第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

 日本の畜水産業界を担う皆様の良きパートナーでありたい。そして食卓に安心と美味しさをお届けしたい。そんな思いから、当社は「飼は食を司る」との使命感のもと、1949年の創業以来、配合飼料の総合メーカーとして歴史を重ねてきました。鶏・豚・牛・魚の飼料製造販売を主力事業に、「ごまたまご」等の特性ある畜水産物の販売や有機入り配合肥料の製造販売を加え、さらに環境問題に取り組んだ畜糞発酵処理機の製作販売や畜産保険の販売等の畜産関連事業も手掛けています。こうした事業を通して、環境に配慮した飼料の開発や温室効果ガス排出量の削減等、日本の畜水産業の持続的な発展に寄与する取組みも推進しています。

 当社が何より大切にするのは、お客様と共に課題を見つけ出しこれを解決することです。

 独立系メーカーとして、自社一貫生産設備を活かし「特性ある仕事をして社会に貢献する」という社是のもと、お客様と確かな信頼関係を築き、共に成長することが創業以来培ってきた当社のDNAです。

 今後も、特性ある飼料の開発、製造及び安定供給に尽力し続けることで、お客様が安全で美味しい畜水産物を食卓にお届けできるよう日本の畜水産業の発展に寄与し、日本の食の一端を担ってまいります。

 

(2) 経営戦略等

 当社は、25年3月期~27年3月期の中期経営計画において、「中長期的な企業価値の向上とさらなる成長を実現するため、収益力向上と規模拡大により強い収益基盤を構築する」「資本コストを意識した経営を実践する」という基本方針のもと、以下の3つの基本戦略を立てております。

① 飼料セグメントの収益力向上と規模拡大

 畜産飼料においては、製造・販売・研究が一体となった取組みを推進いたします。また、環境に配慮した飼料の開発・販売や差別化飼料の拡販を図り、原価低減、生産性の向上にも引き続き取り組んでまいります。

 水産飼料においては、低魚粉・無魚粉飼料の拡販、試験漁場を持つ強みを生かした新製品の開発の加速、高付加価値水産物の販売強化に取り組んでまいります。

 また、畜産飼料・水産飼料それぞれで、営業・研究人員の増員・育成や、ROICツリーを活用した経営課題の各部門への落とし込み等に取り組んでまいります。

② その他セグメントの事業成長の加速

 鶏卵販売においては、安定供給のための取組みを継続し、高価格帯商品である特殊卵の販売強化、新しい特殊卵の開発・販売、人材育成による組織力の強化等に取り組んでまいります。

 肥料においては、新規顧客の開拓や、堆肥入り配合肥料の開発・拡販、関東の生産拠点である神栖工場の増産等を図ってまいります。

 畜産用機器においては、海外市場への販売強化や下水汚泥処理機器の新規拡販等を図ってまいります。

 保険代理業においては、主力の畜産保険の販売を強化し、飼料事業へのシナジー効果を発揮できるよう取り組んでまいります。

③ 成長する収益基盤を支えるサステナビリティ経営の推進

 当社グループは、ESGの観点で、以下の取組みを進めてまいります。

 環境においては、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでおります。具体的な目標として、2030年までに温室効果ガス排出量を2020年度に比べて30%削減することを目指しています。

 社会においては、働きやすく働きがいのある職場づくりに取り組んでおります。安全な職場環境を実現し、働き方改革に対応する制度構築を目指してまいります。また人的資本へ積極的に投資してまいります。具体的には、継続的な処遇改善や社員エンゲージメントの向上によるESの向上、積極的な採用や多様性をはぐくむことのできる人材育成の実行、柔軟な働き方の実現による働き方の変革対応等に取り組んでまいります。

 ガバナンスにおいては、取締役会やリスクマネジメントの実効性を高める取組みを進めております。具体的には、リスク管理委員会活動の推進等に取り組んでまいります。

 

