第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日において当社が判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

 わが社は、でん粉・糖の事業を通じ、生活者の多様な Well-beingに資する価値提供を推進し、長期的な企業価値の向上に努めます。

 社会的・環境的な潮流変化を的確に捉え、将来あるべき姿に向けて、個々がより高い意欲を持って事業に参画することで、その実現を図ります。

(2) 経営環境

 世界情勢は、ロシアによるウクライナ侵攻、及び中東紛争が長期化するなど、地政学リスクが高まりを見せており、世界的なインフレは落ち着きを見せ始めるといった見方もなされていますが、一方では、先行きの不透明感から、経済の成長が寧ろ減速する可能性もあると予想しています。我が国では、日銀による金融緩和政策の転換に裏付けられた今後の経済成長に大いに期待がかかりますが、円安と原材料コスト高騰が引き起こした物価高に対し、輸出やインバウンド需要の回復、賃上げと価格転嫁の好循環を真に実現できるのかという点が、今後の経済正常化への課題として注目されます。

 長期的な見通しとしては、国内の人口漸減による糖質の総需要の減少傾向は、当社にとって今後の大きな課題となりますが、多様な生活者のより豊かな生活の実現に貢献しうる機能性素材・原材料に対するニーズは益々拡大していくと見られ、カーボンニュートラルに向けた取り組みなど、世界的なサステナビリティに対する意識の高まりにより、企業には持続可能な社会課題の解決とそれを通じた企業価値の向上が期待されていると考えています。

(3) 目標とする経営指標

 当社主製品の一つである糖化品は、清涼飲料や酒類、食品、調味料などに幅広く使用されており、また、もう一つの主力である澱粉製品は食品用途のみならず、製紙を中心とした一般工業分野においても多く利用されております。当社では多様化する課題やニーズに応えられる高付加価値製品の提供をソリューション事業、コスト競争力をもった生活必需品の素材提供をプライマリー事業と位置づけ、そこにコーンオイルをはじめとする副産物事業を含め、サステナビリティ経営を事業の根幹とした事業体制にて、更なる企業価値の向上を目指しています。2022年に策定した「中期経営計画2022-24年度(中経2024)」においては、持続可能な社会を築く為の様々な課題解決に資する取り組みや、将来を担う人財育成の推進等を通じて、単年度連結経常利益17±4億円という指標を掲げており、2024年度は、中経2024の最終年度として、当社を取り巻く事業環境や2023年度の実績を踏まえつつ、連結経常利益17億円を目標として掲げております。また、今期の取り組みとして、資本コストや資本収益性についての現状解析を行い、経営指標としての次期中期経営計画(2025-27年度)への反映を計画しております。

(4) 中長期的な会社の経営戦略

 前述の経営環境を踏まえ、当社は“多様なWell-beingのために”というコーポレートメッセージを念頭に、2030年のあるべき姿を定めた「長期経営ビジョンNSK2030」の実現に向けて邁進いたします。同ビジョンでは、2022-24年度の3カ年事業計画(中経2024)を体制強化期と位置付けており、ソリューション提供機能の強化、プライマリー事業の収益安定化、経営基盤の整備、を中長期的な事業の基本方針として掲げております。2024年はその最終年度であり、体制強化期として立案・実行した諸施策を仕上げつつ、今後の飛躍に繋がるフレームワークを構築していくことで、同ビジョンにおいて施策展開期として見据えた2025-27年度の次期中期経営計画(中経2027)を描いて参ります。

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 生産面では、主原料のとうもろこしを安定調達するため、主要調達先である米国以外の供給先を確保し、また副原料、資材等においては複数購買にて、安定調達に努めてまいります。

 また、当社が供給可能なさまざまな市場に対し、新機能、新用途を持つ高付加価値製品の開発、拡販を課題とし、加工食品用途向けの各種製品開発に一層注力するとともに、販売面では、食の高度化・多様化に対応すべく、食品・飲料素材に対する技術力を積極的に活用し、お客様に対する提案型営業を推進しております。積極的に推進を図る製品開発においては、未病領域を始めとした健康分野における健康志向製品、低・脱炭素領域での環境配慮型製品を中心に外部との協業も含め推進を図り、お客様にとって付加価値を高める製品提供を継続することに努めてまいります。澱粉関連では、一般工業分野、食品分野さらに医療分野において用途開発の可能性が大きく、今後ともお客様にとって付加価値を高める製品の開発を積極的に行い、対面業界への貢献を期してまいります。

 一方、生活必需品とされる製品においては社会からの信頼に応える安心・安全な供給体制を構築するとともに、環境負荷の低減に努め、お客様に対し新たな価値の提案を図ってまいります。

