(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します」という企業理念に基づき、人々が健康とゆとりと生きがいを実感できる生活づくりに貢献し、地域社会とともに発展する企業を目指しています。
また、株主の皆さまやお客さまをはじめ、ひろく社会から信頼され、魅力のある企業となるよう、本業を基本とした着実な事業展開に徹するとともに、透明性の高いガラス張りの経営をおし進めていきます。
(2) 経営環境
当社グループをとりまく環境は、国内の人口減少等による市場の伸び悩み、お客さまのニーズの多様化や品質、環境問題に対する意識の高まりなど、刻々と変化を続けています。また、今後の経済は、新型コロナウイルス感染症の影響や世界情勢の変化によるさまざまな不安材料が存在し、先行きが不透明な状況で推移すると思われます。
このような環境のもと、当社グループは引き続き、創業当初から提唱する「予防医学」「健腸長寿」の考え方に基づき、お客さまの健康づくりに役立ち、社会の健康課題の解決に寄与する商品やサービスを提供します。そして、長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」に立脚し、飲料・食品、医薬品および化粧品を中核とした事業ならびに積極的な国際展開を行っていくことに加え、多様化するお客さまの健康志向に応えるヘルスケア関連領域での事業拡大を推進します。事業推進にあたっては、グループの強みである「研究開発・技術力」と「当社グループ独自の宅配システム」を活かし、お客さまへのさらなる価値提供により健康社会の実現に貢献することで、社会とともに持続的な成長を目指します。
(3) 長期的な経営戦略
《「Yakult Group Global Vision 2030」の策定と推進》
当社は、ヤクルトグループとしての成長を維持し変化に対応していくための道標として、2021年度から2030年度までの長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」を策定しました。
主な内容は以下のとおりです。
長期ビジョン(2021年度~2030年度)
《目指す姿》
「世界の人々の健康に貢献し続けるヘルスケアカンパニーへの進化」
《定性目標》
・世界の一人でも多くの人々に健康をお届けする
・一人ひとりに合わせた「新しい価値」をお客さまへ提供する
・人と地球の共生社会を実現する
《定量目標》(2030年度目標)
グローバル乳本数 5,250万本/日(日本1,050万本/日、海外4,200万本/日)
連結売上高 5,500億円
連結営業利益 800億円(営業利益率14.5%)
《実現のための戦略》
2030年度に向け、飲料および食品製造販売事業部門(海外)を引き続き成長させるとともに、飲料および食品製造販売事業部門(日本)の収益性をさらに向上させることにより、グローバル乳本数、連結売上高、連結営業利益それぞれを伸ばしていきます。
このうち、海外においては、「深耕と拡大」を引き続き推進するとともに、新たな成長モデルの構築を図ります。日本においては、多様化するお客さまのニーズに応える、新たな商品やサービス開発に積極的に挑戦し、需要獲得を目指します。
これらに加えてヘルスケア関連領域の事業拡大推進等により、持続的な成長の実現を目指します。
(4) 中期経営計画
2021年度から2024年度までの4年間を対象期間とする中期経営計画の内容は以下のとおりです。
(2024年度目標)
グローバル乳本数 4,540万本/日(日本1,040万本/日、海外3,500万本/日)
連結売上高 4,580億円
連結営業利益 610億円(営業利益率13.3%)
(5) 健康経営の推進
当社は、企業理念を実現するためには、従業員の健康保持・増進が不可欠であるとの考えに立ち、2017年に「健康宣言」を策定し、従業員の生産性向上と組織の活性化を目的に健康経営に取り組んでいます。また、代表取締役社長を最高健康責任者、人事部内に設置した専門組織を実務推進担当部署として、ヘルスリテラシー向上施策や各種健康診断等を実施し、「健康経営優良法人(大規模法人部門)~ホワイト500~」に5年連続で認定されています。
今後も戦略的に健康経営を推進し、従業員が健康でいきいきと働き続けられる環境づくりを進めることで生産性向上をもたらし、業績と企業価値の向上につなげていきます。
(6) 優先的に対処すべき課題
当社グループは前述の経営環境のもと、長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」の実現に向け、飲料・食品、医薬品および化粧品を中核とした事業ならびに積極的な国際展開を行っていきます。また、「ヤクルトグループ 環境ビジョン」の実現に向けて、環境に関するマテリアリティを「気候変動」「プラスチック容器包装」「水」の3分野に特定し、人と地球の共生社会を実現するバリューチェーン環境負荷ゼロ経営を目指します。
各事業部門が優先的に対処すべき課題は次のとおりであります。
<飲料および食品製造販売事業部門(日本)>
お客さまの価値観の多様化や健康志向の高まりに対応するため、販売体制の強化を図り、継続して「腸」の健康の大切さを訴求するとともに、当社独自の乳酸菌の有用性をお客さまに体感していただくことで、当社商品の優位性を高めていきます。
宅配チャネルにおいては、人材獲得競争が激化する中、ヤクルトレディが働きやすい環境を実現するため、多様な採用条件の設定や業務効率化に向けたインフラ整備等を推進することで、ヤクルトレディの採用数の拡大と定着を図ります。また、ウェブサイトにおける情報提供を充実させることで、お客さまへのアプローチを強化し、売り上げの増大に努めます。
店頭チャネルにおいては、プロバイオティクス市場における優位性をさらに高めるため、お客さまの価値観・行動の変化に対応した取り組みを強化し、当社独自の乳酸菌の認知度の向上に向けた「価値普及」活動を推進します。
<飲料および食品製造販売事業部門(海外)>
プロバイオティクスに対する注目が高まる中、事業の拡大および収益性の向上という課題に対し、販売エリアでのさらなる市場深耕、既進出国・地域における未配エリアへの市場拡大および新規進出国の検討を進めていきます。あわせて、納入店舗数の拡大、新規チャネルでの取引強化および宅配体制の充実と人材の確保・育成に取り組みます。
販売本数が多い主なエリアである中国においては、市場の拡大および深耕を目指し、未販売地域への展開および販売拠点の増加に取り組むほか、販売組織の強化を進めていきます。また、お客さまの購買行動の変化に対応するため、学校、病院等の新規チャネルを開拓するとともに、同国内の成長市場であるEC分野における取り組みを積極的に推進します。インドネシアにおいては、実績のさらなる伸長を目指し、事業成長の原動力である宅配組織の継続的な強化に努めていくとともに、納入店舗数の拡大に取り組んでいくことで、売り上げの増大を目指していきます。
なお、新型コロナウイルス感染症に対しては、国・地域ごとにそれぞれ対策を講じ、行政機関の指示に従い、引き続き営業・生産活動を行っていきます。
<医薬品製造販売事業部門>
増大する医療費の抑制、後発医薬品の使用促進や毎年実施される薬価改定等、医療制度改革を中心として、国内市場環境が大きく変化し続けています。その中で、当社の強みである最新の情報提供力やこれまで築き上げてきた医療関係者との信頼関係を活かして売り上げ確保に努めるとともに、徹底した経費の見直しに加え、組織統合による緊密な連携をとおして業務効率化を進め、営業利益の確保に努めます。また、当社の強みを活かした他社とのプロモーション提携について積極的に取り組んでいくとともに、後発医薬品の新規導入を引き続き推進して販売品目の拡充を図っていきます。さらに、中期経営計画(2021-2024)で掲げた「医療ニーズに応える優れた製品の継続的な開発・上市」「経営資源の最適化による収益性の向上」「『人々の健康・長寿』につながる新規事業の企画・検討」といった3つの事業戦略を積極的に推進していきます。
