第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年7月23日)現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)当社グループの経営の基本方針

 当社グループは創業以来、「お客様第一主義」の経営理念に基づき、全社員が「STILL NOW(今でもなお、お客様は何を不満に思っているか)」を考え、「自然・健康・安全・良いデザイン・おいしい」の製品開発コンセプトに基づき、お客様にお喜びいただける製品の開発と、お客様に密着したサービスに努めてまいりました。

 当社グループの考える「お客様」とは、「消費者の皆様・株主の皆様・販売先の皆様・仕入先の皆様・金融機関の皆様・地域社会の皆様」であり、単に消費者の皆様にとどまらず、当社グループと関わりを持たれるすべての方々を「お客様」と定義しております。

 全社員が「STILL NOW(今でもなお、お客様は何を不満に思っているか)」の精神を持ち、「お客様」にお喜びいただける最良のサービスをご提供することが、最良の経営につながるものと確信しております。

 今後も、当社グループは「お客様第一主義」の経営理念に基づき、継続的に企業価値を高め、より一層株主価値を向上させる経営に努めてまいります。

 

(2)当社グループの中期的な経営戦略

 当社グループは、2024年6月に2029年4月期までを対象とする新たな「伊藤園グループ 中期経営計画」(以下、中期経営計画)を発表しました。

 中期経営計画では、お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会を実現するため、2041年4月期の将来像実現に向けて、より迅速な事業展開を推進します。当社グループは、「お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会の実現」を使命として、「健康創造企業」をグループのミッションとして掲げています。新たに策定した中期経営計画に基づき、今後も「心身の健康」「社会の健康」「地球環境の健康」の価値創造に取り組み、お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

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中期経営計画 5つの重点戦略

 

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(3)当社グループの対処すべき課題

 当社グループは今後、法令及び社会的規範の遵守、製品の安全性並びに品質管理体制等、企業の社会的責任に消費者の厳しい目が向けられる中、経営理念であります「お客様第一主義」を徹底し、企業価値を高め、一層の株主価値を向上させるために、以下の項目を中心に取り組んでまいります。

 

①ブランドの確立

1.製品開発

 当社は、「自然・健康・安全・良いデザイン・おいしい」を製品開発コンセプトに、全社員が「STILL NOW(今でもなお、お客様は何を不満に思っているか)」を考え、当社独自の提案制度であるVoice制度(お客様のご不満やご要望を製品開発に取り入れる提案制度)を活用し、積極的に新製品の開発及び既存製品の改良を行っております。今後もVoice制度を積極的に活用し、お客様のニーズに即した製品開発・改良に努めてまいります。

 

2.研究開発

 当社の研究開発は、特に「健康・安全・おいしい」、及び持続可能な社会への貢献として環境に重点を置き、基礎・応用研究を進めております。当社が提供する製品が、人々の健康維持に有用であることを、様々な試験を通じて検証し、常に最新情報を発信し続けます。さらに健康価値を表示できる特定保健用食品や機能性表示食品の開発にも力を注いでまいります。また、飲料のおいしさに関与する成分研究や物性に関する研究を進め、より優れた製品開発に向けた技術提案を行ってまいります。環境については、「お~いお茶(Oi Ocha)」などの飲料製造工程で発生する茶殻を、肥料や飼料への再利用のほか、新たなアップサイクル製品へと生まれ変わる「茶殻リサイクルシステム」を推進してまいります。

 

3.ブランド強化政策

 「伊藤園(ITO EN)」という総称ブランドを軸に、「お~いお茶(Oi Ocha)」「健康ミネラルむぎ茶」「TULLY'S COFFEE」「1日分の野菜」などの個別ブランドの強化を図ってまいります。

 特に主力製品であります「お~いお茶(Oi Ocha)」につきましては、1985年の発売から続いている原料と製法にこだわり、自然のままのおいしさを引き出し、お客様へご提供してまいります。また、緑茶飲料が様々な飲用シーンでお楽しみいただけるよう、容量、容器バリエーションの充実を図るとともに、緑茶飲料を初めて発売した当社ならではの技術力で、季節に合わせた製品や「濃い茶・ほうじ茶・玄米茶・抹茶」など、茶葉の特徴を取り入れ、飲用価値を訴求した製品を発売し、より一層のブランド強化に努めてまいります。

 

②営業基盤の強化

1.ルートセールス

 ルートセールスとは、製品、サービスをお客様へ直接ご提供する販売システムのことであります。当社はこのシステムを採用することにより、当社とお客様をダイレクトに結びつけ、地域に密着した営業活動を展開しております。

 また、機能性・携帯性に優れたルートセールス担当営業員用のポータブル端末を活用することで、お客様に効率的かつ的確なサービスをご提供できるよう努めております。

 

2.お客様へのサービスの強化

 これまでもルートセールスにより、お客様へのサービスに努めてまいりましたが、確固たる営業基盤を築くため、新しいお客様の開拓に努めるとともに、既存のお客様への訪問の強化を行っております。また、お客様のご不満を聞き、お客様にご満足していただける製品開発や魅力的な売り場づくりなど、総合的なご提案をルートセールスにより行っております。

 

③総コストの削減

1.委託生産方式

 飲料製品におきましては、「ファブレス(fabless 自社工場を持たない)」方式により、設備投資リスクの軽減を図り、市場環境の変化に迅速に対応できる体制にしております。

 また、全国を5つの地域に分けて生産管理を行う5ブロック生産体制を敷くことにより、迅速な製品供給を行うとともに、物流の効率化も可能となっております。

 

2.原材料調達力の強化

 当社は、緑茶のトップメーカーとして国内荒茶生産量の約4分の1を取扱い、長年にわたり生産者との信頼関係を築き上げた結果、高品質の原料を安定的に確保できる極めて強力な原料調達力を持っております。また、これまでに蓄積したノウハウと高い製造技術により、高品質の飲料用原料を自社製造で調達することができる飲料メーカーであります。

 国内では就農者の高齢化と後継者不足のため、就農人口、茶園面積の減少が進んでおります。そこで当社は、日本農業の課題解決と、今後も需要増加が見込まれる緑茶飲料用を中心とした原料の安定調達の両立を目指して1976年より茶産地育成事業を行っております。各地の茶農家から茶葉を全量買い取りする“契約栽培”と、荒廃農地などを大規模な茶園に造成して茶葉を生産する“新産地事業”で茶産地をサポートしています。新産地事業では、九州5県に加え静岡県及び埼玉県にて、苗木の選定から茶園づくり、そしてその茶園を機械化、IT化により低コストで管理できる栽培及び荒茶加工ノウハウを、当社から農家に対し提供することで、生産性と環境保全を両立した茶園経営を推進し、より高品質な原料茶の安定調達を目指すとともに、荒廃農地の活用及び生産農家の後継者育成並びに雇用の創出など茶業界と地域の活性化にも寄与しております。

 原料を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。たとえば、気候変動に伴う異常気象や自然災害の頻発、生産地域の変更や栽培面積の縮小といった課題が顕在化しています。さらに、エネルギー費、肥料費、人件費、物流費の高騰や、相場・為替の変動、地政学的リスクや社会情勢の変化など、調達環境は多様なリスクにさらされています。
 このような状況下においても、コーヒー豆の調達については、当社グループ間で連携し、世界各地の産地やサプライヤーと協力して、安定的な原料調達を推進しています。
 また、「1日分の野菜」等の主要原料である人参に関しては、当社専用の人参を使用しており、50品種の中から厳選した、栄養価・風味・生産効率に優れた品種を採用しております。在来品種についても計画的に品種の見直しを行い、それらを継続的に評価しております。

 さらに、原料の調達においては、供給エリア、生産時期、地政学リスク、輸送ルートなどを総合的に考慮し、供給先の分散化を推進しております。主要原料については、複数の供給元からの購買を徹底することで、安定供給体制を構築しております。

 

④海外事業の強化

 連結子会社であるITO EN (North America) INC. が米国における緑茶市場の創造と開拓を進めるため、全米のナチュラルフードマーケットや、ナショナルチェーン店等に対し営業活動を行い、日本茶を米国に普及させると同時に、「伊藤園(ITO EN)」及び「お~いお茶(Oi Ocha)」ブランドの確立を図っております。「ITO EN MATCHA GREEN TEA」につきましては、これまで米国市場には無かった高品質のティーバッグ製品や抹茶製品として、また「お~いお茶(Oi Ocha)」につきましては、日本と同様にティーバッグからインスタント、抹茶、飲料製品に至るフルラインアップによって、米国での日本茶市場の拡大に大きく貢献しており、今後も強化してまいります。中国、東南アジア、豪州、欧州などにつきましても、引き続き販売強化を進めてまいります。また、近年世界的に需要が急拡大している抹茶に関しましては、国内の調達・生産・加工体制を強化するとともに、全世界への供給網を整備しており、抹茶事業を新たな事業として捉え、取り組んでおります。

 

⑤サステナビリティ経営の推進

当社グループは、経営理念「お客様第一主義」に基づき、サステナビリティ経営の推進と実践により、社会・環境課題の解決と企業価値向上の両立(共有価値の創造:CSV)を目指しています。2022年度に「伊藤園グループにとっての重要度」と「ステークホルダーにとっての重要度」の双方向から評価した7つのマテリアリティを特定していました。しかし、気候変動による影響広まり、グローバルサプライチェーンの混乱や人権問題の顕在化、ウェルビーイングへの関心の高まりなど、急激な変化が起きていることから、経営環境の変化とグローバル化を成長戦略とする中期経営計画(2025年4月期~2029年4月期)を踏まえて、2024年度にマテリアリティの見直しを行い、新たに7つのマテリアリティを特定しました(2025年3月特定)。

当社グループ全体で中期経営計画とマテリアリティに取り組み、サステナビリティ経営を推進していきます。詳細は、「第2 事業等の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年4月30日)現在において当社グループが判断したものであり、様々な要因により実際の結果とは大きく異なる可能性があります。

 

(1)サステナビリティ経営の推進

 経営理念「お客様第一主義」に基づき、サステナビリティ経営の推進と実践により、社会・環境課題の解決と企業価値向上の両立(共有価値の創造:CSV)を目指しています(伊藤園グループサステナビリティ基本方針)。

 2024年度には、経営環境の変化とグローバル化を成長戦略とする中期経営計画(2025年4月期~2029年4月期)を踏まえてマテリアリティの見直しを行い、新たに7つのマテリアリティを特定しました。当社グループ全体で中期経営計画とマテリアリティに取り組み、サステナビリティ経営を推進していきます。

 

 

 

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 2025年3月に特定した7つのマテリアリティは以下のとおりです.

