第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、2021年4月に、私たちの目指すべき未来、私たちの使命、私たちの価値/存在意義をあらわした、新たな企業理念体系を制定いたしました。同時に、コミュニケーションブランド「JOYL」を導入し、新企業理念体系を基にした企業活動およびすべてのステークホルダーの皆様とのコミュニケーションで「JOYL」を活用し、「JOYL」を受け皿として、生まれた価値を蓄積、資産化していきます。

コミュニケーションブランド「JOYL」の下、「Joy for Life® -食で未来によろこびを-」のビジョン実現に向け、ステークホルダーの皆様や社会、環境の「Joy」をおいしさデザイン®で創出し、社会課題の解決に貢献してまいります。

 

 


 

 

(2) 経営環境と優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

企業を取り巻く経営環境は、新型コロナウイルス感染症対策の規制が緩和され経済活動も正常化に向かっているものの、地政学的リスクの顕在化、世界的な食糧需要の増加、気候変動、ロシア・ウクライナ情勢、海外からの原料や購入油の調達価格の高騰、為替相場の円安進行、エネルギーコストや物流費の上昇など、不確実性が高まる中、社会課題の解決に貢献していくことが求められております。

このような中、当社は人々の生活に欠かせない生活必需品の食品を扱う企業として、従業員の安全と安心を確保し、新しい生活様式や消費者トレンドを捉えながら、安定供給と消費者のニーズに合う製品の開発に努めてまいります。

また、当社グループの対処すべき課題は、油脂原料価格の高騰、エネルギーコストの上昇、為替変動、気候変動、また、国内市場における少子高齢化による需要減少に加え、生活者ニーズの多様化などを認識しております。

 

2022年11月に2026年を最終年度とする第六期中期経営計画の見直しを行い、第22期(2023年度)は、油脂汎用品の価格適正化、成長ドライバーとなる高付加価値品の拡販および不採算事業の収益改善を中心に、成長戦略、構造改革、経営基盤の強化に向けた取り組みを推進しました。

 


 

中期経営計画達成に向けた対処すべき課題は次のとおりであります

 

成長戦略

企業理念に「おいしさ×健康×低負荷」を掲げておりますが、その中でも「低負荷」を差別化された強みとして、製品力強化とコミュニケーション強化の施策を通じ、高付加価値品の拡販を図ってまいります。

油脂事業における家庭用油脂では、環境負荷の低減やお客様の使いやすさを意識した「スマートグリーンパック®」のラインナップを拡充するとともに、こめ油や健康などの機能性が付加されている油など、成長しているカテゴリーを中心に展開を図ってまいります。業務用油脂では、長持ちする油とその支援サービスを通じた拡販やカーボンフットプリントマーク取得推進による環境を意識した生活者ニーズを取り込んだ製品販売を推進してまいります。

スペシャリティフード事業では、業務用スターチ製品ブランド「TXdeSIGN®(テクスデザイン)」シリーズを含む各種食品素材製品のラインナップの拡充を図り、油脂製品とともにワンストップソリューションを提供することで、多様な消費者のニーズに応えてまいります。

また、海外を含む新たな事業領域への展開として、伸長市場であるASEANと北米の2地域を重点地域と位置づけており、まずは既存事業であるASEANのマーガリン・ショートニング事業やテクスチャー素材の提供、北米での食品素材事業拡大を目指し、取り組んでまいります。

 

<構造改革>

不採算事業であったマーガリン事業については、2023年度に家庭用マーガリン類事業を終了するとともに、業務用マーガリンの継続的なコスト削減と販売価格の適正化により営業黒字化を実現しました。

全社的な資産効率の改善として、遊休資産や投資有価証券等の処分、販売品目の統廃合と在庫水準の最適化に引き続き取り組んでまいります。

また、2023年10月に日清オイリオグループ株式会社との間で搾油合弁会社「製油パートナーズジャパン株式会社」を設立しました。この取り組みにより、将来に向けた搾油の安定供給の構築を目指すとともに、脱・炭素社会への取り組みなど、環境や社会課題への解決にも繋がる「次世代型搾油工場」の体制に向けた取り組みを推進してまいります。

 

<経営基盤強化>

当社の取締役会は様々な経験を有する取締役を配し、独立社外取締役が全体の1/3以上を占めておりますが、取締役会の監督機能を強化するばかりではなく、執行機能とのコミュニケーションを活発化しております。また、サステナビリティに資する施策として、生産拠点を中心とするCO2削減の取組み、気候変動や調達、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)や人財育成を含めた人的資本経営の推進を図るとともに、商品開発への取り組みを継続して推進してまいります。また、基幹システム再構築を通じた業務プロセスの改善や、事業リスクに応じたグループガバナンスの強化など各種施策に取り組んでまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般

食を取り巻く環境は、気候変動、資源の枯渇、フードロス、健康課題、サプライチェーンでの人権課題など、非常に広範で多岐にわたる課題を抱えております。当社グループは「Joy for Life®-食で未来によろこびを-」を目指すべき未来として掲げ、おいしさ×環境×低負荷で人々と社会と環境へのよろこびを創出いたします。植物の恵みを活用した新たな価値の提供により、社会課題の解決を目指し、サステナブルな社会の実現に貢献してまいります。

 

① ガバナンス

サステナビリティ推進体制の強化

当社グループは、ESG(環境、社会、ガバナンス)を企業価値の評価指標と捉え、企業の長期戦略、成長投資と連動したESG経営とサステナビリティに関する取組を積極的に推進しております。2020年度から取締役を委員長とする「サステナビリティ委員会(以下、「本委員会」という)」を設置し、全社横断的にサステナビリティの推進に取り組んでおります。本委員会は、「サステナブル商品開発部会」「サステナブル調達・環境部会」「人権部会」「人的資本部会」の4つの部会から構成され、各部会は関係する部署の代表者により組織されております。また、各部会の傘下に「外装標準化分科会」「パッケージング分科会」「環境分科会」「TCFD分科会」「物流分科会」「調達分科会」を設置しております。各部会 および分科会が、環境負荷の低減や人権や環境に配慮した持続可能な調達、商品・包材開発、サプライチェーンマネジメントの強化、人権課題など社会課題の解決に向けて活動テーマを設定し活動しております。本委員会は各部会および分科会の活動を有機的に結び、年4回進捗管理を行うとともに、経営会議、取締役会に報告しております。各部会および分科会には、それぞれ管理責任者として担当執行役員が設定され、そのリーダーシップの下、計画の策定および具体的な施策に取り組みます。当社はサステナビリティに関する取組を社内外に発信するとともにステークホルダーとのエンゲージメントを通じて、社会課題の解決による企業価値の向上を図っております。

 

<サステナビリティ推進体制図>(2024年3月末時点)

 


 

 

<サステナビリティに関わる体制と役割>(メンバーの構成は2024年3月末時点)

 


 

サステナビリティ関連方針の策定

当社グループは、サステナビリティを推進するための指針として、関連する法令や国際規範等に基づきサステナビリティに関連する各種方針を策定しております。方針の内容は、社会の状況等により適宜見直しを行っております。

 

サステナビリティ委員会の取組

サステナビリティ委員会は、サステナビリティを具体的に事業活動に落とし込むことに加え、活動のアウトプットを有機的に結び、社内外へ発信することで企業価値を向上させることを目的としております。人権、環境に配慮した持続可能な原材料調達や商品開発、社会課題の解決に向けた商品戦略など、2020年7月の設置以来、全社横断的に活動しております。

<サステナビリティ関連方針の体系図>

 


 

 

② 戦略

サステナビリティ関連のリスクおよび機会に対処するための取組

サステナビリティ委員会においては2023年4月に「サステナブル調達・環境部会」の傘下に「物流分科会」を新設し、「2024年問題」を物流部門だけでなく全社課題として捉え、持続可能な物流の実現に向けて、納品リードタイムの延長に向けた準備やドライバーへの附帯作業および長時間待機の実態把握と改善活動に着手しました。また、持続的な企業価値向上には、企業活動の基盤となる「人的資本」への取組が重要であると考え、2023年7月にサステナビリティ委員会に「人的資本部会」を新設しました。今後も本委員会の取組を社内外に発信するとともにステークホルダーとのエンゲージメントを通じて、社会課題の解決による企業価値の向上を目指してまいります。

 

目指すべき未来の実現に向けたESG経営

企業活動が社会に及ぼす影響が大きくなるなか、ESGに配慮した企業経営が求められております。当社グループはESGの取組を事業活動の基盤と位置付け、地球規模の社会課題の解決に全力で取り組んでおります。コーポレートビジョンである「Joy for Life®-食で未来によろこびを-」を実現することで、サステナブルな価値創造企業を目指してまいります。

 

 

マテリアリティ

マテリアリティは当社の事業にとってリスクまたは機会となる事項であり、2030年度の目指すべき姿に向け、中長期的に取り組むことを目指しております。

当社グループは、2022年に第六期中期経営計画の見直しを行い、2021年~2024年の4か年の計画を2年延長し、6か年の計画といたしました。これにより、マテリアリティに紐づく目標の達成年と第六期中期経営計画の最終年度に齟齬が生じたことを受け、マテリアリティの見直しを行っております。 2023年に、事業戦略に関わるマテリアリティとして「食の安定供給による持続可能な社会の実現」「食の安全安心を通じ全ての人のウェルビーイングへ貢献」を、事業基盤に関わるマテリアリティとして「多様性の尊重と従業員の働きがい向上」「コーポレートガバナンスの強化」の4領域を特定しました。今後は各領域に紐づくサブマテリアリティの整理とゴールイメージ、KPIの設定を実施してまいります。なお、特定したマテリアリティは、今後も社会の潮流や、課題・ニーズの変化を踏まえて定期的に見直しを行ってまいります。

 

テーマ

マテリアリティ

主な2030年度ゴールイメージ・

定量目標

2023年度実績

 

環境負荷の抑制

・資源・耕作地の持続可能性担保

・顧客の作業・業務負荷の低減に貢献

・気候変動の緩和と適応

・農園までのトレーサビリティ100%(パーム)

・CO2排出量50%削減(Scope1、2、2013年度比)

・パーム油ミルまでのトレース率100%維持

・パーム油農園までのトレース率35%(2023年1-6月の実績)

・RSPO(※1)認証油の購入比率20%(2023年1-12月のグループ会社PF(※2)を含んだ実績)

・CO2排出量32%削減(Scope1、2、2013年度比)

 

 

 

