文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、中期経営計画において財務目標を定めております。2025年度を初年度とする3ヶ年中期経営計画(ローリングプラン)の着実な実行により、自己資本利益率(ROE)10%以上及び配当性向40%以上を目標としつつ安定的配当を継続的に実施することで、持続的な成長と企業の永続性の確立、並びに事業を通じたステークホルダーへの貢献を目指してまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
① 基本方針
当社グループは「おいしさと感動で、食文化と社会に貢献」の実現に向けて、中期経営計画の基本方針として、「営業力・開発力・商品力の強化により、売上と利益の規模と質を高めると同時に、サステナビリティを重視した経営を推進し、『いつも、ずっと、お客様に愛され、支持される会社』になる」を掲げています。経営目標としては、2025年度売上高4,800億円、営業利益120億円、親会社株主に帰属する当期純利益80億円を目指してまいります。
② 重点施策
方針1 持続可能な経営基盤の強化
当社グループは重要課題(マテリアリティ)の解決に向けた目標設定と活動計画を策定・推進しております。環境への対応のひとつとして温室効果ガス排出量の抑制に取り組みます。また、従業員は企業の礎であり、成長の柱です。従業員が心身ともに健康で、働きがいのある職場づくりを目指した活動を継続展開し、変革意識の醸成と健全な企業体質を構築します。さらにコンプライアンス意識とガバナンスレベルの向上を実践し、適切な情報開示の充実に努めます。
2024年度は、「プリマハムグループ環境方針」を改定いたしました。また、「プリマハムグループサプライヤー行動規範」、「プリマハムグループアニマルウェルフェアポリシー」を制定するとともに、主要サプライヤーへ向けてサプライヤー調査を実施いたしました。
方針2 外部環境の変化に対応した収益基盤の構築
加工食品事業部門は、茨城工場を基盤としてコスト競争力、供給能力を高めており、市場シェア拡大に向けて商品の安定供給体制の構築を行っております。さらに、当社グループ独自の製造技術の開発やお客様の声をふまえた商品の開発に取り組み、価値ある商品の提供を目指します。
食肉事業部門は、販売数量拡大に向けてオリジナルブランドの開発、拡販を行いつつ、販売利益管理を徹底し、収益力の向上を図ります。また、既存農場のリニューアルと生産性向上を進めて国産豚肉のインテグレーションを強化し、収益力の向上と安定供給体制を構築します。
方針3 成長投資とグローバル展開
伊藤忠商事㈱とのコラボレーションや業務提携等を主体として、日本国内及び海外の事業領域拡大を進めます。海外事業は、グループ会社の所在国及び周辺国への販売を進めておりますが、東南アジア市場を中心とした市場参入の礎としてシンガポール企業を買収しており、タイの生産子会社とともに東南アジア市場における売上拡大を進めてまいります。
また、業務の標準化と自動化を進めて、デジタル技術を活用した効率的な業務プロセスの構築と戦略的な情報管理の実現に向けた活動を進めてまいります。
(4) 経営環境及び対処すべき課題
今後の我が国の経済は、訪日外国人の増加による需要増加や賃上げにより、節約志向からメリハリ消費への増加が見込まれる一方で、海外経済の減速や米国のトランプ政権による関税引き上げをはじめとした予見困難な経済政策の変化の影響などにも注視する必要があります。
業界としても、海外情勢の変化や気候変動による自然災害、疾病問題は、原材料コストに大きく影響を及ぼすことが予想されます。また、物価上昇にともなう賃金引上げや物流コスト問題など、厳しい環境となっております。
このような状況のなか、当社グループは「おいしさと感動で、食文化と社会に貢献」という目指す姿の実現に向けて、営業力・開発力・商品力の強化により、売上と利益の規模と質を高めると同時に、サステナビリティを重視した経営を推進します。
「いつも、ずっと、お客様に愛され、支持される会社」を基本方針として、中期経営計画の目標達成に向けて、「持続可能な経営基盤の強化」と「外部環境の変化に対応した収益基盤の構築」を具体化するとともに、「成長投資とグローバル展開」を通して永続的なグループの発展に努めてまいります。
「持続可能な経営基盤の強化」
