(1)会社の経営の基本方針
「経営理念」と「事業領域」
当社グループの経営理念は、次のとおりであります。
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私たちキッコーマングループは、 1.「消費者本位」を基本理念とする 2.食文化の国際交流をすすめる 3.地球社会にとって存在意義のある企業をめざす |
企業の存続と繁栄は、消費者の皆様にご満足いただいて初めて実現するものと考えております。この認識のもとに当社グループは、消費者の皆様の声に耳を傾けるとともに、市場を洞察し、消費者の皆様にとって価値のある商品・サービスの提案を行ってまいります。
また、食品企業としての基本的使命は、安全で高品質の商品を適正な価格で安定的に供給することであると考えており、こうした基本の実践を着実に積み重ねてまいります。
当社グループの事業領域は、次のとおりであります。
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1.食品の製造と販売 2.「食と健康」に関わる商品とサービスの提供 をグローバルに展開する |
(2)中長期的な経営戦略
当社グループでは、グループの将来ビジョン「グローバルビジョン2030」を策定しております。これは、2030年に向けて、キッコーマングループが「新しい価値創造への挑戦」を行うための、「目指す姿」と「2030年への挑戦」を定めたものです。
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[目指す姿] 1.キッコーマンしょうゆをグローバル・スタンダードの調味料にする 2.世界中で新しいおいしさを創造し、より豊かで健康的な食生活に貢献する 3.キッコーマンらしい活動を通じて、地球社会における存在意義をさらに高めていく
[2030年への挑戦] 1.No.1バリューの提供 ・グローバルNo.1戦略 ・エリアNo.1戦略 ・新たな事業の創出 2.経営資源の活用 ・発酵・醸造技術 ・人財・情報・キャッシュ・フロー |
※ 詳細は、次のURLからご覧いただくことができます。
https://www.kikkoman.com/jp/corporate/management/vision2030.html
(3)目標とする経営指標
当社グループは、2025年度を初年度とし、2027年度を最終年度とする中期経営計画を定めております。
<連結業績目標>
・売上成長率(為替差除き)年平均5%以上
・事業利益率 10%以上
・ROE 12%以上
<キッコーマングループ中期経営計画 重点課題>
・成長の継続と収益力の維持・向上
・将来に向けた経営資源の活用
・事業活動を通じた社会課題解決
※ 詳細は、次のURLからご覧いただくことができます。
https://www.kikkoman.com/jp/ir/lib/managementplan.html
(4)当面の対処すべき課題の内容及び対処方針等
海外については、しょうゆ部門は引き続き、主要市場の深耕と新規市場の開拓を進め、さらなる成長を果たしてまいります。
北米では、2026年後半からの米国第3工場稼働を含め、供給体制を整備して需要に対応し、安定成長を続けてまいります。欧州では、市場の拡大を目指し、中長期的な需要拡大に向けて取り組んでまいります。
アジアでは、国や地域に合ったマーケティング施策を展開し、より一層の浸透と拡売により、アセアンにおいては持続的な2桁成長を果たしてまいります。さらに、南米市場やインド、アフリカ地域の開拓を進めてまいります。
東洋食品卸売事業では、これまで市場環境の変化に適切に対応することで順調に成長してきましたが、今後も、業務用市場と家庭用市場とのバランスの良い事業構造への転換や販売体制・調達力の強化を進め、事業の推進力を高めてまいります。
国内については、収益力向上と成長軌道への回帰のための取り組みを進めてまいります。ITやデジタルなどの技術も活用することにより、お客様への提供価値を高め、高付加価値化や生産性向上を図ってまいります。しょうゆやつゆ類、たれ類、うちのごはんなどのしょうゆ関連調味料を合わせたカテゴリーのNo.1ブランドとして、市場に存在感を示してまいります。豆乳においては、No.1ブランドとして需要を創造し市場をけん引するとともに、生産効率及び収益力を向上させてまいります。
財務上では、営業キャッシュ・フローを活用し、成長分野への投資を含め、生産性向上・効率化、新規事業・研究開発、DX、人財、社会課題の解決など、企業価値向上のための投資とともに株主還元も行ってまいります。また、利益率の改善を第一に、資産効率、資本効率をあげることで、ROE向上に取り組んでまいります。
当社グループは、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、社会課題を解決する中で事業機会を見つけていくことにより企業の社会的責任を果たしていきたいと考えております。そのために「地球環境」「食と健康」「人と社会」の3つを重要分野と定め、取り組みを進めております。
1.サステナビリティ共通
当社は創立以来、企業は社会の公器であるとの認識に基づき、自然環境、人や社会とのつながりを大切にして事業活動を行ってまいりました。当社の事業活動が世界に広がるとともに、その責任はますます大きくなっております。世界中の人々から“キッコーマンがあってよかった”と思っていただける存在であるために、経営理念を実践するための取り組みをすすめております。2001年には、グローバルに活動を行う企業の責任として国際連合の提唱するグローバル・コンパクトに日本企業として初めて署名しました。
「グローバルビジョン2030」では、SDGsに代表される社会課題の解決に貢献するとともに、それを事業機会としていくことにより、経済的価位と社会的価位を向上させることで、地球社会におけるキッコーマングループの存在意義を高めていくことをめざしています。
当社は、多くの社会課題の中から当社が特に取り組む重要分野として、「地球環境」「食と健康」「人と社会」の3つを特定し、それぞれの取り組みをすすめております。
「地球環境」分野では、「キッコーマングループ長期環境ビジョン」を定め、その実現のために取り組んでおります。気候変動に関しては、2050年までのCO2排出量ネットゼロ実現をめざし、削減目標を定め、再生可能エネルギーの導入などの取り組みを着実にすすめております。その一環として金融安定理事会の気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明し、情報開示を行いました。また、水資源、森林資源、食品廃棄物、プラスチックなどの課題に対しても、それぞれ目標を定め、取り組んでおります。
「食と健康」分野では、「こころをこめたおいしさで、地球を食のよろこびで満たします。」という「キッコーマンの約束」にこめた想いを実践していくために、商品、サービス、技術、ノウハウ、レシビなど当社グループの資産を十分活用して、世界中の人々のおいしさやこころとからだの健康に対して貢献してまいります。
「人と社会」分野では、人権を尊重し、社員を含むさまざまなステークホルダーと良好な関係を構築していくことなどを通じて、創業当初から育んできた人と社会を大切にする企業文化をさらに釀成し、社会の持続可能な発展に貢献してまいります。
今後とも、高い品質の商品を効率的に、かつ安全で衛生的に、安定して製造することを基本とした事業活動を行ってまいります。その上で、上記3分野の取り組みを積み重ねることで持続可能な社会の実現に貢献し、世界中の人々から、なくてはならない企業として、支持・信頼いただけるよう取り組んでまいります。
(1)ガバナンス
キッコーマングループは、サステナビリティに向けた取り組みを重要な経営課題として認識しています。サステナビリティに向けた取り組みを通じてキッコーマングループ経営理念を実践し、グローバルビジョン2030を実現するため、グループ横断的な推進体制の整備に取り組んでいます。
サステナビリティ委員会
キッコーマングループは、CEOが委員長を務めるサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は全社的な取り組み方針を定め、影響、リスク、機会の把握と対応を実施しています。また、当社グループが定めた重要な社会課題3分野である「地球環境」「食と健康」「人と社会」について、それぞれの分野の責任者が当委員会に報告する体制を整備し、当委員会において具体的な施策についての討議を行っています。また、社内への浸透や社外への発信を統括しており、情報開示についての検討を実施しています。サステナビリティに関する事案について、当委員会の委員長としてCEOが当社取締役会への報告を適宜行っており、当委員会からの報告をもとに、当社取締役会はサステナビリティに関する当社グループの重要方針や進捗状況を決定、監督し、当社グループ経営戦略に反映させています。2024年度はサステナビリティ委員会を9回開催しました。2024年度の主な議題として、重要な社会課題3分野で定めた目標の進捗状況の確認、2025年度から2027年度の3年間の方針及び施策、新規取り組みの報告、非財務情報の開示(有価証券報告書やコーポレートレポート他)等を取り上げました。
サステナビリティ・ガバナンス体制図
(2)戦略
当社グループは、経営理念に基づき、目指す姿と基本戦略を定めた長期ビジョン グローバルビジョン2030を2018年に策定しました。グローバルビジョン2030は、2030年に向けて「新しい価値創造への挑戦」をテーマに、当社グループの目指す姿を定めたものです。
[目指す姿]
① キッコーマンしょうゆをグローバル・スタンダードの調味料にする
北米市場において「キッコーマンしょうゆ」が日常生活に浸透しているような姿を、世界中で展開し、各国の食文化との融合を実現していく
