第2【事業の状況】

1【事業等のリスク】

 「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(平成31年内閣府令第3号)による改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」第四号の三様式記載上の注意(7)の規定を当事業年度に係る四半期報告書から適用しております。

 前事業年度の有価証券報告書に記載した「事業等のリスク」について、有価証券報告書の提出日以後、当第3四半期連結累計期間において変更追加すべき事項が生じております。下記の「事業等のリスク」は有価証券報告書の「事業等のリスク」を一括して記載したものであり、当該変更及び追加箇所については_で示しております。

 なお、文中における将来に関する事項は、当第3四半期連結会計期間末日現在においてアサヒグループが判断したものであります。

 

1.アサヒグループのリスクマネジメント体制

 アサヒグループは、2019年1月より、エンタープライズリスクマネジメント(事業目的を達成するために、組織全体の視点からリスクを管理する取り組み。以下「ERM」といいます。)を導入しました。この取組みの中で、「Asahi Group Philosophy」の具現化、並びに「中期経営方針」の戦略遂行及び目標達成を阻害しうる重大リスクを、戦略、オペレーション、財務、コンプライアンスなど全ての領域から特定及び評価し、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを継続的に実施することで、効果的かつ効率的にアサヒグループのリスク総量をコントロールします。

 ERMを推進するにあたり、代表取締役社長をはじめとする業務執行取締役及び代表取締役社長が指名する執行役員で構成される、リスクマネジメント委員会を設置しています。ERMはグループ全体を対象とし、リスクマネジメント委員会の委員長である代表取締役社長が実行責任を負います。

 アサヒグループ各社は、事業単位毎にERMを実施し、リスクマネジメント委員会に取組内容を報告します。同委員会はそれらをモニタリングするとともに、委員自らがグループ全体の重大リスクを特定、評価、対応計画を策定、その実行及びモニタリングを実施します。これらの取組みは取締役会に報告され、取締役会はこれらをモニタリングすることで、ERMの実効性を確認します。

 

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2.アサヒグループ リスクアペタイト

 アサヒグループは、ERMを推進するとともに、「中期経営方針」の目標達成のために、「とるべきリスク」と「回避すべきリスク」を明確化する、「アサヒグループ リスクアペタイト」を制定しました。

 「アサヒグループ リスクアペタイト」は、アサヒグループのリスクマネジメントに関する「方針」です。ERMの運用指針及び意思決定の際のリスクテイクの指針となるものであり、リスクに対する基本姿勢を示す「リスクアペタイト ステートメント」と、実務的な活用を想定した、事業遂行に大きく影響する主要なリスク領域に対する姿勢(アペタイト)を示す「領域別リスクアペタイト」で構成されます。グループ戦略、リスク文化とリスク状況、及びステークホルダーの期待をもとに検討し、取締役会にて決定、グループ全体に適用され、実施状況はリスクマネジメント委員会でモニタリング、取締役会へ報告されます。本取組みを通じて、アサヒグループ全体で適切なリスクテイクを促進してまいります。

 

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3.主要リスク

 当社グループでは、「1.アサヒグループのリスクマネジメント体制」記載の通り、当社代表取締役社長をはじめとする業務執行取締役及び執行役員で構成されるリスクマネジメント委員会で、中期経営方針の事業遂行及び目標達成を阻害しうる特に重大なリスクを特定及び評価し、以下の(2)から(14)までの事項をかかるリスクとして認識しております。

 加えて、それ以外に考えられる当社グループの事業等のリスクについても、(15)にまとめて記載しております。但し、以下に記載したリスクは当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、記載されたリスク以外のリスクも存在します。かかるリスク要因のいずれによっても、投資者の判断に影響を及ぼす可能性があります。

 また、前述の、当社グループリスクマネジメントの取組みの中で、以下に記載する各リスクに対する対応策を含む種々の対応策をとりますが、それらの対策が有効に機能しない等によりリスクが解消できず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、文中においては、将来に関する事項が含まれておりますが、別段の記載が無い限り、当該事項は当第3四半期連結会計期間末日現在において判断したものです。

 

(1)中期経営方針について

 当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指して、2019年に、「Asahi Group Philosophy(AGP)」を制定し、それに基づいて中期経営方針を更新しました。上記に掲げた参照書類としての有価証券報告書の第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、本方針では、3年程度を想定した主要指標のガイドラインや、財務・キャッシュ・フロー方針を示しておりますが、これらのガイドライン・方針は、策定時に当社グループが入手可能な情報や適切と考えられる一定の前提に基づき、将来の事象に関する仮定及び予想に依拠して策定されたものです。そのため、「事業等のリスク」に記載の各リスク等を含む様々な要因により変更を余儀なくされるものであり、当社グループの事業や業績が中期経営方針内の同ガイドライン・方針等を達成できない可能性があります。特に、これらのガイドラインの内容は新型コロナウイルス感染症の拡大の影響並びにCUB事業の取得及びそれに伴う資金調達の影響を加味していないため、修正を予定しております。

 

(2)技術革新による新たなビジネスモデルの出現

 当社グループが国内外で事業を展開する、酒類・飲料・食品業界は、その製造販売に関して、技術革新による競争環境の変化が比較的少ない安定した業界ですが、最近では、アルコールテイスト清涼飲料による新たな飲用シーンの提案ができるようになり、IoTによる付加価値の提供、AI活用によるサプライチェーンの効率化、あるいはアルコール代替品など、技術革新による新たなビジネスモデルの可能性も示されております。

 これらの新たなビジネスモデルが、短期的に当社グループ事業に影響を及ぼす可能性は低いと考えますが、中長期的には、コスト構造や顧客体験で劣後し、業界での主導権喪失や競争力の低下につながり、売上収益、事業利益の低下など、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性もあります。その一方で、当社グループがこのようなイノベーションを先導することができれば、市場優位性獲得や、新規市場創出につながることが期待できます。

