文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、中期経営計画において財務目標を定めております。2024年度を初年度とする3ヶ年中期経営計画(ローリングプラン)の着実な実行により、自己資本利益率(ROE)10%以上及び、配当性向40%以上を目標としつつ安定的配当を継続的に実施することで、持続的な成長と企業の永続性の確立、並びに事業を通じたステークホルダーへの貢献を目指してまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
① 基本方針
当社グループは「おいしさと感動で、食文化と社会に貢献」の実現に向けて、中期経営計画の基本方針として、「営業力・開発力・商品力の強化により、売上と利益の規模と質を高めると同時に、サステナビリティを重視した経営を推進し、『いつも、ずっと、お客様に愛され、支持される会社』になる」を掲げています。経営目標としては、2024年度売上高4,700億円、営業利益160億円、親会社株主に帰属する当期純利益100億円を目指してまいります。
② 重点施策
方針1 持続可能な経営基盤の強化
当社グループは重要課題(マテリアリティ)の解決に向けた目標設定と活動計画を策定・推進しております。環境への対応のひとつとして温室効果ガス排出量の抑制に取り組みます。また、従業員は企業の礎であり、成長の柱です。従業員が心身ともに健康で、働きがいのある職場づくりを目指した活動を継続展開し、変革意識の醸成と健全な企業体質を構築します。さらにコンプライアンス意識とガバナンスレベルの向上を実践し、適切な情報開示の充実に努めます。
2023年度は、「プリマハムグループ人権方針」、「プリマハムグループ調達方針」を制定いたしました。また、「水使用量の削減」、「プラスチック使用量の削減」、「生物多様性の保全」を重要課題(マテリアリティ)に追加いたしました。
方針2 外部環境の変化に対応した収益基盤の構築
加工食品事業部門は、茨城工場を基盤としてコスト競争力、供給能力を高めております。加えて鹿児島新工場が本格稼働し、供給能力の拡大と強みのある商品の市場定着を図っております。さらに、当社グループ独自の製造技術の開発やお客様の声をふまえた商品の開発に取り組み、価値ある商品の提供を目指します。
食肉事業部門は、最新の設備と防疫体制を構築した、宮城新農場の肥育・出荷は順調に進み、良質な豚肉を適正な価格で販売拡大できるよう、様々な取り組みを進めていきます。また、既存農場のリニューアルと生産性向上を進めて国産豚肉のインテグレーションを強化し、収益力の向上と安定供給体制を構築します。さらに、食肉事業の販売利益管理を徹底し、収益力の向上を図ります。
方針3 成長投資とグローバル展開
伊藤忠商事㈱とのコラボレーションや業務提携等を主体として、日本国内及び海外の事業領域拡大を進めます。海外事業は、グループ会社の所在国及び周辺国への販売を進めておりますが、東南アジア市場を中心とした市場参入の礎としてシンガポール企業を買収しており、タイの生産子会社とともに東南アジア市場における売上拡大を進めてまいります。
また、業務の標準化と自動化を進めて、デジタル技術を活用した効率的な業務プロセスの構築と戦略的な情報管理の実現に向けた活動を進めてまいります。
(4) 経営環境及び対処すべき課題
今後の我が国の経済は、回復基調が見込まれるものの、円安の進行、消費者物価の上昇、物流問題や人手不足等の不安要因があることに加え、今後の金利、株価変動等、景気動向に注視が必要となります。一方、海外においては、経済の底堅さは見られるものの、欧米の金融政策の動向、地政学リスクの高まり、自然災害の発生等、楽観できない環境にあります。
引き続き原材料や、物流コスト、エネルギーコストが上昇しており、今期も多くの値上げが見込まれるものの、消費者の節約志向は一段と強くなっており、消費動向に懸念があります。
業界としては、製造コストの上昇に加えて、円安や海外現地相場高で輸入畜肉価格が高騰したことにより輸入を抑える傾向の中、海運輸送遅延も重なり国内畜肉在庫が減少、畜種によって在庫薄になる等、畜肉市場の変化が大きく、厳しい市場環境となっております。
このような状況のなか、当社グループは「おいしさと感動で、食文化と社会に貢献」という「目指す姿」の実現に向けて、営業力・開発力・商品力の強化により売上規模と利益の質を高めると同時に、サステナビリティを重視した経営を推進します。