資本コストと株価を意識した経営を行い、人材の確保と育成による変革意識の醸成に向けては、仕事体験や若手社員との質問会を通じての新卒採用の強化やローテーションの実践、キャリア人材の採用による多様な人材の獲得を行うとともに、研修の実効性向上や社員教育プログラムの拡充を図ります。脱炭素・循環型社会の実現に向けた取り組みについては、再生可能エネルギーの活用拡大やサステナ投資計画の推進、温室効果ガス排出量の削減を更に進めてまいります。
「外部環境の変化に対応した収益基盤の構築」
既存事業の基礎収益力の向上に向けて、過去からのコストアップを吸収するための値上げを段階的に実施しつつ販売チャネルの拡大に取り組みます。生産においては、原料調達不安を踏まえた生産対応の検討や老朽化工場・設備の更新計画の立案・実行を進めてまいります。さらに安全対策の強化や重大災害の未然防止への取り組みを行ってまいります。今年度より新設しましたマーケティング本部を中心にブランド・商品ポートフォリオ戦略に基づく、次なる収益の柱の開発や育成を行うことで事業基盤の強化を図ってまいります。物流面では、持続可能なサプライチェーンの構築に向けて共同配送、モーダルシフトの推進、積み下ろしの工夫等、物流効率化の取り組みを行います。食肉においては、持続可能な調達体制の構築、アニマルウェルフェア、生物多様性問題への対応を進めてまいります。
「成長投資とグローバル展開」
当社の親会社である伊藤忠商事㈱及びそのグループ企業とのコラボレーションを主体とした国内外事業展開に向けて取り組んでまいります。また、食肉輸出の促進や生成AIの活用に向けたITスキルの向上を進めてまいります。加えて、内部統制機能とコンプライアンス体制のより一層の充実に努め、コーポレート・ガバナンス体制の強化と、サステナビリティを重視した経営を推進するとともに、「いつも、ずっと、お客様に愛され、支持される会社」を目指し、企業としての継続的な経営革新を実行してまいります。
私たちプリマハムグループは「おいしさと感動で、食文化と社会に貢献」を「目指す姿」として、中期経営計画の基本方針において「サステナビリティを重視した経営の推進」を掲げております。当社グループは、サステナビリティ課題全般及びテーマ別の気候変動では「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の観点から、テーマ別の人的資本では「戦略」「指標と目標」の観点から考え方を整理し、取り組みを強化してまいります。当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) サステナビリティ課題全般
(2) テーマ別
① [気候変動への対応]
気候変動問題はグローバルな重要課題のひとつであり、当社グループにおいても事業や業績、戦略、財務に大きな影響を及ぼす重要課題と認識しています。当社グループは、G20の要請を受けて金融安定理事会(FSB)によって設立されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に沿って気候変動関連リスク及び機会について開示し、適切な対策を講じていきます。
なお、最新の取り組み状況・進捗については、
② [人的資本への対応]
近年、企業には非財務資本を重視した経営が求められており、特に日本の労働人口が減少するなかで「人的資本」の重要性が増しています。当社グループでは、中期経営計画(2024~2026年度)における「持続可能な経営基盤の強化」のなかで「人材の確保と育成による変革意識の醸成」を掲げています。また、その実現に向けて2020年9月に特定した重要課題(マテリアリティ)では、「働きがいのある職場環境をつくる」をテーマに、「多様な働き方の尊重、推進」と「優秀な人材の雇用と育成」、「心身の健康に配慮した労働安全衛生」を重要課題(マテリアリティ)として掲げ、現在、具体的なアクションプランに取り組んでいます。さらに、人材育成及び社内環境整備においては以下のとおり基本方針を定めています。
当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のある主なリスクは、以下のようなものがあります。当社グループは、リスクを要因ごとに分類し、リスク発生の未然防止方法とリスク発生時の対応方法を定めています。また、当社グループのリスク情報は、当社の主管部署が情報や対策を進捗管理しており、取締役会等へリスク懸念事項として報告しています。なお、各項目における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(注) 1 「項目」欄に記載されております「○重点リスク」は、リスク発生時に影響の大きさが懸念される特に重要なリスク項目となります。
