第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月28日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

 当社グループは、「信を万事の本と為す」と「時代への適合」を社是とし、「健康で豊かな生活づくりに貢献する」ことを企業理念として、事業を進め業容の拡大を図ってまいりました。また、グループ各社は「健康」を常に念頭においた製品やサービスの提供に努め、「信頼」を築き上げる決意をこめて「健康と信頼をお届けする」をコーポレートスローガンとしております。

 これらの基本的な理念を踏まえて、当社グループは長期的な企業価値の極大化を経営の基本方針とし、コア事業と成長事業へ重点的に資源配分を行いつつ、グループ経営を展開しております。

 また、内部統制システムへの取組み、コンプライアンスの徹底、食品安全、環境保全、社会貢献活動等の社会的責任を果たしつつ自己革新を進め、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、株主、顧客、取引先、社員、社会等の各ステークホルダーから積極的に支持され続けるグループであるべく努力を重ねております。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

 当社グループは、長期ビジョン「NNI“Compass for the Future”新しいステージに向けて ~ 総合力の発揮とモデルチェンジ」で掲げる目指す姿“未来に向かって、「健康」を支え「食のインフラ」を担うグローバル展開企業”の実現に向けて、ニュー・ニッシン・イノベーション活動を推進しております。当社グループの「総合力」を発揮する仕組みを構築するとともに「顧客志向」を改めて徹底し、「既存事業のモデルチェンジ」と「グループの事業ポートフォリオ強化」を柱とした成長戦略の推進、及びそれを支える経営機能の一層の強化等を図ってまいります。

 また、「当社創業以来の価値観」を共有して下さる株主の皆様に長期的スタンスで安定的に利益還元を行ってまいります。連結ベースでの配当性向の基準を40%以上とし、自己株式取得等はキャッシュ・フローや戦略的な投資資金需要を勘案した上で機動的に行ってまいりたいと考えております。

 当社グループは、長期ビジョン実現のために策定したこれらの戦略を遂行し、利益成長と資本政策の両面から更なる1株当たり当期純利益(EPS)の成長を図るとともに資本の効率性と財務の安定性のバランスを取りながら、資本コストを上回る自己資本利益率(ROE)の確保・向上に努めてまいります。

 また、企業価値を高める規律としてのガバナンス(G)の強化、事業の持続可能性に関わる環境(E)・社会(S)への貢献を事業戦略と深く関連させたサステナビリティ経営を推進していくことで、「企業理念の実現」と「企業価値の極大化」をより強く結び付け、あらゆるステークホルダーの皆様から積極的に支持され続ける企業グループとして発展を目指してまいります。

 なお、現在、2022年を開始年度とする新たな中期経営計画の検討を進めておりますが、本年6月に就任した新社長のもと、十分に議論した上で策定する予定であります。

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題等

 国内外の食品業界では、依然として新型コロナウイルス感染症が拡大と収束を繰り返す中、生活様式や消費者マインドが変化し、需要にも影響を与えているものの、経済活動は徐々に平常化に向かっております。一方、世界的な食糧インフレが進行する中、ウクライナ情勢に起因して穀物・資源価格が急騰し、為替相場も円安が加速する等、事業環境にも大きく影響が及んでおります。また、国内では、国際貿易協定の発効等により自由化に向けた潮流が加速していくことが予想されます。

 そのような中、当社グループでは、小麦粉をはじめとする「食」の安定供給を引き続き確保し、各事業におきまして安全・安心な製品をお届けするという使命を果たしてまいります。また、各事業では、食糧インフレ等による原材料コスト等の大幅な増加への対応を最優先課題として取り組んでまいります。併せて、事業競争力(「売る力」「稼ぐ力」)の強化に向け、デジタルトランスフォーメーションを推進し、業務のデジタル化や事業モデルの変革等に取り組むとともに、国内・海外を含めた事業会社間の連携を強化し、グループとしての「総合力」をさらに発揮して、長期ビジョンの実現を目指してまいります。社会課題や技術革新がもたらす環境変化に向き合い、持続的な成長を実現するとともに、自らが創出する付加価値を通じて社会に貢献する循環を作り上げることで、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。なお、増加するサイバー攻撃や不正アクセス等のシステム関連のリスクに対しては、セキュリティ機能や危機管理体制を強化することで、グループ全体のセキュリティレベルの向上を図っております。

① 国内事業戦略

 製粉事業では、お客様のニーズを的確に捉えた製品の開発や価値営業の推進によりお客様との関係を一層強化し、引き続き安全・安心な製品の安定供給に努めてまいります。なお、本年6月に、日清製粉株式会社が熊本製粉株式会社の発行済株式の85%を、関係当局の承認が得られることを条件として取得することを決定いたしました。シナジー効果によるコスト競争力と市場への適応力の増進を図り、事業競争力を一層高めてまいります。また、2025年5月頃稼働予定で岡山県倉敷市水島地区に新工場を建設し、併せて岡山工場・坂出工場を閉鎖することを昨年10月に決定いたしました。本施策により、コスト競争力を強化するとともに、地震等の万一の被害に備えてBCP(事業継続計画)対応を強化し、主要食糧である小麦粉の安定供給を図ってまいります。

 加工食品事業では、生活者のニーズに対応すべく、「簡単・便利」「本格」「健康」を軸とした製品の付加価値化に加え、SDGs、Z世代にも対応した新製品の投入や積極的な販売促進施策等によるブランドロイヤリティの向上、及び成長分野である冷凍食品事業の一層の拡大を図るなど、事業ポートフォリオの最適化に取り組んでまいります。また、本年1月から日清フーズ株式会社の商号を株式会社日清製粉ウェルナに変更いたしました。ブランド戦略投資により露出度を高め、認知度の定着、拡大を図るとともに、国内外への新たなブランド戦略によりグローバル展開企業を目指してまいります。

 中食・惣菜事業では、当社グループの研究開発力を活かした美味しさの追求とこれまで培ってきた技術力による高い生産効率の実現を両立する高度に事業化されたビジネスモデルへの転換を図ってまいります。また、中食・惣菜事業の全体最適を考えた機動的な戦略判断を行うとともにマネジメントの一層の強化を図るため、本年7月に中食・惣菜事業を統括する中間持株会社を設立することを、本年4月に決定いたしました。今後は中間持株会社が中心となり、傘下子会社の経営資源の有効活用や各社の経営管理・戦略立案への関与・支援を行うとともに、リスク管理・ガバナンスの強化等、競争力ある事業体制を構築してまいります。

 酵母・バイオ、健康食品、エンジニアリング、メッシュクロス等の各事業では、製品開発・技術開発を進め、各業界において存在感のある事業群として成長を図ってまいります。

 その他、国内での人手不足問題にもロボットやAIの活用、自動化等の新技術による業務プロセス改善等により適切に対応してまいります。

 

② 海外事業戦略

 製粉事業では、当社グループの強みである製粉技術、提案力を活かした拡販に取り組み、現地市場での更なる成長を図るとともに、戦略投資を積極的に推進し、海外事業の基盤拡大に取り組んでまいります。

 加工食品事業では、アジア市場で成長が見込まれる業務用プレミックス事業をさらに拡大してまいります。また、生産面ではグローバルな最適生産体制をベースにコスト競争力を強化するとともに、当社グループが長年培ってきた製造技術や高度な品質管理ノウハウを活かし、パスタ、パスタソース、冷凍食品等の更なる事業拡大に取り組んでまいります。

 酵母・バイオ事業では、製パン用イーストの需要が高まっているインド市場に参入すべく、本年夏頃からの本格稼働を目指してOriental Yeast India Pvt. Ltd.がイースト工場の立ち上げを進めており、高品質な製品を現地市場に供給することで、事業の拡大を目指してまいります。