② 世界中で新しいおいしさを創造し、より豊かで健康的な食生活に貢献する
常に革新と差異化に挑戦することで、世界中の人々のおいしさや健康につながる価値ある商品・サービスを提供していく
③ キッコーマンらしい活動を通じて、地球社会における存在意義をさらに高めていく
地球社会が抱える課題の解決に寄与することにより、世界中の人々からキッコーマンがあってよかったと思われる企業になる
グローバルビジョン2030/体系図
当社グループは、グローバルビジョン2030の実現に向けて、2025年度を初年度とし、2027年度を最終年度とする中期経営計画2025-2027を策定しました。中期経営計画では、「成長継続と収益力の維持・向上」「将来に向けた経営資源の活用」「事業活動を通じた社会課題解決」という3つの重点課題を定めました。
[中期経営計画重点課題]
① 成長継続と収益力の維持・向上
各事業、各地域の状況に応じて、それぞれ成長性を維持し、収益性をさらに高める取り組みを実施します。
海外事業
海外しょうゆ事業は、長期的な目線で新市場の開拓、そして地域のステージに合わせた成長戦略を推進します。海外卸売事業は、業務用だけでなく家庭用市場のさらなる拡大を図り、拠点の整備・拡大をすすめるとともに、調達力の強化に取り組みます。
国内事業
国内事業では、高付加価値化や一層の効率化をすすめることで収益力の向上をめざすとともに成長軌道への回帰を図るため、価値訴求や効果的な販促活動などの基本を徹底してまいります。
② 将来に向けた経営資源の活用
グローバルビジョン2030の達成、さらにはその先に向けて、人財、キャッシュ、研究開発・技術、情報などの経営資源を活用していきます。
③ 事業活動を通じた社会課題解決
以下に示すマテリアリティの特定により定めた重要な社会課題3分野について方針やテーマを定め、着実に実行することで、事業活動を通じた持続可能な社会の実現に取り組みます。
キッコーマングループは、グローバルビジョン2030の策定にあたって社会課題の解決に向けた貢献を重要な要素として掲げ、重要な社会課題(マテリアリティ)の議論を主に2017年に実施しました。
その際、企業の社会的責任推進委員会(現・サステナビリティ委員会 以下同)事務局が中心となって[社会にとっての重要な社会課題]と[キッコーマンにとっての重要な社会課題]の二軸で、「気候変動」「人権」「健康」などの26の重要課題を抽出しマッピングし、リスクと機会について分析を行いました。その結果を、グループ経営会議で報告・討議し、大きな方向性として、「地球環境」「食と健康」「人と社会」の重要な社会課題3分野を特定し、グローバルビジョン2030とあわせて2018年に公表しました。
その後、グローバルビジョン2030の実現に向けた中期目標として、中期経営計画2022-2024を策定しました。その検討のなかで、「重点課題」としてサステナビリティについての討議を行い、その一環として2021年から2022年にかけてマテリアリティ評価を実施しました。この評価プロセスを通じて、重要な社会課題3分野に基づいたより具体的なマテリアリティの整理と目標の設定を行いました。
サステナビリティに関する国際的な関心が高まるなか、非財務情報開示の国際的な枠組みが整理されてきました。こうした背景のもと、責任ある企業として国際社会の要請に応え、適切な非財務情報開示を行うために、当社グループでは2023年度から2024年度にかけて国際基準を用いたマテリアリティ評価を実施しました。その過程において、当社グループの事業活動と自然環境や社会との接点において生じる依存関係についての基本的な分析を行い、リスクや機会との関係性を評価しました。これらの内容をサステナビリティ委員会で討議し、その結果を取締役会に報告しました。
その結果、改めて「地球環境」「食と健康」「人と社会」が重要な社会課題であるとの評価になり、中期経営計画2025-2027において各分野の基本方針、テーマ、目標を定めました。
(3)リスク管理
当社グループでは、事業の安定的な発展を実現し、ステークホルダーへの責任を果たすため、当社グループの活動を取り巻くリスクに備えた取り組みをすすめています。また、当社グループが多数の事業をグローバルに展開していることを踏まえ、さまざまに異なるリスクと機会を把握・管理するため、担当する子会社及び部門を執行役員及び執行役員待遇(※)が指揮し、リスク顕在化の未然防止に努めています。
(※)執行役員待遇は、当社子会社等の重要役職者で、 当社執行役員と同等の役位に相当する者をいいます。
2010年10月、当社グループを取り巻くさまざまなリスクに対する的確な管理と実践を目的に、リスクマネジメントに関する基本的事項を定めた「キッコーマングループ リスクマネジメント規程(リスクマネジメント規程)」を制定しました。リスクマネジメント規程ではリスクを「経営における一切の不確実性」と定義し、以下のものを含むとしています。また、リスクの定義を自然災害や事故だけに限定せず、気候変動を含むサステナビリティに関する内容も含んだものとして認識しています。
① キッコーマングループに直接又は間接に経済的損失をもたらす可能性
② キッコーマングループの事業継続を中断・停止させる可能性
③ キッコーマングループの信用を毀損し、ブランドイメージを失墜させる可能性
当社グループは、中長期的なサステナビリティに関するリスクを評価・管理し、適切に対応するために外部組織やステークホルダーとの対話を通じて確認しており、必要に応じて当社の取り組みに反映させています。また、当社グループの事業に関わるリスクをグループ経営会議において、毎年、網羅的に影響度と発生可能性の2つの視点から評価しており、サステナビリティはそのリスクの1つとして取り組んでいます。そのうえで、事業に影響するリスク事案を特定するとともに影響度合いを分析し、取締役会への報告を行っています。
詳細については、
(4)指標及び目標
当社グループの重要な社会課題3分野の指標及び目標についてはそれぞれ下記に示すとおりです。
「地球環境」の指標及び目標
「食と健康」の指標及び目標
「人と社会」の指標及び目標
各国の法制度や労働慣行の違いにより、連結ベースでの一律の目標設定が適さないため、一部の取り組みの対象は国内グループ会社としています。
2.重要な社会課題3分野の取り組み
(1)「地球環境」に関する取り組み
① ガバナンス
「地球環境」に関して、全体方針に関する意思決定はサステナビリティ委員会で行い、各施策の実行は各事業会社が責任をもって行い、その結果をサステナビリティ委員会が把握しております。サステナビリティ委員会は取締役会への報告も適時行っており、全体のサステナビリティ・ガバナンス体制と同様です。
加えて、各グループ会社・事業所組織への気候課題を含む環境保全活動に関する目標・方針の具体的な展開を行い、グループ全体の環境関連ノウハウと技術の蓄積、変化への対応力の向上などを推進するため、キッコーマン(株)常務執行役員(統括環境管理責任者)が委員長を務める環境保全統括委員会を設置しています。また、各拠点の環境管理責任者を中心とするメンバーで構成する環境保全推進委員会を環境保全統括委員会の下に設けています。キッコーマングループ各社各部門の経営層、管理者層、拠点実務者が各会議体に参加し、目標策定、進捗管理、情報共有を行いながら活動しています。
環境マネジメント推進体制図
② 戦略
[キッコーマングループの気候変動への対応]
世界各地で高温による健康被害、深刻な干ばつによる水不足、豪雨や洪水による住居、道路交通網、水や電気等のインフラへの甚大な被害とその発生頻度の増加が顕在化しています。こうした異常気象には気候変動が大きく関わっており、地球規模で生命、財産、経済活動を脅かす社会問題となっています。このような背景から当社グループでは2030年度までに2018年度の比でCO2排出量を50%以上削減することで気候変動に取り組みます。
[気候変動のシミュレーションとリスク評価]
キッコーマングループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明し、TCFD提言に基づき、気候変動が事業に与えるリスク及び機会を評価し、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について開示をすすめています。特に気候変動におけるリスクの評価では、2030年、2050年、2080年で気候変動が一層進んだ場合(4℃上昇RCP8.5シナリオなど)において、各拠点での洪水、高潮による浸水深リスクはどう変化し、それによって事業活動が中断する場合、中断期間や施設の損壊による被害はどれほどになるのか定量的なシミュレーションをAqueductやハザードマップなどを参考に実施しました。これは各拠点におけるBCPにインプットとして活用しています。大雨や台風による被害を過去経験した拠点においては、非常用発電機の設置、浸水対応のための揚水ポンプの設置、新設倉庫のフロアレベルを高くすることなどを実施しました。また当社グループの主要原料について、世界各地で気候変動から受ける収量変化の影響についてもシミュレーションを実施しています。近年、適切でタイムリーな情報開示の要請が、非財務情報の分野に関しても高まってきています。また国際的なイニシアチブへの対応や認証取得なども一層重要性を増し、これらが企業を評価する指標となってきています。キッコーマンではCDPの2024年度回答で気候変動、水セキュリティ、フォレストに対応回答しました。また2030年度に向けた当社グループの温室効果ガス削減目標が、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑えるための科学的根拠に基づいた目標であるとして、国際的な共同団体であるSBT(Science Based Targets)イニシアチブより認定を取得しています。
