文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社の経営理念は、次のとおりです。
ステークホルダーの皆様へお約束するコンセプトとして、「コアプロミス」を次のとおり定めています。
また、「日清オイリオグループビジョン2030」において「2030年に目指す姿」を次のとおり
定めております。
当社グループは、従来以上に事業活動による価値創造を通じて社会の持続可能性に貢献してまいります。
「ビジョン2030」策定時に、当社グループが2030年に目指す姿に至るために、行動の基本とするValues
(「真摯な姿勢」「つながる」「究める」「切り拓く」「しなやかに強く」)を定めました。
また、理念を実践していくための行動指針である「日清オイリオグループ行動規範」のグループ内での
浸透を図っています。
日清オイリオグループ理念体系は次のとおりです。

近年、当社グループを取り巻く環境は、大きな変化の渦中にあります。地球規模での環境課題の累積や気候変動に伴う植物資源の収量不安定化、国際紛争などの発生によるサプライチェーンの混乱、国内における人手不足の深刻化、物流課題への対応、物価高による消費の冷え込み等、事業を取り巻く環境は厳しさを増しています。
このような中、「ビジョン2030」で示した「2030年に目指す姿」と「戦略の指針」に沿って、当社グループは、社会課題の解決を通じた、多様な共有価値の創造(CSV)を成長のドライバーとすることで、将来にわたって持続的に成長し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。
日清オイリオグループビジョン2030
当社グループは、2021年3月「日清オイリオグループ ビジョン2030」を策定しました。2030年の目指す姿として、“植物のチカラ®”と“油脂をさらに究めた強み”で、食の新たな機能を生み出すプラットフォームの役割を担うとともに、多様な価値を創造し、“生きるエネルギー”をすべての人にお届けする企業グループになることを掲げています。「これまでより“もっとお客さまの近く”でビジネスを展開することを基本方針とし、グローバルトップレベルの油脂ソリューション企業への飛躍に向けた取り組みを進めています。

〇生きるエネルギー
生きるために必要な根源的なエネルギー
おいしい食事で人を元気にするエネルギー
栄養機能で人を健康にするエネルギー
美を演出し活力を与えるエネルギー
油脂と相乗効果を発揮する素材・技術・事業から生み出されるエネルギー
価値創造モデル
当社グループの価値創造の源泉は、無限の可能性をもつ植物資源と磨かれた技術力、そして価値創造力を掛け合わせた“植物のチカラ®”です。“植物のチカラ®”と私たちの“コアコンピタンスである油脂”を究めた強みでお客さまとともに社会課題を解決する油脂ソリューションを実現します。当社グループの事業に求められるニーズや当社グループが取り組むべきという視点で定めた6つの重点領域(マテリアリティ)、すなわち「すべての人の健康」、「おいしさ・美のある豊かな生活」、「地球環境」、「食のバリューチェーンへの貢献」、「信頼でつながるサプライチェーン」、「人材マネジメント」の領域の中で多様な価値を持つ“生きるエネルギー”を生み出し、その価値をすべての人にお届けします。
“生きるエネルギー”は社会課題を解決する一方で、次なる成長のための植物資源の循環や技術の進化を可能とする資本を生み出します。再度投入された資本によって、さらに油脂を究め、社会課題を解決する“生きるエネルギー”を生み出します。このプロセスの循環を通じて、当社グループらしいサステナビリティを実現していきます。
また、「生きるエネルギー」をすべての人にお届けするためには、油脂を素材として提供するだけでなく、当社グループが持つ強みを活かして他の食品メーカーや素材メーカーなどと一緒に価値を共創することが非常に重要であると考えています。生活を支えるあらゆるチャネルでお客さまとの接点を持っている強みにより、社会課題解決のためのプラットフォームの役割を担うことで可能になると考えています。
そして、2030年度に達成を目指す経営指標としてROE10%、ROIC7%を目標値として設定しており、持続的な利益成長と資本効率の改善を通じて、企業価値の向上に取り組んでまいります。

2021年度~2024年度 中期経営計画「Value Up+」の振り返り
「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向け、最初の4年間(2021年度から2024年度まで)を対象とした中期経営計画「Value Up+」をスタートしました。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックによる生活者の行動や意識の変化、異常気象の頻発や地政学リスクの顕在化等に伴う原料調達におけるリスクやコストの増大等、この4年間で当社グループの事業環境は大きく変化しました。そうした状況の中、「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向けて、売上拡大、収益性向上・効率化、基盤強化に取り組みました。
[売上拡大]
低栄養・フレイルや過栄養、パーソナルな健康課題に貢献する商品や、「少量使い」、「酸化抑制」、「オイルで味つけ」といった、豊かな食卓を実現する商品等を多数上市し、油脂の活用シーンの拡大や価値向上につなげました。また、ユーザーベネフィット起点での機能性油脂・油剤の拡大や更なる油脂ソリューションを生み出す共創の場(インキュベーションスクエア)の開設等、BtoB領域での取り組みも加速させました。グローバルでは、マレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn.Bhd.におけるチョコレート用油脂生産設備の能力増強投資、北米での事業拠点や、ファインケミカル事業の東アジア・ASEAN地域での収益拡大に向けた上海テクニカルセンターの新設等、価値提供の更なる拡大に向けて多様な機能を拡充しました。
[収益性向上・効率化]
原材料価格や社会的コストの高騰を受け、新たな価格の均衡点を模索し、適正な販売価格を形成しました。また、西日本の搾油機能の統合を目的に、株式会社J-オイルミルズとの合弁会社である製油パートナーズジャパン株式会社を設立し、稼働を開始しました。
[基盤強化]
国内生産拠点における生産性向上、働き方改革、技術力の獲得と伝承を同時に実現するスマートファクトリー化やサプライチェーン全体でのCO2削減への取り組み等、企業活動全体のサステナビリティ向上を推進しました。
変化の激しい事業環境をしっかりと捉え、対応力を高めるとともに、「Value Up+」で掲げた戦略を着実に実行してきた結果、2022年度および2023年度は過去最高益を達成するなど、「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向け、更なる成長の足掛かりを築きました。
2025年度~2028年度 新中期経営計画「Value UpX」
「ビジョン2030」で目指す姿の実現と、その先の次なる成長に向けて、2025年度~2028年度の4年間を対象期間とした、新中期経営計画「Value UpX」を策定しました。「Value UpX」では、「ビジョン2030」の基本方針として掲げた「“Marketing”דTechnology”דGlobalization”」を結実、深化させ、当社らしい“勝ち筋”(無形資産の循環的創造によるイノベーションの体質化)により、加速的な成長を実現してまいります。その実現に向けては、「将来の利益成長の柱となる成長戦略」、「Value UpXの成長ドライバーとなる基幹戦略」、「グループの安定的・持続的な成長を支える基盤戦略」の3階層からなる戦略を展開してまいります。また、それらの戦略を支える機能として「技術の深化・探索による価値創造」、「サプライチェーンの構築、強靭化」、「成長を加速させるデジタルイノベーション」、「地球環境・資源の保護・人権尊重」の取り組みを強化していきます。そして、これらの戦略を強固でレジリエントな人材基盤の構築によって推進するとともに、ROICマネジメントを通じて、利益率の向上と投下資本の効率化による「資本収益性向上」に取り組み、更なる「成長投資」につながる好循環を生み出していきます。これらの取り組みを通じた、油脂ソリューションの創出力の最大化と、展開領域・エリアの拡大により、「グローバルトップレベルの油脂ソリューション企業」への飛躍を果たし、最終年度の経営目標として、2028年度には、営業利益280億円(利益率5%以上)、ROE8%以上、ROIC6%以上の達成を目指してまいります。
※中期経営計画「Value UpX」の経営目標は、現時点で入手可能な情報や、合理的と判断した一定の前提に基づいて策定した計画・目標であり、潜在的なリスクや不確実性などを含んでいることから、その達成や将来の業績を保証するものではありません。当中期経営計画のみに依拠して投資判断を下すことはお控え下さい。
図1:中期経営計画「Value UpX」の位置付け

