1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
文中の将来に関する事項は、当年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1)経営の基本方針
当社は2019年度に、2027年に向けた新たなキリングループ長期経営構想である「キリングループ・ビジョン2027」(略称:KV2027)を策定しました。また、KV2027の実現に向けて、社会と価値を共創し持続的に成長するための指針である「キリングループCSVパーパス」(略称:CSVパーパス)を策定しました。
長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」
キリングループは、グループ経営理念及びグループ共通の価値観である“One KIRIN”Values のもと、食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となることを目指します。

食から医にわたる領域における価値創造に向けては、既存事業領域である「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、キリングループならではの強みを活かした「ヘルスサイエンス領域」を立ち上げました。「ヘルスサイエンス領域」では、キリングループ創業以来の基幹技術である発酵&バイオテクノロジーに磨きをかけ、これまで培ってきた組織能力や資産を活用し、キリングループの次世代の成長の柱となる事業を育成しています。また、社会課題の解決をグループの成長機会と捉え、イノベーションを実現する組織能力をより強化し、持続的な成長を可能にする事業ポートフォリオを構築しています。
持続的成長のための経営諸課題「グループ・マテリアリティ・マトリックス:GMM」
キリングループは、社会とともに、持続的に存続・発展していく上での重要テーマを、「持続的成長のための経営諸課題(グループ・マテリアリティ・マトリックス:GMM)」に整理しており、事業へのインパクトとステークホルダーへのインパクトの2つの観点から評価しています。GMMは時間の経過とともに変化していくものと捉え、中期経営計画策定(3年)ごとに再評価し、改訂しています。
2022年中期経営計画の策定に合わせ、新型コロナウイルス感染症の拡大をはじめとする環境変化やステークホルダーからの期待を踏まえて、GMMの粒度を細分化して重要性を再評価することにより、社会的要請への適合度を高めました。

※各象限内の重要性に差異はありません。
「キリングループCSVパーパス」
GMMに基づき、当社は「酒類メーカーとしての責任」を果たすことを前提に、「健康」「コミュニティ」「環境」の4つの領域の課題解決を目指しており、これを「CSVパーパス」と定めています。また、具体的なアクションプランをCSVコミットメントとして、成果指標を会社別により具体化して目標値を設定し、グループ各社の取り組みに繋げています。

価値創造モデル/CSV経営の概念
CSV経営のベースの考え方である「社会課題の解決を通じて、社会的価値と経済的価値を創出すること」を持続的に推進していく仕組みとして、当社は価値創造モデルを策定しています。イノベーションを生み出すための組織能力(INPUT)を基盤として、社会課題の解決に事業活動(BUSINESS)を通じて取り組むことで、価値(OUTPUT/OUTCOME)を創出しCSVパーパスを実現しています。特に人的資本や自然資本などの非財務資本の強化は、社会と共に自然の恵みを利用しながら事業を行う当社にとって、継続的な価値の創造につながります。
事業を通じて、当社は社会的価値と経済的価値を同時に生み出し、それらを組織能力などの経営基盤に再投資することで、持続的に資本と価値を成長させることを目指しています。

また、このCSV経営を推進していくことがどのように企業価値の向上に繋がっているかを図示すると以下のようになります。

社会課題の解決を通じた事業活動(Business)は経済的価値を生み、フリー・キャッシュフローを増加させると共に、事業リスクを低減することにつながるため、資本コストを下げ、企業価値の向上に寄与します。
他方、これらの活動から社会的価値を創出し、その価値がお客様のニーズを充足することで、弊社の製品・サービスに対するWillingness to Payが高まり、長期的にはフリー・キャッシュフローの増加にも影響すると考えられます。さらに、社会的価値が創出され高い水準になることで、従業員エンゲージメントの上昇や採用での優位性などにも影響することが考えられ、価値創造モデルにおけるINPUTの基盤である人的資本の強化に繋がります。その結果、企業の成長率にもポジティブな影響を及ぼすと当社は認識しています。
(参考)
・持続的な成長のための経営諸課題(グループ・マテリアリティ・マトリックス)
URL https://www.kirinholdings.com/jp/impact/materiality/
・キリングループ CSVパーパス
URL https://www.kirinholdings.com/jp/purpose/csv_purpose/
・キリングループ CSVコミットメント
URL https://www.kirinholdings.com/jp/impact/csv_management/commitment/
・価値創造モデル
URL https://www.kirinholdings.com/jp/purpose/model/
(2)中長期的な経営戦略と目標とする経営指標
キリングループ2022年-2024年中期経営計画
近年、世界各地で起こる異常気象、天候不順など、社会システムを大きく揺るがす環境変化が続きましたが、特に2020年以降は、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により、生活者の意識は大きく変化しました。このような環境下においても、キリングループは、新型コロナウイルスの影響を最小限に抑え、新たな社会課題に向き合ってきました。KV2027の実現に向けた最初の3カ年計画「キリングループ2019年-2021年中期経営計画」(略称:2019年中計)では、食、ヘルスサイエンス、医の各ビジネス領域で、新たな成長軌道に向けた変革の基盤づくりに取り組みました。さらに、各ビジネスが健全に成長できるよう、コーポレートガバナンス体制を強化するなど、2022年度から始まる新たな中期経営計画を実行する準備を整えることができました。

2019年中計期間中に起きた外部環境の変化を受けて、改めて当社が目指すKV2027の方向性に間違いはなく、10年後に想定していた社会が前倒しで到来していると認識しており、2027年までの長期経営構想の第2ステージとなる「キリングループ2022年-2024年中期経営計画」(略称:2022年中計)は、変革の基盤づくりを行った2019年中計から、新たな成長軌道へシフトし、KV2027実現に向けた成長ストーリーを固めていくステージであります。食、ヘルスサイエンス、医の3領域の成長により企業価値を向上させるべく、ポートフォリオマネジメントを強化し、投資の優先順位を明確にすることで経営資源を集中させています。
(基本方針)
2021年度までに実現した成果を基礎とし、ポストコロナを見据えた事業構造改革の実行と新たな価値創造により、成長を加速しています。
(重点課題)
①キャッシュ創出をリードする食領域での利益の増大
②将来の大きな柱となるヘルスサイエンス領域での規模の拡大
③グローバル・スペシャリティファーマの地位を確立する医領域でのグローバル基盤の強化
(重要成果指標)
2022年中計の財務指標について、平準化EPSの成長による株主価値向上を目指すと共に、成長投資を優先的に実施する3ヵ年の財務指標としてROICの採用を継続します。非財務目標については、CSVを経営の根幹にすえる当社にふさわしいものとして、より直接的に経済的価値に繋がる指標に変更しました。
また、重要成果指標(財務目標・非財務目標)及び単年度連結事業利益目標の達成度を役員報酬に連動させることにより、株主・投資家との中長期的な価値共有を促進しています。(なお、役員報酬に関する詳細は、第4[提出会社の状況]4[コーポレートガバナンスの状況等](4)[役員の報酬等]をご参照ください。)
[財務目標※1]
※1 財務指標の達成度評価にあたっては、在外子会社等の財務諸表項目の換算における各年度の為替変動による影響等を除く。
※2 ROIC=利払前税引後利益/(有利子負債の期首期末平均+資本合計の期首期末平均)
※3 平準化EPS=平準化当期利益/期中平均株式数
平準化当期利益=親会社の所有者に帰属する当期利益±税金等調整後その他の営業収益・費用等
[非財務目標]

(財務方針)
中計3年間で創出する営業キャッシュ・フローの総額は約7,000億円を想定しています。資金使途として最も優先順位の高い配当金については、平準化EPSに対する配当性向40%以上を継続し、約2,300億円を予定しています。2019年中計では、設備投資計画を約3,100億円としましたが、2022年中計では基盤投資・成長投資に区分した上で、合計約4,000億円に増額しています。通常の設備投資に加え、3領域の新たな成長に向けた投資枠として区分し、ウェイトを高めることで企業価値向上に繋げます。
