文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「わが社は、「食べる喜び」を基本のテーマとし、時代を画する文化を創造し、社会に貢献する。」「わが社は、従業員が真の幸せと生き甲斐を求める場として存在する。」という2つの企業理念を掲げております。「食べる喜び」とは、「食」を通してもたらされる「おいしさの感動」と「健康の喜び」を表しており、このことは人々の幸せな生活の原点であると考えます。「食べる喜び」をお届けすることで、人々の楽しく健やかな暮らしに貢献することが私たちの使命です。また当社グループは従業員全てが生涯を託すに足る企業グループを目指しています。自分自身のため、会社のため、社会のために全力を尽くすことが、全ての従業員に幸福をもたらすとともに、ニッポンハムグループの経営の基盤となります。
2021年4月に、企業理念を追求する上でのマイルストーンとしてニッポンハムグループ「Vision2030」を策定しました。また、「Vision2030」の実現に向けて取り組むべき重要な社会課題を、ニッポンハムグループ「5つのマテリアリティ」として特定しました。企業理念に掲げている「食べる喜び」をお届けするために、当社グループは事業戦略とマテリアリティの実践を通したサステナビリティ戦略を両輪で進め、事業を通した社会課題の解決に努めていきます。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、2024年4月1日から2027年3月31日の3年間を「中期経営計画2026」とし、事業計画を策定しました。「中期経営計画2026」最終年度となる2027年3月期において、売上高1兆3,800億円、事業利益610億円、事業利益率4.4%、ROE7.0~8.0%、ROIC5.0~6.0%を経営目標とし、達成を目指してまいります。また、「中期経営計画2026」の2年目にあたる次期の業績目標につきましては、連結売上高1兆4,000億円、事業利益540億円、事業利益率3.9%、ROE5.8%、ROIC4.9%の目標を掲げております。
(注) 1 事業利益は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を控除し、当社グループが定める為替差損益を加味するとともにIFRS会計基準への調整及び非経常項目を除外して算出しております。
2 「中期経営計画2026」並びにその見直し・修正計画等(以下、「当中期経営計画」)は、現時点で入手可能な情報や、合理的と判断した一定の前提に基づいて策定した計画・目標であり、潜在的なリスクや不確実性等を含んでいることから、その達成や将来の業績を保証するものではありません。また実際の業績等も当中期経営計画とは大きく異なる結果となる可能性がありますので、当中期経営計画のみに依拠して投資判断をくだすことはお控えください。なお、将来における情報・事象及びそれらに起因する結果にかかわらず、当社グループは当中期経営計画を見直すとは限らず、またその義務を負うものではありません。
(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題
当社グループは企業理念である「食べる喜び」をお届けし続けるために、2030年のありたい姿として定めた「Vision2030」“たんぱく質を、もっと自由に。”の実現に向け、新たな挑戦に取り組んでまいります。
「中期経営計画2026」は、「たんぱく質の価値を共に創る企業へ」をテーマに掲げ、「Vision2030」で示した新たなステージへ到達するため、バックキャストで特定したビジネスモデル変革に向けた課題に対し、構造改革と成長戦略、風土改革を三位一体で進め、価値創造企業に進化する3年間と位置付けております。これまでの食のインフラを担う企業としてたんぱく質を安定的にお届けすることに加え、様々なパートナーと力を掛け合わせ、たんぱく質の新たな価値創造に取り組むことで、社会課題の解決に努めてまいります。加えて、資本コストを上回るリターンの追求と株主還元の強化等の資本最適化施策の推進により企業価値の向上に努めてまいります。


<ニッポンハムグループ「Vision2030」>“たんぱく質を、もっと自由に。”
ニッポンハムグループ「Vision2030」は、これまでの提供価値である「安全・安心」「おいしさ」に加え、常識にとらわれない「自由」な発想で「たんぱく質」の可能性を広げることで、社会環境や人々のライフスタイルの変化に対応する多様な食シーンを創出し、毎日の幸せな食生活を支え続けたいという当社グループの想いを「2030年におけるありたい姿」として表現しております。

<全社戦略>
新たなステージに向け、挑戦と共創をキーワードに取り組む「中期経営計画2026」では、構造改革と成長戦略、風土改革を通し、環境変化への対応力を身に付け、より高い価値を生み出す力を獲得していきます。構造改革では、「最適生産体制」、「低収益事業見直し」、「商品ミックス改善」への取組みを通し、不透明な環境下を勝ち残る競争力を獲得します。成長戦略では、「ブランド強化」、「グローバル強化」、「営業横断」、「R&D強化」、「ボールパーク」への取組みを通し、価値の源泉となる無形資産の育成・強化を図ります。風土改革を通して、目指す「挑戦する組織風土の醸成」に向け、「変革型経営人財の育成・獲得」と「多様な人材の活躍推進」に取り組むことで、価値を生み出す基盤を構築してまいります。
ニッポンハムグループ 「中期経営計画2026」全体構想

