第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、経営理念として「我々は会社の事業を通じて、社会の人々に喜びと豊かさを提供し、その見返りとして、この事業に携わる者とその関係者の豊かな生活と社会的地位の向上を図り、併せて地域社会の経済的発展に貢献せんとするものである」と掲げ、日本の伝統ある食文化を世界に広め人々に喜びと豊かさを提供することを使命として、お客様に安全で安心できる価値ある商品とサービスを提供することで持続的成長と中長期的な企業価値の向上を目指しております。

 

(2)経営戦略等

 当社グループは、創業精神である「米」「技」「心」の体現のためサステナビリティを経営の根幹に据え、お客様や社会の課題と真摯に向き合い社会から必要とされる企業集団を目指すべく、2025年4月からの中期経営計画「『米(マイ)ミライ』~私たちは、お米の未来を創ります~」を策定、事業戦略と経営戦略それぞれに方針を定めております。

      ・事業戦略方針…①企業成長:売上拡大、新規市場開拓、海外展開など、事業規模を拡大し、企業価値を高

               めることを目指す。

              ②効率化:生産設備の自動化など、業務効率化を図り、コスト削減と収益性の向上を実現

               させる。

      ・経営戦略方針…①社会貢献:環境問題や社会問題に対して積極的に取り組み、企業としての社会的責任を

               果たす。

              ②イノベーション:DX推進を通じて、社内基盤を整え、競争力を強化する。

              ③人財育成:自社の強みを生かせる人材を育成し、企業の持続的な成長を支える基盤を築

               く。

 本中期経営計画を達成するために8つの重点テーマを掲げ、「お米となかよし」企業として、新しい岩塚価値の創造に挑戦してまいります。

       ・売上拡大

         既存主力商品による売上拡大(TOP6+2の拡販)

       ・認知度向上

         認知度向上によるエンドユーザーへのブランド優位性の確立

       ・マーケット創造

         新しいマーケットの創造と新市場開拓(北海道事業、海外向け商品開発)

       ・海外展開

         米国マーケットの開拓、グローバル人材の育成

       ・ミライ工場への挑戦

         生産設備の省力化、自動化推進

       ・環境、社会との調和

         公正な取引価格、地域米の使用拡大、温室効果ガス削減

       ・DX推進

         DX基盤構築、DX育成制度の確立、新工場のデジタイゼーション

       ・岩塚らしい人財育成

         エンゲージメント向上、キャリアプランが描ける環境づくり、DE&Iの推進

 

(3)経営環境

所得が改善傾向にある一方で食品等の値上がりから消費者の節約志向が根強く残る景況下、労務費、原材料費、エネルギーコストの高止まりに加え、貿易環境の不確実性の高まりや人手不足の深刻化など、経営環境は依然厳しいものと見られております。米菓業界におきましては、原料米の価格高騰と供給不足の解消が見通せないなど原料米の安定確保が極めて大きな課題となっており、かつてない厳しい事業環境になるものと考えております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、新たな中期経営計画「『米(マイ)ミライ』~私たちは、お米の未来を創ります~」の初年度となる第73期経営計画において、「現状の一歩先をカタチにしよう!」をスローガンに掲げ、基本方針の一つとして「愛され続ける『ブランド』を目指して」と定めて、不確実性の高い時代、「自分だったらどう思うか」「どうするか」と考えることを大切にしながら、お客様や社会の課題と真摯に向き合い、次の経営計画を完遂しブランド価値の向上を目指してまいります。

・顧客の立場に立った品質保証体制(安全・安心)の確立

 お客様に安全・安心な商品をお届けすることを食品企業としての使命と考え、更なる品質と安全性の向上に取組みます。また、自動化・効率化設備を導入し生産性向上を図るとともに、安定供給に努め供給責任を全うします。

・TOP6+2(きなこ・ぬれ)の集中販売による岩塚ブランドの認知拡大

 製販が連携して主力商品群に集中し収益力の強化を図るとともに、適正在庫を維持することで供給責任を果たしてまいります。また、引き続きTVCMの活用等によりブランドイメージ向上と認知拡大を図ってまいります。これからも国産米100%の誇りと自信を持って、岩塚商品価値をお届けします。

  ※TOP6+2:田舎のおかき、岩塚の黒豆せんべい、味しらべ、THEひとつまみ、大袖振豆もち、ふわっと

          + きなこ餅、ぬれせんべい・ぬれおかき

・グループ経営の機能強化(長岡工場、北海道工場の活性化)

 グループ向け商品を生産する最新鋭の長岡工場および唯一の県外立地の北海道工場の活性化は永年の大きな課題としてきており、高付加価値商品の生産や生産性の向上を図るとともに、グループシナジー発揮に繋げていく必要があります。好調な北海道の売店「ウタリちとせ」は当社グループ販売拠点のモデルケースとなるものであり、総合的な力を合わせて岩塚グループの更なる成長を目指してまいります。

・BEIKAのグローバル展開

 「BEIKA6品アソートBOX」が大手小売に採用されるなど当社の輸出事業が拡大してきており、日本のお米でつくった「BEIKA」の世界への拡大と浸透を図ってまいります。また、引き続き旺旺集団との連携強化によりアジアへの販路拡大を目指してまいります。

・社員一人ひとりの力が発揮できる環境・仕組み・風土づくり

 身体的・精神的・社会的に満たされたWell-beingな会社を目指します。エンゲージメントの向上を通じて「働きがい」のある職場にしていくとともに、風通しの良い職場風土や自分事として取組む意識のある活力あふれる職場づくりを推進し、当社の成長に繋げます。

・サステナブル経営の実践

 事業活動を通して環境、社会、ガバナンスの問題解決に向けた取組みを行い、持続可能な社会の実現に貢献できるよう努めます。課題を抽出のうえ重要課題を定めて取組むべき目標を明確にしアクションプランを実行、 ESGを通じてサステナブルな経営を実践します。

・DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進

 デジタル技術を活用してビジネスモデルや業務プロセスを根本的に変革し、業務効率化やコスト削減を通じて競争力を高めてまいります。新設したDX推進室により統括し、各部署にDX担当者を配置、現場主導のDX実現を目指してまいります。

 

(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、「売上高営業利益率」を利益体質強化の指標とし、安定的な利益の確保拡大を目標としております。

 また、資産効率の向上および株主資本の有効利用がすべてのステークホルダーの利益に合致するものと考え、「自己資本利益率(ROE)」を重要な指標として位置付けております。

 直近の状況を示すと、次のとおりであります。

回次

第68期

第69期

第70期

第71期

第72期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

2025年3月

売上高営業利益率(%)

0.8

△1.8

△1.0

2.7

3.3

自己資本利益率(%)

3.7

1.3

6.0

3.1

4.4

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

  当社グループの、サステナビリティに関する考え方および取組みは、次のとおりであります。

  なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社においては、2022年3月にサステナビリティ基本方針を策定し、持続的成長と企業価値向上に向け、ガバナンスの向上、人的資本等の経営資源の配分、事業戦略の実行などに取り組むことの重要性を再認識するほか、労働環境の改善、CO₂削減等の気候変動問題、輸入原材料等に伴う人権問題などのサステナビリティを巡る社会的課題に対し経営課題として取り組むこととしております。

 このため、2022年度より経営管理本部長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置、サステナビリティを巡る取組みに関する個々の方針を策定し、啓蒙周知を含め実効的な活動に努めることとしております。当委員会は、経営企画や人事、製造等の部課長をメンバーとし以上の諸課題について当社の現状を踏まえた施策の推進と関連情報の発信を行う「実務者部会」のほか、若手社員を主体として将来に向けた取組みを議論する「10年先を考えるプロジェクト」の二部構成として活動しております。

 また、取締役会は、当委員会において協議した施策の内容や進捗状況について、定期的に報告を受け、確認し、監督することとしております。

 なお、普段の実務面の取組みはサステナビリティ推進室がサステナビリティ委員会の事務局的に行っており、「10年先を考えるプロジェクト」では議論し抽出した課題を2025年スタートの中期経営計画に盛り込むなど、活動は実効性を伴い整備拡大しております。

 

(2)戦略

 当社においては、2025年4月からの中期経営計画「『米(マイ)ミライ』~私たちは、お米の未来を創ります~」において、事業戦略方針として①企業成長②効率化の項目を掲げ継続的な発展を目指しているほか、経営戦略方針として次の三つの項目を示し、サステナビリティをめぐる取組みを主体として経営基盤の強化を図っていくこととしております。

