文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが入手可能な情報に基づき作成したものです。実際の成果や業績は、今後様々な要因によって、記載されている内容とは異なる可能性があります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、食品企業としての責任を強く自覚し、私たちの使命、目指す姿、行動する上で持つべき価値観、そして行動原則を明文化した「不二製油グループ憲法」を2015年10月に制定しております。本憲法は、グループ社員全員の価値観の共有化を図るとともにグループガバナンスの基本であり、判断・行動の優先基準付けの拠り所となるものです。当社グループは、「不二製油グループ憲法」のミッション「私たち不二製油グループは、食の素材の可能性を追求し、食の歓びと健康に貢献します。」を希求することを会社運営の基本方針としており、ミッションを希求していくための具体的に目指す姿をビジョンと位置付けております。
近年の激変する市場環境下において、自ら課題を乗り越え、継続して成長していくためには、どのような方向に向かうべきかを示すべく、2023年4月1日より「不二製油グループ憲法」のビジョンとして「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」を掲げております。社員一人一人が本憲法に示されているバリュー(価値観)を共有し、プリンシプル(行動原則)を実践することで、ビジョンを実現し、全てのステークホルダーに対して貢献できるものと考えております。
「不二製油グループ憲法」(2023年4月1日付改定)
(2)ビジョン実現に向けた考え方
食が消費者に届くまでには、複雑なサプライチェーンと多くのステークホルダーが関与しています。食の社会課題の解決には、一社のみならず消費者も含めたバリューチェーン全体で価値向上に取り組むことが重要です。不二製油グループは食のバリューチェーンにおける川中の機能を担い、研究開発や生産活動を通して、顧客とその先の消費者の困りごとに対するソリューションの提供に努めています。
当社グループは心身の健康・地球環境問題・人権等、食のバリューチェーン上の社会課題を機敏に捉え、当社の提供価値につながるESGマテリアリティを特定し、経営戦略の立案・推進に活用しています。
経営戦略に基づき、財務資本、製造資本、人的資本等、当社グループが有する経営資本を活用し、4つの事業が持つ強みを組み合わせて、当社グループならではの製品を生み出し、提供価値の創出につなげています。
そして、当社グループの提供価値が顧客価値=消費者価値となり、獲得した利益やキャッシュ・フローは食のバリューチェーン全体のサステナビリティ向上に寄与する当社グループの持続的な成長を支える財務基盤の強化に資するとともに、提供価値の拡大及び新たな価値の創出のために再投資しています。
不二製油グループは価値創造プロセスの循環を通じ、持続的な成長を果たし、「サステナブルな食の未来」の実現を目指しています。
当社グループの経営資本は以下のとおりです。
“財務資本”とは、当社グループの事業活動により獲得した利益やキャッシュ・フローを持続的な企業価値向上へ向けて再投資することで構築される財務基盤です。2023年度において株主資本は1,898億28百万円、有利子負債は1,302億86百万円、営業キャッシュ・フローは482億42百万円になりました。
詳細は「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」及び「第5 経理の状況」に記載のとおりです。
“製造資本”とは、当社グループの安全・安心で安定した品質の製品を生産、顧客に提供するための製造拠点・製造能力です。2024年3月末時点においては、連結子会社39社、持分法適用会社3社がグループの生産を支えています。また、2023年度の設備投資額は151億19百万円となりました。
詳細は「第1 企業の概況 3事業の内容」、「第1 企業の概況 4関係会社の状況」及び「第3 設備の状況」に記載のとおりです。
“人的資本”とは、当社グループの企業活動を支え、持続的な成長を支える人材です。2024年3月末時点で連結従業員5,731名となり、うち約7割が海外エリアの従業員となりました。詳細は「第1 企業の概況 5従業員の状況」及び「2 サステナビリティに関する考え方及び取組(6)人的資本・多様性」に記載の、人的資本に関する当社の考え方及び取組をご覧ください。
“知的資本”とは、当社グループの技術革新と社会課題に貢献する製品の創出を支える研究成果と技術力です。2023年度の研究開発費は58億78百万円となりました。特許ポートフォリオ等の研究開発活動に関する情報は「6研究開発活動」に記載のとおりです。
“社会・関係資本”とは、食のバリューチェーンの川中に位置する存在として構築してきた、ステークホルダーとの共創関係です。ステークホルダーとの共創の詳細は「(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題 ① 中期経営計画「Reborn 2024」の基本方針c.サステナビリティの深化(経営戦略と一体化したサステナビリティ戦略)」に記載のとおりです。
“自然資本”とは、エネルギーや水、生態系サービス(注)に依拠した農産物であるパーム、カカオ、大豆、シアカーネル等の原料であり、当社グループの事業活動はこうした自然や生態系サービスの恩恵を受けると同時に負の影響を与える可能性があります。当社グループは環境負荷の低減や、持続可能な調達等の取組により、自然資本の保全と回復に努めています。
詳細は、「2サステナビリティに関する考え方及び取組(5)指標及び目標」に記載のとおりです。
(注)生態系サービス:食料や水の供給、気候の安定等、生物多様性を基盤とする生態系から得られる恵み
① 不二製油グループの強み
当社グループは創業当初から、南方系油脂と大豆たん白を中核に「植物性素材」にこだわり、技術の深掘りと横展開で植物性油脂事業、業務用チョコレート事業、乳化・発酵素材事業、大豆加工素材事業を発展させてきました。当社グループは、その歴史の中で培った各事業固有の技術で製品を創出するのみならず、各事業の持つ技術の融合により事業の垣根を越えた新しい、安全・安心な品質の製品を生み出しています。
また、創業の精神「挑戦と革新」の下、BtoBの食品素材メーカーとして、顧客の課題、困りごとに共に挑み、当社グループの製品・取組による解決策を提案するとともに、多様化する消費者の食シーンに貢献する‘食’を顧客と共に創造し、社会課題解決に取り組んでいます。
さらには、当社グループは持続可能な社会の実現に向けて、サプライチェーン上での環境、人権等の社会課題を解決するべく、事業活動全体を通じて、環境や人権等を尊重するサプライヤー等との信頼関係を構築し、エンゲージメントを高める取組を進めるとともに、これらサプライヤーから主要な原料を調達するサステナブル調達を進めています。
主要事業で培ってきた「技術の融合」、「顧客との課題解決力」、「サステナブル調達」は当社グループの歴史の中で育んできた、大きな強みであり、当社グループビジネスモデルの核となっています。
② ビジネスモデル
当社グループのビジネスモデルは、「植物性油脂事業」、「業務用チョコレート事業」、「乳化・発酵素材事業」、「大豆加工素材事業」から構成されています。
a.植物性油脂事業
―南方系油脂を軸とした高度な利用技術(注1)・サステナブル原料のサプライチェーン―
当社グループは創業当初から、南方系油脂の加工、チョコレート用油脂(CBE:注2)に活路を見出し、南方系油脂を軸として、様々な油脂の高度な利用技術の革新を進め、植物性油脂事業を基盤事業として展開してきました。また、限りある資源の中で、自然との共生によるサステナブルな社会・事業活動を指向しており、サプライチェーン上での環境、人権等の社会課題を解決すべく、早くから農園・農家との協働に取り組み、信頼関係を構築しています。このような取組で構築してきた‘サステナブル原料のサプライチェーン’も植物性油脂事業の差別化戦略につながる強みとなっています。
(注)1.高度な利用技術:多様なニーズに合わせて、油脂加工技術と様々な油脂種の組み合わせにより油脂原料を余すことなく利用し、製品化する技術。
2.CBE:Cocoa Butter Equivalentの略。ココアバターと同等の物性を持ったチョコレート用油脂。
b.業務用チョコレート事業
―油脂技術の融合により「おいしさと使いやすさ」を提供―
業務用チョコレート事業は、技術革新を進めてきた当社グループのチョコレート用油脂技術に支えられています。顧客の商品製造過程での良好な作業性や流通過程での耐熱性等の‘使いやすさ’と、口溶けのよさや豊かな風味といった消費者が求める‘おいしさ’を兼ね備えた高品質なコンパウンドチョコレートに強みを有しています。
c.乳化・発酵素材事業
―乳化・発酵技術により「おいしさと使いやすさ」を提供―
乳化・発酵素材事業は、顧客の商品製造過程における加工安定性や流通過程での保形性等の‘使いやすさ’を実現できる油脂を使用した乳化技術と、消費者にとっての‘おいしさ’につながる風味を生む発酵技術の融合により、製菓・製パン・調理用途等にクリーム、マーガリン、フィリングといった幅広い素材を提供しています。
d.大豆加工素材事業
―大豆のおいしさと栄養を活用した多様な製品群―
当社グループでは創業時から油脂とともに、大豆の豊富な栄養と大豆たん白の特性に着目し、研究を進め、用途拡大と技術革新を進めてきました。また大豆本来の‘おいしさ’を引き出す研究開発とともに、大豆たん白に含まれる機能性成分の研究により製品を創出し、多様な製品群を展開しています。大豆に含まれる植物性のタンパク質は食の未来を見据える中で、重要な食資源の一つです。大豆加工素材事業において社会課題の解決と消費者の要望に応える多様な高付加価値製品を創出、提供することで、社会貢献を果たしてまいります。
③ 不二製油グループの提供価値
持続可能な社会の実現に向けて、また食と健康への意識の高まりに伴い、消費者からはウェルビーイングにつながるおいしくて心と身体に良いものを食べること、つまり「おいしさと健康」の両立と「サステナブルな食のバリューチェーン」への貢献が求められています。当社グループは4つの事業の強みを活かした事業活動を通じ、「社会価値」と「経済価値」を創出し、ステークホルダーへの貢献を果たしてまいります。
