第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 (1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します」という企業理念に基づき、人々が健康とゆとりと生きがいを実感できる生活づくりに貢献し、地域社会とともに発展する企業を目指しています。

また、株主の皆さまやお客さまをはじめ、ひろく社会から信頼され、魅力のある企業となるよう、本業を基本とした着実な事業展開に徹するとともに、透明性の高いガラス張りの経営をおし進めていきます。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループが判断したものです。

 

 (2) 長期的な経営戦略

  《「Yakult Vision 2020」の策定と推進》

当社は、ヤクルトグループとしての成長を維持し、変化に対応していくための道標として、2011年度から2020年度までの長期ビジョン「Yakult Vision 2020」を2011年1月に策定しました。10年後の会社のありたい姿および目指す方向性を全従事者で共有するためのものであります。

主な内容は以下のとおりです。

 

  長期ビジョン(2011年度~2020年度)

  《定性目標》

   ・地球上の一人でも多くの方たちに「健腸長寿」を普及しよう!

   ・当社ならではの予防医学と治療医学の両輪で、「健康社会」を実現しよう!

   ・最高の技術をまごころと感謝でお届けし、お客さまや私たちの「満足と幸せ」を創出しよう!

 

  《実現のための戦略》

世界の市場を「導入」「成長」「成熟」「再構築」の各段階に分け、最適な戦略を展開することで、グループの成長を継続していく考えです。成熟期にある国内事業については、次世代のグローバル事業を引っ張るための基盤作りを行い、持続的成長へとつなげていきます。

 

また、10年間を3つの期間(フェーズ)に区分して、10年後の目標を達成する考えです。

3つの期間は、第1フェーズ(2011~2013年)、第2フェーズ(2014~2016年)、第3フェーズ(2017~2020年)となっています。

 

 (3) 中期経営計画

2017年度から2020年度までの4年間を対象期間とする第3フェーズ計画(2017~2020年)を2017年5月に策定しました。内容は以下のとおりです。

 

 《第3フェーズ計画》

    (2020年度)

 (第1フェーズ終了時)

 (第2フェーズ終了時)

     計 画  

   2013年度対差

   2016年度対差

 乳製品世界平均販売数量

   4,350万本/日

  +1,113万本/日

    +613万本/日

 連結売上高

   4,540億円

  +1,037億円

    +757億円

 連結営業利益

    570億円

  + 250億円

    +198億円

 

 

 (4) 会社の対処すべき課題

当社グループをとりまく環境は、国内の少子高齢化や人口減少による市場の伸び悩み、お客さまのニーズの多様化・健康志向や品質に対する意識の高まりなど、刻々と変化を続けています。

このような環境のもと、当社グループは、プロバイオティクス分野のリーディングカンパニーとして、長期ビジョン「Yakult Vision 2020」に立脚し、飲料・食品、医薬品および化粧品を中核とした事業ならびに積極的な国際展開の推進等をとおして、グループの強みである「研究開発・技術力」と「当社グループ独自の宅配システム」を活かし、お客さまへの価値提供により健康社会を実現することで、社会とともに持続的な成長を目指します。

 

各事業部門の対処すべき課題は次のとおりであります。

<飲料および食品製造販売事業部門(日本)>

お客さまの健康意識が高まる中、「腸」の健康の大切さを訴求していきます。また、競争の激しい市場の中で、当社独自の乳酸菌の有用性とエビデンスを伝え、お客さまにその効果を体感していただくことで、当社の優位性を確保していきます。

宅配チャネルにおいては、激しさを増す人材獲得競争の中、ヤクルトレディの働く環境の整備および仕事の魅力を高め、宅配組織を強化することで、お客さまへのサービスレベルのさらなる向上を図ります。

店頭チャネルにおいては、他社プロバイオティクス商品との競争が激化している中、当社独自の「乳酸菌 シロタ株」および「ビフィズス菌 BY株」の価値向上に向けた取り組みを引き続き推進するとともに、商品の拡充を図り、プロバイオティクス市場における優位性を高めていきます。

 

<飲料および食品製造販売事業部門(海外)>

プロバイオティクスに対する注目が高まる中、既進出国と地域の未配エリアへの市場拡大、販売エリアでの市場深耕に取り組むとともに、宅配体制の強化と人材の確保・育成をすすめていきます。

また、各国の法的規制および課題についても対応していきます。

これらにより、さらなる事業の拡大および収益性の向上を図っていきます。

 

<医薬品製造販売事業部門>

増大する医療費の抑制や後発医薬品の使用促進など、医療制度改革を中心として、国内市場環境が大きく変化し続けていく中、最新の情報提供活動およびこれまで築き上げてきた医療関係者との信頼関係を基盤とし、当社の存在感をさらに高め、引き続き当社製品を選択してもらうよう努めていきます。当社の後発医薬品については、引き続き新規導入を推進し、販売品目の拡充に取り組んでいきます。また、当社MR組織を活用した他社との共同プロモーション活動についても積極的に取り組んでいきます。

研究開発においては、「レスミノスタット」や「デュベリシブ」などの新薬開発の推進を図るとともに、迅速な導入評価を実施し、開発パイプラインの充実を図っていきます。また、がんおよびその周辺領域における新たな後発医薬品の導入も積極的に展開していきます。

 

<その他事業部門>

化粧品につきましては、同業他社との競争激化をはじめ、他業界からの新規参入など競争環境がますます厳しくなっていく中、販売強化策の実施や、自社商品とサービスの価値を高めていくことで、事業の基盤強化を推進していきます。

