第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日(2024年3月29日)現在において判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は2021年に、「価値創造」、「ESG経営」、「事業領域の拡大」を重点戦略とした「Kanro Vision 2030」を定め、自分たちの未来への想いを言語化し、更に2022年に新たな企業理念体系として「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」を企業パーパスとして策定いたしました。

そのパーパスを起点に、長期ビジョン「Kanro Vision 2030」の実現に向けた1stステップと位置付けた「中期経営計画2024」の最終年度となる本年度は、中計で目指す姿『人と社会の持続可能な未来に貢献するパーパスドリブン企業』を再確認のうえ、全社一丸で、厳しい外部環境を乗り越え、市場、事業環境の変化へ柔軟に対応し、原価低減と収益力向上を追求してまいります。

 

企業理念体系

  ① 企業理念

  「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」を、優しい未来へリードする素材の力と機能を追求した商品・サービスで実現する

 

  ② クレド(行動指針)

  創意工夫: 変化を恐れず、自ら考え、新たな価値をつくり続ける

  信義誠実: 誠実な言動を通じて、すべてのステークホルダーからの信頼に応える

  百万一心: 多様性や専門性を受け入れ活かし合い、パーパスに向かって社員、会社ともに成長する

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

① Kanro Vision 2030             

当社は2021年2月に、「Kanro Vision 2030」を公表し、2030年に売上高500億円※、営業利益率9%以上※、ROIC10%以上※を目標に掲げました。また、3つの重点戦略「価値創造」、「ESG経営」、「事業領域の拡大」を定めております。

 

Kanro Vision2030の全体像


 

② 中期経営計画

当社は2022年2月、2022~2024年までの3か年の中期経営計画として「中期経営計画2024」を発表いたしました。当中計の位置付けは、パーパスを起点に、長期ビジョン「Kanro Vision 2030」の実現に向けて、2022年からNew Chapter(新章)をスタートさせるというもので、当中計はその1stステップと定めております。


中期経営計画2024は主要財務数値目標として、(イ)中計期間売上高年平均成長率5%以上、(ロ)2024年度営業利益率7%、(ハ)2024年度ROIC7.5%以上を掲げており、「Kanro Vision 2030」の「3つの重点戦略」とそれを支える「人財と組織」につき、以下の施策を推進してまいります。

 

価値創造

・デジタル起点のイノベーション

データドリブンによるデジタルマーケティングを展開し、生活者のニーズをとらえ、飴離れが進むZ世代やグローバルを含む新たな顧客価値を創造する。

・研究技術のイノベーション

永年の知見・あらゆるテクノロジーを駆使し、シーズをプロダクトアウトに繋げて新たな商品価値を創出する。サステナブルという観点からも「素材」「機能性」の追求を強化する。

 

ESG経営

・SDGs目標達成に向けた内部体制強化

・ダイバーシティ&インクルージョンの推進

・ガバナンスの強化

TCFD関連含む非財務情報の開示充実を促進する。

 

事業領域の拡大

・コア事業

永年向き合ってきたキャンディで生活者にエールを送る。ブランドごとに設定するパーパスを起点に、飴のZ世代との新たな共創を実現し、商品・販売・プロモーションのマーケティングミックスによりグミ市場の成長を捉える(キャンディ市場でのトップシェアを維持・グミのシェアNO.1を目指す)。

・デジタルコマース事業

ヒトツブカンロを足掛かりに事業の基盤を築き健康と笑顔に満ちた未来を目指したEC専用商品・サービスを提供することで事業を拡大する。

・グローバル事業

グローバル化を推進し、カンロクオリティで世界の人々の笑顔あふれる豊かで健やかな生活に貢献する。

・フューチャーデザイン事業

「未来の市場・生活者」に向けて、地球にやさしい、「心がひとつぶ、大きくなる」商品・サービスをデザイン、創出する。

 

人財と組織

・多様な人財の活躍のための環境整備 

・エンゲージメントの向上(企業パーパスに基づく自律的経営)

 

③ 中期経営計画2024の進捗状況(2022年12月期~2024年12月期)


 

(3) 2024年度の経営指標

当社は、2024年度の経営指標として売上高303億円、営業利益34.5億円、経常利益34.7億円、当期純利益25億円を目標としております。

 

(4) 経営環境及び会社の対処すべき課題

生産体制の強化

キャンディ市場は、のど飴需要の拡大による飴カテゴリーの販売好調に加え、グミカテゴリーの伸長が継続しており、価格の上昇とも相俟って前年より大きく増加し、市場全体が成長しております。

当社は需要が増加するキャンディ市場に対して、安定供給の観点から2023年は商品ラインナップの絞り込みを実施すると同時に、工場の人員増強を含む生産体制整備や生産設備の拡張を行ってまいりました。

今後もキャンディ市場のトップシェアメーカーとして、市場の成長を牽引すべく、また、お客様のニーズに応えるため、更なる生産体制の拡充に向けた具体的な取組みを検討してまいります。

 

事業領域の拡大

コア事業(国内飴・グミ事業)では、当社の商品開発力、ブランド力並びにマーケティング施策が功を奏し、国内キャンディ市場における当社シェアは拡大しておりますが、「Kanro Vision 2030」の達成には、「事業領域の拡大」が不可欠です。

今後、グローバル市場における当社ブランドの認知拡大に向けた多面的なアプローチの検討、ヒトツブカンロ店舗の新規出店による販売拡大、自社デジタルプラットフォーム「Kanro POCKeT」の運用強化など、引続き事業領域の拡大を推進し、更なる成長を目指してまいります。

 

人的資本経営の推進

国内の生産年齢人口が中長期的に減少していく中、当社は全社員一人ひとりが仕事への誇りを持ち、多様な価値観や個性を活かし、会社と共に個人も成長する好循環を生み出していくため、その実現に向けた人事制度改革を随時行ってまいります。

当社の3つの重点戦略である「価値創造」、「ESG経営」、「事業領域の拡大」と同期した人事戦略を遂行し、当社の成長を支える人財の育成や個々の社員が備え持つ能力を存分に発揮できる魅力ある社内環境への整備を行ってまいります。

