(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します」という企業理念に基づき、人々が健康とゆとりと生きがいを実感できる生活づくりに貢献し、地域社会とともに発展する企業を目指しています。
また、株主の皆さまやお客さまをはじめ、ひろく社会から信頼され、魅力のある企業となるよう、本業を基本とした着実な事業展開に徹するとともに、透明性の高いガラス張りの経営をおし進めていきます。
(2) 経営環境
当社グループをとりまく環境は、国内の少子高齢化や人口減少による市場の伸び悩み、お客さまのニーズの多様化・健康志向や品質に対する意識の高まりなど、刻々と変化を続けています。
また、今後の経済の見通しとしましては、新型コロナウイルス感染症によるさまざまな不安材料が存在し、先行きが不透明な状況で推移すると思われます。
このような環境のもと、当社グループは引き続き、創業当初から提唱する「予防医学」「健腸長寿」の考え方に基づき、お客さまの健康づくりに役立つ商品をお届けします。そして、長期ビジョン「Yakult Vision 2020」に立脚し、飲料・食品、医薬品および化粧品を中核とした事業ならびに積極的な国際展開の推進等をとおして、グループの強みである「研究開発・技術力」と「当社グループ独自の宅配システム」を活かし、お客さまへの価値提供により健康社会を実現することで、社会とともに持続的な成長を目指します。
(3) 長期的な経営戦略
《「Yakult Vision 2020」の策定と推進》
当社は、ヤクルトグループとしての成長を維持し、変化に対応していくための道標として、2011年度から2020年度までの長期ビジョン「Yakult Vision 2020」を2011年1月に策定しました。10年後の会社のありたい姿および目指す方向性を全従事者で共有するためのものであります。
主な内容は以下のとおりです。
長期ビジョン(2011年度~2020年度)
《定性目標》
・地球上の一人でも多くの方たちに「健腸長寿」を普及しよう!
・当社ならではの予防医学と治療医学の両輪で、「健康社会」を実現しよう!
・最高の技術をまごころと感謝でお届けし、お客さまや私たちの「満足と幸せ」を創出しよう!
《実現のための戦略》
世界の市場を「導入」「成長」「成熟」「再構築」の各段階に分け、最適な戦略を展開することで、グループの成長を継続していく考えです。成熟期にある国内事業については、次世代のグローバル事業を引っ張るための基盤作りを行い、持続的成長へとつなげていきます。
また、10年間を3つの期間(フェーズ)に区分して、10年後の目標を達成する考えです。
3つの期間は、第1フェーズ(2011~2013年)、第2フェーズ(2014~2016年)、第3フェーズ(2017~2020年)となっています。
(4) 中期経営計画
2017年度から2020年度までの4年間を対象期間とする第3フェーズ計画(2017~2020年)を2017年5月に策定しました。内容は以下のとおりです。
※なお、2020年5月14日に発表した2020年度業績予想は、連結売上高4,110億円、連結営業利益470億円であり、
第3フェーズ計画の2020年度計画を下回る予想となっています。
(5) 優先的に対処すべき課題
当社グループは前述の経営環境のもと、事業を展開しておりますが、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、国内外における乳製品乳酸菌飲料については、一部の地域で、宅配チャネルのヤクルトレディの活動が制限・制約されており、今後も感染状況によっては制限・制約が継続される可能性があります。これに対し、従事者の安全に最大限配慮しながら、お届け方法の工夫等によりお客さまの購入機会を維持するとともに、店頭チャネルにおいても安定的な供給体制の確保に努めることで、お客さまのニーズに対応し、一人でも多くのお客さまに「健康」をお届けしていきます。
加えて、当社グループは海洋プラスチックごみや温暖化、資源の枯渇などの世界的な環境問題を踏まえ、未来に向けて、プラスチック製容器包装の資源循環を推進していきます。
各事業部門の対処すべき課題は次のとおりであります。
<飲料および食品製造販売事業部門(日本)>
お客さまの価値観の多様化や健康意識の高まりに対応し、健康で楽しい生活づくりに貢献するため、「腸」の健康の大切さを訴求していきます。また、競争の激しい市場において、当社独自の乳酸菌の有用性とエビデンスを伝え、お客さまにその効果を体感していただくことが、当社商品の優位性を高めることにつながると考えます。
宅配チャネルにおいては、人材獲得競争が激化する中、宅配組織の強化という課題に対し、ヤクルトレディの働く環境整備および仕事の魅力を高めることで対応していきます。また、地域に根ざした「価値普及」活動を推進し、売り上げの増大に努めていきます。
店頭チャネルにおいては、競合他社商品との競争が激化する中、プロバイオティクス市場における優位性向上という課題に対し、当社独自の「乳酸菌 シロタ株」および「ビフィズス菌 BY株」の認知度向上に向けた取り組みを強化して推進します。
<飲料および食品製造販売事業部門(海外)>
プロバイオティクスに対する注目が高まる中、事業の拡大および収益性の向上という課題に対し、販売エリアでのさらなる市場深耕、既進出国・地域における未配エリアへの市場拡大および新規進出国の検討をすすめていきます。あわせて、納品店舗数の拡大、新規チャネルでの取引強化および宅配体制の充実と人材の確保・育成に取り組みます。
また、各国の法的規制および個別課題についても対応していきます。
<医薬品製造販売事業部門>
増大する医療費の抑制や後発医薬品の使用促進など、医療制度改革を中心として、国内市場環境が大きく変化し続けていく中、引き続き当社製品を選択してもらうために、最新の情報提供活動およびこれまで築き上げてきた医療関係者との信頼関係を基盤とし、当社の存在感をさらに高められるよう努めていきます。当社の後発医薬品については、引き続き新規導入を推進し、販売品目の拡充に取り組んでいきます。また、MR組織を活用した他社との共同プロモーション活動についても積極的に取り組んでいきたいと考えています。
研究開発においては、「レスミノスタット」や「デュベリシブ」などの新薬開発の推進を図るとともに、迅速な導入評価を実施し、開発パイプラインの充実を図っていきます。また、がんおよびその周辺領域における新たな後発医薬品の導入も積極的に展開していきます。
<その他事業部門>
化粧品につきましては、同業他社との競争激化をはじめ、他業界からの新規参入など競争環境がますます厳しくなっていく中、事業基盤の強化という課題に対し、販売強化策等を実施し、自社商品とサービスの価値を高めていきます。
一方、プロ野球興行につきましては、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、2020年シーズンの公式戦開幕が遅れたことならびに入場者数の減少が見込まれることにより、大きな影響を受けることが想定されます。今後も引き続き、安心して観戦していただける環境づくりを進めるとともにチーム力の強化に取り組み、ファンの皆さまの期待に応えられるよう対応を図ります。
当社グループは、引き続きコンプライアンス経営を推進するとともに、企業の社会的責任や株主の皆さまへの説明責任を果たしつつ、経営の効率化と業績の向上に鋭意努力してまいります。
