当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「事業を通じて社会に貢献し、より多くの人々の健康な毎日を実現することを追求し続ける」ことを「創業の精神」に掲げ、未病・予防の領域に着目し、科学的根拠に基づいて子供から大人まで、誰もが栄養を摂取しやすい食品を開発してきました。また、企業の存在意義(パーパス:すこやかな毎日、ゆたかな人生)及びありたい会社の姿(ビジョン:Glicoグループは人々の良質なくらしのため、高品質な素材を創意工夫することにより、「おいしさと健康」を価値として提供し続けます。)を定めております。
当社グループは、創業時から変わることのない健康への想いを更に進化させ、取引先、従業員、株主、地域社会、将来世代等の多様なステークホルダーとともに持続的な成長発展を期し、皆様のご期待に応える経営成績形成に努めることを心がけてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、利益と資金を継続的に増加させながら成長加速に向けた投資を実行し、国内外における売上高及び営業利益の向上(売上高成長率 年率3から5%、営業利益成長率 年率5から10%)を継続的に目指すことを目標としております。
(3)経営環境
企業を取り巻く経営環境は、不安定な国際情勢、エネルギー・原材料価格の高騰、急激な為替変動、世界的な金融引締めによる景気の下振れリスク、急速に進む生成AIをはじめとする技術革新、気候変動など不確実性が増しております。その他にも、世界的な社会的要請への対応、脱炭素・脱プラスチックなど地球環境・将来世代に負の財産を残さない企業活動など、企業が取り組むべき課題も多様になっております。
このような経営環境の中で、お客様や生活者との接点強化による「おいしさと健康」の価値提供、並びに中国・東南アジア・北米における事業成長は、当社グループにとっての事業拡大・強化の機会と捉えております。今後も国内外における経済状況や業界・市場動向などの変化、持続可能な企業活動の要請に柔軟に対応しながら、企業価値の向上に努めてまいります。
(4)中長期的な経営戦略及び優先的に対処すべき課題
当社グループは、存在意義(パーパス)・ありたい会社の姿(ビジョン)を達成するための要素を、①お客様起点のバリューチェーン構築による、注力領域での新たな市場の創造と拡大②将来世代や地域社会を含む多様なステークホルダーと共存する、持続可能な企業活動の推進とし、対処すべき課題に対する具体的な事業活動を推進してまいります。
①お客様起点のバリューチェーン構築による、注力領域での新たな市場の創造と拡大
・お客様起点のバリューチェーンを構築し、価値の創出に取り組みます。
・健康事業の拡大に向け、5つの注力領域(発育・栄養の最適化、成長の支援、運動能力の強化、脳機能の向上、ヘルシーエイジング)の研究、商品・サービス開発に経営資源を集中させ、さらなる成長の実現に取り組みます。
・研究・開発体制(イノベーション)の強化により、エビデンスに基づいた「おいしさと健康」を両立した商品の実現を目指します。
・デジタル戦略を推進し、様々な情報やデータから、生活者の意識・行動を分析することで、新たな市場の創造を目指します。
・中国・東南アジア・北米における事業成長を加速させ、当社グループの事業成長の基盤とします。
②将来世代や地域社会を含む多様なステークホルダーと共存する、持続可能な企業活動の推進
・「Glicoグループ環境ビジョン2050」の達成を目指します。
・人財育成への取り組みを強化するとともに、ダイバーシティ&インクルージョンをさらに推進し、多様な人財がより一層活躍できる基盤を整備します。
・「健康経営」を推進し、従業員の健康維持・増進を積極的に支援し、組織力を向上させ、生産性の向上に取り組みます。
・従業員一人ひとりのCSRへの意識を高め、コーポレートブランドの価値向上を図ることで、持続的な企業価値の向上に取り組みます。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ
当社グループは、中長期的な企業価値の向上の観点から、サステナビリティに対する取組みを重要な経営課題と認識しております。また、「すこやかな毎日、ゆたかな人生」という存在意義(パーパス)を設定し、生活者自身がそれぞれの「すこやかな毎日、ゆたかな人生」を送れるよう、創意工夫により「おいしさと健康」を価値として提供し続けることを目指して事業運営を行っております。
多様なステークホルダーの皆様とともに存在意義(パーパス)の実現を通して、地球環境、サプライチェーン上の人権問題、心身の健康等の社会課題の解決に取り組み、企業の持続的成長とともに持続可能な社会の実現を図ってまいります。
①ガバナンス
当社グループは、長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現を目指し、2018年にCSR委員会を設置しております。代表取締役を最高責任者とし、グループ全体でCSRを推進する体制を敷いており、環境、地域貢献、人財等のテーマ別の5つの分科会で構成されております。
CSR委員会は議題毎に年に数回実施し、中長期的な環境(E)・社会(S)と企業経営双方の持続可能性の観点から、当社グループのCSR推進の方向性の策定や進捗状況の確認、活動内容の審議等を行っております。活動状況については、取締役会等にて報告を行い、CSRを経営に反映させながらグループ一体となって推進する体制を取っております。
②リスク管理
当社グループでは、リスクマネジメント委員会において、リスクの洗い出しやレベル評価、リスクへの対応検討と進捗モニタリングを行い、リスクの適切な管理・対応を実施しております。審議された内容は、重要度に応じて適宜取締役会に報告され、取締役会はリスクの管理状況について監督しております。
(2)気候変動
気候変動は生活者の健康や生活の質に重大な影響を及ぼす環境問題であると認識しております。
当社グループでは、気候変動への取組として、環境負荷削減や省エネルギー活動の推進、再生可能エネルギー利用の推進等、気候変動関連の施策を充実化するとともに、TCFD提言に沿った情報開示を段階的に拡充し、企業価値の向上に努めてまいります。
①ガバナンス
当社グループは、気候変動をはじめとする社会課題の解決に向けた取組みを強化しており、中長期視点で「事業を通じて社会に貢献する」経営に取り組んでおります。気候変動に関しては、CSR委員会が中心となり、グループ全体でCSRを推進する体制を構築しております。
②戦略
気候変動シナリオの分析では、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やTCFD提言を踏まえ、①4℃シナリオ、②2℃シナリオ、③1.5℃シナリオの3つのシナリオとともに、時期として①中期(2030年)、②長期(2050年)における当社グループに及ぼす影響を分析しました。その結果、2℃シナリオと1.5℃シナリオでは脱炭素に向けた取組みが加速し始め、炭素税対応コストの増加等の移行リスクが増大する一方、消費者の意識変化に伴う新たな事業機会が顕在化することが分かりました。また、4℃シナリオでは原料の調達コストが増加するとともに、水リスクなどの物理リスクによる影響が大きくなることが判明しました。これら分析結果を踏まえ、当社では温室効果ガス削減を迅速に対応しつつ、その他の重要と評価されたリスク・機会への対応も進めてまいります。
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シナリオ |
リスクまたは機会 |
リスク項目 |
時期 ※1 |
事業インパクト ※2 |
リスク対応策(検討含む) |
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1.5℃ ※3 |