2 「中期計画影響」欄に記載されております「方針1~3」は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(3)中長期的な会社の経営戦略 ② 重点施策」に記載しております施策のうち、リスク発生時に影響を受ける施策となります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等という。)の状況の概要は次のとおりです。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループが判断したものであります。
なお、当連結会計年度の期首より表示方法の変更を行っており、経営成績については当該表示方法の変更を反映した組替え後の前連結会計年度の連結財務諸表の数値を用いて比較しています。
① 当期の概況について
当連結会計年度における我が国経済は、訪日外国人数が過去最多を記録し、外食需要や観光需要が高まる一方で、原材料価格の高騰などによる食料品の値上がりや人件費の高騰、物流の2024年問題によるコスト増加など物価高の影響で、2024年度の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)は前年から2.7%上昇する結果となっており、これを受け家計の節約志向が顕在化しております。
世界経済も、中国をはじめ海外経済の減速等のマイナス材料に加え、地政学リスクの高まりによって不透明かつ厳しい市場環境となっています。
当業界におきましても、畜肉の現地相場高や円安により、調達コストの増加の影響が顕著に出ております。また国内外での疾病問題も発生し、厳しい事業環境を強いられています。
このような状況の中、当社グループは「目指す姿」である「おいしさと感動で、食文化と社会に貢献」という基本的な考えのもと、中期経営計画目標の達成に向けて、「持続可能な経営基盤の強化」と「外部環境の変化に対応した収益基盤の構築」及び「成長投資とグローバル展開」を基本方針と位置づけ諸施策を講じてまいりました。
② 業績
結果、売上高は4,583億54百万円(前期比2.2%増)となりました。利益面におきましては、営業利益は89億48百万円(前期比24.3%減)、経常利益は105億2百万円(前期比18.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は70億76百万円(前期比5.5%減)となりました。
目標とする経営指標につきましては自己資本利益率(ROE)5.9%となり、未達となりました。
<加工食品事業部門>
2024年4月に続き9月に6回目のハム・ソーセージ商品及び加工食品の価格改定を行い、販売先への納品価格の引き上げを実施いたしました。業界全体では、生産数量が前年を下回る厳しい環境が継続していますが、当社シェアは昨年度に引き続き上昇いたしました。
Ⅰ.ハム・ソーセージ部門
主力ブランドの「香薫®あらびきポークウインナー」は、定番の2個束商品に加え、大袋ジッパー付き商品の販売も引き続き好調に推移しました。また、「スマイルUP!」シリーズのロースハムやベーコンの販売が好調に推移し、当社主力ブランドのひとつとして浸透しました。販売促進政策では、東京ディズニーリゾート®ご招待キャンペーンや宝塚歌劇団貸切公演キャンペーン、また、TVCMやSNSを活用することで、販売シェアの拡大を図ることができました。結果、コンシューマ商品の売上高は前年を上回りました。業務用商品の売上高は、コンビニエンスストア向け商品の販売不振の影響もあり、前年を下回りましたが、ハム・ソーセージ全体の売上高は前年を上回る結果となりました。
Ⅱ.加工食品部門
加工食品部門では、主力コンシューマ商品の「スパイシースティック」、サラダチキン群では「サラダチキンバー」の拡充に努めることができましたが、業務用商品の売上高はハム・ソーセージ部門と同様にコンビニエンスストア向け商品の販売不振の影響もあり、前年を下回りました。
コンビニエンスストア向けのベンダー事業については、売上低迷に加え、原材料高騰や人件費アップなど、製造コストが上昇したことにより、売上高、利益面ともに前期を下回る結果となりました。
これらの結果、加工食品事業部門は、売上高3,134億95百万円(前期比0.4%増)となり、セグメント利益79億20百万円(前期比28.7%減)となりました。
