第2 【事業の状況】

 

「第2 事業の状況」における各事項の記載については、消費税等抜きの金額で表示している。

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1) 経営方針

当社グループは、「安心感のある快適な生活環境づくり」を事業領域と定め、今後ますます多様化する価値観に対応し、生活者にとって価値のある商品・サービスを提供していくことで、お客様一人ひとりの夢を実現していく。 

また、企業ビジョン「Shinka(深化×進化=真価)し続けるゼネコン―東急建設」は、多様化する顧客ニーズを探究し、最適なソリューションを提供するため、これまで培ってきた技術・ノウハウをさらに「深化」させるとともに、既成概念にとらわれず、技術・サービスのあくなき追求により、新しい事業領域や地域展開に挑戦し自らを「進化」させ、この二つの「Shinka」を両立させることで、「真価ある新しいゼネコン」として社会に貢献し続けていくことを意味しており、この企業ビジョンを理想として掲げ、その実現に向けて不断の努力を重ねていく所存である。

 

このような理念及びビジョンのもと、当社グループが2017年度を最終年度として取り組んできた「中期経営計画(2015-2017年度)」の概要は以下のとおりである。

 

項  目

中期経営計画

計画期間

2015年度より2017年度の3か年

基本方針

(1)『現場力の強化』による安全・品質・工程・利益の追求

(2)『選別受注の実践』による現在・将来の利益へのこだわり

(3)『収益多様化』に向けた取り組みの加速

追加施策

Shinka×ICT(シンカ バイ アイシーティー)

『ICTの積極活用』による新たな価値の提供と業務プロセスの革新

目標指標
(2017年度)

(1)単体営業利益率  4.7%以上

(2)連結経常利益  150億円以上

 

 

(2) 経営環境及び対処すべき課題

今後の建設業界については、引き続き市場環境は好調に推移すると予想される。一方で、東京オリンピック・パラリンピック後には、従来の新設等を主体とした「フロー」型から維持・修繕等の「ストック」型への需要の質的変化や高齢就業者の大量退職による労務不足をはじめ、様々な課題が顕在化してくることが予測される。

このような状況下において当社グループは、こうした環境変化に負けない企業体質を構築するため、2026年を到達時期として、ありたい姿「活力ある風土のもとで真価を発揮する環境変化に負けない企業グループ」を策定するとともに、そのありたい姿に向けた最初のステップとして、「中期経営計画2018-2020『Shinka2020』」を策定した。

今後、ありたい姿の実現に向け、全社一丸となって中期経営計画を推進する所存である。

 

項  目

中期経営計画2018-2020『Shinka2020』

計画期間

2018年度より2020年度の3か年

基本方針

(1)従業員の意欲・能力を引き出す人材・組織の変革

(2)顧客起点と現場力による国内建設事業の強化

(3)戦略事業の拡大による収益多様化の推進

(4)収益力の強化を支える経営・財務基盤の充実

目標指標
(2020年度)

(1)連結営業利益率   6.3%以上

(2)連結売上高   3,120億円以上

(3)連結ROE      13%以上

(4)連結自己資本額 1,100億円以上

 

※「2026年のありたい姿」及び「中期経営計画2018-2020『Shinka2020』」の詳細は、次のURLを参照。

  http://www.tokyu-cnst.co.jp/index/download/3076/inline/20180323_2026_Shinka2020.pdf

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、主として以下のようなものがある。当社グループは、これらのリスクが発生する可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める所存である。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

 

(1) 建設市場の動向

国内外の景気後退等により、建設市場が著しく縮小した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

(2) 東京急行電鉄㈱及び東急グループからの受注の動向

東京急行電鉄㈱は、当社の筆頭株主であり、また、当社は同社の持分法適用関連会社である。
 営業面では、当連結会計年度の同社をはじめとする東急グループ各社からの受注割合は、南町田プロジェクト等の受注により、前連結会計年度から受注高、受注割合ともに増加した。平成30年度計画は前連結会計年度水準を見込んでいる。
 今後、東急グループ各社からの受注が大幅に減少した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