「いつも、ずっと、お客様に愛され、支持される会社になる」を基本方針として、中期経営計画の目標達成に向けて「持続可能な経営基盤の強化」と「外部環境の変化に対応した収益基盤の構築」を具体化するとともに「成長投資とグローバル展開」を通して永続的なグループの発展に努めてまいります。
「持続可能な経営基盤の強化」
資本コストを意識した経営を行い収益基盤及び財務体質の強化を推進いたします。健康で働きがいのある職場環境づくりを行い、人材を確保しジョブローテーションや積極的な登用による人材育成を進めます。また、再生可能エネルギーの活用を拡大する等、温室効果ガス排出量の削減や、廃棄物排出量・水・プラスチック使用量の削減を進め、脱炭素・循環型社会の実現に向けた取り組みを推進いたします。
「外部環境の変化に対応した収益基盤の構築」
加工食品事業部門ではコストアップ・相場変動に応じた価格転嫁の浸透を行いつつ、重点商品の拡販に加え、ブランド商品の育成や価値向上を進めてまいります。製造面では生産能力の更なる増強と継続的なコストダウンの実現を行ってまいります。食肉事業部門においても販売と連携した国産豚肉インテグレーションの推進等、既存事業の基礎収益力の向上を図ってまいります。安全・安心な商品をお届けするため、厳格な管理に基づいた原材料調達のもと、FSSC22000等の食品安全マネジメントシステムを基軸に、品質保証体制の徹底・強化を行います。為替、与信等のリスク管理強化やコロナ禍後の市場変化を見据えた商品開発等、事業環境の変化に対応できるように管理基盤の高度化を実現してまいります。また、持続可能なサプライチェーンの構築に向け、2024年物流問題への適切な対応、モーダルシフトの推進等による物流効率化の取り組み、人権の尊重に配慮した持続可能な調達体制の構築等、サプライチェーン全体のサステナビリティの深化を図ってまいります。
「成長投資とグローバル展開」
当社の親会社である伊藤忠商事㈱及びそのグループ企業とのコラボレーションを主体とした国内外事業展開に取り組みます。成長領域への挑戦と、DX、新技術の開発導入の推進に向けて、海外子会社を基軸とした海外事業モデルの確立やEC事業の拡大等、新規事業への挑戦と事業拡大に取り組みます。またAI,RPA,IT技術の積極的な活用と、業務の最適化・標準化を実現する新たな情報システムの稼働に向け準備を進めてまいります。
これからも、内部統制機能とコンプライアンス体制のより一層の充実に努め、コーポレート・ガバナンス体制の強化と、サステナビリティを重視した経営を推進するとともに、「いつも、ずっと、お客様に愛され、支持される会社」を目指し、企業としての継続的な経営革新を実行してまいります。
私たちプリマハムグループは「おいしさと感動で、食文化と社会に貢献」を「目指す姿」として、中期経営計画の基本方針において「ESGを重視した経営の推進」を掲げております。当社グループは、サステナビリティ課題全般及びテーマ別の気候変動では「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の観点から、テーマ別の人的資本では「戦略」「指標と目標」の観点から考え方を整理し、取り組みを強化してまいります。当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) サステナビリティ課題全般
(2) テーマ別
① [気候変動への対応]
気候変動問題はグローバルな重要課題のひとつであり、当社グループにおいても事業や業績、戦略、財務に大きな影響を及ぼす重要課題と認識しています。当社グループは、G20の要請を受けて金融安定理事会(FSB)によって設立されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に沿って気候変動関連リスク及び機会について開示し、適切な対策を講じていきます。
なお、最新の取り組み状況・進捗については、当社HP内にあるサステナビリティに関するウェブサイトにて発信していきます。
② [人的資本への対応]
近年、企業には非財務資本を重視した経営が求められており、特に日本の労働人口が減少するなかで「人的資本」の重要性が増しています。当社グループでは、中期経営計画(2023~2025年度)における「ESGへの取り組みと持続可能な経営基盤の強化」のなかで「人材育成と働きがいの向上による変革意識の醸成」を掲げています。また、その実現に向けて2020年9月に特定した重要課題(マテリアリティ)では、「働きがいのある職場環境をつくる」をテーマに、「多様な働き方の尊重、推進」と「優秀な人材の雇用と育成」、「心身の健康に配慮した労働安全衛生」を重要課題(マテリアリティ)として掲げ、現在、具体的なアクションプランに取り組んでいます。さらに、人材育成及び社内環境整備においては以下のとおり基本方針を定めています。
