文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、取り巻く経営環境が大きく変化する中、持続的な成長を目指すべく、2021年に新たに企業理念を策定いたしました。企業理念は、わたしたちの使命(パーパス)、わたしたちが目指す未来(ビジョン)、わたしたちが大切にする想い(バリュー)と、これらを一言で表した『コーポレートメッセージ』(おいしく たのしく すこやかに)で構成しております。この企業理念を当社グループにおける全ての活動の拠り所として、ステークホルダーの皆様と社会の期待に応えることで持続可能な社会の実現に貢献し、長期的な企業価値向上を図ってまいります。

(2) 中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
① 経営環境
日本国内の人口動態の変化、気候変動や資源不足、デジタル技術の発展、生活環境の変化など、今後予測される経営環境の変化は安定的な事業活動にとって脅威であるとともに、市場のニーズに迅速に対応していくことで大きな機会になり得ると捉えております。

② 2030経営計画
当社グループは、企業理念のもと、持続可能な社会の実現に貢献しつつ中長期的な成長を遂げ、企業価値を高めていくため、2030年に向けた長期経営計画「2030経営計画」を推進しております。
2030ビジョン
当社グループは、2030年の目指す姿として2030ビジョン『森永製菓グループは、2030年にウェルネスカンパニーへ生まれ変わります。』を定めております。「ウェルネス」とは、「いきいきとした心・体・環境を基盤にして、豊かで輝く人生を追求・実現している状態」と定義し、顧客・従業員・社会に、心の健康、体の健康、環境の健康の3つの価値を提供し続ける企業になることを目指してまいります。120余年の歴史で培った信頼と技術を進化させ、あらゆる世代のウェルネスライフをサポートしてまいります。

基本方針
方針1)事業ポートフォリオの転換と構造改革による収益力の向上
<重点領域への経営資源集中>
高い収益性、成長性が見込める事業として、「inゼリー」など「in」ブランドを中心とするin事業、冷菓事業、通販事業、米国事業を選定し、これらを重点領域と定めました。重点領域への経営資源集中によって当社グループの成長を牽引してまいります。
<基盤領域による安定的なキャッシュ創出>
菓子食品事業など着実な売上高拡大と収益力向上を目指す事業を基盤領域と定め、重点領域への投資原資の安定的な創出に取り組んでまいります。
<探索・研究領域の取組み>
ウェルネスを基軸とした国内外におけるビジネスモデルの創造や商品開発など、新たな取組みを総称して探索・研究領域と定め、次世代成長を担う新事業の育成を目指してまいります。
<機能部門を中心とした構造改革による収益力の向上>
重点領域への投資原資を創出するとともに、様々な経営リスクに備えるべく、生産、物流、販売など機能部門を中心に、全社的に構造改革を実行していくことで、収益力のさらなる底上げに取り組んでまいります。
方針2)事業戦略と連動した経営基盤の構築
「2030経営計画」の達成に向けた事業戦略と連動し、「人」「技術」「キャッシュ」そして「デジタル」という経営に不可欠なリソースを最大限活かすことで経営基盤をより強固なものにしてまいります。併せてコーポレート・ガバナンスの改革を推し進め、経営の透明性向上を図ってまいります。
方針3)ダイバーシティ&インクルージョンの推進
「一人ひとりの個を活かす」という考えのもと、ダイバーシティ&インクルージョンを推進することで、多様な人材が活躍できる環境・風土をベースに社会課題の解決につながる新しい価値(イノベーション)を創出できる環境の整備を推し進めてまいります。
経営目標
「2030経営計画」における経営目標・指標は以下のとおりであります。
(注)貸方アプローチで算出 計算式:NOPAT÷投下資本(有利子負債+株主資本)
2030経営計画全体像

③ サステナブル経営
パーパスに基づくサステナブル経営を推進
現在、グローバル社会では、気候変動問題をはじめとする社会課題の深刻化やデジタル化の急速な進展など、企業活動に大きな影響を及ぼす環境変化が今までにないスピードで起き、将来の見通しに関する不確実性も高まっております。そのような中、パーパス・2030ビジョンを実現するには、ありたい姿に向けた課題を明確化したうえで、長期視点を持ち、全社グループを挙げて取り組んでいくことが必要であります。
当社グループは、創業時より社会への貢献を強く意識して事業を行ってまいりましたが、新たな企業理念の策定を機に、グローバル社会の一員としてSDGsの達成を含めた持続可能な社会の実現に向けた取組みを、これまで以上に積極的に進めていくことといたしました。このような取組みの積み重ねが、当社グループのビジネスをよりサステナブルなものとし、持続的成長と中長期的な企業価値の向上につながると考えております。
当社グループのマテリアリティを特定
当社グループでは2024中期経営計画策定に当たり、経営を取り巻く外部環境変化を踏まえて、マテリアリティの見直しを行いました。マテリアリティへの対応を通じて、社会価値の創造とレジリエントな経営基盤づくりを着実に進め、持続的成長を実現してまいります。
<当社グループのマテリアリティ特定プロセス>
外部環境変化を踏まえ、新たに抽出・整理した取り組むべき課題について、社外ステークホルダー16名(投資家3名、取引先5社、NGO1名、アドバイザリーボードメンバー3名、社外役員4名)と社内のキーメンバー11名で重要性評価を行いました。その結果を基に役員で議論を重ね、当社グループのマネジメントや業務とのつながりを総合的に考慮して統合し、社内決議及び取締役会報告を経て、5つのマテリアリティを特定いたしました。



④ 2024中期経営計画(2024-2026)
2025年3月期を初年度とする「2024中期経営計画」では、2030経営計画達成をより確実なものにするための2ndステージと位置づけ、キーメッセージを「飛躍に向けた成長軌道の確立」と定めスタートいたしました。
成長し続ける永続企業を目指して、重点領域の成長、経営基盤の強化に向け積極的な投資を継続するとともに、基盤領域及び機能部門を中心とした構造改革を推し進めております。ROICマネジメントの実践を通して、これらの戦略をスピードをもって引き続き実行することにより、成長性と資本収益性の好循環を生み出し、2030年に向けた成長軌道を確かなものにしてまいります。

⑤ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
重点領域による成長の牽引
「inゼリー」を中心としたin事業や「チョコモナカジャンボ」をはじめとした冷菓事業、「おいしいコラーゲンドリンク」などの通販事業の拡大、米国事業では「HI-CHEW」を中心としたブランド育成と事業基盤の強化など重点領域に経営資源を集中してまいります。
in事業においては、ゼリー飲料のトップランナーとして「inゼリー」のさらなるシーンとターゲットの拡大を進めるとともに次世代成長ドライバーを育成いたします。冷菓事業は独自価値を有する商品群の技術深耕により、強いものをより強くするとともに、価値提供領域を拡大していく「芽の創造」にも取り組むことで事業成長を実現してまいります。通販事業はこれまで蓄積してきた顧客データを活用し、1to1マーケティングの実践と顧客ニーズに応える商品・サービスの提供によって定期顧客の育成を図るとともに、DtoCの仕組みを構築し新たな事業領域への進出を目指します。米国事業においては、「HI-CHEW」のさらなる拡大と「Chargel」をはじめとした次世代成長ドライバーの育成を図るとともに、事業成長を支える基盤強化を着実に進めてまいります。
基盤領域の資本収益性向上
菓子食品事業においては、「ハイチュウ」「森永ビスケット」など主力ブランドへの集中によるカテゴリーポートフォリオの転換、保有資産を活かした売上高の拡大、維持更新投資の選択と集中による段階的アセットライト、コスト低減や販売費効率化、機動的な価格改定など高収益基盤の構築に向けて様々な取組みを実施してまいります。
さらなる成長に向けた取組み
ウェルネスを基軸に、国内では独自技術を活用した口腔ケア領域への挑戦や当社独自の素材であるパセノール™ビジネスの育成、海外では、ゼリー飲料やコラーゲンドリンクにおける市場創造に取り組み、次世代の成長を担う芽の創造と育成に取り組みます。また「HI-CHEW」においても、将来の新市場開拓として欧州での取組みを加速させてまいります。
機能部門の構造改革
製造部門のスマートファクトリー化のさらなる進化や市場変化を見据えた販売部門の組織最適化による生産性の向上、物流体制の変革により全社的な資本収益性の向上を図ってまいります。構造改革を支える人材育成の強化や職場環境のさらなる改善等、従業員のエンゲージメントを高める取組みを推進してまいります。
経営基盤の構築
成長軌道の確立に向け事業戦略を横断的に支える経営基盤を構築してまいります。
人事戦略では、「ダイバーシティ&インクルージョン」「人材育成・組織風土づくり」「健康経営の推進」の取組みを進め、人的資本経営を実践してまいります。また、R&D戦略ではグローバル視点の「既存技術深化」「新規技術探索」による価値の創出、DX戦略においてはデジタル経営基盤の拡張とAI技術等による業務高度化・効率化、経理財務戦略ではROICマネジメントの全社推進を行ってまいります。
⑥ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「2024中期経営計画」における最終年度2027年3月期の経営目標・指標は以下のとおりであります。
なお、2026年3月期よりすべての連結子会社の決算日を3月31日に統一する予定であります。これによる業績に与える影響は軽微の見込みであります。
(注)貸方アプローチで算出 計算式:NOPAT÷投下資本(有利子負債+株主資本)
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みの状況は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
2024年度に「ESG委員会」から「サステナビリティ委員会」、「分科会」から「部会」へと名称変更しております。
(1) サステナビリティ全般に関する事項
① ガバナンス
当社グループのサステナビリティに関するリスクと機会の分析、目標設定、進捗モニタリングについては、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」にて審議され、取締役会はその報告を受けるとともに、活動状況について取締役会が監督しております。サステナビリティへの取組みは、役員報酬の一部と連動しております。
多岐に渡るサステナビリティ活動を適切に推進するために、「サステナビリティ委員会」傘下には、各担当役員を委員長とした5つの部会を設置し、個々のテーマについて、管理・推進に取り組んでおります。

