第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営戦略(長期ビジョン・中期経営計画)

当社グループは「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」ことをグループ経営理念とし、1936年の設立以来、小麦、大豆、菜種、トウモロコシなどの穀物を、小麦粉、プレミックス、植物油、糖化製品、配合飼料などに加工し、「食」を通じた社会への貢献を志してまいりました。一層の発展のため、創立90周年にあたる2025年度のありたい姿(長期ビジョン)「SHOWA Next Stage for 2025」を策定し、その実現に向けて3年間の中期経営計画を三次にわたり展開しております。

 

1st Stageである「中期経営計画17-19」では「ありたい姿の実現に向けた足場固め」を基本方針として、収益基盤の強化に取り組んでまいりました。2nd Stageとなる「中期経営計画20-22」は「確立」のステージとして位置付け、当社グループならではの新しい価値をステークホルダーの皆様にお届けすべく、基本コンセプト「SHOWA New Value Creation」を掲げ、基盤事業の盤石化と成長事業の育成に取り組むと共に、事業活動を通してESG経営を推進するCSV戦略を展開してまいりました。

 

2023年4月よりスタートした3rd Stage「中期経営計画23-25」は、継続が見込まれる厳しい事業環境やニューノーマルへの変化に適切に対応し、引き続き安全・安心な「食」を安定的に供給するという社会的使命をしっかりと果たしながら、当社グループの「ありたい姿」の実現に向けて成長し続けるため、1st Stage及び2nd Stageの成果を「収穫」すると共に各施策を着実に遂行し、創立100周年を見据えた持続的成長のための基盤作りに取り組んでおります。

 

■「SHOWA Next Stage for 2025」の内容

ありたい姿

全てのステークホルダーに満足を提供する

“穀物ソリューション・カンパニー Next Stage”

~幹を太くし、枝葉を広げ、世の中のためになる果実を育てる~

方針

昭和産業グループならではの複合系シナジーソリューションを進化させると共に、ESG視点での取り組みも強化し、企業価値の向上に努めてまいります。

 

 


 

■「中期経営計画23-25」について

長期ビジョン「SHOWA Next Stage for 2025」の最終ステージである「中期経営計画23-25」は、創立90周年を迎える2025年度に当社グループのありたい姿を実現すべく、基本コンセプト「SHOWAの“SHIN-KA”宣言~90年、そしてその先へ~」を掲げ、穀物のプロ集団として穀物ソリューションを「進化」させ、素材の「真価」を追求することで人々の健康に貢献し、環境負荷の低減に向けた取り組みなどを通じてサステナビリティ経営の「深化」に取り組んでおります。

 

〔5つの基本戦略〕

基本戦略

主な取り組み

① 基盤事業の強化

・ワンストップ型営業組織への変革による販売力強化

・グループ連携による事業拡大と収益力強化

・商品構成の最適化や差別化戦略による収益力強化

・原料、資材の安定調達の強化

② 事業領域の拡大

・海外事業、冷凍食品事業の拡大

・新規事業への挑戦

③ 環境負荷の低減

・グループ環境目標達成に向けた継続的取り組み

・容器包装プラスチックの削減

・カーボンニュートラル実現に向けたロードマップの検討

④ プラットフォームの

再構築

・ROIC導入による事業ポートフォリオマネジメントの高度化

・人的資本経営の推進

・デジタル戦略の推進

・RD&E戦略の推進

⑤ ステークホルダー

エンゲージメントの強化

・従業員エンゲージメントの向上

・株主戦略に基づくIRの推進

・SNS活用による発信力強化と企業認知度の向上

 

 

〔財務目標〕

 

2022年度

実績

(2nd Stage)

2025年度

計画

(3rd Stage)

2022年度実績に対する

2025年度計画の差異

連結経常利益(億円)

65

130

200%

ROE(%)(※1)

7.1

7.0以上

ROIC(%)(※2)

1.8

4.0以上

2.2ポイント増加

CCC(日)(※3)

91

75

16日短縮

NET D/Eレシオ

0.5

0.6以下

 

(※1):2022年度は、ショーサン上尾ビルの売却により約52億円の固定資産売却益(特別利益)が発生

(※2):ROICの定義

ROIC=税引後営業利益÷投下資本(有利子負債(Net)+自己資本)

税引後営業利益は、法人税等を営業利益の30%として計算

(※3):キャッシュ・コンバージョン・サイクル

 

〔非財務目標〕

 

項目

2025年度目標

グループ環境目標

CO2排出量の削減(※1)

30%以上削減 (2013年度比)

食品ロスの削減(※2)

30%以上削減 (2018年度比)

水使用量の削減 (原単位)(※3)

9%以上削減 (2019年度比)

プラスチック使用量の削減 (原単位)(※4)

7%以上削減 (2013年度比)

人的資本経営

女性管理職比率

10%以上

リスキル投資額

2倍以上 (2021年度比)

 

(※1)対象:当社及び連結子会社

(※2)対象:当社及び食品ロス発生量が100t/年以上のグループ会社

(※3)対象:当社及び子会社9社(水質汚濁防止法、下水道法による特定施設を有する事業者)

(※4)化石燃料由来容器包装材に使用するワンウェイプラスチック

 

 

(2) 対処すべき課題

当社グループを取り巻く環境は、雇用・所得環境の改善を背景とした日本国内経済の緩やかな回復が見られる一方で、物価上昇による消費者の節約志向の高まり、金融市場の変動リスク、長期化する不安定な国際情勢などもあり、依然として先行き不透明な状況が続いております。

今後も、国内人口の減少に伴う労働人口の減少、地球温暖化に伴う異常気象、地政学リスクの顕在化、物流コストの上昇などから、原料穀物価格の変動やコストの上昇が見込まれております。

このような状況の中、当社グループも環境変化に対応した商品の開発や、事業領域の拡大に努め、環境変化に左右されにくい収益構造への変革に取り組むため、新たに「中期経営計画23-25」を策定し、5つの基本戦略に沿って「ありたい姿」の実現に向けて取り組んでおります。

 


 

■「中期経営計画23-25」の進捗状況

〔基本戦略① 基盤事業の強化〕

・社会課題である食品ロスの削減、物流業務の効率化や負担軽減のため、業務用・家庭用食用油ハンディボトル製品の賞味期限の延長を実施いたしました。このような取り組みを今後も推進することにより、食品サプライチェーン全体での環境負荷低減、労働負荷軽減、物流効率の向上などを通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

・糖質カテゴリのグループ3社(昭和産業株式会社/敷島スターチ株式会社/サンエイ糖化株式会社)が一体となり、生産拠点の最適化や、商品カテゴリの選択と集中を含む事業構造改革を継続して推進することにより収益力の強化を図りました。今後もグループシナジーの発揮に向けた取り組みを継続してまいります。

 

〔基本戦略② 事業領域の拡大〕

・輸出事業の基盤強化や、グループ会社との連携による販路拡大により輸出事業の拡大に取り組んでおります。海外での日本食人気の高まりを背景に、今後も販売国並びに販売数量の拡大を推進してまいります。

・ASEAN向けのプレミックスの製造拠点として、ベトナムにShowa Sangyo International Vietnam Co., Ltd.を設立いたしました。工場稼働開始に向け取り組んでおります。

・植物油の製造過程で発生する副産物を活用したアップサイクルの研究・開発を強化し、オレオケミカル・ファインケミカル事業領域における取り組みを拡大するため、東北大学発のスタートアップ企業ファイトケミカルプロダクツ株式会社との間で資本業務提携を実施いたしました。2026年3月期中のファイトケミカルプロダクツ株式会社の量産化に向けた新プラント建設・稼働による取り組みの強化を進めてまいります。

・植物性食材の新ブランドとして、「SOIA SOIYA」を発表し、大豆たん白新商品の販売を開始いたしました。当社の独自技術により、大豆たん白を帯状のシートに成型することで、大豆本来の美味しさを損なうことなく様々な調理に対応できる大豆たん白商品を開発いたしました。今後は国内のヴィーガンや健康志向需要のみならず、インバウンド需要や海外需要を捕捉し植物性食材の展開を図ってまいります。

 

〔基本戦略③ 環境負荷の低減〕

・従来は産業廃棄物として廃棄されていた、社内外の食品工場で発生する食品残渣などを飼料原料として活用することや、当社グループの工場廃棄物を堆肥発酵補助剤として活用することにより経済的利益の確保と循環型社会への寄与に取り組んでおります。この取り組みを継続して発展させていくことによりCSVの実現を目指してまいります。

 

〔基本戦略④ プラットフォームの再構築〕

・事業環境の劇的な変化に対し機動的に対応するため、2025年4月1日付で組織改編を実施いたしました。拠点機能を見直し、本社への機能集約を行い各部門の組織機能を最適化することで、外部環境に適した事業推進体制の強化を図ります。

 

〔基本戦略⑤ ステークホルダーエンゲージメントの強化〕

・2024年3月期の業績、財務状況及び事業環境を総合的に勘案し、機動的な株主還元と資本効率の向上を図るため990千株の自己株式の取得(取得価格の総額は、3,400百万円)を行うとともに自己株式の消却を実施いたしました。

・当社コーポレートサイトのリニューアルを行い、デザインを刷新し操作性の向上と内容の拡充を図りました。ステークホルダーの皆様に向け、より充実した情報発信をしてまいります。

 

■ 2024年12月に公表の通り、当社元従業員による虚偽の発注・着服等の不正行為が判明し、損害賠償を求める民事訴訟を東京地方裁判所へ提起いたしました。

 当社グループでは本不正行為の発生を厳粛に受け止め、社外取締役を委員長とし、外部の弁護士を起用した社内調査委員会を設置して、事実の解明、原因の分析および再発防止策の策定に取り組むとともに、同委員会の提言を受け、代表取締役社長執行役員を委員長とするコンプライアンス向上プロジェクトを設置いたしました。

 同プロジェクトでは、不正を行わせないための仕組み整備等、各種施策を検討・実施し、改めて「あらゆる不正行為を生まない、不正を絶対に許さない」企業グループを目指して、当社グループ一丸となって再発防止に取り組んでまいりました。

 2024年11月には当社グループの全従業員を対象にEラーニングでコンプライアンス教育を行い、2025年2月には当社の全ての部署において従業員参加型の「コンプライアンス・ワークショップ」を開催し、コンプライアンス遵守について一人ひとりが考える機会づくりを行いました。また、業務プロセスの見直しや規程の制定等、不正を行わせないための仕組み整備も並行して進めてまいりました。

