第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社は理念を下記のとおり定めております。

 

<企業理念>

①常に安心できる商品を提供し、地球環境、人々の健康、社会的貢献を心掛ける。

②独創的で心の満足度の高い商品、サービスを提供する。

③独自のブランド戦略の元に、ロングセラー商品を育成していく。

④時代に先がけ、変革のスピードを上げ、新しい経営形態を実現する。(マーケティング、販売チャネル、生産システム、組織)

⑤世界的視野にたった企業になる。

⑥従業員の物心両面の満足を追求する、と同時に関係会社・取引先の経営に適正に貢献する。

 

当社は、企業理念のもと、事業活動を通じた企業価値の向上を目指しております。

また、購買・生産から販売に至るすべての取引先との適正な取引関係を構築することにより、常に『安全』で、『安心』できる製品を供給していくことに注力するとともに、企業活動全般にわたり、リスク管理体制の構築に取り組んでおります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社は、連結売上高と連結経常利益を成長を示す最重要指標と考え、同様に連結当期純利益についても配当可能利益を計る指標として重要視しております。また、連結営業キャッシュ・フローの最大化を常に念頭に置いた経営にも注力してまいります。特に国内事業においては競争が厳しいことから特定の経営指標を目標と定めず、上記の指標の向上を追求しております。

 

(3) 経営環境

当社を取り巻く事業環境は、少子高齢化による国内市場の縮小、健康志向や環境意識の高まりを含む顧客嗜好の多様化、不透明な国内外の経済金融情勢や気候変動からくる原材料価格の高騰など、複雑かつ急速に変化していると認識しております。

世界の経済・社会情勢の不透明さは日ごとに増しており、予測困難な状況です。また、そのような中、消費者の安全安心・SDGsへの関心の高まり、スナックの喫食シーンの変容、流通構造の変化など、当社商品の需要動向は大きく移り変わっています。当社グループでは、こうした変化に対して迅速かつ柔軟に対応を行い、日本の老舗としての安全・安心感や付加価値を提供し、また、独創的な商品を生み出し続けることで、国内外で事業を拡大し、企業価値の向上に努めてまいります。

一方、コスト面においては、世界的な原材料価格高騰により当社の事業コストは、国内外を問わず製造コストを中心に大幅に上昇しています。対策としましては、サプライチェーン全体にわたり最大限のコスト削減努力を行ったうえで、商品品質の維持・向上のため、機動的に価格改定を行うことで利益確保に努めております。

 

(4) 対処すべき課題

当社を取り巻く事業環境は、少子高齢化による国内市場の縮小、健康志向や環境意識の高まりを含む顧客嗜好の多様化、不透明な国内外の経済金融情勢や気候変動からくる原材料価格の高騰など、複雑かつ急速に変化しております。このような状況下において、当社が持続的な成長を実現し、企業価値を向上させていくためには、以下の課題に向き合い、対策を講じていく必要があると考えております。

 

① 商品戦略による収益性向上

   高付加価値戦略を継続して推進し、ブランド価値を向上しながら、必要に応じてコスト上昇分を適切に価格に転嫁することで、顧客支持を獲得しながら収益性の維持・向上を図ります。

 

② 安定した原材料調達

   特に主要原料である馬鈴薯について、国内契約産地との交渉及び契約産地の拡大、湖池屋オリジナルブランド芋計画による独自の収穫ルート確保など、気候変動などに伴う不作時に備えた体制を整えます。

 

③ 効率的な生産・物流体制の構築

   生産面における省人化・自動化の推進、安定的かつ効率的な物流ネットワークの見直しなどにより、急速に拡大する売上に対応する製品の安定供給体制を構築します。

 

④ 新機軸商品における成功

   多様化するニーズに応えるべく、既存ブランドに加えて将来の売上の柱となる新機軸商品の開発に注力することで、より収益性が高く安定的な販売ポートフォリオを目指します。

 

