第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社グループは、『「人と人」「技術と技術」の橋渡し ~つなげる 人を、技術を、未来へ~』を経営理念に掲げ、「人」と「技術」を事業の中核として、より豊かで快適な未来の暮らしの実現に挑戦し続けることを経営の基本方針としております。

 

(2)経営環境

当社グループの主力事業である建設事業では新設PC橋梁の発注は減少傾向にある一方、既存社会インフラの老朽化に向けた市場が拡大しており、市場環境の変化が生じております。当社グループは市場環境の変化を新たな機会と捉え、積極的な対応を模索しております。

当社で認識する経営環境及び競争力の源泉は次のとおりであります。なお、記載は当社グループの経営成績及び財政状態へ大きな影響を与える主たる事業(建設事業及び製品販売事業)に絞り記載を行っております。

(建設事業)

a.新設橋梁事業

社会インフラの整備が概ね進み、計画路線の逐次完成に伴う新設PC橋梁の発注は減少が予測される一方、整備新幹線の着実な整備やリニア中央新幹線プロジェクトの推進、高速道路のミッシングリンク解消や4車線化計画等も進捗する事から一定の発注量を想定しています。

b.補修・補強事業

既存の社会インフラの老朽化の拡大による補修や、国土強靭化政策に伴い各高速道路会社が進める「高速道路リニューアルプロジェクト」による補修・補強工事の需要が増しています。当社では、他社に先駆けて、高速道路の床版取替工事で使用する部材の製作設備を自社工場に整え、社会の要請に応えています。

(製品販売事業)

各高速道路会社の大規模修繕事業(橋梁・トンネル)及びその他発注者の補修事業も拡大を予想し、建築製品については、全国でスタジアムや物流倉庫等の建設が進められ、旺盛な需要を見込んでおります。

 

(3)中長期的な経営戦略

当社グループは、今後も外的環境の変化に柔軟に対応しつつ、新たな事業領域拡大と組織力強化に向けた経営資源の適切な配分に取り組み、「高速道路大規模更新」「整備新幹線」「リニア中央新幹線プロジェクト」など大規模プロジェクトの旺盛な需要を取り込むことで、以下の中期目標(2025年度)の達成を目指します。

業績目標

(連結 単位:百万円)

2023年度 実績

2025年度 目標

売上高

40,259

47,000

営業利益

2,062

3,000

営業利益率

5.1%

6.4%

当社グループの事業セグメント別の経営戦略は次のとおりであります。

(建設事業)

a.新設橋梁事業

当社グループの経営上の重要課題(マテリアリティ)のうち、最重要課題と位置付けているのは、「人材

確保の推進と育成の強化」です。活発な求人活動と大学等教育機関との共同研究を通して優秀な人材を確保し、若手技術者の早期育成や実績付与、ベテラン技術者の力量アップ、サプライヤーの確保に取り組みます。その上で、競合他社との競争に打ち勝つために、これまでの高い工事成績評定点を獲得した技術力を強みと

して、営業・設計・施工組織の連携による技術提案力の強化によって顧客満足度を向上し、継続的な受注獲

得に努め、品質確保とコスト低減を両立していきます。

b.補修・補強事業

高速道路リニューアルプロジェクトによる大規模更新・修繕事業は引き続き、継続されると見込んでいます。そのノウハウの蓄積と、工事の大規模化や長期化に対応しうる社内体制の再構築を図り、技術者の増強による施工体制の確保とDX推進による生産性の向上及び、資本コストを意識した経営を行い、事業拡大に繋げていきます。今後は、都市部での狭隘で難易度の高い床版取替工事に積極的に挑戦し、事業量と利益の拡大を目指します。

また、当社グループ独自の高度な技術(マイクロパイル・K-LIP工法・ELSS Joint等)をさらに磨き、多角的な営業展開を図っていきます。

 

(製品販売事業)

旺盛な土木製品・建築製品の需要を背景に、働き方改革や人手不足の影響を克服するためにも、工場に経営資源を更に投入していきます。その上で、組織としての着想力の強化と、顧客の問題解決に繋がる独自技術や製品を提供していくことで、事業の拡大を目指します。営業面では、トップ営業による大規模なプレキャスト(PCa・PC)建築製品受注拡大に注力し、業容拡大を図ります。

(情報システム事業)

当社グループおよび社会に貢献し続ける自立した会社、働き甲斐のある会社になることを根幹とし、目標達成に向け受注環境の多角化、IoT、AI、RPA等の先端技術への取組みによる新規ビジネスの創成、開発プロセスの標準化・効率化による品質向上と原価改善の取組みを要点とし、事業の変革を推進いたします。

(不動産賃貸事業)

当社保有の極東ビルディングのテナント収入が収益の柱となっておりますが、売上と老朽化による維持管理費の収支バランスをとりつつ、売上と利益の最大化を目指します。

また、広島駅周辺開発に伴う需要の高まりを受け、建替えや移転等も視野に費用対効果の最大化を実現し、不動産活用を経営戦略の一環としてとらえ、企業価値向上を目指します。

 

(4)資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

今後の持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現を図るため、資本コストや株価を意識した経営を当社の重要課題と認識しており、定量目標にROE10%以上、PBR1倍以上、連結配当性向40%以上、DOE4%以上を設定いたしました。

財務KPI

2023年度 実績

2025年度 目標

連結自己資本利益率(ROE)

9.6%

10%以上

連結株価純資産倍率(PBR)

1.17倍

1.0倍以上

連結配当性向

47.0%

40%以上

連結株主資本配当率(DOE)

4.5%

4%以上

(目標とする理由及び目標に向けた取り組み)

①自己資本利益率(ROE)

