味の素グループの経営哲学とビジョン
コロナ禍を経て、長期的には人々の価値観を大きく変えていくような状況下において、当社は分断ではなく融和の重要性を強く感じています。世界には国、人種、貧富等により、様々な格差がありますが、この数年間でさらに差が広がり、分断・対立の度合いが顕著になってきています。この厳しい現実を直視したうえで乗り越えていくためには、分断・対立を煽る二者択一ではなく、融和の精神が必要です。
味の素グループは1909年の創業以来、融和の会社です。世界で初めて、アミノ酸のグルタミン酸ナトリウムが「うま味」の成分であることを発見した池田菊苗博士と、実業家の二代鈴木三郎助が出会い、「日本人の栄養状況を改善したい」という研究者の志と起業家精神が共存して、味の素グループはスタートしました。この社会価値と経済価値の両立の精神を、私たちはASV(Ajinomoto Group Shared Value)として今に引き継いでいます。さらに二人は、「おいしさか栄養か」ではなく、おいしく食べることも栄養も両方重要だという、明確な融和のビジョンを持っていました。二人の想いは、私たちが大切にしている“Eat Well, Live Well.”の原点であり、存在意義でもあるといえます。そして、融和の精神で「食と健康の課題解決」に取り組み、豊かな社会と明るい未来に貢献してまいります。
ASV経営は、事業を通じて社会価値と経済価値の共創を目指す経営です。2020年、味の素グループは「ASV経営の進化」を社内外に誓約するため、2030年に目指す姿として「『食と健康の課題解決企業』に生まれ変わる」ことを宣言しました。併せて、2030年までの2つのアウトカムとして「10億人の健康寿命の延伸」と「環境負荷の50%削減」を掲げています。
その実現に向けて、「おいしさ」「食へのアクセス(入手を可能にする)」「地域の食生活」に妥協しない「妥協なき栄養」の姿勢を大事にしています。価値を生み出す核となるのは「アミノ酸のはたらき」です。人のからだの約2割、水を除くと約5割がたんぱく質でできています。そのたんぱく質を構成しているアミノ酸の研究を、味の素グループは創業以来100年以上にわたって重ねてきました。アミノ酸には、食べ物をおいしくする呈味機能、成長・発育を促す栄養機能、体調を整える生理機能等、4つの機能があることがわかっています。このアミノ酸の機能を活用して「おいしい減塩」と「たんぱく質摂取促進」に重点的に取り組んでおり、おいしく栄養バランスの良い食事を支援しています。過剰な塩分摂取やたんぱく質等の必須栄養素不足は、栄養に関する世界的な課題です。これらの課題を、うま味をベースとする調味料の世界トップ企業である味の素グループが解決していくことは、アミノ酸関連技術を持つ私たちの強みを活かした社会貢献であると同時に、本業を生かしたオーガニック成長を軌道に乗せる原動力だとも考えています。
また、環境面においては、地域・地球との共生を目指して「気候変動への適応とその緩和」「資源循環型社会の実現」「サステナブル調達(*1)の実現」に重点的に取り組み、それぞれ目標と施策を定めて推進しています。
これらを達成するには、味の素グループだけでなく多様なステークホルダーと協業することが不可欠です。こうした考えのもと味の素グループは、①「食事(栄養)」「からだの健康」「こころの健康」の関係の明確化、②生活習慣病等に至る人びとの様々な食と生活習慣の類型化、③課題解決活動のエコシステム(*2)の確立、に力を注いでおり、現在は2つのエコシステム構築に取り組んでいます。
その1つ目は、アカデミアを中心としたエコシステムです。2020年4月、当社は弘前大学と、健康寿命延伸をテーマとする共同研究講座を開設しました。青森県弘前市が実施している「岩木健康増進プロジェクト」では、2005年から継続的に1,000人の住民の2,000~3,000項目にも及ぶ健康ビッグデータを取得しています。当社は共同研究を通じて、世界でも類を見ない健康ビッグデータの解析と当社の技術を組み合わせ、食事(栄養)と心身の健康の関連を分析し、健康寿命延伸につながる仮説の構築を試みます。
2つ目としては、健康課題解決のためのエコシステムを構築する予定です。2014年から地域協働で取り組み、成果を上げてきた「岩手・減塩プロジェクト」のように、自治体、メディア、流通とのコラボレーションによる実践の機会を増やして、分析・仮説構築と実践・検証のサイクルを回していきます。2020年7月には、当社の減塩技術を使って、うま味とだしを効かせた“おいしい・やさしい・あなたらしい減塩”をコンセプトとする取組み「Smart Salt(スマ塩)」プロジェクトを立ち上げました。日本だけでなく、ベトナムをはじめとする海外にも展開します。「岩手・減塩プロジェクト」でも明らかになったように、付加価値の高い減塩商品の販売増は単価向上にも貢献します。この過程では、味の素グループの長期的な成長が期待できると考えています。
これら2つのエコシステムの輪を連携・連関させ、志を共有できる多くの企業との協業によって大きく広げるとともに、対象エリアも世界に拡大していくことで、2030年までに10億人、さらにもっと多くの人の健康寿命延伸に貢献できると確信しています。
*1 サステナブル調達:環境や社会の持続性に配慮した原料・燃料の調達
*2 エコシステム:商品開発や事業活動で複数の企業・団体と連携すること
中期経営計画の進捗と振り返り
1.1年目の振り返り
2030年の目指す姿から現在を振り返って定めた「2020-2025中期経営計画」がスタートし、1年以上が経過しました。中期経営計画では、資本効率の改善とオーガニック成長への回帰を掲げ、ROIC(投下資本利益率)、オーガニック成長率(非連続成長の影響を除いた売上高成長率)、重点事業売上高比率、従業員エンゲージメントスコア、単価成長率(重量単価の伸長率、海外コンシューマー製品)の5つの財務・非財務の重点KPIを公表しています。これらのKPIに関しては、後述する様々な変革を加速し、2022年度の目標数値以上を目指していきます。2020年度実績と2021年度目標は次のとおりです。
1年目を振り返ると、計画を上回るペースで進んでいることもあれば、課題が明らかになってきていることもあります。順調に進捗しているのは、事業の取捨選択および味の素グループビジョンの従業員との共有です。当社の2021年6月の指名委員会等設置会社への移行や、同年4月からのサステナビリティ諮問会議の設置という、経営の基盤となるコーポレートガバナンス体制、サステナビリティ推進体制の強化も実現されました。一方、デジタルトランスフォーメーション(DX)による全社オペレーション変革および事業モデル変革は、着実に手を打っていますが、実行と成果の刈り取りは2021年度以降になります。
2.デジタルの力による推進
中期経営計画を推進していく上で欠かせないのが、デジタルの力です。例えば、当社は収益に関するマネジメントポリシーを、短期PL経営からROIC(投下資本利益率)とオーガニック成長を重要視する経営へと変更しました。全ての業務がROIC改善に繋がっている道筋をROICツリーとして示し、デジタルの力で事業ごとのKPI実績をリアルタイムに測定・可視化できれば、それまで数字の集計・作表・分析に費やしていた時間を価値創造や課題解決のために充てられます。成果の見える化によりやりがいの向上も期待でき、生産性と従業員エンゲージメントの向上につながります。また、どこに課題の本質があるのか誰が見ても分かるようになると、知恵を結集して適切な対策を講じるまでのスピードが速まります。
現在、管理会計の標準化、運用指針の整備、全グループ会社に共通の事業管理手法としてオペレーショナル・エクセレンス(OE)(*3)の浸透等、社内実装を一歩一歩進めると同時に、デジタル人財の育成に注力しています。
*3 オペレーショナル・エクセレンス(OE):競争優位を生みだすために、個人とチームが共成長しながら顧客起点の問題解決と付加価値創出のために全てのオペレーションを徹底的に磨き上げるという考え方・手法に基づく継続的改善・改革活動
3.企業文化変革の推進
味の素グループは、中期経営計画と並行して企業文化の変革にも挑戦しています。変革には5つのポイントがあり、1つ目は、「ビジョンの一新」です。もっと社会に貢献する企業となるために、昨年、ビジョンを「アミノ酸のはたらきで食習慣や高齢化に伴う食と健康の課題を解決し、人びとのウェルネスを共創します」に改めました。2つ目は、「企業価値の再定義」です。人的資源の価値、社員の価値を高めることが、お客さまへ新しい価値を生み出し、それが結果的に経済価値に繋がる。そのサイクルこそが、企業価値なのだと再定義しました。
3つ目は、「人財育成・開発と組織マネジメントの変革」です。人の力がなくては、新しい顧客価値を生み出すことはできません。顧客と一体となった課題解決を組織・個人の目標とし、従業員が顧客価値向上を通じて企業価値向上に貢献できる仕組みを新たに取り入れました。4つ目は、「収益に関するマネジメントポリシーの変革」です。これまでの短期利益積み上げ型の企業文化から脱却し、長期的な視点で投下資本効率とオーガニック成長を重要視する経営へと転換しました。5つ目は、「事業戦略をつくるプロセスの変革」です。2030年の目指す姿の実現に向けて、市場変化を設定した上で現在を振り返り、3年後・6年後の事業戦略を策定しています。また、一度計画を策定したら、そのまま3年我慢して進めるのではなく、より良いものに変えていくサイクルが大切です。実際に、2020年に作成した3カ年計画の修正を始めており、今後も毎年更新することとしました。
開拓者精神とサステナビリティ経営
1. 創業時のような開拓者精神を取り戻す
企業文化の変革に着手して1年あまり、創業時のような開拓者精神を取り戻すことが、味の素グループの重要な課題です。味の素グループは、2030年までの10億人の健康寿命延伸を掲げていますが、味の素グループ自体も企業としての健康寿命を延ばさなければなりません。新興企業に脅かされることなく成長を続けていくために必要なのが、前例踏襲主義を打ち破る、創業時のような開拓者精神を持つことです。
具体的な施策として、ベンチャーの力を味の素グループに取り入れるため、2020年度、社内起業家を掘り起こし育成を行うプログラム「A-STARTERS」をスタートしました。さらに国内外のベンチャーに投資を行うコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を設立、社外から専門性のある人財の登用等を行い、新たな協業を模索し始めています。世界的なフードテックベンチャーキャピタルのAgFunder Inc.が組成したファンドへの出資、日本のフードテックスタートアップのベースフード(株)との協業、植物肉の開発・生産・販売を手掛ける日本のDAIZ(株)との資本・業務提携等も進んでいます。これらの活動をスピードとスケールをもって手掛けることで、当社の研究開発、既存事業の「深化」と並走する新規分野の「探索(進化)」をともに前進させていきます。