 

当社グループは、引き続きコンプライアンス経営を推進するとともに、企業の社会的責任や株主の皆さまへの説明責任を果たしつつ、経営の効率化と業績の向上に鋭意努力してまいります。

また、企業理念である「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します」の実現に向けて、コーポレートスローガン「人も地球も健康に」のもと、地球環境全体の健康を視野に入れ、すべての事業活動を通じて、良き企業市民として歩んでまいります。

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) ヤクルト類への依存および競争環境等に関するリスク

当社グループの主要商品は、「乳酸菌 シロタ株」を使用したヤクルト類であり、その売上高は、当社グループ全体の売上高の大部分を占めています。当社グループは、ヤクルト類の販売をさらに増加させ、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献することを目指しており、ヤクルト類の売上比率が高い海外事業の拡大に伴って、今後、ヤクルト類に対する依存度は、さらに高まる可能性があります。

当社グループは、研究開発投資を行い、付加価値の高い商品の開発に努めておりますが、当社グループの新商品が消費者に受け入れられ、また競合製品との比較で十分な優位性を獲得し、維持できるかについては不確実性が伴います。プロバイオティクスを使用した飲料を含む飲料および食品業界は、熾烈な競争にさらされており、当社グループの乳製品よりも優れた健康上の効果があるとされる、もしくはより低価格な競合乳製品の登場による更なる競争の激化、またはプロバイオティクスの安全性や効用に対する消費者の認識や嗜好の変化といった、ヤクルト類の販売に悪影響を及ぼす事象が発生した場合、ヤクルト類への依存度の高さから、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業のグローバル化に伴うリスク

当社グループは、世界各国で事業を展開し、海外において製造および販売活動を行っています。各事業所の堅調さを受けて年々、当社グループの業績における海外とりわけアジアの新興国市場の比重は高くなっており、国内は人口減少に伴い市場が縮小する可能性があることから、この傾向は今後も続くことが見込まれます。

海外においては国ごとに異なる文化や競争環境が存在します。また、当社グループが事業を展開する国・地域(今後当社グループが進出する国・地域を含む。)には、政治的・経済的な変化が当社グループの事業環境に及ぼす影響が大きな国・地域も含まれており、様々な手段を講じてはいても、これらの外部環境の変化等の結果、当社グループが成長機会を捉えられず、また投資に対して期待される成果を得ることができない場合があります。さらに、社会的背景または法規制の異なる海外においては、国内に比べて契約上の権利行使や知的財産権の保護が困難となり、または予期しない法律もしくは諸規制の制定・改廃などにより当社グループの事業活動に問題が生じる恐れがあります。例えば、欧州ではプロバイオティクスに関する健康強調表示(ヘルスクレーム)が認められておらず、当社グループの商品の宣伝方法の制約となっていますが、かかる規制が他の国でも導入されない保証はありません。これらの場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

当社グループは、中国をはじめとして、今後も海外における事業展開を拡大する計画であり、工場や販売拠点の新設および既存の設備の増強のための多額の投資を予定していますが、上記をはじめとする要因等により当社グループの想定通りの成長を実現できず、投資に見合った収益を得られない可能性があり、結果として当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 商品の安全性に関するリスク

安全性や品質管理に対する消費者の関心が一層高まっているなか、国内外を問わず、安全、安心な商品を提供していくことが強く求められています。当社グループの取扱商品は、食品衛生法、医薬品医療機器等法その他国内外の法令や諸規制の適用を受けており、より一層の安全性、品質管理が求められていると認識しています。当社グループにおいても、安全な商品提供を第一と考え、品質管理体制の強化を図っています。

しかし、商品の安全性等に関し不測の事態が発生した場合、商品の製造または販売を停止せざるを得ない場合や、商品を回収せざるを得ない場合があり、そのための費用が生じるだけでなく、当社グループの商品の評価やブランドイメージが損なわれ、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、現実の問題か根拠のない風評であるかを問わず、また当社グループの商品であるか他社の商品であるかを問わず、プロバイオティクスを使用した乳製品の安全性や健康上の効果に対する消費者の信頼が低下するような事態が発生した場合には、当社グループの商品の販売に影響を及ぼす可能性があり、結果として当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 (4) 当社グループの販売体制に関するリスク

当社グループの飲料および食品製造販売事業における販売チャネルは、当社グループ独自のヤクルトレディによる宅配チャネルと、店頭チャネルとに分けられます。プロバイオティクスの普及のために宅配チャネルの果たす役割は大きく、ヤクルトレディの働く環境整備に努め、ヤクルトレディのネットワークを拡充すること、またヤクルトレディの教育訓練を充実させることは、国内外を問わず、当社グループの販売活動において極めて重要であると考えています。

飲料および食品製造販売事業(日本)における商品の販売の大部分は、宅配チャネル、店頭チャネルともに全国の販売会社によって行われており、ヤクルトレディの大部分はそれぞれの販売会社から業務を受託しています。販売会社(なお、当社の取締役が代表権を有する販売会社が存在する。)の大部分は、当社の子会社または関連会社ではなく、当社との間に資本関係はありません。当社と販売会社、さらに販売会社とヤクルトレディの良好な関係が維持できない場合、またはヤクルトレディを含む適切な人材を確保できない場合には、当社グループの商品の販売に著しい支障をきたし、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。

また、販売会社が当社グループの商品の販売を停止した場合または販売ができなくなった場合には、当社グループの商品の販売に著しい支障をきたし、または販売会社の支援や体制整備に多額の費用や損失を要するなど、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。

