(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します」という企業理念に基づき、人々が健康とゆとりと生きがいを実感できる生活づくりに貢献し、地域社会とともに発展する企業を目指しています。
また、株主の皆さまやお客さまをはじめ、ひろく社会から信頼され、魅力のある企業となるよう、本業を基本とした着実な事業展開に徹するとともに、透明性の高いガラス張りの経営をおし進めていきます。
(2) 経営環境
当社グループをとりまく環境は、国内の人口減少等による市場の伸び悩み、お客さまのニーズの多様化や品質、環境問題に対する意識の高まりなど、刻々と変化を続けています。
このような環境のもと、当社グループは引き続き、創業当初から提唱する「予防医学」「健腸長寿」の考え方に基づき、お客さまの健康づくりに役立ち、社会の健康課題の解決に寄与する商品やサービスを提供します。そして、長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」に立脚し、世界の人々の健康に貢献し続けるヘルスケアカンパニーを目指し、企業活動を推進します。推進にあたっては、グループの強みである「研究開発・技術力」と「当社グループ独自の宅配システム」を活かすとともに、他社とも協業することで、事業領域の拡大に向けた取り組みを進めていきます。
(3) 長期的な経営戦略
《「Yakult Group Global Vision 2030」の策定と推進》
当社は、ヤクルトグループとしての成長を維持し変化に対応していくための道標として、2021年度から2030年度までの長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」を策定しました。
主な内容は以下のとおりです。
長期ビジョン(2021年度~2030年度)
《目指す姿》
「世界の人々の健康に貢献し続けるヘルスケアカンパニーへの進化」
《定性目標》
・世界の一人でも多くの人々に健康をお届けする
・一人ひとりに合わせた「新しい価値」をお客さまへ提供する
・人と地球の共生社会を実現する
《実現のための戦略》
2030年度に向け、飲料および食品製造販売事業部門(海外)を引き続き成長させるとともに、飲料および食品製造販売事業部門(日本)の収益性をさらに向上させることを目指し、連結売上高、連結営業利益それぞれを伸ばしていきます。
このうち、海外においては、「深耕と拡大」を引き続き推進するとともに、新たな成長モデルの構築を図ります。日本においては、多様化するお客さまのニーズに応える、新たな商品やサービス開発に積極的に挑戦し、需要獲得を目指します。
これらに加えてヘルスケア関連領域の事業拡大推進等により、持続的な成長の実現を目指します。
(4) 中期経営計画
2025年度から2030年度までの6年間を対象期間とする中期経営計画について、2025年5月に策定しました。定量目標・指標は以下のとおりです。
(2030年度目標) (参考:2024年度)
計画 実績
《損益・定量指標》
グローバル乳本数 4,500万本/日 3,824万本/日
連結売上高 7,000億円 4,996億円
連結営業利益 900億円 553億円
EPS 250円 150.48円
《財務指標(目安)》
ROE 10% 8.1%
《中期経営計画(2025-2030)の概要》
― 重点テーマ ―
1.事業領域の拡大とビジネスモデルの進化
・コア領域の強化と周辺領域の拡大
・国と地域に対応したR&D体制の確立
・チャネルミックスによるビジネスモデルの強化
2.地域社会との共創とグローバル展開の進化
・ヘルスケア プラットフォームの構築
・自社の強みを活かしたDXの推進
・国や地域に合わせた戦略の最適化
3.成長を支える経営基盤の強化
・財務・資本戦略(資本の充実から資本効率向上へ)
・組織戦略(チカラを最大限活かすための組織の活性化)
・非財務戦略(ヤクルト独自のビジネスモデルを磨き上げ、事業戦略を支え加速させるDXと基盤創造戦略)
なお、中期経営計画(2025-2030)における「目標・指標」「事業戦略」「財務・資本戦略」「非財務戦略」等の
詳細については、以下をご参照ください。
(https://www.yakult.co.jp/company/ir/library/pdf/Medium-term_Management_Plan_2025_2030.pdf)
(5) 優先的に対処すべき課題
当社グループは前述の経営環境のもと、長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」の実現に向け、世界の人々の健康に貢献し続けるヘルスケアカンパニーを目指し、企業活動を推進します。
また、当社グループは、企業の社会的責任であるサステナビリティへの取り組みの一つとして、「環境ビジョン2050」を定め、2050年までに、バリューチェーン環境負荷ゼロ経営を目指します。
各事業部門が優先的に対処すべき課題は次のとおりであります。
<飲料および食品製造販売事業部門(日本)>
お客さまの健康意識の高まりにより、プロバイオティクス商品が健康習慣の一つとなりつつありますが、競合商品の台頭や物価上昇により、市場環境は厳しい状況となっています。当社においては、お客さまからの支持を獲得するため、「乳酸菌 シロタ株」の科学性を訴求する「価値普及」活動を推進するとともに、高付加価値商品である「Yakult(ヤクルト)1000」類および「Y1000」類ならびに「Newヤクルト」類を中心に、ブランド強化を図ります。
宅配チャネルにおいては、「Yakult(ヤクルト)1000」類を中心に、新規のお客さまづくりの実施および既存のお客さまへの継続飲用促進により、売り上げの増大を目指します。また、人材獲得競争が激化する中、宅配組織の強化という課題に対し、ヤクルトレディの採用活動および働きやすい環境づくりを推進します。
店頭チャネルにおいては、「Newヤクルト」類および「Y1000」類を中心に、マーケットごとの特性や顧客ニーズを踏まえた施策を推進し、売り上げの増大を目指します。
<飲料および食品製造販売事業部門(海外)>
プロバイオティクスに対する注目が高まる中、事業の拡大および収益性の向上という課題に対し、既進出国・地域におけるさらなる市場深耕に加え、販売エリアの拡大に向けた取り組みを推進します。あわせて、販売組織の拡充を図るため、人材の確保・育成に努めます。
具体的には、実績が好調に推移している米国、メキシコ、ベトナム等の事業所においては、引き続き販売体制・施策の強化に努めます。
また、実績の回復に取り組んでいる事業所においては、販売組織の見直しや積極的な広報広告活動等に注力し、売り上げの増大を目指します。特に、中国では、中・小都市を中心に物流拠点および取引店舗数の増加に取り組み、売り上げの増大を図るとともに、営業体制等の再構築や従事者教育等に注力することで、販売組織の強化を進めていきます。
そのほか、成長市場であるEC分野における取り組みを積極的に推進します。
<その他事業部門>
化粧品につきましては、競合商品の台頭や物価上昇により、市場環境は厳しい状況となっています。国内においては、訪問販売において、当社が創業以来培ってきた乳酸菌研究から生まれたオリジナル保湿成分「S.E.(シロタエッセンス)」を核とした商品の展開やヤクルト独自の組織体制等を通じて当社商品の優位性を高め、愛用者数の増大を図ります。また、訪問販売では接点を持つことができないお客さまには、通信販売および店頭販売をとおしてアプローチを行います。海外においては、当社商品のさらなる認知向上を図るとともに、販路拡大等を行うことで、売り上げの増大を目指します。
プロ野球興行につきましては、ファンの皆さまの期待に応えられるようチーム力の強化に取り組むとともに、各種ファンサービスの充実を図っていきます。
また、当社グループは、引き続きコンプライアンス経営を推進するとともに、企業の社会的責任や株主の皆さまへの説明責任を果たしてまいります。
企業理念である「私たちは、生命科学の追究を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します。」の実現に向けて、コーポレートスローガン「人も地球も健康に」のもと、地球環境全体の健康を視野に入れ、すべての企業活動を通じて、良き企業市民として歩んでまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
(1) ガバナンス
当社は、2024年度から取締役会の諮問機関として、「サステナビリティ諮問委員会」を設置しています。本委員会は、環境・社会課題の解決に向けた、サステナビリティに関する基本戦略、対策・対応状況等について審議し、取締役会に答申する役割を担います。委員は独立社外取締役3名および常勤監査役1名を含む8名で構成されています。当事業年度においては年5回実施し、翌事業年度については年4回の実施を予定しています。