2. 監督・執行の分離を明確化するためのガバナンス体制の改革
「開拓者精神」に伴うのは、健全なリスクテイクです。それを担う執行サイドの監督・支援機能をこれまで以上に強化するため、当社は2021年6月に指名委員会等設置会社へ移行しました。取締役会は、長期の企業価値向上の観点から経営重要事項の方向性を定め、アクセルとブレーキの両面から執行サイドを監督します。取締役会議長は社外取締役の岩田喜美枝氏が務めます。執行サイドは、取締役会から信任を受けた最高経営責任者(CEO)を中心に、取締役会から示された経営の方向性をスピーディーに具現化します。
また、従来は取締役と監査役合わせて14名(社外役員比率43%)でしたが、監査委員を含めた取締役11名の体制としました。今回、第一三共社の元CEOであり、グローバルなヘルスケア産業の経営を知る中山讓治氏が社外取締役に加わりました。これによって社外取締役が取締役の過半(社外役員比率55%)を占める構成になりました。取締役内部に設置した3委員会の委員長も社外取締役が担っています。同時に、それまで37名の執行役員を20名程度の執行役に減らすことで、役割のオーバーラップを減らし責任を明確化、同時に若返りを図りました。
加えて、2021年4月に取締役会の下部機構としてサステナビリティ諮問会議を新設しました。新興国、ミレニアル世代、ESGやインパクト投資、メディア(情報発信)という視点を持つ国内外の有識者が、2050年までの長い期間を視野に入れた様々な課題、方向性を取締役会に提言してくれることを期待しています。経営会議の下部機構として同じく本年4月に設置したサステナビリティ委員会で執行計画を立て、社会の持続性と味の素グループ自体の持続性をあわせて実行するサステナビリティ経営を強化していきます。
環境負荷50%削減への行程表とイノベーション
環境負荷50%削減については、味の素グループの事業活動からの直接排出だけでなく、サプライチェーン全体での負荷低減が重要な課題です。特に、原料については、味の素グループの直接および間接に排出される温室効果ガス総量の半分を占めることからも、持続的な食料生産の観点から再生可能エネルギーの活用等による温室効果ガスの削減、フードロス削減等による食資源の保全、人権、自然環境保護に対する取組みを進めます。
プラスチック廃棄物については、味の素グループ全体で年間約7万トンのプラスチックを使用しています。このうち約3万トンは、既に再生利用可能な素材へ転換してきました。今後、すべて再生利用可能な素材に転換するとともに、回収・分別・再生のリサイクルシステムの社会実装に向け貢献していきます。いずれの課題についても味の素グループだけで達成することは困難であり、国、地域、社会、アカデミア、産業界との連携、協働とイノベーションが重要なポイントです。
イノベーションの一つとして、味の素グループと東京工業大学等との協業によるスタートアップであるつばめBHB社が、画期的な新触媒による世界初のオンサイト型アンモニア合成システムを手掛けています。アミノ酸の発酵生産には大量のアンモニアが副原料として必要ですが、従来の製法では大規模プラントでエネルギーを多量に使用するうえ、輸送・貯蔵にもエネルギーが必要です。この新技術により、工場内で小規模プラントによるアンモニアの内製が可能となり、コストとCO2を削減することができます。さらにアンモニアの原料を化石燃料から再生可能資源へ転換することにより、さらに環境負荷を低減した“グリーンアンモニア”の実現を目指しています。
2021年度に向けて
新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、経済、社会そして個人の生活や価値観にも深刻な影響を及ぼし、先行きは依然として不透明な状況にあります。このコロナ禍により世界全体がこれまで経験したことのない困難に直面している一方、環境への順応と新たな可能性を模索する、新しい生活・行動様式も生まれつつあります。サステナビリティの追求は、ゴールのない旅のようなものです。味の素グループは、ニューノーマルの環境においても、生活に役立つ情報や食の提案を通じて、お客様の日常に寄り添い、明るい未来を応援してまいります。
新型コロナウイルス感染症に関するリスクの認識
一部の国においてはワクチンの接種が進捗しているものの、現時点で新型コロナウイルス感染症の終息時期は依然見通せず、経済の先行きは不透明な状況にあります。このような中、当社は社員の健康、エンゲージメントを尊重しながら、重点事業への集中とDXの加速によって市場環境の変化を適切に捉えるとともに、構造改革と成長回帰に向けた取組みを引き続き進めて参ります。
業績への影響
当社は以下の前提で経営環境を見通しております。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
・当社グループが事業展開をしている各国において、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種完了に少なくとも約半年を要し影響が継続、下期から経済活動等が徐々に正常化へ。
・米国、欧州は収束方向。特に米国経済はいち早く回復の見通し。
・日本やアセアン主要国(除くベトナム)、ブラジルは一進一退の状況が続く。
・各国でワクチン接種完了後も人々の行動制限は続く。
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、重要項目ごとに以下のようなものがありますが、中でも新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)については、現在進行形で極めて重要な経営リスクの1つであると認識しています。
以下は、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ない又は重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。当社グループではこのような経営及び事業リスクを最小化するとともに、これらを機会として活かすための様々な対応及び仕組み作りを行っております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、新型コロナウイルス感染症による当社グループへの影響、及び同感染症に対する当社グループの対応策等に関しては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の 新型コロナウイルス感染症に関するリスクの認識 をご参照ください。
(1) 財務に関わる機会とリスク
(2) マテリアリティ
業績等の概要
当社グループは、IFRSの適用に当たり、投資家、取締役会及び経営会議が各事業の恒常的な業績や将来の見通しを把握すること、取締役会及び経営会議が継続的に事業ポートフォリオを評価することを目的として、「事業利益」という段階利益を導入しております。当該「事業利益」は、「売上高」から「売上原価」、「販売費」、「研究開発費」及び「一般管理費」を控除し、「持分法による損益」を加えたものであり、「その他の営業収益」及び「その他の営業費用」を含まない段階利益です。
当社グループは、タイ国の包装材料製造・販売会社フジエース社の発行済株式総数の51%に相当する当社グループが保有する全株式を、株式会社フジシールインターナショナル等へ譲渡する契約を2020年2月5日に締結し、2020年3月6日に譲渡いたしました。そのため、前連結会計年度における包材事業に関連する損益を、従来より非継続事業に分類している物流事業とあわせ、非継続事業に分類して再表示し、当該非継続事業を継続事業とは区分して表示しております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
2030年の目指す姿に向け中期経営計画の実行を加速
顧客価値(社会価値)創出に対する従業員エンゲージメント向上が経済価値を生む企業価値向上サイクルにより2030年の目指す姿を実現していきます。2020年度は、外食向けビジネスが新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受け、オーガニック成長率はプラスにはいたりませんでしたが、構造改革を着実に進めた結果、ROICは6.9%と2019年度より改善しました。新型コロナウイルス感染症の事業への影響は2021年度も続きますが、コロナ禍においても中期経営計画を上回るスピードで実施してきた経営資源のシフトを確かな成長につなげていくために、ROIC重視とオーガニック成長への回帰に向けた変革を、引き続き財務資本戦略の重点テーマと位置づけ、実行を加速していきます。
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<2020年度業績サマリー> ■売上高:10,714億円(対前年△3%) 新型コロナウイルス感染症のグローバルでの拡大に伴い、主に、調味料・食品および冷凍食品において、内食需要の伸張により家庭用製品の販売が増加した一方、ロックダウン等の影響により引き続き外食用・業務用の販売が減少。
■事業利益:1,131億円(対前年+14%) 化成品の大幅増収、調味料・食品や冷凍食品における家庭用製品の増収効果や製品ミックス改善効果等により増益。
■親会社の所有者に帰属する当期利益:594億円(対前年+215%) 固定資産(遊休資産)の譲渡による固定資産売却益と動物栄養事業の事業構造改革に伴う減損損失等を計上したものの、事業構造改革関連費用は2019年度より縮小。
<2021年度業績予想> ■売上高:11,130億円 ヘルスケア等で減収も、調味料・食品、冷凍食品で増収となり、全体で増収。
■事業利益:1,150億円 ヘルスケア等の重点事業や冷凍食品の増収効果等で、全体で増益。
■親会社の所有者に帰属する当期利益:600億円 FY21の構造改革費用は、約100億円を見込むが、親会社の所有者に帰属する当期利益は増益。
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・2022年3月期 :重点KPI(セグメント別予想)
・「ROICを重視する経営」に向けた取り組み