オーガニック成長に加え規模の拡大を目指すべく、M&A投資の機会についても探索しています。特に、規模の拡大を目指すヘルスサイエンス領域においては、国内外で幅広く機会を検討しています。なお、M&A投資を行う際の原資は、バランスシートのスリム化やポートフォリオマネジメントによるノンコア事業の売却で賄うことを基本とします。
M&Aを除く事業領域ごとのキャッシュ・フロー計画として、食領域では、投資額を一定水準に抑えた上で、利益成長による営業キャッシュ・フローの最大化を目指しています。ヘルスサイエンス領域では、中長期的な営業キャッシュ・フロー最大化に向けた設備投資を行うとともに、2024年度のフリー・キャッシュ・フローの黒字化を目指します。医領域については、グローバル戦略品の成長により営業キャッシュ・フローが順調に拡大する計画ですが、グローバル・スペシャリティファーマとしての持続的成長に必要な生産・営業基盤をグローバルレベルで整えるべく、必要な設備投資を進めています。
キャッシュ・フロー計画に加え、2022年中計ではバランスシートマネジメントを重視しています。2021年に導入したグローバルキャッシュマネジメントシステムを通じて、国内外のグループ会社が保有するキャッシュの一元管理による運転資金の最適化や、SCM※4の効率化によるキャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善などにより、中計3年間で約1,000億円規模のキャッシュを創出します。
また、事業ポートフォリオについては、取締役会での継続的な議論により、ノンコアと判断した事業の売却を検討していきます。
これら、バランスシートマネジメント、ポートフォリオマネジメントにより創出したキャッシュは、将来の成長ドライバーを獲得するためのM&A投資に優先して振り向けます。一方、自己株式の取得を中心とする追加的株主還元については、投資機会や、キャッシュイン/アウトのバランスを考慮しながら機動的に判断していきます。
※4 サプライ・チェーン・マネジメント(Supply Chain Management)の略。原材料の調達、工場での生産、商品の需給・物流の供給連鎖を効率よく構築し管理することを指す。
(非財務方針)
2022年中計基本方針に従い、非財務への取り組みもより強化しています。ポストコロナを見据えた「イノベーションを実現する組織能力」の強化や、キリングループのDNAである品質本位の徹底、効率と持続可能性を両立するSCM※体制の構築、価値創造を支えるガバナンスの強化により、強固な組織基盤の構築を目指しています。また、組織能力の強化とステークホルダーからの期待を踏まえ、経済的価値に直接的につながる非財務目標を設定し、価値創造モデルのInput~Business~Outputを強化することでより大きなOutcomeの創出を目指しています。非財務資本への戦略的な取り組みを通じて、当社はCSV経営を推進し、社会のサステナビリティ課題の解決にも貢献していきます。
●サステナビリティに関する考え方及び取組
サステナビリティを巡る課題について、当社はリスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、CSV経営に積極的・能動的に取り組むことで、中長期的な企業価値の向上とサステナビリティ課題の解決の両立を目指しています。当社はサステナビリティ課題全般およびテーマごとに、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の観点から考え方を整理し、取り組みを強化しています。
①サステナビリティ課題全般
②テーマ別
①を踏まえ、当社は気候変動・自然資本・人的資本など、様々なサステナビリティ課題に対応し、社会と企業に与えるリスクと機会や戦略のレジリエンスを評価し、幅広いステークホルダーへ積極的な情報開示を行っています。
[気候変動への対応]
気候変動問題は、グローバル社会の最重要課題の1つであると同時に、農産物と水を原料とし「自然の恵み」を享受して事業を行うキリングループにとって重要な経営課題です。この認識の元、キリングループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が2017年に公表した提言を踏まえ、2018年にいち早くシナリオ分析とその開示を開始し、日本の食品会社として初めてTCFD提言への賛同も表明しました。統合的(holistic)なアプローチで自然資本へのインパクトも組み込むことで、キリングループのレジリエンスを高め、脱炭素社会をリードしていきます。
※1:2021年10月に公開された「 TCFD 指標、目標、移行計画に関するガイダンス」および「TCFDの提言の実施(2021年版)」
※2:2021年末実績
※3:各年度のScope3算定には産総研 IDEA Ver2.3、Ver.3.1を使用
気候変動リスク・機会の事業インパクト評価と対応戦略
2017年からのシナリオ分析で、気候変動の影響を最も受けるのは原料である生物資源と水資源であることが確認されていることを受け、これらを重点領域として継続して分析・評価を実施しています。2022年は、自然災害洪水シミュレーションによる推定エクスポージャーの開示や原材料輸送でのリスク評価等を実施しました。
財務影響の分析
※4:価格変動予測データ分布の中央の50パーセンタイル幅で評価
※5:GHG排出量削減を行わなかった場合
※6:価格変動予測データ分布の中央の50パーセンタイル幅で評価
2022年はTCFD新ガイダンスが求めるアセットに対する気候変動の影響分析を実施しました。事業売却・自然災害などによる影響は小さいと評価しています。
※7:目標達成可能性は若干容易になる方向ではあるものの、必要な投資・費用に大きな影響はないと判断しています。
※8:自然災害モデルAIR洪水シミュレーションでの算出結果です。自然災害によるエクスポージャーも小さいと考えていますが、今後事業所の現地調査等を行い付保の可否についても検討していきます。
※9:気候変動に伴う法規制または社会的な情勢を主要因として耐用年数に達さず更新せざるを得なくなる可能性は低いと判断しています。参考としてキリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンのボイラー、および物流グループ会社所有のトラックの残存簿価の合計値を提示しています。
移行計画
キリングループは気候変動を緩和するためのロードマップを策定し、経営戦略会議で審議・決議して2022年1月より運用を開始しています。
投資計画
2030年までは損益中立を原則とし、省エネ効果で得られたコストメリットで投資による減価償却費や再生可能エネルギー電力調達の増加分を相殺します。GHG排出量削減を主目的とした環境投資の指標としてNPV(Net Present Value)を使用し、投資判断枠組みにはICP(Internal Carbon Pricing:$63/tCO2e)を導入しています。今後、ロードマップでICPを考慮することで取り組みを加速させていく予定です。2020年の再生PET樹脂の調達及び工場におけるヒートポンプシステム導入への支出を資金使途とするグリーンボンド(100億円)に続き、2023年1月には、当社がScope1とScope2の温室効果ガス(GHG)排出量削減に向けた取り組みとして推進する省エネ、および再生可能エネルギー関連のプロジェクトに充当する国内食品企業初のトランジション・リンク・ローンによる資金調達(500億円)を実行しました。本ローンについては、経済産業省による令和4年度温暖化対策促進事業費補助金及び産業競争力強化法に基づく成果連動型利子補給制度(カーボンニュートラル実現に向けたトランジション推進のための金融支援)が適用されます。
気候変動対応ロードマップの投資予定※11
(単位:億円)
※11:2019-2021年中計は実績。2022~2030年はトランジション・リンク・ローン策定時の想定であり、今後修正される可能性があります。
※12:再生可能エネルギー使用拡大には再生可能エネルギー電力調達に関わる全ての投資額を含めております。
[自然資本への対応]
キリングループは、2010年に名古屋で開催された生物多様性条約第10回締約国会議を契機として、生物資源のリスク調査を行い、事業が特定の“場所”の自然資本に“依存”していることを理解しました。この認識の元、「キリン 午後の紅茶」の主要原料生産地であるスリランカでレインフォレスト・アライアンス認証の取得支援を継続し、水資源に対しては、比較的水の豊かな日本と水ストレスの非常に大きなオーストラリアで事業を行ってきたことから、水ストレス・水リスクが国や地域によって異なることを早くから認識して取り組みを進めてきました。自然資本に関する非財務情報開示および科学的な目標設定の取り組みは以下の通りです。
[人的資本への対応]
人財戦略を取りまく環境は社内外で大きく変化しており、キリングループの人財戦略も大きな転換期を迎えています。生活環境の変化や個人の価値観の多様化もあいまって、働き方をはじめ労働市場環境は劇的に変化し、また、キリングループにおいては事業ポートフォリオの転換によって、経営戦略実行に求められる人財も変化しています。