 

 

サステナビリティの推進

当社はESG経営の推進を通じて経営基盤の強化を図るため、「サステナビリティ委員会」を2022年に設置し、サステナビリティに関する重要課題の解決に向けた活動に取組んでまいりましたが、その取組みを更に前進させるため、2024年1月から推進体制を見直すと共に「サステナビリティ推進部」を新設しました。

社長を委員長とするサステナビリティ委員会の新たな体制は、4つの分科会「糖の価値創造・社会貢献」「事業を通じた環境負荷削減」「食の安全・安心」「人権の尊重・ダイバーシティの推進」から構成、執行役員が各分科会リーダーを担い、全役職員でサステナビリティの推進に取組んでまいります。

 

デジタル化への対応

近年ITやデジタル技術が進化する中、当社は全役職員のITリテラシーの向上、業務効率化・生産性向上及び価値創出を目的とする全社横断のDX推進委員会を2024年1月に新設しました。基幹システムの刷新、工場におけるIoT化への投資、RPAツールの活用、デジタルマーケティングの推進などの取組みを強化し、強固な経営基盤を構築してまいります。

 

コーポレート・ガバナンス体制の強化

当社は、ガバナンス体制の強化を図り、企業価値の更なる向上と持続的な成長を目指しております。危機管理対応としては、各種BCPの整備、サイバーセキュリティ対策の強化に取組むと共に、危機管理マニュアル及び危機管理広報マニュアルを2023年に再整備しました。

コンプライアンスへの対応としては、チーフ・コンプライアンス・オフィサーを委員長とするコンプライアンス委員会を定期的に実施しており、また、様々なテーマの社内研修を継続的に実施することで、今後も社員のコンプライアンス意識を醸成してまいります。

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みの状況は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日(2024年3月29日)現在において判断したものです。

 

(1) カンロのサステナビリティに関する考え方

当社はキャンディNO.1企業として、持続可能(sustainable)な社会をすべてのステークホルダーと共創することにより、皆様から愛され、信頼される企業になることを目指しています。

今後も糖を基盤とした事業活動を通じて社会課題の解決に取組むことで、企業価値の向上とともにSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標)の達成に貢献します。

 

サステナビリティ推進基本方針

当社は、企業パーパス「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」の下、事業を通じて社会課題の解決に寄与しながら、企業価値を向上させることで、人と社会の持続的な未来に貢献します。

 

① 糖の価値創造

糖の持つ価値を正しく発信するとともに、世界の多様な人々の生活に健康・喜び・楽しさ・幸福な時間をもたらす商品やサービスを通じて、よりよい社会づくりに貢献します。

② 事業を通じた環境負荷削減

気候変動に対応するため温室効果ガス排出量削減を目指します。また、資源循環型社会実現に貢献すべく、食品廃棄物や使用するエネルギーの削減にも取組みます。

③ 食の安全・安心

食品を扱うメーカーとして、食の安全・安心の実現は最重要の使命と認識しています。また、お客様に対する正しい情報発信・コミュニケーションを通じて、食生活そのものの安全・安心にも貢献します。

④ 人権の尊重・ダイバーシティの推進

社員一人ひとりが成長し、仕事への誇りを持てるように多様な個性を尊重して、組織全体の成長を目指します。また、常に社会へ目を向けてカンロに関わる全ての人が安全に働ける環境を整え守ります。

⑤ 組織統治

社会から信頼され、必要とされる企業となるために、公正な事業と透明性の高い組織運営を実現します。常にステークホルダーの声に耳を傾け、経営に反映します。

 

(2) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

① ガバナンス

当社では、ESG経営の推進を通じて経営基盤の強化を図るため、各部門より選出された委員から構成される組織横断の「サステナビリティ委員会」を2022年4月1日に新設し、サステナビリティに関する重要課題の解決に向けた活動を開始しています。

2024年1月1日からは、委員長を代表取締役社長、4つの分科会のリーダーを執行役員が務め、サステナビリティ推進部を委員会の事務局とする体制に強化しています。当委員会の中で、サステナビリティに関する基本方針、推進体制、各KPI進捗状況並びに今後の対応策などを協議しています。

当委員会で協議された内容は定期的に常勤役員会、取締役会へ報告され、取締役会が監督・助言をするとともに、重要事項は取締役会の決議で決定されています。

 

② リスク管理 

当社では、経営企画部を主管部とする全社的リスク管理体制のもと、当社事業に与える影響度の高いリスクについて定期的に識別・評価を行い、リスク管理基本規程に基づいて取締役会に報告を行っています。

サステナビリティに関するリスクについても、サステナビリティ推進部を中心にサステナビリティ委員会で検討、および対応策の取組みを管理しています。こうした取組み状況は、サステナビリティ委員会より常勤役員会・取締役会へ定期的に報告され、監督・管理を行っています。

 

 

サステナビリティ推進体制


 

(3) 重要なサステナビリティ課題

① マテリアリティの特定プロセス

事業を通じて社会課題の解決に寄与しながら企業価値を向上させるため、当社を取り巻くあらゆる社会課題のうち、将来にわたって事業活動を継続するために重要な課題をマテリアリティ(サステナビリティ課題)として定めました。マテリアリティは外部環境の変化や当社の事業成長に応じて変化しうるものと考えています。そのため、マテリアリティは2018年度に一度特定しましたが、2021年度に見直しを行いました。

 

② マテリアリティ

「Kanro Vision 2030」の実現に向け、「糖の価値創造」、「事業を通じた環境負荷削減」、「食の安全・安心」、「人権の尊重・ダイバーシティの推進」、「組織統治」の5つのテーマを掲げました。また、それぞれのテーマに関連するマテリアリティ(重要課題)とアプローチを下表のとおり整理しています。

 

 