⑤ 海外事業の拡大と展開加速

   既存の各現地法人の成長に加えて、今後の展開エリア拡大を強く志向し、海外事業の売上・利益を拡大することで、より盤石な企業基盤を目指します。

 

⑥ 人的資本強化と組織力向上

   次世代の当社事業を担う人財育成のため、人事制度を刷新します。従業員のエンゲージメント向上とともに、一人ひとりの従業員が成長実感を持ちながら事業貢献する組織を構築します。

 

⑦ デジタル技術の活用による事業変革

   経営計画・戦略に基づき、積極的にデジタル技術を導入・活用することで、業務効率化による人的資本効率の向上、生産オペレーションの効率化、マーケティングの高度化、新たな顧客体験の創出など、事業全体の変革を推進します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」で記載の「企業理念」に基づき、付加価値経営に取り組み、持続的な成長と中長期的な企業価値の創出を目指しております。そして、「食でくらしをゆたかに。」をテーマに、持続可能な社会を目指し、食を通じたSDGs活動を推進し、社会や環境への貢献を図ることが重要であると認識しております。

 また、当社グループは、従業員をはじめとする様々なステークホルダーとの価値協創が重要となることを認識し、従業員がいきいきと働き続けられるように、人権を尊重した事業運営体制の構築、女性や多様な人財を含めた従業員全体が活躍できる職場環境の構築を推進しており、「人財育成方針」及び「社内環境整備方針」を策定しています(下記参照)。

 さらに、当社は、全社横断的に議論し、サステナビリティに関する計画の策定、進捗管理、課題発見及び解決等を行うことを目的として、代表取締役社長を委員長とする「サステナブル委員会」を設置しております。このサステナブル委員会を中心として、必要に応じて、経営会議等の各会議体において、サステナビリティ関連の取り組み状況の分析を通じて、自社の事業活動が環境や社会に与える影響を評価・検討しております。

 

(1)ガバナンス

 当社の取締役会は、サステナビリティに関する取り組みを重視しており、組織全体での責任を明確にするために、上記のサステナビリティに関する考え方に基づき、サステナブル委員会を中心として、経営会議、リスク管理委員会等において、サステナビリティに関する課題の把握と解決に向けた対策について審議、立案された事項について、適宜取り組み状況の報告を受けるとともに、必要に応じて対策案を承認しております。

 なお、当社ガバナンスの詳細は、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりであります。

 

(2)戦略

 当社は、サステナビリティのリスクと機会が、ビジネス、戦略、財務計画等に直接的及び間接的に影響を与える可能性があると認識しております。例えば「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載する事項を含め、天候不順・災害等を起因とした主原料である馬鈴薯の作況への影響や、生産コストや商品供給に影響を及ぼす可能性があります。一方で、サステナビリティに焦点を当てた活動や環境への貢献が、消費者の信頼を高め、新たなビジネス機会を生み出す可能性もあります。これらの認識を踏まえ、サステナブル委員会を中心として、現時点で認識しているリスク及び機会の特定・抽出を行っております。今後においても引き続き、サステナビリティ情報開示のさらなる充実に取り組むべく、これらの具体的な検証や対策等を検討してまいります。

 なお、当社は、サステナビリティに対する取り組みとして、安心・安全な商品作り、地域貢献及びCO2排出量の削減等を行っており、詳細は当社のホームページ等(https://koike-ya.com/sdgs/index.html)に記載しております。

 また、「人財育成方針」及び「社内環境整備方針」は以下のとおりです。

 

(人財育成方針)