また、「サステナビリティ諮問委員会」に上程する議題は、「CSR推進委員会」で十分に審議しています。本委員会は、経営サポート本部長を委員長とし、社内関連部署の役員により構成されています。当事業年度においては年4回実施し、環境・社会課題の解決に向けた方針や行動計画を中心に議論するなど、解決に向けた取り組みを推進しました。さらに、グループ全体で取り組むため、各部署それぞれの具体的な活動を行う専門的な5つの推進委員会を下部組織に設けて、サステナビリティ・CSR活動の推進を図っています。
このほか、研究開発本部長を委員長とし、社内関連部署の役員により構成される「プラスチック容器対策委員会」において、世界のプラスチック規制や関連政策の動向、各部署における取り組みおよび検討の状況に関する情報共有ならびに討議を行っています。
なお、2025年度からは「CSR推進委員会」と「プラスチック容器対策委員会」を統合し、新たに「サステナビリティ推進委員会」を設置します。これにより、従来のCSRおよびプラスチック容器対策の取り組みを一元化し、基本戦略や対策を審議、推進します。
今後は、「サステナビリティ諮問委員会」と「サステナビリティ推進委員会」間の連携を強化し、取締役会への答申を通じて、全社的なサステナビリティ推進の監督機能を強化してまいります。
(2) リスク管理
リスクの特定については、経営レベルがその内容を掌握し、諸々のリスクを各種会議(重要事項は取締役や監査役から構成される経営政策審議会および取締役会)において適宜議論し、整理しています。現在は、環境問題への対応、災害、ブランド毀損、知的財産権、訴訟、法令遵守、合併・買収、為替、情報システム、経営戦略による影響、感染症の流行、海洋プラスチックごみ問題、ヤクルト類への依存および競争環境等に関する19のリスクを特定しています。
リスク評価の範囲は、ヤクルトの直接操業における範囲にとどまらず、原材料、資材のサプライヤーや、消費者といったバリューチェーンの上流、下流も広範囲に含めています。組織横断的リスク状況の監視および全社的対応は総務部門が中心となって行い、各部門に関わる業務に付随するリスク管理は、当該部門が行うこととし、必要に応じて各種会議(重要事項は取締役や監査役から構成される経営政策審議会および取締役会)に上程しています。また、各部署・事業所およびヤクルトグループ各社におけるコンプライアンスの推進・徹底を図るため、毎年、コンプライアンス担当者会議を開催し、推進活動に有用な情報の提供と共有を行っています。
特に、気候変動による温度上昇に伴う物理的な影響については、グローバルな社会問題であることはもちろん、当社グループにとっても、原料である農作物への影響、熱ストレスによる健康被害や労働環境の悪化等、さまざまな経路から当社の事業に影響を与えうる重要な課題であると認識しています。この課題に適切に取り組むため、当社は、CSR推進委員会において、気候変動やそれに関連する水問題、森林破壊、先住民族の権利侵害等のリスクと機会の特定を行い、それらのリスク・機会を、「影響度」の全社横断的な基準で評価し、重要な課題を洗い出したうえで、それらの重要性を中長期戦略と照合し対応計画を策定し実施するというサイクルを運用しています。
(3) 戦略ならびに指標及び目標
① 環境に関する戦略ならびに指標及び目標
当社グループは、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという私たちの使命を実現するべく、コーポレートスローガン「人も地球も健康に」のもと、6つのマテリアリティ(重要課題)を特定しました。このうち、バリューチェーンで優先して取り組むべき課題として、社会面では「イノベーション」「地域社会との共生」「サプライチェーンマネジメント」を、環境面では「気候変動」「プラスチック容器包装」「水」を特定しました。
環境面でのマテリアリティに取り組むにあたり、2021年3月に人と地球の共生社会の実現を目指す「ヤクルトグループ環境ビジョン」を策定しています。同ビジョンにおいて、2050年のあるべき姿として「環境ビジョン2050」を定め、2050年までにグローバルで温室効果ガス排出量ネットゼロを目指します。あわせて、「環境ビジョン2050」実現に向け、環境面でのマテリアリティである「気候変動」「プラスチック容器包装」「水」について、中期的マイルストーン「環境目標2030」および短期的マイルストーン「環境アクション(2021‐2024)」を策定しています。
今般、これらのうち、「環境目標2030」を見直しました。具体的には、まず目標の対象範囲について、国内の本社(単体)およびボトリング会社に加え、国内外の全連結子会社まで拡大しました。また、環境面におけるマテリアリティ(重要課題)の見直しを行い、当社の事業が自然環境に影響を及ぼすことを考慮し「生物多様性の保全」を追加しました。さらに、既存のマテリアリティの名称については、ステークホルダーが内容を理解しやすいよう「気候変動の緩和と適応」「持続可能なプラスチック容器包装の推進」「持続可能な水資源管理」と変更しました。
また、森林保全については、「調達活動における森林破壊・土地転換ゼロコミットメント」を策定し、サプライチェーンにおける森林破壊リスクのある原材料の特定、基本的方針、取り組みおよび目標を掲げています。
「調達活動における森林破壊・土地転換ゼロコミットメント」の詳細については、以下をご参照ください。
・「
(https://www.yakult.co.jp/company/sustainability/social/supply_chain/pdf/deforestation_free.pdf)
<気候変動の緩和と適応>
当社グループは現在、事業活動を通じて年間約187万トンのCO2(スコープ1・2・3)を排出しています。コーポレートスローガン「人も地球も健康に」を掲げる当社は、気候変動対策が喫緊の課題であることを強く認識しています。そこで、パリ協定が定める水準に整合した温室効果ガス排出削減目標である「SBT(Science Based Targets)」に準じて、以下のとおり「環境目標2030」を見直し、原料調達から生産、物流、販売までのバリューチェーン全体を通じてCO2削減の取り組みを推進します。
なお、「SBT(Science Based Targets)」の2年以内の設定を表明するコミットメントレターを、認定機関であるSBTイニシアチブ(SBTi)に提出し、2024年10月25日に受領されています。
(環境ビジョン2050)
2050年までに、温室効果ガス排出量ネットゼロ(スコープ1・2・3)を目指す
※スコープ1:自社の事業活動での燃料使用に伴う直接排出量
スコープ2:企業が外部から購入する電力・蒸気・熱に関する間接排出量
スコープ3:事業活動に関連するサプライチェーンにおける間接排出量
(環境目標2030)※2025年5月改定
〔対象範囲:本社および国内外全連結子会社〕
1. 温室効果ガス排出量(スコープ1・2)を2022年度比42%削減する
2. 温室効果ガス排出量(スコープ3)を2022年度比25%削減する
3. 温室効果ガス排出量(FLAG)を2022年度比31%削減する
また、気候変動に関連するリスク・機会が、組織の事業、戦略、財務計画に及ぼす顕在的および潜在的な影響についてシナリオ分析を実施し、明確化されたリスク・機会に対し、重要なリスク・機会を中心にそれぞれの対応策を講じて、リスクの低減と機会の獲得につなげていきます。
さらに、当社は、CO2排出量を仮想的に費用換算し、低炭素投資や気候変動対策を推進するしくみである「インターナルカーボンプライシング制度(以下、ICP制度)」を2022年10月から導入しています。社内炭素価格を37,000円/t-CO2と設定し、設備投資を行う際の機器選定における判断基準の一つとして、ICP制度を活用することで、低炭素投資や気候変動対策を推進しています。
なお、当社は2022年8月に、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)の提言への賛同を表明しました。TCFDの提言に基づき、気候変動が事業にもたらすリスク・機会の分析とその財務的な影響を評価し、今後も「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の枠組みに沿って、さらなる情報開示を進めていきます。
TCFD提言に基づく、詳細な情報につきましては、以下をご参照ください。
「
(https://www.yakult.co.jp/company/ir/library/pdf/integrated2024.pdf)