<食肉事業部門>
海外畜肉相場高と為替相場の変動により、食肉事業の環境は厳しい状況が継続しています。
また、国内外で発生した疾病問題や、猛暑による国産豚肉価格の高止まりも販売活動の動向に大きく影響しています。
消費者動向においても、牛から豚、豚から鶏へと購買変化が生じ、流通業界でも売り場や商品の見直し等が行われました。その様な環境のなか、当社としては、得意先への価格転嫁を進めるとともに、相場に連動した取引への変更や取引先への積極的な販売強化により、販売数量は前年を上回ることが出来ました。
これらの結果、食肉事業部門は、売上高1,441億82百万円(前期比6.3%増)となり、セグメント利益12億4百万円(前期比42.8%増)となりました。
<その他>
その他事業(理化学機器の開発・製造・販売等)の売上高6億76百万円(前期比16.9%増)となり、セグメント利益3億3百万円(前期比12.7%増)となりました。
③ 当期の財政状態について
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ51億83百万円減少し、2,396億10百万円となりました。これは主に、受取手形及び売掛金が42億9百万円、預け金が19億72百万円、退職給付に係る資産が15億67百万円、建設仮勘定が14億32百万円、のれんが10億65百万円減少したことによるものです。
負債については、前連結会計年度末に比べ51億97百万円減少し、1,093億82百万円となりました。これは主に、その他流動負債が21億20百万円、支払手形及び買掛金が16億53百万円、繰延税金負債が13億52百万円減少したことによるものです。
純資産については、前連結会計年度末に比べ14百万円増加し、1,302億28百万円となりました。これは、利益剰余金が27億97百万円増加となりましたが、退職給付に係る調整累計額が17億97百万円、その他有価証券評価差額金が15億15百万円減少したことによるものです。
(2) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて34億98百万円減少(前連結会計年度は43億32百万円減少)し、62億66百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは142億11百万円のネット入金(前連結会計年度は225億42百万円のネット入金)となりました。主な要因は、減価償却費114億52百万円、税金等調整前当期純利益109億21百万円、売上債権42億70百万円の減少、法人税等の支払44億93百万円です。
投資活動によるキャッシュ・フローは135億74百万円のネット支払(前連結会計年度は194億20百万円のネット支払)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出91億50百万円、投資有価証券の取得による支出30億48百万円、無形固定資産の取得による支出28億93百万円です。
財務活動によるキャッシュ・フローは42億2百万円のネット支払(前連結会計年度は75億74百万円のネット支払)となりました。主な要因は、長期借入れの実施による収入51億円、配当金の支払42億76百万円、長期借入金の返済による支出42億72百万円です。
○生産・受注・販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 金額は、製造原価によっております。
当社の子会社プライムデリカ㈱は受注生産を行っておりますが、受注当日ないし翌日に製造、出荷しており、また、当社の子会社プライムテック㈱は受注生産を行っておりますが、金額が些少なため、受注高並びに受注残高の記載を省略しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 以下は、主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合になります。
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。
なお、本項に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められた会計基準に基づき作成されております。これらの財務諸表の作成にあたっては、当社グループは重要な見積りや仮定を行う必要があります。会計方針の適用にあたり、特に重要な判断を要する項目は以下のとおりであります。
