1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
文中の将来に関する事項は、当年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1)経営の基本方針
当社は2019年度に、2027年に向けた新たなキリングループ長期経営構想である「キリングループ・ビジョン2027」(略称:KV2027)と、KV2027の実現に向けた最初の3カ年計画として「キリングループ2019年-2021年中期経営計画」(略称:2019年中計)を策定しました。また、KV2027の実現に向けた長期非財務目標として、社会と価値を共創し持続的に成長するための指針「キリングループCSVパーパス」(略称:CSVパーパス)を新たに策定しました。
長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」
キリングループは、グループ経営理念及びグループ共通の価値観である“One Kirin”Values のもと、食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となることを目指します。

食から医にわたる領域における価値創造に向けては、既存事業領域である「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、2つの中間領域において「医と食をつなぐ事業」を立ち上げます。「医と食をつなぐ事業」では、これまでキリングループが培ってきた組織能力や資産を生かし、キリングループの次世代の成長の柱となる事業を育成していきます。また、社会課題をグループの成長機会に変えるために、イノベーションを実現する組織能力をより強化し、持続的な成長を可能にする事業ポートフォリオを構築していきます。

長期非財務目標「キリングループCSVパーパス」
社会課題については、「酒類メーカーとしての責任」に取り組むことを前提に、CSV重点課題「健康」「地域社会・コミュニティ」「環境」に一層高いレベルで取り組みます。
CSVパーパスは、CSV重点課題の取り組みを進めた後の「2027年目指す姿」を明らかにするために策定しました。さらに、CSVパーパスを実現するために、各事業での中長期アクションプランを定めた「キリングループCSVコミットメント」における成果指標を定量化し、目標値を設定しました。

(参考)
キリングループCSVコミットメント
URL https://www.kirinholdings.co.jp/csv/commitment/

(2)中長期的な経営戦略と目標とする経営指標
キリングループ2019年-2021年中期経営計画
2019年からの中期経営計画では、資産効率に応じた資源配分を徹底し、既存事業のキャッシュ創出力をさらに高めます。創出したキャッシュは、既存事業成長のための投資に優先的に振り向けると共に、株主還元の一層の充実を図り、企業価値を最大化します。
また、既存事業領域(食領域・医領域)の中間に、複数の「医と食をつなぐ事業」を立ち上げ、育成を進め、キリングループの持続的な成長につなげます。
(基本方針)
「再生」からステージを上げ、「新たな成長を目指した、キリングループの基盤づくり」を行う。
株主還元の更なる充実を図り、企業価値を最大化する。
(重点課題)
長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」実現に向けた第1ステージの3ヵ年として、成長に向けた3つの戦略を実行します。
①成長の基盤 既存事業の利益成長
食領域:収益力の更なる強化 医領域:飛躍的成長の実現
②将来の成長機会 「医と食をつなぐ事業」の立ち上げ・育成
③成長の原動力 イノベーションを実現する組織能力の強化

(重要成果指標)
2019年中計の財務指標について、平準化EPS成長による株主価値向上を目指すと共に、成長投資を優先的に実施する3か年の財務指標として新たにROICを採用します。また、社会・環境、お客様、従業員との共有価値実現に向けて、新たに非財務目標を設定します。
1.財務目標※1
※1 財務指標の達成度評価にあたっては、在外子会社等の財務諸表項目の換算における各年度の為替変動による影響等を除く。
※2 平準化EPS=平準化当期利益/期中平均株式数
平準化当期利益=親会社の所有者に帰属する当期利益±税金等調整後その他の営業収益・費用等
※3 ROIC=利払前税引後利益/(有利子負債の期首期末平均+資本合計の期首期末平均)
2.非財務目標
※4 企業価値ブランド評価にあたっては、インターブランドジャパン社「ブランドランキング」におけるKIRINブランド価値評価を使用。
(財務方針)
既存事業の成長により創出した営業キャッシュフローは、安定的な配当と規律ある成長投資を実施した上で、追加的株主還元への機動的なアロケーションも検討し、企業価値の最大化を図ります。
・メリハリのある設備投資
維持・更新目的の投資は抑制し、資産効率と市場魅力度の高い案件に積極的かつ優先的に投資
・株主還元の充実
平準化EPSに対する連結配当性向の引き上げ(30%以上から40%以上)及び追加的株主還元の機動的な実施検討
・規律ある成長投資
資本コストを踏まえたNPVとROICを基準とする投資判断
・無形資産投資
イノベーションを実現する組織能力強化に向けた「ブランド」「研究開発」「情報化」及び「人材・組織」への継続投資
(コーポレートガバナンス)
重要成果指標(財務目標)及び単年度連結事業利益目標の達成度を役員報酬に連動させることにより、株主・投資家との中長期的な価値共有を促進しています。
[業績評価指標]
※5 売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、事業の経常的な業績を測る利益指標です。
※6 譲渡制限期間は原則3年とする。
(3)会社の対処すべき課題
2016年中計では、重要課題として「ビール事業の収益基盤強化」、「低収益事業の再生・再編」、「医薬・バイオケミカル事業の飛躍的成長」に取り組み、基本方針として掲げた“構造改革による、キリングループの再生”を達成しました。
一方、キリングループを取り巻く経営環境に目を向けると、様々な社会課題がグローバル化しており、深刻さが増してきています。国内における少子高齢化による様々な影響や医療費の問題のほか、世界では糖分やアルコールに対する厳しい規制も現実味を帯びてきました。不透明、不確実、かつ不安定な時代の中で会社を持続的に成長させていくためには、社会的価値と経済的価値を創出し、社会とともに歩んでいくことが求められます。
こうした環境変化に鑑み、キリングループは長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」(略称:KV2027)とKV2027の実現に向けた最初の3か年計画として「キリングループ2019年-2021年中期経営計画」(略称:2019年中計)を策定しました。あわせて、経営理念を改定し、新たにコーポレートスローガンを制定することで、事業を通じた社会への貢献をより明確に打ち出しました。
KV2027において、キリングループは「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」ことを目指します。「グループCSVコミットメント」に基づき、CSV重点課題である“健康”、“地域社会・コミュニティへの貢献”、“環境”、“酒類メーカーとしての責任”の解決に、より一層高いレベルで取り組みます。
今回策定したKV2027 では、これまでの「酒類」、「飲料」、「医薬・バイオケミカル」の既存領域を「食領域」と「医領域」に再設定し、この2つの中間に「医と食をつなぐ領域」を新たに立ち上げます。「食領域」は主に酒類事業と飲料事業を指し、収益力をさらに強化するほか、お客様の心に強く残るブランドの育成に力を入れていきます。「医領域」では、協和発酵キリン㈱を中心に、医薬事業の飛躍的な成長を図り「グローバル・スペシャリティファーマ」の実現を目指します。新しく立ち上げる「医と食をつなぐ領域」については、これまでキリングループが培ってきた組織能力や資産を生かして事業の創造・拡大を図り、健康に対するお客様のニーズに応え、こころ豊かな社会に貢献していきます。また、イノベーションの実現に必要な組織能力の強化に向けて「お客様主語のマーケティング力」、「確かな価値を生む技術力」、「価値創造を加速するICT※1」、「多様な人材と挑戦する風土」の改革を進めます。