  ①社会貢献:環境問題や社会問題に対して積極的に取り組み、企業としての社会的責任を果たす。

  ②イノベーション:DX推進を通じて、社内基盤を整え、競争力を強化する。

  ③人財育成:自社の強みを活かせる人材を育成し、企業の持続的な成長を支える基盤を築く。

 

(3)リスク管理

 当社においては、「全社的リスクマネジメント規程」を制定のうえ、リスクの識別・評価・モニタリング・リスク対応等のリスクマネジメント体制を整備・確立することとしております。担当部署において、リスクの識別、評価を行いリスクマップとして一覧化して網羅しており、モニタリングを含むリスク対応について優先順位付けを行い取締役会に報告するとともに、必要に応じて戦略等の見直しを行い、資源配分や業務の効率化等を促進することとしております。また、重要度の高いリスクについては有価証券報告書の事業等のリスクに記載しており、リスクが顕在化した場合等においてはコンプライアンス・リスク管理委員会で協議し対応する体制としております。

 このように、リスクマネジメントは、リスク管理だけでなく戦略の実行や業務の効率化にもつながる重要な管理手法であり、サステナビリティを巡る取組みを進め、持続的に成長するために必要不可欠と判断され、その運用強化に努めております。

 

(4)指標及び目標

 当社においては、サステナビリティ基本方針のなかで、中期経営計画およびその実施状況等の情報開示に当たり、経営資源の配分、事業ポートフォリオの見直しや人材育成に係る実施状況等の具体的な内容について、丁寧な説明に努めるとしております。

 このため、サステナビリティを巡る取組みについては、法令等に従い、「環境」と「人的資本」に分け、それぞれの細目ごとに具体的な指標をもって目標設定のうえ進捗管理する方針であります。目標自体は、社会的な動向や当社の個別事情を考慮しながらも、極力中間目標を含む意欲的な目標を定めることとし、都度の変化や進捗状況を分り易くお知らせしたいと考えております。

 

 

 <環境に関する取組み>

 

(1)基本方針

 当社においては、2003年に以下の環境方針を制定し、環境負荷低減、生態系の保護、環境汚染や地球温暖化の防止、そのためのCO₂削減や廃棄物低減への取組み、環境マネジメントシステムの改善、および従業員等への周知を図ることとしており、当社の環境に関する取組みの基本方針としております。

 具体的活動として、環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001の取得を通じて環境に関する取組みを強化し継続したいと考えております。取得状況は、2004年の沢下条工場を皮切りに、現在は本社、飯塚工場、長岡工場、北海道工場、BEIKA Labの全工場に適用範囲を拡大しております。

 <環境方針>

1.常に美味しさを追求し、お客様に安全・安心な製品をお届けするとともに、原材料の調達から生産、物    流、容器包装が廃棄されるまでのライフサイクルの過程においても環境負荷低減に取り組みます。

2.米生産者との連携を強化し、健全な圃場の確保を通じて生態系の保護に努めます。

3.企業の社会的責任を果たすべく、環境汚染や地球温暖化の防止に取り組みます。限りある資源を有効活用し、持続可能な社会となるよう法令を順守します。

4.事業活動を行う上での環境影響について、次の項目を重点テーマとして取り組みます。

(1) 電気、燃料の省エネ活動に努め、CO₂削減に取り組みます。

(2) 加工技術向上に努め、廃棄物・ゴミの低減に取り組みます。

5.業務改善や効率化に取り組みながら、環境マネジメントシステムの継続的な改善を図り、企業活動を向上させていきます。

6.この環境方針を、社員教育・ポスターを通じて全従業員及び関係者に周知し、環境保全への意識向上に努めます。

7.環境方針は一般に公開致します。

 

(2)気候変動に対する取組み

 当社においては、地球温暖化によるカーボンニュートラル政策(CO₂の削減)が進展するなか、再生可能エネルギーの活用や環境特性に優れたエネルギーへの転換等を進め、環境に配慮した取組みを行っております。

 CO₂の削減については、今後さらなる規制強化が予想され、的確に対応できない場合には、製造や販売活動に制約を受けるほか、排出量取引等によるコストの増大やブランドイメージの毀損など、経営成績や事業運営に影響を及ぼす可能性が否定できません。

 当社では、法や規制に関し情報収集し対応等について継続的に検討・共有するとともに、次の取組みを行い、総合的に気候変動問題に取り組んでまいります。

①再生可能エネルギーの活用

 2021年度に飯塚工場、2023年度から2024年度にかけて沢下条工場において、工場建屋の屋上に太陽光パネル発電設備を設置、同工場で使用する電力の約5%を補っております。2025年度中に長岡工場の稼働を計画しており、再生可能エネルギーの更なる活用に取り組んでおります。

②環境特性に優れたエネルギーへの転換

 燃焼時にCOの発生量が少ない天然ガス・都市ガスの環境特性に注目し、沢下条工場、飯塚工場において2006年度に重油・LPGから天然ガスへのエネルギー転換を実施、長岡工場では2021年度の中沢工場からの移転に伴い重油から都市ガスへ燃料転換を実施しております。2024年度には沢下条工場に大規模なガスコージェネレーション設備を導入し、使用電力の約4割を供給するとともに廃熱エネルギーの回収を行い、限りあるエネルギー資源の有効活用に努めております。また、飯塚工場にも同様なガスコージェネレーション設備の設置を検討中であります。

③物流における省エネルギー対策

 2023年度に主力商品である「田舎のおかき」の段ボールサイズを縮小、モジュール化による積載効率の向上に取り組み、2024年度以降はモジュール基準を新商品設計に反映させております。また、トラックから貨物鉄道輸送への転換(モーダルシフト)を進めており、2022年度には「エコレールマーク」認定を取得しております。さらに、関東に物流拠点を設置し関東圏向け商品の一括配送を行うことや、2024年度には企業間の共同配送の実施、連結トラック輸送の試験運用を行うことで物流体制の整備を進めております。これらの取組みはCO排出量の削減に繋がるものであり、今後も取組みを強化・拡大してまいります。

 

④気候変動における指標および目標

 以上の主な取組みを行った結果について、次の指標および目標をもって進捗管理しており、本年度までの実績は2025年度目標を1年前倒しして達成しております。

指標:CO₂排出量(生産量あたり)

目標:2025年度12.6%削減(2019年度比)    ※ 2005年度比削減 50%

  2030年度21.4%削減( 同 上 )    ※   同 上   55%

  2035年度38.8%削減( 同 上 )    ※   同 上   65%

実績:2024年度15.0%削減          ※   同 上   51.3%

※当社においては、2004年のISO14001取得以降、重油から天然ガスへの燃料転換を図るなど

  2005年度比でのCO₂排出量の削減を進めてきております。

このため、当社における削減目標(2005年度比)を、IPCC報告書にならい2019年度比に引き直して削減目標としております。

 

(3)プラスチック・廃棄物等の削減への取組み

 当社においては、上記のCO₂の削減など環境に配慮した経営が求められるなか、プラスチック使用量の削減や食品残渣の低減を進め、環境への負荷を軽減する取組みを行っております。

 プラスチックの使用制限については、顧客からの要望も増加傾向にあり、的確に対応できない場合には、製造や販売活動に制約を受けるほか、ブランドイメージの毀損など、経営成績や事業運営に影響を及ぼす可能性が否定できません。

 当社では、ISO14001の運用が有効と考え継続して実施するほか、次の取組みに注力してまいります。

①プラスチック使用量の削減

 プラスチックは、焼却による大気汚染や流出による海洋汚染など生態系にも影響を及ぼすものであり、特にワンウェイプラスチックに対する課題認識は世界的に高まっております。

 当社においては、プラスチック使用量の削減は優先して取り組むべき経営課題と認識、パッケージのスリム化、パッケージ内のプラスチックトレーの廃止、チャック付リクローズパック(個包装なし)等に積極的に取り組んでおります。

②食品廃棄物・最終廃棄物の削減

 当社においては、製造工程で発生する原材料・半製品等の廃棄物の削減に取り組むとともに、発生した食品残渣を家畜の飼料として再使用するなど、フードロスの削減に努めております。水分含有量が多いため廃棄していた生地等の飼料化にも成功、食品リサイクル率の向上を図っております。

 また、これまで製造工程で発生した汚れたプラスチック類は産業廃棄物として廃棄しておりましたが、海外向け原料として有効活用できるルートができております。

③プラスチック・廃棄物等の削減における指標および目標

 プラスチック使用量の削減について、次の指標および目標をもって進捗管理しており、本年度までの実績は2030年度削減目標30%に対し3%と振るわず、原因分析と対策が必要と考えております。