「社会価値」
当社グループの事業活動では、創業以来培ってきた技術、顧客の課題や困りごとを解決する課題解決力、環境や人権等に配慮した原料の調達、そしてそれらを元に、様々なステークホルダーとの共創によって付加価値の高い製品を生み出しています。
当社グループは、事業活動を通じ、自然環境への負荷低減に取り組むとともにサステナブルな食資源の供給により、消費者の食の歓び、健康増進、雇用、人権尊重等のウェルビーイングの実現に貢献してまいります。
「経済価値」
当社グループの事業活動により得られた利益やキャッシュ・フローは当社グループの持続的な成長を支える財務基盤の強化に資するとともに、提供価値の拡大及び新たな価値の創出のために再投資してまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題
近年、当社グループを取り巻く事業環境は、世界的なインフレや金融引き締めによる景況感の悪化、エネルギーコストや原材料価格の高騰等に直面し、依然として先行き不透明となっています。
このような激変する環境下において、不二製油グループが価値創造を果たしていくためには、まずは確実に現有資産、事業からの収益力の回復と財務体質を強固にすることを優先事項として基盤の強化を果たさなければならないと認識しています。
当社グループは2022年度から2024年度までの3年間を新しい価値を生み出す企業グループへと生まれ変わるための経営基盤を強化する期間と定め、中期経営計画「Reborn 2024」を実行しています。
① 中期経営計画「Reborn 2024」の基本方針
中期経営計画「Reborn 2024」において、基本方針を「事業基盤の強化(収益力復元と新しい価値創造)」、「グローバル経営管理の強化」、「サステナビリティの深化(経営戦略と一体化したサステナビリティ戦略)」として、成長戦略を推進しています。
a.事業基盤の強化(収益力復元と新しい価値創造)
「事業基盤の強化」では、「基礎収益力の復元」、「既存領域における高付加価値製品へのポートフォリオの入替え」、「成長・戦略分野への経営資源の集中」、「挑戦領域への展開」を進めております
「基礎収益力の復元」においては、販売価格政策や原価管理において、運営・管理体制の両面から事業別に強化を進めています。また、適正な価格政策の実施と原価管理の強化に加え、グループ全体の生産性指標管理により効率的な生産性向上、コストダウンを進めることで、基礎収益力の復元を図っています。
「既存領域における高付加価値製品へのポートフォリオの入替え」においては、コモディティ製品から差別化された付加価値の高い製品への展開を行うことで、競争優位性の確立に取り組んでいます。近年の欧州・米州等での需要の高まりへの対応として、東南アジアでのサステナブル認証油の供給体制を強化し、グループ全体での拡販を進めております。
「成長・戦略分野への経営資源の集中」においては、業務用チョコレート事業や植物性油脂事業を成長分野として優先的に経営資源を再配分することで、グループの収益拡大及び安定成長を図っています。
高付加価値製品へのポートフォリオの強化に向けた対応の一環として2023年4月には米州連結子会社Fuji Oil New Orleans, LLCの固定資産の譲渡を実施しました。米州の植物性油脂事業は引き続き重要市場として、CBEを含めた機能性のある製菓用油脂の供給体制の強化等により高付加価値化を進め、新たな成長戦略の展開に取り組んでいます。
また、東南アジアにおいては、マレーシアのパーム油・パーム核油の製造会社 Johor Plantations Group Berhadと持続可能なパーム油を原料とした高付加価値な油脂製品を製造・販売する合弁会社を設立することを決定しました。欧州市場をはじめとする今後需要の増加が見込まれる市場にもトレーサブルで持続可能なパーム油製品の提供を通じ、社会課題解決に取り組んでまいります。
業務用チョコレート事業においては、ブラジルのHARALD INDÚSTRIA E COMÉRCIO DE ALIMENTOS LTDAで2023年4月に新工場の稼働を開始しました。ブラジルで高まるチョコレート需要への対応に加え、工場内にお客様と共創でアプリケーションを開発・提案する施設を新設し、グループの技術と知見を活かした高付加価値製品をブラジル市場に新たに提供するとともに、それらを活用した更なる新製品創出、新市場の開拓を進めています。
一方、2019年1月に連結子会社化した北米のBlommer Chocolate Companyは、買収後に生じたコロナ禍の影響、原材料価格や金利の上昇及びインフレに伴う固定費増加等により、収益性が低下し、当第3四半期連結会計期間において特別損失を計上いたしました。しかしながら、米国市場において80年以上かけて築き上げたBlommer Chocolate Companyのブランド力や各食品市場におけるリーディングカンパニーとの取引関係、幅広い顧客網に基づく競争力は健在であること、世界最大の業務用チョコレート市場である米国市場の成長は今後も継続すると見込まれることから、Blommer Chocolate Companyは当社グループの業務用チョコレート事業の成長ドライバーとして、グループの長期的な成長に大きく寄与するものと考えております。そのためにはBlommer Chocolate Companyの構造改革による同社の収益力の早期復元が喫緊の課題であると認識しています。Blommer Chocolate Companyが保有する経営資源配分の適正化、カカオ加工事業の適正化、差別化戦略の推進等の構造改革を果たし、グループシナジーの創出をより一層進め、Blommer Chocolate Companyをグループの価値創造の中核を担う企業に成長させてまいります。
また、当社グループは、EU森林破壊防止規則(EU Deforestation Regulation:EU-DR)が2023年6月に発効、2024年12月30日から適用開始されることに伴い、当社グループの拠点がある欧州市場のみならず、グローバルに展開する大手取引先とのビジネスにおいても、その対応が必須となります。欧州グループ会社と連携強化のもと、パーム油やチョコレートの安定供給、サステナブル調達の更なる強化を図っていきます。
さらに、業務用チョコレート事業を主力事業とする当社グループにおいては、カカオ豆の価格高騰への対応が必須です。グループでの対応・取組体制の整備によるリスク低減のみならず、当社グループのサステナブル調達、CBE等の油脂技術、さらにそれら原料調達力・油脂技術・チョコレート製造技術の融合によりおいしさと機能性を兼ね備えたコンパウンドチョコレートを創出・展開し、付加価値や競争優位性の向上に結び付く対応を進めてまいります。
「挑戦領域への展開」においては、当社グループの技術と各事業製品の組み合わせを行い、新たな市場アプローチにより、消費者視点での時代に合った製品を提供しています。また、市場・顧客開拓を行うことにより新しい価値を創造し、コモディティ製品から高付加価値製品へのポートフォリオの入れ替えを図っています。
日本においては、挑戦領域を牽引するフラッグシップとしてGOODNOONを掲げ、植物性に特化した製品の展開活動を進めており、代表商品の一つとして当社独自の大豆加工と油脂技術を融合した豆乳クリームバター(ソイレブール)の拡販を進めています。
また、当社が開発したMIRACORE®(注)技術を使用した植物性ダシ製品等の上市による新たなビジネスへの取組を加速しています。さらには、新しい販売チャネルとして、ECメディア「cotta tomorrow」を立ち上げ、プラントベースフードを始めとする製品のデジタル販売を強化し、アプローチの変革に挑戦しています。
(注)MIRACORE®:当社研究所が開発した動物性食品ならではのおいしさを植物性素材で実現する技術。
b.グローバル経営管理の強化
「グローバル経営管理の強化」では、事業収益の向上策として、事業別ROIC管理の導入による資本効率の高い経営体制の構築及び事業軸の管理を強化することで、各エリアの課題に事業軸でも横断的に対応し、グループ内の連携を強化しました。それにより、経営課題への対応スピードの更なる向上に取り組んでいます。また、研究技術開発において、戦略目標と一体となった運営体制を推進し、グローバルで求められる社会課題への対応、製品開発のスピードの向上を図っています。これらの体制をより有効なものとするために、経営管理の高度化とDXを推進しています。
c.サステナビリティの深化(経営戦略と一体化したサステナビリティ戦略)
「Reborn 2024」では、当社グループとして特定したESGマテリアリティに基づき、各グループ会社のサステナビリティへの取組を加速させ、グループ全従業員による自律的な活動へ深化させています。当社グループではパーム油やカカオ等の主原料のサステナブル調達、並びにグループ全体のCO2排出量・水使用量・廃棄物量の削減に取り組んでいます。また、将来懸念される食資源やタンパク質の不足を解消する食資源の創造、並びに心身の健康課題の解消等、健康と栄養の課題解決に寄与する研究及び製品開発に注力しています。これらの取組は、バリューチェーン上の様々なステークホルダーと共創しています。当社製品の付加価値や競争優位性を高めると同時に事業活動のコストダウンにもつなげ、社会価値と当社の企業価値を共に向上させていきます。
不二製油グループの持続的成長を支えるのは人材です。当社グループと従業員の双方が持続的に成長するため、「Reborn 2024」におけるサステナビリティの深化のテーマの一つを「人材活用」とし、「グローバル経営を支える人材の確保・育成・適正配置」、「DE&Iの推進」、「コミュニケーションの強化」について取組を進めております。
② 財務戦略について
成長によるキャッシュ・フローの創出と資本効率の向上及び財務ガバナンスの強化を通じて、グローバルで強固な財務体質への改革を図ります。
経営効率向上のために、キャッシュ・フローを重視し、優先的な経営資源の配分を行い、事業別ROICによる事業評価、グループ投資基準による投資の厳選を進め、グループ全体の事業ポートフォリオの最適化を図ります。事業別ROIC評価の導入で、従前より進めているバリューチェーン分析による在庫の圧縮等、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)の改善をさらに推進してまいります。