「サステナビリティ委員会」は2024年度に7回開催し、持続可能な原材料調達や、気候変動問題への対応など、全9議題を扱いました。「サステナビリティ委員会」での審議事項は、経営に関する様々な意思決定において考慮されております。
2024年度サステナビリティ委員会の開催実績と主な討議内容
② リスク管理
当社グループでは、代表取締役社長を委員長とする「トータルリスクマネジメント委員会」において、リスクの洗出しやレベル評価、リスクへの対応策検討と進捗モニタリングを行い、リスクの適切な管理・対応を実施しております。サステナビリティに関して特に重要とされるリスクについても、同委員会にて適切に管理しております。また、サステナビリティに関するリスク全般については、「サステナビリティ委員会」にて管理し、対応策の進捗モニタリングを実施しております。
両委員会で審議された内容は、取締役会へ報告され、取締役会はリスクの管理状況について監督しております。
パーパスに基づくサステナブル経営及びマテリアリティ特定プロセス
パーパスに基づくサステナブル経営及びマテリアリティ特定プロセスについては、
マテリアリティに対する主なアクション
特定した5つのマテリアリティと、マテリアリティに含まれる主な課題に対して、リスクと機会を分析したうえで、2030年に向けたアクションを設定し、取組みを進めております。
マテリアリティ1.世界の人々のすこやかな生活への貢献
マテリアリティ2.多様な人材の活躍
(人的資本に関する戦略並びに指標及び目標の詳細については、「(2) 人的資本に関する事項(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)」をご参照ください。)
マテリアリティ3.持続可能なバリューチェーンの実現
マテリアリティ4.地球環境の保全
(気候変動に関する戦略並びに指標及び目標の詳細については、「(3) 気候変動に関する事項」をご参照ください。)
マテリアリティ5.サステナビリティガバナンスの強化
④ 指標及び目標
特定したマテリアリティについて、2030年に向けた長期目標を設定しており、各目標に向けた進捗管理を実施しております。
(注)1 対象:当社が定義する<心の健康を深掘り><体の健康を加速><心の健康から体の健康へ進
化>した商品。人口割合はインテージ社SCI年間購入率(対象:全国15才~79才消費者)より
算出。今後、グローバルでのありたい姿の設定を検討
2 当社調べ
3 FSSC22000、SQF Codes edition 9、JFS-B規格等
4 ISO10002
5 対象:国内グループ連結(正規従業員)
6 対象:グループ連結(一部非正規従業員を含む)
7 食料卸売を除くグループ連結。紙は製品の包材が対象。
8 対象:国内の森永製菓㈱製品。紙は製品の包材が対象。
9 グループ連結
10 対象:国内森永製菓(株)単体
11 対象:原料受け入れから納品(流通)までに発生するフードロス(国内グループ連結、
原単位、2019年度比)。発生した食品廃棄物のうち、飼料化・肥料化等、食資源循環に戻す
ものを除き、焼却・埋め立て等により処理・処分されたものを「フードロス」と定義
12 Scope1+2(国内グループ連結、2018年度比)
13 対象:包装材料におけるプラスチック使用量(原単位、2019年度比、バイオマスプラスチック
への置換を含む)
(2) 人的資本に関する事項(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)
① ガバナンス
当社グループの人的資本に関するリスクと機会の分析、目標設定、進捗モニタリングについては、役員の人事やガバナンスに関しては、社外取締役を委員長とし、構成メンバーは社外取締役と代表取締役とする「役員人事報酬諮問委員会」、従業員の人事やガバナンスに関しては、代表取締役社長を委員長とする「人事委員会」にて審議され、取締役会はその報告を受けるとともに、活動状況について監督しております。
② リスク管理
当社グループでは、代表取締役社長を委員長とする「トータルリスクマネジメント委員会」において、リスクの洗出しやレベル評価、リスクへの対応策立案と進捗モニタリングを行い、リスクの適切な管理・対応を実施しております。人的資本に関して特に重要とされるリスクについても、同委員会にて適切に管理しております。また、人的資本に関するリスク全般については「人事委員会」にて管理し、対応策の進捗モニタリングを実施しております。両委員会で審議された内容は取締役会へ報告され、取締役会はリスクの管理状況について監督しております。
③ 戦略
<人的資本経営の取組み>
当社グループは企業理念のもと2030ビジョンを掲げ、成長し続ける永続企業(サステナブルカンパニー)を目指しております。これを実現する原動力は「人」そしてその力を最大限に引き出すために、ダイバーシティ&インクルージョン(以降D&I)の推進を、経営戦略の中核に位置づけております。
このように当社グループは、多様な人材が尊重され、それぞれの違いが価値として活かされる環境こそが、変化の激しい社会においてイノベーションや課題解決を生み出す源泉であると捉えております。そのため「一人ひとりの個を活かす」というD&Iの根幹となる考え方を基に、2030経営計画と連動した形で、人的資本の価値を最大化するための投資を継続的に行ってまいります。
人事戦略においては、会社と従業員の相互信頼を基盤に、D&Iの考え方を通じて、従業員の幸せを実現するとともに、エンゲージメントを高め、生産性を向上し社会に対して持続的な価値を提供し続けることを目指しております。そのために従業員の自律的な成長を促し、能力をいかんなく発揮できる環境を整備することで「働きがい」と「働きやすさ」の両立を追求してまいります。その上で「人材育成」及び「健康経営の推進」を重要戦略として位置づけ、多様な人材が活躍し、組織としての創造性と競争力を高める「人的資本経営」の実践に取り組んでまいります。

<重要戦略への取組み>
取組み1)人材育成
当社グループは全員活躍を標榜し、従業員一人ひとりが活躍できるような風土醸成を目指しております。2022年度より「プロティアン・キャリア(主体的かつ変幻自在なキャリア)」の考え方を中心に据え、従業員のキャリア自律を推進しつつ、「女性」「シニア」といった属性別の活躍に向けた施策も並行して実施しております。また、多様な人材の採用に積極的に取り組んでおります。
こうした考えのもと、「人材育成」については、「経営計画に連動した人材育成」と「個人のキャリア開発」との両立を目指しております。「経営計画に連動した人材育成」として、サクセッションプランの策定・推進、専門人材の確保・育成を実施するとともに、社内公募や主体的な学びの支援をはじめとした「個人のキャリア開発」を支援する取組み等を充実させております。
a.サクセッションプランの策定・推進
各階層候補者の継続的な育成に向けて、中長期的な視点で取組みを実施しております。
・役員候補
候補者を選抜し、8ヶ月間に及ぶプロフェッショナルコーチとの1対1のコーチングを通して、全社リーダーとしてのあり方などのテーマで、自ら気づきを得る機会を設けております。また、別の候補者を選抜し、グローバルスタンダードの経営哲学や価値観の習得を学ぶ外部研修に1年間派遣しております。それらにより、経営人材要件を備えた人材の継続的な育成に取り組んでおります。
・部長候補
他流試合型研修は、会社で選抜した従業員を派遣し、他社の選抜層と共に社会課題などのテーマについてディスカッションを行い、社会を捉える視野の拡大や外部との共創力の醸成等を図っております。また、森永レシピ研修は、問題解決のフレームワークを学ぶワークショップで、2019年度にスタートして以降継続して実施しており、累計で約250名の受講者がおります。2025年度も継続して実施してまいります。
・マネジャー候補
30代の選抜社員に対し、9ヶ月にわたって次世代リーダーに求められる要件開発に取り組む研修を実施しております。現在4期まで実施しており、累計の受講者は49名であります。2025年度は5期メンバーの選抜研修を実施いたします。また、次世代リーダー研修修了者の有志を対象に、当社に勤務しながら、ベンチャー企業でのプロジェクト業務に副業として短期間参画し、越境体験の中で変化対応力を身に着ける機会を設けております。
b.専門性の高い人材の確保と育成
各業務領域において専門性の高い人材の確保、並びに重点分野を中心に高度な戦略を実行可能な人材の育成に取り組んでおります。2024年度は海外展開強化に向け、グローバルビジネスに不可欠な多角的スキルを実践的に学ぶプログラムを追加導入いたしました。DX人材、経理財務CFO人材についても高度な戦略実行が可能な人材の要件を再確認し、2025年度に新たな育成プログラムを追加導入いたします。2025年度は各重点分野の人材要件に基づき、全社視点でプロフェッショナル人材の育成を実施してまいります。
c.自律的な能力開発を推進する主な取組み
・人材育成プログラムによる育成
当社が定義する6つの能力の現状を上司と本人で把握し、さらに伸長させていくための育成メニューと連動させることで、計画的な能力開発に取り組んでおります。具体的には、年に1回、上司と本人が自身の能力に関するアセスメントを実施し、現状把握と能力開発に向けた対話の場を設けており、2025年度も継続して実施してまいります。
・社内公募
従業員の手挙げによる異動を可能とする仕組みを整備し、一部の部署を対象に運用しております。2024年度は、マーケティング本部や新規事業開発部などを中心に、4つの部署で社内公募を実施いたしました。2025年度も継続して実施してまいります。
・従業員のキャリア自律の推進と主体的な学びの支援
従業員のWill・Can・Mustの重なりが増えることがキャリア自律を実現できている状態と捉え、様々な施策を組み合わせることでその支援を行っております。その上で、若手・中堅の従業員が自己理解の解像度を高め、変化に対応しようという意欲を持つことが重要と考え、2024年度は全社で約120名を対象に「30代向け対話型キャリアワークショップ」を実施いたしました。実施後のアンケートでは、『「こうありたい」という理想像を大切にしながら、日々努力を重ねていくことの重要性を理解した』という感想が寄せられるなど、前向きな反応が見られました。2025年度は対象となる部門やエリアを拡大し、継続してまいります。