脱炭素に向けた取組みが加速し始め、主に移行リスクが肥大化する一方、消費者の意識変化に伴う新たな事業機会が顕在化する |
炭素税対応コストの増加 |
中期 |
大 |
・再生可能エネルギーへの切り替え ・コージェネレーションシステムによる効率化、冷凍機の更新等 |
|
長期 |
大 |
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|
包材調達コストの増加 |
中期 |
小 |
・バイオマス包材の採用 ・リサイクルしやすいモノマテリアル包材の活用 |
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|
長期 |
中 |
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|
主要原材料調達コストの増加 |
中期 |
小 |
・気候変動に対応する主要原料の新品種などの開拓 ・原料生産への支援による優位調達の実現 |
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|
長期 |
中 |
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|
4℃ |
1.5℃シナリオと比べると物理リスクが肥大化するため、それらに適応するための対応コストが拡大する |
主要原材料調達コストの増加 |
中期 |
小 |
|
|
長期 |
中 |
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|
水リスクによる操業停止に伴う売上減少 |
中期 |
- |
- |
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|
長期 |
中 |
・サプライチェーン全体でのレジリエンスを強化 ・BCPの見直し |
※1 時期・・・中期:2030年 長期:2050年
※2 事業インパクト・・・大 :40億円以上 中: 20~40億円 小: 20億円以下
※3 1.5℃シナリオと2℃シナリオの事業インパクトに大きな差異が無いため、1.5℃シナリオのみ記載しております。
③リスク管理
当社グループでは、事業に対して影響を及ぼすリスクに的確に対処するため、社長室及びリスクマネジメント委員会が主体となり、グループ全体でリスクマネジメントを推進しております。また、リスク分析及び評価を定期的に実施し、事業に及ぼす重大なリスクを特定し、必要な対策を関連部門とともに推進しております。この中で気候変動に関しては、CSR委員会が中心となり、温室効果ガスの削減策について議論しながら、経営に反映しております。
④指標及び目標
当社グループでは、以下の目標の達成に向けて取組み、持続可能な社会に貢献することを目指して活動しております。
1)企業活動で使用する電気、ガス等の使用量を管理し、CO2の排出量を削減している他、工場等で新しい設備を導入する際には、省エネルギーやノンフロン等環境面に十分に配慮した設備への切り替えを進めております。2050年までに、再生可能エネルギーへの切り替えやコージェネレーションシステムによる効率化、冷凍機の更新等を通じ、温室効果ガス(CO2やフロンガス等)を100%削減することを目指します。
2)一部の工場において、排水を冷凍設備の冷却に再利用する等、水資源の使用量削減に取り組んでおります。2050年までに、空冷式システムの採用や水処理技術の向上等を通じ、水の使用量原単位を20%削減及び水質汚染ゼロ化を目指します。
3)容器・包装の機能を追求するとともに、減量化による環境負荷の低減にも取り組んでおります。2050年までに、生産技術向上及び規格見直しによる減量化やバイオマス素材への転換等を通じ、プラスチックをリサイクル原料に、紙を森林認証紙にそれぞれ100%切り替えることを目指します。
4)製造工程での廃棄物の削減に注力するとともに、需給予測精度の向上による過剰在庫を持たない仕組みを通じて、食品廃棄物の削減に取り組んでおります。2050年までに、サプライチェーンの効率化や需給予測精度の向上等、廃棄が発生しない取組みに注力する他、商品の微細な欠け等、品質に問題がない商品を不揃い品としてアウトレット販売を行う等により、食品廃棄物を95%削減することを目指します。
(3)人的資本及び多様性
①戦略
1)人事に関する基本的方針
当社グループは、企業発展の源泉となる最大の資本は「人」であり、個々人の能力開発・育成を図り、意欲にあふれる人財が束となって変革を推し進めること、またそうした変革を推進する人財が次々と育つ企業風土を醸成することが重要であると考えております。さらに、多種多様な社会課題の解決のために、ダイバーシティ&インクルージョンにも真摯に取り組み、様々な個性を持つ社員一人ひとりが、適切な配置や機会の提供を受けることで自身の能力や経験を生かして活躍できると考えております。こうした考え方に基づいて、社会から支持、信頼、尊敬される企業であることを通じ、当社グループの持続的な発展と社員の幸福の実現を目指しております。
2)当社グループにおける人的資本に関する取組みの全体像
当社グループが目指すのは、創業時から変わることなく、「食品による国民の体位向上」であり「事業を通じて社会に貢献すること」であります。おいしさや健康に対する価値観と期待水準が変化するなか、当社グループが発展していくためには、全社員が一つになって社会課題と向き合い、お客様起点の価値を創造し続けなければなりません。2030年の長期経営構想の実現に向け、経営理念体系を見直し、存在意義(パーパス)「すこやかな毎日、ゆたかな人生」を最上位に位置づけるとともに、ありたい会社の姿(ビジョン)として、「Glicoグループは人々の良質なくらしのため、高品質な素材を創意工夫することにより『おいしさと健康』を価値として提供し続けます。」と制定しました。
存在意義(パーパス)やありたい会社の姿(ビジョン)を実現する事業戦略として、ゆたかな人生のために「おいしさと健康の価値の創出」、「すこやかな毎日に貢献するビジネスモデルの構築」、「日本、中国、ASEAN、米国での事業展開」に注力しております。
当社グループ 人的資本に関する取組みの全体像
3)人財育成方針、社内環境整備方針
組織・人財のあるべき姿を目指す上で必要な5つの要素は、「a オーナーシップマインド」、「b 顧客志向」、「c グロースマインドセット」、「d 変化対応力」、「e グローバルマインドセット」であります。これらの能力開発のための人財開発への投資を行うとともに、能力を十分に発揮できるような社内環境整備への投資を実行し、課題に沿った各種アクションを実行、加速してまいります。
a.オーナーシップマインド:社員全員が創業者マインドを持ち、自立して行動する
Glicoグループのパーパス実現のためには、一人ひとりが創意工夫を体現することで、新たな価値を創出し、生活者のみなさまの課題解決に貢献する意欲を持つ必要があります。創業者マインドを高めるために、以下の取組みを実施しております。
・次世代イノベーター育成研修:起業家マインドとグローバルに通じるイノベーション創出力を目的に2019年より開始し、これまでに36名が受講しております。今後もこうした起業家精神を育む機会を強化してまいります。
・選抜リーダーシップ研修:3つの層からメンバーを選抜して実施しております。
ⅰ.CLC(Change Leader’s Camp)研修:2014年に部門長及び部門長候補を対象に経営リテラシーやリーダーシップの獲得を主目的として開始しました(3年間で受講者計48名)。4年目以降はACLC(Advanced Change Leader’s Camp)研修を実施しております(累計受講者数39名)。