2019年中計では、①イノベーションを実現する組織能力の強化、②既存事業の利益成長、③「医と食をつなぐ事業」の立ち上げ・育成を3本の成長シナリオとして、KV2027の実現に向けた新たな礎を作り上げます。さらに、3か年にわたり、総額1兆円以上を既存領域への成長投資と持続的成長に向けた戦略的投資に振り分け、事業の成長をより確かなものにするとともに、株主還元をさらに充実させて株主価値を最大化します。
なお、上記を踏まえ、2019年度より事業セグメントを「国内ビール・スピリッツ事業」、「国内飲料事業」、「オセアニア綜合飲料事業」、「医薬・バイオケミカル事業」と改めます。
また、当社は、協和発酵キリン㈱の完全子会社である協和発酵バイオ㈱の株式の95%取得を、2019年2月の取締役会で決議しました。この株式取得は、当社が「医と食をつなぐ領域」での事業創造・拡大を進めるにあたり、さらなる協業の可能性について協和発酵キリン㈱と協議・検討を進めた結果、協和発酵バイオ㈱を当社の直接の子会社とすることが、グループシナジーを創出すると共に、協和発酵キリン㈱及び協和発酵バイオ㈱の企業価値の最大化につながると判断したことに拠ります。
※1 Information and Communication Technologyの略(情報通信技術)の略です。情報・通信に関する技術の総称で、従来から使われている「IT(Information Technology)」に代わる言葉として使われています。
<国内ビール・スピリッツ事業>
キリンビール㈱では、「キリン一番搾り生ビール」、「本麒麟」、「淡麗グリーンラベル」をリニューアルし、「キリン のどごし<生>」のコミュニケーションを強化するなど、主力ブランドへの集中投資を行います。さらに、クラフトビール※2では、「Tap Marché(タップ・マルシェ)」※3の展開店舗数を拡大し、体験の場を広げることにより市場の魅力化を図るとともに、日本産ホップ生産の継続に向けた活動を支援します。また、酒税法改正や消費税増税、嗜好の多様化による市場の変化に対応すべく、RTD※4の「キリン 氷結」「キリン・ザ・ストロング」やノンアルコール・ビールテイスト飲料の「キリン 零ICHI(ゼロイチ)」を中心にブランド力の強化を図ります。
※2 造り手の顔が見えてそのこだわりが感じられ味の違いや個性を楽しめるビールです。
※3 当社が開発した1台で数種類のビールの提供が可能な小型のディスペンサーを設置することにより、多様なクラフトビールを楽しんでいただくための仕組みです。
※4 栓を開けてそのまま飲める低アルコール飲料で、Ready to Drinkの略です。
<国内飲料事業>
キリンビバレッジ㈱では、成長による利益創出のステージを継続し、「キリン 午後の紅茶」、「キリン 生茶」、「キリン ファイア」の基盤ブランドを中心に成長を図ります。また、健康領域の商品展開やグローバル展開等、新たな取り組みを行うほか、持続可能な仕組みづくりに向けて調達・生産・物流等サプライチェーンの強化を進めます。
<オセアニア綜合飲料事業>
ライオン社は、飲料事業の株式を第三者に譲渡する検討をしており、今後はビールを中心とした酒類事業を展開することになります。ライオン酒類事業では、主力ブランドへの集中投資を引き続き行うことで、成長カテゴリーでのブランド強化を図ります。また、将来の利益成長に向けて、今後拡大が見込めるクラフトビールの展開をさらに加速し今後の柱の1つとして育成していきます。
<医薬・バイオケミカル事業>
協和発酵キリン㈱の医薬事業では、グローバルで順調に進捗する「Crysvita」※5、「POTELIGEO」※6を収益の柱として販売を拡大するとともに、KW-6002(日本製品名「ノウリアスト」)を着実に海外で上市し、「グローバル・スペシャリティファーマ」※7へのさらなる飛躍を実現します。また、7月には社名を協和キリン㈱に変更し、新たなグローバル組織体制「One Kyowa Kirin」への移行を推進することで、これら3品の次に続く医薬品のグローバルでの上市と新薬候補の充実を目指します。
バイオケミカル事業では、グローバルな品質保証体制や安定した生産基盤を確立するとともに、素材の機能性を重視した健康食品の新製品開発に取り組みます。
※5 主に遺伝的な原因で骨の成長・維持に障害をきたす希少な疾患である、X染色体連鎖性低リン血症の治療薬です。X染色体連鎖性低リン血症は、くる病又は骨軟化症の症状を呈する希少な疾患です。
※6 特定の血液がんの治療薬として国内では製品名「ポテリジオ」として販売されています。
※7 「世界を舞台に、強みのある疾患カテゴリー(がん、腎、免疫疾患を中心とした領域)に集中して活躍する製薬会社」を意味しております。
<その他>
メルシャン㈱では、カテゴリーごとに注力ブランドの選択と集中をさらに進めてブランドの強化を図り、成長性・収益性の高い商品ポートフォリオの構築に取り組みます。「シャトー・メルシャン」については、“3つのワイナリー”を拠点としたCSV活動を強化し、ワイン・ブドウづくりを支える産地・地域の活性化に貢献していきます。
ミャンマー・ブルワリー社では、“CSV経営の実現”“卓越したマーケティング”“卓越したマネジメントシステム”に注力した組織能力向上に取り組みます。ミャンマー市場における競合環境や市場環境の変化に対応すべく、「ミャンマービール」、「アンダマン ゴールド」を中心に、販促活動や投資のメリハリをつけることで市場でのプレゼンスを高めていきます。
CCNNE社※8では、製造拠点の再編を行うなど、今後の収益力向上のため継続して抜本的な構造改革を行っていきます。
※8 米国北東部で清涼飲料の製造販売事業を展開する当社の完全子会社である、ザ コカ・コーラ ボトリングカンパニー オブ ノーザン ニューイングランド社の略称です。
2 【事業等のリスク】
※ 当社は、「キリングループ2019年-2021年中期経営計画」をもとに、2019年度以降の事業セグメントを用いて本文を記載していますが、本文中における将来に関する事項は2018年12月31日現在において当社が判断した内容に基づきます。
(1) 各事業領域におけるリスク
今後の酒類事業・飲料事業は、国内では人口減少により長期的に総需要の縮小が見込まれる中、価格の二極化や嗜好の多様化が進んでおり、RTDを含む低価格帯カテゴリーが伸長する一方、クラフトビール等の高価格帯カテゴリーや無糖飲料・機能性飲料等の健康志向の商品の需要が拡大していくことが予測されます。海外では、国や地域によって事業環境は異なり、人口増加による総需要拡大や新たな飲用人口の拡大に伴う低価格帯カテゴリーの成長が今後も見込まれる新興国市場がある一方、先進国市場や発展段階の進んだ新興国市場においては、日本と同様に、高価格帯カテゴリーの伸長や健康志向の商品への需要が見込まれます。
こうした市場環境の変化に対応するため、キリングループでは、お客様とブランドのつながりを強めてモノだけに留まらない体験価値を提供し、強いブランドを維持・育成する「お客様主語のマーケティング力」を強化することにより、競争優位なブランドポートフォリオ構築を目指しています。
しかしながら、国内の酒類事業(キリンビール㈱)においては、今秋に予定されている消費税増税、2026年のビール類酒税一本化に向けた段階的な酒税改定に伴う販売価格の変動や競合他社の動向等により、予想を超えて酒類市場のカテゴリーの構成が変化し、販売計画を達成できない可能性があります。
海外の酒類事業(ライオン社)は、ライオン社が戦略的に展開する海外クラフトビールにおいて、グローバル大手酒類メーカーを中心に、高価格帯市場での競争力を高めようとする動きが加速しており、戦略に沿った展開が進まない可能性があります。
国内の飲料事業(キリンビバレッジ㈱)においては、基盤ブランド商品の販売数量が計画以上に減少又は容器構成差異が悪化することにより、成長を伴う利益の創出が計画通りに進まない可能性があります。
米国の飲料事業(CCNNE社)では、米国での事業エリア拡大に伴う抜本的な構造改革を進めていますが、適切な事業体制の構築に遅れが発生する場合、目標とする利益率の改善が進まない可能性があります。
サプライチェーンの観点からは、地震等の大規模自然災害・天候不順・冷夏・干ばつ・集中豪雨等の影響によりサプライチェーンが分断する可能性があります。さらに、国内ではトラックのドライバーが不足する等、サプライチェーン全般を通じて人材確保が困難になってきており、取り巻く環境の厳しさが増しています。キリングループでは、需給予測精度の向上や物流能力を強化し、リスクの低減を進めていますが、外部環境変化や労働力不足等の影響が想定よりも大きい場合、調達・製造・輸送コスト等の上昇や販売の機会損失等が発生し、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