 同プロジェクトは上記のとおり一定の役割を果たしたことから2025年3月末に解散し、同年4月より法務・コンプライアンス部にて、引き続きコンプライアンス推進に係る施策の検討・実施、モニタリングを進めております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日(2025年6月20日)現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により異なる可能性があります。

 

◆サステナビリティ基本方針

昭和産業グループは、グループ経営理念「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」を実現するために、多種多量の穀物を扱う「穀物ソリューション・カンパニー」として、食の源である穀物を生み出す大地とその環境を守り、穀物を余すことなく最大限に有効活用していくことが社会的使命であり、責任であると考えています。

社会の公器としてこの責任を果たしていくために、サステナブルな社会の実現と当社グループの持続的な企業価値成長の両立を目指し、ESG経営を推進してまいります。

当社グループは、こうしたサステナビリティの取り組みとともに、すべてのステークホルダーの皆様とのエンゲージメント深化を通して社会との共生を目指していきます。

 

サステナビリティ重点課題

① 穀物を生み出す大地とその環境の維持

1) 脱炭素社会の実現

2) 水資源の有効活用

3) 食品ロスの削減

② 食を通じた社会的課題解決への貢献

健康・時短・簡便・おいしさなどの多様なニーズに対応する製品開発

③ ステークホルダーとのエンゲージメント推進

企業の根幹をなす従業員の活躍に向けたダイバーシティと健康経営の推進

 

(1) ガバナンス及びリスク管理

<サステナビリティ推進体制>

代表取締役社長執行役員を委員長とし、各部門統轄全員が副委員長となっている「サステナビリティ委員会」を設置しています。サステナビリティ委員会の傘下に、当社グループが重要と考える6つの社会的課題(①安全・安心で高品質な製品の提供、②公正な企業活動、③人権尊重、④環境への配慮、⑤社会への貢献、⑥ステークホルダーとの対話・情報開示)に加えて、注力している⑦リスクマネジメントに関わる委員会または部署を設置しております。なお、⑦リスクマネジメント委員会には専門部会としての災害対策委員会と情報セキュリティ委員会を置き、頻発する自然災害への対策や増加するサイバー攻撃への対応を進めております。

 また、サステナビリティ委員会での決議事項は、経営会議、取締役会へ報告され、取締役会の監督を受けております。

 


 

(2) 戦略

気候変動及び人的資本に関する当社グループの「戦略」につきましては、後述の(気候変動への対応・TCFD提言への取り組み)及び(人的資本経営)をご参照ください。

 

(3) 指標及び目標

気候変動及び人的資本に関する当社グループの「指標及び目標」につきましては、後述の(気候変動への対応・TCFD提言への取り組み)及び(人的資本経営)をご参照ください。

 

 

(気候変動への対応・TCFD提言への取り組み)

昨今、気候変動が社会、企業活動に与える影響は非常に大きくなっております。当社グループは「穀物ソリューション・カンパニー」として、大地の恵みである穀物を多種多量に取り扱っており、気候変動は社会が直面し、対応が急務である最も重要な課題の一つと認識しております。

当社グループは「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」を経営理念とし、1936年の創業以来「安全・安心な食品を安定的に供給する」という社会的使命のもと、企業の社会的責任を果たす経営に取り組んできております。ステークホルダーの皆様からの期待や社会からの要請に適宜適切に応えるべく、2023年度より新たに設定した「中期経営計画23-25」の5つの基本戦略の③「環境負荷の低減」においても、「環境目標達成に向けた継続的取り組み」「カーボンニュートラル実現に向けたロードマップの検討」を経営のマテリアリティ(重要課題)として設定し、取り組んでおります。

2021年12月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明し、合わせて同提言に賛同する国内企業等により構成される「TCFDコンソーシアム」にも参画しております。気候変動による事業への影響の低減とともに、気候変動に伴う社会的課題の解決に向けた活動を推進してきており、TCFD提言に則った「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標及び目標」の4項目の情報開示を積極的に進め、ステークホルダーの皆様との対話を進めてまいります。

 

a.ガバナンス

重要な気候関連のリスク及び機会を特定し、適切にマネジメントするために、代表取締役社長執行役員が委員長を務め全役員が委員またはオブザーバー、全部署長が委員となっているサステナビリティ委員会傘下の環境管理委員会に、専門委員会としてTCFD委員会を設置しております。TCFD委員会は、TCFD提言に基づくシナリオ分析を実施するとともに、関連する委員会やグループ会社各社と緊密に連携し、毎期それらの対応に関する計画を策定し、遂行状況については環境管理委員会に報告し承認を得ております。環境管理委員会はTCFD委員会の活動状況のモニタリングとともにグループ環境目標の進捗管理を実施しており、その結果はサステナビリティ委員会及び経営会議の承認を経て、取締役会に年1回以上報告しています。取締役会は当社グループの環境課題への対応及び実行した施策についての監督を行っております。

 


 

b.戦略

当社グループはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)で示されている気候変動のシナリオを参照し、その中から3つのシナリオ(1.5℃、2℃、4℃)について財務的影響及び事業戦略への影響を評価するとともに、気候関連リスク及び機会に対する当社グループの戦略のレジリエンスの確認と追加施策の必要性の検討を目的として、シナリオ分析を実施しております。

2022年3月期はTCFDが提言する気候変動の「リスク」と「機会」の選定、財務インパクトの定性・定量評価、「リスク」と「機会」に対する当社グループの取り組み方針を策定するとともに、当社グループにおいて環境負荷が最も大きい「糖質カテゴリ(※1)」を対象として分析・評価を行いました。

2023年3月期は2022年3月期に続き「糖質カテゴリ」の分析・評価を継続するとともに、次に環境負荷が大きい「製油カテゴリ(※2)」についての分析・評価を行いました。

2024年3月期は「製油カテゴリ」「糖質カテゴリ」の分析・評価を継続するとともに、「製粉カテゴリ(※3)」の分析・評価を行い、グループ全体での気候変動に対する対応力向上を図りました。

これにより、当該3カテゴリで当社グループ全体のCO2排出量(Scope1・2)、水使用量ともに95%以上(2019年度にて算出)についての分析・評価を行ったこととなります。

2025年3月期は当該3カテゴリの分析・評価により抽出された情報の整理を目的とし、リスクと機会の再検討や重要なリスクに対するサプライチェーン毎の対応策の検討等を行いました。

 

※1 当社グループの報告セグメントである「食品事業」のうち、糖化製品、コーンスターチ、乳酸菌等の製品・サービスを取り扱う事業範囲を指し、前年度の(気候変動への対応・TCFD提言への取り組み)における「糖質事業」と同一の事業範囲となります。

※2 当社グループの報告セグメントである「食品事業」のうち、業務用及び家庭用の食用油、大豆たん白、脱脂大豆、菜種粕、脱脂米ぬか等の製品・サービスを取り扱う事業範囲を指し、前年度の(気候変動への対応・TCFD提言への取り組み)における「製油事業」と同一の事業範囲となります。

※3 当社グループの報告セグメントである「食品事業」のうち、業務用及び家庭用の小麦粉、プレミックス、パスタ、ベーカリー類、ふすま等の製品・サービスを取り扱う事業範囲を指し、前年度の(気候変動への対応・TCFD提言への取り組み)における「製粉事業」と同一の事業範囲となります。

 

当社のシナリオ分析にあたっては、TCFD委員会と各カテゴリに関わる各部門やグループ会社が一体となり議論を行いました。(管理体制の詳細は「c.リスク管理」を参照)

前年度までに実施した3カテゴリの分析・評価で培った手順や手法を、グループ会社間で情報を共有することで、本取り組みを当社グループのレジリエンスの強化にも繋げております。

 

当社が実施するシナリオ分析のステップ

① 気候変動が当社グループにもたらす「リスク」と「機会」を特定し、事業に与えるインパクト(事業インパクト)をナラティブに表現。

② 事業インパクトの大きさを軸に、「研究開発」「原料調達」「輸送・保管」「製造」「販売・マーケティング」「配送」のサプライチェーンの6項目それぞれに「リスク」と「機会」の重要度を優先順位付け。

③ シナリオを定義し、ステップ②で抽出した重要度の高い「リスク」と「機会」を踏まえ、PEST分析や5forces分析等によりシナリオごとの当社グループの世界観を整理。

④ 社内外のデータを活用し、ステップ③の世界観も踏まえつつ事業インパクトを定量化し、気候変動が及ぼす影響を可視化。

⑤ 当社グループの「リスク」と「機会」に関する対応状況を整理し、中期経営計画等の事業戦略に反映すべく検討を継続中。

 

 

 

◆当社のシナリオ分析の前提

≪評価・分析に使用した3つの気候変動シナリオ≫

・1.5℃シナリオ(IPCC第6次評価報告書における SSP1-1.9シナリオ)

脱炭素社会の実現に向けた気候変動政策の導入等により、2100年までの世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べ1.5℃以下に抑えるシナリオ

・2℃シナリオ(IPCC第6次評価報告書における SSP1-2.6シナリオ)

脱炭素社会の実現に向けた気候変動政策の導入等により、2100年までの世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べ2℃未満に抑えるシナリオ

・4℃シナリオ(IPCC第6次評価報告書における SSP5-8.5シナリオ)

世界的に気候変動対策が充分に進展せず、2100年までの世界の平均気温が産業革命以前に比べ4℃上昇するシナリオ

≪対象事業≫

・当社グループの「食品事業」の内、「製粉カテゴリ」「製油カテゴリ」「糖質カテゴリ」

≪影響度評価の手法≫

・想定されるリスク及び機会について、事象が発生した際の財務的影響の大きさからその影響度を評価

≪対象年≫

・2025年(短期)、2030年(中期)及び2050年(長期)までの期間

 

当社グループのシナリオ分析に基づく、当社グループが想定する2050年の世界観

 

 

1.5℃シナリオ

2℃シナリオ

4℃シナリオ

 

 

世界規模でのカーボンニュートラルの達成に向けて低炭素化が2℃シナリオよりも強く推進された結果、2100年までの世界の平均気温が1.5℃程度の上昇に抑えられる将来予測。

