が継続しております。
また戸建住宅市場においては、政府の住宅支援策は継続され住宅ローンの変動金利も低水準で維持されている一方、今後の金利上昇や、建設コストの高止まりによる住宅販売価格の高騰、実質賃金の伸び悩みにより、楽観はできない状況となっております。
当社グループは、循環型・持続型社会インフラの創生に貢献するソリューションの提供を掲げる「髙松グループ2030vision」の実現を目指し、2023年3月期から中期経営計画「共創×2025」を実行し、歩みを進めてまいりました。
その結果、売上高は2024年3月期に初めて3,000億円を超え、最終年度である2025年3月期には3,466億円と3期連続の増収となりました。
しかし、資材価格の高騰ならびに慢性的な建設労働者不足による建設コストの高止まり等の影響から、利益については当初計画値を下回り推移することとなりました。
これらの状況を受け、新たに策定した中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)では、前中期経営計画で築いた事業基盤の一層の強化に向けて、各種施策の実行を加速させてまいります。具体的には、収益性の高い事業への適切な経営資源の配分による効率的な経営や、DXやAIの活用による生産性向上を実行してまいります。併せて、グループ内リソースの共有を進め、横断的な連携を強化することで、全社的な成長に努めてまいります。また、外国人採用を始めとする多様な採用活動や、シニア層や女性など多様な人材が活躍できるよう働き方・組織の改革を引き続き推し進めてまいります。
これらの取組みにより、当社グループは、より一層の事業成長を目指し、地域のあらゆる人々の「もの」と「こころ」の幸せにつながる「循環型・持続型社会インフラ」の創生に貢献してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月17日)現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、持続可能性の観点から企業価値を向上させるため、サステナビリティ推進体制を強化しており、当社代表取締役社長がサステナビリティ課題に関する経営判断の最終責任を有しております。
企業を取り巻く環境が大きく変化しているなかで、人的資本に関する重要課題や気候変動をはじめとする環境問題について理解し、事業活動を通じてそれらの課題を解決するための取り組みを推進し、持続可能な社会を実現し企業価値を向上させることを目的として、2023年4月1日付で人財育成推進委員会、女性活躍推進委員会、および気候変動対策推進委員会の3つの委員会を設置しております。
各委員会は、当社代表取締役社長を委員長として、中核会社の社長や専門的知見から適切と認められるメンバーにて構成し、人財育成、女性活躍、気候変動に関する基本方針や重要課題に対する基本計画の策定、活動の実績評価、進捗管理、情報開示に関する事項等の審議をおこないます。また、重要事項は定期的に取締役会に上程・報告し、取締役会が監督・指示をおこないます。取締役会で審議・決定された議案は、各部門に展開され、それぞれの経営計画・事業運営に反映します。

当連結会計年度における各委員会の活動状況は以下のとおりです。
① 人的資本経営への取り組み
当社グループにおける、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針は以下のとおりであります。
当社グループでは、「トップクラスのホワイト企業への挑戦」という方針を推進するべく、優秀な人財の維持・獲得に向けた様々な人財戦略に取り組んできました。社員の個を生かしつつベクトルは揃えて最大の力を出し、積極果敢に変化革新に挑戦することで、それぞれの立場にて、しっかりと付加価値を生み出していける企業基盤の構築および活性化を目指しております。その人財戦略のベースとなる「人財育成」「働き方改革」「ダイバーシティ推進」「エンゲージメント向上」の4つの分野に対して、継続的に施策を講じ、持続的な企業価値向上を目指します。
なお、2025年度より上記4分野に加えて、心身ともに健康で活力ある社員であふれるグループとなるよう「健康経営」にも取り組んでまいります。
a.人財育成
2024年度は、幹部社員のリーダーシップとマネジメント力向上を目的に実施していた360度評価の対象範囲を、グループ全体に拡大しました。社員教育については、階層別教育、専門知識教育、新人教育など事業会社各社と連携し、計画的に取り組んでおります。また、当社とグループ会社の役員層が一堂に会するグループ経営大会にて、危機管理、サステナビリティ等をテーマとしたセミナーも実施しました。さらに、2024年度より経営・人事戦略と連動するシステムとしてタレントマネジメントシステムの導入プロジェクトを開始し、グループ内の適材適所の配置に向けた施策を推進しております。2025年度からの新中期経営計画では、「コミュニケーション活性による信頼関係構築と全体最適マインド」を掲げておりますが、研修機会を通じたグループ横断でのコミュニケーション機会の増大もはかってまいります。
b.働き方改革