また、グローバル資金管理によるグループ資金の可視化・流動性の確保、資産のスリム化による総資産回転率の向上を図ります。財務レバレッジにおいても資本コストを意識し最適化を図ります。
株主還元については、配当性向30%~40%を方針とし、安定的かつ継続的な配当を実施してまいります。
当社グループは刷新した「不二製油グループ憲法」のビジョン実現に向け、当中期経営計画「Reborn 2024」を達成することで、企業価値向上を図り、全てのステークホルダーから信頼される企業グループとなることを目指してまいります。
(4)目標とする経営指標
当社グループは、収益性の改善、資本効率の向上がステークホルダーの利益に合致するものと考え、「ROE(株主資本利益率)」を重要な指標として位置付けております。加えて、当社グループ中期経営計画「Reborn 2024」より「ROIC(投下資本利益率)」を新たな指標として導入し、資本効率、資本コストを意識した事業ポートフォリオマネジメントを推進しています。
中期経営計画「Reborn 2024」における経営目標
① 財務KPI
|
|
目標(2024年度) |
実績(2023年度) |
|
連結営業利益 |
235億円 |
182億円 |
|
ROE(株主資本利益率) |
8.0% |
3.0% |
|
ROIC(投下資本利益率)(注) |
5.0% |
3.5% |
|
株主還元 配当性向 |
30.0%-40.0% |
68.5% |
(注)ROIC=税引後営業利益÷(運転資本+固定資産)
当社グループでは本指標を各事業で把握・管理可能な項目とすべく、分母となる投下資本を運転資本と固定資産に置き換えて使用しております。
② 非財務KPI
|
|
目標(2024年度) |
実績(2022年度)(注3) |
|
CO2排出量の削減(Scope1+2) |
総量23%(注1) |
総量26%削減(注1) |
|
サステナブル調達(パーム油) |
パーム油TTP比率(注2)85% |
パーム油TTP(注2)比率93% |
(注)1.基準年:2016年度(全連結子会社)
2.パーム油TTP:パーム油の農園までのトレーサビリティ(Traceability to Plantation)
3.2023年度実績は2024年9月発行予定のサステナビリティレポートにて開示予定。
(1)不二製油グループのサステナビリティ経営
当社グループは、「不二製油グループ憲法」のビジョンに「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」を掲げています。グループ全従業員が地球環境・人権・心身の健康等のバリューチェーン上の社会課題を機敏に捉え、リスクの低減のみならず、全てのステークホルダーの期待に応えるソリューションの提供に努め、社会価値を創造することで、サステナブルな食の未来の実現と当社グループの企業価値向上を目指しています。
詳細は「
(2)ガバナンス
① 取締役会とサステナビリティ委員会
当社グループは監査等委員会設置会社であり、取締役会の任意の諮問機関のひとつとしてサステナビリティ委員会を設置し、サステナビリティ関連のリスク及び機会をモニタリングしています。取締役会は同委員会からの答申を受け、指導・承認・監督すると共に、中長期のグループ経営の方向性を決定しています。
同委員会は「サステナビリティ委員会規程」に基づき年2回以上開催し、中長期的な環境(E)・社会(S)と企業経営双方の持続可能性の観点から、ESGマテリアリティの特定並びにESGマテリアリティの目標・戦略について、マルチステークホルダー視点で審議・監督し、取締役会へ答申しています。また、各ESGマテリアリティ取組テーマの進捗や実績報告を受け、助言及びモニタリングする機能を担っています。
同委員会はESG担当役員を委員長とし、同委員会において議決権を持つCxO(Chief X Officer)に加えて、事業部門長並びに各エリアの代表者、社外取締役、ESGアドバイザーで構成され、事業戦略とESGマテリアリティの連動性を高めながら、中長期視点で審議を進めています。
サステナビリティ委員会 2023年度審議事項
|
第1回 |
・2022年度ESG活動実績の確認 ・2023年度ESG活動計画の決定 |
|
第2回 |
・2023年度ESG活動進捗の確認 ・2024年度ESGマテリアリティと管掌役 |
|
第3回 |
・2024年度ESGマテリアリティ重点項目(「取組テーマ」より改称) |
② サステナビリティに関連する役員報酬(業務執行評価連動型金銭報酬)
サステナビリティに関する重点領域の取組は、取締役の業務執行評価連動型金銭報酬の評価対象項目としています。詳細は「
なお、不二製油グループ本社株式会社及び不二製油株式会社の管理職制度においては、経営と視点を合わせた目標設定を行うためのガイドラインを策定しています。このガイドラインに則して、短期の利益目標のみならず、中期経営計画で掲げる非財務領域、たとえば人的資本やその他サステナビリティに関する項目等を目標として設定し、業績目標含め適切なウェイトで評価することとしています。
(3)戦略
① ESGマテリアリティにもとづく経営戦略
当社バリューチェーン上の「サステナビリティ関連のリスク及び機会」に係わる重要な社会課題としてESGマテリアリティを特定し、各事業で課題解決を推進していくための経営戦略ツールとして活用しています。また、ESGマテリアリティとその進捗を取締役会がモニタリングし、中長期のグループの方向性を決定しています。
ESGマテリアリティに対し、「ポジティブ・インパクトの創出」あるいは「ネガティブ・インパクトの低減」に寄与する具体的な事業活動を推進することで、事業機会の創出及び事業リスクの低減を図っています。
なお、ESGマテリアリティへ取り組む上で基本的なグループの姿勢をまとめた各種方針・規範を制定しています。各種方針・規範一覧は以下のURLよりご参照ください。
https://www.fujioilholdings.com/sustainability/policy/
② ESGマテリアリティの特定
ESGマテリアリティは、新たな社会課題の把握とステークホルダーエンゲージメントに基づき毎年レビューし、特定しています。2023年度のESGマテリアリティは、「不二製油グループが社会・環境に与える影響度」と「社会・環境課題が不二製油グループに与える影響度」の2軸から成るマテリアリティマップにより、各マテリアリティの重要性を3段階で評価・特定し、サステナビリティ委員会における審議及び取締役会の承認を経て決定しました。(注)
特定されたESGマテリアリティは管掌役(CxO及び担当部門長)のもと、具体的な目標や対応施策、推進責任者を定め、取組を推進しています。
(注)
https://www.fujioilholdings.com/sustainability/materiality/
2023年度は以下のESGマテリアリティマップでESGマテリアリティを特定し取組を推進しました。
※1 ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン
※2 ガバナンス・リスク・コンプライアンス
ESGマテリアリティマップ及びESGマテリアリティの特定プロセスの詳細は、サステナビリティレポートをご参照ください。(2024年度のESGマテリアリティに関する情報は2024年9月公開予定)
https://www.fujioilholdings.com/sustainability/materiality/
③ ESGマテリアリティと具体的な取組
2023年度は、ESGマテリアリティに関し、以下の取組テーマを推進しました。
(サステナブルな食資源の創造、健康と栄養)
将来懸念される食資源やタンパク質の不足を解消する食資源の創造、並びに高齢者の心身の健康課題の解消等、健康と栄養に寄与する研究及び製品開発に注力しています。詳細は「
また、中期経営計画「Reborn 2024」の基本方針「事業基盤の強化」の「挑戦領域への展開」において、サステナブルな食の未来へ貢献し新しい価値を創出することで高収益・高成長を果たせる次世代事業の展開に取り組んでいます。詳細は「
(サステナブル調達)
当社グループは、食のバリューチェーンの川中に位置し、顧客である食品メーカー等に食品中間素材の販売を行っています。「サステナブルな食の未来」の実現に向け「サステナブルな食のバリューチェーン」を構築するため、社会課題を解決していく上で鍵となるサプライヤーや顧客とともに、環境保全、人権尊重、公正な事業慣行、リスクマネジメント等に取り組み、持続可能な食品素材を提供しています。
調達に関するグループの上位方針「サプライヤー行動規範」及び主原料であるパーム油、カカオ、大豆及び戦略原料であるシアカーネルについて原料別の責任ある調達方針を掲げ(注1)、中長期目標とKPI(注2)を公表し、取組を推進しています。
なお、中期経営計画「Reborn 2024」においても、当該目標とKPIの達成に注力することを掲げ、サステナブルなパーム油やチョコレートの供給体制の強化を進めています。詳細は「
(注)1.
https://www.fujioilholdings.com/sustainability/procurement/
詳細は「
2.各原料別の中長期目標とKPIにつきましては「
(気候変動、水資源、サーキュラーエコノミー)
当社グループの事業活動は、自然環境や生態系の恩恵を受けると同時に、気候変動や生物多様性に影響を与えており、気候変動や生物多様性の喪失は事業継続上のリスクです。(注1)
当社グループは、2015年10月に「環境基本方針」(注2)を制定しています。2018年策定の「環境ビジョン2030」(注3)では、グループ全体のCO2排出量・水使用量・廃棄物量の削減に関する2030年目標を掲げ、環境負荷を低減する取組を加速させています。中期経営計画「Reborn 2024」においては、当該目標とKPIの達成への注力と同時に一部環境目標の見直しを進めています。また、2023年3月に制定した「不二製油グループ生物多様性方針」に基づき、バリューチェーン上の生物多様性への負の影響を回避または軽減を図り、自然生態系の保全と回復に取り組んでいます。詳細は「
(注)1.TCFDにつきましては「
2.
