文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
当社グループは、2021年4月に、私たちの目指すべき未来、私たちの使命、私たちの価値/存在意義をあらわした、新たな企業理念体系を制定いたしました。同時に、コミュニケーションブランド「JOYL」を導入し、新企業理念体系を基にした企業活動およびすべてのステークホルダーの皆様とのコミュニケーションで「JOYL」を活用し、「JOYL」を受け皿として、生まれた価値を蓄積、資産化していきます。
コミュニケーションブランド「JOYL」の下、「Joy for Life® -食で未来によろこびを®-」のビジョン実現に向け、ステークホルダーの皆様や社会、環境の「Joy」を「おいしさデザイン®」で創出し、社会課題の解決に貢献してまいります。

2024年度の経営環境は、依然として不透明性が高い状況が続きました。インバウンド需要の伸長等で中食・外食市場には明るい兆しが見られる一方で、物流費やエネルギーコスト、原材料費の高騰、円安の継続、さらにオリーブオイルの価格高騰の影響が残るなど、当社を取り巻く事業環境は引き続き厳しい状況にあります。また、気候変動リスクや国内市場の少子高齢化に伴う縮小傾向など、構造的な社会課題への対応も必要とされております。
このような環境下において、当社グループは「Joy for Life®-食で未来によろこびを®-」の理念のもと、「おいしさ×健康×低負荷」を通じた社会課題の解決と企業価値の持続的向上に向けた取組みを推進しております。特に2025年度は、これまで推進してきた構造改革の成果を踏まえたうえで、「復活」から「成長」へと舵を切る重要な転換期と位置づけ、下表の「成長戦略」「構造改革」「経営基盤強化」の3つの柱を軸に経営課題への対応を進めてまいります。

中期経営計画達成に向けた対処すべき課題は以下のとおりです。
<成長戦略>
企業理念に「おいしさ×健康×低負荷」を掲げており、その中でも「低負荷」を差別化された強みとして、製品力強化とコミュニケーション強化の施策を通じ、高付加価値品の拡販に注力しております。家庭用油脂では、環境配慮型パッケージ「スマートグリーンパック®」シリーズや、油使用量と油ハネを半減する「ダブルハーフ」の販売が順調に拡大しております。さらに、オリーブオイルの価格高騰に対応した「オリーブオイルたっぷりクッキングオイル」を発売し、価格競争力とお客さま満足の両立を図りました。業務用油脂では、長持ち油「長徳®」シリーズや「JOYL PRO®」など業務負荷を低減する製品を展開するとともに、油脂×スターチでお客さまの課題解決を図るソリューションの深化とチャネル拡大を推進しております。海外では、重点地域として位置づけているASEANおよび北米を中心に、油脂加工品やスターチ素材の販売拡大に注力し、大豆シート食品「まめのりさん®」の北米市場拡大、新素材開発による製品ラインアップの強化など、多面的な施策により海外売上比率の引き上げを目指しております。これら以外に、次世代技術を活用した脱炭素社会実現に向けた取組みの一つとして、食用に適さない植物の種子から生成した国産SAF(Sustainable Aviation Fuel/持続可能な航空燃料)の活用などにも取り組んでおり、将来を見据えた事業基盤の革新と環境負荷低減の両立への挑戦も行っております。
<構造改革>
2023年度より実行してまいりました家庭用マーガリンなどの不採算事業からの撤退により、利益体質の改善を実現しました。また、DXの取組みの一つ目のステージとして業務プロセスの改善、SCM改革、スマートファクトリー、顧客接点の強化、AIプラットフォームの導入といった新たな取組みへシフトできる体制の構築を目指しております。その他にも引き続き、遊休資産・投資有価証券の処分といった資産効率の改善、原価低減、在庫水準最適化等を推進し、収益構造の強靭化を図ってまいります。
<経営基盤強化>
人的資本経営の推進として、2023年度に制定した「人財ポリシー」に基づいて、従業員への成長機会の提供およびエンゲージメント向上のための施策とKPI設定を行っております。また、サステナビリティ領域ではCO2排出量削減やプラスチック廃棄ゼロ、女性管理職比率20%などを掲げるKPI達成に向け、気候変動対応やDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)施策を継続しております。健康経営においては、「健康経営優良法人2024(ホワイト500)」の認定を受けるなど、従業員のウェルビーイングに資する環境整備と意識醸成に取り組んでおります。基幹システムの再構築としては、業務プロセスの改善および効率化を目的に、データ連携の強化を進めました。また、ガバナンス強化の一環として、知的財産の専門部署を研究開発部門の傘下に設置し、特許ポートフォリオの戦略的なマッピングを通じて、自社技術の排他性および有効性の向上、さらには、マネジメント座談会などを通じて、経営トップと次世代リーダーとの対話の場を積極的に設けることで、戦略浸透と現場の実行力強化を図っております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが判断したものであります。
(1) サステナビリティ全般
食を取り巻く環境は、気候変動、資源の枯渇、フードロス、健康課題、サプライチェーンでの人権課題など、非常に広範で多岐にわたる社会課題を抱えております。当社グループは「Joy for Life®-食で未来によろこびを®-」を目指すべき未来として掲げ、おいしさ×環境×低負荷で人々と社会と環境へのよろこびを創出いたします。植物の恵みを活用した新たな価値の提供により、社会課題の解決を目指し、サステナブルな社会の実現に貢献してまいります。
① ガバナンス
サステナビリティ推進体制の強化
当社グループは、ESG(環境、社会、ガバナンス)を企業価値の評価指標と捉え、企業の長期戦略、成長投資と連動したESG経営とサステナビリティに関する取組みを積極的に推進しております。2020年度から取締役を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、全社横断的にサステナビリティの推進に取り組んでおります。サステナビリティ委員会は、「サステナブル商品開発部会」「サステナブル調達・環境部会」「人権部会」「人的資本部会」の4つの部会から構成され、各部会は関係する部署の代表者により組織されております。また、各部会の傘下に「外装標準化分科会」「パッケージング分科会」「環境分科会」「TCFD分科会」「物流分科会」「調達分科会」を設置しております。各部会および分科会が、環境負荷の低減や人権や環境に配慮した持続可能な調達、商品・包材開発、サプライチェーンマネジメントの強化、人権課題など社会課題の解決に向けて活動テーマを設定し活動しております。サステナビリティ委員会は各部会および分科会の活動を有機的に結び、四半期ごとに進捗管理を行うとともに、経営会議、取締役会に報告しております。各部会および分科会には、それぞれ管理責任者として担当執行役員が設定され、そのリーダーシップの下、計画の策定および具体的な施策に取り組みます。当社はサステナビリティに関する取組みを社内外に発信するとともにステークホルダーとのエンゲージメントを通じて、社会課題の解決による企業価値の向上を図っております。
<サステナビリティ推進体制図>(2025年3月末時点)

<サステナビリティに関わる体制と役割>(メンバーの構成は2025年3月末時点)

② 戦略
サステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための取組