① 棚卸資産の評価損
当社グループは、主として移動平均法による原価法で棚卸資産を評価しておりますが、収益性の低下した棚卸資産につきましては正味売却価額まで帳簿価額を切り下げております。
棚卸資産の実現可能価額は、通常の事業活動による見積り販売価額から見積り直接販売経費を控除して算出されます。棚卸資産の評価は、棚卸資産が先の方法で正しく評価されているかどうかを確認するため、定期的に実施しております。当社グループは、必要と判断された場合、棚卸資産の帳簿価額と正味売却価額との差額を棚卸資産の評価損として計上しております。見積り販売価額や見積り直接販売経費は過去の状況や将来の消化予想、その他の要素を加味して算出しております。また、将来破棄する棚卸資産についても考慮しております。当社グループの棚卸資産の評価は適正であると判断しておりますが、市況や消費者ニーズが当社グループの計画と大きく乖離する場合、評価損の金額は増加し、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
② 繰延税金資産
当社グループは、現在、一定期間における回収可能性に基づき相当額の繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の計上は、予測される将来における課税所得により影響を受けます。将来の課税所得の見積りにあたっては、過去の業績やタックス・プランニング等も考慮しております。当社グループの将来の収益性に係る判断は、将来における市場の動向その他の要因により影響を受けます。これらの状況に変化があった場合、繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
③ 投資有価証券の評価損
投資有価証券については、時価が取得価額を下回り、かつ時価の下落又は実質価額の低下が一時的でないと判断される場合は、評価損が計上されます。当社グループは、投資有価証券の時価の下落が一時的であるかどうかを、下落の期間や程度、発行体の財政状態や業績の見通し、又は時価の回復が予想される十分な期間にわたって保有する意思等を含めた基準により四半期ごとに判断しております。
当社グループは、評価損を判断する基準は合理的なものであると考えておりますが、市場の変化や予測できない経済及びビジネス上の前提条件の変化によって個々の投資に関する状況の変化があった場合には、投資有価証券の評価額に影響を受ける可能性があります。
なお、2025年3月31日現在、当社グループが保有する投資有価証券のいくつかの銘柄については、時価が簿価を下回り、かつ時価の下落が一時的でないと判断したため、時価と取得価額の差額を投資有価証券評価損として特別損失に計上しております。
2025年3月31日現在、重要な影響を与える含み損は発生しておりません。
④ 固定資産の減損
当社グループが保有する有形固定資産については、帳簿価額の回収ができないという兆候を示す事象が発生した場合には、将来の見積りキャッシュ・フローに基づき減損の判定を実施し、減損が生じたと判断した場合、当該資産の帳簿価額が回収可能価額を超える金額を減損損失として計上しております。
減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定にあたっては慎重に検討しておりますが、事業計画や市場環境の変化により、その見積り額の前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、減損処理が必要となる可能性があります。
⑤ のれん及び顧客関連資産の評価
のれん及び顧客関連資産は、その効果の発現する期間を見積り、その期間に基づく定額法により償却しています。また、のれん及び顧客関連資産の評価にあたっては、事業計画に基づく将来キャッシュ・フローや割引率等の見積りや仮定を用いており、将来の事業計画や経営環境の変化等によりこれらの見直しが必要となった場合、減損損失が発生する可能性があります。
2025年3月期において、減損損失の認識の判定で割引前将来キャッシュ・フローの総額が、のれん及び顧客関連資産の帳簿価額を下回っていると判断されたため、Rudi's Fine Food Pte Ltdののれんを減損し減損損失を計上しております。この結果生じた減損損失968百万円については、特別損失に計上しております。
⑥ 退職金及び退職年金