当社グループの株主資本コスト(期待収益率)は6~7%程度と認識しており、ROEは株主資本コストを十分に上回る10%以上が必要であると認識しています。

ROEを要素分解した結果分析に基づく中長期の改善に向けた取り組みは以下のとおりです。

要素

結果分析

改善に向けた取り組み

収益性

収益性低下の要因

・手持ち工事高の急速な増加による施工体制の逼迫(技術者不足の顕在化)

・大型工事案件の設計変更における新単価協議遅延による売上高計上の時期のずれ

・鋼材を中心とした資材価格等の高騰、下請労務の需給逼迫による労務費の高騰

・生産性向上に向けた働き方改革3本柱(社風改革・業務改革・教育改革)の確実な実行

・PC橋梁・床版取替事業などの優位技術を軸とする安定した収益基盤の構築

・既存事業の減少を見据えた成長分野への領域拡大

資産効率性

総資産回転率低下の要因

・大型工事案件の設計変更における新単価協議遅延による立替金の増加(借入金の増加)

・出来高に見合った工事代金回収の遅延(売上債権の増加)

・JVサブ工事のプール方式による未収入金の増加(未収入金の増加)

・売上債権回転期間の短縮による資金収支の改善

・持続的な成長に向けた、収益力・成長分野・人材基盤の強化への経営資源の適切な配分

財務レバレッジ

大型工事案件の設計変更における新単価協議遅延による立替金の増加(借入金の増加)

・財務規律を意識した柔軟な資金調達

・成長投資と健全性を備えた最適な自己資本水準の確保

 

②株価純資産倍率(PBR)

当社グループでは、PBRを市場評価の指標と認識しております。2023年度のPBRは1.17倍と継続して1.0倍以上を維持しているものの、株価の低迷に伴い低下傾向となっており、ROEの改善と資本効率を意識した株主還元の実施等により、今後継続して1.0倍以上を維持していく必要があると認識しています。

PBRの向上に向けた取り組みは以下のとおりです。

自己株式の取得

・株主還元及び資本政策の一環として、市場環境と資本の状況を見ながら、機動的かつ弾力的に自己株式取得を実施する

株主還元方針の

見直し

・株主優待制度の廃止

・配当政策の見直し:連結配当性向40%以上、DOE(株主資本配当率)4%以上

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループの属する建設業界では「高速道路大規模更新」「整備新幹線」「リニア中央新幹線プロジェクト」など大規模プロジェクトや、既存社会インフラの更新等により堅調に推移することが予想されます。当社グループにおいても長期大型工事の受注により、建設事業の期末手持高は43,615百万円となりました。

(長期大規模工事受注件数の推移)

 

2018年3月期

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

件数(件)

8

4

4

6

7

4

4

(注)当社グループの建設事業は受注額が1件当たり100百万円から300百万円、工期が1年前後の工事が一般的となっております。上表では1件当たりの受注額 1,000百万円以上の工事を長期大型工事として件数を記載しております。なお、これらの工事は一般的な工事と比べ、工期は概ね2から6年(最長10年)と長くなっております。

このように社会インフラへの要請が高まっている中、それを支えることができる高度な技術人材が求められています。

一方で、建設業界における就業については、従来の3Kを払拭し、「給与がいい」「休暇がとれる」「希望が持てる」の新3Kを実現し、人材の層を厚くすることで業界全体の魅力を高める必要があります。

当社グループにおいても、新3Kを実現し、優秀な人材を獲得、育成し、働き甲斐のある環境を整備していくことが、強靭で良質な社会のインフラを世の中に提供し、事業を拡大していくためには必要不可欠であり、当社グループの企業価値の源泉と考えています。「人財確保の推進と育成の強化」を経営上のマテリアリティと定め、「優秀な人材の獲得・定着・育成」の基本方針のもと、「社員教育改革」「働き方改革」「人事制度改革」の3つの改革を進め、高度な社会インフラを支える人材を育成し、社員と会社の健全な未来の実現に取り組んでまいります。

①人材の獲得

(求人活動)

優秀な技術者を獲得するため、関連する大学や高専との連携を深めています。例えば、教育機関との共同研究で協働した学生のリクルートや、定期的なインターンシップの受け入れ(2023年度約100名)を積極的にはかり、学生の採用をすすめています。また、若手技術者の育成など、シニア社員の活躍も重視しており、ベテラン技術者の雇用の70歳までの延長や、他社の定年退職者を「Advanced Civil Engineer (ACE)」として中途採用する取り組みも行っています。

②人材の定着

(残業時間削減による働き方改革 -フレックスタイム制の導入)

2024年4月から施工される時間外労働上限規制への対応と、ワークライフバランスの向上、業務の効率化のために、2023年度中にフレックスタイム制を試行導入し、人材の定着を図っていきます。

そのために、2023年6月から一部の部門に試行導入した結果、各人のライフスタイルに合わせて柔軟に働くことが出来る環境と時間外勤務削減が確認出来た一方、個人の自覚と管理職の能力強化という課題が見えてきました。今後は、建設現場や工場にも導入し、2024年4月の完全導入をすすめていきます。

(DXによる働き方改革 - クラウド型ウェアラブルカメラSafiePocket2の導入 -)

現場サポートの一環として、現場と工事本部をウェブカメラでつなぎ、緊急的な問題の解決やアドバイスを行うシステムを2023年に導入しました。その目的は現場の負担を内勤者がカバーし、軽減することによって特に若い職員が生き生きと働ける環境づくりにあります。これによって、広範囲な現場では、作業責任者による

巡視活動の効率化が、小規模現場では、若手技術者による施工管理において、各事業部と現地をつないでの的確なアドバイスが可能となりました。

2023年5月に、広島高速道路の床版取り替え工事の足場組立作業において試験的に導入した結果、労災事故に繋がる指摘をタイムリーに現場に伝え、若手職員を指導することが出来ましたが、安全教育の徹底が課題であることがわかりました。今後は2024年までに、NEXCOの作業所に配置し、DX推進による現場の業務効率化をすすめていきます。

 

 