<会社の対処すべき課題>
日本国内においては個人消費や設備投資が内需を牽引し経済成長を支えると見込まれていましたが、海外においてはユーロ圏経済の回復ペース鈍化に加え、米国政局動向等下振れリスクも指摘されています。特に関税政策においては中国経済への影響が大きい一方、日本から米国への輸出事業も下押し圧力を受けることが想定され、予断を許さない状況が続いています。
そのような環境の中において、2025年度より当社のバリューチェーン価値最大化を推進すべく、「海外事業本部」を廃止し、加工事業本部と食肉事業本部の二事業本部体制への組織再編を行いました。これにより、当社が保有する加工技術や人財ローテーションの国内外での連携を加速・強化し、成長戦略で掲げた「グローバル強化」に取り組んでまいります。
加工事業につきましては、前年からの構造改革を通し商品構成の改善を一層進め、シャウエッセンをはじめとする重点ブランド等お客様に求められる価値ある商品の提供に努めるとともに、新しい食シーンの創造を通した新カテゴリーと新販路の開拓を進め、収益性の改善に取り組んでまいります。北米において、当事業年度買収したLJD Holdingsグループの製販拡大、アセアンにおいては、CP Foodsとの共創を一層推進することで、海外売上拡大に取り組んでまいります。
食肉事業につきましては、国産鶏肉の増羽とブランド食肉比率向上、国産豚肉の増頭と生産性改善、輸入食肉の在庫管理強化に取り組むとともに、当社グループで生産から手掛けるブランド食肉(国産鶏肉桜姫、国産豚肉麦小町、豪州産牛肉大麦牛ANGUS)の拡販に加え、引き続き好環境が見込まれる豪州牛肉事業の生産強化に取り組んでまいります。
ボールパーク事業につきましては、引き続きボールパークの魅力をさらに高めるイベントやコンテンツづくりに取り組むとともに、中長期的な事業創造として新駅開業を見据えたボールパークを起点とする街づくりにも取り組んでまいります。
2024年度より立ち上げました成長戦略プロジェクトでは、JA全農との包括的な事業連携により畜産業の新たな価値創出と国内畜産業の持続的発展を目指すとともに、たんぱく質の可能性を最大限に引き出す全社R&D戦略により食領域と新領域で新たな価値と未来を創造します。また、当社基幹システム「Connect」導入及びAI活用によりデジタル変革・業務変革を推進してまいります。
<ニッポンハムグループのサステナビリティ戦略とマテリアリティ>
2024年4月に「中期経営計画2026」の策定に合わせて、事業活動を通じて社会課題を解決し、人々の楽しく健やかな生活に貢献し、地球環境との調和を目指すために、サステナビリティ戦略を策定しました。この戦略では、「食べる喜びの提供」、「新たな価値の創出」、「地球環境の保全」、「レジリエントな事業基盤の強化」の4つの柱を設定しました。また、当社を取り巻くビジネス環境の変化やステークホルダーからの期待に応えるため、当社グループの重要課題をマテリアリティとして特定し、サステナビリティ活動を進めていきます。
「サステナビリティ戦略」

「マテリアリティ」
たんぱく質の安定調達・供給
畜産業が抱える課題に真摯に向き合い、人が生きる上で欠かせないたんぱく質を将来にわたり安定的に提供し続けます。
食を通した豊かな生活への貢献
世の中の変化を的確に捉えて、お客様の期待を超える商品やサービスを提供します。潜在的なニーズを掘り起こし、常識にとらわれない自由な発想で、新たな「食べる喜び」を創出します。
※「Mealin’Good」はフィーリングッドにミールを掛け合わせ「人も地球も心地よく、より良い毎日へ。」という想いを込めた当社のブランドです。様々な倫理観や価値観に対し選択肢を増やしていくこと、今までの取組みを大切にしながら、もっと人と地球に良いものを提供することを目指しております。
持続可能な地域環境への貢献
自然の恵みや生命の恵みに感謝するとともに、将来世代に豊かな地球環境をつないでいくために、サプライチェーンを通して環境課題の解決に向けて積極的に取り組みます。
※対象範囲:容器包装リサイクル法対象製品のうち、化石燃料由来の包装資材
新たな価値の創出
前例にとらわれず、様々なパートナーとともに、今までにない商品やサービス、体験等新たな価値を創出します。
挑戦する組織風土の醸成
多様な従業員一人ひとりが主体性を持ち、変革に向かって挑戦し続けることのできる組織風土を醸成します。
本項においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、当連結会計年度末現在における一定の前提に基づき当社グループが判断したものであり、様々な要因により実際の結果は大きく異なる可能性があります。
(1)当社グループのサステナビリティに関する基本的な考え方
当社グループは「食べる喜び」を基本のテーマとし、時代を画する文化を創造し、社会に貢献することを企業理念の一つに掲げております。2021年3月に策定された「Vision2030」では、環境・社会に配慮した安定供給に取り組み続けることや、自由な発想でたんぱく質の可能性を広げ、多様な食シーンを創出し、毎日の幸せな食生活を支え続けたいという想いを込めております。
「
「マテリアリティ」は「
① ガバナンス
当社グループは、当社の取締役会長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しております。同委員会は原則として四半期に1回開催しており、ESGに関する知見を有する社外有識者や社外取締役からの意見を聞きながら、サステナビリティに関する方針、戦略の策定、グループ各社の取り組み状況の確認等を行います。その内容をまとめ、決定機関である取締役会に諮っております。
下部組織であるサステナビリティ部会は、委員会で話し合われた戦略を具体化し、事業本部の施策に展開しております。環境対策、サステナブル調達、本社の間接部門を中心とするサステナビリティ関連情報の共有は、執務会議を設置し対応しております。
推進体制図

組織体ごとの活動
(注)「*」環境方針に基づく重点テーマ:気候変動、プラスチック削減、水、食品ロス、廃棄物削減、生物多様性
「2024年度」気候変動に関する議論内容
② 戦略
当社グループは、「Vision2030」の実現に向け、「マテリアリティ」を掲げ、サステナビリティ戦略と事業戦略の融合による持続的な企業価値の向上に取り組んでおります。「マテリアリティ」に沿った各種の施策について、様々なステークホルダーと対話を重ねながら実行することにより、事業を通した社会課題の解決に努め、持続可能な社会の形成に寄与してまいります。
③ リスク管理
当社グループにおける全般的なリスク管理については、「
④ 指標と目標
当社グループは、「マテリアリティ」に沿って、それぞれ施策・指標を策定しております。各施策や指標の進捗状況については、業務執行部門により定期的に取締役会に報告されております。
当社グループは、「マテリアリティ」における「持続可能な地球環境への貢献」を実現するため、二つのKPIを掲げ、取組みを推進しております。一つ目は、プラスチック使用量削減に取り組んでおります。二つ目は、2030年度を見据えた化石燃料由来のCO2排出量削減を設定しております。また、2050年に向けては、カーボンニュートラルの実現を目指し、日々の活動を推進していきます(中長期環境目標)。
(2) 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への取組
① ガバナンス
気候変動対応を含むサステナビリティのガバナンスについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) 当社グループのサステナビリティに関する基本的な考え方 ① ガバナンス」をご参照ください。
② 戦略
シナリオ分析と対応
脱炭素社会をキーワードとし、2つの対比的な気候変動シナリオパターンを設定、分析を実施しております。サステナビリティの戦略のうち特に重要となる気候変動対応に関しては、パリ協定(2015年)、IPCCによる「1.5℃特別報告書(2018年)」、「第6次報告(2023年)」の内容も踏まえ、当社グループの主要事業において気候変動が与えるリスク・機会について以下のように考えております。
シナリオの概要