世界規模でのカーボンニュートラルの達成に向けて低炭素化が強く推進された結果、2100年までの世界の平均気温が2℃程度の上昇に抑えられる将来予測。

気候変動対策への取り組みは現行の政策や規制以上の進展がなく、温室効果ガス排出量が増大し、2100年までの世界の平均気温が4℃以上上昇する将来予測。

各シナリオの主な
移行リスクの影響

・炭素税の導入

〇(すべての企業)

〇(大半の企業)

・低炭素製造設備の導入

〇(すべての企業)

〇(大半の企業)

・穀物のバイオ燃料需要の増加による価格上昇

各シナリオの主な物理的リスクの影響

・平均気温上昇による穀物収量減少

 

 

 

前述の手続きによるシナリオ分析の結果を受けて、下記のとおり各事業における重要なリスクと機会の抽出、財務的評価を行いました。

 

リスク

食品事業

社会の変化と当社グループが認識する重要なリスク

分類1

分類2

項目

製粉

カテ

ゴリ

製油

カテ

ゴリ

糖質

カテ

ゴリ

 

重要なリスクのうち、特に影響が大きいリスクの内容

移行
リスク

政策

及び

法規制

炭素税・炭素価格

・規制強化により、当社グループの製造工程やサプライチェーン全体のCO2排出に対し炭素税が課され、コストが増加する。

 

・製造工程に対して炭素税が課される

・製造工程において、再生可能エネルギーへの転換やCO2削減が求められ、追加の設備投資によりコストが増加する。

・低炭素製造を実現するための設備投資額の増加

脱炭素を促進する新規制

・石油由来プラスチックへの規制強化により、代替品への移行が発生しコストが増加する。

・環境負荷の少ない包装材料の切り替えコストの増加

市場

低炭素需要への対応

・環境意識の高まりによる顧客行動の変化。

・サステナブルな商品の市場シェア増加による当社製品のシェア低下

 

・環境意識の高まりにより小麦、大豆・菜種、トウモロコシ由来のバイオ燃料需要が増加し、原料調達コストが増加する。

・バイオ燃料需要の増加による原料調達コストの増加

評判

投資家からの評価

・気候変動への対応や情報開示の遅れにより、企業価値が低下し、資金調達コストが増加する。

・信用格付悪化に伴う資金調達コストの増加

物理的リスク

急性的

異常気象の激甚化

・風水害の頻発により穀物生産地や工場操業、サプライチェーンに悪影響を与え、操業の停止や穀物生産地への悪影響により収量が減少、品質悪化し、製造・調達コストが増加する。

・風水害の頻発による工場操業の困難化

・穀物生産地への悪影響(品質悪化)による生産効率の低下

慢性的

平均気温上昇

・世界的な気候変動により小麦、大豆・菜種、トウモロコシの収量減少や品質の悪化で製造・調達コストが増加する可能性がある。

・穀物生産地への悪影響による原料調達コストの増加

・海上での暴風雨の発生頻度が増加することにより、穀物輸入ルートの変更を余儀なくされ調達コストが増加する。

水不足

・慢性的な水不足により穀物生産地が悪影響を受けた結果、原料調達コストの増加により収益が低下する。

・穀物生産地への悪影響による原料調達コストの増加

 

 

 

リスク

社会の変化と

当社グループが

認識する

重要なリスク

財務影響箇所

財務的影響

分類1

分類2

項目

重要なリスクのうち、特に影響が大きいリスクの内容

1.5℃/2℃

4℃

2030年

(中期)

2050年

(長期)

2030年

(中期)

2050年

(長期)

移行

リスク

政策

及び

法規制

炭素税・炭素価格

・製造工程に対して炭素税が課される

売上原価増加

(間接費の増加)

製粉:C

製油:B

糖質:A

製粉:C

製油:B(※)

糖質:A

 

 

・低炭素製造を実現するための設備投資額の増加

設備投資

売上原価増加

(経費の増加)

製粉:C

製油:C

糖質:C

製粉:C

製油:C

糖質:B

 

 

脱炭素を促進する新規制

・環境負荷の少ない包装材料の切り替えコストの増加

売上原価増加

(直接費の増加)

製粉:C

製油:C

糖質:C

製粉:C

製油:C

糖質:C

市場

低炭素需要への対応

・サステナブルな商品の市場シェア増加による当社製品のシェア低下

売上高減少

(販売数量減少)

製粉:A

製油:A(※)

糖質:A(※)

製粉:A

製油:A(※)

糖質:A(※)

製粉:B

製油:B(※)

糖質:B(※)

・バイオ燃料需要の増加による原料調達コストの増加

売上原価増加

(直接費の増加)

製粉:C

製油:A

糖質:A

製粉:C(※)

製油:A

糖質:A

製粉:C

製油:B(※)

糖質:C(※)

製粉:C

製油:A

糖質:B(※)

評判

投資家からの評価

・信用格付悪化に伴う資金調達コストの増加

営業外費用の増加(資金調達コスト増加)

共通:C

共通:C

共通:C

共通:C

物理的リスク

急性的

異常気象の激甚化

・風水害の頻発による工場操業の困難化

売上原価増加

(経費の増加)

共通:C

共通:C

・穀物生産地への悪影響(品質悪化)による製造効率の低下

売上原価増加

(直接費の増加)

製粉:A(※)

製油:-

糖質:C

製粉:A(※)

製油:-

糖質:B(※)

製粉:A(※)

製油:-

糖質:C

製粉:A(※)

製油:-

糖質:A(※)

慢性的

平均気温上昇

・穀物生産地への悪影響による原料調達コストの増加

売上原価増加

(直接費の増加)

製粉:A

製油:A

糖質:A(※)

製粉:A

製油:A

糖質:A(※)

製粉:A

製油:A

糖質:A(※)

製粉:A

製油:A

糖質:A(※)

水不足

・穀物生産地への悪影響による原料調達コストの増加

売上原価増加

(直接費の増加)

製粉:-

製油:-

糖質:C

製粉:-

製油:-

糖質:C

製粉:-

製油:-

糖質:C

製粉:-

製油:-

糖質:C

 

※ 2025年3月期に財務的影響算出の前提及び方法の一部を見直したため、財務的影響評価を変更しております。

財務的影響評価

A:財務的影響が20億円以上と想定されるもの

B:財務的影響が10億円以上20億円未満と想定されるもの

C:財務的影響が10億円未満と想定されるもの

 

リスク

社会の変化と

当社グループが

認識する重要な

リスク

重要なリスクに対する対応策

「」内は2025年3月までに実施した主な取り組み

分類1

分類2

項目

重要なリスクのうち、

特に影響が大きい

リスクの内容

移行

リスク

政策

及び

法規制

炭素税・炭素価格

・製造工程に対して炭素税が課される

・省エネ・再生可能エネルギー購入・燃料転換等によるCO2排出量削減

「2021年鹿島工場コージェネレーション設備の燃料を石炭から都市ガ

スに変更」

「2024年4月に昭和産業㈱でインターナルカーボンプライシング制度の

導入」

「2024年4月から船橋工場、RD&Eセンター、潮来ミックス分工場に

おいて再生可能エネルギー電力を導入」

・低炭素製造を実現するための設備投資額の増加

・自社設備による低炭素エネルギー調達比率の増加

・低コストな低炭素エネルギーの調達

「2009年導入の鹿島工場バイオマスボイラの継続使用」

脱炭素を促進

する新規制

・環境負荷の少ない包装材料の切り替えコストの増加

・代替素材の利用検討

・容器の軽量化

「食用油向けボトル形状変更等」

市場

低炭素需要への対応

・サステナブルな商品の市場シェア増加による当社製品のシェア低下

・サステナブルな商品の開発

「調理工程におけるエネルギー消費の少ない商品の開発」

・バイオ燃料需要の増加による原料調達コストの増加

・先物原料相場のプライシングと為替予約によるヘッジ

評判

投資家からの評価

・信用格付悪化に伴う資金調達コストの増加

・TCFD提言に沿った対応とその情報開示を推進

物理的リスク

急性的

異常気象の激甚化

・風水害の頻発による工場操業の困難化

・風水害発生時に操業の継続を可能にするための設備投資

・穀物生産地への悪影響(品質悪化)による製造効率の低下

・製造効率向上(原料処理・製造時間の短縮)のための製造技術開発及び製造設備導入

「高効率機器等の導入や設備、制御の改善」

慢性的

平均気温上昇

・穀物生産地への悪影響による原料調達コストの増加

・サプライヤーからの穀物生産地情報の入手と一元管理

・原料調達先の分散化の検討

水不足

・穀物生産地への悪影響による原料調達コストの増加

 

 

 重要なリスクに対する対応策に関連しませんが、「中期経営計画23-25」の5つの基本戦略の③「環境負荷の低減」を目的として2025年3月までに実施した主な取り組みは下記のとおりであります。

取り組み

・2023年9月にサステナビリティ・リンク・ファイナンス・フレームワーク策定及びサステ

ナビリティ・リンク・ローンの契約締結

 

 

 

機会

食品事業

社会の変化と当社グループが認識する重要な機会

分類1

分類2

項目

製粉

カテ

ゴリ

製油

カテ

ゴリ

糖質

カテ

ゴリ

 

重要な機会のうち、特に

影響が大きい機会の内容

機会

市場

消費者

嗜好の

変化

・消費者の持続可能性に配慮した購買行動の高まりにより、プラントベースフードの市場が拡大し、植物性たん白等の需要が増加する。

・プラントベースフード市場における植物性たん白等の需要増加

取引先

要望の

変化

・植物油の多目的用途での需要が高まり、環境負荷を抑えて製造した植物油製品への需要が増加する。

・環境負荷を抑えた植物油製品の需要増加

・低炭素エネルギーとしてバイオ燃料素材の需要が増加する。

・バイオ燃料素材の需要増加

 

 

機会

社会の変化と
当社グループが認識する
重要な機会

財務影響

箇所

財務的影響

重要な機会に対する

対応策

分類1

分類2

項目

重要な機会の
うち、特に
影響が大きい
機会の内容

1.5℃/2℃

4℃

2030年

(中期)

2050年

(長期)

2030年

(中期)

2050年

(長期)

機会

市場

消費者嗜好の変化

・プラントベースフード市場における植物性たん白等の需要増加

売上高増加(販売数量増加)

