第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年7月29日)現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)当社グループの経営の基本方針

 当社グループは創業以来、「お客様第一主義」の経営理念に基づき、全社員が「STILL NOW(今でもなお、お客様は何を不満に思っているか)」を考え、「自然・健康・安全・良いデザイン・おいしい」の製品開発コンセプトに基づき、お客様にお喜びいただける製品の開発と、お客様に密着したサービスに努めてまいりました。

 当社グループの考える「お客様」とは、「消費者の皆様・株主の皆様・販売先の皆様・仕入先の皆様・金融機関の皆様・地域社会の皆様」であり、単に消費者の皆様にとどまらず、当社グループと関わりを持たれるすべての方々を「お客様」と定義しております。

 全社員が「STILL NOW(今でもなお、お客様は何を不満に思っているか)」の精神を持ち、「お客様」にお喜びいただける最良のサービスをご提供することが、最良の経営につながるものと確信しております。

 今後も、当社グループは「お客様第一主義」の経営理念に基づき、継続的に企業価値を高め、より一層株主価値を向上させる経営に努めてまいります。

 

(2)当社グループの中期的な経営戦略

 当社グループは、2024年6月に2029年4月期までを対象とする新たな「伊藤園グループ 中期経営計画」(以下、新・中期経営計画)を発表しました。

 新・中期経営計画では、お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会を実現するため、2041年4月期の将来像実現に向けて、より迅速な事業展開を推進します。前・中長期経営計画で掲げた「5つの重点戦略」の基本的な枠組みは変えずに、内容を更新及び拡充しました。当社グループは、「お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会の実現」を使命として、「健康創造企業」をグループのミッションとして掲げています。新たに策定した新・中期経営計画に基づき、今後も「心身の健康」「社会の健康」「地球環境の健康」の価値創造に取組み、お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会の実現に貢献していきます。

 

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(3)当社グループの対処すべき課題

 当社グループは今後、法令及び社会的規範の遵守、製品の安全性並びに品質管理体制等、企業の社会的責任に消費者の厳しい目が向けられる中、経営理念であります「お客様第一主義」を徹底し、企業価値を高め、一層の株主価値を向上させるために、以下の項目を中心に取り組んでまいります。

 

① ブランドの確立

1.製品開発

 当社は、「自然・健康・安全・良いデザイン・おいしい」を製品開発コンセプトに、全社員が「STILL NOW(今でもなお、お客様は何を不満に思っているか)」を考え、当社独自の提案制度であるVoice制度(お客様のご不満やご要望を製品開発に取り入れる提案制度)を活用し、積極的に新製品の開発及び既存製品の改良を行っております。今後もVoice制度を積極的に活用し、お客様のニーズに即した製品開発・改良に努めてまいります。

 

2.研究開発

 当社の研究開発において、特に「健康」、「安全」、「おいしい」、更には、持続可能な社会への貢献として「環境」に重点を置き、基礎・応用研究を進めております。当社が提供する製品が、人々の健康維持に有用であることを、様々な試験を通じて検証し、常に最新情報を発信し続けます。更に健康価値を表示できる特定保健用食品や機能性表示食品の開発にも力を注いでいきます。また、飲料のおいしさに関与する成分研究や物性に関する研究を進め、より優れた製品開発に向けた技術提案を行ってまいります。環境については、「お~いお茶」などの飲料製造工程で発生する茶殻を、肥料や飼料の再利用のほか、新たなアップサイクル製品へと生まれ変わる「茶殻リサイクルシステム」を推進しています。

 

3.ブランド強化政策

 「伊藤園(ITO EN)」という「総称ブランド」を軸に、「お~いお茶」「健康ミネラルむぎ茶」「TULLY'S COFFEE」「1日分の野菜」などの「個別ブランド」の強化を図ってまいります。

 特に主力製品であります「お~いお茶」につきましては、1985年の発売から続いている原料と製法にこだわり、自然のままのおいしさを引き出し、お客様へご提供してまいります。また、緑茶飲料が様々な飲用シーンでお楽しみいただけるよう、容量、容器バリエーションの充実を図るとともに、緑茶飲料を初めて発売した当社ならではの技術力で、季節に合わせた製品や「濃い茶・ほうじ茶・抹茶入り・玄米茶」など、茶葉の特徴を取り入れ、飲用価値を訴求した製品を発売し、より一層のブランド強化に努めてまいります。今後も品揃えを強化し、お客様にご満足いただける本物のおいしさをご提供してまいります。

 

② 営業基盤の強化

1.ルートセールス

 ルートセールスとは、「製品、サービスをお客様へ直接ご提供する販売システム」のことであります。当社はこのシステムを採用することにより、当社とお客様をダイレクトに結びつけ、地域に密着した営業活動を展開しております。

 また、機能性、携帯性に優れたルートセールス担当営業員用のポータブル端末を活用することで、お客様に効率的かつ的確なサービスをご提供できるよう努めております。

 

2.お客様へのサービスの強化

 これまでもルートセールスにより、お客様へのサービスに努めてまいりましたが、確固たる営業基盤を築くため、新しいお客様の開拓に努めるとともに、既存のお客様への訪問の強化を行っております。また、お客様のご不満を聞き、お客様にご満足していただける製品開発や魅力的な売り場づくりなど、総合的なご提案をルートセールスにより行っております。

 

③ 総コストの削減

1.委託生産方式

 飲料製品におきましては、「ファブレス(fabless 工場を持たない)」方式により、設備投資リスクの軽減を図り、市場環境の変化に迅速に対応できる体制にしております。

 また、全国を5つの地域に分けて生産管理を行う5ブロック生産体制を敷くことにより、迅速な製品供給を行うとともに、物流の効率化も可能となっております。

 

2.原材料調達力の強化

 当社は、緑茶のトップメーカーとして国内荒茶生産量の約4分の1を取扱い、長年にわたり生産者との信頼関係を築き上げた結果、高品質の原料茶を安定的に確保できる極めて強力な原料調達力を持っております。また、これまでに蓄積したノウハウと高い製造技術により、高品質の飲料用原料茶を自社製造で調達することができる飲料メーカーであります。国内では就農者の高齢化と後継者不足のため、就農人口、茶園面積の減少が進んでおります。そこで当社は、日本農業の課題解決と、今後も需要増加が見込まれる緑茶飲料用を中心とした原料の安定調達の両立を目指して1976年より茶産地育成事業を行っております。各地の茶農家から茶葉を全量買い取りする“契約栽培”と、荒廃農地などを大規模な茶園に造成して茶葉を生産する“新産地事業”とで茶産地をサポートしています。新産地事業では、九州5県に加え静岡県及び埼玉県にて、苗木の選定から茶園づくり、そしてその茶園を機械化、IT化により低コストで管理できる栽培及び荒茶加工ノウハウを、当社から農家に対し提供することで、生産性と環境保全を両立した茶園経営を推進し、より高品質な原料茶の安定調達を目指すとともに、荒廃農地の活用及び生産農家の後継者育成ならびに雇用の創出など茶業界と地域の活性化にも寄与しております。

 また、当社が展開する「TULLY'S COFFEE」ブランドは、高品質のアラビカ種のコーヒー豆を使用しております。コーヒー豆の調達においては、当社グループ(当社、タリーズコーヒージャパン、米国を拠点とするDistant Lands Trading Co.)間でのバリューチェーン上の連携により、世界各国の産地、サプライヤーから原料の調達を実施しております。

 