<その他事業部門>
化粧品につきましては、同業他社との競争激化をはじめ、他業界からの新規参入など競争環境がますます厳しくなっていく中、国内においては、自社商品とサービスの価値を高め、売り上げを増大させることで事業基盤の強化を図ります。また、海外においては、中国のEC市場での認知度向上を図り、同国内での売り上げの増大を目指します。
一方、プロ野球興行につきましては、新型コロナウイルス感染症の感染防止策を講じたうえで、引き続き、安心して観戦していただける環境づくりを進めるとともに、ファンの皆さまの期待に応えられるようチーム力の強化に取り組みます。
当社グループは、引き続きコンプライアンス経営を推進するとともに、企業の社会的責任や株主の皆さまへの説明責任を果たしつつ、経営の効率化と業績の向上に鋭意努力してまいります。
また、企業理念である「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します」の実現に向けて、コーポレートスローガン「人も地球も健康に」のもと、地球環境全体の健康を視野に入れ、すべての事業活動を通じて、良き企業市民として歩んでまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与えると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
(1) ヤクルト類への依存および競争環境等に関するリスク
当社グループの主要商品は、「乳酸菌 シロタ株」を使用したヤクルト類であり、その売上高は、当社グループ全体の売上高の大部分を占めています。当社グループは、ヤクルト類の販売をさらに増加させ、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献することを目指しており、ヤクルト類の売上比率が高い海外事業の拡大に伴って、今後、ヤクルト類に対する依存度は、さらに高まる可能性があります。
当社グループは、研究開発投資を行い、付加価値の高い商品の開発に努めておりますが、当社グループの新商品が消費者に受け入れられ、また競合製品との比較で十分な優位性を獲得し、維持できるかについては不確実性が伴います。プロバイオティクスを使用した飲料を含む飲料および食品業界は、熾烈な競争にさらされており、当社グループの乳製品よりも優れた健康上の効果があるとされる、もしくはより低価格な競合乳製品の登場による更なる競争の激化、またはプロバイオティクスの安全性や効用に対する消費者の認識や嗜好の変化といった、ヤクルト類の販売に悪影響を及ぼす事象が発生した場合、ヤクルト類への依存度の高さから、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業のグローバル化に伴うリスク
当社グループは、世界各国で事業を展開し、海外において製造および販売活動を行っています。各事業所の堅調さを受けて年々、当社グループの業績における海外とりわけアジアの新興国市場の比重は高くなっており、国内は人口減少に伴い市場が縮小する可能性があることから、この傾向は今後も続くことが見込まれます。
海外においては国ごとに異なる文化や競争環境が存在します。また、当社グループが事業を展開する国・地域(今後当社グループが進出する国・地域を含む。)には、政治的・経済的な変化が当社グループの事業環境に及ぼす影響が大きな国・地域も含まれており、様々な手段を講じてはいても、これらの外部環境の変化等の結果、当社グループが成長機会を捉えられず、また投資に対して期待される成果を得ることができない場合があります。さらに、社会的背景または法規制の異なる海外においては、国内に比べて契約上の権利行使や知的財産権の保護が困難となり、または予期しない法律もしくは諸規制の制定・改廃などにより当社グループの事業活動に問題が生じる恐れがあります。例えば、欧州ではプロバイオティクスに関する健康強調表示(ヘルスクレーム)が認められておらず、当社グループの商品の宣伝方法の制約となっていますが、かかる規制が他の国でも導入されない保証はありません。これらの場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、中国をはじめとして、今後も海外における事業展開を拡大する計画であり、工場や販売拠点の新設および既存の設備の増強のための多額の投資を予定していますが、上記をはじめとする要因等により当社グループの想定通りの成長を実現できず、投資に見合った収益を得られない可能性があり、結果として当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(3) 商品の安全性に関するリスク
安全性や品質管理に対する消費者の関心が一層高まっているなか、国内外を問わず、安全、安心な商品を提供していくことが強く求められています。当社グループの取扱商品は、食品衛生法、医薬品医療機器等法その他国内外の法令や諸規制の適用を受けており、より一層の安全性、品質管理が求められていると認識しています。当社グループにおいても、安全な商品提供を第一と考え、品質管理体制の強化を図っています。
しかし、商品の安全性等に関し不測の事態が発生した場合、商品の製造または販売を停止せざるを得ない場合や、商品を回収せざるを得ない場合があり、そのための費用が生じるだけでなく、当社グループの商品の評価やブランドイメージが損なわれ、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、現実の問題か根拠のない風評であるかを問わず、また当社グループの商品であるか他社の商品であるかを問わず、プロバイオティクスを使用した乳製品の安全性や健康上の効果に対する消費者の信頼が低下するような事態が発生した場合には、当社グループの商品の販売に影響を及ぼす可能性があり、結果として当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(4) 当社グループの販売体制に関するリスク
当社グループの飲料および食品製造販売事業における販売チャネルは、当社グループ独自のヤクルトレディによる宅配チャネルと、店頭チャネルとに分けられます。プロバイオティクスの普及のために宅配チャネルの果たす役割は大きく、ヤクルトレディの働く環境整備に努め、ヤクルトレディのネットワークを拡充すること、またヤクルトレディの教育訓練を充実させることは、国内外を問わず、当社グループの販売活動において極めて重要であると考えています。
飲料および食品製造販売事業(日本)における商品の販売の大部分は、宅配チャネル、店頭チャネルともに全国の販売会社によって行われており、ヤクルトレディの大部分はそれぞれの販売会社から業務を受託しています。また、国内の売り上げの約半数は、当社との間に資本関係のない販売会社(子会社または関連会社ではない販売会社)によるものであります。当社と販売会社、さらに販売会社とヤクルトレディの良好な関係が維持できない場合、またはヤクルトレディを含む適切な人材を確保できない場合には、当社グループの商品の販売に著しい支障をきたし、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