(3) 経営環境並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 飼料業界につきましては、国内人口減少や輸出入による畜水産物の生産動向の変化、鳥インフルエンザや豚熱等の疾病の発生、穀物相場や為替相場の乱高下、地政学的リスクの発生等、様々な要因が今後の事業活動へ影響を及ぼす状況にあります。また、足元では飼料価格安定基金負担金のさらなる増加や積極的な設備投資による減価償却費の増加等が見込まれます。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) ガバナンス

 当社は、当社グループがサステナビリティ経営を推進し、持続的な成長及び中長期的な企業価値向上の実現を図ることを目的として、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。

 同委員会は、サステナビリティに関連するリスク及び機会の分析や対応策を検討のうえ、経営協議会・取締役会に報告し、取締役会が戦略を決定しております。

 また、同委員会は、各部門及び各グループ会社における戦略の取組み遂行状況を把握し、必要に応じて改善を指示するとともに、当社グループの役職員に対し、サステナビリティに関する教育や当社グループの取組みの周知等を行っております。

 

(2) 戦略

 当社グループは、「特性ある仕事をして社会に貢献する」という社是のもと、事業活動を通じて環境・社会課題の解決に取り組み、企業価値の向上と持続可能な社会の実現を目指しております。具体的には、次のとおりの方針で取り組んでおります。

① 環境負荷の低減に寄与する製品の開発・提供や廃棄物の削減、事業活動におけるCO₂排出量の削減により、気候変動の緩和や自然環境の保全に貢献する。

② 食品副産物の積極的利用や廃棄物を資源化する製品の開発・提供により、資源保護に貢献する。

③ 品質の高い飼料を安定供給することで、お客様の特性ある畜水産物づくりに寄与し、人々の健康で豊かな食生活に貢献する。

④ 社会課題を解決する製品・サービスの提供を通じて、永続的な農業・畜水産業の発展に貢献する。

⑤ 法令を遵守し、倫理観のある行動をするとともに、ガバナンス体制を強化することで、社会に信頼され続ける企業を目指す。

 

(3) リスク管理

 当社グループは、リスク管理担当役員である管理本部長を委員長とし、経営協議会メンバー及び本社部門の各部門長が主体となり構成されるリスク管理委員会を設置しております。

 リスク管理委員会は、企業価値を保全するため、様々なリスクを一元的に俯瞰し、リスクの予防・発生時における迅速かつ的確な対応・再発防止策の策定を行っております。具体的には、各本部及び各部門のリスクについては所属するリスク管理委員が識別し、グループ会社のリスクについてはグループ会社を管理・指導する事業管理部長が識別しております。識別されたリスクは、定期的に開催しているリスク管理委員会で集約し、個々に評価しております。

 また、管理本部長は、リスク管理規程に基づき、個々のリスク(経営戦略、業務運営、環境、災害等のリスク)の責任部署を定めるとともに、当社グループ全体のリスクを網羅的・統括的に管理しております。

 さらに、気候変動をはじめとするサステナビリティ関連のリスク及び機会については、サステナビリティ委員会が、リスク及び機会の双方の議論並びにモニタリングを実施し、戦略策定・個別事業運営の両面で審議のうえ、経営協議会・取締役会に報告しております。

 

(4) 重要なサステナビリティ項目

 当社グループは、上記、ガバナンス及びリスク管理を通して、気候変動への対応を重要なサステナビリティ項目として、次のとおり取組んでおります。

① 戦略

 当社グループは、気候変動によるリスク・機会は重要な経営課題の一つであると認識しており、気候変動が当社グループに及ぼす影響を把握するために、サステナビリティ委員会でシナリオ分析を行いました。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)等の情報を基に2つのシナリオ(4℃シナリオと1.5℃シナリオ)を設定し、リスク・機会の分析と対応策を検討いたしました。

[4℃シナリオ]

 地域対立的な発展の下で気候政策を導入しない中、産業革命以前を基準とする気温上昇が4℃程度となるシナリオ。気温上昇により異常気象の激甚化等が顕著に表れる。一方、気温上昇を抑制するための規制は1.5℃シナリオより緩やかである。