 

マテリアリティ

重点テーマ

事業を通じた社会課題解決

食生活を通じたウェルビーイングの実現

素材の研究と製品のおいしさ・健康性、ホスピタリティを通じて、人々と社会のウェルビーイングに貢献する、新たな食習慣の創出・浸透を目指します。

1)多様化するライフスタイルに合わせた

 飲用機会の提供と心身の豊かさへの貢献

持続可能な農業・サプライチェーンの構築

畑からの製品づくりによる技術革新とサプライヤーとの協働により、持続可能なグローバルサプライチェーンを構築し、価値提供領域を拡大していきます。

1)茶生産者との協働による

 「茶産地育成事業」の進化

2)原材料(茶葉、その他)の持続可能な調達

3)サプライヤーエンゲージメントの深化と

  安全・安心な品質の追求

4)持続可能な物流システムの構築

地球環境の健康

事業活動を通じた脱炭素化や資源循環等の環境課題解決に取り組み、多様なステークホルダーと共有価値を創造していきます。

1)気候変動対応

2)持続可能な容器包装

3)水資源

4)自然資本/生物多様性の保全

5)資源循環/廃棄物削減

地域社会との共創・つながりの深化

地域・コミュニティの課題解決に貢献し、新しい価値の提供とビジネス機会の創出に繋げていきます。

1)各国・地域の社会課題解決に向けた

  事業機会の創出

2)事業活動を通じた地域や協力者との協働

経営基盤の強化

人権の尊重

グローバルサプライチェーンを通じた人権リスクの最小化を図り、ステークホルダーからの信頼獲得に努めます。

1)バリューチェーンにおける人権の尊重

多様な人財と全員活躍

多様な人財が“自律的に成長”し、“ビジョンに向かって挑戦し続ける”組織を構築し、事業戦略の重点分野で活躍する人財を育成・拡充していきます。

1)多様な人材の育成と活躍推進

2)健康経営の推進

 ※2025年度中に経営戦略と連動する人財戦略を

  検討し、重点テーマとKPIを見直し・策定、

  2026年度に開示予定

グループガバナンス

人口動態、法規制、紛争、サステナビリティの重要性、情報セキュリティ等の外部環境変化による経営への影響を背景に、ガバナンス体制の整備を行いグループ全体でのリスクの最小化と機会の最大化を図っていきます。

1)グループガバナンス体制の構築

2)グループリスクマネジメント強化

3)情報セキュリティ/顧客プライバシーの保護

4)ステークホルダーとのエンゲージメントの

  充実化

各マテリアリティ/重点テーマの取り組みとKPIの詳細 https://www.itoen.co.jp/sustainability/materiality/

 

 2025年3月特定したマテリアリティの見直し・特定プロセスは以下のとおりです。

 

<社会課題の抽出>

 外部環境の変化と社会からの要請や期待、お客様の重要課題等の観点から、国際的な情報開示基準、ESG評価項目、SDGsなどを参照し、社会課題を抽出しました。

※参照した情報開示基準等:GRIスタンダード/SASBスタンダード/ESG評価(FTSE、MSCI)/CDP/SDGs/ISO26000

 

<重要度評価>

 当社グループでは、抽出した社会課題を、ステークホルダーにとっての重要度と当社グループにとっての重要度の双方向から評価するダブルマテリアリティを採用しています。社外の方々(有識者、機関投資家、社外取締役)と社内(当社、グループ各社の取締役・執行役員、部署長)を対象にアンケートを行うなど、マテリアリティ候補を評価しました。

 

<ステークホルダーとの対話>

 アンケート調査等を経たマテリアリティ候補に関して、見直しのポイントや経営課題、当社グループへの期待等について、経営陣と外部有識者によるステークホルダーダイアログを行い、ご意見をいただきました。

 

<マテリアリティの特定>

 上記のプロセスを経て、取締役会において審議を行い、経営課題として取り組み、中期経営計画の重点戦略と連動して推進するマテリアリティと重点テーマを特定しました。

 

①ガバナンス

 当社グループは、中長期的な企業価値向上の観点から、サステナビリティを巡る課題をリスクの減少・収益機会につながる重要な経営課題であると認識しております。サステナビリティ経営の推進と強化のため、サステナビリティ推進委員会を設置し、年4回開催しています。

 本委員会は、代表取締役社長を委員長とし、サステナビリティ推進担当役員(CSO)、人事・人権推進担当役員(CHRO)、生産・物流、マーケティング、営業、国際、管理等の担当役員及び主要各部門長で構成され、サステナビリティ推進体制の確立及び運営、マテリアリティの特定、取り組みの推進、社会・環境課題に関する対策と方針を検討しています。

 当社グループ全体でのサステナビリティ経営を推進するため、2023年度からはサステナビリティ推進委員会を発展させ、グループ会社の経営層も参加する体制としました。また、年4回開催の本委員会のほかに重要テーマ別分科会を設置し、テーマごとの議論を進めています。サステナビリティ推進委員会にて検討された重要事項は、執行役員会及び取締役会に報告・審議され、経営戦略に反映しております。

 2024年度は3年ぶりにマテリアリティを見直し、上記の特定プロセスを経て取締役会で審議し、経営課題として取り組み、中期経営計画の重点戦略と連動して推進するマテリアリティと重点テーマを特定しました。

 

 

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②戦略

 当社グループは、中期経営計画の重点戦略と連動させて、7つのマテリアリティ(「食生活を通じたウェルビーイングの実現」「持続可能な農業・サプライチェーンの構築」「地球環境の健康」「地域社会との共創・つながりの深化」「人権の尊重」「多様な人財と全員活躍」「グループガバナンス」)の取り組みを推進しております。

 

<食生活を通じたウェルビーイングの実現>

 当社グループは、お客様のライフスタイルの変化に対応する多様な製品を開発し、健康的な生活習慣に寄与してきました。緑茶や抹茶などの素材の健康性に関する産官学連携の研究を継続的に行い、研究成果の発信や、特定保健用食品や機能性表示食品などのエビデンスに基づく製品を発売しています。

 2024年度には、抹茶が認知機能に与える影響についての産官学連携の研究として、軽度認知障害(MCI)や主観的認知機能低下(SCD)の高齢者を対象とした臨床試験の結果を発表しました。研究では抹茶の継続摂取により、社会的認知機能(顔表情からの感情知覚)の改善が確認されました。また、カフェインを含む抹茶の摂取にもかかわらず、睡眠の質が向上する傾向が確認され、この研究結果は2024年8月30日付で学術雑誌PLOS ONEに掲載されました。緑茶・抹茶は日常的に摂取できるものであることから、さらに研究を重ねることで今後、自治体等の認知症予防プログラムなどでの活用を通じて、研究成果が社会実装されていくことが期待されます。

 さらに新たな取り組みとして、京都大学iPS細胞研究所と産学共同研究を開始しました。京都大学iPS細胞研究所の技術を活用することで、動物実験(※)を行わずにお茶とその成分の有効性と安全性を検証する方法の開発を目指し、次世代の食品科学・食品産業の開拓を進める産学共同研究となります。動物実験の代替実験法としてヒトiPS細胞やオルガノイドが活用できるか検証し、最終的には動物実験を完全に代替する新たな研究方法の確立を目指します。なお2024年度に、これまでのマテリアリティ「食生活と健康への貢献」を見直し、身体的健康だけではなく、広くウェルビーイング(心身の健康・社会の健康)の実現への取り組みを重視するマテリアリティとしました。素材(緑茶、抹茶、コーヒー等)の研究と製品のおいしさ・健康性、ホスピタリティを通じて、国内・海外の人々と社会のウェルビーイングに貢献する、新たな食習慣の創出・浸透を目指していきます。

(※)当社グループでは製品開発において動物実験を行わない方針を掲げており、より持続可能な研究方法の採用に力を入れています。

   伊藤園グループ動物実験方針 https://www.itoen.co.jp/company/policy/animal/

 

<持続可能な農業・サプライチェーンの構築>

 中期経営計画では「お~いお茶」のグローバルブランド化を成長戦略としています。その実現には、畑からの製品づくりによる技術革新とサプライヤーとの協働により、持続可能なグローバルサプライチェーンの構築が必要であり、これまでのマテリアリティ「持続可能な農業への貢献」と「持続可能なサプライチェーンへの貢献」の2つを統合して取り組んでいきます。

 1976年から行っている茶産地育成事業では、高品質な原料茶の安定調達に加え、荒廃農地などの茶畑への転換や環境配慮型農業の推進により、持続可能な農業の実現に取り組んでいます。

 緑茶・抹茶原料は、昨今の世界的な減糖・無糖意識や健康志向の高まりから、海外輸出機会の拡大が見込まれていますが、一方で、各国の残留農薬等の品質基準、気候変動や生物多様性への対応等も求められております。当社グループにとって、気候変動や自然資本/生物多様性等への対応は、重要課題と認識し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)提言のフレームワークに沿って茶事業への影響等について分析を行い、リスクへの対応と機会の創出に向けた取り組みを進めています。例えば、農業のDX化の推進(営農支援ツールや当社独自の農薬適否判定システムの導入など)による適正な施肥量等の管理、減農薬、有機栽培の取り組みは、生物多様性や土壌環境の改善など環境課題への対応だけでなく、海外輸出可能な国産原料茶の生産拡大にもつながります。また、茶産地育成事業は、GAP認証(※)取得100%維持に加え、バイオ炭散布による土壌への炭素貯留の試験などの茶栽培時のGHG排出削減にも取り組んでいます。