味の素グループでは、資本コスト(WACC)を上回るROICの維持・改善に向けて、経営と現場が一体となって継続的に取り組んでいます。経営は、「成長性」と「効率性」に二つの軸で経営資源の最適配分を行うことによって継続的な投下資本効率の向上を目指し、現場は自律的なマネジメントに基づき、中長期視点でのROIC向上に努めています。
・事業ポートフォリオマネジメント
各事業を、市場の魅力度と自社の競争優位性から評価された「成長性」と、ハードルレートとROICの対比などで評価された「効率性」の二軸で分析し、資源配分の優先順位付けを行うことにより、オーガニック成長と投下資本効率の改善を果たします。事業ポートフォリオの選別にあたっては、事業ごとのWACCの違いを考慮し、それぞれの事業のROICがWACCを上回るかどうかを基準とします。
2021年度には、経営会議の下部機構として「重点事業グランドデザイン会議」を設けました。重点事業グランドデザイン会議において定期的に事業ポートフォリオ分析を行い、事業区分の判定を実施の上、資源配分の優先順位付けを行います。
・ROICツリー展開
ROICツリー(下図参照)をグループ全体に展開することで、現場主体の自律的なマネジメントに基づく中長期でのROIC改善を目指すとともに、重要なKPIが経営者・現場の双方から可視化されている状態を実現します。ROICツリーでは、「全事業共通ROICツリー」でKPIを管理し、同業他社分析や時系列分析等、事業ポートフォリオの判断につなげていきます。また、「事業・個社ROICツリー」として、各事業のアクションプランに応じた価値向上につながるKPIを事業特性に応じて独自に設定します。これにより、現場主体の自律的なマネジメントに基づくROICの改善活動が、味の素グループ全体の企業価値向上とつながっている状態を実現させます。
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・バランスシートの目指す姿 |
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「ROICを重視した経営」を進めるべく、高い投資効率を維持できる健全なバランスシートを維持してまいります。2020年度においては、事業資産圧縮により約370億円、またリソースアロケーションおよび政策保有株式の売却により約170億円、合計で約540億円のアセットライト化施策を実施しました。収益性の向上による営業CFが改善し、コロ |
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ナ禍におけるリスクへの対応のために現預金残高を増やしたため総資産が増加しましたが、2020-2022年度においては、約1,000億円のアセットライト化施策を進め、総資産の増加を抑えていきます。負債・資本サイドは、2020年度末のネットD/Eレシオは0.44倍となり、中期的にネットD/Eレシオ0.5倍以下にコントロールしていきます。 ※ネットD/Eレシオの算式におけるネット有利子負債の金額は、有利子負債の金額から現金及び現金同等物に0.75を乗じた金額を控除した金額です。 |
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・キャッシュ・フロー計画 |
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2020年度の営業キャッシュ・フローは1,656億円となりました。営業キャッシュ・フローと事業構造改革による資産圧縮を進め、リソースアロケーションによりキャッシュ創出力をさらに高めていきます。2020-2022年度の期間で合計4,000億円以上のキャッシュインを計画しており、重点事業への成長投資と株主還元の充実のために使用していきます。2020-2022年度の株主還元は1,000億円以上を計画しています。 |
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・資金調達リスク、為替リスクへの対応 |
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金融市場の急激な変化に対応し、コロナ禍におけるグループ各社の事業継続をサポートできるよう、連結ベースで十分な手元流動性を確保するとともに各地域内・地域間のキャッシュマネジメントシステムを整備し、グループ内で資金を有効に活用しています。資金調達手段については、社債、コマーシャル・ペーパー、金融機関借入、売上債権流動化等、多様化を図り期日を分散させています。加えて、これらをバックアップする円貨、外貨のコミットメントラインを備えています。 また、為替の急激な変動リスクを回避するため、各国・地域における外貨建ての営業債権・債務、有利子負債等の確定した取引については、原則として為替予約をしています。 |
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・株主還元方針 |
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2020-2025中期経営計画のうち、構造改革にあたるフェーズ1の2020-2022年度における収益拡大と資産圧縮を通じて創出するキャッシュ・フローを成長への投資に充当するとともに、1,000億円超の株主還元を行います。今中期経営計画から、配当性向を従来の30%から40%を目途に引き上げ、総還元性向が50%以上となるよう安定的・継続的に株主還元を拡充していきます。 1株当たり当期利益(EPS)の向上と、中長期的に株主資本コストを上回るROICの実現によって企業価値を向上させ、配当込みTOPIXを上回るトータル株主リターン(TSR)を目指します。 |
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(2) 生産、受注及び販売の実績
当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その形態、単位等は必ずしも一様ではなく、また製品のグループ内使用(製品を他のセグメントの原材料として使用)や、受注生産形態をとる製品が少ないため、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績は、「(4) 当連結会計年度の経営成績の分析」における各セグメント業績に関連付けて示しております。
(3) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」に記載しております。この連結財務諸表の作成に当たって必要な見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計方針」及び同「5.重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。
(4) 当連結会計年度の経営成績の分析
当連結会計年度の売上高は、新型コロナウイルス感染症のグローバルでの拡大に伴い、主に、調味料・食品及び冷凍食品において、内食需要の伸張により家庭用製品の販売が増加した一方、外食向け製品は需要の回復傾向がみられるものの、ロックダウン等の影響により引き続き外食用・業務用の販売が減少した結果、前期を285億円下回る1兆714億円(前期比97.4%)となりました。
事業利益は、化成品の大幅な増収による大幅な増益、調味料・食品や冷凍食品における家庭用製品の増収効果や製品ミックス改善効果等による増益に加え、前期にはプロマシドール・ホールディングス社(以下、PH社)の商標権に係る減損損失の計上があったこと等から、前期を138億円上回る1,131億円(前期比114.0%)となりました。
営業利益は、その他の営業収益で固定資産(遊休資産)の譲渡により前期を大幅に上回る固定資産売却益を計上したことに加え、その他の営業費用においても、当期は欧州及び北米の動物栄養事業の事業構造改革に伴う減損損失等を計上したものの、前期は当期を大幅に上回る減損損失の計上があったこと等により、前期を523億円上回る1,011億円(前期比207.3%)となりました。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期を405億円上回る594億円(前期比315.4%)となりました。
当連結会計年度のセグメント別の概況
セグメントごとの業績は、次のとおりです。
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売上高 (億円) |
前期増減 (億円) |
前期比 |
事業利益 (億円) |
前期増減 (億円) |
前期比 |
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調味料・食品 |
6,205 |
△212 |
96.7 |
% |
867 |
51 |
106.3 |
% |
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冷凍食品 |
1,982 |
△129 |
93.9 |
% |
23 |
22 |
- |
% |
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ヘルスケア等 |
2,395 |
78 |
103.4 |
% |
262 |
67 |
134.6 |
% |
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その他 |
131 |
△22 |
85.6 |
% |
△22 |
△2 |
- |
% |
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合計 |
10,714 |
△285 |
97.4 |
% |
1,131 |
138 |
114.0 |
% |
(注)各セグメントの主要製品につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 7.セグメント情報 (1) 報告セグメントの概要」をご参照ください。
① 調味料・食品セグメント
調味料・食品セグメントの売上高は、主に、内食需要の増加により家庭用製品の販売が増加したものの、換算為替影響や外食需要の減少により外食向け製品の販売が減少した結果、前期を212億円下回る6,205億円(前期比96.7%)となりました。事業利益は、外食向け製品の減収影響があったものの、家庭用製品の増収効果や製品ミックス改善効果に加え、前期にPH社の商標権に係る減損損失計上があったこと等により、前期を51億円上回る867億円(前期比106.3%)となりました。