指標:プラスチック使用量(生産量あたり)

目標:2030年度30%削減(2019年度比)

実績:2024年度 3%削減

 食品廃棄物の削減について、次の指標および目標をもって進捗管理しており、本年度までの実績は2025年度目標に対しあと少しの状況と認識しております。

指標:食品リサイクル率

目標:2025年度85.0%以上

実績:2024年度80.1%

 

(4)その他の環境への取組み

 当社においては、米菓製造に欠かせない国産原料米や水資源などが、環境に密接に関連するものと考え、環境負荷に配慮した取組みを進めております。

 ①国産原料米への取組み

 当社においては、主原料であるうるち米やもち米を全商品で国産米を100%使用しております。国産米を全量使用することで地元を始め国内の圃場保全に寄与するとともに、輸送に係るCO₂の排出量削減にも繋がるものと考えております。

 ②水資源保全への取組み

 当社においては、水は、生地の製造に欠かせないものであり、また原材米の育成に必要な、大切な資源であります。このため、ムダを避け効率的な使用に努めるとともに、工場排水については適切な処理を行って河川放流するなど、環境の保全に配慮した取組みを行っております。

 また、水の使用量削減について、従来の洗米機から水を使わない無洗の研米機の導入や、米の搬送を水利用から乾式エアー設備に変更する等により、水の使用自体を不要にする取組みも進めております。

 

 ③資源循環への取組み

 当社においては、当社をはじめとする地元企業・JA、長岡技術科学大学、長岡市とのいわゆる産学官連携による、資源循環プロジェクトに積極的に関わっております。具体的には米菓の製造過程で発生する米のとぎ汁と同大学による微生物の力を活用して地元肥料メーカーが堆肥を作り稲作に使用するものであり、「N.CYCLEプロジェクト」と名付けて「田のモノを田に還す」を掲げ、持続可能な農業モデルを目指しております。また、同プロジェクトでは、脱炭素農業の推進にも取り組み、農業分野においてJ-クレジット創出サービスを開始しております。

 

 <人的資本に関する取組み>

 

(1)基本方針

 当社においては、2022年3月に「人事基本方針」を策定し、人事基本理念の下で人事制度や人材育成に取り組む方針としております。

<人事基本方針>

1.人事基本理念

 経営理念の実現と社是の実行を確かなものにしていくことを目的として「人事基本理念」を策定しており、当社における「人」や「組織」についての方針としています。

(人事基本理念)

・役割・業績に応じて公正に処遇し、働きがいの追求を行う

・目標にチャレンジする明るく活力あふれる職場作りを行う

・人財の育成を積極的に行い、企業体質の改革・強化を図る

(取り巻く環境整備)

・中期経営計画に基づく人財の確保

・適材適所の人財活用による職場の活性化

・人財育成のための教育訓練制度の見直しと展開

・役割・成果主義人事制度のレベルアップ

・パートナーシップに基づく労使協力の実践

2.人事制度

 当社は、これまでの年功による要素があった人事制度を2021年度より大幅に見直し、社員一人ひとりに与えられた役割に応じて処遇を決定するという方向へと舵を切りました。ジェンダーや中途入社、年齢といったものに囚われず多様な人材がそれぞれの思いをもって挑戦しながら成長し、キャリア目標を実現していくことを支援するとともに、それを促す組織風土の醸成を図っていきます。会社として学びやキャリア選択の機会を拡充し、それらを活用する仕組みや仕掛けを整えてまいります。

3.人材育成体系

 各階層に対して必要となる知識については、階層別研修テーマに沿った設定を行い、研修を実施体系に従って実施します。また、役割等級に紐付けされた職能等級別に、その必要要件として資格の取得と通信教育の受講を推奨します。さらに職務別に職務能力基準を整備し開示することで、自身の目指す職種に応じた必要な知識を知ることができるようにしています。

 

(2)人事における基本的な取組み

 当社においては、人材は財産であるとして人財の字を充てており、中期経営計画にも人財育成を大きな柱として示し、重要な経営資源と位置づけております。

 人的資源・資質が他社と比べて劣った場合、経営戦略の立案から戦術の実行まで劣後することとなりかねません。係る人員の確保とともに、経営幹部の選抜を含め、人材育成が実効的になされない場合には、経営成績や事業運営に影響を及ぼす可能性が否定できません。

 また、働きがい等の従業員の満足度は、全社一体感やエンゲージメントを通じて、業績に影響するものであり、良好な職場環境の維持、公平公正な評価などESに努めることが大切であり、これらが疎かとなった場合には、従業員のモチベーションやエンゲージメントに繋がらず、組織力が低下する等、経営成績や事業運営に影響を及ぼす可能性が否定できません。

 

 当社では、2017年3月から人事制度プロジェクトを通じて人事面の諸課題に対処していく体制をとっており、上記基本方針のもとで次のような取組みを行っております。

①働きがい向上に向けた取組み

 当社においては、使命としている「日本の伝統ある食文化を世界に広め、人々に喜びと豊かさを提供します」を果たすためには、社員の働きがいを高め組織力を強化することが重要であるとの認識のもと、2期前の中期経営計画から働きがい改革に取り組んでまいりました。

 具体的には、従業員意識調査による組織活性化診断(2018年10月、日経リサーチ)の結果、「制度、評価、処遇」に課題があることが明らかになったため、まず人事制度の改正に取り組むこととし、2022年度よりこれまでの職能型資格制度を役割・職能ハイブリッド型とする新人事制度に改めました。新人事制度においては、役割等級に専門職を設け、キャリアを総合職と併せ複線化するなど、社員の働きがいを高めることを目指した仕組みとなるよう配意しております。本格運用する中で生じた課題に対し検討を行い、より良い制度として定着するよう努めております。

 また、従業員意識調査を発展させ、2023年度より定期的なエンゲージメント・サーベイとして制度化、サーベイの結果を経営陣に報告・共有し、各部署の管理職が改善責任者として改善項目とアクションプランを設定して取り組むこととしております。2024年度には管理職層のエンゲージメントが明らかに向上しましたが、全体のエンゲージメント向上のためには、アクションプランの実効性を高め継続的に取り組むことが必要と考えております。

②人材の育成に向けた取組み

 当社においては、上記従業員意識調査において別途「工場ラインにおける働きがい評価の低さ」が明らかになり、課題として認識のうえ対処することといたしました。

 具体的には、仕事を通じたコミュニケーションの活性化を狙いとして、現場の作業員から監督者までの全員参加による「小集団活動」に取り組むこととしました。

 2020年度の製造ライン係長職に対する事前勉強会、2021年度一般従業員に対する勉強会を経て、2022年度から各工場において小集団活動が自主的に実施され、その成果の一部は、年2回行っている改善事例発表会にて共有、他工場に横展開されるなどの活性化が図られております。

③後継者準備のための取組み

 当社においては、経営幹部の育成は会社の持続的成長のための重要な責務のひとつであると認識し、取締役や執行役員等に対し、業績目標だけでなくそれぞれの担当に応じた課題を課すとともに、社内外の重要な会議に出席させ、経営参画させることにより経験を積ませるなど、後継者育成に努めております。

 また、中期的、長期的および緊急時それぞれにおける、社長をはじめとする経営層の選抜プロセス、候補者の育成方法、プロセスの透明性・公平性確保の手段等を定めておくことが重要であるとの認識のもと、2019年6月に後継者計画を定めております。

④人事における基本的な取組みにおける指標および目標

 働きがいに関連して、次の指標および目標をもって進捗管理しており、本年度までの実績は、平均勤続年数においては目標の範囲内であるものの、エンゲージメント・レーティングでは目標と相当の開きがあり各階層への浸透が重要であると考えております。

a指標:エンゲージメント・レーティング(委託業者による評価)

 目標:2027年度 BBB評価(全11段階中上位から4段階目)

 実績:2024年度 CCC評価(    同    7段階目)

b指標:平均勤続年数

 目標:15~18年程度(当社として適正と考える範囲)

 実績:2024年度 17.2年

 

(3)ダイバーシティ&インクルージョンへの取組み

 当社においては、これまでに女性を工場長や子会社社長にするなど公平公正な人事に努めてきているほか、障がい者や高齢者の雇用についても後れを取っていないものと自負しております。

 ダイバーシティ&インクルージョンは、様々な人材を活用することで新たな価値を高める成長戦略について組織一体として受け入れ進めていくことであり、優秀な人材の確保、従業員満足度の向上、イノベーション等に繋がるものとされております。このため、多様性を活かすマネジメントがなされない等の場合には、これらのメリットを受けることなく企業の活力や競争力が維持できず、経営成績や事業運営に影響を及ぼす可能性が否定できません。