当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のある主なリスクは、以下のようなものがあります。当社グループは、リスクを要因ごとに分類し、リスク発生の未然防止方法とリスク発生時の対応方法を定めています。また、当社グループのリスク情報は、当社の主管部署が情報や対策を進捗管理しており、取締役会等へリスク懸念事項として報告しています。なお、各項目における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(注) 1 「項目」欄に記載されております「○重点リスク」は、リスク発生時に影響の大きさが懸念される特に重要なリスク項目となります。
2 「中期計画影響」欄に記載されております「方針1~3」は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)中長期的な会社の経営戦略 ② 重点施策」に記載しております施策のうち、リスク発生時に影響を受ける施策となります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等という。)の状況の概要は次のとおりです。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループが判断したものであります。
なお、当連結会計年度の期首より表示方法の変更を行っており、経営成績については当該表示方法の変更を反映した組替え後の前連結会計年度の連結財務諸表の数値を用いて比較しています。
① 当期の概況について
当連結会計年度における我が国経済は、国内消費者の行動心理や、インバウンド消費の回復等が牽引し、外食需要や観光需要等が大幅に回復しました。百貨店やスーパー、コンビニエンス等の流通業も堅調に売上を伸ばしており、経済活動は正常化しました。
一方、円安の更なる進行もあり、原材料価格や、エネルギーコスト高、労働コストアップ等により、製造コストの上昇が続いております。このため前期に引き続き今期も様々な業種において値上げが複数回実施されており、食品全体の値上げ品目数が大きく増加しました。このような状況を受け、ベースアップ等で賃金水準は上昇に向かっているものの、物価高の影響で実質賃金はいまだマイナスが継続しており、国内消費者の生活防衛意識は高く、順調に消費拡大が続くとまでは言い難い市場環境となっています。年度末には日本銀行がマイナス金利を解除し、17年ぶりの利上げを決定する等の金融政策の変更が実施されました。日経平均株価がバブル経済時の最高値を超える等、明るい兆しも見られますが、今後の経済は予測がつきにくくなっています。
当業界におきましても、製造コストの上昇に加えて、畜肉の現地相場高や円安、疾病問題等の畜肉市場が大きく変動する要因が多く、厳しい事業環境が継続しております。
このような状況の中、当社グループは「目指す姿」である「おいしさと感動で、食文化と社会に貢献」という基本的な考えのもと、中期経営計画目標の達成に向けて、「ESGへの取り組みと持続可能な経営基盤の強化」と「外部環境の変化に対応した収益基盤の構築」及び「成長投資とグローバル展開」を基本方針と位置づけ、諸施策を講じてまいりました。
② 業績
結果、売上高は4,484億29百万円(前期比4.1%増)となりました。利益面におきましては、営業利益は118億20百万円(前期比21.5%増)、経常利益は128億84百万円(前期比22.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は74億89百万円(前期比66.2%増)となりました。
目標とする経営指標につきましては自己資本利益率(ROE)6.4%となり、未達となりました。
<加工食品事業部門>
2023年4月に続き10月に4回目のハム・ソーセージ商品及び加工食品の価格改定を行い、販売先への納品価格の引き上げを実施いたしました。業界全体では生産数量が前年を下回る厳しい環境が継続しておりますが、当社のシェアは昨年度に引き続き上昇いたしました。
Ⅰ.ハム・ソーセージ部門