その他のリスクとして、オセアニア綜合飲料事業では、2018年10月から飲料事業の株式を第三者に譲渡する検討を開始しましたが、株式譲渡プロセスの大幅な遅滞や株式譲渡の履行不能が発生する場合、新たな事業体制の構築が計画通りに進まない可能性があります。
また、ミャンマー(ミャンマー・ブルワリー社)では、新規参入や競合他社の攻勢によって、事業への影響を受ける可能性があります。
医薬事業(協和発酵キリン㈱)では、「グローバル・スペシャリティファーマ」に向けた取り組みが順調に進展し、グローバル戦略品の開発・上市と共に、海外での事業展開を加速させています。一方で、グローバル戦略品について市場浸透の低迷や安定供給の問題が発生する場合には、「グローバル戦略品の価値最大化」が計画通りに進まない可能性があります。
また、医薬事業では事業のグローバル展開を進めるにあたり、確実な供給体制の構築を進めています。しかしながら、製造施設・物流施設において技術上又は法規制上の問題、原材料及び燃料の供給停止により、製品の供給が停止又は遅延した場合や予想を上回る製品の需要増により製品の供給が不足した場合は、医薬事業の業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
加えて、新薬の開発には、長い年月と多額の研究開発費を必要としますが、開発の過程において、期待通りの有効性が認められない場合や安全性等の理由により、研究開発の継続を断念しなければならない可能性があります。知的財産権が侵害された場合には、製品の売上収益又は技術収入が予定より早く減少する可能性があり、第三者の知的財産権を侵害しているとして第三者から訴訟を提起された場合には、製品の製造・販売等の差し止め、損害賠償金や和解金の支払い等が発生する可能性があります。他社製品との競合や協和発酵キリングループ製品の特許権満了後の後発品参入がある場合には、売上収益が減少する可能性があります。
キリングループは酒類、飲料、医薬・バイオケミカルといった既存の事業領域で培ってきた組織能力・資産を活用し、「医と食をつなぐ事業」の立ち上げと育成に取り組んでいます。この領域では、疾患の発病予防や進行抑制による健康の維持や生活の質の向上、社会保障費抑制などの課題に対し、医と食の両面で強みを持つキリンならではの取り組みを行い、エビデンスに基づく商品・サービスを訴求力の高いチャネルを通じて提供する事業を立ち上げ、グループの次世代の柱として育成していきます。「医と食をつなぐ事業」は新規事業分野であり、優位性のあるビジネスモデルや適切な組織・ガバナンス体制を構築できない場合や技術開発が想定通りに進まない場合は、新規事業の立ち上げ・育成が計画通りに進まない可能性があります。
さらに、「医と食をつなぐ事業」における市場開拓や販売促進、新規性のある素材等の研究開発にあたっては、ICTの活用や豊富な知見を持つ社外の事業者や専門家との連携が不可欠ですが、これらの活用が不十分なレベルに留まった場合にも新規事業の立ち上げ・育成が計画通りに進まない可能性があります。
(2) 各事業領域共通のリスク
キリングループでは、既存・新規を問わず自らの事業領域において、消費者の生活や価値観の変化に適応したビジネスモデルのあり方を常に考えています。自社及び他社との提携等により開発・製造・輸送・販売等のサプライチェーンの構築を行っていますが、事業環境変化によってこれらの機能が低下したり、変化への対応が遅れたりした場合には、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。情報技術の発達・サプライチェーンの変化・商品やサービスの変化等を背景に、既存の競争事業者に限らず、異分野・異業種の事業者がキリングループの事業領域に参入し、新たな競争事業者となる可能性もあります。特に、競争事業者がキリングループの事業領域において、ICT等を活用した画期的なビジネスモデルに基づき事業拡大をした場合、キリンのビジネスモデルや従来から有する強みが急速に陳腐化し、キリングループの事業領域の維持又は拡大が困難になる可能性があります。
キリングループの新たな成長に向けた事業領域の拡大等においては事業・資本提携も想定していますが、事業・資本提携にあたりキリングループが提携先の経営・事業・資産に対して十分なコントロールができない可能性があります。
また、既存事業についても事業環境の変化等により事業遂行上の影響を受ける可能性があります。それらの結果、出資先企業や既存事業の業績不振等により、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
そうした場合に、新規の出資に伴い発生する、又は既存事業において有するのれん等の減損損失が生じる可能性があり、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 「情報技術」に関するリスク
ICTソリューションやプラットフォームを構築し、これまで以上に深いお客様理解から得られるインサイトを具現化した商品・サービスの提供、業務プロセス課題の改善・解決や業務品質向上を目指していますが、ICTの構築・運用が遅れることにより競争力のある価値創造が実現できない可能性があります。また、経営基盤の再構築と高度化、グループ会社間での業務の効率化による生産性向上を目指し、標準化された情報システムの導入を進めていますが、想定通りに進まない場合は、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
情報システムについては、コンピュータウィルスの感染や不正アクセスによる情報の消失、データの改ざん、個人情報や会社の重要機密情報の漏洩、さらには地震等自然災害の発生により、情報システムの停止又は一時的な混乱が起こる可能性があります。
事業の遂行やイノベーションを実現するには、多様な価値観・専門性を持った人材が集い、それを受容することが必要であり、キリングループでは、多様性を尊重し価値創造を実現するための組織能力向上を目指しています。キリングループは国内外で事業活動を行っており、様々な人種・国籍や文化を持つ従業員が働いています。また、グループ経営を推進する人材の育成に向けて、組織風土の変革や価値創造を推進するトップ及びミドルマネジメント層のリーダーシップ強化に取り組んでいます。しかしながら、グループ経営を推進する人材や事業活動に必要な高い専門性を持った人材を十分に確保・育成できない場合は、競争優位性のある組織能力が実現しない可能性があります。
キリングループでは、グループの自社工場で製造する製品や製造委託工場・輸入品等の他社製造品について、品質保証システムによりグループ全体での品質監査を実施する等、品質保証に最大限の努力を払っていますが、品質保証の取り組みの範囲を超えて、予期し得ない品質問題等が発生した場合には、キリングループの事業活動が制限され、業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
加えて、医薬品は開発段階において厳しい安全性の評価を行い、所轄官庁の審査を経て承認されますが、市販後に予期していない副作用が発生した場合には、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
キリングループは事業の遂行にあたって、国内においては、酒税法、食品衛生法、薬機法、独占禁止法、環境諸法令等の法的規制の適用を受けています。また、事業を展開する各国においては、当該国の法的規制の適用を受けています。これらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動等により、法令による処罰・訴訟の提起・社会的制裁を受けたりお客様からの信頼を失ったりする可能性があります。
キリングループでは、コンプライアンスを「法令、社内外の諸規則・ルール及び社会規範を遵守し、法的責任と社会が求める倫理的な責任を果たすことにより、予期せぬ損失や信用の失墜を防止し、ステークホルダーのキリングループに対する信頼を維持向上させること」と定義し、リスクのマネジメントサイクルや従業員啓発の研修を通じたコンプライアンスの推進により、従業員の法令違反や社会規範に反した行為等の発生可能性を低減するよう努めています。また、贈収賄防止をはかり、不当な金銭・贈答・接待及びその他の利益の提供又は受領を禁じています。
[B. 中長期の視点から事業に影響を及ぼす可能性のあるリスク]
