第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日(2025年3月31日)現在において判断したものです。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は2025年2月に、事業環境の変化と当社の現状・課題を踏まえ、新たに「Kanro Vision 2.0」を定めました。「Kanro Vision 2.0」は、企業パーパス「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」の下、ビジョン(あり姿)「Sweetな瞬間を創り続けることで人々と社会に笑顔を。」と4つのバリュー「Sweetな瞬間を創造する」「事業基盤を変革する」「未来へ紡ぐ」「創発的な組織の更なる進化」からなり、今後当社の進む方向性を示したものです。

 

企業理念体系

① 企業理念

「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」を、優しい未来へリードする素材の力と機能を追求した商品・サービスで実現する

 

② クレド(行動指針)

創意工夫: 変化を恐れず、自ら考え、新たな価値をつくり続ける

信義誠実: 誠実な言動を通じて、すべてのステークホルダーからの信頼に応える

百万一心: 多様性や専門性を受け入れ活かし合い、パーパスに向かって社員、会社共に成長する

 

Kanro Vision 2.0の全体像


 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

当社は「Kanro Vision 2.0」の実現に向けて、2025年12月期から2030年12月期までの6ヶ年を対象とする「中期経営計画2030」を策定いたしました。

当中計は「国内グミ事業を中心に更なる成長を実現すると共に、持続的成長のための事業領域拡大・ビジネス モデル拡張を進める」期間と位置づけております。

主要施策及び主要指標は以下のとおりであり、「Kanro Vision 2.0」で掲げた4つのバリューに基づく施策について、本年度より具体的な取組みを開始しております。

 

「中期経営計画2030」主要施策 及び 主要指標


 

(3) 2025年度の経営指標

当社は、2025年度の経営指標として売上高336億円、営業利益43.2億円、経常利益43.4億円、当期純利益32.6億円を目標としております。

 

(4) 経営環境及び会社の対処すべき課題

生産体制の強化

近年の国内グミ市場の伸長は著しく、当社商品の販売についても大きく伸張しております。昨年、当社は長野県松本市所在の松本工場のグミ生産能力を増強しておりますが、今後も更なる拡大が予測されるグミ市場に対応すべく、2027年生産開始を目指し、長野県朝日村所在の朝日工場の増築棟建設、グミライン新設、自動倉庫新設等を決定いたしました。

当社はキャンディ市場シェアNO.1企業として、今後も事業戦略に沿った生産体制の強化・充実を図り、飴・グミ市場の更なる成長を牽引してまいります。

 

事業基盤の変革

コア事業(国内飴・グミ事業)では、当社の商品開発力、ブランド力並びにマーケティング施策が功を奏し、キャンディ市場において当社はNO.1シェアを引続き維持しておりますが、「Kanro Vision 2.0」の実現には、「事業基盤の変革」が不可欠だと考えております。

当社は海外市場での調査結果及びインバウンド需要等から海外市場における当社商品の受容性が高いとみており、その機会を捉えるため、2025年1月よりグローバル事業部を新規事業本部からコア事業本部へ移管いたしました。今後はコア事業本部のリソースを最大限活用し、既進出済の中華圏(台湾・香港・中国)に続き米国市場への本格的な進出に取組んでまいります。

一方、拡大するEC市場については、当社のブランド価値向上のプラットフォーム「Kanro POCKeT」並びにファンコミュニティ「Kanro POCKeT Ⅹ(クロス)」を活用することでCX(Customer Experience)を向上、顧客との関係性を一期一会型からエンゲージメント型に進化させ、DtoC事業による新たな収益モデルの実現に取組んでまいります。

 

経営基盤の強化

人財、IT/デジタル、研究開発等の経営基盤の強化は、会社の成長における重要な課題だと認識しております。

当社は引続き人的資本経営を進め、人財の育成及び確保に取組むと共に、人事制度整備等も実施しながら、より働きがいのある職場実現への環境整備を行います。

また、新基幹システムの稼働開始に向け取組むと共に、生成AI等のデジタルツールを積極的に活用し、業務効率化による働きやすい職場の構築及び生産性・競争性向上を図ってまいります。

研究開発については、中長期の商品開発方針である「素材を活かす」「キャンディならではの機能性」の下、サステナビリティを意識した各研究テーマへの取組み推進、継続的な投資を行い、イノベーション創出へ挑戦し続けます。

 

サステナビリティの推進

当社は事業活動を通じた社会課題の解決に取組むため、「サステナビリティ委員会」を2022年に設置し、サステナビリティに関する重要課題の解決に向けた活動に取組んでまいりましたが、その取組みをさらに前進させるため、2024年1月から委員会推進体制を見直すと共に、「サステナビリティ推進部」を新設しました。

社長を委員長とするサステナビリティ委員会の新たな体制は、4つの分科会「糖の価値創造・社会貢献」「事業を通じた環境負荷削減」「食の安全・安心」「人権の尊重・ダイバーシティの推進」から構成され、各分科会のリーダーは執行役員が担っています。サステナビリティ委員会、サステナビリティ推進部が中心となって、全役職員でサステナビリティの推進に引続き取組んでまいります。

 

コーポレート・ガバナンス体制の強化

当社は、ガバナンス体制の強化を通じて、企業価値の更なる向上と持続的な成長を目指しております。危機管理対応としては、各種BCPの整備、サイバーセキュリティ対策の強化に取組んでいます。コンプライアンスへの対応としては、チーフ・コンプライアンス・オフィサーを委員長とするコンプライアンス委員会を定期的に実施しており、また、様々なテーマでの社内研修を継続的に実施することで、社員のコンプライアンス意識を高めてまいります。

 

※インテージSRI+ キャンディ市場 2024年 販売金額シェア

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みの状況は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日(2025年3月31日)現在において判断したものです。