 本件に対しては、単なるリスク対応に留まることなく技術革新を先取りすることを目指して、中期経営方針において「イノベーション、ディスラプションを実現する風土改革、無形資産(研究開発・人材力等)への投資」及び「デジタルトランスフォーメーションによる構造改革、ビジネスモデルの進化」を掲げ、領域を特定した戦略的R&D及びIT投資を推進しています。また、各事業領域においてもイノベーションは重点課題の一つと認識し、取り組みを進めています。以上の取り組みを加速すべく、革新的技術の早期認識及びグループへの取込み、並びに事業化を支援する体制の構築を推進しております。その取り組みの一環として、2019年度、研究戦略の立案、研究開発、及び新規事業創出に取り組む新会社、アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社を設立しました。当社では、これまで蓄積してきた酵母や乳酸菌研究の知見等を深掘りし、新たな事業や価値の創出を目指すとともに、AIなどの新技術やオープンイノベーションを積極的に活用し、従来の研究開発領域に捉われない取り組みを進めています。また、中期経営方針に掲げた『稼ぐ力の強化』、「新たな成長の源泉獲得」及び「イノベーション文化の醸成」を目的として、「ADX(Asahi Digital Transformation)戦略モデル」を策定し、新たな価値体験の創出等、デザイン思考によるアイデアの創出やオープンイノベーションに積極的に取り組んでいます。

 

(3)事業拡大について

 当社グループは、Schweppes Australia社の買収(2009年、買収額1,185百万豪ドル(適時開示の際に公表した金額、以下同じ))、カルピス社の買収(2012年、買収額920億円)、旧SAB Miller社の西欧ビール事業の取得(2016年、買収額2,550百万ユーロ)、中東欧ビール事業の取得(2017年、買収額7,300百万ユーロ)及びCUB事業の買収(2020年、買収額160億豪ドル)をはじめとして、国内外での事業領域拡大のため、積極的に外部の経営資源を獲得してきました。中期経営方針において「既存事業を補完するボルトオン型M&Aや競合・異業種とのアライアンスの拡大」を掲げております。当面は財務基盤の強化を優先し大型の買収を積極的に行う予定はありませんが、今後も、成長のために、外部の経営資源を活用していきます。

 外部の経営資源獲得にあたっては、慎重に検討を行い、一定の社内基準をもとに、将来の当社グループの業績に貢献すると判断した場合のみ実行致します。しかしながら、営業、人員、技術及び組織の統合ができずコスト削減等の期待したシナジー効果が創出できなかった場合、アルコールや砂糖の摂取に対する社会の価値観の変化や人口動態の変化等により、買収した事業における製品に対する継続的な需要を維持できない場合、買収した事業における優秀な人材を保持し又は従業員の士気を維持することができない場合、高付加価値ブランドの育成不振等、効果的なブランド及び製品ポートフォリオを構築することができない場合、並びに異なる製品ラインにおける販売及び市場戦略の連携(クロスセルの拡大)ができない場合等により、当社グループの期待する成果が得られない可能性があります。

 これに関連し、当社グループは2020年6月1日にCUB事業を取得する手続きを完了しました。これにより、日本、欧州に加え、豪州地域での事業を盤石にし、日、欧、豪の3極を核としたグローバルプラットフォームを構築、成長基盤の拡大を実現いたしました。しかしながら、3極間でのトップライン成長及びコスト削減を含むシナジー効果が想定どおり実現できない可能性があり、また、新型コロナウイルス感染症の拡大に起因する外食産業におけるアルコール消費の需要の低下といったグローバルな事業環境変化の影響をより一層受けることとなります。

 当社グループは、買収に伴い、相当額ののれん及び無形資産を連結財政状態計算書に計上しており、2019年度末現在、のれん及び無形資産の金額はそれぞれ、連結総資産の22.4%(7,029億円)及び22.1%(6,955億円)を占めており、2020年9月末現在、CUB事業の買収により追加で1兆1,905億円ののれんを暫定的に計上しております(CUB事業買収に伴って、発生したのれんの金額、企業結合日に受け入れた資産及び引き受けた負債の額等については、企業結合日における識別可能資産及び負債の特定を精査中であり、取得価額の配分が完了していないため、暫定的な会計処理を行っております。)。当社グループは、当該のれん及び無形資産につきまして、それぞれの事業価値及び将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が将来にわたって大きく損なわれると判断された場合、又はカントリーリスクの顕在化による金利高騰や市場縮小等により適用される割引率や長期成長率が大きく変動した場合等は、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、AGP及び中期経営方針に基づいたグローカルな価値創造経営により、事業の持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指しており、『稼ぐ力の強化』、『経営資源の高度化』や、『ESGへの取組み深化』の一環としてグループガバナンスの更なる実効性向上に向けた取り組みを実施することで、グループ戦略の実行と期待成果をより確実なものとします。

 

(4)情報セキュリティ

 当社グループは、高い市場競争力を確保するため、事業活動の多くをITシステムに依存しており、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、あるいはサイバー攻撃によって、事業活動の混乱、機密情報の喪失、個人情報の漏洩、詐欺被害、EU一般データ保護規則(GDPR)などの各国法令違反が発生する可能性があります。

 このようなリスクが顕在化した場合、事業の中断、損害賠償請求やセキュリティ対策費用の増加等によるキャッシュアウト、GDPR違反による制裁金等により、当社グループの業績及び財政状態、並びに企業ブランド価値に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、2016年8月にASAHI-CSIRTを設置し、ITシステム上でサイバーセキュリティインシデントが起きていないかどうか監視すると共に、万が一インシデントが発生した場合には、その適切な対応を行うことは勿論のこと、原因解析や影響範囲の調査を行い、再発防止並びに防御の最適化を図る体制を敷いています。そのうえで、ソフトウェアや機器でのセキュリティ対策、及び社員教育や訓練を実施し、本件リスクが顕在化しないように取り組んでいます。

 