(人事制度改革によるエンゲージメント向上)

2022年度に実施した社員のワークエンゲージメント調査の結果、長時間労働を含む業務実態や成果と処遇のアンバランスを改善する声が高まっていることから、制度を改め、社員の公平感・幸福感を高める必要性があると判断し、業務改革委員会の人事制度改革小委員会において、各種人事制度の改革をすすめています。

そのため昇給・昇格、賃金体系、人事考課、福利厚生などについて、2023年度に制度設計を完了し、2024年度から新制度を試行していきます。これによって、現在5.1であるワークエンゲージメントスコアを8.0に改善し、社員のエンゲージメント向上による人材の定着を目指します。

③人材の教育

(社内アカデミーによる人材育成 - 極東興和アカデミーを開校 -)

2023年5月、極東興和(株)にて、現場実習、対面勉強会、eラーニングから構成される「極東興和アカデミー」を開校しました。「施工管理」「設計」「積算」「営業」「一般教養」について、入社1年目~5年目を対象としたカリキュラムを先行して展開しました。今後、全社員に対応したより高度な内容も展開していきます。

当アカデミーは、社会に通用する高度建設人材を育成し、事業の需要増と高度化に対応することを目指し、全グループを対象としたアカデミーとして進めていきます。

(優秀な技術者を育成するために)

高度な技術を有する人材を育成するため、様々な施策を行っています。技術資格取得の奨励や、大学との共同研究における技術者の博士号の資格、行政の「イノベーション人材育成事業補助金制度」を活用した海外留学などによって、高度な技術人材の育成をすすめています。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、「世代を超えて、語り継がれてゆくものを」「人々が行き交い、人々に愛されるものづくり」をCSRコンセプトとして、人々が世代間の垣根を越えて、安心して暮らせる社会インフラを提供してまいりました。

社会インフラである橋・道路の建設、補修を事業の中心とする当社グループにとって、持続可能な社会の実現は、事業の中心的課題として、事業活動の継続、拡大に必要不可欠であり、積極的なサステナビリティ活動の推進及びその情報開示を進めてまいります。

当社グループにおけるサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス

当社代表取締役を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、気候変動リスクを含む、全てのサステナビリティ経営の基本方針および推進活動の基本計画の決定、取り組み課題の検討および課題について審議しております。サステナビリティ委員会にて審議された事項は、取締役会での審議を経て、決議されます。

なお、専任組織であるサステナビリティ推進室、主要子会社にワーキンググループを設置し、横断的にサステナビリティへの取り組みを計画、推進、改善ができる体制を整備しております。

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(2)戦略

気候変動リスク、人材育成及び社内環境整備に関する戦略は以下のとおりであります。

①気候変動リスク

当社グループの主な事業である、土木建設、補修、コンクリート製品製造に対し、気候変動によるリスクと機会を特定しました。気候変動によるリスクと機会の選定にあたり、「2℃シナリオ」、「4℃シナリオ」の二つのシナリオに基づき分析を行い、気候変動に係るリスクと機会を以下の通りに識別しました。

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リスク・機会一覧

分類

リスク・機会

事業及び財務への影響

移行リスク・機会

炭素価格の導入、CO2排出量制限による建設コストの増加

リスク

購入資材のCO2排出および施工時のCO2排出への炭素税の適用による建設費用の増加及び排出量目標達成のための排出権購入や証書の購入コスト増加

政府による炭素排出目標達成のための投資抑制

リスク

炭素排出目標達成を目的とした公共事業の発注量の減少

低炭素製品需要の増加

機会

CO2排出量を削減した低炭素製品への需要の増加

低炭素技術の開発

機会

環境保全対策に関連する技術提案の強化による受注機会の増加

クリーンエネルギーへの転換

リスク

クリーンエネルギーへの活用によるエネルギー関連コストの増加

機会

エネルギー関連施設の改革による工事需要の増加

物理リスク・機会

気温上昇による労働環境への影響

リスク

ヒートストレスによる健康被害や労働可能な時間帯の減少による生産力低下

機会

プレキャスト製品を活用した省力化施工技術の需要増加

自然災害の激甚化

リスク

防災・減災への自社設備への投資の増加

機会

防災・減災を目的とした設備投資、補修需要の増加

②人材育成及び社内環境整備

当社グループの主要連結子会社である極東興和㈱及び東日本コンクリート㈱においては、次世代育成支援対策推進法および女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づき、「一般事業主行動計画(次世代法・女性活躍推進法一体型)」を策定しております。男性の積極的な育児参加並びに職場全体の育児への理解を深めることや、仕事と育児の両立支援強化等、中長期の視点で就労環境の更なる改善に注力して参ります。

なお、上記以外の連結子会社及び当社においては、関連する指標の管理及び具体的な取組みついての計画は作成していないため連結ベースの戦略は記載しておりません。

a.極東興和㈱における対策

(a)次世代育成支援対策

(男性労働者の育児休業取得率の向上)

 2023年7月以降 社内イントラにて育児休業周知

 2023年10月以降 管理職研修における制度利用促進の周知徹底

  <随時>    対象従業員への個別制度案内

(年次有給休暇の取得日数の増加)

 毎年2回    取得状況の確認

         状況に応じた従業員への取得日数確保要請

  <随時>    社内イントラにて有給休暇取得奨励の案内を掲載

(b)女性活躍推進対策

(女性技術者の採用比率の向上)

 2023年7月以降 教育機関等との連携強化

         リクルートサイトの刷新・SNSの活用

(フレックスタイム制度の整備)

 2024年4月   制度導入

(C)人材育成対策

(社内アカデミー制度の確立)

人材育成プログラムの一環として、従業員の業務遂行能力や生産性等のレベルアップを目指し、社内アカデミー制度を確立します。

 2023年7月以降 社内教育コンテンツの本格運用開始

 

b.東日本コンクリート㈱における対策

(年次有給休暇の取得促進)

