① 業 績 全 般
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用情勢および所得環境の改善などにより、景気は緩やかな回復基調をたどりましたが、海外経済の不確実性の高まりなどを受け、先行きは不透明な状況で推移しました。
このような状況の中で、当社グループは、事業の根幹であるプロバイオティクスの啓発・普及活動を展開し、商品の優位性を訴求してきました。また、販売組織の拡充、新商品の研究開発や生産設備の更新に加え、国際事業や医薬品事業にも積極的に取り組み、業績の向上に努めました。
一方で、国際事業においては、円高による為替換算の影響を受けました。
これらの結果、当連結会計年度の連結売上高は378,307百万円(前期比3.1%減)となりました。利益面においては、営業利益は37,281百万円(前期比6.9%減)、経常利益は49,370百万円(前期比2.5%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は30,154百万円(前期比4.5%増)となりました。
②セグメント別の状況
・飲料および食品製造販売事業部門(日本)
日本国内における乳製品については、当社独自の「乳酸菌 シロタ株」などの科学性を広く訴求するため、エビデンスを活用した「価値普及」活動を積極的に展開しました。
宅配チャネルにおいては、昨年5月末に価格改定およびデザインリニューアルを実施した乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト400」および「ヤクルト400LT」について、既存のお客さまへの継続飲用の促進および新規のお客さまづくりに努めました。また、宅配組織の強化を図るため、ヤクルトレディの働く環境整備をすすめるとともに、積極的な採用活動を継続して展開しました。
店頭チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「Newヤクルト」および昨年5月にリニューアルした「Newヤクルトカロリーハーフ」を中心に、プロモーションスタッフを活用したお客さまへの「価値普及」活動を展開しました。さらに、これらの商品を対象に、昨年10月に「2016スワローズ応援感謝フェア」を、本年1月から2月にかけて「続けて実感! 乳酸菌 シロタ株 キャンペーン」を実施し、ブランドの活性化を図りました。また、セブン-イレブンの地域限定で発売していた「毎日飲むヤクルト」については、昨年5月に販売エリアを全国に拡大しました。加えて、昨年11月にはイトーヨーカドーなどのセブン&アイグループのスーパー各店でも販売を開始し、売り上げの増大を図りました。
商品別では、のむヨーグルト「ジョア」について、ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社とのライセンス契約に基づき、ディズニーキャラクターを用いたパッケージを引き続き展開しました。さらに、「ジョア ピーチ」「ジョア 贅沢オレンジ」などの期間限定アイテムを導入し、ブランドの活性化を図りました。
そのほか、当社の強みである「ヤクルト400」「ヤクルトレディ」および「研究開発・技術力」をPRするテレビCMを集中投下し、営業現場の活動を強力にバックアップしました。
このような取り組みを中心に販売強化に努めた結果、乳製品全体では前期を上回る実績となりました。
一方、ジュース・清涼飲料については、昨年5月に乳性飲料「ミルージュ」シリーズのリニューアルを実施しました。また、昨年6月に栄養ドリンク「タフマン」および「タフマンV」の東京ヤクルトスワローズデザインを導入し、7月にはテレビCMを中心とした広告施策を実施することにより、売り上げの増大を図りました。
しかしながら、健康機能性飲料の売り上げが伸び悩み、ジュース・清涼飲料全体では前期を下回る結果となりました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(日本)の連結売上高は204,130百万円(前期比2.6%増)となりました。
・飲料および食品製造販売事業部門(海外)
海外については、昭和39年3月の台湾ヤクルト株式会社の営業開始をかわきりに、現在28の事業所および1つの研究所を中心に、37の国と地域で主として乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」の製造、販売を行っており、平成29年3月の一日当たり平均販売本数は約2,866万本(前年同月差204万本増)となっています。
ア.米 州 地 域
米州地域においては、ブラジル、メキシコおよび米国で乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売しています。
