文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」ことをグループ経営理念とし、1936年の設立以来、小麦、大豆、菜種、トウモロコシなどの穀物を、小麦粉、プレミックス、植物油、糖化製品、配合飼料などに加工し、「食」を通じた社会への貢献を志してまいりました。一層の発展のため、創立90周年にあたる2025年度のありたい姿(長期ビジョン)「SHOWA Next Stage for 2025」を策定し、その実現に向けて3年間の中期経営計画を三次にわたり展開しております。
1st Stageである「中期経営計画17-19」では「ありたい姿の実現に向けた足場固め」を基本方針として、収益基盤の強化に取り組んでまいりました。2nd Stageとなる「中期経営計画20-22」は「確立」のステージとして位置付け、当社グループならではの新しい価値をステークホルダーの皆様にお届けすべく、基本コンセプト「SHOWA New Value Creation」を掲げ、基盤事業の盤石化と成長事業の育成に取り組むと共に、事業活動を通してESG経営を推進するCSV戦略を展開してまいりました。
2023年4月よりスタートした3rd Stage「中期経営計画23-25」は、継続が見込まれる厳しい事業環境やニューノーマルへの変化に適切に対応し、引き続き安全・安心な「食」を安定的に供給するという社会的使命をしっかりと果たしながら、当社グループの「ありたい姿」の実現に向けて成長し続けるため、1st Stage及び2nd Stageの成果を「収穫」すると共に各施策を着実に遂行し、創立100周年を見据えた持続的成長のための基盤作りに取り組んでおります。

長期ビジョン「SHOWA Next Stage for 2025」の最終ステージである「中期経営計画23-25」は、創立90周年を迎える2025年度に当社グループのありたい姿を実現すべく、基本コンセプト「SHOWAの“SHIN-KA”宣言~90年、そしてその先へ~」を掲げ、穀物のプロ集団として穀物ソリューションを「進化」させ、素材の「真価」を追求することで人々の健康に貢献し、環境負荷の低減に向けた取り組みなどを通じてサステナビリティ経営の「深化」に取り組んでおります。
〔5つの基本戦略〕
〔財務目標〕
(※1):2022年度は、ショーサン上尾ビルの売却により約52億円の固定資産売却益(特別利益)が発生
(※2):ROICの定義
ROIC=税引後営業利益÷投下資本(有利子負債(Net)+自己資本)
税引後営業利益は、法人税等を営業利益の30%として計算
(※3):キャッシュ・コンバージョン・サイクル
〔非財務目標〕
(※1)対象:当社及び連結子会社
(※2)対象:当社及び食品ロス発生量が100t/年以上のグループ会社
(※3)対象:当社及び子会社9社(水質汚濁防止法、下水道法による特定施設を有する事業者)
(※4)化石燃料由来容器包装材に使用するワンウェイプラスチック
当社グループを取り巻く環境は、雇用・所得環境の改善を背景とした日本国内経済の緩やかな回復が見られる一方で、物価上昇による消費者の節約志向の高まり、金融市場の変動リスク、長期化する不安定な国際情勢などもあり、依然として先行き不透明な状況が続いております。
今後も、国内人口の減少に伴う労働人口の減少、地球温暖化に伴う異常気象、地政学リスクの顕在化、物流コストの上昇などから、原料穀物価格の変動やコストの上昇が見込まれております。
このような状況の中、当社グループも環境変化に対応した商品の開発や、事業領域の拡大に努め、環境変化に左右されにくい収益構造への変革に取り組むため、新たに「中期経営計画23-25」を策定し、5つの基本戦略に沿って「ありたい姿」の実現に向けて取り組んでおります。

〔基本戦略① 基盤事業の強化〕
・社会課題である食品ロスの削減、物流業務の効率化や負担軽減のため、業務用・家庭用食用油ハンディボトル製品の賞味期限の延長を実施いたしました。このような取り組みを今後も推進することにより、食品サプライチェーン全体での環境負荷低減、労働負荷軽減、物流効率の向上などを通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
・糖質カテゴリのグループ3社(昭和産業株式会社/敷島スターチ株式会社/サンエイ糖化株式会社)が一体となり、生産拠点の最適化や、商品カテゴリの選択と集中を含む事業構造改革を継続して推進することにより収益力の強化を図りました。今後もグループシナジーの発揮に向けた取り組みを継続してまいります。
〔基本戦略② 事業領域の拡大〕
・輸出事業の基盤強化や、グループ会社との連携による販路拡大により輸出事業の拡大に取り組んでおります。海外での日本食人気の高まりを背景に、今後も販売国並びに販売数量の拡大を推進してまいります。
・ASEAN向けのプレミックスの製造拠点として、ベトナムにShowa Sangyo International Vietnam Co., Ltd.を設立いたしました。工場稼働開始に向け取り組んでおります。
・植物油の製造過程で発生する副産物を活用したアップサイクルの研究・開発を強化し、オレオケミカル・ファインケミカル事業領域における取り組みを拡大するため、東北大学発のスタートアップ企業ファイトケミカルプロダクツ株式会社との間で資本業務提携を実施いたしました。2026年3月期中のファイトケミカルプロダクツ株式会社の量産化に向けた新プラント建設・稼働による取り組みの強化を進めてまいります。
・植物性食材の新ブランドとして、「SOIA SOIYA」を発表し、大豆たん白新商品の販売を開始いたしました。当社の独自技術により、大豆たん白を帯状のシートに成型することで、大豆本来の美味しさを損なうことなく様々な調理に対応できる大豆たん白商品を開発いたしました。今後は国内のヴィーガンや健康志向需要のみならず、インバウンド需要や海外需要を捕捉し植物性食材の展開を図ってまいります。
〔基本戦略③ 環境負荷の低減〕
・従来は産業廃棄物として廃棄されていた、社内外の食品工場で発生する食品残渣などを飼料原料として活用することや、当社グループの工場廃棄物を堆肥発酵補助剤として活用することにより経済的利益の確保と循環型社会への寄与に取り組んでおります。この取り組みを継続して発展させていくことによりCSVの実現を目指してまいります。
〔基本戦略④ プラットフォームの再構築〕
・事業環境の劇的な変化に対し機動的に対応するため、2025年4月1日付で組織改編を実施いたしました。拠点機能を見直し、本社への機能集約を行い各部門の組織機能を最適化することで、外部環境に適した事業推進体制の強化を図ります。