   <随時>   社内掲示板にて有給休暇取得奨励の案内を掲載

 2023年5月以降 2022年度の取得状況を把握

 2023年10月以降 上半期取得状況のとりまとめ、下半期へ向けて取得促進取組

 2023年12月以降 対象社員への取得日数確保要請

 2024年3月以降 2023年度の取得状況を把握し、次年度への課題整理

 

(3)リスク管理

  気候変動リスク・機会に関する管理は以下のとおりであります。

①気候変動リスク・機会の識別・評価のプロセス

気候変動リスク・機会は、サステナビリティ推進委員会で審議され、識別されます。気候変動リスク・機会の評価は国際的な気候変動への動向、規制の強化や、気象条件などの変化に基づき、定期的な分析、検討を行い、当社事業戦略に反映させています。

②気候変動リスク・機会への対応・管理のプロセス

当社グループは、公共事業を事業の主体としており、気候変動リスク・機会の識別・評価において、その動向が大きく影響します。そのため、気候変動に係る官公庁の動向等の情報を特定し、専任組織であるサステナビリティ推進室を中心に、リスク・機会の管理・対応を行っております。

 

(4)指標及び目標

  気候変動リスク・機会及び人材育成及び社内環境整備に関する指標及び目標は以下のとおりであります。

①気候変動リスク・機会(CO2排出量削減目標)

当社グループは、日本政府の掲げる2050年のカーボンニュートラル目標に賛同し、カーボンニュートラルに向けて、材料・施工・技術開発におけるに温室効果ガスの排出量の低減へ向けて取り組んでおります。

現在、グループ全体の排出量の算定に取り組んでおり、カーボンニュートラルに向けた指標を示す予定としております。

 

当社グループの主要連結子会社である極東興和㈱及び東日本コンクリート㈱における人材育成等についての指標及び目標は以下のとおりであります。

なお、上記以外の連結子会社及び当社においては、関連する指標の管理及び具体的な取組みついての計画は作成していないため連結ベースの指標は記載しておりません。

②人材育成及び社内環境整備(管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異)

連結子会社

管理職に占める女性労働者の割合(注)1

男性労働者の育児休業等取得率

(注)2

労働者の男女の賃金の差異(注)1,3

補足

全労働者

うち正規雇用労働者

うちパート・有期労働者

極東興和㈱

5.0

100.0

66.0

70.0%

53.0%

2026年6月までの目標値

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものであります。

3.賃金は、基本給、超過労働に対する報酬、賞与を含み、退職手当等を除いております。正規雇用労働者は、当社原籍正規従業員で雇用期間の定めのない者であり、出向者については当社から社外への出向者を除き、他社から当社への出向者を含んでおります。パート・有期労働者は、パート・有期契約従業員等で正規従業員以外の者(派遣労働者を除く)であります。

③人材育成及び社内環境整備(年次有給休暇の取得日数)

連結子会社

年次有給休暇の取得日数(注)1

補足

極東興和㈱

12

一人当たりの年間平均日数

2026年6月までの目標値 (注)2

東日本コンクリート㈱

7日

一人当たりの年間平均日数

2025年3月までの目標値 (注)3

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「次世代育成支援対策推進法」(平成15年法律第120号)に基づく開示であります。

2.2023年6月下旬に広島労働局に提出した2023年7月以降の一般事業主行動計画の目標値であります。

3.2022年3月に宮城労働局に提出した2022年4月以降の一般事業主行動計画の目標値であります。

 

3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のある事項には以下のものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1)公共事業の削減による影響について

当社グループの主要事業である建設事業は、売上高に占める官公庁等(鉄道建設・運輸施設整備支援機構及び高速道路会社を含める)の割合が約8割と非常に高いため、官公庁等からの発注が予想以上に削減された場合には、経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(2)資材価格、外注労務単価の変動の影響について

当社グループの主要事業である建設事業では受注にあたり、資材価格及び労務単価等の適正水準での契約に努めておりますが、資材価格や外注労務費等が高騰し、それを契約条件にあるスライド条項等により請負金額に反映させることが困難な場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)固定資産の減損リスクについて

当社グループは、有形固定資産、ソフトウエアなどの固定資産を保有しております。有形固定資産及びソフトウエア等のうち、減損の兆候が認められる資産又は資産グループについては、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合、帳簿価額を回収可能価額まで減損し、減損した当該金額を減損損失として計上することとしております。

このため、当該資産又は資産グループが属する事業の経営環境の著しい変化や収益状況の悪化等により、固定資産の減損損失を計上する必要が生じた場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼすことがあります。

なお、当社グループは持株会社方式により運営しており、持株会社である当社は事業会社の運営に必要な資金を事業会社への投融資により供給しております。

事業用資産を保有する事業会社で固定資産の減損損失を計上した場合、事業会社の財政状態悪化を受け、当社個別財務諸表において事業会社への投融資について損失計上を行うことがありますが、損失計上により当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼすことがあります。

 

(4)有利子負債への依存について

当社グループの主たる事業である建設業は請負業であることから資金の立替えが生じます。近年、長期かつ大規模な工事契約が増加していることから、資金の立替えが著しく増加してきております。

当社グループでは、運転資金は主に金融機関からの借入金により調達しているため、有利子負債への依存度が高い水準にあります。当社は、主要グループ各社とキャッシュ・マネージメント・システム(CMS)契約を締結し、グループ資金の効率化を図るとともに、運転資金を使途とするコミットメントラインを活用した資金調達の機動性を確保しておりますが、金利水準が大幅に上昇することがあれば、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当連結会計年度末の有利子負債の状況は以下のとおりです。

 

2023年3月末

2024年3月末

前期末差

総資産(百万円)

40,355

42,351

+ 1,996

有利子負債(百万円)

15,966

17,086

+ 1,120

有利子負債依存度(%)