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<主要な変動要因> |
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・調味料は、内食需要増により家庭用製品の販売増も、換算為替影響や外食需要減による海外外食向け製品の販売減により減収。 国内は、家庭用製品の販売好調により増収。 海外は、メニュー用調味料等が大幅増収も、換算為替影響や外食向け製品の販売減により減収。 ・栄養・加工食品は、内食需要増により国内家庭用製品が前期を上回るも、業務用コーヒーの販売減や換算為替影響等により減収。 国内は、家庭用コーヒーやスープが前期を上回るも、業務用コーヒーの販売減等により減収。 海外は、換算為替影響等により減収。 ・ソリューション&イングリディエンツは、外食需要減による国内外食向け製品の販売減や、換算為替影響等により減収。 |
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<主要な変動要因> |
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・調味料は、家庭用製品の増収効果や製品ミックス改善効果等により増益。 国内は、増収効果等により増益。 海外は、換算為替影響あるも、製品ミックス改善効果等により増益。 ・栄養・加工食品は、前期にPH社の商標権に係る減損損失計上があったことや、国内の家庭用主力製品の増収効果等により大幅増益。 国内は、家庭用コーヒー主力製品やスープの増収効果等により増益。 海外は、前期にPH社の商標権に係る減損損失計上があり大幅増益。 ・ソリューション&イングリディエンツは、主に国内外食向け製品の減収影響により減益。 |
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② 冷凍食品セグメント
冷凍食品セグメントの売上高は、主に、内食需要の増加により家庭用製品の販売が増加したものの、外食需要の減少により業務用製品の販売が減少した結果、前期を129億円下回る1,982億円(前期比93.9%)となりました。事業利益は、家庭用製品の増収効果や製品ミックスの改善効果等により大幅な増益となった結果、前期を22億円上回る23億円(前期比-%)となりました。
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<主要な変動要因> |
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・内食需要増により家庭用製品の販売増も、外食需要減による業務用製品の販売減等により減収。 国内は、「ギョーザ」を中心とした家庭用主力製品の販売増も、業務用製品の販売減により減収。 海外は、北米の家庭用製品の販売増も、業務用製品の販売減や換算為替影響等により減収。 |
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<主要な変動要因> |
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・家庭用製品の増収効果や製品ミックス改善効果等により大幅増益。 国内は、家庭用主力製品の増収効果等により増益。 海外は、換算為替影響あるも、家庭用製品の増収効果や製品ミックス改善効果等により大幅増益。 |
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③ ヘルスケア等セグメント
ヘルスケア等セグメントの売上高は、化成品の大幅な増収等により前期を78億円上回る2,395億円(前期比103.4%)となりました。事業利益は、バイオファーマサービスが大幅な減益となったものの、化成品及び動物栄養の大幅な増益にともない、前期を67億円上回る262億円(前期比134.6%)となりました。
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<主要な変動要因> |
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・アミノ酸は、医薬用・食品用アミノ酸の販売増やバイオファーマサービスの換算為替影響等により、全体で増収。 ・化成品は、主に電子材料の販売好調により大幅増収。 ・その他は、スポーツニュートリションの需要減や、動物栄養における販売数量減等により減収。
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<主要な変動要因> |
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・アミノ酸は、医薬用・食品用アミノ酸は大幅増益も、バイオファーマサービスが大幅減益となり、全体で減益。 ・化成品は、大幅増収により大幅増益。 ・その他は、主に動物栄養における販売単価上昇により大幅増益。 |
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④ その他
その他の事業の売上高は前期を22億円下回る131億円(前期比85.6%)となり、事業利益は△22億円となりました。
当連結会計年度の連結損益計算書の段階ごとの概況
① 売上高
売上高は前期を285億円下回る1兆714億円(前期比97.4%)となりました。地域別に見ますと、日本では、前期を138億円下回る4,708億円(前期比97.2%)となりました。海外では、前期を147億円下回る6,005億円(前期比97.6%)となりました。海外の地域別では、アジア、米州及び欧州でそれぞれ2,637億円(前期比99.2%)、2,190億円(前期比93.1%)及び1,177億円(前期比103.1%)となりました。なお、売上高海外比率は56.1%(前期は55.9%)となりました。
② 売上原価、販売費、研究開発費及び一般管理費、持分法による損益
売上原価は、売上高の減少に伴い、前期から309億円減少し、6,652億円(前期比95.6%)となりました。売上原価の売上高に対する比率は、1.2ポイント改善し、62.1%となりました。販売費は、主として新型コロナウイルス感染症の影響による販売促進費や物流費の減少や為替影響により、前期から114億円減少し、1,606億円(前期比93.4%)となりました。研究開発費は、前期から16億円減少し、259億円(前期比93.9%)となりました。一般管理費は、連結子会社の増加等により、前期から53億円増加し、1,078億円(前期比105.2%)となりました。持分法による損益は、13億円の利益(前期は24億円の損失)となりました。
③ 事業利益
事業利益は、前期を138億円上回る1,131億円(前期比114.0%)となりました。地域別に見ますと、日本では484億円(前期比105.3%)、海外では646億円(前期比121.5%)となりました。海外の地域別では、アジア、米州及び欧州でそれぞれ453億円(前期比107.5%)、139億円(前期比110.1%)及び53億円(前期比-%)となりました。なお、事業利益海外比率は57.1%(前期は53.6%)となりました。
セグメント別の事業利益の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 7.セグメント情報」をご参照ください。
④ その他の営業収益(費用)
その他の営業収益は、遊休資産の譲渡による固定資産売却益を計上したこと等により、前期から168億円増加し、244億円(前期比322.7%)となりました。その他の営業費用は、前期において減損損失及び特別転進支援施策関連費用を計上したこと等により、前期から215億円減少し、364億円(前期比62.8%)となりました。
⑤ 営業利益
営業利益は、前期を523億円上回る1,011億円(前期比207.3%)となりました。
⑥ 金融収益(費用)
金融収益は、前期から41億円減少し、39億円(前期比48.6%)となりました。金融費用は、前期から13億円減少し、67億円(前期比83.7%)となりました。
⑦ 親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は前期を405億円上回る594億円(前期比315.4%)となり、1株当たり当期利益は108円36銭(前期は34円37銭)となりました。
(5) 当連結会計年度の連結財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の1兆3,536億円に対して776億円増加し、1兆4,312億円となりました。これは主として、売上債権及びその他の債権等が減少した一方で、現金及び現金同等物や有形固定資産等が増加したことによるものです。
負債合計は、前連結会計年度末の7,615億円に対して18億円増加し、7,634億円となりました。これは主として、有利子負債等が減少した一方で、繰延税金負債や仕入債務及びその他の債務等が増加したことによるものです。なお有利子負債残高は、長期借入金等が増加した一方、1年内償還予定の社債やコマーシャル・ペーパーの減少等により、前連結会計年度末に対して69億円減少し、4,068億円となりました。
資本合計は、その他の資本の構成要素の増加等により、前連結会計年度末に対して757億円増加しました。資本合計から非支配持分を引いた親会社の所有者に帰属する持分は、6,202億円となり、親会社所有者帰属持分比率は43.3%となりました。
セグメントごとの概況は、次のとおりです。
① 調味料・食品セグメント
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の5,193億円に対して436億円増加し、5,629億円となりました。これは主として設備投資等に伴う有形固定資産の増加によるものです。
② 冷凍食品セグメント
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の1,857億円に対して32億円減少し、1,825億円となりました。
③ ヘルスケア等セグメント
当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の2,774億円に対して132億円増加し、2,906億円となりました。これは主として、子会社の新規連結に伴う資産の増加によるものです。