 当社では、会社の持続的な成長のため、経験、技能、属性等の多様な人材の採用・育成を行うものとし、従業員が性別、中途入社、年齢、国籍等を問わず高い意識で活躍できる環境づくりのため、次のような取組みを行っております。

①女性活躍推進に向けた取組み

 当社においては、人口ピラミッドの構成が、残念ながら職務経験を積んで管理職の対象となることが期待される年代において少なくなっており、特に大卒以上の女性において顕著に現れております。

 このため、次のような施策を行い、出産・育児などのライフイベントを迎えた際の環境を整えることで、仕事と育児の両立を支援しております。

2020年度 リモートワーク勤務の導入

2021年度 時間外労働および深夜勤務の制限について子が小学校4年生の始期までに延長

     残業や夜勤を免除する限定正社員制度の導入

2022年度 女性管理職1名の登用

 女性管理職については、2016年の工場長在籍以降空白であったもので、今後のさらなる登用に向け、管理職候補である係長職から育成強化することとし、2024年度の女性係長職在職者数の目標を6名とすることを公表

2024年度 女性管理職1名の登用(在職者2名)

 在籍する2名の女性管理職は管理職候補である係長職から育成したものであり、2024年度末の女性係長職在職者は5名となりましたが、登用した管理職と合わせると公表目標の6名には達しております。さらに女性役職者へのヒアリング等から工場の班長職にも管理職への挑戦希望が窺えるため、係長職に加え女性班長職に対してもスキル向上を支援し育成することとしております。

②障がい者雇用の取組み

 当社においては、創業の心でもある地域とともに生きることの実践として、障がいのある方も仕事を通じて活躍できるよう、適材適所の採用を行っております。

 2024年度末の障がい者雇用率は3.18%であり、2020年度以降、法定雇用率を上回って推移しております。

③高年齢社員の活躍に向けた取組み

 当社においては、従業員が豊富な経験やスキルを活かして長期的に活躍できるよう、定年を65歳としているほか、70歳までの再雇用制度を導入しております。2024年度末においては、13名が再雇用制度のもとで活躍しております。

 なお、2022年度まで60歳以上の従業員をエルダー等級に変更のうえ基本給を減額する等の制度としておりましたが、2023年度には係る等級変更を廃止し同一労働同一賃金に適うよう、就業規則、賃金規程等を改正しております。

④ダイバーシティ&インクルージョンへの取組みにおける指標および目標

 女性活躍推進関連とその他関連に分けて、次の指標および目標をもって進捗管理しており、本年度までの実績は、いずれも目標の範囲内となっております。

 女性活躍推進に関連する指標および目標

a指標:ワーキングマザー比率

 目標:30%以上を維持(当社として適正と考える比率)

 実績:2024年度 34.5%

b指標:育児休業等に関する制度の利用率

 目標:60%以上を維持(当社として適正と考える比率)

 実績:2024年度 61.5%

 その他関連する指標および目標

a指標:障がい者雇用率

 目標:2027年度 3%以上

 実績:2024年度 3.18%

b指標:再雇用制度適用者数

 目標:2027年度 100%(制度希望者に対する適用者の割合)

 実績:2024年度 100%

 

(4)労働安全衛生・健康経営への取組み

 当社においては、健康や安全管理は雇用者責任として法により規制されていることを認識、作業上の怪我や交通事故等の労働災害対応のほか、病気やメンタルヘルス等の健康問題にも注力して取り組んでおります。

 労災認定がなされるような事態に至った場合には、直接従業員を失う損失のほか、風評被害も想定され、経営成績や事業運営に影響を及ぼす可能性が否定できません。

 当社では、従業員を大切に考える経営理念のもと、会社の持続的な成長のためにも従業員の健康を第一とする健康経営を重視、次のような取組みを行っております。

①労働安全衛生の取組み

 当社においては、労働災害リスク低減を目的とした労災撲滅のための自主研究会を月次で開催しております。自主研では、毎月の安全衛生計画の進捗報告、リスクアセスメント表のリスク低減活動の報告、労働安全コンサルタントの工場巡視などに取り組み、各工場の改善活動を促しております。

 また、安全衛生委員会を月次で開催、各工場の危険個所の抽出・改善、ストレスチェックの集団分析結果を用いた研修、産業医による健康指導などを実施し、職場環境の向上に努めております。

②労働安全衛生教育の取組み

 当社においては、労働災害を未然に防ぐことが重要であるとの認識のもと、新入社員向けの労働安全コンサルタントによる安全教育、全従業員を対象とした従業員研修、班長以上を対象とした職長・安全衛生責任者教育などの啓蒙活動・研修を毎年実施しております。

 また、火災や災害が発生した場合に全員が安全に避難できるよう、全従業員を対象とした定期的な避難訓練の実施や避難経路等のハード面の改善、AED講習の実施など、従業員の安全を第一に考えて取り組んでおります。

③健康経営の取組み

 当社においては、会社の持続的な成長のためには従業員の健康が第一であると考えており、健康診断の全員受診、ストレスチェック制度、GLTD(長期障害所得補償保険)制度の導入など、従業員が心身ともに健康に働けるための取組みを行っております。また、従業員に対し、健康に関する情報を発信するなど、健康への意識を高める取組みを進めております。

④労働安全衛生・健康経営への取組みにおける指標および目標

 労働安全衛生に関連して、次の指標および目標をもって進捗管理しており、本年度の実績は、残念ながら0.00を維持できませんでしたが、改めて労災の削減に努めてまいります。

指標:労働災害強度率(※)

目標:0.00を維持

実績:2024年度 0.03

※強度率は、延べ実労働時間1,000時間当たりの延べ労働損失日数をもって、災害の重さの程度を表したもの

強度率=(延べ労働損失日数/延べ実労働時間)×1,000

 健康経営に関連して、次の指標および目標をもって進捗管理しており、本年度の実績は、目標を上回っております。

指標:ストレスチェック受検率

目標:95%以上の受検率を継続

実績:2024年度 99.8%

 

3【事業等のリスク】

 当社グループ(以下「当社」という)においては、全社的リスクマネジメント規程を制定のうえ、リスクの所在、リスクの種類・特性、リスクの識別・評価・モニタリング・リスク対応の手法等を十分に理解し、適正な全社的リスクマネジメント体制の整備・確立に向けて、方針および具体策を策定することとしております。

 リスクの識別に当たっては、各事業部門の意見を尊重のうえ、全社横断的に網羅し、影響度と発生可能性をベースに重大度を評価、リスクマップとして一覧表に纏め、定期的に更新することとしております。また、リスク対応を行うため、重大度の評価に加え、内外の重大な環境変化や内部監査の検証、費用対効果等を考慮し、リスクの優先順位付けを行うとともに、必要に応じて戦略等の見直しを行い、資源配分や業務の効率化等を促進することとしております。

 以下に記載した将来に関する事項は、当連結会計年度末現在、当社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)に重要な影響を与える可能性があると判断したものであります。併せて、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項についても、投資者の判断にとって重要であると考える事項については、積極的な情報開示の観点から記載しております。なお、本項の記載内容は当社株式の投資に関するすべてのリスクを網羅しているものではありません。

 また、当連結会計年度末現在において、以下に記載したリスクが顕在化する可能性はいずれも低いと判断しておりますが、リスクが顕在化する可能性が生じた場合には、早期に経営成績等への影響の検討および分析を行い、必要な対応を図る方針としております。

 なお、記載内容のうち将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)事業活動に関する特に重要なリスク

 

①商品開発と競合

 当社においては、国産原料米を100%使用し、安全安心と高品質をアピールする商品政策をとっており、他社に比べやや割高なコスト構造となっていると認識しております。

 このため、競合他社によるシェア争い、それに伴う廉価販売等の価格競争に巻き込まれる等により、当社が劣勢に立たされた場合には、売上高や利益の伸び悩みなど、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、品質と美味しさを追求するなかで、お客様や卸・小売等取引先のニーズを把握し、いかにしたらお客様に寄り添えるかを真剣に考え、岩塚価値の創造を指針として、商品設計、販売方法、価格設定等を検討しております。

 

②経済情勢

 当社においては、米菓製造業として国内市場が大宗を占めておりますが、我が国の景況は内外の経済の動きに敏感に反応するため、経済情勢の変化は当社の経営成績等に影響を及ぼす重要な要因であると考えております。