当社及び国内連結子会社は、確定給付型の制度として企業年金基金制度、退職一時金制度及び確定拠出年金制度を採用しております。また、一部の連結子会社は、中小企業退職金共済制度を採用しております。退職給付に係る資産、退職給付に係る負債及び退職給付費用は、数理計算上の仮定に基づいて算出されております。これらの仮定には、割引率、年金資産の長期期待運用収益率、退職率、死亡率等が含まれております。これらの前提条件は年に一度見直しております。当社グループは、使用した仮定は妥当なものと判断しておりますが、仮定自体の変更により、退職給付に係る資産、退職給付に係る負債及び退職給付費用に影響を与える可能性があります。
(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 概要
当連結会計年度の売上高は4,583億54百万円(前期は4,484億29百万円)となりました。利益面におきましては、営業利益89億48百万円(前期比24.3%減)、経常利益105億2百万円(前期比18.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益70億76百万円(前期比5.5%減)となりました。
② 売上高
当連結会計年度の売上高は4,583億54百万円であり、前連結会計年度と比較しますと99億24百万円の増収となっております。
加工食品事業部門は、主力ブランドを中心に販売拡大に取り組みました。販売促進政策では、東京ディズニーリゾート®ご招待キャンペーン、宝塚歌劇団貸切公演キャンペーン、TVCMやSNSを活用したキャンペーン等、ブランド認知向上にも継続的に実施し、販売シェア拡大に貢献しました。結果、業務用商品は前期を下回ったものの、市販用商品は販売数量増により前期を上回り、全体としては前期を上回りました。
食肉事業部門は、海外畜肉相場の高値継続と円安による輸入仕入コストの上昇等、仕入環境は厳しい状況が継続しています。販売先の店頭価格は、食肉の相場上昇を補うまでの十分な価格上昇には至らなかったものの、段階的な価格転嫁の実現や販売数量の増加により、前期を上回りました。
③ 営業利益
加工食品事業部門は、2024年4月、9月にハム・ソーセージ商品及び加工食品の価格改定を行い、販売先への納品価格の引き上げを実施いたしました。ハム・ソーセージ部門や加工食品部門は原材料のコスト上昇を価格改定で補い、前期を上回る結果となりました。一方、コンビニエンスストア向けのベンダー事業については、お手頃価格訴求による数量は増加したものの利益は低下し、また他の定番商品等の数量減及び利益低下により、前期を下回りました。これらの結果、ベンダー事業の減益の影響が大きく、加工食品事業部門は前期を下回りました。
食肉事業部門においては、輸入畜肉の現地相場高や円安、疾病問題等による畜肉市場の価格変動の影響はあったものの、数量増により前期を上回りました。
結果、当連結会計年度の営業利益は、89億48百万円となり、前連結会計年度と比較しますと28億71百万円の減益となりました。
④ 経常利益
当連結会計年度の経常利益は105億2百万円であり、前連結会計年度と比較しますと23億81百万円の減益となりました。
⑤ 親会社株主に帰属する当期純利益
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は70億76百万円であり、前連結会計年度と比較しますと4億13百万円の減益となりました。
⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。
⑦ 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金は、主に製品製造のための材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用並びに当社グループの設備投資及び改修等に支出しております。これらの必要資金につきましては営業キャッシュ・フローを源泉とする自己資金のほか、金融機関からの借入等による資金調達にて対応していくこととしております。
当社及び国内子会社においてキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入することにより、各社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うとともに、当社グループの余剰資金を、伊藤忠商事㈱のグループ金融制度に預け入れ、資金の効率的な運用を図っております。