また、企業理念である「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します」の実現に向けて、コーポレートスローガン「人も地球も健康に」のもと、地球環境全体の健康を視野に入れ、すべての事業活動を通じて、良き企業市民として歩んでまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与えると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
(1) ヤクルト類への依存および競争環境等に関するリスク
当社グループの主要商品は、「乳酸菌 シロタ株」を使用したヤクルト類であり、その売上高は、当社グループ全体の売上高の大部分を占めています。当社グループは、ヤクルト類の販売をさらに増加させ、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献することを目指しており、ヤクルト類の売上比率が高い海外事業の拡大に伴って、今後、ヤクルト類に対する依存度は、さらに高まる可能性があります。
当社グループは、研究開発投資を行い、付加価値の高い商品の開発に努めておりますが、当社グループの新商品が消費者に受け入れられ、また競合製品との比較で十分な優位性を獲得し、維持できるかについては不確実性が伴います。プロバイオティクスを使用した飲料を含む飲料および食品業界は、熾烈な競争にさらされており、当社グループの乳製品よりも優れた健康上の効果があるとされる、もしくはより低価格な競合乳製品の登場による更なる競争の激化、またはプロバイオティクスの安全性や効用に対する消費者の認識や嗜好の変化といった、ヤクルト類の販売に悪影響を及ぼす事象が発生した場合、ヤクルト類への依存度の高さから、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業のグローバル化に伴うリスク
当社グループは、世界各国で事業を展開し、海外において製造および販売活動を行っています。各事業所の堅調さを受けて年々、当社グループの業績における海外とりわけアジアの新興国市場の比重は高くなっており、国内は人口減少に伴い市場が縮小する可能性があることから、この傾向は今後も続くことが見込まれます。
海外においては国ごとに異なる文化や競争環境が存在します。また、当社グループが事業を展開する国・地域(今後当社グループが進出する国・地域を含む。)には、政治的・経済的な変化が当社グループの事業環境に及ぼす影響が大きな国・地域も含まれており、様々な手段を講じてはいても、これらの外部環境の変化等の結果、当社グループが成長機会を捉えられず、また投資に対して期待される成果を得ることができない場合があります。さらに、社会的背景または法規制の異なる海外においては、国内に比べて契約上の権利行使や知的財産権の保護が困難となり、または予期しない法律もしくは諸規制の制定・改廃などにより当社グループの事業活動に問題が生じる恐れがあります。例えば、欧州ではプロバイオティクスに関する健康強調表示(ヘルスクレーム)が認められておらず、当社グループの商品の宣伝方法の制約となっていますが、かかる規制が他の国でも導入されない保証はありません。これらの場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、中国をはじめとして、今後も海外における事業展開を拡大する計画であり、工場や販売拠点の新設および既存の設備の増強のための多額の投資を予定していますが、上記をはじめとする要因等により当社グループの想定通りの成長を実現できず、投資に見合った収益を得られない可能性があり、結果として当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(3) 商品の安全性に関するリスク
安全性や品質管理に対する消費者の関心が一層高まっているなか、国内外を問わず、安全、安心な商品を提供していくことが強く求められています。当社グループの取扱商品は、食品衛生法、医薬品医療機器等法その他国内外の法令や諸規制の適用を受けており、より一層の安全性、品質管理が求められていると認識しています。当社グループにおいても、安全な商品提供を第一と考え、品質管理体制の強化を図っています。
しかし、商品の安全性等に関し不測の事態が発生した場合、商品の製造または販売を停止せざるを得ない場合や、商品を回収せざるを得ない場合があり、そのための費用が生じるだけでなく、当社グループの商品の評価やブランドイメージが損なわれ、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、現実の問題か根拠のない風評であるかを問わず、また当社グループの商品であるか他社の商品であるかを問わず、プロバイオティクスを使用した乳製品の安全性や健康上の効果に対する消費者の信頼が低下するような事態が発生した場合には、当社グループの商品の販売に影響を及ぼす可能性があり、結果として当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(4) 当社グループの販売体制に関するリスク
当社グループの飲料および食品製造販売事業における販売チャネルは、当社グループ独自のヤクルトレディによる宅配チャネルと、店頭チャネルとに分けられます。プロバイオティクスの普及のために宅配チャネルの果たす役割は大きく、ヤクルトレディの働く環境整備に努め、ヤクルトレディのネットワークを拡充すること、またヤクルトレディの教育訓練を充実させることは、国内外を問わず、当社グループの販売活動において極めて重要であると考えています。
飲料および食品製造販売事業(日本)における商品の販売の大部分は、宅配チャネル、店頭チャネルともに全国の販売会社によって行われており、ヤクルトレディの大部分はそれぞれの販売会社から業務を受託しています。販売会社(なお、当社の取締役が代表権を有する販売会社が存在する。)の大部分は、当社の子会社または関連会社ではなく、当社との間に資本関係はありません。当社と販売会社、さらに販売会社とヤクルトレディの良好な関係が維持できない場合、またはヤクルトレディを含む適切な人材を確保できない場合には、当社グループの商品の販売に著しい支障をきたし、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
また、販売会社が当社グループの商品の販売を停止した場合または販売ができなくなった場合には、当社グループの商品の販売に著しい支障をきたし、または販売会社の支援や体制整備に多額の費用や損失を要するなど、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
飲料および食品製造販売事業(海外)においては、原則として当社の子会社が製造から販売まで行っておりますが、一部の国・地域においては当社の関連会社が事業を行っております。また、国・地域ごとに宅配チャネルの占める重要性は大きく異なりますが、タイ、韓国、インドネシア、メキシコといった国々では、当社グループはヤクルトレディによる宅配チャネルに依存しています。海外においても、当社グループが、現地の関連会社を適切に管理できない場合、またはヤクルトレディとの良好な関係を維持できない場合や海外事業の深耕・拡大に伴い必要となるヤクルトレディを含む適切な人材を確保できない場合等には、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