図2:「Value UpX」における戦略の全体像

世界経済については、米国の関税政策の導入に対する各国からの報復関税の決定や関税引き下げに向けた交渉等、貿易摩擦の更なる激化が懸念されています。こうした各国の政策運営等に起因する不安定さに加え、長期化するウクライナ情勢や中東情勢などの地政学リスクによる影響も引き続き懸念される状況にあり、世界レベルでの景気後退リスクへの警戒感が高まっています。
国内においては、2024年度の実質GDP(速報値)が4年連続でプラス成長になる等、緩やかな景気回復に向けた動きが見える一方で、生活必需品を中心とした物価上昇が消費マインドの冷え込みにつながっています。米国における通商政策の不透明感もあり、個人消費の減速による今後の景気動向については、下振れリスクが懸念されています。
当社グループへの影響が大きい大豆、菜種、パーム油などの原材料については、世界的に旺盛な油脂需要に加えて、米国の通商政策に起因する市況の変動や、サプライチェーンの混乱などによる影響が懸念されます。また、天候不順による歴史的な収量減少となったオリーブオイルやカカオ豆などの価格高騰や、製造に関わるエネルギーコスト、物流費、包材・資材費の高騰など、当社を取り巻く事業環境は不透明かつ厳しい状況が継続しています。
喫緊の課題としては、不透明な事業環境の中でも、ニーズを捉えた国内市場における機能訴求型の商品やソリューションの強化、グローバル市場でのスペシャリティファット(チョコレート油脂等)や化粧品油剤の販売拡大、また今後の成長に向けた投資や事業拡大・基盤強化などに関わる施策の着実な実行などが考えられます。そして、「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向けて、“植物のチカラ®”を価値創造の原点に、社会との多様な共有価値の創造を通じて持続的な成長を目指してまいります。
各事業の状況については、次のとおりです。
[油脂事業]
(油脂・油糧)
国内の油脂事業においては、主要原料相場、為替相場、物流費、資材費、エネルギーコスト、将来コスト・社会的コスト等を踏まえたうえで適正な販売価格を設定し、人々の暮らしや食品産業を支えるための安定供給が求められています。
ホームユースにおいて、当社はキャノーラ油をはじめとしたクッキングオイルや、オリーブオイル、アマニ油などの健康価値の高い商品などにおいて高い市場シェアを有しています。一方、「味つけオイル」等の油脂の新しいカテゴリーの創出や、油脂の栄養・健康機能、手軽さ・簡便さなどの新たな価値の提案を通じて需要を喚起し、市場の拡大を牽引しています。
業務用および加工用では、レストランなどの外食、コンビニエンスストア・量販店などの中食、製菓・製パンや加工食品業界などに向けた販売を行っており、ユーザーベネフィットの追求を起点とした、機能性やソリューションを提供する商品の販売や提案を実施しています。2024年度には、新たな研究開発拠点として、横浜磯子事業場内にインキュベーションスクエアを開設し、お客さまとの共創を通じた価値創造力の強化に取り組んでいます。
大豆、菜種、パームなどを主原料とする商品については、需給の動向や米国の通商政策に起因する市況の混乱などにより、不透明かつ厳しいコスト環境が継続することが予想されますが、原料調達先の複線化や生産技術・油脂加工技術の向上、生産・物流機能の最適化等により、強靭なサプライチェーンを構築し、持続的・安定的な供給に努めてまいります。また、ミールについては国内の需給などの影響もありますが、油脂・油糧事業における安定的な収益獲得を目的に、市況の動向に応じた適正価格での販売に取り組んでいます。
中長期的には、国内の人口減少による油脂消費量の減少が見込まれることもあり、一層の合理化・効率化が必要と考えております。こうした環境が見込まれる中、2023年10月に株式会社J-オイルミルズとの共同出資により、製油パートナーズジャパン株式会社を設立し、国内搾油業の国際競争力強化と安定供給を長期にわたって確保する共同運営体制の構築を目指した取り組みを進めています。また、国内の生産拠点では、AIやIoTの活用によるスマートファクトリー化を進めており、先駆的な取り組みを進める名古屋工場に続き、今後は順次他拠点にも展開してまいります。そして、脱炭素・循環型社会の実現に向けて、環境・社会課題への解決にも繋がる「次世代型搾油工場」の構築に向けた取り組みを推進していきます。
(加工油脂)
パーム油を活用したチョコレート用油脂を中心とするスペシャリティファットをグローバルに販売するマレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd. (以下、ISF社)と日本国内での製菓・製パン向けにショートニングやマーガリンなどを販売する事業から構成されます。ISF社とそのグループ会社は、パーム油の分別・精製における高度な技術を有しており、欧州などの高い品質基準を求めるお客様を中心に付加価値品の拡販に努めています。
チョコレート用油脂については、異常気象や病害の深刻化等による主要産地・西アフリカでのカカオ不足・収量の不安定化により、カカオ相場の高騰が続くものと予想されており、代替品としての需要拡大が見込まれます。
一方で短期的には価格高騰等によるチョコレート市場の成長鈍化の影響を受ける可能性がありますが、中長期的にはチョコレートおよびチョコレート用油脂の需要は堅調に増加すると考えており、ISF社においてはチョコレート用油脂を中心とするスペシャリティファットの生産能力や販売機能を強化する投資も積極的に実施しております。成長市場において、トレーサブルで高機能なチョコレート用油脂の提供を拡大することで、収益を拡大させていきます。
[加工食品・素材事業]
チョコレート関連事業、ドレッシングなどの調味料、MCTを中心とした機能素材・食品、大豆素材・食品から構成されます。
チョコレートについては、世界的なカカオ不足に伴う価格高騰による原料調達への懸念はありますが、原料調達国の複線化や希少カカオ豆の生産性向上等に取り組むことでサプライチェーンの強靭化を図っています。また、市場動向については、国内・グローバル共に価格高騰に伴う短期的なチョコレート消費量の低下リスクはありますが、中長期的にはチョコレートの需要は堅調に推移するものと考えており、特に、アジアでの中間所得層の増加による、市場の拡大を見込んでいます。
調味料においては、おいしさの追求やアマニ油、MCTオイルなどの健康価値を訴求する油脂への関心の高まりなどを背景に油脂の機能を活かした商品開発および販売を展開しています。
機能素材・食品においては、MCTの脂肪燃焼やフレイル対策における栄養状態の改善など、健康機能の高さを引き続き啓発するとともに、マーケティングを強化し、売上拡大に向けた取り組みを進めています。
大豆素材・食品においてはプラントベースドフードの市場拡大も見据え、大豆たん白の供給にとどまらず、油脂の活用による食感、おいしさなどのソリューションの提供に力を入れています。
[ファインケミカル事業]
化粧品用の原料である油剤を主力商品としており、国内外の多くの化粧品メーカーと取引を行っております。世界の化粧品市場は、中長期的にはアジアを中心に中間所得層の増加が見込まれるエリアでの継続的な拡大が見込まれます。当社は、特に高付加価値なスペシャリティオイルを中核とする市場成長を取り込み、テクニカルサポート機能の発揮により、ソリューション提供を拡大することで、グローバル市場でのプレゼンスを更に高め、市場シェアを獲得するとともに利益率を高めてまいります。
当社グループは、「ビジョン2030」において、事業活動を通じた社会課題の解決により、社会との共有価値を創造し、当社グループの持続的な成長と社会の持続的な発展、すなわちサステナビリティの実現を目指しています。当社グループは、サステナビリティ課題全般に関し、以下のとおり考え方を整理し取り組みを進めています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、取締役会が設置する経営サステナビリティ委員会にて、当社グループの持続的な成長と社会の持続的な発展に貢献するための基本方針の立案や、「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向けた重要なテーマなどを審議しています。経営サステナビリティ委員会において審議するテーマは、当社グループ事業に影響を与える重要なリスク・機会の抽出と社会課題の検討、重点領域やCSV目標、具体的取り組み等の設定、進捗状況の確認および見直し等になります。その内容は適宜、取締役会に報告されるとともに、特に重要な案件については取締役会で審議・決議されます。
当連結会計年度の経営サステナビリティ委員会の主な審議内容は、下表(表1)の通りです。
表1:2024年度経営サステナビリティ委員会開催実績 全5回
経営サステナビリティ委員会は、取締役7名、専務執行役員1名で構成し、議長は代表取締役社長です。詳細は下表(表2)の通りです。
表2:経営サステナビリティ委員会構成メンバー ※当年度中の退任、就任を含む
2025年度からは、委員会・会議体制の見直しに伴う経営サステナビリティ委員会の解消により、業務執行の審議機関である事業戦略会議にて、サステナビリティ課題に関する方針、戦略、施策等について審議を行い、取締役会が承認します。
取締役会はサステナビリティ課題の解決に対して責任を持ち、目標進捗の監督を行います。また、事業戦略会議と連携、必要に応じて外部有識者を通じて十分な知見を獲得し、積極的に課題解決に取り組みます。
当社グループの取締役の中長期インセンティブ報酬として、非財務指標(サステナビリティ貢献度)を業績連動報酬に組み込んだ株式報酬制度を2022年度より採用しています。詳細については「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(4)役員の報酬等」に記載しています。
体制図は、以下図1のとおりです。
図1:体制図

1.事業戦略会議は議長を社長とし、専務執行役員、常務執行役員で構成
2.常勤監査役は、リスクマネジメント委員会、内部統制委員会、事業戦略会議にオブザーバーとして出席
3.上記以外に、常勤監査役とコーポレートスタッフ部門との定期的な情報交換・情報共有化、監査の
実効性確保に向けた会議体を設置
※各委員会、会議の役割・機能および構成の詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要 (a)企業統治の体制の概要」をご参照ください。
「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向け、当社グループが注力すべき6つの重点領域を定めています。そして、重点領域における課題解決を通じた社会との共有価値の創造(CSV)を成長ドライバーと位置付けています。2030年に予想される社会動向から、当社グループのリスクと機会を分析するとともに、価値創造に影響を及ぼす可能性がある社会課題を抽出し、「社会から求められるニーズの大きさ」と「当社グループとしての関与度」の2軸で評価し、重要となる社会課題を特定しました。そのうえで、当社グループの強みなども含めて総合的に判断し、6つの重点領域を特定(重点領域の特定プロセスの模式図は図2を参照ください。)、その領域でのCSV目標を設定し、目指す姿の実現に向けた取り組みを進めています。2024年度には、新中期経営計画策定にあたり、2030年およびそれ以降に重要となる社会課題・環境変化等を再評価し、各重点領域において当社グループが「実現したい社会価値(社会・環境等にもたらす成果)」とその実現に向け、重点領域である「人材マネジメント」の「グループの理念・ビジョンへの共感」、「多様な人材の活躍」の2つの項目で新たなCSV目標を設定しました。各CSV目標と目指す姿、2024年度の取り組み状況は、本項の(指標と目標)をご参照ください。
図2:重点領域の特定プロセス

当社グループでは、「ビジョン2030」や中期経営計画「Value Up+」にて目指す姿の実現に対し、ネガティブな影響を及ぼす不確実性をリスクと定義してリスク管理を行っています。リスク管理に関する主体的な取り組みを通じて社会的責任を果たし、安定した収益の獲得と更なる企業価値の向上を目指しています。
リスク管理体制として、取締役会がリスクマネジメント委員会を設置し、全社的なリスクを総括的に管理しています。事業に対する財務または戦略面でのリスクを特定し、サステナビリティ課題を当社グループの重要リスクと位置づけ、他の重要リスクと統合的に管理しています。
リスク管理体制については、「第4提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 (b)リスク管理体制の整備の状況」をご参照ください。
特定した重要リスクは「3事業等のリスク (2)当社グループにおける重要リスクについて」をご参照ください。
各重点領域のCSV目標と2024年度までの取り組み状況は下表(表3)の通りです。
2025年度以降は、新中期経営計画「Value UpX」との連動性を高めた新たな目標のもと、CSVの実現を推進していきます。
下表(表3)「人材マネジメント」中の(★)は、2024年度に新たに設定したCSV目標です。
表3:各重点領域のCSV目標と2024年度までの取り組み状況