また、販売会社が当社グループの商品の販売を停止した場合または販売ができなくなった場合には、当社グループの商品の販売に著しい支障をきたし、または販売会社の支援や体制整備に多額の費用や損失を要するなど、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
飲料および食品製造販売事業(海外)においては、原則として当社の子会社が製造から販売まで行っておりますが、一部の国・地域においては当社の関連会社が事業を行っております。また、国・地域ごとに宅配チャネルの占める重要性は大きく異なりますが、タイ、韓国、インドネシア、メキシコといった国々では、当社グループはヤクルトレディによる宅配チャネルに依存しています。海外においても、当社グループが、現地の関連会社を適切に管理できない場合、またはヤクルトレディとの良好な関係を維持できない場合や海外事業の深耕・拡大に伴い必要となるヤクルトレディを含む適切な人材を確保できない場合等には、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
店頭チャネルにおいては、小売店でのプライベート・ブランド商品を含む他社製品との競争や、イー・コマースなどの新たな販売手法との競争が、当社グループの商品の販売に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5) 原材料価格、人件費などの費用の増加に関するリスク
当社グループの商品、特に主要商品である乳製品乳酸菌飲料の原材料の購入価格が、市場の需給関係の状況や為替変動などにより高騰した場合、または原油価格が高騰しもしくは高止まりが続く場合には、容器等包装資材を含めた製造経費、さらには運送費へも影響を与えます。また、日本国内では、労働人口の減少や労働環境の改善に向けた動き等により、人件費などの費用が増加し、海外では、特に新興国市場において、現時点では比較的安価な人件費が、経済成長と共に上昇する可能性があります。さらに、人件費の高騰を受けて、ヤクルトレディに対して支払う手数料が増加した場合には、当社グループが負担する費用が増加し、または当社から販売会社に対する商品の販売価格に影響を及ぼす可能性があります。このような原材料価格や人件費などの費用の上昇の直接的または間接的な影響をコスト削減努力で吸収できず、また市場の状況により販売価格の改定もできない場合には、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(6) 医薬品事業に関するリスク
① 特定の製品への依存に関するリスク
当社の医薬品事業は、抗悪性腫瘍剤「エルプラット」の売上に大きく依存していますが、「エルプラット」の売上は、後発医薬品の上市後減少しております。その結果、当社グループの医薬品事業の売上高は近年減少しており、今後も同様の傾向が続く可能性があります。
② 新薬の開発に関するリスク
当社グループは、新薬の上市を目指して研究開発活動に努めていますが、医薬品は、所轄官庁の定めた有効性と安全性に関する厳格な審査により承認されてはじめて上市可能となります。
医薬品の研究開発には多額の費用がかかりますが、その途上において、承認を受けるために必要な有効性または安全性を充たしていないと判断された場合には、研究開発を途中で断念することがあり、その場合には投下した費用を回収できない可能性があります。また、承認を受けるために追加の試験が必要となる結果、多額の追加費用が発生する可能性、または新薬の上市が遅延する可能性があります。さらに、新薬の上市に至ったとしても、投下した費用に見合った売上を達成できない可能性があります。
③ 特許権満了等に伴うリスク
当社グループが上市する先発医薬品に関する特許権が満了した場合、低価格の後発医薬品が市場に参入し、当社の先発医薬品の販売に悪影響を及ぼす可能性があります。日本政府は後発医薬品の使用促進を積極的に進めており、今後、後発医薬品との競争は激化する可能性があります。
当社グループは後発医薬品の製造販売も行っておりますが、後発医薬品市場は、参入障壁が比較的低く競争が激しいため、収益性が低下する可能性があります。
④ 薬価引下げに伴うリスク
日本の医療保険制度における薬価は定期的に引き下げられており、当社の医薬品の価格も継続的に低下しています。薬価改定は2018年4月に実施されて以降、毎年薬価の改定が行われることとされています。
(7) 「ヤクルト」ブランドの毀損に関するリスク
当社グループにとって、そのブランドイメージを維持することは極めて重要です。「ヤクルト」は社名と主力品名に共通するブランドであり、ヤクルト類をはじめ、ヤクルトの名を冠する商品のとりわけ品質・安全性に関連する問題は、当社グループおよびその商品のブランドイメージに多大な影響を及ぼす可能性があります。また、国内の販売会社やヤクルトレディといった「ヤクルト」の名称を使用する関係者に不祥事があった場合にも、当社グループのブランドイメージに多大な影響を及ぼす可能性があります。
(8) 知的財産権に関するリスク
当社グループの製品や技術は、特許その他の知的財産権によって一定期間保護されていますが、それらは第三者によって侵害される可能性があり、それによって当社グループの売上が減少する可能性があります。また、一部の国では、当社グループの製品の容器と類似の商標が競合他社によって既に登録されており、これにより、当該国における製品の販売に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、製品の回収、生産および販売の終了、損害賠償またはロイヤルティの支払いなどを要求される可能性があります。
(9) 訴訟、法令遵守等に関するリスク
当社グループは、日本および事業を行う海外における多岐にわたる法規制の適用を受けており、当社グループに適用のある法規制の変更の結果、経済情勢および消費動向に悪影響が及び、または当社グループに追加的な費用もしくは設備投資の必要が生じる可能性があります。当社グループは、これらの法規制を遵守するよう最大限注意していますが、当社グループによる法規制への違反の結果、行政処分を受け、または損害賠償請求その他の訴訟への対応を余儀なくされる可能性があります。
(10) 業務提携、合併・買収および合弁事業等に関するリスク
当社グループは、大規模なものや重要性の高いものも含め、業務提携、合併・買収および合弁事業の可能性を常に検討しており、実際に、当社グループの海外法人には、現地パートナーとの合弁会社が含まれます。しかしながら、当社グループがそれらの適切な機会を見出せるか否か、相手方と合意できるか否か、必要な資金を調達できるか否かはいずれも不確実であり、また、仮に取引を実行できたとしても、当社グループが期待していた利益または効果を実現できない可能性があります。
(11) 為替の変動に関するリスク
当社グループの連結財務諸表は日本円により表示されているため、連結財務諸表作成時において、海外連結子会社および持分法適用会社の財政状態および業績を日本円に換算するにあたり、為替レートの変動の影響を受けます。とりわけ人民元、インドネシア・ルピア、メキシコ・ペソ、ブラジル・レアルなどの為替レートの変動は、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(12) 投資有価証券に関するリスク
当社グループは、主に事業上の協力関係の形成を目的として特定投資株式を含む投資有価証券を保有しており、そのうち市場価格のある上場株式等について市場価格の変動が生じた場合には、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の保有する投資有価証券について、帳簿価格に対する価値の著しい下落が認められる場合には、減損損失の計上等により、当社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(13) 有利子負債に関するリスク