店頭チャネルにおいては、小売店でのプライベート・ブランド商品を含む他社製品との競争や、イー・コマースなどの新たな販売手法との競争が、当社グループの商品の販売に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5) 原材料価格、人件費などの費用の増加に関するリスク
当社グループの商品、特に主要商品である乳製品乳酸菌飲料の原材料の購入価格が、市場の需給関係の状況や為替変動などにより高騰した場合、または原油価格が高騰しもしくは高止まりが続く場合には、容器等包装資材を含めた製造経費、さらには運送費へも影響を与えます。また、日本国内では、労働人口の減少や労働環境の改善に向けた動き等により、人件費などの費用が増加し、海外では、特に新興国市場において、現時点では比較的安価な人件費が、経済成長と共に上昇する可能性があります。さらに、人件費の高騰を受けて、ヤクルトレディに対して支払う手数料が増加した場合には、当社グループが負担する費用が増加し、または当社から販売会社に対する商品の販売価格に影響を及ぼす可能性があります。このような原材料価格や人件費などの費用の上昇の直接的または間接的な影響をコスト削減努力で吸収できず、また市場の状況により販売価格の改定もできない場合には、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(6) 医薬品事業に関するリスク
① 特定の製品への依存に関するリスク
当社の医薬品事業は、抗悪性腫瘍剤「エルプラット」の売上に大きく依存していますが、「エルプラット」の売上は、後発医薬品の上市後減少しております。その結果、当社グループの医薬品事業の売上高は近年減少しており、今後も同様の傾向が続く可能性があります。
② 新薬の開発に関するリスク
当社グループは、新薬の上市を目指して研究開発活動に努めていますが、医薬品は、所轄官庁の定めた有効性と安全性に関する厳格な審査により承認されてはじめて上市可能となります。
医薬品の研究開発には多額の費用がかかりますが、その途上において、承認を受けるために必要な有効性または安全性を充たしていないと判断された場合には、研究開発を途中で断念することがあり、その場合には投下した費用を回収できない可能性があります。また、承認を受けるために追加の試験が必要となる結果、多額の追加費用が発生する可能性、または新薬の上市が遅延する可能性があります。さらに、新薬の上市に至ったとしても、投下した費用に見合った売上を達成できない可能性があります。
③ 特許権満了等に伴うリスク
当社グループの先発医薬品に関する特許権が満了した場合、低価格の後発医薬品が市場に参入し、当社の先発医薬品の販売に悪影響を及ぼす可能性があります。日本政府は後発医薬品の使用促進を積極的に進めており、今後、後発医薬品との競争は激化する可能性があります。
当社グループは後発医薬品の製造販売も行っておりますが、後発医薬品市場は、参入障壁が比較的低く競争が激しいため、収益性が低下する可能性があります。
④ 薬価引下げに伴うリスク
日本の医療保険制度における薬価は定期的に引き下げられており、当社の医薬品の価格も継続的に低下しています。薬価改定は2018年4月に実施されて以降、毎年薬価の改定が行われることが見込まれています。
(7) 「ヤクルト」ブランドの毀損に関するリスク
当社グループにとって、そのブランドイメージを維持することは極めて重要です。「ヤクルト」は社名と主力品名に共通するブランドであり、ヤクルト類をはじめ、ヤクルトの名を冠する商品のとりわけ品質・安全性に関連する問題は、当社グループおよびその商品のブランドイメージに多大な影響を及ぼす可能性があります。また、国内の販売会社やヤクルトレディといった「ヤクルト」の名称を使用する関係者に不祥事があった場合にも、当社グループのブランドイメージに多大な影響を及ぼす可能性があります。
(8) 知的財産権に関するリスク
当社グループの製品や技術は、特許その他の知的財産権によって一定期間保護されていますが、それらは第三者によって侵害される可能性があり、それによって当社グループの売上が減少する可能性があります。また、一部の国では、当社グループの製品の容器と類似の商標が競合他社によって既に登録されており、これにより、当該国における製品の販売に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、製品の回収、生産および販売の終了、損害賠償またはロイヤルティの支払いなどを要求される可能性があります。
(9) 訴訟、環境問題、法令遵守等に関するリスク
当社グループは、日本および事業を行う海外における多岐にわたる法規制の適用を受けており、当社グループに適用のある法規制の変更の結果、経済情勢および消費動向に悪影響が及び、または当社グループに追加的な費用もしくは設備投資の必要が生じる可能性があります。当社グループは、これらの法規制を遵守するよう最大限注意していますが、当社グループによる法規制への違反の結果、行政処分を受け、または損害賠償請求その他の訴訟への対応を余儀なくされる可能性があります。また、当社グループは、環境に配慮した企業活動を行っており、関連する各種環境法令を遵守しています。しかしながら、このような配慮・対応にも関わらず、環境トラブルの発生や、関係法令の改正等によって対応コストが増加した場合には、当社グループの信用および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(10) 業務提携、合併・買収および合弁事業等に関するリスク
当社グループは、大規模なものや重要性の高いものも含め、業務提携、合併・買収および合弁事業の可能性を常に検討しており、実際に、当社グループの海外法人には、現地パートナーとの合弁会社が含まれます。しかしながら、当社グループがそれらの適切な機会を見出せるか否か、相手方と合意できるか否か、必要な資金を調達できるか否かはいずれも不確実であり、また、仮に取引を実行できたとしても、当社グループが期待していた利益または効果を実現できない可能性があります。
(11) 為替の変動に関するリスク
当社グループの連結財務諸表は日本円により表示されているため、連結財務諸表作成時において、海外連結子会社および持分法適用会社の財政状態および業績を日本円に換算するにあたり、為替レートの変動の影響を受けます。とりわけ人民元、インドネシア・ルピア、メキシコ・ペソ、ブラジル・レアルなどの為替レートの変動は、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(12) 投資有価証券に関するリスク
当社グループは、主に事業上の協力関係の形成を目的として特定投資株式を含む投資有価証券を保有しており、そのうち市場価格のある上場株式等について市場価格の変動が生じた場合には、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の保有する投資有価証券について、帳簿価格に対する価値の著しい下落が認められる場合には、減損損失の計上等により、当社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(13) 有利子負債に関するリスク