※1 MCTオイル・加工食品、健康オイル、サプリ的オイル、ウェルネス食品等、生活習慣病やフレイル等の対策に貢献できる商品
※2 低栄養、過栄養、パーソナルな健康課題等の解決に貢献できる商品
※3 脂質の健康情報とは、低栄養・過栄養の改善、パーソナルな健康課題の解決に役立ち、かつ油脂の正しい理解や価値向上に
つながる情報発信を指す
※4 化粧品原料(IQL、NOST含)、セッツ自社衛生管理事業

※1 報告書作成時の最新の排出係数を使用して算定

※1 Self-Assessment Questionnaire(自己評価調査票)
※2 RTRS:責任ある大豆に関する円卓会議
※3 翌年度4月1日を基準日とする
(2)人的資本への対応
当社グループは、「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向けて、当社グループの成長を牽引する組織能力を強化するべく、積極的な人的資本投資を計画的に行っております。人材戦略と健康経営における人的資本投資が社員一人ひとりの働きがいを高め、能力を最大限に引き出すことで、多様な人材がエネルギッシュに躍動する組織風土を醸成し、当社グループの持続的成長、価値向上を実現していきます。
当社グループでは、「ビジョン2030」で目指す姿の実現に向け、6つの重点領域の1つに「人材マネジメント」を選定しており、人的資本に関するCSV目標の設定とその具体的な取り組み・進捗について、経営サステナビリティ委員会の審議を経て、取締役会にて報告・審議・決議しています。
また、人材戦略やその具体的な施策、各種制度の新設・改訂など、人的資本に関わる重要事項については取締役会や執行役員会、事業戦略会議等で適宜、報告・審議・決議を行っています。
当社グループは、「ビジョン2030」の実現と、次の100年まで持続可能で魅力ある企業グループであり続けることを見据え、その持続性と成長の原動力として「人材マネジメント」を経営戦略の中核に位置付け、「強固でレジリエントな人材基盤の構築」および「選び選ばれる、魅力ある会社・組織風土づくり」の2つの大方針のもと、強力に推進しています。
また、当社グループでは、ビジョンや事業戦略と連動した人材のあるべき姿を「グローバルな舞台で『おいしさ・健康・美』の新たな価値を創造し続けるエネルギッシュな精鋭集団」と定義し、当社の人材領域における重要課題(人材マテリアリティ)として、4つの人材マテリアリティとそのベースとなる「健康経営の推進」を特定しています。そして、各マテリアリティに対し、2030年のゴールとそれらに紐づくCSV目標を定め、積極的な投資やグループ一体となった取り組みを進め、ビジョン実現への確度を高めています。
図3:人材マテリアリティ

① 人材育成方針
当社グループは、一人ひとりの多様な視点や価値観を尊重することが持続的な成長と企業価値向上にとって重要であると考えています。経験や知識・スキル、価値観といった多様な個性を持つ人材の個のチカラを引き出し、性別や国籍などの属性に関わらず、全社員が活躍と成長を実感できる状態を目指し、チャレンジと成長機会の提供に取り組んでいます。人材育成に関する人材マテリアリティの取り組みは以下のとおりです。
人材マテリアリティ グループの理念・ビジョンへの共感
グループ一丸となって「ビジョン2030」で目指す姿を実現していくためには、当社グループの全社員が理念やビジョン、企業価値に共感し、誇りを持って主体的に行動することが最も重要です。そのため、経営トップからのメッセージの発信、階層別教育の場や統合報告書・グループ報などの媒体を通じて、社員が理念やビジョンへの理解を深められるような取り組みを行っています。今後はさらに、国・地域・事業体を越えてグループ内で共通認識化するべく、情報発信の強化や教育・ワークショップの実施、経営層と社員の対話の場づくりといった取り組みを進めていきます。
2024年度は、当社正社員・シニア社員および連結子会社の管理職を対象とした「グループ意識調査」を実施し、グループの経営理念・ビジョンへの理解と共感度、仕事を通じた成長意欲と成長実感、働きがいに関する価値観と実感について調査しました。本調査の結果から読み取れる課題や仮説を人事施策へと反映することで、グループ全体で価値創造やイノベーションの創出につなげていきます。
人材マテリアリティ 強固な人材力の構築
事業環境の変化が激しく、戦略テーマが高度化し課題解決の難易度が増すなか、高度な専門性を有した人材や、堅固で揺るぎない現場力を支える人材など、一人ひとりの力を今以上に高め、より強固なものにしていく必要があります。当社は「教育最優先の原則」という人材育成を最優先とする方針をもち、長年にわたり経営の重要テーマとして位置づけて体質化してきました。そのよい文化をグループ全体にも波及させ、「ビジョン2030」の実現に向けた積極的な人材投資を実施しています。教育研修の充実化をはじめ、経験者採用による人材の拡充にも注力し、高い専門性と豊富な経験を持つ人材の確保・育成を進めております。2023年度よりスタートした「グローバル人材登録制度」では、公募による登録者に対し、専用教育プログラムの提供や国内外のグローバル業務への優先的な配置を実施しています。
2024年度のグローバル人材登録者は41名であり、そのうち新たにグローバル業務に配置された社員は5名でした。また、グローバルな視野・視点の獲得と異文化理解を目的とした海外視察研修を公募にて実施し、約1週間の研修に8名が参加しました。
人材マテリアリティ 多様な人材の活躍
全社員が活躍と成長を実感できる状態を目指し、チャレンジや成長機会の提供と、「働きやすさ」の観点から社内環境の整備を進めています。社員が自らの個性を発揮して活躍するには、管理職にも高度なマネジメント力が求められることから、部下の個性や主体性を引き出すマネジメントへの意識の転換や、キャリア開発支援のスキル向上を目的とした管理職研修を実施しています。
2024年度は、「キャリアデザイン制度」を刷新し、社員一人ひとりの能力・個性の把握や、上司によるキャリア面談を充実化し、社員の主体的な行動と上司を中心とした会社の指導・サポートにより、社員が多様な個性を最大限発揮できる制度へと改定を行いました。また、制度改定と合わせて、制度の運用強化と部下のキャリア開発支援のスキル向上を目的とした研修を、課長職全員(150名)を対象に実施しました。
人材マテリアリティ イノベーションを生み出す組織風土への進化
当社グループでは、仕事を通じた自己成長と社会や組織への貢献実感が働きがいにつながり、働きがいこそが主体性の原動力となると考えています。社員と会社が互いに高めあう環境を築き、社員が社内外で積極的に創発的なコミュニケーションや共創に取り組み主体的に挑戦する風土を醸成し、イノベーション創出の基盤としていきます。
当社単体では2021年度より社員のエンゲージメント状態を定期的に調査し、全社的な人材戦略と職場のマネジメントに活かしています。調査結果は役員や管理職に共有され、各部門や課単位で自組織の改善ポイントを特定したうえで、アクションプランを策定し具体的な改善行動につなげています。また、生産性向上を目的として、部署を横断した「働き方改革推進会議」を実施しており、人事部門だけでなく現場の課題感を踏まえた取り組みを推進しています。
2024年度、当社単体の「働きがいを感じる社員の割合」は68.7%であり、その割合は2021年度~2024年度の「Value Up+」の4年間で4.1ポイント増加しました。
当社グループは、健全かつ社員の持てる能力を存分に発揮できる職場環境を提供することが会社の責務であると考えます。育児、介護、治療と仕事の両立支援、柔軟かつ生産性高い働き方への変革、長時間労働の削減、社内コミュニケーションの活性化など、社員が安心して働くことのできる働きやすい職場環境づくりに取り組んでいきます。社内環境整備に関する人材マテリアリティの取り組みは以下のとおりです。
人材マテリアリティ 健康経営の推進
社員の健康への取り組みは、企業の発展を支える土台づくりであると捉えており、一人ひとりが活力高く働き、健康的で豊かな人生を送れるよう、社員の健康維持・増進、生産性向上に向けた支援を積極的に展開しています。統括組織である健康経営推進部を中心に、経営、各事業所の健康推進担当や健康保険組合、労働組合が連携し、「生活習慣病予防」「禁煙促進」「こころの健康」を重点テーマに施策を展開しています。
2024年度は、健康維持に役立つさまざまなテーマについて学ぶことができるオンライン健康セミナーを実施し、がん予防対策・適正飲酒・女性の健康・メンタルヘルスなどをテーマに取り上げました。また、体組成や血管年齢、骨密度などを測定できる健康測定イベントや体力測定会などの体験型イベントを行い、社員の健康への意識向上を促しました。また、当社単体としては2017年に初めて「健康経営優良法人(大規模法人部門)~ホワイト500~」の認定を受け、2025年には7回目の認定を受けています。グループ会社としては、大東カカオ株式会社で「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」、セッツ株式会社で「健康経営優良法人2025(中小規模法人)ネクストブライト1000」、株式会社NSPで「横浜健康経営認証2024」(認証期間:2024年4月1日から2年間)に認定されています。
取締役会が設置する委員会であるリスクマネジメント委員会が、事業に対する財務または戦略面での重要なリスクを選定しており、人的資本に伴うリスクの管理も他の重要リスクと統合的にマネジメントしています。
詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ課題全般(リスク管理)」もご参照ください。
(指標と目標)
当社グループの人的資本に関する目標は、「CSV目標」の中に含まれ、重点領域の取り組み状況を示すそのものとして管理されています。詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ課題全般(指標及び目標)」の「人材マネジメント」をご参照ください。
この他関連するものとして、健康指標の項目についても目標を設定し、実績値を集計しています。健康指標のさらに詳細な数値目標は、当社ホームページの「健康経営への取り組み」をご参照ください。
https://www.nisshin-oillio.com/company/sustainability/health_management/
当社グループは、事業活動を通じた社会課題の解決により、当社グループの持続的な成長と社会の持続的な発展(サステナビリティ)の実現を目指しています。当社グループは植物資源を事業活動のベースとしており、植物の生育に大きな影響を与える気候変動への対応は経営の重要テーマです。そのため、2021年3月にTCFD提言に賛同を表明し、2022年度よりTCFD提言に則った開示(気候変動に伴うリスク・機会の分析、財務影響などのシミュレーション等)を実施しています。
今後、分析の深化を進めるとともに、気候変動対応のガバナンスと事業戦略の強化を目指していきます。
気候変動への対応は経営の重要課題であり、経営サステナビリティ委員会にて審議し、特に重要な案件については取締役会で審議、決議しています。詳細は「2サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ課題全般(ガバナンス)」をご参照ください。気候変動に関する審議内容としては、2024年度第2回の経営サステナビリティ委員会において、脱炭素化を推進する戦略ロードマップの更新に関して審議しています。
当社グループでは、気候関連のリスク・機会の特定・評価および対応策について継続的に検討しており、今後も中長期的な視点から戦略のレジリエンスを高めていく必要があると考えています。2023年度に実施したシナリオ分析については、「①気候変動シナリオ分析」をご参照ください。
また、当社グループの事業活動へ大きく影響するリスク、機会についての対応策を検討しました。
・原材料の生産~調達プロセスでは、現地農家とのエンゲージメントを強化するなかで、認証油等の持続可能な原料生産、トレーサビリティ拡充を推進します。また購買活動としてサプライヤーの複線化によるリスク分散、気候変動に適応した植物資源の採用等によりサステナビリティ向上に努めます。
・研究開発においては、顧客・消費者ニーズに柔軟に対応するためのインキュベーションスクエアの設置、既存原料に捉われない新たな油糧資源・機能素材の獲得、健康増進商品の開発、植物性たん白を原料とする食品、脱化石原料に向けたプラスチック容器代替品の開発等を進めていきます。
・製造プロセスにおいては、エネルギー・水等の資源の効率的利用の促進、変化する顧客・消費者ニーズに対応した商品生産の強化、気候変動により激甚化・頻発化する風水害等への対策の強化等を進めます。
・物流プロセスにおいては、炭素税などの法規制対応やカーボンニュートラル実現に向けて、企業間ネットワークを活用した共同配送網拡大、エネルギー効率の高い鉄道輸送などへのモーダルシフト推進による温室効果ガス排出量削減に取り組みます。
・販売プロセスにおいては、製品・サービスの環境負荷の可視化や持続可能性に配慮した認証原料の普及・啓発により当社グループのブランドイメージ向上と環境価値を活用した積極的なマーケティング活動を推進します。
① 気候変動シナリオ分析
「気候変動の進行が抑制された世界」(1.5℃/2℃シナリオ:産業革命以降の世界平均気温上昇幅が1.5℃/2℃程度に抑えられた世界)と「気候変動が進行する世界」(4℃シナリオ:産業革命以降の世界平均気温上昇幅が4℃程度上昇する世界)について気候変動関連リスクと機会の分析を実施しました。
表4:気候関連リスク及び機会の一覧