[1.5℃シナリオ]

 持続可能な発展の下で、産業革命以前を基準とする21世紀末までの気温上昇を概ね約1.5℃以下に抑える気候政策を導入するシナリオ。先進国を中心に温室効果ガスの排出に対する規制が強化される。一方、気温上昇によるリスクは4℃シナリオより限定的である。

 特定されたリスク及び機会並びにそれらへの対応策につきましては、下表のとおりであります。

 

 

特定されたリスク・機会及び対応策

 

変化要因

主なリスク・機会

(リスク〈△〉/機会〈〇〉)

財務

インパクト

リスク・機会への対応策

(リスク〈△〉/機会〈〇〉)

4℃

1.5℃

物 理 的 リ ス ク

異常気象の発生割合・深刻度の増加

工場の被災(台風の激甚化・高潮・浸水被害等)

・製造停止による売上高の減少

〈△〉

・原料搬入の途絶による売上高の減少〈△〉

・保険料の増加による売上原価の増加〈△〉

・BCPの策定〈△〉

・自社工場間による相互供給体制の構築〈△〉

・損害保険の活用〈△〉

インフラの損壊による物流の遮断やお客様の被災

・配送ルート遮断による売上高の減少〈△〉

・家畜頭羽数減少による売上高の減少〈△〉

原料調達先の被災やインフラの損壊

・原料供給量減少による原材料費の増加〈△〉

・原料調達途絶による売上高の減少〈△〉

・原料調達国の多様化〈△〉

・代替原料の利用や食品副産物の積極的な利用〈△〉

気温上昇等の気象変化

穀物の生産量減少による原料高騰や生育不良による品質低下

・穀物価格上昇による基金補填金増加に伴う基金負担金(販管費)の増加〈△〉

・加工コストの上昇による売上原価の増加〈△〉

・調達途絶による売上高の減少

〈△〉

・代替原料の需要増加〈〇〉

・原料調達国の多様化〈△〉

・食品副産物の積極的な利用

〈△〉

・昆虫等の新原料を使用した飼料の開発〈△/〇〉

真夏日や猛暑日の増加

・飼料摂取量減少による売上高の減少〈△〉

・家畜の生産性低下や飼養頭羽数減少による売上高の減少

〈△〉

・暑熱対策飼料の需要増加

〈〇〉

・飼料要求率(畜産物1㎏当たりの生産に要する飼料摂取量)をさらに改善した飼料の開発〈△/〇〉

・暑熱対策飼料のブラッシュアップ〈△/〇〉

動物感染症の発生地域拡大

・家畜の飼養頭羽数減少による売上高の減少〈△〉

農作物の品質、収穫量、収穫期の変化

・変化に合わせた肥料の開発

〈〇〉

移 行 リ ス ク

環境規制の強化

炭素税の導入

・製造コストの増加〈△〉

・温室効果ガス排出量の低減によるコスト上昇の抑制

〈△〉

・家畜排せつ物を低減する飼料の拡販や、消化管内醗酵由来のメタンを低減する飼料の開発〈△/〇〉

・畜糞発酵処理機「コンポ」の販売〈〇〉

温室効果ガス排出規制の強化

・温室効果ガス排出量削減のための設備投資増加による減価償却費の増加〈△〉

・温室効果ガスの排出を低減する製品の需要増加〈〇〉

化学肥料の規制

・化学肥料の競争力低下〈〇〉

・有機入り配合肥料の開発・販売〈〇〉

再エネ・省エネ技術の普及や低炭素技術の進展

省エネ設備や太陽光発電、燃料転換

・省エネ設備や太陽光発電を導入し、エネルギー使用量を削減することによるコストダウン〈〇〉

・燃料転換や環境に配慮した運搬機器の導入による温室効果ガスの削減〈〇〉

低炭素な車両、船舶など環境に配慮した運搬機器への転換

 