当社グループは、事業に必要な資金の一部を銀行借入によって調達していますが、金利の上昇その他金融市場が悪化した場合には、金利負担が増加しまたは適時に当社グループの希望する条件で資金調達ができなくなることにより、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの銀行借入の借入先は特定の金融機関に集中しており、調達手段の多様性に乏しいといえます。
(14) 情報システムおよび情報セキュリティに関するリスク
当社グループの事業運営は情報システムに依存しており、情報機器、ソフトウェアまたはネットワークの障害により業務が滞り、または中断され、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、顧客情報やその他の機密情報の流出を防ぐため、システム管理や社員教育等によりセキュリティ対策を実施しています。しかしながら、盗難や外部からのサイバー攻撃などの予期し得ない事態により、これらの情報が流出した場合、当社グループの信頼性が低下するほか、損害賠償等の多額の費用負担が発生し、その結果、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(15) 天候・気候変動、災害等のリスク
当社グループは、世界各国・地域で事業を展開しており、天候不順などの異常気象や地震などの大規模な自然災害が発生した場合には、直接・間接的に当社グループの事業活動が制限され、業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(16) 感染症の流行に関するリスク
当社グループは、世界各国・地域で事業を展開しており、新型コロナウイルス感染症をはじめとした新型ウイルスなどの大規模な感染症の流行が発生した場合には、国内外のサプライチェーンの混乱、消費の低迷等が起こる可能性があります。当社グループでは、危機的事項の発生に対し、危機管理規程に基づき、全社的な対応体制を構築するとともに、生産・供給体制の整備に努めていきます。しかしながら、感染拡大の影響により、商品の製造または販売を停止せざるを得ない場合には、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(17)海洋プラスチック問題に関するリスク
当社グループの主要商品であるヤクルト類をはじめ、多くの商品においてプラスチック容器を使用しております。また、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するために、今後ヤクルト類等の販売拡大を目指しております。しかしながら、マイクロプラスチックによる海洋汚染に関する国際的な関心の高まり等により、プラスチック製容器包装の問題がクローズアップされています。当社グループは、プラスチック製容器包装の資源循環等を推進する取り組みを行っていきますが、これらの問題に適切な対応ができない場合、主要商品であるヤクルト類等の販売が制限され、当社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(18) 経営戦略および事業計画に関するリスク
当社グループは、2011年1月に長期ビジョン「Yakult Vision 2020」を策定し、企業価値向上に取り組んでまいりました。2020年度は、長期ビジョン第3フェーズ(2017年~2020年)の最終年度として、通期業績予想の達成に向け、事業の推進を図ってまいります。しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、ヤクルトレディの活動が制限されるなど、事業を想定どおりに推進できない可能性があり、今後の経済情勢や経営環境の変化などにより、当社グループが計画を達成できない可能性があります。
なお、上記以外にも、さまざまなリスクがあり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。当社グループでは、これらのリスクの存在を認識したうえで、発生の回避および速やかな対応に努める所存です。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、世界経済の変動の影響や消費税率引き上げ後の消費マインドの動向に留意する必要があるものの、所得環境の改善が続くなかで、景気は緩やかな回復基調で推移しました。しかしながら、2020年1月以降、感染が拡大している新型コロナウイルス感染症の影響により、先行きは厳しい状況が続くと見込まれています。
このような状況の中で、当社グループは、事業の根幹であるプロバイオティクスの啓発・普及活動を展開し、商品の優位性を訴求してきました。また、販売組織の拡充、新商品の研究開発や生産設備の更新に加え、国際事業や医薬品事業にも積極的に取り組み、業績の向上に努めました。
この結果、当連結会計年度の連結売上高は406,004百万円(前期比0.2%減)となりました。利益面においては、営業利益は45,675百万円(前期比0.4%減)、経常利益は58,478百万円(前期比2.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は39,735百万円(前期比13.7%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
・飲料および食品製造販売事業部門(日本)
乳製品につきましては、当社独自の「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」などの科学性を広く普及するため、エビデンスを活用し、地域に根ざした「価値普及」活動を積極的に展開しました。
宅配チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト400」および「ヤクルト400LT」の飲用促進を図りました。また、インターネット注文サービス「ヤクルト届けてネット」の広告展開を実施することで新たなお客さまとの接点づくりを強化しました。さらに、宅配組織の強化を図るため、ヤクルトレディの働く環境整備を推進するとともに、採用活動を積極的に実施しました。
店頭チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「Newヤクルト」および「Newヤクルトカロリーハーフ」を中心に、プロモーションスタッフの試飲宣伝による「価値普及」活動を推進しました。また、昨年10月に「Newヤクルトカロリーハーフ」のデザインリニューアルを実施し、店頭での視認性向上を図り、売り上げの増大に努めました。
商品別では、一時的な精神的ストレスがかかる状況での「ストレス緩和」「睡眠の質向上」の機能がある乳製品乳酸菌飲料「Yakult(ヤクルト)1000」を昨年10月に関東1都6県で先行発売し、広告展開と連動した飲用促進活動を実施しました。また、本年1月には、基幹商品である「ヤクルト400」のシリーズ品として「乳酸菌 シロタ株」と腸内の乳酸菌を増やす「ガラクトオリゴ糖」を一緒に摂ることができる乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト400W」を九州地区限定で先行発売しました。