サステナビリティ委員会においては2023年4月に「サステナブル調達・環境部会」の傘下に「物流分科会」を新設し、「2024年問題」を物流部門だけでなく全社課題として捉え、持続可能な物流の実現に向けて、納品リードタイムの延長に向けた準備やドライバーへの附帯作業および長時間待機の実態把握と改善活動を実施しました。また、持続的な企業価値向上には企業活動の基盤となる「人的資本」への取組みが重要であるとの考えから、サステナビリティ委員会の傘下に「人的資本部会」を設置し、従業員がこれまで以上に成長できるような制度や職場環境の整備を行い、成長への原動力となるよう取り組んでまいりましたが、経営・事業戦略に即した人事戦略を策定するとともに戦略の実行性を強化すべく、これを発展的に解消し、2025年4月より新たに「人財委員会」を設置することを決定いたしました。今後もサステナビリティ委員会の取組みを社内外に発信するとともにステークホルダーとのエンゲージメントを通じて、社会課題の解決による企業価値の向上を目指してまいります。
目指すべき未来の実現に向けたESG経営
企業活動が社会に及ぼす影響が大きくなる中、ESGに配慮した企業経営が求められております。当社グループはESGの取組を事業活動の基盤と位置づけ、地球規模の社会課題の解決に全力で取り組んでおります。コーポレートビジョンである「Joy for Life®-食で未来によろこびを®-」を実現することで、サステナブルな価値創造企業を目指してまいります。
マテリアリティ
マテリアリティは当社の事業にとってリスクまたは機会となる事項であり、2030年度の目指すべき姿に向け、中長期的に取り組むことを目指しております。
当社グループは、2022年に第六期中期経営計画の見直しを行い、2021年~2024年の4か年の計画を2年延長し、6か年の計画といたしました。これにより、マテリアリティに紐づく目標の達成年と第六期中期経営計画の最終年度に齟齬が生じたことを受け、マテリアリティの見直しを実施いたしました。2023年に、事業戦略に関わるマテリアリティとして「食の安定供給による持続可能な社会の実現」「食の安全安心を通じ全ての人のウェルビーイングへ貢献」を、事業基盤に関わるマテリアリティとして「多様性の尊重と従業員の働きがい向上」「コーポレートガバナンスの強化」の4領域を特定し、2024年度から新たなマテリアリティに基づき取組を推進しております。特定したマテリアリティは、今後も社会の潮流や、課題・ニーズの変化を踏まえて定期的に見直しを行ってまいります。※マテリアリティ特定プロセスの詳細は、
https://www.j-oil.com/sustainability/materiality/process.html
※1 2024年1-6月の実績:7-12月実績は集計中
※2 RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil):持続可能なパーム油のための円卓会議
※3 PF(Premium Fats Sdn Bhd):当社の連結子会社
※4 フィジカルインターネット:トラック等の輸送手段と倉庫のシェアリングによる稼働率向上と燃料消費量抑制によって、持続可能な社会を実現するための革新的な物流システム
③ リスク管理
社長執行役員を委員長とする経営リスク委員会が、全社のリスクマネジメントを統括し、経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるものを経営リスクと特定し、取組み状況のモニタリングを実施しております。サステナビリティ全般に関連する経営リスクについても経営リスク委員会で特定しておりますが、それぞれのリスク対応策の検討・推進は、サステナビリティ委員会等と連携し、傘下の部会および分科会にて実施しております。具体的には、気候変動・環境に関するリスクは環境分科会(サステナビリティ委員会)、人権に関するリスクは人権部会(サステナビリティ委員会)、人的資本・多様性に関するリスクは人財委員会が取り組みます。
経営リスク委員会およびサステナビリティ委員会等の審議内容については、経営会議および取締役会に報告され、取締役会がサステナビリティに関するリスクを含めてリスク全般の監督を行っております。
サステナビリティ全般に関するリスク管理の内容については、「
④ 指標及び目標
サステナビリティ全般に関する指標及び目標については、「(1) サステナビリティ全般 ②戦略」をご参照ください。
(2) 人的資本・多様性
戦略を実行するために、新しい可能性を切り開いていける人財を育成・登用していく取組みを推進しております。経営・事業戦略に即した人事戦略の策定・見直しへの対応を強化するとともに、戦略の実行性を強化することを目的として、サステナビリティ委員会の傘下に設置していた「人的資本部会」を発展的に解消し、経営会議の諮問機関として2025年4月より新たに「人財委員会」を設置することを決定いたしました。人財育成・エンゲージメント向上を通じて個々の価値創出力を最大化するだけでなく、個の持つスキル・経験を最大限に引き出す環境の整備を進めてまいります。
<人財ポリシー>

「挑戦・成長する人と組織」ならびに「多様な人財の働きやすさと心身の健康」を実現するための、主たる課題領域を以下の項目と考えております。
・ 戦略に応じた人財の獲得(高度専門性、外国籍 等)
・ 課題を自分ごとと捉えて解決し、それを通じて自ら挑戦・成長する自律型人財の育成
・ 成長を牽引する優秀人財のリテンション
・ ローテーション活性化と実力主義に則った抜擢/再配置
・ 戦略に沿った組織体制の構築・組織力の向上
・ 変革を牽引するマネジメント層のリーダーシップ発揮
・ 社員の挑戦・成長風土醸成(含む仕組みづくり)
・ 多様な人財が働きやすく、活躍しやすい環境・風土の実現
・ 心身への負荷低減、労働災害・事故等のゼロ化
① ガバナンス
当社グループでは、人的資本の強化を企業価値向上に資する企業の長期戦略・成長投資と連動したESG経営とサステナビリティに関する取組みの位置づけとしても推進しております。ガバナンスの内容については、「
② 戦略
当社グループは、コーポレートビジョンである「Joy for Life®-食で未来によろこびを®-」の実現を目指し、「壁を越え、共に挑み、期待を超える」人財、組織、風土の醸成に向けた取組みを強化しております。誰もが実力を発揮できるようにするための「多様な人財の働きやすさと心身の健康」を土台とし、社員一人ひとりの「挑戦」と「成長」が「Joy for Life®」実現のためのドライバーになると捉え、様々な人事改革・施策(下図参照)を展開しております。また、それらを測る重要な指標として、従業員エンゲージメント(2024年度:47%、2026年度(目標):55%、2030年度(目標):65%)やウェルビーイング(2024年度:66%、2026年度(目標):70%、2030年度(目標):80%)を位置づけその向上に取り組むとともにモニタリングを行っております。(※1)
※1 測定方法:年1回実施しているエンゲージメントサーベイ(以下、「ES」という)の「エンゲージメント」「ウェルビーイング」各カテゴリーの好意的な回答割合をスコアとして使用。
<人事改革・施策概要>

③ リスク管理
人的資本・多様性に関するリスク管理の内容については、「
④ 指標及び目標
<取組み事例>
(3) TCFD
2020年11月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)による提言に賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに参画しております。サステナビリティ委員会内に社内横断的なTCFD分科会を設置し、TCFD提言が推奨する開示項目に沿った情報開示を進めております。
① ガバナンス
TCFDに関するガバナンスの内容については、「(1)サステナビリティ全般 ① ガバナンス」をご参照ください。
② 戦略
特定した気候変動によるリスクと機会
<前提条件>
当社グループは、気候変動を事業の継続性を鑑みても非常に重要な経営リスクとして捉えており、2℃未満および4℃シナリオ※についてリスクと機会の分析を行っております。また、気候変動のみならず、温暖化が進むことにより、台風被害の甚大化などもリスク要因として捉えております。