キリングループは、酒類を製造・販売する企業グループとして、社会的責任を果たすために、広告・宣伝活動にあたっては厳しい自主基準に基づき自ら規制を行っています。また全ての酒類事業展開国で、アルコールの有害摂取の根絶に向けた取り組みを進展させています。一方で、WHO においては、世界的な規模での酒類販売に関する規制が検討されており、キリングループの予想を大きく上回る規制強化が行われた場合、アルコールへの社会的受容が急激に縮小することにより酒類の消費が減少し、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性や企業ブランド価値が低下するおそれがあります。
マイクロプラスチックによる海洋汚染に関する国際的な関心の高まりや廃プラスチックの流通構造変化等により、PETボトルをはじめとするプラスチック容器の問題がクローズアップされています。キリングループでこれらの問題に適切な対応ができない場合、飲料事業を中心にグループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、地球温暖化に対する世界の関心や気候変動のリスク情報を企業の財務情報として開示する要請が高まっています。キリングループは、2018年12月に金融安定理事会により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を、日本の食品会社として初めて表明しました。さらに、温室効果ガス排出量を2030年までに2015年比で30%削減する中期削減目標を掲げ、2017年3月に「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ」の承認を日本の食品会社で初めて取得し、削減に向けた活動を始めています。しかしながら、これらの目標を達成できなかった場合や環境事故を発生させた場合に、事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、キリングループが事業活動を行う国内外の生産拠点において、渇水や汚染等により水資源が確保できず、商品の製造が停止するおそれや森林破壊等の環境破壊を伴う調達を行うことで企業ブランド価値を毀損するおそれがあります。
キリングループでは、2018年に国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「キリングループ人権方針」を策定するなど、人権尊重を推進する取り組みを強化しています。人身取引を含む奴隷労働や強制労働、児童労働を認めない他、人種、民族、国籍、社会的身分、門地、性別、障害の有無、健康状態、思想・信条、性的指向・性自認及び職種や雇用形態の違い等に基づくあらゆる差別の禁止等を求めています。また人権に対する負の影響を特定し、予防、軽減する取り組みとして人権デューデリジェンスの実施を進めています。万一、キリングループが人権問題を発生させた場合や人権上の問題のある調達を行った場合には、当該国又はグローバルでの事業活動に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
キリングループが事業活動を行う国・地域は広範であり、特に新興国における法令・規制の変化、テロ・戦争やその他の要因による政治・経済・社会的混乱、文化や慣習の違いに起因するトラブル発生等が予想されますが、こうしたカントリーリスクが顕在化する場合、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
医薬事業では、事業を行っている各国の薬事行政の下で様々な規制を受けています。国内では、公定薬価制度による薬価の引き下げに加え、ジェネリック医薬品の使用促進等による医療制度改革が進められています。海外においても、医療費抑制への圧力は高まっています。これら薬事行政の規制により医薬品の販売価格が下落し、販売数量の伸長等で影響をカバーできない場合には、医薬事業の業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、各国での医療財政の大幅な悪化に伴い、想定外の薬価改定や社会保障制度の変更等が発生する場合には、医薬品市場が縮小し収益性が低下するおそれや医薬品開発の進捗に遅延を招いたり製品の上市が困難になったりするおそれがあります。
なお、海外での法規制の緩和に伴い、キリングループの事業活動を展開する国や地域で嗜好用大麻が解禁され、アルコール飲料の代替となる場合には、酒類事業の事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。
キリングループの事業資金は、主に金融機関からの借入、コマーシャル・ペーパーや社債の発行等により調達されています。このため、金融市場の不安定化・金利上昇、また格付機関によるキリングループの信用格付けの引き下げの事態が生じた場合等には、資金調達の制約を受け、資金調達コストが増加する可能性、あるいは全くできない状況に直面する可能性があります。これらの事態が発生した場合、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、キリングループの原材料及び商品の一部は、海外から調達していることから、予測の範囲を超える急激な市況変動や為替変動があった場合等には、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、海外の子会社及び持分法適用会社の経営成績は外貨ベースで作成されており、連結財務諸表作成のために円換算していますが、円換算時の為替レートにより円換算後の価値が変動することから、キリングループの業績・財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
税務においては、キリングループは、世界各国で適用される税法を遵守する方針に沿って事業活動を行っていますが、各国における租税制度の改正、税務行政の変更や税務申告における税務当局との見解の相違等により、追加での税負担が生じたり、社会的信用が低下する可能性があります。
3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり
まして、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
詳細につきましては、「第5[経理の状況](1)[連結財務諸表]連結財務諸表注記」に記載のとおりであります。
(2) 経営成績の状況
①事業全体の状況
キリングループでは、「キリングループ2016年-2018年中期経営計画」(略称:2016年中計)の最終年度である当年度において、“構造改革による、キリングループの再生”の実現に向けて、キリンビール㈱の収益基盤強化を最優先課題として取り組み、成熟が進む国内酒類市場の活性化を図りました。また、長期経営構想「新キリン・グループ・ビジョン2021」(略称:新KV2021)の実現に向け策定した「グループCSVコミットメント」に基づき、酒類、飲料、医薬・バイオケミカルの各事業で、CSV重点課題である“健康”、“地域社会への貢献”、“環境”、“酒類メーカーの責任”の解決に向けた取り組みを一段と前進させました。
これらの結果、当年度の売上収益は、キリンビール㈱の販売数量増加による日本綜合飲料事業での増収と、事業エリアを拡大したCCNNE社の販売数量増加による海外その他綜合飲料事業での大幅な増収により増加しました。事業利益は、オセアニア綜合飲料事業におけるオセアニアの為替影響や、医薬・バイオケミカル事業における協和メデックス㈱の連結除外の影響等により両事業において減益となりましたが、キリンビール㈱の好調を背景に日本綜合飲料事業での大幅な増益が貢献し、過去最高益となりました。営業利益については、前年に計上した固定資産売却益の反動等により、減益となりました。税引前利益は、サンミゲル社の販売数量が前年を上回ったことによる持分法投資利益の貢献に加え、キリン・アムジェン社の全株式譲渡に伴う売却益の計上により過去最高益となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期にブラジルキリン社の全株式譲渡に伴う売却益等を計上したことからの反動で減少しましたが、その影響を除くと過去最高であった前年と同水準であり、収益性は着実に高まっています。
※ 2017年に実施した事業の取得に係る暫定的な会計処理の確定に伴い、2017年の財務数値を遡及修正しています。
②セグメント情報に記載された区分ごとの状況
セグメント別の業績は次のとおりです。
連結売上収益 対前年分析 連結事業利益 対前年分析
※ 2017年に実施した事業の取得に係る暫定的な会計処理の確定に伴い、2017年の財務数値を遡及修正しています。
<日本綜合飲料事業>