3.「環境ビジョン2030」につきましては「
(製品の安全性と品質)
当社グループは、安全・安心な製品を社会に提供することを前提に事業活動を展開しています。不二製油グループでは「品質基本方針」(注)を定め、製品安全と安定品質の製品出荷を最優先に、製品設計からお客様にお届けするまでの品質保証体制の確立と強化に努めています。具体的には「品質保証規程」に基づく品質及び食品安全マネジメントの強化、従業員の継続的な品質意識向上のための活動を推進しています。
(労働安全衛生)
従業員の安全を確保することは企業の社会的責任であり、持続可能な経営を行う上での前提条件です。「安全衛生基本方針」(注)に基づき、不二製油グループの従業員及び事業所内で働く全ての方々の命を守るとともに、労働災害ゼロの達成を目指しています。
(注)「品質基本方針」「安全衛生基本方針」は以下のURLよりご参照ください。
https://www.fujioilholdings.com/pdf/sustainability/environment/management.pdf
(DE&Iの実践、人材確保・育成)
多様化する顧客ニーズや価値観に対応し、イノベーションを創出するには、多様な価値観を受け入れ、個性を発揮できる職場環境を整えることが重要です。全ての人材が最大限に能力を発揮できるよう、従業員の多様性を尊重します。また、事業競争力を高めていくためには、新たな価値を創出する人材の確保と、各人に期待される技術やスキルの育成が、当社グループと従業員双方の成長にとって要となります。従業員の自律とエンゲージメントを促進する施策と組織風土醸成に取り組んでいます。詳細は「
(GRC)
不確実性が高い事業環境下では、レジリエンスを高め、リスクに強い事業経営を行うことが重要です。BCPの強化、情報セキュリティの強化、コンプライアンスの強化といったリスクの発生、並びにリスク発生時の影響を最小化する取組等、グループのガバナンス強化により企業価値向上を目指しています。詳細は「
(4)リスク管理
当社グループのリスクマネジメント体制の全体像の詳細は、「
また、「
① 人権リスクへの対応
(人権デュー・ディリジェンス)
当社グループは「不二製油グループ人権方針」を掲げ、事業活動が影響を及ぼし得る当社グループ内及びサプライチェーン上の人々の人権尊重責任の実行方針を示し、当方針に基づき人権デュー・ディリジェンスを実施しています。また、人権デュー・ディリジェンスの取組において、事業活動が及ぼし得る人権への負の影響を特定・評価し、優先的に対処すべき重要な課題を特定するため、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」で提唱されるプロセスに則り、外部の有識者の助言を得て、人権インパクトアセスメントを実施しています。
第2回インパクトアセスメントで特定した人権リスクへの対策の進捗については、サステナビリティレポートをご参照ください。
https://www.fujioilholdings.com/sustainability/human_rights/
(救済の実施)
・内部通報制度
国内グループ会社においては、不二製油グループ社内通報窓口(2006年10月設置)及び社外通報窓口(法律事務所、2008年2月設置)を運用しています。また、特定分野の協力会社を対象とした通報窓口としては、適正な取引確保の観点で公正取引ヘルプライン(2019年1月設置)を運用しています。
海外グループ会社においては、グループ会社従業員向けの内部通報制度 不二製油グループコンプライアンス・ヘルプライン(2015年5月設置)を運用しています。一部の海外グループ会社には、上記に加え自社単独の内部通報制度を運用している会社もあります。
国内外いずれにおいても、通報者の秘密・匿名性を確保し、24時間・365日受け付ける等、通報しやすい環境を整備しています。通報内容については速やかに調査し、必要な是正措置や通報者へのフィードバックを行っています。
不二製油グループ本社の内部通報規程では、通報者の秘密・匿名性の確保を保証し、また通報したことを理由に解雇及び不利益に取り扱うことを禁止しています。通報者に対して不利益な取り扱いや嫌がらせ等をした者には、就業規則等に従い処分を課すことができると定めています。
内部通報制度の詳細は以下のURLよりご参照ください。
https://www.fujioilholdings.com/about/governance/compliance/
・サプライチェーン上の人権・環境リスクに対応するグリーバンス(苦情処理)メカニズム
「責任あるパーム油調達方針」を実現する目的で、2018年5月にグリーバンス(苦情処理)メカニズムを構築・公表しました。グリーバンスメカニズムは、ステークホルダーから当社グループに提起されたサプライチェーン上の環境・人権問題について、「責任あるパーム油調達方針」に基づいてパートナーとともにサプライヤーへエンゲージし、問題を改善する仕組みです。
当社ウェブサイトでは、グリーバンス手順書を掲載し、エンゲージ対象企業の定義や、グリーバンス対応プロセスを公開しています。また、四半期に一度、受け付けたグリーバンスへの対応状況を更新し、ステークホルダーへ情報を開示しています。
グリーバンスメカニズムについては以下のURLより当社ウェブサイト(英語)をご参照ください。
https://www.fujioilholdings.com/en/sustainability/grievance_mechanism/
② 気候変動リスクへの対応
当社グループは、2019年5月にTCFD(気候関連財務情報タスクフォース)へ賛同を表明しています。TCFDの提言に基づき、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4項目について、積極的に情報開示しています。
(TCFDの提言に基づく4項目の情報開示)
|
a.ガバナンス |
・ESG担当部門長の管掌のもと、全社リスクマネジメント体制において気候変動リスク・機会を管理。 ・TCFDの提言に基づくシナリオ分析を実施し、経営会議での決議を経たのち取締役会にて承認(年1回以上)。 |
|
b.戦略 |
(ⅰ) 国内グループ会社、主要な海外グループ会社を対象に、TCFDが提言する気候変動シナリオ分析、気候変動リスク・機会の選定、財務インパクトの定性・定量評価を実施。(詳細は「気候変動リスク・機会及び財務インパクトの影響度評価」に記載のとおりです。) (ⅱ) 社会での環境問題を重視する価値観が浸透する中、ミレニアル世代・Z世代を中心とした植物性食品消費の活発化、加えて世界の食の変容や人口増加によるタンパク質の供給量不足を補うべく、プラントベースフード(植物性食品)市場拡大が見込まれる。当社グループは不二製油グループ憲法のビジョン「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」のもと、原料のサステナブル調達による環境保全への配慮、当社グループが強みを持つ植物性素材の提供によって、脱炭素社会における社会課題の解決に取り組む。 |
|
c.リスク管理 |
・経営会議において全社重要リスクの選定、及び対応策の立案、実施、評価・改善等を行う全社リスクマネジメント体制を構築。 ・気候変動リスクも全社重要リスクの一つと位置付け、全社リスクマネジメント体制で管理。対応内容は取締役会に報告(年1回以上)。 |
|
d.指標と目標 |
・2030年目標(注1):CO2排出量の削減 スコープ1+2 総量40%削減(グループ全体)(基準年:2016年) スコープ3(カテゴリ1)総量18%削減(グループ全体(注2))(基準年:2016年) ・「環境ビジョン2030」の目標達成に向け、生産現場における省エネ活動やエネルギー使用量の少ない新設備の導入、再生可能エネルギーの使用等へ積極的に取り組む。 また、スコープ3の中で最も排出量が多いカテゴリ1の削減に向け、サプライヤーエンゲージメントに取り組む。 ・2022年度、不二製油㈱にてインターナルカーボンプライシング(注3)をテスト導入した。今後、全グループ会社に展開し、投資計画の策定・省エネ推進へのインセンティブ・投資意思決定の指針等に活用予定。 |
(注)1.スコープ1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
スコープ2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
スコープ3:事業者の活動に関する他社の排出(カテゴリ1~15)
カテゴリ1:購入した製品・サービス
詳細はサステビリティレポートをご参照ください。
https://www.fujioilholdings.com/sustainability/environment/management/
2.INDUSTRIAL FOOD SERVICES PTY LIMITED(オーストラリア)は除く。
3.インターナルカーボンプライシング:企業が独自に炭素価格を設定し、企業の低炭素投資・対策を推進する仕組み
<気候変動リスク・機会及び財務インパクトの影響度評価>
③ 生物多様性リスクへの対応
当社グループの事業活動は豊かな自然環境や生態系の恩恵を受けると同時に、気候変動だけでなく生物多様性にも影響を与えています。2022年度制定の「不二製油グループ生物多様性方針」(注)に基づき、世界各地の原料産地や事業拠点で、ステークホルダーとともに、生物多様性の保全と回復に向けた取組を推進しています。
(注)
(5)指標及び目標
当社グループでは、サステナビリティに関する指標及び目標として、以下を設定しております。
① ESGマテリアリティ
各ESGマテリアリティについて、管掌者及び推進責任者を定め、以下のような具体的な目標や施策、取組を推進しています。
その他の取組テーマの指標及び目標についてはサステナビリティレポートをご参照ください。
https://www.fujioilholdings.com/sustainability/materiality/
(サステナブル調達)
主原料及び戦略原料である以下の4つの原料につき、持続可能な調達を実現するための中長期目標とKPIを設定し取組を推進しています。
(環境ビジョン2030)
2030年に達成を目指す「環境ビジョン2030」において、グループ全体のCO2排出量・水使用量・廃棄物量の削減及び資源リサイクルに対するコミットメントを表明し、環境への取組を推進しています。
② 中期経営計画における非財務KPI
中期経営計画「Reborn 2024」における経営目標において非財務KPIを掲げています。
詳細は「
(6)人的資本・多様性
当社グループは、世界の食への貢献、グローバル化を進めてきたことで連結従業員総数のうち約7割が海外エリアの従業員となりました。当社グループが社会に貢献し、成長し続けるには、多様な人材が活躍できる環境や風土を整えることが重要であると考えます。
企業の活動を支えるのは人材であり、企業の持続的な成長を支える大切な財産です。多様な人材が成長しながら、いきいきと挑戦と革新に取り組み、一丸となって新しいビジネスや技術、製品を生み出し続けることがグループの発展につながると考えております。
① 事業戦略と連動する人的資本の考え方
当社グループにおきましては、近年、海外におけるM&Aによる事業拡大や、新市場への成長投資、資本効率の改善のための事業・資産譲渡等を進めてまいりました。また、当年3月には、連結子会社であるBlommer Chocolate Companyの事業基盤と収益力の再構築を図るべく、構造改革の実施を公表いたしました。これらは当社グループがグローバルな食品メーカーとして世界の食に貢献し、持続的に企業価値を向上させるためであります。