ⅱ.LDC(Leadership Development Camp)研修:係長クラスから経営職を目指すメンバーを対象にした研修であります(累計受講者数101名)。
ⅲ.LLC(Leadership Learning Camp)研修:主任クラスから係長クラスを目指すメンバーを対象とした研修であります(累計受講者数18名)。
・社内公募制度:社員個々の自律的キャリア形成の促進とキャリアニーズにこたえることを目的に2010年より導入し、2023年度には37名が社内公募に合格しております。
・JICA民間ボランティア制度への派遣:国際感覚を備えた人財の育成と同時に、異なる文化や環境の中で自ら課題を設定し、一年という限られた期間の中で持続性のある解決策を仕組み化して生み出す体験として、2016年以降、独立行政法人 国際協力機構JICA(Japan International Cooperation Agency)の民間連携ボランティア制度を活用し、社内公募による海外への社員派遣を実施しております。8か国8地域へのべ14名を派遣しております。
・smile.box(社内提案制度):社員なら誰でも業務改善につながるアイデアを直接会社に提案できる制度を2016年より導入しております。提案されたアイデアは社長、役員、関係部門によって検討され、社員に返答される仕組みになっております。
b.顧客志向:社員全員が常に顧客起点の発想と、新たな価値を創造・実現できるスキルを持つ
現状の製品(モノ)起点の価値フローから、「お客様起点のバリューチェーン」に切り替えるにあたり、顧客起点の思考は一層重要度を増しており、以下の取組みを実施しております。
・デザイン思考ワークショップ:顧客視点での課題設定力、問題解決力の向上を目的に2019年より実施し、これまでに約200名が受講しております。
・デジタルスキル学習:デジタルリテラシーの強化、デジタルを活用した新たな価値創出や業務変革等における職務遂行能力の獲得・向上を目的に2022年から全社員を対象に順次開始しております(2024年までに当社正社員全員(約1,400名)が受講予定)。
c.グロースマインドセット:社員全員が協同一致で「One Glico」を実践するマインドを持つ
社員全員がパーパス、ビジョンを理解・共鳴した上で、グループ全体が一丸となり結果を出し切れる組織文化を目指して取組みを進めております。
・役割等級制度:経営推進職は2018年から、総合職は2022年から、従来の職能資格制度を廃止し、役割の大きさを基準に等級を設定する役割等級制度へ移行しました。
・自律的な能力開発:並行して計画的な能力開発を目的にスキルステージを導入しました。各等級に求められるスキル、知識を明示することで、上司の支援のもと、社員一人ひとりが自律的に自身の成長に取り組める仕組みとして整備しました。
・キャリア採用:経営戦略上必要な、専門性、経験、知見、チームで課題を解決する能力等の強化施策として外部からの人財獲得を推進しております。2023年度は当社及び国内連結子会社合計で全採用者の82.3%を占めました。新卒採用で優秀なポテンシャル人財を採用すると共に、多様なスキルや価値観を持つキャリア採用も積極的に行うことで、新たな視点の製品開発や、多様な視点を取り入れたマーケティング活動を推進してまいります。
d.変化対応力:市場や環境の変化に常にアンテナを張り、現場、現物、現実を正確に把握しながら迅速に対応を図る
持続的な発展のためには、社会の動向を見定め素早く動く「俊敏な組織」でなければなりません。社員一人ひとりが、日常生活の中でニーズの変化や技術の動向を敏感に察知し、ビジネスチャンスに変えてアウトプットを生み出す判断力を鍛え、組織能力を高めます。当社グループ全体での俊敏性を高め、正確で迅速な意思決定により、事業の発展を目指します。
・各部門目標への設定:各部門の目標に俊敏な組織活動に繋がる目標を設定しております。
・能力開発:個々の能力開発機会として、戦略策定のトレーニングや実践の機会を設けております。
e.グローバルマインドセット:社員全員がグローバル目線で事業構想を考えることができ、また異なる意見や価値観を異質とせず受容することができる
海外市場への積極的な展開においては、全社員がグローバル視点で思考することが必要不可欠であります。人財の獲得への努力と同時にグローバルリーダーの育成や活躍しやすい環境整備を推進しております。
・海外での新卒採用:世界の多彩なスキルを持つ学生の獲得による、グローバルリーダーの育成を目的に2007年より海外採用を開始し、海外での採用イベントや、キャンパスリクルーティングへ参加しております。これまでに44名を採用しています。
・グローバルブランドマネジメント体制の導入:海外展開を前提とした製品開発やマーケティングのあり方をリードする専門組織を設定しております。
・D&I(ダイバーシティ&インクルージョン):D&Iへの取組みはイノベーションを創出するとともに、組織運営においても意思決定のレベルを引き上げ、組織マネジメント力を向上させるものと捉えております。国籍や性別、キャリア、障がいの有無などに関わらず、多様な人財が適材適所で一体となって目標に向かっていける環境づくりが非常に重要であると考え、以下の取組みを実施しております。
ⅰ.社員一人ひとりがD&Iを深く理解し、インクルーシブルな言葉や行動を選択して実践するスキルを学び、行動発揮を促すことを目的とした、グループ全社員が参加する“D&Iイベント”を2021年から毎年開催しております。2023年度実施の社員アンケートでは、およそ8割がインクルーシブな職場環境であると回答しております。
ⅱ.女性活躍推進の観点から、女性社員のキャリア開発研修や上司を対象としたダイバーシティマネジメント研修等を実施し、現状当社及び国内連結子会社合計の女性管理職比率は6.5%であります。
ⅲ.創業当時と変わらない、子どものココロとカラダの成長を育む世の中にしていきたいという想いから2019年に「Co育てPROJECT」を発足。その一環として「Co育てMonth」(子どもの出生後6ヵ月以内に1ヵ月の有給休暇の取得を必須とする制度)に代表する子育て支援に関する各種制度の充実に取り組み、男性育児休業取得率は当社及び国内連結子会社合計で90.2%に至っております。
ⅳ.障がいのある人がその障がいの種類にかかわらず活躍できる職場として、本社敷地内に「スマイルファクトリー」を設置し、輸出商品のラベル貼り等、従来外部委託してきた業務の内製化を図っております。当社において、障がい者雇用率は法定雇用率を超える3.34%を実現しております。
4)その他
・人財育成投資:人財育成への投資を積極的に進めており、当社及び国内連結子会社における研修費用総額は、2021年対比で1.73倍の201百万円に増加し、一人あたり61千円となりました。
研修費用総額及び社員一人当たりの研修費の推移
・健康経営:当社グループが持続的に成長・発展し、事業を通して社会に貢献し続けるためには、当社グループで働く社員自身が、心身ともに健康であり、働きがいをもっていきいきと働き続けられることが欠かせないと考えております。当社グループでは社員の健康維持・増進を重要な経営課題と位置づけ、社員自身の主体的な健康づくりを積極的に支援しております。そして、働き方改革や業務効率化、生産性やエンゲージメントの改善・向上、D&Iといった他の組織的課題とも連動して中長期的な視点で健康経営を体系的に推進しております。Glicoらしい健康経営により、ココロもカラダも健康な社員が多様な個性を引き出し合い、存在意義(パーパス)とありたい会社の姿(ビジョン)の実現を目指すことで、イノベーティブなアイデアやチャレンジを生み出し、自社の健康課題はもちろん、社会の健康課題解決に貢献してまいります。社外からの評価として、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人ホワイト500」に認定されました。また、2020年11月、総務省が主催する「テレワーク先駆者百選」において、最高位となる「総務大臣賞」を受賞しました。