キリングループでは、「人財」を価値創造・競争優位の源泉とあらためて位置づけ、その価値を最大限引き出すことで、KV2027の実現と、グループの持続的成長・価値向上を実現していきます。
(3)会社の対処すべき課題
社会活動が新型コロナの影響から回復に向かう一方で、これからも感染症の発生は避けられません。また、地政学リスクの高まりは原材料価格や燃料価格の高騰及び諸物価の上昇を招く可能性があり、経営環境はますます先が見通せない時代です。このような中、キリングループは社会課題に正面から向き合いながら「医領域」や「ヘルスサイエンス領域」の成長、「食領域」の収益性改善に取り組みます。キリングループの成長を支えるのは、発酵・バイオテクノロジーを根幹とした技術力に加え、人財、ICT、マーケティングの4つの組織能力です。中でも昨今注目が高まる人財については、専門性の高い多様な人財を採用・育成するとともに、挑戦を通じて成長できる組織風土醸成に向け、人財戦略を変革します。新たな戦略のもと、人的資本への投資を企業価値向上につなげていきます。
グローバルサプライチェーンでの人権取り組みも強化していきます。スリランカの紅茶農園をはじめ、原料調達先に対する人権デューデリジェンスの実施や、一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)の苦情受付窓口を活用し、人権リスクを低減していきます。また、地球規模で対応が迫られる環境問題に対しては、ポジティブインパクト創出を目指した取り組みをグローバルレベルで推進します。これらの取り組みを通じて、財務目標である2024年までの平準化EPS年平均成長率11%以上※1、2024年時点のROIC10%と、非財務目標である「環境」「健康」「従業員」各項目の達成を目指します。
※1 基準は2021年度
①食領域
「食領域」では、強固なブランド体系の構築、新たな成長エンジンの育成、収益構造改革に取り組みます。キリンビール㈱は、10月の酒税改正により高まるビール需要にあわせ、「ビールの魅力化」に取り組みます。「キリン一番搾り生ビール」のリニューアルを中心に、「キリン一番搾り 糖質ゼロ」「キリン 氷結®」等主力ブランドを強化します。成長エンジンと位置付けるクラフトビールは、「スプリングバレー」ブランドを軸に、他のクラフトブルワリーとの連携強化や「Tap Marché(タップ・マルシェ)」「キリン ホームタップ」の展開を拡大します。
キリンビバレッジ㈱は、市場環境やお客様意識の変化にあわせ、「お客様の毎日に、おいしい健康を。」をお客様との約束と位置付け、活動します。新たに発売する「キリン おいしい免疫ケア」を中心にプラズマ乳酸菌入り飲料のラインアップを強化し、免疫ケア市場の拡大に注力します。主力ブランドでは「午後の紅茶」を通じ、紅茶本来の価値向上に取り組むほか、「生茶」では味覚の進化とともに、環境負荷軽減にも取り組みます。
ライオン社は、「XXXX(フォーエックス)」等重点ブランドへのマーケティング活動を強化します。好調なクラフトビールでは、豪州や米国における事業基盤強化に注力します。また、ビジネスにおける運用モデルの変革により、コストの削減と戦略実現を通じた持続的な成長を目指します。
メルシャン㈱は、「Mercian Wines(メルシャン・ワインズ)」と「シャトー・メルシャン」を重点ブランドとし、収益性を強化します。
コーク・ノースイースト社は、継続的かつ安定的な高収益体制の構築に取り組みます。
②医領域
協和キリン㈱は、グローバル戦略品である「Crysvita」「Poteligeo」等の価値最大化を目指します。特に北米における「Crysvita」は、自社販売に切り替え、さらなる成長を目指します。
製薬業界には、後発医薬品の使用促進等による薬剤費抑制、新薬開発におけるコスト増加等、厳しい環境変化が起きています。一方で、革新的な治療を可能にする新たな創薬手法を後押しする動きもあります。アムジェン社と共同開発中の「KHK4083」や「KHK4951(一般名:tivozanib)」※2等の臨床試験を着実に実施するとともに、さらなるパイプライン充実に向けて研究開発を推進します。
※2 滲出性加齢黄斑変性(視細胞が密集する黄斑と呼ばれる部位に異常な血管新生が起こり、急激な視力低下を招く疾患)の治療薬です。
③ヘルスサイエンス領域
新型コロナの影響が未だ残る中、人々の健康や未病への関心は年々高まっています。2023年も、人が元来持っている力を高める「免疫ケア」の啓発活動に取り組みます。自社だけでなく、外部パートナー企業と「プラズマ乳酸菌」入りの飲料や菓子、サプリメント等幅広く機能性表示食品を展開し、お客様が手軽に、習慣的に免疫ケアできる環境を拡大します。自社商品を販売することで得られる知見を活用し、菌体販売にとどまらない新たなBtoBビジネスを展開していきます。海外でも、東南アジアや米国、欧州等へ展開を加速し、世界の人々に免疫ケアの重要性をお伝えしていきます。
協和発酵バイオ㈱は、抜本的な構造改革を実行します。「シチコリン」の米国における販売を強化するほか、母乳特有の栄養成分「HMO(ヒトミルクオリゴ糖)」の東南アジアでの展開など、スペシャリティ素材に注力することで高収益な事業モデルを目指します。
㈱ファンケルとは、両社の強みを生かした共同研究・新商品開発を加速させます。共同研究領域を広げシナジーを拡大するとともに、商品面では㈱ファンケルが持つ「カロリミット®」ブランドをキリンビバレッジ㈱が飲料で活用し、付加価値の高い商品を展開します。さらに、㈱ファンケルが培った通信販売の知見を共有することで、お客様接点の対応力や提案力を高めます。
キリングループは、強みである発酵・バイオテクノロジーを軸に、食、医、ヘルスサイエンスの各領域で社会的価値と経済的価値を創造するCSV経営を進めます。KV2027で目指す事業ポートフォリオの土台はできつつあり、各領域における戦略実行度を高め成長を加速させることで持続的成長を実現し、企業価値向上を目指します。
今後とも、株主の皆様の一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
2 【事業等のリスク】
(1) リスクマネジメントの考え方
キリングループでは、経営目標の達成や企業の継続性に大きな影響を与える不確実性を「リスク」、ある時点を境にリスクが顕在化し対応に緊急性を要するものを「クライシス」と定義しており、ステークホルダーからの信頼を持続的に獲得できるよう、リスクの低減や未然防止を図り、リスクを許容範囲内に収めることをリスクマネジメントの基本方針としています。戦略とリスクは表裏一体であると捉え、戦略選択の局面や戦略実行フェーズにおけるリスク、また、クライシスに転ずるリスクについても様々な観点から分析を行い、適切なリスクコントロール策を検討、実行しています。なお、リスク情報は、当社ホームページなどを通じて適時適切に開示してまいります。
(2)リスクマネジメント体制及び、グループ重要リスクの確定プロセスとモニタリング
キリングループでは、キリンホールディングスの常務執行役員以上で構成され、リスク担当執行役員が委員長を務める「グループリスク・コンプライアンス委員会」を設置しています。同委員会は、リスク情報の収集やリスクコントロール、中計や年度におけるグループリスク方針やコンプライアンスの重要項目の立案、リスク低減に向けた取り組み、リスク顕在化時の情報共有や対策の実施、グループ会社への必要な指示や支援など、リスクマネジメント活動の全般を統括しています。また、取締役会ではグループ重要リスクの審議や報告を通じ、リスクマネジメントの有効性を監督しています。(図1)
グループ重要リスクの確定プロセスについては、各年度で設定するキリングループのリスクマネジメント方針に基づき、グループ会社で戦略・事業遂行上のリスクや重大なクライシスに転ずる可能性のあるリスクを検討し抽出しています。キリンホールディングスではこれら事業固有のリスクを集約し、またグループ全体に共通するリスクについて精査します。それぞれのリスクについて全社的な経営の観点からグループリスク・コンプライアンス委員会において経済的損失や事業継続性、レピュテーション棄損などグループとして影響度が大きなリスクを定量・定性の両面で総合的に評価し、発生確率を踏まえて優先順位の高いリスクを選定しています。これを取締役会にて審議し、グループ重要リスクとして確定させています。(図2)
グループ重要リスクについては、影響度と発生確率を踏まえてリスクマップ上で一元化して管理し、最重要リスクについては取締役会でも状況変化の確認や対策の見直しを行っています。キリンホールディングスおよび当該グループ会社ではリスク内容に応じた各種の対策を立案し実行していますが、キリンホールディングスはグループ会社に対して必要な支援や指示を行い、グループ会社はキリンホールディングスに報告や相談を行うなど、相互に連携することでリスクマネジメントを推進・運用しています。(図3、4)また、各グループ会社およびキリンホールディングスは四半期ごとに戦略・リスクの両面からモニタリングを実施し、戦略リスクを適切に管理・統制すると共に、クライシスに転ずるリスクの顕在化の未然防止を図り、転化した場合はその影響を最小限に留めるなど、各種のリスクマネジメント体制を整備し、リスクの低減や適切な管理に努めています。