 当社グループは、湖池屋人財ポリシー(https://koike-ya.com/company/human-resources.html)に則り、社員一人ひとりが経営上のかけがえのない存在であり、個人の成長が企業の成長に繋がるものと考えております。会社は、年齢・性別・能力・価値観等にとらわれず、社員一人ひとりの期待・役割を明確にし、社員は、個性を活かし、主体的に考え行動する自律的な人財の育成に取り組んでいます。具体的には、会社が策定した中長期人財育成計画及び個人発信によるキャリア開発シートを元に、若手においては、約10年で3部門のジョブローテーションを行い、部門を越境しながら、事業の中で成長を目指します。中堅以降は、マネジメントもしくはスペシャリストの道を選択し、様々なプロジェクトにチャレンジしながら、管理職もしくは専門職としてのキャリアを構築していきます。サクセッションプランの設定においては、年功序列を廃した人事制度を用い、役割を担える人財に、早期にマネジメントを担わせ、将来の経営層としての経験を積ませる取り組みも行っております。

 

(社内環境整備方針)

 当社グループは、Well-Beingを目指した人事制度と、協働とイノベーションを促す組織風土を目指しており、定期的なエンゲージメント調査を起点としたPDCAサイクルの推進により、働きがいのある組織となる社内環境整備に努めております。具体的には、誰もが衡平に働ける職場を目指し、テレワークやフレックスの制度整備、業務のDX化の推進を行っており、育児や介護、その他のライフイベントと仕事の両立支援など、様々な社員が働きやすい環境整備を進めています。また、湖池屋グループ人権方針(https://koike-ya.com/company/humanrights-policy.html)に基づき、全ての人の人権の尊重と、あらゆる不当な差別及びハラスメントを撲滅するために、定期的なアンケートの実施及びオンライン研修を実施しています。多様な人財が活躍できる心理的安全性の高い組織風土を目指し、制度整備・意識変革、そして働きがい改革を積極的に推進しております。

 

(3)リスク管理

 当社は、取締役及び執行役員からなる経営会議、サステナブル委員会及びリスク管理委員会、又は必要に応じてその他の会議体において、当社グループの業績に重大な影響を与える可能性があるサステナビリティ関連のリスク(天候不順・災害等を起因とした主原料である馬鈴薯の作況に対するリスクなど)及び機会(新たなビジネス機会の可能性など)の識別、評価及び管理について議論を通じて、サステナビリティのリスク及び機会を把握し、適切な対策を講じる体制を整備しています。なお、当社は、上記リスク及び機会の特定・抽出を行っている過程で、気候変動による原材料供給の不安定化、資源価格の変動リスク、人財の確保などのリスクを特に重視しております。

 

(4)指標及び目標

 当社は、持続可能な自然環境の保全のため、環境・CSR報告書(https://koike-ya.com/sdgs/index.html)に記載のとおり、CO2排出量削減目標を定め、環境負荷の低減に努めております。なお、上記「(2)戦略」に記載のとおり、経営会議、サステナブル委員会を中心として当社グループの業績に重大な影響を与える可能性があるサステナビリティ関連項目について具体的な検証を行っております。引き続きこれらの検証を行い、上記CO2排出量削減目標以外にも、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する当社グループ会社の実績を長期的に評価し、管理し、及び監視するために用いられる指標及び目標の設定に取り組みます。

 なお、当社は、上記「人財育成方針」及び「社内環境整備方針」の成果を評価する指標として、「管理職に占める女性労働者の割合」、「男性労働者の育児休業取得率」及び「労働者の男女の賃金の差異」を設定しており、これらの実績は「第1 企業の概況 5.従業員の状況」に記載のとおりであります。当社は、多様な人財の活用を進めることを目的にダイバーシティを推進しており、女性労働者の幹部登用を積極的に行い、女性労働者の管理職に占める割合20%を目標としております。また、男性労働者の育児休業取得率を現状より増加させること、男女の賃金の差異についても現状より縮小させることを目標とし、社内の多様性の確保に向けて引続き施策を講じております。なお、当社の連結子会社については、上記同様の取り組みは行っているものの、当社の連結子会社は全て外国法人であり、これらの指標の詳細な管理やデータ把握が現時点では困難であるため実績と目標は記載しておりません。