飲料および食品製造販売事業(海外)においては、原則として当社の子会社が製造から販売まで行っておりますが、一部の国・地域においては当社の関連会社が事業を行っております。また、国・地域ごとに宅配チャネルの占める重要性は大きく異なりますが、タイ、韓国、インドネシア、メキシコといった国々では、当社グループはヤクルトレディによる宅配チャネルに大きく依存しています。海外においても、当社グループが、現地の関連会社を適切に管理できない場合、またはヤクルトレディとの良好な関係を維持できない場合や海外事業の深耕・拡大に伴い必要となるヤクルトレディを含む適切な人材を確保できない場合等には、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。

店頭チャネルにおいては、小売店でのプライベート・ブランド商品を含む他社製品との競争や、イー・コマースなどの新たな販売手法との競争が、当社グループの商品の販売に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 (5) 原材料価格、人件費などの費用の増加に関するリスク

当社グループの商品、特に主要商品である乳製品乳酸菌飲料の原材料の購入価格が、市場の需給関係の状況や為替変動などにより高騰した場合、または原油価格が高騰しもしくは高止まりが続く場合には、容器等包装資材を含めた製造経費、さらには運送費へも影響を与えます。また、日本国内では、労働人口の減少や労働環境の改善に向けた動き等により、人件費などの費用が増加し、海外では、特に新興国市場において、現時点では比較的安価な人件費が、経済成長と共に上昇する可能性があります。さらに、人件費の高騰を受けて、ヤクルトレディに対して支払う手数料が増加した場合には、当社グループが負担する費用が増加し、または当社から販売会社に対する商品の販売価格に影響を及ぼす可能性があります。このような原材料価格や人件費などの費用の上昇の直接的または間接的な影響をコスト削減努力で吸収できず、また市場の状況により販売価格の改定もできない場合には、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 (6) 医薬品事業に関するリスク

① 特定の製品への依存に関するリスク

当社の医薬品事業は、抗悪性腫瘍剤「エルプラット」の売上に大きく依存していますが、「エルプラット」の売上は、後発医薬品の上市後減少しております。その結果、当社グループの医薬品事業の売上高は近年減少しており、今後も同様の傾向が続く可能性があります。

② 新薬の開発に関するリスク

当社グループは、新薬の上市を目指して研究開発活動に努めていますが、医薬品は、所轄官庁の定めた有効性と安全性に関する厳格な審査により承認されてはじめて上市可能となります。

医薬品の研究開発には多額の費用がかかりますが、その途上において、承認を受けるために必要な有効性または安全性を充たしていないと判断された場合には、研究開発を途中で断念することがあり、その場合には投下した費用を回収できない可能性があります。また、承認を受けるために追加の試験が必要となる結果、多額の追加費用が発生する可能性、または新薬の上市が遅延する可能性があります。さらに、新薬の上市に至ったとしても、投下した費用に見合った売上を達成できない可能性があります。

 

③ 特許権満了等に伴うリスク

当社グループの先発医薬品に関する特許権が満了した場合、低価格の後発医薬品が市場に参入し、当社の先発医薬品の販売に悪影響を及ぼす可能性があります。日本政府は後発医薬品の使用促進を積極的に進めており、今後、後発医薬品との競争は激化する可能性があります。

当社グループは後発医薬品の製造販売も行っておりますが、後発医薬品市場は、参入障壁が比較的低く競争が激しいため、収益性が低下する可能性があります。

④ 薬価引下げに伴うリスク

日本の医療保険制度における薬価は定期的に引き下げられており、当社の医薬品の価格も継続的に低下しています。薬価改定は2018年4月に実施されて以降、毎年薬価の改定が行われることが見込まれています。

 

 (7) 「ヤクルト」ブランドの毀損に関するリスク

当社グループにとって、そのブランドイメージを維持することは極めて重要です。「ヤクルト」は社名と主力品名に共通するブランドであり、ヤクルト類をはじめ、ヤクルトの名を冠する商品のとりわけ品質・安全性に関連する問題は、当社グループおよびその商品のブランドイメージに多大な影響を及ぼす可能性があります。また、国内の販売会社やヤクルトレディといった「ヤクルト」の名称を使用する関係者に不祥事があった場合にも、当社グループのブランドイメージに多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 (8) 知的財産権に関するリスク

当社グループの製品や技術は、特許その他の知的財産権によって一定期間保護されていますが、それらは第三者によって侵害される可能性があり、それによって当社グループの売上が減少する可能性があります。また、一部の国では、当社グループの製品の容器と類似の商標が競合他社によって既に登録されており、これにより、当該国における製品の販売に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、製品の回収、生産および販売の終了、損害賠償またはロイヤルティの支払いなどを要求される可能性があります。

 

 (9) 訴訟、環境問題、法令遵守等に関するリスク

当社グループは、日本および事業を行う海外における多岐にわたる法規制の適用を受けており、当社グループに適用のある法規制の変更の結果、経済情勢および消費動向に悪影響が及び、または当社グループに追加的な費用もしくは設備投資の必要が生じる可能性があります。当社グループは、これらの法規制を遵守するよう最大限注意していますが、当社グループによる法規制への違反の結果、行政処分を受け、または損害賠償請求その他の訴訟への対応を余儀なくされる可能性があります。また、当社グループは、環境に配慮した企業活動を行っており、関連する各種環境法令を遵守しています。しかしながら、このような配慮・対応にも関わらず、環境トラブルの発生や、関係法令の改正等によって対応コストが増加した場合には、当社グループの信用および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 (10) 業務提携、合併・買収および合弁事業等に関するリスク