財務インパクト:小0~1億円、中1~5億円、大5億円~

 

 

 

変化要因

主なリスク・機会

(リスク〈△〉/機会〈〇〉)

財務

インパクト

リスク・機会への対応策

(リスク〈△〉/機会〈〇〉)

4℃

1.5℃

移 行 リ ス ク

再エネ・省エネ技術の普及や低炭素技術の進展

燃料に使用される穀物やその他副産物の増加

・穀物や副産物価格の高騰による原材料費の増加〈△〉

・加工コストの上昇による売上原価の増加〈△〉

・原料調達途絶による売上高の減少〈△〉

・代替原料の需要増加〈〇〉

・代替原料への切替え

〈△/〇〉

・配合の変更による安定供給の実現〈△〉

・新原料の開発〈〇〉

エシカル消費の拡大やリサイクル意識の向上

環境に配慮した製品の需要が増加

・家畜の排せつ物を低減する飼料や、排せつ物中の窒素含有量の低減等の環境に配慮した飼料の販売機会拡大

〈△/〇〉

・消化管内醗酵由来のメタンを低減する飼料の開発

〈△/〇〉

・温室効果ガス排出量の低減や循環型社会に貢献する畜糞醗酵処理機「コンポ」の販売機会拡大〈〇〉

・無魚粉、低魚粉飼料等の海洋資源保護を目的とした飼料の販売機会拡大〈〇〉

代替肉や培養肉へシフトすることで畜産物需要が減少

・畜産物の消費減少による売上高の減少〈△〉

飼料原料となる副産物の発生量の低下

・副産物の高騰による原材料費の増加〈△〉

・原料調達途絶による売上高の減少〈△〉

・代替原料の需要増加〈〇〉

・代替原料への切替え

〈△/〇〉

・配合の変更による安定供給の実現〈△〉

・新原料の開発〈〇〉

気候変動の対応に対するお客様・株主の関心の増加

自社の気候変動への取組が不十分である場合、レピュテーションリスクが発生

・売上高の減少、原材料費の増加〈△〉

・温室効果ガスの削減目標と結果を開示〈△〉

財務インパクト:小0~1億円、中1~5億円、大5億円~

 

② 指標及び目標

 当社グループは、温室効果ガスの削減を重要な指標と定めており、以下のとおり目標を設定いたしました。

[指標]当社グループ(国内)の温室効果ガス排出量(Scope1+2)

[目標]2030年度に2020年度比30%削減

 ※Scope3については、仕入先・顧客とともに具体的な取り組みを推進してまいります。

(単位:t-CO

 

2020年度

(基準年度)

2021年度

2022年度

2023年度

2030年度

(目標)

 

Scope1

26,897

25,950

24,430

23,811

 

Scope2

30,135

29,659

32,189

26,036

 

Scope1+2

57,032

55,609

56,619

49,847

39,922

 

2020年度比

△2.5%

△0.7%

△12.6%

△30%

 

Scope3

1,121,014

1,188,863

1,192,096

1,187,635

(注)2024年度実績は現在算出中のため、2023年度までの実績を記載しております。

 

(5) 人的資本(人材の多様性を含む)に関する取組

 当社は、成長する収益基盤を支えるサステナビリティ経営の推進の一環として、人的資本への投資に取り組んでおります。当社は従業員一人一人が企業の成長を生み出すとの考えのもと、常に変革を目指し、自ら考え行動する人材を確保・育成・活用し、かつその人材が働きやすく働きがいのある会社とすることを目指しております。これらの実現に向け、人的資本への投資を行ってまいります。

① 人材の育成及び社内環境に関する方針・取組み

 人材育成に関しては、まず採用面において多様性を確保するために、中途採用を含め、性別・国籍を問わず、視点・経験等が異なる人材を積極的に採用しております。育成面において、職場での上司の指導・育成に加え、定期的な階層別研修、より専門性を高めるための課題別研修を実施することで、従業員の専門能力と労働生産性を高めております。なお、管理職登用については、多様性確保の観点から、女性・外国人・中途採用者に制限を設けることなく、能力・実績等を総合的に評価し、管理職として相応しい人材を登用する方針としております。(当社の管理職は、部長・次長・課長の役職者を指します。)