<持続可能なプラスチック容器包装の推進>
当社グループは、国内において約18,000t(2023年度に販売した食品および化粧品等に使用した容器包装の重量)のプラスチック容器包装を使用しています。プラスチックごみによる環境汚染問題や資源循環の観点から、容器包装の資源循環が喫緊の課題であると認識しています。そこで、プラスチック容器包装の使用量について、以下のとおりに「環境目標2030」を見直しています。
(環境目標2030)※2025年5月改定
1. 2030年度のプラスチック製容器包装の使用量(国内・海外)の20%以上に相当する量に対してサステ
ナブルな取り組みを実施する
2. ヤクルト容器の水平リサイクルの仕組みを確立する
具体的な取り組みとしては、容器包装の薄肉化や軽量化に加えて、バイオマス化および再生化等持続可能な資源循環に適した素材の使用を検討し、プラスチック容器包装による環境負荷の低減を目指します。また、世界各地でプラスチック製品の使用を規制する動きが活発化しているため、各国・地域の規制を注視しつつ、具体的な対応策の検討を進めていきます。
<持続可能な水資源管理>
ヤクルトグループは現在、国内外の工場で年間約600万m3の水を使用しています。地球上の限りある資源である水を主原料とする当社グループにとって、持続可能な水使用は、重要な課題であると認識しています。そこで、水資源管理について、以下のとおり「環境目標2030」を見直しています。
(環境目標2030)※2025年5月改定
1. 国内・海外の乳製品工場における水リスク詳細調査により、各地域における課題を抽出し、優先順位
の高い課題への施策展開を100%実施する
2. 削減活動の継続に加え、2030年度の製品化された水消費量(国内・海外の乳製品工場)を対象に、
水源涵養活動を推進する
具体的には、国内外の事業所・工場において水の循環利用や運用方法の見直しによる節水活動を進めるとともに、拠点ごとの水リスクを把握し、水の管理計画策定による適正な水マネジメントを推進します。
また、製品化した水消費量を対象に、森林保全等による水源涵養活動を実施し、地球への還元を進めていきます。
<生物多様性の保全>
当社はこれまでも「環境アクション(2021-2024)」の中で生物多様性を重点課題として特定し、植樹活動等を実施してきました。近年、生物多様性に関する重要性が高まってきていることから、新たにマテリアリティに特定した上で、以下のとおり「環境目標2030」を設定しました。
(環境目標2030)※2025年5月改定
1. 地域社会における生物多様性保全活動への支援・参画を推進する
2. 事業活動による生物多様性への影響を把握し、軽減施策を推進する
なお、サステナビリティに関する考え方および取り組みの詳細については、以下をご参照ください。
・「
(https://www.yakult.co.jp/company/sustainability/download/)
・「
(https://www.yakult.co.jp/company/ir/library/integrated.html)
② 人的資本に関する戦略ならびに指標及び目標
<人材戦略・人材育成・ダイバーシティ推進>
ヤクルトグループの事業活動の根幹には、従業員やヤクルトレディをはじめとする「人」の存在があり、ビジネスモデルを機能させる原動力となっています。
当社は、「真心」「人の和」を大切にするという創始者である代田稔の考えや、「世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します。」という理念に基づき、人は価値を創造する重要な資産と考え、人的資本に積極的な投資を行い、人材戦略を展開しています。
当社の人材戦略の展開として、「経営戦略との連動」を念頭に置き、まずは「価値観の多様化」に対応するため、時代の変化にあわせた働きやすい職場づくりを図っています。具体的には、週休3日制や在宅勤務の導入、副業、育児・介護のサポート等、多様な働き方に関する制度を設けています。そのなかで、当社の男性の育児休業取得については、2030年度までに全対象者の取得ならびに平均取得期間を45日以上とすることを目標としており、2024年度は取得率107%(注)、平均取得期間37日となっています。
また、人材育成については、「組織力の最大限の発揮」に向けて、従来の一律の教育から「個」のキャリアにあった教育へと進化を図っています。具体的には、「事業戦略と連動した成長エンジンの確立」「個の成長と組織力の向上」「価値観のさらなる体現」を人材戦略の3つの柱とし、企業理念の実現に向け、「新しい価値を提供できるイノベーティブな人材」「グローバルに活躍できる人材」「組織力の向上に貢献できる人材」を育成するため、さまざまな教育施策を実施しています。
さらに、ダイバーシティ&インクルージョンの推進は企業経営に欠くことのできないものと認識しており、当社においては、多様な人材が活躍できる企業風土を目指し、一人ひとりが個性と能力を最大限発揮できるよう心がけています。具体的には、一般職から総合職への転換推奨、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、さまざまな施策を講じています。そのなかで、当社の女性管理職比率については、2025年度までに10%以上とすることを目標としていましたが、2025年3月時点で13.4%と、目標を達成しました。今後の目標を新たに「2030年度までに20%以上」と設定し、積極的な取り組みを継続することで、女性活躍の機会を創出していきます。
これらの取り組みにより、社員の働く意欲、仕事のやりがいをより一層向上させることで、経営目標の達成に寄与していくことをねらいとしています。
今後も、企業価値の持続的向上を目指して積極的に人への投資を行い、世界に健康価値をつくり届け、イノベーションによって「人と地球の健康」に貢献できる人材の育成と組織風土の醸成を図っていきます。
<健康経営の推進>
当社は、企業理念の実現には従業員の健康保持・増進が不可欠であるとの考えのもと、生産性向上と組織の活性化を目的に、従業員の健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践する健康経営の推進に取り組んでいます。具体的には、代表取締役社長を最高健康責任者、人事部内に設置した専門組織を実務推進担当部署として、ヘルスリテラシー向上施策等を積極的に実施しています。その結果、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に2年連続で選定されるとともに、「健康経営優良法人(大規模法人部門)~ホワイト500~」に8年連続で認定されました。
今後も戦略的に健康経営を推進し、従業員が健康でいきいきと働き続けられる環境づくりを進めることで生産性向上をもたらし、事業の継続的、安定的な発展を図っていきます。
なお、上記「② 人的資本に関する戦略ならびに指標及び目標」に記載の戦略ならびに指標及び目標は、データ管理等が連結グループに属する全ての会社では行われていないため、提出会社単体の数値を記載しております。
(注)男性の育児休業取得率は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」第71条の6第1号における正社員の育児休業の取得割合を算出しています。
また、育児休業取得率は、当該年度中に子供の産まれた正社員数(A)に対して、その年に初めて育児休業を取得した正社員数(B)の比率(B/A)を示します。この比率には、前年度に子供が産まれたが、その時点では育児休業を取らず、当該年度に初めて育児休業を取得した者が含まれるため、育児休業取得率が100%を超えることがあります。例えば、2024年度の取得率には、2023年度に子供が産まれ、2024年度に初めて育児休業を取得した正社員をカウントしています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与えると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
(1) ヤクルト類への依存および競争環境等に関するリスク
当社グループの主要商品は、「乳酸菌 シロタ株」を使用したヤクルト類であり、その売上高は、当社グループ全体の売上高の大部分を占めています。当社グループは、ヤクルト類の販売をさらに増加させ、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献することを目指しており、ヤクルト類の売上比率が高い海外事業の拡大に伴って、今後、ヤクルト類に対する依存度は、さらに高まる可能性があります。
