第2【事業の状況】

 

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社グループは、『「人と人」「技術と技術」の橋渡し』を経営理念に掲げ、「人」と「技術」を事業の中核として、より豊かで快適な未来の暮らしの実現に挑戦し続けることを経営の基本方針としております。

 

(2)経営環境

当社グループの主力事業である建設事業では新設PC橋梁の発注は減少傾向にある一方、既存社会インフラの老朽化に向けた市場の拡大や、国内建設投資(公共投資・建設投資)の増加傾向といった市場環境の変化が生じております。当社グループは市場環境の変化を新たな機会と捉え、積極的な対応を模索しております。

当社で認識する経営環境及び競争力の源泉は次のとおりであります。なお、記載は当社グループの経営成績及び財政状態へ大きな影響を与える主たる事業(建設事業及び製品販売事業)に絞り記載を行っております。

(建設事業)

a.新設橋梁事業

社会インフラの整備が概ね進み、計画路線の逐次完成に伴う新設PC橋梁の発注は減少が予測される一方、整備新幹線の着実な整備やリニア中央新幹線プロジェクトの推進、高速道路のミッシングリンク解消や4車線化計画等も進捗する事から一定の発注量を想定しています。

b.補修・補強事業

既存の社会インフラの老朽化の拡大による補修や、国土強靭化政策に伴い各高速道路会社が進める「高速道路リニューアルプロジェクト」による補修・補強工事の需要が増しています。当社では、他社に先駆けて、高速道路の床版取替工事で使用する部材の製作設備を自社工場に整え、社会の要請に応えています。

(製品販売事業)

各高速道路会社の大規模修繕事業(橋梁・トンネル)及びその他発注者の補修事業も拡大を予想し、建築製品については、全国でスタジアムや物流倉庫等の建設が進められ、旺盛な需要を見込んでおります。

 

(3)中長期的な経営戦略

当社グループは、今後も外的環境の変化に柔軟に対応しつつ、新たな事業領域拡大と組織力強化に向けた経営資源の適切な配分に取り組みます。また、新設橋梁事業の再成長と補修・補強事業の更なる強化、製品販売の事業領域拡大を軸に、新たな成長に向けた取組として、一般土木・建築・防災分野等の新規領域へも挑戦し、以下の中期目標(2027年度)の達成を目指します。

業績目標

(連結 単位:百万円)

2024年度 実績

2027年度 目標

売上高

40,770

50,000

営業利益

1,953

3,000

営業利益率

4.8%

6.0%

当社グループの事業セグメント別の経営戦略は次のとおりであります。

(建設事業)

a.新設橋梁事業

当社グループの経営上の重要課題(マテリアリティ)のうち、最重要課題と位置付けているのは、「人材

確保の推進と育成の強化」です。活発な求人活動と大学等教育機関との共同研究を通して優秀な人材を確保し、若手技術者の早期育成や実績付与、ベテラン技術者の力量アップ、サプライヤーの確保に取り組みます。その上で、新設橋梁分野のシェア向上のために、人的リソースの再投入及び、これまでの高い工事成績評定点を獲得した技術力を強みとして、営業・設計・施工組織の連携による技術提案力の強化によって顧客満足度を向上し、継続的な受注獲得に努め、品質確保とコスト低減を両立していきます。

b.補修・補強事業

高速道路リニューアルプロジェクトによる大規模更新・修繕事業は引き続き、継続されると見込んでいます。そのノウハウの蓄積と、工事の大規模化や長期化に対応しうる社内体制の再構築を図り、技術者の増強による施工体制の確保とDX推進による生産性の向上及び、資本コストを意識した経営を行い、事業拡大に繋げていきます。今後は、都市部での狭隘で難易度の高い床版取替工事に積極的に挑戦し、事業量と利益の拡大を目指します。

また、当社グループ独自の高度な技術(マイクロパイル・K-LIP工法・ELSS Joint等)をさらに磨き、多角的な営業展開を図っていきます。

 

(製品販売事業)

旺盛な土木製品・建築製品の需要を背景に、働き方改革や人手不足の影響を克服するためにも、工場に経営資源を更に投入していきます。その上で、組織としての着想力の強化と、顧客の問題解決に繋がる独自技術や製品を提供していくことで、事業の拡大を目指します。営業面では、トップ営業による大規模なプレキャスト建築製品の受注拡大に注力し、業容拡大を図ります。

(情報システム事業)

当社グループおよび社会に貢献し続ける自立した会社、働き甲斐のある会社になることを根幹とし、目標達成に向け受注環境の多角化、IoT、AI、RPA等の先端技術への取組みによる新規ビジネスの創成、開発プロセスの標準化・効率化による品質向上と原価改善の取組みを要点とし、事業の変革を推進いたします。

(不動産賃貸事業)

当社保有の極東ビルディングのテナント収入が収益の柱となっておりますが、売上と老朽化による維持管理費の収支バランスをとりつつ、売上と利益の最大化を目指します。

また、広島駅周辺開発に伴う需要の高まりを受け、建替えや移転等も視野に費用対効果の最大化を実現し、不動産活用を経営戦略の一環としてとらえ、企業価値向上を目指します。

 

(4)資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

今後の持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現を図るため、資本コストや株価を意識した経営を当社の重要課題と認識しており、定量目標にROE10%以上、PBR1倍以上、連結配当性向40%以上、DOE4%以上を設定しております。

財務KPI

2024年度 実績

2027年度 目標

連結自己資本利益率(ROE)

8.6%

10%以上

連結株価純資産倍率(PBR)

1.00倍

1.0倍以上

連結配当性向

53.0%

40%以上

連結株主資本配当率(DOE)

4.6%

4%以上

(目標とする理由及び目標に向けた取り組み)