当社グループは、事業に必要な資金の一部を銀行借入によって調達していますが、金利の上昇その他金融市場が悪化した場合には、金利負担が増加し、または適時に当社グループの希望する条件で資金調達ができなくなることにより、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの銀行借入の借入先は特定の金融機関に集中しており、調達手段の多様性に乏しいといえます。
(14) 情報システムおよび情報セキュリティに関するリスク
当社グループの事業運営は情報システムに依存しており、情報機器、ソフトウェアまたはネットワークの障害により業務が滞り、または中断され、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、顧客情報やその他の機密情報の流出を防ぐため、システム管理や社員教育等によりセキュリティ対策を実施しています。しかしながら、盗難や外部からのサイバー攻撃などの予期し得ない事態により、これらの情報が流出した場合、当社グループの信頼性が低下するほか、損害賠償等の多額の費用負担が発生し、その結果、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(15) 災害、地政学要素に関するリスク
当社グループは、世界各国・地域で事業を展開しており、地震などの大規模な自然災害が発生した場合や、テロ、紛争等が発生した場合には、直接・間接的に当社グループの事業活動が制限され、業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(16) 感染症の流行に関するリスク
当社グループは、世界各国・地域で事業を展開しており、新型コロナウイルス感染症をはじめとした新型ウイルスなどの大規模な感染症の流行が発生した場合には、国内外のサプライチェーンの混乱、消費の低迷等が起こる可能性があります。当社グループでは、危機的事項の発生に対し、危機管理規程に基づき、全社的な対応体制を構築するとともに、生産・供給体制の整備に努めていきます。しかしながら、感染拡大の影響により、商品の製造または販売を停止せざるを得ない場合には、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(17) 環境問題への対応に関するリスク
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、原材料調達に関わるサプライチェーンも同様に世界各国に広がっています。一方、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等によると、地球温暖化の進行は疑う余地がないものとされています。当社グループにとっては、地球温暖化が進行すると、乳牛や農作物への悪影響が深刻化し、重要な原材料の調達が困難になるといったリスクのほか、事業活動にとって非常に重要な水についても地球温暖化とも関連した水災害の発生や無秩序な水の使用による取水可能量の制限、水質汚濁等により、さまざまなリスクが顕在化する可能性があると考えられます。そこで当社グループは、2050年のあるべき姿である「環境ビジョン2050」を策定し、環境に関するマテリアリティを「気候変動」「プラスチック容器包装」「水」の3分野と特定したうえで、人と地球の共生社会を実現するバリューチェーン環境負荷ゼロ経営を目指していきます。しかしながら、行動計画の実現を世界標準レベルで達成できない場合や対応コストが増加した場合、事業の持続困難や当社グループの信用低下につながり、業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(18) 海洋プラスチック問題に関するリスク
当社グループの主要商品であるヤクルト類をはじめ、多くの商品においてプラスチック容器を使用しております。また、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するために、今後ヤクルト類等の販売拡大を目指しております。しかしながら、マイクロプラスチックによる海洋汚染に関する国際的な関心の高まり等により、プラスチック製容器包装の問題がクローズアップされています。当社グループは、環境配慮型容器包装の基礎技術の確立を目指し、資源循環しやすい素材への転換や容器包装へのプラスチックの使用量の削減、生産工程で使用するプラスチック製梱包材の再利用等の取り組みを進めていきますが、上記の問題に適切な対応ができない場合、主要商品であるヤクルト類等の販売が制限される可能性があるほか、法規制の対応コストが発生するなど、当社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(19) 人権に関するリスク
当社グループは、事業を行う過程やバリューチェーンにおいて、直接あるいは間接的にさまざまなステークホルダーの人権を侵害しかねない可能性があることを認識しています。したがって、当社グループは、人権尊重の責任を果たすため、「ヤクルトグループ人権方針」に基づき、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し実践していきます。しかし、サプライチェーン上での強制労働や児童労働、環境汚染による健康被害、お客さまに対する健康に関する誤った情報の伝達等により、人権に関するリスクが顕在化した場合、訴訟、操業停止、商品の不買運動の発生など、当社事業に多大な影響を与える可能性があります。
(20) 経営戦略および事業計画に関するリスク
当社グループは、2021年6月に長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」を策定し、企業価値向上に向け、事業の推進を図ってまいります。しかしながら、新型コロナウイルス感染症による影響、本「事業等のリスク」に記載された事項を含むリスク要因や当社グループの方針の変更、経済情勢や経営環境の変化などにより、当社グループがこれらの施策を実行できない可能性や、計画を達成できない可能性があります。
なお、上記以外にも、さまざまなリスクがあり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。当社グループでは、これらのリスクの存在を認識したうえで、発生の回避および速やかな対応に努める所存です。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい経済環境が残る中、各種政策の効果、海外経済・個人消費の改善傾向により、景気の持ち直しが期待されてきたものの、原材料価格の動向等による下振れリスクへの注視が必要な状況で推移しました。
このような状況の中で、当社グループは、事業の根幹であるプロバイオティクスの啓発・普及活動を展開し、商品の優位性を訴求してきました。また、販売組織の拡充、新商品の研究開発や生産設備の更新に加え、国際事業や医薬品事業にも積極的に取り組み、業績の向上に努めました。
この結果、当連結会計年度の連結売上高は415,116百万円(前期比7.6%増)となりました。利益面においては、営業利益は53,202百万円(前期比21.8%増)、経常利益は68,549百万円(前期比19.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は44,917百万円(前期比14.4%増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日。以下「収益認識会計基準」という。)等の適用により、売上高は7,618百万円減少していますが、利益面への影響はありません。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