当社グループは、研究開発投資を行い、付加価値の高い商品の開発に努めておりますが、当社グループの新商品が消費者に受け入れられ、また競合製品との比較で十分な優位性を獲得し、維持できるかについては不確実性が伴います。プロバイオティクスを使用した飲料を含む飲料および食品業界は、熾烈な競争にさらされており、当社グループの乳製品よりも優れた健康上の効果があるとされる、もしくはより低価格な競合乳製品の登場によるさらなる競争の激化、またはプロバイオティクスの安全性や効用に対する消費者の認識や嗜好の変化といった、ヤクルト類の販売に悪影響を及ぼす事象が発生した場合、ヤクルト類への依存度の高さから、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業のグローバル化に伴うリスク
当社グループは、世界各国で事業を展開し、海外において製造および販売活動を行っています。
海外においては、国ごとに異なる文化や競争環境が存在します。また、当社グループが事業を展開する国・地域(今後当社グループが進出する国・地域を含む。)には、政治的・経済的な変化が当社グループの事業環境に及ぼす影響が大きな国・地域も含まれており、さまざまな手段を講じてはいても、これらの外部環境の変化等の結果、当社グループが成長機会を捉えられず、また投資に対して期待される成果を得ることができない場合があります。さらに、社会的背景または法規制の異なる海外においては、国内に比べて契約上の権利行使や知的財産権の保護が困難となり、または予期しない法律もしくは諸規制の制定・改廃などにより当社グループの事業活動に問題が生じる恐れがあります。例えば、欧州ではプロバイオティクスに関する健康強調表示(ヘルスクレーム)が認められておらず、当社グループの商品の宣伝方法の制約となっていますが、かかる規制が他の国でも導入されない保証はありません。これらの場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
当社グループは、今後も海外における事業展開を拡大する計画であり、工場や販売拠点の新設および既存の設備の増強のための多額の投資を予定していますが、上記をはじめとする要因等により当社グループの想定通りの成長を実現できず、投資に見合った収益を得られない可能性があり、結果として当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(3) 商品の安全性に関するリスク
安全性や品質管理に対する消費者の関心が一層高まっているなか、国内外を問わず、安全、安心な商品を提供していくことが強く求められています。当社グループの取扱商品は、食品衛生法その他国内外の法令や諸規制の適用を受けており、より一層の安全性、品質管理が求められていると認識しています。当社グループにおいても、安全な商品提供を第一と考え、品質管理体制の強化を図っています。
しかし、商品の安全性等に関し不測の事態が発生した場合、商品の製造または販売を停止せざるを得ない場合や、商品を回収せざるを得ない場合があり、そのための費用が生じるだけでなく、当社グループの商品の評価やブランドイメージが損なわれ、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、現実の問題か根拠のない風評であるかを問わず、また当社グループの商品であるか他社の商品であるかを問わず、プロバイオティクスを使用した乳製品の安全性や健康上の効果に対する消費者の信頼が低下するような事態が発生した場合には、当社グループの商品の販売に影響を及ぼす可能性があり、結果として当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(4) 当社グループの販売体制に関するリスク
当社グループの飲料および食品製造販売事業における販売チャネルは、当社グループ独自のヤクルトレディによる宅配チャネルと、店頭チャネルとに分けられます。プロバイオティクスの普及のために宅配チャネルの果たす役割は大きく、ヤクルトレディの働く環境整備に努め、ヤクルトレディのネットワークを拡充すること、またヤクルトレディの教育訓練を充実させることは、国内外を問わず、当社グループの販売活動において極めて重要であると考えています。
飲料および食品製造販売事業(日本)における商品の販売の大部分は、宅配チャネル、店頭チャネルともに全国の販売会社によって行われており、ヤクルトレディの大部分はそれぞれの販売会社から業務を受託しています。また、国内の売り上げの約半数は、当社との間に資本関係のない販売会社(子会社または関連会社ではない販売会社)によるものであります。当社と販売会社、さらに販売会社とヤクルトレディの良好な関係が維持できない場合、またはヤクルトレディを含む適切な人材を確保できない場合には、当社グループの商品の販売に著しい支障をきたし、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
また、販売会社が当社グループの商品の販売を停止した場合または販売ができなくなった場合には、当社グループの商品の販売に著しい支障をきたし、または販売会社の支援や体制整備に多額の費用や損失を要するなど、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
飲料および食品製造販売事業(海外)においては、原則として当社の子会社が製造から販売まで行っておりますが、一部の国・地域においては当社の関連会社が事業を行っております。また、国・地域ごとに宅配チャネルの占める重要性は大きく異なりますが、タイ、韓国、インドネシアといった国々では、当社グループはヤクルトレディによる宅配チャネルに依存しています。海外においても、当社グループが、現地の関連会社を適切に管理できない場合、またはヤクルトレディとの良好な関係を維持できない場合や海外事業の深耕・拡大に伴い必要となるヤクルトレディを含む適切な人材を確保できない場合等には、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
店頭チャネルにおいては、小売店でのプライベート・ブランド商品を含む他社製品との競争や、イー・コマースなどの新たな販売手法との競争が、当社グループの商品の販売に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5) 原材料価格、人件費などの費用の増加に関するリスク
当社グループの商品、特に主要商品である乳製品乳酸菌飲料の原材料の購入価格が、市場の需給関係の状況や為替変動などにより高騰した場合、または原油価格が高騰しもしくは高止まりが続く場合には、容器等包装資材を含めた製造経費、さらには運送費へも影響を与えます。また、日本国内では、労働人口の減少や労働環境の改善に向けた動き等により、人件費などの費用が増加し、海外では、特に新興国市場において、現時点では比較的安価な人件費が、経済成長とともに上昇する可能性があります。さらに、人件費の高騰を受けて、ヤクルトレディに対して支払う手数料が増加した場合には、当社グループが負担する費用が増加し、または当社から販売会社に対する商品の販売価格に影響を及ぼす可能性があります。このような原材料価格や人件費などの費用の上昇の直接的または間接的な影響をコスト削減努力で吸収できず、また市場の状況により販売価格の改定もできない場合には、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(6) 「ヤクルト」ブランドの毀損に関するリスク
当社グループにとって、そのブランドイメージを維持することは極めて重要です。「ヤクルト」は社名と主力品名に共通するブランドであり、ヤクルト類をはじめ、ヤクルトの名を冠する商品のとりわけ品質・安全性に関連する問題は、当社グループおよびその商品のブランドイメージに多大な影響を及ぼす可能性があります。また、国内の販売会社やヤクルトレディといった「ヤクルト」の名称を使用する関係者に不祥事があった場合にも、当社グループのブランドイメージに多大な影響を及ぼす可能性があります。
(7) 知的財産権に関するリスク
当社グループの製品や技術は、特許その他の知的財産権によって一定期間保護されていますが、それらは第三者によって侵害される可能性があり、それによって当社グループの売上が減少する可能性があります。また、一部の国では、当社グループの製品の容器と類似の商標が競合他社によって既に登録されており、これにより、当該国における製品の販売に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、製品の回収、生産および販売の終了、損害賠償またはロイヤルティの支払いなどを要求される可能性があります。
(8) 訴訟、法令遵守等に関するリスク