また、2023年秋に自己啓発用社内プラットフォーム「CO-MORI CAMPUS」を開設いたしました。既に積極的に活用している従業員も多数おり、活用のすそ野が広がっております。一例としましては、研究所の従業員が講師役となって勉強会を企画し、参加者は商品に関する知識を学ぶことができたと同時に、参加者同士の人的ネットワークの広がりにつながりました。2025年度はさらなる活用促進に向けて、プラットフォームでの情報発信や周知強化に取り組んでまいります。

d.人材の多様化に向けた取組み
・新卒採用
2025年度から品質保証コースを加え、事務系総合職4コース(マルチタレント・セールススペシャリスト・経理・IT)、技術系総合職4コース(研究開発・生産マネジメント・製造エキスパート・品質保証)計8コースにて、個人のキャリア意向や適性を踏まえた人材の採用につながるよう取り組んでおります。
・キャリア採用
2024年度のキャリア採用人数は、全採用人数の30%となっております。今後も計画的に採用を継続してまいります。
・女性活躍推進
2024年度は、社外の女性経営者の基調講演から自身のキャリアモデルとなる要素を見つけ、キャリアの軸となる重要な価値観等を再発見することを目的とした女性に特化した研修を実施いたしました。また、営業部門の女性に焦点を当て、彼女たちがより働きやすくなるための環境整備を目的とし、プロジェクト発足に着手しました。さらに、2023年6月よりキャリア相談室を常設化し、育児と仕事の両立も含めた支援も継続しております。当社グループは女性だけでなく様々な背景を持つ多様な人材がより活躍できる労働環境の実現を図るため、D&Iポリシーに基づいた取組みを推進しておりますが、引き続き、女性活躍推進に向けた取組みも継続してまいります。
e.シニア活躍推進
2022年度より50代従業員にキャリア自律の研修を実施しており、Will×Can×Mustを自ら考え直すアンラーニング研修は3年間で累計230名が受講いたしました。アンラーニング研修の次ステップとして、自身の強みを市場性×希少性×再現性の観点で明確化する「自分の武器」探索ワークショップも数回試行し、多角的にキャリアを考え、その実現に向け前進するための施策を実施しております。自己研鑽の取組み事例増に加え、50代以上従業員に関する社内アンケートでも貢献度が毎年向上しており、一定の手応えを得られております。役職定年廃止などの人事制度改定を追い風とし、全社的なエイジズム解消に向けた取組みを継続的に実施いたします。
f.要員構成の最適化推進
中長期的視点で重点領域への人材配置のウェートを高めております。また、進捗のモニタリングを強化することで、実効性を担保し、会社としての生産性の向上を図っております。
g.職位者のマネジメント力・育成力の強化
2024年4月に、新たに職位を担うことになった従業員に対して実施する「新任職位者研修」の内容について、「目標達成責任」「人材育成責任」「労務管理責任」を網羅したカリキュラムへと変更いたしました。また、評価を含めた人材育成責任に関するインプットも強化することで、新任職位者のマネジメント力全般の底上げに取り組みました。
また各部門並びに職場において、D&Iの理解と行動を促進するため、様々な具体的施策を実施しております。2021年度からは、全社的な取組みとして、マネジメント層を対象にD&Iポリシー浸透研修を継続して実施しており、あわせて、D&Iにおいて重要な要素であるアンコンシャスバイアスに関する研修も行っております。さらに、多様性への理解を深めるためのセミナーやインプットの機会も提供しております。こうした全社的なD&I推進が一定の進展を見せる中、2024年度は、全社的な理解促進に加え、部門ごとの特性や課題に応じた支援を通じて、イノベーションや新たな価値創出につながる施策の検討を進めてまいりました。
取組み2)健康経営の推進
当社グループが永続企業(サステナブルカンパニー)として、心と体をすこやかにする食を創造し、誰もが笑顔で過ごせる持続可能な社会の実現に貢献していくためには、従業員一人ひとりが心身ともに健康であることが重要と考えております。そして、当社グループでは2030ビジョン「ウェルネスカンパニーへ生まれ変わる」を掲げており、下記のとおり、健康経営を推進しております。
a.基本方針と推進体制
・健康宣言
「森永製菓健康宣言」を指針に掲げ、従業員の「心と体の健康」を維持・増進する取組みを支援しております。従業員が健康でやりがいをもって働くことができる職場環境を整備することで、従業員の活力向上や生産性向上等を通した組織の活性化を実現し、当社グループの持続的な成長と社会により良い価値を提供することを目指しております。
・推進体制
代表取締役社長を議長とする人事委員会の傘下に、「健康管理最高責任者(Chief Health Officer;CHO)」、人事部、森永健康保険組合、統括産業医及び産業保健スタッフで構成される「健康推進部会」を設置し、理念や方針の策定、施策の検討・実施に関する意思決定を行っております。全国の主要事業所に配置される健康管理担当者、安全衛生スタッフが具体的な施策の展開を担い、従業員や家族の健康課題に継続的に向き合い、健康増進を進めております。

b.健康経営を推進する主な取組み
心の健康
・「こころく」
2023年度に従業員・顧客に「心の健康」を提供することを目指し、心が健康な状態を6つの要素で定義した「こころく」を策定いたしました。この「こころく」に基づき、従業員一人ひとりが日々の業務に落とし込み、自発的に行動している状態を推進することで、従業員エンゲージメントの向上と事業活動への貢献を目指しております。具体的には、当社グループ全従業員に対して、当社が目指す「心の健康」の価値提供に関する解説資料や動画を作成したり、ポジティブ心理学の専門家を招いて「解決志向セミナー」を開催し、ポジティブ感情やウェルビーイングを育む重要性を浸透させるなど、「心の健康」の推進と達成に向けた取組みを進めております。

・メンタルヘルス対策
「こころく」の理解・推進に向けた従業員向けセミナー等を開催しております。自己管理能力の向上やメンタルヘルスに対する意識を高めるため、職位者研修やセルフケアセミナーでの啓発を定期的に実施しております。また、ストレスチェックの受検率は制度導入以降95%以上を維持しており、従業員自らがストレスに気づく機会の提供と集団分析による環境改善に活かしております。さらに、社内外に専門的な相談窓口を設け、従業員が相談しやすい環境も整備しております。
体の健康
・全社健康増進イベント「ハビット」
従業員とご家族の健康づくりと生活習慣改善を目的に、一人ひとりが健康に関する目標を立てて運動や食生活改善などを行う森永健康保険組合独自の取組み「ハビット」は、今年で23回目を迎え、2024年度の参加者は2,200名を超えました。
・睡眠改善に向けた取組み
当社では、従業員の健康維持・増進の一環として「睡眠」に着目し、健康経営を推進しております。2023年度の社内アンケートでは、約4割の従業員が「睡眠で十分な休養が取れていない」と回答し、睡眠の質の向上が課題であることが明らかになりました。
この課題に対し、当社では自社製品「パセノールTM」を活用した取組みを実施しました。すべての従業員を対象に、ピセアタンノールを含む飲料15本を配布し、継続的に飲用してもらいました。その後のアンケート結果では、解析対象者の約75%以上が「ぐっすり眠れた」と実感するなど、良好な結果を得ることができました。

・エイジフレンドリーな職場づくり
職場には様々な年齢層の従業員がおりますが、年齢に関係なく、すべての従業員が活躍するエイジフレンドリーな職場づくりに力を入れております。たとえば、豊富な知識と経験を持つ55歳以上の従業員の安全とさらなる活躍を支援するため、当社グループの工場において教育や体力測定、当社独自の転倒予防体操を展開し、全員が安全かつ健康的に長く働き続けることを目指した取組みを行っております。
労働環境の整備
・ヘルスリテラシーの向上
外部機関から産業医を講師に迎え、毎年「健康フォーラム」を開催しており、2024年度は「肩こり・腰痛の予防・改善セミナー」「ストレスマネジメントとメンタルヘルス」をテーマに実施いたしました。全国各地より180名以上の従業員がオンラインで参加したほか、2023年度からはお取引先様も招待し開催しております。
・総労働時間短縮に向けた取組み
健康を損ないかねない長時間労働を発生させないため、労働時間管理の精度向上をはじめ様々な施策を実施しております。また労働組合とともに「労働時間対策労使会議」を開催し、現状把握と対策について意見交換を行い、労働環境の改善に努めております。2024年度からは管理職も労働時間管理の対象に含め、取組み範囲を拡大しております。
・労働安全衛生の取組み
企業経営の基盤である労働安全衛生活動を「労働安全衛生方針」に沿って行っております。年齢・経験・言語・雇用関係・働く場所等の一人ひとりの違いにかかわらず、安全で働きやすい職場環境の維持・向上を目指しております。具体的には、従業員の安全と健康を最優先に考えた定期的な安全教育の実施や、職場の安全管理の徹底、事故や災害の予防活動等に取り組んでおります。
取組み3)外部評価
・「健康経営※優良法人2025(大規模法人部門)」認定
当社は「健康経営※優良法人2025(大規模法人部門)」に認定され、今回で8年連続の認定となり上位500法人である「ホワイト500」企業としての認定も受けました。
※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標であります。
・スポーツ庁「スポーツエールカンパニー※2025」認定
2023年度より3年連続で、2025年度も「スポーツエールカンパニー※」の認定を取得いたしました。ウェルネスカンパニーへの生まれ変わりを加速させるためにも、今後も継続的な認定取得を目指してまいります。
※スポーツエールカンパニーとは、スポーツ庁が従業員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な
取組みを行っている企業を毎年認定しているものであります。
取組み4)従業員との対話
従業員のエンゲージメントを高める取組みとして、経営トップと従業員との対話を大切にしております。経営トップが各事業所を訪問し、従業員と対話し、従業員の理解を深めるよう取り組んでまいりました。2021年度から2024年度にかけて、海外グループ会社を含む約2,300名、計129回にわたり、従業員とのディスカッションを行うことでトップの想いを共有しております。2025年度以降も新たな経営体制のもと重要な取組みとして従業員との対話を継続していきたいと考えております。
④指標及び目標
(注)1 対象範囲:国内グループ連結
(注)2 対象範囲:森永製菓㈱単体
(注)3 対象範囲:森永製菓㈱工場及び国内生産グループ会社
度数率:100万延べ労働時間当たりの労働災害による死傷者(不休災害による傷病者は含まず)
をもって労働災害発生の頻度を表しております。
(3) 気候変動に関する事項
当社グループでは、気候変動は事業の継続や持続的な成長に影響を及ぼす重要な課題と認識しております。金融安定理事会(FSB)により設置されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に2022年4月に賛同し、気候変動シナリオ分析を行うなど、TCFD提言への対応を進めております。
また当社グループは、多くの自然資本に依存して事業を行っており、自然資本・生物多様性の維持と保全も重要な取組みテーマであります。気候変動と自然資本・生物多様性の問題は密接に関わっているため、それらを統合的に捉えて対応を進めております。
① ガバナンス
気候変動・自然資本・生物多様性に関する検討については、サステナビリティ委員会の部会である「TCFD・TNFD部会」にて実施しております。TCFD・TNFDの各提言に沿って、依存と影響やリスクと機会の分析、対応策の検討等を実施しております。同部会は、サステナブル経営推進部の担当役員である取締役上席執行役員が委員長を務めております。検討結果については、サステナビリティ委員会で審議され、取締役会はその報告を受けるとともに、活動状況について監督しております。