①自己資本利益率(ROE)

当社グループの株主資本コスト(期待収益率)は6~7%程度と認識しており、ROEは株主資本コストを十分に上回る10%以上が必要であると認識しています。

ROEを要素分解した結果分析に基づく中長期の改善に向けた以下の取り組みを行っております。

要素

結果分析

改善に向けた取り組み

収益性

収益性低下の要因

・手持ち工事高の増加による施工体制の逼迫(技術者不足の顕在化)

・大型工事案件の設計変更における新単価協議遅延による売上高計上の時期のずれ

・下請労務の需給逼迫による労務費の高騰と鋼材を中心とした資材価格等の高騰

・生産性向上に向けた働き方改革(人事制度改革等)の確実な実行

・PC橋梁・床版取替事業などの優位技術を軸とする安定した収益基盤の構築

・既存事業の減少を見据えた成長分野への領域拡大と開発力強化

資産効率性

総資産回転率低下の要因

・大型工事案件の設計変更における新単価協議遅延による立替金の増加(借入金の増加)

・出来高に見合った工事代金回収の遅延(売上債権の増加)

・JVサブ工事のプール方式による未収入金の増加(未収入金の増加)

・売上債権回転期間の短縮による資金収支の改善

・持続的な成長に向けた、収益力・成長分野・人材基盤の強化への経営資源の適切な配分

財務レバレッジ

大型工事案件の設計変更における新単価協議遅延による立替金の増加(借入金の増加)

・財務規律を意識した柔軟な資金調達

・成長投資と健全性を備えた最適な自己資本水準の確保

 

②株価純資産倍率(PBR)

当社グループでは、PBRを市場評価の指標と認識しております。2024年度のPBRは1.00倍と継続して1.0倍以上を維持しているものの、株価の低迷に伴い低下傾向となっており、ROEの改善と資本効率を意識した株主還元の実施等により、今後継続して1.0倍以上を維持していく必要があると認識しています。

PBRの向上に向けた取り組みは以下のとおりです。

自己株式の取得

・株主還元及び資本政策の一環として、市場環境と資本の状況を見ながら、機動的かつ弾力的に自己株式取得を実施する

株主還元方針の

見直し

・配当政策の見直し:連結配当性向40%以上、DOE(株主資本配当率)4%以上

・流通株式比率増加のための施策を検討

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは、長期ビジョン「Br.VISION 2030」に基づき、「インフラ整備を通じて社会に貢献し、持続的に成長する企業グループ」の実現を目指しております。このビジョンの達成に向けて、2024年度を初年度とする「第1次中期経営計画(2024~2027年度)」を策定し、持続的成長のための経営基盤の整備に取り組んでおります。

建設業界においては、高速道路の大規模更新や整備新幹線、リニア中央新幹線プロジェクトなどの大規模プロジェクトが進行しており、また、既存社会インフラの老朽化に伴う補修・補強需要も増加しております。当社グループにおいても、長期大型工事の受注により、建設事業の期末手持高は48,203百万円となっております。

(長期大規模工事受注件数の推移)

 

2019年3月期

2020年3月期

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

件数(件)

4

4

6

7

4

4

7

(注)当社グループの建設事業は受注額が1件当たり100百万円から300百万円、工期が1年前後の工事が一般的となっております。上表では1件当たりの受注額 1,000百万円以上の工事を長期大型工事として件数を記載しております。なお、これらの工事は一般的な工事と比べ、工期は概ね2から6年(最長10年)と長くなっております。

このような社会インフラへの要請が高まる中、それを支える高度な技術人材の確保・育成が喫緊の課題となっております。当社グループでは、2025年度より段階的に新人事制度導入を進めるとともに、「人材確保の推進と育成の強化」を経営上のマテリアリティと定め、「優秀な人材の獲得・定着・育成」の基本方針のもと、高度な社会インフラを支える人材を育成し、社員と会社の健全な未来の実現に取り組んでまいります。

①人材の獲得

将来のグループを支える人材を確保するため戦略的な採用活動を展開しております。特に、土木・建設系の大学や高等専門学校との共同研究に積極的に取り組み、協働した学生へのリクルートや定期的なインターンシップの受入(2024年度実績:約100名)を通じて学生の採用をすすめています。また、シニア社員の活躍も重視しており、ベテラン技術者の雇用の70歳までの延長や、他社で定年退職を迎えた経験豊富な技術者を「Advanced Civil Engineer(ACE)」として中途採用し、即戦力として迎え入れる制度を確立しております。

②人材の定着

人材の定着には、安心して長く働ける職場環境の整備が不可欠です。当社では、2024年4月からの時間外労働上限規制への対応として、2023年度より段階的にフレックスタイム制度を導入し、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を推進しております。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による業務効率化も大きな柱の一つです。たとえば、現場におけるクラウド型ウェアラブルカメラ「Safie Pocket2」を用いた現場支援システムは、技術継承や安全管理の観点からも有効であり、現場と本部の連携強化によるサポート体制を構築しております。

さらに、新人事制度では、社員の成果と処遇の透明性を高めることを目的とし、昇給・昇格基準、評価制度、福利厚生の再整備を進めております。制度の再構築を通じて、社員満足度のさらなる向上に向けて、定着と成長を促す人財基盤の整備に努めております。

 

③人材の教育

次世代の当社グループを担う高度な技術者の育成に向け、2023年5月、極東興和株式会社にて「極東興和アカデミー」を開校しました。同アカデミーは、「施工管理」「設計」「積算」「営業」「一般教養」の5領域について、1年目から5年目の社員を対象とした段階的な教育プログラムを提供しております。今後は、中堅・ベテラン層や管理職向けのプログラムも拡充し、グループ全体を通じた教育体制へと発展させていきます。さらには、2025年1月より、企業理念やビジョンの共有、社員の業務環境改善、若手社員のキャリア形成のサポートを目的としたメンター制度も実施しております。