※2℃未満および4℃シナリオとは、地球温暖化の対応策に関する科学的な根拠を与え、国際交渉に影響力があるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告で、産業革命前から21世紀末までに、どれくらい平均気温が上昇するかについて予測提示されているものであります。最も気温上昇の低いシナリオ(SSP1-1.9シナリオ)で、おおよそ1.4℃前後の上昇、最も気温上昇が高くなるシナリオ(SSP5-8.5シナリオ)で4.4℃前後の上昇が予測されております。
<気候変動によるリスク>
※1 IEA:International Energy Agency (国際エネルギー機関)のNZEシナリオ(Net Zero Emission by 2050 scenario)における先進国の排出権取引価格の予測(2030年):140US$/tに2024年度排出量ならびに期中平均為替相場を乗じて算出。排出量が2023年度から2024年度にかけて減少したためリスク金額はやや減少。
※2 PBF:プラントベースフード
※3 WRI: World Resources Institute (世界資源研究所)が公開している世界の水リスク評価ツールであるAqueductによるリスク評価に基づき損害金額を算出し、年間あたりの損害金額に置換
※4 BCP(Business Continuity Planning):事業継続計画
※5 主要原料:大豆、菜種
<気候変動による機会>
※6 SAF: Sustainable Aviation Fuel (持続可能な航空燃料)
③ リスク管理
サステナビリティ全般に関するリスク管理の内容については、「
④ 指標及び目標
2030年度までにCO2排出量を2013年度対比で50%削減(Scope1、2)、2050年度までに排出ゼロにするカーボンニュートラルを掲げております。また、購入する原材料や商品の製造に関するCO2排出量など、サプライヤーと連携し、サプライチェーン全体(Scope3)での削減も目指しております。Scope3については、排出量の多いカテゴリ1やカテゴリ4について算定精度の向上を図り、削減方法を検討してまいります。2023年4月よりインターナルカーボンプライシング(ICP)を導入しました。今後、CO2削減投資および投資意思決定の促進を図ってまいります。
<CO2排出量の目標と実績>

(1) 当社グループのリスクマネジメント体制
当社グループは、経営会議の諮問機関として、社長執行役員を委員長とし、執行役員などをメンバーとする「経営リスク委員会」を設置しております。同委員会は、全社のリスクマネジメントを統括し、当社グループの経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスク(経営リスク)の特定やそのリスクの低減に向けた取組み、顕在化したリスクに対する対応策など、リスクマネジメントに関する重要事項を審議しております。また、監査役(社外を含む)も出席し、必要に応じて助言等を行っております。経営リスク委員会で審議された内容は、その都度経営会議および取締役会に報告され、取締役会では、その報告を通じ、リスクマネジメントの有効性を監督しております。
経営リスク委員会は、その傘下に「リスクマネジメント部会」および「コンプライアンス部会」を置き、両部会を統括管理することで、リスクマネジメントおよびコンプライアンスを中心とする内部統制システムの運用と維持管理の機能も果たしております。リスクマネジメント部会は、リスクの想定と予防、危機への対応を任務としており、コンプライアンス部会は、リスクマネジメントの重要な要素であるコンプライアンスを司り、従業員意識の向上やコンプライアンス違反への対処などを任務としております。
特定した経営リスクには、それぞれリスク管理責任者が設定され、リスク管理責任者のリーダーシップの下、リスク対応計画の策定および具体的な施策に取り組みます。リスク管理責任者には、経営リスク委員会が指名したCxOを含む執行役員が充てられ、社長執行役員であるCEOは経営リスク全体を統括する責任者として位置づけております。
当社各部門および子会社は、上記体制の下、自律的にリスク対応策に取り組めるよう、各リスク責任部門や各種委員会・会議等が指導・支援します。
経営リスクのうち、人権や気候変動・環境問題などのサステナビリティに関連するリスクについては、サステナビリティ委員会が審議し、リスク対応策を検討、推進しております。

(2) リスクマネジメントプロセス
中期経営計画や行動規範を踏まえ、またESG(環境・社会・ガバナンス)に関するリスクにも着目し、毎年度、経営リスクの見直しを行っております。
2024年度においては、経営上のリスク認識を把握するべく、執行役員アンケートおよび社内取締役インタビューを実施した上で、当社グループを取り巻く経営環境の変化や社会情勢などを踏まえ、また中長期的な視点での潜在リスクや経営課題なども鑑み、経営リスク委員会で審議し、2025年度の経営リスクを特定しました。また、リスク管理責任者として、CxOを含む執行役員を指名しました。
特定した経営リスクについては、リスクを低減・防止する取組み施策が有効に機能しているかを半期に1回、経営リスク委員会がモニタリングしております。
さらに、期中に発生したクライシス(リスクが顕在化し企業価値に重大な影響を及ぼすもの)については、当社社長執行役員CEOを最高責任者とし、リスクマネジメント部会長が陣頭指揮を執る危機管理体制を整備し、迅速・適切な対応を図っております。クライシス鎮静後は、経営リスク委員会の主導の下、発生したクライシスの真因分析を行った上で、是正措置を展開し全社的な再発防止に努めております。
(3) リスクテーマとそれに対する影響と対応
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、当社グループが定義する「経営リスク」であります。
経営リスクの影響度と発生頻度で評価したリスクマップは以下のとおりであります。なお、このリスクマップは、当社グループにおける状況から独自に評価したものであり、定期的に見直しを図っております。

リスクマップを踏まえ、また他の委員会や会議体における審議事項との重複を避け、経営リスク委員会で重点的に討議するリスクを選定し、リスク対策の実効性を高めております。2024年度は、次の4つの経営リスクについて重点討議を行いました。
❷自然災害・感染症・事故等に関するリスク
❸海外展開に関するリスク
❹製品の安全、品質、安定供給に関するリスク
⓮グループ経営体制の整備に関するリスク
2025年度においては、上記❷❹について、経営リスク委員会にて重点的に討議します。
経営リスクおよびその影響と対応については、以下のとおりであります。なお、記述内容は、2025年6月24日(有価証券報告書提出日)現在におけるものです。
(影響)
当社グループは主要原料の大豆・菜種等を海外から調達するため、原料コストは海外の穀物相場の影響を受けております。穀物・油糧種子の相場は、世界人口の増加による需要の増加や異常気象による減産、バイオ燃料その他向けの新規需要の増加など、需給バランスの変化により大きく変動いたします。また、海上運賃(フレート)は世界経済の成長や石油価格の影響を受けて変動いたします。海外からの調達であるため、原料代決済において為替相場の影響を受けます。さらに、ミール相場が下落しますと、オイルコストの上昇につながります。当期において、大豆や菜種、パーム油などの原料コストは依然として高い水準にあり、ドル円為替相場も30年来の円安水準にあるなど、厳しい事業環境は継続しております。加えて、トランプ政権の関税施策による世界的なインフレ懸念や、地政学リスクの高まりからスエズ運河の通航回避の事情もあり、調達コストは増加し、原料や油脂の安定調達にも懸念が生じております。これらの穀物・油糧種子、為替、海上運賃、ミールなどの相場変動に伴うコストアップ分や価格が高い時点で調達した原料在庫を販売価格に反映できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に大きく影響を及ぼす可能性があります。また、原材料調達においては、安全性や品質の確保だけでなく、環境保全や労働者の人権問題など、サステナビリティの問題に積極的に取組むことも求められており、これらの課題に対応できないとみなされた場合、企業価値を損なう可能性があります。