主力ブランドの「香薫®あらびきポークウインナー」は、定番の2個束商品に加え、大袋ジッパー付き商品の販売も引き続き好調に推移しました。販売促進政策では、東京ディズニーリゾート®ご招待キャンペーン、宝塚歌劇団貸切公演キャンペーン、TVCMやSNSを活用したキャンペーン等を継続的に実施し、今期も販売シェア拡大を継続することができました。新たに建て替えた鹿児島工場が期初より本格的に稼働を開始し、安定した商品供給や新商品の提供に寄与しております。結果、市販用商品、業務用商品とも売上高は前年を上回り、順調に推移いたしましたが、損益面では価格改定の効果以上に原材料のコストが上昇し、前年を下回る結果となりました。
Ⅱ.加工食品部門
加工食品部門では、常温商品の「ストックディッシュ」、手軽に食べられる「サラダチキンバー」等の市販用商品が消費者から評価を得ており、順調に拡販を進めることができました。また業務用商品においては、市場の回復や価格改定の効果により売上高を拡大することができましたが、原材料等の仕入れコストの大幅な上昇を補いきれず、利益面では前年同期を下回る結果となりました。
コンビニエンスストア向けのベンダー事業についても、原材料高騰や、燃料高、人件費アップ等製造コストが上昇しましたが、お客様の要望に応えた新商品開発、発売を継続的に行ったことにより、売上高、利益面とも前期を上回ることができました。
これらの結果、加工食品事業部門は、売上高3,122億16百万円(前期比3.8%増)となり、セグメント利益111億13百万円(前期比8.5%増)となりました。
<食肉事業部門>
海外畜肉相場高と円安による輸入仕入コストの上昇、市場の輸入畜肉在庫が減少する等、食肉事業の環境は厳しい状況が継続しています。消費者動向においても価格の高い牛肉から豚肉や鶏肉へ需要がシフトする等、購買に変化が生じています。当該環境下、段階的に販売先への価格転嫁を進めるとともに、相場と連動した取引への変更も徐々に浸透し、昨年を上回る売上高、利益を確保できました。飼料価格は依然として高い価格水準のため、養豚事業も収益的には厳しい環境ですが、宮城新農場の肥育・出荷は順調に進み、良質な豚肉を適正な価格で販売拡大できるよう、様々な取り組みを進めていきます。
これらの結果、食肉事業部門は、売上高1,356億34百万円(前期比4.7%増)となり、セグメント利益8億43百万円(前年同期はセグメント損失1億83百万円)となりました。
<その他>
その他事業(理化学機器の開発・製造・販売等)の売上高5億78百万円(前期比9.3%増)となり、セグメント利益2億68百万円(前期比15.5%増)となりました。
③ 当期の財政状態について
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ149億6百万円増加し、2,447億93百万円となりました。これは主に、受取手形及び売掛金が61億21百万円、ソフトウエア仮勘定が51億8百万円、棚卸資産が50億10百万円、投資有価証券が27億1百万円増加し、預け金が49億36百万円減少したことによるものです。
負債については、前連結会計年度末に比べ78億87百万円増加し、1,145億80百万円となりました。これは主に、支払手形及び買掛金が95億68百万円増加したことによるものです。
純資産については、前連結会計年度末に比べ70億18百万円増加し、1,302億13百万円となりました。これは主に、利益剰余金が42億30百万円、非支配株主持分が8億74百万円、その他有価証券評価差額金が7億50百万円増加したことによるものです。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて43億33百万円減少(前連結会計年度は21億32百万円減少)し、97億65百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは225億42百万円のネット入金(前連結会計年度は117億19百万円のネット入金)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益134億27百万円、減価償却費113億38百万円、売上債権60億75百万円、棚卸資産50億17百万円の増加、仕入債務95億54百万円の増加、法人税等の支払34億95百万円です。
投資活動によるキャッシュ・フローは194億20百万円のネット支払(前連結会計年度は150億89百万円のネット支払)となりました。主な要因は、生産設備更新、生産性向上及び品質安定を目的とした有形固定資産の取得による支出104億43百万円、業務・組織・制度の改革とチェンジマネジメントを支える社内システムの刷新を目的とした無形固定資産の取得による支出62億17百万円です。