 経済情勢の変化の要因としては、日本国内の景気変動、労働需給および賃上げの動向、中国や米国等の海外経済政策の動向等に加え、足元ではウクライナ情勢や円安の進行等に伴い原材料価格やエネルギーコストが高止まりするなど、中長期的な視点でそれらに的確に対応できない場合には、売上高や利益の伸び悩みなどにより、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、グループ全体で低価格品や量販品から高級進物品まで幅広いニーズに応え得る体制を整備しているなかで、工場設備の増設・集約等により生産・販売体制を再構築、生産性の向上を図るとともにグループシナジーを高め環境変化に対応していく方針でおります。

 

③市場動向

 当社においては、米菓製造業として、国産原料米100%に拘り品質重視の姿勢を貫いております。しかし、米菓業界におきましては、総合スーパーやコンビニエンスストアに比べ廉価なドラッグストアやディスカウントストアが伸長するといった流通構造の変化が見られ、また、これらの業者が合併または統合することにより大規模な業者が誕生し、これ迄以上に価格競争が激しさを増しております。

 当社としては、できる限り生産品目の選別や販売価格の見直しを行うとともに、廉価販売に繋がらない高付加価値商品の開発に努める等の企業努力を行ってまいりますが、それらが逆に売上高の伸び悩みや利幅の縮小に繋がる場合には、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、これ迄どおり美味しさと品質を追求し他社との差別化を図る姿勢を貫きながら、主力商品の集中販売や機械化等による生産効率の向上を図り、品質および価格の両面で競争力を高めていく方針でおります。

 

④原材料・商品の安全性

 当社においては、米菓製造業として食品の製造販売を行っており、国産原料米を100%使用するなど高い品質で安全安心な商品を提供するための体制強化に取り組んでおります。品質に関するお申し出を極力削減するよう注力し、お申し出を受けた際には誠実な対応を心掛けるとともに、商品事故等が生じた場合には躊躇せずにお客様の安全を優先する方針でおります。

 このように、商品の安全安心に最大限の注意を払っているものの、美味しさを含む品質面で不備が生じた場合には、お客様の信頼の低下からマイナスの風評に繋がり、それへの対応を余儀なくされることも想定しておく必要があり、当該対応のための費用の発生や売上高の低迷等を通じて、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、国産原料米に拘り一定の品質が保てるように努めているほか、極力無添加の副材料を使用するよう商品設計しております。また、厳格な原材料表示やISO22000およびFSSC22000の認証取得を進め衛生管理を徹底、製造工程における異物混入や部品不良などの削減に向けた対策を強化しております。

 

⑤生産能力(在庫)

 当社においては、米菓の製造販売を行うにあたって、遅滞なく商品を供給する使命があり、原材料や商品を在庫として保有しております。また、生産能力、稼働率、生産工程の隘路等を常に把握・管理するとともに、生産拡大や生産性向上のための改善に注力しております。

 しかし、販売の予期せぬ変動により在庫が過剰となった場合、その削減が進まなければ廃棄処分や評価損に繋がりかねず、また、生産工程の一部に能力不足があっても受注増や効率化に対応できないなど、生産能力および在庫については常に留意すべきであり、パフォーマンスギャップが生じた場合には、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、仕入・販売・在庫計画の精緻化を図るとともに、受注量と生産能力および在庫の適正化が図られるようコントロール強化に努めております。その上で、供給責任を全うし販売先への信用を高められるよう、適正在庫を厚めに設定することで、欠品を起こさない体制整備を進めております。

 

⑥人的資源・資質

 当社においては、常に美味しさを追求しお客様に安全安心な商品をお届けすることを使命としており、係る経営方針を理解し実現できる多様な人材の確保に努めるとともに、職能・職制に応じた人材教育を行っております。

 しかし、人的資本の開示が義務付けられるなどその重要性が高まるなか、このような人的資源・資質の確保および人材育成が効果的に行えない場合には、有効な経営戦略の立案や計画どおりの事業活動遂行に支障が生じることも考えられ、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、採用活動を通じて安定的な人材確保に努めており、そのためにも堅調な業績に基づく処遇の安定性が重要であると考え、人事制度改革や社内研修制度を充実させ、エンゲージメントを重視した従業員が働きやすい職場環境を整えるよう努めております。これら人事面での諸課題について、社内の人事制度プロジェクトの活動により対処していくとともに、サステナビリティに関する取組みの一つとして、サステナビリティ委員会において、中長期目線での方針や目標を設定のうえ確かな進捗に努めております。

 

⑦サプライチェーン

 当社においては、米菓製造業としてサプライチェーンの確保は非常に重要であり、特に昨今の米不足・米価格の高騰が大きく影響し、国産原料米の必要量を廉価に安定的に確保することは簡単ではないほか、調味料・包装フィルム等の資材や燃料費、物流費などもコストアップ要因となり易く、全般的に値上がり傾向が続いております。

 また、原材料費は製造原価の中で大きなウェイトを占めるため、原料米をはじめとする価格の高騰は原価の上昇に繋がるほか、仕入れの巧拙を含めサプライチェーンの確保いかんによっては必要量の不足または過剰在庫を招きやすく、また物流体制の脆弱性から商品供給コストが膨らみかねないなど、サプライチェーンの動向は当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、原産地の人権問題等の情報管理を含めサプライチェーン全体の最適化を目指すとともに、契約栽培の拡充等による原料米仕入れの安定化や、生産効率向上によるコストアップ要因の吸収に努める方針でおります。また、2024年問題として物流体制の強化が課題となるなか、他社との共同配送を含めた安定した運送体制の構築および在庫集積地の見直しを含め物流システムの効率化に注力しております。

 

⑧健康・安全管理

 当社においては、労働災害の防止や従業員の安全と健康管理のため、労働安全衛生法に則った体制の整備、強化を図っております。

 従業員の安全については、作業上の怪我や交通事故等の労働災害対応のほか、病気やメンタルヘルス等の健康問題への取組も重要であり、万一重大な労働災害等が発生した場合には、直接従業員を失う損失のほか、補償等による費用の発生や風評被害も想定され、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、安全衛生委員会を設置し労働基準監督署等の指導を得ながら作業環境の改善に努めているほか、労働時間管理の徹底による長時間労働の予防など、事故等の未然防止のための安全管理を徹底しております。特に火災事故に対する備えが重要となっており、消防署の指導を仰ぐとともに、夜間勤務者に対する避難訓練の実施を必須として注力しております。これらは、人的資本におけるサステナビリティに関する主要項目であり、目標設定のうえ安全管理に努めております。

 

(2)事業活動に関する重要なリスク

 

①政体の安定性

 当社においては、中国の旺旺集団(WANT WANT CHINA HOLDINGS LIMITED.以下「同社」という)との結びつきが深く、米菓製造の技術指導や商品の販売、同社ベトナム工場建設などで協働してきたほか、お互いに株式を保有、同社からの配当金は当社キャッシュ・フローに貢献し財務面の安定に寄与しております。

 同社は台湾から中国本土に進出し業容拡大した企業であり、いわゆる台湾有事問題が大きくクローズアップされるなかで、わが国や中国および関連諸国の政情不安や外交関係の悪化が顕在化した場合、同社に派遣している社員の安全が脅かされたり、同社との緊密な関係が一時的にも損なわれかねないなど、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、法や規制および外交関係等の情勢に関し、日頃から社内外において情報収集し、変化への対応等について当社社員の安全を第一に継続して検討、全社で共有することとしております。同社では、ベトナム工場など中国、台湾以外の地域に進出しリスク分散に努めており、当社においても、引き続き製造工場・設備の効率化により生産性の向上を図り、同社に過度に依存しないよう体質強化に努めております。

 

②コンプライアンスリスク

 当社においては、米菓の製造販売を行っており、製造物責任や知的所有権の侵害など様々な法的手続きの当事者となり得る立場にあります。昨今の気候変動問題もありCO₂削減に対する規制見通し等、法的規制の制定・変更等により製造や販売活動に制約を受ける可能性も否定できません。また、カスタマーハラスメント対策を含め各種ハラスメントへの対応が重要となっており、事象が発生した場合には訴訟等に至る可能性もあります。

 これらの懸念が現実となった場合や、さらに訴訟等で不利な判断がなされた場合には、その手続きや補償等による費用の発生、マイナスイメージ払拭のためのコスト等により、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、法や規制の制定・変更・内容等に関し継続して情報収集するとともに、内部統制システムを有効に整備・運用し、コンプライアンス・リスク管理委員会を活用する等により法令遵守に努めております。また、全社的なコンプライアンス意識の醸成を行い、各種ハラスメントが発生することがないよう未然防止に努めております。