キリンビール㈱はビール類全体の魅力化に注力するとともに、ブランドを絞り込んだ効率の高いマーケティング活動を実行しました。ビールカテゴリーでは、フラッグシップブランドである「キリン一番搾り生ビール」が市場平均前年比を上回り、クラフトビール市場の拡大と活性化を目指した「Tap Marché(タップ・マルシェ)」は、合計7ブルワリー・19銘柄のラインアップを展開し、累計展開店舗数は全国で約7,000店となりました。新ジャンルカテゴリーでは「本麒麟」の貢献や、5月にリニューアルした「キリン のどごし<生>」の復調等により、ビール類市場が前年比マイナスとなる中、当社のビール類全体の販売数量は増加(+5.2%)しました。RTDカテゴリーでは、主力商品である「キリン 氷結」が堅調に推移し、「キリン 本搾りTMチューハイ」や4月に発売した「キリン・ザ・ストロング」も非常に好調で販売数量は増加(+13.1%)しました。結果、売上収益は211億円の増収(+3.3%)、事業利益は93億円の増益(+13.0%)となりました。
キリンビバレッジ㈱は一層強固なブランド体系の構築と事業基盤の強化に取り組みました。基盤ブランドである「キリン 午後の紅茶」は、お客様のニーズに対応した「おいしい無糖」が堅調に推移し、3月にリニューアルした「キリン 生茶」は、3年連続で販売数量が増加しました。また、4月にリニューアルした「キリンレモン」は販売数量が前年の2倍を超え、事業全体の販売数量増に貢献しました。一方、コーヒーの「キリン ファイア」は、缶コーヒー市場の縮小傾向の影響を受けて販売数量が伸び悩みました。結果、販売数量は増加したものの、売上収益は商品・容器構成の悪化などの影響により9億円の減収(△0.3%)となりました。一方、事業利益は広告費等の減少により、16億円増加(+7.5%)しました。
メルシャン㈱はワイン事業の活性化及び事業の収益構造改革を目指し、ワイン各カテゴリーの注力ブランドに集中したマーケティング活動を実行しました。注目が高まる日本ワイン市場では、商品ポートフォリオを刷新した「シャトー・メルシャン」の販売が好調に推移しました。また、国内製造ワインの主力商品である「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」、輸入ワインではデイリーワインの「フロンテラ」、中価格帯の「カッシェロ・デル・ディアブロ」等、主力ブランドの販売が好調に推移しました。その結果、ワイン市場全体の販売数量は対前年△3%程度と推定される中、メルシャン全体では△2%程度に留まりました。売上収益は5億円の減収(△0.8%)、事業利益は原材料費高騰や物流コスト上昇の影響等もあり、14億円の減益(△34.4%)となりました。
<オセアニア綜合飲料事業>
ライオン酒類事業では、中長期的な利益回復を目指したブランドポートフォリオ戦略に基づき、成長カテゴリーでのブランド強化を進めました。結果、「アイアン・ジャック」ブランドやオーストラリアで全国展開を進める「ファーフィー」、「ジェームス・スクワイア」の販売が好調に推移するとともに、クラフトビールの海外展開が加速しました。一方で、ニュー・サウス・ウェールズ州やクイーンズランド州における容器保証金制度の影響等により、ライオン酒類事業全体の販売数量はほぼ前年並み(△0.1%)となりました。ライオン飲料事業では、注力カテゴリーを中心にブランド強化を進め、乳飲料の主力商品「デア」や、ヨーグルトの「ファーマーズユニオン」ブランドの販売数量が対前年で増加しました。一方、大型容器入り果汁飲料等の販売数量が減少し、飲料全体での販売数量は前年を下回りました(△3.9%)。また、ライオン社全体では為替影響(売上収益△168億円、事業利益△29億円)が連結業績を圧迫しました。結果、オセアニア綜合飲料事業の売上収益は191億円の減収(△5.5%)、事業利益は9億円の減益(△1.7%)となりました。
なお、2018年10月に当社及びライオン社は、ライオン飲料事業を第三者に譲渡する検討の開始について発表しました。同飲料事業は、事業構造の変革によりこれまで着実に収益性が向上してきましたが、将来の成長に向けた戦略遂行へステージを移していくにあたり、戦略的な選択肢を慎重に検討した結果、同飲料事業の売却による事業分離が最善策であると判断しました。会計上は、ライオン飲料事業は非継続事業への分類要件には該当せず、継続事業に含めています。
<海外その他綜合飲料事業>
ミャンマー・ブルワリー社は、販促キャンペーンやリニューアルの効果により主力商品「ミャンマービール」が缶を中心に好調に推移し、市場が拡大する中でも高シェアを維持しました。また、製造能力増強により供給が安定したエコノミーカテゴリーの「アンダマン ゴールド」が大幅に販売数量増(+17.1%)となりました。為替影響(売上収益△19億円、事業利益△7億円)を受けながらも、売上収益は6億円の増収(+2.2%)、事業利益は2億円の増益(+2.1%)となりました。
北米でコカ・コーラのボトラー事業を展開するCCNNE社は販売エリアを拡大したことにより、販売数量が大幅に増加し、増収となりました。
<医薬・バイオケミカル事業>
協和発酵キリン㈱の医薬事業では、「グローバル・スペシャリティファーマ」への飛躍を目指し、グローバル戦略品の価値最大化を目指すと共に、新製品群を中心とした既存製品の市場浸透や、エリア別の顧客関係力強化、新たな開発パイプラインの充実を進めました。国内においては、協和メデックス㈱の連結除外の影響に加え、4月に実施された薬価基準引き下げ及び医療費抑制策に伴う後発医薬品の浸透や競合品の影響等により、売上は前年より減少しました。一方、発熱性好中球減少症発症抑制剤「ジーラスタ」※、パーキンソン病治療剤「ノウリアスト」、2型糖尿病治療剤「オングリザ」が好調に推移しました。2018年に販売を開始したX染色体連鎖性低リン血症治療剤「Crysvita」や、菌状息肉腫及びセザリー症候群の治療薬「POTELIGEO」を中心とした海外での売上が増加したことにより、医薬事業全体では協和メデックス㈱の連結除外の影響を除くと増収となりました。事業利益については海外におけるグローバル戦略品の浸透を図るための販管費が増加したことにより、46億円の減益(△8.4%)となりました。
バイオケミカル事業においては、国内における前年の植物成長調整剤事業譲渡の影響や、海外での一部品目の競争激化の影響により、売上が前年から26億円減少(△3.2%)しました。一方で、海外工場の本格稼働によるコスト改善や製品構成の見直しにより、事業利益は9億円増加(+13.1%)しました。
※ 白血球の一種である好中球を増加させる薬剤です。
③目標とする経営指標の達成状況等
2016年中計では“構造改革による、キリングループの再生”の実現を目指し、重要成果指標としてROE15%以上及び平準化EPS年平均成長率6%以上を定量目標としていました。各事業が目標達成に向けて順調に収益性を向上させるとともに、グループ全体でのコスト削減施策が着実に成果を上げ、目標を上回る業績を上げることができました。
「キリングループ2019年-2021年中期経営計画」(略称:2019年中計)では、将来成長に向けた投資を最優先とするため、有利子負債活用も含めた資本効率を評価すべく、ROEに代えてROICを重要成果指標として採用し、引き続き企業価値向上を図っていきます。
※1 2016年以前は日本基準、2017年以降はIFRSに基づく
※2 2016年以前の日本基準のROEはのれん等償却前
※3 ROICは中計最終年度、平準化EPSは中計3年間の年平均成長率
④生産、受注及び販売の状況
当年度におけるセグメントごとの生産実績は、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、販売価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社グループの製品は見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しています。
当年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりであります。
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 財政状態
①事業全体の状況
当年度末の資産合計は、有形固定資産及びその他の金融資産(非流動)の減少等により、前年度末に比べ949億円減少して2兆3,036億円となりました。有形固定資産の減少は、前年同期よりも円高が進行したことによる在外子会社資産の円換算時の目減り等によるものです。その他の金融資産(非流動)の減少は、保有株式の時価減少に伴うものです。