39.6

40.3

+ 0.7

純資産(百万円)

13,842

14,448

+ 605

自己資本比率(%)

34.0

33.9

△0.1

 

(5)法的規制等によるリスク

当社グループの主たる事業である建設事業は、土木工事に該当するため、「建設業法」の規制を受けます。

当社グループでは、建設業法に基づき特定建設業許可及び一般建設業許可を受けておりますが、当該許可の諸条件や各法令の遵守に努めており、現時点においてこれらの法的規制に抵触する事実はないと認識しております。

しかしながら「建設業法」に抵触し、営業の全部又は一部の停止命令や許可取消し等の行政処分を受けた場合、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(許認可等の状況)

会社名

許認可等の名称

許認可等の内容

有効期限

㈱ビーアールホールディングス

建設業許可

(一般建設業許可)

広島県知事許可

(般-5第32261号)

2028年11月30日

(5年毎の更新)

極東興和㈱

建設業許可

(特定建設業許可)

国土交通大臣

(特-1第2840号)

2025年1月18日

(5年毎の更新)

東日本コンクリート㈱

建設業許可

(特定建設業許可)

国土交通大臣

(特-5第2918号)

2029年2月26日

(5年毎の更新)

 

(6)大規模自然災害等

当社グループの主たる事業である建設事業は屋外生産であるため、季節や天候などの自然条件の影響を受けます。近年、日本国内では地震、台風や大雨による土砂災害等大規模自然災害の発生が多発しております。当社グループでは施工管理に万全の注意を払い工事に携わっておりますが、大規模自然災害による工事の中断や大幅な遅延等が当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績とい

う。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 ①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、経済活動の正常化が進み社会経済活動は回復傾向となりました。しかしながら世界的な物価の高騰や金融引き締め等による世界経済の減速化及び地政学リスクの高まりにより、先行きは不透明な状況となりました。

 当社グループの主力事業である建設業界におきましては、公共投資、民間投資とも堅調に推移しておりますが、供給面においては、建設資材の価格高騰や労務需給の逼迫等の影響もあり、厳しい事業環境が続いております。

このような情勢の下、当連結会計年度の売上高は40,259百万円(前年同期比11.8%増)、営業利益は2,062百万円(前年同期比26.0%増)、経常利益は2,036百万円(前年同期比25.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,353百万円(前年同期比31.9%増)となりました。

 当社グループのセグメントの業績は、次のとおりであります。なお、金額にはセグメント間取引を含めております。

(建設事業)

 建設事業におきましては、北海道新幹線の軌道スラブ製作運搬及び新設橋梁工事等の大型受注がありましたが、前連結会計年度のような大型の床版取替工事の受注が減少したことにより、当連結会計年度の受注高は28,980百万円(前年同期比12.4%減)、手持工事高は43,615百万円(前年同期比11.0%減)となりました。

 一方、大型工事が順調に進捗したことや、設計変更による増額契約の獲得により売上高は34,375百万円(前年同期比11.4%増)となり、セグメント利益は3,440百万円(前年同期比19.6%増)となりました。

(製品販売事業)

 製品販売事業におきましては、当連結会計年度の受注高は前連結会計年度と比べ大型の床版製作が減少しましたが、建築部材等その他の製品製作の受注が増えたこと等により前年並の6,083百万円(前年同期比7.1%減)となりました。

 一方、第3四半期会計期間以降の製品製造の稼働が上がり、当連結会計年度の売上高は5,623百万円(前年同期比10.2%増)となり、セグメント利益は144百万円(前年同期比61.1%増)となりました。

(情報システム事業)

 情報システム事業におきましては、当連結会計年度の受注高は561百万円(前年同期比17.1%増)となりました。受注済案件が順調に進んだことから当連結会計年度の売上高は541百万円(前年同期比9.3%増)、セグメント利益は36百万円(前年同期比67.3%増)となりました。

(不動産賃貸事業)

 不動産賃貸事業におきましては、当社保有の極東ビルディングにおいて、事務所賃貸並びに一般店舗・住宅の賃貸管理のほか、グループ会社の拠点として、当社が一括して賃借した事務所を各グループ会社に賃貸しており、安定した売上高を計上しております。

 当連結会計年度の売上高は167百万円(前年同期比3.3%減)、セグメント利益は111百万円(前年同期比3.0%減)となりました。

 

 当連結会計年度末の総資産は42,351百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,996百万円の増加となりました。

流動資産は36,367百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,814百万円増加しております。主な要因として未収入金が526百万円減少したものの、受取手形・完成工事未収入金等が1,752百万円、商品及び製品が343百万円、未成工事支出金が195百万円増加したことによるものであります。

 固定資産は5,984百万円となり、前連結会計年度末に比べ181百万円増加しております。主な要因として、減価償却による減少366百万円があったものの、機械、運搬具及び工具器具備品が224百万円、投資有価証券が119百万円、建物・構築物が104百万円増加したことによるものであります。

 負債合計は27,903百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,390百万円増加しております。

 流動負債は24,403百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,582百万円増加しております。主な要因としては、未成工事受入金が952百万円減少したものの、短期借入金が2,300百万円、1年内返済予定の長期借入金が1,000百万円、電子記録債務が706百万円増加したことによるものであります。

 固定負債は、3,499百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,191百万円減少しております。これは主に長期借入金が減少したことによるものであります。

 純資産合計は、株主配当546百万円、自己株式の取得365百万円に対し、親会社株主に帰属する当期純利益1,353百万円の計上等により、前連結会計年度末比605百万円増加の14,448百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ4百万円減少し、1,816百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロ-)

営業活動の結果、獲得した資金は231百万円となりました。これは主に売上債権の増加1,752百万円、未成工事受入金の減少952百万円、その他の棚卸資産の増加386百万円があったものの、税金等調整前当期純利益2,036百万円、仕入債務の増加474百万円、未収入金の減少384百万円、減価償却費366百万円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロ-)