食資源の

維持

・たんぱく質危機対応

・フードロス削減と安定供給

・畜肉・水産資源の保持

・食の安心・安全

・動物性食品のおいしさ、満足感、機能、健康価値、栄養価を植物由来の素材だけで再現可能にすることにより植物性食品ならではの新しい価値創造を行い社会課題に貢献

・植物生まれの原料ならではのおいしさ、満足感、機能、健康価値を提供

・「おいしさ長持ち」の観点からフードロス削減や作業効率向上による低負荷の実現

・サステナブル商品またはお客様の声活用製品の開発比率70%

・たんぱく食品のバラエティー化

  -肉系PBFのアプリケーション拡張(継続) 

  -水練り、畜産製品へのスターチの使用条件、アプリケーションを拡張(継続)

・長持ち機能を有する「SUSTEC®技術」を活用した製品のCFP(Carbon Footprint of Products)マークを追加取得、市場拡大を推進

・業務用油脂製品における「SUSTEC®」製品の構成比向上

・「低負荷」価値実現のための環境基準の社内浸透

・上記環境基準のチェック運用実施確認、対象範囲を拡充

 

 

 

 

 

 

テーマ

マテリアリティ

主な2030年度ゴールイメージ・

定量目標

2023年度実績

 

食を通じた健康への貢献

・健康維持への貢献

・高齢化社会対応

・栄養摂取・管理への貢献

・ライフスタイルの多様化対応

・基礎体力の維持・向上を通じた免疫力向上、健康不全の未然防止等への寄与につながる、油脂や油脂に含まれる成分をアピールできる技術の確立

・フレイル(虚弱)など高齢者の健康課題に対する、栄養機能性成分による改善機能提供(対象者のステイタスに応じた最善策の提供による)

・植物性の持つ良さを活かし多様なライフスタイルに対応した「おいしくて健康的な食品・素材」の提供

・生活習慣病など健康に関する課題解決のための機能性素材、食品の提供。その評価・開発へのフィードバックによる、顧客ベネフィットの継続的向上

・左記2030年のゴールイメージ達成のため、健康不全の未然防止、フレイル(虚弱)などの高齢者の健康課題、生活習慣病などに関連する研究開発に注力

・2023年度の段階では研究開発途上

・たんぱく食品のバラエティー化

  -肉系PBFのアプリケーション拡張(継続)

  -水練り、畜産製品へのスターチの使用条件、アプリケーションを拡張(継続)

 

 

 

 

事業継続

基盤

・コーポレートガバナンスの強化

・リスクマネジメントの強化

・コンプライアンスの推進

・企業価値向上に資するコーポレートガバナンスの実現

・取締役会の多様性確保

・ステークホルダーエンゲージメントの向上

・経営基盤強化と組織風土改革による企業価値の向上

・取締役会に占める社外取締役比率の向上(2024年3月31日=62.5%→2024年6月24日=66.7%)

・内部通報制度の活性化(受付窓口増員)

・コンプライアンスに関する全社e-learningおよびフィードバックの実施

・コンプライアンス研修の実施(2023年度は5部門で実施、3年で全部門網羅)

・経営リスクに対するオーナーシップ制を導入し、各経営リスクのリスク管理責任者(執行役員等、2024年度からはCxOに統一)を経営リスク委員会の指名により設定

・期首に設定した14の経営リスクについて、各施策の実施状況をモニタリング

 

 

・サプライチェーンマネジメント

・サステナブル調達の進化

・物流システムの再構築(2025年度)*2025年度には内閣府「戦略的イノベーションプログラム(SIP)」で検討中の物流プラットフォームに接続

・物流の適正化・生産性向上に向けた荷主事業者に関する行政ガイドラインに沿った当社「自主行動計画」を作成し、機関決定を経て12月に行政へ提出

・発荷主として納品状況(路上駐車での納品、長時間待機、附帯作業など)に関する物流会社調査を基にした改善活動を展開しつつ、2024年4月からの納品リードタイム延長(受注日の翌々日配送)に向けて得意先説明とシステム改修を実施

・着荷主としてサプライヤ―約150社へのアンケートを実施し、改善活動に着手開始

・2024年度の横浜工場、千葉工場、若松工場へのトラックバース予約システム導入を計画 ※静岡事業所、横浜工場は導入済み

 

 

 

テーマ

マテリアリティ

主な2030年度ゴールイメージ・

定量目標

2023年度実績

 

事業継続

基盤

・DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)

(2)人的資本・多様性」をご参照ください。

 

 

・働き方改革&エンゲージメント

 

 

 

 

・企業風土・意識改革

・経営トップと従業員の対話強化

・経営メンバーと従業員の対話会 26回

 

 

・地域社会への貢献と協働

・社会貢献活動の強化、費用増大(経常利益の1%)

・社会貢献活動の強化、2023年度社会貢献活動支出額22百万円

 

 

・適時適切な情報開示

・個人株主、機関投資家比率の拡大(2020年度比15%増)

・メディア露出回数の増大(広告換算効果15億円)

・個人株主、機関投資家比率20%増(2020年度比)により2030年度目標達成

・メディア露出回数の増大、広告換算効果2030年度目標を2022年度に達成したため、目標の見直しを実施中

 

 

※1 RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil ):持続可能なパーム油のための円卓会議

※2 PF(Premium Fats Sdn Bhd):当社の連結子会社

 

 

③ リスク管理

サステナビリティ全般に関するリスク管理の内容については、「3 事業等のリスク (1) 当社グループのリスクマネジメント体制、(2) リスクマネジメントプロセス」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

サステナビリティ全般に関する指標及び目標については、「(1) サステナビリティ全般 ②戦略」をご参照ください。

なお、次に記載の「(2)人的資本・多様性」ならびに「(3)TCFD」を除くマテリアリティに関する指標および目標は策定中です。

 

 

(2) 人的資本・多様性

当社戦略を実行するために、新しい可能性を切り開いていける人財を育成・登用していくことが急務だと考えております。人財育成・エンゲージメント向上を通じて個々の価値創出力を最大化するだけでなく、個の持つスキル・経験を最大限に引き出す環境の整備を進めてまいります

 

 

<人財ポリシー>

 


 

 

「挑戦・成長する人と組織」ならびに「多様な人財の働きやすさと心身の健康」を実現するための、主たる課題領域を以下の項目と考えております。

・ 戦略に応じた人財の獲得(高度専門性、外国籍 等)

・ 課題を自分ごとと捉えて解決し、それを通じて自ら挑戦・成長する自律型人財の育成

・ 成長を牽引する優秀人財のリテンション

・ ローテーション活性化と実力主義に則った抜擢/再配置

・ 戦略に沿った組織体制の構築・組織力の向上

・ 変革を牽引するマネジメント層のリーダーシップ発揮

・ 社員の挑戦・成長風土醸成(含む仕組みづくり)

・ 多様な人財が働きやすく、活躍しやすい環境・風土の実現

・ 心身への負荷低減、労働災害・事故等のゼロ化

 

① ガバナンス

当社グループでは、人的資本の強化を企業価値向上に資する企業の長期戦略・成長投資と連動したESG経営とサステナビリティに関する取り組みの位置づけとしても推進しております。そのため、2023年度はサステナビリティ委員会の中に「人的資本部会」を設置し、人権課題などと併せて進捗管理を行ってきました。ガバナンスの内容については、「(1)サステナビリティ全般 ① ガバナンス」および「3 事業等のリスク (3) リスクテーマとそれに対する影響と対応」をご参照ください。

 

 

② 戦略

当社グループでは、コーポレートビジョンである「Joy for Life®-食で未来によろこびを-」の実現を目指し、「壁を越え、共に挑み、期待を超える」人財、組織、風土の醸成に向けた取り組みを強化しています。誰もが実力を発揮できるようにするための「多様な人財の働きやすさと心身の健康」を土台とし、社員一人ひとりの「挑戦」と「成長」が「Joy for Life®」実現のためのドライバーになると捉え、様々な人事改革・施策(下図参照)を展開しています。また、それらを測る重要な指標として、従業員エンゲージメント(2023年度:45%、2026年度(目標):55%、2030年度(目標):65%)やウェルビーイング(2023年度:64%、2026年度(目標):70%、2030年度(目標):80%)を位置づけその向上に取り組むとともにモニタリングを行っています。(※1)

※1 測定方法:年1回実施しているエンゲージメントサーベイ(以下、「ES」という)の「エンゲージメント」、「ウェルビーイング」各カテゴリーの好意的な回答割合をスコアとして使用。

 

 

<人事改革・施策概要>

 


 

③ リスク管理

人的資本・多様性に関するリスク管理の内容については、「3 事業等のリスク (1) 当社グループのリスクマネジメント体制、(2) リスクマネジメントプロセス」をご参照ください。

 

 

④ 指標及び目標

指標

定義

2023年度

実績

2026年度

目標

2030年度

目標

マネジメントの組織影響力強化/ESスコア

ESの総合指標である「個人的達成感」「貢献意欲」「組織への愛着・信頼」3つの好意的回答割合

45

55

65%

成長を後押しする学びの機会強化/ESスコア

ES「成長機会」カテゴリーの「私は、当社において学び、成長する機会に恵まれている」の好意的回答割合

61

70

80%

女性管理職登用強化/女性管理職比率

当社の管理職に占める女性社員の割合

7.0

10.0

20.0%

男性育児参画促進/男性育児休職取得率

※1 配偶者が出産した男性従業員のうち、育児休業等をした男性従業員の割合

※2 配偶者が出産した男性従業員のうち、育児休業等をした男性従業員および育児目的休暇制度を利用した男性従業員の割合

54.5

(※1)

100

(※2)

100%

健康経営の推進/ESスコア

ES「ウェルビーイング」カテゴリーの好意的回答割合

64

70

80%

 

 

<取り組み事例>

次世代経営者育成施策

「J-Leaders」開催

役員ポジションのサクセッションプランと連動した次世代経営者育成プログラムを開催しました。2023年度に第1回目を開催し、部門長等すでに当社のキーポジションを担っている人財を中心に16名が参加し、経営者(リーダー)としての使命感、自分自身の原理原則、信念や覚悟を養い、またそれを実行するための力を育むことを目的に実施しました。

女性リーダー育成施策

カシオペア経営塾

将来の当社を担うリーダーに求められるスキル習得・向上を目的とした女性リーダー育成プログラムです。2023年度は26名の女性社員が参加しました。プログラム最終日には、「会社・事業の課題について解決方法の提言」を取締役等に対して実施するだけでなく、今後どのようなリーダーシップを発揮していくか一人ずつ宣言しました。