社員一人一人の仕事と家庭の両立や良好な健康状態の維持の観点を踏まえ、ノー残業デーの設定等による長時間労働の削減や年次有給休暇取得の促進に向けて、グループ全社で働き方改革に取り組んでいます。その主な施策としては、ICT機器の活用、業務フローの見直し、在宅勤務や時差勤務等の多様な勤務制度の整備、有休取得奨励日の設定があり、社員の働きやすさを実現するため、より効率・効果的な生産性向上ならびに業務改善策に取り組んでいきます。
c.ダイバーシティ推進
当社グループでは、人財の多様性を尊重し、近年では65歳定年制度の導入や同性パートナーを異性婚と同様の扱いとするルール整備、外国籍社員を高度人財として正社員登用する等、協働し合える企業風土の構築に取り組んでいます。外国籍社員の採用に関しましては、青木あすなろ建設では、2022年より海外技術者の採用活動を開始。2024年4月には「海外技術者育成就労支援室」を新設し、採用活動から現場配属前後の面談、資格試験支援や日常生活に関する相談などのサポートをおこない、社員全体に占める外国人社員の比率は徐々に拡大しています。また、特に重要な課題として位置づけている女性活躍推進については、キャリア形成の推進や労働環境の整備という側面から、取り組み強化をはかってきました。2023年度からは、社長を委員長とする女性活躍推進委員会を設置し、女性社員が活躍できる多様性のある会社を目指す施策を推進してきました。具体的には、2023年より継続的にグループ全体で「女性活躍推進フォーラム」を開催しており、2024年は入社3~5年目の20代後半の女性社員106名が参加し、自身のキャリアについて深く考え、グループを横断し意見交換する機会となりました。また女性管理職登用支援として、「次世代女性リーダー育成プログラム」を開始し、グループ会社から選抜された24名の女性社員に対し、キャリア志向の意識醸成を促す研修を5回にわたり開催しました。他にも管理職に向けたアンコンシャスバイアス研修の実施や、実践的なダイバーシティーマネジメント研修を通じ、誰もが働きやすい組織風土づくりに注力しています。
d.エンゲージメント向上
当社グループの成長戦略を実現していくためには、社員が仕事を通して成長ができ、働く喜びを感じられるように、社員と会社の結び付きを強固にしていく必要があります。2020年度から当社グループの中核会社にて開始したエンゲージメントサーベイは、2022年度には当社グループ全社にまで拡大し、2023年度からは毎年度同調査をおこなっています。2024年度からより詳細な分析をおこなうべく調査会社を変更し、期待度と満足度のギャップから課題を特定のうえ、全グループ各社の経営の改善に向けた議論をおこなうところからスタートしました。今後は2024年度の調査結果をもとに、グループ全体での横ぐしのコミュニケーションを推進するためのタウンホールミーティングの開催や、各組織の結果をベースとした対話会の実施促進をおこない、PDCAサイクルをまわしながら、業界トップクラスのエンゲージメント力の強化に取り組んでまいります。
② 気候変動対応への取り組み
当社グループにおける、気候変動への対応に関する方針は以下のとおりであります。
a.シナリオ分析の実施
中長期的なリスクの一つとして「気候変動」を捉え、関連リスクおよび機会を踏まえた戦略と組織のレジリエンスについて検討するため、当社はIEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)による気候変動シナリオ(2℃未満シナリオおよび4℃シナリオ)を参照し、2050年までの長期的な当社への影響を考察し、戸建住宅を含む建築・土木事業を中心にシナリオ分析を実施しました。
なお、シナリオ分析に関する詳細な情報につきましては、当社ウェブサイトをご参照ください。
※2℃未満シナリオ:気温上昇を最低限に抑えるための規制の強化や市場の変化などの対策が取られるシナリオ(IEA-WEO2022-APS、IPCC-AR5(第5次評価報告書)-RCP2.6 等)
※4℃シナリオ:気温上昇の結果、異常気象などの物理的影響が生じるシナリオ(IPCC-AR5(第5次評価報告書)-RCP8.5 等)
b.サステナビリティ・リンク・グリーンボンド(SLGB)の発行
当社グループは、ESG/SDGs経営の一環として2021年3月に国内初の「サステナビリティ・リンク・グリーンボンド(SLGB)」を発行しました。SLGBはSDGsが掲げる17のゴールに対応した「SDGs貢献売上高」を目標値に定め、調達資金を全額グリーンプロジェクトに充当するSDGs債です。SDGs貢献売上高に目標未達の場合には、償還時に投資家へプレミアムを支払います。本件発行は、年限5年・発行額100億円とし、環境性能に優れた事業拠点となる、新東京本社ビル建設を資金調達使途としました。
SDGs貢献売上高について当社グループは、環境に配慮した取り組みとして、再生可能エネルギー関連工事、自然共生素材・工法を用いた法面工事、CASBEE・ZEB等の規格に適合した建築工事、水陸両用ブルドーザを利用した漁場・漁港等の保全工事の建設出来高、社会の豊かさに向けた取り組みとして、建築基準法の耐震性能を15%以上超過する建築物や耐震補強工事の出来高などを対象としています。本件発行における目標額は、2021年度から2024年度までの4年間累計で3,911億円以上と定めておりましたが、再生可能エネルギー関連工事やCASBEE・ZEB等の規格に適合した建築工事の積極的な受注活動により、目標額を超える4,169億円の売上実績となりました。