財務活動によるキャッシュ・フローは75億74百万円のネット支払(前連結会計年度は12億6百万円のネット入金)となりました。主な要因は、配当金の支払32億70百万円、長期借入金の返済による支出37億74百万円、です。
○生産・受注・販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、製造原価によっております。
当社の子会社プライムデリカ㈱は受注生産を行っておりますが、受注当日ないし翌日に製造、出荷しており、また、当社の子会社プライムテック㈱は受注生産を行っておりますが、金額が些少なため、受注高並びに受注残高の記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 以下は、主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合になります。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、本項に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められた会計基準に基づき作成されております。これらの財務諸表の作成にあたっては、当社グループは重要な見積りや仮定を行う必要があります。会計方針の適用にあたり、特に重要な判断を要する項目は以下のとおりであります。
① 棚卸資産の評価損
当社グループは、主として移動平均法による原価法で棚卸資産を評価しておりますが、収益性の低下した棚卸資産につきましては正味売却価額まで帳簿価額を切り下げております。
棚卸資産の実現可能価額は、通常の事業活動による見積り販売価額から見積り直接販売経費を控除して算出されます。棚卸資産の評価は、棚卸資産が先の方法で正しく評価されているかどうかを確認するため、定期的に実施しております。当社グループは、必要と判断された場合、棚卸資産の帳簿価額と正味売却価額との差額を棚卸資産の評価損として計上しております。見積り販売価額や見積り直接販売経費は過去の状況や将来の消化予想、その他の要素を加味して算出しております。また、将来破棄する棚卸資産についても考慮しております。当社グループの棚卸資産の評価は適正であると判断しておりますが、市況や消費者ニーズが当社グループの計画と大きく乖離する場合、評価損の金額は増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
② 繰延税金資産
当社グループは、現在、一定期間における回収可能性に基づき相当額の繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の計上は、予測される将来における課税所得により影響を受けます。将来の課税所得の見積りにあたっては、過去の業績やタックス・プランニング等も考慮しております。当社グループの将来の収益性に係る判断は、将来における市場の動向その他の要因により影響を受けます。これらの状況に変化があった場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
③ 投資有価証券の評価損
投資有価証券については、時価が取得価額を下回り、かつ時価の下落又は実質価額の低下が一時的でないと判断される場合は、評価損が計上されます。当社グループは、投資有価証券の時価の下落が一時的であるかどうかを、下落の期間や程度、発行体の財政状態や業績の見通し、又は時価の回復が予想される十分な期間にわたって保有する意思等を含めた基準により四半期ごとに判断しております。
当社グループは、評価損を判断する基準は合理的なものであると考えておりますが、市場の変化や予測できない経済及びビジネス上の前提条件の変化によって個々の投資に関する状況の変化があった場合には、投資有価証券の評価額に影響を受ける可能性があります。
なお、2024年3月31日現在、当社グループが保有する投資有価証券のいくつかの銘柄については、時価が簿価を下回っております。これらの銘柄については、下落期間や入手可能な発行体の業績等をもとに一時的な下落であると判断し、評価損は計上しておりません。
2024年3月31日現在、重要な影響を与える含み損は発生しておりません。
④ 固定資産の減損
当社グループが保有する有形固定資産については、帳簿価額の回収ができないという兆候を示す事象が発生した場合には、将来の見積りキャッシュ・フローに基づき減損の判定を実施し、減損が生じたと判断した場合、当該資産の帳簿価額が回収可能価額を超える金額を減損損失として計上しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