 グローバル市場に向けた事業展開は、当社の長期経営ビジョンNSK2030に定めた戦略の一つであるソリューション事業の拡充において極めて重要な位置づけとなります。タイ国の当社関連会社であるAsia Modified Starch Co., Ltd.(AMSCO)においては、タピオカ加工澱粉製品の生産体制強化や、欧米先進国、及びアジア諸国の経済発展に伴う食の高度化、多様化への対応をより一層推進し、社会課題の解決を提供できる企業としての発展を目指します。また、AMSCO事業以外に関しても、当社技術力のグローバル市場への展開を図るべく、当社製品、技術の海外展開を視野に入れたビジネスチャンスの探求に注力しており、それらの取り組みに資する人材育成も当社の課題としております。

 引き続き製品の安心・安全な生産と供給体制の強化を図り、お客様のニーズにお応えできる確固たる体制を築いてまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社では、サステナビリティを経営における重要課題の一つと認識しており、2019年にサステナビリティ経営推進委員会を設置しSDGs17のゴールから当社における重要課題8項目を特定、2022年にサステナビリティ経営を基盤とした長期経営ビジョンNSK2030を策定・公表しました。2024年6月には専任組織としてサステナビリティ推進室を新設し、サステナビリティを基盤とした事業運営体制強化に取り組んでおります。

 サステナビリティ経営推進委員会は執行役員会の諮問機関であり、サステナビリティ担当執行役員を委員長、経営企画担当執行役員及び品質保証担当執行役員を副委員長、各部署長を委員とし以下の事項を統括・審議を行い、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、その内容を執行役員会へ報告しております。

 

① サステナビリティ経営推進のための基本方針立案

② 基本方針に沿った施策の立案、推進及び実施報告

③ サステナビリティ経営に関連する情報開示に係る審議

④ その他サステナビリティ経営全般に係る事項

 

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 サステナビリティ経営推進委員会は年2回を定例開催としており、必要に応じて臨時開催しております。なお、2023年度は定時2回、臨時5回のサステナビリティ経営推進委員会を開催しました。

 

(2)戦略

① 気候変動に係る戦略(TCFD提言に沿った情報開示)

 当社主力製品の原材料であるとうもろこしは、気候の影響を多分に受ける農作物であることは言うまでもなく、また主力製品である糖化製品も、大きな需要のある清涼飲料用途向け出荷量が外気温や天候によって大きく左右される傾向にあることから、気候変動が当社に与える影響は大きいと認識しております。

 当社は事業活動に与えると想定される気候変動リスク・機会について4℃、2℃未満の2つのシナリオを基に以下の通り特定し、財務インパクトの評価を実施しました。その評価結果を踏まえ、特に影響の大きいリスクの軽減ないし機会の獲得に向けた対応策の検討を進めるとともに現在公表している温室効果ガス排出量削減目標以上の削減が可能となるよう努めて参ります。

 

[リスクと機会]

社会の変化

リスク項目

影響

期間

移行リスク

(2℃未満シナリオ)

炭素税導入・炭素税率の上昇

炭素税の負担による収益の減少

長期

輸出入含む配送コスト増による、原材料購買価格上昇

中期

電気料金上昇による製造コストの増加

中期

脱炭素に向けての情報開示

不十分な環境情報の開示による企業ブランド低下

中期

製品に対するニーズの多様化

消費者嗜好の変化によりサービスの需要が変動

中期

物理リスク

(4℃シナリオ)

平均気温の上昇

農作物(とうもろこし)の収量減少・品質低下に伴う調達コストの増加

中期

水不足

干ばつなど水不足による農作物(とうもろこし)の生産量の低下、及び工場操業への影響

長期

災害の激甚化(洪水など)

生産拠点が機能不全に陥り、事業活動に損害が生じる

中期

平均気温の上昇

従業員の熱中症者数が増加による事業活動の停滞

中期

機会

消費者の嗜好変化

温室効果ガス排出量の多い畜肉需要が減少し、オーツ麦や大豆ハンバーグなどのプラントベースフードの需要増により、販売機会拡大

中期

平均気温の上昇

飲料の需要増による販売機会増加

長期

※短期:~1年、中期:1年~4年、長期:4年~27年

高:10億円以上、中:1-10億円、低:1億円以下

 

[リスクへの対策]

・バイオマス燃料の使用、低炭素な化石燃料や非化石エネルギーへの転換、再生可能エネルギーの導入検討等による温室効果ガス排出量の抑制

・原料(とうもろこし)調達の多国籍化、とうもろこし原料以外の製品開発などによるBCP体制の構築

・サステナビリティ経営推進委員会の運営等、気候変動に関する組織的な取り組みと情報開示の実施

 

 上記は特定した気候変動リスクへの対応の抜粋となります。今後、当社HP等において気候変動が事業へ与える影響および対策について更なる情報開示を検討してまいります。

 