c.気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同
また、当社グループは、気候変動への対応およびカーボンニュートラルを目指す取り組みとして、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言に賛同し、情報開示をおこなっております。CO2排出量の削減については再生可能エネルギー関連工事やゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)化の設計・施工の推進、水素エネルギー事業への参画、低炭素素材の開発などへの注力とともに、自社における省エネルギー化や再生可能エネルギー活用の促進、重機のハイブリッド化・電動化などを実行し、温室効果ガス排出量の削減に向けた取り組みを推進してまいります。
当社グループでは、サステナビリティに係るリスク・機会の自社への発生可能性と影響度の大きさを勘案しながら、リスクを優先順位づけし、重点リスク要因に注力して取り組んでおります。
リスクの管理プロセスとしては、人財育成推進委員会、女性活躍推進委員会、気候変動対策推進委員会により、リスクに関する分析、対策の立案と推進、進捗管理等を実践するとともに、事業会社および当社の内部監査部門やリスク統括部門、経営管理部門等と連携することで、グループのリスクを統合しています。
また、必要に応じ、取締役会と連携し、全社的なリスクマネジメント体制を構築しています。
当社グループでは、上記「(2) 戦略」において記載した、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針、社内環境整備に関する方針および気候変動への対応に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標および実績は、次のとおりであります。
① 人財育成および社内環境整備に関する指標
(注)1.女性管理職比率の算出にあたっては、グループ各社によって等級が異なるため、各社の等級を10等級に変換したうえで、課長級以上に相当する上位4等級を管理職としています。
2.エンゲージメント調査には、㈱リンクアンドモチベーションの「モチベーションクラウド」を利用しています。総合満足度(平均)は、「会社」「仕事」「上司」「職場」の4項目について7段階評価で調査した結果の平均値です。
② 気候変動への対応に関する指標
(注)1.Scope3排出量は当社の子会社である青木あすなろ建設と、みらい建設工業およびその子会社(青木マリーン、エムズ)で算定しております。上表は各社における基準年度排出量および削減目標を記載しております。今後、当社および他のグループ会社のScope3排出量の算定、開示を進めてまいります。
2.青木あすなろ建設はSBT(Science Based Targets)にもとづく削減目標を設定し、認定を取得しております。また、みらい建設工業も同様に、SBTにもとづく削減目標を設定し、現在SBT認定を申請中です。なお、青木あすなろ建設のScope3排出量削減目標は、カテゴリ1(購入した製品・サービス)およびカテゴリ11(販売した製品の使用)を対象としています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュフローの状況に影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループでは、こうした事業を取り巻くリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジを実施することにより企業活動への影響について最小限にとどめるべく対応をはかっております。
<特に重要なリスク>
(1) 受注環境の変化によるリスク
世界的な原材料および原油等エネルギーの品不足や価格高騰・円安の影響を受けて、建設業においても資材価格が高騰しています。また、米国新政権による関税政策の動向が不透明であり、今後の先行きには不確実性が残っています。資材価格高騰やその他建設コスト上昇による投資意欲減退、ひいては価格上昇による住宅取得意欲減退が生じた場合には、受注の減少要因となり当社グループの業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、財政健全化等を目的として公共投資の削減がおこなわれた場合も、当社グループの業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 建設資材価格・労務単価の上昇のリスク
建設資材価格や労務単価などが請負契約締結後に大幅に上昇し、競争激化によりそれを請負金額に反映することが困難な場合、および建設技術者・技能労働者の確保が困難な場合は利益率の低下などを招き、業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクを低減するため、各事業会社を中心に仕入先や発注者との協議、交渉をおこなうなどの対応を進めております。
(3) 建設技術者・技能労働者の不足リスク
建設業界において、建設技術者や技能労働者の高齢化、新規入職者の減少、離職者の増加などにより、業界全体で技術者が減少する中で、当社グループにおいても建設技術者や技能労働者を十分に確保することが困難な場合は、施工の遅れなどにより業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