(5)アルコール摂取に対する社会の価値観

 アルコールの摂取は、人々の生活を豊かにしてきた一方で、その不適切な摂取は、健康面あるいは社会的悪影響が指摘されています。WHOにおいては、世界的な規模での酒類販売に関する規制が検討されており、当社グループの予想を上回る規制強化が行われる可能性があります。また、世界的健康志向の高まりにより、アルコールに対する消費者需要が縮小する可能性もあります。これらの要因により、規制に対応するための費用支出による利益圧迫や、酒類の消費が減少することによる売上収益の縮小、さらにはアルコールを製造・販売する当社グループのレピュテーション及びブランド価値を毀損するなどし、その結果、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、アルコール飲料を製造・販売する企業として、企業の社会的責任を果たすため、WHOの目指すアルコールの有害な使用の低減による健康被害の予防について、酒類事業を行う各地の関連法令遵守のほか、IARDをはじめとする業界団体や業界と協力、連携して、販売や広告に関する自主基準を設け、責任あるマーケティングに取り組んでおります。2020年1月28日には、IARDに加盟する企業のCEOによる、未成年飲酒防止に向けた取組みを推進する共同声明を公表しました。また、適正飲酒の啓発活動を積極的に推進し、不適切な飲酒の撲滅に取り組んでいます。また、アルコールテイスト清涼飲料など、健康に配慮した商品の展開により、新しい飲用機会の創出に取り組んでおります。

※ IARD=International Alliance for Responsible Drinking(責任ある飲酒国際連盟)の略称。不適切な飲酒の撲滅と、責任ある飲酒を促進するという共通の目的のもとに、世界のビール、ワイン、スピリッツの製造業者である大手企業12社の加盟企業で構成される非営利団体。

 

(6)事業環境について

 当社グループの売上収益において国内事業の占める割合は約66.5%(2019年12月末現在)となっております。今後の日本国内での景気の動向によって、酒類・飲料・食品の消費量に大きな影響を与える可能性があり、人口の減少、少子高齢化が進んでいくと、酒類・飲料・食品の消費量が減少する可能性があります。また、これまでのデフレ環境が想定以上に継続することにより、国内での競争環境がさらに激化する結果、販売単価の下落を招き、当社グループ事業の収益性が、想定より損なわれる可能性があります。以上の要因により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 国内事業の売上収益のうち、ビール類は約5割を占めます。このような状況は、当社ビール類商品に対するお客様の信頼を反映したものであり、当社グループ国内酒類事業での効率的な利益創出に寄与しておりますが、消費者の嗜好性の変化、世代交代等により、お客様の支持を失ってしまうと、本商品群の売上が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは国外での事業領域を拡大しており、CUB事業の取得の結果、当社グループの売上収益に占める海外事業の割合はさらに高まることになります。今後、欧州、豪州地域を中心とする当社グループが事業を展開する各国における景気が悪化したり、当該各国での競争環境が激化すること等により、当該地域における当社グループの売上収益の低下、利益率の悪化が生じる可能性があります。

 当社グループは、中期経営方針に『稼ぐ力の強化』を掲げ、『アサヒスーパードライ』など主力ブランドの価値向上や新市場の創造を目指すとともに、最適生産物流体制の構築など収益構造改革に継続して取り組むことで、本リスクが顕在化した場合の業績及び財政状態への影響の低減を図っていきます。また、ビール類以外にも酒類全般における商品のラインアップを充実させることで売上収益を増加させるとともに、飲料、食品事業において、消費者の健康志向の高まり及び高齢化社会に対応する領域へ挑戦することで、事業拡大を図っていきます。

 しかしながら、経済不況、消費者の嗜好の変化等、市場の需要動向によって酒類、飲料、食品の消費量の大幅な減少を余儀なくされる等、予期せぬ事態が発生した場合は、上記対策が有効に機能せず、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)国内物流需給ギャップの拡大

 当社グループが事業展開する、酒類・飲料・食品の製造販売業界においては、物流は重要、かつ費用の構成比も高い機能です。国内の物流環境は、少子高齢化による労働人口減少に加え、電子商取引の拡大による宅配便の増加等の影響もあり、ドライバー需給ギャップの拡大が予想されます。さらには、物流業界特有の長時間労働の削減、生産性の向上等、社会問題の積極的な解消無くしては、今後想定を上回る需給ギャップが生じる可能性も否めません。

 これらの事業環境の変化により、当社グループ全事業の、売上収益ベースで66.5%(2019年12月末現在)、事業利益ベースで56.3%(2019年12月末現在)を占める国内事業において、運搬費の増嵩に留まらず、製品の運搬に必要な量の物流機能を適切な費用にて確保することができないこと等により、製品供給が滞るリスクをも想定しておく必要があります。

 本件リスクは、日本社会全体の課題とも密接に関連しており、当社グループは、国土交通省・経済産業省・農林水産省が推進する「ホワイト物流」推進運動の趣旨に賛同する旨を表明しております。

 当社グループは、本件リスクへの具体的な対応として、地産地消ロジスティクスの実現による効率的な物流体制の実現及び輸送量の削減、並びに物流機器・システムの導入による物流業務省人化及び物流負荷低減を目的として、アサヒビール名古屋工場でアサヒ飲料製品の製造ラインを新設するとともに自動倉庫を建設しています(2021年稼働予定)。また、従来から取り組んでいるモーダルシフト(鉄道・船舶輸送)や、効率化・省人化を目指した新たな幹線輸送スキームの確立など、同業他社や異業種、物流事業者との連携による効率性の高い輸送の実現を推進しています。

 但し、これらの対策の実施を妨げる事象が発生する又は対策が有効に機能しない、あるいは物流需給ギャップが想定をはるかに上回ってしまう等により、上記リスクが解消しなかった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)多様で有能な人材の確保

 中期経営方針に掲げる目標達成のためには、多様な価値観や専門性を持った社員の力が必要不可欠です。そのため、当社グループは、社員の多様性を尊重するとともに、一人ひとりが成長できる人材育成プログラムへの投資を拡大し、必要に応じて、経営幹部、一般社員問わず、外部からの登用も進めております。