また、社外での成長機会として、博士号取得支援や、行政機関が提供する「人材育成事業補助金制度」を活用した大学院修学など、より高度な専門性を身につけるための支援も積極的に展開しております。こうした取り組みにより、単なるスキル習得にとどまらず、技術と経営感覚を併せ持つ人材の育成を通じて、持続可能な事業展開を目指しております。

当社グループは、これら人財戦略の実行を通じて、「日本の社会インフラを支える」という使命を果たすとともに、変化の激しい社会・経済環境に柔軟に対応する強靭な企業体質の構築を推進してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、「世代を超えて、語り継がれてゆくものを」「人々が行き交い、人々に愛されるものづくり」をCSRコンセプトに掲げ、世代を超えて人々が安心して暮らせる社会インフラを提供してまいりました。

橋梁や道路といった社会インフラの建設・補修・補強を中核事業とする当社グループにとって、持続可能な社会の実現は、事業の継続及び成長に不可欠な要素であります。今後も、サステナビリティに関する取り組みを積極的に推進し、その情報開示にも努めてまいります。

当社グループにおけるサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)ガバナンス

当社は代表取締役社長を委員長としたサステナビリティ推進委員会を設置しております。委員長は、気候変動対策業務の指揮・監督を行い、当社グループの気候関連課題への責任を担います。

サステナビリティ推進委員会では、気候変動リスクを含む、全てのサステナビリティ経営の基本方針及び推進活動の基本計画の決定、取り組む課題を検討・審議いたします。

サステナビリティ推進委員会にて審議された事項は、取締役会に付議・報告され、取締役会による監督が適切に図られる体制としております。なお、サステナビリティ推進の専任組織であるサステナビリティ推進室を中心として、グループ横断的にサステナビリティに関する取り組みの立案・展開を行うため、各子会社にワーキンググループを設置しております。

0102010_001.png

 

(2)戦略

気候変動リスク、人材育成及び社内環境整備に関する戦略は以下のとおりであります。

①気候変動リスク

当社グループの主な事業である、土木建設、補修、コンクリート製品製造に対し、気候変動によるリスクと機会を特定しました。気候変動によるリスクと機会の選定にあたり、「2℃シナリオ」、「4℃シナリオ」の二つのシナリオに基づき分析を行い、気候変動に係るリスクと機会を以下の通りに識別しました。

0102010_002.png

 

リスク・機会一覧

分類

リスク・機会

事業及び財務への影響

移行リスク・機会

炭素価格の導入、CO2排出量制限による建設コストの増加

リスク

購入資材のCO2排出及び施工時のCO2排出への炭素税の適用による建設費用の増加及びCO2排出削減目標達成のための排出権購入や証書の購入コスト増加

政府による炭素排出目標達成のための投資抑制

リスク

CO2排出削減目標達成を目的とした公共事業の発注量の減少

低炭素製品需要の増加

機会

CO2排出量を削減した製品需要の増加

低炭素技術の開発

機会

環境保全対策に関連する技術提案の強化による受注機会の増加

クリーンエネルギーへの転換

リスク

クリーンエネルギーによるエネルギー関連コストの増加

機会

エネルギー関連施設の工事需要の増加

物理リスク・機会

気温上昇による労働環境への影響

リスク

ヒートストレスによる健康被害や労働可能な時間帯の減少による生産力低下

機会

プレキャスト製品を活用した省力化施工技術の需要増加

自然災害の激甚化

リスク

防災・減災への自社設備への投資の増加

機会

防災・減災を目的とした設備投資、補修・補強需要の増加

②人材育成及び社内環境整備

当社グループの主要連結子会社である極東興和㈱及び東日本コンクリート㈱においては、次世代育成支援対策推進法及び女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づき、「一般事業主行動計画(次世代法・女性活躍推進法一体型)」を策定しております。男性の積極的な育児参加並びに職場全体の育児への理解を深めることや、仕事と育児の両立支援強化等、中長期の視点で就労環境の更なる改善に注力して参ります。

なお、上記以外の連結子会社及び当社においては、関連する指標の管理及び具体的な取組みついての計画は作成していないため連結ベースの戦略は記載しておりません。

 

a.極東興和㈱における対策

(a)次世代育成支援対策

(男性労働者の育児休業取得率の向上)

 2023年7月以降 社内イントラにて育児休業周知

 2023年10月以降 管理職研修における制度利用促進の周知徹底

  <随時>    対象従業員への個別制度案内

(年次有給休暇の取得日数の増加)

 毎年2回    取得状況の確認

         状況に応じた従業員への取得日数確保要請

  <随時>    社内イントラにて有給休暇取得奨励の案内を掲載

(b)女性活躍推進対策

(女性技術者の採用比率の向上)

 2023年7月以降 教育機関等との連携強化

         リクルートサイトの刷新・SNSの活用

(フレックスタイム制度の整備)

 2024年4月   制度導入

(c)人材育成対策

(社内アカデミー制度の確立)

人材育成プログラムの一環として、従業員の業務遂行能力や生産性等のレベルアップを目指し、社内アカデミー制度を確立します。

 2023年7月以降 社内教育コンテンツの本格運用開始

 

b.東日本コンクリート㈱における対策

(年次有給休暇の取得促進)

   <随時>   社内掲示板にて有給休暇取得奨励の案内を掲載

 2023年5月以降 2022年度の取得状況を把握

 2023年10月以降 上半期取得状況のとりまとめ、下半期へ向けて取得促進取組

 2023年12月以降 対象社員への取得日数確保要請

 2024年3月以降 2023年度の取得状況を把握し、次年度への課題整理

 