ブラジルにおいては、消費者の健康意識向上による低カロリー製品ニーズの高まりに応えるため、昨年7月から乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト40ライト」の販売を開始しました。
米国においては、昨年7月から米国中西部を中心に大手流通チェーンで「ヤクルト」の販売を順次開始しました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(米州地域)の連結売上高は45,252百万円(前期比14.2%減)となりました。
イ.アジア・オセアニア地域
アジア・オセアニア地域においては、香港、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、インドおよび中国などで乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売しています。
中国においては、昨年6月から雲南省昆明市および広西チワン族自治区南寧市での販売を開始しました。さらに、太原支店、ハルビン支店および嘉興支店を設立し、本年1月から「ヤクルト」および「ヤクルトライト」の販売を開始しました。これらにより、中国の販売拠点は36か所となり、さらなる販売体制の強化を図っています。
中東の湾岸諸国においては、本年3月から、アラブ首長国連邦(UAE)、オマーン、バーレーン王国、カタールおよびクウェートで「ヤクルト」の輸入販売を開始しました。これにより、海外進出数については、37の国と地域に販売網が拡大しました。
ミャンマーにおいては、平成30年の「ヤクルト」の製造、販売開始に向けて準備を進めています。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(アジア・オセアニア地域)の連結売上高は93,364百万円(前期比3.9%減)となりました。
ウ.ヨーロッパ地域
ヨーロッパ地域においては、乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などをオランダで製造し、同国を含め、ベルギー、イギリス、ドイツ、オーストリアおよびイタリアなどで販売しています。
ヨーロッパのプロバイオティクス市場は依然として厳しい現地経済の影響を受けており、また競合他社との競争が続いています。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(ヨーロッパ地域)の連結売上高は7,800百万円(前期比9.5%減)となりました。
・医薬品製造販売事業部門
医薬品については、がんおよびその周辺領域に特化した当社製品の啓発活動や適正使用を推奨する活動を推進しました。
当社の主力製品である抗悪性腫瘍剤「エルプラット」は、平成27年に「胃がん」が効能・効果に加わったことから、既存の効能・効果に加え、胃がん領域での浸透を図るため、医療関係者を対象に講演会などを積極的に開催し、シェアの拡大に努めました。「エルプラット」の後発医薬品が上市されて以降、後発医薬品へ切り替える医療機関が増加しつつあるものの、先発医薬品を開発した当社の強みである情報提供力により、引き続き「エルプラット」を選択してもらうよう活動を展開しました。そのほか、代謝拮抗性抗悪性腫瘍剤「ゲムシタビンヤクルト」、骨吸収抑制剤「ゾレドロン酸ヤクルト」およびタキソイド系抗悪性腫瘍剤「ドセタキセルヤクルト」などの販路拡大に努め、売り上げの増大を図りました。
しかしながら、昨年4月の薬価改定により、当社製品の薬価が大きく引き下げられており、苦戦を強いられました。
一方、研究開発においては、4SC AG社から導入しているHDAC阻害剤「レスミノスタット」、エテルナゼンタリス社から導入しているPI3K/Akt阻害剤「ペリフォシン」および日産化学工業株式会社と共同開発を進めている血小板増加薬「YHI-1501」などの開発パイプラインの開発を推進しました。これらにより、今後、がんおよびその周辺領域において、さらなる強固な地位の確立を目指します。
これらの結果、医薬品製造販売事業部門の連結売上高は27,836百万円(前期比20.0%減)となりました。
・その他事業部門
その他事業部門には、化粧品の製造販売およびプロ野球興行などがあります。
化粧品については、当社が創業以来培ってきた乳酸菌研究から生まれたオリジナル保湿成分「S.E.(シロタエッセンス)」の「価値普及」に重点をおき、基礎化粧品の主力ブランドである「パラビオ」「リベシィ」および「リベシィホワイト」を中心としたカウンセリング型訪問販売活動を継続して展開しました。
具体的には、四半期ごとにテーマと重点商品を設定した営業施策の徹底により、お客さまづくりに取り組みました。