建設技術者を確保するため、「トップクラスのホワイト企業への挑戦」という長期ビジョンを掲げ、魅力ある会社づくりをはかっています。あわせて、性別・国籍を問わず優秀な方の採用を推し進めています。
また、技能労働者の確保については、早い段階で協力会社に必要な職方を伝えることや新規業者の開拓をおこなうことで対応を進めております。
(4) 情報セキュリティリスク
サイバー攻撃や、不正なアクセス等により主要なシステムが停止した場合や情報漏洩が発生した場合には、業務停止や信用失墜等により業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクを低減するため、情報セキュリティに関する規程・ルール等を定期的に見直し、効果的な教育を継続的に実施することで、グループ全体のセキュリティレベルの水準の底上げをはかっております。
(5) 労働環境リスク
労働環境の改善が不十分な場合には、過重労働やハラスメント等が発生し、社員の健康被害やエンゲージメントの低下を招く可能性があります。その結果として、行政処分や社員の離職、生産性の低下等が生じ、必要な人員の確保が困難となることで工期の遅延等が発生し、業績や財政状況に影響を与える可能性があります。
これらのリスクを低減するため、業務プロセスの見直しや、グループ全体で社内外に通報窓口の整備を進めているほか、エンゲージメント調査を定期的に実施し、調査結果を活用して労働環境の改善に努めております。
(6) 気候変動リスク
気候変動による物理的な影響として、夏季の平均気温上昇、自然災害の激甚化により工事が遅延した場合には、業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、脱炭素経済への移行の影響として、温室効果ガスの排出規制や、炭素税導入によるコストの増加が発生した場合、業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクを低減するため、再生可能エネルギー関連工事や低炭素素材の開発などへの注力とともに、自社における省エネルギー化や再生可能エネルギー活用の促進をおこなっております。
(7) 資産の保有リスク
当社グループでは2025年3月期において、国内および海外に販売用不動産を226億円、投資有価証券を75億円保有 しており、これらについて予想を上回る市場価格の下落や為替市場の変動等が生じた場合には業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクを低減するため、一定額の資産等を取得する際は、取締役会にてその必要性や見通しを十分に協議のうえ、取得を決定するとともに状況を適切にモニタリングすることとしております。
<重要なリスク>
(1) 自然災害(感染症等を含む)によるリスク
地震、台風などの自然災害の発生や火災等の人災により、施工中の物件に被害が生じた場合、本社、本店、営業所等の営業拠点に被害が生じた場合、さらには大規模災害や復興に長時間を要する場合には資材価格の高騰など事業環境の変化により、業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
なお、新型コロナウイルス感染症は5類に引き下げられたものの、同様のパンデミックが発生し、営業活動の自粛や資材の調達の遅れ、さらには工事現場の一時停止など、受注や施工に何らかの制限が生じた場合には当社グループの業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらの主要なリスクに備えるため、事業継続計画書(BCPマニュアル)を策定しており、BCP防災訓練をおこなうことにより発災時のリスクを最小限に抑制するように努めております。
(2) コンプライアンスに関するリスク
当社グループが属する建設業界は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法、さらには環境・労務関連の法令など様々な法的規制を受けており、万が一違法な行為があった場合には、当社グループの業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、コンプライアンスに関するリスクに対応するため、グループ憲章、経営理念、企業理念のもと、社員の考え方や意識の方向性を明確にするものとして「行動指針」を定め、コンプライアンスの重要性を浸透させるとともに、研修やeラーニングの活用等を通じ役員・社員への啓蒙活動に努めております。
(3) ガバナンスリスク
グループ会社を含め、取締役会・監査役会が監督機関として有効に機能せず、経営者の独断専行や不適切な行為を防止できない場合や、結果として重大な不正行為が発生し、社会から大きな批判を受ける可能性があります。これらのリスクを低減するため、取締役会の評価を毎年おこない、修正を続けることで、取締役会の実効性を確保しています。グループ会社に対しては当社から、当社においては社外取締役を選任することで取締役会における経営者の独断専行を防止し、またグループ会社の重要事項については当社取締役会の決議により決定しております。