 

(1) カンロのサステナビリティに関する考え方

当社はキャンディNO.1企業として、持続可能(sustainable)な社会をすべてのステークホルダーと共創することにより、皆様から愛され、信頼される企業になることを目指しています。

今後も糖を基盤とした事業活動を通じて社会課題の解決に取組むことで、企業価値の向上と共にSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献します。

 

サステナビリティ推進基本方針

当社は、企業パーパス「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」の下、事業を通じて社会課題の解決に寄与しながら、企業価値を向上させることで、人と社会の持続的な未来に貢献します。

 

① 糖の価値創造

糖の持つ価値を正しく発信すると共に、世界の多様な人々の生活に健康・喜び・楽しさ・幸福な時間をもたらす商品やサービスを通じて、よりよい社会づくりに貢献します。

② 事業を通じた環境負荷削減

気候変動に対応するため温室効果ガス排出量削減を目指します。また、資源循環型社会実現に貢献すべく、食品廃棄物や使用するエネルギーの削減にも取組みます。

③ 食の安全・安心

食品を扱うメーカーとして、食の安全・安心の実現は最重要の使命と認識しています。また、お客様に対する正しい情報発信・コミュニケーションを通じて、食生活そのものの安全・安心にも貢献します。

④ 人権の尊重・ダイバーシティの推進

社員一人ひとりが成長し、仕事への誇りを持てるように多様な個性を尊重して、組織全体の成長を目指します。また、常に社会へ目を向けてカンロに関わる全ての人が安全に働ける環境を整え守ります。

⑤ 組織統治

社会から信頼され、必要とされる企業となるために、公正な事業と透明性の高い組織運営を実現します。常にステークホルダーの声に耳を傾け、経営に反映します。

 

(2) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

① ガバナンス

当社は、全社員がサステナビリティへの意識をより一層高め、これまでの取組みを深化させることを目的として、各部門より選出された委員から構成される組織横断の「サステナビリティ委員会」を2022年4月に新設しました。

2024年1月からは、委員長を代表取締役社長、4つの分科会のリーダーを執行役員が務め、サステナビリティ推進部を委員会の事務局とする体制に強化しています。当委員会の中で、サステナビリティに関する基本方針、推進体制、各KPI進捗状況並びに今後の対応策等を協議しています。

当委員会で協議された内容は四半期に一回以上の頻度で常勤役員会・取締役会へ報告され、取締役会が監督・助言をすると共に、中期経営計画や年度の予算等の重要事項は取締役会の決議で決定されています

 

② リスク管理 

当社では、経営企画部を主管部とする全社的リスク管理体制の下、当社事業に与える影響度の高いリスクについて定期的に識別・評価を行い、リスク管理基本規程に基づいて取締役会に報告を行っています。

サステナビリティに関するリスクについても、サステナビリティ推進部を中心にサステナビリティ委員会で検討、及び対応策の取組みを管理しています。こうした取組み状況は、サステナビリティ委員会より常勤役員会・取締役会へ定期的に報告され、監督・管理を行っています

 

 

                                      【サステナビリティ推進体制】     


 

(3) 重要なサステナビリティ課題

① マテリアリティの特定プロセス

事業を通じて社会課題の解決に寄与しながら企業価値を向上させるため、当社を取り巻くあらゆる社会課題のうち、将来にわたって事業活動を継続するために重要な課題をマテリアリティ(サステナビリティ課題)として定めました。マテリアリティは外部環境の変化や当社の事業成長に応じて変化しうるものと考えています。そのため、マテリアリティは2018年度に一度特定しましたが、2021年度、2025年度に見直しを行いました。

 

② マテリアリティ

「Kanro Vision 2.0」の実現に向け、「糖の価値創造」、「事業を通じた環境負荷削減」、「食の安全・安心」、「人権の尊重・ダイバーシティの推進」、「組織統治」の5つのテーマを掲げました。また、それぞれのテーマに関連するマテリアリティ(重要課題)とアプローチを下表のとおり整理しています。

 

 

マテリアリティ

アプローチ

糖の価値創造

健康福祉の増進

糖に対する正しい知識の普及活動を実施する

健やかな生活に寄与する商品・サービス開発

事業を通じた

環境負荷削減

気候変動

温室効果ガス排出量を削減する

サプライチェーンにおけるサステナブル調達(環境影響側面)

資源循環と廃棄物削減

食品廃棄物を削減する

商品容器に環境にやさしい素材(バイオマス・生分解性・リサイクル素材・紙等)を使用

使用するエネルギーを削減

食の安全・安心

商品の安全衛生

原料、製造委託先の品質リスク評価に基づき、品質審査を計画的に実施

消費者品質満足度の向上

責任あるマーケティングと表示

ユニバーサルデザインを意識した商品設計

 

 

 

マテリアリティ

アプローチ

人権の尊重・

ダイバーシティの推進

人権の尊重

人権デューデリジェンスの実施

サプライチェーンにおけるサステナブル調達(人権側面)

多様な人財の活躍

多様な人財を活かし、価値創造につなげる

健康と安全を確保し、安心して活き活きと働ける職場を整備する

組織統治

ガバナンス

ステークホルダーへの説明責任を重視する

コンプライアンス意識の向上

リスクマネジメント強化

情報セキュリティの強化

 

 

③ 指標と目標

上記で掲げたサステナビリティ課題のうち、指標を用いて進捗を管理する項目については下表のように整理しています。下記以外のマテリアリティに関しても、今後適切な指標の設定を行い、進捗を管理していきます。

 

マテリアリティ

指標(KPI)

2024年度実績

目標

健康福祉の増進

糖に対する正しい知識の普及活動の実施人数(延べ)

939万人

2030年までに1,500万人に実施

気候変動

温室効果ガス総排出量(Scope1,2,3)