また、複数の金融機関との間でコミットメントライン契約を締結しており、当社及び当社グループの十分な手元流動性の確保をしております。
⑧ セグメントごとの財政状態
<加工食品事業部門>
加工食品事業部門については、各工場の生産能力増強に向けた投資を行いました。また、今後も生産数量の拡大、省人化、環境負荷の軽減、新技術開発や工程改革を推し進め、商品規格数の適正管理、原材料の有効活用、物流コスト削減等を図り、事業競争力を高めることに注力してまいります。
<食肉事業部門>
食肉事業部門については、肉豚生産事業のインテグレーション強化に向けた投資に注力しております。具体的には肥育舎の増設による生産規模の拡大、農場近代化による生産効率の向上を目的とした投資を行い、子会社加工場へ肉豚を安定供給し、品質の高い国産肉豚の生産体制を確立し、販売競争力を高め、収益力の拡大を推進してまいります。
<その他事業>
その他事業につきましては、グループの人事・総務、情報システム等のサービス業務の充実を図ることでグループ経営基盤を強化する方針にて事業を推進してまいります。
該当事項はありません。
当連結会計年度では、当社の研究開発部門である開発本部基礎研究所を中心に「おいしさ、安全・安心、健康、環境負荷低減、細胞工学」の5つの分野において、食肉加工あるいは食肉生産に関する先端的な基礎研究、それらを活用した商品開発と一部の生産技術開発に至るまで、精力的な研究開発活動を行いました。独自の研究技術成果等の社内への導入及び社外への発信も積極的に行っております。また、研究開発体制の構築や研究開発のレベルアップ及び効率化のため、大学等の各種研究機関との共同研究を通して連携強化を行い、研究を推進しています。
(1) おいしさに関する研究
おいしさに関する研究では、商品のおいしさを客観的かつ具体的に評価することによる、おいしさの見える化(数値化)の検討を継続しました。当期においては、これまでに導入した技術による評価を継続しながら、静・動摩擦測定機によるロースハムの食感評価及び電子嗅覚システムを用いたロースハムやウインナーソーセージの風味評価と官能評価の間に高い相関性が得られ、各商品の特徴を明らかにしました。また、2023年度から実施しているジューシー感の評価は、当期においては商品のジューシー感が嗜好性と強く関連することが明らかとなり、結果を関連する学会にて報告しました。さらに、研究成果を自社商品の企画開発や品質改善に応用し、自社商品の強みや弱みを詳細に解析することで、より高品位な商品の開発につなげています。「恵味の黒豚」をはじめとする当社ブランドの豚肉の特性評価も継続して実施し、食肉事業本部等の他部門への情報提供を行い、商品開発、品質改善、販売促進活動のサポートに繋がっています。今後もより精度の高いおいしさの見える化を行い、各事業本部の活動に貢献できるよう、新たな検査装置の導入、手法に関する情報収集を継続してまいります。
(2) 安全・安心に関する研究
安全・安心に関する研究では、食物アレルゲン検査キットのAOAC(海外の精度認証)取得に関する取り組み、微生物制御及び微生物利用に係る研究開発を行いました。
① 食物アレルゲン検査キットの開発
国内初となるAOAC認証済みのイムノクロマトキットを目指し、認証取得に向けた取り組みを継続しました。当期では、2023年度までに実施した試験結果をまとめAOACにレポートを提出、最終段階の調整を行っています。なお、試験結果より食品中に含まれるアレルゲン濃度が低濃度であっても検出が可能であることが示され、競合他社に対し性能での優位性を示し、今後の拡販につながることが期待されます。
② 微生物制御に係る研究開発
「おいしさと安全・安心」の両立を目指し、工程管理基準の見直し及び保存性向上に関する技術開発を進めています。工程管理基準の見直しは、ハンバーグ類等の真空調理食品製造条件の基準化、セミレトルト処理を行う際のpHや加熱処理の条件および条件に応じた賞味期限の基準設定を行いました。これらの基準は、今後の新商品開発に活かしていきます。また、細菌検査の精度向上や効率化を目的とした、加熱損傷と保存性に係る研究、保存性の予測技術に関する研究、自家蛍光を利用した微生物検査装置の開発を外部研究機関と連携しながら継続しております。今後も新基準の水平展開、新規商品の基準策定、工場の衛生改善や検査方法及び装置の開発を進め、安全性を担保しつつ、おいしい商品の提供に繋げてまいります。
③ 微生物利用に係る研究開発