マネジメント強化施策

1on1コミュニケーション強化

当社では従業員一人ひとりの自律的な成長を支援すべく、上司・部下間の1on1コミュニケーションを大切にしています。特に、自身のキャリア実現に向けた対話を行うキャリア・デベロップメント・プログラムに関する面談や、目標達成に向けた期初・期中・期末に実施する目標面談(フィードバック含)を必須で実施しています。また、それらに加え日常的なコミュニケーション機会として原則最低1回/月以上の頻度で、1回30分以上の1on1コミュニケーションの時間を確保することを推奨し、マネジメント強化を推進しています。

 

 

 

(3) TCFD

当社は、2020年11月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言に賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに参画しております。サステナビリティ委員会内に社内横断的なTCFD分科会を設置し、TCFD提言が推奨する開示項目に沿った情報開示を進めております。

 

① ガバナンス

TCFDに関するガバナンスの内容については、「(1)サステナビリティ全般 ① ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

特定した気候変動によるリスクと機会

<前提条件>

当社グループは、気候変動を事業の継続性を鑑みても非常に重要な経営リスクとして捉えており、2℃未満および4℃シナリオについてリスクと機会の分析を行っております。また、気候変動のみならず、温暖化が進むことにより、台風被害の甚大化などもリスク要因として捉えております。

2℃未満および4℃シナリオとは、地球温暖化の対応策に関する科学的な根拠を与え、国際交渉に影響力があるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告で、産業革命前から21世紀末までに、どれくらい平均気温が上昇するかについて予測提示されているものであります。最も気温上昇の低いシナリオ(SSP1-1.9シナリオ)で、おおよそ1.4℃前後の上昇、最も気温上昇が高くなるシナリオ(SSP5-8.5シナリオ)で4.4℃前後の上昇が予測されております。

対象期間

現在~2050年

対象範囲

J-オイルミルズグループの全事業

 

 

<気候変動によるリスク>

 

影響度:

大:業績への影響が大きくなりうるもの(100億円以上)

 

中:業績への影響が大きくなりうるもの(10億円以上100億円未満)

 

小:業績への影響が小さいもの(10億円未満)

緊急度:

高:1年以内 中:5年以内 低:5年超

 

 

シナ

項目

分類

主な

リスク

リスクの説明

既存の取組み

対応の方向性(目標)

2℃/1.5℃

 

・CO2排出規制強化に伴う業績の悪化

・CO2排出規制の強化により、排出権取引費用および炭素税負担が増加するリスク(CO2削減を達成できなかった場合)

25億円

/年

(※1)

・エネルギー使用量の削減(工程最適化、省エネ、高効率設備導入等)

・再生可能エネルギーの活用(バイオマス燃料の利用等)

・CO2排出量削減目標:2030年度50%削減(2013年度対比)、2050年カーボンニュートラル達成(Scope1,2)

・上記目標の達成に向け、1)CO2削減の為の設備投資を中期的に拡大、対応費用:累計46億円(~2030年)(※2) 2)インターナルカーボンプライシング(ICP)を2023年4月より導入し、CO2削減投資の意思決定に活用 3)更なる省エネと省エネ設備への切り替え、再生可能エネルギーの積極的な利用

・気候変動対策の進展・エネルギーミックスの変化に伴う電気代、燃料価格の上昇による支出の増加

・再生可能エネルギーに対応する設備投資等の生産関連コストおよび物流関連コスト等が増加するリスク

・サステナビリティ重視に変化する消費者ニーズへの対応不足

・サステナビリティ重視の消費者ニーズ(フードロス削減、プラスチック使用量の削減、資源循環等)への対応や製品需要対応の遅れによる売上減少

・長持ち油、PBF(※3)等の低負荷製品の開発・販売

・「容器包装に関する指針」に基づき、紙パック容器の採用等によるプラスチック削減、植物性プラスチック採用等バイオマス材利用の取り組み強化

・環境に配慮した原料調達、原料のトレーサビリティ向上

・Scope3での削減は、排出量が多いカテゴリ1および4について削減方法の検討開始、削減に向けた以下の取り組みを実施

・更なる長持ち油等環境負荷を低減する製品、サービスの開発継続

・プラスチック廃棄削減目標:2030年度までにプラスチック廃棄ゼロ化

・再生可能資源である紙やバイオマス材等の利用促進

・対応費用:7億円/年(バイオマス材等切替費用)

・大豆やパーム油の認証制度の活用と自社ルートでのサステナブル調達の推進

・環境対応不足による評判低下

・気候変動対策の情報開示が不十分なことによる、企業価値や株価の低下、融資停滞、資金調達困難となるリスク

・省資源・省エネルギー、CO2排出量の低減、脱プラスチック、水資源の有効活用等の目標設定および適切な進捗管理と開示

・持続可能な原料調達、バリューチェーンでのAI 活用等による環境負荷の極小化

・各種取り組みの更なる推進と情報開示

 

 

項目

分類

主な

リスク

リスクの説明

既存の取組み

対応の方向性(目標)

4℃

 

・自然災害増加による操業停止、物流網の寸断

・自然災害(海水面上昇に伴う高潮、台風、洪水被害等)増加により自社工場が操業停止になることによる損害

4億円

/年

(※4)

・生産拠点の台風・高潮対策の実施

・水害リスクを国交省のハザードマップ、およびWRIのAqueduct(※4)を使用し国内工場の再評価を実施

・リスクが高い拠点は各所建屋に防潮板を設置、高潮で想定される水位を算出し高潮対策用の設備更新等の対策を実施

・主要生産拠点の水害リスク評価を定期的に実施

・その他、レジリエンス強化に向けたBCP対策

・自然災害(海水面上昇に伴う高潮、台風、洪水被害等)増加によりサプライヤーが操業停止になることによる売上減少

・物流網の寸断により自社工場が操業停止になることによる売上減少

・倉庫が被災し、欠品が発生することによる売上減少

・自然災害による工場資産の破損、流出による復旧コスト増加

・BCP(※5)の対応

・当社グループでのリスクマネジメントプロセスの中で、サプライチェーン全体のBCPを策定

・原材料供給の遅延や停止等に備えた適正在庫の確保と管理、重要原材料の複数購買等の施策を推進

・物流網停止時は物流会社/物流部門/営業部門で連携し対応方針を決定

・気温上昇や異常気象による収穫量減少や品質変化等による原料の安定確保困難

・主要原料(※6)の耕地面積の減少による調達コスト増加

・主要原料の収穫量減少や原料品質の低下への対応コスト増加

・穀物相場上昇等による調達コスト増加

・主要原料原産地の継続的な視察

・製品規格最適化

・新規品種、新規サプライヤーおよびサプライチェーンの検討

・原産地の多角化、高温耐性等の気候変動に対応した種苗の導入

・気象変動が原料品質に与える影響調査等を実施

・想定される原料品質を考慮した搾油技術の開発

 

※1 IEA:International Energy Agency (国際エネルギー機関)のNZEシナリオ(Net Zero Emission by 2050 scenario)における先進国の排出権取引価格の予測(2030年):140US$/tに2023年度排出量を乗じて算出。2023年3月期は130US$/tに2021年度排出量を乗じて算出。排出権取引価格の上昇および為替変動の影響を受けたものの、排出量が2021年度から2023年度にかけて減少したためリスク金額はやや減少。

※2 世界的に続く資材価格および設備工事価格の高騰に伴い、2023年3月期の対応費用から見直し

※3 PBF:プラントベースフード

※4 WRI: World Resources Institute (世界資源研究所)が公開している世界の水リスク評価ツールであるAqueductによるリスク評価に基づき損害金額を算出し、年間あたりの損害金額に置換

※5 BCP(Business Continuity Planning):事業継続計画

※6 主要原料:大豆、菜種

 

<気候変動による機会>

分類

主な機会

機会の説明

既存の取組み

対応の方向性(目標)

2℃/1.5℃

・生産・物流関連のコスト低減

 

 

・省エネ設備への更新や生産工程・拠点最適化による設備稼働コストの低減

・モーダルシフトや新技術等効率配送による物流費の削減

・搾油機能の最適化に向けた検討開始

・モーダルシフト等の推進(「エコシップマーク」認定取得)や長距離「スルー配送」見直し

・国内搾油機能の長期的な安定化に向けた拠点最適化

・配送規格統一に向けた検討や最適航路によるCO2排出・コスト削減

・再エネ設備の導入

・バイオマス燃料への切り替え推進と燃料調達先の確保

|

・再生可能エネルギーの導入によるCO2削減およびコスト削減

・再生可能エネルギー(太陽光パネル、バイオマスボイラー)の導入推進による排出権取引費用および炭素税負担の削減

・生産拠点でのオンサイト発電導入

・生産拠点での省エネ設備導入

・環境意識・エシカル消費の高まり(食料危機への対応)

・低炭素商品・サービス・ソリューションの売上拡大

・環境意識の高まり、エシカル消費の増加、たんぱく質危機等によるPBF製品の需要増加による売上拡大

・長持ち油の開発

・PBF製品の販売

・更なる長持ち油や紙パック容器製品等環境負荷を低減する製品、サービスの開発継続

・PBF製品によりたんぱく質危機や食の安定供給に貢献

・テクスチャー素材による、経時劣化の抑制、食感維持によるフードロス削減

・社会からのサステナビリティ要求を満たす最適な事業ポートフォリオの実現による信頼獲得

・省エネ、再生可能エネルギー活用推進によりサステナビリティに適合する最適な事業ポートフォリオの構築実現に伴い、社会からの信頼獲得による売上拡大・株価向上

・第六期中期経営計画にて事業ポートフォリオを変革し、環境負荷低減、社会課題解決型の製品・サービスを拡大

・社会課題の解決につながる製品の更なる拡大

・バイオ原料確保によるSAF(※7)製造等のバイオマス事業構築に関する検討

・非可食油原料樹の植林によるCO2の固定化、植林を起点としたSAFサプライチェーン構築等の検討

・サステナビリティ情報の開示拡充

・BCP対策強化

・気候変動による自然災害の激甚化等に備えた安定供給体制の確保による、食品の安定供給を通じた社会貢献、企業価値の向上

・BCPの対応

・当社グループでのリスクマネジメントプロセスの中で、サプライチェーン全体のBCPを策定

・原材料供給の遅延や停止等に備えた適正在庫の確保と管理、重要原材料の複数購買等の施策を推進

・主要生産拠点の水害リスク評価を定期的に実施

・その他、レジリエンス強化に向けたBCP対策

 

※7 SAF: Sustainable Aviation Fuel (持続可能な航空燃料)

 

 

③ リスク管理

サステナビリティ全般に関するリスク管理の内容については、「3 事業等のリスク (1) 当社グループのリスクマネジメント体制、(2) リスクマネジメントプロセス」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