② リスク管理
当社グループでは、代表取締役社長を委員長とする「トータルリスクマネジメント委員会」において、リスクの洗出しやレベル評価、リスクへの対応策検討と進捗モニタリングを行い、リスクの適切な管理・対応を実施しております。気候変動に関するリスクについても、同委員会にて、経営リスクとして適切に管理し、対応を推進しております。また、TCFD・TNFDの各提言に沿った検討については、「TCFD・TNFD部会」において実施し、その結果を「サステナビリティ委員会」にて審議しております。両委員会で審議された内容は、取締役会へ報告され、取締役会はリスクの管理状況について監督しております。
以上により、全社のリスクを経営で適切に管理し、事業運営を行っております。
③ 戦略
気候変動に関する分析
当社の国内食料品製造事業について、4℃シナリオ、2℃シナリオ及び1.5℃シナリオを設定し、2030年及び2050年の影響を分析いたしました。気候変動によるリスクと機会の特定及び評価、またそれらのリスクや機会が当社グループのビジネス・戦略・財務に及ぼす影響の分析にあたって、政府機関及び研究機関が開示するシナリオを参照いたしました。
※参照したシナリオ等
<当社グループの重要度の高いリスク>
(注)財務影響が及ぶ売上高規模と費用規模、影響が及ぶ期間等について評価し、最終的な重要度を判定
<当社グループの重要度の高い機会>
(注)1 財務影響が及ぶ売上高規模と費用規模、影響が及ぶ期間等について評価し、最終的な重要度を判定
2 スマートファクトリー化:IoT・AI技術等を利用して、技術と製造設備のデジタルデータを融合
し、安定稼働・生産効率を向上させる取組み
3 「1チョコ for 1スマイル」:対象商品の売上高の一部でカカオ生産国の子どもたちの教育環境改善
やカカオ農家の収入向上等を支援する活動
自然資本に関する分析
TNFDフレームワークとTNFDが提唱するLEAPアプローチを参考とし、当社グループの自然資本への依存と影響、リスク・機会の分析等を実施しております。
当社グループの主な事業である食品の製造に関する依存と影響と、当社グループの主要な原材料のうち、カカオ、パーム、木材(紙)の生産について依存と影響を確認いたしました。外部ツールを利用して、依存16項目と影響9項目の計25項目を評価し、依存度・影響度が大きい、やや大きいと評価された19項目の結果が下図であります。食品の製造については、特に水の供給に依存しております。カカオやパーム、木材(紙)の生産においては、良質な土壌や水、気候の調整等の多くの自然資本に依存し、また、農地の拡大や森林破壊等によって生物多様性に影響を及ぼす可能性があることをあらためて理解いたしました。

④ 指標及び目標
当社グループでは、気候変動リスクの緩和と自然資本への影響低減に向けて、以下目標に取り組んでまいります。
●2050年度 GHG排出量 実質ゼロ(注)1
●2030年度 CO₂排出量 30%削減(注)2
●2030年度「inゼリー」のプラスチック使用量 25%削減(注)3
●2030年度 フードロス 70%削減(注)4
●2030年度 持続可能な原材料調達:カカオ豆、パーム油、紙において100%(注)5
(注)1 グループ連結
(注)2 Scope1+2(国内グループ連結、2018年度比)
(注)3 対象:包装材料におけるプラスチック使用量(原単位、2019年度比、バイオマスプラスチックへの置
換を含む)
(注)4 対象:原料受け入れから納品(流通)までに発生するフードロス(国内グループ連結、原単位、2019
年度比)。発生した食品廃棄物のうち、飼料化・肥料化など、食資源循環に戻すものを除き、焼却・
埋め立て等により処理・処分されたものを「フードロス」と定義
(注)5 食料卸売を除くグループ連結。紙は製品の包材が対象
(4) 人権の尊重に関する事項
当社グループでは、事業を行う過程で直接または間接的に人権に影響を及ぼす可能性があることを認識しており、ビジネスに関わるすべての人々の人権を尊重する責任を果たすために、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく「森永製菓グループ人権方針」を 2023年に取締役会決議により改定し、本方針に基づいて人権尊重に取り組んでおります。
① ガバナンス
人権の尊重に関する取組みについて、「コンプライアンス委員会」と「サステナビリティ委員会」にて対応を議論する体制としております。当社グループ内で懸念が生じた場合及び匿名報告が可能なヘルプラインに情報が届いた場合はコンプライアンス委員会へ報告し、社外で発生した場合はサステナブル経営推進部が情報を取りまとめてサステナビリティ委員会に報告いたします。取締役会は、両委員会から報告を受けるとともに、活動状況について監督しております。
「サステナビリティ委員会」の傘下に「人権部会」を設置しており、「人権部会」は、サステナブル経営推進部の担当役員である取締役上席執行役員が委員長を務めております。

② リスク管理
当社グループでは、代表取締役社長を委員長とする「トータルリスクマネジメント委員会」において、リスクの洗出しやレベル評価、リスクへの対応策検討と進捗モニタリングを行い、リスクの適切な管理・対応を実施しております。人権に関するリスクについても、同委員会にて、経営リスクとして適切に管理し、対応を推進しております。また、従業員に対しては、コンプライアンス・アンケートを実施し、リスクの把握に努めております。人権デューディリジェンスの評価結果については、「サステナビリティ委員会」にて審議しております。以上の委員会で審議された内容は、取締役会へ報告され、取締役会はリスクの管理状況について監督しております。
以上により、全社のリスクを経営で適切に管理し、事業運営を行っております。
③ 人権尊重に向けた取組み
当社グループでは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権方針の策定、人権デューディリジェンスの実施、救済メカニズムの構築を推進しております。

a.人権方針改定
2023年に、有識者・専門家にご意見を伺いながら、「森永製菓グループ人権方針」を改定し、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」をはじめとする国際的な枠組みと規範を尊重することを宣言いたしました。その中で、差別・ハラスメント・児童労働・強制労働・人身取引の排除に加え、生活賃金を満たす賃金の実現に努めること、採用と処遇におけるジェンダーをはじめとする差別の排除、子どもに負の影響を及ぼす広告を実施しないこと等を明示しております。
b.人権デューディリジェンスの実施
2022年に、当社グループの事業が及ぼす人権への負の影響について机上評価を実施いたしました。現時点では、当社グループの内外での製造過程において、労働安全衛生や外国人労働者の権利への配慮等がこれまで以上に求められていることや、原材料においては、カカオ生産地での児童労働以外にも賃金や労働時間に関連した様々な課題が潜在することを、改めて認識いたしました。2024年度は、グループ内の工場においてCSRセルフアセスメント、原材料サプライヤーの皆様にはCSR調達アンケートを実施し、人権・環境等への取組み状況の把握を行いました。
また、企業活動における人権リスクを防止・軽減するため、2022年度は役員、2024年度は従業員を対象に「ビジネスと人権」の研修を実施いたしました。引き続き、机上評価にて特定された負の影響への対応等に取り組んでおります。
c. 救済メカニズムの構築
2022年に設立された一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)に発足時メンバーの一員として加入し、その苦情通報の仕組みと専門家の助言の活用を開始しております。JaCERが提供する、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「対話救済プラットフォーム」を通して、既存のヘルプラインに加えて社外や海外からも通報を受け付けることが可能になりました。通報者に対しては、専門家の助言を受けながら適切な対応に努め、ビジネスと人権の課題解決に向けて取り組んでおります。
(1) リスクマネジメント体制
当社グループは、事業活動に潜在する様々なリスクを把握し、トータルリスクマネジメントの理念のもとリスクに対し適切な対応を図るべく取り組んでおります。事業活動に潜在するリスクに対応するため、内部統制システムの一環として「トータルリスクマネジメント規程」を制定し、想定されるリスクを分類・評価して平常時における予防策を実施しております。またトータルリスクマネジメントを組織横断的に検討・主管・実施する組織として、取締役が参加する「トータルリスクマネジメント委員会」を設置し、協議内容を取締役会に報告しております。
(2) リスクの把握と管理
当社グループは、「トータルリスクマネジメント規程」に基づき、想定リスクの把握とリスクの影響度・発生頻度の評価を行い「トータルリスクマップ」を作成し、リスク対応の優先順位を見直し・決定をしております。優先的に対応すべきリスクは、リスク対応策の立案部門と実施部門を明確にし、立案部門はリスク対応策の立案と実施状況のモニタリング、改善策の策定を行い「トータルリスクマネジメント委員会」に報告する、一連のPDCAを回しております。また災害発生時においても、事業継続を確実に行うために、主要商品について事業継続マネジメント(BCM)の円滑な運用が図れるよう定期的に見直しを行い、その結果を「トータルリスクマネジメント委員会」に報告しております。
◆リスクマネジメント体制図