一方、清涼飲料につきましては、「Tough-Man Refresh(タフマン リフレッシュ)」において広告展開と連動した消費者キャンペーンを実施するなど、「タフマン」シリーズをはじめとした健康飲料を中心に売り上げの増大を図りました。
このような取り組みを中心に販売強化に努めたものの、前年を下回る実績で推移しました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(日本)の連結売上高は209,380百万円(前期比2.6%減)となりました。
・飲料および食品製造販売事業部門(海外)
海外につきましては、1964年3月の台湾ヤクルト株式会社の営業開始をかわきりに、現在29の事業所および1つの研究所を中心に、39の国と地域で主として乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」の製造、販売を行っており、本年3月の一日当たり平均販売本数は約3,061万本となっています。
ア.米 州 地 域
米州地域においては、ブラジル、メキシコおよび米国で乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売しています。
米国においては、昨年7月に米国東部での営業を開始し、販売対象エリアを米国全土に拡大しました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(米州地域)の連結売上高は48,746百万円(前期比0.3%減)となりました。
イ.アジア・オセアニア地域
アジア・オセアニア地域においては、香港、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、インド、ミャンマーおよび中国などで乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売し、アラブ首長国連邦(UAE)などでは「ヤクルト」などを輸入販売しています。
中国においては、昨年6月に中国全体での販売拠点を46か所に拡大し、さらなる販売体制の強化を図りました。また、今後の販売地域拡大および市場深耕による需要増加に対応するため、無錫第2工場(無錫ヤクルト株式会社)の建設開始の準備を進めています。
ミャンマーにおいては、昨年8月に「ヤクルト」の製造、販売を開始しました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(アジア・オセアニア地域)の連結売上高は122,317百万円(前期比1.3%増)となりました。
ウ.ヨーロッパ地域
ヨーロッパ地域においては、乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などをオランダで製造し、同国を含め、ベルギー、イギリス、ドイツ、オーストリアおよびイタリアなどで販売しています。
ヨーロッパにおいては、プロバイオティクスを普及するための活動に対する厳しい規制の中で、健康強調表示(ヘルスクレーム)の承認に向け、各種の取り組みを行っています。このような状況の中、各国事業所による市場特性に合った販売活動の展開により、持続的成長を目指しました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(ヨーロッパ地域)の連結売上高は7,940百万円(前期比8.4%減)となりました。
・医薬品製造販売事業部門
医薬品につきましては、がんおよびその周辺領域に特化した当社製品の啓発活動や適正使用を推奨する活動を推進しました。
当社の主力製品である抗悪性腫瘍剤「エルプラット」については、医療関係者を対象とした講演会などを積極的に開催し、シェアの維持に努めました。後発医薬品へ切り替える医療機関が増加傾向にあるものの、先発医薬品を開発した当社の強みである情報提供力や医療関係者との信頼関係により、引き続き「エルプラット」を選択してもらうための活動を展開しました。また、後発医薬品の当社主力製品である代謝拮抗性抗悪性腫瘍剤「ゲムシタビン『ヤクルト』」などの販路拡大に努めました。そのほか、昨年6月に発売した抗悪性腫瘍剤「カペシタビン錠『ヤクルト』」および「ゲフィチニブ錠『ヤクルト』」の速やかな市場浸透を図る活動を推進し、売り上げの増大に努めました。しかしながら、消費税率引き上げに伴って実施された薬価基準改定により、大半の当社製品の薬価が引き下げられ、売り上げに影響を受けました。また、昨年10月に日本セルヴィエ社と日本におけるプロモーション契約を締結した抗悪性腫瘍剤「オニバイド®」(イリノテカン塩酸塩水和物 リポソーム製剤)については、同社が本年3月に製造販売承認を取得しました。
一方、研究開発においては、ベラステム社(米国)と日本における開発および商業化に関する独占的ライセンス契約を締結したPI3K阻害剤「デュベリシブ」や、4SC社(ドイツ)から導入しているHDAC阻害剤「レスミノスタット」などの開発品目の臨床開発を推進しました。これらにより、今後、がんおよびその周辺領域において、さらなる強固な地位の確立を目指します。
これらの結果、医薬品製造販売事業部門の連結売上高は19,670百万円(前期比9.3%減)となりました。
・その他事業部門
その他事業部門には、化粧品の製造販売およびプロ野球興行などがあります。
化粧品につきましては、当社が創業以来培ってきた乳酸菌研究から生まれたオリジナル保湿成分「S.E.(シロタエッセンス)」の「価値普及」活動に重点をおき、お客さまの「内外美容」の実現と化粧品愛用者数の増大に努めました。
具体的には、昨年7月に保湿効果の高い基礎化粧品「ラクトデュウ」シリーズをリニューアル発売するとともに、テレビCMの放映をはじめとする積極的な広告展開により商品の認知率向上に努めました。また、昨年11月には「パラビオ ACスペシャルプログラム セット」を、本年3月には薬用美白美容液「クリスタンス ホワイトリペア エッセンス」をそれぞれ発売し、お客さま満足度の向上と売り上げの増大に努めました。
これらにより、化粧品全体としては、前期を上回る実績となりました。
一方、プロ野球興行につきましては、神宮球場において各種イベントやさまざまな情報発信を行うなど、積極的なファンサービスに取り組んだ結果、入場者数が増加しました。
これらの結果、その他事業部門の連結売上高は22,911百万円(前期比2.1%増)となりました。
(注)各セグメントの連結売上高には、セグメント間売上高が含まれています。また、セグメント別売上高
には、消費税等は含まれていません。
当連結会計年度末の総資産は627,871百万円(前連結会計年度末比9,338百万円の増加)となりました。
純資産は412,082百万円(前連結会計年度末比19,803百万円の増加)となりました。主な要因は、株価下落によるその他有価証券評価差額金の減少や、円高による為替換算調整勘定の減少があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したためです。