2030年度までにCO2排出量を2013年度対比で50%削減(Scope1、2)、2050年度までに排出ゼロにするカーボンニュートラルを掲げております。また、購入する原材料や商品の製造に関するCO2排出量など、サプライヤーと連携し、サプライチェーン全体(Scope3)での削減も目指しております。Scope3については、排出量の多いカテゴリ1やカテゴリ4について算定精度の向上を図り、削減方法を検討してまいります。2023年4月よりインターナルカーボンプライシング(ICP)を導入しました。今後、CO2削減投資および投資意思決定の促進を図ってまいります。

 

<CO2排出量の目標と実績>

 


 

 

3 【事業等のリスク】

(1) 当社グループのリスクマネジメント体制

当社グループは、当社代表取締役社長執行役員を委員長とし、取締役、執行役員などをメンバーとする「経営リスク委員会」を設置しております。同委員会は、全社のリスクマネジメントを統括し、当社グループの経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスク(経営リスク)の特定やそのリスクの低減に向けた取り組み、顕在化したリスクに対する対応策など、リスクマネジメントに関する重要事項を審議しております。また、監査役(社外を含む)も出席し、必要に応じて助言等を行っています。経営リスク委員会で審議された内容は、その都度経営会議および取締役会に報告され、取締役会では、その報告を通じ、リスクマネジメントの有効性を監督しております。

経営リスク委員会は、その傘下に「リスクマネジメント部会」および「コンプライアンス部会」を置き、両部会を統括管理することで、リスクマネジメントおよびコンプライアンスを中心とする内部統制システムの運用と維持管理の機能も果たしております。リスクマネジメント部会は、リスクの想定と予防、危機への対応を任務としており、コンプライアンス部会は、リスクマネジメントの重要な要素であるコンプライアンスを司り、従業員意識の向上やコンプライアンス違反への対処などを任務としております。

特定した経営リスクには、それぞれリスク管理責任者が設定され、リスク管理責任者のリーダーシップの下、リスク対応計画の策定および具体的な施策に取り組みます。リスク管理責任者には、経営リスク委員会が指名したCxOが充てられ、代表取締役社長執行役員であるCEOは経営リスク全体を統括する責任者として位置づけています。

当社各部門および子会社は、上記体制の下、自律的にリスク対応策に取り組めるよう、各リスク責任部門や各種委員会・会議等が指導・支援します。

経営リスクのうち、人権や気候変動・環境問題などのサステナビリティに関連するリスクについては、サステナビリティ委員会が審議し、リスク対応策を検討、推進しております。


 

 

(2) リスクマネジメントプロセス

当社では、中期経営計画や行動規範を踏まえ、またESG(環境・社会・ガバナンス)に関するリスクにも着目し、毎年度、経営リスクの見直しを行っております。

当期においては、従前の当社各部門および各子会社が洗い出した重要なリスクをもとに経営リスクを特定するボトムアップアプローチを見直し、執行役員アンケートおよび社内取締役インタビューを実施し、経営上のリスク認識を反映させるとともに、経営陣の経営リスク特定プロセスへの関与を強めるトップダウンアプローチへの転換を図りました。当社グループを取り巻く経営環境の変化や社会情勢などを踏まえ、また中長期的な視点での潜在リスクや経営課題なども鑑み、経営リスク委員会で審議し、経営リスクを特定し、またリスク管理責任者(CxO)を指名しました。

特定した経営リスクについては、リスクを低減・防止する取り組み施策が有効に機能しているかを半期に1回、経営リスク委員会がモニタリングしております。

さらに、期中に発生したクライシス(リスクが顕在化し企業価値に重大な影響を及ぼすもの)については、当社代表取締役社長執行役員CEOを最高責任者とし、リスクマネジメント部会長が陣頭指揮を執る危機管理体制を整備し、迅速・適切な対応を図っております。クライシス鎮静後は、経営リスク委員会の主導の下、発生したクライシスの真因分析を行った上で、是正措置を展開し全社的な再発防止に努めております。

 

経営リスク

リスク管理

責任者

前期比較

① 原材料調達・為替相場等に関するリスク

COO

継続

 

② 自然災害・感染症・事故等に関するリスク

CTO

変更

従前の「自然災害・感染症に関するリスク」に火災や爆発などの「事故等」を追加し再編

③ 海外展開に関するリスク

COO

変更

従前の「海外進出に潜在するリスク」を経営課題である「海外展開の加速」に合わせてタイトル変更

④ 製品の安全、品質、安定供給に関するリスク

CHRO

変更

異物混入などの品質事故のほか、外部委託先における法令違反や事業中断などに起因する製品の供給途絶にも着目し、従前の「食品安全に関するリスク」を再編

⑤ 物流に関するリスク

COO

継続

 

⑥ 情報漏洩・サイバーセキュリティに関するリスク

CTO

継続

 

⑦ 気候変動・環境に関するリスク

CTO

継続

 

⑧ 人権に関するリスク

CHRO

継続

 

⑨ 人財・労務に関するリスク

CHRO

継続

 

⑩ 資金調達に関するリスク

CFO

継続

 

⑪ のれんや固定資産の減損損失に関するリスク

CFO

継続

 

⑫ 知的財産に関するリスク

CTO

継続

 

⑬ コンプライアンスに関するリスク

CHRO

継続

 

⑭ グループ経営体制の整備に関するリスク

CSO

新規

財務報告に係る内部統制を含めたグループ統制の不備やガバナンスが十分に機能しない場合、当社グループの評価に大きな影響を与える可能性があることから、新たに特定

当社製品の需要低下に対するリスク

取り

下げ

前期まで経営リスクとしていたが、経営課題として、通常の事業活動において取り組みを進めることとし、取り下げ

 

 

 

(3) リスクテーマとそれに対する影響と対応

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、当社グループが定義する「経営リスク」であります。

各経営リスクの影響度と発生頻度で評価したリスクマップは以下のとおりであります。

 

 


 

 

 

経営リスクおよびその影響と対応については、以下のとおりであります。

 

《原材料調達・為替相場等に関するリスク》

○主要原料の品質変化、相場変動による調達コスト増加

○為替・海上運賃などの相場変動による調達コスト増加

○地政学リスクや各国の規制等による調達不能および調達コスト増加

○バイオ燃料需要増加による調達コスト増加

○気温上昇や異常気象による収穫量減少や品質変化などによる原料の安定確保困難

 

(影響)

当社グループは主要原料の大豆・菜種等を海外から調達するため、原料コストは海外の穀物相場の影響を受けております。穀物・油糧種子の相場は、世界人口の増加による需要の増加や異常気象による減産など、需給バランスの変化などにより大きく変動いたします。また、海上運賃(フレート)は世界経済の成長や石油価格の影響を受けて変動いたします。海外からの調達であるため、原料代決済において為替相場の影響を受けます。さらに、ミール相場が下落しますと、オイルコストの上昇につながります。当期において、大豆や菜種、パーム油などの原料コストは依然として高い水準にあり、ドル円為替相場も30年来の円安水準にあるなど、厳しい事業環境は継続しております。加えて、地政学リスクの高まりからスエズ運河の通航回避、異常気象によるパナマ運河の通航制限などの事情もあり、調達コストは増加しており、原料や油脂の安定調達にも懸念が生じております。これらの穀物・油糧種子、為替、海上運賃、ミールなどの相場変動に伴うコストアップ分や価格が高い時点で調達した原料在庫を販売価格に反映できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に大きく影響を及ぼす可能性があります。また、原材料調達においては、安全性や品質の確保だけでなく、環境保全や労働者の人権問題など、サステナビリティの問題に積極的に取り組むことも求められており、これらの課題に対応できないとみなされた場合、企業価値を損なう可能性があります。

(対応)

当社グループは、海外からの原料や油脂の調達にあたり、原料・為替に関わる環境を精査の上、競争優位な産地の選定・最適な組み合わせに努めております。値決めについては、商品先物取引を用いた売買と為替予約を用いた一定のヘッジを行うと同時に、原料購買規程、外国為替予約運用規程の範囲内で、製品の販売価格の確度を見極めながら競争優位と思われるポジションを取っております。また、新規の原料産地とサプライヤーの調査・採用も継続的に行っております。一方で、国内搾油産業の長期的な課題についての共有認識の下、油脂と油粕の安定的な供給を継続的に行うために、日清オイリオグループ株式会社と川上領域である搾油工程(原料と油粕の受委託製造とスワップ)までを範囲とした業務提携基本契約を締結し、その取り組みを着実に実行しております。また、製品の価格改定の継続的な取り組みや経費削減により収益改善を図ってまいります。

さらに、持続可能な原料調達のため、「環境方針」や「人権方針」を基盤に「サステナブル調達方針・調達基準」を定め、サプライチェーン全体で持続可能な調達活動を推進しております。

(関連するマテリアリティ)

食の安定供給による持続可能な社会の実現

 

《自然災害・感染症・事故等に関するリスク》

○大規模な地震、台風、集中豪雨、火災爆発などの事故による従業員等の人的被害、施設・設備の損壊

○新型コロナウイルスをはじめとする感染症の蔓延による操業停止、製品供給の停滞

○サプライチェーンの分断や社会インフラの機能停止による事業活動の継続困難

 

(影響)

大規模な地震、台風、集中豪雨などによる災害リスクが年々高まってきており、人的被害、施設・設備等の損壊が生じた際には、安定供給に支障をきたす可能性があります。2020年より顕在化した新型コロナウイルス感染拡大の影響は、一定数の自然感染、さらには多くの人がワクチン接種をしたことなどによる免疫獲得もあり、ほぼ収束した状況となりました。しかしながら、今後も病原性の高い新たな変異株や、別の感染症が拡大した場合には、従業員の感染による操業停止やサプライチェーンの停滞などにより、当社グループの事業運営、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、自然災害・感染症・国際情勢の変化においても、海外輸入品に関しては物流の遅延・変更による供給不安定により、顧客に対する供給責任へ影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

当社グループは、食品事業などに携わるものとして、従業員の安全を確保した上で、お客様への供給責任と社会的責任を果たすことなどを基本方針としております。昨今の台風や豪雨に伴う水害等の発生頻度の高まりを受けて、危機管理体制の見直しを行い有事・平時の危機管理体制を強化するとともに、BCPの見直しを通じて、災害に対する対応力強化を図っております。感染症対応については、発生した場合にも事業が継続できるよう、リモートワークの推進など、従業員間の接触頻度を極小化するなどの対応をフレキシブルに行える体制を整え、また、委託先や協力先の確保などにより生産体制の複数化などを実施し、今後も安定供給を実現してまいります。

海外輸入品に関しては、適正な在庫確保と顧客への連絡・情報共有のスピード化で影響を最小限にする対応を行ってまいります。

(関連するマテリアリティ)