製油:C

製油:C

・プラントベースフード市場への拡販と安定供給

取引先要望の変化

・環境負荷を抑えた植物油製品の需要増加

売上高増加(販売数量増加)

製油:C

製油:C

・製品ライフサイクル全体での環境負荷を抑えて製造した植物油製品の販売

・バイオ燃料素材の需要増加

売上高増加(販売数量増加)

製油:C

製油:C

製油:C

製油:C

・製造工程副産物のバイオ燃料への有効利用の推進及び販売

 

財務的影響評価

A:財務的影響が20億円以上と想定されるもの

B:財務的影響が10億円以上20億円未満と想定されるもの

C:財務的影響が10億円未満と想定されるもの

 

◆「財務影響箇所」記載の損益計算書イメージ

売上高

売上原価(直接費、間接費、経費)

売上総利益

販売費及び一般管理費

営業利益

営業外収益

営業外費用

経常利益

特別利益

特別損失

税引前当期純利益

法人税等

当期純利益

 

 

c.リスク管理

TCFD委員会が特定した気候変動に関連する当社グループ全体の重要なリスクの評価及び対応計画については、「a.ガバナンス」に記載のとおり、取締役会に報告され監督を受けております。「a.ガバナンス」で記載した体制に加え、TCFD委員会は環境管理委員会内の環境4部会及び事業系戦略推進委員会と連携し、重要なリスク及び機会の特定を行います。また、サステナビリティ委員会傘下のリスクマネジメント委員会は全社のリスク管理を行う委員会であり、TCFD委員会で特定されたリスクの影響額と発生頻度の2軸からリスクをモニタリングし、リスク低減のためのPDCAサイクルと当社グループ全体の目標進捗を確認しております。


 

・「サステナビリティ委員会」(1年に1回以上/2024年度1回開催)

サステナブルな社会の実現と当社グループの持続的な企業価値向上の両立を目指し、「安全・安心で高品質な製品の提供」「公正な企業活動」「人権尊重」「環境への配慮」「社会への貢献」「ステークホルダーとの対話・情報開示」「リスクマネジメント」等の課題への対応を包括的に推進する委員会。委員長は代表取締役社長執行役員。

・「環境管理委員会」(1年に1回以上/2024年度1回開催)

サステナビリティ委員会傘下の委員会で、主に環境に関する経営課題に取り組む。当社グループの環境基本方針に基づき毎年の環境目標、中長期目標、施策等の決定、進捗管理とともに環境関連データの管理を行う。委員長はコーポレート部門統轄の取締役常務執行役員。

・「リスクマネジメント委員会」(1年に1回以上/2024年度1回開催)

サステナビリティ委員会傘下の委員会で、主に長期ビジョン達成を阻害する全社リスクについてモニタリングを行う。企業活動のあらゆる場面におけるリスクを継続的に分析し、企業経営及び社会、環境等に対して影響額・発生頻度の観点からグループ全体に大きな影響をおよぼすリスクを適切かつ迅速に評価・対応することで、社会から信頼の得られる企業グループとして、持続的に発展していくことを目指す。委員長はコーポレート部門統轄の取締役常務執行役員。

・「TCFD委員会」(随時開催/2024年度4回開催)

気候変動のリスクと機会をTCFD提言に基づいて整理し、“経営戦略”及び“リスク管理”に適切に反映させる。その上で、この対応状況をステークホルダーに発信し、当社グループが、企業として持続的に成長可能なことを示す。委員長はコーポレート部門統轄の取締役常務執行役員で、副委員長は事業・営業部門の執行役員。

・「環境4部会」

(CO2排出量削減部会:2024年度2回開催、食品ロス削減部会:2024年度2回開催、

水使用量削減部会:2024年度2回開催、プラスチック使用量削減部会:2024年度3回開催)

環境管理委員会内に当社グループのサステナビリティ推進の観点から設置した「CO2排出量削減部会」「食品ロス削減部会」「水使用量削減部会」「プラスチック使用量削減部会」の4つの部会。当社及びグループ会社の実務担当レベルのメンバーで構成され、グループ環境目標達成の取り組みを行う。

・「事業系戦略推進委員会」(2024年度下部組織の7部会で合計45回開催)

中期経営計画推進にあたり、中長期的な事業毎の課題に対して組織的に対応し、PDCAマネジメントサイクルを確実に回していくことを目的とする。下部組織として7つの部会を設置。委員長は事業・営業部門統轄の専務執行役員。

 

d.指標及び目標

当社グループは、CO2排出量削減については2021年10月22日に我が国の温室効果ガス削減目標が46%削減(地球温暖化対策推進本部)に合わせて、当社グループのCO2排出量削減目標を2030年度に2013年比46%削減に設定しております。

また、食品メーカーである当社グループとしましては、環境目標としてCO2排出量削減だけでなく、独自に「食品ロス発生量削減」「水使用量削減(原単位)」「容器包装材プラスチック使用量削減(原単位)」を目標設定しております。環境目標達成のためのさらなる施策の検討と取り組みを引き続き進めてまいります。

 

◆CO2削減目標進捗状況(製粉カテゴリ及び製油カテゴリ並びに糖質カテゴリ)

目標値

項目

基準年の

対象範囲

基準

年度

目標

年度

基準年度

の排出量

2024年度

の排出量

評価

CO2排出量

46%以上削減

Scope1,2

(※1)

<製粉カテゴリ>

当社の製粉工場、ミックス工場、パスタ工場、奥本製粉㈱他7社

(※2)

2013年

2030年

6.7万t

(※2)

4.6万t

(基準年度比30.1%削減)

「b.戦略」に記載のとおりであります。

CO2排出量

46%以上削減

Scope1,2

(※1)

<製油カテゴリ>

当社の製油工場、ボーソー油脂㈱他6社

(※2)

2013年

2030年

10.7万t

(※2)

6.9万t

(基準年度比35.2%削減)

CO2排出量

46%以上削減

Scope1,2

(※1)

<糖質カテゴリ>

当社の糖質工場、敷島スターチ㈱、サンエイ糖化㈱

(※2)

2013年

2030年

26.6万t

(※2)

18.6万t

(基準年度比30.1%削減)

 

 

◆CO2削減目標進捗状況(上記の事業も含む「当社及び子会社」)

目標値

項目

基準年の

対象範囲

基準

年度

目標

年度

基準年度

の排出量

2024年度

の排出量

評価

CO2排出量

46%以上削減

Scope1,2

(※1)

当社及び子会社
(※2)

2013年

2030年

46.1万t

(※2)

31.8万t

(基準年度比31.1%削減)

再生可能エネルギーの導入やICPの活用による省エネ設備への更新などにより、Scope1,2の排出量を削減しております。

 

 

◆食品ロス削減目標進捗状況

目標値

項目

基準年の

対象範囲

基準

年度

目標

年度

基準年度

の発生量

2024年度

の発生量

評価

食品ロス発生量

30%以上削減

当社及び子会社5社
(※3)

2018年

2025年

4.2千t

2.8千t

(基準年度比33.2%削減)

需給予測精度向上、銘柄統廃合、賞味期限延長、製造ロス改善活動の推進により、食品ロス発生量を削減しております。

 

 

◆水使用量削減(原単位)目標進捗状況

目標値

項目

基準年の

対象範囲

基準

年度

目標

年度

2024年度迄

の削減率

評価

水使用量

(原単位)

12%以上削減

当社及び子会社9社
(※4)

2019年

2030年

基準年度比10.3%削減

製造工程での使用水及び洗浄水等の省水施策の推進により、水使用量を削減しております。

 

 

◆容器包装材プラスチック使用量削減(原単位)目標進捗状況

目標値

項目

基準年の

対象範囲

基準

年度

目標

年度

2024年度迄

の削減率

評価

容器包装材プラスチック使用量

(原単位)

25%以上削減

当社及び子会社1社
(※5)

2013年

2030年

基準年度比2.4%削減

家庭用ミックス製品のフィルムのバイオマス原料使用、薄肉化により容器包装材プラスチック使用量を削減しております。

 

 

※1 Scope3については、引き続き集計・目標設定に取り組んでまいります。

Scope1:事業者自らの温室効果ガスの直接排出

Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

 

※2 実績値集計における電気事業者からの購入電力の排出係数については、毎年直近の調整後排出係数を使用しております。また、併せてデータ集計対象範囲も毎年度見直しておりますので、数値がこれ以前に公表したものと異なる場合があります。

 

※3 食品ロス発生量が100t/年以上のグループ会社

 

※4 水質汚濁防止法、下水道法による特定施設を有するグループ会社

 

※5 プラスチック資源循環促進法による多量排出事業者であるグループ会社

 

 

(人的資本経営)

当社グループでは、2025年度のありたい姿(長期ビジョン)「SHOWA Next Stage for 2025」を実現するため、「中期経営計画23-25」の5つの基本戦略のうちの1つである「基本戦略④:プラットフォームの再構築」の一環として、人的資本経営の推進に取り組んでおります。当社グループでは、“人財”は企業の持続的成長を支える最も重要な経営資本と位置付けており、“人財”への戦略的な投資を積極的かつ継続的に行うことで、「企業の持続的成長」と「従業員のウェルビーイング向上」を実現します。

 

a.戦略

「人財育成方針」

・基本方針

事業環境の急激な変化に対応し、当社グループの強みで競争を勝ち抜くためには、穀物ソリューション・カンパニーとして「顧客の課題の真因を捉えその解決に最適なソリューションを提供する力」と「不確実な未来と向き合い未来志向で新たな価値を創造する力」が必要不可欠であります。この二つの力を更に高めていくため、「課題解決力の深化」と「イノベーションの促進」を当社の人財育成におけるコンセプトとして設定し、事業の担い手となる次世代リーダーを計画的に育成していきます。

 

・具体的な取り組み

① 人事制度

当社の人事制度は、①当社グループの強みである「課題解決力の深化」と、②未来志向で新たな価値を創造する「イノベーションの促進」の2つのコンセプトを軸として、等級・評価・報酬の各制度や教育・研修プログラムを通じ、効果的な人財育成と経営目標達成に向けた行動の促進を図っております。