 その他、製粉、食品、ベーカリー関連ビジネスを中心に、新たな領域での事業拡大を自社独自に又はM&A、アライアンスによりスピード感を持って推進してまいります。

 

③ 研究開発戦略、コスト戦略

 当社グループは、お客様の視点に立った新製品開発と新しい領域の基礎・基盤技術の創出に取り組んでおります。新製品開発につきましては、新規性、独自性があり、お客様にとって付加価値の高い新製品を継続的に開発してまいります。研究面におきましては、研究成果の実用化、事業化推進のため、重点研究領域を明確にするとともに、事業戦略に即した研究テーマを設定するなど効率化、スピード化を図ってまいります。さらに、自動化技術の活用による更なる効率化も検討し、人手不足問題等にも対応してまいります。

 また、今後も大きな変動が想定される原料及び燃料相場への対応として、調達・生産コストの低減を進めるとともに、変動するコストに適切に対応できる事業基盤を構築してまいります。

 

④ 麦政策等の制度変更に向けた取組み

 TPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)、日EU・EPA、並びに日米貿易協定の発効により、米国産・カナダ産・豪州産小麦のマークアップ(政府が輸入する際に徴収している差益)の引き下げが順次実施されております。一方で、日英包括的経済連携協定やRCEP(地域的な包括的経済連携)協定が発効し、また、TPP11協定に英国、中国等が加入申請するなど国際貿易協定は広がりを見せており、小麦関連製品の国境措置が低下し、関係国からの輸入製品との競争激化が想定されます。自由化に向けた潮流が加速していく中、情勢の変化を適切に見極めながら、引き続きグローバル競争で勝ち抜くべく国内外での強固な企業体質を構築してまいります。

 

⑤ 企業の社会的責任への取組み

 当社グループは、従前より、持続可能な社会の実現に貢献し、社会にとって真に必要な企業グループであり続けるべく、「日清製粉グループの企業行動規範及び社員行動指針」並びに「日清製粉グループCSRの考え方」を実践することで、企業の社会的責任(CSR)を果たしてきております。また、取締役会のもとに社会委員会を設置し、グループのCSRの取組みを推進しております。

 ガバナンスの強化につきましては、監査等委員会設置会社として、健全で実効性のあるコーポレート・ガバナンス体制を構築、維持するとともに、コンプライアンスにつきましては、関連法規や社会規範及び社内規程・ルールを遵守し、公正かつ自由な競争の中で事業の発展を図っております。内部統制においても、金融商品取引法により求められる範囲を超え、当社グループ全体に広く内部統制システムの整備を行い、専任組織によるモニタリングにより、その維持、改善に努めております。

 また、安全で健康的な食の提供、持続可能な原材料の調達推進、気候変動及び水問題への対応、食品廃棄物・容器包装廃棄物への対応、働きがいのある労働環境の確保等を内容とする「CSR重要課題(マテリアリティ)」を2019年に特定し、経営の最重要課題の一つと位置付けてグループ全社で取り組んでおります。さらに、取組みの重要性が増している人権課題への対応につきましては、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいて制定した「日清製粉グループ人権方針」の実践として、サプライチェーンを含む主要事業の人権デュー・ディリジェンスを進めております。

 

<安全で健康的な食の提供、持続可能な原材料の調達推進>

 安全・安心な製品をお届けするために、消費者の視点からの品質保証を第一とした品質保証体制を構築しており、国際的なマネジメントシステムの認証を取得・維持することで製品安全体制の継続的な改善、強化に取り組んでおります。また、CR(Consumer Relations)室が、消費者の皆様の声や消費者行政関連の情報を積極的に収集し、対応の充実を図っております。さらには、小麦粉をはじめとする「食」の安定供給を確保するために、BCPによる災害や感染症等への備えの拡充にも努めており、新型コロナウイルス感染症への対応においても早期にBCPを発動し、感染対策を徹底し、事業活動の維持を図っております。

 

<気候変動及び水問題への対応、食品廃棄物・容器包装廃棄物への対応>

 昨年8月に従来の環境目標を見直し、新たな中長期目標を設定するとともに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同、及びTCFDコンソーシアムへの参加を表明いたしました。また、環境課題への取組みとして、工場での省エネ設備の導入、生産効率の改善や再生可能エネルギーの導入、他社との共同配送等による環境負荷の低減などを進めております。さらには、製品開発においても、調理段階まで想定したエネルギー低減や化石燃料由来のプラスチックの削減・減量化、バイオマス素材の活用、リサイクル性の向上等、環境に配慮した製品の開発を行っております。

 

■環境課題中長期目標

 1)CO₂排出量削減

2050年目標

・グループの自社拠点でCO₂排出量実質ゼロを目指す

・サプライチェーンにおけるCO₂排出量の削減に取り組む

2030年度目標

・グループの自社拠点でCO₂排出量50%削減を目指す(2013年度比)

 

 2)食品廃棄物削減

2030年度目標

・原料調達からお客様納品までの食品廃棄物の50%以上削減を目指す(2016年度比)

・サプライチェーン各段階の取引先と共に食品廃棄物削減に取り組む

 

 3)容器包装廃棄物削減

2030年度目標

・化石燃料由来のプラスチック使用量の25%以上削減を目指す(2019年度比)

・環境に配慮した設計などプラスチック資源の循環を促進する

・容器包装へのバイオマスプラスチック、再生プラスチック、再生紙、

 FSC認証紙等の持続可能な包装資材の使用を推進する

 

 4)水使用量削減

2040年度目標

・工場の水使用量原単位30%削減を目指す(2021年度比)

 

<働きがいのある労働環境の確保>

 社員一人ひとりが能力を発揮し、成長を実感できる人材育成を目指し、次世代経営人材育成のための「事業経営者育成プログラム」、専門性の高い技術者育成のための「キャリア・ディベロップメント・プログラム」、社員が各階層で必要なスキルやマインド、能力を高めていくための「階層別研修」等の各種研修プログラムを実施しております。また、従業員の労働災害の未然防止対策強化を図るとともに、「健康」で「活き活き」と働くことを実現するために、メンタルヘルスケアや健康増進にも力を入れ、社長をトップとして、健康経営を推進しております。2021年度には経済産業省が創設した認定制度である「健康経営優良法人(ホワイト500)」の認定を2年連続で取得いたしました。その他、柔軟な働き方を可能とする制度改正など、多様な働き方の実現に向けた取組みも進めております。

 

 社会貢献活動につきましては、継続的に震災被災地の復興支援、「製粉ミュージアム」による地域観光資源や教育資産としての地域貢献等を行っております。

 当社グループは、このような企業の社会的責任への取組みを、今後も継続してまいります。

 

2【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が経営成績等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 当社グループでは、「日清製粉グループリスクマネジメント規程」「日清製粉グループクライシスコントロール規程」を制定し、リスクに対する適切な対応を確保し、リスクの予防・制御を目的とした日常的なリスクマネジメント活動を強化しております。また、当社社長を委員長、各事業会社社長等を委員とするリスクマネジメント委員会を設置し、当社グループ全体のリスクマネジメントを統括しています。さらに、リスクマネジメント委員会の下部組織として、企画部会、災害部会、海外安全対策部会を設置し、課題ごとの具体策を検討・提言する体制を整備しています。

 この体制のもと、リスクマネジメント委員会とその下部組織は、当社グループの事業運営において想定される様々なリスクを認識し、そのリスクへの具体的な対応策を整え、重大クライシス発生時等には確実に対策本部を立ち上げるなどの役割を果たし、当社グループの事業継続と安全・安心な製品の安定供給という使命を果たしてまいります。

 以上述べた事項をリスクマネジメント体制図によって示すと次のとおりであります。

 