 

③少子高齢化と人口減少

 当社においては、国内市場が商品販売先のほとんどを占めておりますが、米菓業界全体で販売額を維持できているなか、シェア拡大に努め増収基調で推移しております。

 しかし、国内の少子高齢化・人口減少により、米菓業界全体の規模縮小が懸念され、より一層競争激化する状況となることが考えられます。また、シェアを獲得したとしても市場自体が小さくなることで売上を確保することができず、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、美味しさと品質を追求し他社との差別化を図りながら、商品価値やブランド価値向上に努めております。加えて、旺旺集団との連携を強化する等により、海外市場に適した商品ブランドを育成し、販路拡大を図ることとしております。

 

④サイバー攻撃

 当社においては、情報セキュリティの確保・対策を進め、特にサイバー攻撃など悪意のある脅威に対するセキュリティ対策の必要性や留意事項について経営会議等の場で周知に努めております。

 ランサムウェアなどのサイバー攻撃については、世界的にその脅威が高まっており完全に防ぐことは難しいとされておりますが、事業継続計画等の対策を講じリスクに備えておくことは、リスクの軽減や早期の事業復旧・継続などに繋がるものとして、非常に重要であります。しかし、システムへの不正アクセスを防げず、復旧に時間を要した場合などにおいては、生産活動の停止や金銭的被害のほか、情報漏洩や第三者感染、法的規制違反などの懸念が払拭できず、風評被害を被ること等により、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、データのバックアップやファイヤウォール、アンチウィルスソフトの強化のほか、特にランサムウェアに対し被害を最小限に抑える対策を講じております。ランサムウェアを始めとするマルウェアに対する予防は、リスクマネジメントなどガバナンスにおける重要な経営課題であり、サプライチェーン全体に目配りすることの必要性を認識のうえ、事業継続計画を策定しております。

 

⑤情報セキュリティ

 当社においては、情報の機密性、完全性、可用性といった情報セキュリティの確保・対策を進め、役職員に対し保有する個人情報や重要情報の保護・管理を義務付けるなど、厳正な情報管理に努めております。

 しかし、大規模自然災害、長期間の停電、ハードウエア・ソフトウエアの重大な欠陥、コンピューターウィルス感染や不正アクセス等による情報の漏洩・改ざん・消失、情報システムの長期停止や混乱等が発生した場合には、売上高の落ち込みや補償、マイナスイメージの払拭による費用の発生等により、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、個人情報保護規程など各種規程を整備した上で、不適切な情報の取扱いや重大情報の外部流出等が起こらないよう未然防止に努めており、データ等の定期的なバックアップやウィルス感染対応等のセキュリティ対策を講じるとともに、担当部署が繰り返し注意喚起しております。特にサイバー攻撃がセキュリティ上の脅威となってきているなかで、社会的リスクが高まっているものと認識、セキュリティ対策をマネジメントやガバナンスにまで高めていく必要があると考えております。

 

⑥ITインフラ

 当社においては、インターネットにより商品の販売を行っており、社内においてもコンピューターシステムを利用、ITインフラは業務上欠かせないものとなっております。

 しかし、ウィルス感染やサイバー攻撃等の事件・事故による被災、アクセスの急増、ソフトウエアの不備など、何らかの理由によってインターネットサービスの中断やシステム障害が発生した場合には、売上高の落ち込みや信用失墜、損害賠償請求等に基づく費用の発生などにより、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、業務効率向上のためITインフラの強化に取り組むなかで、安全性、快適性、耐障害性に配慮し、ネットワーク規程の明文化、セキュリティシステムの導入、クラウドサービスの活用等により、システムトラブルのないよう適切に整備し、デジタル化の進展に対応していく方針でおります。

 

⑦取引拡大対応能力

 当社においては、最近の設備投資として、もち商品(あられ・おかき)の生産増強、スピーディーな商品開発、老朽化工場の移転集約による製造コスト低減などを目的として、工場設備の新設・増強を行ってまいりました。

 これらは、当社にとって業容拡大のための大規模な投資でありますが、目論見どおりの投資効果が得られず、投下資金や償却負担等を吸収し得ない場合には、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、設備計画と実績との比較検証を行い目論見どおりの投資効果の実現に努めるとともに、これらを通じて生産能力増強と製造コスト低減を併せ進めた上で、販売の伸長に繋げていく方針にあります。特に得意分野であるもち商品のシェアアップを目指し、当社ブランドの浸透に努めております。

 

⑧経営資源への依存

 当社においては、取引関係の円滑化等を目的としてWANT WANT CHINA HOLDINGS LIMITED.(以下「同社」という)の株式を保有しており、その配当は、当社キャッシュ・フローに貢献し財務面の安定に寄与、大きな経営資源となっております。

 これまで同社の株価および配当は安定的に推移しておりますが、何らかの理由により株価下落または配当が減少する事態が発生した場合には、当社の資産や損益面にマイナスの影響が生じるとともに、同社の事業戦略の変更も懸念され、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、当社社員が同社工場に常駐して商品の品質維持・改善のための技術指導を行っているほか、品質保証や商品開発についてもサポートするなど、同社業容拡大に一定の貢献をしてきており、同社とは強い絆を有しております。なお、同社株式や配当については当社の裁量において管理し使用しております。

 

⑨敵対的企業買収

 当社においては、不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配され、株主の皆様の利益が棄損することを防止するための取組として、2007年6月27日開催の定時株主総会の承認を得て買収防衛策を導入し、現在まで継続しております。

 実際に敵対的買収が行われた場合には、当社事業戦略の変更を余儀なくされる懸念が生じ、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、IR活動等を通じて株主の皆様のご理解をいただきながら、安定した業績を示し持続的成長と中長期的な企業価値の向上に努めてまいります。また、当該リスクが顕在化した場合には、取締役会などで慎重に議論し適切に対応する方針でおります。

 

⑩固定資産の減損

 当社においては、米菓の製造販売を行っており、工場設備等の事業用固定資産を多く保有し適時に更新しております。

 このため、事業収益が悪化した場合や係る固定資産の時価が著しく下落した場合には、減損会計の適用により減損損失が発生する場合があり、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、安定した業績を示し持続的成長と中長期的な企業価値の向上を図るなかで減損の発生事由を抑えるほか、設備投資については計画段階において収支見込など将来の収益性を十分検討したうえで実行するよう努めております。なお、固定資産の除却については、その意思決定と減損会計の実施時期に留意のうえ、適切に実施しております。

 

⑪予算・計画統制

 当社においては、年度予算を策定し予算に従って事業運営を行っております。予算案は現場部署からの積上げを基本としており、実績については、現場で差異分析のうえ乖離幅を縮める努力を行い、取り纏め部署である経営企画室に報告しております。経営企画室では、それらを総合的に分析して取締役会に報告し、現場での改善策実施等について指示や承認を得ております。

 予算計画達成のためには、予算管理の仕組みづくりを行い計画達成の実効を上げる必要がありますが、係る体制が整わずPDCAサイクルが回らないこと等により予算計画が達成できない場合には、業績の低下に繋がるだけでなく、株主等の信頼が損なわれるなど、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、上場企業として、これまで以上に予算と実績の差異を確認し進捗や達成度を把握、適宜必要な対策を講じて、予算計画達成の実効を上げるよう努めております。

 

⑫風評リスク

 当社においては、安全安心な米菓をお客様にお届けすることを企業使命とし、誠実な企業運営を行いながら「岩塚」ブランドの価値向上を目指してまいりました。

 しかし、インターネット情報が氾濫する中で、当社グループの商品、サービス、従業員に関連して、その正誤にかかわらず不利な報道がなされた場合やSNS等で悪い風評が流された場合、お客様による不買運動が起きる等の懸念が払拭できないなど、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、良質な商品を提供し続けるほか、経営者および従業員すべてがコンプライアンス意識を強く持ち公私の区別なく行動するように徹底してまいります。

 

(3)自然災害等に関する特に重要なリスク

 

①大規模自然災害

 当社においては、本社や工場および物流拠点が新潟県長岡市に集中しており、効率的な生産活動を可能としておりますが、係る地元地域に地震、風水害、雪害および火災等による大規模な災害が発生した場合、工場施設等の甚大な被害に繋がる懸念があります。