[CO2削減の推進]
キッコーマングループ全体として温室効果ガス排出量は、2024年度は2018年度比で37.3%削減し目標を達成しました。その取り組みとして国内・海外各拠点で電力の再生可能エネルギー活用を積極的に進め再生可能エネルギー100%電力活用の拠点数は21です。また全体での再生可能エネルギー電力使用率は2025年3月末時点で73%に伸長しました。省エネルギーについては、熱回収によるガス使用量の削減、ボイラー送気方法変更などの運用改善、蒸気パイプラインの放熱防止策、クラウドを活用した空調室外機の制御などを当社グループ各社で実施しています。いずれも事業運営の中に環境負荷低減の施策を組み込んで活動しています。今後も再生可能エネルギー活用と省エネ活動をさらに推進してまいります。
2024年度のCO2温室効果ガス排出量実績は下記のとおりです。
CO2排出量中長期目標、各年のCO2排出量実績、TCFD提言に基づく開示等は、次のURLで公開しています。
https://www.kikkoman.com/jp/csr/environment/climate-change.html
[水環境の保全]
水の管理として水使用原単位削減をグループ各社の生産拠点を対象に取り組んでいます。洗浄工程における用水使用方法の見直し、洗浄機器の変更、メンテナンスの強化など地道な活動を中心に削減してきて2024年度は2011年度比で26.7%削減しました。また排水処理場がある事業所においては、排水の原水受入から調整、処理、放流に至るまでの運転管理を徹底し、法規制よりも厳しい環境自主基準をBOD数値に設定し、該当する12事業所全てで目標を達成しました。
[資源の活用]
事業所から排出される廃棄物や副産物の再資源化率は99.3%で高水準を維持しています。
食品ロス削減は、生産、出荷後それぞれの段階で規格外品の削減、生産計画と在庫の適正化などの削減施策を推進し、2024年度は2018年度比で17.0%の削減になりました。環境配慮型商品の展開においては、しょうゆのいつでも新鮮シリーズの容器において再生プラスチックの一部使用開始、豆乳製品のストローの植物由来プラスチックへの切り替えなどを実施しました。
[生物多様性の保全]
生物多様性は自然環境を支える重要な役割を果たしており、生物多様性が生み出す生態系サービス(資源の供給、気候の緩和、文化的な価値、水循環など)は私たちの生活に欠かすことはできません。当社グループの商品には水資源を使用することから、特に水環境への配慮と地域との共生を主にその活動の軸として取り組んでいます。今後は、バリューチェーン全体を通じた生物多様性を中心とした自然資本への影響や自然関連リスクの把握と生物多様性保全に向けた活動を推進します。当社グループはLEAPアプローチ ※1 を用いて事業及びバリューチェーンに関連する生物多様性との影響・依存についての全体像を把握するプロジェクトを実施しました。本プロジェクトでは外部専門家の意見を踏まえ、当社グループの事業内容や取り扱う主要な原材料(大豆、小麦、トマトなど)をもとにENCORE ※2 による評価をベースに、自社事業・バリューチェーンに当てはめて影響・依存関係を調査しました。その結果、「水資源の利用」「原材料調達」「地域の環境保全」の分野の取り組みが特に重要という結論を得ました。今後、詳しい情報開示に向け活動を進めます。
地域の生物多様性保全の取り組みの1つとして、北海道キッコーマン(株)の工場敷地内の樹林地を環境省「自然共生サイト」に申請し2025年3月に認定を受けました。「自然共生サイト」とは、民間の取り組みなどによって生物多様性の保全が図られている区域を国が認定する制度です。北海道キッコーマン(株)敷地内の樹林地(25,640㎡)には落葉広葉樹が約80年前から残存しており、希少種を含む多様な動植物が生息・生育する貴重な緑地帯となっていることが認定において評価されました。今後も生態系豊かな樹林地を維持するとともに、確認された希少な野生動植物などの保全に努めてまいります。
※1 LEAPアプローチ:民間企業が自然への依存と影響を評価するためのガイダンス。自然資本や生物多様性に関するリスクや機会を民間企業や金融機関が評価・開示するための枠組みを構築する国際的な組織であるTaskforce on Nature-related Financial disclosures(TNFD)が提示。
※2 ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure):民間企業の自然への影響や依存度の大きさを把握することを目的に、国際的な金融機関のネットワーク「自然資本金融同盟(Natural Capital Finance Alliance(NCFA))」及び「国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)」などが共同で開発したツール。
③ リスク管理
④ 指標及び目標
(2)「食と健康」に関する取り組み
① ガバナンス
全体方針に関する意思決定はサステナビリティ委員会で行い、各施策の実行は各事業会社が責任をもって行い、その結果をサステナビリティ委員会が把握しております。サステナビリティ委員会は取締役会への報告も適時行っており、全体のサステナビリティ・ガバナンス体制と同様です。
② 戦略
「食と健康」分野の取り組みは、当社グループの事業活動そのものであると考えています。当社グループは、2007年に、事業に取り組んでゆく姿勢やお客様に提供する価値を「キッコーマンの約束」として明文化しました。そこには、商品・サービスの提供、栄養バランスに優れた食提案によるこころとからだの健康の応援、食文化の国際交流などにより、地球を食のよろこびで満たすことを約束として示しています。
今日、国際的に心身の健康に関する課題を解決していくことは、持続可能な社会の実現に不可欠なものとなっており、WHOなどの国際機関も、健康的な食事は栄養の過不足を防ぐだけでなく非感染症のリスクを低下させるとし、年齢や性別、身体活動レベル等に応じた適切な栄養素をバランスよく、適度に、多様な食品から摂取することがポイントであるとしています。当社グループは、「キッコーマンの約束」に示す、バランスの良い食生活を実現するために、適切な栄養摂取を行うための支援を行うことで、この課題への貢献を行ってまいります。
中期経営計画では、「世界のお客様のバランスの良い食生活の実現に貢献」を基本的方針とし、具体的な栄養課題として、適切な塩分摂取、野菜の積極的な摂取、多様なたんぱく質の摂取に関して、各国・地域の状況にあわせた取り組みを行ってまいります。そのために4つのテーマを定め、これまで行ってきたさまざまな取り組みや新たに挑戦すべきことを体系化して示しています。まずは、当社の商品・サービス、レシピ・食生活提案を通して、日々の食事をバランス良く、おいしく楽しく手軽に続けていただくことに重点をおきます。これに、科学的根拠に基づく健康のサポート、次世代に食の楽しさや豊かさをつなぐ体験の提供、社会との共創とあわせて、健康的で持続可能な社会の実現にむけて取り組みを続けます。
③ リスク管理
④ 指標及び目標
(3)「人と社会」に関する取り組み
① ガバナンス
全体方針に関する意思決定はサステナビリティ委員会で行い、各施策の実行は各事業会社が責任をもって行い、その結果をサステナビリティ委員会が把握しております。サステナビリティ委員会は取締役会への報告も適時行っており、全体のサステナビリティ・ガバナンス体制と同様です。
② 戦略
[人的資本]
[ステークホルダーとの協働]
当社グループは、幅広いステークホルダーへの責任を果たすための取り組みをすすめています。お客様へは安全・安心かつ高品質な商品をお届けするとともに、お客様から寄せられる声を活かしてお客様満足の向上に取り組んでいます。仕入先とはコミュニケーションを通じて、公正な取引の徹底と良好なパートナーシップの構築に努めています。株主・投資家へは適時・適切な情報開示によって経営の透明性を高めるとともに、持続的な成長による収益の確保、適正な利益配分に努めています。地域社会へは地域に根差した社会活動や食文化の継承・発展のための取り組みなど地域社会に貢献する活動を行っています。
[経営体制の強化]
③ リスク管理
④ 指標及び目標
3.人的資本
キッコーマングループを取り巻く環境が大きく変化する中、社会へ向けて価値を創造し、当社グループが持続的な成長を続けるためには、人財が重要だと考えています。人権尊重の考えを基本として、積極的に人的資本向上へ取り組み、人財価値を高めることで持続的成長・企業価値向上を実現します。
この考えはグローバルビジョン2030にも示され、中期経営計画2022-2024において目標を掲げ取り組みました。中期経営計画2025-2027ではさらに高い目標を目指します。
(1)ガバナンス
全体方針に関する意思決定はサステナビリティ委員会で行い、各施策の実行は各事業会社が責任をもって行い、その結果をサステナビリティ委員会が把握しております。サステナビリティ委員会は取締役会への報告も適時行っており、全体のサステナビリティ・ガバナンス体制と同様です。
(2)戦略
① 目指す姿
「多様な人財一人ひとりの活躍」と「社員が能力発揮できる組織」によって、地球社会における存在意義のある企業を目指します。「多様な人財一人ひとりの活躍」を実現するには、会社組織のビジョンに共感し、社員のエンゲージメントが高まり、成長意欲を持って主体的に行動することが重要です。そして、「社員が能力発揮できる組織」を実現するために多様性を認め、挑戦できる組織風土と社員が健康で生産性を向上し、働くことができる環境整備に取り組んでいます。
② 人財育成方針及びその取り組み
仕事における高度な能力をもち、能力を発揮して自律的に行動することで社内外のニーズを満たし、市場に価値を与えることができる「プロ人財」を育成します。