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(ウクライナ情勢の影響について)

 2022年2月24日にウクライナに対する大規模な軍事行動が開始されて以降、当社グループの事業にも新たなリスクが顕在化しています。この度の紛争両国は世界有数の小麦輸出国であり、今後更なる情勢悪化が続けば、小麦の生産や輸出の減少が危惧されます。当社はロシア・ウクライナから小麦は輸入していないものの、世界的な小麦不足となれば需給逼迫や価格上昇が生じ、当社もその影響を受けることが懸念されます。また、ロシア産の原油や天然ガスなどが世界で敬遠され、供給が減少することで生じる燃料価格などの上昇と、それに伴う物流費の上昇により当社事業へのリスク発生の可能性があります。

 穀物に関しては一旦生産が滞った場合、次の生産サイクルを経ないと穀物を収穫して出荷することはできないため、紛争が終結しても、ウクライナが正常な出荷体制に戻るのには時間を要することが見込まれます。当社グループでは、各事業への影響把握と対応策の検討・指示等を行ってきており、今後も状況を慎重に見極めながら、ウクライナ情勢に関する様々なリスクに迅速かつ適切に対応してまいります。

 

 以下の主要なリスクについては、そのリスクが将来的に顕在化する可能性の程度、顕在化した場合の影響度をそれぞれ3段階で評価しております。この評価は上記リスクマネジメント委員会で判断したものであります。

 

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月28日)現在において当社グループが判断したものであります。

① 国際貿易交渉の進展と麦政策の変更  可能性の程度:高 影響度:大

 TPP11協定(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)、及び日EU・EPA、日米貿易協定等、国際貿易交渉の進展により貿易の自由化に向けた潮流は加速しており、今後国内事業においては、小麦関連製品の国境措置低下に伴う需要変動、競争激化により、当社グループの製粉、加工食品事業を始めとする小麦粉関連業界に影響が及ぶことが予想されます。

 また、国内での麦政策の見直し等により、現行の国家貿易のあり方など小麦の管理手法(調達・在庫・売渡方法など)の変更、国内小麦粉・二次加工品市場の混乱、関連業界の再編など製粉事業、加工食品事業においてリスクの発生の可能性があります。

<主要な対応策>

 このような貿易自由化・麦政策変更等のリスクに対応するため、当社グループはグローバルな生産体制の整備や国内小規模工場の閉鎖と大型臨海工場への生産集約、新技術の活用によるローコストオペレーション、顧客ニーズの変化への適合、海外事業拡大の一層の加速等に取り組んでおり、今後もより強固な企業体質を構築してまいります。

② 製品安全  可能性の程度:低 影響度:大

 食の安全・安心についての社会的関心が年々高まっており、食品業界におきましては、より一層厳格な対応が求められるようになっております。当社グループは、自社工場、及び生産の外部委託先に対して製品安全に関する取り組みを継続的に実施しておりますが、外的要因も含め、当社グループの想定範囲を超えた事象が発生した場合、製品回収、出荷不能品が発生する可能性があります。

<主要な対応策>

 このような製品安全上のリスクに対応するため、当社グループは「消費者視点での品質保証」を基本とし、開発から製造・物流・営業まで、全ての業務に携わる従業員への教育・指導、新規原材料・新製品に対する安全性の総合的評価(セイフティレビュー)、食品防御(フードディフェンス)の取り組み強化、食品安全マネジメントシステムの国際規格であるISO・FSSC等の認証取得と継続的な実効性検証、生産の外部委託先に対する自社工場と同様の管理の徹底等、製品の品質保証体制の維持・向上に取り組んでおります。

③ 災害・事故・感染症  可能性の程度:中 影響度:大

 当社グループは、安全・安心な製品を安定的に供給するために工場等の設備維持・安全確保に努めておりますが、地震や風水害などの大規模自然災害、火災・爆発などの事故や新たな感染症の流行が発生した場合、損害発生、顧客への製品供給に支障をきたすなどの可能性があります。

<主要な対応策>

 このような災害・事故に係るリスクに対応するため、当社グループは地震・風水害など自然災害の発生時に人的被害・工場等の設備破損が生じないように主要工場の耐震補強、水害対策等を進めるとともに、火災・爆発などの事故発生防止の体制作りの強化(設備・安全監査の実施、設備安全に関する規程整備を含む)、大規模地震に備えたBCP(事業継続計画)及び風水害に備えたタイムライン等を整備しており、あわせて火山噴火を想定した対応についても着手しております。また、発生後の経過と終息を予測することの難しい新たな感染症に対しては、BCP(事業継続計画)、及び感染防止対策等を整備しております。なお、大規模自然災害対策にあたっては、近年の災害甚大化に伴う国の災害想定見直しを逐次確認し、それに対応した対策見直しを行っております。

(新型コロナウイルス感染症について)

 国内外の経済活動に重大な影響を及ぼしている新型コロナウイルス感染症は、いまだ先行きは不透明であり、当社グループの現状においては最優先に取り組むべきリスクであると認識しております。当社グループでは、従業員の安全と「食」の安定供給を持続的に確保するため、2020年1月に社長を本部長とする「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置して以降、同対策本部を毎月開催し、感染予防策の徹底、各事業への影響把握と対応策の検討・指示等を行ってきており、今後も新型コロナウイルス感染症がもたらす様々なリスクに迅速かつ適切に対応して参ります。なお、新型コロナウイルス感染症による当社グループの影響については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。

④ 他社とのアライアンス及び企業買収の効果の実現  可能性の程度:中 影響度:大

 当社グループは、事業ポートフォリオの強化を図り、長期的な企業価値の極大化を実現するため、国内外において他社とのアライアンス及び企業買収を行っておりますが、アライアンス及び買収後の事業が当初の想定通りに進捗しない場合等には、その効果を実現できない可能性があります。また、企業買収等に伴い発生しているのれん等の無形資産について、期待されるキャッシュ・フローを生み出さない状況になるなど、収益性低下により投資額の回収が見込めなくなることにより、多額の減損損失を計上する必要が生じた場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

<主要な対応策>

 当社グループは今後も事業ポートフォリオの強化を進めてまいりますが、他社とのアライアンス及び企業買収については、独自のガイドラインに基づく案件の事前検証、適切なM&Aチーム体制の構築等を実施することでリスクの低減を図り、アライアンス及び買収直後から確実な事業継承・立上げやPMI活動の充実等に取り組んでまいります。

⑤ 原材料調達  可能性の程度:中 影響度:大

 当社グループは、各事業において環境・人権というサプライチェーン上の課題へも配慮しながら安全かつコスト競争力がある原材料の持続的な調達に努めておりますが、感染症や天災、テロや紛争等による原料供給の停滞・途絶や異常気象による農産物の不作、新興国の経済成長による需要拡大、小麦生産地域等での地政学上のリスクの発生等による主要原材料の高騰、人件費、輸送・物流コストの上昇から適正な調達コストを維持することが困難になったり、原料の供給不足から既存製品が製造できなくなる可能性があります。また、輸入小麦価格の大幅な引き上げ等原材料調達コストの上昇分を小麦粉及び製品の販売価格に織り込めず、価格改定が確実に行われない場合、当社グループの利益に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、原材料調達に係る環境・人権課題等の社会的課題に適切に対応しなかった場合、社会からの信頼が失墜し、企業ブランド・競争力の低下に繋がるおそれがあります。

<主要な対応策>

 当社グループは原材料調達、生産における継続的なローコストオペレーションを推進し、国内外の原料原産地の状況把握に努め、調達先の分散化や代替原料候補の探索を行い、製品の安定供給に努めています。また、マーケットの変化に適合した新製品開発や高付加価値化戦略等により製品の適正価値維持に取り組むとともに、安全な原材料を安定的かつ持続的に調達するため、サプライヤーとの協力のもと、サプライチェーンも含めて公正で倫理的な取引を基本とした責任ある調達活動を推進しています。