マテリアリティ

アプローチ

糖の価値創造

健康福祉の増進

糖に対する正しい知識の普及活動を実施する

健やかな生活に寄与する商品・サービス開発

事業を通じた

環境負荷削減

気候変動

温室効果ガス排出量を削減する

資源循環と廃棄物削減

食品廃棄物を削減する

商品容器に環境にやさしい素材(バイオマス・生分解性・リサイクル素材・紙等)を使用

使用するエネルギーを削減

持続可能な原材料の調達

サプライチェーンにおけるサステナブル調達

食の安全・安心

商品の安全衛生

原料、製造委託先の品質リスク評価に基づき、品質審査を計画的に実施

消費者品質満足度の向上

責任あるマーケティングと表示

ユニバーサルデザインを意識した商品設計

 

 

 

マテリアリティ

アプローチ

人権の尊重・

ダイバーシティの推進

人権の尊重

人権に関する方針整備

ダイバーシティと機会均等

男性の育児休業取得者比率を上げる

女性管理職(課長職以上)比率を上げる

障がい者雇用比率を上げる

労働安全衛生と人材育成

従業員エンゲージメントスコアを上げる

有給休暇取得率を上げる

多様な人材を活かし、価値創造につなげる

持続可能な原材料の調達

サプライチェーンにおけるサステナブル調達

組織統治

ガバナンス

ステークホルダーへの説明責任を重視する

コンプライアンス意識の向上

リスクマネジメント強化

情報セキュリティの強化

 

 

③ 指標と目標

上記で掲げたサステナビリティ課題のうち、指標を用いて進捗を管理する項目については下表のように整理しています。下記以外のマテリアリティに関しても、今後適切な指標の設定を行い、進捗を管理していきます。

 

マテリアリティ

指標(KPI)

2023年度実績

目標

健康福祉の増進

糖に対する正しい知識の普及活動の実施人数(延べ)

805万人

2030年までに1,500万人に実施

気候変動

温室効果ガス排出量(Scope1,2,3)を削減する(売上高原単位)

306.4t-CO₂/億円

2024年に262.4t-CO₂/億円

資源循環と廃棄物削減

食品廃棄物を削減する(売上高原単位)

4.62t/億円

2030年までに2019年比30%削減(売上高原単位)

3.24t/億円

商品容器に使用する環境にやさしい素材の比率

0.9%

2030年までに30%

生産重量原単位でのエネルギー使用量削減

△3.7%

(2022年4月~2023年3月)

毎年、1%以上削減
(生産重量原単位)

 

 

マテリアリティ

指標(KPI)

2023年度実績

目標

ダイバーシティと機会均等

男性の育児休業取得者比率

100%

2024年までに100%

女性管理職(課長職以上)比率

15.6%

2030年までに30%台

障がい者雇用率

2.6%

2025年までに3%以上

労働安全衛生と人材育成

従業員エンゲージメントスコア

52.5%

2030年までに70%

(2020年47%)

有給休暇取得率

72.5%

(2022年4月~2023年3月)

2030年までに70%以上

 

 

(4) 気候変動(TCFD)に関する考え方及び取組

① ガバナンス

気候変動のリスク・機会に対する当社のガバナンスは、(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理に記載のとおりです。

 

② 戦略

当社グループは気候変動によるリスクと機会を重要な経営課題の1つであると認識しており、当社製品及びサービスの調達・生産・供給までのバリューチェーン全体を対象として、当社への影響を考察し、リスクと機会を特定しています。

 

分析の前提

2℃シナリオと4℃シナリオの世界観を整理し、2030年時点におけるリスクと機会を整理しました。シナリオ分析結果におけるリスクと機会は、低炭素社会への移行に伴う政策や技術などの社会変化によって生じる「移行」側面と気候変動に伴う自然災害の発生や気温上昇などの「物理」側面を考慮しています。

設定シナリオ

時間軸

参照シナリオ

2℃

移行

2030年

IPCCによる気候変動予測シナリオ「SSP1-2.6」(第6次評価報告書)、IEAによる移行シナリオ「持続可能な開発シナリオ(SDS)」(IEA WEO2020)

4℃

物理

IPCCによる気候変動予測シナリオ「SSP3-7.0」(第6次評価報告書)

 

 

シナリオ分析結果

リスクと機会は、2030年までを想定の上、定量的な簡易分析も加味しながら事業活動に与える影響を「大」「中」「小」で定性的に評価しました。

 

〈重要度の高いリスク〉

大分類

小分類

リスク

要因

事業への影響

重要度

対応策

2℃

4℃

移行リスク

政策と法

炭素税の導入

 

炭素税の導入により当社生産コストが増加する

・2030年までにScope1,2の温室効果ガス総排出量を2019年比で50%削減、Scope3の温室効果ガス総排出量を2019年比で30%削減、2050年までにカーボンニュートラル達成に向け、再生可能エネルギーの使用拡大(太陽光発電の増設・空調使用外気の地熱利用・不良廃棄飴のバイオマスエネルギーへの転換利用等)、省エネ施策・生産性効率化施策を推進・検討

・工場稼働の最適化による高効率の生産体制の構築

・気候変動に対する影響度を設備投資採択基準に追加(2022年)

プラスチック利用の規制化

再生プラスチック比率の上昇等により、包装材の調達コストが増加する

・2030年までに商品容器における環境にやさしい包材(バイオマス、生分解性、リサイクル素材、紙等)の比率を30%まで引き上げる目標達成に向けた取組み推進・検討

・プラスチック使用削減施策(パッケージ包装薄肉化・サイズ縮小等)の推進・検討

・パルプ・でんぷんが原材料の紙製クリアファイルを導入(2023年8月)

 

市場

原材料コストの増加

低炭素社会へ移行し、農作物の収量が減少することで原材料価格が高騰し調達コストが増加する(収量減少が想定される主原料:水飴・ゼラチン・乳原料等)

・原材料を2社以上の購買先確保を原則とする購買の基本方針の遵守と更なる調達ルートの拡大検討

・主原料における代替原料検討

・廃棄原料の削減推進(再生利用等)