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総合健康リスク※ |
85 |
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総労働時間 |
2,041時間 |
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有給休暇取得率 |
75.8% |
※厚生労働省ストレスチェックプログラムに基づく指標。全国平均100に対して、低い方が良好値を示す
②指標及び目標
当社及び国内連結子会社では子育て支援に関する各種制度の充実に取り組んでおります。男性従業員の育児参画をさらに推進するとともに、対象者の休暇取得をきっかけにして、職場のメンバー全員が働き方についての意識と行動を見直し、生産性の向上とそれぞれのライフの充実を実現することを目指しております。当社及び国内連結子会社では男性育児休業取得率については100%を目標としており、当連結会計年度において90.2%に至っております。
また当社グループでは、障がいのある人がその障がいにかかわらず活躍できる職場を目指し、「スマイルファクトリー」を開設し、「やりがいを感じる」「必要とされていることを実感できる」体制づくりを進めるとともに、作業場はもちろん休憩スペースにも障がいの種類にかかわらず働きやすい環境を整えております。今後は障がいがハンデとならない職務の開発や、長期雇用を支援する体制と仕組みづくりにも取り組んでまいります。障がい者雇用について、当社では3%以上の雇用率を目標としており、当連結会計年度において3.3%に至っております。
当社グループは、生活者の皆さまがそれぞれの「すこやかな毎日、ゆたかな人生」を送れるよう、高品質な素材を創意工夫することにより「おいしさと健康」を価値として提供し続けていくために、取り組むべきマテリアリティ(最重要領域)を特定し、長期的な視点から経営環境に対する課題への対応を図るように努めております。また、リスクマネジメント委員会を設置し、当社グループにおけるリスクを把握し、リスクの顕在化による危機的状況の発生を未然に防ぎ、万が一発生した場合に生じる負の影響を最小限に抑えるための策を講じ、当該危機的状況からの早期の回復を図るよう努めております。
経営環境、経営成績、財務状況等(株価含む)に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。当社グループはこれらのリスクを脅威とみなすだけでなく、創意工夫による適切な対応を通じ、持続的な成長の機会としてとらえております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
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開示 |
マテリアリティ |
リスク |
影響度 |
発生 |
機会 |
リスクへの対応 |
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1 |
食の安全に関するリスク |
安心・安全な商品・サービスの提供 情報開示と対話の推進 |
・製品回収による多額のコスト発生リスク ・顧客の流出等による売上低迷のリスク ・Glicoブランド棄損のリスク |
高 |
低 |
・適切な情報開示(品質管理ポリシー、原材料調達)を通じたGlicoブランドの信頼獲得による売上高拡大 |
・国際的な食品安全システムの導入の取組み(ISO、FSSC22000の取得) ・取引先の監査等を含むサプライチェーンでの品質保証体制の構築と運用 ・アレルゲンの適切な表示 ・お客様の声の反映 |
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2 |
原材料の調達のリスク |
- |
・原材料の需給動向や原油価格、海上コンテナの変動などによる調達価格変動のリスク |
中 |
高 |
・デジタル技術の活用による原材料発注のサプライチェーンマネジメントの強化 ・調達地、調達先の多様化によるレジリエンスの獲得 |
・長期生産計画と調達需給の連動オペレーション ・「Glicoグループ調達方針」を公開し 「サプライチェーンの環境社会配慮」との連動とグローバルイニシアティブ(国連グローバル・コンパクト、SDGs等)への対応を推進 |
|
サプライチェーンの環境社会配慮 |
・地域の環境法や児童労働等の国際社会要請に合致しないサプライヤーからの調達による原材料調達取引停止のリスク ・Glicoブランド棄損のリスク |
中 |
低 |
・調達トレーサビリティ導入・強化による信頼性の高い調達先の選定 |
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3 |
研究開発のリスク |
共創とイノベーションの推進 人々の健康への貢献 |
・新製品開発、現行製品の改良、コストダウン、基礎研究分野における開発が成功しないリスク ・市場の変化をとらえきれず市場ニーズに乖離し、受け入れられないリスク |
高 |
中 |
・注力領域への経営資源投入及びオープンイノベーションによる開発の加速 ・製品開発へのデジタル技術活用 |
・健康機能の科学的評価の仕組みを構築し、多様なお客様の健康に寄与できる安全な製品の開発 ・デジタル人財開発による販売データ、お客様の声の分析高度化 ・外部の研究機関、スタートアップ企業との協働による開発の加速 |
|
4 |
法的規制等に関するリスク |
コーポレート・ガバナンス 人権尊重のマネジメント 公正で誠実なマーケティング 企業倫理の実践と腐敗防止 |
・法令違反によるコンプライアンスリスク ・処罰、訴訟提起のリスク ・Glicoブランド棄損のリスク |
中 |
低 |
・適切な情報開示を通じたGlicoブランドの信頼獲得 |
・役職員を対象にしたコンプライアンス教育の実施 ・ホットラインの設置 |
|
|
開示 |
マテリアリティ |
リスク |
影響度 |
発生 |
機会 |
リスクへの対応 |
|
5 |
天変地異や社会的な制度等に関するリスク |
安全・安心な商品・サービスの提供 労働安全衛生 |
・パンデミック、地震、洪水等の天変地異の発生及びテロ、紛争等の発生による社会的混乱が生じた場合のリスク ・サプライチェーン分断のリスクや事業停止のリスク ・役職員や事業資産が損害を被るリスク |
中 |
低 |
・BCP(事業継続計画)推進による通常業務効率化 ・DX取組みによるリモートワークの充実 ・調達地、調達先の多様化によるレジリエンスの獲得 |
・生産部門での非常時の対応方針・事業継続計画を策定し、訓練等の実施 ・国際情勢等の情報収集 ・リモートワークの充実に向けたIT環境整備 |
|
6 |
長期的な事業継続に関するリスク |
人財の育成 ダイバーシティ&インクルージョン |
・多様な人財を確保できないことによる企業活動の生産性低下による業績悪化のリスク |
中 |
低 |
・多様性に富む人財確保・育成によるイノベーションの創出 ・従業員の働きがいの向上による会社の成長、企業理念の達成 |
・人財育成プログラムの推進 ・多様な人財がより活躍できる環境整備 ・健康経営の推進 |
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商品サービスのライフサイクル全体での環境社会配慮 気候変動の緩和と適用 資源循環と廃棄物削減 サプライチェーンの環境社会配慮 水資源の管理 |
・温暖化や地球環境の変化、また、それらへの対応のため、企業活動全体に及ぼす影響が顕在化するリスク ・気候変動による原材料調達不全リスク ・対応遅れによる調達コスト、製造コスト、税コストの上昇リスク ・社会要請への対応遅れによるGlicoブランド毀損リスク |