⑥ 情報セキュリティ・DX(デジタルトランスフォーメーション)  可能性の程度:中 影響度:大

 当社グループは、業務効率の最適化を実現するため基幹系をはじめとして多くのシステムを活用しておりますが、システム運用上のトラブルの発生、当社グループの予測不能なウィルスの侵入・サイバーテロや情報への不正アクセスなどによるシステムダウンにより、支払処理を含む顧客対応に支障をきたす可能性や、営業秘密・個人情報の社外への流出などによる費用の発生、社会的信用の低下などにより事業活動に影響を及ぼす可能性があります。一方、新たな情報技術を活用したデジタルトランスフォーメーションへの対応の遅れは、市場の環境変化に伴う事業競争力や不測の異常事態発生時における事業継続の対応力の低下を招く可能性があります。

<主要な対応策>

 このようなリスクを低減するため、当社グループでは「情報セキュリティ基本規程」に基づく積極的な情報セキュリティ活動(教育訓練含む)を展開すると共にセキュリティ関連の情報収集に努め、より高度なコンピューターウィルス対策の実行、基幹系サーバの二重化、第三者機関によるセキュリティ診断等、グループ全体として適切なセキュリティ対策、IT管理体制の構築に取り組んでおります。 また、新たな情報技術の活用においても、機動性重視の対応方針の下、グループ横断で優先順位をつけた業務のデジタル化やデジタルマーケティングを含む事業モデルの変革、その基盤となる人材育成等に取り組んでおります。

⑦ 環境課題  可能性の程度:中 影響度:大

 当社グループは、企業活動を通じて省エネルギー、廃棄物削減など環境負荷低減に積極的に取り組んでおります。しかしながら、当社グループの想定範囲を超えた環境に係る法的規制の変更、強化等の他、ステークホルダーからの環境対応の要請の高まりにより、想定を超える費用が発生する可能性があります。また、当社グループが、気候変動及び食品廃棄物・容器包装プラスチック廃棄物等のグローバルな環境課題に対して適切な対応ができなかった場合、地球環境保全に貢献できないだけでなく、当社グループの企業ブランド価値が低下し、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

<主要な対応策>

 当社グループは地球環境保全を経営の最重要課題の一つとして「日清製粉グループ環境基本方針」を制定しております。ISO14001グループ認証を維持し、食品廃棄物の発生抑制や再利用、環境配慮設計の推進などの「食品廃棄物、容器包装廃棄物への対応」及び事業活動におけるCO₂の排出削減などの「気候変動及び水問題への対応」を当社グループのCSR重要課題に位置付け、環境保全、環境負荷軽減に取り組んでおります。

 また、2021年8月には、気候変動、食品廃棄物、容器包装廃棄物、水資源の4つの環境課題の新たな中長期目標を設定するとともに、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同およびTCFDコンソーシアムへの参加を表明しました。今後、グループの総合力を結集して中長期目標の達成に向け環境課題に取り組み、気候変動影響による自社のリスクと機会への対応を進めてまいります。TCFD提言に基づく情報開示につきましては、後述のとおりであります。なお、環境課題中長期目標につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

⑧ 海外事業  可能性の程度:中 影響度:大

 当社グループは、アジア、北米、オセアニアを中心にして積極的にグローバル展開を推進し、海外売上高比率は20%超に達しております。また、コスト競争力強化のため、グローバルな最適生産体制の構築にも取り組んでおります。今後も海外事業基盤の拡大に取り組んでまいりますが、海外においては、政治あるいは経済の予期しない変動や法律・規制の変更、及び訴訟の提起、テロあるいは紛争等の発生、新型感染症の流行による事業活動の制約・停滞などにより、業績悪化、事業継続に支障が生じるなどの可能性があります。

<主要な対応策>

 このような海外事業におけるリスクを低減するため、グループ横断のリスクマネジメント委員会の下部組織である海外安全対策部会や外部専門家等を通じて、現地経営環境を踏まえた事業運営の適切な管理・サポート等の実施、及び現地に派遣する従業員の研修体制を整備するとともに、現地従業員の安全確保に努めております。

⑨ 為替変動  可能性の程度:中 影響度:中

 当社グループは、加工食品事業をはじめ各事業において、原材料・製品の一部を海外より調達しており、為替変動により調達コストが増加する可能性があります。また、海外事業においては損益、財務状況が円換算の変動により悪影響を受け、製粉事業においては副産物のふすま価格が為替で変動する輸入ふすま価格の影響を受ける可能性があります。

<主要な対応策>

 このような為替変動によるリスクに対応するため、当社グループではグループ横断の為替委員会を設置し、為替予約ルールの設定、為替に関する情報共有及び対策の協議を行うなど、為替変動により業績が大きく左右されないよう取り組んでおります。

⑩ 人材の確保等  可能性の程度:中 影響度:中

 当社グループは、事業競争力強化のため既存事業のモデルチェンジと事業ポートフォリオの強化に取り組んでおり、それらに対応するための多様な人材を確保・育成する必要があります。しかし、労働力人口の減少や雇用情勢の変動等により、当社グループのそれぞれの事業で必要とする人材の確保・育成等ができない場合には、長期的に当社グループの競争力が低下する可能性があります。

<主要な対応策>

 このような人材の確保に係るリスクに対応するため、当社グループは採用活動の強化、教育研修の充実、及び多様な価値観を持つ従業員一人ひとりが能力を十分に発揮できる、健全で働きがいのある労働環境の確保や適切な労務管理に努めるとともに、併せて自動化、ロボット化、AI等の様々な技術の導入による生産効率の向上に取り組んでいます。

⑪ 新技術への対応  可能性の程度:中 影響度:中

 当社グループは、それぞれの事業において、急激な市場の変化や技術の進化・変化に適切な対応が取れず、製品開発技術力・生産技術力の低下、及び基盤技術の陳腐化に繋がった場合、顧客ニーズに適合した魅力ある新製品開発ができずに、出荷低迷、企業ブランド価値の低下により経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

<主要な対応策>

 このような新技術への対応遅れ等のリスクに対応するため、当社グループでは、グループ横断プロジェクト等を活用した技術の進化と技術者の育成、グループシナジー効果を活用した技術領域の拡大、産官学共同研究等外部からの技術導入の推進等、社内外の総合力を最大化することで継続的に技術力を強化し、市場で求められる製品開発に取り組んでまいります。また、これらに対応し、体制を支えるための人事賃金制度の再構築にも取り組んでおります。

⑫ 人権課題  可能性の程度:低 影響度:中

 国内外に広く事業領域を展開している当社グループにとって、職場待遇、児童労働、若年労働者の雇用、強制労働等の人権諸課題への対応、及び従業員の人権保護及び関連法規制の順守は非常に重要な課題と認識しています。人種・国籍・性別・性的指向及び性自認・年齢・障がいの有無をはじめ、価値観・宗教・信条等の違いを認め合い、お互いを尊重し合う多様性に配慮した職場づくりが実現できない場合には、当社グループ及びブランドへのネガティブな評判が拡がるとともに、社員一人ひとりが能力を発揮出来ず、当社グループが求める優秀な人材の確保も困難になり、中長期的に当社グループの競争力が低下する可能性があります。

 