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの事業、業績及び財政状態等に影響を与え、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスク事項には、次のようなものがあります。
なお、本事項の文中に将来に関する事項が含まれており、有価証券報告書提出日(2025年6月26日)現在において判断したものであります。
(3) 短期・中期の視点から事業、業績及び財政状態等に影響を与える可能性のある重要なリスク
(4) 中期・長期の視点から事業、業績及び財政状態等に影響を与える可能性のある重要なリスク
なお、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がある要素は、上記だけに限定されるものではありません。
(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。
詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 」に記載のとおりであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
■2025年3月期実績

(注)1 EBITDAは簡易版を使用→営業利益+減価償却費
2 2025年2月10日発表値
3 在外子会社換算レートは、1米ドル=151.58円
■2025年3月期実績:セグメント情報

(注)1 当社グループの経営管理の実態を明瞭に表示するため、2025年3月期より区分・集計方法を変
更。2024年3月期の数値は当該変更を遡及適用し、変更後の区分・集計方法により作成したもの
を記載。
2 inブランドを冠したキャンディ、チョコレート等の商品は菓子食品事業、アイスは冷菓事業に
含む。
3 中国・台湾の米国向け輸出に係る利益を含む。
4 現地通貨ベースの売上高前期比は101.3%
② 財政状態の状況
財政状態は次のとおりであります。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は、1,046億6千7百万円となり、前連結会計年度末に比べ133億7千8百万円減少しております。これは主に、商品及び製品が44億5千2百万円、原材料及び貯蔵品が48億8千5百万円増加した一方で、未払法人税、配当等の支払や自己株式取得により現金及び預金が138億3千8百万円、受取手形及び売掛金が32億8千3百万円減少したこと等によるものであります。なお、短期運用しておりました合同運用指定金銭信託が償還されたことにより有価証券が減少しております。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は、1,053億1千9百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億7千9百万円減少しております。これは主に、建設仮勘定が21億1千6百万円、DXプロジェクトの進捗によりソフトウエアが25億7千5百万円増加した一方で、建物及び構築物(純額)が14億6百万円、無形固定資産のその他に含まれているソフトウエア仮勘定が5億9百万円、投資有価証券が29億6千6百万円減少したこと等によるものであります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は、518億8千9百万円となり、前連結会計年度末に比べ125億4千7百万円減少しております。これは主に、支払手形及び買掛金が13億9千4百万円、未払金が18億4千3百万円、未払法人税等が42億1千8百万円、流動負債のその他に含まれる設備関係未払金が40億4千7百万円減少したこと等によるものであります。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は、257億3百万円となり、前連結会計年度末に比べ8億5千1百万円減少しております。これは主に、環境対策引当金が1億4千6百万円、退職給付に係る負債が5億9千5百万円減少したこと等によるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、1,323億9千3百万円で、前連結会計年度末に比べ2億6千万円減少しております。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益177億1千万円の計上による増加や為替換算調整勘定が18億3千7百万円増加した一方で、株主還元の強化により、配当金の支払い49億8千7百万円や自己株式の取得124億6千万円により減少したほか、投資有価証券の売却等によりその他有価証券評価差額金が18億4千9百万円減少したこと等によるものであります。
以上により自己資本比率は、62.3%となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ162億5千6百万円減少し、308億4千5百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金の増加は107億6千3百万円となりました。主な内容は、棚卸資産の増加額85億3千4百万円、法人税等の支払額101億2千3百万円といった資金減少の一方、税金等調整前当期純利益242億8千4百万円、減価償却費99億1千8百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金の減少は98億3千7百万円となりました。主な内容は、有形固定資産の取得による支出135億7千9百万円、投資有価証券の売却による収入42億9千8百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金の減少は180億8百万円となりました。主な内容は、自己株式の取得による支出124億6千万円、配当金の支払額49億8千7百万円によるものであります。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 金額は、販売価格(内部取引価格を含む)によっております。
2 「食料卸売」、「不動産及びサービス」及び「その他」のセグメントについては、該当事項はありません。
主要製品の受注生産は、行っておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
また、従来、「通販事業」の海外向けの売上高を「中国・台湾・輸出等」の区分に含めておりましたが、当連結会計年度の期首より「通販事業」の区分に含める方法に変更したことに伴い、以下の比較分析において区分変更後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。
当連結会計年度の我が国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド消費の増加により緩やかな回復基調で推移しました。一方で、原材料価格の高騰や為替影響による物価上昇が続く中、消費者の節約志向の高まりから、食料品などの非耐久財を中心に消費の減速が見られます。また、不安定な国際情勢や米国の関税政策による世界経済の後退懸念を含め、事業活動を取り巻く環境は依然として先行きの不透明な状況が続いております。
このような中、当社グループは「2030経営計画」の達成に向けて、その道筋をつくる2ndステージとして「2024中期経営計画」を策定し、1期目として飛躍に向けた成長軌道の確立に向けて成長性と資本収益性の好循環を生み出すべく、各事業の強化を図ってまいりました。
その結果、売上高は、主に菓子食品事業、冷菓事業の好調が牽引し、2,289億5千7百万円と前年同期実績に比べ155億8千9百万円(7.3%)の増収となりました。
損益については、原材料価格等の高騰影響がありましたが、増収及び価格改定を中心とした打ち返しにより、営業利益は前年同期実績に比べ9億9千3百万円(4.9%)増益の212億6千6百万円、経常利益も前年同期実績に比べ12億6千5百万円(6.0%)増益の223億4百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は政策保有株式の売却に伴う特別利益計上などにより前年同期実績に比べ25億5千6百万円(16.9%)増益の177億1千万円となりました。
■営業利益増減分析