 

3【事業等のリスク】

      有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成
  績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおり
  であります。
   なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 食品の安全性について

近年、菓子・食品業界におきましては、食品の安全性に対する消費者の関心・要求が更に高まっています。当社グループは「食品衛生法」をはじめとする法令遵守を徹底するとともに、仕入先との連携を密にしながら品質管理体制を強化しております。製造におきましては、食品の安全を担保するためAIB(American Institute of Baking)の「国際検査統合基準」による監査・指導システムを導入し、異物混入対策等に取り組んでおります。更に、食品安全の国際認証であるFSSC22000認証の取得により、食品安全マネジメントシステムを構築し、永続的に安全な商品を提供し続ける仕組み作りを推進しておりますしかしながら、当社グループの取り組みの範囲を超える事態が発生した場合や、業界全般にわたる品質問題が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、2002年4月、スウェーデン食品庁がポテトチップス等の食品に発ガン性物質(アクリルアミド)が含まれている旨の調査結果を発表いたしましたが、厚生労働省は同物質が多くの食品に存在するとの調査結果を発表し、様々な食品をバランス良く取るよう推奨しております。当社グループはアクリルアミドの低減対策を推進しており、現在のところ業績及び財政状態に影響はありませんが、今後の菓子・食品業界に影響を及ぼす問題となる可能性があります。

 

(2) 原材料価格の影響について

当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす要因として、原材料価格の変動があります。穀物相場の上昇は、食用油価格やコーンスナック原料価格の上昇に波及し、原油等のエネルギー相場の高騰は、工場の燃料コストや包装資材価格に影響を及ぼすことがあります。これら原材料価格の高騰を、内部努力で吸収できない場合や、市場の環境によって販売価格に転嫁できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社の主力製品であるポテトチップスは、国産の馬鈴薯を使用しております。したがって、国内における馬鈴薯の作況によって原料の供給量が変化することもあります。当社においては、事前の販売予測に沿った需要量を十分に確保するため、仕入先との取引関係を良好に維持するなど、安定的な原料調達に努めております。しかし、予想外の作況不良で原料調達に支障が生じた場合、仕入価格の上昇や、歩留まりの低下による原材料コストの上昇が生じることがあります。

 

(3) 為替リスクについて

  当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす要因として、為替の変動があります。例えば、外国通貨に対して円の価値が上がる(円高)場合は、外国通貨での収益を円換算した際の減少をもたらし、利益率に悪影響を与える可能性があります。一方、円の価値が下がる(円安)場合、原材料費が増加し、コスト圧力が高まることが予想されます。当社グループでは、金融デリバティブ取引に関する規程を定め、為替の動向を注視し為替の変動による影響を最小限に抑えることに努めております。しかしながら、国際情勢の不確実性や市場の変動性の増加により、これらの対策が十分でない場合があり、結果として当社グループの財務状況及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 天候不順・災害等による影響について

菓子・食品業界は天候不順や災害の影響を受けることがあります。菓子・食品の売上には季節変動があるものですが、通常は平均気温をもとに販売数量を予測し生産を行います。しかしながら異常気象になると、売上・利益に影響することがあります。

当社グループでは、常に天候予測に気を配り、適正な生産及び在庫管理等を行うことで、機会損失を最小限に抑えるよう対策を講じております。しかしながら、上記のような施策を講じているにも関わらず、予想を大きく上回る天候不順等が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、巨大な天災地変等の災害が発生した場合、設備の毀損といった直接的被害に加え、電力・水道の使用制限による社会インフラの低下、仕入先の災害被害による資材の供給不足、物流機能の停滞といった間接的な影響を受ける可能性があります。

更に、世界各国で地球温暖化を引き起こす温室効果ガスの削減への取り組みが加速する中、当社グループでもCO2排出量削減目標を定め、環境負荷の低減に努めておりますが、今後の炭素税の税率上昇や仕組みの整備などが日本で本格的に導入が進んだ場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。