(注)1 各発生時間軸が示す期間は以下のとおりです。
短期:3年未満、中期:3~10年、長期:10年超
2 「*1」配合飼料における穀物等の配合を成長に適したものに調整し、効率の良い体重増加を促す
ことをいいます。
3 「*2」1.5/2℃シナリオにおいて現在の排出量が継続した場合と2030年度目標を達成した場合の
影響を算出しております。
特定したリスク・機会への対応
a. 飼料価格の上昇・不安定化による飼育コストの上昇
(特定理由)
当社グループでは家畜の生産事業を行っており、家畜飼料を重要な調達品の一つとして認識しております。配合飼料の主な原料は穀物であり、今後、人口増による食糧需要の拡大、気温上昇や渇水による収量減少、品質低下、バイオマス燃料需要との競合の可能性等から、飼料価格が上昇する可能性が考えられます。シナリオ分析を実施した結果、気温上昇の程度によっては一部の穀物は増収する可能性がありますが、4℃シナリオでは穀物が減収し、調達コストが増加する可能性があります。
(対応状況)
飼料価格高騰に伴うコスト増への対応として、商品の販売価格改定のほか、飼料要求率の改善による飼料コストの削減を進めております。また、グループ外からの畜肉調達におけるコスト上昇や市場への供給量不足の状況下でも、安定した供給を維持するため、新たな取引先を開拓し、調達先を拡大して、より安定的な畜肉調達網の構築を進めております。
b. 家畜生育への気温上昇影響
(特定理由)
家畜の生育には気温や湿度等の環境が大きく影響します。当社グループの生産飼育拠点が存在する日本、豪州、トルコで分析を行った結果、気温上昇に伴い、一日あたりの増体量が低下する可能性があり、自社の生産コスト増加に加え、グループ外からの畜肉調達コストにも長期的リスクがあると考えております。
(対応状況)
(事例)
「養鶏での暑熱対策」
養鶏の暑熱対策として、農場へのクーリングパッド、ミスト装置の設置を進めております。
飼育管理の改善、暑熱環境下での生産成績を上げるための技術開発を進めます。
c. d. 拠点における水災害リスク・水ストレスの高まり
(特定理由)
気候変動に伴い異常気象が増加する中、激甚災害のリスクや水ストレスが高まる可能性があります。
当社グループではそれぞれのリスク評価を行いました。今後も毎年リスクモニタリングを継続するとともに、各拠点での対応を進めてまいります。
(対応状況)
水ストレス高地域における取水量(2023年度)
(注)1 「*1」について、管理手法を前年度より変更し、2024年4月時点の拠点数を元に記載しております。
2 「*2」について、複数拠点ありますが管理上1拠点に統合してカウントしております。
3 「*3、4」について、全体のうち水ストレス高地域での拠点数、取水量の%を記載しております。
e. 炭素税導入費用によるエネルギー費用の高まり
(特定理由・対応状況)
1.5℃/2℃シナリオにおいて、化石燃料由来のCO2排出に対する炭素税の導入が考えられています。財務インパクトを評価した結果、事業に大きなインパクトを与える可能性が特定されました。当社グループはカーボンニュートラルを目指し、脱炭素に向けた各施策を進めております。
(注)1 財務インパクトは、2023年度の排出量での計算と2030年度の削減目標が達成された場合を比較して
おります。
2 炭素税価格については、IEAの World Energy Outlook 2024のNet Zero by 2050シナリオを参考にして
おります。
また、2030年度はUSD140/t- CO2、2050年度はUSD250/t- CO2、1USD=140円で算出しております。
f. 環境に配慮した消費動向の強まり
(特定理由)
脱炭素が進む社会では、気候変動及びサステナビリティへの関心が高まり、環境対応が進む企業や商品が選ばれやすくなることが予想されます。当社グループは、事業を通じてサステナビリティ価値を実現し、消費者に明確に伝えることが重要になっていきます。持続可能な社会への貢献を目指し、グループ全体でサステナブルな商品とサービスの提供を進めていきます。
(対応状況)
プラスチック使用量の削減を通したCO2排出量の削減
当社グループは、包装資材に多量のプラスチックを使用していることから、20年以上にわたり使用量の削減や環境配慮型包材の使用に取り組んできました。商品設計段階での包装資材の削減、環境配慮型包装資材の活用、包装資材のリサイクル等によりプラスチック使用量を削減しております。
主要ウインナー商品の包装形態をエコ・ピロタイプへ変更したことで、包装資材重量を2022年より28%削減しました。(*1)また、「中華名菜®」のノントレイ化を実施したことで、プラスチック使用量を2022年より約21%削減しました。(*2)
その他にも、鶏肉「桜姫®」では、包装資材の一部にバイオマス素材を使用したプラスチックを利用する等の取組みを展開しております。
(*1)「シャウエッセン®」巾着127g 2束と比較(フィルム重量比)しております。
(*2)中華名菜15品中10品の2021年出荷数に基づき算定しております。
Mealin’Good ブランドの展開
「Mealin’Good」はフィーリングッドにミールを掛け合わせ「人も地球も心地よく、より良い毎日へ。」という想いを込めたブランドで、当社グループのサステナビリティの取組みを商品に表現したものです。
「環境・資源を大切にする」「健やかなからだづくりに貢献する」「新たな価値観への選択肢提供」という3つのアクションを掲げて商品を開発・提供しております。