高 |
中 |
・調達先・事業展開先の地理的分散化 ・消費エネルギー低減取組、再生可能エネルギー導入や脱炭素技術導入などの施策の推進 ・包材の脱プラスチック、リサイクル対応の推進 ・情報開示を通じたGlicoブランドの信頼獲得 ・アイスクリームなど特定製品の需要増加 |
・「Glicoグループ環境ビジョン2050」の策定と実行 ・各拠点における食品ロス削減 ・TCFDの枠組みのもと、気温上昇に伴うリスクの理解とそのリスクへの対応等を検討 |
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7 |
情報システムの障害等に関するリスク |
消費者のプライバシーの保護 情報開示と対話の推進 |
・外部からのサイバー攻撃、コンピュータウイルス感染による深刻なシステム障害、個人情報などの重要データの流出、破損による事業中断のリスク |
高 |
低 |
- |
・リスクマネジメント委員会に情報セキュリティ部会を設置し、Glicoセキュリティポリシーのもと、情報セキュリティ体制の構築と運用 ・リスクアセスメントに基づき、役職員を対象とした情報セキュリティ教育や訓練の実施 |
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8 |
取引先の経営破綻等に関するリスク |
コーポレート・ガバナンス |
・取引先の経営破綻による債権が回収できないリスク |
低 |
低 |
- |
・調査機関等の活用による情報収集や与信管理、債権保全の実施 |
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9 |
資産の減損等に関するリスク |
コーポレート・ガバナンス |
・資産の価値の下落あるいは将来キャッシュ・フローによる減損損失計上のリスク ・新規事業の出資先株式、のれんの減損リスク |
低 |
高 |
- |
・経済、金融動向の注視と、投資規模に応じた社内審議、手続きに基づく投資の実行 ・出資先に対する事業計画達成のための継続的なフォローアップ及びモニタリングの実施 |
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当社は、当連結会計年度の期首より組織再編に伴い報告セグメントを従来の「菓子・食品部門」「冷菓部門」「乳業部門」「食品原料部門」「海外部門」から、「健康・食品事業」「乳業事業」「栄養菓子事業」「食品原料事業」「国内その他事業」「海外事業」に変更しております。このため、前年同期数値につきましては、変更後のセグメント区分に組み替えて比較分析を行っております。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限が緩和され、経済活動の正常化が進みました。一方で、エネルギー・原材料価格の高騰、急激な為替変動等の影響が懸念され、また、世界的な金融引締めによる景気の下振れリスクが生じており、依然として先行き不透明な状況が続いております。
このような状況の中で、当社グループは、存在意義(パーパス)である「すこやかな毎日、ゆたかな人生」の実現に向け価値創造を強化し、①健康価値の提供・お客様起点のバリューチェーンの構築、②注力領域への研究投資の集中、③海外事業の拡大に向け取り組みました。
その結果、売上面では、全てのセグメントで前年同期を上回ったため、当連結会計年度の売上高は332,590百万円となり、前年同期(303,921百万円)に比べ9.4%の増収となりました。
利益面では、売上原価率は、前連結会計年度に新型コロナウイルス感染症によるロックダウンがあった中国で低下したこと等により前年同期に比べ0.8ポイント低下しました。販売費及び一般管理費は、広告宣伝費、販売促進費等が増加しました。
その結果、営業利益は18,622百万円となり、前年同期(12,845百万円)に比べ5,776百万円の増益となりました。経常利益は営業利益段階での増益や為替差益等により、21,285百万円となり、前年同期(13,646百万円)に比べ7,639百万円の増益となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は14,133百万円となり、前年同期(8,099百万円)に比べ6,033百万円の増益となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
<健康・食品事業>
売上面では、“DONBURI亭”“カレー職人”等は前年同期を下回りましたが、“パピコ”“アーモンド効果”等が前年同期を上回りました。その結果、当連結会計年度の売上高は50,499百万円となり、前年同期(47,808百万円)に比べ5.6%の増収となりました。
利益面では、増収及び売上原価率の低下等により、営業利益は2,064百万円となり、前年同期(2,044百万円)に比べ20百万円の増益となりました。
<乳業事業>
売上面では、“牧場しぼり”“朝食りんごヨーグルト”等は前年同期を下回りましたが、“セブンティーンアイス”“ジャイアントコーン”等が前年同期を上回りました。その結果、当連結会計年度の売上高は69,675百万円となり、前年同期(66,016百万円)に比べ5.5%の増収となりました。
利益面では、増収及び売上原価率の低下等により、営業利益は529百万円となり、前年同期(267百万円)に比べ262百万円の増益となりました。
<栄養菓子事業>
売上面では、“神戸ローストショコラ”“ビッテ”等は前年同期を下回りましたが、“ポッキー”“プリッツ”等が前年同期を上回りました。その結果、当連結会計年度の売上高は61,890百万円となり、前年同期(57,847百万円)に比べ7.0%の増収となりました。
利益面では、増収及び売上原価率の低下等により、営業利益は6,525百万円となり、前年同期(4,751百万円)に比べ1,774百万円の増益となりました。
<食品原料事業>
売上面では、「小麦たん白」「澱粉」等が前年同期を上回りました。その結果、当連結会計年度の売上高は13,348百万円となり、前年同期(11,158百万円)に比べ19.6%の増収となりました。
利益面では、増収及び売上原価率の低下等により、営業利益は2,427百万円となり、前年同期(1,238百万円)に比べ1,189百万円の増益となりました。
<国内その他事業>
売上面では、卸売販売子会社の売上高、「オフィスグリコ」等が前年同期を上回りました。その結果、当連結会計年度の売上高は65,962百万円となり、前年同期(61,189百万円)に比べ7.8%の増収となりました。
利益面では、増収及び売上原価率の低下等により、営業利益は2,047百万円となり、前年同期(906百万円)に比べ1,140百万円の増益となりました。
<海外事業>
売上面では、地域別において、中国、ASEAN、米国等で前年同期を上回りました。その結果、当連結会計年度の売上高は71,214百万円となり、前年同期(59,902百万円)に比べ18.9%の増収となりました。
利益面では、増収に伴う売上総利益の増加等により、営業利益は4,165百万円となり、前年同期(1,192百万円)に比べ2,973百万円の増益となりました。
財政状態については、次のとおりであります。
資産
当連結会計年度末における流動資産は188,464百万円となり、前連結会計年度末に比べ10,296百万円増加しました。主な要因は、商品及び製品が1,137百万円減少しましたが、現金及び預金が5,493百万円、受取手形及び売掛金が3,060百万円増加したこと等によるものであります。固定資産は207,278百万円となり、前連結会計年度末に比べ16,389百万円増加しました。主な要因は、建設仮勘定が1,377百万円、ソフトウエア仮勘定が5,731百万円、投資有価証券が7,575百万円増加したこと等によるものであります。この結果、総資産は395,743百万円となり、前連結会計年度末に比べ26,686百万円増加しました。