(対応)
当社グループは、海外からの原料や油脂の調達にあたり、原料・為替に関わる環境を精査の上、競争優位な産地の選定・最適な組合わせに努めております。値決めについては、商品先物取引を用いた売買と為替予約を用いた一定のヘッジを行うと同時に、原料購買規程、外国為替予約運用規程の範囲内で、製品の販売価格の確度を見極めながら競争優位と思われるポジションを取っております。また、新規の原料産地とサプライヤーの調査・採用も継続的に行っております。一方で、国内搾油産業の長期的な課題についての共有認識の下、油脂と油粕の安定的な供給を継続的に行うために、日清オイリオグループ株式会社と川上領域である搾油工程までを事業範囲とした製油パートナーズジャパン株式会社を設立し、その取組みを着実に実行しております。また、製品の価格改定の継続的な取組みや経費削減により収益改善を図ってまいります。
さらに、持続可能な原料調達のため、「環境方針」や「人権方針」を基盤に「サステナブル調達方針・調達基準」を定め、サプライチェーン全体で持続可能な調達活動を推進しております。
(関連するマテリアリティ)
食の安定供給による持続可能な社会の実現
(影響)
大規模な地震、台風、集中豪雨などによる災害リスクが年々高まってきており、人的被害、施設・設備等の損壊が生じた際には、安定供給に支障をきたす可能性があります。また、感染症が発生・蔓延した場合には、従業員の感染による操業停止やサプライチェーンの停滞などにより、当社グループの事業運営、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、海外輸入品に関しては、自然災害・感染症の他、国際情勢の変化により、物流の遅延・変更が生じた場合には、供給不安定になり、顧客に対する供給責任へ影響を及ぼす可能性があります。
(対応)
当社グループは、食品事業などに携わるものとして、従業員の安全を確保した上で、お客様への供給責任と社会的責任を果たすことなどを基本方針としております。昨今の台風や豪雨に伴う水害等の発生頻度の高まりを受けて、危機管理体制の見直しを行い有事・平時の危機管理体制を強化するとともに、BCPの見直しを通じて、災害に対する対応力強化を図っております。感染症対応については、発生した場合にも事業が継続できるよう、リモートワークの推進など、従業員間の接触頻度を極小化するなどの対応をフレキシブルに行える体制を整え、また、委託先や協力先の確保などにより生産・供給体制の複線化などを実施し、今後も安定供給を実現してまいります。
海外輸入品に関しては、適正な在庫確保と顧客への連絡・情報共有のスピード化で影響を最小限にする対応を行ってまいります。
(関連するマテリアリティ)
食の安定供給による持続可能な社会の実現
コーポレートガバナンスの強化
(影響)
当社グループは、海外事業の拡大を重点目標として取り組んでおります。法規や税制の改正、また紛争・テロなどの地政学リスクや自然災害の発生により、当社グループの財政状態及び経営成績、従業員の安全に影響を及ぼす可能性があります。特に昨今は異常気象による自然災害頻発に加え、国家間における緊張の高まりや、保護貿易的な政策転換による経済環境の変化といった、地政学的な要因が事業に及ぼす影響がさらに高まっております。
また、海外子会社での不正・不法行為は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響ならびに信用の棄損および企業価値の低下につながる可能性があります。
(対応)
リスク課題が発生した場合に迅速に対策が取れるように、事業が関係する海外各国の法規やリスク情報を外部コンサルタント、海外情報サービス、外務省の海外安全ホームページ、進出しているグループ企業、海外で協業しているパートナー企業などから入手しております。入手したリスク情報をもとに、リスクが顕在化する前の具体的対応ならびにその影響を最小限にするための対応を行っております。
海外子会社での不正・不法行為に対しては、内部統制の強化と定期的な監査の実施などによる対応を行っております。
(関連するマテリアリティ)
食の安全安心を通じすべての人のウェルビーイングへ貢献
コーポレートガバナンスの強化
(影響)
お客様への健康危害や表示等の法令違反により自主回収(リコール)が発生した場合、異物混入および食品偽装やデータ改ざんが行われた場合、またはお客様への欠品リスクにつながるような製造遅延や不良品が発生した場合は、当社ブランドの信頼失墜に加え、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応)
当社グループは、ISO9001による品質マネジメントシステムの運用、特に商品の開発設計・工業化段階での品質アセスメントの実施と仕組みの強化による品質リスクの低減に取り組んでおります。また、全ての自社工場において食品安全マネジメントシステム(ISO22000またはFSSC22000)の認証を取得するとともに、品質監査により仕組みの適切な運用について常に確認しております。仕組みの運用だけでなく品質や食品安全に関する従業員教育を継続して行うことで、従業員との信頼関係に基づいた風通しの良い組織風土醸成に努めております。さらに、お客様に安心して商品をご利用いただけるよう、お客様相談室を通じていただいたお客様の声を商品開発に活かしてまいります。
(関連するマテリアリティ)
食の安定供給による持続可能な社会の実現
食の安全安心を通じすべての人のウェルビーイングへ貢献
(影響)
ドライバーや倉庫作業者の不足などの物流危機に対する対応を講じなかった場合や物流業務に関する料金適正化を怠った場合、物流事業者が当社業務から撤退してしまう可能性があります。
当社製品の供給停滞や大幅な配送遅延は販売機会の損失につながり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼします。
(対応)
当社グループは、サステナブルな物流環境を構築するために、物流事業者とともにドライバーや倉庫作業者の労働環境の改善に努めております。具体的には、配送業務外の附帯作業の改善、納品待機時間の把握と長時間待機の削減、計画的な車両確保が出来るようなリードタイムの確保など物流環境改善や適切な料金設定を販売物流(発荷主)と調達物流(着荷主)の両面で進めております。また、行政方針に沿った活動に取り組んでおり、国内物流問題への対応を目指して2025年4月に施行された「物資の流通の効率化に関する法律」に沿った改善活動を進めながら、2026年に施行される「特定事業者」の役割を全うすべく、社内の取組み体制の構築と社外との連携強化を図っております。
(関連するマテリアリティ)
食の安定供給による持続可能な社会の実現
(影響)
年を追うごとに多様化・巧妙化するサイバーセキュリティリスクは、当社グループにおいても、サプライチェーン機能の安定的維持や個人情報を含む情報資産の適切な保持に対する大きな脅威となっており、コンピュータウイルスの感染や情報漏洩・データ改ざんが発生した場合、経営成績や社会的責任の遂行に影響を及ぼす可能性があります。
(対応)
当社グループでは、最新のサイバーセキュリティリスクについての動向を協力会社との連携により常に把握し、以下の観点から対策の継続的強化を図っております。
1.社内ネットワークへの不正侵入を防御するシステムの導入、サーバーおよび従業員パソコンへの最新対策ソフトの導入。また、在宅勤務を前提にしたPC対策ソフトを導入。
2.全社員を対象としたセキュリティ自己点検、標的型攻撃メール訓練、eラーニング実施による従業員へのセキュリティ意識向上と周知徹底。
3.インシデント発生時の早期解決と被害局限化を実現するCSIRT(※2)の継続的強化。
4.情報漏洩対策を目的とした、個人情報取扱いシステムのセキュリティ対策向上。
5.ゼロトラストセキュリティ(※3)基盤への移行推進。
また、今後も引き続き拡大するサイバーセキュリティリスクへの対策を講じるとともにインシデントが発生した場合に被害を最小化し迅速な回復を図るための対応手順強化に取り組んでまいります。