Scope1,2

10,828t-CO₂

Scope3

87,308t-CO₂

2030年

Scope1,2 10,000t-CO₂

Scope3  110,000t-CO₂

2050年までにカーボンニュートラル達成

資源循環と廃棄物削減

食品廃棄物量(売上高原単位)

4.42t/億円

2030年までに2019年比30%削減

3.24t/億円

商品容器に使用する環境にやさしい素材の比率

0.8%

2030年までに30%

生産重量原単位でのエネルギー使用量(原油換算)

△1.8%

(2023年4月~2024年3月)

直近5年間で年平均1%削減

多様な人財の活躍

女性管理職(課長職以上)比率

15.4

2030年まで30%台

障がい者雇用率

2.6%

2030年まで3

従業員エンゲージメントスコア

51.9

 

2030年まで70%以上

(2020年47%)

 

 

 

 

(4) 気候変動(TCFD)に関する考え方及び取組

① ガバナンス

気候変動課題に関する取組み・モニタリング・レビューは、サステナビリティ委員会内の「事業を通じた環境負荷削減分科会」が主管しています。サステナビリティ委員会の詳細及び気候変動のリスク・機会に対する当社のガバナンスは、(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理に記載のとおりです。

 

② 戦略

当社は、気候変動によるリスクと機会を重要な経営課題の1つであると認識しており、当社製品及びサービスの調達・生産・供給までのバリューチェーン全体を対象として、当社への影響を考察し、リスクと機会を特定しています。

 

分析の前提

2℃シナリオと4℃シナリオの世界観を整理し、2030年(中期)・2050年(長期)におけるリスクと機会を整理しました。シナリオ分析結果におけるリスクと機会は、低炭素社会への移行に伴う政策や技術等の社会変化によって生じる「移行」側面と気候変動に伴う自然災害の発生や気温上昇等の「物理」側面を考慮しています。

設定シナリオ

時間軸

参照シナリオ

2℃

移行

2030年

(中期)

及び

2050年

(長期)

IPCCによる気候変動予測シナリオ「SSP1-2.6」(第6次評価報告書)、

IEAによる移行シナリオ「持続可能な開発シナリオ(SDS)」

(ⅠEA WEO 2018, 2020, 2024)

4℃

物理

IPCCによる気候変動予測シナリオ「SSP3-7.0」(第6次評価報告書)

 

 

シナリオ分析結果

前事業年度は定量的な簡易分析も加味しながら定性的に評価を実施しておりました。当事業年度より、「中期経営計画2030」の内容をシナリオ分析に組み入れると共に、2030年及び2050年の時間軸を想定の上、当社の営業利益に与える影響度を「大(10億円以上)」「中(10億円未満~5億円以上)」「小(5億円未満)」での評価に見直しました。

 

〈気候変動による主なリスク2℃シナリオ〉

大分類

小分類

リスク

要因

事業への影響

影響度

時間軸

対応策

移行リスク

政策と法

カーボンプライシングの導入

 

炭素税、排出量取引導入により当社生産コストが増加する
・カーボンプライシングによって発生する費用の試算結果は以下のとおり
【温室効果ガス排出量削減を行わない場合】

2030年度:炭素税 2.2億円、排出量取引 0.05億円
2050年度:炭素税 3.3億円、排出量取引 0.6億円

【温室効果ガス排出量削減の目標達成時】

2030年度:炭素税 2.0億円、排出量取引 なし

2050年度:温室効果ガスをわずかに排出する可能性があるが、炭素税及び排出量取引による事業への影響は上記と比べて軽微であると認識

中期

長期

・2030年にScope1,2の温室効果ガス総排出量を10,000t-CO₂、Scope3の温室効果ガス総排出量を110,000t-CO₂、2050年までのカーボンニュートラル達成に向け、再生可能エネルギーの使用拡大(太陽光発電の増設、地中熱を利用して基礎空調を行う換気システムの導入、不良廃棄飴のバイオマスエネルギーへの転換利用等)、省エネ施策、生産性効率化施策を推進、検討

・工場稼働の最適化による高効率の生産体制の構築

・気候変動に対する影響度を設備投資採択基準に追加(2022年)

・温室効果ガス削減につながるESG投資の実施

・A重油、メタンガスの燃料転換を検討

プラスチック利用の規制

再生プラスチック比率の上昇等により、包装材の調達コストが増加する

中期

・プラスチック使用削減施策(パッケージ包装薄肉化、サイズ縮小等)を経済性を考慮しながら推進、検討

・2030年までに商品容器における環境にやさしい包材(バイオマス、生分解性、リサイクル素材、紙等)の比率を30%まで引き上げる目標達成に向けた取組み推進、検討

市場

原料コスト増加

低炭素社会へ移行し、農作物の収量が減少することで原料価格が高騰し調達コストが増加する

中期

長期

・原料を2社以上の購買先確保を原則とする購買の基本方針遵守と更なる調達ルートの拡大検討

・主原料における代替原料検討

・廃棄原料の削減推進(再生利用等)

電力コスト上昇

電力価格の上昇により、工場、保管倉庫の温度維持コストが増加する

・電力価格上昇に伴うコスト増加額は以下のとおり

2030年度:0.7億円

2050年度:2.3億円

中期

長期

・太陽光発電の増設

・地中熱を利用して基礎空調を行う換気システムの導入

評判

消費者の環境意識の高まり
嗜好の変化

消費者の環境意識の高まりによって、環境対応が遅れた商品の消費者離れや流通業の当該商品の取扱い回避に伴う売上が減少する

中期

・2030年までに商品容器における環境にやさしい包材(バイオマス、生分解性、リサイクル素材、紙等)の比率を30%まで引き上げる目標達成に向けた取組み推進、検討

・人権ポリシー(2023年策定)に則った環境面を含むサプライヤーの状況確認等、人権デューデリジェンスの実施

・調達ポリシーの策定(2024年12月)