また、「パラビオ」において、昨年6月に「パラビオ ベースメイク」を、11月には「パラビオ ACクリーム サイ」を発売し、一昨年に発売したスキンケアシリーズとあわせてブランドのフルリニューアルを図ることで、お客さま満足度の向上と売り上げの増大に努めました。
これらにより、化粧品全体としては、ほぼ前期並みの実績となりました。
一方、プロ野球興行については、神宮球場において各種イベントやさまざまな情報発信を行うなど、積極的なファンサービスに取り組んだ結果、入場者数が増加しました。
これらの結果、その他事業部門の連結売上高は19,951百万円(前期比1.8%減)となりました。
なお、セグメント別売上高には消費税等は含まれていません。
(注)各セグメントの連結売上高には、セグメント間売上高が含まれています。
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ6,668百万円減少し、95,130百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、 税金等調整前当期純利益48,681百万円、減価償却費22,660百万円があった一方、法人税等の支払額が11,856百万円あったこと等により、59,998百万円(前期比2,150百万円の収入減)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に定期預金の預入や生産設備の増設等による固定資産の取得があったことにより△ 44,986百万円(前期比7,547百万円の支出増)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に借入の返済や配当金の支払い等があったことにより△ 13,749百万円(前期比1,275百万円の支出減)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
飲料および食品製造販売事業(日本) |
133,658 |
7.0 |
|
飲料および食品製造販売事業(米州) |
45,416 |
△13.6 |
|
飲料および食品製造販売事業(アジア・オセアニア) |
94,797 |
△2.9 |
|
飲料および食品製造販売事業(ヨーロッパ) |
7,798 |
△10.0 |
|
医薬品製造販売事業 |
20,057 |
△26.6 |
|
その他事業 |
9,556 |
12.5 |
|
合計 |
311,286 |
△2.6 |
(注) 1 金額は販売価格によっています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当社グループは、受注生産は行っていません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
|
飲料および食品製造販売事業(日本) |
186,532 |
3.9 |
|
飲料および食品製造販売事業(米州) |
45,252 |
△14.2 |
|
飲料および食品製造販売事業(アジア・オセアニア) |
93,364 |
△3.9 |
|
飲料および食品製造販売事業(ヨーロッパ) |
7,800 |
△9.5 |
|
医薬品製造販売事業 |
27,836 |
△20.0 |
|
その他事業 |
17,521 |
△0.4 |
|
合計 |
378,307 |
△3.1 |
(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の 相手先がないため記載を省略しています。
3 セグメント間の取引については相殺消去しています。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献しま
す」という企業理念に基づき、人々が健康とゆとりと生きがいを実感できる生活づくりに貢献し、地域社会ととも
に発展する企業を目指しています。
また、株主の皆さまやお客さまをはじめ、ひろく社会から信頼され、魅力のある企業となるよう、本業を基本と
した着実な事業展開に徹するとともに、透明性の高いガラス張りの経営をおし進めていきます。
(2) 長期的な経営戦略
《「Yakult Vision 2020」の策定と推進》
当社は、ヤクルトグループとしての成長を維持し、変化に対応していくための道標として、2011年度から2020年
度までの長期ビジョン「Yakult Vision 2020」を2011年1月に策定しました。10年後の会社のありたい姿および目
指す方向性を全従事者で共有するためのものであります。
主な内容は以下のとおりです。
長期ビジョン(2011年度~2020年度)
《定性目標》
・地球上の一人でも多くの方たちに「健腸長寿」を普及しよう!
・当社ならではの予防医学と治療医学の両輪で、「健康社会」を実現しよう!
・最高の技術をまごころと感謝でお届けし、お客さまや私たちの「満足と幸せ」を創出しよう!