(関連するマテリアリティ)
コーポレートガバナンスの強化
※1 ICT(Information and Communication Technology):情報通信技術
※2 CSIRT(Computer Security Incident Response Team):コンピュータシステムやネットワークに保安上の問題につながる事象が発生した際に対応する組織
※3 ゼロトラストセキュリティ:社内外を問わず、すべてのユーザーやデバイス、ネットワークを最初から信用せず、アクセスのたびに厳格な認証や検証を行うことで情報資産を守る、新しいセキュリティの考え方。従来の「社内は安全」という前提を捨て、常に監視・確認を徹底することで、不正アクセスや情報漏洩のリスク低減を図る。
(影響)
当社グループは、各工場でISO14001を取得し、また国や地方自治体に応じた環境法令等への対応や、環境トラブル防止に配慮した事業運営に取り組んでおりますが、環境対策の取組みが不十分な場合、当社の企業価値を損ね、資金調達や従業員の確保などに影響を及ぼす可能性があります。
また、近年、自然資本や生物多様性に関する動きも加速しており、それらへの対応や情報開示が不十分とみなされた場合、社会的信用を失い、資金調達などに影響を及ぼす可能性があります。
(対応)
ESGの取組みは、当社グループの事業活動の基盤であり、競争力を左右する重要な要素と捉え、事業と一体となったESG経営を推進しております。環境負荷を極小化するために、省資源・省エネルギー、CO2排出量の低減、脱プラスチック、水資源の有効活用、バリューチェーンにおけるAIの活用に努め、資源の利用効率の最大化を図るためのゼロエミッションなどに積極的に取り組んでまいります。加えて、当社事業が依存し影響を与えている自然資本の状況を適切に把握し、生物多様性の保全、持続可能な資源利用を目指してまいります。
(関連するマテリアリティ)
食の安定供給による持続可能な社会の実現
(影響)
生活者の環境に対する意識も高まっており、サプライチェーン上で環境や品質、人権などの問題が生じた場合、そのサプライチェーン全体での管理・責任が問われる時代となっております。これらの社会的課題への取組みが不十分と見なされた場合、企業価値の低下につながる可能性があります。
(対応)
当社グループは、2019年に世界規模で企業とサプライヤーを結ぶ共通のプラットフォームを提供しているSedex(※4)にA/B会員として入会し、Sedexのプログラムを有効活用することで、グローバルな視点で「労働基準」「安全衛生」「環境」「ビジネス倫理」の4領域に関するサプライチェーンのサステナブルな課題の把握とその改善に取り組んでおります。また、2021年9月に国連グローバル・コンパクト(UNGC)に署名し、会員企業に登録されました。UNGC署名企業として人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、腐敗防止の4分野、10原則の順守、実践に取り組んでおります。
持続可能な調達の実効性を高めるためにはサプライヤーとの協働が重要と考えております。当社は「サステナブル調達方針・調達基準」を定め、自社だけでなくサプライヤーに対して順守をお願いするとともに、2022年度よりグローバル・コンパクト・ ネットワーク・ジャパンが作成した「CSR調達セルフ・アセスメント質問表」(GCNJ共通 SAQ)を用いて、原料・資材のサプライヤーへ調査を実施し、サステナビリティへの取組み状況を確認しております。
さらに、アブラヤシの果実から搾油されるパーム油は、我々の生活に欠かせない油脂であり、当社グループの事業活動を支える重要な原材料の1つであるため、「サステナブル調達方針・調達基準」および「パーム油調達方針」に基づき、原産国の環境保全に配慮し人権を尊重するとともに、食を支える企業として、パーム油の安定供給の社会的責任を果たすために持続可能なパーム油調達を実現いたします。
2024年度は人権デューデリジェンスにおける人権リスク評価・特定の1つとして、従業員への人権に関わる実態調査を実施し、 グループ会社を含めた教育や人権週間の周知、性的指向・ 性自認(LGBTQ+)等に基づく差別待遇や嫌がらせ(ハラスメント)排除に向けた研修会を実施いたしました。
2025年度は人権を含めた当社サステナビリティ関連方針・基準の順守状況確認(SAQ、対話などによるコミュニケーション強化)の継続と、外部ステークホルダーに向けた苦情処理メカニズムの構築に向けて取組みを進めてまいります。また、人権をはじめとする社会課題の解決に向けて、当事者意識の醸成に努めております。
(関連するマテリアリティ)
食の安定供給による持続可能な社会の実現
多様性の尊重と従業員の働きがい向上
※4 Sedex:グローバルサプライチェーンにおける倫理的で責任あるビジネス慣行の実現を目指し、サプライチェーンデータを管理・共有する世界最大のプラットフォームであります。顧客とサプライヤーが共通のプラットフォームを活用して情報を共有し、サプライヤーにおける問題点を抽出するとともに、その課題解決への取組み状況を把握し、サステナブルな事業慣行の拡大に取り組んでおります。A/B会員は、バイヤー機能を持つA会員と、サプライヤーとしてSAQに回答するB会員の両方の資格を保有しております。
(影響)
日本全体の社会情勢の変化により、雇用環境や必要となる専門性、人々の労働に対する価値観などが大きく変わりつつある中、当社の成長の原動力となる、各分野で必要とする高度な専門性を持つ人財や次世代を担う人財の確保、育成および配置が計画的に推進できない場合には、事業活動の停滞等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は労働安全を重要な課題と位置づけ、当社グループで働く従業員の安全と健康に配慮し、事故の予防に努めております。しかし、労働災害が発生した場合には、当社グループの経営成績や評判に影響を及ぼす可能性があります。
(対応)
当社グループは、人的資本経営として、多様な人財の挑戦と成長を促す職場環境を実現し、「サステナブルに強い個が創出されること」および「強い個がエンゲージメント高くチームとして活躍すること」を目指しております。多様な人財にとって働きやすい職場環境を維持・改善し、公正な人事・処遇制度の構築とその適正な運用に取り組んでおります。高度な専門性を持つ人財や次世代の経営を担う人財の育成に取組むとともに、女性活躍やシニア活躍などのDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の更なる推進、働き方の見直しや健康経営をさらに推進しております。
当社では、毎年、労働安全衛生目標を掲げ、当社グループで働く従業員の安全と健康を確保し、労働災害の発生を防止するための取組みを進めております。例えば、安全衛生教育の実施や安全衛生管理体制の整備、労働環境の改善、さらには事故発生時の迅速な対応などに取り組んでおります。
(関連するマテリアリティ)
多様性の尊重と従業員の働きがい向上
(影響)
当社グループは、銀行借入や社債発行、債権流動化などによる資金調達を行っております。市場金利が上昇した場合、または金融市場の混乱による取引金融機関の融資方針が変更された場合には、資金調達コストが増加し、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これにより、格付会社による当社グループの信用格付が大幅に低下した場合には、資金調達に制約が課される可能性があります。
(対応)
資金調達に際しては、短中期的な大規模資金需要も踏まえ、財務健全性に配慮した資金調達を行うこととし、資金需要の性質、金融市場環境、長短バランス、資金調達コスト、調達先の分散などを総合的に検討し、資金調達手法を選択しております。金利上昇リスクに対しては、社債や長期借入による固定金利での資金調達を併用することで、金利変動リスクの低減を図っております。格付低下リスクに対しては、定期的に自己資本比率やD/Eレシオなど格付け機関が重視する指標をモニタリングするとともに適正水準の維持に努め、さらにキャッシュフロー創出力の向上、運転資本管理や政策保有株式縮減などによる資産圧縮を徹底し、資本効率の改善を目指しております。また、減損懸念資産や繰延税金資産の継続的なモニタリングを通じて自己資本毀損リスク規模を把握しております。