 それでも、日本国内での少子高齢化による労働人口減少、及びグローバルな事業地域の拡大にともなう人材需要の増高及び必要スキルの変更及び高度化により、多様で有能な経営幹部並びに一般社員を、必要数確保、育成及び定着させることができず、中期経営方針の戦略を実行し目標を達成する能力を損ねる可能性があります。

 本件リスクに対して、中期経営方針に「グローカルタレントマネジメントやダイバーシティの推進」を掲げ、取り組みを進めております。将来の経営幹部候補のサクセッション・プランを策定し、それに基づいたグローバルリーダーシッププログラム等の育成施策を連動させることによって、人材パイプラインの拡充・強化を進めています。加えて、グローバル人材会議等を通じて各国の人材の可視化を図り、グローバルでの適材適所配置も推進し、能力と適性のある人材を積極的に登用していきます。また、日本を含めて、地域を越えた人材交流の活性化、国籍や性別を超えた登用など、ダイバーシティを推進しております。

 

(9)品質について

 当社グループは、最高の品質をお客様にお届けすることをグループ理念に掲げ、いずれのグループ会社も品質を通して、お客様との信頼関係を築くことに不断の努力を続けています。お客様の健康に密接に関連する事業を展開しているため、万一、不測の事態により、お客様の健康を脅かす可能性が生じたときは、お客様の安全を最優先に考え、迅速に対応します。

 当社グループは、品質確保及び向上の取組みとして、商品設計から販売に至るまでのプロセス毎に、品質に影響を与える業務や注意すべき事項を抽出し、その点検と是正を実施しています。また、品質保証技術の高度化のため、AI等先端技術の導入にも取り組んでいます。特に、生産工程においては、重要な管理項目を整理し、必須要求事項として展開し、工場毎の自己点検や生産工程の監査へ活用しています。これらの取組みについては、今後も深化させていきます。

 また、当社グループでは、食の安全に関わる最新の分析技術を開発しています。その対象は、微生物・農薬・カビ毒・重金属・樹脂・放射性物質など多岐にわたっており、海外も含めたグループ全体の高度な品質保証体制を技術面から支えています。

 さらに、各グループ会社の商品特性や製造工場の環境に応じて、国際的な品質・食品安全マネジメントシステムの考え方を取り入れ、必要に応じて外部認証取得しています。

 しかしながら、以上並びにその他の品質リスクに対する対策にもかかわらず、万一、品質に問題が生じて、商品の安全性に疑義が持たれた場合には、商品の回収や製造の中止を余儀なくされ、その対応に費用や時間を要するだけでなく、お客様からの信頼を失う可能性があります。このような事象が発生した場合、中期経営方針に掲げた「国内外での高付加価値ブランドの育成とクロスセルの拡大などによる売上成長」の未達を含む、当社グループの業績及び財政状態、並びにレピュテーション及びブランド価値に対して影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)大規模自然災害

 大規模な地震、津波、台風、洪水等の自然災害に関連するリスクは年々高まっており、近年国内外問わず、世界各地で大規模災害が現実のものとなっています。今後も、中長期的に継続するとともに規模の拡大が懸念されております。このような大規模な自然災害の発生により、従業員の被害、工場損壊、設備故障及びユーティリティー(電気、ガス、水)遮断により製造が停止、倉庫損壊及び保管製品破損により出荷が停止、並びに物流機能停止により原材料資材の調達及び製品の出荷が不能になる可能性があります。更に、事務所施設の損壊、交通機関マヒによる従業員の通勤不能、及びシステム障害に伴う重要データの消失等もあわせて、事業活動が停止する可能性があります。事業活動の復旧に長期を要した場合、施設等の改修に多額の費用が発生した場合、消費マインドが落ち込んだ場合など、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社グループは、大規模災害が発生した際に、いち早く従業員(及びその家族)の安否を確認する仕組みとして、安否確認システムを導入するとともに、早急に被災地の被害状況を把握するため、衛星携帯電話の配備をはじめとした緊急時通信体制の強化を進めています。そのうえで、定期的な訓練を実施することで、有事の対応力を強化するとともに、災害対応意識の啓発に努めています。

 生産工場では、建物倒壊対策のため、国内全建物対象に耐震診断を完了。対策が必要な物件については、順次計画的に補強工事を実施中です。ボイラー、冷凍機等の大型エネルギー供給設備には大地震(震度5弱相当)を検知すると、安全に自動停止する機能が付属し、大型ビール工場では電力供給が遮断した場合でも、自家発電によりタンクを冷却させることで、半製品の大量腐敗を防止するなど2次災害のリスク低減対策を進めています。

 また、主要グループ会社において、過去の地震防災対策の実績及び東日本大震災の経験を踏まえた「事業継続計画(BCP)」の策定を行い、主要商品の供給を継続するための需給調整機能を早急に復旧する体制を構築するとともに、受発注処理等に関する重要なデータを処理する関東のサーバーセンターのバックアップセンターを関西に設置し、大規模な自然災害が起こった場合であっても被災地以外での事業活動に支障が無いように備えています。

 これらの事前対策により災害による被害の最小化、当社グループの業績及び財政状態に対する影響の低減に努めています。

 

(11)プラスチック使用

 近年、廃棄プラスチックの規制強化の動きが活発化しております。同時に、プラスチックを大量に使用する製品に対する社会の目は厳しくなってきており、容器包装をプラスチック素材に依存している当社グループの飲料・食品製品の需要が著しく低下し、売上に影響を与えるだけでなく、対応不十分とのことで、当社グループに対するレピュテーションが低下する可能性があります。また、リサイクル費用の負担が増加することや、生分解性素材などの代替素材を使用した場合の材料費が増加することなどで、製造原価が増高する可能性があります。

 本件リスクへの対応として、当社グループは、「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、「持続可能な資源利用100%を目指す(農産物原料、容器包装、水)」ことを目標に掲げ、容器包装に関しては、グループ各社において、海洋汚染や生態系への影響が世界的に問題視されている海洋プラスチック問題への対応を、国内外で様々な取組みを進めています。