当社グループは、日本および事業を行う海外における多岐にわたる法規制の適用を受けており、当社グループに適用のある法規制の変更の結果、経済情勢および消費動向に悪影響が及び、または当社グループに追加的な費用もしくは設備投資の必要が生じる可能性があります。当社グループは、これらの法規制を遵守するよう最大限注意していますが、当社グループによる法規制への違反の結果、行政処分を受け、または損害賠償請求その他の訴訟への対応を余儀なくされる可能性があります。
(9) 業務提携、合併・買収および合弁事業等に関するリスク
当社グループは、大規模なものや重要性の高いものも含め、業務提携、合併・買収および合弁事業の可能性を常に検討しており、実際に、当社グループの海外法人には、現地パートナーとの合弁会社が含まれます。しかしながら、当社グループがそれらの適切な機会を見出せるか否か、相手方と合意できるか否か、必要な資金を調達できるか否かはいずれも不確実であり、また、仮に取引を実行できたとしても、当社グループが期待していた利益または効果を実現できない可能性があります。
(10) 為替の変動に関するリスク
当社グループの連結財務諸表は日本円により表示されているため、連結財務諸表作成時において、海外連結子会社および持分法適用会社の財政状態および業績を日本円に換算するにあたり、為替レートの変動の影響を受けます。とりわけ人民元、インドネシア・ルピア、メキシコ・ペソ、ブラジル・レアルなどの為替レートの変動は、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(11) 投資有価証券に関するリスク
当社グループは、主に事業上の協力関係の形成を目的として特定投資株式を含む投資有価証券を保有しており、そのうち市場価格のある上場株式等について市場価格の変動が生じた場合には、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の保有する投資有価証券について、帳簿価格に対する価値の著しい下落が認められる場合には、評価損の計上等により、当社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(12) 有利子負債に関するリスク
当社グループは、事業に必要な資金の一部を銀行借入によって調達していますが、金利の上昇その他金融市場が悪化した場合には、金利負担が増加し、または適時に当社グループの希望する条件で資金調達ができなくなることにより、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの銀行借入の借入先は特定の金融機関に集中しており、調達手段の多様性に乏しいといえます。
(13) 情報システムおよび情報セキュリティに関するリスク
当社グループの事業運営は情報システムに依存しており、情報機器、ソフトウエアまたはネットワークの障害により業務が滞り、または中断され、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、顧客情報やその他の機密情報の流出を防ぐため、システム管理や社員教育等を行うとともに、サイバー攻撃を受けるなど有事の際に迅速かつ適切に対処できるよう、インシデント対応組織(CSIRT)を当社内に構築するなどし、セキュリティ対策の充実化を図っています。しかしながら、サイバー攻撃の巧妙化等の予期し得ない事態により、これらの情報が流出した場合、当社グループの信頼性が低下するほか、損害賠償等の多額の費用負担が発生し、その結果、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(14) 災害、地政学要素に関するリスク
当社グループは、世界各国・地域で事業を展開しており、地震などの大規模な自然災害が発生した場合や、テロ、紛争等が発生した場合には、直接・間接的に当社グループの事業活動が制限され、業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(15) 感染症の流行に関するリスク
当社グループは、世界各国・地域で事業を展開しており、新型ウイルスなどの大規模な感染症の流行が発生した場合には、国内外のサプライチェーンの混乱、消費の低迷等が起こる可能性があります。当社グループでは、危機的事項の発生に対し、危機管理規程に基づき、全社的な対応体制を構築するとともに、生産・供給体制の整備に努めていきます。しかしながら、感染拡大の影響により、商品の製造または販売を停止せざるを得ない場合には、当社グループの業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(16) 環境問題への対応に関するリスク
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、原材料調達に関わるサプライチェーンも同様に世界各国に広がっています。一方、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等によると、地球温暖化の進行は疑う余地がないものとされています。当社グループにとっては、地球温暖化が進行すると、乳牛や農作物への悪影響が深刻化し、重要な原材料の調達が困難になるといったリスクのほか、事業活動にとって非常に重要な水についても地球温暖化とも関連した水災害の発生や無秩序な水の使用による取水可能量の制限、水質汚濁等により、さまざまなリスクが顕在化する可能性があると考えられます。そこで当社グループは、2050年のあるべき姿である「環境ビジョン2050」を策定し、「バリューチェーン環境負荷ゼロ経営」を目指すこととしました。環境に関するマテリアリティについては、「環境目標2030」として、「気候変動の緩和と適応」「持続可能なプラスチック容器包装の推進」「持続可能な水資源管理」「生物多様性の保全」の4分野と特定しています。しかしながら、行動計画の実現を世界標準レベルで達成できない場合や対応コストが増加した場合、事業の持続困難や当社グループの信用低下につながり、業績および財政状態に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(17) 海洋プラスチック問題に関するリスク
当社グループの主要商品であるヤクルト類をはじめ、多くの商品においてプラスチック容器を使用しております。また、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するために、今後ヤクルト類等の販売拡大を目指しております。しかしながら、マイクロプラスチックによる海洋汚染に関する国際的な関心の高まり等により、プラスチック製容器包装の問題がクローズアップされています。当社グループは、環境配慮型容器包装の基礎技術の確立を目指し、資源循環しやすい素材への転換や容器包装へのプラスチックの使用量の削減、生産工程で使用するプラスチック製梱包材の再利用等の取り組みを進めていきますが、上記の問題に適切な対応ができない場合、主要商品であるヤクルト類等の販売が制限される可能性があるほか、法規制の対応コストが発生するなど、当社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(18) 人権に関するリスク
当社グループは、事業を行う過程やバリューチェーンにおいて、直接あるいは間接的にさまざまなステークホルダーの人権を侵害しかねない可能性があることを認識しています。したがって、当社グループは、人権尊重の責任を果たすため、「ヤクルトグループ人権方針」に基づき、人権デュー・ディリジェンスのしくみを構築し実践していきます。しかし、サプライチェーン上での強制労働や児童労働、環境汚染による健康被害、お客さまに対する健康に関する誤った情報の伝達等により、人権に関するリスクが顕在化した場合、訴訟、操業停止、商品の不買運動の発生など、当社事業に多大な影響を与える可能性があります。
(19) 経営戦略および事業計画に関するリスク
当社グループは、2021年6月に長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」を策定し、企業価値向上に向け、事業の推進を図ってまいります。しかしながら、本「事業等のリスク」に記載された事項を含むリスク要因や当社グループの方針の変更、経済情勢や経営環境の変化などにより、当社グループがこれらの施策を実行できない可能性や、計画を達成できない可能性があります。