(関連するマテリアリティ)
コーポレートガバナンスの強化
食の安定供給による持続可能な社会の実現
食の安全安心を通じすべての人のウェルビーイングへ貢献
(影響)
当社グループは、事業用の設備、不動産や企業買収などにより取得したのれんをはじめとする有形固定資産・無形固定資産を所有しております。こうした資産は、公正価値の下落や、金利の上昇、買収・資本参加した子会社等の業績が事業計画に対して大幅に未達となるなどにより、減損損失が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応)
投融資委員会や経営会議における買収価格の適切性に関する審議や買収後のシナジー実現に向けた定期的なモニタリングと評価、マクロ経済環境の定期的なモニタリング、事業計画に基づく将来キャッシュフローの見積りの実施などにより、減損処理の適否を判断しております。
(関連するマテリアリティ)
コーポレートガバナンスの強化
(影響)
知的財産の権利化が不十分なこと、あるいは発明を権利化した技術を他者に模倣・侵害されることにより、競争優位性が失われ、開発投資を充分に回収できなくなる可能性があります。この競争力の低下により、次への開発投資ができなくなることで、お客様に価値の高い製品の提供が難しくなる可能性があります。また、第三者の知的財産権の侵害は、お客様への製品提供の継続が困難になるだけでなく、当社ブランドの信頼失墜につながる恐れがあります。これらの結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応)
知財部門からの開発や生産部門等の定期的な会議への参加や、相互連携による発明等の早期発掘により迅速に知的財産の権利化を実施するとともに、自社知的財産の保護に努め、侵害が疑われる際には適切な対処をしてまいります。また、製品化の際には、第三者の知的財産権の侵害調査を実施し、侵害による差し止めなどを未然に防ぐ仕組みを構築しております。
さらに、知的財産の権利化の重要性や第三者の知的財産権の侵害リスクの認識を向上するために、継続的な研修を実施してまいります。
(関連するマテリアリティ)
食の安定供給による持続可能な社会の実現
食の安全安心を通じすべての人のウェルビーイングへ貢献
(影響)
当社グループは、食品衛生法、食品表示法、JAS法等以外に、環境・リサイクル関連法規、独占禁止法などの様々な法的規制の下で事業展開しております。法規制や社会規範に反した行為や不正、またはハラスメントなどが発生した場合には、当社グループの信用の失墜により財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、法規制の変更や追加による事業上の制約などにより当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(対応)
当社グループは、法規制および社会規範を遵守することを目的とした「J-オイルミルズ行動規範」を策定し、有効性の見直しを定期的に行うとともに、継続的な啓発と全社員を対象とした研修やeラーニングなどを実施することで周知しております。加えて、不正やハラスメントなどを早期に見出し、是正していくために社内外に内部通報窓口を設けることで、法規制や社会規範に反した行為などの発生を低減することを進めております。また、法規制の変更や追加に対応するため、法令改正情報を注視し、関連する法令改正に適切に対応してまいります。
(関連するマテリアリティ)
コーポレートガバナンスの強化
(影響)
当社は、国内外に子会社、関連会社を有しております。当社グループとしての企業価値の向上と業務の適正を確保する体制を整備しておりますが、グループ会社の統治が十分に機能せず、発生したインシデントの対応の遅れなどが生じた場合には、当社グループの社会的信用が失墜し、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、事業環境の変化に対してグループ戦略の策定・推進が適切に行われない場合には、グループ経営の効率化や競争力が低下する可能性があります。
(対応)
当社グループは、中期経営計画の策定と推進を通じて、グループ経営によるシナジー創出を推進し、企業価値向上に努めております。また、グループ会社の事業運営の独立性と自立性を尊重しつつ、グループ会社の内部統制の有効性を確保するため、「関係会社運営規程」において、管理項目ごとに報告等の手続き方法を定め、報告を受けることとしております。さらに、グループ会社トップミーティングや役員向けのガバナンス研修会の開催、グループ横断的支援体制の推進により、グループガバナンスの強化に努めております。
(関連するマテリアリティ)
コーポレートガバナンスの強化
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報にもとづき、当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき、当社グループが判断したものであります。
油脂事業環境につきましては、主原料である大豆相場は、昨年4月は期近限月で1ブッシェル当たり11米ドル台にて取引されていましたが、ブラジル産地での洪水の影響が懸念されたことなどから5月には一時12米ドル台後半まで上昇しました。その後は、米国産地における順調な生育状況を受けて軟調に推移し、8月には9米ドル台まで下落しました。1月に入り、アルゼンチン産地の乾燥懸念により再び10米ドル後半まで反発しましたが、2月以降は南米の豊作観測を受けて下落に転じ、3月末にかけては10米ドル付近での取引が続きました。菜種相場は、4月は期近限月で1トン当たり600加ドル台前半にて取引されていましたが、5月には大豆相場に連れ高となり600加ドル台後半まで上昇しました。その後は、カナダ産地における順調な生育状況を受け軟調に推移し、9月には500加ドル台前半まで下落しましたが、大豆相場・植物油価格の上昇を受けて上昇傾向に転じ、1月にかけては500加ドル台後半から600加ドル台前半で推移しました。2月にはカナダの菜種需給がタイトな状況であると再確認されたことから600加ドル台後半まで上昇しましたが、3月には中国および米国のカナダ産品に対する関税措置発動を受けて500加ドル台後半まで下落しました。
ドル円為替相場は、7月上旬に161円台を付けた後、日銀の政策金利の引き上げ、米国経済の減速懸念、米国の政策金利の引き下げを受け円高ドル安に転じ、9月には一時139円台まで円高ドル安が進行しました。10月に入ると米国景気の底堅さが確認される中、米国の金融政策の緩和ペースが低下するとの観測から再び円安ドル高傾向に転じ、1月には158円台まで円安ドル高が進行しました。2月以降は日米金利差縮小や米国の関税政策による米国の物価上昇や景気後退懸念から円高ドル安傾向となり、3月末にかけては150円付近での値動きが継続しました。
当連結会計年度は、原料価格の軟化に伴い油脂の販売価格が低下したことに加え、ミールもシカゴ大豆ミール相場の下落の影響を受け販売単価が下落したことで、売上高は2,307億83百万円(前年同期比5.5%減)となりました。
当連結会計年度は、原料価格の軟化に加え、製造費用の継続的なコストダウンにより、売上原価は1,927億48百万円(前年同期比7.8%減)となりました。販売費及び一般管理費は、各種経費の抑制に取り組んだものの、物流費の上昇等の影響により、294億62百万円(前年同期比4.9%増)となりました。
原材料価格の良化および油脂の適正価格での販売や構造改革による利益体質の改善により、営業利益は85億72百万円(前年同期比18.3%増)となりました。
受取配当金や持分法による投資利益の計上により、経常利益は100億31百万円(前年同期比10.9%増)となりました。