参考:東急グループからの過去2年の受注実績及び今後の受注計画(個別)

(単位:百万円)

 

平成28年度実績

平成29年度実績

平成30年度計画

受  注  高

284,888

291,337

240,000

内、東急グループからの受注高

31,622

74,058

30,000

構 成 比 率

11.1%

25.4%

12.5%

 

 

(3) 需給のひっ迫及び資機材不足等

需給のひっ迫や資機材不足等による建設コストの上昇、工期遅延に伴う損害賠償請求等、請負契約締結後に予想を超える市況変化が生じ、それを請負契約に反映することが困難な場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

(4) 施工における瑕疵や重大事故

設計、施工段階における不具合等によりその修補等に多大な費用を要するような重大な瑕疵が発生した場合や、人身・施工物等に関わる重大な事故が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

 

(5) 事業に対する法的規制

建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、労働安全衛生法、独占禁止法等の当社グループの事業に関連する法令の改廃や新設、適用基準の変更等があった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

(6) 長時間労働に関するリスク

長時間労働・過重労働に起因する生産性の低下、健康不良による休職、人材の流出、重大な事故等が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

(7) 取引先の信用リスク

発注者、協力会社、共同施工会社等の取引先が信用不安に陥った場合、資金の回収不能や施工遅延等により、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

(8) 保有資産の価格変動

景気変動等により保有する不動産、有価証券等の資産価値が著しく低下した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

(9) 国際事業の展開に伴うリスク

国際事業を展開する上で、海外諸国の政治・経済情勢、為替や法的規制等、事業環境に著しい変化が生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

(10) 繰延税金資産に関わるリスク

将来の課税所得等の見積りの変動や税率変更等の税制改正により繰延税金資産の取崩しが必要となった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

(11) 自然災害リスク

地震、津波、風水害等の大規模自然災害や感染症の大流行が発生し、当社グループの従業員や保有資産への被災の他、受注環境の変化、建設資機材や燃料等の価格高騰及び電力供給不足等が生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性がある。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益や雇用・所得環境の改善に伴い、設備投資や個人消費が持ち直しの動きを見せるなど、緩やかな回復基調が続いた。

建設業界においては、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに関連する旺盛な建設需要をはじめとして、公共投資及び民間建設投資が堅調に推移したことに加え、建設コストも安定した状況が続いたことから、市場環境は好調に推移した。

このような情勢下において当社グループは、「中期経営計画(2015-2017年度)」の基本方針に則り、「現場力の強化による安全・品質・工程・利益の追求」、「選別受注の実践による現在・将来の利益へのこだわり」及び「収益多様化に向けた取り組みの加速」を着実に実行し、企業価値の向上に努めてきた。

この結果、当連結会計年度の経営成績は、完成工事高の増加により売上高は320,711百万円(前期比31.6%増)となった。損益面では、営業利益は21,416百万円(前期比24.4%増)となった。また、経常利益は持分法による投資利益654百万円を計上したことなどにより22,128百万円(前期比17.5%増)となった。これに、貸倒引当金戻入額154百万円、子会社清算益111百万円等を特別利益に、固定資産圧縮損71百万円、減損損失40百万円を特別損失に計上し、税金費用等を加味した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は16,118百万円(前期比17.7%増)となった。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりである。
(建設事業(建築))

完成工事高については、国内官公庁工事及び海外工事が減少したものの、国内民間工事の増加により、244,618百万円(前期比46.0%増)となった。セグメント利益については、22,130百万円(前期比33.1%増)となった。

 

(建設事業(土木))

完成工事高については、国内官公庁工事が減少したものの、海外工事及び国内民間工事の増加により、74,089百万円(前期比5.6%増)となった。セグメント利益については、5,214百万円(前期比10.3%増)となった。

 

(不動産事業等)

不動産事業等売上高については、2,003百万円(前期比65.9%減)となった。セグメント利益については、245百万円(前期比82.3%減)となった。

 

当連結会計年度末の資産の部については、未成工事支出金が3,210百万円減少した一方、受取手形・完成工事未収入金等が33,655百万円、現金預金が6,283百万円増加したことなどにより、資産合計は前連結会計年度末と比較して47,868百万円増加(前期比23.4%増)し、252,682百万円となった。