⑤ のれん及び顧客関連資産の評価
のれん及び顧客関連資産は、その効果の発現する期間を見積り、その期間に基づく定額法により償却しています。また、のれん及び顧客関連資産の評価にあたっては、事業計画に基づく将来キャッシュ・フローや割引率等の見積りや仮定を用いており、将来の事業計画や経営環境の変化等によりこれらの見直しが必要となった場合、減損損失が発生する可能性があります。
⑥ 退職金及び退職年金
当社及び国内連結子会社は、確定給付型の制度として企業年金基金制度、退職一時金制度及び確定拠出年金制度を採用しております。また、一部の連結子会社は、中小企業退職金共済制度を採用しております。退職給付に係る資産、退職給付に係る負債及び退職給付費用は、数理計算上の仮定に基づいて算出されております。これらの仮定には、割引率、年金資産の長期期待運用収益率、退職率、死亡率等が含まれております。これらの前提条件は年に一度見直しております。当社グループは、使用した仮定は妥当なものと判断しておりますが、仮定自体の変更により、退職給付に係る資産、退職給付に係る負債及び退職給付費用に影響を与える可能性があります。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 概要
当連結会計年度の売上高は4,484億29百万円(前期は4,307億40百万円)となりました。利益面におきましては、営業利益118億20百万円(前期比21.5%増)、経常利益128億84百万円(前期比22.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益74億89百万円(前期比66.2%増)となりました。
② 売上高
当連結会計年度の売上高は4,484億29百万円であり、前連結会計年度と比較しますと176億89百万円の増収となっております。
加工食品事業部門は、自家消費の需要に応じた主力ブランドを中心に大袋商品や常温商品の販売拡大にも取り組みました。販売促進政策では、東京ディズニーリゾート®ご招待キャンペーン、宝塚歌劇団貸切公演キャンペーン、TVCMやSNSを活用したキャンペーン等、ブランド認知向上にも継続的に実施し、販売シェア拡大に貢献しました。また、新たに建て替えた鹿児島工場が期初より本格的に稼働を開始し、安定した商品供給や新商品の提供に寄与しております。結果、市販用商品、業務用商品ともに前年を上回りました。
食肉事業部門は、海外畜肉相場の高値継続と円安による輸入仕入コストの上昇等、仕入環境は厳しい状況が継続しています。販売先の店頭価格は、食肉の相場上昇を補うまでの十分な価格上昇には至らなかったものの、段階的に販売先への価格転嫁を進め、前期を上回りました。
③ 営業利益
加工食品事業部門は、2023年4月に続き10月に4回目のハム・ソーセージ商品及び加工食品の価格改定を行い、販売先への納品価格の引き上げを実施いたしました。ハム・ソーセージ部門は価格改定の効果以上に原材料のコストが上昇し、前年を下回る結果となりました。加工食品部門は、コンビニエンスストア向けのベンダー事業についても、原材料高騰や、燃料高、人件費アップ等製造コストが上昇しましたが、お客様の要望に応えた新商品開発、発売を継続的に行ったことにより、前期を上回ることができました。これらの結果、加工食品事業部門は前期を上回りました。
食肉事業部門においては、畜肉の現地相場高や円安、疾病問題等の畜肉市場が大きく変動する要因が多く、厳しい事業環境が継続しているものの、相場と連動した取引への変更も徐々に浸透し、前期を上回りました。
結果、当連結会計年度の営業利益は、118億20百万円となり、前連結会計年度と比較しますと20億95百万円の増益となりました。
④ 経常利益
当連結会計年度の経常利益は128億84百万円であり、前連結会計年度と比較しますと23億74百万円の増益となりました。
⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は74億89百万円であり、前連結会計年度と比較しますと29億84百万円の増益となりました。
⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。