また、リスクを適切に認識できておらず、顕在化した場合、会社に重大な影響を及ぼす可能性があるため、リスクを適切に評価する体制の整備や、社員への教育などを進めております。
(4) 事業戦略に関するリスク
当社グループを持続的に成長させるために決定した事業ポートフォリオ戦略がうまく機能せず、新規事業の市場見通しの見誤りによる事業展開の失敗や、M&Aが想定通りの効果を生み出さず、結果として見込んだシナジー効果を発揮できない場合、業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクに対しては、新規事業への取組やM&Aの実行に際しては、多角的な視点からのリスク評価および効果測定を実施することでリスクの最小化に努めております。
また、海外事業は為替や米国不動産市況などを常に確認し、適宜取締役会に業況報告をおこなうこと等でリスクの最小化に努めております。
(5) 施工物等の不具合や重大な事故(労働災害・公衆災害)によるリスク
設計施工などで重大な瑕疵や施工不良があった場合や、人身・施工物などに重大な事故(労働災害・公衆災害)が生じた場合には、その改修や損害賠償および信用失墜により、業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
これらのリスクに備えるため、グループ各社において安全衛生に関する教育を定期的におこない、また事故防止に万全を期すべく様々な部門による品質や労働安全衛生パトロールの実施など、問題の早期発見と改善に努めております。
当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。
(1) 経営成績の分析
当連結会計年度の受注高は391,378百万円(前期比20.1%増)、売上高は346,685百万円(前期比10.9%増)となり、いずれも過去最高となりました。利益につきましては、営業利益は11,460百万円(前期比1.6%減)、経常利益は10,619百万円(前期比6.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は6,452百万円(前期比29.6%減)となりました。
セグメント別の業績は、次のとおりです。
なお、セグメント利益は、連結損益計算書の営業利益と調整をおこなっております。
(建築事業)
受注高は209,298百万円(前期比31.2%増)、完成工事高は163,044百万円(前期比8.4%増)となりましたが、 一部工事における設計変更および資機材価格、労務費の高騰等による建設コストの増加の負担に関する発注者との協議が難航していることにより、セグメント利益は3,778百万円(前期比30.0%減)となりました。
(土木事業)
受注高は99,008百万円(前期比4.0%減)、完成工事高は101,399百万円(前期比1.8%増)となり、セグメント 利益は5,876百万円(前期比14.4%減)となりました。
(不動産事業)
不動産の売買および賃貸等による売上高は木造戸建て住宅事業の伸張により82,241百万円(前期比31.1%増) となり、セグメント利益は7,188百万円(前期比69.0%増)となりました。
当連結会計年度における受注および売上の実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
売上実績
(注) 当社グループ(当社および連結子会社)では生産実績を定義することが困難であるため、「生産の状況」は記載しておりません。
なお、提出会社個別の事業の状況につきましては、持株会社であるため、記載を省略しています。
(2) 財政状態の分析
(資産の部)
総資産は、前連結会計年度末に比べ24,576百万円増加し、269,725百万円となりました。
その主な要因は、現金預金が8,938百万円増加、受取手形・完成工事未収入金等が11,796百万円増加、不動産事業支出金が10,749百万円増加した一方で、販売用不動産が5,342百万円減少したことによるものです。
(負債の部)
負債は、前連結会計年度末に比べ20,889百万円増加し、131,968百万円となりました。
その主な要因は、工事未払金が5,021百万円増加、短期借入金が9,000百万円増加、未成工事受入金が4,314百万円増加したことによるものです。
(純資産の部)
純資産は、前連結会計年度末に比べ3,687百万円増加し、137,756百万円となりました。
その主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上6,452百万円と配当金の支払3,342百万円により利益剰余金が3,110百万円増加したことによるものです。以上の結果、純資産の額から非支配株主持分を控除した自己資本の額は137,705百万円となり、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ3.6ポイント減少し51.1%となりました。