負債の部については、未成工事受入金が5,639百万円、短期借入金及び長期借入金が合わせて3,082百万円それぞれ減少した一方、支払手形・工事未払金等、電子記録債務等仕入債務が41,894百万円、未払法人税等が3,458百万円増加したことなどにより、負債合計は前連結会計年度末と比較して35,073百万円増加(前期比25.3%増)し、173,506百万円となった。

純資産の部については、配当を3,308百万円実施したものの、親会社株主に帰属する当期純利益を16,118百万円計上したことにより利益剰余金が増加した結果、株主資本は12,806百万円増加した。また、その他の包括利益累計額は8百万円減少した。この結果、純資産合計は前連結会計年度末と比較して12,795百万円増加(前期比19.3%増)し、79,175百万円となった。

なお、自己資本比率は、前連結会計年度末と比較して1.1ポイント減少し、31.2%となった。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローについては、売上債権の増加や未成工事受入金の減少等があったものの、仕入債務の増加や税金等調整前当期純利益を22,353百万円計上したことなどにより、16,226百万円の資金増加(前連結会計年度は23,545百万円の資金減少)となった。
 投資活動によるキャッシュ・フローについては、子会社の清算による収入等があったものの、有形及び無形固定資産の取得による支出等により、3,383百万円の資金減少(前連結会計年度は1,717百万円の資金減少)となった。
 財務活動によるキャッシュ・フローについては、長期借入金の返済による支出や配当金の支払額等により、6,457百万円の資金減少(前連結会計年度は2,788百万円の資金減少)となった。
 この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から6,283百万円増加(前期比27.8%増)し、28,865百万円(前連結会計年度末は22,582百万円)となった。
 

③生産、受注及び販売の実績

 a.受注実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

当連結会計年度

(自 平成29年4月1日

至 平成30年3月31日)

増減

増減率(%)

建設事業(建築) (百万円)

227,362

222,530

△4,832

△2.1

建設事業(土木) (百万円)

66,177

76,906

10,729

16.2

   合計    (百万円)

293,539

299,436

5,896

2.0

 

(注) 当社グループでは「建設事業(建築)」及び「建設事業(土木)」以外では受注生産を行っていない。

 

 b.売上実績

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

当連結会計年度

(自 平成29年4月1日

至 平成30年3月31日)

増減

増減率(%)

建設事業(建築) (百万円)

167,558

244,618

77,059

46.0

建設事業(土木) (百万円)

70,190

74,089

3,898

5.6

不動産事業等   (百万円)

5,869

2,003

△3,865

△65.9

   合計    (百万円)

243,618

320,711

77,092

31.6

 

(注)1 セグメント間の取引については相殺消去している。

2 当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載していない。

3 売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の売上高及びその割合は、次のとおりである。

前連結会計年度

 

 

 

 

     東京急行電鉄㈱

26,851

百万円

11.0

 

 

当連結会計年度

 

 

 

 

東京急行電鉄㈱

57,648

百万円

18.0

 

 

 

なお、参考のため提出会社個別の事業の実績は次のとおりである。

建設事業における受注工事高及び完成工事高の実績

 a.受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高

期別

区分

前期繰越
工事高
(百万円)

当期受注
工事高
(百万円)


(百万円)

当期完成
工事高
(百万円)

次期繰越
工事高
(百万円)

前事業年度
(自 平成28年4月1日
  至 平成29年3月31日)

建築工事

228,266

219,176

447,442

160,890

286,552

土木工事

135,833

65,711

201,545

69,845

131,700

364,099

284,888

648,988

230,736

418,252

当事業年度
(自 平成29年4月1日
  至 平成30年3月31日)

建築工事

286,552

214,552

501,105

236,898

264,206

土木工事

131,700

76,784

208,484

73,863

134,620

418,252

291,337

709,589

310,761

398,827

 

(注) 1 前事業年度以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にそ の増減額を含む。従って、当期完成工事高にもかかる増減額が含まれる。また、前事業年度以前に外貨建 で受注したもので、当事業年度中の為替相場の変動により請負金額の増減がある場合についても同様の処 理をしている。