グローバルビジョン2030では、「No.1バリューの提供」に向けて、環境変化を先取りし、人的資本を含む経営資源を活用する方針を示しました。一人ひとりがプロ人財として活躍し、グローバルビジョン2030を実現するために、人財に関するあるべき姿と現状のギャップを埋めること、すなわち人財戦略を推進します。具体的には、戦略実現に向けてタレントマネジメントシステムを活用し、国内・海外グループ会社を対象とした重要ポジション(約90ポスト)の後継候補者の管理や職種系統別人財プールの可視化による不足系統の明確化及び強化施策を立案し、当社代表取締役会長が委員長を務める「人財活用委員会」で議論を行いながら、グローバル視点で適所適材配置を横断的にすすめています。
グローバルビジョン2030に掲げる「グローバルNo.1戦略」を牽引するグローバルで活躍できる人財のさらなる拡大を目指し、海外グループ会社への派遣研修や2023年度より開始した国内に居ながら海外プロジェクトに参画するプログラムなどを通じ海外業務体験の機会提供に努めました。
また、専門性人財の確保としては、IT技術の進化によりいかなる部門においてもデジタル活用が企業競争力の向上につながると考え、全社的にデジタル人財を育成するため、国内外グループ社員のデジタルリテラシー研修を2022年度から実施し、2024年度までに延べ1,876名が受講しました。研修において提案された2,000件以上のアイデアから優先度の高い案件を選定し、実現に取り組んでいます。さらに、デジタル活用推進ワークショップに国内グループ会社より18組織が参加し、職場単位でも取り組みをすすめています。
海外グループ会社においては、マネジメント力向上や職場環境向上に関する研修などを各現地で実施し、また主要なグループ会社には国内よりコンプライアンスや品質保証、環境に関する部門責任者が訪問し教育するなどグループ力の強化に努めています。
③ 社内環境整備方針及びその取り組み
人を大切にする企業文化を育み、社会の持続可能な発展に貢献するため、人権を尊重し事業活動を行います。また、多様性を認め合い生産的に働くことができ、社員が失敗を恐れず挑戦できる組織風土をつくります。このような環境整備により、一人ひとりが自己実現するとともに、活き活きと課題に取り組むやりがいのある組織を目指します。
[人権]
当社グループではCHO(最高人事責任者)のもと、キッコーマン(株)・キッコーマン食品(株)・キッコーマンビジネスサービス(株)が中心となり、人権尊重の取り組みをすすめています。また事務局であるキッコーマン(株)人事戦略部がグループ全体の活動を取り纏め、サステナビリティ委員会・取締役会で進捗や成果を報告しています。
当社グループは2020年12月、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、「国際人権章典(世界人権宣言と国際人権規約)」や、国際労働機関の「労働における基本的原則及び権利に関する宣言」などの人権に関する国際的な規範への支持と尊重を定めた「キッコーマングループ人権方針(人権方針)」を策定しました。人権方針に基づき、世界中の当社グループ社員一人ひとりが、すべてのステークホルダーの人権を尊重した事業活動を行うため、継続的な意識醸成を行っています。2023年度は国内グループ会社の管理職層(約900名)、2024年度は国内グループ会社の非管理職層(約3,400名)及び海外グループ会社の現地管理職層(約400名)を対象に「ビジネスと人権」の基本的な考え方や「キッコーマングループ人権方針」への理解を深める研修を実施しました。
キッコーマングループ人権方針:
https://www.kikkoman.com/jp/csr/management/pdf/humanrightspolicyJP.pdf
[ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)]
当社グループは、DE&Iを推進することは、すべての社員にとって働きがいのある職場を実現し、お互いの価値観を認め、共有し合うことで、新たな価値を創出し企業価値を向上すると認識しています。当社グループではDE&Iに関する基本方針を定め、取り組みの強化を推進してきました。2024年度は当社グループでの重要ポジションへの女性社員の積極的な登用を行いました。管理職手前の女性社員に対しては、管理職育成を目的とした外部研修やキャリア形成における悩みを相談できる外部のメンタリングプログラムへの派遣などにより、キャリア開発について考える機会を提供しました。また、LGBTQに関連する取り組みとしては、2023年度から社外相談窓口を設置しています。当社では2024年4月より配偶者が対象となる各種制度を同性パートナーにも適用しました。障がい者雇用にも特例子会社であるキッコーマンクリーンサービス(株)を中心に積極的に取り組み、2025年3月での当社(グループ適用)の雇用率は2.62%でした。聴覚障がい者によるセミナーを開催するなどさらなる意識醸成を図っています。
「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン基本方針」
[働き方]
生産性を向上するためには付加価値を高めるとともに業務改善や効率的な働き方が重要になると考えています。また、効率的な働き方の推進は社員のワーク・ライフ・バランスの実現にも重要な意味があると認識しています。フレックスタイムや在宅勤務を活用した柔軟な働き方や年次有給休暇の取得を推進し、総労働時間をより意識した生産性の高い働き方の実現を目指しています。
[健康経営]
一人ひとりが、活き活きと働き、新しい価値創造に挑戦し、より豊かで健康的な食生活に貢献するためには、こころとからだが健康であることが不可欠であるため、中期経営計画2022-2024では「こころとからだの健康支援」を掲げました。2024年度は社員の健康リテラシーを向上させ、意識変容・行動変容を促すことを目的として、健康経営推進グループをキッコーマン(株)人事戦略部に新設しました。
健康寿命の延伸には個々の社員の自律的な意識変容とセルフケアが重要であることから、健康経営推進体制の確立や健診結果管理システムの国内グループ会社への拡大など、健康リテラシーの向上への基盤づくりをすすめました。また、女性特有の疾患を理解するセミナーや睡眠の重要性・改善を促すセミナーなど、健康啓発セミナーを実施し、社員の健康意識の向上に取り組みました。
なお、キッコーマン総合病院やキッコーマン健康保険組合と連携し、2018年度より連続して「健康経営優良法人」の認証(※)を受けています。
海外グループ会社においても健康推進に取り組んでいます。例えば、KIKKOMAN FOODS,INC.ではA Wellness Committeeを設立し、健康促進プログラムやイベントなどを計画しています。また、KIKKOMAN FOODS EUROPE B.V.では健康増進や能力開発に使用できる予算を個人に対して付与する制度を導入しています。
(※)対象企業は、キッコーマン(株)、キッコーマン食品(株)、キッコーマンビジネスサービス(株)。
[エンゲージメント]
一人ひとりが活き活きと課題に取り組むやりがいある職場を実現するため、2022年度より継続してエンゲージメント調査を国内グループ会社の役員・社員及び海外グループ会社への出向者を対象に実施し、エンゲージメント向上に取り組んでいます。CEOメッセージである「社員一人ひとりが想いを持ち能力を高め、活躍できる職場を作る」の下、各職場で改善アクションプランを実行し、重点組織においては経営トップとともに職場風土改善活動に取り組んできました。2024年度は職場全員の関与度を高めるため、メンバーから改善アクションを無記名で提案できる「アイデアボード」の活用を推奨し、より効果的な活動へと深化させています。また、これまでの調査結果より、キャリアに関する議論や業務に対するフィードバックが不足していることが明らかとなったため、2023年度にキャリア面談のすすめ方に関するe-ラーニングを導入し、所属長が部下のキャリアにこれまで以上に寄り添うように面談実施を推奨しています。さらに、メンバーの主体性を引き出すためのフォロワーシップ研修には所属長を中心とした113名が参加し、リーダーシップの変化への気付きを得ました。
2024年度の調査結果は多くの項目が昨年度から横ばいでしたが、エンゲージメント向上を目指し、粘り強く改善活動を継続していきます。
(3)リスク管理
人財獲得競争の激化により優秀人財を雇用できないことや「多様な人財一人ひとりの活躍」と「社員が能力発揮できる組織」が実現できないことによる人財の流出、組織力の低下などがリスクと考えています。これらのリスクに対して中期経営計画に掲げた「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進」及び「社員が活き活きと働く職場の実現」における目標を中心に取り組みをすすめ、サステナビリティ委員会にて進捗を管理しています。
(4)指標及び目標
当社グループでは、リスクマネジメントに関する基本方針や管理体制を定める「キッコーマングループリスクマネジメント規程」に基づき、グループ全体のリスクマネジメントを推進しております。CEOが議長を務めるグループ経営会議でグループのリスクについて分析・検討を定期的に行っており、リスクの評価と選定については、社内外の経営環境に及ぼす変化を幅広く捉え今後リスクと成り得る事案を洗い出し、影響度と発生可能性の2つの視点から重要度を評価することで、優先順位をつけ、リスクへの対応を図っております。