資本は、利益剰余金は増加したものの、資本構成の最適化を目指して実施した約1,000億円の自己株式取得に伴う自己株式の増加及びその他の資本の構成要素の減少等により、前年度末に比べ282億円減少して1兆2,009億円となりました。その他の資本の構成要素の減少は、在外営業活動体の換算差額が円高に伴って減少したことや、保有株式の時価減少に伴いその他の包括利益を通じて測定する金融資産の公正価値の純変動が減少したことによるものです。
負債は、返済に伴う社債及び借入金の減少等により、前年度末に比べ667億円減少して1兆1,027億円となりました。
これらの結果、親会社所有者帰属持分比率は39.8%、グロスDEレシオは0.45倍となりました。
②セグメント情報に記載された区分ごとの状況
<日本綜合飲料事業>
当期末のセグメント資産は、無形資産の増加等により、前年度末に比べ235億円増加して8,191億円となりました。無形資産の増加は、主にシステム投資によるものです。
<オセアニア綜合飲料事業>
当期末のセグメント資産は、有形固定資産及びのれんの減少等により、前年度末に比べ308億円減少して4,896億円となりました。有形固定資産及びのれんの減少は、前年同期よりも円高が進行したことによるライオン社資産の円換算時の目減りによるものです。
<海外その他綜合飲料事業>
当期末のセグメント資産は、その他の金融資産(非流動)の増加等により、前年度末に比べ2,722億円増加して6,746億円となりました。その他の金融資産(非流動)の増加は、セグメント間の貸付によるものです。
<医薬・バイオケミカル事業>
当期末のセグメント資産は、売却目的で保有する非流動資産の減少等により、前年度末に比べ282億円減少して7,063億円となりました。売却目的で保有する非流動資産の減少は、協和発酵キリン㈱による協和メデックス㈱の一部株式譲渡によるものです。
(4) キャッシュ・フロー
①キャッシュ・フロー及び流動性の状況
当年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前年度末に比べ111億円増加の1,731億円となりました。活動毎のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の収入は前年同期に比べ237億円減少の1,981億円となりました。運転資金の流出は215億円
増加、法人所得税の支払額は212億円減少しました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の収入は前年同期に比べ158億円減少の474億円となりました。有形固定資産及び無形資産
の取得については、前年同期に比べ9億円減少の879億円を支出しました。一方、持分法で会計処理されている投
資の売却により851億円、政策保有株式などの投資の売却により304億円、有形固定資産及び無形資産の売却により187億円、子会社株式の売却により91億円の収入があり、ノンコア・アセットの整理を進めることができました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の支出は前年同期に比べ445億円増加の2,267億円となりました。長期借入により306億円、
社債の発行により250億円の収入がありました。一方、自己株式の取得により1,001億円、社債の償還により700億
円、配当金の支払により557億円、長期借入金の返済により549億円の支出がありました。
上記の結果、2016年中計の定量目標を全て達成し、構造改革を通じて既存事業のキャッシュ創出力を飛躍的に高めることができたため、中計目標を上回る株主還元や有利子負債返済を進めることができました。2018年末時点のグロスDEレシオは0.45倍となり、財務柔軟性及び健全性が確保された適切な水準まで改善されたものと考えております。
2019年度は、営業キャッシュ・フローとして1,900億円を見込んでおり、投資キャッシュ・フローにおける設備投融資額は1,200億円を予定しております。創出したフリーキャッシュフローについては財務戦略に則り、第一優先的に酒類・飲料などの既存事業の成長投資に振り向け、医と食をつなぐ事業の立ち上げ・育成に使うとともに追加的株主還元への機動的なアロケーションも検討していきます。なお、株主還元については、2019年度より平準化EPSに対する連結配当性向を30%以上から40%以上に引き上げ、約600億円の配当を見込んでおります。引き続き、利益成長によるキャッシュの創出力を高めながら、資本コストと財務の柔軟性のバランスを考慮した適切な資本構成を維持していく方針です。
②資本政策の基本的な方針
当社は、「キリングループ2019年-2021年中期経営計画」(略称:2019年中計)にて策定した資本政策に基づき、事業への資源配分及び株主還元について以下の通り考えております。
事業への資源配分については、酒類・飲料などの収益力の高い既存事業のさらなる強化・成長に資する投資(設備投資・事業投資)を最優先としながら、将来のキャッシュ・フロー成長を支える無形資産(ブランド・研究開発・ICT・人材など)及び医と食をつなぐ事業の立ち上げ・育成のための資源配分を安定的かつ継続的に実施します。なお、投資に際しては、グループ全体の資本効率を維持・向上させる観点からの規律を働かせます。
株主還元についても、経営における最重要課題の一つと考えており2019年中計より連結配当性向を引き上げ、「平準化EPSに対する連結配当性向40%以上」による配当を継続的に実施するとともに、基本的には最適資本構成や市場環境及び投資後の資金余力等を総合的に鑑みて株主還元を実施するが、資産売却益のような追加的キャッシュインがある場合には、機動的な追加的株主還元として自己株式取得の実施等を検討していきます。
資金調達については、経済環境等の急激な変化に備え、金融情勢に左右されない高格付けを維持しつつ、負債による資金調達を優先します。支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資金調達については、当社グループ長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」(略称:KV2027)や2019年中計の目標の達成やステークホルダーへの影響等を十分に考慮し、取締役会にて検証及び検討を行った上で、株主に対する説明責任を果たします。
以上により、2019年中計では「ROIC10%以上」、「平準化EPS平均成長率5%以上」の達成を目指します。
(5) 経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
(のれんの償却)
日本基準では、のれんは実質的に償却年数を見積り、その年数で償却することとしておりましたが、IFRSでは移行日以降の償却を停止しております。
そのため、日本基準では、連結損益計算書の「販売費及び一般管理費」において、のれんの償却額が前年度において22,424百万円、当年度において21,976百万円発生することとなりますが、IFRSでは発生しておりません。
4 【経営上の重要な契約等】
該当事項はありません。
5 【研究開発活動】
当社グループでは、中核事業である酒類、飲料、医薬・バイオケミカルの各事業を通じて、「健康」をはじめとした社会課題に向き合い、新しい価値を創造しながら社会とともに持続的に成長することを目指しています。このようなCSVの考え方に基づき、お客様や社会にとっての新たな価値につながるイノベーションの創造に取り組んでいます。当社グループの研究開発活動は、キリン㈱R&D本部の6研究所及び各事業会社の研究所で行っています。また、有望な技術の開発・応用・実用化を可能にするためにグループ内外のオープンイノベーションを積極的に推進しています。
当年度におけるグループ全体の研究開発費は581億円です。セグメントごとの主な研究開発成果は以下のとおりであります。
(1) 国内酒類事業
キリンビール㈱は、2017年9月にリニューアルした「キリン一番搾り生ビール」の販売が好調で、特に缶製品は多くのお客様からの高いトライアルとリピートが継続しています。リニューアルにより、麦のおいしいところだけを搾る「一番搾り製法」をベースに、雑味・渋味を低減し、「麦のうまみ」がアップしました。さらに酸味や甘い香りを抑制することでより調和のとれた味わいを実現しています。今後も、「一番搾り」の“おいしさ”を徹底的に追求し、更なる成長を図っていきます。