(3)リスク管理

  気候変動リスク・機会に関する管理は以下のとおりであります。

①気候変動リスク・機会の識別・評価のプロセス

気候変動リスク・機会は、サステナビリティ推進委員会で審議され、識別されます。気候変動リスク・機会の評価は国際的な気候変動への動向、規制の強化や、気象条件などの変化に基づき、定期的な分析、検討を行い、当社事業戦略に反映させています。

②気候変動リスク・機会への対応・管理のプロセス

 当社グループは、公共事業を事業の主体としており、気候変動リスク・機会の識別・評価において、その動向が大きく影響します。そのため、気候変動に係る官公庁の動向等の情報を特定し、専任組織であるサステナビリティ推進室を中心に、リスク・機会の管理・対応を行っております。

 

(4)指標及び目標

  気候変動リスク・機会及び人材育成及び社内環境整備に関する指標及び目標は以下のとおりであります。

①気候変動リスク・機会(CO2排出量削減目標)

当社グループは、日本政府の掲げる「2050年のカーボンニュートラル目標」に賛同し、その実現に向けて積極的に取り組んでまいります。取引先との協働や、建設現場・工場の運営等を通じ、サプライチェーン全体におけるCO2排出量削減を推進します。

2021年度よりLCIデータベースIDEAv2(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定用)に基づいてCO2排出量を算定しており、Scope1とScope2における中長期的な削減目標を設定しました。

2021年度(14.4t-CO2/億円)を基準年とし、2030年度時点31%削減、2050年度実質排出量ゼロとしています。

 

当社グループの主要連結子会社である極東興和㈱及び東日本コンクリート㈱における人材育成等についての指標及び目標は以下のとおりであります。

なお、上記以外の連結子会社及び当社においては、関連する指標の管理及び具体的な取組みついての計画は作成していないため連結ベースの指標は記載しておりません。

②人材育成及び社内環境整備(管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異)

連結子会社

管理職に占める女性労働者の割合(注)1

男性労働者の育児休業等取得率

(注)2

労働者の男女の賃金の差異(注)1,3

補足

全労働者

うち正規雇用労働者

うちパート・有期労働者

極東興和㈱

5.0

100.0

66.0

70.0%

53.0%

2026年6月までの目標値

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

3.賃金は、基本給、超過労働に対する報酬、賞与を含み、退職手当等を除いております。正規雇用労働者は、当社原籍正規従業員で雇用期間の定めのない者であり、出向者については当社から社外への出向者を除き、他社から当社への出向者を含んでおります。パート・有期労働者は、パート・有期契約従業員等で正規従業員以外の者(派遣労働者を除く)であります。

 

 

③人材育成及び社内環境整備(年次有給休暇の取得日数)

連結子会社

年次有給休暇の取得日数(注)1

補足

極東興和㈱

12

一人当たりの年間平均日数

2026年6月までの目標値 (注)2

東日本コンクリート㈱

7日

一人当たりの年間平均日数

2030年3月までの目標値 (注)3

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「次世代育成支援対策推進法」(平成15年法律第120号)に基づく開示であります。

2.2023年6月下旬に広島労働局に提出した2023年7月以降の一般事業主行動計画の目標値であります。

3.2025年3月に宮城労働局に提出した2025年4月以降の一般事業主行動計画の目標値であります。

 

3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のある事項には以下のものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1)公共事業の削減による影響について

当社グループの主要事業である建設事業は、売上高に占める官公庁等(鉄道建設・運輸施設整備支援機構及び高速道路会社を含める)の割合が約8割と非常に高いため、官公庁等からの発注が予想以上に削減された場合には、経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(2)資材価格、外注労務単価の変動の影響について

当社グループの主要事業である建設事業では受注にあたり、資材価格及び労務単価等の適正水準での契約に努めておりますが、資材価格や外注労務費等が高騰し、それを契約条件にあるスライド条項等により請負金額に反映させることが困難な場合には、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)固定資産の減損リスクについて

当社グループは、有形固定資産、ソフトウエアなどの固定資産を保有しております。有形固定資産及びソフトウエア等のうち、減損の兆候が認められる資産又は資産グループについては、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合、帳簿価額を回収可能価額まで減損し、減損した当該金額を減損損失として計上することとしております。

このため、当該資産又は資産グループが属する事業の経営環境の著しい変化や収益状況の悪化等により、固定資産の減損損失を計上する必要が生じた場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼすことがあります。

なお、当社グループは持株会社方式により運営しており、持株会社である当社は事業会社の運営に必要な資金を事業会社への投融資により供給しております。

事業用資産を保有する事業会社で固定資産の減損損失を計上した場合、事業会社の財政状態悪化を受け、当社個別財務諸表において事業会社への投融資について損失計上を行うことがありますが、損失計上により当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼすことがあります。

 

(4)有利子負債への依存について

当社グループの主たる事業である建設業は請負業であることから資金の立替えが生じます。近年、長期かつ大規模な工事契約が増加していることから、資金の立替えが著しく増加してきております。

当社グループでは、運転資金は主に金融機関からの借入金により調達しているため、有利子負債への依存度が高い水準にあります。当社は、主要グループ各社とキャッシュ・マネージメント・システム(CMS)契約を締結し、グループ資金の効率化を図るとともに、運転資金を使途とするコミットメントラインを活用した資金調達の機動性を確保しておりますが、金利水準が大幅に上昇することがあれば、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

なお、当連結会計年度末の有利子負債の状況は以下のとおりです。

 

2024年3月末

2025年3月末

前期末差

総資産(百万円)

42,351

41,933

△418

有利子負債(百万円)

17,086

19,366

+ 2,279

有利子負債依存度(%)

40.3

46.2

+ 5.8

純資産(百万円)