(6) キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度の連結キャッシュ・フローの状況
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(億円) |
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2020年3月期 |
2021年3月期 |
差額 |
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営業活動によるキャッシュ・フロー |
1,148 |
1,656 |
507 |
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投資活動によるキャッシュ・フロー |
△666 |
△662 |
4 |
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財務活動によるキャッシュ・フロー |
△523 |
△603 |
△80 |
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現金及び現金同等物に係る換算差額 |
△79 |
38 |
118 |
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現金及び現金同等物の増減額 |
△120 |
429 |
549 |
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売却目的保有に分類される処分グループに係る 資産に含まれる現金及び現金同等物 |
- |
△29 |
△29 |
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現金及び現金同等物の期末残高 |
1,417 |
1,816 |
399 |
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,656億円の収入(前期は1,148億円の収入)となりました。税引前当期利益が983億円であり、減価償却費及び償却費630億円と、法人所得税の支払額261億円があったこと等によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、662億円の支出(前期は666億円の支出)となりました。有形固定資産の取得による支出768億円と、無形資産の取得による支出91億円があったこと等によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、603億円の支出(前期は523億円の支出)となりました。連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出220億円と、配当金の支払額175億円があったこと等によるものです。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、1,816億円となりました。
(7) 当連結会計年度の資金の流動性及び資金の調達、使途
① 資金の流動性について
当連結会計年度は短期流動性に関し、手元流動性確保のために、コミットメント・ライン、当座貸越枠、コマーシャル・ペーパー発行枠等の調達手段を備えております。
新型コロナウイルス感染症に関するリスクの認識にもとづく資金面での取り組みとして、十分な手元流動性比率の維持と既に設定している主要取引銀行との間のコミットメントラインにより資金の安全性を確保し、加えて、資金流動性リスク等が発生する可能性のある海外連結子会社に対して、当社が緊急貸付枠を設定し、一時的な資金繰りの支援体制を整備しております。
② 資金の調達
当連結会計年度の資金調達は、調達コストとリスク分散の観点による直接金融と間接金融のバランス及び長期と短期の資金調達のバランスを勘案し、金融機関からの借入等による資金調達活動を行いました。
③ 資金の使途
当連結会計年度の資金の使途は、主として事業資金です。
(8) 経営上の目標の達成状況について
経営上の目標の達成状況につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
技術援助を受ける契約等
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契約会社名 |
契約締結先 |
国名 |
契約内容 |
対価 |
契約期間 |
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味の素㈱ 味の素食品㈱ |
コノプコ社 |
アメリカ |
日本国内におけるスープ、ブイヨンその他の食品に係る独占的商標使用権の許諾 |
左記製品販売高の一定率 |
対象商標が日本で有効に登録されている限り |
重要な固定資産の譲渡
当社は、2021年1月29日開催の取締役会決議に基づき、当社の所有する固定資産を譲渡する不動産売買契約を同年2月1日に締結いたしました。
(1)譲渡の理由
当社は、2020-2025中期経営計画において、重点事業に成長投資を集中し、構造改革により非重点事業の割合を縮小するとともに、グループ内のリソースアロケーションを行っていくアセットライト化を推進しており、当該施策の一環として当社の保有する固定資産の一部(遊休資産)を譲渡することといたしました。
(2)譲渡資産の内容
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資産の名称及び所在 |
譲渡益 |
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大阪府高槻市下田部町2丁目7番1号 土地:27,715.42㎡ 建物:21,700.73㎡(延床面積) |
104億円 |
(注)譲渡価額については、譲渡先との守秘義務契約により公表を控えますが、競争入札による適正な価格での譲渡となります。譲渡益は、売却価額から帳簿価額及び譲渡に係る費用等を控除した差額を記載しています。
(3)譲渡先の概要
譲渡先は国内事業法人ですが、譲渡先の意向により詳細につきましては開示を控えます。なお、譲渡先と当社との間には、資本関係、人的関係、取引先関係及び関連当事者について、特記すべき事項はありません。
(4)連結損益へ与える影響
当該固定資産譲渡により、当連結会計年度において、104億円をその他の営業収益に計上いたしました。
(5)日程
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契約締結日 |
2021年2月1日 |
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物件引渡日 |
2021年2月1日 |
子会社の株式譲渡契約
当社は、2021年2月26日開催の取締役会決議に基づき、当社子会社である味の素アニマル・ニュートリション・グループ株式会社を通じて、同社が100%保有する、欧州飼料用アミノ酸会社である味の素アニマル・ニュートリション・ヨーロッパ社の株式の全てを、発酵技術の研究開発に強みを持つフランスの事業会社METabolic EXplorer社に譲渡する契約を同年4月14日に締結いたしました。
(1)異動する子会社の概要
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名称 |
味の素アニマル・ニュートリション・ヨーロッパ社 |
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所在地 |
32 rue Guersant,75017 Paris,France |
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代表者の役職・氏名 |
社長 David Demeestere |
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事業内容 |
飼料用アミノ酸及び副産物の製造、販売 |
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設立年 |
1974年8月14日 |
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大株主及び持株比率 |
味の素アニマル・ニュートリション・グループ㈱ 100% |
(2)株式譲渡の相手先の概要
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名称 |
METabolic EXplorer社 |
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所在地 |
Biopôle Clermont-Limagne, 63360 Saint-Beauzire, France |
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代表者の役職・氏名 |
会長兼CEO Benjamin Gonzalez |
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事業内容 |
化学化合物製造用バイオプロセスの研究・開発 |
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設立年 |
1999年7月15日 |
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大株主及び持株比率 |
Mirova 7.52% Benjamin Gonzalez 5.13% |
(3)譲渡株式数、譲渡価額及び譲渡前後の所有株式数の状況
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異動前の所有株式数 |
1,791,000株 (議決権の数:1,791,000個) (議決権所有割合:100%) |
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譲渡株式数 |
1,791,000株 (議決権の数:1,791,000個) |
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譲渡価額 |