[表中の用語の定義/考え方]
前述で特定したリスクのうち(★)を付記したリスクに対して、「(a)炭素税・ETS等によるコスト増」「(b)農業における脱炭素による原料大豆価格上昇」「(c)気象災害による生産停止に伴う利益減」の財務影響を分析しました。具体的な検討にあたっては、IPCC※1、IEA※2、NGFS※3等の各国際機関が公表するシナリオの定性/定量情報を参照しました。
※1 IPCC:気候変動に関する政府間パネル(各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えること
を目的とした政府間組織)
※2 IEA :国際エネルギー機関(第一次石油ショックを機に設立されたエネルギー安全保障等のエネルギー
政策全般をカバーする国際機関)
※3 NGFS:気候変動リスクに係る金融当局ネットワーク(気候変動リスクへの金融監督上の対応を検討する
ための中央銀行および金融監督当局の国際的なネットワーク)
(a) 炭素税・排出量取引制度(ETS)などによるコスト増
当社およびIntercontinental Specialty Fats Sdn.Bhd.(マレーシア)を対象に2℃および1.5℃シナリオ※1における炭素価格を用いて、2030年と2050年の炭素価格の年間負担額をそれぞれ算出しました。CO2排出量削減目標を達成した場合、2030年の2社負担額は2.0℃シナリオで20億円/年、1.5℃シナリオで26.1億円/年となり、いずれのシナリオにおいても現状維持の場合と比較して半分程度に抑えられるという示唆が得られました。
(b) 農業における脱炭素による原料大豆価格上昇
大豆の主要生産国である米国とブラジルを対象に、NGFS※2による1.5℃相当シナリオを用いて2030年と2050年の大豆価格の変化による年間の調達コスト増加額を算出しました。その結果、米国産、ブラジル産大豆のいずれもコスト上昇は、財務影響算定を行ったリスク項目の中で最も大きな影響(2030年に合計165億円/年、2050年に合計259億円/年)となりました。
(c) 気象災害による生産停止に伴う利益減
国内事業を対象に、IPCC※3の4℃/2℃シナリオを用いて、洪水により操業が停止した場合の2050年における年間営業利益の減少額を算出しました。その結果、気象災害の影響が大きいとされる4℃シナリオでも影響額は1.76億円/年となり、財務影響算定を行ったリスク項目の中で、最も影響が小さいことが分かりました。
※1 2℃シナリオはIEAのWorld Energy Outlook 2022におけるAPSシナリオを、1.5℃シナリオはNZEシナリオを使用
※2 NGFS(Network for Greening the Financial System):気候変動リスクにかかる金融当局ネットワーク
※3 IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change):気候変動に関する政府間パネル
このように特定したリスク、機会を踏まえれば、「気候変動の進行が抑制された世界」「気候変動が進行する世界」のいずれに進んだとしても影響は大きく、中長期的観点から当社グループ戦略のレジリエンスをより高めていく必要があると考えています。当社グループの事業活動へ大きく影響するリスク、機会に対して、サプライチェーンの上流から下流までの各プロセスにおいて、主に以下の対応策(次頁の表5:気候関連リスク、機会への対応策を参照ください)を採ります。これらの対応策は、当社グループ戦略のレジリエンスを高めることに貢献すると考えています。
表5:気候関連リスク・機会への対応策

※具体的な内容は実施中のものと検討中のものを含む
② 脱炭素化ロードマップ
2024年度には、脱炭素化移行計画の「脱炭素化を推進する戦略ロードマップ」(図4)を更新しました。省エネルギーの更なる深化では、未利用エネルギーの利活用とプロセス変革に注力し、非化石エネルギーの割合を次世代太陽光発電やバイオマス利用により向上させます。また、2024年度は事業成長に伴うCO2排出量増加を抑えるため、市場からの再エネ電力と再エネガスの調達を拡大しました。また、地域と連携し、水素やe-メタンなどへのエネルギー転換の準備を進め、2050年までのカーボンニュートラル実現を目指しています。
図4:脱炭素化を推進する戦略ロードマップ

取締役会が設置するリスクマネジメント委員会が、事業に対する財務または戦略面での重要なリスクを選定しており、気候変動に伴う物理的/移行リスクの管理も行っています。気候変動関連リスクは当社グループの重要リスクと位置づけられており、他の重要リスクと統合的にマネジメントしています。
リスク管理の詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ課題全般(リスク管理)」をご参照ください。
当社グループの気候に関する既存の目標として、CSV目標および環境目標2030があります。気候変動対策として温室効果ガス排出量削減を掲げ、「スコープ1および2の温室効果ガス排出量(総量ベース)を2030年度までに50%削減すること(2016年度比)」、「スコープ3は、購入した製品・サービスおよび輸配送(上流)を中心に排出量を2030年度までに25%削減すること(2020年度比)」をCSV目標として設定しています。
2024年度の実績は、スコープ1および2では、基準年である2016年度に対して20.7%減(速報値)となりました。今後もカーボンニュートラルを見据えた脱炭素化ロードマップに基づき、未利用エネルギーの利活用や次世代太陽光発電の導入、水素等の非化石エネルギーへの転換によるスコープ1、2削減を推進します。また、スコープ3についてもサプライチェーンへの働きかけ等による削減を推進します。脱炭素化ロードマップについては「②脱炭素化ロードマップ 図4:脱炭素化を推進する戦略ロードマップ」をご参照ください。CSV目標の進捗状況については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ課題全般(指標と目標)」もご参照ください。
表6: CSV目標のうち気候変動に関する目標
(4)自然資本への対応
当社グループは植物資源を事業活動のベースとしています。主要原料となる大豆、菜種、パーム油、カカオなどの“植物のチカラ®”を活用して、食品、飼肥料、化成品、化粧品原料などの製造・販売を行っています。大豆(米国、ブラジル)、菜種(カナダ、オーストラリア)、パーム油(マレーシア、インドネシア)、カカオ(西アフリカ、南米)などは世界各地から輸入しており、特定の自然資本および産地に依存しています。このように、植物資源を事業のベースとする当社グループにとって、地球環境や資源の保護は、事業の持続性そのものです。その認識のもと、2023年度に生物多様性方針と水方針を制定しました。
日清オイリオグループ生物多様性方針