このような変化の中で、不二製油グループ憲法のミッションを達成し、持続的にグループを成長させることは、不二製油グループの多様な人材の能力の発揮により実現できると考えております。当社グループのグローバルで多様な人材が、ビジョンの実現に向けて一体となって力を最大限発揮できるよう、成長の機会の提供と職場環境の整備を行ってまいります。
② 人材戦略
不二製油グループ憲法のビジョンの実現に向け、中長期的な視点で人材育成に取り組んでおります。
当社グループでは、人材戦略の目標を「グローバルに貢献する食品メーカーとしてグループと従業員双方が持続的に成長し企業価値の向上を実現する」としております。
人材戦略の目標を実現するためには、多様な人材がそれぞれの強みを発揮して主体的に挑戦し続け、一つのチームとなって企業価値の向上に向けて活躍することが必要です。当社グループでは、中期経営計画「Reborn 2024」で、サステナビリティに関する方針の一つとして「人材活用」を掲げ、人材の確保と育成、能力を活かす適正配置、専門性を最大限に活かす人事制度の設計と運用、及びダイバーシティを深化させたDE&Iの推進により、人材戦略の目標達成に向けて取り組んでおります。
人材の成長と能力の発揮は中長期的に時間をかけて進めていくものと認識しておりますが、当社グループの人材に係る活動は、グループの経営計画や事業戦略に沿い、状況変化に柔軟に対応してまいります。
当社グループの人材戦略のイメージは次のとおりです。
(「Reborn 2024」人材活用)
中期経営計画「Reborn 2024」の3つの基本方針のうち、「サステナビリティの深化(経営戦略と一体化したサステナビリティ戦略)」のテーマのひとつに「人材活用」を掲げ、以下の3つの方針のもと取組を進めております。
中期経営計画における方針① グローバル経営を支える人材の確保・育成・適正配置
改善・改革マインドを持って自律的に行動し、多様かつ高度な専門性と能力を発揮し、継続的に成果を出す組織を目指し、優秀な人材の確保や、一人ひとりが自律して能力を向上させるためのキャリア支援等の活動に注力しております。また、世界で事業を継続的に推進・拡大するための要となる、グローバルに力を発揮できる人材の登用・育成を進めております。
中期経営計画における方針② DE&Iの推進
複雑で急速に変化するビジネス環境に対応していくためには、多様な人材が求められ、個性や能力を最大限に活かすことが重要と認識しております。そのため、当社グループでは、これまでのダイバーシティ推進を進化させ、DE&Iとして活動を強化しております。
中期経営計画における方針③ コミュニケーションの強化
多様な人材が成長できる労働環境の整備として、経営層とグループ従業員の対話機会の増加、経営への参画意識の向上に向けた活動、健康経営等、グループとしての一体感の醸成に努めております。
③ 人事施策
人材戦略の目標を達成するために、中長期的には不二製油グループ憲法のビジョンを実現するための施策と、経営環境に応じて事業戦略と連動した施策をタイムリーに設定しております。
主な施策
|
・経営人材候補の育成 |
:重要ポストのサクセッションに向けた選抜人材の育成 |
|
・人材登用・採用 |
:海外勤務ローテーション、キャリア人材の採用、シニア層の活躍支援 |
|
・DE&I |
:グループ会社の経営層における外国人・女性の登用 |
|
・労働環境整備・ウェルビーイング |
:健康経営、不二製油グループ人権ガイドラインの策定 |
|
・人事制度設計・運用 |
:個々の専門性を最大限に活かす人事制度の導入 |
グループの事業活動を継続し、成長を支えるため、経営人材として、執行役員やグループの主要会社の経営ポストを担う人材を育成しております。また、事業戦略に応じたキャリア人材の採用や、将来に向けた計画的な人事ローテーションを行うとともに、熟練社員の知見と技術を次世代に伝えるべくシニア層が活躍できる制度を整備しています。
当社グループがグローバルに人的資本価値を最大に発揮するため、多様な従業員の力を経営に活かして、グループの競争力の確保、継続的な企業価値の向上につなげていきたいと考えております。人権や価値観を尊重し、DE&Iの取組を進め、広くオープンな成長の機会と、実績や能力の客観的な評価で多様性を向上させてまいります。また、各種研修や教育等の機会を通して情報共有を行い、全従業員に対し、等しく成長の機会を提供しています。
(エンゲージメントサーベイの実施と課題認識)
不二製油グループでは、2023年度にエンゲージメントサーベイの実施を開始いたしました。
不二製油グループ本社㈱及び不二製油㈱の従業員を対象に行ったサーベイでは、「職務」「自己成長」「健康」「支援」「人間関係」「承認」「理念戦略」「組織風土」「環境」の9分野についてそれぞれ評価が行われました。2023年度のサーベイでは、従業員のミッション・ビジョン等の理念に対する共感や、経営方針や事業戦略への理解、納得感や自社事業への誇り等を評価する「理念戦略」のスコアが他分野と比較して低い傾向にあり、大きな課題であると認識しています。理念及び戦略は、不二製油グループ憲法や経営計画、事業戦略等の、不二製油グループの考えの中心となりグループの方向性を決めるものであり、これらへの従業員の深い認識と理解、共感がグループの成長には不可欠であると認識しております。従業員が不二製油グループの一員であることに誇りを持って働くことができ、グループと個人の両方が成長できる不二製油グループとなるよう、サーベイの結果を活用したエンゲージメントの向上に一層注力してまいります。
(コミュニケーションの機会の提供、「FUJI Connect」による従業員への情報共有)
上述のとおり、エンゲージメントサーベイでは、主に「理念戦略」に課題があると認識をしており、コミュニケーションの機会の提供や情報の共有等の対応を進めることによりグループ全体のエンゲージメントの向上を図ってまいります。
グループトップである当社代表取締役社長をはじめとした経営メンバーとの直接の対話の機会の創出、業績や事業に関する説明会の開催、グループウェブコミュニケーションツール「FUJI Connect」での情報発信、対面でのグループミーティングの開催、ウェブを活用した相互コミュニケーション等、会社の方針や事業状況を知る機会を積極的に増やしています。
不二製油グループが持続的に成長するためには、従業員が企業と自ら両方の成長のために多様性を発揮できる環境のなかで、グループの経営目標や経営戦略を理解、共感し、一人ひとりがそれぞれの役割を認識して積極的に活動することが重要と考えております。
また、昨今の不二製油グループを取り巻く事業環境においては、事業領域の拡大や急速な市場環境の変化に加え、コロナ禍を経た就業環境の変化により、コミュニケーションの重要性が一層高まっております。経営メンバーとグループ従業員、従業員同士が、活発なコミュニケーションを行い、全従業員が一体となっていきいきと働ける健全な企業風土の醸成に努め、経営参画意識の向上を目指します。
|
|
|
|
(上写真)グループトップをはじめ経営メンバーが各拠点・グループ会社に赴き、対面での交流、意見交換を通して、経営目標、経営戦略の理解と浸透、経営参画意識の向上につなげています。
|
ウェブ上のグループコミュニケーションの場として「FUJI Connect」を開設しております。トップメッセージの発信、市場状況、グループ各社の活動紹介等を掲載し、経営目標、経営戦略の伝達と理解・浸透、グループの一体感の醸成、経営メンバーと従業員、グループ従業員間のコミュニケーションに活発に活用されています。 従業員のモバイル端末や会社のパソコン等からアクセスができる、身近なコミュニケーションツールです。 (右写真)グループトップの新年ウェブメッセージ |
|
(下写真)グループ各社のトップのメッセージを掲載
|
|
|
|
(人的資本に関する指標及び目標)
不二製油グループ本社㈱及びグループの中核の事業会社である不二製油㈱を指標の対象としております。
|
指標 |
実績 |
目標 |
|
|
(2022年度 73.9%) 2023年度 |
|
|
新卒採用男女比率 (生産職を除く) |
(2022年度 男性 4.0:女性 1) 2023年度 男性 0.9:女性 1 2024年度 男性 0.8:女性 1 |
男女比率 1:1 |
|
|
(2022年度 64.5%) 2023年度 |
|
・年次有給休暇取得率
2021年に、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画におきまして、従業員の仕事と生活の調和を尊重しながら能力を十分に発揮できる環境を計る指標として有給休暇取得率目標を設定しております。2025年度まで65%以上を継続することを目標にしており、2023年度は73.2%の取得率となりました。今後も心身の健康を保つためのリフレッシュの機会としての有給休暇の高い取得率目標の達成を継続したいと考えております。
・新卒採用男女比率(生産職を除く)
「
2024年度の新卒採用における生産職を除く男女人数比は、上記の表のとおり女性1に対し男性0.8でした。また、生産職を含む全体の男女比率につきましては、男性54%、女性46%であり、男女の人数に顕著な偏りはありませんでした。
・育児休業取得率(男女計)
2025年度に80%の取得を目標として設定しております。関連指標として「
(健康経営への取組)
当社グループの健康経営への取組は、経済産業省及び日本健康会議より以下の評価を得ております。
・経済産業省及び日本健康会議 健康経営優良法人2024 大規模法人部門(ホワイト500)
不二製油グループ本社㈱(7年連続)、不二製油㈱(7年連続)
・経済産業省及び日本健康会議 健康経営優良法人2023 大規模法人部門
㈱フジサニーフーズ(6年連続)
・経済産業省及び日本健康会議 健康経営優良法人2022 中小規模法人部門
オーム乳業㈱(6年連続)
詳細は以下のURLよりご参照ください。
サステナビリティレポート「従業員の健康維持・促進(健康経営)」
https://www.fujioilholdings.com/sustainability/health/
不二製油グループ本社㈱ ニュースリリース
「健康経営優良法人2024 大規模法人部門(ホワイト500)」に認定されました
https://www.fujioilholdings.com/pdf/news/2024/20240311_white500.pdf
不二製油㈱ウェブサイト「健康経営」
https://www.fujioil.co.jp/company/health/
不二製油㈱ウェブサイト「健康経営」内「健康白書2023」
https://www.fujioil.co.jp/pdf/company/health/0901healthwhitepaper-2023.pdf
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものです。
(1)不二製油グループのリスクマネジメント体制について
当社グループは、日本・米州・欧州・東南アジア・中国の各エリアで主要4事業を展開していることから、当社グループのバリューチェーンには社会課題・経済環境変化等の影響を受けた、様々なリスクが潜在しています。当社グループでは、グループ本社の経営会議を全社リスクマネジメント機関と位置付け、グループを取り巻く環境を踏まえた情報ソースから、経営への影響度、発生可能性、顕在化時期等を総合的に判断して全社重要リスクを選定し、対応策の立案、実施、進捗確認、評価・改善等を推進しています。さらに取締役会によるモニタリングの下、リスクを管理する全社リスクマネジメント体制を構築しています。
(2)不二製油グループの重要なリスク(全社重要リスク)
① 全社重要リスクの特定