g. 新たんぱく質市場の拡大
(特定理由)
将来的には世界人口増によるたんぱく質需要の増大を背景に、畜肉市場に加えて新たなたんぱく質を含む市場の拡大が見込まれます。当社グループは、たんぱく質の供給企業として多様なたんぱく質需要への対応と新たなたんぱく質の研究・開発を進めております。
(対応状況)
当社グループでは、植物由来商品である「ナチュミート」シリーズをコンシューマ向け、外食・流通企業向け双方で展開しております。また、細胞性食品(培養肉)の外部研究機関やスタートアップとの共同研究を実施しております。その他にも、コストの高い動物血清を使用せず、食品を主成分とした培養液を使用して、これまでより安価に細胞を培養する方法の開発や、「麹」を活用した新たな食品の研究開発、また、たんぱく質と同時に食物繊維も手軽に摂れる素材として、独自の繊維化技術を活用した「FiTeiN」を開発しております。
③ リスク管理
当社グループでは代表取締役社長により設置されるリスクマネジメント委員会で全社的リスクを一元的にカバーしており、事業活動に影響を及ぼす気候変動、生物多様性に関連するリスクを重点リスクとして特定しております。リスクの対応に向けた取組みは環境対策会議でリスクや機会の特定、戦略並びに具体的な施策の検討が行われ、その上位組織であるサステナビリティ委員会での議論を経て、取締役会で審議・決定をしております。
④ 指標と目標
当社グループは環境保全のありたい姿を定め、その実現に向けた中長期環境目標、カーボンニュートラルに向けたロードマップを設定しております。
人と地球の調和した姿「エコサイクル」
人と家畜をはじめ、地球上のあらゆる生命を形づくる炭素・水・窒素等の物質は、自然の営みによって再生され循環しています。しかし、人口増加や企業活動により、化石燃料や資源の使い過ぎが進み、地球の物質循環の限界を超えて、気候変動や大気、水の汚染等の環境課題を引き起こしています。
当社グループは、事業活動における資源の使用と排出が、地域や取引先との共生(エコシステム)によって自然と調和した物質循環(サイクル)となるよう、ありたい姿を「エコサイクル」と呼び、取組みを進めていきます。

当社グループ中長期環境目標(抜粋)
カーボンニュートラルに向けたロードマップ

(国内)

(海外)

化石燃料由来のCO2削減に向け、「中期経営計画2023」で環境投資枠を設定し、約14億円の投資を実施しました。この投資によるCO2削減効果は約11,000t-CO2/年です。「中期経営計画2026」では成長投資500億円の中で約15億円の環境投資を予定しております。また、投資判断の指標の一つとしてインターナルカーボンプライシング(ICP)を導入しております。排出削減見込量に対し、5,500円/t-CO2のコスト削減効果を考慮し、環境投資計画を評価しております。
また、省エネルギー活動や燃料転換を進めるとともに、再生可能エネルギーの活用を積極的に進めております。食品工場で発生する廃食油をバイオマス燃料として活用するほか、再生可能エネルギー由来の電力の導入を進めております。
北海道でのカーボンニュートラル農場への挑戦
太陽光発電施設からの電力供給、エネルギー利用の効率化を進めながら、家畜由来の温室効果ガスについては日本国内の畜産・農業と関連するカーボンクレジット等の活用を検討しカーボンニュートラル農場の稼働を目指しております。
家畜由来温室効果ガスに対する取組み
当社グループは、外部からの畜肉調達のほかに、自社グループ内で家畜の生産飼育から販売まで行っており、家畜由来の温室効果ガス排出削減は大きな課題です。現時点では経済性と両立できるような合理的な削減方法がなく、大学や複数の企業と連携した取組みを進め、家畜由来の温室効果ガスの削減につながる技術開発や研究を推進しております。
・家畜由来のメタン排出量抑制につながる研究実施状況
Scope3に対する取組み
当社グループのサプライチェーンにおける間接排出(Scope3)の多くは、調達品に関連する排出となっております。サプライヤーとのコミュニケーションを通じて上流の排出状況を把握し、課題をサプライヤーと共有の上、協力しながらともに排出削減を進めていけるよう取り組んでまいります。
2023年度 Scope3排出量内訳

(注)詳細については、下記URLをご参照ください。
データブック (
(3) 人的資本
① 人財戦略
当社グループは企業理念である「わが社は、従業員が真の幸せと生き甲斐を求める場として存在する」の実現に向けて、社会価値と事業価値の向上に取り組み、企業価値の最大化を目指しております。そして、その重要な原動力である人財を「人的資本」と捉え、その価値を最大化するための「人財戦略」を策定しております。人的資本の最大化に向けて、「個の成長」「組織の成長」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)」を3本柱に据え、それぞれの求める成果に紐づく施策を人的資本投資として推進しております。
人財戦略の全体像