なお、上記以外にも、さまざまなリスクがあり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。当社グループでは、これらのリスクの存在を認識したうえで、発生の回避および速やかな対応に努める所存です。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、各種政策の効果もあり、緩やかに回復しているものの、海外の景気動向による下振れリスクや、物価上昇等による影響に注意を要する状況で推移しました。
このような状況の中で、当社グループは、事業の根幹であるプロバイオティクスの啓発・普及活動を展開し、商品の優位性を訴求してきました。また、長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」に立脚し、世界の人々の健康に貢献し続けるヘルスケアカンパニーを目指し、企業活動を推進し、業績の向上に努めました。
この結果、当連結会計年度の連結売上高は499,683百万円(前期比0.7%減)となりました。利益面においては、営業利益は55,391百万円(前期比12.6%減)、経常利益は75,860百万円(前期比4.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は45,533百万円(前期比10.7%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
・飲料および食品製造販売事業部門(日本)
乳製品につきましては、当社独自の「乳酸菌 シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」などの科学性を広く普及するため、エビデンスに基づき、地域に根ざした「価値普及」活動を積極的に展開しました。
宅配チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「Yakult(ヤクルト)1000」類を中心に、新規のお客さまづくりを実施するとともに、既存のお客さまへの継続飲用の促進を図りました。また、宅配組織の強化を図るため、ヤクルトレディの採用活動および働きやすい環境づくりを推進しました。
店頭チャネルにおいては、乳製品乳酸菌飲料「Newヤクルト」類および「Y1000」を中心に、視認性の高い売り場を展開するとともに、各種キャンペーンを実施し、店頭でのプロモーションスタッフによる「価値普及」活動を重点的に行うことで、売り上げの増大に努めました。
商品別では、「Yakult(ヤクルト)1000」のシリーズ品として、糖質とカロリーを低減した乳製品乳酸菌飲料「Yakult(ヤクルト)1000 糖質オフ」を本年1月に全国で発売するとともに、3月には機能性表示食品に関する表示を行いました。また、新ブランドである植物素材利用食品「豆乳の力」3品を昨年10月に発売しました。
一方、清涼飲料につきましては、栄養ドリンク「タフマン」シリーズおよび乳酸菌はっ酵果汁飲料「ヤクルトのおいしいはっ酵果実」を中心に販売促進策を実施し、売り上げの増大に努めました。
このような取り組みを中心に販売強化に努めたものの、他社商品との競争激化等により、乳製品および清涼飲料ともに、前年を下回る実績で推移しました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(国内)の連結売上高は、242,984百万円(前期比3.6%減)となりました。
・飲料および食品製造販売事業部門(海外)
海外につきましては、1964年3月の台湾ヤクルト株式会社の営業開始をかわきりに、現在27の事業所および1つの研究所を中心に、39の国と地域で主として乳製品乳酸菌飲料「ヤクルト」の製造、販売を行っており、本年3月の一日当たり平均販売本数は約2,813万本となっています。
ア.米 州 地 域
米州地域においては、ブラジル、メキシコおよび米国で「ヤクルト」などを製造、販売しています。
米国では、広報活動等による販売支援を強化するとともに、取引店舗数の増加等に努めた結果、実績は好調に推移しました。また、今後の需要増加に対応するため、昨年10月に第2工場の建設を開始しました。
その他米州地域では、宅配・店頭の両チャネルにおける販売体制の強化を図り、売り上げの増大に努めました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(米州地域)の連結売上高は91,822百万円(前期比11.7%増)となりました。
イ.アジア・オセアニア地域
アジア・オセアニア地域においては、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、インドおよび中国などで「ヤクルト」などを製造、販売し、アラブ首長国連邦(UAE)などでは「ヤクルト」などを輸入販売しています。
中国では、経済の回復の遅れや消費の鈍化等が続いている中、「ヤクルト ピーチ風味(鉄プラス)」を中心に、「乳酸菌 シロタ株」の「価値普及」活動の強化や新規取引先の開拓等により、売り上げの回復に努めました。また、事業の再編成の一環として、昨年12月に上海ヤクルト株式会社の解散手続きを開始し、同社上海工場の閉鎖等を実施することで、経営効率の向上に向け、取り組みを進めています。
フィリピンでは、持分法適用会社であるフィリピンヤクルト株式会社の100%子会社工場において、昨年5月から「ヤクルト」の生産を開始し、需要増加に対応した結果、実績は好調に推移しました。
ベトナムでは、昨年4月に「ヤクルトライト」を発売し、積極的に販売促進策を実施するとともに、宅配組織の拡充と新規取引先の増加に努めた結果、実績は好調に推移しました。
そのほか、新たな取り組みとして、国内で販売している「Y1000」を香港ヤクルト株式会社に輸出し、本年3月から販売を開始しました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(アジア・オセアニア地域)の連結売上高は134,803百万円(前期比1.1%増)となりました。
ウ.ヨーロッパ地域
ヨーロッパ地域においては、「ヤクルト」などをオランダで製造し、同国を含め、ベルギー、イギリス、ドイツ、オーストリアおよびイタリアなどで販売しています。
同地域では、広告展開による販売促進の強化およびSNS等を活用した広報活動等を実施した結果、実績は好調に推移しました。
これらの結果、飲料および食品製造販売事業部門(ヨーロッパ地域)の連結売上高は12,130百万円(前期比17.2%増)となりました。
・その他事業部門
その他事業部門には、化粧品の製造販売、医薬品の製造販売およびプロ野球興行などがあります。
化粧品につきましては、当社が創業以来培ってきた乳酸菌研究から生まれたオリジナル保湿成分「S.E.(シロタエッセンス)」の「価値普及」活動に重点をおき、お客さまの「内外美容」の実現と化粧品愛用者数の増大に努めました。
具体的には、基礎化粧品「ラクトデュウ」シリーズから、昨年4月に「ラクトデュウ S.E.クレンジング(オイル)」および「ラクトデュウ S.E.ウォッシング」を、10月に「ラクトデュウ S.E.クリーム」をリニューアル発売しました。また、高機能基礎化粧品「パラビオ」シリーズから、9月に「パラビオ ACセラム サイ(スペシャルプログラム セット)」を数量限定で発売しました。
その結果、化粧品全体としては、前期を上回る実績となりました。
医薬品につきましては、がん関連医療用医薬品の高田製薬株式会社への販売移管・製造販売承認の承継に関する基本合意書に基づき、製品ごとに順次販売移管と製造販売承認の承継を進めました。また、抗悪性腫瘍剤「カンプト」を含めた4品目については、本年3月末日をもって薬価削除となりました。
プロ野球興行につきましては、各種イベントやさまざまな情報発信を行うなど、積極的なファンサービスに取り組んだ結果、入場者数が増加しました。
これらの結果、その他事業部門の連結売上高は29,423百万円(前期比18.8%減)となりました。
当連結会計年度末の総資産は864,317百万円(前連結会計年度末比31,031百万円の増加)となりました。
純資産は629,515百万円(前連結会計年度末比23,568百万円の増加)となりました。主な要因は、2025年2月14日開催の取締役会決議に基づき自己株式を取得したものの、円安による為替換算調整勘定の増加および親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したためです。