グループ本社では、グループ戦略上のリスクや財務リスク、「社会・環境課題が当社グループに与える影響度」が大きいと認識したESGマテリアリティを踏まえ、リスクを網羅的に把握し、全社重要リスク分科会での検討・議論を経て、グループ本社の経営会議(全社リスクマネジメント機関)で全社として認識・対応すべき重要なリスクとして審議・特定し、モニタリング機関の取締役会に報告しています。
加えて、グループ各社特有のリスク対応として、各社のリスクマネジメント委員会が中心となってリスクアセスメントの実施を通じてリスクマップを作成し、それぞれのオペレーショナルリスクを特定しています。
② 全社重要リスクの対応とモニタリング
特定された全社重要リスクについて、管掌責任者並びに対応策を定めています。また、リスク管掌部門の推進責任者による対応策の進捗状況、及び全社重要リスクの見直し・選定実施について、全社重要リスクの管掌責任者より、定期的にモニタリング機関の取締役会に報告し、確認されています。2023年度に特定された12項目の全社重要リスクは、個別の進捗や課題状況を全社重要リスク分科会において議論し、適宜経営会議に報告しながらリスク低減を図りました。また、対応策の進捗状況はグループ本社の経営会議に報告された後、全社重要リスクの管掌責任者から取締役会に報告され、顕在化したリスクの発生原因、対応策と妥当性、適時性等を確認する予定です。
③ 不二製油グループ全社重要リスク
当社グループにおいて、投資者の判断に重大な影響を及ぼす可能性があり管理すべき重要なリスクとして以下の12項目を特定し、各リスク対応の管掌責任者を定め、対応方針を策定しています。なお、将来事項に関する記述につきましては、2024年3月31日現在において入手可能な情報に基づき、当社が合理的であると判断したものです。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績、キャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが入手可能な情報に基づき作成したものです。実際の成果や業績は、今後様々な要因によって、記載されている内容とは異なる可能性があります。
(1)重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。連結財務諸表を作成するに当たり、必要な見積りを行っており、それらは資産、負債、収益及び費用の計上金額に影響を与えております。これらの見積りは、その性質上判断及び入手し得る情報に基づいて行いますので、実際の結果がそれらの見積りと相違する場合があります。特に以下の事項は、経営者の会計上の見積りの判断が財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼすと考えております。
なお、当連結会計年度の連結財務諸表に計上した金額が会計上の見積りによるもののうち、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがある重要な会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(繰延税金資産)
繰延税金資産は、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を十分に検討し、回収可能見込額を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じ、課税所得が減少した場合、繰延税金資産が取り崩され、税金費用を計上する可能性があります。
(有形・無形固定資産の減損処理)
減損の兆候のある資産又は資産グループについて、回収可能価額に基づき減損の判定を行っております。回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のいずれか高い方により測定しております。回収可能価額は、事業計画や市場環境の変化により、その見積り金額の前提とした条件や仮定に変更が生じ減少した場合、追加の減損処理が必要になる可能性があります。
(退職給付費用及び退職給付債務)
当社グループは、退職給付費用及び退職給付債務について、割引率等、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しております。実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は将来にわたって規則的に認識されるため、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
① 経営成績の状況の分析
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、世界的なインフレの進行とそれに伴う金利水準の高止まりや、国際情勢の緊迫による社会不安等により先行き不透明な情勢が続きました。日本においては金融緩和政策の継続による円安の進行や、一部食料品の値上がりが続いたものの、国内外からの観光客の増加等により、飲食業や宿泊業等サービス分野における消費が回復していることもあり、景況は底堅く推移しました。
原材料相場においては、カカオ豆の原材料価格は年度末にかけて歴史的な高騰が見られた一方、パーム油や大豆の原材料価格は安定的に推移しました。
このような状況の下、当社グループは事業軸のマネジメント強化により、グループ各社の収益改善施策の実行を本社が支援することで、経営資源の最適配分を進めております。2023年4月にはFuji Oil New Orleans, LLC(米国、以下「FVN」)の固定資産譲渡を行う等、高付加価値製品へのポートフォリオの入れ替えを進めているほか、東南アジアではサステナブル認証油の供給体制を強化する等、市場における競争優位性の確立に向け、取組を進めてまいりました。
なお、Blommer Chocolate Company(米国、以下「Blommer」)においては、2019年買収後に生じたコロナ禍の影響、原材料価格や金利の上昇及びインフレに伴う固定費増加等により収益性が低下し、当連結会計年度において特別損失を計上しました。また、Blommerの事業基盤と収益力の再構築を図るべく、2028年度までの5年間の構造改革を発表し、取組を実行しております。
以上の結果、当連結会計年度における連結経営成績は、売上高は5,640億87百万円、営業利益は182億13百万円、経常利益は167億91百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は65億24百万円となりました。
(単位:百万円)
|
|
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
親会社株主に帰属 する当期純利益 |
|
2024年3月期 |
564,087 |
18,213 |
16,791 |
6,524 |
|
2023年3月期 |
557,410 |
10,940 |
9,690 |
6,126 |
|
前期比 増減 (前期比 増減率) |
+6,676 (+1.2%) |
+7,273 (+66.5%) |
+7,101 (+73.3%) |
+397 (+6.5%) |
セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。
(単位:百万円)
|
|
売上高 |
前期比 増減 |
前期比 (%) |
営業利益 |
前期比 増減 |
前期比 (%) |
|
植物性油脂 |
185,350 |
△18,097 |
△8.9% |
15,439 |
+8,418 |
+119.9% |
|
業務用チョコレート |
253,408 |
+24,895 |
+10.9% |
1,840 |
△3,132 |
△63.0% |
|
乳化・発酵素材 |
89,855 |
△1,309 |
△1.4% |
3,793 |
+2,302 |
+154.5% |
|
大豆加工素材 |
35,472 |
+1,188 |
+3.5% |
1,040 |
△237 |
△18.6% |
|
連結消去・グループ管理費用 |
- |
- |
- |
△3,900 |
△77 |
- |
|
合 計 |
564,087 |
+6,676 |
+1.2% |
18,213 |
+7,273 |
+66.5% |
(植物性油脂事業)
売上高は、主原料であるパーム油等の原材料価格の下落に伴う販売価格の下落や、FVNの固定資産譲渡に伴う売上高の減少により減収となりました。営業利益は、前期に販売が好調であった東南アジアの反動はあったものの、日本、米州、欧州での原材料価格の安定に伴う採算性の改善や、FVNの固定資産譲渡による固定費の減少等を主要因として増益となりました。
(業務用チョコレート事業)
売上高は、原材料価格の上昇に伴う販売価格の上昇や、ブラジルや欧州での販売数量増加、円安の影響等により増収となりました。営業利益は、日本や欧州での土産市場向けの販売回復や東南アジアでの価格改定による採算性の改善が見られたものの、米国における菓子市場の需要停滞に伴う販売数量の減少や人件費等の固定費の増加、原材料価格高騰に伴う採算性の一時的な悪化により減益となりました。
(乳化・発酵素材事業)
売上高は、東南アジア及び中国での販売数量の減少や原材料価格の下落に伴う販売価格の下落により減収となりました。営業利益は、日本でのクリーム等の堅調な販売に加え、中国における採算性の改善等により増益となりました。
(大豆加工素材事業)
売上高は、円安による原材料価格の上昇に伴う販売価格の上昇により増収となりました。営業利益は、販売価格の適正化を進めましたが、欧州新工場稼働開始に伴う減価償却費の増加等により減益となりました。
② 財政状態の状況の分析
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ14億31百万円増加し、4,702億21百万円となりました。中期経営計画「Reborn 2024」において、資本効率の向上と財務モニタリング強化により事業基盤の強化・再構築を進め、財務体質の改善に取り組んでおります。
当連結会計年度末における連結財政状態は、以下のとおりです。
(単位:百万円)
|
|
|
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減 |
|
|
流動資産 |
227,771 |
236,858 |
+9,086 |
|
|
有形固定資産 |
159,855 |
150,750 |
△9,104 |
|
|
無形固定資産 |
57,322 |
55,221 |
△2,100 |
|
|
その他資産 |
23,841 |
27,390 |
+3,549 |
|
資産 |
|
468,789 |
470,221 |
+1,431 |
|
|
有利子負債 |
168,417 |
130,286 |
△38,130 |
|
|
その他負債 |
89,389 |
95,643 |
+6,254 |
|
負債 |
|
257,806 |
225,929 |
△31,876 |
|
純資産 |
|
210,983 |
244,291 |
+33,307 |
(資産)
当連結会計年度末の資産は、現金及び預金の増加等により流動資産が増加しました。有形固定資産は、FVNの固定資産譲渡及びBlommerの固定資産減損等により、減少しました。以上の結果、前連結会計年度末に比べ14億31百万円増加し、4,702億21百万円となりました。
(負債)
当連結会計年度末の負債は、短期借入金の返済等により有利子負債が減少しました。