 実際に被害が生じた場合には、一部または全部の操業が中断し生産および出荷が遅延する可能性があるほか、情報システムの損傷により営業活動や仕入、物流に支障が生じることも考えられ、売上高の落込みや臨時的な費用の発生等から、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、火災を含めた事業継続計画の見直しを行う等により、人命や生産設備、サプライチェーンの確保に留意し訓練・予防に努めるなど、従業員の生活や取引先の事業活動に影響を及ぼさないよう、当社事業の継続・早期復旧に繋がるよう取り組む方針でおります。

 

(4)自然災害等に関する重要なリスク

 

①重篤な感染症の流行

 当社においては、新型コロナウイルス感染症に対し、その流行の度合や規制の制定・変更・内容等に関し情報収集し、都度の対応についてコンプライアンス・リスク管理委員会等で検討し、全社で共有を図ってまいりました。

 今後も、新型コロナウイルスやインフルエンザ、ノロウイルスなどの流行により従業員が集団で重篤な感染症に罹患した場合には、一部または全部の操業が中断し生産および出荷が遅延するなど、事業活動が制約される懸念が生じ、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社では、事業継続計画に感染症を含め見直したほか、ワクチンの職場接種を行う等により、従業員の生活や取引先の事業活動に影響を及ぼさないよう、当社事業の継続・早期復旧に繋がるよう取り組む方針でおります。なお、新型コロナウイルス感染症は落ち着きを見せておりますが、インフルエンザを含めた感染症対策は引き続き重要なリスクとして対応しております。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、賃上げによる所得の改善傾向が見られるものの、米や生鮮食品の高騰等から消費者の節約志向が高まるなど、景況感としては横這いに推移している模様であります。労務費、原材料費、エネルギーコストなどの高止まりに対し、遅れていた価格転嫁が相応に進んでいるものの、為替の円高反転や米国の関税政策等から貿易環境の不確実性が高まっており、人手不足が深刻度を増すなか更なる人件費の増加圧力が懸念されるなど、企業を取り巻く環境は予断を許さず、特に中小企業において依然厳しいものと見られております。

 米菓業界におきましては、食品全体における米菓自体の値頃感が意識され、おつまみ需要の定着や価格改定効果もあって、生産量は横這いながら概ね好調に推移した模様であります。生産においては、原料米の高騰をはじめ人件費や物流費などコストの上昇幅が大きく、各社とも主力商品に重点を置いて生産性を高めるとともに価格改定を行い、採算維持に腐心したものと見られます。今後については、原料米事情が極めて深刻になっており価格高騰と供給力不足の解消が見通せない状況下、特に原料米の安定確保と商品価値に見合った価格の確保が大きな課題と思われ、事業環境はかつてない厳しさになるものと見られております。

 このような経営環境にあって、当社グループは、中期経営計画「新しい岩塚価値の創造」の最終年度にあたり、「欠品ゼロでドンドンゆこう!!」のスローガンの下、引き続き欠品を起こさない体制を整備・強化し供給責任を全うすることを最優先方針としてまいりました。また、「選ばれ続ける『ブランド』を目指して」という方針を併せ掲げ、世代を超えて多くのお客様から愛され選ばれ続けるブランドとなるために、「美味しさと品質」を追求することはもとより、新しい岩塚価値商品の開発を進め、年代の幅を広げた商品や敢えてお客様の対象を絞った商品により、より多くのお客様から評価していただけるよう、ブランドイメージの向上に努めてまいりました。

 開発部門では、研究開発拠点である「BEIKA Lab」の機能をフル活用することで、お客様から感動をもって評価していただける新しい岩塚価値商品の開発を進め、他社との差別化を際立たせるとともにブランドイメージの向上に繋がるよう取り組んでまいりました。有名な旅行ガイドブックとコラボして世界のスパイス料理を再現したおつまみ系商品、素材がもつ栄養素に着目した健康軸商品、災害備蓄食として5年間保存できるグループ会社向け商品など、商品価値やブランドイメージを高められるような商品開発に力を注いでまいりました。なお、本年度中に、マーケティング本部にあった開発部を新設開発本部の所管として独立性を高め、当社の戦略に合わせた商品開発に専念できる体制整備を図っております。

 製造部門では、欠品を回避し供給責任を果たすことがメーカーの最大の使命であるとして、製造と販売の管理部署間の情報共有を綿密に行い、生産高や在庫の調整、それに伴う人員配置や製造ラインの配備、更には物流の手配に至るまで、無駄のない生産体制の確立に取り組んでまいりました。販売増に合わせて生産高が安定的に増加するなか、自動化設備導入による主力ラインの増強も生産性や品質の向上に繋がり、総じて製造原価の低減が図られております。加えて本年度中にガスコージェネレーションシステムを導入、発電時に生じる廃熱を冷暖房等に活用できるため、電気使用量が逼迫する夏場の効果が大いに見込まれるなど、経費削減に資するほか環境にも配慮できるものと目論んでおります。

 営業部門では、生産と販売の効率化による収益力強化のため主力商品(TOP6+2)の販売に注力、認知度向上に努める等により定番商品の拡大・集中を図ってまいりました。この結果、「田舎のおかき」「黒豆せんべい」「味しらべ」「ぬれせんべい・ぬれおかき」など多くの商品で前年度を上回る販売実績を示すことができ、これまで伸び悩んでいた西日本において顕著な伸びが見られるなど、堅実な営業姿勢が評価されてきたものと自信を深めております。特に生産設備を増強した「田舎のおかき」においては、商品の安定供給が可能となり、好感度の高い俳優を起用した22年ぶりのTVCMを投入してキャンペーン企画を実施するなど、当社のナンバーワン商品としてブランド価値を高め全体の販売を牽引しました。また、本年度中に、コスト上昇に対し自助努力を超える部分の価格改定を受け入れていただき進めることができました。今後、原料米の調達環境が厳しさを増すなか、国産米100%使用のアイデンティティを貫くためにも、引き続き「お米となかよし」をキーワードにブランドイメージを高め認知度向上に取り組んでまいります。

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました(詳細は、次の「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」に記載のとおりです。)。

a.財政状態

 当連結会計年度の資産合計は、前連結会計年度末に比べ53億50百万円増加し911億4百万円となりました。

 当連結会計年度の負債合計は、前連結会計年度末に比べ12億5百万円増加し231億52百万円となりました。

 当連結会計年度の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ41億45百万円増加し679億52百万円となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度における連結売上高は249億54百万円(前年度比13.4%増)、営業利益は8億15百万円(同35.1%増)、経常利益は39億64百万円(同41.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は29億9百万円(同48.6%増)となりました。

 なお、当社グループは米菓事業の単一セグメントであります。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、期首残高より12億19百万円増加し、40億59百万円(前年同期比42.9%増)となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は39億39百万円(前年同期比11億83百万円の収入増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益39億34百万円、減価償却費15億81百万円、法人税等の支払額10億71百万円を計上したこと等によるものであり、収入増加要因は、前年同期と比べて利息及び配当金の受取額が9億47百万円増加したこと等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は20億66百万円(前年同期比2億24百万円の支出増加)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出19億89百万円を計上したこと等によるものであり、支出増加要因は、有形固定資産の取得による支出が1億19百万円、投資有価証券の取得による支出が99百万円それぞれ増加したこと等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は6億53百万円(前年同期比19億57百万円の支出減少)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出4億円、配当金の支払額2億40百万円を計上したこと等によるものであり、支出減少要因は、自己株式の取得による支出が20億79百万円減少したこと等によるものであります。

 

 (参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2021年3月期

2022年3月期

2023年3月期

2024年3月期

2025年3月期

自己資本比率(%)

73.4

72.4

74.3

74.4

74.6

時価ベースの自己資本比率(%)

31.7

22.7

31.7

33.4

32.4

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

0.6

0.9

0.2

0.4

0.2

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

1,067.4

222.3

668.9

483.5

694.9

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い

(注1)いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

(注2)株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

(注3)有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。

(注4)営業キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業キャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を用いております。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

区分

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

構成比(%)

うるち米菓

14,972,311

110.8

49.0

もち米菓

13,634,526

112.4

44.6

その他

1,961,588

111.3

6.4

合計

30,568,426

111.5

100.0

 (注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当社グループは販売計画に基づいて生産計画を立て、これにより生産を行っているため、受注生産は行っておりません。

c.販売実績

区分

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

構成比(%)