2023年度より、麹菌による次世代たんぱく質食品の開発を開始しています。当期では麹菌を培養する際に使用する培養条件の検討から、機能性成分の富化につながる培地条件を確立し、特許出願を行いました。また、麹菌の菌体を利用した加工食品の開発を検討し、麹菌の処理工程や加工条件により食感や風味が異なることも分かりました。今後も最適な培養条件や加工食品開発の検討を進め、新たなたんぱく質の供給源としての可能性を明らかにしてまいります。
(3) 健康に関する研究
健康に関する研究では、健康で豊かな食生活を創造するために、短期課題として健康に配慮した商品の開発、中長期課題として食肉中からの新規健康成分の探索を進め、当社商品へ活用するための基礎および応用研究を行っています。
① 健康に配慮した商品の開発
2023年度の検討開始から、アミノ酸等の利用による減塩商品の風味改善効果について特許出願を行うとともに、当社減塩商品のリニューアルに応用された技術について、当期では、苦味のマスキング効果に対する詳細な検討を進め、得られた結果をもとに国内優先権主張出願を行いました。市場で多く見られるようになった減塩商品ですが、食感や風味等は改善すべき点が多く、品位の改善に向けた研究を継続してまいります。
② 食肉中からの健康機能性成分の検索
外部研究機関との共同研究により、畜肉副産物中からの機能性成分の探索と健康機能性の解明を進めております。当期では、2023年度に血中のコレステロール値や脂肪細胞に影響を与え、健康機能性として有効な結果が得られた副産物について、有効性を確認するための試験を継続しました。また、確認試験と並行し、副産物の素材化、機能性を高めるための副産物前処理条件の検討、その他の副産物からの機能性成分に関する調査を行いました。本研究は、未利用資源の有効活用にも繋がるため、検討を継続することとしております。
(4) 環境負荷低減に関する研究
環境負荷低減に関する研究では、当社の養豚事業や食品製造時に発生する二酸化炭素を考慮し、環境に対する積極的な取り組みが責務となると考え、当期では以下の3課題に取り組みました。いずれの課題も外部研究機関等との共同研究を推進し、基礎的な研究から社会実装を行うための応用研究までを行っております。
① カーボンニュートラル
ラン藻による大気中の二酸化炭素を固定化する技術の開発を継続しています。当期では、当社で分離したラン藻を食品として利用するための急性毒性試験、幅広い温度帯での生育特性の確認、生育温度に依存した栄養成分の蓄積およびコントロールできる特性の確認を行い、特許出願の準備を進めております。また、構築した技術は共同研究先が設立を準備しているコンソーシアム内での使用を計画しております。
② 有機性廃棄物の資源化
動植物性残さや家畜の糞尿等の有機性廃棄物を資源化するため、メタン発酵消化液による植物病害菌抑制を検討しています。当期では、2023年度までに確立した有用菌2株を使用してのフィールド試験を実施し、植物病害菌抑制に対する効果を確認しました。また、これまでに検討した内容を関連する学会にて報告を行いました。
③ 生分解性プラスチック素材の微生物による分解
堆肥中でのポリ乳酸(PLA)繊維の効果的な分解を目的として、検討を行っております。当期では、2023年度に分離した有用菌3株を用い、実用化に向けて試験系のスケールアップ及び微生物の大量培養委託先の選定を行いました。翌期では、共同研究先でのフィールド実証試験を計画しております。
(5) 細胞工学に関する研究
将来的な世界人口の増加による食肉供給不足や環境保全の観点から、当社においてもゲノム編集技術を応用した食品の開発動向、培養肉のメーカー・技術動向・市場性などを把握するため、調査研究を継続しております。当期は、ゲノム編集応用食品及び培養肉に関する技術情報の収集を行いながら、培養肉開発に関する技術の検証をすすめ、畜肉副産物を原料とした培養肉を食品加工素材として使用することの可能性を確認しました。
当期の研究開発活動は、社内関連部署及び社外各種研究機関との連携を強化しながら、研究活動の中から得られた情報を全社に向けて発信することにより、研究開発部門と他事業部門が一体となって具体的施策を推進し、全社利益の最大化・企業価値向上に貢献することを目標に実施してまいりました。また、関連する学会での研究報告、新技術の特許化等などを通じて社外に対する情報発信も行っております。
なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、