<主要な対応策>

 当社グループは2018年に5つの「CSR重要課題(マテリアリティ)」を特定し、経営の最重要課題の一つと位置付けて、従業員の健康や働きがいのある労働環境の確保等にグループ全体で取り組んでいます。人権課題への対応としては、人権に対する意識を高めるために専門部署を設置し、すべての役員・社員を対象に毎年人権啓発研修を実施しています。研修では、同和問題や職場のハラスメント問題をはじめ、LGBTへの理解促進、ビジネス遂行上の人権問題等、さまざまなテーマを取り上げ、身近な問題として人権を考えるとともに、人権視点で日常業務に取り組むよう啓発を行っています。また、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づいた「日清製粉グループ人権方針」を制定し、その取り組みとしてサプライチェーンを含む主要事業の人権デュー・デリジェンスを開始しています。

 

 

 上記以外にも当社グループが事業活動を展開するうえで、経済情勢や業界環境の変化に伴う主要製品の出荷変動、単価下落リスクの他、国内外での法的規制・訴訟リスク、商標権・特許権等の知的財産権に伴うリスク、取引先(生産委託先を含む)の経営環境の変化によるリスクなど、様々なリスクが当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性がありますが、これらのリスク回避、低減に向けて適切に取り組んでまいります。

 

 

(社会的課題に対する取り組み)

 当社グループは、未来に向かって「健康」を支え「食のインフラ」を担うグローバル展開企業の実現に向けて、経済的価値と社会的価値の双方を追求し、グループ一体で企業価値の向上を目指して取り組んでおります。その実現には、人口動態の変化、地球温暖化や廃棄物汚染・食資源の枯渇、サプライチェーンも含めた環境・人権問題等の社会的課題に対応していく必要がありますが、それらの社会的課題に対するステークホルダーのニーズ・要請の変化に対して、製品開発を含めた事業活動全体を通じて適切に対応できなかった場合、企業としての信頼が失墜し、企業ブランド価値・競争力の低下に繋がり、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、さまざまな社会課題を社会からの期待と事業への影響の両側面から整理し、「CSR重要課題」として特定しています。当社グループがこれからも社会的責任を果たしていくために特定した5つのCSR重要課題に積極的に取り組み、事業を通じた解決と新たな社会的価値を創出することで、企業理念である「健康で豊かな生活づくりへの貢献」を実現し、当社グループの持続的な成長と、持続可能な社会を実現してまいります。

 当社グループのCSR重要課題と、それぞれの重点テーマ及びアプローチ・目標は、次のとおりであります。

 

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(気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に基づく情報開示)

 気候変動による影響は地球的規模で年々深刻さを増しており、世代を超えて、社会・環境・企業活動に大きな影響を及ぼす問題となっています。当社グループでも、事業拠点や小麦の生産地における自然災害リスクの増加をはじめ、直接的・間接的に、サプライチェーン全体のあらゆる段階に影響が及ぶ可能性があると認識しており、取り組むべきテーマの明確化が急務となっています。

 そこで当社は、気候変動が当社グループに与える影響についてTCFDのフレームワークに沿って気候変動シナリオ分析を行い、情報開示を通じてステークホルダーとの対話につなげていきたいと考えています。こうした考えのもと、 2021年8月にTCFD提言への賛同を表明するとともに、 TCFDコンソーシアムへ参加しました。

 TCFD提言で提示されている「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つのテーマと、それぞれに対する当社グループの活動内容は、次のとおりであります。

 

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<気候変動シナリオ分析>

 当社グループは小麦を起点とする多彩な事業をグローバルに展開しており、気候変動による影響は多岐にわたることが想定されます。そこで、気候変動が当社グループに与える影響の規模・内容を分析するために、TCFDを活用したシナリオ分析を実施しました。

 分析にあたっては、製粉事業、加工食品事業、中食・惣菜事業を対象に、社外専門家の協力を得て1.5℃及び4℃の気温上昇時の2050年の世界を想定し、特に重要度の高いリスクと機会を特定して、その対策を検討しました。

 今後は、分析対象の事業範囲を拡大して日清製粉グループ全体でのリスク・機会の分析を行い、その対応を事業戦略に反映させることで、事業の継続性を高めるとともに、持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 当社グループのリスクと機会及びその対応策は、次のとおりであります。

 

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<気候変動による小麦への影響について文献調査を実施>

 日清製粉グループは、気候変動シナリオ分析において、今世紀末の気温上昇が3.2℃の想定(IPCC第5次評価RCP6.0シナリオ、中庸シナリオSSP2)下で、気候変動がグループの主要原料である小麦の育成に与える影響について文献調査を行いました。

 

① 気候変動による小麦産地の環境変化

 3.2℃シナリオにおける気象パターンの変動予測では、 2010年から2050年にかけて世界の平均気温は2℃程度上昇しますが、北半球の高緯度地帯では3℃を超える気温上昇が、中低緯度地帯の一部では気温上昇とともに降雨量が減少するなど、地域によって気温の上昇幅や降雨量の変化にバラツキが発生すると予測されています※1。(図1、2)

 小麦産地の環境変化としては、北半球の高緯度地帯ではより小麦の栽培に適した気候になる可能性が示唆される一方、中低緯度地帯の一部では栽培適性の低下や旱魃の発生リスクの上昇が懸念されます。

 

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② 小麦の収穫見通し

 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構は、気候変動の影響に加えて、既存の増収技術の普及や播種期の移動等の簡易な対策技術の導入を考慮した場合の春に播種する小麦の収量について、次のような将来見通しを示しています。

 20世紀以降、世界の小麦平均収量は年々増加しています。3.2℃シナリオ下では、気温が高い低緯度地域では収量が低下するものの、現在低温が収量の制御要因となっている高緯度地域では気温上昇によって収量が増加し、世界全体でみると平均収量の増加は維持すると見込まれます※2。(図3)

 

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 上記を含めた複数の文献調査から、当社グループとして、いずれの気候変動シナリオにおいても気温上昇の度合いがそれほど高くない中期的な将来において、気候変動によって小麦の主要調達国の収量が大幅に減少する可能性は低いと想定しています。

 一方で気候変動による小麦調達リスクについては、収量変動のほかにも、旱魃による貿易量への影響や品質の悪化等、考慮すべき事項があります。また小麦を含めた食糧需給や調達価格の長期見通しには不透明な部分が多いため、特に2050年のような長期的な将来における調達リスクは無視できないものと考えています。当社グループとして、関連する調査研究の最新動向を引き続き把握するとともに、生産者や研究機関と連携して育種支援を行うなど、気候変動の緩和策や適応策を推進していきます。

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

  当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2022年6月28日)現在において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成に際しては、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示、並びに収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定を必要とします。当社グループはこれら見積り及び仮定について過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、これら見積り及び仮定と実績が異なる場合があります。

  会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響に関する仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載のとおりであります。

① 棚卸資産

 棚卸資産は、「棚卸資産の評価に関する会計基準」に基づき、取得原価と正味売却価額のいずれか低い価額で測定しております。また、需要の変化によって過剰又は滞留する棚卸資産についても、簿価を切り下げております。市況の変動や需要動向により、追加の評価減が必要となる可能性があります。

② 貸倒引当金

 当社グループは、金銭債権等の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を検討し、必要な貸倒引当金を計上しております。顧客の財政状態が悪化し、その支払能力が低下した場合、追加引当が必要となる可能性があります。

③ 投資有価証券の減損

 当社グループでは投資有価証券を所有しておりますが、市場価格のない株式等以外のものについては時価法を、市場価格のない株式等については原価法を採用しております。当社グループでは、市場価格のない株式等以外のものについては、時価が取得価額に比べ50%以上下落した場合には減損処理し、30%から50%の下落の場合には、当該有価証券発行会社の業績等を勘案し必要に応じ減損処理しております。市場価格のない株式等については、その実質価額が取得価額に比べ著しく下落した場合、回復の見込が確実と認められる場合を除き、減損処理しております。