また、自己資本比率は66.4%(前連結会計年度末比0.5ポイントの増加)となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ4,530百万円減少し、193,117百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が前期と比較し、23百万円減少の80,343百万円となったものの、売上債権や法人税等の支払額が減少したこと等により、前期と比較し、13,984百万円の増加となりました。その結果、営業活動によるキャッシュ・フローは84,687百万円となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較し、主に固定資産の取得による支出や定期預金の預入が増加したこと等により、支出額が17,113百万円増加しました。その結果、投資活動によるキャッシュ・フローは △61,020百万円となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前期と比較し、配当金支払額の増加があったものの、自己株式の取得による支出が減少したこと等により、支出額が8,075百万円減少しました。その結果、財務活動によるキャッシュ・フローは△31,466百万円となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 金額は販売価格によっています。
2 セグメント間の取引については相殺消去しています。
当社グループは、受注生産は行っていません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しています。
2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しています。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
ア.財政状態
当連結会計年度の自己資本比率は66.4%と前連結会計年度の65.9%から0.5ポイント増加しました。
非支配株主持分を含めた純資産額は、前期比3.9%、235億円増加しました。主な要因は、2025年2月14日開催の取締役会決議に基づき自己株式を取得したものの、円安による為替換算調整勘定の増加および親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したためです。
また、当連結会計年度の自己資本利益率(ROE)は8.1%と前連結会計年度の9.7%から1.6ポイント減少しました。総資産経常利益率(ROA)は8.9%と前連結会計年度の10.0%から1.1ポイント減少しました。
有利子負債の短期借入金については、主に千葉ヤクルト工場の建設や自己株式の取得などの資金需要が増したため207億円増加しました。また、1年内返済予定を含む長期借入金については、返済により61億円減少しました。この結果、有利子負債依存度(有利子負債÷総資産)は12.1%と前連結会計年度の10.7%から1.4ポイント増加しています。また、有利子負債対自己資本比率は18.2%と前連結会計年度の16.3%から1.9ポイント増加しましたが、財政状態は依然として堅固な状態が続いています。
売上高は前連結会計年度から33億円減収(前期比0.7%減)の4,996億円となりました。飲料および食品製造販売事業部門(日本)では、91億円の減収(前期比3.6%減)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)では、129億円の増収(同5.7%増)、その他事業部門では、68億円の減収(同18.8%減)となりました。事業部門別の調整額控除前の売上高構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が47.5%(前連結会計年度は49.0%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が46.8%(同43.9%)、その他事業部門が5.7%(同7.1%)となっています。飲料および食品製造販売事業部門(日本)が減収となった主な要因は、乳製品の販売本数が減少したためです。また、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が増収となった主な要因は、米州での実績拡大および円安による為替換算のプラス影響があったためです。
また、日本からの輸出を含めた海外売上高は前連結会計年度から5.8%増の2,396億円となり、海外売上高比率は48.0%と前連結会計年度の45.0%から3.0ポイント増加しました。
売上原価は2,041億円となり、前連結会計年度から0.5%増加しています。売上総利益は2,955億円となり、前連結会計年度に比べ1.5%減となりました。売上高売上総利益率は59.1%と前連結会計年度の59.6%から原材料高騰の影響もあり、0.5ポイント減少しました。
販売費及び一般管理費は2,401億円と前連結会計年度から36億円増加しました。主な要因は、飲料および食品製造販売事業部門(海外)で円安による為替換算の影響による増加があったためです。
この結果、営業利益は553億円と前連結会計年度から80億円の減益(前期比12.6%減)となりました。事業部門別の調整額控除前の営業利益構成比は、飲料および食品製造販売事業部門(日本)が50.5%(前連結会計年度は60.8%)、飲料および食品製造販売事業部門(海外)が49.4%(同38.2%)、その他事業部門が0.1%(同1.0%)となっており、増益であった飲料および食品製造販売事業部門(海外)の構成比が増加しました。
営業外収益は233億円と前連結会計年度から48億円増加しました。主な要因は、為替差益が増加したことによるものです。
営業外費用は28億円と前連結会計年度から3億円増加しました。
特別利益は64億円と前連結会計年度から政策保有株式の売却を進めたことにより31億円増加し、特別損失は19億円と2億円減少しました。
税金費用は前連結会計年度から30億円増加しました。
この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は455億円と前連結会計年度から54億円の減益(前期比10.7%減)となりました。売上高当期純利益率は9.1%と前連結会計年度の10.1%から1.0ポイント減少しました。
為替レートの変動による影響は、当連結会計年度の売上高では108億円の増収、営業利益では17億円の増益と試算されました。ただし、この試算は、在外子会社の現地通貨建ての売上高、売上原価、販売費及び一般管理費に、前連結会計年度の各在外子会社における期中平均レートを適用して算出したものであり、為替変動に対応した販売価格等の影響は考慮していません。
当社グループは事業活動の維持拡大に必要な資金を確保するため、内部資金および金融機関からの借入を活用しています。
当社においては安定的、効率的に資金調達を行うため、国内金融機関6行と総額800億円の貸出コミットメント契約を締結しています。国内子会社については、主として資金調達をグループのキャッシュ・マネジメント・サービスを活用することにより、資金調達の一元化および効率化を図っています。結果として当連結会計年度末の有利子負債(長期・短期借入金)の9割以上が当社による調達となっています。
また、保有資金については、主に事業拡大のための設備投資、新商品開発のための研究開発および株主還元に活用しています。
当社グループは事業活動を円滑に行うため、安全性、安定性を考慮し手許資金を確保しています。当連結会計年度末の短期有利子負債718億円に対し、現預金は2,690億円となっており、流動性において十分な安全性を確保しています。また、余資については、安全性の高い短期的な預金等に限定して運用し、資金運用を目的とした投機的な取引は行わない方針です。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しています。この連結財務諸表の作成にあたっては、作成時点で入手している情報に基づき、合理的と考えられる見積りおよび仮定を用いていますが、見積り特有の不確実性があるため実際の結果は異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りおよび仮定のうち、重要なものは「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。
当連結会計年度は、連結売上高4,996億円(連結売上高予想5,120億円に対して123億円の減)、連結営業利益553億円(連結営業利益予想615億円に対して61億円の減)となりました。
中期経営計画(2021-2024)の最終年としては、計画目標と比較して連結売上高は754億円の減、連結営業利益は307億円の減で着地しました。これは、海外においては、米州地域の伸長を中心に実績を押し上げた一方で、国内における「Yakult(ヤクルト)1000」を中心とした高付加価値商品の成長が計画を下回ったことが影響したと考えられます。