食の安定供給による持続可能な社会の実現

コーポレートガバナンスの強化

 

《海外展開に関するリスク》

○事業展開する地域における不利な影響を及ぼす法律・規制・税制等の変更

○紛争・テロなどの発生、政治的・社会的情勢の変動

○海外子会社におけるガバナンス不全による不正会計や不法行為の発生

 

(影響)

当社グループは、海外事業の拡大を重点目標として取り組んでおります。法規や税制の改正、また紛争・テロなどの地政学リスクや自然災害の発生により、当社グループの財政状態及び経営成績、従業員の安全に影響を及ぼす可能性があります。

海外子会社での不正・不法行為は、当社グループの財政状態及び経営成績への悪影響ならびに信用の棄損および企業価値の低下につながる可能性があります。

(対応)

リスク課題が発生しないように、あるいはそれが発生した場合に迅速に対策が取れるように、事業が関係する海外各国の法規やリスク情報を外部コンサルタント、海外情報サービス、外務省の海外安全ホームページ、進出しているグループ企業、海外で協業しているパートナー企業などから入手しております。その結果、入手したリスク情報をもとに、必要に応じた対応を行っております。

海外子会社での不正・不法行為に対しては、内部統制の強化と定期的な監査の実施などによる対応を行っております。

(関連するマテリアリティ)

食の安全安心を通じすべての人のウェルビーイングへ貢献

コーポレートガバナンスの強化

 

《製品の安全、品質、安定供給に関するリスク》

○お客様への健康危害や表示等の法令違反、異物混入などによる、自主回収(リコール)の発生

○食品偽装やデータ改ざんの発生

○外部委託先における法令違反、事業中断、製造の遅延や不良品発生など

 

(影響)

お客様への健康危害や表示等の法令違反により自主回収(リコール)が発生した場合、異物混入および食品偽装やデータ改ざんが行われた場合、またはお客様への欠品リスクに繋がるような製造遅延や不良品が発生した場合は、当社ブランドの信頼失墜に加え、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

当社グループは、ISO9001による品質マネジメントシステムの運用、特に商品の開発設計・工業化段階での品質アセスメントの実施と仕組みの強化による品質リスクの低減に取り組んでおります。また、全ての自社工場においてISO22000認証(食品安全マネジメント)を取得するとともに、品質監査により仕組みの適切な運用について常に確認しています。仕組みの運用だけでなく品質や食品安全に関する従業員教育を継続して行うことで、従業員との信頼関係にもとづいた風通しの良い組織風土醸成に努めております。さらに、お客様に安心して商品をご利用いただけるよう、お客様相談室を通じていただいたお客様の声を商品開発に活かしてまいります。

(関連するマテリアリティ)

食の安定供給による持続可能な社会の実現

食の安全安心を通じすべての人のウェルビーイングへ貢献

 

《物流に関するリスク》

○ドライバーや荷役作業員の不足や配送車両を確保できないことによる製品供給の停滞や大幅な配送遅延等、適切な物流コスト管理の未実施による物流破綻

 

(影響)

ドライバーや倉庫作業者の不足などの物流危機に対する対応を講じなかった場合や物流業務に関する料金適正化を怠った場合、物流事業者が当社業務から撤退してしまう可能性があります。

当社製品の供給停滞や大幅な配送遅延は販売機会の損失に繋がり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼします。

(対応)

当社グループは、サステナブルな物流環境を構築するために、物流事業者とともにドライバーや倉庫作業者の労働環境の改善に努めております。具体的には、配送業務外の附帯作業の改善、納品待機時間の把握と長時間待機の削減、計画的な車両確保が出来るようなリードタイムの確保など物流環境改善や適切な料金設定を販売物流(発荷主)と調達物流(着荷主)の両面で進めております。また、物流2024年問題への対応を加速することを目的として、2023年6月に示された行政ガイドラインを鑑み、2023年12月、当社グループとしての取り組みを「自主行動計画」として取りまとめ管轄官庁である農林水産省に提出(内閣府ホームページ掲載済み)するなど、行政方針に沿った活動に取り組んでおります。

(関連するマテリアリティ)

食の安定供給による持続可能な社会の実現

 

《情報漏洩・サイバーセキュリティに関するリスク》

○不正アクセスやコンピュータウイルスの感染、ランサムウェア等による情報の漏洩・改ざん・消失、ICT(※1)インフラ・生産ラインなどの停止

○インシデント発生時の対応不備

 

(影響)

年を追うごとに多様化・巧妙化するサイバーセキュリティリスクは、当社グループにおいても、サプライチェーン機能の安定的維持や個人情報を含む情報資産の適切な保持に対する大きな脅威となっており、コンピュータウイルスの感染や情報漏洩・データ改ざんが発生した場合、経営成績や社会的責任の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

当社グループでは、最新のサイバーセキュリティリスクについての動向を協力会社との連携により常に把握し、以下の観点から対策の継続的強化を図っております。

1.社内ネットワークへの不正侵入を防御するシステムの導入、サーバーおよび従業員パソコンへの最新対策ソフトの導入。また、在宅勤務を前提にしたPC対策ソフトを導入。

2.添付メールによる情報漏洩防御のためのPPAP(※2)対策の導入。

3.全社員を対象としたセキュリティ自己点検、標的型攻撃メール訓練、eラーニング実施による従業員へのセキュリティ意識向上と周知徹底。

4.インシデント発生時の早期解決と被害局限化を実現するCSIRT(※3)の設置。

また、今後も引き続き拡大するサイバーセキュリティリスクへの対策を講じるとともにインシデントが発生した場合に被害を最小化し迅速な回復を図るための対応手順強化に取り組んでまいります。

(関連するマテリアリティ)

コーポレートガバナンスの強化

 

※1 ICT(Information and Communication Technology):情報通信技術

※2 PPAP:パスワード付きzipによってファイルをメール送信する方式

※3 CSIRT(Computer Security Incident Response Team):コンピュータシステムやネットワークに保安上の問題に繋がる事象が発生した際に対応する組織

 

《気候変動・環境に関するリスク》

○CO2排出規制強化による生産コスト増加

○環境対策の対応不足や環境関連法令違反による企業価値の低下

 

(影響)

当社グループは、各工場でISO14001を取得し、また国や地方自治体に応じた環境法令等への対応や、環境トラブル防止に配慮した事業運営に取り組んでおりますが、環境対策の取り組みが不十分な場合、当社の企業価値を損ね、資金調達や従業員の確保などに影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

ESGの取り組みは、当社グループの事業活動の基盤であり、競争力を左右する重要な要素と捉え、事業と一体となったESG経営を推進しております。環境負荷を極小化するために、省資源・省エネルギー、CO2排出量の低減、脱プラスチック、水資源の有効活用、バリューチェーンにおけるAIの活用に努め、資源の利用効率の最大化を図るためのゼロエミッションなどに積極的に取り組んでまいります。

(関連するマテリアリティ)

食の安定供給による持続可能な社会の実現

 

《人権に関するリスク》

○サプライチェーンにおける人権対応不備による企業価値の低下

○ハラスメントなどの人権侵害

 

(影響)

生活者の環境に対する意識も高まっており、サプライチェーン上で環境や品質、人権などの問題が生じた場合、そのサプライチェーン全体での管理・責任が問われる時代となっております。これらの社会的課題への取り組みが不十分と見なされた場合、企業価値の低下につながる可能性があります。

(対応)

当社グループは、2019年に世界規模で企業とサプライヤーを結ぶ共通のプラットフォームを提供しているSedex(※4)にA/B会員として入会し、Sedexのプログラムを有効活用することで、グローバルな視点で「労働基準」、「安全衛生」、「環境」、「ビジネス倫理」の4領域に関するサプライチェーンのサステナブルな課題の把握とその改善に取り組んでおります。また、2021年9月に国連グローバル・コンパクト(UNGC)に署名し、会員企業に登録されました。UNGC署名企業として人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、腐敗防止の4分野、10原則の順守、実践に取り組んでおります。

持続可能な調達の実効性を高めるためにはサプライヤーとの協働が重要です。当社は「サステナブル調達方針・基準」を定め、自社だけでなくサプライヤーに対して順守をお願いするとともに、2022年度よりグローバル・コンパクト・ ネットワーク・ジャパンが作成した「CSR調達セルフ・アセスメント質問表」(GCNJ共通 SAQ)を用いて、原料・資材のサプライヤーへ調査を実施し、サステナビリティへの取り組み状況を確認しております。

さらに、アブラヤシの果実から搾油されるパーム油は、我々の生活に欠かせない油脂であり、当社グループの事業活動を支える重要な原材料の1つであるため、「サステナブル調達方針・調達基準」および「パーム油調達方針」にもとづき、原産国の環境保全に配慮し人権を尊重するとともに、食を支える企業として、パーム油の安定供給の社会的責任を果たすために持続可能なパーム油調達を実現いたします。

また、2023年度には「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン」にもとづき、人権デューデリジェンスでプロセス構築における課題、ステークホルダーを特定し、当社の現状と検討事項を整理しました。今後、課題の緊急度と重要度による優先順位付けを行い、対応策を決定し取り組みを進めてまいります。

国内外の当社グループ全従業員に向けては、人権教育を実施しております。人権をはじめとする社会課題の解決に向けて、当社事業活動への落とし込みや従業員が自分ごと化できるよう、当事者意識の醸成に努めております。

(関連するマテリアリティ)

食の安定供給による持続可能な社会の実現

多様性の尊重と従業員の働きがい向上

 

※4 Sedex:グローバルサプライチェーンにおける倫理的で責任あるビジネス慣行の実現を目指し、サプライチェーンデータを管理・共有する世界最大のプラットフォームであります。顧客とサプライヤーが共通のプラットフォームを活用して情報を共有し、サプライヤーにおける問題点を抽出するとともに、その課題解決への取り組み状況を把握し、サステナブルな事業慣行の拡大に取り組んでおります。A/B会員は、バイヤー機能を持つA会員と、サプライヤーとしてSAQに回答するB会員の両方の資格を保有しております。

 

《人財・労務に関するリスク》

○高度な専門性を持つ人財や次世代を担う人財の不足

○DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の進展不足による企業競争力の低下

○労働災害、労働関連法令違反や労務トラブル等による企業価値の失墜、損害賠償請求など

 

(影響)

日本全体の社会情勢の変化により、雇用環境や必要となる専門性、人々の労働に対する価値観などが大きく変わりつつある中、当社の成長の原動力となる、各分野で必要とする高度な専門性を持つ人財や次世代を担う人財の確保、育成および配置が計画的に推進できない場合には、事業活動の停滞等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社は労働安全を重要な課題と位置づけ、当社グループで働く従業員の安全と健康に配慮し、事故の予防に努めております。しかし、労働災害が発生した場合には、当社グループの経営成績や評判に悪影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