 

 

 

〈気候変動による主なリスク4℃シナリオ〉

大分類

小分類

リスク

要因

事業への影響

影響度

時間軸

対応策

物理リスク

急性

台風や洪水等の異常気象の発生

洪水や台風の発生に伴い、物流が滞り、調達、生産、物流、販売活動が停止することで売上高が減少、または調達コストが増加する

また、工場等が被災することで製品や設備の毀損に伴うコストが増加する

中期

・生産工場に火災保険を付加、罹災に伴う損失補填として利益保険を付加

・災害対応BCPを策定済み

・松本市ハザードマップ上で奈良井川の浸水想定区域にある松本工場に、擁壁、止水板を設置対策済み(2021年)

 

 

〈気候変動による主な機会 2℃シナリオ〉

大分類

機会

要因

事業への影響

影響度

時間軸

対応策

市場

省エネ設備導入の推進

省エネ設備への更新の実施等、より効率的な製造により製造コスト、将来的な炭素税を削減する

中期

長期

・ボイラー設備の利用手順見直し、空調設備の更新、LED照明への切り替え等省エネ施策の推進

・A重油、メタンガスの燃料転換を検討

・再生可能エネルギーの更なる使用拡大を推進、検討

評判

消費者の環境意識の高まり
嗜好の変化

 

環境負荷削減商品、環境負荷が低い原材料を使用した商品開発により売上が増加する

環境意識が高い消費者のニーズにあわせた製品、サービス開発で消費者需要に対応し、売上が増加する

中期

長期

・2030年までに商品容器における環境にやさしい包材(バイオマス、生分解性、リサイクル素材、紙等)の比率を30%まで引き上げる目標達成に向けた取組み推進、検討

・環境に配慮した商品設計基準作成検討

・カーボンフットプリントの算定(2024年10月時点3商品、今後算定対象商品拡大予定)

・生産時に規格外となったグミ「グミッツェルU」の販売(2025年1月)

・新規事業における廃棄飴、廃棄包材のアップサイクル商品等の開発を推進

 清見みかんの搾汁時に残る繊維質「清見パルプ」と果汁を使用したグミ(2022年)

② 廃棄包材を活用したバッグ、サコッシュ、ペンケース(2023年)

③ 廃棄包材を活用しアップサイクルしたテーブル(2024年12月)

 

 

③ リスク管理

当社は、気候変動に関するリスクを、経営基盤に関するリスクと捉え、特に重要な経営課題の1つであると認識しています。リスクと機会の特定に当たり、サステナビリティ委員会を中心とするメンバーでシナリオ分析を行い、当社事業に与える影響度の高いリスク・機会を識別・評価の上、常勤役員会・取締役会に報告を行っています。気候変動のリスクに対する当社のリスク管理は、(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理に記載のとおりです。

 

④ 指標と目標

当社は、気候変動リスクへ対応するため、2030年の温室効果ガス総排出量目標についてScope1,2の温室効果ガス総排出量を10,000t-CO₂、Scope3の温室効果ガス総排出量を110,000t-CO₂と設定しており、2050年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げています。温室効果ガス排出量 Scope3の2030年目標に関して、目標値が2024年実績よりも上回っておりますが、当目標は2024年の売上高317億円から2030年売上目標500億円へと事業が拡大することに伴う上昇値から削減施策を鑑みて設定しています。

 

 

(5) 人的資本経営への取組み(戦略/指標と目標)

当社のパーパスである「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」を体現し、持続的な発展を続け、未来を創るために最も重要な資産が人財であると考えています。そして「Kanro Vision 2.0」を実現するためには、事業戦略と同期した人事戦略の遂行が重要です。特に事業領域拡大に向けたビジネスモデルや経営戦略に資するストーリーある人財投資に向けて、当社は人的資本経営に取組みます。

 

① 人財育成に関する方針

当社のビジョンにおいて、組織やそれを構成する社員は、パーパスの実現に向けた3つのプロミスを支える原動力であり、社員一人ひとりが、変化に対応し、学び続け、成長を継続することにより創発的な組織の更なる進化を目指します。

社員の育成を後押しするために、当社のクレドを念頭においた自律性、チャレンジ精神、リーダーシップ、オーナーシップ等に資する施策を進めます。

 

1)経営人財の育成・確保

世の中の不透明性・不確実性がますます強まる中において、“事業という大きな観点から組織をマネジメント”する人財と“社内外の力を集め牽引”する人財の両面の観点から、様々な価値観を受容出来る多様性と、強いリーダーシップを持った“経営人財”の育成・確保が重要と考えています。また、こうした人財が社内で活躍することによって、今以上に様々な価値観が混じり合い、トップダウンに拠らず社員が自ら考え、動くことの出来る組織づくりを目指します。

次世代の経営人財育成のために、例えば「カンロ経営塾」という選抜研修を実施しています。この研修では将来の経営幹部候補育成クラスと管理職候補となる若手育成クラスを設けています。経営幹部候補育成クラスでは約半年間、他社の経営幹部候補者等と合同で昨今の経営課題等をテーマとした研究を行い、その成果を自社に持ち帰り経営層へ提言しています。このクラスを卒業した社員は、現在役員として活躍しています。また若手育成クラスでは約半年間、将来のビジョン等について議論を重ね、経営トップを含む役員との対話の機会を設けています。この選抜研修には毎年女性も参加しており、このクラスを卒業した社員の多くは管理職として現在活躍しています。

また人財育成の一環として、様々な取組みを進めています。社員の多様なキャリアパスの実現を目的に社内公募制度を導入しています。1つの部門だけでなく様々な仕事や価値観に触れる機会を増やすことで、カンロの社員として更なる価値創造につなげます。