 一方、社内環境整備に関しては、従業員が長期的に安心して働ける職場づくりを目指し、職場環境の改善や有給休暇の取得推進、時差出勤・在宅勤務の導入等、積極的に取り組んでおります。加えて、再雇用社員の活躍推進や再雇用延長制度(65歳以上)の導入等の対応も図っております。

② 指標と目標

 多様性確保のため以下の目標を達成することを目指してまいります。

指標

目標

実績

採用者に占める女性の割合

302026年度~2028年度平均

28%(2022年度~2024年度平均)

管理職候補者である係長級の役職者に占める女性の割合

52028年度

2%(2024年度)

(注)当社グループでは、当社においては関連する指標のデータ管理とともに具体的な取組みが行われているものの連結子会社では行われておらず、連結ベースでの目標設定等は困難であるため、上記指標及び目標は当社における内容を記載しております。

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 家畜家禽及び魚類の疾病等について

 鳥インフルエンザ、豚熱、PED、口蹄疫及びBSEに代表される家畜伝染病の発生や赤潮等の飼育環境の悪化等、家畜家禽及び魚類を飼育することにおいては常に疾病等の発生リスクを伴っております。これらの家畜家禽及び魚類の疾病等が発生し、飼育数量が大きく減少する事態や疾病発生に伴う消費者の買い控えによる畜水産物需要の減少が発生した場合、飼料需要の減少により販売量が減少すること、又は取引先の経営悪化により債権回収に問題が発生することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 人口動態の変化及び人材確保について

 当社グループの主たる事業である飼料事業において、人口動態の変化の影響による飼料需要の減少に適切な対応が取れない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループにとって、お客様に満足していただける製品・サービスを安定的に供給していくために、多様な人材を確保・育成する必要があります。今後、労働人口の減少や雇用情勢の変動等により、当社グループのそれぞれの事業で必要とする人材の確保・育成等ができない場合、長期的に当社グループの競争力が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 環境関連対応について

 当社グループは、気候変動の緩和を目的とした炭素税の導入等の環境規制の強化や、気候変動への取組みが不十分であると市場から評価された場合にレピュテーション悪化等の影響を受ける可能性があります。そのため当社グループは、企業活動を通じて省エネルギー、温室効果ガスの削減等、環境負荷低減に積極的に取り組んでおります。今後、当社グループの想定範囲を超えた環境に係る法的規制の変更、強化等のほか、社会の環境対応の要請が高まり、想定を超える費用が発生することにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 原料価格の変動について

 当社グループの飼料事業における配合飼料の原料は、90%以上を輸入に依存しており、穀物相場、為替、海上運賃等の動きによりその原料コストは大きく変動します。急激かつ不測の相場変動が発生した場合には、原料コストの変動を販売価格に転嫁することができず、利益率が悪化し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、畜産用配合飼料においては、原料価格の高騰等により飼料販売価格を改定する際、飼料価格変動による畜産経営への影響を緩和し、畜産経営の安定を図るために配合飼料価格安定制度があります。この制度には、通常補てん基金と異常補てん基金があり、通常補てん基金は畜産家と配合飼料メーカーが基金負担金を拠出し、配合飼料原料の輸入価格が上昇した際、畜産家に補てん金が交付される仕組みです。また、異常補てん基金は、国と配合飼料メーカーが基金負担金を拠出し、通常補てん基金では対処し得ないほど原料価格が著しく高騰した場合、畜産家に補てん金が交付される仕組みです。

 配合飼料メーカーの負担金の増減が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 大規模な自然災害及び気候変動による異常気象の激甚化について