⑦ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金は、主に製品製造のための材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに当社グループの設備投資及び改修等に支出しております。これらの必要資金につきましては営業キャッシュ・フローを源泉とする自己資金のほか、金融機関からの借入等による資金調達にて対応していくこととしております。
当社及び国内子会社においてキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うとともに、当社グループの余剰資金を、伊藤忠商事㈱のグループ金融制度に預け入れ、資金の効率的な運用を図っております。
また、複数の金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しており、当社及び当社グループの十分な手元流動性の確保をしております。
⑧ セグメントごとの財政状態
<加工食品事業部門>
加工食品事業部門については、各工場の生産能力増強に向けた投資を行いました。また、今後も生産数量の拡大、省人化、環境負荷の軽減、新技術開発や工程改革を推し進め、商品規格数の適正管理、原材料の有効活用、物流コスト削減等を図り、事業競争力を高めることに注力してまいります。
<食肉事業部門>
食肉事業部門については、肉豚生産事業のインテグレーション強化に向けた投資に注力しております。具体的には肥育舎の増設による生産規模の拡大、農場近代化による生産効率の向上を目的とした投資を行い、子会社加工場へ肉豚を安定供給し、品質の高い国産肉豚の生産体制を確立し、販売競争力を高め、収益力の拡大を推進してまいります。
<その他事業>
その他事業につきましては、グループの人事・総務、情報システム等のサービス業務の充実を図ることでグループ経営基盤を強化する方針にて事業を推進してまいります。
該当事項はありません。
当連結会計年度では、当社の研究開発部門である開発本部基礎研究所を中心に「おいしさ、安全・安心、健康、環境負荷低減、細胞工学」の5つの分野において、食肉加工あるいは食肉生産に関する先端的な基礎研究、それらを活用した商品開発あるいは一部の生産技術開発に至るまで、精力的な研究開発活動を行いながら、独自の研究技術成果等の社内への導入を積極的に行っております。また、研究開発体制の構築や研究開発のレベルアップ及び効率化のため、大学等の各種研究機関との共同研究を通して連携の強化を行い、研究を推進しております。
(1) おいしさに関する研究
おいしさに関する研究では、商品のおいしさを客観的かつ具体的に評価することによる、おいしさの見える化(数値化)の検討を継続しました。当期では、新規評価手法として噛み心地評価測定機、静・動摩擦測定機あるいは電子味覚システムを用い、食感や味覚の評価系を確立してウインナー、ロースハム等の特徴を明らかにしました。また、これまでに構築した手法も加え、当社及び他社の焼豚やドライ商品(サラミ)を対象とした嗜好型官能評価及び機器分析を行い、当社商品での改善すべきポイントの明確化を行いました。さらに、当社ブランドの豚肉や鶏肉の特性評価も実施し、得られた結果は当社食肉事業本部等の他部門に情報提供することにより、商品開発、品質改善、販売促進活動のサポートに繋がっております。また、当社「恵味の黒豚」の特徴に関しての研究成果は関連する学会で研究報告を行い、新規評価手法については特許出願を行いました。今後もより精度の高い見える化を行い、各事業本部の活動に貢献できるよう、新たな検査装置の導入、手法に関する情報収集を継続してまいります。
(2) 安全・安心に関する研究
安全・安心に関する研究では、食物アレルゲン検査キットのAOAC(海外の精度認証)取得、微生物制御及び微生物利用に係る研究開発を行いました。
① 食物アレルゲン検査キットの開発
国内初となるAOAC認証済みのイムノクロマトキットを目指し、当期では第三者機関での性能評価が完了しました。今後は、得られた結果をもとに論文等の必要書類の準備を進め、当初の計画よりは遅れますが、2024年度での認証取得を予定しております。
② 微生物制御に係る研究開発