14,448

15,067

+ 619

自己資本比率(%)

33.9

35.7

+ 1.8

 

 

(5)法的規制等によるリスク

当社グループの主たる事業である建設事業は、土木工事に該当するため、「建設業法」の規制を受けます。

当社グループでは、建設業法に基づき特定建設業許可及び一般建設業許可を受けておりますが、当該許可の諸条件や各法令の遵守に努めており、現時点においてこれらの法的規制に抵触する事実はないと認識しております。

しかしながら「建設業法」に抵触し、営業の全部又は一部の停止命令や許可取消し等の行政処分を受けた場合、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

(許認可等の状況)

会社名

許認可等の名称

許認可等の内容

有効期限

㈱ビーアールホールディングス

建設業許可

(一般建設業許可)

広島県知事許可

(般-5第32261号)

2028年11月30日

(5年毎の更新)

極東興和㈱

建設業許可

(特定建設業許可)

国土交通大臣

(特-1第2840号)

2030年1月18日

(5年毎の更新)

東日本コンクリート㈱

建設業許可

(特定建設業許可)

国土交通大臣

(特-5第2918号)

2029年2月26日

(5年毎の更新)

 

(6)大規模自然災害等

当社グループの主たる事業である建設事業は屋外生産であるため、季節や天候などの自然条件の影響を受けます。近年、日本国内では地震、台風や大雨による土砂災害等大規模自然災害の発生が多発しております。当社グループでは施工管理に万全の注意を払い工事に携わっておりますが、大規模自然災害による工事の中断や大幅な遅延等が当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

 ①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、設備投資の拡大、雇用・所得環境の改善がみられ、景気は緩やかに回復しました。一方で、物価の上昇や不安定な国際情勢に起因する原材料・エネルギー価格の高止まり、米国の関税引き上げ政策による世界経済の減速等、先行きは不透明な状況が続いております。

 当社グループの主力事業である建設業界におきましては、公共投資、民間投資とも堅調に推移しておりますが、供給面においては、建設資材の価格高騰や労務費の上昇及び労務需給の逼迫等の影響もあり、厳しい事業環境が続いております。

 このような情勢の下、当連結会計年度の売上高は40,770百万円(前期比1.3%増)、営業利益は1,953百万円(前期比5.3%減)、経常利益は1,880百万円(前期比7.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,268百万円(前期比6.3%減)となりました。

 当社グループのセグメントの業績は、次のとおりであります。なお、金額にはセグメント間取引を含めております。

(建設事業)

 建設事業におきましては、中国自動車道床版取替工事、新名神高速道路等の大型受注があり、当連結会計年度の受注高は38,863百万円(前期比34.1%増)、手持工事高は48,203百万円(前期比10.5%増)となりました。

 一方、大型工事の進捗が伸びず、また、見込んでいた設計変更による増額契約の獲得が次年度に繰越になった事等により、売上高は34,275百万円(前期比0.3%減)、セグメント利益は3,438百万円(前期比0.0%減)となりました。

(製品販売事業)

 製品販売事業におきましては、当連結会計年度の受注高は前連結会計年度と比べ大型の床版製作が減少し5,399百万円(前期比11.2%減)となりました。

 当連結会計年度の売上高は、契約変更に伴う増額の獲得や大型床版製作の稼働が上がり、6,013百万円(前期比6.9%増)となったものの、材料及び労務費の高騰等によりセグメント利益は74百万円(前期比48.7%減)となりました。

(情報システム事業)

 情報システム事業におきましては、当連結会計年度の受注高は618百万円(前期比10.2%増)となりました。また、受注済案件が順調に進んだことから当連結会計年度の売上高は632百万円(前期比16.8%増)、セグメント利益は43百万円(前期比20.0%増)となりました。

(不動産賃貸事業)

 不動産賃貸事業におきましては、当社保有の極東ビルディングにおいて、一般店舗・住宅の賃貸管理を行っております。

 当連結会計年度の売上高は事務所及びテナントの移転に伴い賃貸収入が減少したことにより、144百万円(前年同期比13.8%減)、セグメント利益は95百万円(前年同期比14.4%減)となりました。

 

 当連結会計年度末の総資産は41,933百万円となり、前連結会計年度末に比べ418百万円の減少となりました。

流動資産は34,627百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,740百万円減少しております。主な要因として未収入金が1,563百万円増加したものの、受取手形・完成工事未収入金等が2,648百万円、未成工事支出金が469百万円、現金預金が129百万円減少したことによるものであります。

 固定資産は7,306百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,322百万円増加しております。主な要因として、減価償却による減少424百万円があったものの、建物・構築物が1,011百万円、リース資産が292百万円、機械、運搬具及び工具器具備品が345百万円増加したことによるものであります。

 負債合計は26,866百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,037百万円減少しております。

 流動負債は22,993百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,410百万円減少しております。主な要因としては、短期借入金が3,000百万円増加したものの、電子記録債務が1,807百万円、1年内返済予定の長期借入金が1,139百万円、支払手形・工事未払金等が946百万円,未成工事受入金が535百万円減少したことによるものであります。

 固定負債は、3,873百万円となり、前連結会計年度末に比べ373百万円増加しております。これは主に長期借入金が増加したことによるものであります。

 純資産合計は、株主配当694百万円に対し、親会社株主に帰属する当期純利益1,268百万円の計上等により、前連結会計年度末比619百万円増加の15,067百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ135百万円減少し、1,680百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロ-)

営業活動の結果、獲得した資金は48百万円となりました。これは主に仕入債務の減少2,753百万円、未収入金の増加1,460百万円、未成工事受入金の減少535百万円があったものの、売上債権の減少2,648百万円、税金等調整前当期純利益1,895百万円、減価償却費424百万円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロ-)