④ 海外事業の強化

 連結子会社であるITO EN (North America) INC. が米国における緑茶市場の創造と開拓を進めるため、全米のナチュラルフードマーケットや、ナショナルチェーン店等に対し営業活動を行い、本物の日本茶を米国に普及させると同時に、「ITO EN」及び「お~いお茶(Oi Ocha)」ブランドの確立を図っております。「ITO EN MATCHA GREEN TEA」につきましては、これまで米国市場には無かった高品質の緑茶ティーバッグ製品や抹茶製品として、また、「お~いお茶(Oi Ocha)」ブランドにつきましては、日本と同様に緑茶のティーバッグからインスタント、抹茶、飲料製品に至るフルラインアップでお客様に大変なご好評をいただくとともに、米国での日本茶市場の拡大に大きく貢献しており、今後も強化してまいります。また、中国、東南アジア、豪州、本年3月に法人設立した欧州などにつきましても、引き続き販売強化を進めてまいります。

 

⑤ サステナビリティ経営の推進

 当社グループは、サステナビリティ経営の推進と実践により、社会・環境課題の解決と企業価値向上の両立(共有価値の創造:CSV)を目指しております。「健康創造企業」として、「心身の健康」「社会の健康」「地球環境の健康」の3つの健康価値を創造し、長期ビジョン「世界のティーカンパニー」の実現に向けて、「伊藤園グループサステナビリティ基本方針」のもと、7つのマテリアリティ(重要課題)を経営戦略に据え、事業戦略と相互に連動させた取り組みを推進しています。

 

<7つのマテリアリティ>

マテリアリティ

コミットメント

食生活と健康への貢献

人生100年時代を見据えた研究開発・各世代の健康に資する製品・サービスを通じて、お客様の健康的で豊かな生活に貢献します。

持続可能な農業への貢献

茶産地育成事業を通じて、高付加価値原料の開発や環境配慮型農業の推進により、持続可能な農業に貢献します。

環境

自然由来の製品を主として事業活動を営む企業として、人類共有の地球環境を守る課題に取り組みます。

地域社会・コミュニティとの

つながりの深化

様々なステークホルダーとの対話を通じ、地域社会の課題解決に貢献します。また、お茶を介したコミュニケーションにより、心身ともに健康をサポートします。

持続可能なサプライチェーン

への貢献

バリューチェーンにおける全ての人々の人権を尊重するとともに、サプライヤーとの持続的なパートナーシップにより、社会・環境課題の解決と双方の持続的な収益の両立を実現します。

多様な人財と全員活躍の推進

全従業員が健康でいきいきと活躍する組織づくりに取り組みます。

コーポレート・ガバナンス

サステナビリティ経営の推進と実践で、社会・環境課題への対応とリスク管理を強化し、企業価値を向上させます。

 詳細は、「2サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年4月30日)現在において当社グループが判断したものであり、様々な要因により実際の結果とは大きく異なる可能性があります。

 

(1)サステナビリティ経営の推進

 当社グループにとって、サステナビリティへの対応は、持続可能な成長を実現するための重要な経営基盤です。経営理念「お客様第一主義」に基づき、自然由来の製品を主として、誠実なサービスでお客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会の実現に貢献する「健康創造企業」として、「心身の健康」「社会の健康」「地球環境の健康」の3つの健康価値を創造し、サステナビリティ経営の推進と実践により、社会・環境課題の解決と企業価値向上の両立(共有価値の創造:CSV)を目指しています。「伊藤園グループサステナビリティ基本方針」のもと、7つのマテリアリティ(重要課題)を経営戦略に据え、長期ビジョン「世界のティーカンパニー」の実現に向けて、中期経営計画と相互に連動させた取り組みを進めております。

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①ガバナンス

 当社グループは、中長期的な企業価値向上の観点から、サステナビリティを巡る課題をリスクの減少・収益機会につながる重要な経営課題であると認識しております。サステナビリティ経営の推進と強化のため、サステナビリティ推進委員会を設置し、年4回開催しています。本委員会は、代表取締役社長を委員長とし、サステナビリティ推進担当役員(CSO)、人事・人権推進担当役員(CHRO)、生産・物流、マーケティング、営業、国際、管理等の担当役員及び主要各部門長で構成され、サステナビリティ推進体制の確立及び運営、マテリアリティの特定及び見直しと取り組みの推進、社会・環境課題に関する対策と方針を検討しています。

 伊藤園グループ全体でのサステナビリティ経営を推進するため、2022年度からCO排出量の算定など順次グループ会社での対応を開始し、2023年度からはサステナビリティ推進委員会を発展させ、グループ会社の経営層も参加する体制としました。また、年4回開催の本委員会のほかに重要テーマ別分科会及びワーキンググループを設置し、テーマごとの議論を進めています。

 サステナビリティ推進委員会にて検討された重要事項は、執行役員会及び取締役会に報告・審議され、経営戦略に反映しております。

 

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②戦略

 当社グループは、外部環境の変化に対応するため、経営課題として取り組む領域として7つのマテリアリティ(「食生活と健康への貢献」「持続可能な農業への貢献」「環境」「地域社会・コミュニティとのつながりの深化」「持続可能なサプライチェーンへの貢献」「多様な人財と全員活躍の推進」「コーポレート・ガバナンス」)を特定し、中期経営計画と連動した取り組みを推進しております。

 

<食生活と健康>

 当社グループは、健康寿命の延伸や心身の充足に貢献する研究開発と、栄養改善や健康に資する製品・サービスの提供を通じて、お客様の健康で豊かな生活の実現に取り組んでいます。

 ビタミン・ミネラル等の摂取不足や、脂肪・砂糖・塩分等の過剰摂取といった世界的な栄養課題をはじめ、認知機能、フレイル(高齢者虚弱)等の加齢に関連する健康課題に対し、お茶のリーディングカンパニーとして、緑茶や抹茶成分の機能性に関する研究を推進しています。2023年12月には、カテキン分析において試験所認定の国際規格であるISO/IEC17025を取得しました。今後も、国際基準に適合した精度の高い結果をお客様に提示できるよう技術力を高め、製品の安心・安全への取り組みを強化していきます。

 また、研究成果やお茶の健康価値を「伊藤園ウェルネスフォーラム」等を通じて広く発信し、「お茶」を通じたつながりを創出することで、心と体の両面からお客様の健康をサポートしてまいります。

 

<持続可能な農業>

 1976年から取り組む茶産地育成事業では、高品質な原料茶の安定調達に加え、荒廃農地などの茶畑への転換や環境配慮型農業の推進により、持続可能な農業の実現に取り組んでいます。

 緑茶や抹茶原料については、世界的な減糖・無糖意識や健康志向の高まりから海外輸出機会の拡大が見込まれており、各国の品質基準や気候変動への対応等、さまざまな取り組みが求められております。当社では、安心・安全に配慮した製品の提供と、世界各国の基準・認証を取得した原料茶の生産・調達の実現に向けて、茶産地育成事業では農業生産工程管理の認証制度「GAP認証」を100%取得しております(※1)。また、茶農業における営農支援ツールとして、クラウド型栽培管理システムを茶産地育成事業の一部で導入し、茶園経営のDX化を推進しています。2024年1月からは、トレーサビリティのさらなる高度化のため、海外向けの緑茶原料が各国の農薬基準に適しているかを判定する独自システムの運用を開始しました。

 環境対応では、「お~いお茶」などの飲料製造過程で委託先工場から排出される茶殻を堆肥化し、茶畑へ散布することによる循環型農業の推進や、CO₂を土壌に固定することを目的とする「バイオ炭」(※2)の散布試験を行っています。「バイオ炭」は土壌改良効果も期待されており、温暖化対策効果の評価とあわせて、茶の生産性向上への貢献も検証しています。

 今後も茶産地育成事業の展開拡大を通じて、高品質な原料茶の安定調達と持続可能な茶農業の発展に貢献し、さらなる事業機会の拡大につなげてまいります。

 