(3) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度末の連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末より8,938百万円増加の35,723百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により資金は5,132百万円の増加(前連結会計年度は10,476百万円の減少)となりました。これは、税金等調整前当期純利益の計上10,585百万円、仕入債務の増加5,021百万円、未成工事受入金の増加4,314百万円等の収入があった一方、売上債権の増加11,796百万円、棚卸資産の増加5,308百万円、法人税等の支払額4,700百万円等の支出があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により資金は1,699百万円の減少(前連結会計年度は2,066百万円の減少)となりました。これは、投資有価証券の売却430百万円の収入があった一方、有形固定資産の取得1,374百万円、投資有価証券の取得508百万円等の支出があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により資金は5,458百万円の増加(前連結会計年度は3,244百万円の増加)となりました。これは、短期借入金の増加9,000百万円の収入があった一方、配当金の支払額3,343百万円等の支出があったことによるものです。
(4) 当社グループの資本の財源および資金の流動性
当社グループの主な資金需要は、建設工事の施工にともなう材料費・外注費等の営業費用であり、これらの支出は回収した工事代金によって賄っております。また、不動産開発事業における開発用地の取得および建築資金等についてもグループ内の資金を効率的に運用するとともに、金融機関からの借入、および社債の発行により調達を実施する方針としております。
当社グループは永続的な発展に向けた経営基盤の強化拡充と着実な株主還元の最適なバランスをはかる規律ある資本政策を遂行するため、財務の安全性を重視しつつ、成長に必要な資金については手元流動性を確保しながら、金融機関を中心とした借入および社債の発行等により、資金調達を実施してまいります。
なお、当社グループは「ソリューション提供型企業への脱皮」ならびに「ストックビジネスの実現」に向けた成長戦略事業投資等の資金需要に対応するため、機動的な資金調達を目的として主要取引銀行とコミットメントライン契約を締結しており、流動性リスクに備えております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準にもとづき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす見積りおよび仮定を用いておりますが、これらの見積りおよび仮定にもとづく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社では、「環境・防災技術、リニューアル、脱炭素、省力化・合理化、情報化施工」をテーマにし、「社会のニーズをふまえ、営業戦略に密着した技術の開発」に主眼をおき、髙松コンストラクショングループ技術研究所を中心に建築事業および土木事業に係る研究開発活動に取り組んでおります。髙松建設㈱および青木あすなろ建設㈱は当研究所内で、その他の子会社は自社施設で、各社が得意とする技術分野において研究開発活動をおこなっております。その主なものは次のとおりであり、当連結会計年度における研究開発費の総額は
(1) 髙松建設㈱
① CFT造施工技術に関する調査研究
コンクリート充填鋼管構造(CFT造)は、他の構造と比較して強度と剛性に優れ、工期の短縮や省資源などの利点もある一方、施工難易度が高く、鋼管内部に隙間なくコンクリートを充填するためには高度な技術が必要です。髙松建設㈱では、各種試験や実大施工実験を実施し、コンクリートの品質管理方法や圧入・充填状況の管理・確認方法を調査・習得しています。また、(一社)新都市ハウジング協会が定める施工技術ランクを取得しています。
② CLT-RC合成床スラブの開発
設計地震力は建物の重量に比例するため、建物の重量を減らすことで柱や梁をスリム化し、鉄筋量を削減することが可能です。髙松建設㈱では、床スラブの軽量化に着目し、CLT(直交集成材)とRC(鉄筋コンクリート)の合成構造によるスラブを開発しています。RCが本来担う曲げモーメントとせん断力をCLTにも負担させることで、比重の大きいRCの使用量を減らし、建物全体の重量を削減します。合成構造の詳細を決定し、第三者評価機関による認定取得に向けて、構造・耐火・遮音に関する各種性能試験を実施しています。
③ ローコストZEB,ZEH-Mの開発
地球温暖化や資源エネルギー問題が深刻化する中、環境配慮型の建物としてZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)やZEH-M(ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)が注目されています。しかし、初期費用の増大や設計上の制約から、ZEBやZEH-Mの普及は進んでいないのが現状です。髙松建設㈱では、ZEBやZEH-Mの普及促進に向けて、外壁・窓・床・屋根などの外皮の断熱性能の向上や、エアコン・給湯器・換気システムなどの設備の高効率化など、省エネルギー技術の体系的な整備と、当社独自の仕様策定に取り組んでいます。あわせて、さらなる低コストでの実現を目的として、要素技術の開発にも注力しています。
④ 木造を活用した中層建物の開発