 当社グループでは投資有価証券について必要な減損処理をこれまでに行ってきており、現状では減損すべき投資有価証券はありませんが、将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失又は簿価の回収不能が発生し、減損処理が必要となる可能性があります。

④ 企業結合

 当社グループは、企業結合により取得した企業又は事業の取得原価は、時価で算定しております。取得原価は、受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点において識別可能なものの企業結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して配分しております。取得原価が、企業結合日における識別可能資産及び負債の正味価額を上回る場合にその超過額をのれんとして会計処理しております。

 取得した資産、特に無形資産の時価の算定は、多くの場合、経営者の重要な判断を必要とします。当社グループは、独立の第三者による評価結果を利用し、入手可能な過去の情報と将来の見通し及びその仮定に基づいて時価を算定しております。経営者は、これらの判断及び評価は合理的であると判断しておりますが、将来の不確実な経済条件の変動等の結果によって実際の結果と異なる可能性があります。

⑤ 固定資産の減損

 当社グループは、固定資産の帳簿価額が回収不能であると判断された場合、回収可能価額まで減額しております。減損の兆候が生じた資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローを見積り、減損損失を認識するかどうかの判定を行っております。割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合、減損処理が必要と判断し、当該資産又は資産グループの帳簿価額を回収可能価額まで減額しております。回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のいずれか高い金額としております。減損損失を認識するかどうかの判定及び使用価値の算定において見積もられる将来キャッシュ・フローは、合理的な仮定に基づいております。また、使用価値の算定に際して用いられる割引率は、貨幣の時間価値及び当該資産に固有のリスクを反映しております。

 経営者は、減損の兆候及び減損損失の認識に関する判断、及び回収可能価額の見積りに関する評価を行っており、これらの判断及び評価は合理的であると判断しております。当社グループには、現状では減損すべき固定資産はありませんが、将来の企業環境の変化等により、回収可能価額が帳簿価額を下回ることとなった場合には減損処理が必要となる可能性があります。なお、提出日現在において、これらの見積りの見直しが必要となる事象は生じておりません。

⑥ 繰延税金資産

 当社グループは、繰延税金資産については、将来の課税所得の見込み及び税務計画に基づき、回収可能性を十分に検討し、回収可能な額を計上しております。しかしながら、繰延税金資産の回収見込額に変動が生じた場合には、繰延税金資産の取崩又は追加計上により利益が変動する可能性があります。

⑦ 退職給付に係る負債

 当社グループの退職一時金制度及び既退職の年金受給者を対象とする確定給付企業年金制度における退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の給付水準、退職率、直近の統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率などが含まれます。割引率は期末における複数の格付機関による直近の格付けがダブルA格相当以上を得ている社債等の市場利回りに基づき、長期期待運用収益率は保有している年金資産の運用方針や過去の運用実績等に基づき決定しております。実績が前提条件と異なる場合、又は、前提条件が変更された場合、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。

 

(2) 財政状態及び経営成績の状況及び経営者の視点による認識及び分析・検討内容

① 当連結会計年度の経営成績の概況及び分析

 当連結会計年度につきましては、依然として新型コロナウイルス感染症が拡大と収束を繰り返す中、生活様式や消費者マインドが変化し、需要にも影響を与えているものの、経済活動は徐々に平常化に向かっております。一方、世界的な食糧インフレが進行する中、ウクライナ情勢に起因して穀物・資源価格が急騰し、為替相場も円安が加速する等、事業環境にも大きく影響が及んでおります。

 このような中、当社グループは、小麦粉をはじめとする「食」の安定供給を確保し、各事業において安全・安心な製品をお届けするという使命に取り組み、その活動を支える従業員の安全確保に努めました。また、長期ビジョン「NNI “Compass for the Future”新しいステージに向けて ~ 総合力の発揮とモデルチェンジ」で目指す姿の実現に向け、早期に販売力と収益力を回復させることを最優先課題として取り組むとともに、更なる成長の基盤づくりを着実に進めました。

 その一環として、2025年5月頃稼働予定で、岡山県倉敷市水島地区に新製粉工場を建設し、併せて岡山工場・坂出工場を閉鎖することを昨年10月に決定しました。本施策により、コスト競争力を強化するとともに、地震等の万一の被害に備えてBCP(事業継続計画)対応を強化し、主要食糧である小麦粉の安定供給を実現してまいります。

 また、本年1月から、加工食品事業の子会社である「日清フーズ株式会社」の商号を「株式会社日清製粉ウェルナ」に変更しました。ブランド戦略投資により露出度を高め、認知度の定着、拡大を図るとともに、国内外への新たなブランド戦略によりグローバル展開企業を目指してまいります。

 さらに、長期ビジョンで掲げる持続的な「循環成長」を推進するため、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同、及びTCFDコンソーシアムへの参加を表明しました。併せて、CSR重要課題である「気候変動及び水問題への対応」や「食品廃棄物・容器包装廃棄物への対応」について、昨年8月に具体的な中長期目標を策定しており、取組みをさらに加速させてまいります。

 当連結会計年度の業績につきましては、売上高は、国内製粉事業の麦価改定に伴う小麦粉価格改定の実施、海外製粉事業の小麦相場上昇や為替換算の影響、エンジニアリング事業におけるプラント工事の進捗等による増収があったものの、収益認識会計基準適用の影響やペットフード事業の受託生産終了による減収があり、6,797億36百万円(前期比100.0%)となりました。なお、収益認識会計基準適用の影響を除くと前期比108.6%の増収となっております。利益面では、米国製粉事業の業績好調、国内製粉事業における副産物のふすま販売価格の堅調な推移、中食・惣菜事業の順調な回復、及びエンジニアリング事業の大型工事の進捗等により、営業利益は294億30百万円(前期比108.2%)、経常利益は326億26百万円(前期比109.2%)、親会社株主に帰属する当期純利益は、ニュージーランド製粉事業の業績悪化に伴い減損損失を計上したことにより175億9百万円(前期比92.1%)となりました。

 

  (前期比較)                                      (単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

前期差

前期比

売上高

679,495

679,736

241

100.0%

(参考)売上高-会計

基準変更影響額概算

△58,400

△58,400

(参考)売上高-会計

基準変更影響を除く

679,495

738,136

58,641

108.6%

営業利益

27,197

29,430

2,233

108.2%

経常利益

29,886

32,626

2,739

109.2%

親会社株主に

帰属する当期純利益

19,011

17,509

△1,501

92.1%

 

 セグメント別の経営成績及び経営者の視点による認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

 

  2022年3月期 売上高・営業利益                            (単位:百万円)

 

売上高

営業利益

実績

前期差

実績

前期差

製粉事業

313,519

(329,119)

27,720

(43,320)

8,587

2,270

食品事業

182,968

(213,368)

△31,741

(△1,341)

12,411

△2,939

中食・惣菜事業

138,384

(150,684)

△4,362

(7,937)

3,141

1,863

その他

44,864

(44,964)

8,624

(8,724)

5,160

919

調整

129

119

連結計

679,736

(738,136)

241

(58,641)

29,430

2,233

   (注1)売上高はセグメント間取引消去後です。

   (注2)売上高は( )内に会計基準変更影響を除いた数値を記載しております。

   (注3)営業利益の調整額はセグメント間取引消去等です。

 

 

1) 製粉事業

                                             (単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

前期差

前期比

売上高

285,798

313,519

27,720

109.7%

(参考)売上高-会計

基準変更影響額概算

△15,600

△15,600

(参考)売上高-会計

基準変更影響を除く

285,798

329,119

43,320

115.2%

営業利益

6,317

8,587

2,270

135.9%

 