評判

消費者の環境意識の高まり
嗜好の変化

消費者の環境意識の高まりによって、環境対応が遅れた商品の消費者離れや流通業の当該商品の取り扱い回避に伴う売上減少

・2030年までに商品容器における環境にやさしい包材(バイオマス、生分解性、リサイクル素材、紙等)の比率を30%まで引き上げる目標達成に向けた取組み推進・検討

・人権ポリシー(2023年度策定)に則った環境面含むサプライヤーの状況確認等、人権デューデリジェンスの実施

・調達ポリシーの策定検討

物理リスク

急性

台風や洪水等の異常気象の発生

洪水や台風の発生に伴い、物流が滞り、調達・生産・物流・販売活動が停止することで売上高が減少、または調達コストが増加する

また、工場等が被災することで製品や設備の毀損に伴うコストが増加する

・生産工場に火災保険を付加、罹災に伴う損失補填として利益保険を付加

・災害対応BCPの継続的な見直しとBCМへの進化

・松本市ハザードマップ上で奈良井川の浸水想定区域にある松本工場に、擁壁・止水板を設置対策済み(2021年)

慢性

平均気温の上昇

保冷対応輸送の増加や工場・保冷倉庫の温度維持コストの増加(空調等)

 

のど飴の需要期間が減少し、売上が減少する

・原材料の複数社購買の実施

・主原料における代替原料検討

 

 

〈重要度の高い機会〉

大分類

機会

要因

事業への影響

重要度

対応策

2℃

4℃

市場

省エネ設備導入の推進

省エネ設備への更新の実施等、より効率的な製造により製造コスト、将来的な炭素税の負担を削減する機会となる

・ボイラー設備の利用手順見直し、空調設備の更新、LED照明への切り替えなど省エネ施策の推進

・再生可能エネルギーの使用拡大を推進・検討

評判

消費者の環境意識の高まり・嗜好の変化

環境負荷削減商品、環境負荷が低い原材料を使用した商品開発により売上が増加する

 

環境意識が高いZ世代などの消費者ニーズにあわせた製品、サービス開発で消費者需要に対応し、売上が増加する

・2030年までに商品容器における環境にやさしい包材(バイオマス、生分解性、リサイクル素材、紙等)の比率を30%まで引き上げる目標達成に向けた取組み推進・検討

・環境に配慮した商品設計基準作成検討

・新規事業における廃棄飴・廃棄包材のアップサイクル商品等の開発を推進

①規格外で販売ができない飴と未使用資源の田んぼのお米を発酵させて精製されたアルコールを使用したウエットティッシュ(2022年9月)

②清見みかんの搾汁時に残る繊維質「清見パルプ」と果汁を使用したグミ(2022年12月)

廃棄包材を活用したバック、サコッシュ、ペンケースをクラウドファンディングのプロジェクトとして展開(2023年8月)

 

 

③ リスク管理

気候変動のリスクに対する当社のリスク管理は、(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理に記載のとおりです。

 

④ 指標と目標

当社は、気候変動リスクへ対応するため、Scope1,2の温室効果ガス総排出量を2030年までに2019年度比50%削減、Scope3の温室効果ガス総排出量を2030年までに2019年度比30%削減、2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げています。

 

(5) 人的資本経営への取組み(戦略/指標と目標)

当社のパーパスである「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」を体現し、持続的な発展を続け、未来を創るために最も重要な資産が人財であると考えています。そして「Kanro Vision 2030」を実現するためには、事業戦略と同期した人事戦略の遂行が重要です。特に事業領域拡大に向けたビジネスモデルや経営戦略に資するストーリーある人財投資に向けて、当社は人的資本経営に取組みます。

 

① 人財育成に関する方針

当社のビジョンにおいて、組織やそれを構成する社員は、パーパスの実現と共に3つの重点戦略である「価値創造」、「ESG経営」、「事業領域の拡大」を支える原動力であり、社員一人ひとりが、変化に対応し、学び続け、成長を継続することが必要です。

社員の育成を後押しするために、当社のクレドを念頭においた自律性、チャレンジ精神、リーダーシップ、オーナーシップ等に資する施策を進めます。

 

1)経営人財の育成・確保

世の中の不透明性・不確実性がますます強まる中において、“事業という大きな観点から組織をマネジメント”する人財と“社内外の力を集め牽引”する人財の両面の観点から、様々な価値観を受容出来る多様性と、強いリーダーシップを持った“経営人財”の育成・確保が重要と考えています。また、こうした人財が社内で活躍することによって、今以上に様々な価値観が混じり合い、トップダウンに拠らず社員が自ら考え、動くことの出来る組織づくりを目指します。

次世代の経営人財育成のために、例えば「カンロ経営塾」という選抜研修を実施しています。この研修では将来の経営幹部候補育成クラスと管理職候補となる若手育成クラスを設けています。経営幹部候補育成クラスでは約半年間、他社の経営幹部候補者等と合同で昨今の経営課題等をテーマとした研究を行い、その成果を自社に持ち帰り経営層へ提言しています。このクラスを卒業した社員は、現在役員として活躍しています。また若手育成クラスでは約半年間、将来のビジョン等について議論を重ね、経営トップを含む役員との対話の機会を設けています。この選抜研修には毎年女性も参加しており、このクラスを卒業した社員の多くは管理職として現在活躍しています。

また人財育成の一環として、様々な取組みを進めています。社員の多様なキャリアパスの実現を目的に社内公募制度を導入しています。1つの部門だけでなく様々な仕事や価値観に触れる機会を増やすことで、カンロの社員として更なる価値創造につなげます。

2024年度からは管理職に対する人事評価制度を改定し、管理職それぞれが「未来に向けて一歩踏み出せたか」を評価する仕組みを導入します。管理職の意識と行動を変えていくことで、当社のパーパスやビジョンの実現に更に取組みます。

 

2)デジタル人財の育成・確保

データドリブンによるデジタルマーケティングを展開し、デジタル起点でのイノベーションによる新たな顧客価値を創造することを事業戦略のひとつとしており、それらの専門性を持つ人財の育成・確保を進めます。

また業務効率化・生産性向上及び価値創出を図るため、全社横断でDXへの取組みを進めるべく、2024年度に新たに設置されたDX推進委員会の下、全社員のITリテラシーを向上させるための研修の実施、あらゆるデータを活用して業務改革を推進する人財やデジタルと業務・経営を総括して考えることのできる人財の育成に取組みます。