当社グループは、大規模なものや重要性の高いものも含め、業務提携、合併・買収および合弁事業の可能性を常に検討しており、実際に、当社グループの海外法人には、現地パートナーとの合弁会社が含まれます。しかしながら、当社グループがそれらの適切な機会を見出せるか否か、相手方と合意できるか否か、必要な資金を調達できるか否かはいずれも不確実であり、また、仮に取引を実行できたとしても、当社グループが期待していた利益または効果を実現できない可能性があります。

 

 (11) 為替の変動に関するリスク

当社グループの連結財務諸表は日本円により表示されているため、連結財務諸表作成時において、海外連結子会社および持分法適用会社の財政状態および業績を日本円に換算するにあたり、為替レートの変動の影響を受けます。とりわけ人民元、インドネシア・ルピア、メキシコ・ペソ、ブラジル・レアルなどの為替レートの変動は、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 (12) 投資有価証券に関するリスク

当社グループは、主に事業上の協力関係の形成を目的として特定投資株式を含む投資有価証券を保有しており、そのうち市場価格のある上場株式等について市場価格の変動が生じた場合には、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の保有する投資有価証券について、帳簿価格に対する価値の著しい下落が認められる場合には、減損損失の計上等により、当社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 (13) 有利子負債に関するリスク

当社グループは、事業に必要な資金の一部を銀行借入によって調達していますが、金利の上昇その他金融市場が悪化した場合には、金利負担が増加しまたは適時に当社グループの希望する条件で資金調達ができなくなることにより、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの銀行借入の借入先は特定の金融機関に集中しており、調達手段の多様性に乏しいといえます。

 

 (14) 情報システムおよび情報セキュリティに関するリスク

当社グループの事業運営は情報システムに依存しており、情報機器、ソフトウェアまたはネットワークの障害により業務が滞り、または中断され、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、顧客情報やその他の機密情報の流出を防ぐため、システム管理や社員教育等によりセキュリティ対策を実施しています。しかしながら、盗難や外部からのサイバー攻撃などの予期し得ない事態により、これらの情報が流出した場合、当社グループの信頼性が低下するほか、損害賠償等の多額の費用負担が発生し、その結果、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 (15) 天候・気候変動、災害等のリスク

当社グループは、世界各国・地域で事業を展開しており、天候不順などの異常気象や地震などの大規模な自然災害が発生した場合には、直接・間接的に当社グループの事業活動が制限され、業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

 (16) 経営戦略および事業計画に関するリスク

当社グループは、2011年1月に長期ビジョン「Yakult Vision 2020」を策定し、企業価値向上に取り組んでまいりました。2017年5月には、長期ビジョン策定後の事業環境の変化を踏まえ、その第3フェーズ(2017年~2020年)を新たに「持続的成長に向けた変革期間」と位置づけ同期間の目標数値を再設定する「Yakult Vision 2020 第3フェーズ計画(2017-2020)」を公表し、これに基づき各種施策を行っています。なお、当社が経営指標とする乳製品の世界平均の販売数量には、持分法適用関連会社による販売数量が含まれております。

しかしながら、新設される工場の稼働の遅延や中止、ヤクルトレディなど販売チャネルの拡充や宣伝広告の失敗、新商品の導入の遅延や販売数量の低迷、業務の効率化の遅延や不徹底、その他本「事業等のリスク」に記載された事項を含むリスク要因や当社グループの方針の変更、経済情勢や経営環境の変化などにより、当社グループがこれらの施策を実行できない可能性や、計画を達成できない可能性があります。

 

なお、上記以外にも、さまざまなリスクがあり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。当社グループでは、これらのリスクの存在を認識したうえで、発生の回避および速やかな対応に努める所存です。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度の末日現在において当社グループが判断したものです。

なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っています。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、世界経済や金融資本市場の変動の影響に留意する必要があるものの、所得環境の改善が続くなかで、景気は緩やかな回復基調が続きました。

このような状況の中で、当社グループは、事業の根幹であるプロバイオティクスの啓発・普及活動を展開し、商品の優位性を訴求してきました。また、販売組織の拡充、新商品の研究開発や生産設備の更新に加え、国際事業や医薬品事業にも積極的に取り組み、業績の向上に努めました。

この結果、当連結会計年度の連結売上高は407,017百万円(前期比1.4%増)となりました。利益面においては、営業利益は45,846百万円(前期比5.5%増)、経常利益は57,121百万円(前期比7.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は34,935百万円(前期比2.6%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

 

・飲料および食品製造販売事業部門(日本)

日本国内における乳製品につきましては、当社独自の「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」などの科学性を広く普及するため、エビデンスを活用し、地域に根ざした「価値普及」活動を積極的に展開しました。

宅配チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト400」および「ヤクルト400LT」について、「ヤクルト400」が本年1月に発売20周年を迎えたことを機に、改めてお客さまへの飲用促進を図りました。また、昨年9月から全国展開したインターネット注文サービス「ヤクルト届けてネット」を活用し、新たなお客さまとの接点づくりを強化しました。さらに、宅配組織の強化を図るため、ヤクルトレディの働く環境整備を推進するとともに、採用活動を積極的に実施しました。