(2023.12.22制定)
日清オイリオグループ水方針

(2023.12.22制定)
また、2024年9月にTNFD提言※1に基づく情報を開示し、2025年3月にTNFD Adopter※2に登録しました。今後も、事業活動を通じた自然資本の保全・回復に真摯に取り組むことで、社会との共有価値を創造し、当社グループの持続的な成長と社会の持続的な発展の実現に努めていきます。
※1:TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures/自然関連財務情報開示タスクフォース):民間企業や金融機関が、自然に関するリスクや機会を適切に評価し、開示するための枠組みを構築する国際的な組織
※2:TNFD Adopter:2024年または2025年度の会計年度にTNFD提言に基づく情報開示の意向を示した企業・団体
自然資本への対応は重要な経営課題であり、経営サステナビリティ委員会にて審議し、特に重要な案件については取締役会が審議・決議しています。詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ課題全般(ガバナンス)」をご参照ください。
TNFD提言に沿った内容については、2024年9月の取締役会にて決議しました。
自然資本の利用は、生物多様性への影響だけでなく人権侵害のリスクとも関わっており、当社グループのガバナンスにおいても、自然資本とつながりのあるステークホルダーへの配慮が必要とされています。当社グループは、サプライチェーンにおいて、事業が直接的または間接的に人権に影響を及ぼす可能性があることを認識しています。また、事業に関わる全ての人々の人権を尊重するために、「日清オイリオグループ人権方針」を定め、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿い、当社グループ全体での人権尊重の取り組みを推進しています。当社グループは、「国際人権章典」および「OECD多国籍企業行動指針」ならびに「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」に規定された人権を尊重します。また、国際的に認められた人権と各国・地域法に矛盾がある場合は、国際的な人権の原則を最大限尊重するための方法を追求していきます。
当社グループは、2023年度より、TNFD開示で求められる自然関連課題(依存、影響、リスク、機会)の特定と評価に着手しました。具体的な手法として、TNFDが提唱するLEAPアプローチ(※)を参照し、当社グループ事業のバリューチェーン上における自然に対する重要な依存関係と影響の特定や、リスクと機会の抽出、関連する既存施策の整理を実施しています。
今後もLEAPアプローチを通じて優先地域の特定やリスクと機会の重要性の評価等を実施し、対応策の具体化や指標の設定等を検討していく予定です。
※LEAPアプローチ:自然との接点、自然との依存と影響、および自然に関するリスクと機会などを評価するための統合的なアプローチとして、TNFDにより開発されたプロセスです。
① LEAP分析
図5: LEAPアプローチと実施状況

当社グループの油脂事業および加工食品・素材事業におけるバリューチェーン上流、直接操業および下流について、自然に対する依存と影響を特定しました。当社グループのバリューチェーン上流では、原材料となる作物の生産および、パーム油等一部原材料の搾油などの加工プロセスがあり、主要原材料である大豆、菜種、パーム油、カカオ、オリーブ油、ごまの生産加工を分析対象としました。直接操業では、調達した原材料の製造加工を行っています。また下流では、顧客企業による当社加工品の最終製品への製造加工、流通および最終消費者への小売りが行われています。バリューチェーンに関連がある国、地域を自然との接点として特定し、それらの地域について依存と影響の特定を行いました。そして、特に依存・影響度合いの大きい項目に対しリスクと機会を抽出しています。
バリューチェーン上流では、食用油脂の原材料となる大豆、菜種、オリーブ、ごま、パームや、カカオの生産工程において、昆虫などによる受粉媒介、干ばつの抑制、肥沃な土壌の維持といった、作物の生産を支える生態系サービスに大きく依存していること、さらには洪水・暴風雨などの自然災害の被害を緩和する機能や、農地における土壌侵食を抑制する機能も、自然資本から受ける重要なサービスであることが確認できました。
原材料別では、カカオの生産は、受粉媒介への依存度がより高く自然状態の変化の影響を受けやすいことが特定されました。
また、直接操業の製造加工工程、およびバリューチェーン下流の当社販売先企業の製造加工工程において、水資源に依存していることが特定されました。
バリューチェーン上流の原材料生産工程では、陸上生態系の利用や水質・土壌汚染が影響要因として特定されました。ENCORE※での説明や文献などからも、原材料生産地開発のための森林伐採、栽培における肥料や農薬の過剰使用は、陸上生態系の利用、水質・土壌汚染として自然にマイナスの影響を与えると認識しています。
原材料別では、パーム油は、原産地での搾油工程に伴うGHG排出量や廃棄物、水の利用が自然に影響を与えていることが特定されました。
直接操業では、製造加工工程において、製造拠点からのGHG排出や廃棄物の発生や水の排出を通じて自然に影響を及ぼす可能性が高い結果となりました。また、バリューチェーン下流では、当社販売先企業の製造加工工程、流通および販売工程において、GHG排出、廃棄物の発生や水の排水を通じて自然に影響を及ぼす可能性が高いことを特定しました。
また、食品製造業界全体として、製造加工工程や製品から発生する食品廃棄物、容器包装に使用するプラスチックの使用と廃棄は重要な課題となっています。特にプラスチックは、廃棄・焼却時のGHG排出や、海洋に流出したプラスチック(マイクロプラスチック)が海洋の生態系に与える影響も懸念されています。当社グループもこれらを重要な課題と認識しています。
※ ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure)は、自然資本分野の国際金融業界団体(NCFA)主導で、世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)などが共同で開発したツールであり、TNFD v1.0の中でも、LEAPアプローチのLocate、Evaluateで活用できるツールとして紹介されています。当社グループの依存と影響の特定においても、ENCOREを活用しました。
当社グループの自然に対する依存関係と影響により発生するリスク機会、リスク機会に対応した施策は下表(表7-a、b)の通りです。
表7-a:自然に対する依存から発生するリスク、機会および既存の対応施策

表7-b:自然に対する影響から発生するリスク、機会および既存の対応施策

自然資本(動植物、大気、土壌、水)への依存と影響、およびそれにより発生するリスクと機会については、当社グループの環境目標のテーマとも深く関連することから、すでに指標の開示や目標の設定、および目標達成に向けた対応を順次進めています。今後はさらに当アプローチで明らかになった課題を取り入れ、対応を充実させていきます。加えて、優先地域の特定やリスクと機会の重要性の評価等を実施することで、現在、未着手の分野も含め、必要な対応策を検討、拡大していく予定です。
2024年度は、自然への依存と影響が高い上流の原材料生産地域において、パーム油、大豆およびカカオの農作物ごとの持続可能な調達に向けたアクションプランを策定し、具体的な取り組みを推進しています。
パーム油アクションプラン
・トレーサブルで透明性のあるサプライチェーンの構築
・小規模農家の生産性・収益性向上支援による森林保護と人権尊重
・ステークホルダーとの連携による人権尊重の取り組みの推進
・パーム油サプライチェーンにおけるCO2排出量(Scope3)の削減
大豆アクションプラン
・トレーサビリティの向上と、サプライチェーンにおけるCO2排出量の削減
・持続可能な調達の実践(認証制度の活用やエンゲージメントの拡大など)
カカオアクションプラン
・トレーサビリティが確保できる調達ルートの確立
・認証カカオ製品の拡大
・風味のサステナビリティ活動の実践
その他
・自然保全活動の推進/植林による自然保全活動(例:マレーシアでのマングローブ植林(2022~2024年に8,000本(約4ha)を実施)
人権尊重の取り組みとして、人権デュー・ディリジェンスの仕組みの構築とトレーサビリティの強化を進めており、サプライチェーン全体で取り組むため、「日清オイリオグループ調達基本方針」、「日清オイリオグループサプライヤーガイドライン」を制定しています。
パーム油、大豆、カカオの生産地では、自然環境・生態系の保護や、先住民・農園で働く人たちの人権尊重が社会課題となっています。原材料産地の環境と人権の保護は、自然資本関連のリスク・機会への対応において、切り離せないものと考えています。
こうした環境・社会課題は原材料ごとに異なることから、調達基本方針のもと、「パーム油調達方針」・「大豆調達方針」・「カカオ調達方針」を制定しました。課題解決のためのアクションプランには、人権尊重に関する事項を盛り込み、人権デュー・ディリジェンスの実践と、苦情処理メカニズムの運用も進めています。また、人権尊重の取り組み内容を適宜Webサイトで公開しています。
図6: 人権尊重の取り組みの全体像

取締役会が設置するリスクマネジメント委員会が、事業に対する財務または戦略面での重要なリスクを選定しており、自然資本に伴う物理的/移行リスクの管理を行っています。自然資本関連リスクは当社グループの重要リスクと位置づけられており、他の重要リスクと統合的にマネジメントしています。
リスク管理の詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ課題全般(リスク管理)」もご参照ください。
当社グループの自然資本に関する目標は、CSV目標の中に含まれ、重点領域の取り組み状況を示すものとして管理されています。CSV目標については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)サステナビリティ課題全般(指標と目標)」もご参照ください。
また、CSV目標の実現に向けて、環境目標2030を定め、パーム油については、パーム油の農園までのトレーサビリティ体制を構築する(2030年に100%)、持続可能なパーム油調達推進に向けて、パーム油認証油割合を高める(2030年に100%)、RSPO認証油のSG比率の維持(50%)といった定量的な目標を掲げ取り組んでいます。
特に自然資本に関連するCSV目標と進捗は下表(表8)の通りです。
表8: CSV目標のうち自然資本に関する目標
※自然資本のうち、気候に関連する目標は(2)気候変動への対応(指標と目標)をご参照ください。
当社グループでは、「ビジョン2030」や中期経営計画「Value UpX」で目指す姿の実現や当社が取り組む事業に対してネガティブな影響を及ぼす不確実性を「リスク」と定義し、リスクコントロールを行っています。リスクマネジメントに対する主体的な取り組みを通じて、企業として安定した収益を上げるだけでなく、社会的責任を果たすことを通じて更なる企業価値の向上と発展を目指すことを目的としています。リスクマネジメント体制については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ③ 企業統治に関するその他の事項 (b) リスク管理体制の整備の状況」をご参照ください。
以下は、リスクマップの中から、リスクマネジメント委員会で選定した当社グループの重要リスクを示しています。