〔基本戦略⑤ ステークホルダーエンゲージメントの強化〕
・2024年3月期の業績、財務状況及び事業環境を総合的に勘案し、機動的な株主還元と資本効率の向上を図るため990千株の自己株式の取得(取得価格の総額は、3,400百万円)を行うとともに自己株式の消却を実施いたしました。
・当社コーポレートサイトのリニューアルを行い、デザインを刷新し操作性の向上と内容の拡充を図りました。ステークホルダーの皆様に向け、より充実した情報発信をしてまいります。
■ 2024年12月に公表の通り、当社元従業員による虚偽の発注・着服等の不正行為が判明し、損害賠償を求める民事訴訟を東京地方裁判所へ提起いたしました。
当社グループでは本不正行為の発生を厳粛に受け止め、社外取締役を委員長とし、外部の弁護士を起用した社内調査委員会を設置して、事実の解明、原因の分析および再発防止策の策定に取り組むとともに、同委員会の提言を受け、代表取締役社長執行役員を委員長とするコンプライアンス向上プロジェクトを設置いたしました。
同プロジェクトでは、不正を行わせないための仕組み整備等、各種施策を検討・実施し、改めて「あらゆる不正行為を生まない、不正を絶対に許さない」企業グループを目指して、当社グループ一丸となって再発防止に取り組んでまいりました。
2024年11月には当社グループの全従業員を対象にEラーニングでコンプライアンス教育を行い、2025年2月には当社の全ての部署において従業員参加型の「コンプライアンス・ワークショップ」を開催し、コンプライアンス遵守について一人ひとりが考える機会づくりを行いました。また、業務プロセスの見直しや規程の制定等、不正を行わせないための仕組み整備も並行して進めてまいりました。
同プロジェクトは上記のとおり一定の役割を果たしたことから2025年3月末に解散し、同年4月より法務・コンプライアンス部にて、引き続きコンプライアンス推進に係る施策の検討・実施、モニタリングを進めております。
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日(2025年6月20日)現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。
◆サステナビリティ基本方針
昭和産業グループは、グループ経営理念「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」を実現するために、多種多量の穀物を扱う「穀物ソリューション・カンパニー」として、食の源である穀物を生み出す大地とその環境を守り、穀物を余すことなく最大限に有効活用していくことが社会的使命であり、責任であると考えています。
社会の公器としてこの責任を果たしていくために、サステナブルな社会の実現と当社グループの持続的な企業価値成長の両立を目指し、ESG経営を推進してまいります。
当社グループは、こうしたサステナビリティの取り組みとともに、すべてのステークホルダーの皆様とのエンゲージメント深化を通して社会との共生を目指していきます。
サステナビリティ重点課題
① 穀物を生み出す大地とその環境の維持
1) 脱炭素社会の実現
2) 水資源の有効活用
3) 食品ロスの削減
② 食を通じた社会的課題解決への貢献
健康・時短・簡便・おいしさなどの多様なニーズに対応する製品開発
③ ステークホルダーとのエンゲージメント推進
企業の根幹をなす従業員の活躍に向けたダイバーシティと健康経営の推進
<サステナビリティ推進体制>
代表取締役社長執行役員を委員長とし、各部門統轄全員が副委員長となっている「サステナビリティ委員会」を設置しています。サステナビリティ委員会の傘下に、当社グループが重要と考える6つの社会的課題(①安全・安心で高品質な製品の提供、②公正な企業活動、③人権尊重、④環境への配慮、⑤社会への貢献、⑥ステークホルダーとの対話・情報開示)に加えて、注力している⑦リスクマネジメントに関わる委員会または部署を設置しております。なお、⑦リスクマネジメント委員会には専門部会としての災害対策委員会と情報セキュリティ委員会を置き、頻発する自然災害への対策や増加するサイバー攻撃への対応を進めております。
また、サステナビリティ委員会での決議事項は、経営会議、取締役会へ報告され、取締役会の監督を受けております。

気候変動及び人的資本に関する当社グループの「戦略」につきましては、後述の(気候変動への対応・TCFD提言への取り組み)及び(人的資本経営)をご参照ください。
気候変動及び人的資本に関する当社グループの「指標及び目標」につきましては、後述の(気候変動への対応・TCFD提言への取り組み)及び(人的資本経営)をご参照ください。
(気候変動への対応・TCFD提言への取り組み)
昨今、気候変動が社会、企業活動に与える影響は非常に大きくなっております。当社グループは「穀物ソリューション・カンパニー」として、大地の恵みである穀物を多種多量に取り扱っており、気候変動は社会が直面し、対応が急務である最も重要な課題の一つと認識しております。
当社グループは「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」を経営理念とし、1936年の創業以来「安全・安心な食品を安定的に供給する」という社会的使命のもと、企業の社会的責任を果たす経営に取り組んできております。ステークホルダーの皆様からの期待や社会からの要請に適宜適切に応えるべく、2023年度より新たに設定した「中期経営計画23-25」の5つの基本戦略の③「環境負荷の低減」においても、「環境目標達成に向けた継続的取り組み」「カーボンニュートラル実現に向けたロードマップの検討」を経営のマテリアリティ(重要課題)として設定し、取り組んでおります。
2021年12月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、合わせて同提言に賛同する国内企業等により構成される「TCFDコンソーシアム」にも参画しております。気候変動による事業への影響の低減とともに、気候変動に伴う社会的課題の解決に向けた活動を推進してきており、TCFD提言に則った「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標及び目標」の4項目の情報開示を積極的に進め、ステークホルダーの皆様との対話を進めてまいります。