以上の結果、前連結会計年度末に比べ318億76百万円減少し、2,259億29百万円となりました。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産は、米ドル、ユーロ等に対する円安による為替換算調整勘定の増加及び利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ333億7百万円増加し、2,442億91百万円となりました。
1株当たり純資産額は前連結会計年度末に比べ341円61銭増加し、2,700円95銭となりました。自己資本比率は前連結会計年度末比6.1ポイント増加し、49.4%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
当社グループは、財務規律を維持・向上するため、着実な利益成長とキャッシュ・コンバージョン・サイクルの短縮により、フリー・キャッシュ・フローを安定的に創出することを基本方針としております。
当連結会計年度末におけるキャッシュ・フローの状況は、以下のとおりです。
(単位:百万円)
|
|
2023年3月期 |
2024年3月期 |
増減 |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
7,594 |
48,242 |
+40,648 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△16,487 |
8,803 |
+25,291 |
|
フリー・キャッシュ・フロー |
△8,893 |
57,045 |
+65,939 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
9,804 |
△50,007 |
△59,812 |
|
現金及び現金同等物 |
18,991 |
27,480 |
+8,488 |
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、482億42百万円の収入となりました。営業利益の増加に加え、棚卸資産の適正化等の運転資本の改善が進んだこと等により、406億48百万円収入が増加しております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、88億3百万円の収入となりました。FVNの固定資産譲渡等による収入に加え、設備投資の厳選により、252億91百万円増加しております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、500億7百万円の支出となりました。運転資本の改善及び固定資産譲渡による短期借入金の返済を主要因として、598億12百万円減少しております。
(3)資本の財源及び資金の流動性
当社グループは円滑な事業活動に必要十分な流動性の確保と財務規律の維持及び財務健全性の向上を基本方針とし、中長期的な企業価値向上を実現すべく、資本コストを意識した経営を実践しております。
当社グループの主な資金需要は、生産活動及び販売活動に必要な運転資金、生産性向上のための設備投資、成長基盤強化のための事業投資等です。資金の源泉は、営業活動によるキャッシュ・フローと金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパー並びに社債の発行等による資金調達です。
短期運転資金はグループ営業キャッシュ・フローとコマーシャル・ペーパー発行及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資及び事業投資の資金は金融機関からの長期借入のほか、社債発行による資金調達を行っております。
当社グループは複数の金融機関との間で当座貸越契約を締結しているほか、コマーシャル・ペーパー発行枠及び国内社債発行枠の登録により資金調達手段の多様化を図り、事業運営に必要な資金の流動性を十分に確保しております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債残高は1,302億86百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は274億80百万円となっております。
(4)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当社グループの生産品目は広範囲、多種多様であり、かつ、製品のグループ内使用(製品を他のグループ会社の原材料として使用)が数多くあるため、セグメント別(連結ベース)に生産実績を、金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産の実績については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ① 経営成績の状況の分析」における各セグメントの業績に関連付けて示しております。
② 受注実績
当社グループは需要予測に基づく見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
③ 販売実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ① 経営成績の状況の分析」に記載のとおりです。
(1)株式会社J-オイルミルズとの業務提携及び株式相互保有に関する契約
① 株式の持ち合い
相互に相手方株式を保有します。
② 原料・資材の効率的調達
原料・資材の共同調達により安定調達及びコスト低減を図ります。
③ 中間原料油の相互供給
双方の強みを活かした中間原料油の相互供給により、使用製品の機能強化、コスト削減を図ります。
④ 相互の生産設備の有効活用
両社が有する生産設備を相互に有効活用し、生産の効率化を図ります。
⑤ 物流業務の効率化
物流拠点の集約化、共同配送・共同輸送等により、物流業務の効率化、コスト低減を図ります。
⑥ その他
双方にメリットのある取組を行います。
(2)当社連結子会社における固定資産譲渡に関する契約
当社は、2023年4月10日開催の取締役会において、当社の連結子会社であるFuji Oil New Orleans, LLCによる固定資産の譲渡を決議し、同日付で譲渡契約を締結し、2023年4月14日に譲渡いたしました。
① 譲渡の理由
当社グループは、2022年5月公表の中期経営計画「Reborn 2024」の基本方針に「事業基盤の強化(収益力復元と新しい価値創造)」を掲げ、既存ビジネス領域における高付加価値製品へのポートフォリオの入れ替え、及び成長・戦略分野への経営資源の集中を進めてまいりました。当該施策の一環として、北米油脂ビジネスにおける環境変化への対応強化、及び財務体質の改善を図るべく保有資産の譲渡を決定いたしました。
② 譲渡資産の概要
|
所在地 |
2700 U.S. Highway 90, Avondale, LA 70094 U.S.A. |
|
資産の内容 |
機械設備(南方系油脂の精製・貯蔵・積み出し設備) |
③ 譲渡先の概要
|
名称 |
Loders Croklaan USA, LLC |
|
所在地 |
24708 West Durkee Road, Channahon, IL 60410 U.S.A. |
|
代表者の役職・氏名 |
取締役社長 Brett Caplice |
|
事業内容 |
加工油脂の製造・販売 |
|
設立年月日 |
2002年9月 |
|
大株主及び持株比率 |
Bunge Croklaan USA Loders B.V.による100%出資 |
(注)譲渡先と当社の間には南方系油脂の販売等の取引がありますが、資本関係、人的関係、関連当事者について、特記すべき事項はありません。
④ 連結損益に与える影響
当連結会計年度において、固定資産売却益132億55百万円を特別利益として計上しております。
当社グループは、植物性油脂とたん白を基盤とする新しい機能を持つ食品素材の開発に取り組んできました。長年積み重ねてきた研究成果と先進の技術力を生かし、不二製油グループ憲法のビジョン「植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来を共創します。」に向けて、新技術・新素材の開発による事業シナジーの最大化や新たなビジネスモデルの創出を目指した研究開発活動を実施しています。世界中の人々の食べることの歓びと健康に貢献することをモットーに、社会になくてはならない会社になるための研究開発活動に努めています。
日本国内の「不二サイエンスイノベーションセンター」、「つくば研究開発センター」を研究開発の中核拠点とし、主に中国・アジア地域に設置した、顧客との共創の場である「フジサニープラザ」、オランダのフードバレーの中心となるワーヘニンゲン大学キャンパス内に2021年度に開設した「フジグローバルイノベーションセンターヨーロッパ」、そして各グループ会社の研究開発部門が連携し、事業戦略と一体となったグローバルな研究開発を目指しています。また、イノベーションを推進するため、国内外の大学や研究機関とのオープンイノベーションや顧客との共創活動を強化しています。
知財戦略室及び知的財産グループでは、コア技術をベースに磨き上げてきた成果を特許ポートフォリオとして構築し、差別化された製品の市場優位性や価格決定力を確保しています。各主要事業においての市場優位性や価格決定力に影響し得る重要特許シェア率(注1)では国内トップレベルに、将来の重要特許を生み出すための人材投資(≒新規発明者数)(注2)では国内外の競合と比較しても上位に位置しています。
技術開発部では、「安全、品質、環境」にこだわり、コア技術の強化・革新に関する研究開発を進めております。
当連結会計年度の研究開発費の総額は
(注)1.油脂、チョコレート関連特許は、2013年以降における油脂、チョコレート等に関する特許分類に基づいて抽出された母集団を定義。母集団の被引用数上位5%に該当するものを重要特許として定義。
2.2013年以降に新たに出願した発明者のみを集計して算出。
3.重要特許シェア率が1%を超えている企業をグラフに表示。
研究開発活動の概要は次のとおりです。
(植物性油脂事業)
安全・安心で環境に配慮した油脂の製造技術、新機能を有する油脂製品、及びその最適な応用法に関する研究開発を通して、顧客の要望を形にし、新しいおいしさの創造に貢献しております。
当連結会計年度の主な成果としては、国内外のココアバターの価格高騰によるチョコレート菓子市場への価格変動対応策として、コストと品質のバランスを重視した、低価格仕様のCBE(注1)を開発、顧客への品質選択肢を広げる製品拡充を図り、市場需要に対応しました。
また、引き続き国内外で市場拡大が進んでいるプラントベースフード(植物性食品)向けや、冷凍食品向けに広く利用されている動物代用油脂については、動物性油脂不足に対応して実績化が進んでいます。植物性油脂に不足しがちな風味の満足感についても、当社独自技術の分散技術であるDTR技術(注2)を組み合わせることで、動物性油脂の味覚満足感に近づける開発を行い、需要拡大を進めております。
栄養健康分野においては、当社の風味劣化抑制技術を用いた安定化DHA・EPA素材が、新たに子供向けチーズに採用されました。また、製品形態についても、粉末、乳化製剤の開発を進め、加工利用し易い製品の拡充を図り需要喚起を進めております。
DTR技術を応用した粉末油脂機能剤や、エステル交換技術の応用によって呈味改質機能を付与した油脂素材についても、その風味向上効果が高く評価され、完全栄養食分野や、高たん白製品分野での市場導入が進んでおります。
従来の油脂結晶制御技術、酵素応用技術の深掘も継続して技術革新を進めております。工程効率化や環境負荷低減、及び欧州を中心に規制が強化されている危害物質(3-MCPDやGE、MOH)除去につながる製造技術開発に一層注力し、国内及びグローバル市場環境にも対応可能な油脂素材として、提案を継続しております。
当事業の研究開発費は