加えて、新型コロナウイルス等の感染症が発生した場合も、従業員の安全確保と製品の安定供給を社会的責務と考え、在宅勤務環境の整備、オフピーク通勤やオンライン会議推進などに対応するとともに、工場では徹底した衛生管理に基づく適切な対策を講じ、生産体制の確保に努めます。しかしながら、感染拡大等により生産・販売などの事業活動に支障をきたす可能性があります。

これらの要因は、当社グループの生産、出荷等の事業活動に与える影響が大きいと予想され、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 海外事業の状況について

当社グループは、台湾、ベトナム、タイを含む、世界各国・各地域で事業展開しているため、現地の政治・経済・社会の変化、テロ及び戦争の発生に伴うカントリーリスクが相対的に高くなる可能性があり、当該リスクが発生した場合は、サプライチェーンの遮断、設備の損壊、人員確保や営業継続が困難になることなどにより、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、現在、世界経済において、新たに発生する可能性のあるカントリーリスクとしては、中国と台湾との間の武力衝突発生の可能性があげられ、万一、このようなリスクが顕在化した際には、台湾を含む世界中の事業活動に影響する可能性があります。

 

(6) コンプライアンス、情報セキュリティについて

当社グループは、国外を含めた法令等の規制に対応するため、常に情報の収集や、社内周知・教育を行い、法令遵守を徹底しておりますが、各法令等違反が発生した場合は、罰則や許可の取り消しなどにより、日本を含む世界中の事業活動に影響する可能性があります。また、当社グループは、事業及び業務の効率化を目的として、様々な情報システムを利用しているため、サイバー攻撃や、災害等の不測の事態によるシステム障害及び機密情報の漏洩等が発生した場合は、情報システムの停止、社会的信用の低下及び当該トラブルへの対応を行うための費用負担の発生等、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 製品供給リスクについて

国内の物流を取り巻く環境は、労働力人口の減少やEC市場の拡大などの影響により、輸送体制の維持が課題となっています。当社グループでは、パレット輸送の促進、待機時間や配送頻度の削減などの推進に取り組むとともに、パートナー企業との共同配送や荷役効率化に向けた連携も強化しております。また、気候変動や需要変動に柔軟に対応するため、全国的な視点でのバリューチェーンの最適化を進めており、2025年度中に稼働予定の中部工場も、全国への配送拠点として物流効率の向上に貢献する見込みです。なお、輸送費の高騰や施策の遅れが生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識並びに分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績の分析

当連結会計年度は、国内においては前連結会計年度にリニューアルを実施した「湖池屋プライドポテト」の他、「湖池屋ポテトチップス」や「スコーン」などの各種定番商品の販売が好調でした。一方で、原材料費や物流費をはじめとした各種コスト上昇など、利益圧迫要因もありました。これらに対応するため、コスト削減施策及び価格改定を実施することで利益確保に努めました。

海外においても、各国において着実に事業を拡大し売上増加を実現するとともに、各種コストコントロールに注力したことで、大幅な増収増益となりました。業績は次のとおりです。

売上高は、59,383百万円(前年同期比8.3%増)となりました。利益につきましては、営業利益4,019百万円(前年同期比11.7%増)、経常利益4,017百万円(前年同期比15.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益2,590百万円(前年同期比17.3%増)となりました。

 

セグメント別の業績は以下のとおりです。

 

<国内>

当連結会計年度は、「高付加価値商品等の継続拡販」「物価高騰対策及び製造体制の強化」「継続的な新機軸商品開発」を、戦略テーマの3つの軸とし事業展開を進めてまいりました。

商品戦略として、高付加価値ブランドを中心に継続的に新商品を発売しました。また、これらの商品群に対し集中的に広告投資をおこない、商品の配荷アップのための営業活動と連動させるなど、ブランドの育成に注力いたしました。