・飲料および食品製造販売事業部門(日本)
乳製品につきましては、当社独自の「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」などの科学性を広く普及するため、新型コロナウイルス感染症の感染防止策を講じたうえで、地域に根ざした「価値普及」活動を広告展開と連動させながら展開しました。
宅配チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「Yakult(ヤクルト)1000」および「ヤクルト400W」を中心に、エビデンスに基づいた「価値普及」活動を実施するとともに、インターネット注文サービス「ヤクルト届けてネット」の活用やウェブサイトにおける情報提供を充実させることで、新規のお客さまづくりと既存のお客さまへの継続飲用の促進を図りました。また、宅配組織の強化を図るため、ヤクルトレディが働きやすい環境の整備を促進するとともにインターネットを活用した採用活動を積極的に実施しました。
店頭チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「Newヤクルト」シリーズについて、家族での飲用促進を目的としたキャンペーンを実施したほか、期間限定パッケージを展開することで店頭での視認性向上を図り、売り上げの増大に努めました。
商品別では、昨年4月に「Yakult(ヤクルト)1000」、8月には「ヤクルト400W」の販売地区を全国に拡大しました。また、10月には「Yakult(ヤクルト)1000」の店頭向けシリーズ品である乳製品乳酸菌飲料「Y1000」を全国で発売しました。さらに、ハードタイプヨーグルト「ソフール」について、1年を通じて4品の期間限定アイテムを発売しブランドの活性化を図りました。
このような取り組みを中心に販売強化に努めた結果、乳製品全体では前期を上回る実績となりました。
一方、清涼飲料につきましては、栄養ドリンク「タフマン」シリーズのキャンペーンを実施するなど、売り上げの増大に努めたものの、清涼飲料全体では前期を下回る実績にとどまりました。
そのほか、東京ヤクルトスワローズのリーグ優勝および日本シリーズ制覇に伴い、応援していただいた皆さまに感謝の意を表すため、記念施策を実施しました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(国内)の連結売上高は203,293百万円(前期比1.8%減)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により売上高は22,203百万円減少しています。
・飲料および食品製造販売事業部門(海外)
海外につきましては、1964年3月の台湾ヤクルト株式会社の営業開始をかわきりに、現在29の事業所および1つの研究所を中心に、39の国と地域で主として乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」の製造、販売を行っており、本年3月の一日当たり平均販売本数は約3,216万本となっています。
また、新型コロナウイルス感染症の影響は、国・地域の感染拡大状況、各国政府・地方政府の方針、各種行政指導等により異なりますが、それぞれ対策を講じ、行政機関の指示に従い、営業・生産活動を行っています。
ア.米 州 地 域
米州地域においては、ブラジル、メキシコおよび米国で乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売しています。
米国においては、東部を中心とする積極的な新規開拓等により納入店舗数が増加した結果、販売実績は順調に推移し、本事業年度は過去最高の販売本数となりました。
その他米州地域では、宅配・店頭の両チャネルにおける販売体制の強化を図り、売り上げの増大に努めました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(米州地域)の連結売上高は47,388百万円(前期比13.2%増)となりました。
イ.アジア・オセアニア地域
アジア・オセアニア地域においては、香港、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、インドおよび中国などで乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などを製造、販売し、アラブ首長国連邦(UAE)などでは「ヤクルト」などを輸入販売しています。なお、ミャンマーにおいては、政情等に鑑み、営業・生産活動を一時的に見合わせています。
インドネシアにおいては、創業30周年キャンペーンなどの販売強化策を実施するとともに、着実な宅配組織の拡充と納入店舗数の増加により売り上げが増大し、本事業年度は過去最高の販売本数となりました。
中国においては、昨年8月に販売拠点を50か所に拡大し、さらなる販売体制の強化を図りました。また、生産体制の強化に向けて、無錫第2工場(無錫ヤクルト株式会社)の建設を進めています。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(アジア・オセアニア地域)の連結売上高は128,199百万円(前期比11.5%増)となりました。
ウ.ヨーロッパ地域
ヨーロッパ地域においては、乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」などをオランダで製造し、同国を含め、ベルギー、イギリス、ドイツ、オーストリアおよびイタリアなどで販売しています。
ヨーロッパにおいては、プロバイオティクスを普及するための活動に対する厳しい規制の中で、健康強調表示(ヘルスクレーム)の承認に向け、各種の取り組みを行うほか、各国の市場特性に合った販売活動の展開により、持続的成長を目指しました。
イギリスにおいては、昨年9月から実施している各種メディアを通じた広告展開および量販店施策などにより、販売実績は順調に推移しています。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(ヨーロッパ地域)の連結売上高は9,413百万円(前期比9.9%増)となりました。
・医薬品製造販売事業部門
医薬品につきましては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う医療機関への訪問自粛の対応としてウェブ会議等を活用しながら、がんおよびその周辺領域に特化した当社製品等の啓発活動や適正使用を推奨する活動を推進しました。
当社の主力製品である抗悪性腫瘍剤「エルプラット」については、行政方針に沿って後発医薬品へ切り替える医療機関が増加傾向にあるものの、医療関係者の治療選択肢であり続けるために、先発医薬品を開発した当社の強みである情報提供力を活かした活動を展開しました。また、日本セルヴィエ社とプロモーション契約をしている抗悪性腫瘍剤「オニバイド®」については、プロモーション活動を積極的に行い、市場浸透および使用促進を図りました。加えて、本年3月には抗悪性腫瘍剤「ベルケイド」の後発医薬品である「ボルテゾミブ注射用3mg『ヤクルト』」を発売しました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、入院や手術の延期、受診抑制等により当社製品の使用機会が減少したことに加え、昨年4月に実施された薬価改定において大半の当社製品の薬価が引き下げられたことにより、前期並みの実績にとどまりました。