 また、茶生産者だけでなく飲料製造委託先や物流委託先などのサプライヤーとの強固なパートナーシップは当社グループにとって重要な資産であり事業基盤です。当社及びサプライヤーの双方の持続的な利益と社会・環境課題解決の両立、徹底した品質管理とトレーサビリティの確保など、サプライヤーとのエンゲージメントを強化しています。具体的にはサプライヤー供給者評価、製造委託先や原料調達先などとの品質会議、環境課題を主テーマとした環境品質会議など、年間を通じてエンゲージメントの向上を図っています。

 今後、海外の製造委託先や物流網を含む国内・海外のサプライヤーを含めた、

グローバルサプライチェーンを構築していきます。

(※)食の安全や環境保全に取り組む農業に与えられるGAP認証制度には、世界基準である「グローバルGAP」のほか、日本GAP協会が展開する「JGAP」「ASIAGAP」などがあります。GAP認証取得100%維持とは、この3つの認証のうちいずれかを取得した農園を指します。

 

<地球環境の健康>

 当社グループは、自然由来の製品を主軸とした事業活動を行う企業として、人類共有の地球環境を守り、次世代に継承することが最重要課題の一つと考えております。「伊藤園グループ環境方針」のもと中長期環境目標を設定し、グループの事業活動におけるバリューチェーンにおける気候変動、水資源、資源循環といった環境課題に取り組んでいます。

 2024年度は外部環境の変化や社会的要請を受けて、中長期環境目標のGHG排出量削減目標と水資源の目標を見直しました。気候変動を含む環境課題の取り組みについては、「(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)」に記載しております。

 

<人権の尊重>

 人権の尊重は、当社グループ経営理念「お客様第一主義」の根幹をなすものであり、全ての事業活動の根幹となるものです。当社グループでは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、「伊藤園グループ人権方針」「伊藤園グループサプライヤー基本方針」等を制定し、バリューチェーンにおける全ての人々の人権尊重の取り組みを推進しています。また当社では、「伊藤園グループ人権方針」に基づき、ステークホルダーとの対話を行うとともに、人権に関する専門家に協力をいただき、人権リスクの特定・評価、予防・是正、モニタリング、救済に取り組む仕組みである人権デューデリジェンスを構築し、実施しています。人権尊重の取り組みの進捗状況については、当社ウェブサイトや統合レポート等で公開しています。

 

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 なお、グローバルサプライチェーンの構築、ファブレス経営、従業員のウェルビーイングなどの観点から人権リスクへの対応の重要性は高まっています。そのため2024年度のマテリアリティの見直しにあたり、サプライチェーンにおいて重視すべき取り組みという位置づけから、マテリアリティ「人権の尊重」として独立させました。グローバルサプライチェーンや従業員の人権リスクの最小化を図りステークホルダーからの信頼を得るべく取り組んでいきます。

 

<人材への取り組み>

 後述の「(3)人的資本」に記載しております。

 

 

③リスク管理

 当社グループは、企業経営の目的に影響を与え得る事象をリスクとして定義し、「伊藤園グループリスクマネジメント方針」に基づき、リスクを全体的視点で統合的かつ戦略的に管理し適切に対応することにより、企業価値の維持・向上に努めております。サステナビリティ関連リスクを含む重要リスクに関しては、各本部・部署および各委員会が連携して識別・評価する体制を整備しており、その決定・管理は、当社取締役会及び代表取締役社長が委員長を務める取締役会の諮問委員会であるリスクマネジメント委員会が担う体制を敷き、リスクと機会の両方の観点からサステナビリティ経営を推進しております。

 リスクマネジメントについては、「3 事業等のリスク」、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要③企業統治に関するその他の事項(ウ)リスク管理体制の整備の状況」に記載しております。

 

④指標及び目標

 中期経営計画の重点戦略と連動する各マテリアリティごとに重点テーマと取り組み・KPIを設定し、管理・評価を行っております。KPIは、取り組み状況に応じて定期的に見直しを行っていきます。

 

2024年度までの主な取り組み・KPIの実績は以下の通りです。※2022年に特定したマテリアリティ

マテリアリティ

取り組みテーマ

主なKPI・目標

2023年度実績

2024年度実績

食生活と

健康への貢献

人生100年時代に

向けた研究開発

食品の健康価値に関する研究発表件数 年間25件

28件

25件

生活者の健康ニーズと多様化するライフスタイルへの貢献

「お~いお茶」販売国 2040年度までに

100ヵ国以上(2028年度 60ヵ国以上)

40の国・地域

47の国・地域

特定保健用食品・機能性表示食品の売上構成比率 2026年度 30%以上

17.5%

17.2%

製品の安全・安心品質の追求と環境負荷低減

食品安全国際認証 取得率100%

※国内ドリンク/リーフ製造工場

95.7%

92.1%

ドリンク/リーフの工場監査 実施率100%

※国内ドリンク/リーフ製造工場

100%

100%

持続可能な

農業への貢献

世界に通用する独自の農業モデルの進化

茶産地育成事業展開面積

2026年度 2,650ha 2030年度 2,800ha

2,512ha

2,585ha

有機栽培の生産量

2026年度 380t 2030年度 500t

273t

309t

GAP認証の維持・運用 100%

※茶産地育成事業

100%

100%

環境

気候変動への

対応

GHG排出量の削減率(対2018年度)(※1)

2030年度 Scope1、2 50%削減

     Scope3  20%削減

Scope1、2

17.9%削減

Scope3

23.3%削減

集計中

2050年度 Scope1~3 カーボンニュートラル

全社再生可能エネルギー比率 (※2)

2030年度 100%

20%

集計中

全車両中の電動車の導入比率 (※2)

2030年度 50%

9.7%

集計中

水資源

原単位水使用量の削減率(対2018年度)

2030年度 16%削減

※生産1㎘当たりの水使用量

5.5%増

集計中

持続可能な

容器包装

リサイクル素材等の使用率

(全ペットボトル製品)

2030年度 100%

36%

45%

生物多様性

水源地保全活動、環境保全・整備活動の

総参加人数 年間500人

1,221人

2,746人

廃棄物の削減/

資源循環の推進

食品リサイクル率

伊藤園:90%以上

タリーズコーヒージャパン:50%以上

伊藤園  94.4%

タリーズ51.4%

伊藤園

94.5%

タリーズ

55.1%

茶殻リサイクル製品商品化数 年間10件

16件

10件

自販機ダミープラスチック使用量の削減率

2028年度 50%削減(対2018年度)

27.2%削減

33.9%削減

地域社会・コミュニティとのつながりの深化

地域社会との共創、お茶を通じたつながりの創出

食育参加人数 年間60万人

45万人

40万人

 

 

 

マテリアリティ

取り組みテーマ

主なKPI・目標

2023年度実績

2024年度実績

持続可能な

サプライチェーンへの貢献

持続可能なサプラ

イチェーンの構築

品質会議実施回数 年間7回

10回

9回

供給者評価の実施

実施

実施

人権尊重の取り組み推進

人権リスクの高いサプライチェーンに対する

人権デューデリジェンスの実施 年1回以上

3回

3回

社内向け人権啓発活動に関する教育実施

年3回以上

2回

3回

多様な人財と

全員活躍の推進

多様な人材の育成と活躍推進

従業員エンゲージメントスコア

2026年度 4.2以上(6点満点中)

3.99     ※従来基準3.19

4.00

女性管理職比率 2026年度 10

3.7%

3.9

男女間賃金格差(正規雇用労働者を対象、

男性を100とした場合)2026年度 80

79.8%

78.7

上記のうち勤続10年未満 2026年度 100%

94.3%

94.3%

男性育児休業取得率 2026年度 50

43.1%

62.2

健康経営の推進

健康経営優良法人(ホワイト500)の維持

認定

認定

コーポレート・

ガバナンス

サステナビリティ経営の推進

サステナビリティ重要課題の推進体制と監督機能の強化及びステークホルダーとの対話の実施

1回

1回

グループリスク管理の強化

リスクマネジメント委員会の開催

2回

2回

関連会社との定例会議の実施

4回

4回

コンプライアンスの徹底

コンプライアンス教育の実施回数 年間12回

(全社員対象)

12回

12回

DXの推進

DX推進委員会の開催

6回

6回

Scope1: 自社の営業車両や工場等での燃料の使用による直接排出

Scope2: 自社が購入した電気等の使用に伴う排出

Scope3: サプライチェーンからの間接排出

 

(※1)2023年度のScope1、2排出量の集計範囲は、当社および連結子会社を対象としています。ただし、連結子会社

    の一部(Cafetalera de Tierras Ticas, S.A.およびEMPRESAS DE ANTIOQUIA LTDA)は集計範囲に含まれてい

    ません。

    2023年度のScope3排出量の集計範囲は、当社および国内連結子会社を対象としています。

(※2)2023年度は当社単独を対象としています。

 

(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)

 当社グループは、TCFD提言に賛同を表明し、気候変動関連の諸課題の解決に向けて取り組んでおります。GHG排出量削減については、パリ協定に基づくGHG排出削減目標「Science Based Targets」(以下「SBT」(※1))を認定する機関「SBT イニシアチブ」(以下「SBTi」(※2))に対し、2024年11月にコミットメントレターを提出し、2年以内に「SBT」の認定取得を目指すことを表明しました。「SBT」の認定取得及びグループ事業全体のサプライチェーンも含めたGHG削減に向けて取り組んでいきます。また環境活動の持続的な改善に有効な手段として、ISO14001に沿った環境マネジメントシステムを導入しております。