重要な気候関連のリスク及び機会を特定し、適切にマネジメントするために、代表取締役社長執行役員が委員長を務め全役員が委員またはオブザーバー、全部署長が委員となっているサステナビリティ委員会傘下の環境管理委員会に、専門委員会としてTCFD委員会を設置しております。TCFD委員会は、TCFD提言に基づくシナリオ分析を実施するとともに、関連する委員会やグループ会社各社と緊密に連携し、毎期それらの対応に関する計画を策定し、遂行状況については環境管理委員会に報告し承認を得ております。環境管理委員会はTCFD委員会の活動状況のモニタリングとともにグループ環境目標の進捗管理を実施しており、その結果はサステナビリティ委員会及び経営会議の承認を経て、取締役会に年1回以上報告しています。取締役会は当社グループの環境課題への対応及び実行した施策についての監督を行っております。

当社グループはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)で示されている気候変動のシナリオを参照し、その中から3つのシナリオ(1.5℃、2℃、4℃)について財務的影響及び事業戦略への影響を評価するとともに、気候関連リスク及び機会に対する当社グループの戦略のレジリエンスの確認と追加施策の必要性の検討を目的として、シナリオ分析を実施しております。
2022年3月期はTCFDが提言する気候変動の「リスク」と「機会」の選定、財務インパクトの定性・定量評価、「リスク」と「機会」に対する当社グループの取り組み方針を策定するとともに、当社グループにおいて環境負荷が最も大きい「糖質カテゴリ(※1)」を対象として分析・評価を行いました。
2023年3月期は2022年3月期に続き「糖質カテゴリ」の分析・評価を継続するとともに、次に環境負荷が大きい「製油カテゴリ(※2)」についての分析・評価を行いました。
2024年3月期は「製油カテゴリ」「糖質カテゴリ」の分析・評価を継続するとともに、「製粉カテゴリ(※3)」の分析・評価を行い、グループ全体での気候変動に対する対応力向上を図りました。
これにより、当該3カテゴリで当社グループ全体のCO2排出量(Scope1・2)、水使用量ともに95%以上(2019年度にて算出)についての分析・評価を行ったこととなります。
2025年3月期は当該3カテゴリの分析・評価により抽出された情報の整理を目的とし、リスクと機会の再検討や重要なリスクに対するサプライチェーン毎の対応策の検討等を行いました。
※1 当社グループの報告セグメントである「食品事業」のうち、糖化製品、コーンスターチ、乳酸菌等の製品・サービスを取り扱う事業範囲を指し、前年度の(気候変動への対応・TCFD提言への取り組み)における「糖質事業」と同一の事業範囲となります。
※2 当社グループの報告セグメントである「食品事業」のうち、業務用及び家庭用の食用油、大豆たん白、脱脂大豆、菜種粕、脱脂米ぬか等の製品・サービスを取り扱う事業範囲を指し、前年度の(気候変動への対応・TCFD提言への取り組み)における「製油事業」と同一の事業範囲となります。
※3 当社グループの報告セグメントである「食品事業」のうち、業務用及び家庭用の小麦粉、プレミックス、パスタ、ベーカリー類、ふすま等の製品・サービスを取り扱う事業範囲を指し、前年度の(気候変動への対応・TCFD提言への取り組み)における「製粉事業」と同一の事業範囲となります。
当社のシナリオ分析にあたっては、TCFD委員会と各カテゴリに関わる各部門やグループ会社が一体となり議論を行いました。(管理体制の詳細は「c.リスク管理」を参照)
前年度までに実施した3カテゴリの分析・評価で培った手順や手法を、グループ会社間で情報を共有することで、本取り組みを当社グループのレジリエンスの強化にも繋げております。
◆当社のシナリオ分析の前提
≪評価・分析に使用した3つの気候変動シナリオ≫
・1.5℃シナリオ(IPCC第6次評価報告書における SSP1-1.9シナリオ)
脱炭素社会の実現に向けた気候変動政策の導入等により、2100年までの世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べ1.5℃以下に抑えるシナリオ
・2℃シナリオ(IPCC第6次評価報告書における SSP1-2.6シナリオ)
脱炭素社会の実現に向けた気候変動政策の導入等により、2100年までの世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃未満に抑えるシナリオ
・4℃シナリオ(IPCC第6次評価報告書における SSP5-8.5シナリオ)
世界的に気候変動対策が充分に進展せず、2100年までの世界の平均気温が産業革命以前に比べ4℃上昇するシナリオ
≪対象事業≫
・当社グループの「食品事業」の内、「製粉カテゴリ」「製油カテゴリ」「糖質カテゴリ」
≪影響度評価の手法≫
・想定されるリスク及び機会について、事象が発生した際の財務的影響の大きさからその影響度を評価
≪対象年≫
・2025年(短期)、2030年(中期)及び2050年(長期)までの期間
当社グループのシナリオ分析に基づく、当社グループが想定する2050年の世界観
前述の手続きによるシナリオ分析の結果を受けて、下記のとおり各事業における重要なリスクと機会の抽出、財務的評価を行いました。
※ 2025年3月期に財務的影響算出の前提及び方法の一部を見直したため、財務的影響評価を変更しております。
財務的影響評価
A:財務的影響が20億円以上と想定されるもの
B:財務的影響が10億円以上20億円未満と想定されるもの
C:財務的影響が10億円未満と想定されるもの
重要なリスクに対する対応策に関連しませんが、「中期経営計画23-25」の5つの基本戦略の③「環境負荷の低減」を目的として2025年3月までに実施した主な取り組みは下記のとおりであります。
財務的影響評価
A:財務的影響が20億円以上と想定されるもの
B:財務的影響が10億円以上20億円未満と想定されるもの
C:財務的影響が10億円未満と想定されるもの
◆「財務影響箇所」記載の損益計算書イメージ
TCFD委員会が特定した気候変動に関連する当社グループ全体の重要なリスクの評価及び対応計画については、「a.ガバナンス」に記載のとおり、取締役会に報告され監督を受けております。「a.ガバナンス」で記載した体制に加え、TCFD委員会は環境管理委員会内の環境4部会及び事業系戦略推進委員会と連携し、重要なリスク及び機会の特定を行います。また、サステナビリティ委員会傘下のリスクマネジメント委員会は全社のリスク管理を行う委員会であり、TCFD委員会で特定されたリスクの影響額と発生頻度の2軸からリスクをモニタリングし、リスク低減のためのPDCAサイクルと当社グループ全体の目標進捗を確認しております。