a. 個の成長
従業員の働き甲斐は、社会への貢献のほかに、自らの挑戦と成長の実感によっても得られると考えております。当社グループでは、従業員一人ひとりが自らの成長ストーリーを描き、「ありたい自分」への成長意志とキャリアプランを持ち、自己実現に向けた挑戦や実践・研鑽ができるよう、様々な支援に取り組んでおります。
b. 組織の成長
価値創造力の強化を主眼とし、多様な強みを統合することで、より大きな価値を創造する力を養います。事業戦略に応じたリーダーシップ開発支援を行い、価値創造機会を創出・拡充し、学習する組織を実現します。
c. ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)
心理的安全性実感の下、多様な価値観が尊重され一人ひとりが生き生きと活躍できる環境を提供しております。また、多様なキャリア・働き方が選択できるような、働き方改革・学び方改革、両立支援の取組みを進めていくと同時に、多様な個・経験・スキルが活かされ、ともに成長できる場の実現にも取り組んでおります。
(注)これまでの取組みの詳細については、下記URLをご参照ください。
統合報告書/アニュアルレポート(
データブック (
サステナビリティレポート (
② 経営戦略との連動
当社グループは2024年4月1日から2027年3月31日(第80期~第82期)の3年間を「中期経営計画2026」とし、「たんぱく質の価値を共に創る企業へ」をテーマに掲げております。「Vision2030」で示した新たなステージへ到達するため、構造改革と成長戦略、風土改革を三位一体で進め、価値創造企業へ進化する3年間と位置づけました。
企業価値の最大化に向けて、構造改革と成長戦略を推進していくための重要な基盤となるのが変革に向けた従業員一人ひとり、そして組織としての挑戦です。「中期経営計画2026」においては、「挑戦する組織風土の醸成」を重点課題とし、人財戦略の実行を通じてその実現を目指します。
重点施策としては、変革型経営人財の育成・獲得及び多様な人財の活躍推進に向けた各種取組みを進めてまいります。
「中期経営計画2026」人財戦略 重点課題

③ 指標と目標
当社グループは人的資本の最大化に向け、多様な人財の活躍推進として、各施策に対する指標を設定し、可視化することでその実効性を高めております。
各社、事業特性や経営方針に応じた取組みを設定し、グループ全体で取組みを推進しております。
なお、指標及び目標は、法律や制度が異なる海外グループ会社を含めた連結グループ統一の目標設定はしていないため、当社の指標及び目標を記載します。
(注) 目標を随時変更する可能性があります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、本項においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、特段の断りがない限り当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) リスクマネジメントに関する体制
当社は、リスクマネジメントに関する基本方針や管理体制の概要を定める「リスクマネジメント規程」に基づき、代表取締役社長を最高責任者とするリスクマネジメント体制を採用しております。
代表取締役社長により設置される「リスクマネジメント委員会」では、全社的なリスクを一元的にカバーしており、各種リスクの識別、評価、重点リスクの特定及び対応方針の検討に努めております。同委員会の方針を踏まえ、各事業部門及び各部署は自らの事業領域や職掌に関するリスクの統制活動を実施しており、これらの結果は同委員会を通じて取締役会に報告されます。取締役会では、同委員会で検討した当社グループの経営活動に大きな影響を及ぼす可能性のある重要なリスクについて対応方法の検討を行っております。また、重大なリスクの顕在化を認識した際には、有事のリスク対応として危機対策本部を設置します。クライシスの内容や想定される影響度に応じた対策機関を組成し、迅速かつ適切な対応に努めております。
なお、日常的な事業活動から生じる商品市況リスクへの対処は各事業部門、財務リスクへの対処は経理財務部及び関係する各事業部門が実施しております。
重大なリスクの検討スキーム

(2) 事業遂行上のリスク
リスクマネジメント年間スケジュール
当社では、リスクマネジメント委員会においてグループで対応すべき重点リスクを特定し、優先順位をつけ年間を通じてリスク対応を行っております。
当連結会計年度は、情報セキュリティのリスク対応として、全社にてサイバー攻撃に対するBCPの強化を進めております。

グループを取り巻くリスク全般から大きな影響を及ぼす可能性があるリスクを抽出しプロットしたリスクマップを掲載します(下図)。
当社グループで取り組む重点リスクを特定する際には、本リスクマップや社会状況、当社グループの状況を勘案し決定します。その他、グループ各社別のリスクマネジメントの状況を監督し、適時顕在化してきたリスクをリスクマネジメント委員会で取り上げ、必要に応じてグループ全体でリスク対応を実施します。
なお、リスクマップ中のリスク項目について、以下に記載しますが、これらは、当連結会計年度末現在の状況に基づき、当社グループにて判断したものになります。