 国内では、アサヒ飲料株式会社が「容器包装2030」を制定し、リサイクルペット・環境配慮素材の使用、リデュースの推進、環境への配慮を前提とした新容器開発等に取り組んでおり、ラベルの無い「ラベルレスボトル」、さらにリサイクル素材を20%使用したペットボトル入りの『カルピス』等を販売しています。また海外では、オーストラリアの飲料子会社Asahi Beverages Pty Ltdが、リサイクル素材を100%使用したペットボトル入りのミネラルウォーター『Cool Ridge』を販売しています。

 当社グループ全体としては、更なる環境配慮素材の活用を推進してまいります。

 

(12)気候変動にかかわるリスク

 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)においてパリ協定が採択、各国で批准されたのを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減を目的とした取組みが世界的に進められています。

 当社グループは、将来的な気候変動が、その業績及び財政状態に重大な影響を与える可能性がある物理リスクとして、以下の通り認識しています。海外の生産拠点における干ばつが深刻化し、水需給が逼迫、水価格の高騰による操業コストが上昇する可能性があります。気温上昇(生育環境や労働環境の変化)・天候・自然災害・CO2濃度などが需給バランスや品質に影響し、主要な原材料価格が変動する可能性があります。更に、必要な水資源が確保できない場合、操業停止による機会損失と工場移転費用が発生する可能性があります。異常気象の激甚化により、深刻な風水害及び土砂災害が発生することで生産ラインや物流が停止し、設備被害や機会損失、製品廃棄による損失が発生する可能性があります。

 また、将来的な気候変動を見据えた低炭素社会への移行リスクを以下の通り認識しております。炭素税が導入され、製品原材料への価格転嫁や生産拠点の操業コストが上昇する可能性があります。水ストレスの高い地域の生産拠点において取水制限を受けて操業が停止、機会損失が発生する可能性があります。エシカル志向の高まりにより、環境配慮が不十分な製品があった場合、その需要が低下し、当社売上に影響を与える可能性があります。

 当社グループは、新たに制定した「アサヒグループ環境ビジョン2050」の中で、CO2排出量を、2030年までに2015年比30%を削減し、2050年迄にゼロとする目標を掲げ、更なる省エネルギーと再生可能エネルギーの活用に取組み、水リスクへの対応としましては、グループ全体として、水使用量削減に向け、取り組んでまいります。また、当社は、2019年5月、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の提言に賛同しました。気候変動が事業に及ぼすリスクと機会の分析と対応について積極的に取り組み、今後、有価証券報告書、統合報告書やホームページ等において情報開示を行っていきます。

 

(13)事業展開国のカントリーリスク

 現在、当社グループは20を超える国に拠点を構え、世界経済全体の動向に加え、各国固有の政治、経済、社会、法規制、自然などの要素が、各国事業に影響を与える可能性があります。具体的なリスクとしては、政情不安、経済危機、関税報復措置、難民排斥運動、人種差別、規制強化、税制改正、自然災害、新興感染症等が想定されます。2019年7月以降、韓国での日本商品の不買運動により、同国での当社グループ製品の販売数量が大幅に減少しました。これらリスクに対しては、グループ各社での情報収集や外部コンサルタント起用等を通じて早期に認識し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処をするよう取り組むことで、その予防・回避に努めるとともに、重大インシデント発生に備えた事業継続計画の策定などを行っていますが、これらのリスクが顕在化した場合には、関税引き上げなど、在外資本企業に対する不利益条件によるコスト競争力の低下、利益の圧縮、政治的・軍事的・社会的圧力による営業困難あるいは営業停止、社員の安全不安、経営計画未達、中長期的損失計上、さらには事業撤退の可能性もあります。また、当社グループは、今後の更なるグローバル化により収益源の分散化を進め、本件リスク顕在化時の、グループ全体への影響の低減を図っていきますが、当社想定を大きく超える事態が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)法規制とソフトローのコンプライアンス

 当社グループは事業の遂行にあたって、食品衛生法、製造物責任法、労働関連規制、贈収賄規制、競争法、GDPR等の個人情報保護規則、環境関連法規等の様々な法規制の適用を受けています。これらの法令が変更される、又は予期し得ない法律、規制等が新たに導入される等の理由による法令違反や社会規範に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受け、規制遵守対応のためのコストが増加し、又はお客様をはじめとしたステークホルダーの信頼を失うことにより、レピュテーションやブランド価値が毀損し、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社グループは、「アサヒグループ行動規範」を制定し、事業活動を行う全ての国・地域において、適用される法令・ルールを遵守することを含め、「Asahi Group Philosophy」で示したステークホルダーに対する5つのPrinciplesに基づき、企業倫理・コンプライアンスを実践するための10条の行動規範を規定しました。そして、代表取締役社長が委員長を務め、業務執行取締役及び委員長が任命した執行役員で構成される「コンプライアンス委員会」を設置し、グループ全体の企業倫理・コンプライアンスを推進・監督するとともに、「アサヒグループ行動規範」に関する社員の研修などを通じてコンプライアンスのレベルを高め、法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。

 また、グローバルな事業地域が大きく拡大した今、当社グループにとって、人権保護並びに関連法規制の遵守は特に重要と認識しています。そこで、『ESGへの取組み深化』における重点課題の一つとして「人権マネジメント体制の構築」を掲げ、第一ステップとして、2019年、人権に関する最上位の方針として、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「アサヒグループ人権方針」を制定しました。本方針で掲げた人権デューデリジェンスについては、2017年に実施した現代奴隷リスク分析の結果に基づき、2020年にサプライチェーンから開始する予定です。今後、人権マネジメント体制の更なる高度化を図り、人権侵害リスク低減に向けた取り組みを推進します。

 