「イノベーションの促進」では、当社グループの事業領域を広げる活動や企業価値の源泉を開拓する活動など、「中長期視点の課題設定と新たな強みの創出」を牽引する人財の輩出と活躍を後押しするための職位「P等級(Planning、Pioneer)」を設けております。P等級はイノベーションを起こしたいという意欲のある従業員が選出される職位で、2024年度には1名を新たに選任し、2025年3月末時点で4名がP等級に選出されております。各P等級は「中期経営計画23-25」の「基本戦略②:事業領域の拡大」や「基本戦略④:プラットフォームの再構築」を目指した新しい試みに挑戦しております。

 

② 上司・部下間の対話を重視した人財開発

当社では、評価制度を部下の能力開発のためのマネジメントツールと位置づけております。期首に経営戦略や部門目標に沿った個人目標を設定し、四半期ごとに実施する上司との評価面談を通じて、従業員一人ひとりの目標達成に向けた行動を促進し、成長を支援します。また、自身のキャリア(ありたい姿、やりたい仕事)を考える機会として、「わたしのキャリア」(経験してきた仕事と自身の強み・弱みを棚卸しするキャリアシート)の作成と上司との「キャリアデザイン面談」を実施しております。

 

③ 研修制度により人財の成長をサポート

当社の研修制度の中心は階層別研修で、「自律型人財の成長をサポートし、次世代リーダーを育成すること」を目的に行っております。各研修は、人事制度や他のキャリア開発諸施策と相互に連動しており、自身及び部下のキャリア開発を行う上での道標の役割を果たしております。また、階層別研修とは別に、経営方針の理解や当社グループの従業員として必要な知識の習得を目的に、グループ会社を含めた全従業員教育として「昭和塾」を毎年開催しております。

年代別研修では、自身のキャリアを考え持続的に活躍できる状態を目指し、40歳及び50歳代社員を対象としたキャリア研修を実施しております。研修後にはキャリアコンサルタントとのキャリアコンサルティングを希望者に実施するとともに、通信教育等による自主的な学習を促し、従業員へのリスキル投資を強化しております。

また、「DXを活用した新たな価値の創出」を実現するため、DXを推進する人財の育成も推進しており、当社従業員向けデジタルリテラシー教育や選抜メンバーへのデジタルスキル教育を実施しております。

 

④ 通信教育の充実

当社ではキャリア開発支援の一環として通信教育制度を運営しております。会社が設定した200の多様なコースから従業員が年2回、自主的に選定して申し込み、設定した条件を満たした場合に受講料を全額補助しております。2025年度からは新たに幅広い分野の学習が可能なeラーニングコンテンツを導入しました。いつでも、自由に、自らのキャリアや業務に必要な知識を学べる環境を整えることで、自律的な成長と組織全体のスキル底上げを図ります。

「指標と目標」に定めるリスキル投資額は2023年度では1.4倍(2021年度比)、2024年度では2.0倍(2021年度比)と推移しております。

 

※ 2025年度教育体系図


 

「社内環境整備方針」

・基本方針

「中期経営計画23-25」の「基本戦略⑤:ステークホルダーエンゲージメントの強化」の重点項目として、「D&Iのドラスティックな推進」を位置づけ、ダイバーシティ経営推進の専担組織である「D&I推進室」を人財戦略部内に設置しております。多様な人財が安心して働き、互いに影響し合うことで、個々の能力を発揮しやすい環境を提供し、従業員のウェルビーイング向上と個人・チームとして高い成果を追求できる組織風土を醸成します。

 

・具体的な取り組み

① INCポリシーの制定

当社グループでは、従業員一人ひとりが健康で生き生きと働けるよう、「昭和産業グループダイバーシティ経営宣言」を策定し、様々な取り組みを行っております。「昭和産業グループダイバーシティ経営宣言」では3つの基本的な考え方である「INCポリシー」を掲げ、従業員一人ひとりの行動基準としております。

 

・Inclusion  :従業員一人ひとりの多種多様な価値観や考え方を受け入れ、その違いを活かし、イノベーションを生み出していきます。

・Normalization:従業員一人ひとりの個性を尊重し、特別ではなく、全てが当たり前のこととし平等に輝ける職場を実現します。

・Co-operation :従業員一人ひとりが互いに対等な立場で企業理念を共有し、同じ目標に向かい、共に力を合わせて積極的に成長します。

 

 

② 女性活躍の推進

当社では、女性活躍推進を経営の重要課題の一つと位置付け、「一人ひとりが能力を最大限発揮し、貢献することのできる職場環境の構築」と「女性従業員の経営参画の多様化実現」を目標に、施策の検討やイベントの実施など、様々な取り組みを行っております。

2024年度は、2023年度から継続して会社が指名した女性管理職及び管理職候補者を、実務から離れて視野を広げる機会として女性従業員向け講座に派遣しました。また、全女性マネージャーへのヒアリングを人財戦略部が実施し、キャリアに関する意見交換を行いました。

「指標と目標」に定める女性管理職比率は2022年3月末7.2%、2023年3月末7.9%、2024年3月末9.2%。2025年3月末9.8%と推移しております。

 

③ 障がい者雇用の推進

当社では、障がい者雇用の推進組織としてD&I推進室内にINC推進チームを設置し、障がいのある従業員が働きがいを持って、日々そして末永く当社グループで活躍できるよう、一人ひとりに適した職場への配属や職域開発を行っております。

2024年度は、各部署から切り出した業務を新規で18件、年間580時間分受託しました。また、昨年度に続き、創立記念日に合わせて社内従業員向けに当社グループの冷凍生地を使用したパンを焼成販売しました。INC推進チームメンバーでのメニュー考案、試作を重ねた焼き立てパンは従業員に大変好評でした。

2025年3月末の障がい者雇用率は2.6%と昨年度に引き続き法定雇用率の達成を実現しました。

 

④ 多様な従業員が働きやすい環境のために

「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」に基づき、就業規則等各種規程において多様な性的指向や性自認を持ち得る従業員へ配慮した改定を行っております。

2024年度は、外部有識者を交えたLGBTQ理解促進の勉強会「にじいろセミナー」をオンラインで実施し、相談窓口担当者が心構えを学びました。また、勉強会の内容は当社グループ内に動画配信し、広く周知をしました。

 

⑤ 健康経営の推進

「従業員の健康は会社の礎である。」という思いのもと、当社では2017年に「昭和産業健康宣言」を発表し、「従業員の健康ファーストの企業風土醸成(セルフケアの促進)」と「働き方改革の推進(職場環境の改善)」に取り組んでおります。

2024年度は、生活習慣改善対策として「運動」・「睡眠」・「食」・「飲酒」・「喫煙」の5つについて従業員へアプローチしております。

   「運動」:スマートフォンアプリを使用して、歩数目標の達成度合いを競い合う「スマ歩ウォーク」を開催し、当社グループ従業員452名が参加しました。また、関連イベントとして「塚越社長と一緒に歩こう!」イベントを当社本社と神戸工場で開催しました。楽しく運動しセルフケア促進に繋がる取り組みとしております。

「睡眠」「食」:睡眠時間とプレゼンティーズムに相関がみられたため、当社本社にて食事や腸内環境と良好な睡眠の関係についてセミナーを実施しました。今後も継続して実施していきます。

   「飲酒」:適正な飲酒に関するセミナーを当社本社・鹿島工場・神戸工場で実施し、延べ112人の参加者が適切なアルコールとの付き合い方を学びました。

   「喫煙」:喫煙対策として当社従業員の希望者を対象にオンライン卒煙プログラムの提供を実施中です。

 

上記の取り組みが評価され4年連続で健康経営優良法人に認定されました。

 

⑥ 働き方改革の推進

多様な働き方を提供し、働く意欲と能力を引き出せるように、従来の在宅勤務規程を見直し、「SHOWAテレワーク制度」を制定しております。生産性の向上とともに、仕事と育児・介護の両立を支援する制度としております。

 

 

⑦ 従業員エンゲージメントの向上

当社では、毎年のエンゲージメントサーベイの結果を基に、各職場にて改善活動に取り組んでおります。心理的安全性の高い職場づくり、それらを促すマネジメント層のマネジメントスキルの習得を通じ、従業員一人ひとりのウェルビーイングを高め、会社に対する貢献意欲の向上を図ります。

改善活動の一例として、当社鹿島工場では従業員同士がお互いに感謝を伝え合う「サンクスギフト」の導入や、人財戦略部と協同で管理職同士のグループワークや職場を訪問し合うことで改善事例の共有を行うなど、エンゲージメント向上に向けた取り組みを行っております。

現在、各職場の集団分析結果について解析を行い、部門ごとにエンゲージメントスコアに影響を与える指標の抽出を行っております。今後、次期中期経営計画の発表に合わせてエンゲージメントスコアの目標値を公表いたします。

 

b.指標と目標

当社は、「中期経営計画23-25」の「基本戦略④:プラットフォームの再構築」及び「基本戦略⑤:ステークホルダーエンゲージメントの強化」において、以下のKPIを設定しております。目標達成のため、更なる施策の検討と取り組みを引き続き進めてまいります。

なお、各指標の進捗状況はa.戦略の「人財育成方針」及び「社内環境整備方針」の「具体的な取り組み」に記載しております。


(注) 指標と目標及び進捗状況は、昭和産業㈱を対象としております。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が経営成績等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。

 

当社グループでは、「リスクマネジメント基本方針」に基づきリスクマネジメント委員会を設置し、企業経営に対する重大なリスクへの適切かつ迅速な対応の強化に取り組んでおります。年1回、経営目標の達成を阻害する可能性のあるリスクを洗い出し、「経営への影響度」と「発生可能性」の両面で評価を行いリスクの重要度を決定します。重要度の高いリスクについては、部門統轄役員の管理の下で主管部署が対策を講じることによりリスクの最小化に取り組んでおります。こうした取り組みは、リスクマネジメント委員会での審議を経て、経営会議及び取締役会に報告され、経営層からの継続的な監督を受けております。また万が一、危機が発生した場合は、対策本部を設置し、迅速かつ的確に対応することで、影響の極小化に努めてまいります。

認識しているリスクのうち、当社グループの経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性が特に高いと判断しているリスクには以下のようなものがあります。

各リスク項目は、リスクが顕在化した際の影響度/前期からの変更(継続か新規か)/当社グループが掲げております長期ビジョンの基本戦略※のうち、主に影響を受ける戦略がどの基本戦略であるか、を示した上で、内容の詳細を記載しております。

※基本戦略については「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営戦略(長期ビジョン・中期経営計画) 「中期経営計画23-25」について 〔5つの基本戦略〕」をご参照下さい。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月20日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