 

3)グローバル人財の育成・確保

ビジョンの実現に向けて、中国市場への展開と合わせて米国市場への開拓にも着手しています。更なる発展に向けて、プロダクトアウトの視点だけでなく、カスタマーインの視点でそれぞれのお客様に合ったニーズをとらえ、新たに市場を創出していくことも重要です。今までとは違う環境の中で、当社の社員として培った価値観と、国ごとの考え方やルールを融合させて事業を創出、牽引していけるような“グローバル人財”の育成・確保に向けて取組みます。

 

4)生産・供給体制の拡充に向けた人財の育成・確保

更なる事業拡大における当面の課題として、生産体制の拡充が挙げられます。当社の強みの1つが「生産技術力」であり、優れた品質と安定供給を担保することが、当社ブランドを支えております。現中期経営計画で既存工場への投資を進め生産能力の拡充を図ることに加えて、2030年までの新工場建設も計画しています。

生産・供給体制の拡充に向けて、スマートファクトリーの導入や社員の多能工化を図ると共に現場に従事する社員の採用の間口を広げていくなどして、人財の育成・確保に取組みます。

 

5)研究開発力の向上のための専門性の強化

当社の強みの1つとして、糖にこだわり、素材と機能性を追求する「研究開発力」があります。この研究開発力の基になるものが研究・技術本部の専門性であり、当該部門では引き続き専門性を徹底的に追求して、当社の強みを伸ばしていく必要があると考えています。

専門性の強化に向けて、例えば研究開発を進める上で必要な専門知識や技能を社員に習得させる大学院履修支援制度を設け、会社の発展に寄与する人財の育成につなげています。

またビジョン実現に向けて「シーズ×研究技術」を掲げており、独創的な商品の開発や新用途・新配合の製法技術の開発、グローバル展開に向けた原料規格・品質管理の向上といった取組みが重要となることから、それらの専門性の強化にも取組みます。

 

② 社内環境整備に関する方針

サステナビリティの活動領域のひとつとして「人権の尊重・ダイバーシティの推進」を掲げています。社員一人ひとりが成長を実感しながら仕事への誇りを持ち、多様な個性を尊重しながら周囲と助け合い「チームワーク」を深めていくことで会社も共に成長する、そうした好循環を生み出していきたいと考えています。

また「エンゲージメント」・「健康経営」・「コンプライアンス」等の観点からも、社内環境整備に向けた取組みを進めます。

 

1)エンゲージメントの向上

エンゲージメントを高めていくことは、パーパスの浸透や「Kanro Vision 2030」の実現において必要不可欠な要素だと考えています。これまではオープンな情報共有やインナーコミュニケーションの強化に取組み、株式会社スタメンが自社で開発・提供するエンゲージメントプラットフォーム「TUNAG(ツナグ)」を利用する企業を対象として実施しているベストエンゲージメントカンパニー賞ベストルーキー賞を2021年に受賞しました。

 

現中期経営計画では、2030年までの従業員エンゲージメントスコアの目標値を定めており、この目標達成にむけて引き続き取組みを進め、一人ひとりが自律的に働きながら共創するエンゲージメントの高い組織へ変革するための制度と仕組みを強化しています。

 


 

2)健康経営の推進

当社では社員とその家族の健康の充実が重要と考え、2020年に健康経営宣言を制定し、「健康経営戦略マップ」や「健康経営ロードマップの策定」を通して健康経営の実現に向けて計画的に取組んでまいりましたが、そうした取組みをご評価いただき、健康経営優良法人に3年連続で認定されました。引き続き社員の健康づくりを支援するために様々な取組みを行います。

【2023年の施策例】

・定期健康診断結果データ化やワークエンゲージメント調査に基づく効果検証

・事業所ごとの状況に応じたメンタルヘルス施策実施

・生活習慣改善施策実施(ヘルスリテラシーの向上)

・特定保健指導初回面談の社内実施


 
3)ダイバーシティの推進

多様な個性や能力が最大限に発揮され社員と組織が成長する企業を目指し、2018年にダイバーシティ宣言を制定しました。多様な個性を尊重し、全ての社員がライフとワークのバランスを取りながら活躍できるよう次の3つの視点「多様な視点」、「働き方改革」、「意識改革」から取組みを実施しています。こうした取組みの結果、女性管理職比率は2023年度で15.6%、育児休業取得率も100.0%、有給休暇の取得率も72.5%に達しています。

社外評価としては、2021年3月に経済産業省による「新・ダイバーシティ経営企業100選」、2021年11月には総務省による「テレワーク先駆者百選」に選出されました。また2021年5月に次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん」と女性活躍推進法に基づく「えるぼし」に認定されました。


 

4)コンプライアンス意識の向上

当社ではチーフ・コンプライアンス・オフィサー及び各事業所にコンプライアンス・オフィサーを設置してコンプライアンスに関する体制を強化するとともに、内部通報制度を運用しています。寄せられた相談や苦情は適切に対処すると共に、様々な施策に組み込むことで、コンプライアンス意識を高めています。

【主な施策例】

・全役員・社員を対象とした「企業倫理/コンプライアンス」に関する研修の定期的な実施

・コンプライアンスカードの配布

・レピュテーションリスク対策

 

上記に加え、今後アジアやアメリカといった更なるグローバル展開を見据えていることから、各国・地域の法令やその他のルール等を意識した研修等を継続して実施するなどして、より一層のコンプライアンス意識向上に取組みます。

 

 

③指標と目標

指標(KPI)

2023年度実績

目標

カンロ経営塾累計受講人数(目標値2027年)

 59名

  100名

DX研修のべ受講人数(目標値2027年)

198名

1,000名

チャレンジ評価“G”以上の割合

80%

従業員エンゲージメントスコア(目標値2030年)

52.5%

70%

女性管理職比率(目標値2030年)