 当社グループは、想定以上の大規模な地震や水災害等の自然災害、気候変動に起因する異常気象の激甚化により、工場設備の稼働停止やインフラの損壊、穀物の生産量減少による原料高騰や生育不良による品質低下等の影響を受ける可能性があります。このような場合、製造停止による売上高の減少や復旧に係る諸費用の発生、又は急激な穀物価格高騰による基金負担金の増加や加工コストの上昇等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 政治・地政学的な情勢変化について

 当社グループの売上高は、主たる事業である飼料事業が90%以上を占めております。政府の農業政策の変更、TPP11及びFTAの発効等の世界各国の政治情勢の変化や、特定の地域での政治的・社会的・軍事的な緊張の高まりによる地政学的な情勢変化により、国内における飼料事業を取り巻く環境が変化します。その場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の拡大などにより、景気は緩やかな回復基調にあります。一方で、為替の急激な変動や物価の上昇、ロシア・ウクライナ情勢の長期化、米国の関税政策による世界経済の減速懸念など、依然として先行きは不透明な状況が続いております。

 飼料業界におきましては、外国為替相場は夏場に急騰する場面はあったものの、全体としては円安基調で推移し、2024年年初以降下落基調で推移していた主原料のとうもろこし価格は春に上昇、夏に下落、秋以降上昇と、上げ下げを繰り返しました。これらを受け、当社は配合飼料価格を4月及び10月に値下げ、7月及び1月に値上げしました。一方、全国規模に広がった鳥インフルエンザの影響や上昇基調にある飼料メーカーが負担する飼料価格安定基金負担金単価が今期さらに上昇するなど、厳しい事業環境は続いております。

 このような状況のなか、当社グループは持続的な成長を実現するため、2025年3月期を初年度とする「中期経営計画2024」を策定し、飼料セグメントの収益力向上と規模拡大、その他セグメントの事業成長の加速、成長する収益基盤を支えるサステナビリティ経営の推進の3つの基本戦略を推進してまいりました。

 その結果、当連結会計年度の業績は、売上高2,098億37百万円(前期比10.4%減)、営業利益42億81百万円(前期比8.9%増)、経常利益48億15百万円(前期比7.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益35億3百万円(前期比5.3%増)となりました。

 セグメント別の業績は、次のとおりであります。

(飼料)

 売上高は、前期比で畜産飼料販売量が増加したものの、平均販売価格が下落したことや2024年1月に連結子会社のみらい飼料株式会社を持分法適用会社に変更したことなどから、前期比12.6%減の1,913億90百万円となりました。セグメント利益は、前期比8.0%減の39億58百万円となりました。畜産飼料は、原料ポジション改善や差別化飼料比率の上昇による利益率向上があったものの、飼料価格安定基金負担金の増加などにより減益となりました。また、水産飼料は、販売量が減少したものの、環境に配慮した飼料の拡販や値上げ及び新製品の投入による利益率上昇などにより増益となりました。

(その他)

 売上高は、前期比20.3%増の184億47百万円、セグメント利益は、前期比71.1%増の14億5百万円となりました。増収増益の主な要因は以下のとおりであります。畜産用機器において、国内外の販売台数が前期を大きく上回って大幅な増益となりました。また、鶏卵販売において、主力商品である「ごまたまご」のリニューアル等による販売強化が奏功し、肥料事業においても、生産者の需要変化に対応した製品を投入し、販売量と利益が増加しました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、119億42百万円となりました。当連結会計年度における資金の増加は89億36百万円でありました。

 各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、獲得した資金は119億92百万円(前期比16億21百万円増加)となりました。主な資金獲得の要因は税金等調整前当期純利益49億86百万円、減価償却費29億71百万円、売上債権の減少69億38百万円、棚卸資産の減少25億62百万円であります。一方、主な資金使用の要因は仕入債務の減少67億9百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は38億30百万円(前期比7億36百万円減少)となりました。主な資金使用の要因は、固定資産の取得による支出43億72百万円であります。一方、主な資金獲得の要因は有価証券の売却による収入4億68百万円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、獲得した資金は7億72百万円(前期は47億61百万円の資金使用)となりました。主な資金獲得の要因は、借入金の増加が純額で21億93百万円であります。一方、主な資金使用の要因は配当金の支払額14億18百万円であります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a 生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