また、自己資本比率は59.5%(前連結会計年度末比1.7ポイントの増加)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ21,389百万円増加し、124,561百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が前期と比較し2,926百万円増加していますが、その主な増加要因はキャッシュの増加を伴わない減損損失の減少や持分法投資利益の増加などによるものです。なお、売上高は前期並みでその他の営業キャッシュ・フロー項目には大きな増減がなかったため、前期と比較し666百万円の増加に留まりました。その結果、営業活動によるキャッシュ・フローは62,791百万円となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較し定期預金(期間3ヵ月超)への預け入れに比べ払戻しが多かったことに加え、海外での設備投資が減少したこと等により、支出額が20,951百万円減少しました。その結果、投資活動によるキャッシュ・フローは△16,060百万円となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、1株当たりの配当金を増やし配当金の支払い額が1,596百万円増加したこと等により、支出額が2,650百万円増加しました。その結果、財務活動によるキャッシュ・フローは、△25,631百万円となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は販売価格によっています。
2 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
当社グループは、受注生産は行っていません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 上記の金額には、消費税等は含まれていません。
2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しています。
3 セグメント間の取引については相殺消去しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
ア.財政状態
当連結会計年度の自己資本比率は59.5%と前連結会計年度の57.8%から1.7ポイント増加しました。
非支配株主持分を含めた純資産額は、前期比5.0%、198億円増加しました。主な要因は、株価下落によるその他有価証券評価差額金の減少や、円高による為替換算調整勘定の減少があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したためです。
また、当連結会計年度の自己資本利益率(ROE)は10.9%と前連結会計年度の9.8%から1.1ポイント増加しました。総資産経常利益率(ROA)は9.4%と前連結会計年度の9.2%から0.2ポイント増加しました。
有利子負債の短期借入金については、主に当社および海外子会社の返済により73億円減少しました。また、1年内返済予定を含む長期借入金についても、主に当社の返済により、57億円減少しました。この結果、有利子負債依存度(有利子負債÷総資産)は18.1%と前連結会計年度の19.8%から1.7ポイント減少しています。また、有利子負債対自己資本比率は30.5%と前連結会計年度の34.2%から3.7ポイント減少しています。
なお、財政状態は依然として堅固な状態が続いています。
売上高は前連結会計年度から10億円減収(前期比0.2%減)の4,060億円となりました。飲料および食品製造販売事業部門(日本)では、55億円の減収(前期比2.6%減)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)では、6億円の増収(同0.4%増)、医薬品製造販売事業部門では、20億円の減収(同9.3%減)、その他事業部門では、4億円の増収(同2.1%増)となりました。事業部門別の調整額控除前の売上高構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が48.6%(前連結会計年度は49.1%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が41.5%(同40.8%)、医薬品製造販売事業部門が4.6%(同5.0%)、その他事業部門が5.3%(同5.1%)となっています。飲料および食品製造販売事業部門(日本)が減収となった主な要因は、前期の生産機器売上増加の反動による減少があったためです。また、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が増収となった主な要因は、アジアを中心とした販売本数増加に加え、価格改定効果もあったためです。医薬品製造販売事業部門が減収となった主な要因は、昨年10月に実施された薬価基準改定により、大半の当社製品の薬価が引き下げられたためです。
また、日本からの輸出を含めた海外売上高は前連結会計年度から0.5%増の1,815億円となり、海外売上高比率は44.7%と前連結会計年度の44.4%から0.3ポイント増加しました。
売上原価は1,713億円となり、前連結会計年度から0.2%増加しています。売上総利益は2,346億円となり、前連結会計年度に比べ0.5%減となりました。売上高売上総利益率は57.8%と前連結会計年度の58.0%から0.2ポイント減少しました。
販売費及び一般管理費は1,889億円と前連結会計年度から11億円減少しました。主な要因は、飲料および食品製造販売事業部門(海外)の事業拡大に伴う人件費の増加があったものの、医薬品製造販売事業部門において研究開発費が減少したことよるものです。
この結果、営業利益は456億円と前連結会計年度から1億円の減益(前期比0.4%減)となりました。事業部門別の調整額控除前の営業利益構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が28.5%(前連結会計年度は25.9%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が69.6%(同75.0%)、医薬品製造販売事業部門が△1.3%(同△2.8%)、その他事業部門が3.2%(同1.9%)となっており、増益であった飲料および食品製造販売事業部門(日本)の構成比が増加しました。
営業外収益は147億円と前連結会計年度から18億円増加しました。主な要因は、持分法による投資利益の増加によるものです。
営業外費用は19億円と前連結会計年度から3億円増加しました。
特別利益は27億円と前連結会計年度から7億円減少しました。
特別損失は24億円と前連結会計年度から22億円減少しました。主な要因は、前期に医薬品事業で減損損失を計上したためです。
税金費用は前連結会計年度から17億円減少しました。主な要因は、海外子会社において税効果会計により法人税等調整額が減少したためです。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は397億円と前連結会計年度から48億円の増益(前期比13.7%増)となりました。売上高当期純利益率は9.8%と前連結会計年度の8.6%から1.2ポイント増加しました。