15.6%

30%台

有給休暇取得率

72.5%

70%以上

コンプライアンス関連教育(eラーニング)の受講率

98.2%

100%

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社の事業に関し、経営者が投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識しているリスクは以下のようなものがあります。同時に、リスクにはプラス側面(機会)もあると捉えており、その内容は「3.事業に関する機会」に記載しております。また、以下に記載の内容は当社に関する全てのリスク・機会を網羅したものではありません。
 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日(2024年3月29日)現在において入手し得る情報に基づいて、当社が判断したものです。

 

1.事業に関するリスク

区分

リスク

主な対策

顕在化した場合の影響度

顕在化する可能性

リスク認識の前年からの変化

市場環境

国内

・消費者の消費動向の変化、多様化する消費者ニーズへの対応遅れによる既存事業への影響、成長機会の損失
・他社との競争激化を起因とする主力ブランド商品の販売減少、リベート増加等による収益性低下

・主力ブランド商品の刷新及び育成
・新ブランド商品の開発及び育成
・デジタルマーケティングの推進
・デジタルプラットフォーム「Kanro POCKeT」を通じた販売拡大、新たな商品・サービス提供
・国内キャンディ市場のシェア拡大によるコア事業強化、競争優位性の確立
・糖の価値創造活動の実施
・イノベーティブな飴(ハードキャンディ)商品の開発に向けた取組み

・少子高齢化、人口減少の影響による国内キャンディ市場の縮小
・糖に対するネガティブな風評の拡大による事業への影響

海外

・TPP、日EU経済連携協定など関税引き下げによる輸入品との価格競争
・海外市場進出遅れによる機会損失

・戦略的パートナーを通じた中国市場他への進出
・戦略的な輸出売上の増加
・海外専用商品、国内外統一規格商品の開発

食の安全・安心

・製品の品質、表示不備によるお客様からの信頼低下
・輸出国の品質基準を充足しない製品輸出による現地のお客様からの信頼低下

・SNS等における風評被害の発生による企業価値毀損

・カンロ品質方針に基づく、サプライチェーン全体での総合品質向上を目指した取組みの強化

・食品安全マネジメント充実のため、FSSC22000運用による品質管理
・CS向上委員会の設置

・SNS等の継続的なモニタリングによる不適切な情報の早期発見

 

 

区分

リスク

主な対策

顕在化した場合の影響度

顕在化する可能性

リスク認識の前年からの変化

サプライチェーン

原材料調達

・調達価格の変動による原価上昇
・調達先の倒産など、調達先起因による供給の不安定化

・計画的な購買による原価低減
・同一原材料の複数購買の実施
・代替原料の検討
・サプライヤーとのエンゲージメント向上

生産

・製造設備トラブルによる生産遅延、停止
・製造工場のオペレーションを担う人材の確保

・エネルギー価格上昇による収益性の低下

・計画的な設備保守、メンテナンスの実施

・生産合理化に向けた設備投資

・スマートファクトリーの実現に向けた取組み

 

物流

・欠品発生による機会損失
・需要予測の見誤りによる長期滞留在庫の発生
・輸送コスト上昇による利益圧迫

・需給予測精度の向上
・発注ロット見直しなど安定供給に向けた配送体制の構築

自然災害・感染症等

・大規模地震、河川氾濫などの自然災害による企業活動の停滞、停止
・感染症等のまん延による企業活動の停滞、停止

・企業活動の早期回復に向けた災害、感染症BCP運用
・工場の水害に備えた浸水対策の実施

財務

資金

調達

・シンジケートローンの財務制限条項へ抵触するリスク

・財務体質の維持、強化

 

 

2.経営基盤に関するリスク

区分

リスク

主な対策

顕在化した場合の影響度

顕在化する可能性

リスク認識の前年からの変化

情報システム

・システム障害による企業活動停滞、停止
・サイバーテロ、不正アクセス等による企業活動の停滞、停止や情報漏洩

・情報セキュリティポリシー及び情報セキュリティ管理規程の遵守
・サイバー事故対応に関する規程、マニュアル整備
・定期的な社員情報セキュリティ教育及び訓練の実施
・サイバーセキュリティリスク対策の強化
・SaaS利用に関する内部管理体制の強化

地球環境

・企業活動における環境配慮への欠如による企業価値毀損
・気候変動による原材料の調達不全
・気候変動による当社製品需要への影響

CO₂排出量削減、食品廃棄物削減の為の生産設備投資
・製品の賞味期限延長などフードロス削減に向けた各種取組み
・包装資材等の新たな環境配慮型素材への変更
・各工場における排水処理の適切な実施

 

 

区分

リスク

主な対策

顕在化した場合の影響度

顕在化する可能性

リスク認識の前年からの変化

人権の尊重・ダイバーシティ

・人権に関する取組み不十分による企業価値毀損
・多様な人材確保の困難
・多様な人材活躍を推進する、働く環境の整備遅れによる競争力低下

・カンロ人権ポリシー策定、運用
・人的資本経営の推進
・カンロファームの取組み強化
・ダイバーシティに係る社員教育の定期的実施

ガバナンス

・コーポレート・ガバナンス、内部統制の機能不全による事業継続のリスク
・コンプライアンス違反発生による企業価値毀損
・事業過程で取得した個人情報の漏洩や不正利用等

・コーポレート・ガバナンス体制の強化
・投資家向け説明会の開催による機関・個人投資家とのエンゲージメント向上
・ガバナンス委員会、コンプライアンス委員会の設置
・定期的な社員コンプライアンス、ハラスメント研修の実施
・ソーシャルメディア規程の遵守
・個人情報保護規程の遵守

 

 

3.事業に関する機会

(デジタル化について)

ITとデジタル技術の進化が、ビジネスや日常生活に大きな変化をもたらし、その変化は急速に進んでいます。

当社は、デジタルプラットフォーム「Kanro POCKeT」を核に、同プラットフォームへのコミュニティ機能の実装及びアプリ化、効果的なSNS運用など当社ECビジネスの拡大、デジタルマーケティングの進展は、各事業を超えた新たな提供価値を可能にし、顧客との接点を増やすことで、ブランドロイヤリティの向上とロイヤルカスタマーの拡大に寄与すると認識しております。
 また、スマートファクトリー化の推進による生産現場でのデジタルツールの活用、全役職員のITリテラシー及びスキル向上、RPAツール活用による業務効率化等を図ることで、更なる生産性の向上や働き方改革を実現させることができると認識しております。