《定量目標》(2020年度目標)
乳製品世界平均販売数量 3,650万本/日(日本1,050万本/日、海外2,600万本/日)
連結売上高 5,000億円
連結営業利益 500億円(営業利益率10%)
《実現のための戦略》
世界の市場を「導入」「成長」「成熟」「再構築」の各段階に分け、最適な戦略を展開することで、グループの
成長を継続していく考えです。成熟期にある国内事業については、次世代のグローバル事業を引っ張るための基盤
作りを行い、持続的成長へとつなげていきます。
また、10年間を3つの期間(フェーズ)に区分して、10年後の目標を達成する考えです。
3つの期間は、第1フェーズ(2011~2013年)、第2フェーズ(2014~2016年)、第3フェーズ(2017~2020
年)となっています。
(3) 中期経営計画
この度、2017年度から2020年度までの4年間を対象期間とする第3フェーズ計画(2017~2020年)を2017年5月
に策定しました。内容は以下のとおりです。
|
《第3フェーズ計画》 |
(2020年度) |
(第1フェーズ終了時) |
(第2フェーズ終了時) |
|
|
計 画 |
2013年度対差 |
2016年度対差 |
|
乳製品世界平均販売数量 |
4,350万本/日 |
+1,113万本/日 |
+613万本/日 |
|
連結売上高 |
4,540億円 |
+1,037億円 |
+757億円 |
|
連結営業利益 |
570億円 |
+ 250億円 |
+198億円 |
(4) 会社の対処すべき課題
今後の経済の見通しとしましては、海外景気の下振れの影響が懸念されるものの、雇用・所得環境の改善傾向が
続く中、政府の各種政策の効果等もあり景気が緩やかに回復していくことが期待されます。
このような社会経済環境のもと、人々の健康増進に役立つプロバイオティクス分野の事業の重要性は、ますます
高まるものと思われます。
当社グループは、この分野のリーディングカンパニーとして、引き続き商品の優位性・安全性を訴求するととも
に、多様化したお客さまのニーズにお応えする機能性豊かな新商品の研究開発に取り組んでいきます。
そして、ひとりでも多くのお客さまに質の高い商品とサービスをお届けできますよう、当社グループ独自の宅配
システムの強化拡大を図りながら、店頭流通への対応強化、医薬品事業の拡大および化粧品事業の基盤強化ととも
に、積極的な国際展開を推進していきます。
加えて、引き続きコンプライアンス経営を推進するとともに、企業の社会的責任を果たしつつ、経営の効率化と
業績の向上に鋭意努力していきます。
また、企業理念である「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献
します」の実現に向けて、コーポレートスローガン「人も地球も健康に」のもと、地球環境全体の健康を視野に入
れ、すべての事業活動を通じて、良き企業市民として歩んでいきます。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業のグローバル化に伴うリスク
当社グループは、世界各国で事業を展開し、海外において製造および販売活動を行っています。各事業所の堅調さを受けて年々、当社グループの業績における海外の比重は高くなっています。
しかしながら、連結財務諸表の作成において為替変動の影響を受ける場合があること、また、海外の関連地域には政治的・経済的に不安定な状態にある国も含まれることから、様々な手段を講じてはいても、これらのリスクを完全に回避できない場合があります。さらに、社会的背景の異なる海外においては、予期しない法律または諸規制の制定・改廃などにより事業活動に問題が生じる恐れがあります。これらの場合、当社の業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(2) 商品の安全性に関するリスク
安全性や品質管理に対する消費者の関心が一層高まっているなか、安心、安全な商品を提供していくことが強く求められています。当社グループの取扱商品は、食品衛生法、医薬品医療機器等法をはじめとする法的諸規制の適用を受け、より一層の安全性、品質管理が求められていると認識しています。当社グループにおいても、安全な商品提供を第一と考え、品質管理体制の強化を図っています。
しかし、商品に関し不測の事態が発生した場合、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
このため、商品の安全性、品質の向上について万全を期して対応していきます。
(3) 原材料価格が抱えるリスク
当社グループの主要商品は、乳製品乳酸菌飲料であります。その原材料の購入価格が、市場の需給関係の状況などにより高騰した場合、また、原油価格が高騰したり高止まりが続く場合には、容器等包装資材を含めた製造経費、さらには運送費へも影響を与えます。このような原価高の影響をコスト削減努力で吸収できず、また市場の状況により販売価格の改定もできない場合には、当社グループの財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(4) 環境問題等に関するリスク
当社グループは、環境に配慮した企業活動を行っており、関連する各種環境法令を遵守しています。しかしなが
ら、このような配慮・対応にも関わらず、環境トラブルの発生や、関係法令の改正等によって対応コストが増加し