2 次期繰越工事高は(前期繰越工事高+当期受注工事高-当期完成工事高)である。

 

 b.受注工事高の受注方法別比率

工事の受注方法は、特命と競争に大別される。 

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

前事業年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

建築工事

57.0

43.0

100

土木工事

2.0

98.0

100

当事業年度

(自 平成29年4月1日

至 平成30年3月31日)

建築工事

55.3

44.7

100

土木工事

2.4

97.6

100

 

(注) 百分比は請負金額比である。

 

 c.完成工事高 

期別

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

前事業年度

(自 平成28年4月1日

至 平成29年3月31日)

建築工事

23,631

137,259

160,890

土木工事

48,601

21,243

69,845

72,232

158,503

230,736

当事業年度

(自 平成29年4月1日

至 平成30年3月31日)

建築工事

19,228

217,669

236,898

土木工事

41,359

32,504

73,863

60,587

250,174

310,761

 

 

 

(注) 1 完成工事のうち主なものは、次のとおりである。

前事業年度

ファナック㈱

ファナック㈱壬生工場(A工区)建設工事

 

 

三菱地所レジデンス㈱

三菱倉庫㈱

東京建物㈱

港区南青山5丁目計画新築工事

 

 

プリマハム㈱

プリマハム株式会社茨城工場新プラント棟建設工事

 

 

国土交通省

国道45号 豊間根トンネル工事

 

 

花王㈱

生産棟建設工事

 

 

当事業年度

流山1ロジスティック特定目的会社

GLP流山Ⅰ新築工事

 

 

中日本高速道路㈱

新東名高速道路 厚木南インターチェンジ工事

 

 

国土交通省

和歌山地方合同庁舎建築工事

 

 

学校法人帝京大学

帝京大学八王子キャンパス・スポーツ医科学センター新築計画

 

 

HKRJ Roppongi特定目的会社

野村不動産㈱

(仮称)六本木4丁目計画

 

 

2 完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先別の完成工事高及びその割合は、次のとおりである。

前事業年度 

東京急行電鉄㈱    25,451百万円  11.0%

       ファナック㈱     23,128百万円  10.0%

 

当事業年度

東京急行電鉄㈱    57,171百万円  18.4%

 

 d.次期繰越工事高(平成30年3月31日現在) 

区分

官公庁(百万円)

民間(百万円)

計(百万円)

建築工事

9,465

254,741

264,206

土木工事

109,928

24,691

134,620

119,394

279,433

398,827

 

 

(注) 次期繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。

東京急行電鉄㈱

東日本旅客鉄道㈱

東京地下鉄㈱

渋谷駅街区東棟新築工事

平成31年8月完成予定

 

 

 

三井不動産レジデンシャル㈱

(仮称)渋谷区役所建替プロジェクト

平成32年8月完成予定

 

 

 

三井不動産レジデンシャル㈱

エヌ・ティ・ティ都市開発㈱

新日鉄興和不動産㈱

住友商事㈱

住友不動産㈱

大和ハウス工業㈱

東急不動産㈱

東京建物㈱

野村不動産㈱

三菱地所レジデンス㈱

(仮称)晴海五丁目西地区第一種市街地再開発事業5-3街区建築物工事

平成34年9月完成予定

 

 

 

東京急行電鉄㈱

南町田プロジェクト

平成31年10月完成予定

 

 

 

中日本高速道路㈱

新東名高速道路 湯触トンネル他1トンネル工事

平成34年1月完成予定

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。当社経営陣は、連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務等の記載並びに報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りを継続的に行っている。これらの見積りに関しては、過去の実績や現在の状況に応じて合理的な判断を行っている。しかし、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合がある。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、業績については、土木・建築の完成工事高の増加に伴う完成工事総利益額の増加により、増収・増益となり過去最高益を更新するとともに、中期経営計画(2015-2017年度)の最終年度の目標値を大きく上回って達成した。また、財政状態については、利益剰余金の積み上げにより純資産額が増加し、売上規模拡大に伴い総資産が増加した。