(図1)

(図2)

(図3)(図4)

(3) キリングループの主なリスク
キリングループの戦略・事業その他を遂行する上でのリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しています。以下に記載したリスクは、キリングループの全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外のリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。主なリスクは、「各事業領域におけるリスク」と「各事業領域共通のリスク」に分類しています。なお、本文中における将来に関する事項は、別段の記載がない限り当年度末において当社が判断した内容に基づきます。
① 各事業領域におけるリスク
② 各事業領域共通のリスク
上記以外にも、レピュテーションに関するリスク、地政学上のリスク、事業投資に関わるリスク、法改正に伴うリスクなど様々なリスクがあります。これらのリスクの存在を認識した上で、発生の防止・速やかな対応に努めてまいります。
3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
詳細につきましては、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等]内、連結財務諸表注記」に記載のとおりであります。
(2) 経営成績の状況
①事業全体の状況
2022年は、長期化する新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に加え、地政学リスクの顕在化や世界的なインフレ、円安等が企業経営に大きな影響を与えました。消費行動においては、健康意識の一層の高まりや、消費の二極化がさらに進むなど、社会が大きく変化した一年となりました。
この環境下において、キリングループは長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」(略称:KV2027)のもと、食領域の利益増大や医領域のグローバル基盤強化、ヘルスサイエンス領域の拡大等、社会の変化に対応する取り組みを加速しました。創業以来100年以上続くビール事業で培った発酵・バイオテクノロジーを強みに、40年以上前から医薬事業を展開し、KV2027で新たに打ち出したヘルスサイエンス事業も、このコア技術を活用し、推進しています。優れた発酵技術と生物学的知見を用い、健康課題の解決につながるヘルスサイエンス事業を成長させていくことが、キリングループが企業として存続し、持続的成長を続ける未来を確かなものにすると考えています。
健康課題のみならず、社会が抱える課題をキリングループの強みで解決し、同時に企業としての経済的価値を創出し、企業価値の最大化を実現していきます。当年は、KV2027の実現に向けた中期経営計画の第二ステージである「キリングループ2022年-2024年中期経営計画」(略称:2022年中計)のもと、以下の取り組みに邁進しました。
・食領域
主力ブランドに集中した活動により、強固なブランド体系を構築する一方、新たな価値提案となる商品やサービスの拡大に取り組みました。また、原材料価格や燃料価格等の高騰に対しては、各事業会社が生産性向上や商品価格の改定による収益性改善に取り組みました。
・医領域
日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして、国内外で基盤強化に取り組みました。グローバル戦略品を着実に成長させるとともに、次世代戦略品の開発を進めました。
・ヘルスサイエンス領域
「プラズマ乳酸菌」の展開を加速させ、事業領域の拡大に取り組みました。飲料やサプリメントなど自社グループ商品の展開に加え、外部パートナー企業への菌体販売を進め、機能性表示食品の商品数を拡大しました。その結果、プラズマ乳酸菌関連事業の販売金額は前年比40%増となりました。また、免疫ケアの啓発活動に継続して取り組み、お客様の健康課題解決に貢献しました。
ESGの観点でも、社外から高い評価をいただきました。米国MSCI社のMSCI ESGレーティングで世界のCSV先進企業と並ぶ「AA」評価を2年連続で獲得しました。国際的非営利団体CDPが実施する調査でも、「気候変動」「水セキュリティ」の2テーマで、最高評価「Aリスト」を4年連続で獲得しました。国内でも、「日経SDGs経営調査」総合ランキングで4年連続最高位を獲得するとともに「第4回日経SDGs経営大賞」で「SDG戦略・経済価値賞」を受賞しました。非財務情報の開示要請が高まる中、当社は非財務指標の開示を積極的に行ってきました。2022年中計における重要成果指標として「環境」「健康」「従業員」の項目で非財務目標を設定し、取り組みを進めました。
(重要成果指標)
当年度の連結売上収益は、オセアニア酒類事業、医薬事業及びコーク・ノースイースト社の増収により増加しました。連結事業利益は、国内飲料事業、協和発酵バイオ(株)等が減益となりましたが、オセアニア酒類事業、医薬事業及びコーク・ノースイースト社等が増益となり、全体では増益となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、協和発酵バイオ(株)に係る減損損失の計上があったものの、華潤麒麟飲料の売却等により増益となりました。
重要成果指標について、ROICは、連結事業利益の増加により8.5%と前年より改善しました。平準化EPSは、連結事業利益の増加と9月に完了した自己株式の取得による影響等により、前年より15円増加の171円と過去最高となりました。
②セグメント情報に記載された区分ごとの状況
セグメント別の業績は次のとおりです。
<国内ビール・スピリッツ事業>
国内酒類市場は、原材料価格や燃料価格の高騰に加え、長期化する新型コロナの影響を受けましたが、全体的には回復基調で推移しました。キリンビール㈱では主力ブランドの「キリン一番搾り生ビール」や、健康志向を捉えた「キリン一番搾り 糖質ゼロ」に注力しました。その結果、「一番搾り」ブランド全体の販売数量は前年比3%増となりました。クラフトビールカテゴリーでは、ビールの多様な魅力を広げる取り組みに注力しました。「スプリングバレー」ブランドから、「スプリングバレー 豊潤<496>」に加え「スプリングバレー シルクエール<白>」を新たに発売しました。自宅で本格的な生ビールやクラフトビールを楽しめる家庭用のビールサーバー「キリン ホームタップ」は全国のお客様に工場つくりたてのおいしさをお届けしました。全国各地のクラフトビールを4種類提供可能な飲食店向けビールサーバー「Tap Marché(タップ・マルシェ)」は、参加ブルワリー14社とともに、幅広いクラフトビールの楽しさをお客様にお届けしました。また、ビールの鮮度を維持し、フードロス削減にも貢献する次世代ビールサーバー「TAPPY(タッピー)」の展開も進め、導入飲食店舗数は1万店を突破しました。RTDカテゴリーでは、主力の「キリン 氷結®」ブランドが好調に推移しました。特に「キリン 氷結® 無糖」シリーズは年初目標の約1.2倍の1,400万ケースを突破するなど、高い支持をいただきました。ノンアルコール・ビールテイスト飲料カテゴリーでは、「キリン グリーンズフリー」を刷新し、市場の活性化に貢献しました。
これらの結果、業務用チャネル売上が回復し、価格改定効果も相俟って、売上収益は0.3%増加し6,635億円となりました。また、事業利益は、販売費の抑制により、5.8%増加し747億円となりました。
<国内飲料事業>
国内飲料市場は、外出機会の増加等により回復傾向にありますが、原材料価格や燃料価格の高騰等、市場をとりまく外部環境は激しさを増しました。キリンビバレッジ㈱では、主力ブランドの販売が好調に推移し、「午後の紅茶」「生茶」ともに前年を上回る販売となりました。特に「午後の紅茶 おいしい無糖」シリーズは、前年比17%増と高い実績となりました。注力するヘルスサイエンス領域では、小容量タイプのペットボトル飲料「キリン iMUSE 朝の免疫ケア」を全国で発売し、免疫ケアの習慣化に向けた取り組みを強化しました。さらに、「キリン iMUSE レモン」と「キリン iMUSE ヨーグルトテイスト」をリニューアルし販売強化した結果、「プラズマ乳酸菌」入り飲料の販売数量は前年比23%増と成長しました。また、健康経営を推進する法人向けサービス「KIRIN naturals(キリン ナチュラルズ)」では、従業員の生活習慣改善や健康意識向上に取り組むトータルサービスとしてリニューアルしました。
しかしながら、売上収益は0.5%減少し2,433億円となりました。また販売促進費、広告費の削減を進めたものの、原材料価格等の高騰影響により、事業利益は11.0%減少し188億円となりました。
<オセアニア酒類事業>