「おいしさと安全・安心」を両立させながら当社商品の品質を向上させるため、工程管理基準の見直し及び保存性向上に関する技術開発を進めております。工程管理基準の見直しは、昨年度策定した真空調理食品製造の新基準を、当社各工場やグループ各社に水平展開するための作業を継続しました。また、これまでに製造基準が設定されていなかった高pH食品でも基準策定を行いました。策定した基準は今後の新商品開発に活かしてまいります。保存性向上に関する技術開発では、当社の品質保証本部、生産本部と連携しながら当社各工場の製造工程の衛生改善に取り組み、衛生状況を向上させる提案を行いました。また、細菌検査の精度向上や効率化を目的とし、細菌検査用培地の改変や自家蛍光を利用した微生物検査装置の開発を継続しました。今後も新基準の水平展開、新規商品の基準策定、工場の衛生改善や検査装置の開発を進め、安全性を担保しつつ、おいしい商品の開発に繋げてまいります。
③ 微生物利用に係る研究開発
麹菌による次世代タンパク質食品の開発に着手し、当期では、菌体の回収量や風味、食感等の品位を指標として麹菌菌種の選択を行いました。また、麹菌を培養する際に使用する培養液組成の検討を行い、培養液組成を調整することにより菌体回収量、機能性成分含有量が増加し、風味等の品位が向上することを明らかにしました。得られた結果は特許出願を行う予定としております。
(3) 健康に関する研究
健康に関する研究では、健康で豊かな食生活を創造するために、短期課題として健康に配慮した商品の開発、中長期課題として食肉中から新規健康成分を探索し、当社商品へ活用するための基礎研究を行っております。
① 健康に配慮した商品の開発
昨年度より検討を行ってきた減塩商品の風味改善に対し、当期ではアミノ酸等の利用による風味改善効果を明らかにし、本技術の特許出願を行うとともに、当社減塩商品のリニューアルに応用しました。また、機能性成分として鶏肉に含まれるイミダゾールジペプチドやGABAに着目して、当社商品中の含有量の測定を行い、一定量の機能性成分が含まれていることを確認しました。機能性表示食品の開発では、他の機能性成分の効果も検証しながら、健康を訴求する商品開発の中で機能性成分の研究を継続しております。
② 食肉中からの健康機能性成分の検索
外部研究機関との共同研究により機能性成分の探索を行い、畜肉副産物に含まれる軟骨やヘム鉄の機能性解明を進めております。当期では、豚あるいは鶏の軟骨摂取による血中のコレステロール値や脂肪細胞に対する影響を明らかにするための試験を行い、一部健康機能として有効な結果が得られ、翌期でも継続する予定としております。
(4) 環境負荷低減に関する研究
環境負荷低減に関する研究では、当社の養豚事業や食品製造時に発生する二酸化炭素を考慮し、環境に対する積極的な取り組みが責務となると考え、当期では以下の3課題に取り組みました。いずれの課題も外部研究機関等との共同研究を推進し、基礎的な研究から社会実装を行うための応用研究までを行っております。
① カーボンニュートラル
ラン藻による大気中の二酸化炭素を固定化する技術の開発を行っております。当期では、ラン藻大量培養法の確立、培養後のラン藻菌体を効率的に回収するための手法の検討、ラン藻を食品として利用するための急性毒性試験の実施、排水浄化作用の検討等を行いました。なお、得られた結果の一部は特許出願の準備を進めております。また、構築した技術は共同研究先が設立を準備しているコンソーシアム内での使用を計画しております。
② 食品ロスの削減
動植物性残さや家畜の糞尿等、有機性廃棄物の資源化の一環として、メタン発酵消化液によるイチゴ硫黄病菌抑制を検討し、菌の生育が抑制できる有用菌2株を見出しました。現在、共同研究先で有用菌の利用方法及び利用先について検討を行っております。
③ 生分解性プラスチック素材分解方法の開発
堆肥中でのポリ乳酸(PLA)繊維の効果的な分解を目的として、検討を開始しました。当期では、PLAを効果的に分解できる有用菌3株を分離し、生育特性や分解特性を明らかにしました。翌期では、得られた結果をもとに共同研究先でのフィールド実証試験を計画しております。
(5) 細胞工学に関する研究
将来的な世界人口の増加による食肉供給不足や環境保全の観点から、当社においても培養肉のメーカー、技術動向、市場性等を把握するため、調査研究を継続しております。当期は、培養肉開発に関する技術の検証をすすめ、畜肉副産物が培養肉の原材料(細胞)となり得ることを確認しました。
当期の研究開発活動では、これまで以上に社内外の関連部門との連携を強化し、研究活動の中から得られた情報を全社に向けて発信することにより研究開発部門、他事業部門が一体となって具体的施策を推進、利益の最大化・企業価値向上に貢献することを目標に活動を実施してまいりました。また、関連する学会での研究報告や新技術の特許化等、社外に対する情報発信も行っております。
なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、