為替レートの変動による影響は、当連結会計年度の売上高では67億円の減収、営業利益では14億円の減益と試算されました。ただし、この試算は、在外子会社の現地通貨建ての売上高、売上原価、販売費及び一般管理費に、前連結会計年度の各在外子会社における期中平均レートを適用して算出したものであり、為替変動に対応した販売価格等の影響は考慮していません。
当社グループは事業活動の維持拡大に必要な資金を確保するため、内部資金および金融機関からの借入を活用しています。
当社においては安定的、効率的に資金調達を行うため、国内金融機関6行と総額600億円の貸出コミットメント契約を締結しています。国内子会社については、主として資金調達をグループのキャッシュ・マネジメント・サービスを活用することにより、資金調達の一元化および効率化を図っています。結果として当連結会計年度末の有利子負債(長期・短期借入金)の9割以上が当社による調達となっています。
また、保有資金については、主に事業拡大のための設備投資、新商品開発のための研究開発および株主還元に活用しています。
当社グループは事業活動を円滑に行うため、安全性、安定性を考慮し手許資金を確保しています。当連結会計年度末の短期有利子負債362億円に対し、現預金は1,756億円となっており、流動性において十分な安全性を確保しています。また、余資については、安全性の高い短期的な預金等に限定して運用し、資金運用を目的とした投機的な取引は行わない方針です。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたっては、作成時点で入手している情報に基づき、合理的と考えられる見積りおよび仮定を用いていますが、見積り特有の不確実性があるため実際の結果は異なる可能性があります。
作成にあたり用いた見積りおよび仮定のうち、重要なものと認識している項目は以下のとおりです。
当社グループは、主要な事業である飲料および食品製造販売事業部門において、日本を除く39の国と地域で乳製品乳酸菌飲料を販売しており、その製造拠点として17の国と地域で27工場を建設、稼働し、生産設備を有しています。固定資産の減損に係る回収可能性の評価は、原則として製造拠点ごとにグルーピングを行い、減損損失の認識の判定を行っています。
当連結会計年度において、飲料および食品製造販売事業部門では固定資産の減損損失を計上すべき事象は発生していませんが、今後、国によっては政治的あるいは経済的な外部環境の変化等により、計画していた将来キャッシュ・フローを獲得できず、当該製造拠点グループの固定資産簿価相当額を限度とした減損損失を計上する可能性があります。
当社グループは、主に確定給付型の退職給付制度を採用しているため、退職給付債務および退職給付費用の計算にあたっては、割引率、長期期待運用収益率等の数理計算上の仮定を用いて算定しています。
仮定した各数値が、将来の経済状況の変動等により大きく見直された場合、退職給付債務や退職給付費用に大きな影響を与える可能性があります。
当連結会計年度は、連結売上高4,060億円(当社業績予想4,090億円に対して29億円減)、連結営業利益456億円(同460億円に対して3億円減)となりました。この結果、当社中期経営計画「Yakult Vision 2020 第3フェーズ計画」の連結売上高目標4,540億円に対し、3年目の進捗状況としては479億円の差、連結営業利益目標570億円に対しては同113億円の差となりました。
新型コロナウィルス感染拡大に伴う事業活動への制約や世界経済の先行き見通しへの不安からくる消費低迷の可能性など、外部環境の厳しさはありますが、「Yakult(ヤクルト)1000」をはじめとする日本国内での高付加価値商品の販売拡大や海外における市場深耕・事業展開拡大など、当社の企業理念に基づいた長期ビジョンの戦略展開を継続推進していきます。
経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。
当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした飲料・食品、医薬品および化粧品などの研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学などの多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、飲料・食品、医薬品および化粧品などへの利用を目指した機能性素材の開発に積極的に取り組んでいます。
当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。
① 東京都健康長寿医療センター研究所との共同研究で、群馬県吾妻郡中之条町の高齢者を対象に、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の摂取頻度および日常的な身体活動と便秘リスクとの関係を疫学的に調査しました。その結果、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の摂取頻度が高い高齢者や、1日7,000歩以上歩く高齢者は便秘になるリスクが低いことを明らかにしました。また、これらの組み合わせは便秘リスクの低減に効果的であることを明らかにしました。本研究により、高齢者の便秘対策のひとつとして、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の高頻度の摂取と定期的な運動の組み合わせが有効であることが期待されます。本研究成果は、学術誌「Frontiers in Microbiology」に掲載されました。
② 神奈川工科大学との共同研究で、高齢者福祉施設に入居している高齢者を対象に、ウイルス感染のリスクが高くなる冬季を含む6か月間、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳酸菌飲料の継続摂取試験を実施しました。その結果、乳酸菌飲料を継続摂取した群では、乳酸菌を含まないプラセボを継続摂取した群と比較して、摂取期間中の総発熱日数および発熱時の持続日数が有意に短いことを確認しました。本研究により、高齢者における感染症対策のひとつとして、「L.カゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳酸菌飲料の継続摂取が有効であることが期待されます。本研究成果は、学術誌「Bioscience of Microbiota, Food and Health」に掲載されました。
③ 国立病院機構下志津病院との共同研究で、スギ花粉症症状を有する方を対象に、「L.プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」を含む発酵果汁飲料の継続摂取試験をスギ花粉飛散時期に実施しました。その結果、発酵果汁飲料を継続摂取した群では、乳酸菌を含まないプラセボを継続摂取した群と比較して、花粉飛散初期のスギ花粉症症状が有意に軽減されました。また、プラセボ飲用群で認められた花粉飛散に伴う制御性T細胞(Treg)の減少が発酵果汁飲料飲用群では認められませんでした。さらに、発酵果汁飲料飲用群の中で、摂取期間中にTregが増加した被験者群では、Tregが減少した被験者群と比較して、摂取期間中の鼻症状(鼻づまり、鼻水、くしゃみ)が軽減することを確認しました。本研究により、乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取が花粉飛散期におけるスギ花粉症症状を軽減すること、本効果にはTregの変化が関与することが示唆されました。本研究成果は、学術誌「Allergy」に掲載されました。