(注)1 当連結会計年度の実績調達レートは1米ドル150.55円、前連結会計年度は137.12円
2 売上原価計上分のみ
セグメントの業績は、次のとおりであります。
<食料品製造>
菓子食品事業
ビスケットカテゴリーでは、「森永ビスケット」は、9月に実施した価格改定以降一時的な店頭露出機会の減少もあり、店頭回転に鈍化が見られましたが、年度末にかけて概ね想定通りに回復しております。また、発売30周年を迎える「チョコチップクッキー」をフックとしたプロモーションや新商品の発売が寄与し、ブランド全体で前年同期実績を上回りました。
キャンディカテゴリーでは、「ハイチュウ」は、発売50周年を切り口としたプロモーションや新商品の発売などの需要喚起策により国内需要の好調が継続したことに加え、インバウンド需要の獲得も寄与し、前年同期実績を大きく上回りました。「森永ラムネ」は、受験シーズンに向けたプロモーションと店頭露出の強化により、パウチ形態の「大粒ラムネ」、ボトル形態いずれも好調が継続し、前年同期実績を大きく上回りました。
チョコレートカテゴリーでは、「カレ・ド・ショコラ」は、2月に実施した価格改定以降もハイカカオの需要拡大継続により「カカオ70」が好調に推移し、前年同期実績を上回りました。「ダース」は、2月に実施した価格改定以降も基幹品の「ダース<ミルク>」「白いダース」が堅調に推移し、前年同期実績を上回りました。「チョコボール」は、店頭露出の強化に取り組むとともにメディア露出による話題化も寄与し、3月に実施した価格改定以降も好調が継続し、前年同期実績を上回りました。
食品カテゴリーでは、「森永ココア」は、引き続き健康ブランドとして需要喚起に取り組み、2月の価格改定以降も「純ココア」を中心に好調が継続し、前年同期実績を大きく上回りました。「森永甘酒」は、前年同期実績を下回りました。
なお、原材料等のコストアップに対する収益改善策として、4月にキャンディ及びチョコレートカテゴリーの一部商品、9月にビスケット及びチョコレートカテゴリー、ココアや甘酒の一部商品、2・3月にチョコレートカテゴリー及びココアの一部商品において価格改定・内容量の減量を実施しております。
これらの結果、菓子食品事業全体の売上高は844億3千6百万円と前年同期実績に比べ52億4千2百万円(6.6%)増となりました。
損益については、増収及び価格改定効果がありましたが、カカオ原料の高騰の影響が大きく、営業利益は前年同期実績に比べ1億3千1百万円(3.3%)減益の39億1千7百万円となりました。
冷菓事業
「ジャンボ」グループは、「チョコモナカジャンボ」は、ブランドの価値である“パリパリッ食感”をさらに強化すべく3月に品質リニューアルを実施しました。「チョコモナカジャンボ」の品質活性化と「バニラモナカジャンボ」のバニラアイスへのこだわりをパッケージデザインの変更並びにTVCMを通じて訴求し、購買喚起に取り組みました。その結果、グループ全体で前年同期実績を上回りました。「板チョコアイス」は、「白い板チョコアイス」の発売再開や断続的なプロモーションにより、購買層がさらに拡大し、前年同期実績を大きく上回りました。「ザ・クレープ」は、チャネル限定新商品の発売による話題化が基幹品の売上拡大にも寄与し、前年同期実績を大きく上回りました。「アイスボックス」は、お酒の割材としての活用を訴求するプロモーション展開を引き続き実施し、秋冬の需要喚起と店頭での取り扱い拡大につなげ、好調が継続しました。
なお、原材料等のコストアップに対する収益改善策として、主力品について、9月に価格改定を実施しております。
これらの結果、冷菓事業全体の売上高は493億6千万円と前年同期実績に比べ39億6千6百万円(8.7%)増となりました。
損益については、増収及び価格改定効果がありましたが、カカオ原料の高騰の影響が大きく、営業利益は前年同期実績に比べ5億6千万円(11.6%)減益の42億5千8百万円となりました。
in事業
「inゼリー」は、引き続き受験生をターゲットとしたプロモーション展開と期間限定品をきっかけとした店頭露出の強化により購買喚起に取り組みましたが、前年の受験シーズンに「エネルギーブドウ糖」の売上高を大きく伸ばした反動もあり、ブランド全体で前年同期実績並みとなりました。「inバー」は、プロテイン摂取手段の多様化による競争環境の激化に伴いプロテインバー市場が漸減する中、販売什器を活用した店頭展開強化や消費者キャンペーンにより購買喚起に取り組みましたが、前年同期実績を下回りました。
なお、原材料等のコストアップに対する収益改善策として、原価低減の取組みや、一部商品において、12月に価格改定を実施しております。
これらの結果、in事業全体の売上高は313億3千9百万円と前年同期実績に比べ2億4千万円(0.8%)減となりました。
損益については、収益改善策の取組みにより、営業利益は前年同期実績に比べ6億6千6百万円(10.0%)増益の73億円となりました。
通販事業
「おいしいコラーゲンドリンク」は、オンライン広告の強化により顧客基盤の拡大に取り組みましたが、節約志向の高まりなどから新規顧客獲得数は伸び悩み、前年同期実績を下回りました。通販事業の第2の柱候補の商品である「おいしい青汁」は、着実に売上高を拡大しております。
これらの結果、通販事業全体の売上高は111億8千4百万円と前年同期実績に比べ2億1千5百万円(2.0%)増となりました。
損益については、顧客獲得効率の状況に応じて広告投資をコントロールしたことにより、営業利益は前年同期実績に比べ2億7千2百万円(131.4%)増益の4億7千8百万円となりました。
事業子会社
㈱アントステラは、原材料等のコストアップに対する収益改善策として価格改定を実施しましたが、全国の直営店において量り売りや詰め放題の販売が引き続き好調に推移したほか、大手量販店の銘店コーナーへの出店増加も寄与し、前年同期実績を上回りました。森永市場開発㈱は、円安を背景とした訪日外国人の増加により、テーマパークにおける販売が堅調に推移し、前年同期実績を上回りました。
これらの結果、事業子会社全体の売上高は109億5千4百万円と前年同期実績に比べ11億7千7百万円(12.0%)増となりました。
営業利益は前年同期実績に比べ2億3千9百万円(28.4%)増益の10億8千万円となりました。
[国内における主な商品の前年同期比 (単位:%)]
※表中の数値は国内販売実績にて算出
米国事業
「HI-CHEW」は、インフレによる消費低迷により、引き続きコンビニチャネルでの販売に影響がありましたが、既存品の容量ラインアップの拡充や新商品の発売により、取り扱いSKU数の増加に取り組んだほか、新たな販売チャネルへの取組みを強化し、前年同期実績を上回りました。ゼリー飲料「Chargel」は、新たなタグライン「Thirst-Quenching Snack」(喉の渇きも癒せるスナック)の訴求による商品理解促進や日常的なスポーツシーンにおける需要獲得に取り組みました。リアルチャネルでは引き続き米系小売業への導入促進に取り組み、ECチャネルでは着実に販売を伸ばしております。
これらの結果、米国事業全体の売上高は209億5千6百万円と前年同期実績に比べ17億6千9百万円(9.2%)増となりました。
損益については、増収効果がありましたが、戦略的なマーケティング投資により、営業利益は前年同期実績に比べ1億7千6百万円(5.4%)減益の30億6千4百万円となりました。
中国・台湾・輸出等
中国では、「HI-CHEW」の販売が引き続き好調に推移したほか、日本製品の輸入販売も堅調に推移しました。台湾では、「HI-CHEW」が5月に実施した価格改定以降、店頭回転が苦戦したものの、プロモーションや新商品の発売が寄与し、足元では復調しております。「キャラメル」は引き続き好調に推移しました。探索・研究領域である東アジア・東南アジア・オセアニア地区や欧州においても、「HI-CHEW」の売上高を着実に拡大しております。
これらの結果、中国・台湾・輸出等全体の売上高は90億6千万円と前年同期実績に比べ15億6千8百万円(20.9%)増となりました。
営業利益は前年同期実績に比べ3千万円(6.5%)増益の4億9千6百万円となりました。
以上の結果、<食料品製造>の売上高は2,175億7千8百万円と前年同期実績に比べ6.8%増となりました。セグメント利益は198億6千2百万円と前年同期実績に比べ4千7百万円の減益となりました。
<食料卸売>
原材料等のコストアップに対する収益改善策として、当期に複数回の価格改定を実施しましたが、主力商品を中心に需要を拡大し、販売が好調に推移しました。
これらの結果、食料卸売セグメントの売上高は86億9千万円と前年同期実績に比べ17億8千1百万円(25.8%)増となりました。セグメント利益は前年同期実績に比べ10億6千4百万円(282.0%)増益の14億4千1百万円となりました。
<不動産及びサービス>
売上高は、18億7千万円と前年同期実績に比べ4千1百万円(2.1%)減となりました。セグメント利益は8億1百万円と前年同期実績に比べ3千3百万円(3.9%)の減益となりました。
<その他>
売上高8億1千7百万円、セグメント利益1億6千5百万円であります。
② 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態の詳細については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。
キャッシュ・フローの詳細については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
<2024中期経営計画初年度(2024年度)の進捗>
当社グループは「2030経営計画」の達成に向けて、その道筋をつくる2ndステージとして「2024中期経営計画」を策定し、飛躍に向けた成長軌道の確立に向けて成長性と資本収益性の好循環を生み出すべく、各事業の強化を図っております。その1期目にあたる2024年度の売上高は、前年同期実績に比べ7.3%の増収となり4期連続過去最高を達成いたしました。損益については、営業利益も過去最高を更新し、また親会社株主に帰属する当期純利益は政策保有株式の売却に伴う特別利益計上などもあり、大幅に伸長いたしました(前年同期比+16.9%)。期首計画を大幅に上回る原材料価格等の高騰の影響や中長期成長を見据えた無形投資を継続したことで営業利益率はやや低下したものの、増収及び価格改定といった打ち返し等により、売上成長と増益を継続できました。
基盤領域の菓子食品事業、重点領域の中では冷菓事業が主に増収を牽引した一方、重点領域であるin事業、通販事業及び米国事業の成長(為替影響除く現地通貨ベース)はやや踊り場となりました。その結果、重点領域売上高比率は前期と比較してやや低下いたしましたが、海外売上高比率は事業成長に加え為替影響もあり、上昇傾向を継続いたしました。事業ポートフォリオ転換を見据える中で、重点領域売上高比率の低下は課題であり、収益性の高いin事業、グローバル戦略の要である米国事業を中心に、改めて成長軌道を確立していく必要があると認識しております。
また、2024年度のROEは13.5%と2022年度を底にV字回復し、中期経営計画の目標値水準を上回っております。親会社株主に帰属する当期純利益の伸長に加え、株主還元の強化や政策保有株式などの非事業資産の売却等による資産圧縮策が寄与いたしました。前年度以降の株価水準の切りあがりと、10期連続の増配により株主総利回り(TSR)は前年に引き続き100%を超える水準(125%)となりました。




<森永製菓グループの財務課題>
2023年3月に東京証券取引所より、プライム市場及びスタンダード市場の全上場会社を対象に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について要請がありました。
企業価値向上を資本市場の視点で評価する指標の一つである株価純資産倍率(PBR)の当社グループにおける中長期的推移をみると、2018年度より下降傾向が継続しておりましたが、2022年度を底に株価上昇と資本収益性の回復を受けて上昇基調に転じ、2024年度末においては約1.6倍となりました。今後も持続的な企業価値向上は当社グループにとって最も重要な財務課題と認識し取り組んでまいります。
PBRはROEとPERで構成されますが、当社グループのROEについては、2010年代半ば以降、相対的に収益性の高い冷菓事業やin事業等の成長を促進し、事業ポートフォリオを変化させたことにより、概ね2桁水準を維持しております。直近の数年間の推移をみると、新型コロナウイルス感染症の拡大や原材料価格等の高騰といった急激な外部環境の変化もあり、2022年度には7.9%まで低下しましたが、増収及び価格改定効果等によって事業収益性の維持・改善を図るとともに、株主還元策の強化並びに政策保有株の縮減や保有不動産の売却などを通じて、手元流動性水準の調整や非事業資産の圧縮を進めたことによって総資産回転率が着実に上昇いたしました。その結果、2024年度のROEは13.5%となりV字回復いたしました。
当社グループでは、CAPMによる理論値やPERの水準から株主資本コストを7~8%程度と推計しております。ROEの目標値を2024中期経営計画では、12%以上、2030経営計画では15%以上と定め、東証プライム市場の企業の中で、高ROEのグループに加わるとともに、中長期的に安定して株主資本コストの水準を上回ることを目指しております。事業収益性の強化によって売上高当期純利益率をさらに改善するとともに、中長期的な事業成長のための投資資金需要を考慮しつつ、財務レバレッジを中長期的に調整してまいります。
一方のPBRの構成要素であるPERについては、直近数年間の推移をみると低下傾向であります。将来の事業成長に対する資本市場の期待をさらに高めること、環境変化に強い事業ポートフォリオの構築やサステナブル経営の徹底による長期事業リスクの低減を図ることが重要と認識しております。





<財務戦略骨子>
当社グループは、積極的な成長投資と安定した財務基盤を維持することにより、持続的な企業価値向上と継続的かつ安定的な株主還元を実現していくことを基本方針としております。2030経営計画の達成に向けて、「資本コストや株価を意識した経営」を実践し、企業価値を最大化することですべてのステークホルダーに貢献することを目指してまいります。