(※1)パリ協定が求める水準と整合した、科学的根拠に基づく、企業のGHG排出削減目標

(※2)企業が策定する「SBT」の評価・認定を行う国際的なイニシアチブ

 

①ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティ推進委員会(委員長:代表取締役社長 、年4回開催)において、気候変動問題に対する方針と戦略、対応策を議論しております。サステナビリティ推進委員会にて検討された重要事項は、執行役員会及および取締役会に報告・審議され、経営戦略に反映しております。

 

②戦略

 当社グループは、気候変動の主要因であるGHG排出量の削減に向け、「伊藤園グループ中長期環境目標」において「2050年度ネットゼロ」を目標として掲げ、2030年度までに2018年度のGHG排出量に対し、Scope1、2で総量50%削減、Scope3で総量30%削減の実現に向け、取り組みを推進しております。

 具体的には、2020年度から毎年対象範囲を拡充しながらTCFD提言に基づくシナリオ分析を実施することで、事業活動に影響を与える気候変動関連の重要なリスクと機会を特定し、対応策の検討と取り組みの強化を進めてきました。2020年度は、主力製品の原料である国内緑茶原料を対象に、気候変動に関する政府間パネル(以下、IPCC)の代表的濃度経路シナリオに基づき、各条件下での茶葉収穫量と品質への影響を定量的・定性的に分析しました。2021年度は、IPCC及び国際エネルギー機関(IEA)によるシナリオに基づく「1.5/2℃」、「4℃」の2つのシナリオを設定したうえで、対象を当社事業のバリューチェーン全体へと拡大し、2030年、2050年を対象時点とした中長期の気候変動による事業への影響を分析しました。2022年度はリーフ・ドリンク関連事業に関わるグループ会社、2023年度は自社及び国内の外部委託物流倉庫に対象範囲を拡大して分析を行いました。

 各シナリオにおける気候変動に伴うリスクと機会の項目を特定し、リスク・機会の顕在化が想定される時期を「発生時期」、事業へのインパクトを「影響度」として事業インパクト評価を行った結果、「1.5/2℃」シナリオでは低炭素社会への移行リスクとして、Scope1、2のGHG排出量に応じて2030年度には14.2億円、2050年度には25.4億円の炭素税導入によるコスト増加の影響があると試算しました(2023年時点)。また「4℃」シナリオでは、気候変動がもたらす物理的リスクとして気温上昇等による原料農作物の調達リスク、 渇水・洪水による操業停止等の水リスクが特に重要な影響を及ぼす可能性が高いことを認識しました。詳細は伊藤園統合レポートや当社ウェブサイト等に掲載しております。今後もリスクの回避・緩和、機会獲得に向け、バリューチェーン全体の脱炭素化やBCPの強化を対応策として推進してまいります。

 

③リスク管理

3 事業等のリスク⑦気候変動・自然災害・事故等に起因するリスク」に記載しております。

 

④指標及び目標

 当社グループは、2050年度ネットゼロの実現に向けて「伊藤園グループ中長期環境目標」を設定し、グループの事業活動におけるバリューチェーン全体の環境負荷低減と課題解決に取り組んでいます。2030年度GHG排出量削減目標のほか、気候変動リスクに関わる重要指標として、製造に使用する水の使用量、容器包装に関する目標を掲げており「(1)サステナビリティ経営の推進 ④指標及び目標」に記載しております。

 

 

<その他の環境課題への対応>

 当社グループは、水資源、プラスチックを中心とする廃棄物等の環境問題、それらと密接に関わり合っている生物多様性の問題に対して、気候変動への対応と同様に解決に向けた取り組みを推進しております。

 

・水資源

 水資源は飲料製品の主原料であり、農作物の生育や製品の製造工程に不可欠です。持続可能な水資源の利用を目指し、生産活動における水使用量の削減等の取り組みを推進しております。当社は飲料製品の製造を外部へ委託する「ファブレス(fabless 自社工場を持たない)」方式を採用しているため、委託先企業を含めたバリューチェーン全体で取り組む必要があると認識しています。飲料製造では、製造委託先における水使用量の削減や循環水の再利用、適切な排水管理に取り組んでいます。

 また、毎年サプライヤーと当社による環境品質会議を開催し、サプライヤーとのエンゲージメントを通じて「伊藤園グループ中長期環境目標」の達成に向けた進捗管理と環境負荷低減への取り組みを働きかけるとともに、定量・定性によるサプライヤー間の情報交換を推進し、今後の削減策に反映させています。

 水リスクについては、毎年、自社及び協力工場を対象とした評価・特定を行って必要な対策を講じているほか、協力工場と協働して、工場周辺の取水源となる水源地保護につながる森林保全活動等を推進しています。

 

・容器包装

 当社グループでは、「伊藤園グループ容器包装に関する方針」「伊藤園グループプラスチックに関する方針」に基づき、3R(リサイクル、リデュース、リプレイス&リユース)+クリーン(環境保全)に、積極的に取り組んでいます。世界的に喫緊の課題である気候変動や海洋プラスチックごみ問題等を背景に、企業に求められるプラスチック課題への対応は複雑さを増しています。当社グループでは、製品の設計段階からライフサイクル全体を通じた、資源有効活用と環境負荷低減に向けた取り組みをより一層推進し、循環型社会の実現とGHG排出量の削減に貢献していきます。なお、ペットボトルに使用するリサイクル素材等の割合を2030年度までに100%にする目標を掲げ、ペットボトルの水平リサイクル(ボトルtoボトル)を推進しています。この目標達成に向け、事業者や自治体と連携したボトルtoボトルの推進や、適正な分別排出に関する消費者への啓発に積極的に取り組んでいます。

 2024年度は、ボトルtoボトルに関する事業者や自治体との協定締結を拡充し、2025年3月に東京都渋谷区と当社を含む飲料メーカー4社の5者による「ペットボトルの水平リサイクルに関する協定」を締結しました。

 

・生物多様性

 豊かな自然の恵みを活かして事業活動を行っている当社グループにとって、気候変動と同様、喫緊の課題である生物多様性の保全と回復に向けて、「伊藤園グループ生物多様性保全に関する方針」を策定しているほか、TNFD提言に賛同を表明し、事業活動を通じた取り組みを推進しております。気候変動と自然資本/生物多様性の課題は密接に関連しています。2023年度は、TCFD提言・TNFD提言に基づき、当社グループの主力製品の原料である緑茶栽培による自然資本/生物多様性への依存と影響の分析と把握を行いました。また2024年度には、当社グループの事業にとっての重要性を鑑みて、これまで緑茶栽培に限定していた分析範囲を緑茶とコーヒーのバリューチェーン全体に広げました。これらのバリューチェーンにおける、自然資本/生物多様性への依存と影響、リスクと機会を分析し、当社グループの事業への影響の評価を行っています。また当社は、環境省の「生物多様性のための30by30アライアンス」に参画しています。

 

<2023年度に実施したTCFD・TNFD分析(サマリー)>

項目

TCFD

TNFD

ガバナンス

・サステナビリティ推進委員会(委員長:代表取締役社長)において、気候変動や自然資本/生

 物多様性などの問題に対する方針と戦略、対応策を協議。重要事項は取締役会および執行役

 員会に報告、審議され経営戦略に反映。

・サステナビリティ推進担当役員(CSO)を中心に、気候変動、自然資本/生物多様性の保全

 と回復を中心とした環境課題の推進体制を強化。

・気候変動を含む外部評価機関によるESG 評価結果を役員報酬の査定に反映。

戦略

1.シナリオ分析

・「1.5/2℃シナリオ」では、脱炭素社会への

 移行が完了していることを想定して移行リス

 クと機会を分析

・「4℃シナリオ」においては、世界の気温上

 昇とその影響が悪化し続けることを想定して

 物理的リスクと機会を中心に分析

2.シナリオに基づく分析結果

<移行リスク>

・炭素税導入によるコスト増加

・影響額 2030年度想定

 GHG削減対策なし:14.2億円

 GHG削減目標達成:7.1億円※Scope1、2対象

<物理的リスク>

・自社/委託工場、グループ会社/主要委託工

 場、物流倉庫における風水害リスク分析

・主力製品原料(緑茶、大麦、コーヒー豆)の

 収量、品質への影響

3.移行計画

・Scope1とScope2の削減策については、「営業

 車両の電動車への転換」「省エネの推進」

「再生可能エネルギーへの転換」の3つを柱に

 ロードマップとKPIを作成し、取り組みを推進

・Scope3については、容器包装の軽量化やサス

 テナブル素材への転換や、サプライヤーエン

 ゲージメントの向上と協働により削減を推進

1.LEAPアプローチ

・事業にとって重要な緑茶事業に対象範囲を

 限定し、LEAPアプローチを参照して分析。

 自然資本/生物多様性の影響が懸念される

 地域を特定するLocateと自然との接点を診

 断するEvaluateの依存・インパクトの特

 定(E2)までを実施

<Locate>

・緑茶事業のバリューチェーン上のうち、最

 も自然資本/生物多様性への依存とインパ

 クトが大きいのは、「栽培」工程

・「栽培」に関わる、当社グループが契約

 している茶園の状況を分析

<Evaluate>

・依存とインパクトが「非常に高い」または

 「高い」ものとして、特に「GHG排出量」

 と「土壌劣化(汚染)」を認識

2.移行計画

・環境負荷影響の可能性に対し、適正な施肥

 量の管理や土壌管理が重要であると考えて

 対応を進める

・気候変動と自然資本/生物多様性の関連性

 の視点からリスクと機会に関わる分析を進

 めるとともに統合的な対応策に取り組む

リスクとインパクトの管理

・取締役会の諮問機関であるリスクマネジメント委員会(委員長:代表取締役社長)において、

 重要リスクの一つとして認識している気候変動リスク、自然資本/生物多様性の保全と回復を

 全社的なリスクマネジメント体制に統合して管理

指標と目標

・伊藤園グループ中長期環境目標と実績を参照

・茶産地育成事業に関する目標と実績を参照

TCFD・TNFD提言に沿った情報開示 https://www.itoen.co.jp/sustainability/environment/tcfd/

 