一方、研究開発においては、セキュラ・バイオ社(米国)から日本における開発および商業化に関する独占的ライセンスを受けているPI3K阻害剤「デュベリシブ」や、4SC社(ドイツ)から導入しているHDAC阻害剤「レスミノスタット」等の開発品目の臨床開発を推進しました。なお、「デュベリシブ」については、本年3月に再発または難治性の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫に係る製造販売承認申請を行いました。
これらの結果、医薬品製造販売事業部門の連結売上高は16,992百万円(前期比6.2%減)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により売上高は702百万円減少しています。
・その他事業部門
その他事業部門には、化粧品の製造販売およびプロ野球興行などがあります。
化粧品につきましては、当社が創業以来培ってきた乳酸菌研究から生まれたオリジナル保湿成分「S.E.(シロタエッセンス)」の「価値普及」活動に重点をおき、お客さまの「内外美容」の実現と化粧品愛用者数の増大に努めました。
具体的には、昨年10月までに保湿効果の高い基礎化粧品「ラクトデュウ」シリーズから新商品2品を発売し、新たなお客さまとの接点拡大および継続愛用の促進を図りました。また、本年3月にヤクルトの乳酸菌発酵技術を集結した「パラビオ」シリーズから高機能美容液「パラビオ ACセラム サイ」を発売し、お客さまの満足度向上と売り上げの増大に努めました。
しかしながら、会計基準の変更等もあり、化粧品全体としては、前期をやや下回る実績となりました。
一方、プロ野球興行につきましては、観客動員数等において、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたものの、ファンの皆さまの声援を受け、東京ヤクルトスワローズはリーグ優勝および日本シリーズ制覇を果たすことができました。今後も皆さまのご期待に応えるべく、愛されるチームづくりと各種ファンサービスの充実を図っていきます。
これらの結果、その他事業部門の連結売上高は19,473百万円(前期比10.0%増)となりました。
なお、収益認識会計基準等の適用により売上高は724百万円減少しています。
当連結会計年度末の総資産は672,855百万円(前連結会計年度末比37,753百万円の増加)となりました。
純資産は484,935百万円(前連結会計年度末比45,174百万円の増加)となりました。主な要因は、自己株式を取得したことおよびその他有価証券評価差額金の減少があったものの、円安による為替換算調整勘定の増加および親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したためです。
また、自己資本比率は66.3%(前連結会計年度末比2.5ポイントの増加)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ27,959百万円増加し、150,725百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が前期と比較し10,143百万円増加の69,479百万円となったことに加え、仕入債務等の支払いが減少したこと等により、前期と比較し17,570百万円の増加となりました。その結果、営業活動によるキャッシュ・フローは73,390百万円となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較し、主に固定資産の取得による支出の増加や投資有価証券の売却による収入が減少したものの、定期預金(期間3か月超)からの払戻および固定資産の売却による収入が増加したこと等により、支出額が7,747百万円減少しました。その結果、投資活動によるキャッシュ・フローは△11,875百万円となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に自己株式の取得による支出および配当金の支払額が増加したこと等により、支出額が13,901百万円増加しました。その結果、財務活動によるキャッシュ・フローは△45,156百万円となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は販売価格によっています。
2 セグメント間の取引については相殺消去しています。
当社グループは、受注生産は行っていません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しています。
2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
ア.財政状態
当連結会計年度の自己資本比率は66.3%と前連結会計年度の63.8%から2.5ポイント増加しました。
非支配株主持分を含めた純資産額は、前期比10.3%、451億円増加しました。主な要因は、自己株式の取得およびその他有価証券評価差額金が減少したものの、円安による為替換算調整勘定の増加および親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したためです。
また、当連結会計年度の自己資本利益率(ROE)は10.6%と前連結会計年度の10.1%から0.5ポイント増加しました。総資産経常利益率(ROA)は10.5%と前連結会計年度の9.1%から1.4ポイント増加しました。
有利子負債の短期借入金については、主に当社の返済により105億円減少しました。また、1年内返済予定を含む長期借入金についても、返済により54億円減少しました。この結果、有利子負債依存度(有利子負債÷総資産)は12.0%と前連結会計年度の15.2%から3.2ポイント減少しています。また、有利子負債対自己資本比率は18.1%と前連結会計年度の23.8%から5.7ポイント減少し、財政状態は依然として堅固な状態が続いています。
売上高は前連結会計年度から294億円増収(前期比7.6%増)の4,151億円となりました。飲料および食品製造販売事業部門(日本)では、37億円の減収(前期比1.8%減)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)では、195億円の増収(同11.8%増)、医薬品製造販売事業部門では、11億円の減収(同6.2%減)、その他事業部門では、17億円の増収(同10.0%増)となりました。事業部門別の調整額控除前の売上高構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が47.9%(前連結会計年度は50.7%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が43.5%(同40.6%)、医薬品製造販売事業部門が4.0%(同4.4%)、その他事業部門が4.6%(同4.3%)となっています。飲料および食品製造販売事業部門(日本)が減収となった主な要因は、新商品導入効果等により乳製品の売上が増加したものの、収益認識基準の適用により生産資機材等の売上が減少したためです。また、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が増収となった主な要因は、販売本数増加に加え、円安による為替換算のプラス影響等があったためです。医薬品製造販売事業部門が減収となった主な要因は、プロモーションフィーにより売上が増加したものの、薬価改定の影響が大きかったためです。
また、日本からの輸出を含めた海外売上高は前連結会計年度から11.9%増の1,872億円となり、海外売上高比率は45.1%と前連結会計年度の43.4%から1.7ポイント増加しました。