1.原料穀物調達(穀物相場・為替の変動等)

影響度

非常に大

前期からの変更

継続

長期ビジョンへの影響

基本戦略①

当社グループにおける主要製品の原料となる小麦、大豆、菜種、トウモロコシ等の穀物は、主に海外から調達しております。そのため、原料コストは、穀物相場、為替相場及び海上輸送運賃の変動による影響を受けます。また、小麦については主に国の政策に基づく売渡制度により調達していることから、国際貿易交渉の進展等により、その管理手法に大幅な変更があった場合には影響を受ける可能性があります。

穀物相場や為替相場、エネルギーコストの急激な高騰は、製品原価を押し上げ、当社グループの経営成績を大きく左右する可能性があります。影響を最小限に抑えるべく原料価格に見合った適正な製品価格への転嫁、コスト削減施策の実施等に努めております。加えて、為替相場の変動リスクを軽減するために、予め決められたルールに基づき先物為替予約取引を含むデリバティブ取引を一部利用しております。

原料穀物を安定調達するために、生産地での異常気象や輸出国の物流障害等に備えて調達地域の分散を図っております。また、小麦については我が国の主要食糧の安定供給を図る観点から国が一元的に輸入しておりますが、不測の事態に備えて2.3ヶ月分の備蓄在庫を保有しております。飼料用穀物は、災害発生等の緊急時の復旧期間を3週間と想定して当社関連会社の穀物サイロ会社において備蓄在庫を保有しております。

 

 

2.製品安全

影響度

非常に大

前期からの変更

継続

長期ビジョンへの影響

基本戦略①⑤

食品の安全性に対する消費者の意識は年々高まっており、法令や国からの指導、安全基準は一段と厳しくなっております。

当社グループでは、食品の安全・安心3原則※を定め、これを確実に実行していくためのシステムとして、当社独自の「食品安全・品質マネジメントシステム(FSQMS)」を運用し、予防的な対策と継続的な改善を行っております。FSQMSは、HACCPを柱としてISO22000、GFSI認証スキームであるFSSC22000、ISO9001、AIBフードセーフティシステムの仕組みを取入れ、効率的な運用ができるように再構築したものであります。また、万が一、製品の安全・安心に懸念が生じた場合に備えて、製品回収の仕組み・手順を構築しております。さらに、製品の安全性と品質の重要性を認識する活動を継続的に実施し、組織内の食品安全・品質文化の醸成を図っております。

健康被害や法令違反が疑われる場合は、緊急製品安全委員会で対応を検討の上で製品の回収を決定し、社告やホームページ等で開示する体制をとっております。これらの想定範囲を超えた事象が発生した場合、例えば、食品安全上の不具合により原材料が調達不能となったことによる操業停止、製品回収によるコストアップ、一時的な出荷不能に伴う売上高の減少、信用低下に伴う顧客離れによる中長期的な売上高の減少等が発生した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性がありますが、その際にも迅速かつ的確に対応することで、影響の極小化に努めてまいります。

また、配合飼料についても安全・安心を確実にしていくための品質保証体制を構築しております。想定を超える規模の家畜伝染病(BSE、口蹄疫、鳥インフルエンザ、豚熱等)が発生した場合、配合飼料販売への影響及び、当社グループを含む飼料畜産業界全体に影響を与える可能性がありますが、影響を最小限に抑えるべく、迅速かつ的確に対応してまいります。

※原則1. 原材料の調達段階:問題のあるものを持ち込まない。

原則2. 工場の製造段階:問題のある製品を作らない。

原則3. 出荷の段階:問題のある製品を持ち出さない。

 

 

3.災害・事故・感染症

影響度

非常に大

前期からの変更

継続

長期ビジョンへの影響

基本戦略①④⑤

将来発生が想定される大型地震(南海トラフ巨大地震、首都直下地震等)や近年多発している風水害(台風・大雨等)等の大規模自然災害、火災・爆発等の事故や国家的警戒レベルの感染症の流行は、当社グループとしても重大なリスクと認識しております。

当社グループは、生産拠点として全国各地に工場を有しております。これら工場設置地域においては、安全管理体制の確立や設備補強等の対策を講じておりますが、想定以上の大規模災害、事故、パンデミックが発生した場合は従業員の出勤不能、サプライチェーンの断絶、工場の操業停止による製品供給体制の停滞等を招き、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

災害対策として、各拠点では定期的な災害訓練の実施により有事対応力を強化すると共に、災害対策委員会を定期的に開催し、災害発生時の連絡手段や災害備蓄物資等の見直し、整備を行っております。万が一、災害が発生した場合、先ず従業員とその家族の安否を確認の上、災害対策規程に基づき、災害にかかる応急措置を迅速かつ的確に実施し、被害の軽減を図ってまいります。また、事業継続の観点からBCPを整備し、訓練等を通じて検証と改善を実施し、BCPの実効性を高めております。さらに、必要となる業務システムについては、データセンターの複数拠点化やシステムダウン時の予備機への即時切替えなど業務を継続できる体制を整えております。

火災・爆発等の事故対策として、管理体制の強化や事故発生を防止する設備の充実、定期的な訓練や安全巡視の実施、教育・啓発活動を行うとともに緊急事態発生時に対応するためのマニュアルの整備等を行っております。

感染症対策として、感染者が出た場合あるいはその蓋然性が高まった場合には、感染症対策本部を設置し、感染症のまん延防止及び事業継続に向けて、国・自治体等の指針に沿って適宜適切に対応する体制を整えております。

 

 

4.気候変動

影響度

非常に大

前期からの変更

継続

長期ビジョンへの影響

基本戦略③⑤

当社グループは大地の恵みである多種多量な穀物を扱っており、穀物の生育に大きな影響を及ぼす気候変動は、重大なリスクであると認識しております。

気候変動に起因する自然災害の発生や気温上昇が穀物の生育過程に悪影響を及ぼすことで、穀物の品質悪化や収量の減少が想定されます。こうした変化は、原料の高騰を引き起こすばかりか、当社グループの製品供給が不安定化することで、事業活動やステークホルダーからの信頼に影響を及ぼす可能性にもつながります。

気候変動リスクは、環境管理委員会傘下のTCFD委員会で分析を進めております。また、2021年12月にはTCFD提言への賛同を表明しました。当社グループの事業には大地の恵みである穀物が必要不可欠であることから「地球環境への配慮」をマテリアリティの一つに位置付け、気候変動への対応に取り組んでおります。TCFD委員会では、移行リスクと物理的リスクに分けてシナリオ分析を行い、気候変動が事業活動に与える影響を定量面と定性面から整理しております。

こうした分析によるリスク対応の一部を「昭和産業グループ 環境目標」と連動させ、食品メーカーとして特に重要と考えるCO2、食品ロス、水、プラスチックに関する目標として設定しました。環境管理委員会の傘下に設定したCO2排出量削減部会、食品ロス削減部会、水使用量削減部会、プラスチック使用量削減部会が中心となり、この目標達成に向けた取り組みを進めております。

 

 

5.少子高齢化・人口減少

影響度

非常に大

前期からの変更

継続

長期ビジョンへの影響

基本戦略①②

日本国内においては人口減少及び少子高齢化が進んでおり、中長期的には国内需要の低下が懸念され、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

こうした市場環境の変化に対応するために、当社グループでは大規模な組織改編を行い、提案型営業による顧客ニーズに沿った製品提供、差別化戦略による付加価値商品の拡販やグループ連携による収益力強化、オレオケミカルなど非食品分野も視野に入れた新規事業創出などの事業領域の拡大にも取り組み、販路及び収益の拡大に努めてまいります。また、人口が増加傾向にある海外にも注力し、需要が旺盛なASEAN地域を中心に事業展開や輸出の強化を図ってまいります。

 

 

6.企業買収及び合併事業

影響度

非常に大

前期からの変更

継続

長期ビジョンへの影響

基本戦略①②

当社グループは、長期ビジョンの基本戦略となる「①基盤事業の強化」及び「②事業領域の拡大」を実現するための手段として、国内外の企業買収や海外現地パートナーとの合弁等の可能性を常に検討しております。

企業買収や合弁事業の実施にあたっては、当社グループ独自に策定したガイドラインに基づいた検証・審査プロセスを実施するとともに、外部専門家を活用することでリスクの低減を図っております。しかし、対象となる事業の環境変化等により、当初の想定通りにシナジー効果等が創出できない場合、当社グループの期待する成果が得られない可能性があります。また、企業買収等に伴い計上したのれん及び顧客関連資産については、それぞれの事業価値及び将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、対象となる事業において当初想定していた収益力が低下する等の理由により減損損失が発生し、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 

7.物流に関するリスク

影響度

前期からの変更

継続

長期ビジョンへの影響

基本戦略①③

運送・物流業界においては、ドライバーや倉庫作業員の減少、ドライバーの労働時間の上限規制の適用開始などにより運送能力が不足することが懸念されており、「物流の2024年問題」として社会的な課題となっております。

これらは原材料の調達と製品の供給の両面に影響することから、結果としてお客さまへの商品の供給が滞る可能性があります。また、ドライバーや倉庫作業員の維持・確保に向けた運賃・倉庫利用料等の値上げ要請による物流コスト上昇が想定されることから、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性が大きいと考えております。

これに対し、当社は「ホワイト物流」推進運動へ賛同し、拠点物流倉庫の整備、モーダルシフトによるトラック長距離輸送の削減、デザイン・フォー・ロジスティクス(物流を考慮した製品・包装設計)によるパレット積載効率の向上などに取り組んでおります。また、経済産業省、農林水産省、国土交通省から示された「物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者・物流事業者の取組に関するガイドライン」に従い、自主行動計画を策定し、公開しております。

今後も持続可能な物流の実現のため、当社グループでは物流事業者や得意先様のご理解・ご協力をいただきつつ、トラック待機時間の削減、配送頻度の適正化、パレット輸送の促進、配送業務外の付帯作業の改善、適切な物流料金の設定などの対策を進めてまいります。また、神戸工場の製粉立体自動倉庫の更新(2026年完成予定)を始め、物流分野への投資を実施します。更に行政の動向を注視し、様々な法規制の変更や追加へも適切に対応してまいります。

 

 