(3)人的資本

 伊藤園グループの最も大切な財産は「人」であり、グループの持続的な成長を支える要であると考えています。成長の実現には人材への投資が重要であり、当社グループでは、グループで働くすべての人がいきいきと活躍し、その能力・価値を最大限に発揮できる人的資本経営を推進しています。

社員一人ひとりが挑戦・活躍し続けられる機会・環境を整備することで、個人の成長意欲を高め、多様な経験を通じて学び、自らのキャリアを自律的に考え成長できる人材の育成に取り組んでいます。個の育成を通して、ビジョンに向かって挑戦し続ける組織を目指しています。

 また、策定した中期経営計画の5つの重点戦略を実現させるため、「地域コミュニケーション」「グローバル」「次世代リーダー」「DX推進」「多様性受容」をテーマとした、求める人材の具体像を掲げました。これまで実施してきた人材マネジメントの取り組みを継続・発展させ、中期経営計画の実現と企業価値向上に貢献していきます。

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①ガバナンス

 当社グループでは、人的資本経営の実行体制として、CHROが委員長を務める「人財戦略委員会」を設置し、外部環境や経営戦略の変化を踏まえた人財戦略の見直しと実効性のある人事施策の検討・議論を行っています。人財戦略委員会にて検討された重要な人事施策については、執行役員会及び取締役会に報告し、グループ各社への展開を進めています。

 

②戦略

(ア).人材育成方針

 当社グループは実力主義の考えのもと、チャンスは社員一人ひとりに平等であり、評価は公正に行うことを基本として、常に前向きに挑戦する人材の育成に力を入れています。多様な人材が、あるべき姿を求め、自ら考え、学び、率先して行動し、自らの夢を実現することこそが、企業の持続的な成長と発展を支え、企業価値を高めると信じ、社員の自己実現に向けたキャリア形成を支援しています。

 

(イ).社内環境整備方針

 当社グループでは、社員一人ひとりが常に前向きに挑戦し、互いに切磋琢磨しながら、組織力を活かし、環境の変化に迅速に対応できる、創造性と生産性の高い組織づくりを目指します。その中で、多様な人材が一人ひとりの状況に応じて柔軟に働き方を選択できるようにすることで、ワークライフバランスを推進し、誰もが働きやすい職場になるよう環境整備を行っています。

 

③指標及び目標

(ア).女性の管理職比率

 女性活躍推進法に基づく第4期行動計画(2023年5月~2027年4月)を策定し、女性活躍に向けた取り組みを進めています。女性社員が自己の能力を十分に発揮し、更なる活躍ができるようキャリア・ライフプランを再考・形成できる場を設けています。階層別の女性教育を実施することで女性社員のモチベーションや定着率向上、家庭と仕事の両立支援、管理職の育成などの強化に繋げています。

 

(イ).男性の育児休業取得率

 社員及びその家族のライフステージ(出産・育児・介護など)を福利厚生、勤務・賃金体制の面から総合的に支援しています。男性社員の育児休業取得推進を目的とした「育児休業制度」拡充や、病気・育児・介護との両立を目的とした「短時間勤務、繰上げ繰下げ勤務」の適用拡大などを進めています。

 詳細は、「(1)サステナビリティ経営の推進 ④指標及び目標」に記載しております。

 

(4)社会からの主な評価

 当社グループのESGへの取り組みが評価され、世界の代表的なESG指数である「FTSE4Good IndexSeries」及び、世界最大級の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が採用している日本企業の株式を対象としたESG投資指数の構成銘柄に複数組み入れられています。また、国際的な非政府組織(NGO)であるCDPの「水セキュリティ」分野において、当社グループの水資源に関する取り組みが評価され、2024年度に初めて最高評価「Aリスト」企業に選定されました。なお、「気候変動」分野では「B」評価を取得しています。引き続き、環境目標の達成に向けた取り組みと改善を継続的に行っていきます。

 社員と家族の健康保持・増進に向けた健康経営の推進にも取り組んでおり、経済産業省と日本健康会議が共同実施する「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)~ホワイト500~」の認定を継続して受けております。

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 当社のMSCIインデックスへの組み入れ、MSCIのロゴ、商標、サービスマークまたはインデックス名称の使用は、MSCIまたはMSCI関係会社による当社の後援、推薦または販売促進を意味するものではありません。MSCIインデックスはMSCIの独占的財産であり、MSCI及びMSCIインデックスの名称とロゴは、MSCIまたはその関連会社の商標またはサービスマークです。

3【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年4月30日)現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。

 

①政治・経済・社会動向に起因するリスク

リスク概況

リスク管理体制・対応策

 当社グループは国内外において事業を展開しております。そのため、景気や為替相場の変動、特定国の政策の変更、国際秩序の変化や混乱・戦争の発生などによる、政治・経済・社会動向の変動や、これらに影響を受ける個人消費動向の変動、サプライチェーンの不安定化は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、ロシア・ウクライナに拠点を有しておらず、また同地域向けの事業も手掛けておりません。しかしながら、ロシアによるウクライナ侵攻の発生に伴い、世界経済の混乱や原材料・燃料・輸送等のコスト上昇が想定以上に長期化・深刻化した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループを取り巻く政治・経済・社会動向や関係業界の動向等の外部環境変化に起因するリスクに関しては、長期経営計画委員会を中心として、各本部・部署及び各委員会が連携して管理し、当社グループへの影響を最小限に止めるための体制整備に取り組んでおります。

 サプライチェーンについては、製造委託先や物流業者の分散、現地生産の検討、サプライチェーンの変更が必要な場合の対応策の策定を進めております。

 

②食品・飲料市場動向に起因するリスク

リスク概況

リスク管理体制・対応策

 当連結会計年度の販売数量のうち、当社の飲料製品全体に占める「日本茶飲料」の割合は63%と、高い比率を占めております。

 当社グループでは、今後も緑茶飲料市場の成長が期待され、市場の拡大とともに「お~いお茶」ブランドを中心とした緑茶飲料も伸長するものと予測しております。特に海外市場の拡大を重要な成長機会と位置づけ、「お~いお茶」のグローバルブランド化に向け経営資源を集中させてまいります。

 ただし、飲料製品の低価格化が続き、競争激化に起因する販売額の伸び悩みが顕著となっている現状に加え、販売チャネル等の変化によりデジタルマーケティングやD2C市場の拡大により、依然として飲料各社の激しい競争が続いております。また、カテゴリー間でのシェア争いや、消費者の嗜好の変化により、製品のライフサイクルが短い傾向です。

 このような市場環境のなか、当社グループは緑茶飲料を中心としたお客様のニーズに沿った製品の提供や、ルートセールスを中心とするお客様へのサービスに努めております。

 今後も継続してこれらの施策を実施するとともに、市場動向を予測し、競争に打ち勝つ施策を展開してまいりますが、これらの施策が市場環境の変化に十分対応できなかった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループを取り巻く国内・世界経済の動向や関係業界の動向等の外部環境変化に起因するリスクに関しては、長期経営計画委員会を中心として、各本部・部署及び各委員会が連携して管理し、当社グループへの影響を最小限に止めるための体制整備に取り組んでおります。

 また、市場調査・分析体制の強化に加え、健康に対する研究や成果の発信、嗜好軸の変化に応じた製品の開発、オープンイノベーション推進に向けた社内・社外におけるコラボレーション強化、D2C事業及びECチームの強化など、市場動向を予測し、お客様のニーズに沿った新しい価値の提供を目指す対応策の策定を進めております。

 

 

 

③原材料調達に関するリスク

リスク概況

リスク管理体制・対応策

 当社グループの主要事業は、茶系飲料を中心とする飲料製品でありますが、就農人口の減少や、茶園面積の減少による茶生産量の減少に加え、飲料用茶葉の需要増大により、当社グループが必要とする茶葉の確保が出来ない場合の需給関係の悪化や、輸入原料(穀物・野菜等)及びPET容器原料の石油価格の高騰、為替の影響により調達コストが上昇し、原価高の要因となる可能性があります。

 また、プラスチック製品に対する国際社会全体における輸出・販売規制強化の傾向により、プラスチック税支払いによるコスト上昇や、プラスチック使用製品の棚落ち、取引停止等が発生する可能性があります。

 当社グループが今後これらの市場環境の変化に対応できなかった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 「伊藤園グループ調達方針」を定め、顧客に安全・安心な製品を持続的に提供するため、サプライチェーンの取引先とともに、社会・環境課題にも配慮した良識ある公正な調達活動を推進しております。茶葉原料調達に関しては、人手に依存しない生産方法の確立や、茶産地育成事業の取り組みを通じ、当社の主要事業推進に欠かせない茶葉の安定供給に努めております。併せて、商品設計や使用資材の見直し、資材費高騰・プラスチック使用製品への規制強化に対する対応策の策定を進めております。

 

④生産・物流体制に関するリスク

リスク概況

リスク管理体制・対応策

 当社グループでは、グループ内工場で茶葉製品の大部分と、飲料製品の原料製造を行っております。また、飲料製品の大部分と茶葉製品の一部は、グループ外の委託工場で製造しております。また当社グループでは、全国を5ブロックに分けた効率的な生産・物流体制を構築しております。

 安心・安全な製品を持続的に提供するため、生産・物流体制の整備に努めておりますが、天災や2024年問題の深刻化等による生産・物流への影響を完全に排除できる保証はなく、不測の事態が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 グループ内工場におきましては、生産設備が突発的に停止することがないよう、定期的に設備点検等を実施しております。また、委託工場につきましては、不測の事態が発生した場合に備えて、全国各地に複数の委託工場を確保しております。加えて、製品を安定的に提供するため、全国を5ブロックに分けた生産・物流体制の構築や、他業種との協業検討による物流総量の確保等により、効率的な生産・物流体制の整備に努めております。