店頭チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「Newヤクルト」および「Newヤクルトカロリーハーフ」について、昨年7月には「2018プロ野球応援フェア」を、本年2月から3月にかけては消費者キャンペーン「つづけて実感!ヤクルト キャンペーン」を展開し、さらに3月には同商品のデザインリニューアルを実施しました。また、「乳酸菌 シロタ株」と5種の栄養成分を配合した乳製品乳酸菌飲料「ヤクルトファイブ」を本年3月に発売するなど、ブランドの活性化を図りました。

商品別では、はっ酵乳「ミルミル」類について、昨年9月のデザインリニューアル以降、飲用促進活動を継続的に展開し、売り上げの増大を図りました。また、本年1月には期間限定商品「カップ de ヤクルト」を発売しました。

一方、清涼飲料につきましては、当社の発酵技術を活かした乳酸菌はっ酵果汁飲料「ヤクルトのおいしいはっ酵果実」の販売を強化するなど、健康飲料を中心に売り上げの増大を図りました。

これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(日本)の連結売上高は214,957百万円(前期比2.3%増)となりました。

 

・飲料および食品製造販売事業部門(海外)

海外につきましては、1964年3月の台湾ヤクルト株式会社の営業開始をかわきりに、現在28の事業所および1つの研究所を中心に、38の国と地域で主として乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」の製造、販売を行っており、2019年3月の一日当たり平均販売本数は約2,985万本となっています。

 

 ア.米 州 地 域

米州地域においては、ブラジル、メキシコおよび米国で乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売しています。

同地域では宅配・店頭の両チャネルにおける販売体制強化を図り、売り上げの増大に努めました。

これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(米州地域)の連結売上高は48,907百万円(前期比2.5%減)となりました。

 

 イ.アジア・オセアニア地域

アジア・オセアニア地域においては、香港、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、インドおよび中国などで乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売し、アラブ首長国連邦(UAE)などでは「ヤクルト」などを輸入販売しています。

中国においては、「ヤクルト」などの販売本数増加に伴い、本年3月に佛山工場(広州ヤクルト株式会社)で生産を開始しました。また、無錫工場(無錫ヤクルト株式会社)敷地内の第2工場棟については、本年6月に生産を開始しました。

ミャンマーにおいては、「ヤクルト」の製造、販売開始を予定し準備を進めています。

これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(アジア・オセアニア地域)の連結売上高は120,784百万円(前期比10.0%増)となりました。

 

 ウ.ヨーロッパ地域

ヨーロッパ地域においては、乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などをオランダで製造し、同国を含め、ベルギー、イギリス、ドイツ、オーストリアおよびイタリアなどで販売しています。

ヨーロッパにおいては、プロバイオティクスを普及するための活動に対する厳しい規制の中で、健康強調表示(ヘルスクレーム)の承認に向け、各種の取り組みを行っています。このような状況の中、各国事業所による市場特性に合った販売活動の展開により、持続的成長を目指しました。

デンマークにおいては、本年1月から「ヤクルト」の販売を開始しました。これにより、海外進出数については、38の国と地域に販売網が拡大しました。

これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(ヨーロッパ地域)の連結売上高は8,673百万円(前期比4.0%増)となりました。

 

・医薬品製造販売事業部門

医薬品につきましては、がんおよびその周辺領域に特化した当社製品の啓発活動や適正使用を推奨する活動を推進しました。

当社の主力製品である抗悪性腫瘍剤「エルプラット」については、医療関係者を対象とした講演会などを積極的に開催し、シェアの維持に努めました。後発医薬品へ切り替える医療機関が増加傾向にあるものの、先発医薬品を開発した当社の強みである情報提供力や医療関係者との信頼関係により、引き続き「エルプラット」を選択してもらうための活動を展開しました。また、サノフィ社と共同プロモーション活動を推進した抗悪性腫瘍剤「ザルトラップ®」については、大腸がん領域における浸透のため積極的に情報提供を実施しました。そのほか、後発医薬品の当社主力製品である代謝拮抗性抗悪性腫瘍剤「ゲムシタビン『ヤクルト』」などの販路拡大にも努めました。しかしながら、昨年4月に実施された薬価基準改定により、大半の当社製品の薬価が引き下げられ、売り上げに大きな影響を受けました。

一方、研究開発においては、昨年6月にベラステム社(米国)と日本における開発および商業化に関する独占的ライセンス契約を締結したPI3K阻害剤「デュベリシブ」や、4SC AG社(ドイツ)から導入しているHDAC阻害剤「レスミノスタット」などの開発品目の臨床開発を推進しました。

また、本年2月には新たな後発医薬品として、抗悪性腫瘍剤「カペシタビン錠『ヤクルト』」および「ゲフィチニブ錠『ヤクルト』」の製造販売承認を取得し、6月発売に向けて準備を進めています。これらにより、今後、がんおよびその周辺領域において、さらなる強固な地位の確立を目指します。

これらの結果、医薬品製造販売事業部門の連結売上高は21,696百万円(前期比15.5%減)となりました。

 

・その他事業部門

その他事業部門には、化粧品の製造販売およびプロ野球興行などがあります。

化粧品につきましては、当社が創業以来培ってきた乳酸菌研究から生まれたオリジナル保湿成分「S.E.(シロタエッセンス)」の「価値普及」活動に重点をおき、お客さまの「内外美容」の実現と化粧品愛用者数の増大に努めました。