 国内製粉事業につきましては、徐々に経済活動が正常化に向かう中、市況は回復傾向にありますが、依然として厳しい市場環境が継続しております。そのような中、拡販への取組みにより、出荷は前年を上回りました。また、昨年4月に輸入小麦の政府売渡価格が5銘柄平均で5.5%、10月に同19.0%引き上げられたことを受け、それぞれ昨年6月及び12月に業務用小麦粉の価格改定を実施しました。

 海外製粉事業につきましては、小麦相場の上昇や為替換算の影響等により売上げは前年を上回りました。

 この結果、製粉事業の売上高は、収益認識会計基準適用の影響による売上高減少はあったものの、3,135億19百万円(前期比109.7%)となりました。営業利益は、豪州製粉事業で新型コロナウイルス感染症に伴うサプライチェーンの混乱等の影響による業績悪化があったものの、米国製粉事業の業績好調や国内製粉事業における副産物のふすま販売価格の堅調な推移により85億87百万円(前期比135.9%)となりました。

 

2) 食品事業

                                             (単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

前期差

前期比

売上高

214,710

182,968

△31,741

85.2%

(参考)売上高-会計

基準変更影響額概算

△30,400

△30,400

(参考)売上高-会計

基準変更影響を除く

214,710

213,368

△1,341

99.4%

営業利益

15,350

12,411

△2,939

80.9%

 

 加工食品事業につきましては、家庭用製品が前年の大幅な出荷伸長の反動により出荷減となった一方で、業務用製品の需要が回復傾向にあり、また海外でのプレミックスの出荷は好調に推移しましたが、加工食品事業の売上げは収益認識会計基準適用の影響等により、前年を下回りました。なお、輸入小麦の政府売渡価格改定に伴う業務用小麦粉の価格改定を受け、昨年7月及び本年1月に小麦粉製品等の価格改定を実施しました。また、相場高騰による原材料コストの上昇等を受け、昨年9月及び本年2月にパスタ、パスタソース等、同2月に冷凍食品の価格改定を実施しました。

 酵母・バイオ事業につきましては、診断薬原料・培養用基材等の出荷増により、売上げは前年を上回りました。なお、インドの子会社であるOriental Yeast India Pvt. Ltd.において建設中のイースト新工場は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により工事は遅延しましたが、本年夏頃からの本格稼働を目指しております。

 健康食品事業につきましては、医薬品原薬の出荷減により、売上げは前年を下回りました。

 この結果、食品事業の売上高は、収益認識会計基準適用の影響による売上高減少もあり、1,829億68百万円(前期比85.2%)となりました。営業利益は、加工食品事業の海外プレミックス及び酵母・バイオ事業の診断薬原料・培養用基材等の出荷増があったものの、加工食品事業での家庭用製品の出荷減と拡販施策費の増加、商号変更に伴うブランド戦略投資、健康食品事業での医薬品原薬の出荷減により124億11百万円(前期比80.9%)となりました。

 

3) 中食・惣菜事業

                                             (単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

前期差

前期比

売上高

142,747

138,384

△4,362

96.9%

(参考)売上高-会計

基準変更影響額概算

△12,300

△12,300

(参考)売上高-会計

基準変更影響を除く

142,747

150,684

7,937

105.6%

営業利益

1,278

3,141

1,863

245.8%

 

 中食・惣菜事業につきましては、前年の新型コロナウイルス感染症の影響から順調に回復しており、また、おせちの販売は前年に引き続き好調に推移しました。しかしながら、収益認識会計基準適用の影響により、売上高は1,383億84百万円(前期比96.9%)となりました。営業利益は販売増に加え、生産性改善効果等により、31億41百万円(前期比245.8%)と前年を大幅に上回りました。

 また、中食・惣菜事業の全体最適を考えた機動的な戦略判断を行うとともにマネジメントの一層の強化を図るため、本年7月に中食・惣菜事業を統括する中間持株会社を設立することを、本年4月に決定しました。今後は中間持株会社が中心となり、傘下子会社の経営資源の有効活用や各社の経営管理・戦略立案への関与・支援を行うとともに、リスク管理・ガバナンスの強化等、競争力ある事業体制を構築してまいります。

 

4) その他事業

                                             (単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

前期差

前期比

売上高

36,240

44,864

8,624

123.8%

(参考)売上高-会計

基準変更影響額概算

△100

△100

(参考)売上高-会計

基準変更影響を除く

36,240

44,964

8,724

124.1%

営業利益

4,240

5,160

919

121.7%

 

 エンジニアリング事業につきましては、主力のプラントエンジニアリングにおける大型工事が進捗し、売上げは前年を大きく上回りました。

 メッシュクロス事業につきましては、太陽光パネル向けスクリーン印刷用資材、水素製造装置用メッシュクロス及び自動車部品向けの化成品の出荷増により、売上げは前年を上回りました。

 ペットフード事業につきましては、2021年3月末で受託生産を終了しております。

 この結果、その他事業の売上高は448億64百万円(前期比123.8%)、営業利益は51億60百万円(前期比121.7%)となりました。

 

② 当連結会計年度の財政状態の概況及び分析

                                       (単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

前期末差

流動資産

238,674

280,527

41,852

固定資産

448,740

442,546

△6,193

資産合計

687,415

723,073

35,658

流動負債

108,740

129,158

20,417

固定負債

133,900

133,272

△627

負債合計

242,640

262,430

19,790

純資産合計

444,774

460,643

15,868

負債純資産合計

687,415

723,073

35,658

 

 当連結会計年度末における資産、負債、純資産の状況は以下のとおりです。

 

 流動資産は2,805億27百万円で、受取手形、売掛金及び契約資産の増加や棚卸資産の増加等に伴い、前期末に比べ418億52百万円増加しました。固定資産は4,425億46百万円で、保有している投資有価証券の評価差額金の減少等に伴い、前年度末に比べ61億93百万円減少しました。この結果、資産合計は7,230億73百万円で前年度末に比べ356億58百万円増加しました。

 また、流動負債は1,291億58百万円で、支払手形及び買掛金の増加等に伴い、前年度末に比べ204億17百万円増加しました。固定負債は1,332億72百万円で、繰延税金負債の減少等に伴い、前年度末に比べ6億27百万円減少しました。この結果、負債合計は2,624億30百万円となり、前年度末に比べ197億90百万円増加しました。純資産合計は親会社株主に帰属する当期純利益による増加、配当金の支出による減少、その他の包括利益累計額の増加等により、前年度末に比べ158億68百万円増加し、4,606億43百万円となりました。

 

③ 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況及び資本の財源及び資金の流動性についての分析

① キャッシュ・フローの状況

                                        (単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

前期差

営業活動によるキャッシュ・フロー

49,506

41,833

△7,672

投資活動によるキャッシュ・フロー

△17,105

△15,517

1,588

フリー・キャッシュ・フロー

32,400

26,316

△6,084

財務活動によるキャッシュ・フロー

△31,264

△17,850

13,414

現金及び現金同等物に係る換算差額

1,466

1,110

△356

現金及び現金同等物の増減額

2,602

9,576

6,974

現金及び現金同等物の期末残高

59,152

68,728

9,576

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 税金等調整前当期純利益307億73百万円、減価償却費230億54百万円等による資金増加が、売上債権及び契約資産の増加、法人税等の支払等の資金減少を上回ったことにより、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは418億33百万円の資金増加(前連結会計年度は495億6百万円の資金増加)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 合理化・省力化関連の投資を中心に、有形及び無形固定資産の取得に186億83百万円を支出したこと等により、当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは155億17百万円の資金減少(前連結会計年度は171億5百万円の資金減少)となりました。

 