地球環境問題への対応と持続可能な社会の実現に向けて、木材の活用が重要な選択肢となっています。木材は耐火性やメンテナンス面で課題を抱える一方で、コンクリートと比べて格段に軽量であり、建設コストの削減にも寄与する可能性があります。髙松建設㈱では、独自の木造活用モデルの構築を目指し、大断面集成材を用いた純木造の2方向ラーメン構造に関する研究開発を進めています。この構造の実現に向けては、柱・梁の接合構法にGIR接合(Glued-In Rod接合)を適用し、その構造性能の妥当性を検証するため、実物大試験体を用いた加力実験を実施しています。これにより、高耐力・高剛性を有する接合構法の確立をはかり、中層木造建物における構造的信頼性の向上を目指しています。
⑤ 新型免震構造の実用化研究
大地震に対する安心感をもたらすことができる免震構造のニーズが高まっています。髙松建設㈱では、東京都市大学と共同開発した高減衰積層ゴム支承の実用化に取り組んでいます。従来の免震構造用積層ゴム支承は、建物の規模や設計条件に応じて一品生産されることが一般的でしたが、新たに開発した積層ゴム支承は、支承の形状を大型化するのではなく、同一仕様の支承を複数配置することで対応する設計方式を採用します。このアプローチにより、「積層ゴムの製造と品質管理」と「構造設計と施工管理」の二つのプロセスを分離することが可能であり、免震部材の大量生産と品質管理の合理化が期待できます。この新しい積層ゴム支承を用いた免震構造を「新型免震構造」と呼び、トータルコストの低減をはかりつつ、実用性の高い免震構造の普及に向けて取り組んでいます。
⑥ コンクリートの品質向上技術に関する研究開発
猛暑日や酷暑日が増加している昨今、気温が高く日射も厳しい施工現場では、コンクリートの打設時における品質確保が一層困難になっています。特に、スランプの低下は施工性の悪化を招き、じゃんか(豆板)やコールドジョイントの発生といった打ち込み不良のリスクを高める要因となっています。これらの課題に対処するため、髙松建設㈱では、JIS規格に適合した「あと添加型化学混和剤」を活用する施工技術の導入を進めています。具体的には、施工現場に到着したアジテータ車内のコンクリートに化学混和剤を追加投入することで、スランプの低下を抑制し、施工性の確保および品質の安定化をはかるものです。性能と品質に関する裏付けデータの整備を進めながら、本方策の実運用を着実に推進するとともに、より効率的で実効性の高い酷暑対策技術の開発に取り組んでいます。
⑦ 山留め工法の選定基準に関する研究開発
山留めは、掘削による地盤の崩壊や隣接構造物の沈下・傾斜を防ぐため、安全確保に不可欠な技術です。一方で、鋼材の使用量が多く、コスト面での課題も抱えています。そのため、地盤条件に応じたコストと工期の両面で効率的な工法の整備が求められています。山留工法には多様な種類があり、敷地や施工条件に応じた適切な選定が必要ですが、実際には必ずしも有効な工法が採用されていないのが現状です。代表的な工法には親杭横矢板やシートパイルがありますが、その他にも多くの選択肢が存在します。そこで、各工法の簡易な準備計算法を整備し、実用的な工法選定基準の策定を目指します。これにより、安全性と経済性を両立した山留計画の実現をはかります。
(2) 青木あすなろ建設㈱
(建築事業)
① 折返し機構を用いたブレース材および制震部材の開発
折返し機構は、断面の異なる3本の鋼材を一筆書きの要領で折り返して接合させた形状を有し、優れた変形性能を示すため、耐震性に優れた合理的な鉄骨造建物を建設できます。2025年3月期は、ブレース材の疲労特性を確認する追加実験をおこない、信頼性向上をはかりました(累計施工実績10件)。また、折返し機構を応用した制震部材(座屈拘束ブレース)の開発に取り組み、実大試験体を用いた性能確認実験をおこないました。2026年3月期は、制震部材の技術資料を作成し、技術評価を取得する予定です。
② 格子固定天井の吊りボルトスパン拡大に関する開発
音楽ホールなどに用いられる壁面との隙間を設けない天井として、格子固定天井を開発しました。格子固定天井は、一般的な隙間なし天井で用いる重量鉄骨を不要とし、軽量角型鋼管や吊りボルトで構成されるため、既存天井の耐震補強としても有効です。2025年3月期は、吊りボルトスパンおよび吊り長さを拡大することで、コスト削減および施工性の向上に取り組みました。また、技術評価取得に向けた強制変位実験、部材試験をおこない、技術資料を作成し、技術評価の審査申請を実施しました。
③ CELBIC(適用拡大・再生骨材)に関する開発
二酸化炭素排出量を削減するための環境配慮型コンクリートの開発に取り組み、2021年に建設材料技術性能証明を取得しております。2025年3月期は、適用範囲の拡大および再生骨材を用いたC種クラスの実用化に向けた各種実験を実施し、技術資料を作成しました。
④ 部分高強度鉄筋
基礎梁端部の過密配筋の緩和およびコスト削減(鉄筋量削減、部材断面縮減、根入れ深さ低減)をはかるため、部分高強度鉄筋を用いた外付け新定着工法の開発に取り組んでおります。2025年3月期は、次年度の新規・発展に向けた各種課題を精査・検討(調査、試設計等)と共同特許出願をおこないました。2026年3月期は性能証明取得に向けた要素実験の実施および接合部実験に向けた調査検討を実施する予定です。
(土木事業)
① 既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究