投資活動の結果、使用した資金は1,448百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出1,416百万円等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロ-)

財務活動の結果、獲得した資金は1,264百万円となりました。これは主に長期借入金の返済による支出2,330百万円、配当金の支払額694百万円があったものの、短期借入金の純増3,000百万円、長期借入れによる収入1,300百万円によるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

製品生産重量(t)

前年同期比(%)

建設事業

30,981

84.4

製品販売事業

89,599

116.4

合計

120,580

106.1

(注)当社グループの生産実績は、工場製品の製造における製品生産重量をもって実績としております。

 

b.受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

建設事業

38,863

134.1

製品販売事業

5,399

88.8

情報システム事業

618

110.2

不動産賃貸事業

144

86.2

合計

45,026

125.8

(注)1.セグメント間取引を含めて表示しております。

2.上記金額には消費税等は含まれておりません。

 

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

建設事業

34,275

99.7

製品販売事業

5,979

109.8

情報システム事業

493

123.4

不動産賃貸事業

22

59.9

合計

40,770

101.3

(注)1.セグメント間取引については相殺消去しております。

2.主な相手先の販売実績と総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

西日本高速道路株式会社

11,728

29.1

8,875

21.8

中日本高速道路株式会社

5,692

14.1

5,717

14.0

 

なお、当社グループの主力事業である建設事業の状況は次のとおりであります。

イ.受注高、売上高、繰越高及び施工高

前期(自2023年4月1日 至2024年3月31日)

種類別

前期繰越高

(百万円)

当期受注高

(百万円)

(百万円)

当期売上高

(百万円)

次期繰越高

当期施工高

(百万円)

手持高

(百万円)

うち施工高(百万円)

建設事業

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橋梁

25,223

11,768

36,992

16,774

20,217

2.3

469

16,963

その他

23,786

17,212

40,998

17,600

23,398

0.9

 

211

17,606

合計

49,010

28,980

77,990

34,375

43,615

1.6

 

680

34,569

 

当期(自2024年4月1日 至2025年3月31日)

種類別

前期繰越高

(百万円)

当期受注高

(百万円)

(百万円)

当期売上高

(百万円)

次期繰越高

当期施工高

(百万円)

手持高

(百万円)

うち施工高(百万円)

建設事業

 

 

 

 

 

 

 

 

 

橋梁

20,217

24,506

44,723

18,809

25,913

0.6

142

18,482

その他

23,398

14,356

37,755

15,465

22,289

0.3

 

70

15,324

合計

43,615

38,863

82,478

34,275

48,203

0.4

 

213

33,807

(注)1.前期以前に受注した工事で、契約の更改により請負金額に変更のあるものについては、当期受注高にその増減額を含めております。したがって、当期売上高にもこの増減額が含まれます。

2.次期繰越高の施工高は、未成工事支出金により仕掛工事の施工高を推定したものであります。

 

ロ.売上高

期別

部門

官公庁等

(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

第22期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

建設事業

 

 

 

橋梁

14,307

2,467

16,774

その他

13,874

3,726

17,600

28,182

6,193

34,375

第23期

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

建設事業

 

 

 

橋梁

16,749

2,060

18,809

その他

10,923

4,542

15,465

27,672

6,602

34,275

(注)1.官公庁等には鉄道建設・運輸施設整備支援機構及び高速道路会社を含めて算出しております。

2.第22期の売上高のうち主なものは、次のとおりであります。

 

西日本高速道路株式会社

新名神高速道路大戸川橋他2橋(PC上部工)工事、容谷橋他1橋床版取替他

 

第23期の売上高のうち主なものは、次のとおりであります。

西日本高速道路株式会社

中国自動車道(特定更新等)吉野川橋他1橋床版取替工事、新名神高速道路 大戸川橋他2橋

3.売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は、次のとおりであります。

第22期

西日本高速道路株式会社

11,728

百万円

34.1

 

中日本高速道路株式会社

5,692

百万円

16.6

第23期

西日本高速道路株式会社

8,875

百万円

25.9

 

中日本高速道路株式会社

5,717

百万円

16.7

 

ハ.手持高

期別

部門

官公庁等

(百万円)

民間(百万円)

合計(百万円)

第23期

(2025年3月31日現在)

建設事業

 

 

 

橋梁

23,556

2,357

25,913

その他

19,993

2,296

22,289

43,550

4,653

48,203

(注)手持工事のうち主なものは、次のとおりであります。

西日本高速道路株式会社

新名神高速道路 成合第一高架橋工事

2027年6月完成予定

西日本高速道路株式会社

中国自動車道(特定更新等)宮脇橋他3橋床版取替工事

2028年4月完成予定

西日本高速道路株式会社

中国自動車道(特定更新等)吉野川橋他1橋床版取替工事

2026年6月完成予定

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(経営指標)

当社グループは経営指標として、(連結)自己資本利益率10%以上を継続的に維持することを目標としております。当連結会計年度では、建設事業において大型工事の進捗が伸びず、また、見込んでいた設計変更による増額契約の獲得が次年度に繰越になった事等により前連結会計年度の実績値を1.0ポイント下回り、8.6%となりました。

 

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

前年差

(連結)自己資本

利益率(%)

20.7

12.1

7.6

9.6

8.6

△1.0

 

(経営成績)

建設事業の売上高は、見込んでいた設計変更による増額契約の獲得が次年度に繰越になった事等により34,275百万円と前年同期比で100百万円減少いたしました。

製品販売事業の売上高は、大型床版製作の稼働の好転等により外部売上高は5,979百万円と前年同期比で532百万円増加いたしました。

上記の結果、売上高は40,770百万円と前年同期比で511百万円増加し、経常利益は前連結会計年度と比べ155百万円減の1,880百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度と比べ84百万円減の1,268百万円となりました。