当社グループは、人的資本経営として、多様な人財の挑戦と成長を促す職場環境を実現し、「サステナブルに強い個が創出されること」および「強い個がエンゲージメント高くチームとして活躍すること」を目指しています。多様な人財にとって働きやすい職場環境を維持・改善し、公正な人事・処遇制度の構築とその適正な運用に取り組んでおります。高度な専門性を持つ人財や次世代の経営を担う人財の育成に取り組むとともに、女性活躍やシニア活躍などのダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンのさらなる推進、働き方の見直しや健康経営をさらに推進しております。

当社では、毎年、労働安全衛生目標を掲げ、当社グループで働く従業員の安全と健康を確保し、労働災害の発生を防止するための取り組みを進めております。例えば、安全衛生教育の実施や安全衛生管理体制の整備、労働環境の改善、さらには事故発生時の迅速な対応などに取り組んでおります。

(関連するマテリアリティ)

多様性の尊重と従業員の働きがい向上

 

《資金調達に関するリスク》

○市中金利の上昇による金利負担の増加

○金融市場の混乱による資金調達難

 

(影響)

当社グループは、銀行借入や社債発行、債権流動化などによる資金調達を行っております。市場金利が上昇した場合、または金融市場の混乱による取引金融機関の融資方針が変更された場合には、資金調達コストが増加し、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。これにより、格付会社による当社グループの信用格付が大幅に低下した場合には、資金調達に制約が課される可能性があります。

(対応)

資金調達に際しては、短中期的な大規模資金需要も踏まえ、財務健全性に配慮した資金調達を行うこととし、資金需要の性質、金融市場環境、長短バランス、資金調達コスト、調達先の分散などを総合的に検討し、資金調達手法を選択しております。金利上昇リスクに対しては、社債や長期借入による固定金利での資金調達を併用することで、金利変動リスクの低減を図っております。定期的に自己資本比率やD/Eレシオなどをモニタリングするとともに、減損懸念資産や繰延税金資産の継続的なモニタリングを通じて自己資本毀損リスク規模を把握しております。また、運転資本管理、政策保有株式縮減などによる資産圧縮を徹底し、資本効率の改善を目指しております。

(関連するマテリアリティ)

コーポレートガバナンスの強化

食の安定供給による持続可能な社会の実現

食の安全安心を通じすべての人のウェルビーイングへ貢献

 

《のれんや固定資産の減損損失に関するリスク》

○買収・資本参加した子会社等の業績不振、事業計画の大幅未達

○固定資産の公正価値の下落

 

(影響)

当社グループは、事業用の設備、不動産や企業買収などにより取得したのれんをはじめとする有形固定資産・無形固定資産を所有しております。こうした資産は、公正価値の下落や、金利の上昇、買収・資本参加した子会社等の業績が事業計画に対して大幅に未達となるなどにより、減損損失が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

投融資委員会や経営会議における買収価格の適切性に関する審議や買収後のシナジー実現に向けたフォローアップ、マクロ経済環境の定期的なモニタリング、事業計画にもとづく将来キャッシュ・フローの見積りの実施などにより、減損処理の適否を判断しております。

(関連するマテリアリティ)

コーポレートガバナンスの強化

 

《知的財産に関するリスク》

○競合他社による同様の技術開発に対し、当社の知的財産の権利化が不十分なことによる競争優位性の喪失

○第三者の知的財産権の侵害による販売の差し止めや損害賠償請求など

 

(影響)

知的財産の権利化が不十分なことにより、競争優位性が失われ、開発投資を充分に回収できなくなる可能性があります。その結果、次への開発投資ができなくなることにより、お客様に価値の高い製品の提供が難しくなる可能性があります。また、第三者の知的財産権の侵害は、お客様への製品提供の継続が困難になるだけでなく、当社ブランドの信頼失墜につながる恐れがあります。これらの結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

知財部門からの開発や生産部門等の定期的な会議への参加や、相互連携による発明等の早期発掘により、迅速かつ適切な知的財産の権利化取得を実施しております。また、製品化の際には、第三者の知的財産権の侵害調査を実施し、侵害による差し止めなどを未然に防ぐ仕組みを構築しております。

さらに、知的財産の権利化の重要性や第三者の知的財産権の侵害リスクの認識を向上するために、継続的な研修を実施しております。

(関連するマテリアリティ)

食の安定供給による持続可能な社会の実現

食の安全安心を通じすべての人のウェルビーイングへ貢献

 

《コンプライアンスに関するリスク》

○法規制や社会規範に反した行為や不正・ハラスメントなどの発生

○法規制の変更や追加による事業上の制約

 

(影響)

当社グループは、食品衛生法、食品表示法、JAS法等以外に、環境・リサイクル関連法規、独占禁止法などの様々な法的規制の下で事業展開しております。法規制や社会規範に反した行為や不正、またはハラスメントなどが発生した場合には、当社グループの信用の失墜により財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、予測し得ない法規制の変更や追加による事業上の制約などにより当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

当社グループは、法規制および社会規範を遵守することを目的とした「J-オイルミルズ行動規範」を策定し、継続的な啓発と全社員を対象とした研修やeラーニングなどを実施することで周知しております。加えて、不正やハラスメントなどを早期に見出し、是正していくために社内外に内部通報窓口を設けることで、法規制や社会規範に反した行為などの発生を低減することを進めております。また、法規制の変更や追加に対応するため、法令改正情報を注視し、関連する法令改正に適切に対応してまいります。

(関連するマテリアリティ)

コーポレートガバナンスの強化

 

《グループ経営体制の整備に関するリスク》

○グループガバナンスやグループ内における内部統制に重大な不備や弱点が認められた場合の改善に要する追加コストの発生

○グループ戦略の立案や見直しが適切に行われないことによるシナジー効果の希薄化

 

(影響)

当社は、国内外に子会社、関連会社を有しております。当社グループとしての企業価値の向上と業務の適正を確保する体制を整備しておりますが、グループ会社の統治が十分に機能せず、発生したインシデントの対応の遅れなどが生じた場合には、当社グループの社会的信用が失墜し、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、事業環境の変化に対してグループ戦略の策定・推進が適切に行われない場合には、グループ経営の効率化や競争力が低下する可能性があります。

(対応)

当社グループは、中期経営計画の策定と推進を通じて、グループとしての企業価値向上に努めております。また、グループ会社の事業運営の独立性と自立性を尊重しつつ、グループ会社の取締役の職務執行の適正を確保するため、「関係会社運営規程」において、管理項目ごとに報告等の手続き方法を定め、報告を受けることとしております。さらに、グループ会社トップミーティングや役員向けのガバナンス研修会の開催、グループ横断的支援体制の推進により、当社グループ間の連携強化に努めております。

(関連するマテリアリティ)

コーポレートガバナンスの強化

 

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報にもとづき、当社グループが判断したものであります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営成績

① 事業環境

油脂事業環境につきましては、主原料である大豆相場は、米国産地における順調な作付け進捗などから5月には一時1ブッシェル当たり12米ドル台まで下落しましたが、事前予想を下回る米国作付面積発表などを受け、7月には16米ドル台まで上昇しました。その後は米国産大豆の順調な収穫進展を受けて9月には再び12米ドル台まで下落しました。10月以降はブラジルの天候懸念から14米ドル目前まで上昇しましたが、南米の豊作期待の高まりから2月には11米ドル台まで再度下落しました。3月末にかけては12米ドル目前まで値を戻しましたが、前年同期との比較では低位での推移となりました。菜種相場は、カナダでの順調な作付け進捗を受けて5月には1トン当たり一時600加ドル台前半まで下落しましたが、米国の植物油需要の増加期待から上昇傾向に転じ、7月には800加ドル台中盤まで上昇しました。その後、カナダ産菜種の需給緩和予想などから軟調な展開が続き、2月には500加ドル台後半まで下落しました。3月末にかけては600加ドル台を回復しましたが、前年同期との比較では低位での推移となりました。ドル円相場は、日米の金融政策の方向性の違いが意識される中、円安ドル高傾向が継続し、11月には151円台/1米ドルを付けました。その後は、米国の利下げ予想や日銀のゼロ金利政策解除などを受けて一時的に円高ドル安へ振れる局面は見られたものの、大きな流れとしては円安ドル高の傾向は変わらず、3月下旬には再び151円台/1米ドルまで円安ドル高が進行しました。前年同期との比較では円安水準での推移となりました。

 

② 経営成績の状況

連結損益計算書

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

売上高

260,410

244,319

売上原価

232,640

209,001

販売費及び一般管理費

27,035

28,074

営業利益

734

7,243

経常利益

1,436

9,043

親会社株主に帰属する当期純利益

986

6,792

 

(売上高)

当連結会計年度は、原料価格の軟化に伴い油脂の販売価格が低下したことに加え、ミールも搾油量の低下により販売数量が減少したことで、売上高は2,443億19百万円前年同期比6.2%減)となりました。

(売上原価、販売費及び一般管理費)

当連結会計年度は、原料価格の軟化に加え、製造費用の継続的なコストダウンにより、売上原価は2,090億1百万円前年同期比10.2%減)となりました。販売費及び一般管理費は、各種経費の抑制に取り組んだものの、経済活動の正常化に伴い活動費が増加したことで、280億74百万円前年同期比3.8%増)となりました。

(営業利益)

原材料価格の良化および油脂の適正価格での販売やスペシャリティフード事業の収益改善により、営業利益は72億43百万円前年同期比886.4%増)となりました。

(経常利益)

受取配当金や持分法による投資利益の計上により、経常利益は90億43百万円前年同期比529.6%増)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

投資有価証券売却益や製油パートナーズジャパン株式会社の設立に伴う持分変動利益を特別利益として計上し、特別損失では固定資産除却損やスペシャリティフード事業の事業資産で減損損失等を計上しました。以上により、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は67億92百万円前年同期比588.6%増)となりました。

 

③ セグメントの概況

 

セグメントの名称

売上高(百万円)

セグメント利益(百万円)

セグメント資産(百万円)

 

前年同期比(%)

 

前年同期比(%)

 

前期末比(百万円)

油脂事業

220,000

△7.0

6,952

398.6

144,965

△731

スペシャリティフード事業

23,279

1.9

122

17,074

△2,637

その他

1,040

△0.9

168

8.5

696

△6

全社

15,357

2,846

合計

244,319

△6.2

7,243

886.4

178,093

△528

 

 

(油脂事業)