(※1)食品安全や環境保全のほか、人権の尊重、労働安全、農場管理等の取り組みを行う農場に与えられるGAP

認証制度には、世界基準である「グローバルGAP」のほか、日本GAP協会が展開する「JGAP」「ASIAGAP」等があり、ここではこれら3つの認証のうちいずれかを取得した農園を指します。

(※2)木や竹などを炭化させたもの

 

<環境課題への取り組み>

 気候変動を含む環境課題の取り組みについては、後述の「(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)」をご参照ください。

 

<人権尊重の取り組み>

 人権の尊重は、グループ経営理念「お客様第一主義」の根幹をなすものであり、全ての事業活動の根幹となるものです。当社グループは、「伊藤園グループ人権方針」「伊藤園グループサプライヤー基本方針」のもと、バリューチェーンにおける全ての人々の人権尊重の取り組みを推進しています。当社では、2023年より人権デューデリジェンスの体制構築と取り組みを進めており、2023年度は特定した優先度の高い重要な人権テーマを踏まえ、国内の茶生産者と自社工場における外国人就労者や特定技能実習生を対象とした外部機関による調査を実施しました。持続可能なサプライチェーンマネジメントの実現に向けて、今後もサプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの実施に継続的に取り組んでまいります。

 

<人材への取り組み>

 後述の「(3)人的資本」をご参照ください。

③リスク管理

 当社グループは、企業経営の目的に影響を与え得る事象をリスクとして定義し、「伊藤園グループリスクマネジメント方針」に基づき、目的達成を阻害するリスクを全体的視点で統合的かつ戦略的に管理し適切に対応することにより、企業価値の維持・向上に努めております。重要リスクに関しては、代表取締役社長が委員長を務めるリスクマネジメント委員会で管理しています。また、リスク管理の体制及び基本的事項を明確にするため、リスク担当部署を設け、リスクマネジメント規程やガイドラインを策定するとともに、横断的なリスクマネジメント体制を構築しております。各委員会と連携しながらリスクを認識・評価し、適切な対応策を図るための全社的なリスクマネジメント体制を整備し、リスクと機会の両方の観点からサステナビリティ経営を推進しています。

 

④指標及び目標

 中期経営計画に合わせて、マテリアリティごとに取り組みテーマと評価指標(KPI)を設定し、PDCAで管理・評価を行っております。KPIは、取り組み状況に応じて定期的に見直しをしていく予定です。

 なお、下表の主な指標・目標及び実績は、注記を除き、当社グループにおける主要事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

マテリアリティ

取り組みテーマ

主な指標・目標

2022年度実績

食生活と

健康への貢献

人生100年時代に向けた研究開発

食品の健康価値に関する研究発表件数

年間25件

26件

生活者の健康ニーズと多様化するライフスタイルへの貢献

「お~いお茶」販売国

2040年度までに100ヵ国以上

(2028年度 60ヵ国以上)

40の国・地域(※1)

製品の安全・安心品質の追求と

環境負荷低減

ドリンク/リーフの工場監査

実施率100%

※国内ドリンク/リーフ製造工場

100%

持続可能な

農業への貢献

世界に通用する独自の農業モデルの進化

茶産地育成事業展開面積

2026年度 2,650ha

2030年度 2,800ha

2,437ha

有機栽培の生産量

2026年度 380t

2030年度 500t

253t

GAP認証の維持・運用 100%

※茶産地育成事業

100%

環境

気候変動への対応

CO₂排出量の削減率(対2018年度)

2030年度

Scope1・2 50%削減

Scope3   20%削減

(※2)

2050年度

Scope1~3 カーボンニュートラル

全社再生可能エネルギー比率

2030年度 100%

13.7%

全車両中の電動車の導入比率

2030年度 50%

8.2%

水資源

原単位水使用量の削減率(対2018年度)

2030年度 16%削減

※生産1㎘当たりの水使用量

10.8%増加

持続可能な容器包装

リサイクル素材等の使用率

(全ペットボトル製品)

2030年度 100%

36%(※3)

生物多様性

水源地保全活動、環境保全・整備活動の

総参加人数 年間500人

615人

廃棄物の削減/資源循環の推進

食品リサイクル率

伊藤園:90%以上

タリーズコーヒージャパン:50%以上(※1)

伊藤園:94.8%

自販機ダミー(※4)プラスチック

使用量の削減率(対2018年度)

2028年度 50%削減

(※1)

 

 

マテリアリティ

取り組みテーマ

主な指標・目標

2022年度実績

地域社会・

コミュニティとのつながりの深化

地域社会との共創

食育参加人数 年間60万人

61.8万人

お茶を通じたつながりの創出

持続可能な

サプライチェーン

への貢献

持続可能なサプライチェーンの構築

供給者評価の実施

実施

人権尊重の取り組み推進

人権リスクの高いサプライチェーンに

対する人権デューデリジェンスの実施

年1回以上

3回(※1、3)

社内向け人権啓発活動に関する

教育の実施 年3回以上

2回(※1、3)

多様な人財と

全員活躍の推進

多様な人材の育成と活躍推進

従業員エンゲージメントスコア

2026年度 3.5以上(6点満点中)

3.18

女性管理職比率 2026年度 10

3.7%(※3)

男女間賃金格差

(正規雇用労働者を対象、男性を100とした場合)

2026年度 80

79.8%(※3)

上記のうち勤続10年未満

2026年度 100%

94.3%(※3)

男性育児休業取得率

2026年度 50

43.1%(※3)

健康経営の推進

健康経営優良法人(ホワイト500)の

維持

認定(※3)

コーポレート・

ガバナンス

サステナビリティ経営の推進

サステナビリティ重要課題の推進体制と

監督機能の強化及びステークホルダーとの対話の実施

実施

グループリスク管理の強化

リスクマネジメント委員会の開催

4回

関連会社との定例会議の実施

4回

コンプライアンスの徹底

コンプライアンス教育の実施回数

年間12回(全社員対象)

12回

DXの推進

DX推進委員会の開催

11回

(※1)2024年4月に新たなKPIとして設定したため、数値の記載があるものに関しては参考値となります。最新の実績は、2024年10月以降に当社ホームページにて公開予定です。

(※2)2023年度よりScope1~3排出量の集計対象範囲を拡大し、過年度に遡及して適用予定です。最新の実績は、2024年10月以降に当社ホームページにて公開予定です。なお、当社及び当社の代表的なグループ会社である伊藤園産業㈱、タリーズコーヒージャパン㈱、チチヤス㈱を集計対象範囲とした当連結会計年度末時点における2022年度実績は、対2018年度でScope1・2が17.7%削減、Scope3が16.3%削減となっています。

   (※3)2023年度実績

  (※4)自動販売機の商品見本(サンプル)

 

 

(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)

 当社グループは、自然由来の製品を主として事業活動を営む企業として、人類共有の地球環境を守り、次世代に継承することが最重要課題の一つであると考えております。TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、気候変動関連の諸課題の解決に向けて取り組んでおります。また、環境活動の持続的な改善に有効な手段として、ISO14001に沿った環境マネジメントシステムを導入し、当社の全部署において認証を取得しております。

 

①ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティ推進委員会(委員長:代表取締役社長 、年4回開催)において、気候変動問題に対する方針と戦略、対応策を議論しております。サステナビリティ推進委員会にて検討された重要事項は、執行役員会及び取締役会に報告・審議され、経営戦略に反映しております。

 

②戦略

 当社グループは、気候変動の主要因であるGHG排出量の削減に向け、「伊藤園グループ中長期環境目標」において「2050年度カーボンニュートラル」を目標として掲げ、2030年度までに2018年度のCO排出量に対し、Scope1・2で総量50%削減、Scope3で総量20%削減の実現に向け、取り組みを推進しております。