“力強いコクと飲みごたえ”が特長の新ジャンル商品として、「本麒麟」を3月に発売しました。「本麒麟」は、“ビール職人”としてのこだわりが詰まった商品で、お客様から高い味覚評価をいただいています。「本麒麟」は、①キリンビール㈱伝統のドイツ産ヘルスブルッカーホップ(一部使用)による爽やかな香りと上質な苦み、②長期低温熟成※1により、雑味の低減と、よりコクが強く感じられる味わい、③アルコール分6%の強い飲みごたえと、スッときれる引き締まった後味、を実現しました。販売好調につき、年間販売目標も2度上方修正し、過去10年のキリンビール新商品で売上No.1※2となりました。
アルコール度数7%の力強い飲みごたえと、高発酵技術ですっきりとした後味を両立させた新ジャンル商品「キリン のどごし STRONG」を1月より発売しました。「力強い飲みごたえ」に加え、「スッキリ感」「後キレ」が感じられる爽快な味わいが「アルコールが高いのに飲みやすい」「ビールに近いおいしさがある」などの高い評価につながっています。また、「キリン のどごし<生>」を6月にリニューアルしました。今回のリニューアルでは、発売以来1,000回以上の試醸から得た知見を基に、「キリン のどごし<生>」史上、最高のキレを実現し、爽快なうまさに磨きをかけました。
2018年4月のビール定義拡大によって、ビールの製造に使用できる副原料の幅が広がりました。果実や香辛料、ハーブを用いて醸造したものは従来発泡酒に分類されていましたが、4月以降ビールとして認められるようになりました。4月に発売した「グランドキリン ひこうき雲と私 レモン篇」にはレモンピールを、6月に発売した「グランドキリン 雨のち太陽、ベルジャンの白」にはオレンジピールとコリアンダーシードを使用して、個性豊かな味わいに仕上げました。定義拡大によってさまざまな味覚や香りの商品をビールとして提案することで、お客様に、今まで以上にビールの多様性や楽しさをお届けしていきます。
新しいクラフトビールの楽しみ方を提案する「Tap Marché(タップ・マルシェ)」は、「Marché(市場)」のように、個性豊かで多様なクラフトビールと多くのお客様が出会い、気軽に楽しんでいただく「場」を実現することで、新たなビール文化の創造を目指す取り組みです。キリン㈱パッケージング技術研究所が開発した1台で4種類のビールの提供が可能な小型のディスペンサーを設置することで、多様なクラフトビールをお楽しみいただけます。また、4タップ・ディスペンサーの導入に課題を抱える飲食店などへの提案として、既存ディスペンサーより省スペースで設置できる2タップ・ディスペンサーを開発し、10月から全国で展開しました。
AIを活用することで、お客様が自覚していない嗜好を予測し、好みに合ったクラフトビールをナビゲーションするサービス「ビアナビ」を、キリンシティ㈱でテスト展開しました。「ビアナビ」は、キリン㈱酒類技術研究所が蓄積してきたビールの嗜好データ・知見を用いて、国立研究開発法人 産業技術総合研究所に設置された人工知能技術コンソーシアムのAIリビングラボワーキンググループと共同で開発したサービスです。自分のライフスタイルや食の嗜好性など、10問程度の簡単な質問に答えることで、嗜好データから回答者が好むクラフトビールの傾向を予測し、おすすめのクラフトビールをナビゲーションしました。クラフトビールの経験が少ないお客様でも、商品を選択しやすく、好みのビールが見つけやすくなることで、クラフトビールへの接点や飲用体験を増やし、ビール市場自体の魅力化、活性化につなげていきます。
RTD市場では、アルコール度数9%で、ハードな刺激と飲みごたえを実現した新商品「キリン・ザ・ストロング ハードドライ/ハードレモン/ハードコーラ」を4月に発売しました。キリンビール㈱RTDで最も強い※3「ハードな炭酸感」、グッとくる“うまみ”をもたらすキリン㈱酒類技術研究所で新たに開発した“ハードエキス”(特許出願中)を使用した「ハードな味わい」、クリアウオッカを使用しアルコール分9%に仕上げた「ハードなアルコール感」という「トリプルハード製法」により、“ハードな刺激と飲みごたえ”を実現しました。
メルシャン㈱はキリン㈱ワイン技術研究所と連携しながら、ワインの研究・技術開発並びに商品開発を実施しています。山梨県勝沼市に位置するワイナリー「シャトー・メルシャン」とワイン技術研究所が協働することでワインの品質向上に努めた結果、「シャトー・メルシャン 北信シャルドネ アンウッデッド 2016」が、レベルの高い国際ワインコンクールである「チャレンジ・インターナショナル・デュ・ヴァン(フランス・ボルドー)」にて金賞を受賞、また、「シャトー・メルシャン 北信シャルドネ RGC 千曲川左岸収穫 2016」が、「レ・シタデル・デュ・ヴァン(フランス・ボルドー)」にて金賞及び日本ワイン特別賞を受賞しました。
1996年の発売以来、多くのお客様から愛飲いただいている「メルシャン ボン・ルージュ」シリーズから、スーパーポリフェノール「レスベラトロール」※4を3倍(当社比)、そしてポリフェノールも2倍(当社比)含んだ「ボン・ルージュ プレミアム ペットボトル 赤」を、8月に数量限定で発売しました。この「レスベラトロール」を通常ワインの3倍(当社比)、ポリフェノールも2倍(当社比)含みながらも、渋みが強すぎない、芳醇な香りとコク深い豊かな味わいを実現したワインを開発しました。
「メルシャン おいしい酸化防止剤無添加ワイン」シリーズから、「メルシャン おいしい酸化防止剤無添加ワイン 厳選素材 プレミアム ペットボトル」(赤・白)2種の味わい・パッケージをリニューアルし、7月より全国で発売しました。今回のリニューアルでは、ブドウの産地・品種と製造技術にこだわることで、芳醇な香りとコクのある味わいを実現しました。醸造から瓶詰までワインと酸素の接触を最小限にして、製造時の酸化を抑える同社独自の「フレッシュ製法」に加え、新たに開発した、ワインに含まれる香りや味わいを安定化する特定の成分を高める「芳醇製法」により、芳醇な香りや果実の味わいを実現しました。
熊本国税局が開催している本格焼酎の鑑評会である2018年酒類鑑評会で、「八代不知火蔵 こめ焼酎 白水」、「八代不知火蔵 むぎ焼酎 白水」が優等賞を受賞しました。新しい酵母や発酵技術の開発により、甘みを付与することで、やわらかくまろやかな味わいに仕上げました。
芋焼酎の技術開発に関して、「ワイン原料の栽培技術を活用した和酒芋焼酎の商品開発」が第6回洋酒技術研究会賞を受賞しました。この技術は既に「浅黄うさぎ」の商品開発に活かされた技術で、メルシャン社としては2回目の受賞となります。
「まっこい梅酒」と「完熟あらごし梅酒 梅まっこい」が、世界的な食品・酒類等のコンテストである「モンドセレクション2018」(本部:ベルギー)において金賞を受賞しました。「まっこい梅酒」は、国産梅を100%使用し、「豊潤たね熟製法※5」で生み出された原酒を用いることで、フルーティーな香味をそのままに、熟した梅の風味を強化しコクを高めました。「完熟あらごし梅酒 梅まっこい」は、和歌山県産の完熟した「南高梅(なんこううめ)」を100%使用し、収穫した完熟梅を凍結し、糖を段階添加する「凍結完熟浸漬製法(特許第5965571号)」により、フレッシュかつフルーティーな香味を引き出しました。今後も“素材の香味特徴を最大限に引き出す”という思想のもと、オリジナリティに溢れ、お客様にとって魅力のある研究・技術開発並びに商品開発を引き続き推進していきます。
※1 キリンビール㈱伝統の低温熟成期間を1.5倍にした製法/同社主要新ジャンル比。
※2 発売から7カ月間の累計出荷実績で比較。
※3 「ハードドライ」と「ハードコーラ」は、キリンビール㈱RTD商品で最も強い炭酸ガス圧。「ハードレモン」は、同社果汁系RTD内で最も強い「キリン 氷結®ストロング シチリア産レモン」などと同等の炭酸ガス圧。
※4 黒ブドウの果皮に含まれる希少な成分で、ポリフェノールの一種。
※5 梅酒の美味しさの秘密である「梅のたね」だけを浸漬し、たね由来のうまみを引き出し、甘い香りと豊潤な味わいを産み出す製法のこと。
(2) 国内飲料事業
国内飲料事業では、キリンビバレッジ㈱が中心となり原料の選定から最終商品まで開発を一貫して行っています。
紅茶飲料No.1ブランド「キリン 午後の紅茶」は1986年に日本初のペットボトル入り紅茶として発売以来30年間以上、日本の紅茶飲料市場をけん引してきました。6月には基盤商品である「午後の紅茶 ストレートティー/ミルクティー/レモンティー」をリニューアル発売しました。中味については、「ストレートティー」で新製法である「マイクロ・ブリュー製法」を採用し、紅茶本来の華やかな香り、心地良い渋み、紅茶の厚みを強化し、甘さがすっきり感じられる味覚を実現しました。また感性工学※6の手法から生まれた新ボトルを採用し、洗練された佇まいに進化しました。8月にはディンブラ茶葉の華やかな香りが楽しめる、カフェインゼロ※7のストレートティーとして、「キリン 午後の紅茶 デカフェ ストレートティー」をリニューアル発売しました。キリン独自の技術である紅茶抽出液からカフェインを選択的に吸着除去するカフェインクリア製法(特許製法)により、紅茶の味わいと香りを維持したまま、カフェインゼロを実現しました。本商品の発売により、“紅茶は飲みたいけれど、カフェインを控えたい”と日常的に思っている方はもちろん、お客様が紅茶飲料を選ぶ際の選択肢を広げることで飲用シーンの拡大に貢献していきます。「天然吸着剤による飲料中のカフェイン除去技術の開発」については、4月に2018年度「飯島藤十郎食品技術賞」を受賞しました。