2024年度からは管理職に対する人事評価制度を改定し、管理職それぞれが「未来に向けて一歩踏み出せたか」を評価する仕組みを導入しています。管理職の意識と行動を変えていくことで、当社のパーパスやビジョンの実現に更に取組みます。

 

2)デジタル人財の育成・確保

データドリブンによるデジタルマーケティングを展開し、デジタル起点でのイノベーションによる新たな顧客価値を創造することを事業戦略のひとつとしており、それらの専門性を持つ人財の育成・確保を進めます。

また業務効率化・生産性向上及び価値創出を図るため、全社横断でDXへの取組みを進めるべく、2024年度に新たに設置されたDX推進委員会の下、エキスパートの育成及び全社的なITリテラシー向上の研修等を実施しています。今後も継続的にあらゆるデータを活用して業務改革を推進する人財やデジタルと業務・経営を総括して考えることのできる人財の育成に取組みます。

 

3)グローバル人財の育成・確保

ビジョンの実現に向けて、米国市場に本格参入します。更なる発展に向けて、プロダクトアウトの視点だけでなく、カスタマーインの視点でそれぞれのお客様に合ったニーズをとらえ、新たに市場を創出していくことも重要です。今までとは違う環境の中で、当社の社員として培った価値観と、国ごとの考え方やルールを融合させて事業を創出、牽引していけるような“グローバル人財”の育成・確保に向けて取組みます。

 

4)生産・供給体制の拡充に向けた人財の育成・確保

更なる事業拡大における当面の課題として、生産体制の拡充が挙げられます。当社の強みの1つが「生産技術力」であり、優れた品質と安定供給を担保することが、当社ブランドを支えております。「中期経営計画2030」で既存工場の増築棟建設、グミライン新設等の投資を進め、生産能力の拡充を図ることを計画しています。

生産・供給体制の拡充に向けて、スマートファクトリーの導入や社員の多能工化を図ると共に現場に従事する社員の採用の間口を広げていくなどして、人財の育成・確保に取組みます。

 

5)研究開発力の向上のための専門性の強化

当社の強みの1つとして、糖にこだわり、素材と機能性を追求する「研究開発力」があります。この研究開発力の基になるものが研究・技術本部の専門性であり、当該部門では引き続き専門性を徹底的に追求して、当社の強みを伸ばしていく必要があると考えています。

専門性の強化に向けて、例えば研究開発を進める上で必要な専門知識や技能を社員に習得させる大学院履修支援制度を設け、会社の発展に寄与する人財の育成につなげています。

またビジョン実現に向けて商品開発強化と機能性付加による高価値化を掲げており、独創的な商品の開発や新用途・新配合の製法技術の開発、グローバル展開に向けた原料規格・品質管理の向上といった取組みが重要となることから、それらの専門性の強化にも取組みます。

 

② 社内環境整備に関する方針

サステナビリティの活動領域のひとつとして「人権の尊重・ダイバーシティの推進」を掲げています。社員一人ひとりが成長を実感しながら仕事への誇りを持ち、多様な個性を尊重しながら周囲と助け合い「チームワーク」を深めていくことで会社も共に成長する、そうした好循環を生み出していきたいと考えています。

また「エンゲージメント」・「健康経営」・「コンプライアンス」等の観点からも、社内環境整備に向けた取組みを進めます。

 

1)エンゲージメントの向上

エンゲージメントを高めていくことは、パーパスの浸透や「Kanro Vision 2.0」の実現において必要不可欠な要素だと考えています。これまではオープンな情報共有やインナーコミュニケーションの強化に取組み、株式会社スタメンが自社で開発・提供するエンゲージメントプラットフォーム「TUNAG(ツナグ)」を利用する企業を対象として実施しているベストエンゲージメントカンパニー賞ベストルーキー賞を2021年に受賞しました。

「中期経営計画2030」では、2030年までの従業員エンゲージメントスコアの目標値を定めており、この目標達成にむけて引き続き取組みを進め、一人ひとりが自律的に働きながら共創するエンゲージメントの高い組織へ変革するための制度と仕組みを強化しています。

 


 

2)健康経営の推進

当社では社員とその家族の健康の充実が重要と考え、2020年に健康経営宣言を制定し、「健康経営戦略マップ」や「健康経営ロードマップの策定」を通して健康経営の実現に向けて計画的に取組んでおり、引き続き社員の健康づくりを支援するために様々な取組みを行います。

【2024年の施策例】

・定期健康診断結果データ化やワークエンゲージメント調査に基づく効果検証

・事業所ごとの状況に応じたメンタルヘルス施策実施

・睡眠施策実施(睡眠パーソナルチェック、睡眠セミナー)

 

3)ダイバーシティの推進

多様な個性や能力が最大限に発揮され社員と組織が成長する企業を目指し、2018年にダイバーシティ宣言を制定しました。多様な個性を尊重し、全ての社員がライフとワークのバランスを取りながら活躍できるよう次の3つの視点「多様な視点」、「働き方改革」、「意識改革」から取組みを実施しています。こうした取組みの結果、女性管理職比率は2024年度で15.4%、育児休業取得率も100.0%、有給休暇の取得率も74.8%に達しています。

 

4)コンプライアンス意識の向上

当社ではチーフ・コンプライアンス・オフィサー及び各事業所にコンプライアンス・オフィサーを設置してコンプライアンスに関する体制を強化すると共に、内部通報制度を運用しています。寄せられた相談や苦情は適切に対処すると共に、様々な施策に組み込むことで、コンプライアンス意識を高めています。