豪州の酒類市場は、業務用市場が新型コロナの影響から回復傾向にあった一方で、家庭用市場は軟調に推移しました。その中でライオン社は、主力の「XXXX(フォーエックス)」を中心にマーケティング活動を強化し、ブランドの活性化に取り組みました。成長分野と位置付けて注力するクラフトビールは、2021年に豪州でファーメンタム社を傘下にし、プレミアムポートフォリオを拡充しました。2022年には、米国でベルズ・ブルワリー社を傘下に収め、ニュー・ベルジャン・ブルーイング社とともに、北米におけるクラフトプラットフォーム構築を進めました。
その結果、円ベースの売上収益は18.3%増加し2,559億円となりました。またサプライチェーン最適化等のコスト削減の取り組みにより、事業利益は円ベースで18.8%増加し315億円となりました。
<医薬事業>
協和キリン㈱は、同社の2021-2025年中期経営計画の2年目にあたる2022年も、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして成長に向けた取り組みを進めました。新型コロナの影響で世界の治療環境が変化する中、グローバル戦略品として位置付ける「Crysvita」や「Poteligeo」等は、着実な成長を続けています。次世代戦略品では、「KHK4083(一般名:rocatinlimab)」や「KHK7791(一般名:テナパノル塩酸塩)」等の開発が着実に進捗しました。一方で「KW-6356」の開発を中止したほか、「ME-401」は日本以外での開発中止を決定しました。また、病気と向き合う人の声を聞き、事業と社会課題の解決を目指す「ペイシェント・アドボカシー」活動では、特定非営利活動法人ASrid等各国の患者支援団体と協力し、希少・難治性疾患の支援を国内外で積極的に進めました。
これらの結果、グローバル戦略品を中心とした海外医薬品売上の増加により売上収益は13.1%増加し3,979億円となりました。また事業利益は、グローバル戦略品の販売に係る販売費及び一般管理費や研究開発費が増加したものの、売上収益増収に伴う売上総利益の増加により、34.7%増加し825億円となりました。
また、その他の主な各事業の業績は以下のとおりです。
(協和発酵バイオ㈱)
協和発酵バイオ㈱は、新型コロナの感染拡大に伴うロックダウンにより、生産拠点のひとつである中国上海工場(上海協和アミノ酸社)が製造休止を余儀なくされ、販売面でも制約を受けました。重点素材であるシチコリンは、最大のサプリメント市場である米国でのインフレ等も影響し、軟調に推移しました。また、原料価格や燃料価格の高騰により収益性が悪化しました。一方、厳しい事業環境の中でも、世界的に需要拡大が期待されている「HMO(ヒトミルクオリゴ糖)」 の生産設備をタイの自社工場(タイ協和バイオテクノロジーズ社)内に完成させました。これらの結果、売上収益は3.7%減少し511億円、事業損失は39億円となりました。
(メルシャン㈱)
メルシャン㈱では、急激な円安により主力のワイン事業が大きく影響を受ける中、収益性の高い自社ブランドの育成に取り組みました。世界の造り手と共創する新ブランド「Mercian Wines(メルシャン・ワインズ)」の展開を開始し、近年高まりを見せるエシカル消費にも応えました。日本ワインでは、フラッグシップブランドである「シャトー・メルシャン」の取り組みを強化しました。日本のワイン産業全体の底上げを推進するコンサルティング事業に着手しました。地域経済に貢献しながら「シャトー・メルシャン」も成長を目指します。しかしながら、売上収益は4.5%増加し605億円、事業損失は6億円となりました。
(コーク・ノースイースト社)
米国は、インフレが進む中でも消費者の旺盛な需要が継続したため、飲料市場は大きく成長しました。コーク・ノースイースト社は、商品の価格改定を行いながら需要拡大にも取り組んだ結果、販売は好調に推移しました。また、利益率の高い商品構成に取り組むことで、収益性を向上させました。これらの結果、売上収益は39.6%増加し2,162億円、事業利益は59.3%増加し263億円となりました。
(ミャンマー酒類事業)
当社は、当社の連結子会社であるミャンマー・ブルワリー社(MBL)及びマンダレー・ブルワリー社(MDL)の合弁パートナーであるミャンマー・エコノミック・ホールディングス社(MEHPCL)と合意の上、2023年1月23日に当社の連結子会社であるキリンホールディングスシンガポール社が保有するMBL及びMDLの全株式(発行済株式数の51%)をMBL及びMDLに譲渡(MBL及びMDLによる自己株式取得)しました。
③生産、受注及び販売の状況
当年度におけるセグメントごとの生産実績は、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格によっております。
当社グループの製品は見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しています。
当年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりであります。
(注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(3) 財政状態
①事業全体の状況
当年度末の資産合計は、前年度末に比べ703億円増加して2兆5,423億円となりました。有形固定資産、のれんについては、ベルズ・ブルワリー社の子会社化や為替変動の影響等によって、前年度末に比べ521億円の増加となりました。また、棚卸資産が前年度末比429億円増加しました。一方、華潤麒麟飲料(大中華)有限公司の売却等により、持分法で会計処理されている投資が376億円減少しました。
資本は、利益剰余金が656億円増加、その他の資本の構成要素が698億円増加し、前年度末に比べ1,052億円増加して1兆2,532億円となりました。その他の資本の構成要素の増加要因は、主に円安の影響によって在外営業活動体の換算差額が725億円増加した影響です。
負債は、前年度末に比べ349億円減少して1兆2,891億円となりました。2022年6月に200億円の普通社債を発行した一方、グローバルキャッシュマネジメントシステムの導入に伴い、資金効率が向上したこと等により返済額を下回る調達額に抑制した結果、有利子負債が圧縮され、社債及び借入金が284億円減少しました。
これらの結果、親会社所有者帰属持分比率は38.5%、グロスDEレシオは0.53倍となりました。
②セグメント情報に記載された区分ごとの状況
<国内ビール・スピリッツ>
当年度末のセグメント資産は、前年度末に比べ7億円減少して4,321億円となりました。
<国内飲料>
当年度末のセグメント資産は、その他の金融資産が減少したこと等により、前年度末に比べ60億円減少して1,332億円となりました。
<オセアニア酒類>
当年度末のセグメント資産は、ベルズ・ブルワリー社の子会社化や為替変動の影響等によって、のれん、有形固定資産が増加したこと等により、前年度末に比べ709億円増加して5,467億円となりました。
<医薬>
当年度末のセグメント資産は、無形資産の減損があったものの、有形固定資産、営業債権及びその他の債権、棚卸資産の増加等により、前年度末に比べ182億円増加して8,803億円となりました。
(4) キャッシュ・フロー
①キャッシュ・フロー及び流動性の状況
当年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前年度末に比べ614億円減少の881億円となりました。活動毎のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金の収入は前年同期に比べ837億円減少の1,356億円となりました。税引前利益が918億円増加したものの、運転資金の流出が126億円増加した他、非資金損益項目である減損損失の戻入132億円や持分法で会計処理されている投資の売却益481億円等により、小計では480億円の減少となりました。小計以下では法人所得税の支払額が392億円増加したこと等により、営業活動によるキャッシュ・フローは前年同期比で減少となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金の支出は前年同期に比べ460億円減少の104億円となりました。減少の主な要因は、当年度に華潤麒麟飲料(大中華)有限公司の売却で持分法で会計処理されている投資の売却による収入が前年同期に比べ1,171億円増加の1,222億円となったことです。一方、子会社株式の取得による支出は、当年度にベルズ・ブルワリー社の子会社化、前年同期はファーメンタム社の子会社化があったため、前年同期に比べ7億円増加の462億円となりました。有形固定資産及び無形資産の取得については、前年同期に比べ121億円増加の985億円を支出しました。また、政策保有株式の縮減に向けた取組みを引き続き推進したことにより投資の売却は79億円の収入となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金の支出は前年同期に比べ126億円減少の1,678億円となりました。平準化EPSに対する連結配当性向40%以上の配当を継続しており、非支配持分を含めた配当金の支払いは655億円となりました。また、株主還元の拡充を目的とし500億円の自己株式取得を実行しました。なお、グローバルキャッシュマネジメントシステムの導入に伴い、資金効率が向上したこと等により返済額を下回る調達額に抑制した結果、当年度に有利子負債は369億円減少しました。