また、食品企業としての基本機能である、商品の安定供給と安全性の確保に関するリスクに対しては、それぞれ委員会を設けております。商品の安定供給については、危機管理委員会を設置し、事故・災害等のグループに影響を及ぼす危機発生時に適切かつ迅速に対処を行っております。商品の安全性については、キッコーマングループ品質方針を定め、グループ主要製造会社に品質保証担当部門を設置するとともに、グループ横断の委員で構成される品質保証委員会を開催し、安全性、法令の順守、社会的公正性の確保を図っております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。これらのうち、本年度において、影響度と発生可能性を勘案して重要度「大」と評価したリスクは、(1)「社会経済環境」に関するリスクについては、「自然災害等」、「原材料市況の変動」、(2)「事業環境」に関するリスクについては、「競争環境の変化」、「サステナビリティ」、(3)「事業運営」に関するリスクについては、「情報システム及び情報セキュリティ」、「人財」であります。
なお、本項に記載の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月20日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)「社会経済環境」に関するリスク
① 自然災害等
当社グループは、日本を始め、米州、欧州、アジアにおいて、現地生産を基本に生産拠点を各地に設置しております。不測の事態に備えた事業継続計画(BCP)を策定しており、適宜、訓練及び見直しを行っております。しかしながら、地震、ハリケーン、干ばつ、集中豪雨等の自然災害、大規模な事故等で、生産停止、又はサプライチェーンの分断等の予想を超えた事態が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 原材料市況の変動
当社グループは、主力製品のしょうゆや豆乳等に使用される大豆、小麦等の国際商品市況、及び原油価格の変動等の影響を予算立案の際におりこみ、月次単位で影響額の把握・対応を行っております。中期経営計画についても、原材料やユーティリティの高騰の影響を検討し、計画を策定しております。しかしながら、地政学リスク等の影響により、それらの前提を越えた価格の高騰や、異常気象、冷夏、暖冬等の気候変動による生産量不足等が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 社会的・経済的混乱
当社グループは、長期ビジョンである「グローバルビジョン2030」に基づき、日本を始め、米州、欧州、アジア等、グローバルな事業展開を行っており、地域経済の変動に対するリスクの分散を図っております。しかしながら、世界的な疫病の流行や政治動向及び展開地域における政変、テロ、軍事的衝突等の発生等により、急激な市場環境の変化、あるいは社会や経済に大きな混乱が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)「事業環境」に関するリスク
① 競争環境の変化
当社グループは、社会、消費者、競合等の動向を捉えた上で、中長期の経営計画を策定しております。また、研究開発体制の整備及び全社的なDXの取り組みを進めるなど、技術革新に努めております。しかしながら、中期的な消費者の価値観や嗜好の変化、新たな競争相手の出現、競合品の飛躍的な品質の向上、情報技術の革新等による急激な環境変化が起こった場合、当社グループの提供する商品及びサービスに対する需要が低下し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② サステナビリティ
当社グループは、事業活動を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、社会課題を解決する中で事業機会を見つけていくことにより企業の社会的責任を果たしていきたいと考えております。そのために「地球環境」「食と健康」「人と社会」の3つを重要分野と定め、「サステナビリティ委員会」が全体を統括し、取り組みを進めております。
「地球環境」については、長期環境ビジョンに基づき、環境課題への対応を行っています。CO2排出量及び水使用原単位の削減や、環境配慮型容器の展開を進めることによるプラスチックの削減を進めます。また、当社グループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明しております。TCFD提言に基づき、気候変動が事業に与えるリスク及び機会を評価し、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について開示を進めてまいります。
気候変動 | https://www.kikkoman.com/jp/csr/environment/climate-change.html
「食と健康」については、「こころをこめたおいしさで、地球を食のよろこびで満たします。」という「キッコーマンの約束」に込めた想いを実践してまいります。
キッコーマンの約束 | https://www.kikkoman.com/jp/corporate/brand/promise.html
「人と社会」については、「キッコーマングループ人権方針」に基づき、人権デューデリジェンスを推進するとともに、社内教育の充実も図ってまいります。
人権の尊重 | https://www.kikkoman.com/jp/csr/management/humanrights.html
また、当社グループにおける「地球環境」「食と健康」「人と社会」の3つの重要分野に関する取り組みは、コーポレートレポートに開示しております。
https://www.kikkoman.com/jp/csr/report/
しかしながら、社会課題への国際的な関心が高まる中で、これらの課題への対応が十分でなかった場合には、企業活動への制約が生じる、又は、社会的信頼を喪失することにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)「事業運営」に関するリスク
① コンプライアンス
a.コンプライアンス
当社グループは、国内において食品衛生法、製造物責任法、独占禁止法等の法的規制を受けております。また、事業を展開する各国において、当該国の法的規制を受けております。当社グループは、行動規範を定め、法令順守のための研修等による周知・徹底を図るとともに、各業務のプロセスにおける内部統制の整備・運用を行っております。しかしながら、法規制の変更、強化等により、従来の取引形態、製品規格などの継続が難しくなった場合、あるいは法令等の違反や社会的要請に反した行動が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
b.知的財産権・著作権侵害
当社グループは、グループ内で開発した技術については、必要に応じて、特許権、実用新案権、商標権等の産業財産権を取得しております。これらは経営上多くのメリットがある重要な経営資源と考えており、製品の製造法に関して他社の特許に抵触しないかの確認を含め、専門部門による管理を徹底しております。しかしながら、他社が類似するもの、若しくは当社グループより優れた技術を開発した場合や、他社との間で知的財産権侵害に関する紛争等が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 情報システム及び情報セキュリティ
当社グループは、開発・生産・物流・販売等の業務を担うシステムや、グループ経営及び法人・個人に関する重要情報を保持しており、保守・保全の対策を講じるとともに、情報管理体制の徹底に努めております。しかしながら、停電、災害、ソフトウェアや機器の欠陥、コンピュータウイルスの感染、不正アクセス等予想の範囲を超える出来事により、システム障害や情報漏洩、改ざん等の被害が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 食の安全性
当社グループでは、安全で高品質の商品を安定的に供給することを基本的な使命と考え、品質方針を定め、品質保証体制及び品質管理体制を強化し取り組んでおります。しかしながら、偶発的な事由によるものを含めて製品事故が発生し、当社グループの取り組みの範囲を超えた事象が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 人財
当社グループでは、設備投資や業務効率化等により労働生産性向上を図るとともに、各国及び各職種において高度な専門性を有した人財の確保・育成に努めております。しかしながら、労働人口の減少や人件費の高騰により、必要とする人財の確保ができない場合には、業務の遂行及び事業展開に支障をきたし、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 財務
a.為替変動
当社グループは、為替変動等のリスクを織り込み中期計画、予算、及び業績予想を作成しております。しかしながら、予想の範囲を超える為替変動により外貨建てで調達している原材料及び商品の急激な高騰や、海外子会社の経営成績の円換算額の表面上の減少等が生じた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
b.減損会計
当社グループは、意思決定ガイドラインを定め、新規事業、設備投資、M&A等のうち一定水準以上の投資を行う場合は、投資対効果等の検討を踏まえた上で取締役会決議としております。しかしながら、当該案件の意思決定時に期待していた収益や効果が実現できない場合には、減損会計の適用を受けることになり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、IFRSを適用しており、事業の恒常的な業績や将来の見通しを把握する利益指標として「事業利益」を導入しております。当該「事業利益」は、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した段階利益です。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、一部の地域において弱さがみられるものの、全体的には持ち直しております。