(15)その他のリスク

新型コロナウイルス感染拡大の影響

 2019年末、中国で初めて確認され、世界中へ拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、当社グループでは、顧客、取引先及び社員の安全第一を考え、また更なる感染拡大を防ぐために、WHO並びに各国保健行政の指針に従った感染防止策の徹底をはじめとして、感染リスクが高い国や地域への、及びそれらの国や地域からの渡航の原則禁止、工場見学や販売促進企画等の多くのお客様にお集まりいただくイベントの休止や制限、国内でのテレワーク(在宅勤務)の原則化等、対応を実施しております。当第3四半期連結会計期間末日現在、主要原材料の十分量確保、業務用商品の需要低迷を家庭用商品で補完する等により、事業影響の低減を図っておりますが、2020年12月期第3四半期決算においては、第2四半期を底として回復傾向となっているものの、世界各国における外食産業の低迷や外出自粛の影響などにより、当社グループの業績への影響が生じております。今後、当社グループが事業展開する地域において新型コロナウイルス感染症の更なる拡大及び事態の長期化並びにそれに伴うロックダウンや緊急事態宣言が生じた場合には、業務用ビールを中心とした売上低迷の長期化、利益率が比較的低い新ジャンルやRTDの売上高構成比の上昇による収益性の悪化等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

財務リスク

為替変動     :当社グループはグローバルに事業を展開しているため為替リスクを負っています。このうち、海外子会社及び関連会社における資産や負債については円高が進行すると在外営業活動体の換算差額を通じて自己資本が減少するリスクがあります。このため、必要に応じて為替リスクのヘッジをするなどの施策を実行していますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。また、海外連結子会社等の損益の連結純利益に占める割合が比較的高く、これらの収益の多くが外貨建てであり、当社の報告通貨が円であることから、外国通貨に対して円高が進むと、連結純利益にマイナスのインパクトを与えます。一方、本国で行う輸出入、及び外国間などの貿易取引から発生する、外貨建債権及び債務等は為替レートの変動によるリスクを有しておりますが、このリスクは為替予約等と相殺されるため影響は限定されます。

金利変動     :当社グループは銀行預金や国債等の金融資産及び銀行借入金や社債、リース負債等の負債を保有しております。これらの資産及び負債に係る金利の変動は受取利息及び支払利息の増減、あるいは金融資産及び金融負債の価値に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、金利リスクを回避する目的で、金利を実質的に固定化する金利スワップを利用しております。またヘッジ会計の要件を満たす取引については、ヘッジ会計を適用しております。

格付低下     :当社グループに対する外部格付機関による格付けが引き下げとなり、当社グループの資本・資金調達の取引条件の悪化、もしくは取引そのものが制限される場合には、当社グループの業務運営や業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

保有資産の価格変動:当社グループが保有する土地や有価証券等の資産価値の下落や事業環境の変化等があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

税務リスク

 当社グループはグローバルに事業を展開しており、本国をはじめとする、各国の税制による適用を受けており、予期し得ない改正や税務当局からの更正処分を受けた場合、大幅なコストの増加、競争環境の悪化、事業活動の制限等が懸念され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

訴訟リスク

 当社グループは、事業を遂行していくうえで、訴訟を提起される可能性があります。万一当社グループが訴訟を提起された場合、また訴訟の結果によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

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2【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(平成31年内閣府令第3号)による改正後の「企業内容等の開示に関する内閣府令」第四号の三様式記載上の注意(8)の規定を当事業年度に係る四半期報告書から適用しております。

 

(1)業績

 当第3四半期連結累計期間(2020年1月1日~9月30日)における世界経済は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の抑制により極めて厳しい状況になりましたが、各地域での経済活動の段階的な再開により景気は持ち直しつつあります。日本経済におきましても、新型コロナウイルスの感染拡大により同様に厳しい状況となりましたが、各種政策の効果や世界経済の改善に伴い、景気は持ち直しの動きがみられます。

 こうした状況のなかアサヒグループは、『稼ぐ力の強化』、『経営資源の高度化』、『ESGへの取組み深化』の3つを重点課題とする「中期経営方針」に基づく“グローカルな価値創造経営”を推進し、各事業の主力ブランドの価値向上や新たな価値提案などを強化するとともに、新型コロナウイルスへの対策に取り組みました。感染拡大期、リカバリー期、ニュー・ノーマルの3つのフェーズに応じた対策を講じ、リカバリー期にあたる第3四半期においては、強いブランドに集中したマーケティング戦略の重点化を図るとともに、設備投資や固定費の抑制などにより財務健全性の確保に努めました。

 しかしながら、第2四半期を底として回復傾向となっているものの、世界各国における外食産業の低迷や外出自粛の影響などにより、アサヒグループの当期の売上収益は1兆4,713億9千3百万円(前年同期比5.1%減)となりました。また、利益につきましては、事業利益※1は1,309億1百万円(前年同期比19.6%減)、営業利益は1,180億2千6百万円(前年同期比26.2%減)、親会社の所有者に帰属する四半期利益は795億7千3百万円(前年同期比29.5%減)となりました。

 なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比4.3%の減収、事業利益※1は前年同期比19.1%の減益となりました。※2

※1 事業利益とは、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社独自の利益指標です。

※2 2020年の外貨金額を、前年同期の為替レートで円換算して比較しています。

 

[酒類事業]

 酒類事業につきましては、新たに策定した長期経営方針「“Value経営”への変革、お客様にとっての価値や新市場の創造を目指す」に基づき、ビール類を中心に、お客様にとって特別な価値や体験の創造などに取り組みました。

 ビール類では、ビールにおいて、『アサヒスーパードライ』のブランドメッセージ「ビールがうまい。この瞬間がたまらない。」に基づき、“氷点下のスーパードライ”をご家庭でも実感できる消費者キャンペーンを展開し、新たな飲用体験の機会を提供するなど、ビール市場の活性化を図りました。また、新ジャンルにおいては、主力ブランド『クリアアサヒ』での食事と連動したプロモーション活動の展開や、3月に発売した『アサヒ ザ・リッチ』でSNSなどデジタルを活用した広告・販売促進活動を強化することにより、新ジャンル市場における存在感の向上に努めました。