15百万ユーロ(約19.4億円) |
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異動後の所有株式数 |
-株(議決権所有割合:-%) |
(注)1ユーロ=129.80円(2021年3月31日レート)を使用しております。
(4)日程
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オプション契約締結日 |
2021年2月26日 |
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オプション行使日 |
2021年4月14日 |
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株式譲渡契約締結日 |
2021年4月14日 |
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株式譲渡実行日 |
2021年4月28日 |
完全子会社の吸収合併契約
当連結会計年度後ではありますが、当社は、2021年4月26日開催の取締役会において、2021年7月1日を合併効力発生日として、当社の完全子会社である味の素アニマル・ニュートリション・グループ株式会社を吸収合併(以下「本吸収合併」)することを決議いたしました。
(1)本吸収合併の目的
2011年に設立された味の素アニマル・ニュートリション・グループ株式会社は、その設立趣旨であるグローバル事業一体運営による体制強化をアセットライト及び事業スペシャルティ化への事業構造改革をもって完了いたしました。従いまして、今後、法人格を存続する必然性はなくなり、当社への吸収合併を実施することといたしました。
(2)本吸収合併の方法
当社を吸収合併存続会社とし、味の素アニマル・ニュートリション・グループ株式会社は解散いたします。
(3)本吸収合併の日程
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合併契約締結日 |
2021年4月26日 |
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合併予定日(効力発生日) |
2021年7月1日 |
なお、本吸収合併は、当社においては会社法第796条第2項に基づく簡易吸収合併であり、味の素アニマル・ニュートリション・グループ株式会社においては会社法第784条第1項に定める略式合併であるため、いずれも合併契約に関する株主総会の承認を得ずに実施いたします。
(4)当社が承継する権利義務
当社は、本吸収合併契約の内容に従って本吸収合併対象事業に関する資産、負債、契約その他の権利義務を承継いたします。
(5)本吸収合併対象事業の概要
①本吸収合併対象事業の経営成績
(2021年3月期(単体・日本基準))
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営業収益 |
2,352百万円 |
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営業利益 |
153百万円 |
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経常利益 |
165百万円 |
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当期純損失 |
△11,166百万円 |
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1株当たり当期純損失 |
△2,728,950.79円 |
②本吸収合併対象事業に関する資産・負債の金額
(2021年3月31日現在)
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資産 |
帳簿価額 |
負債 |
帳簿価額 |
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流動資産 |
3,039百万円 |
流動負債 |
583百万円 |
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固定資産 |
4,914百万円 |
固定負債 |
4百万円 |
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合計 |
7,953百万円 |
合計 |
588百万円 |
(6)本吸収合併に係る割当ての内容
本吸収合併は、完全親子会社間において行われるため、本吸収合併による新株の発行及び合併交付金の支払いはありません。
(7)本吸収合併存続会社の状況
(2021年3月31日現在)
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名称 |
味の素株式会社 |
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所在地 |
東京都中央区京橋一丁目15番1号 |
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代表者の役職・氏名 |
取締役社長 西井 孝明 |
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資本金の額 |
79,863百万円 |
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事業の内容 |
調味料・加工食品、冷凍食品、コーヒー類、加工用うま味調味料・甘味料、動物栄養、化成品、アミノ酸、その他の事業活動 |
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発行済株式数 |
549,163,354株 |
(8)本吸収合併消滅会社の状況
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名称 |
味の素アニマル・ニュートリション・グループ株式会社 |
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所在地 |
東京都中央区八丁堀三丁目4番8号 |
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代表者の役職・氏名 |
代表取締役社長 柏倉 正巳 |
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資本金の額 |
1,334百万円 |
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事業の内容 |
動物栄養事業 |
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発行済株式数 |
4,092株 |
味の素グループは、2030年に食と健康の課題解決企業に生まれ変わります。2020-2025中期経営計画ではその実現に向けて経営資源を集中します。研究開発に関しては、”Agile R&D”への変革に向け、これまで新規分野の研究開発や全社横断で技術支援をしてきた味の素㈱旧イノベーション研究所を、事業に沿ったR&D体制という観点から、2019年4月にバイオ・ファイン研究所、食品研究所、情報企画部などへ役割・機能毎に再編しました。また2021年4月に連結子会社である味の素冷凍食品㈱、味の素AGF㈱と連携した、グループ3社の食品に関わる国内R&D拠点を集約しました。事業に紐づくR&D体制のもと、基礎研究から製品開発、工業化までを一気通貫とし、当社グループの技術融合を加速させ、製品のさらなる高付加価値化と事業の構造強化に貢献し、持続的な成長を目指していきます。
食品領域においてはおいしさと栄養、そして生活者価値に基づく技術と商品開発を通じて、また、アミノサイエンス領域においては先端バイオ・ファイン技術を追求し新たな価値を創造することで、世界の食と人々の「こころとからだ」の健康課題を解決し、未来のより良い生活に貢献します。
当連結会計年度における味の素グループの研究開発費は
また、当社グループが保有している特許は国内外合わせて約4,100件です。
当連結会計年度の各事業区分における研究開発活動の概要とその成果は次のとおりです。
(1)調味料・食品セグメント
味の素㈱食品研究所が中心となり、味の素AGF㈱、上海味の素食品研究開発センター社(中国)をはじめとする国内外のグループ会社の研究開発部門とも密接に連携し、味、香り・風味、食感など、「おいしさを構成するすべての要素」を俯瞰した技術開発、商品開発、及びそのアプリケーション開発を行っています。また、日本国内の少子化・高齢化、世帯人数の減少、健康志向といった課題に対し、味の素グループの独自素材と技術及び斬新な発想による価値提案型の製品開発に取り組み、課題解決先進国の日本で磨いたモデルをグローバルに展開しています。国内R&D拠点集約が完了し、グローバルな製品開発体制のもと、マーケティング力、ブランド力を強みに、各国生活者の嗜好とニーズに適応した調味料、加工食品の開発に継続して取り組んでいます。
調味料、栄養・加工食品
<調味料(日本)>
2020年度の調味料事業商品は、栄養バランスの取れた多様なメニューとスマート調理を実現するため、「スペシャリティ」を持った新製品を開発・発売しました。
人々の「健康なこころとからだ」に貢献すべく、マヨネーズでは初めてとなる、開封後も鮮度を維持する2重構造ボトルを使用した「ピュアセレクト®マヨネーズ」新鮮キープボトル200gを通販サイト限定で発売しました。洋風合わせ調味料においては、お店で食べるようなメニューを、肉や野菜と炒めるだけで簡単につくれるソース「Bistro Do®」<鶏のブラウンソース煮込み用>、<なすのボローニャ風炒め煮用>、<鶏のトマトクリーム炒め煮用>、<豚のアンチョビガーリック炒め用>を開発・発売しました。また、お肉をやわらかく仕上げる技術の入ったソースと圧力スチーム調理パウチで、簡単かつ短時間で肉メニューが楽しめる「スチーミー」に<鶏チャーシュー用>を、「鍋キューブ®」では生姜をしっかり効かせたやさしい味わいの<ぽかぽか生姜みそ鍋>を開発し、ラインアップを拡充・発売しました。
廃棄プラスチックによる地球環境課題に対して貢献すべく、うま味調味料「味の素®」の紙製容器包装入り新製品をEC限定発売しました。