投資活動の結果、使用した資金は443百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出372百万円等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロ-)

財務活動の結果、獲得した資金は208百万円となりました。これは主に長期借入れの返済による支出1,199百万円、配当金の支払額546百万円、自己株式の取得による支出365百万円があったものの、短期借入金の純増2,300百万円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

製品生産重量(t)

前年同期比(%)

建設事業

36,699

81.6

製品販売事業

76,982

155.0

合計

113,682

120.1

(注)当社グループの生産実績は、工場製品の製造における製品生産重量をもって実績としております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

建設事業

28,980

87.6

製品販売事業

6,083

92.9

情報システム事業

561

117.1

不動産賃貸事業

167

96.7

合計

35,793

88.8

(注)1.セグメント間取引を含めて表示しております。

2.上記金額には消費税等は含まれておりません。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

建設事業

34,375

111.4

製品販売事業

5,446

113.5

情報システム事業

399

120.1

不動産賃貸事業

36

96.7

合計

40,259

111.8

(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。

2.主な相手先の販売実績と総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

当連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

西日本高速道路株式会社

11,101

30.8

11,728

29.1

中日本高速道路株式会社

4,516

12.5

5,692

14.1

 

 

なお、当社グループの主力事業である建設事業の状況は次のとおりであります。

イ.受注高、売上高、繰越高及び施工高

前期(自2022年4月1日 至2023年3月31日)

種類別

前期繰越高

(百万円)

当期受注高

(百万円)

(百万円)

当期売上高

(百万円)

次期繰越高

当期施工高

(百万円)

手持高

(百万円)

うち施工高(百万円)

建設事業

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橋梁

26,787

11,844

38,631

13,408

25,223

1.1

281

13,470

その他

19,982

21,249

41,231

17,445

23,786

0.9

 

205

17,539

合計

46,770

33,093

79,863

30,853

49,010

1.0

 

486

31,010

 

当期(自2023年4月1日 至2024年3月31日)

種類別

前期繰越高

(百万円)

当期受注高

(百万円)

(百万円)

当期売上高

(百万円)

次期繰越高

当期施工高

(百万円)

手持高

(百万円)

うち施工高(百万円)

建設事業

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橋梁

25,223

11,768

36,992

16,774

20,217

2.3

469

16,963

その他

23,786

17,212

40,998

17,600

23,398

0.9

 

211

17,606

合計

49,010

28,980

77,990

34,375

43,615

1.6

 

680

34,569

(注)1.前期以前に受注した工事で、契約の更改により請負金額に変更のあるものについては、当期受注高にその増減額を含めております。したがって、当期売上高にもこの増減額が含まれます。

2.次期繰越高の施工高は、未成工事支出金により仕掛工事の施工高を推定したものであります。

 

ロ.売上高

期別

部門

官公庁等

(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

第21期

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

建設事業

 

 

 

橋梁

11,322

2,086

13,408

その他

14,680

2,764

17,445

26,002

4,850

30,853

第22期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

建設事業

 

 

 

橋梁

14,307

2,467

16,774

その他

13,874

3,726

17,600

28,182

6,193

34,375

(注)1.官公庁等には鉄道建設・運輸施設整備支援機構及び高速道路会社を含めて算出しております。

2.第21期の売上高のうち主なものは、次のとおりであります。

西日本高速道路株式会社

江の川第三橋他1橋床版取替工事、容谷橋他1橋床版取替他

第22期の売上高のうち主なものは、次のとおりであります。

西日本高速道路株式会社

新名神高速道路大戸川橋他2橋(PC上部工)工事、容谷橋他1橋床版取替他

3.売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は、次のとおりであります。

第21期

西日本高速道路株式会社

11,101

百万円

36.0

 

中日本高速道路株式会社

4,516

百万円

14.6

第22期

西日本高速道路株式会社

11,728

百万円

34.1

 

中日本高速道路株式会社

5,692

百万円

16.6

 

ハ.手持高

期別

部門

官公庁等

(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

第22期

(2024年3月31日現在)

建設事業

 

 

 

橋梁

17,257

2,960

20,217

その他

20,757

2,640

23,397

38,014

5,600

43,615

(注)手持工事のうち主なものは、次のとおりであります。

西日本高速道路株式会社

吉野川橋他1橋床版取替工事

2026年6月完成予定

独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構

北海道新幹線、倶知安軌道スラブ製作運搬

2028年9月完成予定

西日本高速道路株式会社

若宮橋床版取替工事

2028年7月完成予定

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(経営指標)

当社グループは経営指標として、(連結)自己資本利益率10%以上を継続的に維持することを目標としております。当連結会計年度では、建設事業において大型工事が順調に進捗したことや、設計変更による増額契約の獲得により前連結会計年度の実績値を2.0ポイント上回り、9.6%となりました。

 

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

前年差

(連結)自己資本

利益率(%)

20.9

20.7

12.1

7.6

9.6

2.0

 

(経営成績)

建設事業の売上高は、大型工事が順調に進捗したこと等により34,375百万円と前年同期比で3,521百万円増加いたしました。

製品販売事業の売上高は、製品製造の稼働の好転等により外部売上高は5,446百万円と前年同期比で649百万円増加いたしました。

上記の結果、売上高は40,259百万円と前年同期比で4,237百万円増加し、経常利益は前連結会計年度と比べ411百万円増の2,036百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度と比べ327百万円増の1,353百万円となりました。

 

2023年3月期

2024年3月期

前年差

売上高(百万円)

36,022

40,259

+4,237

経常利益(百万円)

1,624

2,036

+411

親会社株主に帰属する当期純利益

(百万円)

1,025

1,353

+327

 

(財政状態)

近年、当社グループの長期大規模工事ではジョイント・ベンチャー(JV)方式による施工が増加してきております。これら長期大規模工事の工事代金の支払いに備えるため、金融機関から短期借入金及び長期借入金により運転資金の調達を行っております。