上記の結果、既存事業への投資と成長投資を進めつつ、安定的かつ継続的な株主還元・有利子負債の圧縮を通して資本構成の安定化を図ることができました。
2022年中計における財務戦略骨子として、「BS(バランスシート)・PF(ポートフォリオ)マネジメントによるキャッシュ創出」により生じる資金を、「成長ドライバー獲得への規律ある投資」と「機動的な株主還元施策」に振り向けていく方針を掲げております。これらの着実な実行により、2024年までの平準化EPS年平均成長率11%以上、2024年時点でのROIC10%以上という財務目標を達成し、企業価値の向上に繋げていきます。
②資本政策の基本的な方針
当社は、2022年中計にて策定した資本政策に基づき、事業への資源配分及び株主還元について以下の通り考えております。
事業への資源配分については、ヘルスサイエンス領域を中心とした成長投資を最優先としながら、既存事業の強化・収益性改善に資する投資を行います。また、将来のキャッシュ・フロー成長を支える無形資産(ブランド・研究開発・ICT・人的資本など)及び新規事業創造への資源配分を安定的かつ継続的に実施します。なお、投資に際しては、グループ全体の資本効率を維持・向上させる観点からの規律を働かせます。
株主還元についても、経営における最重要課題の一つと考えており、1907年の創立以来、毎期欠かさず配当を継続しております。「平準化EPSに対する連結配当性向40%以上」による配当を安定的かつ継続的に実施するとともに、自己株式の取得については、追加的株主還元として最適資本構成や市場環境及び投資後の資金余力等を総合的に鑑み、実施の是非を検討していきます。
資金調達については、経済環境等の急激な変化に備え、金融情勢に左右されない高格付けを維持しつつ、負債による資金調達を優先します。中長期的な目標達成に必要とされる投資に係る資金調達により支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資金調達については、ステークホルダーへの影響等を十分に考慮し、取締役会にて検証及び検討を行った上で、株主に対する説明責任を果たします。
4 【経営上の重要な契約等】
(協和キリン㈱のアトピー性皮膚炎治療薬「KHK4083」の共同開発・販売に関する契約)
当社の連結子会社である協和キリン㈱(以下「協和キリン」)は、Amgen Inc.(以下「アムジェン」)とヒト型抗OX40モノクローナル抗体KHK4083の自己免疫疾患であるアトピー性皮膚炎等を対象とした共同開発・販売に関する契約を2021年6月1日付で締結し、本契約は米国の独占禁止法に基づく待機期間が終了したことを受けて、2021年7月31日に発効しております。
KHK4083は協和キリンが保有している「完全ヒト抗体作製技術」と抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を高める「POTELLIGENT®技術」を利用したヒト型抗OX40モノクローナル抗体であり、活性化T細胞を選択的に減少させることが確認されています。現在、G7地域で約3,000万人以上が罹患しているアトピー性皮膚炎を対象として、本剤は米国、欧州、日本で開発が進められており、アトピー性皮膚炎の治療薬としてファーストインクラスになりうる開発品です。
ADCC活性を高める協和キリンのPOTELLIGENT技術を利用した抗体医薬品は、現在、がんや喘息などの治療分野で応用されています。このADCC活性を高める協和キリンのPOTELLIGENT技術は、多くの製薬会社にもライセンスされています。
当契約に基づき、アムジェンは本剤の開発や製造を主導し、協和キリンが単独で販売活動を担当する日本を除き、グローバルでの販売活動を主導します。また、両社は米国において本剤のコ・プロモーションを行い、協和キリンは米国以外(日本を除く欧州及びアジア)においてコ・プロモーションを行う権利を有しています。アムジェンは、前連結会計年度において協和キリンに400百万ドルの契約一時金を支払い、今後最大850百万ドルのマイルストンと全世界での売上に対するロイヤルティーを支払います。両社は、日本を除く全世界での開発費及び米国での販売にかかる費用を折半します。なお、日本を除く全世界の市場における本剤の売上はアムジェンに計上されます。さらにアムジェンは、子会社であるdeCODE Genetics社の独自データを活用し、KHK4083のさらなる開発可能性も検討します。
(華潤麒麟飲料(大中華)有限公司の株式譲渡について)
当社は、華潤創業有限公司との合弁により、中国において水を中心とした飲料事業を展開する華潤怡宝飲料(中国)投資有限公司の持株会社華潤麒麟飲料(大中華)有限公司の持分をPlateau Consumer Limitedに譲渡する株式譲渡契約を2022年2月16日に締結し、2022年8月5日に株式譲渡を完了いたしました。
(ミャンマー酒類事業の株式譲渡について)
当社は、当社の連結子会社であるMyanmar Brewery Limited(MBL)及びMandalay Brewery Limited(MDL)の合弁パートナーであるMyanma Economic Holdings Public Company Limited(MEHPCL)と合意の上、2023年1月23日に当社の連結子会社であるKirin Holdings Singapore Pte. Ltd.が保有するMBL及びMDLの全株式(発行済株式数の51%)をMBL及びMDLに譲渡(MBL及びMDLによる自己株式取得)しました。
詳細につきましては、「第5 [経理の状況] 1[連結財務諸表等] [連結財務諸表注記] 39.後発事象」に記載のとおりであります。
5 【研究開発活動】
当社グループでは、長期経営構想キリングループ・ビジョン2027(KV2027)のイノベーションを実現する組織能力の一つとして「確かな価値を生み出す技術力」を掲げています。従来から強みを持つ発酵・バイオテクノロジー、パッケージング、エンジニアリングをより発展させています。当社グループの研究開発活動は、食領域、ヘルスサイエンス領域においては、キリンホールディングス㈱R&D本部の3研究所(キリン中央研究所、飲料未来研究所、パッケージイノベーション研究所)及び各事業会社の研究所で行っています。また、医領域においては、協和キリン㈱が中心に研究開発活動を行い、さらに医薬品にとどまらない価値提供も目指してキリンホールディングス㈱との協働取り組みを推進しています。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
国内ビール・スピリッツ事業は、キリンビール㈱が、キリンホールディングス㈱R&D本部の3研究所と連携しながら研究・技術開発並びに商品開発を実施しています。
ビールカテゴリーでは、国内で初めて※1「糖質ゼロ※2」を実現した「キリン一番搾り 糖質ゼロ」を中味・パッケージともに7月にリニューアルしました。「一番搾り製法※3」はそのままに、「糖質カット製法」に磨きをかけるとともに、麦芽を増量し、ホップ配合を見直すことで、一口目に感じるビールの飲みごたえを向上させ、後味はすっきりと澄んだ味わいを実現しました。
クラフトビールブランドである「SPRING VALLEY (スプリングバレー)」から「SPRING VALLEY シルクエール<白>」の缶商品を9月に新発売しました。「SPRING VALLEY シルクエール<白>」は、まだ飲用経験者の少ない白ビールであり、「SPRING VALLEY 豊潤<496>」や一般的なピルスナータイプのビールとの味わいも大きく異なることから、お客様により多様で新しいビールの魅力を体験いただける商品です。無濾過で仕上げたにごりのある液色で、小麦麦芽を使用することで実現したきめ細かなふわとろの泡、まろやかな口当たりが特長です。ニュージーランド産の希少ホップ「ネルソンソーヴィンホップ」を一部使用することで、華やかで心地よい香りを実現しました。
「キリン 氷結®」シリーズから、主力製品である「キリン 氷結® シチリア産レモン」「キリン 氷結® グレープフルーツ」「キリン 氷結® シャルドネスパークリング」の3品を中味・パッケージともに3月にリニューアルしました。また、「キリン 氷結® みかん」はより“爽快なおいしさ”を実現すべくブラッシュアップし、新たに「キリン 氷結® オレンジ」として4月に新発売しました。今回のリニューアルでは、果実のみずみずしくクリアな味わいを引き立てるとともに、雑味のないスッキリとした後口で、“爽快なおいしさ”をさらに進化させました。「氷結® シチリア産レモン」のリニューアルでは、レモンを凍結し、熱をかけずにエキス分を抽出する“凍結レモン製法”を新たに採用し、レモンのみずみずしくクリアな味わいを引き立てました。