そのような状況の中で、当社グループの売上は、国内については、食料品製造・販売事業全体で前年同期を上回りました。海外については、食料品製造・販売及び食料品卸売事業ともに、前年同期の売上を上回りました。
この結果、当連結会計年度の連結グループの売上収益は7,089億7千9百万円(前年同期比107.3%)、事業利益は772億7千5百万円(前年同期比105.3%)、営業利益は736億9千8百万円(前年同期比110.4%)、税引前利益は837億5千4百万円(前年同期比110.8%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は616億9千5百万円(前年同期比109.3%)となりました。
a.財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ115億3千7百万円増加し、6,794億1千4百万円となりました。
当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ62億5千7百万円減少し、1,633億6千4百万円となりました。
当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末に比べ177億9千4百万円増加し、5,160億4千9百万円となりました。
b.経営成績
<セグメントの業績の概要>
セグメントの業績の概要は次のとおりであります。
国内における売上の概要は次のとおりであります。
(国内 食料品製造・販売事業)
当事業は、しょうゆ部門、つゆ・たれ・デルモンテ調味料等の食品部門、豆乳飲料・デルモンテ飲料等の飲料部門、みりん・ワイン等の酒類部門からなり、国内において当該商品の製造・販売を手がけております。各部門の売上の概要は次のとおりであります。
■しょうゆ部門
しょうゆは、家庭用分野では、「こいくちしょうゆ」などのペットボトル品は前年同期を下回りました。テレビ宣伝を中心とした商品の付加価値を伝えるマーケティング施策等を継続することにより「いつでも新鮮」シリーズは前年同期を上回りました。その結果、家庭用分野全体として前年同期を上回りました。加工・業務用分野は、外食市場の回復に加えて中食市場が成長し、前年同期を上回りました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。
■食品部門
つゆ類は、「濃いだし 本つゆ」などが順調に推移し、全体として前年同期を上回りました。たれ類は、主力商品である「わが家は焼肉屋さん」シリーズが堅調に推移し、前年同期を上回りました。「うちのごはん」は、前年同期を下回りました。デルモンテ調味料は、前年同期を上回りました。また、デルモンテ調味料は2024年4月、加工穀類、すりおろしシリーズは2025年3月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行いました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。
■飲料部門
豆乳飲料は、飲用だけでなく調理用として豆乳を使う消費者が増えている中で、積極的な広告宣伝活動や店頭販促の実施により、1L容器や200ml容器商品の売上が前年同期を上回り、全体として前年同期を上回りました。デルモンテ飲料は、トマトジュースが堅調に推移し、全体として前年同期を上回りました。また、デルモンテ飲料は2024年4月、ジュース類は2025年3月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行いました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。
■酒類部門
本みりんは、家庭用分野では、「米麹こだわり仕込み本みりん」を中心とした、付加価値商品が堅調に推移し、前年同期を上回りました。加工・業務用分野も外食店を中心に需要が回復したため、前年同期を上回りました。ワインは前年同期の売上を下回りました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。
以上の結果、国内 食料品製造・販売事業の売上収益は1,542億9千6百万円(前年同期比104.3%)、事業利益は85億2千7百万円(前年同期比90.0%)と、増収減益となりました。
(国内 その他事業)
当事業は、臨床診断用酵素・衛生検査薬、ヒアルロン酸等の製造・販売、不動産賃貸及び運送事業、グループ会社内への間接業務の提供等を行っております。
衛生検査薬は、前年同期の売上を上回りました。運送事業は、前年同期並みになりました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。
この結果、国内 その他事業の売上収益は215億6千6百万円(前年同期比101.6%)、事業利益は11億7千3百万円(前年同期比127.7%)と、増収増益となりました。
海外における売上の概要は次のとおりであります。
(海外 食料品製造・販売事業)
当事業は、しょうゆ部門、デルモンテ部門、その他食料品部門からなり、海外において当該商品の製造・販売を手がけております。各部門の売上の概要は次のとおりであります。
■しょうゆ部門
北米市場においては、家庭用分野では、主力商品であるしょうゆに加え、しょうゆをベースとした調味料などの拡充に引き続き力を入れており、当社のブランド力を活かした事業展開を行ってまいりました。また、加工・業務用分野では顧客のニーズに合わせたきめ細かな対応をし、事業の拡大を図りました。この結果、前年同期の売上を上回りました。
欧州市場においては、主要市場であるドイツ、イギリス、イタリア、オランダなどで前年を上回り、全体では前年同期の売上を上回りました。
アジア・オセアニア市場においては、タイ、インドネシアなどで売上を伸ばし、全体では前年同期の売上を上回りました。
この結果、部門全体では前年同期の売上を上回りました。
■デルモンテ部門
当部門は、アジア・オセアニア地域で、フルーツ缶詰・コーン製品、トマトケチャップ等を製造・販売しております。
部門全体では前年同期の売上を上回りました。
■その他食料品部門
当部門は、主に北米地域において、健康食品を製造・販売しておりましたが、2023年6月30日にALLERGY RESEARCH GROUP LLCの出資持分の全部を譲渡し、2023年7月31日にCOUNTRY LIFE, LLCの出資持分の全部を譲渡いたしました。
部門全体では出資持分譲渡の影響もあり、前年同期の売上を下回りました。
以上の結果、海外 食料品製造・販売事業の売上収益は1,671億7千5百万円(前年同期比108.4%)、事業利益は398億5千1百万円(前年同期比112.4%)と、増収増益となりました。
(海外 食料品卸売事業)
当事業は、国内外において、東洋食品等を仕入れ、販売しております。
北米、欧州、アジア・オセアニアとも順調に売上を伸ばしました。
この結果、卸売事業全体では、前年同期の売上を上回りました。
この結果、海外 食料品卸売事業の売上収益は4,075億2千4百万円(前年同期比108.7%)、事業利益は304億3千9百万円(前年同期比101.2%)と、増収増益となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ129億7千5百万円減少し、1,061億8千4百万円となりました。
当連結会計年度における活動ごとのキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、739億7千8百万円の収入となり、前連結会計年度に比べ68億2千9百万円収入減でありました。これは主に、税引前利益が増加したものの、その他営業キャッシュ・フローが減少したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、384億5千6百万円の支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、460億8千6百万円の支出となりました。これは主に、配当金の支払、自己株式の取得による支出があったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
国内 食料品製造・販売 |
162,722 |
103.5 |
|
国内 その他 |
6,087 |
95.5 |
|
海外 食料品製造・販売 |
152,922 |
107.7 |
|
合計 |
321,732 |
105.3 |
(注)金額は販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
b.受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社)は見込み生産を行っているため、該当事項はありません。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
国内 食料品製造・販売 |
150,113 |
103.8 |
|
国内 その他 |
7,424 |
95.1 |
|
海外 食料品製造・販売 |
144,031 |
107.9 |
|
海外 食料品卸売 |
407,410 |
108.7 |
|
合計 |
708,979 |
107.3 |
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