(注)1.CBE:Cocoa Butter Equivalentの略。ココアバターと同等の物性を持ったチョコレート用油脂。
2.DTR技術:水溶性成分を油脂に微分散させる技術で、素材の呈味(塩味、旨味、辛味等)や保存安定性を付与増強する技術。
(業務用チョコレート事業)
チョコレートの新技術開発、社会課題解決のための原料選定、商品開発、及び消費者の新たな価値を具現化したアプリケーションと共にソリューション提案を行っております。
近年のプラントベースフードへの関心の高まりを受けて開発した動物性原料不使用の「プラントベースチョコレートMB」は、クセのないニュートラルな風味、色合いが、組合せ素材の特徴を活かすことを見出し、採用の拡大につなげました。このミルクタイプ、ホワイトタイプの2品は、植物性素材でおいしさと健康を追求し、サステナブルな食の未来共創の実現を目指し立ち上げたGOODNOONブランドの製品として、益々の拡販が見込まれます。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「植物性タンパク資源の創造」)また、洋菓子のデコレーション用として開発したチョコソースは、その風味もさることながら、従来品の課題であったクリームへの滲みが起こらず、メリハリのある見た目を演出できることからも高い評価を得ております。
日本人の繊細な味覚を満足させるJapan Qualityを掲げて開発したクーベルチュール「カカオクオリー®」は、その品質の高さと、サステナブルカカオを使用していることが、多くのパティシエより高く評価されております。当連結会計年度は新たにホワイトタイプを上市しました。各種素材との相性を考え抜き作り上げた品質で、クオリーシリーズの更なる拡販に貢献しております。
当社グループ会社の中でも最大規模のBlommer Chocolate Companyは、健康訴求性の高い無糖・低糖チョコレート分野において米国内でトップシェアを誇ります。昨年度に引き続き、低糖でもナチュラルなおいしさを有する「Discovery」シリーズが、冷菓・ベーカリー・栄養バー等多くの市場で高評価を得て、採用を順調に伸ばしております。また、HARALD INDÚSTRIA E COMÉRCIO DE ALIMENTOS LTDAでは、新工場稼働に合わせ、新製品開発を加速しております。「Harald Top®」シリーズは、豊かな風味と優れた作業適性を併せ持つコンパウンド製品の大人気シリーズです。当連結会計年度はヘーゼルナッツ味、エクストラミルク味に続いて、キャラメル味の「Top Caramelo」を上市し、顧客から好評を博しております。
コロナ禍が落ち着いた当連結会計年度は、一部対面にて各グループ会社の中長期のイノベーション戦略や新製品開発情報の共有、及び技術議論を行いました。今後一層連携を強化し、戦略的な技術情報交換や新製品共創を行うことで、カカオ豆の価格高騰やインフレ等の急速な環境変化に迅速に対応してまいります。
当事業の研究開発費は
(乳化・発酵素材事業)
ホイップクリーム、調理用クリーム、ドリンクベース、マーガリン、フィリング、チーズ風味素材、パイ製品等の乳製品代替素材、弊社独自のUSS製法による豆乳を活用した植物性素材の新技術・新製品開発、及びアプリケーション開発を行っております。
当連結会計年度は、原料事情や市場の変化に迅速に対応した新製品開発を行い、大きく利益貢献を果たしました。カスタードフィリング、ホイップクリームでは、昨年度からの鳥インフルエンザの影響や乳価高騰による原料供給不足に対応した新製品を多く上市しました。また、人流回復、インバウンド需要の回復等に伴う外食市場での需要増加に対応したドリンクベース、チーズ風味素材の製品開発に取り組みました。さらに、人手不足の課題に向けた、手炊き風のカスタードフィリング「フローマリッシュ®」上市等、顧客の課題に寄り添った製品の開発、提案を進めました。チルドデザートの計画生産や賞味期限延長に貢献できる、冷解凍してもおいしさを損なわないホイップクリームの採用は、昨年度に引き続き順調に伸長しております。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「フードロスの削減とアップサイクル」)植物性素材では、特においしさにフォーカスした製品開発に注力し、差別化した製品として市場で高く評価されております。豆乳クリームバター「ソイレブール®」は昨年度の農林水産技術会議会長賞に続き、第53回食品産業新聞社主催の産業技術功労賞を受賞いたしました。また、当連結会計年度は新たにシートタイプ「ソイレブール®シート」を投入し、高い評価を受けております。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「植物性タンパク資源の創造」)
一方、海外では中国広東省肇慶市に竣工したクリーム新工場の稼働がスタートし、リーズナブルな低乳脂タイプ「淡奶油」及び生クリームを配合した本格風味の中乳脂タイプ「含乳脂奶油」を上市しました。10月には、不二(中国)投資有限公司の市場開発メンバーが来日し、日本の市場開発メンバーと共に、クリームを中心とした不二(中国)投資有限公司の製品を用いた洋菓子やパン等のアプリケーション開発に取り組みました。帰国後は習得した技術を顧客提案に活用し、採用に向けて活動しています。
当事業の研究開発費は
(大豆加工素材事業)
大豆たん白、大豆たん白食品、大豆ペプチド、大豆多糖類等の開発を行っております。
当連結会計年度の主な成果としては、粉末状大豆たん白素材は、一層の製品風味向上と粉末溶解性を高める技術を開発し、粉末飲料向けの「プロリーナ®HD505」、液体飲料(中性タイプ)向けの「プロリーナ®23LG」、液体飲料(酸性タイプ)向けの「プロリーナ®BUJ」の3製品を上市、市場の広がりを見せるプロテイン飲料市場向けの製品ラインナップの充実を図り、市場での採用が順調に伸長しております。大豆ペプチドについては、生産拠点である天津不二蛋白有限公司の開発と共創し、製品風味を高めた飲料用途向けの「ハイニュート®DC8」を上市しました。日本国内のみならず、中国・台湾・東南アジアでの市場拡大に向け、提案を進めており、特に栄養健康市場において採用が伸長しております。
粒状大豆たん白素材では、新しい大豆ミート素材として開発した「プライムソイミート」が、インバウンド需要が高まる中、プラントベースコンセプトのラーメン店や大手外食チェーンに採用されました。加えて、国産大豆の甘味や旨味、口溶けの良い食感にこだわった新しい大豆加工素材「プライムソイ国産大豆」を上市しました。シリアルやスナックとしても、料理用の食材としても利用できる素材として、スナック菓子メーカーやホテルレストラン等で採用に向けて検討されています。また、昨年度に引き続き、粒状大豆たん白を白米等の一部と置き換えた米飯製品が、大手コンビニエンスストアで採用されております。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「植物性タンパク資源の創造」及び「糖質低減」)
ECチャネル活用の取組として、国内最大級のお菓子・パン作りのための総合サイト運営会社である株式会社cottaとのコラボレーションにより、最終消費者との接点を強化しています。“カラダにやさしい”をテーマとした新 EC メディア「cotta tomorrow」では、cottaブランドにて、大豆ミート素材商品2品が発売されました。
また、大豆加工時の副生成物である大豆ホエーの有効利用に取り組んでいます。汚染土壌対策の分野において、資源循環型のバイオレメディエーション(注)用浄化促進剤「ソイビオ®MA」の採用が伸長しております。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「フードロスの削減とアップサイクル」)。
当事業の研究開発費は
(注)バイオレメディエーション:微生物の作用で環境汚染を修復する技術
(中長期視点での研究活動)
昨今、気候変動対策や世界的な人口増加、人権侵害等の多くの社会課題に対して、将来を見据えた取組が企業に求められています。未来創造研究所では、2050年までの未来年表を作成し、将来の解決すべき社会課題を「高齢化社会」と「サステナブルな食資源」に定め、これらの課題解決につながる研究テーマに取り組んでいます。「高齢化社会」に関しては「高齢者の健康課題の予防」に注目し、認知症やメンタルヘルス、フレイル(注1)等を重要な健康課題と設定し、当社独自の酸化しにくい安定化DHA・EPA油脂素材を用いた研究により、脳機能に加え、骨代謝に関わる新たな知見を見出しました。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「高齢者の心身の健康課題の解消」)
「サステナブルな食資源」に関しては「基幹原料の持続可能性」に注目し、パーム・カカオ・大豆等の環境負荷低減、安定調達に寄与する技術開発をオープンイノベーションにより取り組んでいます。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」に参画し、新潟薬科大学との共同研究により、産業用スマートセルを用いたパーム油代替油脂の生産技術の開発を継続しています。生産効率はさらに高まっており、研究体制を強化し、油脂生産酵母による地球環境に優しいパーム油代替技術の実用化を目指してまいります。また、佐賀市・国立大学法人佐賀大学・伊藤忠エネクス株式会社と共同で推進する、ごみ焼却施設の排熱及びCO2を利用した大豆育成研究プロジェクトでは小型植物工場での栽培実験を継続しております。将来的にはCCU(注2)による温室効果ガスの低減を訴求できる大豆植物工場の完成と、栽培大豆を用いたプラントベースフードの開発を目指します。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「環境に配慮したものづくり」)
また、未来創造研究所では、「おいしさと健康」にこだわった食素材の創造と新規事業につながる技術開発にも取り組んでおります。MIRACORE®は、当研究所が開発した動物性食品ならではのおいしさを植物性素材で実現する技術です。当連結会計年度は、カツオ風魚介ダシタイプ「MIRA-Dashi® C400」を開発し、上市しています。今後も動物系調味素材に代わる植物調味素材の創出を加速させていきます。(関連:ESGマテリアリティ取組テーマ「植物性タンパク資源の創造」)
また、当研究所は、当社グループの将来の事業を創造する研究所として、積極的に国内外の大学等の公的研究機関や企業とのコラボレーション、及び研究員の派遣に取り組んでいます。ワーヘニンゲン大学との共同研究の成果として、植物性たん白による乳化安定性に関する論文が学術誌「Food Hydrocolloids, volume 146, 109248, 2024」に掲載されました。2021年度に茨城大学に設置した「食の創造」講座では、当社研究員による学生の指導に加え、新たな大豆たん白質の組織化技術の開発、未利用食資源からの多糖類機能剤の創出に取り組み、得られた知見を特許出願すると共に論文が学術誌「Food Hydrocolloids, volume 147, 109423, 2024」及び「Food Research International, volume 165, 112390, 2023」に掲載されました。
当事業の研究開発費は1,472百万円です。
(注)1.フレイル:健康な状態と要介護状態の中間に位置し、加齢とともに身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のこと。
2.CCU(Carbon dioxide Capture, Utilization):排出されたCO2を他の気体から分離して集め、新たな製品の製造に利用する技術。