売上原価は1,666億円となり、前連結会計年度から4.9%増加しています。売上総利益は2,484億円となり、前連結会計年度に比べ9.5%増となりました。売上高売上総利益率は59.8%と前連結会計年度の58.8%から1.0ポイント増加しました。
販売費及び一般管理費は1,952億円と前連結会計年度から120億円増加しました。主な要因は、飲料および食品製造販売事業部門(海外)で円安による為替換算の影響による増加、および飲料および食品製造販売事業部門(日本)で売上増加に伴い販売費が増加したためです。
この結果、営業利益は532億円と前連結会計年度から95億円の増益(前期比21.8%増)となりました。事業部門別の調整額控除前の営業利益構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が41.5%(前連結会計年度は38.8%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が55.7%(同61.1%)、医薬品製造販売事業部門が3.9%(同0.3%)、その他事業部門が△1.1%(同△0.2%)となっており、増益であった飲料および食品製造販売事業部門(日本)の構成比が増加しました。
営業外収益は167億円と前連結会計年度から13億円増加しました。主な要因は、持分法による投資利益が増加したことによるものです。
営業外費用は14億円と前連結会計年度から0億円減少しました。
特別利益は42億円と前連結会計年度から2億円減少し、特別損失は33億円と5億円増加しました。
税金費用は前連結会計年度から43億円増加しました。主な要因は、本社において税効果会計により法人税調整額が増加したことによるものです。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は449億円と前連結会計年度から56億円の増益(前期比14.4%増)となりました。売上高当期純利益率は10.8%と前連結会計年度の10.2%から0.6ポイント増加しました。
為替レートの変動による影響は、当連結会計年度の売上高では142億円の増収、営業利益では31億円の増益と試算されました。ただし、この試算は、在外子会社の現地通貨建ての売上高、売上原価、販売費及び一般管理費に、前連結会計年度の各在外子会社における期中平均レートを適用して算出したものであり、為替変動に対応した販売価格等の影響は考慮していません。
当社グループは事業活動の維持拡大に必要な資金を確保するため、内部資金および金融機関からの借入を活用しています。
当社においては安定的、効率的に資金調達を行うため、国内金融機関6行と総額600億円の貸出コミットメント契約を締結しています。国内子会社については、主として資金調達をグループのキャッシュ・マネジメント・サービスを活用することにより、資金調達の一元化および効率化を図っています。結果として当連結会計年度末の有利子負債(長期・短期借入金)の9割以上が当社による調達となっています。
また、保有資金については、主に事業拡大のための設備投資、新商品開発のための研究開発および株主還元に活用しています。
当社グループは事業活動を円滑に行うため、安全性、安定性を考慮し手許資金を確保しています。当連結会計年度末の短期有利子負債135億円に対し、現預金は2,029億円となっており、流動性において十分な安全性を確保しています。また、余資については、安全性の高い短期的な預金等に限定して運用し、資金運用を目的とした投機的な取引は行わない方針です。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたっては、作成時点で入手している情報に基づき、合理的と考えられる見積りおよび仮定を用いていますが、見積り特有の不確実性があるため実際の結果は異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
当連結会計年度は、連結売上高4,151億円(連結売上高予想4,125億円に対して26億円の増)、連結営業利益532億円(連結営業利益予想515億円に対して17億円の増)となりました。
中期経営計画の1年目としては、前期と比較して連結売上高は294億円増(7.6%増)、連結営業利益は95億円増(21.8%増)と順調に推移しました。これは、国内における高付加価値商品の導入や、海外におけるアジアを中心とした販売数量の増加等が寄与したと考えられます。
今後も、新型コロナウイルス感染症の影響による事業活動への制約や世界経済の先行き見通しへの不安からくる消費低迷の可能性等、外部環境の厳しさはありますが、「Yakult(ヤクルト)1000」をはじめとする日本国内での高付加価値商品の販売拡大や海外における市場深耕・事業展開拡大など、当社の企業理念に基づき、長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」の戦略展開を推進していきます。
経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。
当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした飲料・食品、医薬品および化粧品などの研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学等の多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、飲料・食品、医薬品および化粧品等への利用を目指した機能性素材の開発に積極的に取り組んでいます。
当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。
① 国立精神・神経医療研究センターとの共同研究で、うつ症状を有する患者(大うつ病性障害または双極性障害)を対象に、患者の精神症状や腸内細菌叢等に「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の摂取が与える影響を前後比較試験で検証しました。その結果、乳製品の摂取により、ハミルトンうつ病評価尺度によるうつ症状スコアとピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)による睡眠の質スコアが有意に改善されました。また、乳製品の摂取に伴う抑うつ症状の軽減は腸内細菌叢と関連しており、ビフィドバクテリウムとアトポビウムクラスターが高い数で維持されている患者で顕著であることを確認しました。本研究により、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」の摂取によるうつ症状の緩和作用は、ビフィドバクテリウムやアトポビウムクラスターとの相互作用により高まる可能性が示され、今後、これら腸内常在菌との相互作用を活用した新たな治療法に繋がることが期待されます。本研究成果は、学術雑誌「Microorganisms」に掲載されました。