8.情報セキュリティ

影響度

前期からの変更

継続

長期ビジョンへの影響

基本戦略①④

ICTの発展に伴いサイバー攻撃の手口も年々高度化・巧妙化するなど、当社グループを取り巻く経営環境において、サイバーリスクは高まっております。

当社グループでは、リスクマネジメント委員会傘下の部会として情報セキュリティ委員会を開催し、セキュリティ対策の検討・見直しを継続的に実施しております。また、パソコンの不審なプログラムの動作を検知し、実行を防止する「ゼロトラスト」の考えに基づいたセキュリティシステムを導入すると共に、IT-BCPマニュアルの策定により、ランサムウエア等のサイバー攻撃を受けた場合を想定した社内体制を構築し、実効性確保のための訓練を実施しております。さらに、近年では年々増加する標的型メール攻撃に対するeラーニング、各部署に配置した「IT推進者」への教育の徹底や人的対応力強化に注力しております。ただし、当社グループの想定を上回る新手のサイバー攻撃を受けた場合、システム停止による製品供給の遅れ、情報漏洩による損害賠償、信用低下による顧客離れ等による売上高の減少など、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 

9.人権

影響度

前期からの変更

継続

長期ビジョンへの影響

基本戦略④⑤

多種多様な事業ポートフォリオを有する当社グループにとって、不当な職場待遇、強制労働、ハラスメント等の人権諸課題への対応及び従業員の人権保護と関連法規制の遵守は非常に重要な課題と認識しております。あらゆる差別や偏見を排除し、従業員一人ひとりの多様なる個性・人格・能力を尊重し合う多様性に配慮した職場づくりが実現できない場合には、当社グループ及びブランドのイメージが失墜するとともに、従業員の生産性の低下、優秀な人財の獲得が困難になるなど、当社グループの競争力が低下する可能性があります。

当社グループでは「人権に関する取り組み基本方針」を制定し、この人権尊重の方針を土台として、互いを尊重し従業員一人ひとりが自らの強みを最大限発揮できる職場づくりに取り組んでおります。また、2020年に「昭和産業グループ調達方針」を制定し、人権尊重の考えをサプライヤーの皆様に共有しております。2023年度は人権リスクアセスメントを全グループ会社に行い、人権侵害のリスクを深刻度と発生可能性の観点から評価した結果、「長時間労働」「労働災害」「ハラスメント」の3つが優先的に対処すべき人権リスクとして見出されました。アセスメント結果を基に、2025年度からは人権委員会を設置し、組織横断的に人権への取り組みを行っていく予定であります。

 


 

 

 

10.コンプライアンス

影響度

前期からの変更

継続

長期ビジョンへの影響

基本戦略①②⑤

当社グループが事業活動を行う上で、食品衛生法、独占禁止法、下請法、景品表示法、個人情報保護法等、国内外の様々な法的規制や社会的規範を遵守することが求められております。

重大なコンプライアンス違反を起こした場合、民事上の責任(損害賠償等)、刑事上の責任(刑事罰)、行政上の責任(行政処分)といった法的責任の追及だけでなく、社会的信用やブランドイメージが大きく低下し、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループは、経営理念である「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」の具現化に向け、「コンプライアンス基本方針」の下、従業員一人ひとりが企業市民としての自覚を持ち、コンプライアンスの実践者となり透明性の高い組織としていくため、抑止及び検知に向けた活動を推進しております。具体的には、必要な規程類の整備や、社会情勢によって変化する課題抽出とその対策として研修等の教育・啓発活動の展開、内部通報制度を通じた不正行為の早期発見や再発防止策の検討等を実施しております。

 

 

11.人財確保

影響度

前期からの変更

継続

長期ビジョンへの影響

基本戦略①②⑤

国内における少子高齢化に伴う労働人口の減少により、必要とする人財の確保や育成ができない場合には、当社グループの経営状況や事業継続に影響がでる可能性があります。

当社グループでは「従業員のウェルビーイング向上」を目指し、多様な従業員が心理的安全性の高い職場で意欲高く、スキルや知識を身につけ成長していくことのできる環境整備に努めております。具体的には、研修の充実化や、毎年実施するエンゲージメントサーベイの結果を基に各セクションにてスコア改善へ向けた行動計画を策定・実行しております。また、「昭和産業健康宣言」に基づき、産業医・健康保険組合と連携を取りながら全社一体で従業員の健康増進に取り組んでおり、4年連続で「健康経営優良法人」に認定されました。

 

 

12.知的財産

影響度

前期からの変更

継続

長期ビジョンへの影響

基本戦略①②

当社グループが知的財産権の取得、維持、防衛、保護を計画通りに実行できなかった場合、当社グループ独自の技術による競争優位性を維持できなくなる可能性があります。適切な知的財産権を取得し、その維持と防衛に努めることと、秘匿技術の保護に取り組んでおります。

また、当社グループの知的財産権が第三者に侵害される可能性や、当社グループが意図せず第三者の知的財産権を侵害し、販売差止請求や損害賠償請求を受ける可能性があります。第三者による侵害製品や冒認出願について調査し、それに対応することで知的財産権とブランドイメージを保護するとともに、継続して教育活動を実施することで第三者の知的財産権を尊重する風土の醸成に取り組んでおります。

このような取り組みを通じて、当社グループの経営成績が悪影響を受けるリスクや、当社グループ及びブランドのイメージが毀損するリスクの低減を図っております。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況
1) 経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調で推移しました。しかしながら、物価上昇による消費者の節約志向の高まり、金融市場の変動リスク、長期化する不安定な国際情勢などもあり、依然として先行き不透明な状況が続いております。

このような状況の中、当社は創立90周年を迎える2025年度のありたい姿(長期ビジョン)「SHOWA Next Stage for 2025」の実現に向け、3rd Stage「中期経営計画23-25」を2023年4月にスタートし、基本コンセプト『SHOWAの“SHIN-KA”宣言~90年、そしてその先へ~』を掲げ、5つの基本戦略「①基盤事業の強化」「②事業領域の拡大」「③環境負荷の低減」「④プラットフォームの再構築」「⑤ステークホルダーエンゲージメントの強化」の各施策を推進しております。

当連結会計年度の経営成績は、連結売上高が334,425百万円と前年同期に比べ11,933百万円(3.4%)の減収となりました。営業利益は11,126百万円と前年同期に比べ2,020百万円(15.4%)の減益経常利益は13,591百万円と前年同期に比べ2,967百万円(17.9%)の減益親会社株主に帰属する当期純利益は11,599百万円と前年同期に比べ758百万円(6.1%)の減益となりました。

 

(単位:百万円)

 

2024年3月期

連結会計年度

2025年3月期

連結会計年度

前年同期差

前年同期比

増減率

売上高

346,358

334,425

△11,933

△3.4%

営業利益

13,146

11,126

△2,020

△15.4%

経常利益

16,558

13,591

△2,967

△17.9%

親会社株主に帰属

する当期純利益

12,358

11,599

△758

△6.1%

 

 

セグメントの経営成績を示すと、次のとおりであります。

 

<食品事業>

食品事業は、インバウンド需要の増加等により外食等の需要が回復しましたが、一方でコストアップ要因となる物流コストや資材価格等の上昇基調が続きました。このような市場環境の中、当社の強みであるマーケット分析力を生かし、2023年4月より導入した顧客別営業組織によるターゲット業態ごとのワンストップ型提案営業の強化、適正価格での販売に取り組んでまいりました。

製粉カテゴリは、輸入小麦の政府売渡価格が昨年4月に平均0.6%(税込価格)、10月に平均1.8%(税込価格)引き下げられたことを受け、小麦粉製品の価格改定を実施しました。一方で、当社連結子会社を含めた生産拠点の一体運用を図ることで、物流コスト低減や生産効率化を推進しております。小麦粉の販売数量は海外向けが伸長し前年同期を上回りましたが、プレミックスの販売数量は前年同期を下回りました。パスタの販売数量は外食市場中心に好調であったため、前年同期を上回りました。ふすまの販売数量については、前年同期を下回りました。なお、家庭用の小麦粉およびプレミックスの販売数量は前年同期を下回りましたが、パスタの販売数量は米の代替需要も寄与し前年同期を上回りました。これらにより製粉カテゴリの売上高は、前年同期を下回りました。

製油カテゴリは、コストを踏まえた適正価格での販売活動と、長寿命オイルや油染みの少ないベーカリー用オイルなど機能的に価値のある商品提案や課題解決型営業に取り組んでまいりました。またコスト抑制と安定供給を目的に、当社連結子会社であるボーソー油脂株式会社、持分法適用関連会社である辻製油株式会社と連携して、生産拠点の効率的運用、原材料調達の効率化に取り組みました。業務用油脂については、需要の回復とその好機を捉えた販売施策の実行により、販売数量は前年同期を上回りました。家庭用油脂についても、汎用油・こめ油の販売が伸長したため、販売数量は前年同期を上回りました。これらにより製油カテゴリの売上高は、適正価格での販売に努めましたが前年同期を下回りました。

 

 

糖質カテゴリは、当社連結子会社である敷島スターチ株式会社やサンエイ糖化株式会社との連携を図り、グループ一体となった課題解決や生産効率化などを進めております。糖化品の販売数量については、低分解水あめ、粉あめなど独自性のある商品群の拡販、医薬用など幅広く取り扱うぶどう糖商品群の強みに加え、飲料用途等の需要増加などにより前年同期を上回りました。コーンスターチの販売数量については、ビール用途等の需要が増加し、前年同期を上回りました。加工でん粉の販売数量については、前年同期を下回りました。副製品については、販売数量は前年同期を上回りましたが、販売価格は前年同期を下回りました。これらにより糖質カテゴリの売上高は、前年同期を下回りました。

これらの結果、食品事業の売上高は273,533百万円と前年同期に比べ8,795百万円(3.1%)の減収営業利益は10,975百万円と前年同期に比べ1,874百万円(14.6%)の減益となりました。

 

<飼料事業>

飼料事業は、顧客ニーズに対する提案型営業、畜産物の販売支援や付加価値向上へのサポート等の生産者との取り組み強化、高付加価値商材の拡販に努めてまいりました。配合飼料および鶏卵の販売数量は、昨年10月からの鳥インフルエンザ感染拡大による影響はありましたが、前年同期を上回りました。一方で原料価格下落により配合飼料の平均販売価格が前年を下回ったこと、また、特に昨秋までの鶏卵相場が軟調に推移したことにより、売上高は前年同期を下回りました。