【主な施策例】

・全役員・社員を対象とした「企業倫理/コンプライアンス」に関する研修の定期的な実施

・コンプライアンスカードの配布

・レピュテーションリスク対策

 

上記に加え、今後アジアやアメリカといった更なるグローバル展開を見据えていることから、各国・地域の法令やその他のルール等を意識した研修等を継続して実施するなどして、より一層のコンプライアンス意識向上に取組みます。

 

③指標と目標

指標(KPI)

2024年度実績

目標

カンロ経営塾累計受講人数(目標値2027年

66

100

DX研修のべ受講人数(目標値2027年

354

1,000

チャレンジ評価“G”以上の割合

100.0

80.0

従業員エンゲージメントスコア(目標値2030年

51.9

70.0

女性管理職比率(目標値2030年

15.4

30.0%台

有給休暇取得率

74.8

70.0%以上

コンプライアンス関連教育(eラーニング)の受講率

99.2

100.0

 

 

3 【事業等のリスク】

当社の事業に関し、経営者が投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識しているリスクは以下のようなものがあります。同時に、これらのリスクに適切な対策を講じることは持続的な成長の機会としてとらえております。また、以下に記載の内容は当社に関する全てのリスクを網羅したものではありません。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日(2025年3月31日)現在において入手し得る情報に基づいて、当社が判断したものです。

 

1.事業に関するリスク

区分

リスク

主な対策

顕在化した場合の影響度

顕在化する可能性

リスク認識の前年からの変化

市場環境

国内

・消費者の消費動向の変化、多様化する消費者ニーズへの対応遅れによる既存事業への影響、成長機会の損失
・他社との競争激化を起因とする主力ブランド商品の販売減少、リベート増加等による収益性低下

・主力ブランド商品の刷新及び育成
・新ブランド商品の開発及び育成
・デジタルマーケティングの推進
・自社デジタルプラットフォーム「Kanro POCKeT」を通じた販売拡大、新たな商品、サービス提供
・国内キャンディ市場のシェア拡大によるコア事業強化、競争優位性の確立
・糖の価値創造活動の実施
・イノベーティブな飴(ハードキャンディ)商品の開発に向けた取組み

・少子高齢化、人口減少の影響による国内キャンディ市場の縮小
・糖に対するネガティブな風評の拡大による事業への影響

海外

・TPP、日EU経済連携協定など関税引き下げによる輸入品との価格競争
・海外市場進出遅れによる機会損失

・戦略的パートナーを通じた米国、中国市場ほかへの進出
・戦略的な輸出売上の増加
・海外専用商品、国内外統一規格商品の開発

食の安全・安心

・製品の品質、表示不備によるお客様からの信頼低下
・輸出国の品質基準を充足しない製品輸出による現地のお客様からの信頼低下
・SNS等における風評被害の発生による企業価値毀損

・カンロ品質方針に基づく、サプライチェーン全体での総合品質向上を目指した取組みの強化
・食品安全マネジメント充実のため、FSSC22000運用による品質管理
・CS向上委員会の設置
・SNS等の継続的なモニタリングによる不適切な情報の早期発見
 

 

 

区分

リスク

主な対策

顕在化した場合の影響度

顕在化する可能性

リスク認識の前年からの変化

サプライチェーン

原材料調達

・調達価格の変動による原価上昇
・調達先の倒産など、調達先起因による供給の不安定化

・計画的な購買による原価低減
・同一原材料の複数購買の実施
・代替原料の検討
・サプライヤーとのエンゲージメント向上

生産

・製造設備トラブルによる生産遅延、停止
・製造工場のオペレーションを担う人材の確保

・エネルギー価格上昇による収益性の低下

・計画的な設備保守、メンテナンスの実施

・生産合理化に向けた設備投資

・スマートファクトリーの実現に向けた取組み

 

物流

・欠品発生による機会損失
・需要予測の見誤りによる長期滞留在庫の発生
・輸送コスト上昇による利益圧迫

・需給予測精度の向上
・配送スケジュール及び発注ロット見直しなど安定供給に向けた配送体制の構築

自然災害・感染症等

・大規模地震、河川氾濫などの自然災害による企業活動の停滞、停止
・感染症等のまん延による企業活動の停滞、停止

・企業活動の早期回復に向けた災害、感染症BCP運用
・工場の水害に備えた浸水対策の実施

 

 

2.経営基盤に関するリスク

区分

リスク

主な対策

顕在化した場合の影響度

顕在化する可能性

リスク認識の前年からの変化

情報システム

・システム障害による企業活動停滞、停止
・サイバーテロ、不正アクセス等による企業活動の停滞、停止や情報漏洩

・(移行後の)基幹システムの誤作動等による企業活動の停滞

・情報セキュリティポリシー及び情報セキュリティ管理規程の遵守
・サイバー事故対応に関する規程、マニュアル整備
・定期的な社員情報セキュリティ教育及び訓練の実施
・サイバーセキュリティリスク対策の強化
・SaaS利用に関する内部管理体制の強化

・新基幹システム導入プロジェクトのマネジメント強化

地球環境

・企業活動における環境配慮への欠如による企業価値毀損
・気候変動による原材料の調達不全
・気候変動による当社製品需要への影響

・温室効果ガス排出量削減、食品廃棄物削減のための生産設備投資

・製品の賞味期限延長などフードロス削減に向けた各種取組み
・包装資材等の新たな環境配慮型素材への変更
・各工場における排水処理の適切な実施

 

 

区分

リスク

主な対策

顕在化した場合の影響度

顕在化する可能性

リスク認識の前年からの変化

人権の尊重・ダイバーシティ

・人権に関する取組み不十分による企業価値毀損
・多様な人材確保の困難
・多様な人材活躍を推進する、働く環境の整備遅れによる競争力低下

・カンロ人権ポリシー策定、運用
・人的資本経営の推進
・カンロファームの取組み強化
・ダイバーシティに係る社員教育の定期的実施

ガバナンス

・コーポレート・ガバナンス、内部統制の機能不全による事業継続のリスク
・コンプライアンス違反発生による企業価値毀損
・事業過程で取得した個人情報の漏洩や不正利用等