 以上により、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは、263億16百万円の資金増加(前連結会計年度は324億0百万円の資金増加)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 短期借入金の返済により23億69百万円を支出したこと及び株主の皆様への利益還元といたしまして配当に116億2百万円を支出したこと等により、当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは178億50百万円の資金減少(前連結会計年度は312億64百万円の資金減少)となりました。

 

 以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は687億28百万円となりました。

 

② 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当連結会計年度末の有利子負債(リース債務含む)残高は813億円でありますが、営業活動によるキャッシュ・フローや現金及び現金同等物の残高を考慮すると、当社グループの資金は、当面充分な流動性を確保しております。

 当社グループは、持続的成長に向けて、設備投資、M&A、人材育成、技術開発等の戦略投資を今後さらに積極的に加速させると同時に、株主還元につきましては、「当社創業以来の価値観」を共有して下さる株主の皆様に長期的スタンスで安定的に利益還元を行ってまいります。具体的には、連結ベースでの配当性向の基準を40%以上とし、自己株式取得等はキャッシュ・フローや戦略的な投資資金需要を勘案した上で機動的に行ってまいりたいと考えております。なお、今後の重要な設備投資の計画につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設等」に記載のとおりであります。

 そのための資金は、資本効率の向上と財務の安定性のバランスを取りながら、内部及び外部の両財源より調達してまいります。内部からの資金捻出は、既に導入しておりますキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を利用した国内連結子会社の資金の一元管理、及び政策保有株式の縮減を含めた資産の圧縮に引き続き取り組むことにより、外部からは当社グループの健全な財務体質を背景に有利子負債等により、調達してまいります。

 

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

a  生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

増減率(%)

金額(百万円)

金額(百万円)

製粉

274,459

303,040

10.4

食品

111,746

107,855

△3.5

中食・惣菜

133,118

130,603

△1.9

その他

19,407

14,222

△26.7

合計

538,732

555,720

3.2

 (注)1 金額は、期間中の平均販売価格等により算出しており、セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

b  受注実績

 重要な受注生産を行っておりませんので、記載を省略しております。

 

c  販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

増減率(%)

金額(百万円)

金額(百万円)

製粉

285,798

313,519

9.7

食品

214,710

182,968

△14.8

中食・惣菜

142,747

138,384

△3.1

その他

36,240

44,864

23.8

合計

679,495

679,736

0.0

 (注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱ファミリーマート

102,941

15.1

98,473

14.5

 

 主要な原材料価格及び販売価格の変動については「(2) 財政状態及び経営成績の状況及び経営者の視点による認識及び分析・検討内容」に記載のとおりであります。

4【経営上の重要な契約等】

(1)会社分割による中間持株会社設立について

 当社は、2022年4月26日開催の取締役会において、会社分割により中間持株会社を設立し、当社が保有する、当社グループの中食・惣菜事業を担うトオカツフーズ株式会社、株式会社ジョイアス・フーズ及びイニシオフーズ株式会社の株式を中間持株会社に承継させることを決議いたしました。

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象) (会社分割)」に記載のとおりであります。

 

(2)熊本製粉株式会社の株式取得について

 当社の連結子会社である日清製粉株式会社は、2022年6月23日開催の取締役会において、熊本製粉株式会社の発行済株式の85%を株式会社永坂産業より、関係当局の承認が得られることを条件として取得する旨を決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象) (取得による企業結合)」に記載のとおりであります。

5【研究開発活動】

 当社グループ(当社及び連結子会社)では、当社の組織として主に基盤技術を研究開発する基礎研究所、及び主に各事業に導入する生産技術の開発とナノテクノロジー技術の開発を担う生産技術研究所を設置するほか、連結子会社である日清製粉㈱、Allied Pinnacle Pty Ltd.(以上製粉事業)、㈱日清製粉ウェルナ、オリエンタル酵母工業㈱、日清ファルマ㈱(以上食品事業)、日清エンジニアリング㈱、㈱NBCメッシュテック(以上その他事業)にそれぞれ研究開発組織を配置し、各事業領域に特化した研究開発を行っております。

 これらの研究開発組織においては、新製品候補素材の探索や新技術の確立を目的とした基礎研究を行う一方、マーケットのニーズ・ウォンツに適合した新製品や調理加工技術の開発、既存製品の改良、生産システムの自動化、粉粒体関連技術の開発・応用など、幅広い研究開発活動を行っております。いずれも研究領域における専門性を高め最新技術を導入するため内外の研究機関などと積極的に連携を深め、研究開発の効率化と成果の事業化を強力に推進しております。

 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、7,018百万円であります。

 なお、研究開発費には、特定のセグメントに関連付けられない研究費用995百万円が含まれております。

 

 当連結会計年度の研究開発の概要と主な成果は次のとおりであります。

 

(1) 製粉事業

 日清製粉㈱技術開発本部、つくば穀物科学研究所が中心となり、当社の基礎研究所、生産技術研究所と連携して、新しい小麦粉加工技術及び小麦・小麦粉を中心とした穀物科学と穀粉加工技術の研究開発などを行っております。主な成果としては、食物繊維の一種である小麦由来アラビノキシランの含有量を規格化した「SFブラン」や、北海道産小麦を使用し、スポンジケーキの口どけ感を特長とした菓子用粉「スノーフレーク」を開発しました。また、Allied Pinnacle Pty Ltd.では、小麦粉、プレミックス、ベーカリー関連原材料の開発活動を行っております。

 製粉事業に係る研究開発費は1,134百万円であります。

 

(2) 食品事業

 ㈱日清製粉ウェルナのプロダクトマネジメント統括部が中心となり、当社の基礎研究所、生産技術研究所と連携して、各種プレミックス・乾麺・パスタ・レトルト食品・冷凍食品等の全温度帯商品群の研究開発を行っております。主な成果としては、「食後の血糖値の上昇をゆるやかにする」「腸内環境を改善する」という健康機能性を有する小麦由来アラビノキシランを含有する日清製粉「SFブラン」を使用した機能性表示食品“カラダに、おいしいこと。”シリーズ4品(日清ナチュブラン、ホットケーキミックス、冷凍パスタ2品)を発売しました。オリエンタル酵母工業㈱の食品部門では、食品研究所と4つの食品開発センターでイーストや製パン用をはじめとした食品素材及び日持・品質向上剤等の研究開発を行い、バイオ部門では長浜生物科学研究所と長浜工場CS開発部において再生医療関連製品等の研究開発を行っております。日清ファルマ㈱健康科学研究所では各種健康食品の開発と産官学で連携して機能性素材の研究開発を行っております。主な成果としては、製剤技術を活用し栄養成分(ビタミン、ミネラル)量を維持しながら粒数の削減を実現して飲みやすさを向上させた「パワーサプライ」シリーズ4品をリニューアル発売しました。

 食品事業に係る研究開発費は3,730百万円であります。

 

(3) 中食・惣菜事業

 中食・惣菜に関する研究開発は、当社の基礎研究所において品質・日持向上を目的として調理加工技術及び微生物制御技術の研究開発を、生産技術研究所において省人化を目的として自動化技術及びロボット技術の研究開発を行っております。これらの研究開発は早期の実用化を目指し、トオカツフーズ㈱、イニシオフーズ㈱、㈱ジョイアス・フーズと連携して取り組んでおります。

 中食・惣菜事業に係る研究開発費は460百万円であります。

 

(4) その他事業

 日清エンジニアリング㈱では、粉体事業部が各種粉体の粉砕、分級などの機器、及び熱プラズマ法によるナノ粒子製造技術を当社の生産技術研究所と連携して研究開発しております。また㈱NBCメッシュテックでは、スクリーン印刷用・産業用資材、化成品の各分野において新製品及び新素材の研究開発を行っております。

 その他事業に係る研究開発費は697百万円であります。