これらの結果、飼料事業の売上高は56,162百万円と前年同期に比べ3,299百万円(5.5%)の減収営業利益は485百万円と前年同期に比べ228百万円(32.0%)の減益となりました。

 

<その他>

倉庫業につきましては、貨物獲得競争が激化する中、商社や主要顧客との取り組みを強化し荷役量の増加に努めたことにより、貨物取扱量は前年同期を上回りました。

これらの結果、不動産業、保険代理業、自動車等リース業、運輸業、植物工場等をあわせたその他の売上高は4,729百万円と前年同期に比べ161百万円(3.5%)の増収営業利益は1,428百万円と前年同期に比べ107百万円(8.1%)の増益となりました。

 

2) 財政状態の状況

総資産は、255,504百万円と前連結会計年度に比べ6,734百万円減少しております。主な減少要因は、売上債権8,736百万円減少したこと、棚卸資産1,952百万円減少したことであります。一方、主な増加要因は、投資有価証券3,179百万円増加したことであります。

負債は、116,884百万円と前連結会計年度に比べ12,101百万円減少しております。主な減少要因は、仕入債務4,153百万円減少したこと、有利子負債(リース債務含む)が3,412百万円減少したこと、流動負債のその他に含まれる未払消費税等が1,502百万円減少したことであります。

純資産は、138,619百万円と前連結会計年度に比べ5,366百万円増加しております。主な増加要因は、親会社株主に帰属する当期純利益11,599百万円の計上により増加したことであります。一方、主な減少要因は、配当金の支払により2,973百万円減少したこと、自己株式を取得後、消却を行ったこと等により資本剰余金が2,619百万円減少したことであります。

これらの結果、自己資本比率は49.4%から52.8%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益16,464百万円、減価償却費10,417百万円、売上債権の減少及び棚卸資産の減少等による資金の増加がありましたが、法人税等の支払5,226百万円、仕入債務の減少及び未払消費税の減少等があった結果、合計では20,274百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ3,477百万円(14.6%)収入が減少しました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得11,528百万円及び関係会社株式の取得1,345百万円等に資金を使用した一方、有形固定資産の売却3,466百万円の収入等があった結果、合計では11,385百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ1,015百万円(8.2%)支出が減少しました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、これらで得たフリー・キャッシュ・フロー8,888百万円を原資として、コマーシャル・ペーパーの返済3,500百万円、自己株式の取得3,406百万円及び配当金2,973百万円の支払等を行った結果、10,057百万円の支出となり、前連結会計年度に比べ621百万円(6.6%)支出が増加しました。

以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は6,868百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,268百万円(15.6%)の減少となりました。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりとなります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

食品事業

214,370

△4.6

飼料事業

32,556

△4.9

その他

162

14.2

合計

247,089

△4.6

 

(注) 1 金額は製造原価によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。

2 当該内容は、製品ベースの生産実績によっております。

 

2) 受注実績

当社グループは、受注生産を行っておりません。

 

3) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりとなります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

食品事業

273,533

△3.1

飼料事業

56,162

△5.5

その他

4,729

3.5

合計

334,425

△3.4

 

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。

2 総販売実績に対する主要な取引先の販売実績の割合が10%未満のため、記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表等は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準等に基づき作成されております。この連結財務諸表等の作成にあたっては、期末日における資産及び負債、会計期間における収益及び費用に影響を与えるような仮定や見積りを必要とします。過去の経験及び状況下において妥当と考えられた見積りであっても、仮定あるいは条件の変化等の不確実性により、実際の結果と異なる場合があります。

また、連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

当社グループはこの仮定のもと、会計上の見積り(固定資産の減損、棚卸資産の評価、繰延税金資産の見積り等の検討)を行っておりますが、翌連結会計年度の経営成績及び財政状態に与える影響については、現時点において重要な影響はありません。

 

② 財政状態及び経営成績の分析・検討内容

「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」をご参照下さい。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性の分析
1) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。

 

2) 財務政策

当社グループは、経済環境や金利動向を考慮しながら、「金利優位性の高い資金を、必要な金額だけ、安定的に調達すること」を基本方針とし、事業運営上必要な資金の確保及び経済環境の急激な変化に耐えうる流動性の維持に努めております。

 

3) 資金需要

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループ製品製造のための原材料の購入等の製造費並びに販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは人件費及び発送配達費です。

投資資金需要のうち主なものは、製造工場の設備新設、維持、更新等、基盤事業における生産効率向上のための設備投資です。

また、長期ビジョン実現のための資金需要として、将来の企業価値の源泉となる投資については、財務健全性の維持と資本効率性の向上を考慮しながら積極的且つ継続的に実施していく方針です。

 

4) 資金調達

当社グループの調達手段として、長期運転資金及び設備投資資金については、原則営業活動により得られたキャッシュ・フロー及び金融機関からの長期借入を基本とし、必要に応じて社債等による資金調達も実施してまいります。短期資金調達については、営業活動により得られたキャッシュ・フロー、コマーシャル・ペーパーの発行及び金融機関からの短期借入を基本としております。

また、当社グループは、当社及び国内連結子会社にキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入し、グループ内資金を一元管理しております。グループ内の余剰資金を集中、配分することで、コスト低減に努めつつ資金の流動性確保、資金効率の向上及び金融負債の極小化を図っております。さらに、緊急時の流動性確保への備えとして、複数年のコミットメントライン契約を締結しております。

 

 

5 【重要な契約等】

(その他の重要な契約)

会社名

契約締結先

契約内容

契約締結年月日

有効期間

当社

鹿島飼料㈱

配合飼料受委託
加工製造契約

2021年9月1日

2022年3月31日まで、以降1年毎延長。

但し、期間満了3ヶ月前までに書面による申出によって終了できる。

 

(注) 1992年4月1日に締結した契約の内容を一部変更し、2021年9月1日に再締結しております。

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発は、食品の安全・安心の確保のため、食品安全・品質文化の醸成を行い、製品の安全性と品質の継続的向上を図っております。基盤事業の持続的成長に貢献するため、生産技術力向上、持続可能な社会を実現する技術の確立に取り組んでおります。また、事業領域の拡大に貢献するため、新製品開発や新たな分野への挑戦に繋がる創造的な新技術の開発に注力しております。

RD&Eセンターを主な研究開発拠点として、お客様とのコミュニケーションを通じてとらえたニーズや研究開発者が洞察する潜在ニーズを起点とした「マーケットイン」と、当社グループの技術力や開発力を起点とした「プロダクトアウト」の融合により、当社グループだからこそできる高付加価値な商品とサービスの提供に努めております。さらに、研究開発力、事業化推進力などの強化を図るため、大学や公的研究機関との連携のほか、他業種との交流を行っております。

セグメントごとの研究開発活動は以下のとおりであります。

 

<食品事業>

小麦粉やプレミックス製品、油脂製品、糖質製品への新たな機能の付与や最適な利用方法の研究と提案を行い、当社グループのシナジー効果を生かすことに努めております。

製粉カテゴリについては、製造技術の向上に関する研究のほか、パン・菓子用や麺類用の小麦粉、パン・菓子、揚げ物などのプレミックス、パスタ、冷凍パン生地などの各種製品開発を行っております。それら業務用製品は、各顧客のニーズに応じた改良を行い、食品加工メーカーや外食チェーン、コンビニエンスストアなどに供給しております。また、家庭用として、2024年9月に簡単で時間をかけず、たのしく食育ができる『トースターで簡単ふんわりパンミックス』を商品化し、2024年11月に『国産麦 強力小麦粉』を機能性表示食品として商品化をいたしました。2025年3月には、片付けが簡単な『もう揚げない!!焼き天ぷらの素』のリニューアルと同時に、『もう揚げない!!焼きからあげの素』を開発し、商品化いたしました。

製油カテゴリについては油脂や大豆たん白製品の製造技術の向上に関する研究や、様々な用途に合わせた機能で差別化した油脂製品や、顧客ニーズに応じた大豆たん白製品の開発、改良を行っております。それら業務用製品は、食品加工メーカーや外食チェーン、スーパーのバックヤードなどに供給しております。ボーソー油脂㈱及び辻製油㈱との連携強化によるこめ油とコーン油の知見を生かし、こめ油を主体とした炊飯油『こめコート』や、コーン油を活用した油汚れがしにくい『フライオイルCK-UP』を商品化いたしました。また、2024年8月に植物性食材の新ブランドとして『SOIA SOIYA(ソイア ソイヤ)』を立ち上げて『HMSP:High Moisture Solution Protein』を商品化し、2025年2月に『HMSPチャーシュー風 醤油味』を商品化するなど、加工商品のラインナップを増やしております。家庭用として、2024年11月に手軽にイソフラボンを摂取できる『大豆胚芽』と大豆ミートである『まめたん』を機能性表示食品として商品化いたしました。さらに、資源循環型社会を目指す東北大学発のスタートアップ企業であるファイトケミカルプロダクツ株式会社と資本業務提携を行い、オープンイノベーションによる新規事業領域の研究・開発を強化いたします。

糖質カテゴリについてはトウモロコシからコーンスターチ・糖化製品を製造する工程の最適化研究や、加工でん粉、オリゴ糖など食品加工特性に特徴がある糖質の研究開発を行っております。食品分野以外での利用に対する研究開発も行っております。また、グループ会社のサンエイ糖化㈱との連携強化により、2024年9月にマルトビオン酸カルシウムを使った家庭用商品『骨ケアドリンク ヨーグルト風味』を機能性表示食品として商品化いたしました。

なお、食品事業に係る研究開発費の金額は1,668百万円であります。

 

 

<飼料事業>

鶏用、豚用、牛用飼料における機能素材の給与効果や、加工特性や風味に優れた水畜産物に関する研究開発、加工卵の製造方法に関する検討を行っております。また、当社グループの製造副産物及びユーザーの食品廃棄物などを、肥飼料分野で活用する、食品事業と飼料事業を融合させる研究を進めております。一例として糖質工場で発生する廃珪藻土を有効活用する研究を行い、土壌還元剤や、堆肥発酵助剤として商品化を行いました。

なお、飼料事業に係る研究開発費の金額は各セグメントに含まれない基礎的研究開発費の金額に含まれております。

 

(注) 基礎的研究開発費の金額1,151百万円についてはセグメント分類上全社費用として取り扱っております。