具体的には、高付加価値商品群のフラッグシップである「湖池屋プライドポテト」において、食塩不使用でありながら満足感のある味わいを実現した「湖池屋プライドポテト GOLD STYLE 幸せの極みだし 食塩不使用」や、「夢中サイズ」と名付けた大容量商品を展開するなど、多様なニーズへ対応する商品を発売しております。また、2025年3月にリニューアルを実施した「湖池屋ストロング」では、ブランド全体のコンセプトを「濃厚さ」「贅沢感」「品質感」へとシフトさせ、強い味覚を求める層への訴求を強化し、ブランドとしての地位確立を図っております。この他、新市場創造への取り組みとして、スナック感覚で手軽に食べられる「ランチパイ」の販売や市場定着へむけた広告販促活動を実施しました。

一方、原材料費、物流費及び人件費の上昇などの利益圧迫要素もありました。 これらのコスト上昇に対応するため、生産・物流の最適化をはじめとしたコスト削減施策を継続的に実施しています。しかしながら、昨今のコスト増加を吸収しきれないことから、必要に応じた価格改定を実施することで利益確保に努めました。

以上のとおり、コスト上昇の影響がありながらも、販売数量増加及び利益確保施策の結果、国内の売上高は53,155百万円(前年同期比7.9%増)となり、セグメント利益は3,532百万円(前年同期比7.3%増)となりました。

 

<海外>

台湾事業では、主力の「カラムーチョ」を中心とした売上拡大に加え、ポテトチップスの中でも収益性の高い「厚切りRich Cut」やポテトチップス以外の商品の拡販を行いました。収益管理体制を強化し販促費のコントロールを徹底したことに加えて、台湾国内産馬鈴薯の豊作による原価低減などもあり、大幅な増益となりました。

ベトナム事業では、ベトナム国内売上が着実に成長するとともに、輸出事業も大きく拡大しました。売上拡大に伴う工場の稼働率向上に加え、継続的に実施している各種コスト削減施策も利益改善に貢献しています。また、さらなる売上と利益の拡大を目指し、ユニークなキャラクターにより日本で人気の「ポリンキー」を、若年層主体のベトナム市場でも有望と考え、生産および販売を開始いたしました。

タイ事業では、販売効率の悪いスポット商品の発売数を減らし、定番商品の販売にフォーカスするとともに、現地流通大手との取り組みの活発化に加え、地方スーパー及び個人商店への販路拡大を図り売上を拡大しています。また、現地で販売が好調な「カラムーチョ」のブランド力を活かし、収益性の高い「カラムーチョ Corn Snacks」も新たに上市いたしました。

以上により、海外の売上高は6,227百万円(前年同期比11.5%増)となり、セグメント利益は577百万円(前年同期比64.7%増)となりました。

 

(2)財政状態の分析

(資産)

 総資産は、前連結会計年度末に比べ2,655百万円増加し、39,055百万円となりました。主な要因は、現金及び預金の減少(3,287百万円)の一方、建設仮勘定の増加(5,360百万円)によるものであります。

(負債)

 負債は、前連結会計年度末に比べ613百万円増加し、19,645百万円となりました。主な要因は、未払金の減少

(2,244百万円)及び買掛金の減少(1,361百万円)の一方、長期借入金の増加(4,389百万円)によるものであります。

(純資産)

 純資産は、前連結会計年度末に比べ2,041百万円増加し、19,410百万円となりました。主な要因は、利益剰余金の増加(2,056百万円)によるものであります。なお、自己資本比率は48.8%となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べて3,287百万円減少し、3,567百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は150百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益(3,691百万円)等の増加があったものの、未払金の増減額(1,882百万円)、法人税等の支払額(1,374百万円)及び仕入債務の増減額(1,348百万円)等の減少があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は6,757百万円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出(6,767百万円)によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果得られた資金は3,666百万円となりました。これは主に、配当金の支払額(533百万円)及び長期借入金の返済による支出(424百万円)等の減少があったものの、長期借入れによる収入(4,800百万円)等の増加があったことによるものであります。