具体的には、2020年度から毎年対象範囲を拡充しながらTCFD提言に基づくシナリオ分析を実施することで、事業活動に影響を与える気候変動関連の重要なリスクと機会を特定し、対応策の検討と取り組みの強化を進めてきました。2020年度は、主力製品の原料である国内緑茶原料を対象に、気候変動に関する政府間パネル(以下、IPCC)の代表的濃度経路シナリオに基づき、各条件下での茶葉収穫量と品質への影響を定量的・定性的に分析しました。2021年度は、IPCC及び国際エネルギー機関(IEA)によるシナリオに基づく「1.5/2℃」、「4℃」の2つのシナリオを設定したうえで、対象を当社事業のバリューチェーン全体へと拡大し、2030年、2050年を対象時点とした中長期の気候変動による事業への影響を分析しました。2022年度はリーフ・ドリンク関連事業に関わるグループ会社、2023年度は自社及び国内の外部委託物流倉庫に対象範囲を拡大して分析を行いました。

各シナリオにおける気候変動に伴うリスクと機会の項目を特定し、リスク・機会の顕在化が想定される時期を「発生時期」、事業へのインパクトを「影響度」として事業インパクト評価を行った結果、「1.5/2℃」シナリオでは低炭素社会への移行リスクとして、Scope1・2のGHG排出量に応じて2030年度には14.2億円、2050年度には25.4億円の炭素税導入によるコスト増加の影響があると試算しました(2023年時点)。また「4℃」シナリオでは、気候変動がもたらす物理的リスクとして気温上昇等による原料農作物の調達リスク、 渇水・洪水による操業停止等の水リスクが特に重要な影響を及ぼす可能性が高いことを認識しました。詳細は伊藤園統合レポートや当社ホームページ等に掲載しております。今後もリスクの回避・緩和、機会獲得に向け、バリューチェーン全体の脱炭素化やBCPの強化を対応策として推進してまいります。

 

<シナリオ分析結果の概要>

・1.5/2℃シナリオ:社会全体が脱炭素に向けて変革を遂げ、温度上昇の抑制に成功するシナリオ

分類

特定した内容

当社への影響

発生

時期

影響度

対応策の検討

移行

リスク

炭素税の導入

自社工場等からの燃料、電気使用への賦課(価格転嫁含む)による費用の増加

 

炭素税財務影響額(試算)

14.2億円(2030年度)

25.4億円(2050年度)(※1)

中期

長期

「伊藤園グループ中長期環境目標」に基づくGHG排出量削減の取り組み推進

 

Scope1・2のGHG排出量削減目標を達成した場合の節税効果

約7.1億円(2030年度)

約25.4億円(2050年度)

GHG排出抑制

ペットボトルへのリサイクル

素材等の使用、電力再エネ化、

電動車導入による費用の増加

短期

中期

資材の軽量化、省エネの推進、

エコドライブの実施によるコスト削減

機会

環境配慮製品の需要増

消費者の環境配慮への意識向上に伴った製品づくりや取り組みによる売上の増加

中期

環境配慮型製品や認証製品の

取り組み強化、営業販売の強化と拡充

(※1)炭素税価格(1tCO₂当たりの価格)は、IEA「World Energy Outlook 2022」のNZEシナリオの先進国の単価予想より独自に推計、設定しています。また、炭素税の試算の範囲は、当社及び当社の代表的なグループ会社である伊藤園産業㈱、タリーズコーヒージャパン㈱、チチヤス㈱のScope1・2を対象としています。

 

・4℃シナリオ:経済発展を優先し、世界の温度上昇とその影響が悪化し続けるシナリオ

分類

特定した内容

当社への影響

発生

時期

影響度

対応策の検討

物理的

リスク

平均気温の上昇

農作物への影響として収量、品質低下による調達費用の増加

中期

「茶産地育成事業」の推進

環境配慮型農業推進

産地開発、調達産地の複線化

降水・気象

パターンの変化

渇水、風水害による工場、

事業所の操業停止等による

販売機会逸失・復旧費用の発生

中期

水リスクの調査及びBCP対応

サプライヤーへのリスク共有、対応

水源地保全活動の実施

豪雨、防水対策の実施

風水害の激甚化

短期

中期

機会

環境変化に伴う

需要増

暑さ対策、健康志向の需要増による販売機会の増加

中期

熱中症対策製品、機能性表示製品の

販売拡充

発生時期(リスク・機会の顕在化が想定される時期)

短期:2023年~2025年、中期:2026年~2030年、長期:2031年~2050年

影響度(当該リスク・機会が顕在化した場合に、事業に与えるインパクトの大きさ)

大:事業に大きなインパクトを与え、顕在化している事象や顕在化に備えた対応が必須な事項

中:事業に与えるインパクトは大きくはないが、顕在化している事象や顕在化に備えた対応が必須な事項

それぞれシナリオ群の定義に沿って、影響度が中以上のリスク・機会を記載しています。

 

③リスク管理

 「3事業等のリスク(5)気候変動・自然災害」をご参照ください。

 

④指標及び目標

 当社グループは、2050年度のカーボンニュートラルの実現に向けて「伊藤園グループ中長期環境目標」を設定し、グループの事業活動におけるバリューチェーン全体の環境負荷低減と課題解決に取り組んでいます。2030年度CO₂排出量削減目標のほか、気候変動リスクに関わる重要指標として、製造に使用する水の使用量、容器包装に関する目標を掲げています。詳細は、「(1)サステナビリティ経営の推進 ④指標及び目標」をご参照ください。

 

<その他の環境課題への対応>

 当社グループは、水資源、プラスチックを中心とする廃棄物等の環境問題、それらと密接に関わり合っている生物多様性の問題に対して、気候変動への対応と同様に解決に向けた取り組みを推進しております。

 

 ・水資源

持続可能な水資源の利用を目指し、生産活動における水使用量の削減等の取り組みを推進しております。当社は飲料製品の製造を外部へ委託する「ファブレス(fabless 工場を持たない)」方式を採用しているため、委託先企業を含めたバリューチェーン全体で取り組む必要があると認識しています。サプライヤーに対してはGHG排出量及び水使用量の削減目標の作成と環境責任者の設置を求め、サプライヤーからの一次データに基づいて算定を行っています。また、毎年定期的に品質会議を開催し、サプライヤーとのエンゲージメントを通じて「伊藤園グループ中長期環境目標」の達成に向けた進捗管理と環境負荷低減への取り組みを働きかけるとともに、定量・定性によるサプライヤー間の情報交換を推進し、今後の削減策に反映させています。

水リスクについては、毎年、自社及び協力工場を対象とした評価・特定を行って必要な対策を講じているほか、協力工場と協働して、工場周辺の取水源となる水源地保護につながる森林保全活動等を推進しています。

 

 ・容器包装

世界的なプラスチック問題に対する規制強化の流れを受け、脱炭素社会と循環型社会の実現に向けた一層の取り組みが求められております。当社グループは、「伊藤園グループプラスチックに関する方針」「伊藤園グループ容器包装に関する方針」に基づき、ペットボトル、キャップ、ラベルなどの資材の軽量化、ラベルレス製品の拡充、植物由来の生分解性素材といった環境配慮素材や再利用可能容器への代替など、容器包装の3R(リサイクル、リデュース、リプレイス&リユース)+クリーン(環境保全)に取り組んでいます。