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況の概況は以下のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における食品業界は、継続する円安や原燃料の高止まりによるコスト負担を背景に各社値上げの必要性に迫られる一方、比較的高い賃上げが実行されながらも実質賃金の大幅な改善に至らず、個人消費においては引き続き低価格商品が志向され厳しい収益環境にありました。2025年度も大手各社で賃上げが行われ、経済政策も期待されることから個人消費は徐々に回復するとみられるものの、米国政局動向の影響で金融市場が混乱、世界経済の鈍化も懸念され、力強い回復への不安材料となっております。
このような中、当期は「中期経営計画2026」の初年度として、挑戦と共創をキーワードに「構造改革」、「成長戦略」及び「風土改革」に覚悟を持って挑み、企業価値を高め、持続的な成長を実現する企業体への変革に向け取り組んでまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は、食肉事業における販売価格の上昇に加え、海外事業において豪州の牛肉販売が伸長したこと等により、対前年同期比5.1%増の1,370,553百万円となりました。事業利益は、加工事業において商品ミックスの改善や生産の最適化が進んだことにより収益性が改善したものの、食肉事業における上期の国産鶏肉の相場安や輸入食肉の販売数量が減少したこと等が影響し、対前年同期比5.3%減の42,540百万円、税引前当期利益は持分法による投資利益の減少等から対前年同期比8.4%減の37,198百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は対前年同期比5.3%減の26,585百万円となりました。
(注) 事業利益は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を控除し、当社グループが定める為替差損益を加味するとともにIFRS会計基準への調整及び非経常項目を除外して算出しております。
セグメントの概況
当社は、当連結会計年度より、従来「その他」の区分に含めていたボールパーク事業について、重要性の高まりを勘案し、独立して記載しております。そのため、前連結会計年度のセグメント情報は、変更後の報告セグメント区分に組替えて、比較分析を行っております。
〔加工事業本部〕
売上高は、「シャウエッセン」やチルドベーカリー群の販売が好調に推移したものの、低収益商品の見直し等の戦略的な商品統廃合や、デリ商品を中心に業務用商品等の販売数量が減少したことが影響し、対前年同期比2.2%減の421,752百万円となりました。事業利益は、価格改定効果に加え、ハム・ソーセージの商品ミックス改善や生産の最適化が進み収益性が向上したこと、さらに一次加工品、エキス、乳製品が伸長したこと等から、対前年同期比10.5%増の10,748百万円となりました。
〔食肉事業本部〕
売上高は、輸入食肉の価格高騰に伴う国産食肉の需要増加により、主に量販店向けの販売が好調に推移したこと等から、対前年同期比5.0%増の819,346百万円となりました。事業利益は、上期における国産鶏肉の相場安や生産部門での飼料価格等のコスト上昇に加え、輸入食肉の仕入コスト高騰に対する価格転嫁の遅れが影響し、対前年同期比15.2%減の28,868百万円となりました。
〔海外事業本部〕
売上高は、豪州の牛肉事業における販売数量の拡大及び販売単価の上昇に加えて、北米において鶏肉加工品販売が順調に推移したこと等から、対前年同期比9.5%増の317,556百万円となりました。事業利益は、豪州の牛肉事業における販売数量拡大やフィードロット拡充による出荷頭数の増加により利益確保が進んだこと、トルコの鶏肉事業において飼料高に対する価格転嫁が進んだこと等から、対前年同期比82.0%増の4,477百万円となりました。
〔ボールパーク事業〕
チーム成績が好調であったことから、主催するレギュラーシーズン公式戦において過去最高の動員記録を達成しました。また、プロ野球オフシーズンにおいても様々なイベントを実施したことにより「北海道ボールパークFビレッジ」の来場者数が堅調に推移し、チケット・飲食収入が増加したことで、売上高は対前年同期比13.5%増の26,976百万円、事業利益は対前年同期比41.6%増の3,347百万円となりました。
地域別売上高の状況は以下のとおりです。
① 日本
日本では、食肉及び加工食品の販売単価が上昇したことにより、売上高(外部顧客に対する売上高)は、対前年同期比2.8%増の1,176,594百万円となりました。
② その他の地域
その他の地域では、主に食肉の販売単価が上昇したことにより、売上高(外部顧客に対する売上高)は、対前年同期比22.1%増の193,959百万円となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前年同期末比0.9%減の949,272百万円となりました。流動資産は、豪州において生体牛の肥育頭数が増加したこと等から生物資産が前年同期末比26.1%増の32,063百万円となりましたが、前連結会計年度末が金融機関の休業日であった影響等により営業債権及びその他の債権が前年同期末比13.9%減の142,107百万円、その他の流動資産が前年同期末比28.6%減の14,500百万円となったこと等から、前年同期末比4.0%減の406,308百万円となりました。非流動資産は、その他の金融資産が前年同期末比8.3%減の27,514百万円となりましたが、米国にて鶏肉加工品等の製造・販売会社を子会社化したことに伴うのれんの増加、DXの推進によるソフトウエアの増加等により無形資産及びのれんが前年同期末比46.1%増の37,716百万円となったことで、前年同期末比1.5%増の542,964百万円となりました。
負債につきましては、当面の資金需要に備え調達を実施したこと等により有利子負債が前年同期末比4.2%増の223,902百万円となりましたが、営業債務及びその他の債務が前年同期末比9.0%減の106,269百万円となったこと等から、前年同期末比1.6%減の412,200百万円となりました。
親会社の所有者に帰属する持分につきましては、当期利益26,585百万円により増加しましたが、現金配当12,217百万円による減少、自己株式の取得20,171百万円による減少等により、前年同期末比0.6%減の524,293百万円となりました。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は0.2ポイント増の55.2%となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物残高は、前年同期末に比べ6,092百万円増加し、71,557百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー) 77,441百万円の純キャッシュ増