・コーポレート・ガバナンス体制の強化
・投資家向け説明会の開催による機関、個人投資家とのエンゲージメント向上
・ガバナンス委員会、コンプライアンス委員会の設置
・定期的な社員コンプライアンス、ハラスメント研修の実施
・ソーシャルメディア規程の遵守
・個人情報保護規程の遵守

 

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書の提出日(2025年3月31日)現在において判断したものです。

 

(1) 経営成績の状況及び分析

当事業年度におけるわが国経済は、個人消費の一部に足踏みが残るものの緩やかに回復しました。しかしながら、欧米における高金利水準継続や中国不動産市場の停滞継続に伴う影響など、海外景気の下振れが国内景気下押しのリスクとなっており、物価上昇や米国の今後の政策動向、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等、先行きは依然不透明な状態が継続しています。

キャンディ市場におきましては、価格改定の浸透もあり、各カテゴリー並びに市場全体でも販売金額は前年を上回って推移しました。当社の主要ドメインについては、飴カテゴリーは、感染症の流行と共にセルフケアの高まり継続によりのど飴が堅調に推移し、グミカテゴリーは、ハード系食感の商品が牽引し高い成長を続けております。

このような事業環境において、当社は企業パーパス「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」の下、「中期経営計画2024」の最終年度である当期においても3つの事業戦略(「価値創造」・「ESG経営」・「事業領域の拡大」)を着実に推し進め、当期の売上高は、前期比27億62百万円(9.5%)増収の317億78百万円となりました。

 

① 売上高

当社は、単一セグメントであるため、商品カテゴリー別に売上高の状況を分析しております。その結果は、次のとおりであります。

<飴カテゴリー>

飴は、商品アイテムの絞り込みと人員増強等の生産体制整備により、継続するのど飴需要に対応し、前期比7億69百万円(5.1%)増収の158億15百万円となりました。製品別では、休売・終売商品やファンシーカテゴリーの減少を、のど飴群と2月から価格改定を実施している「金のミルクキャンディ」シリーズがカバーしました。

 

<グミカテゴリー>

グミは、9月末に松本工場グミ棟の拡張も完了し、前期比19億23百万円(14.5%)増収の152億17百万円となりました。製品別では、輸入商品販売が減少したものの、主力ブランドである「ピュレグミ」シリーズが、「ピュレグミプレミアム」の伸長やTVCMによるプロモーション効果と3月からの価格改定が相俟って大きく販売増となりました。更に、直営店舗ヒトツブカンロ(4月に2店舗目の常設店を東急プラザ原宿「ハラカド」にオープン)・デジタルプラットフォーム「Kanro POCKeT」にて販売の高付加価値商品「グミッツェル」も依然好評を博しています。

 

<素材菓子カテゴリー>

素材菓子は、前期比59百万円(8.9%)増収の7億30百万円となりました。

 

② 売上総利益

原材料価格の値上がり基調は円安と共に継続し、増産に向けた体制整備により固定費も増加しておりますが、一部商品の価格改定及び内容量の変更を実施することで対応し、上述の増収実現による限界利益の増加と相俟って、売上総利益は前期比14億47百万円(12.3%)増益の131億86百万円となりました。

 

 

③ 営業利益

TⅤCM・サンプリング等の広告宣伝費や業容拡大等に向けた一般費の増加があるものの、配送効率化による運賃・保管料率の低減もあり、前期比8億95百万円(26.4%)増益の42億84百万円となりました。

 

④ 経常利益

前期比8億82百万円(25.7%)増益の43億15百万円となりました。

 

⑤ 当期純利益

政策保有株式の縮減による特別利益の計上により、前期比7億97百万円(32.4%)増益の32億60百万円となりました。

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

2023年12月

2024年12月

増減

増減率(%)

売上高

29,015

31,778

2,762

9.5%

売上総利益

11,738

13,186

1,447

12.3%

営業利益

3,388

4,284

895

26.4%

経常利益

3,432

4,315

882

25.7%

当期純利益

2,462

3,260

797

32.4%

 

 

(2) 生産、受注及び販売の状況

① 生産実績

当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

菓子食品事業

40,878,001

111.6

 

(注) 金額は生産者販売価格により算出しております。

 

② 受注実績

受注生産は行っていないため、該当事項はありません。

 

③ 販売実績

当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

菓子食品事業

31,778,392

109.5

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前事業年度

当事業年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

三菱商事㈱

27,385,739

94.4

29,747,273

93.6

 

 

 

(3) 財政状態の分析

当事業年度末の総資産は、前事業年度末に比べ32億66百万円12.6%)増加し291億5百万円となりました。これは主に有形固定資産が14億64百万円、現金及び預金が12億19百万円、売掛金が4億58百万円、商品及び製品が2億53百万円増加したことによるものです。

負債の部は、前事業年度末に比べ9億69百万円8.6%)増加し122億74百万円となりました。これは主に未払金が9億96百万円、未払費用が1億11百万円増加し、未払法人税等が1億40百万円減少したことによるものです。

純資産の部は、前事業年度末に比べ22億97百万円15.8%)増加し168億31百万円となりました。これは主に当期純利益32億60百万円の計上と配当金10億50百万円の支払によるものです。

 

(4) キャッシュ・フローの状況及び分析

① キャッシュ・フローの状況

当事業年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、前事業年度末に比べ12億19百万円増加し、49億81百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金の増加、法人税等の支払などがあったものの、43億98百万円の資金増(前事業年度は39億35百万円の資金増)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、21億69百万円の資金減(前事業年度は18億39百万円の資金減)となりました。