また、2030年度までに全ペットボトル製品に使用するリサイクル素材等の割合を100%にすることを目指し、自治体及び協力工場を含めた関係者と協働し、ペットボトルの水平リサイクル「ボトルtoボトル」による資源循環を推進しております。2023年度の全ペットボトル製品でのリサイクル素材等使用率は36%となりました。今後も消費者に向けたペットボトルの分別への理解促進や、関係者とのパートナーシップによる「ボトルtoボトル」の取り組みを推進し、循環型社会の実現に貢献してまいります。

 

 ・生物多様性

豊かな自然の恵みを活かして事業活動を行っている当社グループにとって、気候変動と同様、喫緊の課題である生物多様性の保全と回復に向けて、「伊藤園グループ生物多様性保全に関する方針」のもと、事業活動を通じた取り組みを推進しております。当社グループは、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、統合的な取り組みを推進しています。また、環境省が主導する「生物多様性のための30by30アライアンス」への参画を通じて、より一層ネイチャーポジティブの実現に取り組んでいます。

 

 

(3)人的資本

 人の成長が組織の成長を実現するという考えのもと、

過去の成功体験にこだわらず、変化の中で自律的に成長できる人材を育成していきます。そして、当社グループのミッション、長期ビジョンが全社員に理解、浸透し、チーム「伊藤園グループ」として全員活躍が志向される組織を構築していきます。自ら学び、行動し、挑戦し続ける組織風土を強化し、中期経営計画の達成と「健康創造企業」として「世界のティーカンパニー」を目指します。

 また、策定した中期経営計画の5つの重点戦略を実現させるため、「地域コミュニケーション」「グローバル」「次世代リーダー」「DX推進」「多様性受容」をテーマとした、求める人材の具体像を掲げました。これまで実施してきた人材マネジメントの取り組みを継続・発展させ、中期経営計画の実現と企業価値向上に貢献

していきます。

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①戦略

1.人材育成方針

 当社グループは実力主義の考えのもと、チャンスは社員一人ひとりに平等であり、評価は公正に行うことを基本として、常に前向きに挑戦する人材の育成に力を入れています。多様な人材が、あるべき姿を求め、自ら考え、学び、率先して行動し、自らの夢を実現することこそが、企業の持続的な成長と発展を支え、企業価値を高めると信じ、社員の自己実現に向けたキャリア形成を支援しています。

 

2.社内環境整備方針

 当社グループでは、社員一人ひとりが常に前向きに挑戦し、互いに切磋琢磨しながら、組織力を活かし、環境の変化に迅速に対応できる、創造性と生産性の高い組織つくりを目指します。その中で、多様な人材が一人ひとりの状況に応じて柔軟に働き方を選択できるようにすることで、ワークライフバランスを推進し、誰もが働きやすい職場になるよう環境整備を行っています。

 

②指標及び目標

1.女性の管理職比率

 女性活躍推進法に基づく第4期行動計画(2023年5月~2027年4月)を策定し、女性活躍に向けた取り組みを進めています。女性社員が自己の能力を十分に発揮し、更なる活躍ができるようキャリア・ライフプランを再考・形成できる場を設けています。階層別の女性教育を実施することで女性社員のモチベーションや定着率向上、家庭と仕事の両立支援、管理職の育成などの強化に繋げています。

 

2.男性の育児休業取得率

社員及びその家族のライフステージ(出産・育児・介護など)を福利厚生、勤務・賃金体制の面から総合的に支援しています。男性社員の育児休業取得推進を目的とした「育児休業制度」拡充や、病気・育児・介護との両立を目的とした「短時間勤務、繰上げ繰下げ勤務」の適用拡大などを進めています。

    詳細は、「(1)サステナビリティ経営の推進 ④指標及び目標」をご参照ください。

 

(4)社会からの主な評価

 当社グループのESGへの取り組みが評価され、世界の代表的なESG指数である「FTSE4Good Index Series」及び、世界最大級の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用している日本企業の株式を対象としたESG投資指数の構成銘柄に複数組み入れられております。

また、国際的な非政府組織(NGO)であるCDPによる「気候変動」分野の調査において、当社グループの環境目標とその達成に向けた取り組みが評価され、前回よりも1段階高い「A-」の評価を初めて受けました。

社員と家族の健康保持・増進に向けた健康経営の推進にも取り組んでおり、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人(大規模法人部門)2024 ~ホワイト500~」の認定を継続して受けております。

 

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当社のMSCIインデックスへの組み入れ、MSCIのロゴ、商標、サービスマークまたはインデックス名称の使用は、MSCIまたはMSCI関係会社による当社の後援、推薦または販売促進を意味するものではありません。MSCIインデックスはMSCIの独占的財産であり、MSCI及びMSCIインデックスの名称とロゴは、MSCIまたはその関連会社の商標またはサービスマークです。

 

3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年4月30日)現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。

 

(1)国内経済、消費動向

 当社グループの事業の大部分は、日本国内において展開しております。そのため、日本国内における景気や金融政策、自然災害や感染症流行などによる経済動向の変動や、これらに影響を受ける個人消費動向の変動は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)市場での競争

 当社グループの主要事業である飲料製品の市場は、店頭での低価格化が続き、販売額の伸び悩みが顕著となっており、併せて、キャンペーン等による販売促進活動により、依然として飲料各社の激しい競争が続いております。また、カテゴリー間でのシェア争いや、消費者の嗜好の変化により、製品のライフサイクルが短い市場でもあります。

 このような市場環境のなか、当社グループは緑茶飲料を中心としたお客様のニーズに沿った製品の提供や、ルートセールスを中心とするお客様へのサービスに努めております。

 今後も継続してこれらの施策を実施するとともに、市場動向を予測し、競争に打ち勝つ施策を展開してまいりますが、これらの施策が市場環境の変化に十分対応できなかった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)原材料調達

 当社グループの主要事業は、茶系飲料を中心とする飲料製品でありますが、就農人口の減少や、茶園面積の減少による茶生産量の減少に加え、飲料用茶葉の需要増大により、当社グループが必要とする茶葉の確保が出来ない場合の需給関係の悪化や、輸入原料(穀物・コーヒー・野菜・果汁等)の高騰や為替の影響により調達コストが上昇し、原価高の要因となる可能性があります。

 また、当社グループ飲料製品のPET容器原料である石油価格の高騰等により、原価高の要因となる可能性があります。

 当社グループが今後これらの市場環境の変化に対応できなかった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)生産体制

 当社グループでは、グループ内工場で茶葉製品の大部分と、飲料製品の原料製造を行っております。また、飲料製品の大部分と茶葉製品の一部は、グループ外の委託工場で製造しております。

 グループ内工場におきましては、生産設備が突発的に停止することがないよう、定期的に設備点検等を実施しております。また、委託工場につきましては、不測の事態が発生した場合に備えて、全国各地に複数の委託工場を確保しております。

 しかしながら、天災等による生産への影響を完全に排除できる保証はなく、不測の事態が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)気候変動・自然災害

 地球温暖化に伴う気候変動は、集中豪雨などの異常気象による洪水・土砂災害や酷暑、水資源の変化等、様々な被害をもたらします。当社グループの主力製品の原料は、茶、大麦、コーヒー、野菜、果実等の農産物であるため、生産地での気候変動の影響による不作が生じた場合、原料調達価格の上昇及び必要量の不足に伴う販売機会損失などが想定されます。当社グループでは、リスクマネジメント委員会(委員長:代表取締役社長)において、気候変動リスクについても重要リスクの1つとして認識し、全社的なリスクマネジメント体制に統合して管理しております。また、TCFD提言に基づく気候変動シナリオ分析における定期的なリスクの把握とBCP対策の整備を行っておりますが、気候変動による悪影響及び地震などの自然災害が想定範囲を超えた場合、本社機能や生産、物流体制に支障をきたすことが想定され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、環境負荷低減のため、温室効果ガス排出量の削減や持続可能な水資源の利用、廃棄物削減、資源循環、生物多様性の保全と回復など様々な課題に取り組んでいます。今後も、継続的に気候変動が事業に及ぼす影響を把握し、適切に対応できる体制を整備してまいります。