1)経営成績等
(a)経営成績の分析
(業績概要)
当連結会計年度の当社グループの業績は、国内においては、しょうゆ、食品、飲料、酒類が堅調に推移し、増収となりました。利益面では、しょうゆ、食品、飲料、酒類の増収による増益効果があったものの、固定費等の増加や原材料等の高騰の影響により、減益となりました。海外においては、食料品製造・販売及び食料品卸売事業がともに好調に推移したことにより、増収増益となりました。この結果、売上収益は前年同期に比べ481億4千3百万円増収の7,089億7千9百万円(前年同期比107.3%)、事業利益は前年同期に比べ38億7千3百万円増益の772億7千5百万円(前年同期比105.3%)、営業利益は前年同期に比べ69億6千4百万円増益の736億9千8百万円(前年同期比110.4%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に比べ52億5千3百万円増益の616億9千5百万円(前年同期比109.3%)となりました。
(売上収益)
当連結会計年度の当社グループの売上収益は、前年同期に比べ481億4千3百万円増収の7,089億7千9百万円(前年同期比107.3%)となりました。
ⅰ.国内 食料品製造・販売事業
しょうゆ部門は、家庭用分野では、「こいくちしょうゆ」などのペットボトル品は前年同期を下回りました。テレビ宣伝を中心とした商品の付加価値を伝えるマーケティング施策等を継続することにより「いつでも新鮮」シリーズは前年同期を上回りました。その結果、家庭用分野全体として前年同期を上回りました。加工・業務用分野は、外食市場の回復に加えて中食市場が成長し、前年同期を上回りました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。
食品部門は、つゆ類は、「濃いだし 本つゆ」などが順調に推移し、全体として前年同期を上回りました。たれ類は、主力商品である「わが家は焼肉屋さん」シリーズが堅調に推移し、前年同期を上回りました。「うちのごはん」は、前年同期を下回りました。デルモンテ調味料は、前年同期を上回りました。また、デルモンテ調味料は2024年4月、加工穀類、すりおろしシリーズは2025年3月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行いました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。
飲料部門では、豆乳飲料は、飲用だけでなく調理用として豆乳を使う消費者が増えている中で、積極的な広告宣伝活動や店頭販促の実施により、1L容器や200ml容器商品の売上が前年同期を上回り、全体として前年同期を上回りました。デルモンテ飲料は、トマトジュースが堅調に推移し、全体として前年同期を上回りました。また、デルモンテ飲料は2024年4月、ジュース類は2025年3月に原材料価格高騰等を背景とした価格改定を行いました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。
酒類部門では、本みりんは、家庭用分野では、「米麹こだわり仕込み本みりん」を中心とした、付加価値商品が堅調に推移し、前年同期を上回りました。加工・業務用分野も外食店を中心に需要が回復したため、前年同期を上回りました。ワインは前年同期の売上を下回りました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。
この結果、前年同期に比べ63億2千6百万円増収の1,542億9千6百万円(前年同期比104.3%)となりました。
ⅱ.国内 その他事業
衛生検査薬は、前年同期の売上を上回りました。運送事業は、前年同期並みになりました。この結果、部門全体としては前年同期の売上を上回りました。
この結果、前年同期に比べ3億4千6百万円増収の215億6千6百万円(前年同期比101.6%)となりました。
ⅲ.海外 食料品製造・販売事業
しょうゆ部門は、北米市場においては、家庭用分野では、主力商品であるしょうゆに加え、しょうゆをベースとした調味料などの拡充に引き続き力を入れており、当社のブランド力を活かした事業展開を行ってまいりました。また、加工・業務用分野では顧客のニーズに合わせたきめ細かな対応をし、事業の拡大を図りました。この結果、前年同期の売上を上回りました。欧州市場においては、主要市場であるドイツ、イギリス、イタリア、オランダなどで前年を上回り、全体では前年同期の売上を上回りました。アジア・オセアニア市場においては、タイ、インドネシアなどで売上を伸ばし、全体では前年同期の売上を上回りました。
デルモンテ部門は、部門全体で前年同期の売上を上回りました。その他食料品部門は、部門全体では出資持分譲渡の影響もあり、前年同期の売上を下回りました。
この結果、前年同期に比べ129億1千5百万円増収の1,671億7千5百万円(前年同期比108.4%)となりました。
ⅳ.海外 食料品卸売事業
北米、欧州、アジア・オセアニアとも順調に売上を伸ばしました。この結果、卸売事業全体では、前年同期の売上を上回りました。
この結果、前年同期に比べ325億1百万円増収の4,075億2千4百万円(前年同期比108.7%)となりました。
(事業利益)
当連結会計年度の当社グループの事業利益は、前年同期に比べ38億7千3百万円増益の772億7千5百万円(前年同期比105.3%)となりました。
ⅰ.国内 食料品製造・販売事業
しょうゆ部門、食品部門、酒類部門は前年同期を下回ったものの、飲料部門が前年同期を上回りました。
この結果、国内 食料品製造・販売事業の事業利益は、前年同期に比べ9億4千7百万円減益の85億2千7百万円(前年同期比90.0%)となりました。
ⅱ.国内 その他事業
国内 その他事業の事業利益は、前年同期に比べ2億5千4百万円増益の11億7千3百万円(前年同期比127.7%)となりました。
ⅲ.海外 食料品製造・販売事業
しょうゆ部門は、北米、欧州、アジア・オセアニア市場において堅調に推移しました。デルモンテ部門は前年同期を上回りました。その他食品部門は出資持分譲渡の影響もあり、前年同期を下回りました。
この結果、海外 食料品製造・販売事業の事業利益は、前年同期に比べ43億8千3百万円増益の398億5千1百万円(前年同期比112.4%)となりました。
ⅳ.海外 食料品卸売事業
北米市場において堅調に推移し、前年同期を上回りました。欧州、アジア・オセアニア市場は前年同期を下回りました。
この結果、海外 食料品卸売事業の事業利益は、前年同期に比べ3億5千1百万円増益の304億3千9百万円(前年同期比101.2%)となりました。
(営業利益)
当連結会計年度のその他の収益及びその他の費用は、前年同期に比べ30億9千1百万円の増収となりました。この結果、当連結会計年度の営業利益は、前年同期に比べ69億6千4百万円増益の736億9千8百万円(前年同期比110.4%)となりました。
(親会社の所有者に帰属する当期利益)
当連結会計年度の金融収益及び金融費用は、公正価値評価益の増加等により前年同期に比べ10億1千4百万円の増収となりました。この結果、税引前利益は、前年同期に比べ81億4千9百万円増益の837億5千4百万円(前年同期比110.8%)となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に比べ52億5千3百万円増益の616億9千5百万円(前年同期比109.3%)となりました。また、基本的1株当たり当期利益は、前年同期に比べ5.80円増加の64.99円となりました。
(b)財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は、3,348億4千9百万円となり、前連結会計年度末に比べ76億3千3百万円減少いたしました。これは主に、棚卸資産が増加したものの、現金及び現金同等物が減少したことによるものであります。非流動資産は、3,445億6千4百万円となり、前連結会計年度末に比べ191億7千万円増加いたしました。これは主に、有形固定資産が増加したことによるものであります。
この結果、資産は、6,794億1千4百万円となり、前連結会計年度末に比べ115億3千7百万円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は、880億5千1百万円となり、前連結会計年度末に比べ70億1千9百万円減少いたしました。これは主に、営業債務及びその他の債務が減少したことによるものであります。非流動負債は、753億1千2百万円となり、前連結会計年度末に比べ7億6千2百万円増加いたしました。これは主に、リース負債が減少したものの、繰延税金負債が増加したことによるものであります。
この結果、負債は、1,633億6千4百万円となり、前連結会計年度末に比べ62億5千7百万円減少いたしました。
(資本)
当連結会計年度末における資本は、5,160億4千9百万円となり、前連結会計年度末に比べ177億9千4百万円増加いたしました。これは主に、自己株式の取得により減少したものの、利益剰余金が増加したことによるものであります。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は74.8%(前連結会計年度末は73.6%)となりました。
(c)キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
2)経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営に影響を与える大きな要因としては、市場環境の変化、原材料市況の変動、為替レートの変動、食の安全性に関わる問題等があります。