平成30年度の見通しについては、完成工事高は土木が増加、建築が横ばいになると予想されるものの、建設コストの高騰等のリスク要因を勘案すると完成工事総利益率は土木・建築ともに低下することが見込まれるため、増収・減益の予想である。

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主な要因は「第2 事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであるが、当社グループの運転資金需要のうち主なものは、工事の完成に要する外注費等の工事費の支払や人件費等の販売費及び一般管理費等の営業費用によるものである。また、当社グループは提出日現在、事業運転資金の安定的且つ機動的な調達を目的として、取引銀行6行によるシンジケーション方式のコミットメントライン契約等からの借入により資金調達を行っている。
 なお、当連結会計年度末の連結貸借対照表に計上されている短期借入金には、1年内返済予定の長期借入金83百万円が含まれている。

 

セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。なお、当社グループは、セグメント資産及び負債については、経営資源の配分の決定及び業績の評価に使用していない。

 

 

(a)建設事業(建築)

当連結会計年度における受注高は222,530百万円(前連結会計年度は227,362百万円)、完成工事高は244,618百万円(前連結会計年度は167,558百万円)、セグメント利益は22,130百万円(前連結会計年度は16,630百万円)となった。

 

(ⅰ) 完成工事高(個別)

当事業年度における当社個別の完成工事高は、前事業年度比76,007百万円(47.2%)増加の236,898百万円となった。

工事分類別では、前事業年度に比べ「事務所」、「マンション」、「教育・研究・文化施設」が増加した。また、発注者別では、官公庁工事は減少、民間工事は増加となった。

(単位:百万円)

 

 

 

前事業年度

当事業年度

増減率

 

完成工事高

 

160,890

236,898

47.2%

 

完成工事総利益

 

21,266

27,568

29.6%

 

 

(ⅱ) 完成工事総利益率(個別)

利益率は、前事業年度における手持工事の設計変更・追加工事の獲得による利益改善の反動等により、前事業年度比1.6ポイント悪化となった。

 

(ⅲ) 受注高(個別)

受注高は214,552百万円で、前事業年度比4,623百万円(2.1%)の減少となった。

 

(発注者別)

中央官庁からの受注は前事業年度比4.1%増加、地方自治体からの受注は同124.2%増加し、官公庁工事の受注額合計では同41.2%増加した。東急グループを除く民間の受注は前事業年度比25.0%減少、東急グループからの受注は同181.7%の増加となり、民間の受注額合計では同4.1%の減少となった。なお、受注高全体に占める東急グループ発注工事の割合は、当事業年度27.8%となった。官公庁工事と民間工事では、官公庁工事6.4%、民間工事93.6%の構成比となった。

 

(工事分類別)

「店舗」は前事業年度比234.6%増加し、構成比では17.6%となった。また、「マンション」は前事業年度比67.4%減少し、構成比では15.2%となった。

 

(エリア別)

国内において、首都圏と地方の比較でみると、首都圏の割合が前事業年度比9.0ポイント減少し、国内全体に占める割合は77.6%となった。

 

(b)建設事業(土木)

当連結会計年度における受注高は76,906百万円(前連結会計年度は66,177百万円)、完成工事高は74,089百万円(前連結会計年度は70,190百万円)、セグメント利益は5,214百万円(前連結会計年度は4,729百万円)となった。

 

(ⅰ) 完成工事高(個別)

当事業年度における当社個別の完成工事高は、前事業年度比4,018百万円(5.8%)増加の73,863百万円となった。

工事分類別では、前事業年度に比べ「鉄道」、「上・下水道」が増加し、「道路」が減少した。また、発注者別では、官公庁工事は減少、民間工事は増加となった。

 

(単位:百万円)

 

 

 

前事業年度

当事業年度

増減率

 

完成工事高

 

69,845

73,863

5.8%

 

完成工事総利益

 

6,917

7,198

4.1%

 

 

(ⅱ) 完成工事総利益率(個別)

利益率は、官公庁工事の減少により前事業年度比0.2ポイント悪化となった。

 