 

(6)「日本茶飲料」への依存

 当連結会計年度の販売数量のうち、当社の飲料製品全体に占める「日本茶飲料」の割合は63%と、高い比率を占めております。

 当社グループでは、今後も緑茶飲料市場の成長が期待され、市場の拡大とともに「お~いお茶」ブランドを中心とした緑茶飲料も伸長するものと予測しておりますが、緑茶飲料市場の激しい競争のなか、当社グループのシェアが低下することや、緑茶飲料に代わる製品の登場により、緑茶飲料市場の成長が鈍化した場合、並びに当社グループがこれらの市場環境の変化に対応できなかった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)為替動向

 海外のグループ会社の財務諸表は現地通貨にて作成されているため、連結財務諸表作成時に円換算されることになり、為替相場の変動による円換算時の為替レートの変動が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)海外事業

 当社グループは、北米、中国、東南アジア、豪州、欧州を中心に海外の事業を展開しております。企業活動のグローバル化に伴い、海外活動の重要性がますます増大しており、海外における企業活動や取引はその対象国固有の政治的、経済的、法的要因によるため、重要な変化があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)法的規制等

 当社グループは、事業の遂行に当たって、食品衛生法、製造物責任法(PL法)、表示関連法規制、労働関連法規制、競争関連法規制、個人情報保護規制、環境関連法規制等、様々な法的規制の適用を受けております。

 当社グループがこれらの法令に違反した場合や、その他社会的要請に反した行動をとった場合には、法令による処罰、訴訟の提起、社会的制裁などを受けたり、お客様からの信用が失われる可能性があります。

 また、今後、新法の制定、法改正、法令の解釈変更にて法的規制等を遵守することが著しく困難になった場合や、規制の強化によりコスト負担が増えた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)情報管理

 当社グループは、ルートセールスや通信販売等の営業取引や消費者キャンペーンを含む販売促進活動等を通じて、相当数のお客様情報を保有しているほか、当社グループで実施している「新俳句大賞」の募集により、潜在的なお客様の情報も保有しております。これらお客様の個人情報は、当社グループで管理するほか、一部はグループ外の管理会社に管理を委託しております。

 これら個人情報を含めた重要な情報の紛失、誤用、改ざん等を防止するため、システムを含め情報管理に対して適切なセキュリティ対策を実施しております。しかしながら、今後これらの情報が停電、災害、ソフトウエアや機器の欠陥、ウイルスの感染、不正アクセス等の予期せぬ事態の発生により、情報の消失、外部へ漏洩する等の事態が起きた場合、当社グループの信用低下を招き、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(11)食品の安全性、衛生管理

 当社グループは、食品の安全性、衛生管理を経営上の最重要課題と認識し、「伊藤園グループ品質方針」を設定、これを遵守し食品の安全性と衛生管理を確実にするため、当社に品質管理部を設置しております。品質管理部では自主基準を設け、製品の安全性について品質検査を行うとともに原材料に由来する異物混入及び禁止添加物等の使用を防止するための確認、トレーサビリティシステム(原材料、加工、流通など製品履歴の遡及、追跡)の維持管理、外部委託工場への品質管理指導と監査を実施しております。また、定期的に開催する品質会議において、当社グループ製造担当者、外部委託工場担当者に監査結果とさまざまな品質情報をフィードバックしております。これらの活動によりサプライチェーン全体の食の安全性、衛生管理に対する意識向上と一層の体制強化、リスクの極小化を図っております。

 国内の直営店で行っている事業につきましては、食品衛生法の規制対象となっているものがあります。これらの事業につきましては、法令の遵守に加え、出店先の衛生基準及び当社マニュアルに基づいた衛生管理を徹底しております。

 しかしながら、上記の取り組みにもかかわらず異物混入及びアレルゲン表示が不適切な製品の流通、原材料由来による禁止添加物の使用及び残留農薬問題(連鎖的風評被害を受ける場合を含む)、食中毒等の衛生問題が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、業界、社会全体に及ぶ品質問題等、当社グループの取り組みを超える事態が発生した場合も、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)減損会計

 当社グループは、事業用の不動産やのれんをはじめとする様々な固定資産を所有しております。こうした資産は、時価の下落や、期待しているキャッシュ・フローを生み出さない状況になるなど、その収益性の低下により減損会計の適用を受ける可能性があり、減損損失が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)感染症の影響について

 当社グループは、国内外で事業を展開しており、新型ウイルスなどの大規模な感染症の流行が発生した場合には、個人消費の低迷、サプライチェーンの停滞等が起こる可能性があります。当社グループでは、危機的事項の発生に対し、リスクマネジメント規程に基づいて、全社的な対応体制を迅速に構築するとともに、生産・供給体制の整備に努めていきます。

 しかしながら、感染拡大の影響により、商品の供給体制が滞り、販売を停止せざるを得ない場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)ロシア・ウクライナ情勢の影響について

 当社グループは、ロシア・ウクライナに拠点を有しておらず、また同地域向けの事業も手掛けておりません。しかしながら、ロシアによるウクライナ侵攻の発生に伴い、世界経済の混乱や原材料・燃料・輸送等のコスト上昇が発生しており、これらの影響が、当社グループが想定している以上に長期化・深刻化した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」と

いう。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における日本経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行による人流回復、雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直しや、インバウンド需要の増加等により緩やかな回復の動きが見られた一方で、エネルギー価格、原材料費の高騰及び為替変動による景気への影響が懸念されるなど、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 このような状況の中、当社グループは経営理念であります「お客様第一主義」のもと、当社グループを取り巻く全てのお客様に対し「今でもなお、お客様は何を不満に思っているか」を常に考え、一丸となって積極的な事業活動を行ってまいりました。

 この結果、当連結会計年度の業績は、売上高4,538億99百万円(前期比5.1%増)、営業利益250億23百万円(前期比27.7%増)、経常利益266億81百万円(前期比31.2%増)となり、親会社株主に帰属する当期純利益156億50百万円(前期比21.4%増)となりました。

 

 セグメント別の業績は次のとおりであります。

 

<リーフ・ドリンク関連事業>

 2024年2月に発売35周年を迎えた当社の主力ブランドである「お~いお茶」では、おいしいお茶を「いつでも、どこでも」お飲みいただきたいという強い想いから積み重ねてきた技術や経験に基づいた製品開発や、「日本茶の日 お~いお茶大茶会」、「『お茶で日本を美しく。』キャンペーン」等の活動を通じて、ブランドのさらなる価値向上に努めております。

 5月には、年に一度の旬のおいしさを楽しんでいただける「お~いお茶 新茶」リーフ製品とドリンク製品を発売し、また、若者とともに「爽やかな香りとまろやかなお茶のあまみ」「若者の価値観」をキーワードに開発した「お~いお茶 〇やか(まろやか)」を新発売するなど、日本人にとって最も身近な日本のお茶として愛される「お~いお茶」を提供し続けるため、時代とともに多様化するお客様のニーズに迅速に対応し、老若男女問わず共感していただけるブランドを提案しております。

 当社は今後も「お客様第一主義」のもと、従来以上の企業努力によるコスト削減を継続しつつ、お客様に納得いただける価値や品質を伴った製品の開発、供給に努めてまいります。

 

[国内茶葉(リーフ)製品]