 今後も、社会・環境に配慮した持続可能な生産・物流体制の実現に向けた取り組みを推進してまいります。

 

⑤広告宣伝・営業販売に関するリスク

リスク概況

リスク管理体制・対応策

 当社グループでは、国内・海外に向けたデジタルメディア経由を含む広告宣伝活動や、ルートセールスや通信販売等の営業活動及び販売促進活動等を通じて、「健康創造企業」としてのマーケティングコミュニケーションを行っております。こうした活動および製品表示においては、世界標準に即し、科学的根拠に基づいた誰もがわかりやすい表現で伝えることに努めております。

 ただし、消費者動向の変化、関連法案の改定等により、広告宣伝・営業販売に対するニーズや期待、要請に合致した広告宣伝・営業販売活動を展開できない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 ICC(国際商業会議所)制定の基準を踏まえ「伊藤園グループ責任あるマーケティングに関する方針」を定め、責任あるマーケティングコミュニケーションの展開や、適正でわかりやすく、誤解を招かない製品表示の徹底を推進しております。また、広告宣伝・販売促進活動の展開前・展開後において、その適正性の確認やモニタリングを徹底しております。

 

 

⑥食品の安全性・衛生管理、品質管理に関するリスク

リスク概況

リスク管理体制・対応策

 当社グループは、食品の安全性・衛生管理、品質管理を経営上の最重要課題と認識しており、原料の調達から製品の提供まで、徹底した品質管理とトレーサビリティを確保しております。

 しかしながら、こうした厳重な品質管理に向けた取り組みにもかかわらず異物混入及びアレルゲン表示が不適切な製品の流通、原材料由来による禁止添加物の使用及び残留農薬問題(連鎖的風評被害を受ける場合を含む)、食中毒等の衛生問題が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、業界、社会全体に及ぶ品質問題等、当社グループの取り組みを超える事態が発生した場合も、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 「伊藤園グループ品質方針」を設定、これを遵守し食品の安全性・衛生管理、品質管理を確実にするため、当社に品質管理部及び品質保証部を設置しております。両部では自主基準を設け、製品の安全性について品質検査を行うとともに原材料に由来する異物混入及び禁止添加物等の使用を防止するための確認、トレーサビリティシステム(原材料、加工、流通など製品履歴の遡及、追跡)の維持管理、外部委託工場への品質管理指導と監査を実施しております。また、定期的に開催する品質会議において、当社グループ製造担当者、外部委託工場担当者に監査結果とさまざまな品質情報をフィードバックしております。これらの活動によりサプライチェーン全体の食品の安全性・衛生管理、品質管理に対する意識向上と一層の体制強化、リスクの極小化を図っております。

 当社グループが国内で展開する直営店事業につきましては、食品衛生法の規制対象となっているものがあります。これらの事業につきましては、法令の遵守に加え、

出店先の衛生基準及び当社マニュアルに基づいた衛生管理を徹底しております。

 また、「製品リスク対策委員会」を常設し、お客様相談室を中心に、万が一品質事故・問題が発生した場合の対応フロー策定・対応シミュレーションの実施を推進しております。

 

⑦気候変動・自然災害・事故等に起因するリスク

リスク概況

リスク管理体制・対応策

 地球温暖化に伴う気候変動は、集中豪雨などの異常気象による洪水・土砂災害、酷暑や熱波による干ばつ、水資源の変化、感染症等、世界各地で様々な被害をもたらしています。当社グループの主力製品の原料は、茶、大麦、コーヒー、野菜、果実等の農産物であるため、国内外における生産地での気候変動の影響による不作が生じた場合、原料調達価格の上昇及び必要量の不足に伴う販売機会損失などが想定されます。

 気候変動による悪影響、感染症の拡大、及び地震などの自然災害が想定範囲を超えた場合、本社機能や生産、物流体制に支障をきたすことが想定され、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 併せて、当社の事業活動が環境に十分に配慮しておらず、エシカル消費等対応が不十分であると判断された場合、消費者の信頼やブランド価値の低下等の影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、リスクマネジメント委員会(委員長:代表取締役社長)において、気候変動リスクを重要リスクの1つとして認識し、全社的なリスクマネジメント体制に統合して管理をしております。気候変動を含む環境上のリスクに関しては、TCFD提言に基づく気候変動シナリオ分析における定期的なリスクの把握と共に、環境マネジメントシステムの管理手法により環境リスクへの対応を全社的な環境問題として取り組んでおります。

 当社グループでは、環境負荷低減のため、温室効果ガス排出量の削減や持続可能な水資源の利用、廃棄物削減、資源循環、生物多様性など様々な課題に取り組んでおります。また、気候変動による原料の不作リスクに関して、原料となる農作物の産地分散、気候変動に強い農作物の開発、気候変動に強くなる肥料や栽培方法の活用等に取り組んでおり、今後も、継続的に気候変動が事業に及ぼす影響を把握し、適切に対応できる体制を整備してまいります。また、災害対策委員会において、災害や感染症拡大等の危機的事項の発生に備え、対応の周知徹底やBCP(事業継続計画)の見直しを図り、生産工場・配送方法の分散化に取り組んでおります。また危機的事項の発生時には、代表取締役社長を本部長とする対策本部を設置して、迅速な対応を行い被害の拡大を防止し、最小限に止める体制を整えております。

具体的な気候変動への対応については合わせて「第2事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組(2)気候変動への対応」をご参照ください。

 

⑧海外事業に関するリスク

リスク概況

リスク管理体制・対応策

 当社グループでは、国内のみならず、北米、中国、東南アジア、豪州を中心に海外の事業を展開しております。また、2024年に欧州市場に本格進出し、「お~いお茶」飲料製品の生産販売を拡充しております。一方で、企業活動のグローバル化に伴い、海外事業の重要性がますます増大しておりますが、予測し得ない国家間対立の悪化、戦争・紛争の勃発、テロ破壊活動、政治不安、保護主義的政策、各国における競争環境の激化、各国の法規制の変更等の政治的、経済的、法的な要因による重要な変化が発生する場合があります。これらの重要な変化があった場合、不買運動や関税の引き上げ、当該国における生産・供給活動の停止等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、欧州をはじめとする海外諸国では、環境・人権デューデリジェンスの法制化が進められております。そのため、当社グループが海外事業を展開するにあたって、サプライチェーンも含めた、適切なアセスメントやリスクマネジメント体制を整備できず、環境・人権関連等の問題が生じた場合、当該国における法的措置や罰金やブランド価値の低下を招き、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 海外事業活動において発生しうるリスクに関しては、長期ビジョンである「世界のティーカンパニー」の実現及びその通過地点である「お~いお茶」のグローバルブランド化に向け、対応をより一層強化するべく、国際本部を中心として管理体制整備に取り組んでおります。海外事業におけるリスクは多岐にわたりますが、国家間対立の悪化等に向けた生産拠点の増加や事業撤退基準の設定、各国の法規制の変更等に向けた現地での法令確認体制の整備など、リスクが顕在化した際の影響を低減するための適切な対策の検討を進めております。

 

⑨法規制・コンプライアンスに関するリスク

リスク概況

リスク管理体制・対応策

 当社グループでは、事業の遂行に当たって、食品衛生法、製造物責任法(PL法)、表示関連法規制、労働関連法規制、競争関連法規制、個人情報保護規制、環境関連法規制等、様々な法的規制の適用を受けております。

 当社グループがこれらの法令に違反した場合や、その他社会的要請に反した行動をとった場合には、法令による処罰、訴訟の提起、社会的制裁などを受けたり、お客様からの信用が失われる可能性があります。

 今後、新法の制定、法改正、法令の解釈変更にて法的規制を遵守することが著しく困難になった場合や、気候変動対策等の規制強化によりコスト負担が増えた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループでは、グループ全体のリスクを統合的かつ戦略的に管理し、グループガバナンスの実効性を高めております。しかし、新規グループ会社設立および統合等に伴い、対応すべき法規制等が増加し、管理すべきリスクの範囲や粒度が変化する可能性があります。こうしたグループガバナンスに関連するリスク対応拡充により、当社グループにおける他の取り組みの進捗が遅延した場合にも、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 伊藤園グループ行動規範により、コンプライアンスの徹底を図るため、法務部を中心として全社的なコンプライアンス教育を実施し推進しております。また、当社グループでは、業務の適正性や効率性を確保するため、内部統制推進委員会を中心に、内部統制の推進に取り組んでおり、内部監査の強化を進めております。

 また、グループ経営推進部を中心に、各グループ会社のリスクマネジメント活動の推進支援を行い、グループ会社における遵守・徹底すべき法規制やコンプライアンスの動向の分析、およびそれらに関連するリスク概況の管理等、グループガバナンスの実効性向上を図る取り組みを進めてまいります。

 また、人権の尊重は、伊藤園グループ経営理念「お客様第一主義」の根幹をなすものであり、全ての事業活動の根幹となるものとして捉えております。当社グループでは、人権に関する専門知識・実務経験を有する外部有識者の助言を踏まえて「伊藤園グループ人権方針」を策定し、人権リスクの特定、予防、是正、救済に取り組む仕組みである人権デューデリジェンスを構築し、実施をしております。具体的な人権尊重の取り組みについては合わせて当社ウェブサイト「人権尊重の取組み」をご参照ください。

 

 

 

 

⑩情報セキュリティに関するリスク

リスク概況

リスク管理体制・対応策

 当社グループは、生産・販売活動をはじめとする各種事業活動を効率的に行うために情報システムを利用しております。しかしながら、当社およびグループ会社を対象とするサイバー攻撃が発生し、情報システムに障害が発生した場合、各種業務の中断・停止や金銭的被害の発生、社会的信用の低下等が発生する可能性があります。