最近の事業を取り巻く環境変化を踏まえて、リスクマネジメント体制の強化に取り組んでいます。
(取り組みの主なポイント)
① 重要リスクへの対応に当たっては“業務部門”と“統括部門”が相互連携しながら取り組む体制に変更しました。
業務部門:自部門の業務遂行に関連して、直接的に生じるリスクに対処する部門
統括部門:組織全体または関連する複数部門において生じる専門領域のリスクを管理する部門
② リスクの網羅的な把握・整理のため、リスクの4類型(縦軸)、バリューチェーン(横軸)の二軸によるマトリクス図を新たに作成しました。これをグループ全体に展開し、自部門におけるリスクの俯瞰的なチェックを改めて実施しております。
なお、法令遵守に関するリスクについては、重要リスクに準じるリスク項目として整理し、研修等の施策を通じてグループ全体の意識向上に取り組んでいます。本リスク項目は2025年度の当社グループの重要リスクに追加する予定です。

当社グループの重要リスクの内容と対応については次のとおりです。
なお、文中においては将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものです。
2025年度のリスクマネジメントにおいては、引き続き、「日清オイリオグループビジョン2030」で示した6つの
重点領域における機会とリスクのガバナンス強化に努めてまいります。
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュフロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、金融緩和政策への転換を受けたインフレ圧力の緩和により各国の個人消費が持ち直す等、底堅い成長を維持しました。
日本経済は、物価上昇の影響から食料品を中心とした消費に一部弱い動きが見られたものの、所得改善等による個人消費の持ち直しや円安を背景としたインバウンド需要の高まりもあり、緩やかに回復しました。
このような環境下、当社グループは「もっとお客さまの近くで、多様な価値を創造し続ける企業グループに変革する」という基本方針のもと、中期経営計画「Value Up+」(2021年度-2024年度)に取り組んでまいりました。
当社グループは、「ビジョン2030」において6つの重点領域で設定したCSV目標を成長ドライバーとして成長路線を加速させるとともに、“植物のチカラ®”を価値創造の原点に、社会との多様な共有価値の創造を通じた持続的な成長を目指しています。また、株主資本コストを上回るROE水準の達成を重要な経営目標とし、2022年度からはROICを経営目標に加えて収益性と資産効率性の向上に取り組んでおります。2025年度より開始した新中期経営計画「Value UpX」(2025年度-2028年度)では、ROE8.0%以上、ROIC6.0%以上を2028年度の経営目標とし、取り組みを進めてまいります。
当連結会計年度の業績については、以下のとおりとなりました。
(注)ROIC(投下資本利益率)は、以下の算定式に基づき算出しております(いずれの数値も連結ベース)。
ROIC =(当連結会計年度の税引後営業利益+持分法投資損益)÷
[{(当事業年度の投下資本)+(前事業年度の投下資本)}÷2]
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ51億40百万円減少し、3,882億42百万円となりました。主な要因は、棚卸資産が56億67百万円、有形固定資産が49億52百万円増加した一方で、現金及び預金が32億86百万円、売上債権が69億43百万円、投資有価証券が60億86百万円減少したことであります。
負債は、前連結会計年度末に比べ106億64百万円減少し、1,901億56百万円となりました。主な要因は、仕入債務が11億75百万円、短期借入金が98億24百万円増加した一方で、1年内償還予定の社債が100億円、未払金が18億17百万円、未払費用が9億17百万円、未払法人税等が30億42百万円、長期借入金が60億8百万円減少したことであります。
純資産は、前連結会計年度末に比べ55億23百万円増加し、1,980億86百万円となりました。主な要因は、利益剰余金が67億52百万円増加した一方で、その他の包括利益累計額が22億52百万円減少したことであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ20億63百万円減少し、144億20百万円となりました。
〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕
営業活動によるキャッシュ・フローは、211億66百万円の収入となりました。主な内訳は、税金等調整前当期純利益198億55百万円、減価償却費104億63百万円、売上債権の減少75億20百万円、仕入債務の増加10億90百万円によるキャッシュの増加および棚卸資産の増加50億1百万円、法人税等の支払79億21百万円によるキャッシュの減少であります。
〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕
投資活動によるキャッシュ・フローは、95億90百万円の支出となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出154億74百万円によるキャッシュの減少であります。
〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕
財務活動によるキャッシュ・フローは、138億85百万円の支出となりました。主な内訳は、短期借入金の純増43億90百万円によるキャッシュの増加および長期借入金の返済による支出9億99百万円、社債の償還による支出100億円、配当金の支払64億88百万円によるキャッシュの減少であります。
① 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、原価計算に利用した価格等により算定しております。
② 受注実績
当社グループでは、主として計画に基づく生産を行っているため、記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 経営成績および財政状態の分析
当連結会計年度における経営成績および財政状態の分析につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.経営成績等の状況の概要 (1)財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。
② セグメントごとの財政状態及び経営成績の分析
セグメント別の資産では、前連結会計年度末に比べ油脂事業において35億94百万円減少、加工食品・素材事業において19億12百万円増加、ファインケミカル事業において5億81百万円減少しました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
・売上高
・〔参考〕売上高(単体)
・営業利益
セグメント別の概況
≪油脂事業≫
油脂・油糧において、インバウンド需要の増加に加え、国内人流の回復による外食需要や観光需要の持ち直しにより、業務用および加工用の販売数量は増加しました。販売価格面においては、原料価格が前期比で低下するも、物流費上昇や円安ドル高等の厳しいコスト環境に加え、油脂コストが上昇基調となる中、価格改定を進めました。しかしながら、製品市況や生活防衛意識の高まりを受け価格改定は当初想定より遅れることになり、また、オリーブオイルの原価上昇の影響もあり減収減益となりました。加工油脂では増収増益となったものの、油脂事業セグメント全体では、増収減益となりました。
[原料の調達環境]
原料の調達面では、ドル円相場が前期に対して円安ドル高で推移したものの、大豆相場・菜種相場が前期と比較して下落したことから、大豆価格、菜種価格ともに前期を下回りました。
<主要原料相場>
大豆相場は、前期がブラジル産大豆生産量の下方修正を巡って高値で推移したのに対し、当期はアルゼンチン産大豆の減産懸念があったものの、ブラジル産大豆生産量が史上最高を更新する見通しとなったことで上値の重い取引が続きました。
2024年は年明け以降、ブラジル産大豆減産懸念が後退したことで徐々に下落しました。ブラジル南部での大規模な洪水が報じられると一時12米ドル台まで上昇する局面もありましたが、米国の豊作期待が上値を抑えることで10米ドルを挟んで推移しました。10月以降は米国生産量の下方修正が相場を支えましたが、ブラジル産大豆の順調な生育を受けて上値も重く10米ドル前後での取引となりました。
菜種相場は、前期同様に大豆等他市場との連動性を高めながらも世界菜種生産量が前期対比で減産となったことで底堅い取引が続きました。
2024年はカナダ産菜種の生育が概ね順調に推移した一方で、欧州産、豪州産が減産見込みとなり、600カナダドル台での取引が続きました。大豆定期の下落や中国による反ダンピング調査、米国・中国による追加関税の報道を受けると600カナダドルを割る水準まで下落する局面もありましたが、カナダ産菜種の生産量見通しが下方修正され、世界需給のひっ迫感が意識されたことで調整は続かず、600カナダドルを回復して推移しました。
<為替相場>
ドル円相場は米国の雇用、経済が堅調に推移したことやトランプ政権による景気対策への期待感から日米金利差縮小は限定的となり、前期比では円安ドル高となりました。
2024年は7月まではほぼ一本調子で161円台まで円安ドル高が進行しました。政府、日銀による為替介入等から9月には一時140円割れとなる局面もありましたが、長くは続かず10月には150円台を回復、トランプ大統領の当選以降は米国株高、米ドル買いの動きが強まり158円台まで円安ドル高が進みました。年が明けると日銀による早期利上げ期待の高まりと共に徐々にトランプ政権による政策が米国景気後退懸念を高めたことで円高ドル安が進行しました。
[油脂の販売]
業務用については、ニーズ協働発掘型営業により最終製品の品質向上、コスト抑制、生産性向上など、課題解決の質の向上に継続的に取り組みました。商品面では、フライ油の酸価上昇や着色などを抑える「機能フライ油」や、特に米の品質課題が顕著となる中、要望が高まっている炊飯油をはじめ、麺さばき油など付加価値型商品群の積極的な提案による拡販に努めました。販売面では、消費者の低価格志向、節約志向が強まる中、原材料価格上昇などによるメニュー単価上昇により一部で客数が前期割れのところもあった一方で、活発な国内移動とインバウンド需要増加により外食需要が堅調に推移したことから、販売数量は増加しました。売上高については、物流費やエネルギーコスト等が上昇する中、価格改定による適正な販売価格の形成に取り組みましたが、汎用品を中心に販売単価が前期比で低下したことから減収となりました。