(ⅲ) 受注高(個別)

受注高は 76,784百万円で、前事業年度比11,072百万円(16.9%)の増加となった。

 

(発注者別)

中央官庁からの受注は前事業年度比16.9%増加、地方自治体からの受注は同15.7%減少し、官公庁工事の受注額合計では同9.9%増加した。東急グループを除く民間の受注は前事業年度比26.2%増加、東急グループからの受注は同38.3%の増加となり、民間の受注額合計では同32.5%の増加となった。なお、受注高全体に占める東急グループ発注工事の割合は、当事業年度18.9%となった。官公庁工事と民間工事では、官公庁工事65.3%、民間工事34.7%の構成比となった。

 

(工事分類別)

「道路」は前事業年度比110.3%増加し、構成比では36.6%となった。また、「鉄道」は前事業年度比2.3%減少し、構成比では31.2%となった。

 

(エリア別)

国内において、首都圏と地方の比較でみると、首都圏の割合が前事業年度比2.3ポイント増加し、国内全体に占める割合は52.8%となった。

 

(c)不動産事業等(連結)

不動産事業等売上高は2,003百万円(前連結会計年度は5,869百万円)となった。この主な内容は、賃貸収入等に係るものである。また、損益面では、245百万円のセグメント利益(前連結会計年度は1,387百万円)となった。

 

(d)営業外損益(連結)

営業外収益については、持分法による投資利益の減少等により、前連結会計年度比882百万円の減少となった。また、営業外費用については、固定資産除却損の増加等により、前連結会計年度比33百万円の増加となった。これらにより営業外損益は前連結会計年度比で916百万円悪化した。

 

(e)特別損益(連結)

特別利益については、貸倒引当金戻入額154百万円や子会社清算益111百万円及び補助金収入71百万円を計上したことから、前連結会計年度比149百万円の増加となった。また、特別損失については、固定資産圧縮損71百万円や減損損失40百万円を計上したことから、前連結会計年度比13百万円の増加となった。

 

(f)親会社株主に帰属する当期純損益(連結)

当連結会計年度は、税金等調整前当期純利益22,353百万円(前連結会計年度は18,929百万円)を計上した。また、これに税金費用等を加味した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は16,118百万円(前連結会計年度は13,691百万円)となった。

 

 

4 【経営上の重要な契約等】

特記事項なし。

 

 

5 【研究開発活動】

セグメントごとの研究開発は次のとおりである。なお、「建設事業(建築)」及び「建設事業(土木)」の研究開発費は、建設事業共通でかかる費用のため、「建設事業」として記載している。

 

 [建設事業]

研究開発活動については、受注確保と施工品質向上のため、現場の目線に立ち、技術部門が連携協働し、当社ビジョンと中期経営計画を踏まえ、技術優位性とコスト優位性のある開発技術の早期実用化を目指した。当連結会計年度においては、以下の技術分野に関して、研究開発を進めた。


 1.施工技術       ・省力化技術 ・工期短縮技術 ・ICTロボット技術 ・総合評価対応技術
          ・環境対策技術
 2.鉄道建設        ・人工地盤技術 ・周辺環境対策技術 ・空間利用技術 ・維持管理技術
          ・長寿命化技術 ・LCC(Life Cycle Cost)算定技術
 3.安全安心強靭化 ・延命化技術 ・災害対策技術(地震、洪水等)
 4.快適空間        ・室内環境技術 ・高齢者対応技術
 5.環境共生        ・省エネ技術 ・ZEB(Zero Energy Building)・地球温暖化防止技術
          ・汚染対策技術
 6.街づくり    ・多摩田園都市再開発のための都市計画技術 ・ストック活用技術
           ・木造建築多様化技術
 

更に、大学、公共研究機関及び関連企業との共同研究をはじめとする社外連携を進め、競争的資金の活用等により研究開発の効率を高めている。特に、東京都市大学とは平成18年に結んだ産学連携に関する包括契約を改正し、8テーマの共同研究を実施した。

当連結会計年度における研究開発費は、971百万円である。

 

 主な研究開発成果は次のとおりである。

 