投資有価証券売却益等を特別利益として計上し、特別損失では固定資産除却損やスペシャリティフード事業の事業資産の減損損失等を計上しました。以上により、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は69億96百万円(前年同期比3.0%増)となりました。
(油脂事業)
油脂部門につきましては、家庭用油脂は、物価高騰による生活防衛の高まりや外食回帰の影響、オリーブオイルの継続的な値上げによる需要減少などにより、販売数量は前年同期をやや下回りました。一方で、オリーブオイルの販売価格改定の取組みや、環境負荷の低減やお客様の使いやすさが特長である「スマートグリーンパック®」など注力商品の継続的な拡販に努めたことで、売上高は前年同期をわずかに上回りました。業務用油脂は、実質賃金の伸び悩みによる節約志向が見られる中、インバウンド需要の拡大や国内の人流の活性化による外食市場の回復に支えられ、販売数量は堅調に推移したものの、原材料価格の軟化の影響を受けて販売単価が下落したことにより、売上高は前年同期を下回りました。物価上昇による食材コストの上昇や深刻化する人手不足の課題に対し、品質の劣化を抑えて長く使える「SUSTEC®(サステック)」シリーズや、調理にかかる時間や負荷を軽減する「調味油」「調理油」など、機能性を強化した高付加価値品の拡販に努めました。
油糧部門につきましては、大豆ミールは、搾油量が前年同期をやや上回ったことにより、販売数量は前年同期をわずかに上回りました。販売価格は為替相場が前年同期より円安となったものの、シカゴ大豆ミール相場の下落の影響が大きく前年同期を下回りました。菜種ミールは搾油量が前年同期を上回ったことから、販売数量は前年同期を上回りました。販売価格は大豆ミール価格との連動に加えて、国内供給増加による需給逼迫感の解消により前年同期を大きく下回りました。
(スペシャリティフード事業)
乳系PBF部門につきましては、業務用油脂加工品は、土産菓子向けのインバウンド需要が継続し、製パン向け需要も比較的堅調に推移しましたが、原材料価格の高騰による最終需要家での油脂使用量削減の影響が継続した結果、販売数量、売上高ともに前年同期を下回りました。粉末油脂事業は、販売数量がほぼ前年並みとなる中、売上高は原料・為替相場変動の影響を反映したことで前年同期を上回りました。
食品素材部門につきましては、テクスチャーデザイン事業は「TXdeSIGN®(テクスデザイン)」シリーズが製菓製パン用途や畜肉用途への提案を強化することでターゲット顧客での採用が進み、販売数量は堅調に推移しました。売上高は、油脂と協働した「おいしさデザイン®」によるソリューション提案を推進したものの、とうもろこし相場の下落を受け、段ボール用コーンスターチの販売価格が下落したことにより、前年同期をやや下回りました。ファインは、ビタミンK2が国内市場を中心に新規採用や使用量拡大が進んだものの、売上高は前年同期と同程度となりました。大豆たん白をベースとしたシート状大豆食品「まめのりさん®」は、主要販売先である北米向けの出荷が伸長したことや価格改定に取り組んだ結果、販売数量、売上高ともに前年同期を上回りました。
(その他)
その他の事業につきましては、売上高9億85百万円(前年同期比5.3%減)、セグメント利益1億92百万円(前年同期比14.7%増)、セグメント資産6億97百万円(前期末比1百万円増)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりになります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 金額は製造原価によっております。
当社グループは受注生産を行っておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりになります。
(注) 1 セグメント間取引については相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
当社グループは、2026年度を最終年度とする第六期中期経営計画「Transforming for Growth」を推進しており、その達成・進捗状況は以下のとおりであります。
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は1,014億15百万円で、前連結会計年度末に比べ73億91百万円減少しました。主な増加は、有価証券が87億円、電子記録債権が41億32百万円であります。主な減少は、棚卸資産が97億12百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が88億3百万円であります。
固定資産は687億33百万円で、前連結会計年度末に比べ5億29百万円減少しました。主な増加は、有形固定資産が6億43百万円であります。主な減少は、投資有価証券が11億54百万円であります。
これにより、総資産は1,701億64百万円(前期末比79億28百万円減)となりました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は375億40百万円で、前連結会計年度末に比べ54億30百万円減少しました。主な増加は、1年内返済予定の長期借入金が63億90百万円であります。主な減少は、支払手形及び買掛金が57億12百万円、短期借入金が46億円、未払消費税等が12億85百万円であります。
固定負債は263億35百万円で、前連結会計年度末に比べ67億35百万円減少しました。主な増加は、役員株式給付引当金が34百万円であります。主な減少は、長期借入金が63億90百万円、退職給付に係る負債が2億30百万円、繰延税金負債が1億3百万円であります。
これにより、負債は638億76百万円(前期末比121億66百万円減)となりました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は1,062億88百万円で、前連結会計年度末に比べ42億37百万円増加しております。主な増加は、利益剰余金が49億96百万円、為替換算調整勘定が1億67百万円であります。主な減少は、その他有価証券評価差額金が9億17百万円であります。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前年同期と比べ77億3百万円増加し、119億50百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、182億94百万円(前連結会計年度は224億68百万円)となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純利益の計上や売上債権および棚卸資産が減少したことによります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、△37億76百万円(前連結会計年度は△33億36百万円)となりました。こ主な要因は、有形固定資産の取得による支出を計上したことによります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、△68億55百万円(前連結会計年度は△173億47百万円)となりました。この主な要因は、短期借入金を返済したことによります。
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利払い
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式総数(自己株式控除後)により算出しております。
※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
※2021、2022年度のキャッシュ・フロー対有利子負債比率およびインタレスト・カバレッジ・レシオは、営業キャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。