2013年より、首都高速道路グループと、摩擦ダンパーを既設橋梁の耐震性向上に応用する共同研究を実施しております。その成果により、これまで首都高速道路11号台場線(2020年、摩擦ダンパー6基)と首都高速道路1号上野線(2022年、摩擦ダンパー26基)の2件の耐震補強に摩擦ダンパーが採用され、設置工事が完了しております。2025年3月期は、摩擦ダンパー(両端ジョイント型)の現業支援の強化をはかるため、氷点下における性能確認試験を実施し、温度依存性の小さい優れた性能を有することを確認し、現在は試験結果報告書を作成しております。2026年3月期は、販売拡大に向けた開発に焦点を当て、営業部門との連携をはかると共に、共同研究(名古屋工業大学、国立研究開発法人土木研究所等)を通じて適用拡大に資する実験・検討を実施する予定です。
② カーボンプール(CP)コンクリートの開発
セメント焼成工程などで発生する二酸化炭素(CO2)を、コンクリート由来の産業廃棄物に固定化させるという「地域内循環の構築」、さらに新たな技術を用いて引渡しまでにCO2固定量を最大化する「カーボンプール(CP)コンクリートの開発」に取り組んでおります。これは、当社を含む企業・大学・国立研究開発法人がコンソーシアムを構成し応募したNEDO(※)、グリーンイノベーション基金事業「CO2を用いたコンクリート等製造技術開発プロジェクト」に採択されたものです。事業期間は、2021年度~2030年度の10年間となっております。
(※)NEDOとは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の略称です。
③ 盛土の締固めの新しい管理方法の開発
建設発生土など複合的な土質特性を持つ材料を用いた盛土の締固め管理において、複合的な土質をいかに適切に管理するかという課題を解決し、その適正化をはかるため、電気的性質を利用した締固め管理手法を開発しました。これは、盛土の比抵抗値を計測し、計測した比抵抗値等から盛土の乾燥密度を算出するもので、測定手段としてハンマードリルなどで貫入可能な小型・軽量な計測器、スウェーデン式サウンディング試験用の貫入装置を転用する計測器などを開発しました。2026年3月期は、現場実装を早期にはかるべくこれらの測定精度の更なる向上をはかる予定です。
④ クリップ型ばねを応用した技術の開発
2017年より、注入方式の接着系あと施工アンカー工法におけるアンカー筋の設置補助具として「あと施工アンカー用クリップ型ばね(製品名:アンカー留太郎)」を開発・実用化しております。アンカー留太郎の適用により、当該工法の施工品質と施工効率が向上します。2025年3月期は、アンカー留太郎の応用技術開発および普及促進に向けた課題を整理しました。2026年3月期は、引き続きアンカー留太郎の普及促進をはかりながら、応用技術の市場化および技術の深度化をはかります。
⑤ AIをいた省力化技術の開発
2024年3月期に開発したAIを用いたトンネルの余掘り低減技術の高度化をはかります。施工条件と発破による掘削形状の相関にディープラーニングの一つの手法であるCNN(※)を用いることで、より精度の高いAIモデルの開発を目指しています。
(※)Convolutional Neural Network(畳み込みニューラルネットワーク)
(3) みらい建設工業㈱
① 破砕瓦の有効利用技術の開発
瓦は、古来より民家をはじめとして城、寺院の屋根材として使用されています。瓦の耐用年数は約60年であるため、近い将来大量の廃棄瓦が大量に発生します。また、巨大地震が発生すると住宅が被害を受け大量の被災瓦が発生します。
本技術は、破砕瓦の高い摩擦性、排水性、吸水性を利用して、道路舗装、埋設管の埋め戻し、擁壁裏の埋め戻しを始めとして破砕瓦を有効に利用する技術の開発をしております。また、本技術は特許出願中です。
② 破砕貝殻を用いた液状化対策技術の開発
水産副産物であるホタテ貝殻(以下、貝殻)は加工所周辺の沿岸域などに大量に野積みされ、景観や悪臭など地域の環境問題になっています。貝殻を野積みのまま放置するとCO2を大気中に放出することになり環境に負荷を与える要因になります。
本技術は、破砕した貝殻を構造物の下に敷設することでCO2を封じ込めるとともに破砕貝殻の高い透水性を利用して液状化時に液状化対策として利用する技術の開発をしております。また、本技術は特許出願中です。
(4) 東興ジオテック㈱
① トーコンプラス専用削孔機械の開発
老朽化した吹付モルタル面を斫り(はつり)取らずにリニューアルする「トーコンプラス工法」は、これまで補強鉄筋の打設に削岩機を用いた人力削孔がおこなわれてきました。この作業は機械の振動が激しいことに加え、作業員が削孔機を人力で上下にスライドさせる作業を繰り返す重労働でした。このたび、こうした削孔作業を省力化したトーコンプラス専用削孔機(トーコンドリル)を実用化しました。
② 粒状種子実播工法のペレット種子の再商品化
車両による現場へのアプローチや機械施工が困難な荒廃地を緑化する「粒状種子実播工法」で使用するペレット種子を再商品化しました。この工法は、OEM先の製造機械の老朽化でしばらく営業休止していましたが、このたび新たな製造方法による再商品化に成功しました。今後は、近年増加している豪雨災害、地震災害、山林火災等で生じた山岳荒廃地での採用を目指して営業推進してまいります。