 

(グローバル化について)

TPP、日EU経済連携協定などの発効により、キャンディの輸入関税率は漸次低下・撤廃されることから、将来輸入品の価格競争力が高くなる、販売促進が強化されるなどの動きが加速し、特にグミ市場においては国内市場もグローバル化が進む可能性があります。

そのような状況を踏まえて、当社が海外本格進出を見据え、ブランド基軸経営で商品の海外規格対応やマーケットに適応した商品開発に取組むことは当社の輸出売上を拡大させるだけでなく、ブランド力の向上及びより強固な品質保証体制の構築につながり、将来のキャンディの国内輸入関税率の漸次低下・撤廃下においても、国内キャンディ市場においてトップシェアである当社の競争力を大きく向上させると捉えております。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日(2024年3月29日)現在において判断したものです。

 

(1) 経営成績の状況及び分析

当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症へ移行したことを背景に、人流の拡大やインバウンド需要の増加等により、緩やかに回復しています。また、消費者物価は上昇基調にあるものの、雇用・所得環境の改善や各種政策の効果により、緩やかな景気回復の継続が期待されています。しかしながら、世界的な金融引締めの影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが景気下押しのリスクとなっており、物価上昇や中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の動向など先行きは依然不透明な状態が継続しています。

キャンディ市場におきましては、飴カテゴリーは、人流増加に伴う喫食シーンの拡大下、継続する新型コロナウイルスの感染拡大の影響や花粉飛散量増加、インフルエンザの早期流行によるセルフケアの高まりから、のど飴需要が拡大し、前期を上回りました。また、好調なグミカテゴリーの伸長は継続しており、価格の上昇とも相俟って前期比で大きく増加し、キャンディ市場全体の伸びを牽引しております。

このような事業環境において、当社は企業パーパス「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」の下、3ヶ年計画の2年目となる「中期経営計画2024」の3つの事業戦略(「価値創造」・「ESG経営」・「事業領域の拡大」)を着実に推し進めております。上期における需要の急激な増加を受けて、安定供給の観点から3月以降商品アイテムを絞り一部製品につき休売等の対応を実施しておりますが、人員増強を含む生産体制整備の進捗により、グミ・飴共に更なる需要取り込みが可能となり、当期の売上高は、前期比38億97百万円(15.5%)増収の290億15百万円となりました。

 

① 売上高

当社は、単一セグメントであるため、商品カテゴリー別に売上高の状況を分析しております。その結果は、次のとおりであります。

<飴カテゴリー>

飴は、のど飴及びZ世代向け商品を含むファンシーカテゴリーを中心に袋形態が増加すると共に、ウィズコロナへの本格移行に伴いコンパクトサイズ形態・スティック形態の需要も回復し、前期比16億22百万円(12.1%)増収の150億46百万円となりました。製品別では、ノンシュガーのど飴シリーズの「ノンシュガー果実のど飴」、「ノンシュガースーパーメントールのど飴」に加え、価格改定(3月)と共にテレビコマーシャルを実施した「健康のど飴」シリーズが好調に推移しました。

 

<グミカテゴリー>

主要商品の価格改定(3月)を実施したグミは、発売20周年の昨年に大きく伸長した主力ブランド「ピュレグミ」シリーズが、テレビコマーシャルも功を奏し販売増となり、ハード系の「カンデミーナグミ」、直営店舗ヒトツブカンロ・デジタルプラットフォーム「Kanro POCKeT」での高付加価値商品「グミッツェル」の伸びとも相俟って前期比23億21百万円(21.2%)増収の132億93百万円となりました。

 

<素材菓子カテゴリー>

素材菓子は、前期比48百万円(6.7%)減収の6億71百万円となりました。

 

② 売上総利益

継続する原材料価格・工場諸経費の上昇に対応し、一部商品の価格改定及び内容量の変更を実施すると共に、販売数量の増加と生産性向上の実現により、売上総利益は前期比20億64百万円(21.3%)増益の117億38百万円となりました。

 

 

③ 営業利益

テレビコマーシャル及び各種商品キャンペーンの実施による広告宣伝費の増加、人員増加・業績連動賞与増加・役員退職関連費用等による人件費の増加に加えて、事業領域拡大への施策経費を含む一般費が増加したものの前期比14億55百万円(75.3%)増益の33億88百万円となりました。

 

④ 経常利益

前期の損害金収入の反動もあり前期比14億31百万円(71.5%)増益の34億32百万円となりました

 

⑤ 当期純利益

賃上げ促進税制適用(税額控除)により実効税率が低下し、前期比11億16百万円(82.9%)増益の24億62百万円となりました。

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

2022年12月

2023年12月

増減

増減率(%)

売上高

25,118

29,015

3,897

15.5%

売上総利益

9,674

11,738

2,064

21.3%

営業利益

1,933

3,388

1,455

75.3%

経常利益

2,001

3,432

1,431

71.5%

当期純利益

1,346

2,462

1,116

82.9%

 

 

(2) 生産、受注及び販売の状況

① 生産実績

当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

菓子食品事業

36,621,131

115.0

 

(注) 金額は生産者販売価格により算出しております。

 

② 受注実績

受注生産は行っていないため、該当事項はありません。

 

③ 販売実績

当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

菓子食品事業

29,015,855

115.5

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前事業年度

当事業年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

三菱商事㈱

23,945,533

95.3

27,385,739

94.4

 

 

 

(3) 財政状態の分析

当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べ35億24百万円15.8%)増加し258億39百万円となりました。これは主に現金及び預金が15億10百万円、売掛金が8億84百万円、有形固定資産が6億73百万円、商品及び製品が1億84百万円増加したことによるものです。

負債の部は、前事業年度末に比べ15億45百万円15.8%)増加し113億5百万円となりました。これは主に買掛金が5億53百万円、未払法人税等が4億83百万円、未払費用が2億13百万円、賞与引当金が1億18百万円増加したことによるものです。