・「サステナビリティ委員会」(1年に1回以上/2024年度1回開催)
サステナブルな社会の実現と当社グループの持続的な企業価値向上の両立を目指し、「安全・安心で高品質な製品の提供」「公正な企業活動」「人権尊重」「環境への配慮」「社会への貢献」「ステークホルダーとの対話・情報開示」「リスクマネジメント」等の課題への対応を包括的に推進する委員会。委員長は代表取締役社長執行役員。
・「環境管理委員会」(1年に1回以上/2024年度1回開催)
サステナビリティ委員会傘下の委員会で、主に環境に関する経営課題に取り組む。当社グループの環境基本方針に基づき毎年の環境目標、中長期目標、施策等の決定、進捗管理とともに環境関連データの管理を行う。委員長はコーポレート部門統轄の取締役常務執行役員。
・「リスクマネジメント委員会」(1年に1回以上/2024年度1回開催)
サステナビリティ委員会傘下の委員会で、主に長期ビジョン達成を阻害する全社リスクについてモニタリングを行う。企業活動のあらゆる場面におけるリスクを継続的に分析し、企業経営及び社会、環境等に対して影響額・発生頻度の観点からグループ全体に大きな影響をおよぼすリスクを適切かつ迅速に評価・対応することで、社会から信頼の得られる企業グループとして、持続的に発展していくことを目指す。委員長はコーポレート部門統轄の取締役常務執行役員。
・「TCFD委員会」(随時開催/2024年度4回開催)
気候変動のリスクと機会をTCFD提言に基づいて整理し、“経営戦略”及び“リスク管理”に適切に反映させる。その上で、この対応状況をステークホルダーに発信し、当社グループが、企業として持続的に成長可能なことを示す。委員長はコーポレート部門統轄の取締役常務執行役員で、副委員長は事業・営業部門の執行役員。
・「環境4部会」
(CO2排出量削減部会:2024年度2回開催、食品ロス削減部会:2024年度2回開催、
水使用量削減部会:2024年度2回開催、プラスチック使用量削減部会:2024年度3回開催)
環境管理委員会内に当社グループのサステナビリティ推進の観点から設置した「CO2排出量削減部会」「食品ロス削減部会」「水使用量削減部会」「プラスチック使用量削減部会」の4つの部会。当社及びグループ会社の実務担当レベルのメンバーで構成され、グループ環境目標達成の取り組みを行う。
・「事業系戦略推進委員会」(2024年度下部組織の7部会で合計45回開催)
中期経営計画推進にあたり、中長期的な事業毎の課題に対して組織的に対応し、PDCAマネジメントサイクルを確実に回していくことを目的とする。下部組織として7つの部会を設置。委員長は事業・営業部門統轄の専務執行役員。
当社グループは、CO2排出量削減については2021年10月22日に我が国の温室効果ガス削減目標が46%削減(地球温暖化対策推進本部)に合わせて、当社グループのCO2排出量削減目標を2030年度に2013年比46%削減に設定しております。
また、食品メーカーである当社グループとしましては、環境目標としてCO2排出量削減だけでなく、独自に「食品ロス発生量削減」「水使用量削減(原単位)」「容器包装材プラスチック使用量削減(原単位)」を目標設定しております。環境目標達成のためのさらなる施策の検討と取り組みを引き続き進めてまいります。
◆CO2削減目標進捗状況(製粉カテゴリ及び製油カテゴリ並びに糖質カテゴリ)
◆CO2削減目標進捗状況(上記の事業も含む「当社及び子会社」)
◆食品ロス削減目標進捗状況
◆水使用量削減(原単位)目標進捗状況
◆容器包装材プラスチック使用量削減(原単位)目標進捗状況
※1 Scope3については、引き続き集計・目標設定に取り組んでまいります。
Scope1:事業者自らの温室効果ガスの直接排出
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
※2 実績値集計における電気事業者からの購入電力の排出係数については、毎年直近の調整後排出係数を使用しております。また、併せてデータ集計対象範囲も毎年度見直しておりますので、数値がこれ以前に公表したものと異なる場合があります。
※3 食品ロス発生量が100t/年以上のグループ会社
※4 水質汚濁防止法、下水道法による特定施設を有するグループ会社
※5 プラスチック資源循環促進法による多量排出事業者であるグループ会社
(人的資本経営)
当社グループでは、2025年度のありたい姿(長期ビジョン)「SHOWA Next Stage for 2025」を実現するため、「中期経営計画23-25」の5つの基本戦略のうちの1つである「基本戦略④:プラットフォームの再構築」の一環として、人的資本経営の推進に取り組んでおります。当社グループでは、“人財”は企業の持続的成長を支える最も重要な経営資本と位置付けており、“人財”への戦略的な投資を積極的かつ継続的に行うことで、「企業の持続的成長」と「従業員のウェルビーイング向上」を実現します。
「人財育成方針」
・基本方針
事業環境の急激な変化に対応し、当社グループの強みで競争を勝ち抜くためには、穀物ソリューション・カンパニーとして「顧客の課題の真因を捉えその解決に最適なソリューションを提供する力」と「不確実な未来と向き合い未来志向で新たな価値を創造する力」が必要不可欠であります。この二つの力を更に高めていくため、「課題解決力の深化」と「イノベーションの促進」を当社の人財育成におけるコンセプトとして設定し、事業の担い手となる次世代リーダーを計画的に育成していきます。
・具体的な取り組み
当社の人事制度は、①当社グループの強みである「課題解決力の深化」と、②未来志向で新たな価値を創造する「イノベーションの促進」の2つのコンセプトを軸として、等級・評価・報酬の各制度や教育・研修プログラムを通じ、効果的な人財育成と経営目標達成に向けた行動の促進を図っております。
「イノベーションの促進」では、当社グループの事業領域を広げる活動や企業価値の源泉を開拓する活動など、「中長期視点の課題設定と新たな強みの創出」を牽引する人財の輩出と活躍を後押しするための職位「P等級(Planning、Pioneer)」を設けております。P等級はイノベーションを起こしたいという意欲のある従業員が選出される職位で、2024年度には1名を新たに選任し、2025年3月末時点で4名がP等級に選出されております。各P等級は「中期経営計画23-25」の「基本戦略②:事業領域の拡大」や「基本戦略④:プラットフォームの再構築」を目指した新しい試みに挑戦しております。
② 上司・部下間の対話を重視した人財開発