当社グループでは、企業価値(株主価値)を示す代表指標の一つであるPBRに着目し、その構成要素であるROEの向上とPERの上昇を狙いとして、3つの主要財務戦略を実行いたします。
戦略①は「ROICマネジメントの実践による成長力と資本収益性の向上」であります。ROIC水準の中長期的な向上を目指し、2024中期経営計画のテーマである「飛躍に向けた成長軌道の確立」を果たすべく、ROICマネジメントに基づき、「成長性」と「資本収益性」の好循環の実現に取り組んでまいります。
戦略②は「財務安全性の確保と資本コストの低減」であります。当社グループは財務ガイダンスに基づき一定水準の財務安全性と投資余力を確保することを基本方針としております。これを前提に、最適な財務レバレッジ水準へのコントロールを行うとともに、環境変化に強い事業ポートフォリオの構築やサステナブル経営の徹底を通じて長期事業リスクの低減を図ることで資本コストの低減に努めてまいります。
戦略③は「株主還元の強化」であります。経営基盤の盤石化のもとに、継続的かつ安定的な株主還元を実施し、ROEやPERの改善につなげてまいります。

<戦略① ROICマネジメントの実践による成長力と資本収益性の向上>
当社グループは、中長期的な企業価値向上を図るために、ROICマネジメントを実践し、最適な事業ポートフォリオを形成することで「成長軌道の確立」に向けた成長性と資本収益性の好循環を生み出します。そのため「成長性」と「資本収益性」の2軸で事業を分析し、各事業の中長期的な戦略・施策を決定いたします。成長を加速する事業、資本収益性を改善する事業を見定め、投資先・投資規模を含めて、経営資源の最適な配分を行ってまいります。
主に2030経営計画で定める重点領域に対して、事業提携やM&A等のインオーガニック成長や当社のマテリアリティ対応による新たな事業機会の創出を含めて、戦略的な成長投資を最優先に実施し、飛躍的な成長を促してまいります。一方、相対的にROIC水準が低い基盤領域等の事業においては、主に収益性や投下資本効率の改善を通じて「資本収益性」の改善に取り組みます。具体的には、保有資産を活かした売上高拡大を志向しつつ、維持更新投資の選択と集中により、段階的なアセットライトを推進してまいります。同時に、コスト低減、機動的な価格改定等の収益性改善施策を展開いたします。
これらを通じて、2024中期経営計画における各事業のミッションや具体的な取組みの考え方を明確化するとともに、成長性と資本収益性の中期目標を事業毎に定めました。同中期経営計画期間においては、重点領域は成長軌道の確立に向けて、成長投資先行の取組みとなります。基盤領域である菓子食品事業については資本収益性の改善を重視し、現状6~7%程度と推定される全社WACC(加重平均資本コスト)を上回る8%以上を目指して取り組んでまいります。
また、個別の投資の実行にあたっては、投資決定基準に基づき案件評価を厳格に行い、投資回収状況を継続的にフォローしながら、資本コストを意識した投資管理を行っております。



<戦略② 財務安全性の確保と資本コストの低減>
当社グループは、外的経営環境の急変や戦略的大型投資案件(M&A等)の発現に備え、一定水準の財務安全性と投資余力を確保することを基本方針としております。財務安全性の基準としては、㈱日本格付研究所(JCR)における長期発行体格付「A」以上を維持することを原則としております。また、手元流動性、ネットD/Eレシオ、有利子負債/EBITDA倍率といった財務指標をモニタリングして財務安全性を確保してまいります。その上で、投資資金需要を満たすための資金調達にあたっては、適切な手元資金の水準、資金調達コストの水準などの調達条件、財務安全性指標やROE・ROICといった財務指標への影響などを総合的に勘案し決定いたします。なお、短期資金の需要変動及び資金不足リスクへの対応を強化するため、手元流動性水準を機動的に調整することができる「短期借入枠」を主要取引銀行にて設定しております。これにより、手元流動性水準のガイドラインを従前の「月商2カ月以上」から「月商1.5ヵ月以上」に変更し、更なる資産効率の改善を図ってまいります。
当社グループは、企業価値の向上に向けて資本コストの低減に取り組んでまいります。現状のネットキャッシュの状況に対し、財務安全性や投資資金需要を見極めた上で、有利子負債の構成を高め、財務レバレッジを活用することで、現状6~7%程度と推計されるWACC(加重平均資本コスト)の低減を図ってまいります。
株主資本コストは7~8%程度と推計されますが、その低減にあたっては、環境変化に強い事業ポートフォリオの構築やサステナブル経営の徹底による長期事業リスクの低減が重要と認識しております。そのため、当社のマテリアリティへの対応を進めるとともに、無形投資(広告・R&D・DX・人材など)を強化し、持続的な事業成長力を高めてまいります。
また、政策保有株式の更なる縮減、非事業不動産等の売却・処分推進などのアセットライトによって、投下資本の圧縮と成長投資資金の確保を図るとともに、資産価値変動リスクを低減いたします。うち政策保有株式については、2024中期経営計画期間終了までに2024年度末より半減を目指してまいります。さらに、財務・非財務情報の開示や株主・投資家との対話を強化し、中長期的事業成長への取組み、事業リスク等への対応状況などをご理解いただき、適正な株価形成によって株価ボラティリティを抑制してまいります。




<戦略③ 株主還元の強化>
当社グループは、戦略的かつ重要な事業投資を優先することを原則としつつ、株主の皆様への利益還元について、経営基盤の盤石化のもとに、継続的かつ安定的な株主還元の実施を基本方針としております。
株主還元にあたっては、健全なバランスシートを維持することを前提に、配当性向の水準、フリーキャッシュ・フローを考慮しながら、資本政策の指標である純資産配当率(DOE)の水準を中長期的に引き上げていくことを目指してまいります。また、総還元性向を意識して、投資資金需要を考慮しつつ、必要に応じ自己株式の取得を機動的に実施することも検討してまいります。
2024中期経営計画期間においては、3年間で360億円以上の株主還元の実現を目標として掲げております。初年度である2024年度においては、剰余金の配当51億円、自己株式取得124億円の計176億円(キャッシュアウトベースでは174億円)を実施いたしました。
当期末の配当金につきましては、過去10年連続増配の1株当たり60円(5円増配)を予定しております(2025年6月27日開催予定の第177期定時株主総会に付議予定)。今後とも継続的かつ安定的な配当を目指してまいります。
なお、当社グループはこれまで年1回の期末配当を実施しておりましたが、2026 年3月期より中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を実施する方針に変更し、2026 年3月期より中間配当を実施する予定で、株主の皆様への利益還元の機会を充実させてまいります。さらに、機動的な資本政策の遂行を図るため、今後も必要に応じ自己株式の取得を検討してまいります。



<キャッシュアロケーションの考え方>
当社グループは、2030経営計画達成のための道筋をつくるため、2024中期経営計画では「飛躍に向けた成長軌道の確立」をテーマと定め、重点領域を中心とした事業成長投資、事業戦略と連動した経営基盤強化投資、無形資産投資を実行し、サステナビリティを強化してまいります。特に「HI-CHEW」のグローバルにおけるブランド成長に向けた生産体制構築のための戦略的投資、DX投資をはじめとした経営基盤強化のための戦略投資、重点領域への積極的なM&A探索を含め、2024中期経営計画期間の3カ年で総額約600億円の投資を計画しております。
2024年度においては、米国での「HI-CHEW」の現地生産拡張のため、森永アメリカフーズ(株)第2工場の建設に着手いたしました。またDX投資についてはグローバルレベルでの業務・システムの標準化、業務の効率化・高度化の実現を目的とした基幹システムの刷新等に伴い、27億円の投資を実施いたしました。一方、株主還元については、事業からのキャッシュ創出力を引き続き強化し、2024中期経営計画期間で360億円以上の還元を目指す方針であります。

<株主・投資家の皆様との対話について>
当社グループの長期経営計画である2030経営計画の達成に向けて、「資本コストや株価を意識した経営の実践」に注力するなか、積極的にIR活動を展開しております。四半期毎の決算説明会や個別IR面談での関心事項を踏まえたIR Day、スモールミーティングの開催、海外IRやカンファレンスを通じた接点の創出に取り組んできた結果、資本市場の皆様との面談回数は着実に増加しております。また、個人投資家向けの説明会も実施し、対話の裾野を広げております。
開示情報の拡充にも努めており、当社ホームページのIRサイトは前年度に引き続き2024年度も外部機関から高い評価をいただいております。また、2024年6月に開示した有価証券報告書の「経営者における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の記載内容が金融庁公表の好事例として採り上げられました。
対話の実施状況や内容については、四半期毎に開催されるIR委員会や取締役会に報告し、取組方針等を検討・議論するとともに、年間を通じて適宜関連部門にもフィードバックしております。


(注)個別IR 面談、IR Day、スモールミーティング、カンファレンス、海外IRにて投資家・アナリストとの接点を得た回数(カウントの単位は「社」、同一四半期において複数回の接点があった場合も「1」とカウントし、四半期毎の合算で集計)