② 東京都健康長寿医療センター研究所との共同研究で、群馬県吾妻郡中之条町に在住の高齢者を対象に、腸内細菌叢の経時変化と、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の習慣的摂取が腸内細菌叢の変化に与える影響を疫学的に調査しました。具体的には、高齢者の糞便を2年連続で採取し、次世代シーケンサーにより腸内細菌叢の構成を分類学上の「科」レベルで測定しました。その結果、高齢者のほとんどは腸内細菌叢が安定しているが、約10%の高齢者では1年の間に大きな腸内細菌叢変化が生じていること、また、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品を習慣的に週3日以上摂取している高齢者では、摂取頻度が週3日未満の高齢者に比べて、1年間の腸内細菌叢変化が小さいことが明らかになりました。本研究により、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品の習慣的な摂取が、高齢者の腸内細菌叢の安定化に貢献する可能性が示されました。「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品が腸内細菌叢を安定化するメカニズムと腸内細菌叢の安定性が高齢者の健康に及ぼす影響を明らかにすることは、健康長寿社会の実現への糸口になると考えられます。本研究成果は、学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
③ 名古屋大学との共同研究で、食道がん患者を対象に、術前化学療法によるバクテリアルトランスロケーション(BT)の発生にシンバイオティクスの摂取が与える影響を無作為化比較試験により検証しました。その結果、術前化学療法の7日前から手術の1日前まで毎日、シンバイオティクスとして「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」を含む乳製品、「B.ブレーベ・ヤクルト株(ビフィズス菌)」を含む乳製品およびガラクトオリゴ糖液糖を摂取した患者では、シンバイオティクスを摂取しなかった患者と比較してBT発生率が有意に低いことが確認されました。さらに、シンバイオティクス摂取患者では、重度の胃腸障害の軽減や腸内環境の改善も確認されました。本研究により、シンバイオティクスの摂取は術前化学療法を受ける食道がん患者に対し、腸内環境の改善を介して、がん治療中の負担を軽減する可能性が示され、今後、医療領域でのさらなる活用が期待されます。本研究成果は、学術雑誌「Clinical Nutrition」に掲載されました。
④ 弘前大学との共同研究で、健常成人を対象に、腸管各部位の内容物や粘液、便に含まれる腸内細菌叢を解析しました。具体的には、従来の死菌と生菌を区別しない測定法に加えて、生菌のみが検出可能なPropidium monoazide (PMA)と次世代シークエンシングを組み合わせて、ヒトの大腸各部位における“生きた”菌叢構成の解析を行いました。その結果、従来の測定法では大腸の各部位で細菌叢の構成に差は認められませんでしたが、PMAを用いた生菌の解析では、いくつかの細菌群の生菌構成比が部位により異なることが分かりました。ヒト腸内の生きた細菌が健康にどのような影響を与えるかについては、まだ多くのことが解明されていない中、本研究により、本手法を用いた生きた腸内細菌叢の解析は、腸内細菌叢の生態とヒトの健康や病態との関係を明らかにするうえで有用であると考えられます。本研究成果は、学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、生活習慣病予防をターゲットとした次世代プロバイオティクスや新規機能性素材の研究開発に重点的に力を注いでいきます。
当分野の研究開発費は1,411百万円です。
飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に加え、近年の研究により明らかになってきた脳と腸が自律神経を介してお互いに密接に影響を及ぼしあう「脳腸相関」に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダム Y株」等を利用し、作用領域を拡大した乳酸菌飲料等、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。
また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品、清涼飲料等のラインアップの充実を図っています。
当連結会計年度の成果は次のとおりです。
ア. 機能性表示食品である乳製品乳酸菌飲料「Yakult(ヤクルト)1000」の店頭向けシリーズ品として、一時的な精神的ストレスがかかる状況での「ストレス緩和」「睡眠の質向上」の機能を有する乳製品乳酸菌飲料「Y1000」を昨年10月に導入しました。
イ. 「乳酸菌 シロタ株」とガラクトオリゴ糖を配合したアイスクリーム「アイス de ヤクルト」を昨年6月に数量限定で導入しました。
ウ. ハードタイプヨーグルト「ソフール」について、期間限定アイテムとして、「アップル」を昨年4月に、「白桃」を7月に、「ぶどう」を10月に、「ゆず&レモン」を本年1月に導入しました。
ア. 紫サツマイモ由来アントシアニンを有効量含み、肝機能に関連する酵素(AST、γ-GTP)値の低下に役立つ機能性表示食品「肝ファイン」を昨年10月に地域限定で導入しました。
イ. ミルクをバランス良く配合し、すっきりした後味が特長の「オ・レ」シリーズの「カフェ・オ・レ」「いちご・オ・レ」について、生乳感を高めた風味に変更し、昨年9月に導入しました。
ウ. 野菜入り低果汁飲料「きになる野菜」(125ml)シリーズについて、栄養成分を強化し、昨年10月に導入しました。
当分野の研究開発費は5,433百万円です。
医薬品研究開発分野においては、抗がん剤を中心とした薬剤の研究開発を進めています。
4SC社(ドイツ)から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」については、皮膚T細胞リンパ腫を対象とした国際共同第Ⅱ相臨床試験を実施中です。
セキュラ・バイオ社(米国)から日本における開発および商業化に関する独占的ライセンスを受けているPI3K阻害剤「デュベリシブ」については、再発または難治性の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫を対象とした国内第Ⅰ相臨床試験の主要な解析が完了し、本年3月に製造販売承認申請を行いました。また、再発または難治性の末梢性T細胞リンパ腫を対象とした国際共同第Ⅱ相臨床試験、再発または難治性の濾胞性リンパ腫を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験および再発または難治性の成人T細胞白血病・リンパ腫を対象とした国内第Ⅱ相臨床試験を実施中です。
基礎創薬研究分野では、抗がん剤およびその周辺領域でのシーズを確保するための研究を引き続き実施しています。
当分野の研究開発費は
その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまのニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌はっ酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。
基礎化粧品については、乳酸菌生まれの保湿成分である「S.E.(シロタエッセンス)」を配合した保湿効果の高い基礎化粧品「ラクトデュウ」シリーズから、新たに「ラクトデュウ S.E.クリーム」を昨年10月に発売しました。また、エイジングケアブランドである「パラビオ」シリーズから、エイジングサインに幅広くアプローチする成分を贅沢に配合した高機能美容液「パラビオ ACセラム サイ」を本年3月に発売しました。
トイレタリー商品については、大人の乾燥肌に向けた高保湿ボディケアシリーズ「Coculme(コクルム)」から3品(ボディシャンプー・ボディシャンプー(つめかえ用)・ボディミルク)を昨年7月に、ボディクリームを10月に発売しました。
当分野の研究開発費は