当社では、評価制度を部下の能力開発のためのマネジメントツールと位置づけております。期首に経営戦略や部門目標に沿った個人目標を設定し、四半期ごとに実施する上司との評価面談を通じて、従業員一人ひとりの目標達成に向けた行動を促進し、成長を支援します。また、自身のキャリア(ありたい姿、やりたい仕事)を考える機会として、「わたしのキャリア」(経験してきた仕事と自身の強み・弱みを棚卸しするキャリアシート)の作成と上司との「キャリアデザイン面談」を実施しております。
③ 研修制度により人財の成長をサポート
当社の研修制度の中心は階層別研修で、「自律型人財の成長をサポートし、次世代リーダーを育成すること」を目的に行っております。各研修は、人事制度や他のキャリア開発諸施策と相互に連動しており、自身及び部下のキャリア開発を行う上での道標の役割を果たしております。また、階層別研修とは別に、経営方針の理解や当社グループの従業員として必要な知識の習得を目的に、グループ会社を含めた全従業員教育として「昭和塾」を毎年開催しております。
年代別研修では、自身のキャリアを考え持続的に活躍できる状態を目指し、40歳及び50歳代社員を対象としたキャリア研修を実施しております。研修後にはキャリアコンサルタントとのキャリアコンサルティングを希望者に実施するとともに、通信教育等による自主的な学習を促し、従業員へのリスキル投資を強化しております。
また、「DXを活用した新たな価値の創出」を実現するため、DXを推進する人財の育成も推進しており、当社従業員向けデジタルリテラシー教育や選抜メンバーへのデジタルスキル教育を実施しております。
④ 通信教育の充実
当社ではキャリア開発支援の一環として通信教育制度を運営しております。会社が設定した200の多様なコースから従業員が年2回、自主的に選定して申し込み、設定した条件を満たした場合に受講料を全額補助しております。2025年度からは新たに幅広い分野の学習が可能なeラーニングコンテンツを導入しました。いつでも、自由に、自らのキャリアや業務に必要な知識を学べる環境を整えることで、自律的な成長と組織全体のスキル底上げを図ります。
「指標と目標」に定めるリスキル投資額は2023年度では1.4倍(2021年度比)、2024年度では2.0倍(2021年度比)と推移しております。
※ 2025年度教育体系図

「社内環境整備方針」
・基本方針
「中期経営計画23-25」の「基本戦略⑤:ステークホルダーエンゲージメントの強化」の重点項目として、「D&Iのドラスティックな推進」を位置づけ、ダイバーシティ経営推進の専担組織である「D&I推進室」を人財戦略部内に設置しております。多様な人財が安心して働き、互いに影響し合うことで、個々の能力を発揮しやすい環境を提供し、従業員のウェルビーイング向上と個人・チームとして高い成果を追求できる組織風土を醸成します。
・具体的な取り組み
① INCポリシーの制定
当社グループでは、従業員一人ひとりが健康で生き生きと働けるよう、「昭和産業グループダイバーシティ経営宣言」を策定し、様々な取り組みを行っております。「昭和産業グループダイバーシティ経営宣言」では3つの基本的な考え方である「INCポリシー」を掲げ、従業員一人ひとりの行動基準としております。
② 女性活躍の推進
当社では、女性活躍推進を経営の重要課題の一つと位置付け、「一人ひとりが能力を最大限発揮し、貢献することのできる職場環境の構築」と「女性従業員の経営参画の多様化実現」を目標に、施策の検討やイベントの実施など、様々な取り組みを行っております。
2024年度は、2023年度から継続して会社が指名した女性管理職及び管理職候補者を、実務から離れて視野を広げる機会として女性従業員向け講座に派遣しました。また、全女性マネージャーへのヒアリングを人財戦略部が実施し、キャリアに関する意見交換を行いました。
「指標と目標」に定める女性管理職比率は2022年3月末7.2%、2023年3月末7.9%、2024年3月末9.2%。2025年3月末9.8%と推移しております。
③ 障がい者雇用の推進
当社では、障がい者雇用の推進組織としてD&I推進室内にINC推進チームを設置し、障がいのある従業員が働きがいを持って、日々そして末永く当社グループで活躍できるよう、一人ひとりに適した職場への配属や職域開発を行っております。
2024年度は、各部署から切り出した業務を新規で18件、年間580時間分受託しました。また、昨年度に続き、創立記念日に合わせて社内従業員向けに当社グループの冷凍生地を使用したパンを焼成販売しました。INC推進チームメンバーでのメニュー考案、試作を重ねた焼き立てパンは従業員に大変好評でした。
2025年3月末の障がい者雇用率は2.6%と昨年度に引き続き法定雇用率の達成を実現しました。
④ 多様な従業員が働きやすい環境のために
「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」に基づき、就業規則等各種規程において多様な性的指向や性自認を持ち得る従業員へ配慮した改定を行っております。
2024年度は、外部有識者を交えたLGBTQ理解促進の勉強会「にじいろセミナー」をオンラインで実施し、相談窓口担当者が心構えを学びました。また、勉強会の内容は当社グループ内に動画配信し、広く周知をしました。
⑤ 健康経営の推進
「従業員の健康は会社の礎である。」という思いのもと、当社では2017年に「昭和産業健康宣言」を発表し、「従業員の健康ファーストの企業風土醸成(セルフケアの促進)」と「働き方改革の推進(職場環境の改善)」に取り組んでおります。
2024年度は、生活習慣改善対策として「運動」・「睡眠」・「食」・「飲酒」・「喫煙」の5つについて従業員へアプローチしております。
上記の取り組みが評価され4年連続で健康経営優良法人に認定されました。
⑥ 働き方改革の推進
多様な働き方を提供し、働く意欲と能力を引き出せるように、従来の在宅勤務規程を見直し、「SHOWAテレワーク制度」を制定しております。生産性の向上とともに、仕事と育児・介護の両立を支援する制度としております。
⑦ 従業員エンゲージメントの向上
当社では、毎年のエンゲージメントサーベイの結果を基に、各職場にて改善活動に取り組んでおります。心理的安全性の高い職場づくり、それらを促すマネジメント層のマネジメントスキルの習得を通じ、従業員一人ひとりのウェルビーイングを高め、会社に対する貢献意欲の向上を図ります。
改善活動の一例として、当社鹿島工場では従業員同士がお互いに感謝を伝え合う「サンクスギフト」の導入や、人財戦略部と協同で管理職同士のグループワークや職場を訪問し合うことで改善事例の共有を行うなど、エンゲージメント向上に向けた取り組みを行っております。