 

2024年3月期

2025年3月期

前年差

売上高(百万円)

40,259

40,770

+511

経常利益(百万円)

2,036

1,880

△155

親会社株主に帰属する当期純利益

(百万円)

1,353

1,268

△84

 

(財政状態)

近年、当社グループの長期大規模工事ではジョイント・ベンチャー(JV)方式による施工が増加してきております。これら長期大規模工事の工事代金の支払いに備えるため、金融機関から短期借入金及び長期借入金により運転資金の調達を行っております。

上記の結果、前連結会計年度と比べ当連結会計年度末の有利子負債残高は2,279百万円増の19,366百万円,純資産残高は619百万円増加となりました。また、負債が減少し、純資産が増加したことにより自己資本比率は1.8ポイント増加し、35.7%となりました。

 

2024年3月期

2025年3月期

前年差

有利子負債(百万円)

17,086

19,366

+2,279

純資産(百万円)

14,448

15,067

+619

自己資本比率(%)

33.9

35.7

+1.8

 

②経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」及び「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定」に記載のとおりであります。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

売上債権の減少等により、営業活動によるキャッシュ・フローは48百万円のプラスとなりました。また、工場建物の取得及び工事用機械の取得等から、投資活動によるキャッシュ・フローは1,448百万円のマイナスとなりました。また、借入金による調達を行った結果、財務活動によるキャッシュ・フローは1,264百万円のプラスとなりました。

 

2024年3月期

2025年3月期

前年差

営業活動によるキャッシュ・フロー

(百万円)

233

48

△185

投資活動によるキャッシュ・フロー

(百万円)

△424

△1,448

△1,023

フリー・キャッシュ・フロー

(百万円)

△191

△1,400

△1,208

財務活動によるキャッシュ・フロー

(百万円)

187

1,264

+1,077

 

b.資本の財源

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設資材の購入費のほか、外注費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

当社グループの資本の財源については事業活動による自己資金のほか、金融機関からの借入れにより確保しております。当連結会計年度は増加する資金需要に備え、短期借入金3,000百万円(純増額)により資金調達を行いました。

なお、金融機関からの借入れについては資金調達の機動性および流動性確保の補完機能を高めるため、金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しており、コミットメントラインの総額は4,000百万円であります。

株主の皆様への還元につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローの水準に拠らず毎期安定的に配当を行うことを目標としており、株主還元の指標として、(連結)配当性向40.0%を目標としております。

当連結会計年度の配当性向は53.0%となりました。

 

2024年3月期

2025年3月期

前年差

(連結)配当性向(%)

47.0

53.0

+6.0

 

c.資金の流動性

当社グループは、資金の流動性を計る指標として流動比率(未成工事支出金及び未成工事受入金を除く。)を重視し、100.0%以上維持することを目標としております。安定した財務基盤の維持に努めた結果、当連結会計年度末の流動比率は153.4%となりました。

 

2024年3月期

2025年3月期

前年差

流動比率(%)

153.1

153.4

+0.3

なお、当社は主要グループ各社とキャッシュ・マネージメント・システム(CMS)契約を締結し、グループ資金の効率的な運用を図るとともに、コミットメントラインを活用した運転資金の機動的な調達を図っております。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

(算出の方法)

当社グループは、工事契約に関して、連結会計年度の末日において測定した履行義務の充足に係る進捗度に基づき、工期にわたって売上高を認識しております。また、当社グループは総工事原価を積算し、契約に係る進捗度を合理的に見積ることが可能であることから、進捗度の見積りにはインプット法を採用しておりますが、総工事原価を合理的に測定できない場合、発生した原価のうち回収されることが見込まれる費用の金額で収益を認識しております。

これらの見積りには不確実性が伴うため、当社グループの業績を変動させる可能性があります。

当社グループでは近年、従来から手掛けてまいりました国土交通省や地方自治体による橋梁新設工事に加え、高速道路会社による既設高速道路の大規模更新・大規模修繕プロジェクト、新幹線の整備計画に付随する工事を受注する機会が増えてきております。これらの工事は、橋梁新設工事と比べ、工事契約の大型化、工期面の長期化、設計変更等による契約変更が多いといった特色があります。

こうした工事では、工事契約の大型化、工期の長期化、工法の複雑化、リスクの分散等への対応から、他社とジョイント・ベンチャー(JV)を組成しJVサブ企業として参画する事案も増えておりますが、単独で契約する場合と比べ請負金額及び工事原価総額の変更等に関する情報を適時・適切な収集が難しい傾向にあります。

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当連結会計年度における研究開発費総額は90百万円であり、既存事業である補修・補強事業の拡張や新たな成長分野となる防災関連・環境課題への対応に関する技術開発に取り組んでいます。

 

(1)補修・補強事業

 

 ①亜硝酸リチウムを活用したコンクリート構造物の長寿命化技術

 当グループでは、京都大学をはじめ多数の大学との共同研究により、鉄筋防錆効果およびASR膨張抑制効果を有する「亜硝酸リチウム」を用いた「ASRリチウム工法」および「リハビリカプセル工法」というコンクリート補修技術を開発、実用化し、技術の普及と発展に努めています。

 本技術は、劣化したコンクリート構造物に対して、亜硝酸リチウム水溶液を内部圧入することで、これまで不可能とされてきたASRの劣化進行を根本的に抑制し、かつ塩害や中性化に対しても、コンクリート中の鉄筋をはつり出すことなく確実に鉄筋を防錆処理することができます。現時点で本工法に対抗し得る類似技術は実用化されていないため、今後もこの分野において高いシェアを維持できると考えます。