スタイリッシュなパッケージと、コクと余韻がしっかりと味わえる味覚が高い評価をいただいている「キリン 生茶」について3月にリニューアル発売をしました。現行の味覚への高い評価と、旨みやにごりのある緑茶を好むトレンドも上昇傾向にあるため、今回はパッケージデザインの鮮度向上に特化したリニューアルを行いました。ガラスびんをイメージしたシンプルな佇まいをベースに、緑のコントラストを際立たせることで、従来よりもさらに現代的なイメージを打ち出しています。また日本で唯一のペットボトル入りカフェインゼロ緑茶飲料「キリン 生茶デカフェ」を5月リニューアル発売しました。独自技術「カフェインクリア製法」(特許製法)を活用し、カフェインゼロ市場の活性化とカフェインを忌避するお客様のニーズに応えました。
昨年発売した「キリン サプリ」ブランドの機能性表示食品シリーズは、「毎日の生活に取り入れることでリズムを作り、日常の健康習慣に役立ててもらいたい」という想いから、働く現代人の「生活リズムマネジメント」をテーマに掲げており、機能への期待とおいしい味覚への評価で大変好評いただいています。「キリン サプリ ブラッドオレンジ」、「キリン サプリ レモン」、「キリン サプリ ヨーグルトテイスト」について好評いただいている味覚はそのままに、「生活リズムマネジメント」を新たにパッケージデザインに取り入れ、5月にリニューアル発売しました。また「キリン サプリ リンゴ」を8月より新発売しました。気温が変動しやすい季節の変わり目や、オフィス・電車・レストランなど周囲が冷える環境で役立ててもらいたい新商品です。
また、キリン独自素材“プラズマ乳酸菌”を配合した新ブランド「iMUSE(イミューズ)」から、「キリン iMUSE(イミューズ)レモンと乳酸菌」を1月より発売しました。「iMUSE レモンと乳酸菌」は、仕事中の水分補給の際にプラズマ乳酸菌が摂れる「乳酸菌ニアウォーター」です。「iMUSE」とは、「i(私)」の中にあるチカラを「MUSE(女神)」が呼び覚まし、いつまでも強く輝いた人生をサポートする、キリングループ共同で立ち上げた新ブランドです。キリングループ一体で推進しているCSVにおいて、重点課題の一つである「健康」への取り組みを強化します。これからも気軽にプラズマ乳酸菌が摂れる生活習慣を提供し、経年的に伸長※8を続ける乳酸菌飲料市場を盛り上げていきます。
今後も、キリンの強みである“ていねいなものづくり”や“品質へのこだわり”を強化し、お客様にとって、うれしい驚きをもった魅力的な商品開発を行っていきます。
※6 容器の形状からお客様が感じるイメージと好みを解析し、コンセプトに合致した容器を科学的にデザインする手法。
※7 0.001g(100ml当たり)未満を0gと表記。
※8 ㈱食品マーケティング研究所調べ。
当事業に係る研究開発費は93億円です。
オセアニア綜合飲料事業では、LION PTY LTDで、オーストラリア及びニュージーランドの市場環境の変化に応じた商品中味や容器開発を、キリン㈱の持つ技術を活用しながら取り組みました。
当事業に係る研究開発費は1億円です。
(1) 医薬事業
協和発酵キリン㈱では、抗体技術を核にした最先端のバイオテクノロジーを駆使し、腎、がん、免疫・アレルギー、中枢神経の各カテゴリーを研究開発の中心に据え、資源を効率的に投入することにより、新たな医療価値の創造と創薬の更なるスピードアップを目指しています。
当連結会計年度における主な後期開発品の開発状況は次のとおりです。
腎カテゴリー
・ 日本においてカルシウム受容体作動薬KHK7580(日本製品名「オルケディア」)の維持透析下の二次性副甲状腺機能亢進症を効能・効果とする承認を3月に取得しました。また、副甲状腺癌及び副甲状腺摘出術不能又は術後再発の原発性副甲状腺機能亢進症における高カルシウム血症を対象とした第Ⅲ相臨床試験を実施中です。
・ 日本においてRTA 402(一般名:バルドキソロンメチル)の糖尿病性腎臓病を対象とした第Ⅲ相臨床試験を5月に開始しました。
・ 中国において持続型赤血球造血刺激因子製剤KRN321(日本製品名「ネスプ」)の透析施行中の腎性貧血を効能・効果とする承認再申請の準備中です。
がんカテゴリー
・ 抗CCR4ヒト化抗体KW-0761(日本製品名「ポテリジオ」・欧米製品名「POTELIGEO」)は、米国において全身治療歴を有する成人の再発若しくは難治性の菌状息肉腫及びセザリー症候群を適応症とする承認を、日本において再発又は難治性の皮膚T細胞性リンパ腫を対象とした効能・効果及び用法・用量に関する承認事項一部変更承認を、8月にそれぞれ取得しました。また、欧州において全身治療歴を有する成人の菌状息肉腫及びセザリー症候群を適応症とする承認を11月に取得しました。
免疫・アレルギーカテゴリー
・ 抗IL-5受容体ヒト化抗体KHK4563(一般名:ベンラリズマブ)は、日本において気管支喘息を効能・効果とする承認を、本剤の権利の導出先であるアストラゼネカ社が1月に取得しました。また、同社が実施している国際共同試験計画の一環として、慢性閉塞性肺疾患を対象とした第Ⅲ相臨床試験を日本において実施中です。
・ 抗IL-17受容体A完全ヒト抗体KHK4827(日本製品名「ルミセフ」)は、体軸性脊椎関節炎を対象とした第Ⅲ相臨床試験を日本、韓国等において実施中です。また、韓国において乾癬を適応症とする承認申請を7月に行いました。
・ 日本、北米及びドイツにおいて、抗OX40完全ヒト抗体KHK4083は、アトピー性皮膚炎を対象とした第Ⅱ相臨床試験を10月に開始しました。
中枢神経カテゴリー
・ アデノシンA2A受容体拮抗剤KW-6002(日本製品名「ノウリアスト」)の米国におけるパーキンソン病を対象とした承認再申請の準備中です。
・ 日本において、抗CCR4ヒト化抗体KW-0761(日本製品名「ポテリジオ」)の、HTLV-1関連脊髄症を対象とした第Ⅲ相臨床試験を実施中です。
・ 日本において、アデノシンA2A受容体拮抗剤KW-6356のパーキンソン病を対象とした第Ⅱ相臨床試験を10月に開始しました。
その他
・ 抗線維芽細胞増殖因子23完全ヒト抗体KRN23(欧米製品名「Crysvita」)は、欧州において小児X染色体連鎖性低リン血症を適応症とした条件付き販売承認を2月に取得しました。また、成人・小児X染色体連鎖性低リン血症を適応症とした販売承認を米国において4月に、カナダにおいて12月にそれぞれ取得しました。さらに、成人X染色体連鎖性低リン血症を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験を北米、欧州、日本及び韓国において、小児X染色体連鎖性低リン血症を対象とした国際共同第Ⅲ相臨床試験を北米、欧州、オーストラリア、日本及び韓国において、それぞれ実施中です。加えて、腫瘍性骨軟化症又は表皮母斑症候群を対象とした第Ⅱ相臨床試験を米国、日本及び韓国において実施中です。
・ 中国においてトロンボポエチン受容体作動薬AMG531(日本製品名「ロミプレート」)の慢性特発性(免疫性)血小板減少性紫斑病を対象とした第Ⅲ相臨床試験を実施中です。また、韓国において再生不良性貧血を対象とした第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験を実施中です。さらに、日本において再生不良性貧血を適応症とする承認申請を7月に行いました。
(2) バイオケミカル事業
・ 各種アミノ酸に加え、核酸やペプチドといった高付加価値製品の省資源・高効率な発酵生産プロセスの研究開発に引き続き注力しています。
・ 国内外の大学研究機関との共同研究を通して得られた機能性や安全性データに基づき、アミノ酸等、発酵生産物の栄養生理機能探索や用途開発を行い、製品の付加価値を高めています。
・ キリングループ内での連携のもと、素材開発の知見を活かし、プラズマ乳酸菌に続く新素材の開発に取り組んでいます。
・ 独自素材の中で事業化に近いものとして、ヒトミルクオリゴ糖の研究開発に取り組んでいます。
当事業に係る研究開発費は484億円です。