 ビール類以外では、RTDにおいて、主力ブランド『アサヒ贅沢搾り』の商品ラインアップを拡充するとともに、洋酒において、スコットランドと日本のモルト原酒をブレンドした『ニッカ セッション』を発売するなど、新たな価値提案の強化に取り組みました。また、アルコールテイスト清涼飲料において、『アサヒドライゼロ』ブランドで夏の季節に冷涼感を特長とした期間限定商品を発売するなど新たなユーザー層の拡大を図りました。

 以上の結果、酒類事業の売上収益は、RTDの売上は前年実績を上回ったものの、新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食店向けのビールの売上が大幅に減少したことなどにより、前年同期比15.5%減の5,553億7千4百万円となりました。

 事業利益については、製造原価の低減や収益構造改革などに取り組みましたが、売上収益の減少などにより、前年同期比23.2%減の599億3千1百万円となりました(営業利益は前年同期比25.3%減の575億3千8百万円)。

※ RTD:Ready To Drinkの略。購入後、そのまま飲用可能な缶チューハイなどを指します。

 

[飲料事業]

 飲料事業につきましては、炭酸カテゴリーのブランド強化と新価値創造商品の投入による市場の活性化に加え、社会的価値向上の取組み強化などにより、更なる成長に向けた強固な事業基盤の構築を目指しました。

 主力ブランドにおいては、『三ツ矢』ブランドでは、新たな広告の積極的な展開や限定復刻シリーズなどの商品を発売したほか、『ウィルキンソン』ブランドでは、炭酸水市場売上No.1を掲げたマーケティング活動を展開するなど、炭酸カテゴリーのブランド価値の向上を図りました。また、『カルピス』ブランドでは、巣ごもり需要を受け希釈タイプの商品を積極的に展開するとともに、『十六茶』ブランドでは、機能性表示食品『「アサヒ 十六茶プラス」やすらぎブレンド』を発売するなど、ブランド力の強化に取り組みました。

 新価値創造商品においては、『カルピス』ブランドから豆乳を発酵した植物生まれの『GREEN CALPIS』を発売し、市場の活性化を図りました。

 以上の結果、飲料事業の売上収益は、炭酸飲料の販売数量が前年実績を上回りましたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自動販売機の売上低下などから他の主力ブランドが減少したことにより、前年同期比4.9%減の2,704億2千3百万円となりました。

 事業利益については、内製化の促進などによる製造原価の低減を図りましたが、減収影響や自動販売機の売上低下に伴う構成差異の悪化などにより、前年同期比6.7%減の241億5千2百万円となりました(営業利益は前年同期比12.2%減の212億1千6百万円)。

※ インテージSRI調べ 炭酸水市場(フレーバー含む)2019年1月~2019年12月 累計販売金額全国/全業態計(SM/CVS/DRUG)

 

[食品事業]

 食品事業につきましては、多様化するライフスタイルを見据えた主要ブランドの新価値提案などにより、持続的な成長基盤の構築に取り組みました。

 タブレット菓子については、『ミンティア』において、本質的価値である“リフレッシュ”を強みに、オフィス勤務をはじめ、マスク着用時やテレワーク時など多様な喫食シーンに対応した広告・販売促進活動を展開しました。また、栄養サポート食品については、健康志向やからだづくりへの関心の高まりを背景に、『1本満足バー』プロテインシリーズの商品ラインアップを拡充するなど、主力ブランドの強化・育成に取り組みました。フリーズドライみそ汁については、主力の『いつものおみそ汁』シリーズのパッケージ刷新やラインアップ拡充により、手軽で本格的な味わいを楽しめるフリーズドライの価値向上に取り組みました。

 ベビーフードについては、「赤ちゃんのやさしいおやきミックス」シリーズを新発売するなど、おやつの手作りニーズに合わせた商品を提案しました。また、サプリメントについては、『ディアナチュラ』で健康意識の高まりを受けた商品訴求を強化することにより、新規ユーザーの獲得とブランド力の強化に取り組みました。

 以上の結果、食品事業の売上収益は、栄養サポート食品やフリーズドライみそ汁などの売上が前年実績を上回ったものの、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い特にオフィス勤務時の喫食シーンが減少し『ミンティア』の売上が大幅に減少したことなどにより、前年同期比4.8%減の899億3百万円となりました。

 事業利益については、固定費全般の効率化に取り組みましたが、売上収益が減少したことなどにより、前年同期比14.2%減の85億1千4百万円となりました(営業利益は前年同期比4.9%減の91億3千9百万円)。

 

[国際事業]

 国際事業につきましては、グローバル市場におけるグローバルプレミアムビールブランドの拡大展開と各ローカル市場におけるポートフォリオのプレミアム化などにより、成長エンジン化の加速を図りました。

 欧州事業※1については、チェコの『Pilsner Urquell』の積極的なマーケティング活動やルーマニアの『Ursus』における派生商品の発売などによりプレミアムブランドを強化したほか、イタリアの『Peroni』やオランダの『Grolsch』では、オンラインを活用したイベントを開催するなど、各国における主力ブランドの価値向上を図りました。また、市場が拡大するアルコールテイスト清涼飲料において、チェコの『Birell』やポーランドの『Lech Free』などの展開を強化することにより、新たな成長ドライバーの育成に取り組みました。

 オセアニア事業については、酒類において、『アサヒスーパードライ』、『Peroni Nastro Azzurro』などのグローバルプレミアムビールブランドや『Vodka Cruiser』などのRTDブランドなど、主力ブランドの価値強化に取り組みました。飲料においては、炭酸カテゴリーを中心にノンシュガー商品を積極的に展開し、市場における存在感の向上を図りました。また、6月に取得手続きを完了したCUB事業においては、消費者からの信頼の厚い定番ブランドである『Victoria Bitter』、『Great Northern』などの販売活動を強化するとともに、既存事業とのシナジー創出に向けた統合プロジェクトを立ち上げ、具体的な計画策定と取組みを開始しました。

 東南アジア事業については、マレーシアにおいて、加糖飲料課税の導入などによる健康志向の高まりを受け、砂糖不使用飲料の『WONDA Zero Max』などの付加価値の高い商品展開を強化しました。