純資産の部は、前事業年度末に比べ19億78百万円15.8%)増加し145億33百万円となりました。これは主に当期純利益24億62百万円の計上と配当金5億61百万円の支払によるものです。

 

(4) キャッシュ・フローの状況及び分析

① キャッシュ・フローの状況

当事業年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前事業年度末に比べ15億10百万円増加し、37億61百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金の増加、法人税等の支払などがあったものの、39億35百万円の資金増(前事業年度は23億73百万円の資金増)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、18億39百万円の資金減(前事業年度は11億16百万円の資金減)となりました。

これは主に設備投資などの支出によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、5億85百万円の資金減(前事業年度は11億6百万円の資金減)となりました。

これは配当金の支払などにより資金が減少したことによるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析

(キャッシュ・フロー関連指標の推移)

 

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

自己資本比率(%)

56.3

56.3

55.4

56.3

56.2

時価ベースの自己資本比率(%)

58.9

53.5

53.0

68.4

112.0

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

0.4

0.7

0.2

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

340.2

385.8

842.5

2,225.9

2,172.5

 

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産

 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

 キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

 インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

 (注1)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

 (注2)キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを利用しております。

(注3)有利子負債は貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債(短期借入金、長期借入金)を対象としております。また、利払いは、キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社の運転資金需要の主なものは、原材料の仕入や労務費、製造諸経費、販売費及び一般管理費等であります。また、設備投資資金需要は、主にキャンディ製造設備への投資であります。

これらの資金需要については、営業活動によるキャッシュ・フローや金融機関からの借入により調達しております。当社は、「中期経営計画2024」にて策定した財務戦略に基づき、コア事業が創出した営業キャッシュ・フローを成長エンジンであるグミ生産体制の増強、デジタル化推進及び新たな事業領域であるデジタルコマース事業、グローバル事業及びフューチャーデザイン事業の成長に向け投資しております。また、取引金融機関とは2022年度にコミットメントライン契約を締結し、資金ニーズに応じた機動的且つ安定的な資金調達を図っております。

 

(5) 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって当社が採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載のとおりであります。また、財務諸表を作成するにあたり、資産・負債や収益・費用に影響を与える見積りは、過去の実績や現在の状況並びに入手可能な情報を総合的に勘案し、その時点で最も合理的と考えられる見積りや仮定を継続的に使用しておりますが、見積り及び仮定には不確実性が伴うため、実際の結果と異なる可能性があります。

財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 当社は、1973年5月に三菱商事株式会社との業務提携を行い、同社と販売総代理店契約を結んでおります。

 

6 【研究開発活動】

当社は、「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」というパーパスのもと、「糖を科学する技術」をコア・コンピタンスとし「素材を活かす技術」及び「機能を発揮させる技術」の構築に資する研究開発に取組んでまいりました。また、温室効果ガス排出量の削減をはじめ脱プラスチックや食品廃棄物の発生抑制・有効活用等、サステナブル社会の実現へ向けた取組みに加え、グローバル化や外部環境変化への適応に向けた研究開発活動も積極的に実施しております。

様々な分野の研究開発を実施するにあたり、「配合、製法開発」と「設備開発」の2つの側面ごとにテーマを設定することで、研究開発の質的向上と効率化を目指しております。

 

(1) 配合、製法開発における取組み

「素材を活かす技術」について、サステナブルな経営基盤強化を目的とした研究方針を打ち出し、研究テーマとして「素材本来の美味しさを引き出すテーマ」のみならず、「環境に配慮した原料選定と配合技術の追究」、「加工度の低い菓子の製法開発」などを掲げてテーマを推進いたしました。

「機能を発揮させる技術」については、外部研究機関との共同研究を通して、オープンイノベーションを継続して推進しております。2022年に実施いたしました新型コロナ患者(軽症者)を対象にしたヒト臨床試験において、柿渋を含む飴を摂取した際の唾液に含まれるウイルスの不活性化を確認いたしました。この研究成果は、2023年7月27日付の国際科学誌「Viruses」にオンライン掲載されるに至りました。

また、「糖を科学する技術」という観点から糖の持つ新たな可能性の探索についても基礎研究レベルにまで踏み込んで実施しております。

また製法開発の応用例として、ピュレスライス、パンデミーナなどの既存ブランドに他の製品の製造技術を組み合わせた商品も発売いたしました。

 

(2) 設備開発における取組み

キャンディに更なる付加価値を持たせるため、既存技術に留まらない菓子の周辺技術を用いて、事業領域を拡大し得る新たなカテゴリー開発にも着手しております。また、温室効果ガス削減を目的とした工場外壁の断熱塗装・太陽光発電を始めとした各種施策の検討・実施、また働く従業員の負担軽減を目的とした自動化設備の検討・導入、省人化設備の検討も併せて行っております。

 

(3) サステナビリティに関する取組み状況

「持続可能な開発目標(SDGs)」を基本とした全社的な活動の下、フードロス削減の取組みとして、廃棄されている規格外製品(グミ)の利用検討を行っております。製造した製品を無駄にしないことで、廃棄物を減らすことはもとよりエネルギー面においても、サステナブルな生産を念頭に検討を重ねております。さらに、地熱利用をはじめとした再生可能エネルギーの利用など、あらゆる方面で環境負荷低減に努めております。

 

(4) グローバル化への取組み

ブランド製品のグローバル対応として各種原料の海外法規対応を進め、輸出可能な配合への変更を継続実施しています。その中でノンシュガー製品の海外戦略、中国輸出製品として昨年より販売している「0糖1刻」シリーズの拡充に向け、新製品開発を推進しております。

 

(5) 原料価格の高騰、供給不安に対する取組み状況

昨年に引続き原料価格の高騰や供給不安は続いており、ゼラチンなどのゲル化剤に加え、食品素材・添加物を問わず様々な原料に関する代替検討を実施しております。

ゼラチンに関しては新規原料供給先の確保に向け、現地での製造メーカー視察・監査などを実施し、製品の安定供給に向けた対応を実施しております。

 

なお、当事業年度における研究開発費の総額は、771百万円であります。