 高級茶の圧倒的なうまみを水出しティーバッグでお手軽にお楽しみいただける「お~いお茶」ブランドの新シリーズ「氷水出しティーバッグ 贅沢なお~いお茶」を立ち上げました。「手軽においしいお茶を飲みたい」ニーズにお応えし、いつものお茶のワンランク上のおいしさを楽しめる製品です。当社は、日々変化する現代のライフスタイルに合わせ、多種多様なお茶の楽しみ方を提案し続けており、今後も日本の文化であるお茶を広めるとともに、日本茶のさらなる価値向上を図ってまいります。

 

[国内飲料(ドリンク)製品]

 1988年に「むぎ茶飲料」を発売してから35周年を迎え、皆様に長年ご愛飲いただいているブランド「健康ミネラルむぎ茶」が、「最も販売されているRTD麦茶ブランド(最新年間販売量)」実績世界No.1としてギネス世界記録™に認定されました。麦茶飲料市場が年々拡大を続ける中、「健康ミネラルむぎ茶」は麦茶飲料市場を牽引する存在として、赤ちゃんからお年寄りまで幅広い年齢層の方に年間を通してご支持をいただいています。今後も「お客様の健康づくりをサポートする」をブランドビジョンに、「おいしく水分補給&ミネラル」を掲げ、いつでもだれでもどこでもお楽しみいただけるブランドとして、皆様にご支持いただけるよう目指してまいります。

 また、当社は農業の持続可能な発展のために、「全国から届けられる日本産のたべものに、そしてニッポンに、ここからエールをおくろう」というコンセプトのもと、JA全農と当社を含むメーカーや販売先が協力して産地を応援する活動である「ニッポンエールプロジェクト」に、2021年6月に参画して以来、全国の特色ある農産物を使用した製品を共同開発し、「ニッポンエール 宮崎県産 日向夏」のリニューアル発売をはじめとして、数多くの製品を発売しました。今後も当社は、JA全農との共同開発製品の販売を通じて、日本の農業と消費者を結ぶ架け橋となり、国産農畜産物の認知と消費拡大に貢献してまいります。

 

 この結果、売上高は4,055億36百万円(前期比4.0%増)、営業利益は221億3百万円(前期比24.0%増)となりました。

 

<飲食関連事業>

 タリーズコーヒージャパン㈱におきましては、スプリングシーズンを彩る季節限定ドリンクとして、タリーズ初のアーモンドミルクを使用した「カカオ香る アーモンドミルクラテ」「&TEA 桃と杏のロイヤルアーモンドミルクティー」を販売し、新たなコーヒー・紅茶体験をお届けしました。さらに、4月の新生活シーズンには爽やかなフレーバーの「甘熟苺ヨーグルトスワークル」や、デザートのような満足感をお楽しみいただける「抹茶ティラミスシェイク」を販売し、ご好評をいただきました。また、物販カテゴリーにおいては、手ぬぐいブランド「かまわぬ」や、ファッションブランド「マンハッタンポーテージ」とのコラボレーションアイテムが大変話題となり、好調に推移しました。新規出店に関しましては、「&TEA」業態が全国30店舗に拡大し、関東1号店となるドライブスルー併設店舗「フォレストモール新前橋店」をオープンするなど順調に進み、2024年4月末の総店舗数は791店舗となっております。

 

 この結果、売上高は403億50百万円(前期比13.7%増)、営業利益は32億36百万円(前期比33.2%増)となりました。

 

<その他>

 売上高は80億13百万円(前期比30.3%増)営業利益は3億60百万円(前期は営業損失20百万円)となりました。

 

 財政状態の状況は次のとおりであります。

 

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産は2,437億49百万円で、前連結会計年度末に比べて93億56百万円増加しております。これは主に「現金及び預金」が51億32百万円増加、「売掛金」が22億32百万円増加、「流動資産の「その他」」が17億62百万円増加、「商品及び製品」が11億63百万円減少したことによるものであります。

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産は1,101億42百万円で、前連結会計年度末に比べて57億61百万円増加しております。これは主に「建物及び構築物」が17億74百万円増加、「建設仮勘定」が11億33百万円増加、「リース資産(有形)」が12億59百万円減少、「のれん」が10億71百万円減少、「ソフトウエア」が13億93百万円増加、「無形固定資産の「その他」」が14億81百万円減少、「投資その他の資産の「その他」」が42億67百万円増加したことによるものであります。

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債は966億65百万円で、前連結会計年度末に比べて74億38百万円増加しております。これは主に「買掛金」が16億58百万円増加、「1年内償還予定の社債」が100億円減少、「短期借入金」が116億98百万円増加、「未払費用」が21億48百万円増加、「流動負債の「その他」」が14億71百万円増加したことによるものであります。

(固定負債)

 当連結会計年度末における固定負債は740億10百万円で、前連結会計年度末に比べて34億8百万円減少しております。これは主に「社債」が100億円増加、「長期借入金」が109億3百万円減少、「退職給付に係る負債」が32億98百万円減少、「リース債務」が10億90百万円減少、「固定負債の「その他」」が18億84百万円増加したことによるものであります。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は1,832億16百万円で、前連結会計年度末に比べて110億87百万円増加しております。これは主に「親会社株主に帰属する当期純利益」により「利益剰余金」が156億50百万円増加、「剰余金の配当」により「利益剰余金」が53億23百万円減少、「自己株式の取得」により「自己株式」が28億13百万円増加したことによるものです。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ44億98百万円増加し、当連結会計年度末には1,053億97百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

 

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

 営業活動によるキャッシュ・フローは、254億82百万円の収入(前期は237億73百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益245億25百万円、減価償却費85億95百万円、減損損失18億15百万円、法人税等の支払額78億98百万円によるものであります。

 

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

 投資活動によるキャッシュ・フローは、107億37百万円の支出(前期は86億38百万円の支出)となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出99億13百万円によるものであります。

 

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

 財務活動によるキャッシュ・フローは、122億13百万円の支出(前期は91億30百万円の支出)となりました。これは主に、社債の償還による支出100億円、社債の発行による収入99億52百万円、自己株式の取得による支出28億13百万円、ファイナンス・リース債務の返済による支出19億89百万円、長期借入金の返済による支出13億13百万円、配当金の支払53億15百万円によるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

  当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比増減率(%)

リーフ・ドリンク関連事業

 

 

(販売用製品)

59,812

4.0

(自社製品用原料)

20,302

△2.8

リーフ・ドリンク関連事業計

80,114

2.2

その他

 

 

(販売用製品)

2,248

12.6

合計

82,363

2.5

(注)1 販売用製品の金額は販売価格、自社製品用原料の金額は原価によっております。

2 セグメント間取引については、相殺消去しております。

3 上記生産実績には外部へ製造委託している仕入製品は含まれておりません。

 

b.仕入実績

  当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比増減率(%)

リーフ・ドリンク関連事業

223,848

2.3

飲食関連事業

12,021

11.9

その他

3,110

48.7

合計

238,981

3.1

(注)1 金額は仕入原価によっております。

2 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

c.受注実績

  当社グループは受注生産を行っておりません。

 

d.販売実績

  当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比増減率(%)

リーフ・ドリンク関連事業

405,536

4.0

飲食関連事業

40,350

13.7

その他

8,013

30.3

合計

453,899

5.1

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たり、必要と思われる見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、これらは不確実性を伴うため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性があります。

 当社グループの連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

 a.リベートに係る未払費用

 顧客に対して支払われるリベートに係る未払費用については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 b.貸倒引当金

 当社グループは売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しておりますが、将来、販売先の財務状況が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 c.棚卸資産