上記の結果、前連結会計年度と比べ当連結会計年度末の有利子負債残高は1,120百万円増の17,086百万円,純資産残高は605百万円増加となりました。総資産(負債・純資産計)の伸び率よりも純資産の伸び率が小さかったことから、自己資本比率は0.1ポイント減少し、33.9%となりました。

 

2023年3月期

2024年3月期

前年差

有利子負債(百万円)

15,966

17,086

+1,120

純資産(百万円)

13,842

14,448

+605

自己資本比率(%)

34.0

33.9

△0.1

 

②経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」及び「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定」に記載のとおりであります。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

税金等調整前当期純利益の増加により、営業活動によるキャッシュ・フローは231百万円のプラスとなりました。また、工事用機械の取得及び製品製造用器具の取得等から、投資活動によるキャッシュ・フローは443百万円のマイナスとなりました。また、借入金による調達を行った結果、財務活動によるキャッシュ・フローは208百万円のプラスとなりました。

 

2023年3月期

2024年3月期

前年差

営業活動によるキャッシュ・フロー

(百万円)

△5,703

231

+5,934

投資活動によるキャッシュ・フロー

(百万円)

△75

△443

△368

フリー・キャッシュ・フロー

(百万円)

△5,778

△212

+5,566

財務活動によるキャッシュ・フロー

(百万円)

6,173

208

△5,965

 

b.資本の財源

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設資材の購入費のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

当社グループの資本の財源については事業活動による自己資金のほか、金融機関からの借入れにより確保しております。当連結会計年度は増加する資金需要に備え、短期借入金2,300百万円(純増額)により資金調達を行いました。

なお、金融機関からの借入れについては資金調達の機動性および流動性確保の補完機能を高めるため、金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しており、コミットメントラインの総額は4,000百万円であります。

株主の皆様への還元につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローの水準に拠らず毎期安定的に配当を行うことを目標としており、株主還元の指標として、(連結)配当性向40.0%を目標としております。

当連結会計年度の配当性向は47.0%となりました。

 

2023年3月期

2024年3月期

前年差

(連結)配当性向(%)

53.0

47.0

△6.0

 

c.資金の流動性

当社グループは、資金の流動性を計る指標として流動比率(未成工事支出金及び未成工事受入金を除く。)を重視し、100.0%以上維持することを目標としております。安定した財務基盤の維持に努めた結果、当連結会計年度末の流動比率は153.1%となりました。

 

2023年3月期

2024年3月期

前年差

流動比率(%)

181.4

153.1

△28.3

なお、当社は主要グループ各社とキャッシュ・マネージメント・システム(CMS)契約を締結し、グループ資金の効率的な運用を図るとともに、コミットメントラインを活用した運転資金の機動的な調達を図っております。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

(算出の方法)

当社グループは、工事契約に関して、連結会計年度の末日において測定した履行義務の充足に係る進捗度に基づき、工期にわたって売上高を認識しております。また、当社グループは総工事原価を積算し、契約に係る進捗度を合理的に見積ることが可能であることから、進捗度の見積りにはインプット法を採用しておりますが、総工事原価を合理的に測定できない場合、発生した原価のうち回収されることが見込まれる費用の金額で収益を認識しております。

これらの見積りには不確実性が伴うため、当社グループの業績を変動させる可能性があります。

当社グループでは近年、従来から手掛けてまいりました国土交通省や地方自治体による橋梁新設工事に加え、高速道路会社による既設高速道路の大規模更新・大規模修繕プロジェクト、新幹線の整備計画に付随する工事を受注する機会が増えてきております。これらの工事は、橋梁新設工事と比べ、工事契約の大型化、工期面の長期化、設計変更等による契約変更が多いといった特色があります。

こうした工事では、工事契約の大型化、工期の長期化、工法の複雑化、リスクの分散等への対応から、他社とジョイント・ベンチャー(JV)を組成しJVサブ企業として参画する事案も増えておりますが、単独で契約する場合と比べ請負金額及び工事原価総額の変更等に関する情報を適時・適切な収集が難しい傾向にあります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当連結会計年度における研究開発費総額は71百万円であり、全額が建設事業に係るものであります。なお、主な内容は次のとおりであります。

(1)亜硝酸リチウムを活用したコンクリート構造物の長寿命化技術

 我が国の社会資本を支えるコンクリート構造物は老朽化の一途を辿っており、特に、塩害や中性化による鉄筋腐食やASRによるコンクリートの異常膨張など、深刻なコンクリート構造物の劣化に対する効果的な補修技術の開発が急務とされてきました。そのような社会状況の中、当グループでは鉄筋防錆効果およびASR膨張抑制効果を有する「亜硝酸リチウム」という材料の性質に一早く着目し、京都大学をはじめ多数の大学との共同研究により「ASRリチウム工法」および「リハビリカプセル工法」というコンクリート補修技術を開発、実用化し、技術の普及に努めています。「ASRリチウム工法」は、ASRにより劣化したコンクリート構造物全体に亜硝酸リチウムを内部圧入することで、これまで不可能とされてきたASRの劣化進行を根本的に抑制することができます。現時点で本工法に対抗し得る類似技術は実用化されていないため、今後もこの分野において高いシェアを維持できると考えます。「リハビリカプセル工法」は、塩害や中性化により劣化したコンクリート内部の鉄筋付近に亜硝酸リチウムを内部圧入することで、コンクリート中の鉄筋をはつり出すことなく確実に鉄筋防錆処理することができます。これまで塩害補修の決め手は電気防食工法と言われてきましたが、本工法を使えば電気防食工法より安価に補修することが可能となります。さらに,老朽化した道路橋床版の補修では、床版下側からの施工が可能であるため,道路規制等の社会的な影響を抑えながら構造物の長寿命化が可能となります。近年では港湾分野での大規模補修工事、NEXCOや阪神高速道路での大規模更新事業にも採用され、さらなる販路拡大が期待されています。今後は、施工方法の合理化を図るとともに、当技術を応用し劣化したコンクリートの強度回復に繋がる技術開発に着手していきます。