 

 

(4)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況

1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

 

①繰延税金資産

 当社グループは、繰延税金資産については、将来の課税所得の見込み及び税務計画に基づき、回収可能性を十分に検討し、回収可能な額を計上しております。なお、既に計上した繰延税金資産については、その実現可能性について毎期検討し、内容の見直しを行っておりますが、将来の課税所得の見込みの変化やその他の要因に基づき繰延税金資産の実現可能性の評価が変更された場合、繰延税金資産の取崩又は追加計上により親会社株主に帰属する当期純利益が変動する可能性があります。

 

②退職給付費用及び債務

 退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいた死亡率等が含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は将来にわたって規則的に認識されるため、将来の期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。

 

③固定資産の減損

 当連結会計年度において業績が好調に推移したことから、減損の兆候を識別しておりません。しかし、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、翌連結会計年度以降の連結財務諸表において減損損失が発生する可能性があります。

 なお、Koikeya Vietnam Co.,Ltd.に係る固定資産の減損の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(5)生産、受注及び販売の実績

①生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

国内(百万円)

73,364

121.5

海外(百万円)

1,251

121.8

合計(百万円)

74,615

121.5

(注)金額は販売価格によっております。

 

②受注実績

  当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を立てて生産しております。

   一部の事業において受注生産を行っていますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。

 

 

③販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前年同期比(%)

国内(百万円)

53,155

107.9

海外(百万円)

6,227

111.5

合計(百万円)

59,383

108.3

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

丸紅㈱

10,945

20.0

12,449

21.0

三菱商事㈱

7,105

13.0

7,925

13.3

 

(6)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

(経営成績の分析)

 当社グループの当連結会計年度の業績は次のとおりです。

 売上高は、59,383百万円となりました。

 利益につきましては、営業利益4,019百万円、経常利益4,017百万円、親会社株主に帰属する当期純利益2,590百万円となりました。

 原材料費や物流費をはじめとした各種コスト上昇は依然として継続する一方、国内においては「湖池屋プライドポテト」の他、「湖池屋ポテトチップス」や「スコーン」などの各種定番商品の販売が好調に推移したこと、海外においては収益性の高い商品の拡販や、各種コストコントロールに注力したことが主な要因となり、好調な売上の推移となりました。

 

(財政状態の分析)

 財政状態の分析につきましては、「4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](2)財政状態の分析」に記載のとおりであります。

 

(キャッシュ・フローの状況の分析)

 キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](3)キャッシュ・フローの状況の分析」に記載のとおりであります。

 

(資本の財源及び資金の流動性)

 当社グループにおける資金需要は、主に運転資金、設備投資、配当金の支払いとなります。これら資金需要を満

たすため、当社グループでは営業活動から得られるキャッシュ・フローを主たる財源とし安定的な資金確保を行っ

ておりますが、当社グループの戦略として掲げている高付加価値商品の売上拡大、定番商品等の収益改善、新規商

材開発を進めるにあたり必要となる設備投資を主とした成長投資等の将来への資金需要に対しては、可能な限り

自己資金から充当し、必要に応じて金融機関からの借入による調達を行う方針であります。また、金融機関とは

良好な関係を継続しており、当座貸越枠を設定し、機動的な資金確保が行える体制を構築するなど十分な資金の流動性を確保しております。

 配当金の支払いにつきましては、株主の皆様への安定した配当を継続するとともにグループの業績に応じた成果の配分を行うことを基本方針としております。

 

5【重要な契約等】

(業務・資本提携契約)