油脂部門につきましては、家庭用油脂は、値上げによる節約志向の高まりや外食への回帰などの影響で需要が減少し、販売数量は前年同期をやや下回りました。汎用油においては、販売数量は前年同期と同程度ながら、販売単価が下落したことから売上高は前年同期を下回りました。原料価格高騰の影響によりオリーブオイルの市場は足元では縮小傾向にあるものの、価格改定により売上高は前年同期を大きく上回りました。環境負荷の低減や生活者の使いやすさが特長である「スマートグリーンパック®」のパッケージを刷新し、ラインナップを拡充しました。販売店舗数も増加し、6月および11月にはTVCMと連動した各種キャンペーンを展開することで、認知度向上を図り拡販に努めました。なお、「スマートグリーンパック®」の技術は流通プライベートブランドや業務用商品へも拡大されています。業務用油脂は、油脂価格高騰によるお客様のフライ油の使用日数の延長やフライメニューの減少の影響を受けたものの、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴う人流の回復やインバウンド需要の拡大による外食市場の回復により、販売数量は前年同期をわずかに上回りました。売上高については、価値に見合った適正価格での販売に努めたものの、前年同期を下回りました。当社独自技術「SUSTEC®(サステック)」については、市場の回復により深刻化する人手不足を背景に、長持ちすることによるフライ油交換に伴う労働負荷の軽減と、対象商品を拡大したCFP(Carbon Footprint of Products)認証による環境負荷の低減という二つの低負荷を軸とした提案を推進しました。

油糧部門につきましては、大豆ミールは搾油量が前年同期を下回ったことから、販売数量は前年同期を下回りました。販売価格はシカゴ相場が下落したものの、為替相場の円安進行により前年同期と同程度となりました。菜種ミールは搾油量が前年同期を下回ったことに加え、ミール歩留がやや低下したことから販売数量は前年同期を下回りました。販売価格は大豆ミール価格に連動して前年同期と同程度となりました。

以上の結果、当事業は、売上高2,200億円前年同期比7.0%減)、セグメント利益69億52百万円前年同期比398.6%増)、セグメント資産1,449億65百万円前期末比7億31百万円減)となりました。

 


 

 

(スペシャリティフード事業)

乳系PBF部門につきましては、家庭用はマーガリン・ファットスプレッド市場の縮小傾向の影響を受け、販売数量は前年同期を下回りました。売上高は価格改定後の販売単価の価格維持に努めたものの、前年同期をやや下回りました。なお、2024年3月をもって家庭用マーガリン類の生産および販売を終了することとなりました。プラントベースブランド「Violife」は、引き続きターゲット層への認知・理解促進に努めました。業務用はインバウンド需要の回復傾向が続き、土産菓子向けや外食の需要が堅調に推移する一方、原材料価格の上昇などにより、菓子やパンの販売個数や容量の減少、油脂使用量の削減などの影響を受けた結果、販売数量は前年同期を下回りました。売上高は前年度に実施した価格改定後の単価維持に努めたものの、前年同期をやや下回りました。粉末油脂は安定した受注量、生産量を確保したことから販売数量は前年同期をやや上回りましたが、原料価格の低下による販売価格の下落により、売上高は前年同期と同程度となりました。

食品素材部門につきましては、テクスチャーデザインは段ボール用およびビール用コーンスターチの出荷が伸びず、販売数量は前年同期をやや下回る結果となりましたが、売上高は価格改定およびアプリケーション提案の推進により、順調に推移しました。「TXdeSIGN®(テクスデザイン)」シリーズにつきましては、製菓製パン用途や畜肉用途への提案を強化することでターゲット顧客での採用が進み、売上高は前年同期を大きく上回りました。ファインは、ビタミンK2が国内市場を中心に新規採用や使用量拡大が進んだことに加え、米国や台湾など海外への輸出拡大に取り組んだ結果、売上高は前年同期を大きく上回りました。大豆たん白をベースとしたシート状大豆食品「まめのりさん®」は流通在庫調整の影響を受けたものの、価格改定に努めた結果、売上高は前年同期を上回りました。

 以上の結果、当事業は売上高232億79百万円前年同期比1.9%増)、セグメント利益1億22百万円前年同期はセグメント損失8億15百万円セグメント資産170億74百万円前期末比26億37百万円減)となりました。

 


 

 

(その他)

その他の事業につきましては、売上高10億40百万円前年同期比0.9%減)、セグメント利益1億68百万円前年同期比8.5%増)、セグメント資産6億96百万円前期末比6百万円減)となりました。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりになります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

油脂事業

176,895

△16.0

スペシャリティフード事業

14,977

△10.2

合計

191,873

△15.6

 

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。

2 金額は製造原価によっております。

b. 受注実績

当社グループは受注生産を行っておりません。

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりになります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

油脂事業

220,000

△7.0

スペシャリティフード事業

23,279

1.9

その他

1,040

△0.9

合計

244,319

△6.2

 

(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

味の素株式会社

49,128

18.9

49,513

20.3

全国農業協同組合連合会

26,618

10.2

25,894

10.6

 

 

 

⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、2026年度を最終年度とする第六期中期経営計画「Transforming for Growth」を推進しており、その達成・進捗状況は以下のとおりであります。

 

2021年度実績

2022年度実績

2023年度実績

2026年度目標

売上高

201,551百万円

260,410百万円

244,319百万円

営業利益

△21百万円

734百万円

7,243百万円

110億円

営業利益率

△0.0%

0.3%

3.0%

ROE

2.1%

1.0%

7.0%

8.0%

ROIC

△0.0%

0.4%

3.7%

5.0%

EPS

59.24円

29.82円

205.36円

260円

 

 

(2) 財政状態

連結貸借対照表

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

流動資産

110,793

108,806

固定資産

67,797

69,263

繰延資産

30

23

資産合計

178,621

178,093

流動負債

51,527

42,971

固定負債

32,829

33,071

負債合計

84,357

76,042

純資産

94,263

102,051

負債純資産合計

178,621

178,093

 

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は1,088億6百万円で、前連結会計年度末に比べ19億86百万円減少しました。主な増加は、現金及び預金が18億22百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が11億78百万円であります。主な減少は、棚卸資産54億19百万円であります。

固定資産は692億63百万円で、前連結会計年度末に比べ14億65百万円増加しました。主な増加は、投資有価証券が90億64百万円、退職給付に係る資産が9億30百万円であります。主な減少は、有形固定資産が82億39百万円、無形固定資産が2億56百万円であります。

これにより、総資産は1,780億93百万円前期末比5億28百万円減)となりました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は429億71百万円で、前連結会計年度末に比べ85億56百万円減少しました。主な増加は、支払手形及び買掛金が24億82百万円、未払法人税等が22億76百万円、流動負債その他が13億49百万円であります。主な減少は、短期借入金158億円であります。

固定負債は330億71百万円で、前連結会計年度末に比べ2億41百万円増加しました。主な増加は、繰延税金負債7億16百万円であります。主な減少は、退職給付に係る負債が3億50百万円、リース債務が1億41百万円であります。

これにより、負債は760億42百万円前期末比83億15百万円減)となりました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は1,020億51百万円で、前連結会計年度末に比べ77億87百万円増加しております。主な増加は、利益剰余金が54億59百万円、その他有価証券評価差額金が10億41百万円、退職給付に係る調整累計額が8億円であります。

 

 

(3) キャッシュ・フロー

① キャッシュ・フローの状況

連結キャッシュ・フロー計算書

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

△10,022

22,468

投資活動によるキャッシュ・フロー

△3,709

△3,336

財務活動によるキャッシュ・フロー

12,628

△17,347

現金及び現金同等物の増減額

△1,081

1,822

現金及び現金同等物の期末残高

2,424

4,246

 

当連結会計年度の現金及び現金同等物は、前年同期と比べ18億22百万円増加し、42億46百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ324億90百万円増加し、224億68百万円となりました。この主な要因は、棚卸資産が減少したことによります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ3億72百万円増加し、△33億36百万円となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出を計上したことによります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、前年同期に比べ299億75百万円減少し、△173億47百万円となりました。この主な要因は、短期借入金が減少したことによります。

 

② キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

自己資本比率(%)

60.6

60.1

58.2

52.5

57.1

時価ベースの自己資本比率(%)

51.0

42.0

32.9

28.2

36.0

キャッシュ・フロー対有利子
負債比率(年)

1.6

5.2

1.4

インタレスト・カバレッジ・
レシオ(倍)

172.7

36.3

174.9

 

(注)自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い

※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。

※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としています。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

※2021、2022年度のキャッシュ・フロー対有利子負債比率およびインタレスト・カバレッジ・レシオは、営業キャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。

 

③ 資本の財源

主要な資金需要は、製造および販売活動に必要な運転資金、有利子負債の返済、配当金の支払い、法人税等の支払い、事業基盤整備のための設備投資、新規事業への投資であり、これらの資金需要に対しましては、営業活動によるキャッシュ・フローおよび内部留保資金、社債発行、金融機関からの借入により資金調達しております。

 

④ 資金の流動性

当社グループは、現金及び現金同等物において、グループ各社の余剰資金を一元管理することによって資金の効率化と金融費用の極小化を図っております。また、当座貸越契約、コミットメントライン契約、売掛債権の流動化による機動的な資金調達手段を備えており、十分な資金の流動性を確保しております。

 

⑤ 財務政策

当社グループは、資本効率性と格付を考慮した財務健全性の最適バランスを取りながら、営業活動によるキャッシュ・フロー創出力を強化し、持続的な企業価値の向上を追求していく方針であります。これにより、事業活動の維持に必要な手許資金の水準を確保するとともに、安定した株主還元と、企業体質の強化や積極的な事業展開のための成長投資など、長期的視野に立った安定的かつ適正な利益配分を行うこととしております。加重平均資本コスト(WACC)等を用いて資産効率向上を進めてROA等の改善を図ることとし、原料相場や為替相場の変動等による経営環境の変化を踏まえ、財務政策における目標値を見直すこととしております。

なお、キャッシュ・フローの推移実績は以下のとおりであります

項目(億円)

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

キャッシュ・イン

 

 

 

 

 

 

営業活動キャッシュ・フロー

146

42

△168

△100

224

 

資産売却

20

12

74

12

11

 

借入金残高

189

183

306

446

288

キャッシュ・アウト

 

 

 

 

 

 

成長投資等

63

36

55

50

44

 

株主還元

15

16

16

11

13

 

有利子負債返済または調達

(△は調達)

25

7

△120

△139

159

フリー・キャッシュ・フロー

104

18

△148

△137

191

 

(注)フリー・キャッシュ・フロー:営業活動によるキャッシュ・フロー+投資活動によるキャッシュ・フロー

※借入金残高は、社債を含みます。

 