加工用については、物価高による消費マインド低下の影響が見られた一方、インバウンド需要などにより一部業界にて生産が回復傾向となった結果、販売数量は増加しました。売上高については、コスト上昇を背景に価格改定を進めましたが、前期比で販売単価が低下したことにより減収となりました。
ホームユースについては、揚げ物の吸油を抑える「日清ヘルシーオフ」に加え、食用油の酸化を抑えおいしさが長持ちする「日清ヘルシークリア」を発売し、食用油の価値向上とクッキングオイルの構造改革に引き続き取り組みました。また、原材料価格高騰が続くオリーブオイル等の販売価格改定に加え、「かけるオイルの定着」や「味つけオイルの市場創造」など付加価値品の継続的な浸透に努めました。しかし、物価上昇を背景とした生活防衛意識の高まりによる販売数量の減少に加え、価格改定に取り組むも難航し、大豆・菜種を原料とする主要品等の販売単価が前期比で低下したことから、減収となりました。
利益面については、オリーブオイルにおける原価上昇および汎用品の粗利単価低下に加え、物流費の増加もあり国内油脂全体で減益となりました。
[ミールの販売]
大豆ミールについては、前期比で搾油量が微減となりましたが、販売数量は前期並みとなりました。また、ドル円相場は円安ドル高で推移しましたが、シカゴ大豆粕相場が大きく下落したことで販売単価は低下し、減収となりました。
菜種ミールについては、前期比で搾油量が増加したことを受け、適正価格を維持しながら販売拡大に努めた結果、販売数量は増加しました。しかし、大豆ミール価格低下の影響等により、販売単価は低下し、減収となりました。
海外加工油脂については、マレーシアのIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd.において、欧州向けおよび国内地場取引先向けの好調な販売により販売数量が前期を上回ったことに加え、パーム油相場上昇を受けて販売単価が上昇したことにより増収となりました。また、利益面においても販売数量の増加に加え、パーム油時価評価益の影響もあり増益となりました。
国内加工油脂については、厳しいマーケット環境が続く中、積極的な提案活動による採用増加とカカオ脂高騰に伴う代用脂需要増加等により販売数量が増加したことから増収となりました。また、利益面については、パーム油等の相場急騰や物流費上昇等の減益要因がありましたが、販売数量の増加および相場に応じた適正価格での販売に努めたことにより増益となりました。
≪加工食品・素材事業≫
加工食品・素材事業セグメントでは、チョコレートおよび機能素材・食品の適正価格での販売により、増収増益となりました。
チョコレートについては、大東カカオ株式会社において原材料価格が高騰するなかコストに見合った適正な販売価格への改定を進めた結果、増収増益となりました。シンガポールのT.&C. Manufacturing Co.,Pte.Ltd.においては、調製品需要の低迷により既存顧客向け販売数量が前期を下回ったものの、販売価格上昇により増収増益となりました。インドネシアのPT Indoagri Daitocacaoにおいても同様に、販売数量は主要顧客向け販売減少等の影響により前期を下回りましたが、販売価格の上昇により増収増益となりました。チョコレート全体では主に大東カカオ株式会社の業績が貢献し、増収増益となりました。
機能素材・食品は、「日清MCTオイルHC」シリーズの「日常活動を脂肪燃焼タイムに変える」をコンセプトとしたTVCM、店頭プロモーション、PRと連動したマーケティングを展開するとともに、加工食品メーカーとのMCT(中鎖脂肪酸)のコラボレーション商品の販売、またMCTオイルによるエネルギー強化の啓発を行いました。その結果、病院施設におけるMCTオイル市場が拡大し、少量高エネルギー食品の販売数量が増加しました。しかしながら、MCTの原価低下の影響を受けて販売単価が低下したこと等により減収となりました。一方、営業利益は適正価格での販売により増益となりました。
ファインケミカル事業セグメントでは、メイク向けを中心に化粧品原料の販売が好調に推移したことから、増収増益となりました。
ファインケミカル製品については、化粧品向け新製品の上市やテクニカルサポートによるソリューション提案をグローバルで展開し、顧客開拓を継続して進めました。また、メイク製品に加え、スキンケア製品も伸長しており、特にアジアおよび北米市場を中心に販売が好調に推移しました。スペインのIndustrial Quimica Lasem, S.A.U.においては、インフレの影響により原価を含めコストが増加しましたが、主力の化粧品油剤の販売が順調に推移しました。これらの結果、増収増益となりました。
当社グループの当連結会計年度末の資金は、前連結会計年度に比べ20億63百万円減少し、144億20百万円となりました。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益と減価償却費や売上債権の減少と仕入債務の増加によるキャッシュの増加および棚卸資産の増加や法人税等の支払によるキャッシュの減少により211億66百万円の収入(前連結会計年度は367億15百万円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などによるキャッシュの減少により95億90百万円の支出(前連結会計年度は160億83百万円の支出)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増によるキャッシュの増加および長期借入金の返済と社債の償還による支出や配当金の支払などによるキャッシュの減少により138億85百万円の支出(前連結会計年度は145億86百万円の支出)となりました。
当社グループの資金運営は、事業活動にかかる運転資金については、営業キャッシュ・フローで獲得した資金を主な財源としております。また、資金調達方法として、当社取引銀行5行との間でシンジケーション方式により総額100億円のコミットメントライン契約を締結している等により、資金の流動性は確保しております。
当社と国内子会社10社の間で「キャッシュ・マネジメント・システム(CMS)」を構築しており、当該システムを利用し効率的な資金配分を行っております。
設備資金、投融資資金等の長期的な資金需要については、金融市場動向、既存の社債の償還時期および借入金の返済時期等も総合的に勘案し、社債および借入金等による資金調達を行っております。
今後の重要な資金の支出予定としては、国内の生産プロセス変革や生産体制再構築、北米のバリューチェーン構築等の投資を予定しております。
当連結会計年度末の有利子負債の内訳は次のとおりであります。
当連結会計年度(2025年3月31日)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表等の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりです。
① 繰延税金資産
当社グループは、将来の課税所得見込額等に基づいて回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。
なお、繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得等の見積りによるものであるため、その見積りの前提に変更が生じた場合は、繰延税金資産の計上に影響を及ぼす可能性があります。
② 退職給付債務及び退職給付費用
当社グループは、退職給付債務および費用について、昇給率、退職率等の基礎率及び割引率を用いて計算しております。
なお、これらの前提に変動があった場合には、退職給付債務および費用に影響を及ぼす可能性があります。
③ 固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る回収可能性の評価について、事業部等を基礎としてグルーピングされた資産グループごとの収益性の評価及び回収可能価額の算定を行い、収益性が著しく低下している資産グループについて、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額することとしております。
市場環境等の変化により収益性が著しく低下した場合には、減損損失を計上する可能性があります。
当連結会計年度の連結財務諸表を作成するにあたって行った会計上の見積りのうち、当該会計上の見積りが当連結会計年度の翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあると判断したものはありません。
2024年4月1日前に締結された企業・株主間のガバナンスに関する合意に係る契約および財務上の特約が付された金銭消費貸借契約については、「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」附則第3条第4項により記載を省略しております。
(固定資産の譲渡)
当社は、2025年3月21日開催の取締役会において、固定資産の譲渡について決議し、同日付で契約を締結し、2025年5月30日付で当該固定資産を譲渡いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
(固定資産の取得)
当社は、2025年3月21日開催の取締役会において、固定資産の取得について決議し、同日付で契約を締結し、2025年5月30日付で当該固定資産を取得いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
当社グループは、長年の植物油脂研究で培った知見をベースに、中長期視点の「技術開発」と、お客さまのニーズにスピーディにお応えする「商品開発」を両輪とした研究開発活動を行っております。油脂の栄養評価技術、おいしさに関する技術(分析・評価技術、官能評価技術)、油脂の製造および加工に関わる技術などを強みとし、社内外での連携や共創の強化、戦略的な知的財産の活用を行うことで、「ビジョン2030」の各重点領域における共有価値を創造し、グローバルトップレベルの油脂ソリューション企業の実現に貢献しています。