負債
当連結会計年度末における流動負債は115,991百万円となり、前連結会計年度末に比べ36,116百万円増加しました。固定負債は16,635百万円となり、前連結会計年度末に比べ27,785百万円減少しました。主な要因は、償還期限が1年以内となった転換社債型新株予約権付社債を固定負債から流動負債へ振替えたこと等によるものであります。この結果、負債合計は132,626百万円となり、前連結会計年度末に比べ8,330百万円増加しました。
純資産
当連結会計年度末の純資産合計は263,116百万円となり、前連結会計年度末に比べ18,356百万円増加しました。主な要因は、剰余金の配当により5,087百万円減少しましたが、親会社株主に帰属する当期純利益を14,133百万円計上したこと及び為替換算調整勘定が4,816百万円増加したこと等によるものであります。この結果、自己資本比率は66.3%(前連結会計年度末比0.1ポイント増)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減額(△は減) |
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営業活動によるキャッシュ・フロー |
(百万円) |
16,802 |
28,063 |
11,260 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
(百万円) |
△20,140 |
△8,613 |
11,527 |
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財務活動によるキャッシュ・フロー |
(百万円) |
△10,284 |
△6,179 |
4,105 |
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現金及び現金同等物期首残高 |
(百万円) |
89,463 |
79,917 |
△9,546 |
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現金及び現金同等物期末残高 |
(百万円) |
79,917 |
94,691 |
14,774 |
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、営業活動による収入が投資活動及び財務活動による支出を上回ったため、前連結会計年度末に比べ14,774百万円増加し、当連結会計年度末には94,691百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは28,063百万円となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益19,943百万円、減価償却費14,016百万円があったものの、売上債権の増加△2,086百万円、棚卸資産の増加△366百万円があったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは△8,613百万円となりました。主な要因は、定期預金の払戻による収入9,948百万円があったものの、有形固定資産の取得による支出△11,821百万円、無形固定資産の取得による支出△6,556百万円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは△6,179百万円となりました。主な要因は、配当金の支払額△5,087百万円があったこと等によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
対前年同期増減率 (%) |
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健康・食品事業 |
(百万円) |
39,528 |
7.6 |
|
乳業事業 |
(百万円) |
73,224 |
7.3 |
|
栄養菓子事業 |
(百万円) |
63,687 |
△0.8 |
|
食品原料事業 |
(百万円) |
5,822 |
14.9 |
|
国内その他事業 |
(百万円) |
1,634 |
△30.9 |
|
海外事業 |
(百万円) |
63,663 |
15.5 |
|
合計 |
(百万円) |
247,558 |
6.8 |
(注)金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
b.仕入実績
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
対前年同期増減率 (%) |
|
|
健康・食品事業 |
(百万円) |
10,567 |
9.8 |
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乳業事業 |
(百万円) |
4,523 |
2.3 |
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栄養菓子事業 |
(百万円) |
6,836 |
34.9 |
|
食品原料事業 |
(百万円) |
4,425 |
2.7 |
|
国内その他事業 |
(百万円) |
48,748 |
7.5 |
|
海外事業 |
(百万円) |
870 |
44.1 |
|
合計 |
(百万円) |
75,968 |
9.5 |
(注)金額は、仕入価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
c.受注実績
当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
d.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
対前年同期増減率 (%) |
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|
健康・食品事業 |
(百万円) |
50,499 |
5.6 |
|
乳業事業 |
(百万円) |
69,675 |
5.5 |
|
栄養菓子事業 |
(百万円) |
61,890 |
7.0 |
|
食品原料事業 |
(百万円) |
13,348 |
19.6 |
|
国内その他事業 |
(百万円) |
65,962 |
7.8 |
|
海外事業 |
(百万円) |
71,214 |
18.9 |
|
合計 |
(百万円) |
332,590 |
9.4 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりでありま
す。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態及び経営成績の分析
当連結会計年度末の財政状態及び経営成績につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当社グループの経営成績につきまして、当連結会計年度の計画達成状況は以下のとおりであります。
(単位:百万円)
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(参考) 当連結会計年度 当初計画 |
当連結会計年度 修正後計画 |
当連結会計年度 実績 |
対修正後計画 増減額 |
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売上高 |
317,000 |