た場合には、当社グループの信用および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(5) 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、顧客情報やその他の機密情報の流出を防ぐため、システム管理や社員教育等によりセキュリ
ティ対策を実施しています。しかしながら、盗難や外部からのサイバー攻撃などの予期し得ない事態により、これ
らの情報が流出した場合、当社グループの信頼性が低下するほか、損害賠償等の多額の費用負担が発生し、その結
果、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(6) 天候・気候変動、災害等のリスク
当社グループは、世界各地で事業を展開しており、天候不順などの異常気象や地震などの大規模な自然災害が発
生した場合には、直接・間接的に当社グループの事業活動が制限され、業績および財政状態に多大な影響を及ぼす
可能性があります。
なお、上記以外にも、さまざまなリスクがあり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。当社グループでは、これらのリスクの存在を認識したうえで、発生の回避および速やかな対応に努める所存です。
該当事項はありません。
当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした食品・医薬品・化粧品などの研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。
当連結会計年度の研究開発費の総額は10,549百万円で、セグメント情報にかかわる研究開発活動の概要は、次のとおりです。
基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学などの多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、食品・医薬品・化粧品などへの利用を目指した機能性素材の開発に積極的に取り組んでいます。
当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。
① 帝京大学との共同研究で、育児粉乳で哺育される乳児がプレバイオティクスの一種であるガラクトオリゴ糖を継続的に摂取することにより便中のビフィズス菌の占有率が増加し、腸内フローラが母乳栄養児型へ変化することを明らかにしました。本研究により、ガラクトオリゴ糖の継続摂取が育児粉乳で哺育される乳児のおなかの健康に役立つことが期待されます。本研究成果は、学術誌「Beneficial Microbes」に掲載されました。
② 国立精神・神経医療研究センター神経研究所との共同研究で、大うつ病性障害患者と健常者の腸内細菌について、ビフィズス菌と乳酸桿菌の菌数を比較した結果、うつ病患者で、ビフィズス菌の菌数が有意に少ないこと、さらにビフィズス菌・乳酸桿菌ともに一定の菌数以下である人が有意に多いことを明らかにしました。本研究により、腸内の善玉菌が少ないとうつ病リスクが高まることが示唆されました。本研究成果は、学術誌「Journal of Affective Disorders」に掲載されました。
③ 東京工業大学および帝京大学との共同研究で、母乳オリゴ糖主成分であるフコシルラクトース(以下、FL)を利用できるビフィズス菌が定着した乳児は、FLを利用できないビフィズス菌が定着している乳児に比べて、便中のビフィズス菌の占有率や酢酸濃度が高く、大腸菌群の占有率やpHが低いことを確認しました。また、ビフィズス菌のFLの利用には菌体内にFLを取り込むFL輸送体が重要であることを見出しました。これらの結果から、母乳中のFLの存在と一部のビフィズス菌が有するFL輸送体は、乳児とビフィズス菌が共生関係を構築するための重要な因子であることが示唆されました。本研究により、乳児の腸内ビフィズス菌の定着機構が明らかとなり、今後、乳児の腸内フローラを標的とした疾病の予防法や新たなプロバイオティクスの開発につながることが期待されます。本研究成果は、学術誌「Nature Communications」に掲載されました。
④ 順天堂大学との共同研究で、小児外科疾患患児において周術期(手術の術前・術中・術後を含めた期間)に菌血症が高率に発症し得ることを世界で初めて明らかにしました。さらに、「B.ブレーベ・ヤクルト株(ビフィズス菌)」を継続的に摂取することで、周術期感染症の発症が抑えられること、腸内フローラや腸内環境の乱れが改善されることおよび血液からの細菌の検出が顕著に抑制(菌血症予防)されることを明らかにしました。本研究により、ビフィズス菌の継続摂取が小児外科疾患患児の周術期管理に役立つことが期待されます。本研究成果は、学術誌「Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition」に掲載されました。
⑤ NPO 法人日本健康増進支援機構との共同研究で、通年性アレルギー性鼻炎症状を有する被験者を対象とした「L.プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」を含む発酵果汁飲料の飲用試験を実施した結果、同症状を改善する効果が確認されました。これにより、本発酵果汁飲料は、これまでの花粉症およびアトピー性皮膚炎の症状改善といった研究成果に加えて、通年性アレルギー性鼻炎の症状も改善することを明らかにしました。本研究成果は、学術誌「Beneficial Microbes」に掲載されました。