2024年度は、新たな価値創造実現の場として横浜磯子事業場内に研究開発拠点「インキュベーションスクエア」を5月に開設しました。インキュベーションスクエアは、ラボスケールにおける研究開発機能に加えて、パイロットスケールにおける試作機能、小規模での生産機能を有し、共創型のキッチン、フライ室、試作品の分析評価が行える環境を整備しました。「共創」をポイントに、当社起点の価値提案に加え、お客さまとともに手を動かしながらモノづくりと評価を繰り返し、お客さまの課題解決や新たな価値の創造を行っています。また、食品から化粧品・化学品まで異なる専門分野の研究員が同じ場所で研究開発活動を行うことで、新しいシナジーが生まれやすい環境を整備しています。
また、研究開発機能の強化を目的に組織を再編し、中長期の視点から未来の価値創造を目指す「基礎研究所」、所有技術を深化・応用し、価値を創造する「応用研究所」、ニーズとシーズを結びつけ、商品を通して“もっとお客さまの近くへ”を実現する「ホームユース・ウェルネス食品開発センター」を新たに設置しました。食品メーカーや流通の皆さまのニーズに基づきアプリケーション開発や技術提案を行う「ユーザーサポートセンター」、主力製品である「化粧品原料としての機能性エステル油」を中心に、食品・医薬品、工業用分野といった幅広い分野に機能性素材を提供している「ファインケミカル事業部」とともに、多岐にわたる研究開発活動を行っております。
国内のグループ企業においては、大東カカオ株式会社、セッツ株式会社なども研究開発機能を有し、それぞれのグループ会社が強みを活かした取り組みを進めるとともに、グループの総合力を活かして新たな価値の創造に注力しています。
海外においては、パーム油の主要産地であるマレーシアにNisshin Global Research Center及びIntercontinental Specialty Fats Sdn. Bhd. (以下、ISF社)の研究開発拠点があります。スペインでは、Industrial Quimica Lasem, S.A.U. (以下、IQL社)と、ファインケミカル事業のグローバル展開を支える基盤を形作るために、エステル油剤開発、品質管理、生産技術などにおいて多面的な技術連携関係を構築しております。中国では、当社グループの日清奥利友(上海)国際貿易有限公司や上海テクニカルサポートセンターとの連携により、当社製品の技術的・品質的な特徴を顧客にアピールする活動や、中国における市場開拓を着実に進めております。国内外の各拠点が連携し、価値創造に向けた取り組みを進めています。
なお、当連結会計年度における研究開発費の合計は
1.油脂・油糧
近年、こめ油市場は生活者の健康意識の高まりとともに拡大しております。当社では、家庭用商品のこめ油のラインアップを強化し、大容量の「日清こめ油」1300gを発売(2025年2月)いたしました。また、あっさりした風味が特長で、環境へのニーズもとらえた商品として「日清あっさりこめ油」450g紙パックを発売(2024年8月)し、より多くの生活者のニーズにお応えしております。
オリーブオイルについては、手に取りやすい価格帯のラインアップを拡充しました。少量使いタイプの「日清さらっと軽~いオリーブオイル」145g(2024年8月)、加熱調理でもオリーブの味・香りをしっかりと楽しめて大量使いのできるMIXタイプのオリーブオイル「日清キャノーラ&オリーブオイル」684g(2024年8月)と800g(2025年2月)をそれぞれ追加発売し、原料のオリーブの歴史的な不作による価格高騰の環境の中でも引き続きおいしさと健康性を楽しんでいただける商品を展開しております。また、当社は、安全で安心な製品をお届けすることはもちろんのこと、国際基準の高度な分析技術を磨き続け、国際オリーブ協会(International Olive Council)の品質国際基準「理化学分析ラボtypeB認証」を2年連続で獲得しました。
環境にやさしい企業活動の取り組みの一環として、容器におけるプラスチック使用量削減のため、フレッシュキープボトルをリニューアル(2024年8月)し、軽量化することで、従来品と比べてプラスチックの使用量を約19%削減しました。また、キャップシール廃止の取り組みを順次開始し、第一弾としてごま油とオリーブオイルの瓶容器の商品を対象に実施しております。さらに、環境対応素材の導入拡大に向け、ボトルに再生PET樹脂を使用した商品を、400g、600g、800gに加えて200gPETにも拡大しました。こうした取り組みを進める中、「日清ヘルシークリア 800g ペットボトル」が「2024 日本パッケージングコンテスト」(公益社団法人 日本包装技術協会主催)で「食品包装部門賞」を受賞しました。今後も、環境や使いやすさに配慮した容器・包装の開発に努めてまいります。
業務用食用油では、オリーブオイル価格高騰を背景に、こだわりのオリーブオイルを独自配合し、オリーブオイルらしい香り立ちと適度な苦み・辛みをお楽しみいただける「日清キャノーラ&オリーブオイル」を発売しました(2024年7月)。また、こめの在庫不足や品質不良など、お客様の炊飯米商品に対する課題解決を目的に炊飯油の品揃えを強化しました。さらに、手軽にプロの味わいが再現できる「素材のオイル」シリーズとして、近年のチーズの価格高騰に対応した商品である「日清素材のオイル 香ばしチーズ風味」を発売しました(2025年3月)。その他、フードロスや環境配慮など多様化するニーズへ対応した炒め油や麺さばき油などの機能性油脂/油剤の開発を行い、お客さまのニーズに応える取り組みを実践しております。
2.加工油脂
菓子・パン・チョコレートなどの加工食品において、油脂は風味、食感、口どけなどおいしさの大事な機能を担っております。当社では「油脂」を究めることで、チョコレート用油脂を中心としたスペシャリティファットやマーガリン・ショートニングなどの製品を開発しております。また、これらの製品の主要原料であるパーム油を生産する当社グループのISF社および、業務用チョコレートを製造・販売する当社グループの大東カカオ株式会社の研究開発部門とも連携することで、油脂製造からアプリケーション開発にわたる領域の研究開発を行っております。世界的なカカオの高騰を受け、当社グループはココアバター代用脂(CBE)の生産能力を2027年度までに2021年度比で1.5~2倍まで伸ばす予定です。これに向けて、ISF社と連携して、製造プロセスの改良やチョコレート用油脂の開発を加速しております。国内市場においては、カカオの高騰を受けてスナップ性と口どけの良さを備えたテンパー型油脂や、特殊な用途に合わせたノーテンパー型油脂の開発を進め、一部を発売しました(2024年10月)。さらに、独自の技術でカカオの風味などを補うことができる商品についても顧客提案を進めております。
また、機能性を有する素材と油脂を組み合わせた製パン用油剤を発売しました(2024年6月)。この製パン用油剤はパンの柔らかさを維持することが可能なため、消費期限の延長や食品ロス削減が期待されております。
1.MCT
MCTの優れた健康性に着目して機能開発を進め、これまでの「体脂肪やウエストサイズを減らす」に加え、「日常活動時の脂肪の燃焼を高める」や「運動時の脂肪の燃焼を高める」などの新たな機能性表示食品を消費者庁に届出いたしました。今後は食用油や加工食品へ広く展開することで、マーケットでの認知度向上や価値化を図り、当社の掲げる「すべての人の健康」の実現を推進してまいります。
また、以前より通販用商品として販売しておりました「MCT CHARGE オイル 6g」および「MCT チャージゼリー PRO」を機能性表示食品としてリニューアル発売いたしました(2024年10月)。これら2商品は、「運動時の脂肪の燃焼を高める」機能が消費者庁に受理されており、運動愛好家層への訴求を強化しております。
2.調味料
当社ドレッシング主力商品として多くのお客さまより支持をいただいている「日清ドレッシングダイエット」シリーズに、和風の中でも人気の高いたまねぎ風味「きざみたまねぎ」185mlと400mlを追加発売いたしました(2025年2月)。きざみたまねぎの食感と甘みが特長で、野菜はもちろん、肉との相性も良く、幅広いメニューにご使用いただけます。
3.機能素材・食品
病院・施設向けの高齢者・介護食品で少量でも高密度な栄養成分を含むことを特長とする「ミニタス」シリーズ(たんぱく質、エネルギー、食物繊維)において、たんぱく質ゼリーのラインアップ拡充を目的として新味「パイン味」を追加発売いたしました(2025年3月)。「ミニタス たんぱく質ゼリー」は、これまでオレンジ味1種類のみの展開でしたが、お客さまからの強いご要望にお応えする形で、フレーバーのバリエーションを追加いたしました。本商品の追加により、更なる顧客層の拡大と売上増加を見込んでおります。
当社の独自技術による油脂100%の結晶性油脂「コナファット」は、食感改善、粉末の流動性改善といった機能を中心に食品分野で幅広くご利用いただいております。食品での用途をさらに拡大するため、チョコレートの粘度調整、複合菓子の油脂移行による品質変化の抑制などの新たな価値の提案を進めております。また、食品廃棄の削減に向けて、食品アップサイクルへの利用についても用途提案を実施しております。非食品分野では地球環境課題対応に向けたバイオマス素材として活用する用途開発を進め、従来の油脂の枠を超えた様々な用途での活用方法をご提案することで、市場開拓を進めております。
4.チョコレート
大東カカオ株式会社と連携を取りながら、カカオを中心に、素材にこだわり、配合・物性・製造技術を磨き、他社がまねのできない多様な技術やユーザーの要求にこたえるための高付加価値技術を構築しております。
大東カカオ株式会社の強みであるロースト方法やカカオ産地を組み合わせた味作りを強化するとともに、当社と連携した風味の評価技術や油脂技術を活用したチョコレートの開発を進めております。また、歴史的なカカオ相場の高騰やカカオ豆生産量の不安定な状況に対して、ベースビーンの安定的な確保に向けた新規産地のカカオ豆を導入したほか、特定の地域におけるカカオ豆の生産性向上に向け大学、現地農園と共同研究を開始しました。
さらに、大東カカオ株式会社の独自技術を活用した、長期間保存可能な災害食用チョコレートの開発を進めています。
5.大豆食品素材
近年の加工食品原料の価格高騰を背景に、冷凍食品などの玉子加工食品の原材料に加えることで、食感良くかつ冷凍・解凍後の離水を抑制することができる大豆粉末製剤「ソイプルーブ」を発売しました(2025年1月)。本品は大豆粉に独自の加熱処理を行うことでコクを付与し、玉子製品の風味を損なわないよう設計しています。玉子焼きのほか、炒り玉子など各種玉子加工食品での効果を確認しております。さらに大豆食品素材の栄養・健康機能を訴求し、水への分散性が高く、粘度が低いという特長を持つ粉末状大豆たん白「ソルピーDH-1」を発売し(2024年7月)、植物性の粉末プロテイン飲料などにご利用いただいております。
当社は長年にわたり、大豆たん白・大豆粉末製品をお客さまに販売しており、引き続き商品やアプリケーション開発を通じて、品質やおいしさの維持・向上に貢献してまいります。
化粧品領域における開発活動としては、グローバルな視野で化粧品業界に広く展開できる高機能素材や植物由来成分からなる素材の開発に取り組んでおります。
化学品領域における開発活動としては、情報関連分野・潤滑用途の素材を中心に顧客と直結した開発を進めております。
食品領域における開発活動としては、主力であるMCT製品の品質向上を図るとともに、新たな機能性素材の開発に取り組んでおります。
IQL社との間では、同社が製造販売するFSSC22000などの認証を背景とした高品質なMCT「QUOLIO(クオリオ)」について、国内展開を図るとともに、生産設備の改良・品質管理体制の強化を通じて、高品質な化粧品原料のグローバル供給体制の構築に向けた取り組みを進めております。
日清奥利友(上海)国際貿易有限公司とは、中国における技術サービスの充実を目的として設置したラボ機能の有効活用を図るとともに、さらに発展させる形で、現地企業を対象とした原料セミナーを複数回開催し、同社製品の優れた特徴をアピールする活動を行い、中国における市場開拓を着実に進めております。
セッツ株式会社は、食の安全・安心の確保に関する特に優れた事業・研究・社会貢献活動が評価され、令和6年度「大阪府食の安全安心顕彰制度大阪府知事賞」を受賞いたしました。商品開発では、微生物制御技術や洗浄技術を融合させ、顧客課題の解決に取り組むとともに、高付加価値商品の開発を進めております。その一環として、厨房廻りの衛生管理に特化した、密着泡が特徴の「セッツ泡ブリーチ」を発売いたしました。また、介護現場の多忙な状況をサポートするため、「これひとつ」(=One)を共通コンセプトとした「介護施設のためのOneシリーズ」4品(バストイレ用など)を発売いたしました。これらを推進して、衛生管理事業の拡大に努めてまいります。
今後とも技術力の一層の充実を図り、新製品・新技術開発、新分野開拓に積極的に取り組んでいく方針であります。