キリンのおいしいお酒づくりの原点である“発酵”技術を取り入れたRTD※4「麒麟 発酵レモンサワー」ブランドを、中味・パッケージともに1月にリニューアルしました。今回、好調な「発酵レモンサワー」をより多くのお客様に手に取っていただくため、レモン果汁を発酵させる酵母を一から見直し、レモンの味を豊かに引き出す“発酵”過程に磨きをかけました。製法を見直したことで、現行の発酵レモン果汁に比べ香気成分(おいしさ成分)の量が約15%増加し、さらに豊かなレモンのおいしさで、飲みやすく飲み飽きない味わいを実現しました。
当事業に係る研究開発費は
※1 ビールで糖質ゼロを実現した国内で初めての缶商品(Mintel GNPDを用いた当社調べ)
※2 食品表示基準による。
※3 麦汁ろ過工程において最初に流れ出る一番搾り麦汁を使う製法
※4 Ready to Drinkの略。栓を開けてそのまま飲める低アルコール飲料
国内飲料事業は、キリンビバレッジ㈱が、キリンホールディングス㈱R&D本部の3研究所と連携しながら研究・技術開発並びに商品開発を実施しています。
キリンの独自素材「プラズマ乳酸菌」を配合した100mlペットボトル飲料の機能性表示食品「キリン iMUSE(イミューズ) 朝の免疫ケア」を、朝の“免疫ケア”という新しい習慣をより多くの方に広め、お客様の健康維持に貢献するため、3月より全国の量販、ドラッグストア、コンビニエンスストアチャネルで展開しました。
「キリン 生茶」を中味・容器・パッケージデザイン全てを刷新し、4月にリニューアルしました。これまで以上に「生」ならではのお茶のおいしさで“お客様のココロとカラダ”をすっきりと満たすことを目指して、生茶葉の自然なあまみを感じながらも、後味がすっきりとした「摘みたて生茶葉のようなあまみ、香り」が楽しめるおいしさへと進化させました。また、2021年より「生茶」ブランドを環境のCSVフラッグシップブランドとして、再生PET樹脂を100%使用したリサイクルペットボトル(「R100ペットボトル」)の導入拡大やラベルレス商品の発売を行ってきました。今回のリニューアルでも新容器採用を機にラベルの短尺化を推進しました。
「キリン 生茶 紙シール付ラベルレス」を6月に首都圏エリアの一部の量販店でテスト販売を開始しました。ペットボトル本体に巻くラベルを使用せず、必要表示内容が記載された小面積の紙製のタックシールを貼付した商品です。これにより、従来のラベル※1がなくても店頭で商品を1本ずつ販売することが可能となります。また、商品に貼付されるタックシールはこれまでプラスチック製が主流でしたが、今回、当社は株式会社フジシールとの取り組みにより紙製タックシールを新たに開発し、当商品に採用しました。
使用済みペットボトルを回収してペットボトルに再生する「ボトルtoボトル」の水平リサイクルを東武東上線で8月より開始しました。今回、当社と東武鉄道株式会社が協同し、回収した使用済みペットボトルを、確実にペットボトルへの再生に活用するリサイクルモデルを確立することで、「ボトルtoボトル」に向けた社会インフラの拡充を実現します。また、当スキームを適用することで、当社のリサイクルボックスの回収コストの低減と中間処理までのルートの効率化が可能となり、より低コストでの「ボトルtoボトル」が実現します。
当事業に係る研究開発費は
※1 ペットボトル本体に巻いているラベルのこと
オセアニア酒類事業では、LION PTY LTDで、オーストラリアおよびニュージーランドの市場環境の変化に応じた商品中味や容器開発を、キリンホールディングス㈱の持つ技術を活用しながら取り組みました。
当事業に係る研究開発費は
協和キリン㈱グループは、研究開発活動へ資源を継続的かつ積極的に投入しております。多様なモダリティを駆使して画期的新薬を生み出すプラットフォームを築く技術軸と、これまで培った疾患サイエンスを活かしつつ有効な治療法のない疾患に"only-one value drug"を提供し続ける疾患軸の両方を進化させ、競合優位性の高いパイプラインを構築し、Lifechangingな価値をもつ新薬をグローバルに展開することを目指しております。
主な後期開発品の各疾患領域における進捗は、次のとおりであります。(◆は当第4四半期連結会計期間の進捗)
腎領域
KHK7580(日本製品名:オルケディア)
・7月に中国において二次性副甲状腺機能亢進症を適応症とする販売承認申請を行いました。
◆11月に韓国において二次性副甲状腺機能亢進症を適応症とする販売承認申請を行いました。
KHK7791(一般名:テナパノル塩酸塩)
◆10月に日本において透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善を適応症とする製造販売承認申請を行いました。
がん領域
KW-0761(日本製品名:ポテリジオ、欧米製品名:Poteligeo)
◆10月に中国において菌状息肉腫およびセザリー症候群を適応症として承認されました。
KRN125(日本製品名:ジーラスタ)
・2月に日本において同種末梢血幹細胞移植のための造血幹細胞の末梢血中への動員を適応症として承認されました。
・7月に日本においてがん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制を適応症とする自動投与デバイスが承認されました。
◆12月に日本においてがん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制を適応症とする自動投与デバイス「ジーラスタ皮下注 3.6mg ボディーポッド」を発売しました。
ME-401(一般名:ザンデリシブ)
◆MEI Pharma社と共同で複数のグローバル試験を実施していましたが、米国食品医薬品局(FDA)から受領した最新のガイダンスを踏まえ、12月にB細胞悪性腫瘍を対象としたザンデリシブの日本を除くグローバル開発を中止することを決定しました。
免疫・アレルギー疾患領域
KHK4827(日本製品名:ルミセフ)
・9月に日本において掌蹠膿疱症を予定適応症とする承認事項一部変更承認申請を行いました。
KHK4083/AMG 451(一般名:rocatinlimab)
・12月にアトピー性皮膚炎を対象とした第Ⅲ相国際共同治験の症例登録を再開しました。
その他
AMG531(日本製品名:ロミプレート)
・1月に中国においてコルチコステロイドや免疫グロブリン等の前治療で効果不十分な成人慢性免疫性血小板減少症を適応症として承認されました。
◆11月に日本において再生不良性貧血を適応症とする承認事項一部変更承認申請を行いました。
KRN23(日本製品名:クリースビータ、欧米製品名:Crysvita)
・8月に欧州において腫瘍性骨軟化症を適応症として承認されました。
当事業に係る研究開発費は
メルシャン㈱は、キリンホールディングス㈱R&D本部の3研究所と連携しながらワインの研究・技術開発並びに商品開発を実施しています。
世界の造り手とメルシャンの造り手が日本のお客様のために共創する輸入ワインの新ブランド「Mercian Wines(メルシャン・ワインズ)」から、「メルシャン・ワインズ ブレンズ パーフェクト・ブレンド レッド/ホワイト」、「メルシャン・ワインズ ボルドー」を3月に全国で新発売しました。「Mercian Wines」は「もっと多くの日本のお客様に、気軽に・自由にワインを楽しんでいただくこと」を目指し、日本のお客様に合うワインを世界のワイナリーと共創して造った輸入ワインの新ブランドです。また当ブランドは、持続可能なワイン造りを目指し、「環境負荷軽減」、「産地との共存」、「人への負荷軽減」、「情報の見える化」の4つの項目に挑戦し、実行しているワイナリーとタッグを組んでおり、近年高まりを見せるエシカル消費ニーズにも応えます。
「Mercian Wines(メルシャン・ワインズ)」から、「メルシャン・ワインズ サニーサイド オーガニック レッド/ホワイト」を8月に全国で新発売しました。“お客様の日々のワイン生活水準を上げる”ことを目指し、手に取りやすい価格ながら高い品質で、日本のお客様の味覚に合うオーガニックワインとして発売しました。また、本商品は共創ワイナリーであるスペインの「ペニンシュラ」が設立した“エコエコプロジェクト”※1の取り組みに共感し、同プロジェクトとともに造りました。
「おいしい酸化防止剤無添加ワイン」シリーズの「おいしい酸化防止剤無添加ワイン 厳選素材 プレミアム ペットボトル」(赤・白)について、味わい・パッケージをリニューアルし、9月にリニューアルしました。今回のリニューアルでは、ワインに含まれる香りや味わいを安定化する特定の成分を高めるメルシャン独自の「贅沢芳醇製法」により、“コクや深みのある芳醇な香りや果実の味わい”をさらに進化させました。また、従来から5g軽量化した、メルシャン史上最軽量となるワイン用の720mlペットボトル※2を採用しました。お客様の持ち運びの利便性を高めながら年間で約83トン※3のPET樹脂削減と、約286トン※3のCO2排出量削減を見込んでいます。本ペットボトルの開発は、6月に公益社団法人 日本包装技術協会が主催する「第46回木下賞 包装技術賞」を受賞しました。