332,000 |
332,590 |
590 |
|
健康・食品事業 |
50,000 |
50,800 |
50,499 |
△300 |
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乳業事業 |
66,500 |
70,100 |
69,675 |
△424 |
|
栄養菓子事業 |
58,200 |
60,800 |
61,890 |
1,090 |
|
食品原料事業 |
11,700 |
13,100 |
13,348 |
248 |
|
国内その他事業 |
61,600 |
65,000 |
65,962 |
962 |
|
海外事業 |
69,000 |
72,200 |
71,214 |
△985 |
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営業利益 |
16,000 |
17,000 |
18,622 |
1,622 |
|
経常利益 |
17,000 |
19,500 |
21,285 |
1,785 |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
10,000 |
13,500 |
14,133 |
633 |
当連結会計年度において、海外事業における中国、米国での売上が堅調に推移していることから、当初計画の見直しを行いました。修正後計画と比較して、当連結会計年度の経営成績は、売上高は修正後計画を590百万円、営業利益は修正後計画を1,622百万円上回る結果となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要の主なものは、原材料の購入や製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要の主なものは、生産設備の増設・更新等の設備投資によるものであります。
当社グループは事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを重点事項と考えております。
運転資金は内部資金を活用し、設備投資資金等の中長期的な資金は、投資計画及びその他の長期的資金需要に照らして、内部資金の活用、銀行借入、または社債発行等により必要な資金を調達する方針であります。また当社及び主要な国内連結子会社における余剰資金の一元管理による資金効率の向上と金融費用の削減を目的として、キャッシュマネジメントシステムを導入しております。
③経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、「すこやかな毎日、ゆたかな人生」を存在意義(パーパス)として制定しました。存在意義(パーパス)を実現すべく、中期経営計画(2022年12月期~2024年12月期)を策定し、①健康価値の提供・お客様起点のバリューチェーンの構築、②注力領域への研究投資の集中、③海外事業の拡大に取り組むとともに、利益と資金を継続的に増加させながら成長加速に向けた投資を実行し、国内外における売上高及び営業利益の向上を継続的に目指すことを目標に活動を進めております。
当連結会計年度の結果としては、売上高の対前年増減率は+9.4%、営業利益の対前年増減率は+45.0%となっております。引き続き、存在意義(パーパス)の実現に向けた活動を進め、当該目標の達成に向けて邁進してまいります。
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当連結会計年度 |
目標とする経営指標 |
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売上高成長率 |
(対前年増減率) +9.4% |
年平均成長率+3~5% |
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営業利益成長率 |
(対前年増減率)+45.0% |
年平均成長率+5~10% |
④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成においては、経営者による会計上の見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や現状等を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
また、この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a.貸倒引当金
当社グループは、売上債権、貸付金等の貸倒損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見積額を計上しております。取引先の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
b.繰延税金資産の回収可能性の評価
当社グループは、繰延税金資産について将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を十分に検討し、回収可能見込額を計上しております。繰延税金資産の回収可能見込額に変動が生じた場合には、繰延税金資産の取崩しまたは追加計上により利益が変動する可能性があります。
c.退職給付費用及び退職給付に係る負債
当社グループは、退職給付費用及び退職給付に係る負債について、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、将来の給与水準、退職率、統計数値に基づいて算出される死亡率及び年金資産の期待運用収益率等が含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
d.有価証券の減損
当社グループは、投資有価証券を保有しており、市場価格のない株式等以外のものについては時価法を、市場価格のない株式等については原価法を採用しております。また、市場価格のない株式等以外のものについては、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合にはすべて減損処理を行い、30%から50%程度下落した場合には、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について減損処理を行っております。他方、市場価格のない株式等については、実質価額が取得価額と比べて50%以上下落したものについては「著しく下落した」ものとし、回復可能性が十分な根拠により裏付けられる場合を除き減損処理を行っております。
当社グループは、投資有価証券について必要な減損処理をこれまで行ってきておりますが、将来の市況悪化や投資先の業績不振等により、現状の帳簿価額に反映されていない損失または帳簿価額の回収不能が生じ、減損処理が必要となる可能性があります。
e.返金負債
「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
合弁契約
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契約先 |
国名 |
合弁契約の内容 |
契約の発効日 |
契約期間 |
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ジェネラルビスケット社 |
フランス |
社名:Generale Biscuit Glico France S.A. 目的:各種菓子、食料品類の製造販売 資本金:1,525千EUR 当社出資額:762千EUR(出資比率50%) 設立:1982年3月19日 :1986年5月9日 5百万フランスフラン増資(新資本金10百万フランスフラン) :1987年2月18日 ジェネラルビスケット社は、ビー・エス・エヌ社(現ダノングループ)と合併しました。 :2007年11月30日 ジェネラルビスケット社は、株式譲渡によりクラフトフーズ社の傘下となりました。 :2012年10月1日 クラフトフーズ社は、モンデリーズインターナショナル社に社名を変更しました。 |