現在、各職場の集団分析結果について解析を行い、部門ごとにエンゲージメントスコアに影響を与える指標の抽出を行っております。今後、次期中期経営計画の発表に合わせてエンゲージメントスコアの目標値を公表いたします。
当社は、「中期経営計画23-25」の「基本戦略④:プラットフォームの再構築」及び「基本戦略⑤:ステークホルダーエンゲージメントの強化」において、以下のKPIを設定しております。目標達成のため、更なる施策の検討と取り組みを引き続き進めてまいります。
なお、各指標の進捗状況はa.戦略の「人財育成方針」及び「社内環境整備方針」の「具体的な取り組み」に記載しております。

(注) 指標と目標及び進捗状況は、昭和産業㈱を対象としております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が経営成績等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。
当社グループでは、「リスクマネジメント基本方針」に基づきリスクマネジメント委員会を設置し、企業経営に対する重大なリスクへの適切かつ迅速な対応の強化に取り組んでおります。年1回、経営目標の達成を阻害する可能性のあるリスクを洗い出し、「経営への影響度」と「発生可能性」の両面で評価を行いリスクの重要度を決定します。重要度の高いリスクについては、部門統轄役員の管理の下で主管部署が対策を講じることによりリスクの最小化に取り組んでおります。こうした取り組みは、リスクマネジメント委員会での審議を経て、経営会議及び取締役会に報告され、経営層からの継続的な監督を受けております。また万が一、危機が発生した場合は、対策本部を設置し、迅速かつ的確に対応することで、影響の極小化に努めてまいります。
認識しているリスクのうち、当社グループの経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性が特に高いと判断しているリスクには以下のようなものがあります。
各リスク項目は、リスクが顕在化した際の影響度/前期からの変更(継続か新規か)/当社グループが掲げております長期ビジョンの基本戦略※のうち、主に影響を受ける戦略がどの基本戦略であるか、を示した上で、内容の詳細を記載しております。
※基本戦略については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営戦略(長期ビジョン・中期経営計画) 「中期経営計画23-25」について 〔5つの基本戦略〕」をご参照下さい。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月20日)現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調で推移しました。しかしながら、物価上昇による消費者の節約志向の高まり、金融市場の変動リスク、長期化する不安定な国際情勢などもあり、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような状況の中、当社は創立90周年を迎える2025年度のありたい姿(長期ビジョン)「SHOWA Next Stage for 2025」の実現に向け、3rd Stage「中期経営計画23-25」を2023年4月にスタートし、基本コンセプト『SHOWAの“SHIN-KA”宣言~90年、そしてその先へ~』を掲げ、5つの基本戦略「①基盤事業の強化」「②事業領域の拡大」「③環境負荷の低減」「④プラットフォームの再構築」「⑤ステークホルダーエンゲージメントの強化」の各施策を推進しております。
当連結会計年度の経営成績は、連結売上高が334,425百万円と前年同期に比べ11,933百万円(3.4%)の減収となりました。営業利益は11,126百万円と前年同期に比べ2,020百万円(15.4%)の減益、経常利益は13,591百万円と前年同期に比べ2,967百万円(17.9%)の減益、親会社株主に帰属する当期純利益は11,599百万円と前年同期に比べ758百万円(6.1%)の減益となりました。
(単位:百万円)
セグメントの経営成績を示すと、次のとおりであります。
<食品事業>
食品事業は、インバウンド需要の増加等により外食等の需要が回復しましたが、一方でコストアップ要因となる物流コストや資材価格等の上昇基調が続きました。このような市場環境の中、当社の強みであるマーケット分析力を生かし、2023年4月より導入した顧客別営業組織によるターゲット業態ごとのワンストップ型提案営業の強化、適正価格での販売に取り組んでまいりました。
製粉カテゴリは、輸入小麦の政府売渡価格が昨年4月に平均0.6%(税込価格)、10月に平均1.8%(税込価格)引き下げられたことを受け、小麦粉製品の価格改定を実施しました。一方で、当社連結子会社を含めた生産拠点の一体運用を図ることで、物流コスト低減や生産効率化を推進しております。小麦粉の販売数量は海外向けが伸長し前年同期を上回りましたが、プレミックスの販売数量は前年同期を下回りました。パスタの販売数量は外食市場中心に好調であったため、前年同期を上回りました。ふすまの販売数量については、前年同期を下回りました。なお、家庭用の小麦粉およびプレミックスの販売数量は前年同期を下回りましたが、パスタの販売数量は米の代替需要も寄与し前年同期を上回りました。これらにより製粉カテゴリの売上高は、前年同期を下回りました。
製油カテゴリは、コストを踏まえた適正価格での販売活動と、長寿命オイルや油染みの少ないベーカリー用オイルなど機能的に価値のある商品提案や課題解決型営業に取り組んでまいりました。またコスト抑制と安定供給を目的に、当社連結子会社であるボーソー油脂株式会社、持分法適用関連会社である辻製油株式会社と連携して、生産拠点の効率的運用、原材料調達の効率化に取り組みました。業務用油脂については、需要の回復とその好機を捉えた販売施策の実行により、販売数量は前年同期を上回りました。家庭用油脂についても、汎用油・こめ油の販売が伸長したため、販売数量は前年同期を上回りました。これらにより製油カテゴリの売上高は、適正価格での販売に努めましたが前年同期を下回りました。