④ 順天堂大学および沖縄県立南部医療センター・こども医療センターとの共同研究で、低出生体重児(出生時体重1,500g未満)を対象に、初乳および母乳とともに「B.ブレーベ・ヤクルト株(ビフィズス菌)」の菌末を継続的に投与した場合の成長に及ぼす影響を調査しました。その結果、生後24時間以内に菌末投与を開始した群では、菌を含まないプラセボを投与した群と比較して、生後8週までに有意な体重増加が確認されました。また、菌末投与群では、プラセボ投与群と比較して、便中のビフィズス菌の検出率、総菌数、有機酸濃度が有意に高い値を示しました。本研究により、低出生体重児における「B.ブレーベ・ヤクルト株(ビフィズス菌)」の継続摂取には、ビフィズス菌優位の腸内細菌叢の早期形成と腸内の有機酸を介した成長促進が期待されます。本研究成果は、学術誌「Biomedicine Hub」に掲載されました。
⑤ 愛媛大学大学院との共同研究で、出生後に新生児集中治療室(NICU)で保育された早産児(在胎37週未満)と健康な正期産児(在胎37~42週)における腸内細菌叢の形成過程について調査しました。その結果、NICUで保育された早産児は、正期産児と比較して、ビフィズス菌の定着が遅れること、ブドウ球菌群が多いことを確認しました。また、ビフィズス菌優勢の腸内細菌叢が形成された産児では、腸内の有機酸濃度が上昇し、pHが低下することを明らかにしました。本研究により、NICUで保育される早産児の腸内細菌叢をビフィズス菌優勢の腸内細菌叢へ早期に導くことにより腸内環境が良好に保たれ、早産児が罹患しやすい疾病リスクの低減に繋がることが期待されます。本研究成果は、学術誌「Beneficial Microbes」に掲載されました。
今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、生活習慣病予防をターゲットとした次世代プロバイオティクスや新規機能性素材の研究開発に重点的に力を注いでいきます。
当分野の研究開発費は1,572百万円です。
飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に加え、近年の研究により明らかになってきた脳と腸が自律神経を介してお互いに密接に影響を及ぼしあう「脳腸相関」に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダム Y株」などを利用し、作用領域を拡大した乳酸菌飲料等、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。
また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品および清涼飲料のラインアップの充実を図っています。
当連結会計年度の成果は次のとおりです。
ア.当社初の機能性表示食品で、一時的な精神的ストレスがかかる状況での「ストレス緩和」「睡眠の質向上」の機能がある「Yakult(ヤクルト)1000」を昨年10月に関東1都6県で導入しました。
イ.ロングセラー商品である「ジョア」について、期間限定アイテムとして、「旬のピーチ」を昨年4月に、「南国パイン」を7月に、「贅沢オレンジ」を9月に導入しました。また、本年3月に栄養成分を強化して「ジョア」シリーズをリニューアルするとともに、新たに小容量(80ml)タイプを2品導入しました。
ウ. ソフトタイプヨーグルトとして、アロエ葉肉の食感とヨーグルトのなめらかな舌ざわりがマッチした「アロエヨーグルト」と、1日分の鉄と葉酸を含有し、ベリー系を主体とした4種の果汁とヨーグルトのなめらかさがマッチした「1日分の鉄&葉酸ヨーグルト」を昨年10月に導入しました。
エ.国内初の胃に関する機能性表示食品として、ビフィズス菌「B.ビフィダム Y株」を含む乳製品乳酸菌飲料「BF-1(ビーエフワン)」を昨年11月に導入しました。
オ.基幹商品である「ヤクルト400」のシリーズ品として、生きて腸内に到達する「乳酸菌 シロタ株」と腸内の乳酸菌を増やす「ガラクトオリゴ糖」を一緒に摂ることができる“シンバイオティクス”を訴求した「ヤクルト400W」を本年1月に九州地区限定で導入しました。
ア. 主に20~30代の女性に向けたブランド「三つ星Factory」商品として販売している美容ドリンク「CHOBI(チョビ)」について、新たに1日分のビタミンEを追加するとともに、より飲みやすいすっきりとした風味へリニューアルし、本年1月に導入しました。
イ. 袋入り即席めん「ヤクルト麵許皆伝」のシリーズ品として、ガーリックをきかせた旨みのあるとんこつ味の「ヤクルト麵許皆伝 とんこつ味」を昨年10月に導入しました。
当分野の研究開発費は4,461百万円です。
医薬品研究開発分野においては、抗がん剤を中心とした薬剤の研究開発を進めています。
ドイツの4SC社から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」については、皮膚T細胞リンパ腫を対象とした第Ⅱ相国際共同臨床試験を実施中です。
米国のベラステム社から導入したPI3K阻害剤「デュベリシブ」については、再発または難治性の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫を対象とした第Ⅰ相臨床試験および再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫を対象とした第Ⅱ相国際共同臨床試験を実施中です。また、その他血液がんに対する開発の可能性についても検討中です。
「結腸・直腸がん」「胃がん」などの標準的治療薬として広く用いられている抗悪性腫瘍剤「エルプラット」(一般名:オキサリプラチン)については、「進行・再発胃がん」の用法・用量の追加を目的とした第Ⅲ相臨床試験を大鵬薬品工業株式会社と共同で実施中です。
基礎創薬研究分野では、抗がん剤およびその周辺領域でのシーズを確保するための研究を引き続き実施しています。
当分野の研究開発費は
その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまのニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌はっ酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。
基礎化粧品については、乳酸菌生まれの保湿成分である「S.E.(シロタエッセンス)」を配合した保湿効果の高い基礎化粧品「ラクトデュウ」シリーズのリニューアルを昨年7月に実施しました。また、当社独自の「浸透促進技術」により美白有効成分の効果を高め、輝く美しさへと導く薬用美白美容液「クリスタンス ホワイトリペア エッセンス」のリニューアルを本年3月に実施しました。
トイレタリー商品については、大人の髪悩み(パサつき、うねり、つや、ボリューム、ハリ・コシ、切れ毛、指通り感の悪さ)に応える“髪の健康”を考えたヘアケアシリーズ「ラミーヌ S.E.」として昨年12月にリニューアルを実施しました。
当分野の研究開発費は