飼料

184,952

85.5

合計

184,952

85.5

(注)1. 金額は販売価格によっております。

2. 上記以外、その他において肥料の生産がありますが、僅少のため省略しております。

 

b 受注実績

 当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高

受注残高

金額(百万円)

前期比(%)

金額(百万円)

前期比(%)

その他

4,505

164.5

811

118.3

(注)受注生産を行っているのは畜産用機器のみであります。

 

 

c 販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

飼料

191,390

87.4

 報告セグメント計

191,390

87.4

その他

18,447

120.3

合計

209,837

89.6

(注)セグメント間の取引は、相殺消去しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は、飼料事業の平均販売価格が前期を下回ったことなどにより、前期比10.4%の減収となりました。営業利益は、畜産用配合飼料における飼料価格安定基金負担金の増加等があったものの、その他セグメントの利益増加等により、8.9%の増益となりました。

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、畜産用配合飼料における原料ポジションがあります。配合飼料は、その飼料原料の90%以上を輸入穀物によって生産しております。穀物相場は、世界的な人口増加や新興国の急速な経済成長による需給バランスの変化や生産国の在庫率、世界経済の動向等により近年大きく変化しております。このように飼料における原料コストは穀物相場によって大きく影響を受けます。また輸入穀物のため為替、船運賃等の動きにも影響を受けます。これらの原料コストの変動に伴う対応として飼料業界では飼料販売価格の改定を四半期毎に行っておりますが、飼料販売価格の変動幅と原料コストの変動幅の乖離によって、原料ポジションが改善したり悪化したりします。また、飼料販売価格の変動による畜産経営への影響を緩和するために、配合飼料価格安定制度があります。同制度により、配合飼料メーカーが負担する飼料価格安定基金負担金の増減が当社の損益に大きく影響を及ぼします。

 セグメントごとについては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動の結果獲得した資金は119億92百万円、投資活動の結果使用した資金は38億30百万円となりました。また、当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、運転資金及び設備資金を自己資金及び借入により調達することとしております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、畜産及び水産並びにその周辺業界の市場の要求に応じた新製品や新技術の開発を、当社大府研究所を中心に行うとともに、必要に応じ他の研究機関(大学・民間企業)と連携し、開発の成果がすぐに顧客に役立つべく、常に積極的にこれらの技術指導を行っております。

 当連結会計年度における研究開発費の総額は779百万円であり、グループ全体の専門研究員は37名であります。

 セグメント別の研究開発活動は次のとおりであります。

(1) 飼料

① 養鶏用飼料の開発

 採卵鶏用においては、アニマルウェルフェアに対応した誘導換羽用飼料の効果的な使用方法を研究し、普及に努めました。ブロイラー用においては鶏の骨を丈夫にする飼料の研究を行い、製品へ応用しました。

② 養豚用飼料の開発

 養豚用においては、多産系品種の特性に合わせた若メス育成用飼料を開発し、飼養技術と合わせて繁殖成績改善の取り組みを推進しました。

③ 養牛用飼料の開発

 乳牛用においては、お客様が使用している様々な粗飼料を効果的に利用できる配合飼料の研究を進め、製品に応用しました。

 肉牛用においては、温室効果ガス低減を狙った飼料の研究を行い、お客様と取り組み普及を推進しました。

④ 養魚用飼料の開発

 養魚用においては、ハーブやビール酵母等を配合し、飼料に添加することで栄養を強化する「H-DEFENSE」を開発しました。

 以上の結果、飼料に係る研究開発費は749百万円となりました。

 

(2) その他

畜産用機器の開発

 従来より大型化した畜糞発酵処理機(コンポ)の実用化に向けた開発等に継続的に取り組みました。

 以上の結果、その他に係る研究開発費は30百万円となりました。