 また、当社グループは、ルートセールスや通信販売等の営業取引や消費者キャンペーンを含む販売促進活動等を通じて、相当数お客様情報を保有しているほか、当社グループで実施している「新俳句大賞」の募集により、潜在的なお客様の情報も保有しております。これらのお客様の個人情報は、当社グループで管理するほか、一部はグループ外の管理会社に管理を委託しております。

 しかしながら、今後これらの情報が停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、ウイルスの感染、不正アクセス等の予期せぬ事態の発生により、情報の消失、外部へ漏洩する等の事態が起きた場合、当社グループの信用低下を招き、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、昨今のサイバー攻撃の多様化・複雑化を受けて、各種業務を安全に効率的かつ正確に行うための適切な情報セキュリティ対策を実施しております。当社および各グループ会社を標的としたサイバー攻撃対策として、不正アクセスやマルウェアの自動感知・削除、駆除できない場合においてはアラートを発報し、当社DXセキュリティ推進部及び情報セキュリティ会社と連携して対応を実施出来るよう、体制を整備しております。

 また、個人情報を含めた重要な情報の紛失、誤用、改ざん等を防止するため、システムを含め情報管理に対して適切なセキュリティ対策を実施しております。情報保護に関しては、伊藤園グループにおける個人情報保護方針を定めており、個人情報の安全管理の徹底と漏洩を未然に防止するとともに、情報管理に関する規程の遵守意識の維持及び向上を目的として、適切な情報保護対策の推進に取り組んでおります。また、業務上の情報管理に関しては、社内での個人情報保有状況や社内ルールの把握を実施することで、情報保護対策の強化に努めております。

 

⑪人的資本に関するリスク

リスク概況

リスク管理体制・対応策

 当社グループでは、経営環境の変化を踏まえたうえで持続的な成長のため、人的資本は当社の経営基盤の要となっております。しかしながら、昨今の人材獲得競争の激化、DXの加速や企業活動のグローバル化による人材需要の増加や必要スキルの変化・高度化等により、必要な経営幹部及び一般社員の確保、維持、育成が困難な事態に陥った場合、事業活動の停滞や経営戦略の実行に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、「伊藤園グループ人材方針」を定め、最も大切な財産は「人」であると捉えております。

 経営戦略の実行に必要な人材の確保、育成に関しては、多様な人材が柔軟な働き方を選択できる環境を整備し、社員全員がいきいきと働くことができるようにすることで、会社全体の活性化と社員の生産性の向上を目指しています。また、伊藤園独自の自己啓発やキャリア支援制度を設け、戦略的な人材育成計画を行い、経営戦略と人材戦略を連動させた人材マネジメント施策を実行しております。

 具体的な人的資本への対応については合わせて「第2事業の状況 2サステナビリティに関する考え方及び取組(3)人的資本」をご参照ください。

 

⑫財務・税務に関するリスク

リスク概況

リスク管理体制・対応策

 当社グループは、事業用の不動産やのれんをはじめとする様々な固定資産を所有しております。こうした資産は、時価の下落や、期待しているキャッシュ・フローを生み出さない状況になるなど、その収益性の低下により減損会計の適用を受ける可能性があります。また、企業活動のグローバル化に伴い、海外事業を展開している各国の税制の適用を受けており、今後、予期し得ない税制改正や当局からの更正処分を受ける可能性があります。これらの重要な事象が発生し、減損損失が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 財産保全上のリスクに関しましては、債権管理基準に従い、与信管理及び債権回収管理を徹底し、取引先倒産による貸倒損失の発生を未然に防止するよう努めております。また、製品、原料、資材等棚卸資産管理に努め不良在庫等の発生を未然に防止する体制整備に取り組んでおります。併せて、買収した子会社や保有する不動産・有価証券等を含めた資産価値の毀損・低下防止に向けて取締役を中心とした検討体制を整備しております。

 税務上のリスクに関しましては、伊藤園グループ税務方針を定め、税務の透明性を確保し、納税義務を確実に果たすための適正な管理体制を構築しており、税務リスクに重大な影響を与える可能性を低減しています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」と

いう。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における日本経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の増加等により緩やかな回復が見られた一方、米国の政策動向や東欧・中東地域における紛争の長期化、原材料・エネルギー価格の高止まり、為替変動による影響など、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 このような状況の中、当社グループは、すべてのお客様を大切にすることが経営の基本であるという経営理念「お客様第一主義」のもと、当社グループと関わるすべての方々をお客様と位置づけ、ご意見やご要望に真摯に向き合い、常にお客様の立場に立った対応を図りながら、一丸となって積極的な事業活動を行ってまいりました。

 

 この結果、当連結会計年度の業績は、売上高4,727億16百万円(前期比4.1%増)、営業利益229億69百万円(前期比8.2%減)、経常利益229億73百万円(前期比13.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益141億56百万円(前期比9.5%減)となりました。

 

 セグメント別の業績は次のとおりであります。

 

<リーフ・ドリンク関連事業>

 リーフ・ドリンク関連事業における当連結会計年度の売上高は、「お~いお茶」ブランド製品を中心に堅調に推移しました。一方で利益面は、原材料をはじめとする各種コスト上昇の影響や、競争激化に伴うリベート等の増加、広告宣伝費の先行投資もあり減益となりました。

 当社の主力ブランドである「お~いお茶」は、現在40以上の国と地域で販売しており、1989年の発売以来、累計販売本数は450億本を突破しました(500mlペットボトル換算/2024年12月末時点)。本年3月には同ブランドから“お茶の常識、すてましょう。”を合言葉に、お茶の伝統を引き継ぎつつグローバルで日本の茶文化を伝播させる新シリーズとして、「お~いお茶 PURE」シリーズを発売しました。本シリーズは米国やアジア市場の動向を基に、海外で求められている嗜好に沿うため、日本茶の苦みや渋みを抑えつつ「後味のすっきりさ」「爽やかな香り」を楽しめる味わいを製品のベースとしました。発売1週間で出荷1,000万本を突破するなど、ご好評いただいております。

 今後も長期ビジョンである「世界のティーカンパニー」を実現するため、「お~いお茶」のグローバルブランド化をより一層進めてまいります。

 

 この結果、売上高は4,203億28百万円(前期比3.6%増)、営業利益は190億25百万円(前期比13.9%減)となりました。

 

<飲食関連事業>

 タリーズコーヒージャパン㈱は、春を彩る季節限定ドリンクとして、昨今話題のアサイーを使用したフローズンドリンク「豆乳アサイーバナナスワークル」を発売し、甘酸っぱいアサイーテイストのフローズンにバナナの果肉がマッチした味わいがご好評をいただいております。フードメニューでは、日本の素材の魅力をお届けする『FUN FAN JAPAN!』プロジェクトメニューとして、瀬戸内産レモンを使用した「グリルチキンの瀬戸内レモンパスタ ~青唐辛子風味~」を発売し、ごろっとした具材感と春を感じる爽やかな味わいが支持され、好調に推移しました。また、紙カップや抽出後のコーヒー粉のリサイクルなど、環境への配慮を目的とした取り組みも積極的に推進することで、企業としての役割を社会に向けて発信し続けています。新規出店に関しましては、タリーズが掲げる“5つの最高”を体現するコンセプト店舗「タリーズコーヒー プライムファイブ グラングリーン大阪店」や、『&TEA』の旗艦店となる「タリーズコーヒー &TEA 虎ノ門ヒルズ店」のオープンなど、話題性のある施設への出店が順調に進み、2025年4月末の総店舗数は818店舗となっております。

 

 この結果、売上高は437億69百万円(前期比8.5%増)、営業利益は35億18百万円(前期比8.7%増)となりました。

 

<その他>

 売上高は86億19百万円(前期比7.6%増)、営業利益は7億66百万円(前期比112.8%増)となりました。

 

 財政状態の状況は次のとおりであります。

 

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産は2,319億95百万円で、前連結会計年度末に比べて117億54百万円減少しております。これは主に「現金及び預金」が194億5百万円減少、「売掛金」が44億86百万円増加、「商品及び製品」が26億51百万円増加、「未収入金」が13億27百万円増加したことによるものであります。

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産は1,126億3百万円で、前連結会計年度末に比べて24億60百万円増加しております。これは主に「建物及び構築物」が28億95百万円増加、「工具、器具及び備品」が12億29百万円増加、「繰延税金資産」が14億98百万円減少したことによるものであります。

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債は1,081億20百万円で、前連結会計年度末に比べて114億55百万円増加しております。これは主に「買掛金」が36億76百万円増加、「短期借入金」が97億34百万円増加、「未払法人税等」が22億22百万円減少したことによるものであります。

(固定負債)

 当連結会計年度末における固定負債は605億5百万円で、前連結会計年度末に比べて135億5百万円減少しております。これは主に「長期借入金」が123億4百万円減少したことによるものであります。

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は1,759億71百万円で、前連結会計年度末に比べて72億44百万円減少しております。これは主に「親会社株主に帰属する当期純利益」により「利益剰余金」が141億56百万円増加、「剰余金の配当」により「利益剰余金」が54億83百万円減少、「自己株式の取得」により「自己株式」が148億87百万円増加、「自己株式の消却」により「資本剰余金」及び「自己株式」が182億7百万円それぞれ減少したことによるものであります。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比べ198億32百万円減少し、当連結会計年度末には855億65百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

 

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

 営業活動によるキャッシュ・フローは、180億38百万円の収入(前期は254億82百万円の収入)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益222億31百万円、減価償却費87億45百万円、法人税等の支払額86億27百万円によるものであります。

 

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

 投資活動によるキャッシュ・フローは、133億33百万円の支出(前期は107億37百万円の支出)となりました。これは主に、有形及び無形固定資産の取得による支出122億86百万円によるものであります。

 

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

 財務活動によるキャッシュ・フローは、232億36百万円の支出(前期は122億13百万円の支出)となりました。これは主に、長期借入れによる収入120億円、長期借入金の返済による支出135億22百万円、自己株式の取得による支出148億87百万円、配当金の支払額54億74百万円によるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