<調味料(海外)>
事業展開している各国・地域の健康志向やライフスタイルの変化に対応した高付加価値製品のラインアップ拡充、デジタルを活用した生活者意識・行動解析による商品開発の高度化を推進しています。都市化やライフスタイルの変化が進む中、簡便で加工度の高い製品や健康価値を有す製品への需要も増加しています。味の素グループの減塩技術、新規独自素材の導入により、インドネシアの「Masako®」、タイの「Ros Dee®」、ブラジルの「Cardo Sazon®」は減塩を行うと同時においしさを向上させた製品を発売いたしました。
今後も当社グループの独自素材の活用や独自技術に裏打ちされたおいしさの追求とともに健康価値領域での製品開発を継続強化していきます。
<栄養・加工食品(日本)>
2020年度の栄養・加工食品事業商品は、すぐに食べられ、生活者のこころの安らぎ、健康な生活を支える新製品を開発・発売しました。スープ市場においては、「クノール®カップスープ」26品を新規スペシャリティ原料、独自素材を活用して、おいしさを向上させるべく全面改訂を行いました。さらに、袋のまま電子レンジで温めるだけで、豆や野菜の栄養が摂れて身体に優しく、食べ応えのあるスープが楽しめるストレートタイプスープ「クノール®」ポタージュで食べる豆と野菜<深いコクの完熟トマト>、<素材を味わう栗かぼちゃ>、<緑の彩りえんどう豆>を発売しました。また、「クノール®スープグランデ®」では、なめらかクリーミーな味わいに仕上げた<クラムチャウダー>を開発し、ラインアップ拡充を行いました。更に、たっぷりのフリーズドライ具材とサッと溶ける風味豊かな“だし味噌”が入った即席味噌汁「具たっぷり味噌汁」<おかず味噌汁 生姜香る 茄子と鶏だんご>、<おかず味噌汁 おだし香る あさりとお揚げさん>を開発し、自社通販およびECチャネルで発売しました。
健康志向ニーズが高まり、超高齢化が進む日本において、国、地方自治体は健康寿命延伸施策を積極的に進めています。当社においても、高齢者のフレイル(虚弱)、低栄養の予防改善に向け、当社のスペシャリティである「たんぱく質・アミノ酸栄養」の研究開発知見を活かした製品の開発を進めています。2020年度は従来の医療機関、介護施設向けのみならず在宅で療養される高齢者・ご家族、また介護予備軍とされる方々をも対象とした新製品の開発を進めました。
健康志向向けの市場においては、生活習慣や食生活の乱れにより不足しがちな栄養素をサプリメントで手軽に補うことができる栄養機能食品「マルチビタミン&ミネラル」と、目の潤いと手元のピント調節機能をサポートし、目の疲労感を緩和する成分と、目のコントラスト感度を改善する成分を配合した機能性表示食品「ブルーベリー&ルテイン」を開発・発売いたしました。また、中高年を対象に、加齢によって衰える認知機能の一部である注意力と、認知的柔軟性を維持し前向きな気持ちをサポートするアミノ酸含有食品が機能性表示食品として消費者庁に申請受理されました。
<栄養・加工食品(海外)>
加工食品では、事業展開している国々の都市化やライフスタイルの変化に伴い需要が増大するおいしさと健康価値をターゲットに、味の素グループならではのコンセプトを持つプレミアムな製品を発売しています。拡大する個食・即食・健康ニーズへの対応を強化し、ブラジルでは「VONO®クッキングスープ」、トルコでは「Bizim Mutfak®スープ」と減塩製品を発売しました。また、タイでの「Birdy®缶入り(無糖タイプ)」、独自素材の活用により低コスト、低糖でおいしさを実現したペルーでの「MiskisimooTM」を発売しました。今後も当社グループの独自素材の活用や独自技術に裏打ちされたおいしさの追求とともに健康価値領域での製品開発を継続強化していきます。
<コーヒー類>
コロナ禍における家庭用飲料市場ではコモディティの大容量化とパーソナル&プレミアムの2極化が進んでいます。20年秋の「ブレンディ®」スティック全面改訂においては主力の<カフェオレ>と<カロリーハーフ>に新たな味の素グループの独自素材を活用することにより更なるおいしさアップを実現、また、これまで培ってきた粉体冷水可溶技術を活用し、1包で1Lのピッチャードリンクが手軽に作れるスティックタイプの「ブレンディ®」ザリットルを開発、簡便性だけではなく、廃棄物問題解決型のゴミ極小化(抽出滓、包装容器減など)製品の開発にも取り組みました。また、伸長著しいECビジネス向けには、ナチュラルヘルシー志向を捉えた働く女性の休憩をサポートする製品として、不足しがちな食物繊維を配合した「ブレンディ®」<ナチューム>スティックの開発や子供の成長をサポートするカルシウム、鉄、ビタミンDなどを配合した「ブレンディ®」ブランド初となる子供向けスティック「ブレンディ®とけた!」(ココア、いちご2品種)を導入。また、EC専用品としてスモールマス型の価値創造にもチャレンジし、多様化する働き方に合わせたこだわりのレギュラーコーヒー「AGF®ワークデザインコーヒー™」シリーズから<いきぬき><あいま><ながら>の3つのオケージョン型コーヒーを上質なアラビカコーヒー100%で実現しました。
<ソリューション&イングリディエンツ>
業務用では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う外出自粛の影響を受けて、外食店ではランチメニューやテイクアウトメニューの拡充をすすめています。こうした活動をサポートし、また「オペレーションを簡略化したい」、「高単価メニューを採り入れたい」などのニーズにお応えするために、新製品5品、「Cook Do®」500mLで〈麻婆茄子用〉、〈干焼蝦仁用〉、〈黒酢酢豚用〉の3品種、「クノール®クイックサーブスープ」クラムチャウダー、ポテトサラダの「士幌ポテト」燻製チーズを発売しました。また、工場需要家に対しては、共通ニーズに合わせた天然系調味料の新製品2品、牛肉特有の呈味や甘い風味香を付与できる「牛肉テイスト調味料」や、減塩時に生じる先味の物足りなさを改善する「先味アップ調味料(塩味タイプ)」を発売しました。
世界複数拠点でうま味調味料「味の素®」や核酸系調味料を生産し、グローバルネットワークを活かして100か国以上でBtoB及びBtoCビジネスを展開しています。
2020年は海外拠点間に跨がる開発体制を構築し、環境負荷低減の取組みやプロセス改良による生産性の向上、更にはグローバルサプライチェーン適正化を進めました。今後もグローバルな連携を加速し、味の素グループ一丸となって、うま味事業を通じた社会価値と経済価値の共創に貢献していきます。
<甘味料>
高甘味度甘味料市場は、多くの国で砂糖の過剰摂取による健康課題が深刻化する中、引き続きグローバルで伸張しています。当社は加工用事業において、サステナブルなアスパルテームの安定供給の更なる強化と共に、コスト競争力の強化も進めています。加えて、20年度に北米で新たにステビア甘味料を上市し、当社のおいしさ設計技術を組み合わせた付加価値型の甘味料製品の開発も進めています。
また、日本国内のコンシューマー事業についても、多様化する生活者ニーズに対応するべく、当社独自技術を活用した既存の低カロリー甘味料製品の改訂や、新製品開発を進めています。
<ベーカリー類>
ベーカリー製品では、ファストフード向けに焼き包餡パイ採用、量販店インストアベーカリー向けに冷凍生地を多品種採用頂きました。また、小麦粉同等比率で従来よりも多くの吸水量を含んだ多加水冷凍生地の開発、医療用向けの低たんぱくパンの開発等に着手し、新たな価値の創造・新規顧客獲得に向けた提案を積極的に取り組みました。
調味料・食品セグメントに係わる研究開発費は、
(2)冷凍食品セグメント
味の素冷凍食品㈱研究開発センターと海外グループ会社の開発部門を中心に、各国の嗜好とニーズに適応した商品開発に取り組んでいます。更に味の素㈱食品研究所との連携により、減塩等の健康価値の向上や、シェフ/パティシエの技の工業化に取り組んでいます。
<冷凍食品(日本)>
リテール製品では、圧倒的においしい品質を実現した、「ザ★®」シリーズ第三弾の「ザ★®から揚げ」、厚みと弾力にこだわった皮(耳たぶ食感)の「水餃子」、専門店品質の大ぶりのエビがゴロっと入った「大海老焼売」を開発・発売しました。電子レンジで調理しても、まるで焼き立てのような香ばしい焼き目を実現した「レンジで焼き餃子」を首都圏・関東エリア限定で開発・発売しました。また、おいしさはそのままに、塩分40%カットを実現した「五目炒飯」を開発・発売しました。
フードサービス製品では、提供者のオペレーション課題解決への対応として、保形性高く経時変化に強い、お店だけなくデリバリー・テイクアウトでも使用できる「バスクチーズケーキ」、個包装プチカップケーキ等を、また、ベジタリアンメニューの拡充を継続し、「大豆ミートバーグ」等を開発・発売しました。
<冷凍食品(海外)>
北米や欧州では、日本食人気の高まりやコロナ禍における新しい生活様式により、特にリテール製品におけるアジアン冷凍食品市場が成長しています。
北米では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により新商品の開発・上市は見合わせましたが、包装ラインの自動化など生産技術の進化を進めました。欧州では、テイクアウト/デリバリー需要に対応して焼済み餃子の開発・発売を行うと共に、家庭用の餃子のラインナップ拡大を行いました。更にアジアでは、インドネシア向けにHalal餃子を開発・発売しました。
今後も日本で培われた生産技術で簡便な調理、かつ美味しさを提供していくと共に、健康機能を付与した製品を市場投入する等、製品の付加価値を常に向上させながら、更なる事業拡大に貢献していきます。
冷凍食品セグメントに係わる研究開発費は、
(3)ヘルスケア等セグメント
味の素㈱バイオ・ファイン研究所、食品研究所、味の素バイオファーマサービス、味の素-ジェネチカ・リサーチ・インスティチュート社、味の素ファインテクノ㈱等の国内外の各グループ会社及びその技術開発部門とも連携し、世界中の人々の健康や生活に貢献するための商品及びソリューションを提供しております。
バイオの分野では、先端バイオ・ファイン技術を活かしたアミノ酸等の生産力、レギュレーション対応力、サービス提供力を強みに、世界中の医薬企業等への多様で特徴ある素材・原薬・技術の提供に取り組んでいます。また、アミノ酸の機能、有用性に関する知見、新規用途探索力をアミノ酸サプリメントの開発等に応用することで、生活者のQOL向上、快適な生活のサポートに貢献しています。