糖質カテゴリは、当社連結子会社である敷島スターチ株式会社やサンエイ糖化株式会社との連携を図り、グループ一体となった課題解決や生産効率化などを進めております。糖化品の販売数量については、低分解水あめ、粉あめなど独自性のある商品群の拡販、医薬用など幅広く取り扱うぶどう糖商品群の強みに加え、飲料用途等の需要増加などにより前年同期を上回りました。コーンスターチの販売数量については、ビール用途等の需要が増加し、前年同期を上回りました。加工でん粉の販売数量については、前年同期を下回りました。副製品については、販売数量は前年同期を上回りましたが、販売価格は前年同期を下回りました。これらにより糖質カテゴリの売上高は、前年同期を下回りました。
これらの結果、食品事業の売上高は273,533百万円と前年同期に比べ8,795百万円(3.1%)の減収、営業利益は10,975百万円と前年同期に比べ1,874百万円(14.6%)の減益となりました。
<飼料事業>
飼料事業は、顧客ニーズに対する提案型営業、畜産物の販売支援や付加価値向上へのサポート等の生産者との取り組み強化、高付加価値商材の拡販に努めてまいりました。配合飼料および鶏卵の販売数量は、昨年10月からの鳥インフルエンザ感染拡大による影響はありましたが、前年同期を上回りました。一方で原料価格下落により配合飼料の平均販売価格が前年を下回ったこと、また、特に昨秋までの鶏卵相場が軟調に推移したことにより、売上高は前年同期を下回りました。
これらの結果、飼料事業の売上高は56,162百万円と前年同期に比べ3,299百万円(5.5%)の減収、営業利益は485百万円と前年同期に比べ228百万円(32.0%)の減益となりました。
<その他>
倉庫業につきましては、貨物獲得競争が激化する中、商社や主要顧客との取り組みを強化し荷役量の増加に努めたことにより、貨物取扱量は前年同期を上回りました。
これらの結果、不動産業、保険代理業、自動車等リース業、運輸業、植物工場等をあわせたその他の売上高は4,729百万円と前年同期に比べ161百万円(3.5%)の増収、営業利益は1,428百万円と前年同期に比べ107百万円(8.1%)の増益となりました。
総資産は、255,504百万円と前連結会計年度に比べ6,734百万円減少しております。主な減少要因は、売上債権が8,736百万円減少したこと、棚卸資産が1,952百万円減少したことであります。一方、主な増加要因は、投資有価証券が3,179百万円増加したことであります。
負債は、116,884百万円と前連結会計年度に比べ12,101百万円減少しております。主な減少要因は、仕入債務が4,153百万円減少したこと、有利子負債(リース債務含む)が3,412百万円減少したこと、流動負債のその他に含まれる未払消費税等が1,502百万円減少したことであります。
純資産は、138,619百万円と前連結会計年度に比べ5,366百万円増加しております。主な増加要因は、親会社株主に帰属する当期純利益11,599百万円の計上により増加したことであります。一方、主な減少要因は、配当金の支払により2,973百万円減少したこと、自己株式を取得後、消却を行ったこと等により資本剰余金が2,619百万円減少したことであります。
これらの結果、自己資本比率は49.4%から52.8%となりました。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益16,464百万円、減価償却費10,417百万円、売上債権の減少及び棚卸資産の減少等による資金の増加がありましたが、法人税等の支払5,226百万円、仕入債務の減少及び未払消費税の減少等があった結果、合計では20,274百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ3,477百万円(14.6%)収入が減少しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得11,528百万円及び関係会社株式の取得1,345百万円等に資金を使用した一方、有形固定資産の売却3,466百万円の収入等があった結果、合計では11,385百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ1,015百万円(8.2%)支出が減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、これらで得たフリー・キャッシュ・フロー8,888百万円を原資として、コマーシャル・ペーパーの返済3,500百万円、自己株式の取得3,406百万円及び配当金2,973百万円の支払等を行った結果、10,057百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ621百万円(6.6%)支出が増加しました。
以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は6,868百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,268百万円(15.6%)の減少となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりとなります。
(注) 1 金額は製造原価によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。
2 当該内容は、製品ベースの生産実績によっております。
当社グループは、受注生産を行っておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりとなります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 総販売実績に対する主要な取引先の販売実績の割合が10%未満のため、記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表等は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準等に基づき作成されております。この連結財務諸表等の作成にあたっては、期末日における資産及び負債、会計期間における収益及び費用に影響を与えるような仮定や見積りを必要とします。過去の経験及び状況下において妥当と考えられた見積りであっても、仮定あるいは条件の変化等の不確実性により、実際の結果と異なる場合があります。
また、連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
当社グループはこの仮定のもと、会計上の見積り(固定資産の減損、棚卸資産の評価、繰延税金資産の見積り等の検討)を行っておりますが、翌連結会計年度の経営成績及び財政状態に与える影響については、現時点において重要な影響はありません。