⑥ 東京都健康長寿医療センター研究所との共同研究で、高齢者を対象に「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の摂取頻度と高血圧発症リスクの関係を調査した結果、「L.カゼイ・シロタ株」を含む乳製品の週3回以上の習慣的摂取は、高血圧発症リスクの低下に繋がることが示唆されました。本研究成果は、学術誌「Beneficial Microbes」に掲載されました。
⑦ 当社の分析試験研究所では、分析結果の信頼性を確保するため、精度管理手法の導入と組織体制の整備を行うとともに、試験所の技術能力に関する国際規格であるISO/IEC17025の認定取得に向けた作業を進めてきました。その結果、昨年4月に原料水分析の一項目である「上水中の揮発性有機化合物(VOC)試験」でISO/IEC17025認定を取得しました。これにより、国際的に通用する信頼性の高い分析試験結果を提供することが可能となりました。
今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、生活習慣病予防をターゲットとした次世代プロバイオティクスや新規機能性素材の研究開発に重点的に力を注いでいきます。
飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダム Y株」などを利用した食品や、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。
また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品および清涼飲料水のラインアップの充実を図っています。
当連結会計年度の成果は次のとおりです。
ア. カロリーと甘さを抑えた「Newヤクルト カロリーハーフ」について、すっきりとした風味はそのままに、従来品よりも酸味を抑えて、よりおいしく飲みやすい風味に変更し、昨年5月に導入しました。
イ. 「ジョア」のシリーズ品「ジョア マスカット」について、「鉄」を1日に必要な摂取推奨量である6.8mgに増量し、昨年9月に導入しました。さらに、期間限定アイテムとして、「ジョア ピーチ」を昨年6月に、「ジョア 贅沢オレンジ」を9月に、「ジョア 手摘みりんご」を本年2月に、「ジョア ローズ&カシス」を3月に導入しました。
ウ. ハードタイプヨーグルト「ソフール」のシリーズ品「ソフール元気ヨーグルト」の「鉄」を1.0mgから4.0mgに、「カルシウム」を68mgから100mgにそれぞれ増量し、昨年10月に導入しました。さらに、期間限定アイテムとして、ゆずとレモンの爽やかな果汁感とヨーグルトの風味がマッチした「ソフール ゆず&レモン」を昨年10月に導入しました。
ア. ミルクとコーヒーをバランス良くブレンドした、甘くてまろやかな味わいのコーヒー入り清涼飲料「カフェ・オ・レ」を昨年9月に導入しました。
イ. 果汁入り飲料「さっぱり」シリーズの新商品として、パインアップル果汁入り炭酸飲料「さっぱりパイン Sparkling(スパークリング)」を本年3月に導入しました。
ブラジルヤクルト商工株式会社が昨年7月に導入した、「ヤクルト40」と比較してカロリーを41%低減した「ヤクルト40ライト」の技術支援を行いました。
当分野の研究開発費は4,672百万円です。
医薬品研究開発分野においては、抗がん剤を中心とした薬剤の研究開発を進めています。
ドイツの4SC AG社から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」については、肝細胞がんを対象とした第Ⅱ相臨床試験が終了し、現在、グローバル第Ⅲ相臨床試験の実施を検討中です。また、胆道がんおよび膵がんを対象とした第Ⅰ相臨床試験を実施しています。
日産化学工業株式会社から導入した血小板増加薬「YHI-1501」については、現在、日本人健常人を対象とした第Ⅰ相臨床試験を実施中です。
「結腸・直腸がん」「胃がん」などの標準的治療薬として広く用いられている抗悪性腫瘍剤「エルプラット」(一般名:オキサリプラチン)については、「進行・再発胃がん」の用法・用量の追加を目的とした第Ⅲ相臨床試験を大鵬薬品工業株式会社と共同で実施中です。
ドイツのエテルナゼンタリス社から導入したPI3K/Akt阻害剤「ペリフォシン」については、小児神経芽腫を対象とした第Ⅰ相臨床試験が終了しました。
基礎創薬研究分野では、抗がん剤およびその周辺領域でのシーズを確保するための研究を引き続き実施しています。
当分野の研究開発費は3,486百万円です。
その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまのニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌はっ酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。
高機能化粧品「パラビオ」シリーズについては、乳酸菌はっ酵技術を集結することで、エイジングケアを可能にした「パラビオ ベースメイク(3品)」のリニューアルを昨年6月に実施しました。さらに、代表的な肌悩みである「シミ」「シワ」「たるみ」を多面的に分析・検証し、科学的根拠に基づき開発された高機能クリーム「パラビオ ACクリーム サイ」のリニューアルを昨年11月に実施しました。
仕上化粧品「グランティア EX」シリーズについては、流行や季節に応じた新色を開発し、口紅やアイシャドウなどのポイントメイクを導入することによりラインアップの充実を図りました。
当分野の研究開発費は699百万円です。
当連結会計年度の自己資本比率は58.6%と前連結会計年度の57.5%から1.1ポイント増加しました。