米菓

24,157,918

112.9

96.8

その他

796,402

131.4

3.2

合計

24,954,321

113.4

100.0

 (注)1.金額は販売価格によっております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

丸紅株式会社

4,462,126

20.3

5,292,319

21.2

三菱食品株式会社

4,643,159

21.1

4,762,708

19.1

コンフェックス株式会社

2,556,006

11.6

3,186,426

12.8

株式会社高山

2,419,531

11.0

2,228,254

8.9

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

 当連結会計年度末における総資産は911億4百万円となり、前連結会計年度末と比較して53億50百万円の増加となりました。

 流動資産は121億12百万円で前連結会計年度末と比較して4億79百万円の増加となりました。これは主に、現金及び預金が12億19百万円、受取手形及び売掛金が5億90百万円それぞれ増加した一方で、1年内回収予定の長期貸付金が12億23百万円減少したこと等によるものであります。固定資産は789億92百万円となり前連結会計年度末と比較して48億71百万円の増加となりました。これは主に、投資有価証券が時価評価等により42億38百万円増加したこと等によるものであります。

 当連結会計年度末における負債は231億52百万円となり、前連結会計年度末と比較して12億5百万円の増加となりました。

 流動負債は47億99百万円で前連結会計年度末と比較して15百万円の増加となりました。これは主に、買掛金が1億69百万円、その他に含めております未払金が2億59百万円それぞれ増加した一方で、未払法人税等が2億21百万円、賞与引当金が1億53百万円それぞれ減少したこと等によるものであります。固定負債は183億52百万円となり前連結会計年度末と比較して11億89百万円の増加となりました。これは主に、繰延税金負債が15億65百万円増加した一方で、長期借入金が返済により4億円減少したこと等によるものであります。

 当連結会計年度末における純資産は679億52百万円となり前連結会計年度末と比較して41億45百万円の増加となりました。これは主に、利益剰余金が26億68百万円、その他有価証券評価差額金が14億9百万円それぞれ増加したこと等によるものであります。

 

b.経営成績

(売上高)

 当連結会計年度における売上高は、前年度と比較し29億54百万円増加、249億54百万円(前年度比13.4%増)となりました。販売・生産の効率化による収益力強化を最優先に主力商品(TOP6+2)の販売に注力、定番品の拡大・集中を進めた結果、販売高は、TVCMにより認知度向上を図った「田舎のおかき」をはじめ多くの商品において前年度を上回り、西日本向けの伸長など堅調に推移しました。販売子会社や輸入商品取扱い関連会社なども総じて増収となりました。

(売上総利益)

 当連結会計年度における売上総利益は、前年度と比較し11億96百万円の増加、69億55百万円(前年度比20.8%増)となりました。定番商品の維持・拡大により販売促進費が抑えられ純売上高の伸長基調が続いていることや、このため生産高が高水準で安定的に推移できた結果、原材料費や電力費に上昇圧力がある一方で労務費が相対的に低下、年度を通して製造原価を改善できたことがその要因です。

(営業利益)

 当連結会計年度における営業利益は、前年度と比較し2億11百万円増加し、8億15百万円(前年度比35.1%増)となりました。物流費が上昇傾向にあって発送配達費が増加、TVCMによる広告宣伝費も大きく、販売費及び一般管理費が9億84百万円増えたものの(全体で前年度比19.1%増の61億40百万円)、上記の売上総利益段階での増益額が大きく貢献し吸収することができました。

(経常利益及び親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度における経常利益は、前年度と比較し11億56百万円増加、39億64百万円(前年度比41.2%増)となりました。これは主に、当社が株式を保有するWANT WANT CHINA HOLDINGS LIMITED.からの株式配当金が28億16百万円と前年度より増加したことによるものです(前年は18億38百万円)。

 経常利益を受け、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、前年度と比較し9億51百万円増加し、29億9百万円(前年度比48.6%増)となりました。

c.経営成績等に重要な影響を与える要因

 当社グループの経営に影響を及ぼす大きな要因としては、経済情勢、市場動向、原材料動向および事故・災害等があり、それらへの適切な対応が重要となります。

 経済情勢としては、景況感の消費志向への影響、労働需給および賃上げの動き、原材料やエネルギー価格の動向などを注視する必要があり、特にエネルギー政策の転換、物流の逼迫とコストの増加、賃上げ率拡大に伴う人件費の上昇等が業績の重しになりかねないものと懸念されます。

 米菓業界では、米菓自体に食品の中での値頃感が見られ市場全体で需要を確保しております。しかし、生産においては、原材料や人件費、物流費などのコストが上昇し採算維持が厳しくなるなか、特に原料米事情の深刻度が増しており、事業環境はこれまでにない厳しさになるものと懸念されております。

 原材料動向では、副材料や資材等の価格が高止まるなか、原料米の価格高騰と供給量不足の解消が見通せないなど、原料米の安定確保が極めて大きな課題となってきております。あらゆる調達手段・方法を検証し量の確保とコスト削減を積み上げるとともに、さらなる価格転嫁の模索や製造コストのもう一段の引下げ努力が重要になるものと考えます。

 このような動きのなか、当社グループは、生産性向上と品質安定への取組みを強化するとともに、労働災害の未然防止など安全安心体制の確立、エンゲージメント向上による働きやすい職場づくりなど、環境整備に努めてまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

1)資本政策

 当社グループの資本政策は、中長期的な株主価値の向上に資するべきでありそのためには持続的成長が前提になるとの考えの下、投下資本と許容リスクを勘案のうえ収益力と財務基盤を強固にし、株主資本を維持・充実するものとしております。また、支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資本政策については、慎重に検討し、実施する場合は適切な手続きを確保し投資家・株主に十分な説明を行ってまいります。

 当社グループの最大の課題は売上高営業利益率の向上であり、営業利益の安定確保を当面の目標として株主価値の向上を目指すとともに、1株当たり当期純利益と配当性向を高め、株主還元に留意した配当政策を検討することとしております。

 

2)資金需要

 当社グループの資金需要は、主に運転資金需要と設備資金需要であります。

 運転資金需要のうち主なものは、製品を製造するための製造費用や販売するための販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また、設備資金需要としては、機械装置等の新設・更新需要や工場の改修・保全に係る費用であります。

 

3)財務政策

 当社グループの財務政策は、上記資金需要について、極力内部資金により充当することとしております。なお、資金不足が生じた場合は、運転資金については短期借入金による調達を行い、設備資金については長期借入金等による調達を行うこととしております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、当社経営陣は、過去の実績や状況に応じた合理的と考えられる様々な要因に基づき見積りおよび判断を行い、資産・負債の簿価や収益・費用の報告数値についての基礎としております。

 この連結財務諸表の作成にあたり重要な会計上の見積りは以下のとおりであります。

 a.繰延税金資産

 当社グループは、将来の課税所得を見積り、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産に計上しております。

 将来の課税所得の見積りの変更等により繰延税金資産が減額され税金費用が計上される場合があります。

 b.退職給付費用

 当社グループの退職給付費用および退職給付債務の計算には、割引率、予想昇給率、発生した給付額、利息費用などの要素が含まれております。割引率については、安全性の高い債券の利回り(国債金利)を基礎として算定しております。

 これら要素の変動等により退職給付費用の計上額が増額になる場合があります。

 c.投資有価証券の減損

 当社グループは取引関係等の円滑化のために株式を保有しております。これらの株式には、市場価格のない株式等以外の株式と、市場価格のない株式等が含まれております。市場価格のない株式等以外の株式は、期末における時価が取得原価に比べ50%以上下落した場合には全て評価損の認識を行い、30~50%程度下落した場合には、当該金額の重要性、回復可能性等を考慮して必要と認められた額について評価損の認識を行っております。また、市場価格のない株式等は、実質価額または純資産価額が取得原価に比べ50%以上下落した場合において、回復可能性等があると認められないものは、評価損の認識を行っております。

 将来の市場状況の悪化または投資先の業績不振により、評価損の計上が必要となる場合があります。

 d.固定資産の減損損失

 当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、当社グループ全体を1つの資産グループとしてグルーピングを行い、収益性が著しく低下した場合に固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失を計上することとしております。

 将来の当社グループを取り巻く経営環境の変化による収益性の変動や市況の変動等により、回収可能性を著しく低下させる変化が見込まれた場合、減損損失の計上が必要となる場合があります。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、中期経営計画「新しい岩塚価値の創造」に基づき、お客様に感動していただける新しい岩塚価値商品の開発を進めるとともに、ブランドイメージの向上に繋がる商品開発を目指してまいりました。

 当連結会計年度におきましては、ぬれせんべい・ぬれおかきの製法変更による更なる品質追求、流通各社と共同したスナック商品「ふわっと」のバリエーション開発、長期保存が可能な災害備蓄食の開発、米粉クッキー・米粉スープ等の米粉利用食品の試験販売など、開発対象商品の多様化に挑戦してまいりました。

 なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は314百万円であります。