「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。
「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。
当社グループは、経済環境や金利動向を考慮しながら、「金利優位性の高い資金を、必要な金額だけ、安定的に調達すること」を基本方針とし、事業運営上必要な資金の確保及び経済環境の急激な変化に耐えうる流動性の維持に努めております。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループ製品製造のための原材料の購入等の製造費並びに販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは人件費及び発送配達費です。
投資資金需要のうち主なものは、製造工場の設備新設、維持、更新等、基盤事業における生産効率向上のための設備投資です。
また、長期ビジョン実現のための資金需要として、将来の企業価値の源泉となる投資については、財務健全性の維持と資本効率性の向上を考慮しながら積極的且つ継続的に実施していく方針です。
当社グループの調達手段として、長期運転資金及び設備投資資金については、原則営業活動により得られたキャッシュ・フロー及び金融機関からの長期借入を基本とし、必要に応じて社債等による資金調達も実施してまいります。短期資金調達については、営業活動により得られたキャッシュ・フロー、コマーシャル・ペーパーの発行及び金融機関からの短期借入を基本としております。
また、当社グループは、当社及び国内連結子会社にキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入し、グループ内資金を一元管理しております。グループ内の余剰資金を集中、配分することで、コスト低減に努めつつ資金の流動性確保、資金効率の向上及び金融負債の極小化を図っております。さらに、緊急時の流動性確保への備えとして、複数年のコミットメントライン契約を締結しております。
(その他の重要な契約)
(注) 1992年4月1日に締結した契約の内容を一部変更し、2021年9月1日に再締結しております。
当社グループの研究開発は、食品の安全・安心の確保のため、食品安全・品質文化の醸成を行い、製品の安全性と品質の継続的向上を図っております。基盤事業の持続的成長に貢献するため、生産技術力向上、持続可能な社会を実現する技術の確立に取り組んでおります。また、事業領域の拡大に貢献するため、新製品開発や新たな分野への挑戦に繋がる創造的な新技術の開発に注力しております。
RD&Eセンターを主な研究開発拠点として、お客様とのコミュニケーションを通じてとらえたニーズや研究開発者が洞察する潜在ニーズを起点とした「マーケットイン」と、当社グループの技術力や開発力を起点とした「プロダクトアウト」の融合により、当社グループだからこそできる高付加価値な商品とサービスの提供に努めております。さらに、研究開発力、事業化推進力などの強化を図るため、大学や公的研究機関との連携のほか、他業種との交流を行っております。
セグメントごとの研究開発活動は以下のとおりであります。
小麦粉やプレミックス製品、油脂製品、糖質製品への新たな機能の付与や最適な利用方法の研究と提案を行い、当社グループのシナジー効果を生かすことに努めております。
製粉カテゴリについては、製造技術の向上に関する研究のほか、パン・菓子用や麺類用の小麦粉、パン・菓子、揚げ物などのプレミックス、パスタ、冷凍パン生地などの各種製品開発を行っております。それら業務用製品は、各顧客のニーズに応じた改良を行い、食品加工メーカーや外食チェーン、コンビニエンスストアなどに供給しております。また、家庭用として、2024年9月に簡単で時間をかけず、たのしく食育ができる『トースターで簡単ふんわりパンミックス』を商品化し、2024年11月に『国産麦 強力小麦粉』を機能性表示食品として商品化をいたしました。2025年3月には、片付けが簡単な『もう揚げない!!焼き天ぷらの素』のリニューアルと同時に、『もう揚げない!!焼きからあげの素』を開発し、商品化いたしました。
製油カテゴリについては油脂や大豆たん白製品の製造技術の向上に関する研究や、様々な用途に合わせた機能で差別化した油脂製品や、顧客ニーズに応じた大豆たん白製品の開発、改良を行っております。それら業務用製品は、食品加工メーカーや外食チェーン、スーパーのバックヤードなどに供給しております。ボーソー油脂㈱及び辻製油㈱との連携強化によるこめ油とコーン油の知見を生かし、こめ油を主体とした炊飯油『こめコート』や、コーン油を活用した油汚れがしにくい『フライオイルCK-UP』を商品化いたしました。また、2024年8月に植物性食材の新ブランドとして『SOIA SOIYA(ソイア ソイヤ)』を立ち上げて『HMSP:High Moisture Solution Protein』を商品化し、2025年2月に『HMSPチャーシュー風 醤油味』を商品化するなど、加工商品のラインナップを増やしております。家庭用として、2024年11月に手軽にイソフラボンを摂取できる『大豆胚芽』と大豆ミートである『まめたん』を機能性表示食品として商品化いたしました。さらに、資源循環型社会を目指す東北大学発のスタートアップ企業であるファイトケミカルプロダクツ株式会社と資本業務提携を行い、オープンイノベーションによる新規事業領域の研究・開発を強化いたします。
糖質カテゴリについてはトウモロコシからコーンスターチ・糖化製品を製造する工程の最適化研究や、加工でん粉、オリゴ糖など食品加工特性に特徴がある糖質の研究開発を行っております。食品分野以外での利用に対する研究開発も行っております。また、グループ会社のサンエイ糖化㈱との連携強化により、2024年9月にマルトビオン酸カルシウムを使った家庭用商品『骨ケアドリンク ヨーグルト風味』を機能性表示食品として商品化いたしました。
なお、食品事業に係る研究開発費の金額は
鶏用、豚用、牛用飼料における機能素材の給与効果や、加工特性や風味に優れた水畜産物に関する研究開発、加工卵の製造方法に関する検討を行っております。また、当社グループの製造副産物及びユーザーの食品廃棄物などを、肥飼料分野で活用する、食品事業と飼料事業を融合させる研究を進めております。一例として糖質工場で発生する廃珪藻土を有効活用する研究を行い、土壌還元剤や、堆肥発酵助剤として商品化を行いました。
なお、飼料事業に係る研究開発費の金額は各セグメントに含まれない基礎的研究開発費の金額に含まれております。
(注) 基礎的研究開発費の金額