具体的には、昨年5月に薬用歯みがき剤「ヤクルト 薬用アパコート S.E.<ナノテクノロジー>」をリニューアル発売し、新たなお客さまとの接点拡大を図りました。

また、昨年11月には美容液「ビサイクル リフトリペア エッセンス」を、本年3月には高保湿美白基礎化粧品「リベシィホワイト」シリーズをリニューアル発売し、お客さま満足度の向上と売り上げの増大に努めました。

これらにより、化粧品全体としては、前期を上回る実績となりました。

一方、プロ野球興行につきましては、東京ヤクルトスワローズのクライマックスシリーズ進出に加え、神宮球場において各種イベントやさまざまな情報発信を行うなど、積極的なファンサービスに取り組んだ結果、入場者数が増加しました。

これらの結果、その他事業部門の連結売上高は22,447百万円(前期比8.0%増)となりました。

 

(注)各セグメントの連結売上高には、セグメント間売上高が含まれています。また、セグメント別売上高

   には、消費税等は含まれていません。

 

当連結会計年度末の総資産は618,532百万円(前連結会計年度末比8,498百万円の減少)となりました。

純資産は392,279百万円(前連結会計年度末比5,605百万円の増加)となりました。主な要因は、円高により為替換算調整勘定が減少したことや、株価下落によりその他有価証券評価差額金が減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したためです

また、自己資本比率は57.8%(前連結会計年度末比1.6ポイントの増加)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ2,764百万円減少し、103,171百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益55,801百万円、減価償却費21,237百万円があった一方、法人税等の支払額が13,881百万円あったこと等により、62,125百万円(前期比135百万円の収入増)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、主に定期預金の預入や生産設備の増設等による固定資産の取得があったことにより△37,012百万円(前期比6,727百万円の支出増)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、主に借入金の返済や配当金の支払い等があったことにより、△22,980百万円(前期比1,011百万円の支出増)となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

 ア.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

飲料および食品製造販売事業(日本)

134,104

△1.1

飲料および食品製造販売事業(米州)

48,905

△2.7

飲料および食品製造販売事業(アジア・オセアニア)

121,375

10.1

飲料および食品製造販売事業(ヨーロッパ)

8,708

4.2

医薬品製造販売事業

14,410

△21.1

その他事業

10,398

10.8

合計

337,902

1.8

 

(注) 1 金額は販売価格によっています。

2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

 イ.受注実績

当社グループは、受注生産は行っていません。

 

 ウ.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

飲料および食品製造販売事業(日本)

186,879

△1.2

飲料および食品製造販売事業(米州)

48,907

△2.5

飲料および食品製造販売事業(アジア・オセアニア)

120,784

10.0

飲料および食品製造販売事業(ヨーロッパ)

8,673

4.0

医薬品製造販売事業

21,696

△15.5

その他事業

20,075

9.5

合計

407,017

1.4

 

(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれていません。

2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しています。

3 セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

 

 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。

 

① 財政状態

当連結会計年度の自己資本比率は57.8%と前連結会計年度の56.2%から1.6ポイント増加しました。

非支配株主持分を含めた純資産額は、前期比1.4%、56億円増加しました。主な要因は、円高により為替換算調整勘定が減少したことや、株価下落によりその他有価証券評価差額金が減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したためです。

また、当連結会計年度の自己資本利益率(ROE)は9.8%と前連結会計年度から変動はありません。総資産経常利益率(ROA)は9.2%と前連結会計年度の8.7%から0.5ポイント増加しました。

有利子負債の短期借入金については、主に当社および海外子会社の返済により70億円減少しました。また、1年内返済予定を含む長期借入金についても、主に当社の返済により、55億円減少しました。この結果、有利子負債依存度(有利子負債÷総資産)は19.8%と前連結会計年度の21.7%から1.9ポイント減少しています。また、有利子負債対自己資本比率は34.2%と前連結会計年度の38.6%から4.4ポイント減少しています。

なお、財政状態は依然として堅固な状態が続いています。

 

② 経営成績

 ア.売上高

売上高は前連結会計年度から54億円増収(前期比1.4%増)の4,070億円となりました。飲料および食品製造販売事業部門(日本)では、49億円の増収(前期比2.3%増)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)では、100億円の増収(同5.9%増)、医薬品製造販売事業部門では、39億円の減収(同15.5%減)、その他事業部門では、16億円の増収(同8.0%増)となりました。事業部門別の調整額控除前の売上高構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が49.1%(前連結会計年度は49.4%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が40.8%(同39.7%)、医薬品製造販売事業部門が5.0%(同6.0%)、その他事業部門が5.1%(同4.9%)となっています。飲料および食品製造販売事業部門(日本)が増収となった主な要因は、乳製品・清涼飲料の販売本数が減少したものの、生産機器売上の増加があったためです。また、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が増収となった主な要因は、中国およびインドネシアで順調に販売実績が伸びたことに加え、価格改定効果もあったためです。医薬品製造販売事業部門が減収となった主な要因は、昨年4月に実施された薬価基準改定により、大半の当社製品の薬価が引き下げられたためです。

また、日本からの輸出を含めた海外売上高は前連結会計年度から6.0%増の1,806億円となり、海外売上高比率は44.4%と前連結会計年度の42.5%から1.9ポイント増加しました。

 

 イ.売上原価、販売費及び一般管理費およびその他収益(費用)

売上原価は1,711億円となり、前連結会計年度から0.3%減少しています。売上総利益は2,359億円となり、前連結会計年度に比べ2.6%増となりました。売上高売上総利益率は58.0%と前連結会計年度の57.3%から0.7ポイント増加しました。