日清食品ホールディングス株式会社との業務・資本提携契約

 当社は、日清食品ホールディングス株式会社(以下、「日清食品HD」といいます。)との間で、2011年5月11日に業務・資本提携に関する契約を締結し、2012年5月21日に両社の関係をより強固なものとするべく、当該契約を変更しております。本契約に基づき、日清食品HDは、当社の発行済株式総数の20.0%に相当する数の株式を取得いたしました。更に、2014年11月18日に当社の同社に対する第三者割当増資により、同社は当社の発行済株式総数の33.4%に相当する数の株式を取得し、その後の追加取得により同社は当社の発行済株式総数の45.1%に相当する株式を保有しております。

 業務提携に関しては、主に以下の内容の相互協力を想定しています。

  A.商品開発及びマーケティングに関する分野
B.営業に関する分野
C.資材調達機能、生産機能、物流機能などの機能面および安全に関する分野
D.海外事業に関する分野
E.人的交流

 

(金銭消費貸借契約)

 当社は財務上の特約が付された金銭消費貸借契約を締結いたしました。契約に関する内容等は、以下のとおりです。なお、財務上の特約の内容につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)」に記載しているため、記載を省略しております。

 

契約締結日

相手先

期末残高

(百万円)

弁済期限

担保の内容

2024年8月22日

株式会社みずほ銀行

2,850

2034年8月30日

無担保・無保証

2024年12月24日

株式会社りそな銀行

1,000

2034年8月31日

無担保・無保証

2024年12月23日

株式会社三菱UFJ銀行

950

2034年8月31日

無担保・無保証

 

 

6【研究開発活動】

当社グループは「湖池屋プライドポテト」、「ピュアポテト」、「湖池屋ストロング」等の高付加価値ブランドを中心として、社会変化・生活変化・意識変化に対応した新市場創造型の商品開発に取り組んでおります。

新商品として、世界中のじゃがいもの中から日本の風土にあうものとして選抜され日本のテロワールにて育成された湖池屋のブランド芋を使用する、究極に美味しいポテトチップスの実現のためのプロジェクト『究極のポテチ計画』より、「湖池屋ファーム 黄金の果肉 焼き塩」「湖池屋ファーム 旨味こぼれ すじ青のり」を発売しました。また、食の“分食化”に対応したスナック感覚で手軽に食べられる“新しい食の選択肢”として誕生したセイボリー(甘くない)パイブランド、「ランチパイ」をリニューアルし、新たに「ランチパイ ビーフカレー」をラインナップに加えました。更に、湖池屋の誇るロングセラーブランドの可能性を広げる新食感への取り組みとして「カラムーチョクラッシュ」、「スコーンクラッシュ」を発売しました。

また、企業における地域貢献活動の一環として地域とともにテーマに取り組み、商品を通じた社会貢献を目指す「湖池屋 JAPAN PRIDEプロジェクト」を2018年より推進してきましたが、世界に誇れる日本の食材を使用し、発信することで日本を盛り上げたいとの思いから、2024年より“日本産食材の魅力”を支える匠の技と情熱の結晶である“日本の神業”に着目しました。「湖池屋プライドポテト 日本の神業」シリーズとして新たに展開し、「小豆島(手摘みオリーブ)」、「神戸(神戸ビーフ)」、「熊本(くまもとあか牛)」、「宗像(九州焼のり醤油)」、「金沢(金沢の甘えび)」、「京都(京都柚子七味)」の他、地域を跨ぎ「縄文遺跡群(北海道・青森・秋田・岩手)」をテーマとした「縄文(縄文香る帆立だし)」を加えた7商品を発売し、各地域の貢献・振興に沿った企画を実施しました。

今後も「食でくらしをゆたかに。」をテーマに、社会に貢献する食のイノベーションの実現に向けた商品・ブランド・コミュニケーションの開発を続けていきます。

 

当社グループの研究開発費用は事業部門別には区分できず、研究開発活動の成果は、基本的には国内事業部門において反映された後、海外事業に展開しており、当連結会計年度における研究開発費は656百万円であります。