非支配株主持分を含めた純資産額は、前期比3.1%、114億円増加しました。主な要因は親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加した一方、円高の影響から為替換算調整勘定が減少したためです。
また、当連結会計年度の自己資本利益率(ROE)は8.9%と前連結会計年度の8.8%から0.1ポイント増加し、総資産経常利益率(ROA)は8.5%と前連結会計年度の8.8%から0.3ポイント減少しました。
有利子負債の短期借入金については、主に当社の資金需要が増したため56億円増加しました。また、1年内返済予定を含む長期借入金については、返済により88億円減少しました。この結果、有利子負債依存度(有利子負債÷総資産)は19.1%と前連結会計年度の20.2%から1.1ポイント減少しています。また、有利子負債対自己資本比率は32.5%と前連結会計年度の35.1%から2.6ポイント減少しています。
なお、財政状態は依然として堅固な状態が続いています。
売上高は前連結会計年度から121億円減収(前期比3.1%減)の3,783億円となりました。飲料および食品製造販売事業部門(日本)では、51億円の増収(前期比2.6%増)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)では、120億円の減収(同7.6%減)、医薬品製造販売事業部門では、69億円の減収(同20.0%減)、その他事業部門では、3億円の減収(同1.8%減)となりました。事業部門別の調整額控除前の売上高構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が51.2%(前連結会計年度は48.2%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が36.8%(同38.5%)、医薬品製造販売事業部門が7.0%(同8.4%)、その他事業部門が5.0%(同4.9%)となっています。飲料および食品製造販売事業部門(日本)が増収となった主な要因は、乳製品の積極的なマーケティング投資による販売本数の増加および乳製品の価格改定効果があったためです。また、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が減収となった主な要因は、中国およびインドネシアで順調に販売実績が伸びた一方で、為替の円高影響が大きかったためです。医薬品製造販売事業部門が減収となった主な要因は、薬価改定の影響があったためです。
一方、日本からの輸出を含めた海外売上高は前連結会計年度から7.4%減の1,487億円となり、海外売上高比率は39.3%と前連結会計年度の41.1%から1.8ポイント減少しました。
なお、各事業部門の状況につきましては、「1 業績等の概要 (1) 業績」に記載しています。
売上原価は1,639億円となり、前連結会計年度から4.5%減少しています。売上総利益は2,143億円となり、前連結会計年度に比べ2.0%減となりました。売上高売上総利益率は56.7%と前連結会計年度の56.0%から0.7ポイント増加しました。
販売費及び一般管理費は1,770億円と前連結会計年度から16億円減少しました。主な要因は、飲料および食品製造販売事業部門(国内)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)ともに積極的な販売活動を行ったものの円高による為替のマイナス影響が大きかったためです。
この結果、営業利益は372億円と前連結会計年度から27億円の減益(前期比6.9%減)となりました。事業部門別の調整額控除前の営業利益構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が25.7%(前連結会計年度は16.8%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が67.2%(同71.2%)、医薬品製造販売事業部門が5.4%(同9.5%)、その他事業部門が1.7%(同2.5%)となっており、増益であった飲料および食品製造販売事業部門(国内)の構成比が増加しました。
営業外収益は133億円と前連結会計年度から9億円増加しました。主な要因は、持分法による投資利益が増加し
たためです。
営業外費用は12億円と前連結会計年度から5億円減少しました。
特別利益は2億円と前連結会計年度から大きな変動はありませんでした。
特別損失は9億円と前連結会計年度から4億円減少しました。
税金費用は前連結会計年度から13億円減少しました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は301億円と前連結会計年度から13億円の増益(前期比4.5%増)となりました。売上高当期純利益率は8.0%と前連結会計年度の7.4%から0.6ポイント増加しました。
為替レートの変動による影響は、当連結会計年度の売上高では254億円の減収、営業利益では68億円の減益と試算されました。ただし、この試算は、在外子会社の現地通貨建ての売上高、売上原価、販売費及び一般管理費に、前連結会計年度の各在外子会社における期中平均レートを適用して算出したものであり、為替変動に対応した販売価格等の影響は考慮していません。
キャッシュ・フローの状況につきましては、「1 業績等の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載しています。