さらに、世界トップレベルのアミノ酸に関する知見、安全性の高い素材開発力や配合評価技術、グローバルネットワークを強みとし、電子材料、動物栄養などの幅広い事業領域における研究開発に取り組んでいます。当社ならではのスペシャリティによる顧客価値を創出し、事業拡大を図っています。
<医薬用・食品用アミノ酸>
医薬用・食品用アミノ酸市場の伸びに対応するために、生産性の向上とコスト競争力の強化を目的とした発酵・精製プロセス開発と導入を継続して進めています。また、動物細胞培養用の培地事業は味の素ジェネクシン社をプラットフォームとし、国内外のバイオ医薬品メーカーとの開発を継続、拡大しています。
再生医療用培地では、iPS/ES細胞の汎用培地として「StemFit® Basic04」を、米国・欧州・中国・韓国他、海外向け製品として2019年5月より発売しました。また2019年11月には、間葉系幹細胞用培地「StemFit® For Mesenchymal Stem Cell」、分化誘導用サプリメント「StemFit® For Differentiation」の販売を開始しました。今後、再生医療に求められる、高性能かつ動物・ヒト由来原料不含の安全性の高い培地の製造・開発を推進していきます。
<バイオファーマサービス>
製薬メーカーからの原薬受託製造について、低分子医薬品原薬、高活性原薬(HAPI)、ペプチド/オリゴ核酸、タンパク医薬、抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate:ADC)などの幅広い開発・供給体制の充実を図り、継続的な案件の受注に繋げています。
低分子医薬品原薬製造においては、バイオ技術との融合による効率的かつ環境配慮型のプロセスの研究を進めています。タンパク質発現技術(「CORYNEX」技術)においては、味の素アルテア社と連携して、グローバル大手製薬企業とバイオ医薬品の開発・製造支援事業「CORYNEX®」を推進しています。オリゴ核酸の受託製造においては、㈱ジーンデザインと連携して固相合成を活用した少量多品種製造から「AJIPHASE®」の液相合成技術による大量製造までの開発体制を構築し、味の素アルテア社、味の素オムニケム社との連携も深めながら、味の素バイオファーマサービス事業全体としてオリゴ核酸製造受託事業を推進しています。
<アミノインデックス®>
アミノインデックス®リスクスクリーニング(AIRS®)は、血液中のアミノ酸濃度のバランスから、三大疾病(がん、脳卒中、心疾患)等のリスクを一度に評価する当社独自の技術です。2020年4月には弘前大学COIに参画し、新たなデジタルリスクスクリーニングの確立と既存方法の強化を目的として「岩木健康増進プロジェクト」のデータ解析を開始しました。10月にはAIRS®に認知機能低下を予防するリスク評価サービスが追加されました。今後はAIRS®に加え、生活改善のソリューション提案のプラットフォームとして、スマートフォンアプリの開発、上市などを行い、AIRS®のサービスを発展させていきます。
<化成品>
電子材料につきましては、味の素ファインテクノ㈱と共同で、次世代PC、データセンター向けサーバー、5G通信ネットワーク用途向けに「味の素ビルドアップフィルム®(ABF)」の開発を推進しています。また、次世代機能性材料としてCPUの低消費電力化を実現する磁性材料の採用拡大に向け開発を加速しています。
<動物栄養>
乳牛用アミノ酸製剤「AjiPro®-L」などスペシャリティ事業にフォーカスした研究開発を推進しています。
<スポーツニュートリション>
スポーツ栄養科学研究に基づき、アミノ酸の独自配合の構築によるスポーツサプリメントの開発に取り組んでいます。こうした研究開発を通じて、トップアスリートの栄養課題に対応した「アミノバイタル®」<東京2020日本代表選手団SPECIAL>2品種を開発し、2020年7月より日本代表選手団へ無償提供し、東京2020オフィシャルパートナーとして、コンディションとパフォーマンスの維持に不安を抱える選手たちの支援活動を強化しました。また、スポーツに取り組む多くの人々に向けて、アミノバイタル®に配合するアミノ酸の有用性に関する科学情報を届けるために、『アミノ酸スポーツ栄養科学ラボ』を2020年10月に開設しました。
今後も社外の研究機関等とのオープン&リンクイノベーションを積極的に推進しながら、アスリートやスポーツを愛する顧客のQOL向上にむけて取り組んでいきます。
<ダイレクトマーケティング>
2020年度は基幹商品「グリナ®」「アミノエール®」のパッケージの薄箱化改訂に加え、新製品としては幅広い顧客ニーズへの対応にむけた品揃えの強化として「マルチビタミン&ミネラル」(5月)、「ブルーベリー&ルテイン」(7月)を発売しました。
また、ECの拡大により個人宅配が急増し、ドライバーをはじめとした人材不足や過剰な再配達などの「物流クライシス」が問題となっていますが、パッケージの薄箱化改訂は、配送しやすいパッケージ形状にすることで、この物流負荷を軽減する取組みです。その結果、宅配便からポスト投函の比率を向上させ、コストや持ち戻りの削減に加え、コロナ渦においても、直接商品を受け取らなくてもよいことから顧客サービスの改善につながりました。
今後も、当社独自の健康・美容価値を有する製品や情報の提供を通じて、顧客のQOL向上にむけて取り組んでいきます。
<香粧品素材>
香粧品素材につきましては、アミノ酸由来の洗浄剤、湿潤剤、メークアップ素材を中心に、独自の研究開発を行っています。2020年度は、DXの活用により処方開発や顧客提案等の更なる効率化を推進しました。また、味の素グループのバイオ・ファイン技術を活用し、スキンケアやメークアップ化粧品等に使用されているマイクロプラスチックビーズ代替品の開発に成功しました。2022年度上期の上市を予定しています。また、市場要請である低環境負荷に貢献するアミノ酸系香粧品素材の開発を引き続き進めていきます。
ヘルスケア等セグメントに係わる研究開発費は、
(4)その他
その他セグメントに係わる研究開発費は、
(5)全社
味の素グループが実現したい2030年の未来像「Picture of the Future」からバックキャストし、グループの将来を担うと期待される領域での事業展開を見据え、関係する研究テーマを全社研究とし、資源を集中的に投資し、開発を進めています。
全社研究では、味の素㈱食品研究所、バイオ・ファイン研究所が中心となり、国内外の研究機関と連携して進めている先端研究・技術を活用し、グループ内の各研究所とともに様々な事業に向けた新技術・独自素材の開発や、各事業分野に共通した基盤技術の強化に取り組んでいます。
食品・栄養領域では、食品中の栄養素をスコアで可視化する栄養プロファイリングシステム(The Ajinomoto Group Nutrient Profiling System: ANPS)を開発し、製品を対象とするシステム(ANPS-P)については日本を含む7か国の当社グループ9法人に導入され、グローバルな栄養改善活動をスタートしました。栄養に関するグローバルトップ企業及びWHO(世界保健機関)等の独立機関の推奨値を参考に栄養素の選定やスケールを設定し、製品自体に加えて、製品を使用したメニューを対象としたシステムの開発にも着手し高度化を図っています。
また、「健康寿命の延伸」への貢献にむけ、2020年4月に弘前大学と「デジタルニュートリション学講座」を開設しました。味の素㈱は生活者の健康状態を把握して適切なソリューションを提供するため、パーソナル栄養を含む新たな領域においてビジネスモデルの構築を目指しており、弘前市で2005年から実施している「岩木健康増進プロジェクト」で得られた健康ビッグデータを基に、アミノ酸代謝の解析等のデジタル技術を駆使して、日本の高齢者の課題や生活習慣病の予防につながるソリューションを開発し、生活者の健康増進/栄養改善への貢献を図ります。
「おいしさ設計技術®」と栄養設計に関する知見の深化や、サイエンスとデジタルによる顧客適合力を強化することで、ソリューションの提供を通じた社会価値の更なる創造と共に、世界トップレベルの品質と生産性を確立し、おいしさと栄養改善に貢献する当社グループにしか提供できない商品の開発に活用していきます。
ヘルスケア領域では、成長戦略の1つである先端バイオ医療周辺領域で抗体薬物複合体(ADC)製造技術である「AJICAP」技術がWorld ADC DigitalでBest Pre-Clinical Publication賞を獲得しました。また、味の素㈱とブライトピークセラピューティクス社は、新規免疫サイトカインを作成するための共同研究およびライセンス契約を締結しました。バイオファーマサービス事業を支える「AJIPHASE」技術、「CORYNEX」技術と合わせ、お客様の課題を解決すると共に、バイオ医薬品の普及に貢献していきます。
メディカルフード事業に関して2020年12月にアイルランドのサプリメント会社ニュアルトラ社を子会社化しました。味の素キャンブルック社と合わせ、米国、欧州に事業拠点を持ち、食品・アミノサイエンス事業で培った「おいしさ設計技術®」やアプリケーション技術、アミノ酸の生理機能に関する知見を適用することで、疾患による食事制限や加齢による栄養欠損に対する改善などユーザーのQOL向上に貢献します。
低炭素社会及び持続可能な資源循環型社会を目指して、新たな技術開発や新事業の創出にも継続して取り組んでいます。オープン&リンクイノベーションの取り組みにて、東京工業大学細野教授らと新規触媒を用いたアンモニア合成の検討を進め、2017年4月につばめBHB㈱を設立し、世界で初めてとなるオンサイト型のアンモニア合成システムを2022年頃の実用化を目指しています。
オープン&リンクイノベーションの推進では、2018年に開設したクライアント・イノベーション・センターにおける社内外の技術の融合や交流、グローバル・ベンチャーキャピタル/アクセラレーターのPlug and PlayやSmart Kitchen Summit JAPAN 2020への参加、2020年より開始したアクセラレータープログラム「Ajinomoto Group Accelerator」にて社外ベンチャーと協業等、社内外の各種ツールを積極的に活用しビジネスパートナーとのイノベーションの創出に取り組んでいます。また、2020年12月に「食と健康の課題解決企業」実現に向けた新事業モデル創出を達成するために、イノベーション探索、エコシステムの構築・強化、企業文化変革の牽引を実行するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の活動を開始し、当社グループの新たな価値・事業の共創に取り組んでいます。
全社に係わる研究開発費は、