販売費及び一般管理費は1,900億円と前連結会計年度から35億円増加しました。主な要因は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)の積極的な販売活動による販売費の増加および人件費の増加によるものです。

この結果、営業利益は458億円と前連結会計年度から23億円の増益(前期比5.5%増)となりました。事業部門別の調整額控除前の営業利益構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が25.9%(前連結会計年度は27.8%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が75.0%(同68.5%)、医薬品製造販売事業部門が△2.8%(同2.2%)、その他事業部門が1.9%(同1.5%)となっており、増益であった飲料および食品製造販売事業部門(海外)の構成比が増加しました。

 

営業外収益は128億円と前連結会計年度から10億円増加しました。

営業外費用は16億円と前連結会計年度から6億円減少しました。

特別利益は34億円と前連結会計年度から26億円増加しました。主な要因は、当社が投資有価証券売却益を計上したためです。

特別損失は47億円と前連結会計年度から43億円増加しました。主な要因は、医薬品事業で減損損失を計上したためです。

税金費用は前連結会計年度から7億円増加しました。

 

この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は349億円と前連結会計年度から8億円の増益(前期比2.6%増)となりました。売上高当期純利益率は8.6%と前連結会計年度の8.5%から0.1ポイント増加しました。

 

③ 為替の影響

為替レートの変動による影響は、当連結会計年度の売上高では52億円の減収、営業利益では10億円の減益と試算されました。ただし、この試算は、在外子会社の現地通貨建ての売上高、売上原価、販売費及び一般管理費に、前連結会計年度の各在外子会社における期中平均レートを適用して算出したものであり、為替変動に対応した販売価格等の影響は考慮していません。

 

④ 経営方針・経営戦略の達成状況

当連結会計年度は、連結売上高4,070億円(当社業績予想4,180億円に対して109億円減)、連結営業利益458億円(同480億円に対して21億円減)となりました。当社中期経営計画「Yakult Vision 2020 第3フェーズ計画」2年目の進捗としては、事業部門別では進捗の程度に違いは生じてはいるものの、全体としては順調に推移しました。引き続き、当社の企業理念に基づいた長期ビジョンの戦略展開により、全社目標の達成に向けて事業の推進を図っていきます。

 

4 【経営上の重要な契約等】

経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした飲料・食品、医薬品および化粧品などの研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。

当連結会計年度の研究開発費の総額は10,563百万円で、セグメント情報にかかわる研究開発活動の概要は、次のとおりです。

 

(1) 基礎研究開発分野

基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学などの多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、飲料・食品、医薬品および化粧品などへの利用を目指した機能性素材の開発に積極的に取り組んでいます。

当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。

① 宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究で、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」の凍結乾燥粉末を含むカプセルを国際宇宙ステーション・「きぼう」日本実験棟で約1か月間保管した後、カプセル中の生菌数、菌の発酵性状、遺伝情報、免疫調節作用に関する各種解析を行いました。その結果、いずれも地上で保管していた対照品と同等であり、宇宙環境においてプロバイオティクスの機能が維持されることを確認しました。本研究により、国際宇宙ステーションに滞在する宇宙飛行士が摂取した場合でも、地上と同様にプロバイオティクスの効果が発揮されることが期待されます。本研究成果は、学術誌「Scientific Reports」に掲載されました。

② 東邦大学との共同研究で、健常成人を対象とした「B.ビフィダム YIT 10347 (ビフィズス菌)」を含む乳製品の飲用試験を実施した結果、乳製品飲用群では、ビフィズス菌を含まないプラセボ飲用群と比較して、消化管症状に有意な緩和が認められました。本研究により、「B.ビフィダム YIT 10347 (ビフィズス菌)」の継続的な摂取は、食後の胃痛や不快症状等を含む消化管症状を緩和することが明らかになりました。本研究成果は、学術誌「Journal of Dairy Science」に掲載されました。

③ 大阪大学医学部附属病院高度救命救急センターとの共同研究で、集中治療室で人工呼吸器管理された敗血症患者を対象としたシンバイオティクス「B.ブレーベ・ヤクルト株(ビフィズス菌)、L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)およびガラクトオリゴ糖」の投与試験を実施した結果、シンバイオティクス投与群では、シンバイオティクスを投与していない群と比較して、腸炎および人工呼吸器関連肺炎の発生率が有意に低いことを確認しました。さらに、シンバイオティクス投与群では、腸内の有用菌(ビフィズス菌および乳酸菌)ならびに酢酸等の有機酸濃度が有意に高いことが分かりました。本研究により、敗血症患者へのシンバイオティクスの投与は、患者の予後の改善に役立つことが示されました。本研究成果は、学術誌「Critical Care」に掲載されました。

④ 腸内の腐敗産物であるフェノール類(フェノールおよびパラクレゾール)が人の健康に及ぼす影響を明らかにするため、当社保有の腸内細菌ライブラリーを対象にフェノール類産生菌を探索した結果、フェノール産生菌36株およびパラクレゾール産生菌55株を見出し、そのうち14株はフェノールおよびパラクレゾールの両方を産生することを確認しました。また、これら77菌株の分子系統学的分布を調べ、フェノール類産生菌が属するクラスターを明らかにするとともに、一部の菌について、既知の代謝酵素の遺伝子情報から保有する代謝経路を推定しました。本研究により、腸内で産生されるフェノール類の生理的意義や各種疾患と腸内細菌との関連の解明に役立つ情報を得ることができました。本研究成果は、学術誌「FEMS Microbiology Ecology」に掲載されました。