営業活動によるキャッシュ・フローは、営業債務及びその他の債務の減少9,864百万円等がありましたが、税引前当期利益37,198百万円、減価償却費及び償却費41,728百万円、営業債権及びその他の債権の減少23,053百万円等により、77,441百万円の純キャッシュ増となりました。(前期は、86,586百万円の純キャッシュ増)
(投資活動によるキャッシュ・フロー) 42,717百万円の純キャッシュ減
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産等の取得35,967百万円、事業の取得に伴う支出14,361百万円等により、42,717百万円の純キャッシュ減となりました。(前期は、39,224百万円の純キャッシュ減)
(財務活動によるキャッシュ・フロー) 29,851百万円の純キャッシュ減
財務活動によるキャッシュ・フローは、借入債務による調達41,895百万円等がありましたが、借入債務の返済34,203百万円、自己株式の取得のための支出20,195百万円等により、29,851百万円の純キャッシュ減となりました。(前期は、53,189百万円の純キャッシュ減)
a. 生産実績(製造原価ベース)
(注) 主に加工事業本部の生産実績であります。当社グループでは、生産飼育から処理・加工・販売までの全てを一貫して行っており、その生産・販売品目も主として食肉に関連した広範囲かつ多種多様なものとなっております。また、同種の品目についても容量、形態、包装等も一様でなく、食肉等については、販売用とハム・ソーセージ、加工食品等の原料用にも使用されており食肉等の生産実績を金額あるいは数量で示すことが困難であります。
b. 受注実績
当社グループは、主に需要予測に基づく予定生産を行っております。一部、当社の子会社プレミアムキッチン㈱は受注生産を行っておりますが、受注当日ないし翌日に製造、出荷しているため、受注高並びに受注残高の記載を省略しております。
c. 販売実績
販売実績については、「(1)① 財政状態及び経営成績の状況」において記載しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
当社グループの連結財務諸表は、IFRS会計基準に準拠して作成しております。従って、当連結財務諸表の作成にあたっては、主として我が国の会計慣行に準拠して作成された会計帳簿に記帳された数値に対していくつかの修正を加えております。IFRS会計基準に準拠した財務諸表の作成にあたり、連結会計年度末日現在の資産・負債の金額、偶発的な資産・負債の開示及び報告対象期間の収益・費用の金額に影響を与える様々な見積りや仮定を用いております。実際の結果は、これらの見積り等と異なる場合があります。
なお、重要性がある会計方針及び見積りの内容については、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 及び 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 経営者の問題認識と今後の方針について
当社グループは企業理念である「食べる喜び」をお届けし続けるために、2030年のありたい姿として定めた「Vision2030」“たんぱく質を、もっと自由に。”の実現に向け、2024年4月に「中期経営計画2026」を策定いたしました。「中期経営計画2026」は、「たんぱく質の価値を共に創る企業へ」をテーマに掲げ、「Vision2030」で示した新たなステージへ到達するため、バックキャストで特定したビジネスモデル変革に向けた課題に対し、構造改革と成長戦略、風土改革を三位一体で進め、価値創造企業に進化する3年間と位置付けております。また、2021年からの当社ビジネス環境とサステナビリティに関するステークホルダーからの期待の変化を鑑み、マテリアリティの見直しを行いました。これまでの食のインフラを担う企業としてたんぱく質を安定的にお届けすることに加え、様々なパートナーと力を掛け合わせ、たんぱく質の新たな価値創造に取り組むことで、社会課題の解決に努めてまいります。
当連結会計年度の取り組み成果としては、加工事業に関しては、価格改定効果に加え、ハム・ソーセージの商品構成及び生産の最適化の推進により収益性が向上したこと、一次加工品・エキス・乳製品が伸長したこと等から増益となりました。食肉事業に関しては、上期において国産鶏肉の相場安や生産部門での飼料価格等のコスト上昇に加え、円安による輸入食肉の仕入コスト高騰に対する価格転嫁の遅れが影響し、減益となりました。海外事業に関しては、豪州牛肉事業における販売数量拡大やフィードロット (牛肥育施設) 拡充による出荷頭数の増加により利益確保が進んだこと、トルコ鶏肉事業において飼料高に対する価格転嫁が進んだこと等から、増益となりました。ボールパーク事業に関しては、チーム成績が好調であったことから、主催するレギュラーシーズン公式戦において過去最高の動員記録を達成しました。また、プロ野球オフシーズンにおいても様々なイベントを実施したことにより「北海道ボールパークFビレッジ」の来場者数が堅調に推移し、チケット・飲食収入が増加したことで、増収増益となりました。
「中期経営計画2026」1年目としては、売上高1兆3,400億円、事業利益480億円、売上高事業利益率3.6%、ROE5.2%、ROIC4.4%を掲げておりました。当連結会計年度の結果としては、売上高1兆3,706億円、事業利益425億円、売上高事業利益率3.1%、ROE5.1%、ROIC3.9%となりました。「中期経営計画2026」初年度は、全体戦略で定めていた目標は概ね達成し順調な滑り出しとなりましたが、国内の消費環境や食肉の調達環境への対応が遅れ事業利益は未達となりました。特に急激な需要変動に適応しきれなくなった輸入調達体制や消費者ニーズ変化への対応が遅れたマーケティング体制が課題と認識しており、今後柔軟な生産・販売体制での全体の収益機会を最大化するためバリューチェーンの見直しを実施してまいります。
「中期経営計画2026」全体戦略進捗
セグメントごとの見通しは、以下のとおりであります。
※海外事業本部管轄下であった、全ての海外子会社・関連会社をそれぞれ加工事業本部及び食肉事業本部へ移管しております。
〔加工事業本部〕
加工事業につきましては、マーケティング活動の促進によるデリ商品の回復に加えて、主力商品である「シャウエッセン」のブランディング強化を通じて、売上高の拡大を目指します。また、北米における新たな子会社を活用した鶏肉加工品の製造数量拡大や、構造改革の更なる推進による継続的な収益性の向上を図ります。
<事業戦略>
国内戦略 構造改革推進と成長戦略に向けた仕組み作り
開発・マーケティング:市場変化に即応する顧客視点のマーケティング・商品開発を実現するための仕組み改革
製造・物流:計画どおり製造ライン削減を実現、最適物流体制への変革
販売:変化する市場環境への適応と企業価値向上を目指す「質」重視の販売戦略
海外戦略 国内外のグループアセットを最大限活用し、海外マーケットを拡大
・エリア特性に合わせた戦略策定