今後も、海外の景気動向による下振れリスクや、物価上昇等による影響に注意を要する状況の中、「Yakult(ヤクルト)1000」をはじめとする日本国内での高付加価値商品の販売拡大や海外における市場深耕・事業展開拡大など、長期ビジョン「Yakult Group Global Vision 2030」に立脚し、世界の人々の健康に貢献し続けるヘルスケアカンパニーへの進化を目指した戦略展開を推進していきます。
重要な契約等の決定または締結等はありません。
(2024年4月1日前に締結された金銭消費貸借契約等については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定
有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略して
います。)
当社グループは、腸内菌叢(腸内フローラ)を構成する微生物のヒトへの役割を中心とした生命科学の追究により、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献するという企業理念の達成を目指しています。その中にあって当社研究開発部門は、長期的展望に立った基礎研究を行うとともに、それら基礎研究の成果を活かした飲料・食品、化粧品、メディカルバイオーム(Medical(医療)とMicrobiome(細菌叢)を合わせた造語)製品等の研究開発に取り組んでいます。あわせて、事業戦略上求められる研究開発課題の解決や社会の要請に応じた商品の安全性確保と環境対策に関する研究にも力を注いでいます。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
基礎研究開発分野においては、腸内フローラとヒトの健康との関わりを明らかにするために、分子生物学・微生物学・免疫学・生理学・栄養学等の多面的な研究を行っています。プロバイオティクスとしての乳酸菌・ビフィズス菌がヒトの健康維持・増進に果たす役割の解明に重点をおくと同時に、新規の微生物や天然物の探索を行い、飲料・食品、化粧品、メディカルバイオーム製品等への利用を目指した機能性素材の開発に積極的に取り組んでいます。
当連結会計年度の研究成果は次のとおりです。
① 「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」の表層の構成成分である細胞壁多糖LCPS-1の本菌の増殖や生存における役割について検証しました。「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」または遺伝子組換え技術により「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」からLCPS-1を欠失させた菌(LCPS-1欠失株)を牛乳(脱脂乳)または豆乳をベースとする培地で培養した結果、LCPS-1欠失株では、培養16時間以降に増殖が抑えられましたが、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」の増殖は維持されました。また、LCPS-1欠失株では、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」と比べて人工胃液や人工胆汁に対する生存率が低くなることを確認しました。プロバイオティクスが有効性を発揮するには生きたまま腸に到達することが重要と考えており、本研究により、「L.パラカゼイ・シロタ株(乳酸菌)」が生きて腸に到達するためには、LCPS-1の存在が重要であることが示されました。本研究成果は、学術雑誌「International Journal of Food Microbiology」に掲載されました。
② 「L.プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」がスギ花粉症の症状を緩和するメカニズムについて検証しました。温州みかん果汁を「L.プランタルム YIT 0132(乳酸菌)」で発酵させた発酵果汁飲料を摂取したヒトの末梢血を用いて遺伝子解析を行った結果、本飲料の摂取による花粉症症状の緩和に関係する免疫調節遺伝子を特定することができました。本研究により、乳酸菌摂取によるアレルギー症状の緩和に関する新たな知見を得ることができました。本研究成果は、学術雑誌「Allergy」に掲載されました。
③ 沖縄モズク由来の「ヤクルトフコイダン」および「ヤクルトフコイダン」に銀を付与したフコイダン銀塩の抗菌および抗ウイルス効果について調べました。その結果、「ヤクルトフコイダン」は新型コロナウイルスの感染に重要なスパイクタンパク質と細胞の接着を阻害することで、新型コロナウイルスの細胞への感染を阻害することを確認しました。また、フコイダン銀塩は、「ヤクルトフコイダン」よりも低濃度で同様の効果を示したほか、インフルエンザウイルスの感染も阻害することが示唆されました。さらに、フコイダン銀塩は、細菌(大腸菌、表皮ブドウ球菌)および真菌(黒カビ)の増殖抑制効果(抗菌効果)も確認しています。本研究により、「ヤクルトフコイダン」およびフコイダン銀塩を感染症予防に活用できる可能性が示されました。本研究成果は、学術雑誌「Marine Drugs」に掲載されました。
今後も、最先端のバイオテクノロジーに基づく腸内フローラ研究を推進し、プロバイオティクスの健康維持・増進機能の検証と解明に取り組んでいきます。さらに、当社独自の新規機能性素材の開発および応用化研究に力を注いでいきます。
当分野の研究開発費は1,487百万円です。
飲料および食品研究開発分野においては、ヒトの健康に積極的に寄与する商品開発を目指しています。特に、研究開発の対象としては、生活環境の変化や加齢によってバランスのくずれた免疫調節機能を正常化する生体防御面と、世代を超えて拡大している生活習慣病の予防に配慮した生理・代謝機能面に加え、近年の研究により明らかになってきた脳と腸が自律神経を介してお互いに密接に影響を及ぼしあう「脳腸相関」に着目しています。具体的には、プロバイオティクスのパイオニアとして「乳酸菌シロタ株」や「ビフィズス菌 BY株」「B.ビフィダムY株」等を利用し、作用領域を拡大した乳酸菌飲料等、自然界に存在する多くの機能性素材を利用した食品の研究開発に力を注いでいます。
また、より一層お客さまのニーズに応えるため、プロバイオティクスを使用した乳製品、清涼飲料等のラインアップの充実を図っています。
当連結会計年度の成果は次のとおりです。
機能性表示食品である乳製品乳酸菌飲料「Yakult(ヤクルト)1000」のシリーズ品として、糖質・カロリーを低減(32%オフ)し、より甘さを控えた乳製品乳酸菌飲料「Yakult(ヤクルト)1000 糖質オフ」を本年1月に全国で発売するとともに、3月には機能性表示食品として導入しました。
ア. 豆乳を乳酸菌とビフィズス菌で発酵させて作った植物素材利用食品「豆乳の力」3品を昨年10月に導入しました。
イ. ストレート果汁100%りんごジュース「完熟王林」のシリーズ品として、赤りんごの代表品種であり、コクのある甘味と爽やかな酸味のバランスの優れた青森県産の完熟したふじのみを厳選して使用した「完熟ふじりんご」を昨年12月上旬から数量限定で導入しました。
ア. ベトナムヤクルト株式会社が昨年4月に導入した「ヤクルトライト」の技術支援を行いました。
イ. 中国ヤクルト株式会社および広州ヤクルト株式会社が昨年5月に導入した「ヤクルトピーチ風味(鉄プラス)」の技術支援を行いました。
ウ. インドヤクルト・ダノン株式会社が昨年7月に導入した「ヤクルトライトマンゴー風味」の技術支援を行いました。
当分野の研究開発費は7,175百万円です。
その他事業分野のうち化粧品研究開発分野においては、多様化するお客さまのニーズに応えることを目指し、「美」と「健康」の追究と当社独自の乳酸菌発酵技術を活かした「高機能・高品質で安全性の高い化粧品」の開発を志向しています。
具体的には、乳酸菌生まれの保湿成分を配合したスキンケアシリーズ「ラクトデュウ」から、従来品にオリジナル保湿成分ビフィズス菌はっ酵エキス(大豆)等を新たに配合し、オリジナル保湿成分HBヒアルロン酸(持続型)を増量したリニューアル品3品を、昨年4月および10月に導入しました。
当分野の研究開発費は735百万円です。
<医薬品製造販売事業分野>
その他事業分野のうち医薬品研究開発分野においては、4SC社(ドイツ)から導入したHDAC阻害剤「レスミノスタット」について、皮膚T細胞リンパ腫を対象とした国際共同第Ⅱ相臨床試験を実施中です。
なお、開発中の品目を除き、新たな抗がん剤の開発には着手していないため、当分野の研究開発費は計上していません。
今後は当社の研究基盤である乳酸菌研究をベースに、マイクロバイオーム領域で、医薬部外品や一般用医薬品、サプリメント等への事業転換に取り組みます。