  当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比増減率(%)

リーフ・ドリンク関連事業

 

 

(販売用製品)

62,150

3.9

(自社製品用原料)

21,875

7.7

リーフ・ドリンク関連事業計

84,026

4.9

その他

 

 

(販売用製品)

2,707

20.4

合計

86,733

5.3

(注)1 販売用製品の金額は販売価格、自社製品用原料の金額は原価によっております。

2 セグメント間取引については、相殺消去しております。

3 上記生産実績には外部へ製造委託している仕入製品は含まれておりません。

 

b.仕入実績

  当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比増減率(%)

リーフ・ドリンク関連事業

227,980

1.8

飲食関連事業

12,661

5.3

その他

2,821

△9.3

合計

243,463

1.9

(注)1 金額は仕入原価によっております。

2 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

c.受注実績

  当社グループは受注生産を行っておりません。

 

d.販売実績

  当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比増減率(%)

リーフ・ドリンク関連事業

420,328

3.6

飲食関連事業

43,769

8.5

その他

8,619

7.6

合計

472,716

4.1

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10以上の相手先がないため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成に当たり、必要と思われる見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、これらは不確実性を伴うため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性があります。

 当社グループの連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

 a.リベートに係る未払費用

 顧客に対して支払われるリベートに係る未払費用については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 b.貸倒引当金

 当社グループは売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しておりますが、将来、販売先の財務状況が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。

 c.棚卸資産

 当社グループが販売する棚卸資産は市場の需給の影響を受け、市場価格が低下する場合があるため、評価基準として、総平均法による原価法(収益性の低下による簿価切下げの方法)を採用しております。なお、在外連結子会社につきましては、先入先出法又は移動平均法による低価法を採用しております。

 d.賞与引当金

 賞与引当金は、従業員に対する翌連結会計年度賞与支給見込額のうち当期間対応額を計上しておりますが、実際の支給額は支給時点における外部環境及び当社グループの状況を勘案のうえ決定されるため、実際の支給額が見積りと異なる場合には、追加の費用計上が必要となる可能性があります。

 e.退職給付に係る資産・負債

 従業員退職給付費用及び債務は、数理計算上使用される前提条件に基づいて算出しております。これらの前提条件には、割引率、退職率、死亡率及び昇給率など多くの見積りが含まれており、実際の結果が前提条件と異なる場合や前提条件が変更された場合、又は法改正や退職給付制度の変更があった場合、その影響は累積されて将来にわたり規則的に認識されることとなり、将来の退職給付費用及び債務に影響を与える可能性があります。

 f.有価証券の評価

 当社グループは価格変動性が高い公開会社の株式と、株価の決定が困難である非公開会社の株式を保有しております。当社グループは有価証券の評価を一定期間ごとに見直し、その評価が取得原価又は減損後の帳簿価額を一定率以上下回った場合、減損処理を実施しております。将来の市況悪化又は投資先の業績不振により、現在の帳簿価額に反映されていない損失又は帳簿価額の回収不能が発生した場合、評価損が発生し、利益に影響を与える可能性があります。

 g.繰延税金資産

 当社グループは繰延税金資産の回収可能性を評価するに当たって、将来の課税所得を合理的に見積っております。将来の不確実な経済条件の変動により、この見積りに変動があった場合、繰延税金資産の調整により、利益に影響を与える可能性があります。

 

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 a.財政状態

   当連結会計年度末の財政状態につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 b.経営成績

当連結会計年度の売上高は4.1%増の4,727億16百万円となりました。これは「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおり、リーフ・ドリンク関連事業及び飲食関連事業の売上高が堅調に推移したことによるものであります。

当連結会計年度の営業利益は前連結会計年度に比べ8.2%減の229億69百万円となり、営業利益率は0.7ポイント減の4.9%となりました。これは原材料をはじめとする各種コスト上昇の影響や、競争激化に伴うリベート等の増加、広告宣伝費の先行投資等により、売上原価が5.9%増、販売費及び一般管理費が3.0%増となったことによるものであります。

当連結会計年度の経常利益は前連結会計年度に比べ13.9%減の229億73百万円となり、経常利益率は1.0ポイント減の4.9%となりました。これは、主に営業利益が減益となったことに加え、為替相場の変動により為替差損益が悪化したことによるものであります。

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ9.5%減の141億56百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益率は0.5ポイント減の3.0%となりました。これは、経常利益が37億7百万円減少、減損損失が13億26百万円減少、法人税、住民税及び事業税が18億57百万円減少、法人税等調整額が10億47百万円増加したことによるものであります。

 c.キャッシュ・フロー

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 当社グループは、収益性の強化によるキャッシュ・フローを高め、さらに投資効果を重視した設備投資を行うとともに、有利子負債の削減を進めてまいります。

 

③ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3.事業等のリスク」に記載しております。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

 a.資金需要

   当社グループの事業活動における運転資金需要の主なものは、リーフ・ドリンク関連事業における製品製造のための原材料の仕入や製造経費のほか、販売費及び一般管理費等であります。また、設備投資需要としては、リーフ・ドリンク関連事業における自動販売機等への投資や飲食関連事業における新規出店等への投資であります。

 b.財務政策

   当社グループは、事業活動に必要な資金を安定的に調達するため、内部資金の活用に加え、金融機関からの借入及び社債の発行等による資金調達を行っております。資金調達に際しては、調達コストの低減に努める一方、過度に金利変動リスクに晒されないよう金利の固定化を図っております。

 

⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、2029年4月期までの中期経営計画の実現に向け、「1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)当社グループの中期的な経営戦略」に記載した取り組みを実施してまいります。

 なお、中期経営計画における定量目標は以下のとおりであります。

 

 

2025年4月期

実績

2029年4月期

目標値

連結売上高

伸長率 4.1%

年平均伸長率 2%以上

(海外8%以上 ※為替影響除く)

営業利益率

4.9%

8%以上

自己資本利益率(ROE)

8.0%

10%以上

総還元性向

144.0%

40%以上

 

5【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの主な研究開発部門は、当社の中央研究所、開発一部、開発二部、緑茶ブランドグループ、リーフブランドグループ、麦茶・紅茶・健康茶ブランドグループ、コーヒー・炭酸・水ブランドグループ、野菜・果汁・乳酸菌・機能性・フードブランドグループ、新カテゴリー創造グループ、マーケティングリサーチ部及び農業技術部であります。

 中央研究所では、当社グループ製品の健康価値に関する研究につきまして、茶の成分による生活習慣病予防効果、認知機能改善効果、並びに様々な健康課題に対する改善効果を検証するため、大学等研究機関との共同研究を進めております。また、お茶と食事との相性やお茶の美味しさに対する生体応答を科学的に明らかにし、学術発表を行い、それを消費者への情報発信に繋げています。

 さらに、環境課題への取り組みとして「お~いお茶」の製造工程で発生する茶殻を利用した「茶殻リサイクルシステム」を開発しました。茶殻の消臭・抗菌効果を利用した茶殻配合畳やマスク・マスクケースなど、現在では100種類以上の工業製品の原材料として使用されています。

 今後も緑茶、コーヒー、野菜飲料、乳酸菌飲料など、当社グループ製品の健康価値の検証や、香味や品質の安定性向上に関する研究開発と環境課題解決への取り組み、当社グループ製品の品質向上とブランド強化、環境課題解決に貢献してまいります。

 開発一部、開発二部では各カテゴリーの新製品の開発で、原材料の加工方法、処方の開発、製造技術の開発を行い原料の開発から製品の試作・製品化までを担当しております。

 緑茶ブランドグループ、リーフブランドグループ、麦茶・紅茶・健康茶ブランドグループ、コーヒー・炭酸・水ブランドグループ、野菜・果汁・乳酸菌・機能性・フードブランドグループ、新カテゴリー創造グループ、マーケティングリサーチ部では、新製品の開発につきまして、市場調査、消費者の動向分析に基づき、基本コンセプトの開発を担当しております。

 農業技術部では、当社グループ製品に適した緑茶・野菜飲料原料を安定的に確保するために、品種素材、栽培方法、加工方法に関する調査研究や技術開発と、国内外の産地形成に関する活動を行っております。

 当連結会計年度における研究開発費の総額は2,391百万円であります。

 セグメントごとの研究開発活動を示すと、次のとおりであります。

 

<リーフ・ドリンク関連事業>

 当社独自製法による製品開発や、茶の特性を活かした製品開発を行っております。荒茶・仕上げ加工の研究により、茶の特性を活かした製品を多数開発しております。また、茶の加工技術等を応用し簡便性製品であるティーバッグ・インスタントティーの製品開発を行っております。

 日本茶飲料や紅茶飲料、中国茶飲料等の製品開発に関しましては、飲料用に適した原料茶の開発と飲料加工技術の研究を継続して行っております。野菜飲料、果実飲料に関しましては、野菜の原料開発と搾汁技術の開発、果実の搾汁技術の開発や飲料製造技術開発を行っております。コーヒー飲料におきましては、原料の選定、処方・製造技術の開発を行っております。乳飲料、炭酸飲料、機能性飲料におきましても、原料開発や飲料製造技術の開発を行っております。また、各ホット飲料の開発では、ホット飲料に適した原料の開発、製造技術開発を行っております。

 食品の開発では、野菜スープ、お汁粉及び麹甘酒等の開発においても、当社の強みを生かした原料調達力をもって製造技術開発に取り組み製品化をしております。

 また、カテキンの抗菌、消臭作用を応用した抗菌防臭加工繊維製品や茶殻を有効利用した茶配合製品の製品化を行っております。

 なお、研究開発費には、中央研究所で行っている緑茶や野菜飲料の健康性に関する研究や、飲料の香味・おいしさに関する研究、環境課題に関する研究などの研究費用が含まれております。

 

<飲食関連事業>

 該当事項はありません。

 

<その他>

 該当事項はありません。