     (1)建物のモニタリング状況の見える化システム「4D-Doctor」の開発

当社と富士電機㈱は、平常時から大地震時までの建物のモニタリング状況を見える化し、建物の健全性を診断する構造ヘルスモニタリングシステム「4D-Doctor(フォーディードクター)」を共同開発した。
 現在、高層複合オフィスビル(東京都渋谷区)1棟、超高層オフィスビル(大阪府大阪市)1棟、東急建設技術研究所(神奈川県相模原市)内の建物2棟と富士電機東京工場(東京都日野市)内の建物1棟に「4D-Doctor」を導入し、①地震時BCP支援、②中長期の建物更新検討、③耐震補強前後における補強効果の検証、④将来発生する可能性のある地震に対する被害想定等の防災ソリューション事業に資する実証試験を行っている。
 システム導入提案だけでなく、システム運用に関するサポートや災害時における人的支援も視野に入れ、システム導入後も顧客の防災力向上につながる、地域防災マネジメントとしての展開を目指している。今後、東急グループ各社との連携を通じて顧客からの要望を組み込んだシステム開発を継続し、新たな防災ネットワークの価値創造に努めていく。

 

 

     (2)「掘削土砂定量供給装置」の開発

当社は、掘削土砂処理の効率化を実現する「掘削土砂定量供給装置」を開発し、当社施工の「渋谷駅南街区プロジェクト(渋谷ストリーム)新築工事」に導入し、工期短縮を実現した。
 現在、旧東急東横線渋谷駅の線路跡地とその周辺敷地では、高さ約180m、地上35階、地下4階建ての大規模複合施設「渋谷ストリーム」(床面積約116,300㎡)の新築工事を行っている。従来、地上躯体を構築しながら同時に地下掘削を行う建築工事では、掘削土砂を地上に揚重する開口部の設置場所が制限されるため、効率的な土砂運搬が困難であった。
 開発した「掘削土砂定量供給装置」は、掘削土砂をクレーン(クラムシェルバケット)からベルトコンベアへ連続的に受け渡す装置で、揚重及び搬出場所の制限を受けても掘削土砂を効率的に運搬し、クレーンの性能を最大限に発揮しながらの土砂運搬を可能とした。

 

     (3)ZEB提案のモデルとした技術研究所に水素エネルギー供給システム「H2One™」を導入

当社は、「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」の実証リニューアルモデルとして、平成28年8月から技術研究所管理研究棟のZEB化改修に取り組んでいる。
 今年度は、自立型水素エネルギー供給システム(㈱東芝製「H2One™」)を導入した。太陽光発電の電力を利用し、二酸化炭素を排出しない水素製造・貯蔵・利用発電システムで、オフィスビルとしては初導入である。平成30年2月から再生可能エネルギーを含めたエネルギー需給等の運用データを順次蓄積し、来るべき水素社会にも対応可能なZEB技術の提案に活用していく。
 今回の技術研究所管理研究棟のZEB化改修によって、一次消費エネルギーは基準オフィスビルに比べて40%程度になり、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)において「ZEB Ready」の認証を受けた。

 

     (4)気象庁提供のオープンデータを活用した「都市河川監視システム」を開発

当社は、中央大学と共同で、ゲリラ豪雨等の都市型水害に対して、気象庁が提供している観測・解析データ(オープンデータ)を活用した「都市河川監視システム」を開発し、今年度から実証試験に着手した。
 実証試験は、渋谷川を挟んだ渋谷再開発の建設現場で行っている。今回開発したシステムの主な特長は、高解像度降水ナウキャストから得られる降雨予測情報をもとに、①クラウド上で洪水解析を行い5分毎に1時間後までの河川水位を予測すること、②対象流域を250mメッシュで細かく分割した予測を行い、ゲリラ豪雨のような局地的集中豪雨にも対応できることである。また、ウェブ画面上で河川水位の変化を「見える化」することで、パソコンやタブレットを使って遠隔地の関係者と情報を共有することもできる。
 本システムで予測した河川水位が管理値を超過する場合は、工事関係者にアラートメールが一斉に発信され、更に、現場に設置した回転灯が作動することで、工事現場では迅速な緊急時体制をとることができる。
 年々増加している豪雨に対応した防災・減災の技術は、今以上に必要となる。当社では、本システムを活用して豪雨災害に強い現場管理を目指す。