・国内外の加工シナジー創出に向け海外タスクチームを組織
〔食肉事業本部〕
食肉事業につきましては、国産鶏肉の販売価格上昇や、豪州牛肉事業における数量伸長に加え、豚の新生産農場の本格稼働により、売上高の増加を見込んでおります。さらに、付加価値の高いブランド食肉の生産拡大や相場の好転、輸入食肉の調達体制の見直し等により、安定した収益基盤の確保を進めます。
<事業戦略>
生産:数量拡大・生産性向上
調達:(国産)社外調達の強化、(輸入)調達のマネジメント体制強化
マーケティング:食肉R&Dの推進、収益基盤強化に向けてブランド戦略を再構築
物流・販売:IDPOSを活用した付加価値を付けた営業人財に変革、エリアごとに利益最大化を図る販売体制を構築、持続可能な物流体制の構築へパレタイズ輸送を拡大
〔ボールパーク事業〕
ボールパーク事業につきましては、「エスコンフィールド HOKKAIDO」の内野グラウンドを天然芝から人工芝に変更することで、非試合日に様々なイベントの開催が可能となることから、来場者数の更なる増加を見込んでおります。また、試合前後に飲食やアクティビティを楽しめる新たな飲食商業施設の設置により、来場者の満足度を高め、持続的な集客力の強化に取り組みます。
b. 資本の財源及び資金の流動性について
当社グループの主な資金需要は、「中期経営計画2026」における「構造改革」「成長戦略」「風土改革」をテーマとした戦略実行に必要な設備投資、成長・R&D投資、株主還元のほか、運転資金、借入金の返済及び利息の支払等であります。
資金調達については、調達コストの適正化とリスク分散を意識し、直接金融と間接金融を組み合わせ、長期と短期のバランスを勘案しながら、低コストかつ安定的な資金を確保するよう努めております。また、グループ全体の資金効率の向上と金融費用の削減を目的として、日本国内及び海外においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しております。
該当事項はありません。
当社グループの事業を支える基盤研究から、応用研究、商品開発に及ぶ研究開発活動は、中央研究所、及び各セグメントの開発部門によって展開されております。その中核となる中央研究所では、「Vision2030」“たんぱく質を、もっと自由に”の実現に向けた5つのマテリアリティ「たんぱく質の安定調達・供給」、「食を通した豊かな生活への貢献」、「持続可能な地球環境への貢献」、「新たな価値の創出」、「挑戦する組織風土の醸成」における技術革新及び新規事業を目指した研究開発を推進してまいりました。
当連結会計年度の主な取組みは以下のとおりです。
(1)「たんぱく質の安定調達・供給」に関する研究開発
当社基幹事業である食肉事業領域における研究開発として、健全で生産性の高い食肉生産を目指した取組みを継続しております。定期的な家畜の健康診断による農場衛生管理の支援を行うとともに、家畜の生産管理に寄与する新しい技術や新たなブランド食肉の開発につなげる研究開発を進めております。
持続可能な畜産業を目指した研究開発の一つとしてIoT・AIを活用した養豚管理の技術開発に関する取組み「スマート養豚プロジェクト」を継続いたしました。本プロジェクトは養豚事業における働き方の改革と生産性の向上を実現することを目指しており、当社中央研究所とグループ会社の日本クリーンファーム㈱、日本ハムエンジニアリング㈱が㈱NTTデータ及び㈱NTTデータSBCと連携して進めております。
当連結会計年度におきましては、研究成果であるAI技術を活用して豚の発情を検知し、繁殖業務を支援するシステム「PIG LABO® Breeding Master」についてニッポンハムグループが保有する農場での商用稼働及びグループ外の農場への提供を開始いたしました。これにより、日本の養豚業界の活性化と労働人口の減少という社会課題の解決に貢献するものと期待しております。
また、豚の3D画像を基に体重を推定するAI技術を国立大学法人宮崎大学と共同開発し、豚の群体重を推定できるシステム「PIG LABO® Growth Master」の開発を行いました。本システムを社会実装することにより、更なる養豚業の生産性向上や労務軽減を実現し、養豚産業の魅力、価値向上の一助になると考えております。
今後さらに本取組みを推進し、グループ畜産事業の生産性向上を実現する技術を確立するとともに、将来的には日本の畜産業の持続可能性と環境負荷低減に貢献することを目指してまいります。
国内の家畜防疫及び畜産物の安定供給への貢献を目指した研究開発の一つとして、家畜伝染病の一種である口蹄疫※を迅速に検出する技術開発に取り組み、動物用体外診断用医薬品として承認されました。簡易迅速性を有するため、早期段階での察知、被害の最小化への寄与が期待されます。今後も当該キットの供給を通じて、家畜伝染病予防法に基づく国内の口蹄疫防疫対策、畜産物の安定供給に貢献してまいります。なお、農林水産省の戦略的監視・診断体制整備推進委託事業で口蹄疫抗原検出キットを開発いたしました。
持続可能なたんぱく質の一つとして、「麹」及び「細胞性食品(培養肉)」の研究開発を行っています。「麹」はたんぱく質や食物繊維を豊富に含む栄養価の高い食材です。麹の効率的な生産方法及び麹を使用した新たな加工食品の研究開発に注力しております。また、「細胞性食品」は食肉由来の細胞を培養する技術で、食品原料として活用するためのキーとなるのは細胞生産コストの低減です。この課題を解決するため、最適な家畜由来細胞や安全な培養液、生産効率の良い培養システムの研究開発を、スタートアップ企業や社外研究機関と共同で進めております。将来の動物性たんぱく質源の選択肢の一つとなるよう、研究開発を推進してまいります。
※口蹄疫とは、口蹄疫ウイルスによって起こる伝染病で、主に偶蹄動物(牛、豚、羊、山羊等)が感染します。伝染力が非常に強く、感染拡大のスピードが速いため、世界的な食料需給に大きな影響を及ぼし、経済的被害が最も大きい疾病の一つです。
(2)「食を通した豊かな生活への貢献」並びに「新たな価値の創出」に関する研究開発
国内最大級のたんぱく質供給企業として、中央研究所では当社グループからお届けしている様々な商品におけるお客様の安全・安心の向上に寄与するために、当社グループ品質保証を支える食品検査とその技術開発を積極的に進めております。当期におきましても、消費者に安心して当社グループ商品を手にしてもらうために、引き続きグループ商品とその原材料の安全を確認するための検査を継続いたしました。今後も食品衛生及び品質管理のための検査機能強化と、その基盤技術を生み出す研究開発を推進し、当社グループ商品の品質向上と世界の食品産業全体の多様化、安全・安心に貢献していく技術の開発を進めてまいります。
環境負荷低減を目的として未利用・低利用の畜産資源の高度利用を目指した健康食品、健康機能素材の研究開発についても継続して実施しております。
当連結会計年度の当社グループ全体の研究開発費は、
なお、当社グループの研究開発活動は、主として食品事業活動に必要な基盤研究から商品開発に及ぶ様々な研究開発を推進しており、特定のセグメントに関連付けることが困難であります。