 当社グループが販売する棚卸資産は市場の需給の影響を受け、市場価格が低下する場合があるため、評価基準として、総平均法による原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しております。なお、在外連結子会社につきましては、先入先出法又は移動平均法による低価法を採用しております。

 d.賞与引当金

 賞与引当金は、従業員に対する翌連結会計年度賞与支給見込額のうち当期間対応額を計上しておりますが、実際の支給額は支給時点における外部環境及び当社グループの状況を勘案のうえ決定されるため、実際の支給額が見積りと異なる場合には、追加の費用計上が必要となる可能性があります。

 e.退職給付に係る資産・負債

 従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上使用される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、退職率、死亡率及び昇給率など多くの見積りが含まれており、実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件が変更された場合、又は法改正や退職給付制度の変更があった場合、その影響は累積されて将来にわたり規則的に認識されることとなり、将来の退職給付費用及び債務に影響を与える可能性があります。

 f.有価証券の評価

 当社グループは価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の決定が困難である非公開会社の株式を保有しております。当社グループは有価証券の評価を一定期間ごとに見直し、その評価が取得原価又は減損後の帳簿価額を一定率以上下回った場合、減損処理を実施しております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の帳簿価額に反映されていない損失又は帳簿価額の回収不能が発生した場合、評価損が発生し、利益に影響を与える可能性があります。

 g.繰延税金資産

 当社グループは繰延税金資産の回収可能性を評価するに当たって、将来の課税所得を合理的に見積っております。将来の不確実な経済条件の変動により、この見積りに変動があった場合、繰延税金資産の調整により、利益に影響を与える可能性があります。

 

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 a.財政状態

   当連結会計年度末の財政状態につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 b.経営成績

当連結会計年度の売上高は5.1%増の4,538億99百万円となりました。これは「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおり、リーフ・ドリンク関連事業及び飲食関連事業の売上高が堅調に推移したことによるものです。

当連結会計年度の営業利益は前連結会計年度に比べ27.7%増の250億23百万円となり、営業利益率は1.0%増の5.5%となりました。これは売上高が前連結会計年度に比べ5.1%増と堅調に推移したことと、価格改定により、原料・資材等の高騰分を吸収したことにより、売上総利益率が前連結会計年度に比べ0.7%増となったことによるものです。

当連結会計年度の経常利益は前連結会計年度に比べ31.2%増の266億81百万円となり、経常利益率は1.2%増の5.9%となりました。これは、営業外損益に含まれる為替差損益が8億16百万円増加(増加は為替差益)したことによるものであります。

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ21.4%増の156億50百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益率は0.5%増の3.4%となりました。これは、経常利益が63億39百万円増加、減損損失が14億13百万円増加、法人税、住民税及び事業税が6億96百万円増加、法人税等調整額が13億58百万円増加したことによるものであります。

 c.キャッシュ・フロー

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループは、収益性の強化によるキャッシュ・フローを高め、さらに投資効果を重視した設備投資を行うとともに、有利子負債の削減を進めてまいります。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 a.資金需要

   当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、リーフ・ドリンク関連事業における製品製造のための原材料の仕入や製造経費のほか、販売費及び一般管理費等であります。また、設備投資需要としては、リーフ・ドリンク関連事業における自動販売機等への投資や飲食関連事業における新規出店等への投資であります。

 b.財務政策

   当社グループは、事業活動に必要な資金を安定的に調達するため、内部資金の活用に加え、金融機関からの借入及び社債の発行等による資金調達を行っております。資金調達に際しては、調達コストの低減に努める一方、過度に金利変動リスクに晒されないよう金利の固定化を図っております。

 

⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、2024年6月に2029年4月期までの新・中期経営計画を発表しました。新・中期経営計画の実現に向け、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)当社グループの中期的な経営戦略」に記載した取り組みを実施してまいります。なお、新・中期経営計画における定量目標は以下のとおりであります。

 

 

2024年4月期

実績

2029年4月期

目標値

連結売上高

4,538億円

年平均伸長率2%以上

(海外8%以上)※

営業利益率

5.5%

8%以上

自己資本利益率(ROE)

8.9%

10%以上

総還元性向

52.7%

40%以上

為替影響除く

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの主な研究開発部門は、当社の中央研究所、開発一部、開発二部、緑茶ブランドグループ、リーフブランドグループ、麦茶・紅茶・中国茶・健康茶ブランドグループ、コーヒーブランドグループ、野菜・果汁・フードブランドグループ、炭酸・水・乳酸菌・機能性ブランドグループ及び農業技術部であります。

 中央研究所では、当社グループ製品の健康価値に関する研究につきまして、茶の成分による生活習慣病予防効果、認知機能改善効果、並びに様々な健康課題に対する改善効果を検証するため、大学等研究機関との共同研究を進めております。また、お茶と食事との相性やお茶の美味しさに対する生体応答を科学的に明らかにし、学術発表を行い、それを消費者への情報発信に繋げています。

 さらに、環境課題への取り組みとして「お~いお茶」の製造工程で発生する茶殻を利用した「茶殻リサイクルシステム」を開発しました。茶殻の消臭・抗菌効果を利用した茶殻配合畳やマスク・マスクケースなど、現在では100種類以上の工業製品の原材料として使用されています。

 今後も緑茶、コーヒー、野菜飲料、乳酸菌飲料など、当社グループ製品の健康価値の検証や、香味や品質の安定性向上に関する研究開発と環境課題解決への取り組み、当社グループ製品の品質向上とブランド強化、環境課題解決に貢献してまいります。

 開発一部、開発二部では各カテゴリーの新製品の開発で、原材料の加工方法、処方の開発、製造技術の開発を行い原料の開発から製品の試作・製品化までを担当しております。

 緑茶ブランドグループ、リーフブランドグループ、麦茶・紅茶・中国茶・健康茶ブランドグループ、コーヒーブランドグループ、野菜・果汁・フードブランドグループ、炭酸・水・乳酸菌・機能性ブランドグループでは新製品の開発につきまして、市場調査、消費者の動向分析に基づき、基本コンセプトの開発を担当しております。

 農業技術部では、当社グループ製品に適した緑茶・野菜飲料原料を安定的に確保するために、品種素材、栽培方法、加工方法に関する調査研究や技術開発と、国内外の産地形成に関する活動を行っております。

 当連結会計年度における研究開発費の総額は2,139百万円であります。

 セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。

 

<リーフ・ドリンク関連事業>

 当社独自製法による製品開発や、茶の特性を活かした製品開発を行っております。荒茶・仕上げ加工の研究により、茶の特性を活かした製品を多数開発しております。また、茶の加工技術等を応用し簡便性製品であるティーバッグ・インスタントティーの製品開発を行っております。

 日本茶飲料や紅茶飲料、中国茶飲料等の製品開発に関しましては、飲料用に適した原料茶の開発と飲料加工技術の研究を継続して行っております。野菜飲料、果実飲料に関しましては、野菜の原料開発と搾汁技術の開発、果実の搾汁技術の開発や飲料製造技術開発を行っております。コーヒー飲料におきましては、原料の選定、処方・製造技術の開発を行っております。乳飲料、炭酸飲料、機能性飲料におきましても、原料開発や飲料製造技術の開発を行っております。また、各ホット飲料の開発では、ホット飲料に適した原料の開発、製造技術開発を行っております。

 食品の開発では、野菜スープ、お汁粉及び麹甘酒等の開発においても、当社の強みを生かした原料調達力をもって製造技術開発に取り組み製品化をしております。

 また、カテキンの抗菌、消臭作用を応用した抗菌防臭加工繊維製品や茶殻を有効利用した茶配合製品の製品化を行っております。

 なお、研究開発費には、中央研究所で行っている緑茶や野菜飲料の健康性に関する研究や、飲料の香味・おいしさに関する研究、環境課題に関する研究などの研究費用が含まれております。

 

<飲食関連事業>

 該当事項はありません。

 

<その他>

 該当事項はありません。