 

     (5)「大開孔基礎梁工法」を開発

当社、清水建設㈱、㈱鴻池組、㈱錢高組、コーリョー建販㈱は、鉄筋コンクリート造の基礎梁に経済的に開孔(貫通孔)を設けるための工法「大開孔基礎梁工法」を開発し、一般財団法人日本建築総合試験所から、建築技術性能証明を取得した。
 鉄筋コンクリート造建物の基礎梁に点検用の人通孔(通常径600㎜~750㎜)等を設置する場合、一般的には「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」を適用し、通常、梁せい(高さ)を開孔径の3倍以上とする必要がある。
 本工法は、簡易に施工できるコーリョー建販㈱製の開孔補強金物「ダイヤレン」を使うと共に、開孔周囲を補強する補強筋(開孔上下、孔際、水平)を配筋することで、開孔に対し2.5倍の基礎梁せいでも、構造上必要な耐力を確保することができた。本工法の採用により、基礎部の掘削土量や基礎梁コンクリート量の削減が可能となり、経済的な施工を実現できる。

 

 

     (6)「TQ-MIX構法」に耐震ブレースを付加し適用範囲を拡大

当社は、「TQ-MIX構法」(柱RC梁S造)の適用範囲改定を一般財団法人日本建築総合試験所に申請し、建築技術性能証明を取得した。
 改定に際しては、十字形柱梁接合部試験体、ブレース付十字形柱梁接合部試験体の加力実験を実施するとともに詳細なコンピューターシミュレーション(FEM解析)を併用して、検証を実施した。改定により、これまで純ラーメン構造に限定されていた「TQ-MIX構法」に耐震ブレースを付加した設計・施工が可能となった。また、柱幅と梁せいの比率に関する規定を改定したことで、物流施設等の床荷重が大きく梁スパンも長い案件において、従来よりも柱幅を小径化することが可能となり、構造性能を損なうことなくより経済的な施工を可能にした。

 

     (7)FILM工法用防水シートの導水性能向上

当社と藤森工業㈱、フジモリ産業㈱は、FILM工法(背面平滑型トンネルライニング工法)用防水シートの導水性能を向上させた製品を共同開発した。
 従来のトンネル工事における覆工コンクリート裏面排水は、ホースや排水マット等の裏面排水材を用い、裏面排水工まで線状に排水材を配置して導水する。今回の開発製品は、防水シートの裏面緩衝材を目的別に3層構造(固着層、導水層、面導水層)とすることで導水性能を向上し、湧水量が比較的多い区間で効果を発揮する。垂直方向の導水性は充填材の有無に関わらず従来と同程度、面内方向は従来品に比べ約50倍の導水性能がある。

 

     (8)トンネル点検システムの実証実験を施工現場で実施

当社は、国立研究所開発法人新エネルギー・産業開発機構(NEDO)より戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)インフラ維持管理・更新・マネジメント技術の研究・開発を委託され、当社を研究代表者として東京大学、湘南工科大学と共同開発中の「トンネル全断面点検・診断システム」の実証実験を当社施工のトンネル工事で行った。
 本システムはトンネル内の道路を跨ぐ形で移動できるため、自動車等の通行を妨げることなく点検を行うことを目標としている。本システムは、覆工コンクリートのひび割れと浮きを自動検出するひび割れ検出ユニットと打音検査ユニットを併用することにより定量的かつ、経時的な変化を点検データとして取得できるだけでなく、更に帳票作成までの作業を効率化することが期待されている。
 実証実験では、点検作業の手順や、取得した点検データの解析時間等について検証を行い、また、現地で具体的に説明を行った。今後は、既設トンネルの定期点検だけでなく竣工前検査でも本システムの活用について検討を進める予定である。

 

なお、子会社においては、研究開発活動は特段行われていない。

 

       [不動産事業等]

研究開発活動は、特段行われていない。