資本市場の関心や期待を踏まえ、2024中期経営計画において主要事業別のROIC実績及び目標並びに資本コストの推計値を開示したうえで、これらの内容を基に対話やアンケートを通じて投資家・アナリストの皆様のご意見を伺っております。具体的な目線を共有することで対話の質が向上し、資本コストに対する多様な考え方を参考として社内議論の活性化にも繋がっております。経営全体として資本効率に対する意識をさらに高め、それらを具体化する形で手元流動性水準のアップデートや、政策保有株式の縮減目標を開示いたしました。
引き続き、建設的な対話の促進に努め、対話を通じて得られた示唆を経営活動に活かすことで持続的な企業価値向上を目指してまいります。
業務提携
当社グループにおける研究開発活動は、「世代を超えて愛されるすこやかな食を創造し続け、世界の人々の笑顔を未来につなぐこと」を使命とし、私たちが目指すビジョンに沿って、お客様に満足していただける商品・サービス・情報を提供すべく、「食」に関連する様々な技術分野において研究を進めております。
なお、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は
「2024中期経営計画」の初年度である当連結会計年度は、2030ビジョン『森永製菓グループは、2030年にウェルネスカンパニーへ生まれ変わります。』実現に向けた2ndステージとして、「技術を基軸に、未来に向けて新たな顧客価値を生み出す研究所」という基本方針のもと、全社戦略・事業戦略と連動しながら、中長期視点での研究開発力の強化・共創による価値創出の加速に向けた取組みを引き続き実施いたしました。
(1)既存技術-3大技術の深化-
<ソフトキャンディ技術>
主力ブランドの「ハイチュウ」に関する技術伸長に注力して研究開発を継続しております。また、感性研究との連動により「幸せ食感」を訴求し、心の健康にも寄与する商品として成長し続けております。
ハイチュウ50周年を記念して発売した「12粒ハイチュウ<王道ミックス>」は、今まで培ってきた当社の技術を最大限に駆使し、「ハイチュウ」史上初めて、ひと粒で3つのフレーバー(グレープ、ストロベリー、グリーンアップル)が楽しめるワクワク感と驚きのある品質に仕立てております。
また米国においては「HI-CHEW」の特長であるChewyでリアルなフルーツ感をグミで再現した「HI-CHEW gummies」「HI-CHEW gummies sour」を発売いたしました。柔らかいセンターグミを歯切れのよいグミで包んだ、食感とジューシーさを楽しめるグミキャンディであります。
<冷凍下での菓子技術>
「チョコモナカジャンボ」のモナカのパリパリ食感をできるだけ長持ちさせるため、水分を吸着する食物繊維原料に着目し、モナカへのコーティングチョコ部分や“チョコの壁”にこの食物繊維原料を加えることでモナカの吸湿耐性を約1.2倍向上させ、“チョコの壁強化”訴求に繋がる活性化を実施いたしました。
また当社の菓子技術を活かしたデザートアイス、コンビネーションアイスを多数発売いたしました。当社のビスケットブランド「マリー」を活用し、自分の好きなように割って砕いて食べる食感体験型カップアイス「砕<MARIE&ホワイトチョコ>」を発売いたしました。ホワイトチョココーチングのパキッとした食感とMARIEのザクリとした食感を主役に、濃厚ながら最後まで食べ飽きない品質に仕立てております。
冷凍下でもしっとり・もちもち食感のクレープ生地が特長の「ザ・クレープ」では、「ザ・クレープ<幸せホイップ2倍>、<チョコ&チョコ>」を発売いたしました。<チョコ&チョコ>では、現在のもちもちクレープ生地になってから初の黒いクレープシートで味わいとともに見た目の楽しさも実現いたしました。
<ゼリー飲料技術>
高タンパク含有製品でもゼリーらしい食感を実現する技術を確立し「inゼリー プロテイン15g」をリニューアルいたしました。パインヨーグルト味からミックスベリーヨーグルト味に変更するとともに、よりゼリーらしい食感を追求するために配合の見直しを行い、飲みやすい品質に仕立てております。
また、まるで本物の果実を食べているような食感・美味しさを味わえるとともにビタミンや食物繊維が摂取できる「inゼリー フルーツ食感」シリーズでは、新たに<巨峰>を発売いたしました。当社が保有するゼリー食感のコントロール技術により巨峰の果肉の繊維感を表現し、みずみずしい果肉感と飲みやすさを両立した品質に仕上げております。
(2)新規技術開発-未来に向けたウェルネス新価値創出-
<感性科学研究(心の健康)>
喫食時の生体計測や主観評価など、感性を可視化するために、大学などとの共同研究による多角的な分析を進め、新しい価値の創出に取り組んでおります。食感研究と感性研究の融合による「心地よい食感」に関する研究成果は、「ハイチュウ」の訴求表現(かむほど幸せ食感)や「チョコモナカジャンボ」のマーケティング戦略(ジャンボスマイルプロジェクト)などに活用しております。また、喫食時の表情解析からの感情推定、視線や脳活動測定からのパッケージ評価など、新たな取組みも開始いたしました。さらに、保育の現場における行動観察研究を通じて、おやつが子どもたちの共食の場を楽しく、豊かなものにしていることを明らかにいたしました。本研究は第18回キッズデザイン賞を受賞いたしました。今後もR&D部門を通じて「心の健康」への貢献を推進してまいります。
<健康科学研究(体の健康)>
健康科学の研究としては、パセノール™やぶどう糖(ラムネ)などの素材が人々の健康に与える影響について研究を行っております。
パセノール™については、長寿遺伝子として知られるサーチュインに関する研究をさらに深耕し、“有効成分であるピセアタンノールを1日あたり100mg含む試験食品の摂取により、ピセアタンノールを含まない食品を摂取した方と比較して、血中サーチュイン遺伝子発現が増加すること”をヒト試験で見出し、海外の学術論文や米国老年医学会議(GSA2024)で発表いたしました。また、ピセアタンノールを含む食品の摂取により、ヒト試験にて皮膚水分量や皮膚粘弾性の改善効果が示されておりましたが、その作用メカニズムを検証いたしました。その結果、“ピセアタンノールを皮膚線維芽細胞に作用させることでサーチュイン遺伝子発現が増加すること”や、“ピセアタンノールがサーチュインを介して肌の水分保持などに重要な役割を担うヒアルロン酸合成酵素の遺伝子発現を増加させている可能性”が示され、海外学術雑誌に論文発表を行っております。
ぶどう糖(ラムネ)については、“ぶどう糖含有ラムネ菓子摂取が健康な若年成人においてポジティブな気分で認知課題に取り組み、一部の脳活動が活性化し、選択的注意力が向上すること”を見出し、学術論文や国際学会(fNIRS2024)で発表いたしました。また日本糖尿病学会第67回年次学術集会に糖質関連商品を紹介するブースを出展し、医療関係者とのコミュニケーションを通じて、商品活用シーンの拡大に向けた認知度の向上を図っております。
また商品としては、「inバー」ブランドでは、ライトユーザーにも幅広く高タンパク製品を提供するために「inバープロテインナッツ<メープル味>、<ココア味>」を発売いたしました。タンパク質10gに加え、女性の摂取意向が強い食物繊維、鉄、ビタミンE、葉酸を配合しております。また、栄養摂取の方法が多様化する中、「時間をかけずに栄養を摂りたい」というニーズに応えるために、タンパク質など30種の栄養素が1本で摂れる「inバープロテインMEAL<ベリーショコラ>、<レアチーズケーキ>」を発売いたしました。
さらに、ポジティブな理由で運動に取り組む人が増えている市場環境を踏まえ、「運動で健康的な美しさを目指す人」に向けて「おいしいEAA&クエン酸<レモン味>」を発売いたしました。レモン味で運動中でもすっきり飲みやすい品質に仕上げております。
MCTオイルを配合しBMIが高めの方の体脂肪を減らす機能性表示食品「MCTスタイル」を「Light<ベイクドショコラ>」としてリニューアルいたしました。MCTオイルはチョコを溶けやすくするため加工が難しい素材ですが、長年培ってきたベイクド技術により高配合を可能としております。チョコの中にMCTオイルを閉じ込め、表面だけ効率的に熱を通すことで、外側サクサク、内側なめらかな食感の品質に仕上げ、お客様のウェルネスライフをサポートしてまいります。
その他の機能性表示食品といたしましても、すこやかな生活にお役立ていただける商品として、γ-アミノ酪酸(GABA)を機能性関与成分とした疲労感と睡眠の質の改善にアプローチできる甘酒「発酵ラボお米のチカラ」や、ひざ関節・筋肉・肌に関する機能性関与成分を含んだサプリメント「ひざ軽コラーゲンサプリ」を発売いたしました。
飲料としては、糖質が気になる健康志向の方向けに「甘酒糖質50%オフ185g」「甘酒糖質50%オフ1000ml」を発売いたしました。酒粕のコクと米麹のやさしい甘さを生かした森永甘酒の味わいを、糖質オフで楽しんでいただける品質に仕上げております。
<サステナブル研究(環境の健康)>
「地球環境の保全」に向けて、プラスチック容器・包装の環境配慮に取り組んでおります。「パリパリサンド」は2025年3月から、品質の改良や製造技術の進化により、プラスチックトレーを廃止いたしました。さらにトレー廃止に合わせて袋のサイズも見直し、商品1個当たりのプラスチック使用量を従来品比で約73%削減しております。
今後、世界人口の増加に伴い、タンパク質の不足が懸念されており、サステナブルでおいしく、加工特性の優れたタンパク原料の調達が課題となっております。そのため、植物性タンパク質の物性や風味の改良研究と並行し、バイオマス発酵で作られたタンパク質等、様々なタンパク原料を探索するとともに、一部原料開発にも着手しております。
<R&Dセンター>
当社グループの価値創造を担う中核拠点として2022年春に開設した「森永製菓R&Dセンター」で当社が保有する幅広い食品カテゴリーの知見・技術融合を図るとともに、多彩な社内外のパートナーとの共創を実施いたしました。
2024年度の共創の取組みとしては、昨年を上回る企業と共創開発・研究を実施しております。また例年実施しておりますCSRイベント(横浜市立下末吉小学校・横浜市立汐入小学校との小枝教室、横浜市立横浜サイエンスフロンティア高等学校とのチョコレート学習プログラム)の他、お客様との共創による商品開発検討のための試食会や、エンゼルPLUS会員を招いたイベントを複数開催いたしました。R&Dセンターを舞台とし、国内外を問わずメディアの見学誘致やお取引先様・同業/異業種企業との意見交換を実施し、外部へ開かれた研究開発活動を推進することで新たな価値共創を目指してまいります。