主要な資金需要は、製造および販売活動に必要な運転資金、有利子負債の返済、配当金の支払い、法人税等の支払い、事業基盤整備のための設備投資、新規事業への投資であり、これらの資金需要に対しましては、営業活動によるキャッシュ・フローおよび内部留保資金、社債発行、金融機関からの借入により資金調達しております。
当社グループは、現金及び現金同等物において、グループ各社の余剰資金を一元管理することによって資金の効率化と金融費用の極小化を図っております。また、当座貸越契約、コミットメントライン契約、売掛債権の流動化による機動的な資金調達手段を備えており、十分な資金の流動性を確保しております。
当社グループは、資本効率性と格付を考慮した財務健全性の最適バランスを取りながら、営業活動によるキャッシュ・フロー創出力を強化し、持続的な企業価値の向上を追求していく方針であります。これにより、事業活動の維持に必要な手許資金の水準を確保するとともに、安定した株主還元と、企業体質の強化や積極的な事業展開のための成長投資など、長期的視野に立った安定的かつ適正な利益配分を行うこととしております。加重平均資本コスト(WACC)等を用いて資産効率向上を進めてROA等の改善を図ることとし、原料相場や為替相場の変動等による経営環境の変化を踏まえ、財務政策における目標値を見直すこととしております。
なお、キャッシュ・フローの推移実績は以下のとおりであります。
(注)フリー・キャッシュ・フロー:営業活動によるキャッシュ・フロー+投資活動によるキャッシュ・フロー
※借入金残高は、社債を含みます。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、会計上の見積りを用いることが必要となりますが、これらの見積りについては過去の実績や現状等を総合的に勘案し合理的に判断しております。しかしながら実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
当社グループは確定給付制度を採用しております。退職給付債務および勤務費用は、数理計算上の仮定を用いて退職給付見込額を見積り、割引くことにより算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、昇給率、期待運用収益率等の様々な計算基礎があり、当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、退職給付に係る負債および退職給付費用の金額に重要な影響を与える可能性があります。
なお、棚卸資産(原材料)の評価および固定資産の減損については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
当社では「Joy for Life®-食で未来によろこびを®-」を目指すべき未来として掲げ、「おいしさ×健康×低負荷」で人々と社会と環境へのよろこびを創出すべく、社会課題解決に貢献する研究開発活動を進めております。
植物由来の素材に関する研究を通じ、私たちがこれまで培ってきた知見を基盤として、お客さまや社会が抱える課題へお応えするため、技術開発・商品開発・アプリケーション開発を行っております。
技術開発においては、おいしさや、健康、低負荷の観点で新たな価値を生み出すため、効用のメカニズムの科学的究明とともに、顧客や社会が抱える課題の解決を目的に、開発活動を行っております。
そして、高品質な商品・サービスによるお客さまへの提供価値向上を目指し、技術開発によって生まれた基盤技術をベースに商品開発を行っております。
さらに、アプリケーション開発においては、様々な食品素材の知見を融合させ、顧客や社会の課題解決に取り組んでおります。
① 家庭用油脂事業の開発においては、生活者のベネフィットを第一に考え、おいしさ、健康、環境および調理者の負荷低減に寄与する商品開発を行っております。
② 業務用油脂事業の開発においては、食のプロに向けて、作業環境の向上、長持ち機能など経済性および環境さらには調理作業の低負荷につながる商品の提供を目指し開発を行っております。
③ テクスチャーデザイン事業の開発においては、当社独自の加工技術を用いて、畜肉製品、水練り製品、菓子類、製菓など幅広いジャンルの食品に対して、好ましい食感・物性・機能性を付与できる機能性澱粉の商品開発を行っております。
④ 基盤技術開発においては、上記の各事業の商品開発の基盤となる、科学的な真理探究を伴う技術開発を行っております。また、大学など外部研究機関との共同研究にも取り組んでおります。
なお、研究開発費の総額は、
セグメント別の研究開発活動は、次のとおりであります。
(油脂事業)
家庭用油脂分野では環境配慮型の商品として「AJINOMOTO こめ油たっぷりクッキングオイル」500gスマートグリーンパック®を発売しました。また、あっさりとしたキャノーラ油と豊かな風味のエクストラバージンオリーブオイルをブレンドしたクッキングオリーブオイルとして「AJINOMOTO EurOlive」(ユーロリーブ)300gスマートグリーンパック®を発売しました。生活者の節約志向や調理時の手間低減に寄与する「AJINOMOTO ダブルハーフ」700gスマートグリーンパック®を発売し、商品ラインアップ拡充を図りました。さらに、食事から健康に良いものを取り入れたいという生活者も増加傾向にあることから、認知および摂取意向が高い栄養素であるビタミンEを豊富に含んだ栄養機能食品の食用油「AJINOMOTO 健康プラス」900gエコボトルを発売しました。
健康志向の高まりを受け、血中の中性脂肪や総コレステロールを低下させる機能について報告のある成分を含む機能性表示食品「AJINOMOTO サララこめ油」を発売しました。また、「スマートグリーンパック®」シリーズのラインアップ拡充のため「AJINOMOTO さらさらキャノーラ油」300gスマートグリーンパック®、「AJINOMOTO こめ油」300gスマートグリーンパック®、「AJINOMOTO 焙煎ごま香味油」500gスマートグリーンパック®を発売しました。
業務用油脂分野においては、環境負荷低減に加えて食材の高騰による節約志向の高まりなどにより調理機能を付与した油の利用が広がり、「JOYL PRO® 」シリーズが注目を集めております。米の価格高騰に対応すべく、炊飯時の歩留向上機能を高めた「JOYL PRO® 炊飯油F3」を発売し、お米を大切に使いたいという要望に応える商品として好評を頂いております。また、爽やかな花椒の香りに加え、昨今の顧客ニーズとなっているパンチのある辛味と旨味の両立によって本格的な四川料理を演出できる「JOYL PRO® 花椒香るうま辛ラー油」や炭火焼き調理工程において生じる香りを手軽に楽しめる「JOYL PRO® 炭火焼き風味オイル」を発売しました。フライ油用途においては、近年注目度が高いインストアベーカリーを中心に活用頂いている、本格的な甘い風味とコクを演出する「Bakery Fry Up SF」、作業性の優れる「Bakery Fry Up L」を発売しました。環境負荷低減、フードロス削減に貢献できる技術開発や食課題の改善に向けて提案を継続すべく、商品の開発を進めてまいります。
なお、当事業の研究開発費の金額は、
(スペシャリティフード事業)
加工油脂分野では、「グランマスター®」ブランドをはじめとする業務用マーガリン、業務用ショートニングの開発を行い、油脂加工技術を活用して製菓製パン業界を中心とした食のプロのニーズにお応えしております。
粉末油脂分野では、生産部門と連携し噴霧乾燥工程の生産効率の向上、安定生産へのサポートを継続しております。
テクスチャーデザイン分野では、当社の業務用ブランド「TXdeSIGN®(テクスデザイン)」シリーズの新たな製品として「ネオトラスト®C-200」を市場導入しました。本製品は従来製品よりも吸水機能に優れており、食感改良・歩留改善・作業性向上に貢献できる製品となります。加えて機能性澱粉の更なる機能性向上、生産効率改善に関わる技術開発にも取り組みました。
健康素材分野では、大豆シート食品「まめのりさん®」とファイン分野のビタミンK2は、生産効率改善や販売促進に対応した技術開発に取り組みました。
なお、当事業の研究開発費の金額は、