 本技術は、港湾分野での大規模補修工事、NEXCOや阪神高速道路での大規模更新事業にも採用され、さらなる販路拡大が期待されています。現在は、全国的に増加している老朽化した道路橋の床版に対して、交通を規制することなく床版下面から施工を行う補修方法の実用化を進めています。

 本技術の発展を通じて、更新(床版取替)に代わる新たな選択肢を提案し、既存の道路橋床版の維持管理の合理化に貢献します。

 

 ②改質材を用いたコンクリート強度回復技術

当グループでは、山口大学との共同研究により、火害やASR等により劣化したコンクリートの強度を回復させる「改質材」を開発し、内部圧入技術を応用したコンクリート構造物の補修方法を確立しました。

火害を模した大型供試体での実証実験では、劣化の程度によっては受熱前の90%以上まで強度が回復することを確認しています。今後は、実構造物への適用に向けて管理基準の整備等、更なる検討を進めます。

本技術により、解体・再構築等の大規模な対策を講じることなく、劣化したコンクリート構造物の性能を改善することができます。

本技術の開発を通じて、社会環境・地球環境の両側面の環境影響を低減した構造物の維持管理に貢献します。

 

 ③既設構造物に対するプレストレス補強技術

当グループでは、得意分野であるプレストレストコンクリート技術のノウハウを応用して、既存構造物の部材内部に追加配置した緊張材によりプレストレスを与えて外観を変えることなく補強する技術「K-PREX工法」を開発し実用化しました。

本技術は、橋梁下部工の耐震補強の他、建築構造物の改築や、港湾施設の補強(部材一体化)等、多様な用途に採用されています。

本技術により、コンクリート部材を拡幅・増設する際にプレストレスを与えることで、接続用に追加配置する鉄筋を減らし躯体への削孔本数を少なくすることができるうえ、コンクリートのひび割れを抑制できるため効果的に構造物の耐久性を向上できます。また、従来の補強工法の課題である既設部材の増厚・重量増加や土中構造物での大規模な掘削を最小化でき、経済性向上(約11%)や工程短縮(約28%)が見込めます。

現在は、床版等の薄肉部材や厳しい腐食環境下にある構造物の改築に適用するため、構造のコンパクト化と非鉄緊張材の適用検討を進めており、さらなる販路拡大を目指します。

本技術の開発を通じて、様々な構造物の効率的な機能向上を図り、社会的な要請に貢献します。

 

 ④床版取替工事の合理化技術

当グループは、日鉄エンジニアリング社との共同開発により、更新工事(既設橋梁の床版取替)における交通規制期間の短縮や施工の合理化・省力化が図れるプレキャスト床版の接合工法「ELSS Joint」を実用化しました。

本技術は、従来のような鉄筋を用いた継手工法とは異なり、プレキャスト床版同士の接合部に専用材料を充てんするだけで鉄筋配置を省略した世界初の画期的な工法であり、従来工法と比較して、労働生産性は14%程度向上し、交通規制期間を1割以上短縮することが可能となります。近年では、床版取替工事での採用も進み、2024年度末までに7橋へ適用されました。今後も3橋に適用が予定されており、さらなる販路拡大が期待されています。

また、ずれ止めが多数配置される鋼合成桁橋の床版更新では、既設床版の撤去において、従来手はつりやウォータージェットによるコンクリートはつりを伴うことが多く、工程の長期化や高コストが課題となっていました。これに対して、コンクリートカッターを使用した合理的な工法「K-SLASH工法」を開発しました。

本技術は、従来方法と比較して工事期間を20%程度短縮することが可能となります。2023年度は1橋に適用し実工事での適用性を確認しました。今後も高速道路の大規模更新事業での採用に向けた取組みを推進し、社会的ニーズに応えていきます。

今後も高速道路の大規模更新事業等において、これらの技術適用に取り組み、更なる工事の効率化を図ります。

 

(2)防災分野・環境課題への対応

 

 ①コンクリート二次製品を活用した防災・災害復旧技術

当グループは、得意分野であるコンクリート製品の製造技術を生かし、キッコウ・ジャパン社との共同開発により、簡易施工の土留め壁「ロックフレーム工法」を実用化しました。

本工法は、コンクリート二次製品の格子状フレームに石材を密に詰め、フレームと石材を一体化した「もたれ式擁壁」です。従来工法と比較して、技能者の減少が著しい石積みの技能に左右されることのない空石積みの特長を活かし、排水性にすぐれ、環境にやさしい、擁壁や護岸を簡易に構築する技術であり、施工が簡易なことから、法面・斜面の防災対策のみならず災害復旧等にも適した工法です。

本工法を適用することで、従来技術と比較し現場工程の短縮(約40%)に加えて、コンクリート使用量の削減に伴うCO2削減(約54%)に貢献できます。今後、フレームのラインナップ拡充による工法の適用拡大を図り、販路拡大を目指します。

本技術の実用化を通じて激甚化する災害への対応と環境負荷低減(CO2削減)に貢献します。

 

 ②非鉄材料を用いたコンクリート二次製品

当グループは、非鉄・非磁性など鉄筋にはない特徴を有する連続繊維材を利用した高耐久な床版の開発を進めています。

腐食リスクを排除したミニマムメンテナンスのコンクリート製品を適用することで、維持管理に伴う二酸化炭素の排出抑制や省力化に寄与します。

また、建設時の二酸化炭素の排出を抑制するため、セメントを高炉スラグ微粉末等の副産物で置換したコンクリートを使用した土木製品が実用化されているなか、このようなコンクリートは低アルカリとなり、その内部に配置される鉄筋が腐食し易い環境となります。その対策として、腐食リスクがない連続繊維材を組み合わせることで、環境に配慮した高耐久な構造物の構築も可能になります。

環境負荷低減に向けた取り組みを継続的に行い、持続可能な社会の実現に貢献します。