1981年10月27日
2008年5月28日
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契約の発効日より10年間。 以降5年ごとに更新しております。 クラフトフーズ社と合弁契約の改定契約を実施しました。 |
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PT. Mitorajaya Ekaprana
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インドネシア
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社名:PT. Glico-Wings 目的:アイスクリームの製造販売 資本金:1,457,600百万IDR 当社出資額:598,800百万IDR(出資比率41.1%) 設立:2013年9月27日 :2017年3月29日 120,000百万IDR増資 :2018年12月21日 30,000百万IDR増資 :2019年4月26日 650,000百万IDR増資 :2021年3月1日 47,600百万IDR増資 :2023年7月13日 260,000百万IDR増資 |
2013年7月30日 |
設定なし |
厳しい経済環境が続くなか、企業の成長に不可欠である新製品の開発は、当社グループの企業戦略における最重要課題のひとつであります。当社グループでは、エビデンスに基づいた「おいしさと健康」の実現を図るべく、研究・開発体制(イノベーション)の強化に取り組んでおります。
当連結会計年度に支出した研究開発費は総額
当連結会計年度の主な研究の概要とその成果
(1)基礎研究、応用研究分野
基礎研究、応用研究では、独創的かつ健康価値の高い商品を開発するために、技術・素材・エビデンスに裏付けられた「おいしさと健康」の具現化に向けた研究を進めています。具体的には、中期経営計画で定められた注力5領域(発育・栄養の最適化、成長の支援、運動能力の強化、脳機能の向上、ヘルシーエイジング)でお客様の健康増進に貢献すべく研究を行っています。さらに、当社グループで重要な素材であるアーモンドに関しても、健康機能の研究を行い、お客様の健康課題の解決を実現すべく取り組んでおります。
(2)新製品開発分野
<健康・食品事業>
アーモンド飲料の“アーモンド効果”は、現在発売中の「アーモンド効果3種のナッツ」から甘さを抜き、よりナッツ感を味わうことができる「アーモンド効果3種のナッツ砂糖不使用」を発売しました。適正糖質ブランド“SUNAO”は、パスタをリニューアルし、配合を見直して、つるみや、もっちりとした食感を強化させて品質を向上しました。また、3種類のソース(「ボロネーゼ」「ポモドーロ」「きのこ入りチーズクリーム」)に、アーリオ・オーリオを配合することで、おいしさを強化しました。“パワープロダクション”は、エキストラアミノアシッドをはじめとする複数の製品でアンチドーピングのための情報公開(SSR:スポーツ・サプリメント・リファレンス)を実施しました。また、アスリートコンディションチェック(アプリ)を公開しアスリート向けサポートの充実を図りました。さらに、昨年に引き続き「湘南国際マラソン」のオフィシャルドリンクとして「エキストラハイポトニックドリンクCCD」を提供し、ドリンク提供を通じランナーの皆様をスポーツ栄養学の力でゴールまでサポートしました。“パピコ”は「チョココーヒー」で、乳と生チョコとコーヒーのバランスを見直してコク深い味わいとし、独自のなめらかな食感を強化することでおいしさ向上を図りました。また、濃密な味わいとレーズンの食感を楽しめる「レーズン&バター」を新発売しました。“アイスの実”は、1袋の中で2つの味を楽しめる「完熟ぶどう&芳醇マスカット」を北海道限定で発売し、おいしさの変化を楽しめ、1袋を飽きずに食べられる設計がお客様のご利用に繋がりました。“DONBURI亭”の全ラインナップ、“クレアおばさん”の「具だくさんシリーズ」において、健康価値向上のため、食塩相当量低減に取り組みました。また、2022年から開始したオフィス向け適正糖質ランチのデリバリー事業の「SUNAOデリバリー」では、主食、主菜、サラダなどのメニューラインナップ強化に取り組みました。具だくさんの炊き込みご飯を簡単に作る事が出来る“炊き込み御膳”では、4つの国産素材(北海道産昆布、九州産鰹節、うるめ鰯節、枯鯖節)を使ったこだわりの一番だしにより美味しさ向上に取り組みました。また、商品パッケージを刷新し、一般社団法人ユニバーサルコミュニケーションデザイン協会による「伝わるデザイン」の第三者認証を国内の食品メーカーで初めて取得しました。
<乳業事業>
“ジャイアントコーン”はコーンのサクサク感を実感いただける「できたてイベント」、店頭での「できたて企画」を昨年に引き続き行い、おいしさの価値伝達に取り組みました。また、「大人シリーズ」ではご好評いただいている「アーモンドショコラ」に加え、「濃厚ホワイトショコラ」を発売し、ブランド全体の活性化を図りました。“牧場しぼり”は国産生乳を中心に食品素材だけで作り上げることで、素材本来のおいしさにこだわった設計を実現しました。ラインナップを「ミルク」、「ミルクカカオ」、「北海道産生クリーム仕立て生キャラメル」に刷新し間口拡大と購買頻度の向上を図りました。“パナップ”では一部の店舗で、素材のおいしさにこだわった「濃厚ぶどう」、「濃厚いちご」の先行販売を行いました。アイスは乳原料の選定によりミルク感をアップさせ、ソースは原料と配合技術により果汁・果実の味わいを高めました。また、その組み合わせを従来以上に楽しんでいただけるよう、ソースの入れ方を工夫し、新たな価値創造に取り組みました。“BifiXヨーグルト”は、新商品「ドリンクタイプ」<やさしい甘さ>を発売し、タンサ(短鎖)脂肪酸を生み出す訴求を行うことでブランド価値向上を図りました。また、ビフィズス菌BifiXのタンサ脂肪酸による健康機能(「認知機能の改善」、「血管の柔軟性の改善」、「体脂肪の低減」)を明らかにした論文3報を発表しました。これらの論文発表や昨年に引き続きタンサ脂肪酸PR活動を実施し、BifiXの健康機能の認知やブランド価値の強化を図りました。“カフェオーレ”は、「カフェオーレオリジナル」で生乳を50%配合し素材のやさしい味わいを引き出すことにより、慌ただしい朝の時間をおだやかに過ごしたい層の需要獲得に取り組みました。“アイクレオ”は、乳児用液体ミルク「赤ちゃんミルク」で哺育した乳児の発育に関する調査をまとめ医療機関に提供し、赤ちゃんの健やかな健康と発育をサポートする取組みを行いました。さらに、食べムラ、偏食しがちなお子様に向け、「グローアップミルク」を使用した簡単レシピを考案しSNSで動画を配信することで、お子様の栄養摂取のサポートとブランド価値の強化に取り組みました。
<栄養菓子事業>
“プリッツ”では、厳選した十六種類の穀物を練り込み、1袋で1日不足分の食物繊維を美味しく手軽に摂取できる「十六穀プリッツ」<うす塩味><やきのり味>を発売し、健康に気遣いながら自分時間を楽しむ需要を喚起しました。“ポッキー”はポッキー史上もっともビターな「ポッキーカカオ60%」を発売し、大人が好む甘さ控えめ本格ビターチョコレートの提案で、健康を気にしながらもお菓子を食べたい層の新規獲得を図りました。“ビスコ”は新たなフレーバーとして「メープル」、素材にこだわっておいしさを高めた「いちご」を発売し、ブランド全体の価値の向上を図りました。