4月にフランス・ボルドー地方にて開催された「第46回 チャレンジ・インターナショナル・デュ・ヴァン(Challenge International du Vin)2022」において、「メルシャン・ワインズ ボルドー 2020」と「シャトー・メルシャン 北信シャルドネ 2019」の2品が金賞を受賞しました。また、4月にイギリス・ロンドンで開催された「International Wine Challenge(IWC/インターナショナル・ワイン・チャレンジ) 2022」にて、「シャトー・メルシャン 北信シャルドネ 2019」が日本ワイン最高得点を獲得し、「同 笛吹甲州グリ・ド・グリ 2020」「同 岩崎甲州 2020」と合わせた計3品が銀賞を受賞しました。同コンクールでは、「シャトー・メルシャン 玉諸甲州きいろ香 2020」をはじめとする3品が銅賞を受賞したほか、2022年3月に発売した新ブランド「Mercian Wines(メルシャン・ワインズ)」から「メルシャン・ワインズ ブレンズ パーフェクト・ブレンド レッド」「メルシャン・ワインズ ボルドー 2020」の2品のほか、「シャトー・メルシャン」ブランドから4品の計6品が奨励賞を受賞し、当社として計12商品が受賞しました。
※1 エコエコ(eco eco)はEcology(エコロジー)とEconomy(エコノミー)をかけ合わせた造語
※2 キリンホールディングス株式会社のパッケージイノベーション研究所が開発。特許出願中
※3 本商品の他、同社が製造・販売する720mlペットボトル商品の全てにこのペットボトル容器を採用した際の見込み。2021年販売実績に基づく。
協和発酵バイオ㈱は、「シチコリン」や「ヒトミルクオリゴ糖」をはじめとする、高収益型のプロダクトパイプラインを多数持つグローバル・スペシャリティ発酵メーカーを目指し、長年培ってきた最先端の発酵技術の研究開発に引き続き注力しております。
「シチコリン」については、協和発酵バイオ山口事業所での設備増設工事を竣工し、2023年末に稼働開始予定です。グローバルな安定供給体制を整えることにより、加齢に伴う脳機能低下予防、集中力やパフォーマンスの向上といったニーズに応えます。
協和発酵バイオが世界で初めて※1工業レベルでの生産システムを構築した「ヒトミルクオリゴ糖」については、THAI KYOWA BIOTECHNOLOGIES CO., LTD.での製造設備が2022年11月に竣工し、3品目の新規導入製造を完了しました。「ヒトミルクオリゴ糖」は母乳に含まれるオリゴ糖の総称で、ビフィズス菌などの善玉菌の栄養素となる物質、プレバイオティクス※2です。ヒトの消化酵素によって代謝されず大腸まで到達し、腸内細菌によって代謝され、様々な生理機能を発揮します。研究が進むにつれ、乳児の「栄養素」に加えて「機能性成分」としての働きが期待されています。2023年から粉ミルクメーカーなどへの販売を始めるとともに、キリングループ内での商品開発にも活用し、「ヒトミルクオリゴ糖」のニーズが高い世界各国への展開を通じて「健康」に関する社会課題の解決に貢献します。
※1 Tetsuo Endo et. al.,Appl. Microbiol. Biotechnol. 53, 257-261 (2000)
※2 人体に有益な微生物の選択的栄養源となり、それらの成長や増殖を促す物質
キリンホールディングス㈱は、ヘルスサイエンス事業の拡大に繋がる研究開発に引き続き注力しています。ヘルスサイエンス領域での研究開発活動をさらに加速するために、茨城県つくば市にある研究開発拠点を、湘南ヘルスイノベーションパーク(略称 湘南アイパーク、所在地 神奈川県藤沢市)に集約しました。湘南アイパークは、2018年4月に設立された製薬企業発のサイエンスパークであり、幅広い業種や規模の産官学が結集し、ヘルスイノベーションを加速する場となることを目指しています。
免疫領域の乳酸菌L. lactis strain Plasma(以下、プラズマ乳酸菌)※1の研究では、その発見と実用化が高く評価され、公益財団法人安藤スポーツ・食文化振興財団の「食創会 ~新しい食品の創造・開発を奨める会~」※2 (会長 小泉純一郎、元内閣総理大臣)が主催する2021年度 食創会「第26回安藤百福賞」※3において「優秀賞」を受賞しました。
また、プラズマ乳酸菌については、ベトナム国立栄養研究所と共同で、ベトナムの小学校1~3年生約1,000名を対象に、給食時に「プラズマ乳酸菌」を約1,000億個含む飲料、あるいは「プラズマ乳酸菌」を含まない飲料を8週間継続摂取する臨床試験を行いました。その結果、「プラズマ乳酸菌(約1,000億個)」を含む飲料を摂取したグループで、かぜ様症状※4(発熱・下痢など)の累積発生日数や、学校の累積欠席日数が有意に低下したことを確認しました。本臨床試験は、海外での児童に対するプラズマ乳酸菌を用いた初の臨床試験となります。小学校1~3年生のかぜ様症状である発熱・下痢などへの症状低減効果が見られたことは、プラズマ乳酸菌の継続摂取が児童に対して安全かつ簡便な感染症対策となりえることを示唆するものになりました。
さらに、国立感染症研究所のエイズ研究センターとの共同研究で、プラズマ乳酸菌の作用による新型コロナウイルスの増殖抑制効果を確認※5し、その作用メカニズムを解析しました。これは、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の令和4年度「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」に採択された研究です。
その他の免疫領域の研究では、「Lactobacillus paracasei KW3110(以下、KW乳酸菌)」においても、開発と事業化が高く評価され、公益社団法人日本農芸化学会の2022年度「農芸化学技術賞」を受賞しました。
脳領域の研究においては、脳や神経細胞にある細胞膜を維持する体内成分である「シチコリン」に関する研究成果について、キリン中央研究所の女性研究員が、公益社団法人日本農芸化学会2022年度「農芸化学女性企業研究者賞」を受賞しました。これは「シチコリン」が記憶力全般を改善し、特にエピソード記憶※6を改善する可能性があることを発表した研究成果が評価されたものです。なお、本研究は協和発酵バイオ㈱が製造した「シチコリン」を使用して行われ、成果を見いだしました※7。
また、㈱ファンケルと静岡県浜松市との三者で、2020年11月から浜松市民を対象とした「嗅覚機能・自律神経活動と気分・ストレスの関連性を探索する調査研究」を実施してきました。その結果、気分状態やストレス状態が悪い人ほど嗅覚感度が低下していること、ストレス抵抗性や自律神経活動が低い人ほど、特定の香りの同定能力※8が低下していることをヒト試験で確認しました。本研究は、キリン・ファンケル共同のヒト試験で初の成果となります。キリン・ファンケルは、嗅覚機能検査のサービス化や、気分・ストレス状態などをサポートする商品の開発を進めることで、お客様が健やかに過ごせる毎日を実現します。
その他の脳領域の研究では、独自の認知機能改善素材βラクトペプチド※9と熟成ホップの一連の研究成果とエビデンスの確からしさが認められ、国内の老化研究の中核的な学会である日本抗加齢医学会より2021年度の研究奨励賞を受賞しました。また、βラクトペプチドの1つであるGTWYペプチド※10が、脳の老化に重要な役割を果たすミトコンドリア※11機能を改善するメカニズムによって、脳神経を保護することを世界で初めて明らかにしました。この研究成果を日本農芸化学会2022年度大会で発表し、トピックス賞を受賞しました。
その他の事業及び全社(共通)に係る研究開発費は102億円です。
※1 国立研究開発法人理化学研究所バイオリソースセンターが所有するLactococcus lactis subsp. lactis JCM 5805のこと。
※2 食科学の振興ならびに新しい食品の創造開発に貢献する独創的な研究者、開発者およびベンチャー起業家を表彰する「安藤百福賞」表彰事業(後援:文部科学省、農林水産省) を1996年から実施しており、今年で26回目を迎える。
※3 新しい食品の開発と食科学の振興に貢献する独創的な基礎研究、食品開発およびベンチャー支援を目的に設けられた賞。食品や食文化の進歩に関して特に業績のあった個人に贈呈される。
※4 「上気道感染症」ならびに「消化器感染症」の症状を指す。
※5 ニュースリリース(2021年12月13日)キリンホールディングスと国立感染症研究所の共同研究により、「乳酸菌L.ラクティス プラズマ(プラズマ乳酸菌)」の作用によって新型コロナウイルスの複製増殖を低下させることを確認(試験管内試験)。
※6 年単位にわたり長期間保管される「長期記憶」の一つで、個人的な経験に基づく出来事とそれに付随する情報の両方が記憶されていることを特徴とする。
※7 本臨床試験で使われたシチコリンは、米国で食品用途として許可を受けたものです。これらの記述は、米国食品医薬品局および日本の厚生労働省による評価を受けたものではありません。日本では、シチコリンは食品や飲料への使用が認められていません。
※8 何の香りか分かる力。
※9 乳タンパク質に由来し、トリプトファンーチロシン(WY)のアミノ酸配列を含み認知機能改善作用を有するペプチドの総称。
※10 βラクトペプチドの主要な成分で、グリシン‐スレオニン‐トリプトファン‐チロシンの配列を持つペプチドの総称。
※11 細胞内小器官の一つで、細胞の生命維持に必須なエネルギー物質「アデノシン三リン酸(ATP)」を生成する。