市場環境の変化については、景気動向の悪化や消費者の嗜好・価値観の変化、新たな競争相手の出現等によって、当社グループの提供する商品及びサービスに対する需要が低下した場合には、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。こうした中、当社グループは、グローバル企業である強みを活かし、事業及び展開地域を多様化することによって、特定地域及び特定事業の変動が全体に及ぼす影響を限定的にできるような体制を強化しております。また、当社グループ各社の業績を月次で把握しており、業績に大きな変化があった場合には原因を分析し、迅速に対応ができるような体制も構築しております。
原材料市況の変動については、主力製品のしょうゆに使用される大豆、小麦等は国際商品市況の影響を受け、また原油価格の変動は包装資材であるペットボトル等や商品の製造経費、運送費に影響を与えることから、原材料市況の変動が経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。こうした中、当社グループは、業績の把握及び予算の立案時等において、原材料費変動の影響についての分析及び検討を行い、必要な対応策を講じる体制を構築しております。また、大豆、小麦に関しては、グループ会社間で情報交換を行い、相場変動による影響を低減しております。
為替レートの変動については、当社グループは連結財務諸表作成のために在外子会社等の財務諸表を円貨に換算しており、また商品・サービスの提供及び原材料・仕入商品の調達を外貨建てで行っていることなどから、為替レートの変動が経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。こうした中、当社グループは、業績の把握及び予算立案時等において、為替レートの分析及び検討を行い、必要な対応策を講じる体制を構築しております。また、特に影響の大きい主要原材料等については、為替予約を利用してリスクヘッジすることにより、その影響を低減するための対策を講じております。
食の安全性に関わる問題については、当社グループでは、安全で高品質の商品を安定的に供給することを基本的な使命と考え、品質保証体制及び品質管理体制の強化に取り組んでおりますが、偶発的な事由によるものを含めて製品事故が発生した場合や当社グループの取り組みの範囲を超えた事象が発生した場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。こうした中、当社グループでは、キッコーマングループ品質方針を定め、グループ主要製造会社に品質保証担当部門を設置するとともに、グループ横断の委員で構成される品質保証委員会を開催し、国内外の安全性、法令の順守、社会的公平性の確保を図る体制を構築しております。
3)資本の財源及び資金の流動性
(a)資金需要
当社グループの資金需要の主なものは、事業活動における運転資金及び設備資金等であります。運転資金需要のうち主なものは、製品の生産に必要な原材料等の仕入や商品の仕入のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。また設備資金需要としては、生産設備への投資に加え、情報処理の為の無形資産投資等があります。
(b)財政政策
当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、内部資金の活用及び金融機関からの借入と社債の発行により資金調達を行っており、運転資金及び設備資金につきましては、国内、主要な海外子会社のものを含め当社において一元管理し、当社グループ全体の有利子負債の削減を図っております。また、当社グループは国内1社の格付機関から格付を取得し、本報告書提出時点において、格付投資情報センター:「AA-」となっており、また金融機関には十分な借入枠を所有していることから、当社グループの事業の維持拡大、運営に必要な運転資金、設備資金の調達は今後も可能であると考えております。
4)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
5)経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
6)経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
(1)商標権の使用許諾を受けている契約
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契約会社名 |
契約締結先 |
国名 |
契約内容 |
契約期間 |
対価 |
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キッコーマン㈱(当社) |
Del Monte Corporation |
米国 |
日本及びアジア・太平洋地域(除くフィリピン)におけるデルモンテ商標の加工食品及び非アルコール飲料分野での製造・販売等にかかわる永久専用使用権の取得 |
1990年1月9日から 永久 |
109,650千米ドル取得時一括払 以後無償 |
(2)技術援助等を与えている契約
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契約会社名 |
契約締結先 |
国名 |
契約内容 |
契約期間 |
対価 |
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キッコーマン㈱(当社) |
Lotte Chilsung Beverage Co.,Ltd. |
韓国 |
韓国におけるデルモンテ飲料に対する技術援助とデルモンテ商標の使用許諾 |
1993年1月1日から 5年間 以後5年毎に更新 |
販売高の一定率 |
(3)受託販売契約
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契約会社名 |
契約締結先 |
契約内容 |
契約期間 |
対価 |
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キッコーマン㈱(当社) |
ヒゲタ醤油㈱ |
ヒゲタ印製品の販売業務の受託 |
1966年8月から毎年 更新 |
販売高の一定率 |
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キッコーマン食品㈱ (連結子会社) |
同上 |
同上 |
2009年10月から毎年 更新 |
同上 |
当社グループにおいて、事業展開及び安全性に関わる基盤研究・技術開発は、キッコーマン㈱研究開発本部を中心に行っております。当社グループの事業領域である「食と健康」を主な研究対象領域とし、しょうゆ醸造のほか、食品、バイオの研究体制を整備しています。国内外の研究機関との連携を図りつつ、将来の商品開発の軸となる基礎研究をはじめとする幅広い研究開発を行っています。またアジア・欧州・米国においても研究開発を行っています。各事業会社においては、主にそれぞれの会社の事業に関わる商品開発を行っており、しょうゆ製造に関わる技術開発、「食と健康」の分野で消費者のニーズに応える独創的な新商品の開発、容器の開発、品質向上をめざした加工技術の開発等を鋭意進めております。
当社グループの当連結会計年度の研究開発費は、国内及び海外食料品製造・販売事業と国内その他事業のバイオケミカル分野の研究開発に関わるものであり、各セグメント別の研究開発活動は次のとおりであります。また、当連結会計年度の研究開発に係る費用の総額は
(国内及び海外 食料品製造・販売事業)
しょうゆ部門では、「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」のリニューアル、並びに加工業務用で新商品開発を行ってまいりました。あわせて、しょうゆの品質向上と製造における効率化をめざして、醸造工程に関わる技術開発を進めてまいりました。
食品部門では、焼肉のたれ、具入りめんつゆ「具麺」シリーズ、「うちのごはん」シリーズ、加工業務用調味料などで新商品開発を行ってまいりました。デルモンテ調味料では、簡単にトマトメニューが作れる「パットマ!トマトおかずソース」や、ケチャップ等のトマト調味料、加工業務用向けケチャップ、ソースなどの新商品開発を行ってまいりました。
飲料部門では、栄養成分を訴求した「豆乳+カルシウム」、「豆乳+鉄分」の開発を行ってまいりました。また、市場で伸長している無調整豆乳カテゴリーの新機軸商品として「豆乳一丁」を開発したほか、当社グループの豆乳類の強みであるフレーバー展開で新たに国内向け9品、海外向け2品の開発を行ってまいりました。デルモンテ飲料では、パウチ型の新感覚フルーツ「ピュレフルーツ」シリーズとして新たに2品とゼリー飲料シリーズとして「鉄分リッチ 芳醇グレープミックスゼリー」を開発しました。また、「リッチ」シリーズなどの新商品開発を行ってまいりました。
酒類部門では、みりんやワインなどの製造工程に関わる技術開発に加え、付加価値の高い新商品の開発を行ってまいりました。
(国内 その他事業)
国内その他事業では、バイオケミカル分野において、臨床診断用酵素、衛生検査用キット、医薬用ヒアルロン酸など、「食と健康」に関係する産業で使用する製品の開発などを引き続き行ってまいりました。臨床診断用酵素として、アルカリホスファターゼ「ALP-A」の生産技術開発を行うなど、新規酵素の開発を進めてまいりました。食品工場などで検査に活用されている簡易培地「Easy Plate」シリーズの国際認証取得を進めており、当連結会計年度は、真菌(カビ・酵母)数測定用「Easy Plate YM-R」が、「MicroVal認証」、並びに「NordVal認証」を取得しました。また、新たな化粧品原料の戦略製品としてセラミドの増産体制構築に向けた技術開発を行いました。