(2)既設構造物の内部補強技術

我が国の社会インフラは、高度経済成長期に大量に建設されたことから、供用年数が一般的な耐用年数の50年を超過し、老朽化した構造物が今後益々増加することが懸念されています。また供用されるなかで、ニーズの変化により更新や改築・増築の必要に迫られた構造物や、頻発する地震に対する補強が必要な構造物が数多く存在します。しかし、それらの構造物を全て更新するためには多額の費用を必要とするため、既存構造物を使いながら補強や増改築が可能な技術への需要が高まっています。そこで当グループは、得意分野であるプレストレストコンクリート技術のノウハウを応用して、既存構造物の部材内部に追加配置した緊張材によりプレストレスを与えて外観を変えることなく補強する「K-PREX工法」を開発し実用化しました。本工法は、コンクリートのひび割れを抑制できるため構造物の耐久性を向上できます。また、本工法を適用することで、従来の補強工法の課題である既設部材の増厚・重量増加や土中構造物での大規模な掘削を最少化でき、経済性向上(約11%)や工程短縮(約28%)が見込めます。今後は、床版等の薄肉部材や厳しい腐食環境下での構造物の機能と耐久性を向上等に適用するために、非鉄緊張材の適用検討を進め、さらなる販路拡大を目指します。

(3)老朽化した橋梁床版の更新技術

近年、社会インフラの老朽化に伴い、高速道路橋の鉄筋コンクリート床版をプレキャストプレストレストコンクリート床版へ取り替える事業(大規模更新事業)が本格化しています。この事業においては、供用中の道路の交通規制を伴うことから、急速施工が求められます。このような社会ニーズに対応するため、当グループでは、日鉄エンジニアリング社との共同開発により、更新工事(既設橋梁の床版取替)における交通規制期間の短縮や施工の合理化・省力化が図れるプレキャスト床版の接合工法「ELSS Joint」を実用化しました。本工法は、従来のような鉄筋を用いた継手工法とは異なり、プレキャスト床版同士の接合部に専用材料を充てんするだけで鉄筋配置を省略した世界初の画期的な工法であり、従来工法と比較して、労働生産性は14%程度向上し、交通規制期間を1割以上短縮することが可能となります。近年では、床版取替工事での採用も進み,2023年度は1橋に適用され,2024年度以降は5橋で適用が予定されており、さらなる販路拡大が期待されています。また、ずれ止めが多数配置される鋼合成桁橋の床版更新では、既設床版の撤去において、従来手はつりやウォータージェットによるコンクリートはつりを伴うことが多く、工程の長期化や高コストが課題となっていました。これに対して、当グループでは、コンクリートカッターを使用した合理的な工法「K-SLASH工法」を開発しました。本工法では、施工の合理化により、従来方法と比較して工事期間を20%程度短縮することが可能となります。2023年度は1橋に適用され,その効果を発揮しました。今後も高速道路の大規模更新事業での採用に向けた取組みを推進し、社会的ニーズに応えていきます。

(4)コンクリート二次製品を活用した防災・災害復旧技術

近年、我が国では大地震、豪雨、土砂災害などの自然災害が全国的に激甚化、頻発化している傾向にあり、これに対する社会インフラの整備、維持、早期復旧への対応が急務となっています。このような社会ニーズに対応するため、当グループの得意分野であるコンクリート製品の製造技術を生かし、キッコウ・ジャパン社との共同開発により、簡易施工の土留め壁「ロックフレーム工法(S型)」を実用化しました。「ロックフレーム工法(S型)」は、コンクリート二次製品の格子状フレームに石材を密に詰め、フレームと石材を一体化した「もたれ式擁壁」です。従来工法と比較して、技能者の減少が著しい石積みの技能に左右されることのない空石積みの特長を活かし、排水性にすぐれ、環境にやさしい、擁壁や護岸を簡易に構築する技術であり、施工が簡易なことから、法面・斜面の災害復旧等にも適した工法です。本工法を適用することで、従来技術と比較し現場工程の短縮(約40%)に加えて、コンクリート使用量の削減に伴うCO2削減(約54%)に貢献できます。今後、フレームのラインナップ拡充による工法の適用拡大を図り、販路拡大を目指します。

(5)建設工事における生産性向上技術・環境負荷低減

建設業では、他の産業に比べて技能者の高齢化が急速に進行しており、将来的に社会資本を維持するために必要な担い手の確保や生産性の向上が喫緊の課題となっています。このような現状に対応するため、ICT(情報通信技術)や規格の標準化等で建設現場のプロセスの最適化を図る活動「i-Construction」(アイ・コンストラクション)が国土交通省で推進される等、官民をあげた取組みが活発になっており、当グループにおいても、建設工事の省力化やプレキャスト製品の合理化といった生産性向上に資する技術導入や新規開発を進めています。その一例として、コンピュータ上で作成した橋梁の三次元モデルを施工計画・施工管理に利用するCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)と呼ばれる情報管理技術、コンクリート工事におけるGPS(全地球測位システム)方式の生コン運搬管理システムやICTを活用したコンクリート打設管理およびプレストレス導入管理システム等、様々な建設ICTを橋梁工事に導入し、施工管理業務の高度化・省力化を進めています。また、政府において2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを目指すことが宣言され、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出を抑制することが世界的に求められています。当グループでは、セメント製造時に多くの二酸化炭素が排出されることに着目し、副産物である高炉スラグ微粉末でセメントを置換した二酸化炭素排出量低減コンクリートを使用した土木製品を実用化しています。今後、置換率の増加等、さらなる環境負荷低減に向けた研究を進めてまいります。