これは主に設備投資などの支出によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、10億9百万円の資金減(前事業年度は5億85百万円の資金減)となりました。

これは配当金の支払などにより資金が減少したことによるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析

(キャッシュ・フロー関連指標の推移)

 

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

2024年12月

自己資本比率(%)

56.3

55.4

56.3

56.2

57.8

時価ベースの自己資本比率(%)

53.5

53.0

68.4

112.0

171.8

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

0.7

0.2

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

385.8

842.5

2,225.9

2,172.5

4,915.1

 

(注) 自己資本比率:自己資本/総資産

 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

 キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

 インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

 (注1)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

 (注2)キャッシュ・フローは営業キャッシュ・フローを利用しております。

(注3)有利子負債は貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債(短期借入金、長期借入金)を対象としております。また、利払いは、キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社の運転資金需要の主なものは、原材料の仕入や労務費、製造諸経費、販売費及び一般管理費等であります。また、設備投資資金需要は、主にキャンディ製造設備への投資であります。

これらの資金需要については、営業活動によるキャッシュ・フローや金融機関からの借入により調達しております。当社は、「中期経営計画2024」にて策定した財務戦略に基づき、コア事業が創出した営業キャッシュ・フローを成長エンジンであるグミ生産体制の増強、デジタル化推進及び新たな事業領域であるデジタル事業、グローバル事業及びフューチャーデザイン事業の成長に向け投資しております。取引金融機関とは2022年度よりコミットメントライン契約を締結しておりましたが、2025年2月28日に契約満了により終了しております。一方で、取引金融機関には当座貸越枠として調達手段を備えており、引続き流動性を確保しております。

 

(5) 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって当社が採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」に記載のとおりであります。また、財務諸表を作成するにあたり、資産・負債や収益・費用に影響を与える見積りは、過去の実績や現在の状況並びに入手可能な情報を総合的に勘案し、その時点で最も合理的と考えられる見積りや仮定を継続的に使用しておりますが、見積り及び仮定には不確実性が伴うため、実際の結果と異なる可能性があります。

財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 当社は、1973年5月に三菱商事株式会社との業務提携を行い、同社と販売総代理店契約を結んでおります。

 

6 【研究開発活動】

当社は、「Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。」というパーパスのもと、「糖を科学する技術」をコア・コンピタンスとし「素材を活かす技術」及び「機能を発揮させる技術」の構築に資する研究開発に取組んでまいりました。また、サステナブルな社会の実現へ向け、研究開発におけるあらゆる基準を見直すことで、温室効果ガス排出量の削減をはじめ脱プラスチックや食品廃棄物の発生抑制・有効活用等を行ってまいりました。更に、グローバル化や外部環境変化への適応に向けた研究開発も積極的に実施しております。

様々な分野の研究開発を実施するにあたり、「配合・製法開発」と「設備開発」の2つの側面ごとにテーマを設定することで、研究開発の質的向上と効率化を目指しております。

 

(1) 配合、製法開発における取組み

「素材を活かす技術」について、サステナブルな経営基盤強化を目的とした研究方針を打ち出し、研究テーマとして「素材本来の美味しさを引き出すテーマ」のみならず、「環境や人権に配慮した原料選定と配合技術の追究」、「エネルギー使用量の少ない製法開発」などを掲げてテーマを推進いたしました。

「機能を発揮させる技術」については、外部研究機関との共同研究を通して、オープンイノベーションを継続して推進しております。

また、「糖を科学する技術」という観点から糖の持つ新たな可能性の探索について基礎研究レベルにまで踏み込んで継続実施しております。

更に、配合・製法開発の応用例として、「じゅるる」などの既存の製造技術に他の製品の製造技術を組み合わせた技術優位性のある商品を発売いたしました。

 

(2) 設備開発における取組み

キャンディに更なる付加価値を持たせるため、既存技術に留まらない菓子の周辺技術を用いて、事業領域を拡大し得る新たなカテゴリー開発にも着手しております。また、温室効果ガス削減を目的とした工場外壁の断熱塗装・太陽光発電を始めとした各種施策の検討・実施、また働く従業員の負担軽減・活人化を目的とした自動化設備の導入を実施、またIOTを活用したスマートファクトリー化も併せて行っております。

 

(3) サステナビリティに関する取組み状況

「持続可能な開発目標(SDGs)」を基本とした全社的な活動の下、フードロス削減の取組みの1つとして、廃棄されている規格外製品(グミ)の利用検討を行っております。製造した製品を無駄にしないことで、廃棄物を減らすことはもとよりエネルギー面においても、サステナブルな生産を念頭に検討を重ねております。またそれ以外の取り組みとして品質に関する基準を見直す事で賞味期限の延長を図り、フードロスの削減に努めております。さらに工場・豊洲研究所等において使用する電力を再生可能エネルギーに切り替えるなど、あらゆる方面で環境負荷低減に努めております。

 

(4) グローバル化への取組み

ブランド製品のグローバル対応として各種原料の海外法規対応を進め、輸出可能な配合への変更を継続実施しています。その中で海外戦略、米国輸出製品として主力製品につき配合設計を進めるなど、配合開発を推進しております。

 

(5) 原料価格の高騰、供給不安に対する取組み状況

昨年に引続き原料価格の高騰や供給不安は続いており、ゼラチンなどのゲル化剤に加え、食品素材・添加物を問わず様々な原料に関する代替検討を実施しております。特に乳原料に関しては新規原料への代替に向け、量産化検討及び目標品質の確認などを実施し製品の安定供給に向けた対応を実施しております。

 

なお、当事業年度における研究開発費の総額は、786百万円であります。