⑤ 当社の子会社である非営利法人ヤクルト本社ヨーロッパ研究所は、幅広い年齢層でヒト腸管から検出されるビフィズス菌(Bifidobacterium longum subsp. longum)について、生後半年以内(乳児期)から約6歳(小児期)まで追跡調査しました。その結果、乳児期から6年以上の間、腸内に定着し続ける菌株(長期定着菌株)が存在することが明らかになりました。また、乳児腸内に母親と共通の菌株が存在し、その菌株が長期定着するケースもあること、さらに、長期定着菌株は、他のビフィズス菌と共存しながら腸内に定着し続けることが明らかになりました。本研究により、B. longum subsp. longumは、生後初期にヒト腸管に定着し、その後の成長過程において生理的な影響を及ぼし続ける可能性があることが示されました。本研究成果は、学術誌「BMC Microbiology」に掲載されました。

 

今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、生活習慣病予防をターゲットとした次世代プロバイオティクスや新規機能性素材の研究開発に重点的に力を注いでいきます。

当分野の研究開発費は1,622百万円です。

 

(2) 飲料および食品製造販売事業分野

飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダム Y株」などを利用した食品や、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。

また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品および清涼飲料のラインアップの充実を図っています。

当連結会計年度の成果は次のとおりです。

① 乳製品

ア.ロングセラー商品である「ジョア」について、期間限定アイテムとして、「旬のピーチ」を昨年5月に、「はちみつレモン」を7月に、「贅沢オレンジ」を10月に導入しました。

イ. ハードタイプヨーグルト「ソフール」について、期間限定アイテムとして、爽やかなりんごの果汁感とヨーグルトの風味がマッチした「アップル」を昨年6月に導入しました。

ウ. 生きて腸内に到達する「乳酸菌 シロタ株」と5種の栄養成分を配合した乳製品乳酸菌飲料「ヤクルトファイブ」を本年3月に導入しました。

② 清涼飲料

ア. いちごとミルクをバランスよくブレンドした甘くてまろやかな味わいのいちご果汁入り清涼飲料「いちご・オ・レ」を昨年9月に導入しました。

イ. スポーツシーンだけでなく、日常の様々なシーンでの水分補給・熱中症対策に適し、発汗により失われた水分およびミネラルを素早く補給できるスポーツドリンク「クイックチャージ」を本年3月に導入しました。

ウ.「ヤクルト」をイメージしやすく、ごくごく飲めてすっきりとしたヤクルト風味の褐色系乳性飲料「ミルージュ」を本年3月に導入しました。

エ.「ジョア」の原料はっ酵乳を使用したヨーグルト風味のさわやかな炭酸入り白色系乳性飲料「ミルージュ ソーダ」(490ml缶容器)を本年3月に期間限定で導入しました。

③ その他海外事業支援
タイヤクルト株式会社が昨年6月に導入した、「ヤクルト」と比較してカロリーを50%低減した「ヤクルトライト」の技術支援を行いました。

当分野の研究開発費は4,491百万円です。

 

(3) 医薬品製造販売事業分野

医薬品研究開発分野においては、抗がん剤を中心とした薬剤の研究開発を進めています。

ドイツの4SC AG社から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」については、国内にて胆道がん第Ⅱ相臨床試験および4SC AG社による皮膚T細胞リンパ腫を対象とした第Ⅱ相国際共同臨床試験を実施中です。

日産化学株式会社から導入した血小板増加薬「YHI-1501」については、日本人健常人を対象とした第Ⅰ相臨床試験が終了し、現在、今後の開発計画を検討中です。

昨年6月に米国のベラステム社から導入したPI3K阻害剤「デュベリシブ」については、9月にベラステム社が米国において、再発または難治性の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫の治療としての承認、および再発または難治性の濾胞性リンパ腫の治療としての迅速承認を取得しました。現在、国内開発計画を検討中です。

 

「結腸・直腸がん」「胃がん」などの標準的治療薬として広く用いられている抗悪性腫瘍剤「エルプラット」(一般名:オキサリプラチン)については、「進行・再発胃がん」の用法・用量の追加を目的とした第Ⅲ相臨床試験を大鵬薬品工業株式会社と共同で実施中です。

基礎創薬研究分野では、抗がん剤およびその周辺領域でのシーズを確保するための研究を引き続き実施しています。

当分野の研究開発費は3,830百万円です。

 

(4) その他事業分野

<化粧品製造販売事業分野>

その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまのニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌はっ酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。

基礎化粧品については、ビフィズス菌研究から生まれたオリジナル成分「ビフィズス菌はっ酵エキス(大豆)」を配合し、お肌のハリ・弾力にアプローチする美容液「ビサイクル リフトリペア エッセンス」のリニューアルを昨年11月に実施しました。さらに、美白有効成分と「乳酸菌×植物」のチカラにより、シミとくすみを同時に防ぎ、明るく透明感のあるお肌へ導く高保湿美白基礎化粧品「リベシィホワイト」シリーズのリニューアルを本年3月に実施しました。

トイレタリー商品については、むし歯・歯周病予防および美白効果を強化した薬用歯みがき剤「ヤクルト 薬用アパコートS.E.<ナノテクノロジー>」のリニューアルを昨年5月に実施しました。加えて、少量サイズである「ヤクルト 薬用アパコートS.E.<ナノテクノロジー> ポータブル」を新たに導入しました。

当分野の研究開発費は619百万円です。