 グローバル市場全体に向けたプレミアムブランドの拡大展開を担うAsahi International, Ltd.※1においては、『Peroni Nastro Azzurro』と『アサヒスーパードライ』について、ブランド広告の積極的な展開やSNSを通じたイベント配信のキャンペーンに取り組むなど、グローバルプレミアムビールブランドとしての認知度の向上を図りました。

 以上の結果、国際事業の売上収益は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う各国の規制などによる市場縮小の影響などがあったものの、CUB事業の新規連結効果などにより、前年同期比7.5%増の5,578億9千4百万円となりました。

 事業利益については、固定費全般の効率化などを図りましたが、業態売上構成比の変化による収益性の悪化やCUB事業取得に伴う一時費用の発生などにより、前年同期比12.6%減の694億4千8百万円となりました(営業利益は、前年同期比29.2%減の459億1千4百万円)。

 なお、為替変動による影響を除くと、売上収益は前年同期比9.8%の増収、事業利益は前年同期比11.4%の減益となりました。※2

※1 2020年1月の国際ビール事業の再編に伴い、中東欧事業は欧州事業へ名称を変更し、従来の西欧事業に含まれているイタリア、オランダ事業を同事業へ移管しています。西欧事業はAsahi International, Ltd.へと名称を変更し、日本、オセアニア、欧州事業が管轄する国を除く各エリアでのグローバルプレミアムビールの輸出・ライセンス事業を同社に集約しています。

※2 2020年の外貨金額を、前年同期の為替レートで円換算して比較しています。

 

[その他事業]

 その他の事業につきましては、売上収益は、前年同期比4.0%減の694億5百万円となりました。

 事業利益については、前年同期比20.7%減の8億3千1百万円となりました(営業利益は前年同期比20.5%減の6億5千1百万円)。

 

 セグメントの業績は次の通りです。各セグメントの売上収益はセグメント間の内部売上収益を含んでおります。なお、第1四半期連結累計期間より、国際セグメントに含まれていた一部の会社について、報告セグメントの区分を飲料セグメントに変更しております。また、第2四半期連結累計期間よりその他セグメントに含まれていた一部の事業を食品セグメントへ変更しております。

 以下の前年同期比較は前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。

 

事業セグメント別の実績

(単位:百万円)

 

 

売上収益

前年同期比

事業利益

前年同期比

売上収益

事業利益率

営業利益

前年同期比

酒類

555,374

△15.5%

59,931

△23.2%

10.8%

57,538

△25.3%

飲料

270,423

△4.9%

24,152

△6.7%

8.9%

21,216

△12.2%

食品

89,903

△4.8%

8,514

△14.2%

9.5%

9,139

△4.9%

国際

557,894

7.5%

69,448

△12.6%

12.4%

45,914

△29.2%

その他

69,405

△4.0%

831

△20.7%

1.2%

651

△20.5%

調整額計

△71,607

△16,346

△16,433

無形資産償却費

△15,630

合計

1,471,393

△5.1%

130,901

△19.6%

8.9%

118,026

△26.2%

※営業利益における無形資産償却費は各事業に配賦しています。

 

(2)財政状態の分析

 当第3四半期連結会計期間の連結総資産は、CUB事業(注)を新たに連結範囲に含めたことによるのれんの増加等により、総資産は前年度末と比較して1兆1,676億9千5百万円増加し、4兆3,084億8千4百万円となりました。

 負債は、CUB事業買収に伴って短期借入金を中心に金融債務が増加したこと等により、前年度末と比較して1兆111億9千5百万円増加し、2兆9,037億4百万円となりました。

 資本は、前年度末に比べ1,565億円増加し、1兆4,047億7千9百万円となりました。これは、公募による新株式の発行により、資本金及び資本剰余金が増加したことや公募による自己株式の処分を実施したこと、当第3四半期連結累計期間の親会社の所有者に帰属する四半期利益の計上により利益剰余金が増加したこと等によるものです。

 この結果、親会社所有者帰属持分比率は32.6%となりました。

(注)CUB事業買収に伴って、発生したのれんの金額、企業結合日に受け入れた資産及び引き受けた負債の額等については、企業結合日における識別可能資産及び負債の特定を精査中であり、取得価額の配分が完了していないため、暫定的な会計処理を行っております。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 当第3四半期連結累計期間の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前四半期利益が1,106億3千9百万円となりましたが、法人所得税等の支払による減少があった一方で、減価償却費等の非キャッシュ項目による増加があり、1,914億9千8百万円(前年同期比:1442千百万円の収入増)の収入となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、CUB事業の取得などにより、1兆2,242億3千1百万円(前年同期比:1,4336千百万円の支出増)の支出となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、新株の発行や、短期借入金の実行による金融債務の増加により、1兆998億3千万円(前年同期比:2,159百万円の収入増)の収入となりました。

 以上の結果、当第3四半期連結累計期間では、前第3四半期連結累計期間と比較して現金及び現金同等物の残高は866百万円増加し、1,227億5千5百万円となりました。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当第3四半期連結累計期間において、アサヒグループが優先的に対処すべき課題について重要な変更はありません。

 

(5)研究開発活動

 当第3四半期連結累計期間におけるグループ全体の研究開発費の金額は、905百万円であります。なお、当第3四半期連結累計期間において、アサヒグループの研究開発活動の状況に重要な変更はありません。

 

(6)従業員数

 当第3四半期連結累計期間において、CUB事業を新たに取得したことに伴い国際事業における従業員数がおよそ1,020人増加しております。

 

(7)設備の状況

 当第3四半期連結累計期間において、CUB事業を新たに取得したことに伴い、国際事業において主要な設備が増加しており、当第3四半期連結会計期間末における詳細は次の通りです。

 

会社名

事業所名

(所在地)

セグメント名称

設備の内容

帳簿価額

(百万円)

CUB Pty Ltd

アボッツフォード工場

工場

(ヴィクトリア州 他)

国際

ビール等製造設備

58,698

 

3【経営上の重要な契約等】

 当第3四半期連結会計期間において、経営上の重要な契約等の決定又は締結等はありません。