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを用いることが必要となりますが、これらの見積りについては過去の実績や現状等を総合的に勘案し合理的に判断しております。しかしながら実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。

 

退職給付債務の算定

当社グループは確定給付制度を採用しております。退職給付債務及び勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、昇給率、期待運用収益率等の様々な計算基礎があり、当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、退職給付に係る負債及び退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。

 

なお、投資有価証券の評価、棚卸資産(原材料)の評価および固定資産の減損については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

 

相手先

相手先の

所在地

契約内容

契約締結日

契約期間

味の素株式会社

日本

食用油脂事業に関する業務提携の下、同社のブランドを使用する、同社の一部販売ルートを利用する等。

2004年7月1日

自動更新

不二製油グループ本社株式会社

日本

食用油脂事業に関する業務提携の下、原料・資材の効率的調達、中間原料油の相互供給等。

2007年9月7日

自動更新

日清オイリオグループ株式会社

日本

搾油工程(原油と油粕の製造)までを範囲とした業務提携の基本契約。

2020年3月31日

自動更新

全国農業協同組合連合会

JA西日本くみあい飼料株式会社

全農サイロ株式会社

日本

当社岡山エリアの運営に関して、原料大豆の保管設備利用や配合飼料原料の供給等、長期にわたって相互協力を行う。

2015年2月1日

自動更新

Premium Nutrients Private Limited

マレーシア

油脂加工品事業に関する業務提携の下、同社の子会社であるPremium Fats Sdn BhdとPremium Vegetable Oils Sdn Bhdに対して出資することにより、それぞれ当社の連結子会社、持分法適用会社とする。

2019年10月9日

自動更新

UPFIELD EUROPE B.V.

オランダ

同社ブランドのマーガリン事業での使用。

2019年12月16日

自動更新

 

 

(合弁契約)

当社は、2023年8月9日開催の取締役会において、日清オイリオグループ株式会社(以下、「日清オイリオグループ」という)との間で、2023年10月2日を効力発生日として、共同新設分割により新設する製油パートナーズジャパン株式会社(以下、「製油パートナーズジャパン」という)について定めた合弁契約について決議、締結いたしました。

この会社分割の概要は次のとおりであります。

(1) 会社分割の目的

当社および日清オイリオグループは、国内製油産業の長期的な課題についての共通認識のもと、将来にわたり日本の食を支えることを目指し「油脂と油粕の安定的な供給」、「持続可能な国際競争力の強化」の実現と、「環境・社会課題の解決」を通して広く社会に貢献することを目的に、2021年5月より搾油合弁会社設立に関する検討を行い、2022年11月より、西日本エリアにおける搾油合弁会社設立に関する協議を進めてまいりました。本分割について、公正取引委員会の承認を得られたことから、2023年10月に本分割を実行することにいたしました。

新会社は、国内搾油業の国際競争力強化と安定供給を長期にわたって確保する共同運営体制の構築を目指すとともに、AIやIoTの活用によるスマートファクトリー化、脱炭素社会への取り組みなど、環境・社会課題への解決にも繋がる「次世代型搾油工場」の構築に向けた取り組みを推進してまいります。

(2) 会社分割の方法

当社および日清オイリオグループを新設分割会社とし、両社が共同で新設する製油パートナーズジャパンを承継会社とする共同新設分割といたしました。

(3) 会社分割の期日

2023年10月2日

(4) 分割する当社事業部門の概要

(1) 分割する部門の事業内容

当社倉敷工場における搾油工程

(2) 分割する部門の経営成績(連結)

-(注)

(3) 分割する資産、負債の項目(連結)

資産:6,999百万円

 

 

(注)生産工程の一部を分割することから、経営成績として示すことが困難であるため「-」としております。

(5) 分割に際して発行する株式及び割当

製油パートナーズジャパンは、本分割に際して、普通株式10,000株を発行し、分割対価として、当社に5,000株、日清オイリオグループに5,000株を割当て交付いたしました。

(6) 割当株式数の算定根拠

割当株式数の算定に当たっては、対象事業に係る資産等の内容を精査し、同事業に係る主要な資産である有形固定資産をコスト・アプローチにより評価し、総合的に勘案して、当事会社間で協議の結果、決定いたしました。

(7) 新設分割設立会社の概要(2023年10月2日時点)

(1) 商号

製油パートナーズジャパン株式会社

(2) 本店所在地

岡山県倉敷市水島海岸通三丁目2番地

(3) 代表者の役職・氏名

代表取締役 川邊  修(日清オイリオグループ)

代表取締役 田中 一伸(J-オイルミルズ)

(4) 事業内容

日清オイリオグループおよびJ-オイルミルズからの搾油受託事業(原油と油粕の製造)

(5) 資本金

100百万円

(6) 決算期

3月31日

 

※日清オイリオグループおよびJ-オイルミルズに関しては、商号、本店所在地、代表者の役職・氏名、事業内容、資本金、および決算期について、いずれも本分割による変更はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社では「Joy for Life® -食で未来によろこびを-」を目指すべき未来として掲げ、「おいしさ×健康×低負荷」で人々と社会と環境へのよろこびを創出すべく、社会課題解決に貢献する研究開発活動を進めております。

素材開発や体内への作用のメカニズム解析を行い、基盤技術を確立・向上する役割を研究開発センターが担い、技術の仕上げである商品開発、つまり、お客さま毎のさまざまなニーズに合わせたカスタマイズやブラッシュアップを商品開発グループが担っています。当社の基盤技術開発とお客さまのニーズに沿った商品開発を両輪として回しながら、研究開発センターと商品開発グループの二人三脚で新たな価値を提供する商品開発・技術開発を行っています。

また、商品開発を行う際には、お客さまがどのようなものを求めているのかを把握することが重要であり、その起点となる当社の「おいしさデザイン工房®」ではシェフやパン職人などさまざまな経験と技能を持つ技術者が、当社製品のアプリケー ション開発を行っています。

①家庭用油脂事業の開発においては、生活者のベネフィットを第一に考え、おいしさ、健康、環境および調理者の負荷低減に寄与する商品開発を行っております。

②業務用油脂事業の開発においては、食のプロに向けて、作業環境の向上、長持ち機能など経済性および環境さらには調理作業の低負荷に繋がる商品の提供を目指し開発を行っております。

③テクスチャーデザイン事業の開発においては、当社独自の加工技術を用いて、畜肉製品、水練り製品、菓子類、製菓など幅広いジャンルの食品に対して、好ましい食感・物性・機能性を付与できる機能性澱粉の商品開発を行っております。

④研究開発センターにおいては、上記の各事業の商品開発の基盤となる、科学的な真理探究を伴う基盤技術開発を行っております。

なお、研究開発費の総額は、1,307百万円であります。

 

セグメント別の研究開発活動は、次のとおりであります。

(油脂事業)

家庭用油脂分野では生活者の節約志向や調理時の手間低減に寄与する「AJINOMOTO ダブルハーフ」600gUDエコペットおよび900gエコボトルを発売しました。調理時の気になるにおいを抑制する機能をわかりやすく伝えるために、「AJINOMOTO さらさら®キャノーラ油軽やか仕立て」をリニューアルいたしました。また、健康意識の高まりを受け、国内初となるα-リノレン酸による肌保湿効果のある機能性表示食品として新商品「AJINOMOTO 毎日アマニ油」90g鮮度キープボトルおよび326g鮮度キープボトルを発売しました。さらに、オリーブオイル領域では、お手軽にどんな料理にもたっぷり使えるブレンドオイル「AJINOMOTO オリーブたっぷりクッキングオイル」600gUDエコペットを発売しました。

当社では人と地球にやさしい商品開発に努めており、再生ペット樹脂をボトルとラベルの一部に使用した新容器を用いて「FILIPPO BERIO®エクストラバージンオリーブオイル」、「FILIPPO BERIO®オリーブオイル」、「AJINOMOTO 軽くて あっさりしたオリーブオイル」を新容量720gUDエコペットにて発売しました。またプラスチック使用量約60%削減を実現した環境配慮型商品「スマートグリーンパック®」シリーズでは「AJINOMOTO やさしいオリーブオイル®」300gの幅広くクッキング用途で使用できる特長をより分かりやすく伝えるため、パッケージデザインを一新しました。

業務用油脂分野におきましても、環境配慮型商品の要望に応えるべく家庭用で発売している紙パック容器を展開し、「スマートグリーンパック®」を活用した「スマートグリーン® サラダ油」900gを発売しました。また、CO2発生量の削減によるサステナブルな社会実現へ貢献すべく、当社独自技術「SUSTEC®(サステック)」を導入した商品である「すごい長徳®」5品においてCFP認証を取得し、27-28%のCO2削減効果が認定されました。これまでにCFP認証を取得していた商品群を含め、「長徳®」シリーズは食資源を大切に使用したいというお客様の要望に応える商品として拡販に努めるとともに、フライ油の使い方において、廃棄に関する管理基準の提案など、幅広く活動してまいりました。また、調理における技術不足・手間軽減(時短)・安定調達をサポートする商品を提供することで、外食や中食の調理現場においてサステナビリティを実現しつつ、生活者のニーズに対応した製品およびサービスを開発しております。

なお、当事業の研究開発費の金額は、831百万円であります。

(スペシャリティフード事業)

乳系PBF分野では、2021年に発売を開始した「Violife」シリーズから、販売中の「Violife 植物生まれのチーズ シュレッド モッツァレラタイプ」と「Violife 植物生まれのチーズ シュレッド チェダータイプ」の20%増量キャンペーンを実施し、お客様がトライアルとリピートをしやすい商品提案を行いました。

加工油脂分野では、業務用マーガリン、業務用ショートニングの開発を行い、油脂加工技術を活用して製菓製パン業界を中心とした食のプロのニーズにお応えしております。

粉末油脂分野では、生産部門との連携を通して噴霧乾燥工程の生産効率の向上、安定生産へのサポートを継続しております。

テクスチャーデザイン分野では、当社の業務用ブランド「TXdeSIGN ®(テクスデザイン)」シリーズの新たな製品として「ネオトラスト®EX-600」を市場に導入しました。この製品は、従来製品よりも製パンプロセスにおけるハンドリング性を向上させることに重点を置いて開発されました。さらに、「エクステン®」のラインアップに新たに「エクステン®CM PLUS」を加え、アイスクリームやチーズなどの乳製品分野への進出を図っています。

健康素材分野では、大豆シート食品「まめのりさん®」とファイン分野のビタミンK2は、生産効率改善や販売促進に対応した技術開発に取り組みました。

なお、当事業の研究開発費の金額は、476百万円であります。