② 人材育成及び社内環境整備

 当社は、長期経営ビジョンNSK2030において、ビジョンの実現には変革を求め、挑戦する人材が不可欠であるとの考えのもと、従業員の成長と事業の発展が共にある姿を目指すことを掲げております。従業員の意欲を図る指標として、全社員を対象とした組織風土調査アンケートを定期的に実施しており、資格等級ごとに求められる行動特性を考課基準としたコンピテンシー制度の更なる浸透や、多様な人材を育成する為のジョブローテーションの導入検討など、社員エンゲージメントの向上に繋がる施策に取り組んでおります。

 

a.女性活躍推進

 2026年3月末までに係長級以上の女性の比率を6.5%以上にすることを目指し、女性が活躍できる環境づくり・インフラ整備を進めており、2023年には、社内横断的な組織として女性活躍推進タスクフォースを発足いたしました。同タスクフォースでは、女性社員のキャリアアップへの意欲向上、働き易い職場環境の整備を行うことを目的に、社内アンケートやインタビューにより現場の声を拾い上げながら、キャリアビジョン策定やライフイベントのサポートに資する仕組みづくりを推進しております。

 

b.障がい者雇用

 「障害者の雇用の促進等に関する法律」(昭和35年法律第123号)に基づき民間企業に求められる法定雇用率以上の水準を維持することを目標に、業務への適応をサポートする取り組みを続けております。

 

c.健康経営の推進

 健康経営の精神のもと、ワークライフバランスの推進に向け、就業時間管理の徹底、業務効率化の推進、適切な人員配置等を通じた長時間労働の削減に努めていくとともに、社員に対して有給休暇の積極的な取得も一層促して参ります。また、社員の健康を守ることは企業の責任であることを重く受け止め、定期健康診断の検査項目の充実、有所見者の再検査促進のための補助、健康維持に関する教育の機会を設けるなど、医療分野の専門機関との連携強化に向けた施策を行っております。

 

(3)リスク管理

a.気候関連リスクを識別・評価するプロセス

 当社では、「リスク管理規則」を制定し、事業運営上において発生しうるリスクの予見、評価、回避、及び再発防止に係る管理体制の整備と発生したリスクへ対応するために、総務人事担当役員を委員長(リスク管理統括責任者)とした「リスク管理委員会」を設置しておりますが、事業運営上において発生しうるリスクの内、気候変動に伴うリスクについては、サステナビリティ経営推進委員会において統括・議論する体制を整備しております。リスク管理委員会およびサステナビリティ経営推進委員会の審議内容は執行役員会及び取締役会へ報告されます。

 

b.気候関連リスクを管理するプロセス

 特定した気候関連リスクについてはサステナビリティ経営推進委員会においてその対応策を審議及び議論し、特に当社の事業活動に影響を及ぼす可能性が大きいと判断したリスクに関しての対応策は取締役会へ報告して、マネジメントレビューを受けます。

 

c.気候関連リスクの全社的リスク管理への統合プロセス

 気候変動にかかわるリスク管理はサステナビリティ経営推進委員会にて取りまとめております。今後は、サステナビリティ経営推進委員会での審議内容をリスク管理委員会へ報告・連携し執行役員会及び取締役会に報告する体制整備を進めることにより全社的なリスクとして統合してまいります。サステナビリティ経営推進委員会より気候変動に係るリスクを、リスク管理委員会よりその他のリスク管理の状況と対応について報告を受けた取締役会は各委員会を経由して指示・監督を行うことにより常に対応状況をモニタリングしています。

 

(4)指標及び目標

① 気候変動

 当社では、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、温室効果ガス排出量を指標と捉え、SHK制度(地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度)に基づき算定を実施しております。現時点での排出量削減目標として、2030年度までに2016年度基準排出量(216,738t-CO2)からの15%削減を設定しておりますが、上述した燃料置換等の設備投資を含めた諸施策の計画・実行により、その実現の見通しを立てており、削減目標の見直しや更なる排出量削減に向けた施策の可能性模索、検討を推進して参ります。2023年度には、当社事業活動に関わるサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の算定に着手するとともに、カテゴリ別の排出量を解析することで、Scope3の公表にむけた準備も進めております。今後も政府の掲げる「2050年カーボンニュートラルの実現」を見据え、排出量削減の取り組みを強化していきます。

 目標値:2030年度までに温室効果ガス排出量(Scope1+Scope2)を2016年度比15%削減(2016年度温室効果ガス発生量217千t/CO2)

 

排出量実績と2030年の目標値

データ年度

2016年度

2022年度

2030年度

(2016年比)

温室効果ガス排出量

(t-co2)

Scope1

194,412

184,913

Scope2

22,326

15,969

Scope1+2

216,738

200,882

184,226(▲15%)

※上記温室効果ガス排出量はSHK制度に基づき算定。Scope3については現在算定中であり、算定完了後に当社ホームぺージ等での公表を予定しております。

 

② 人材育成及び社内環境整備

a.女性活躍推進

 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づき公表した「一般事業主行動計画」において、以下の目標を公表しております。

 目標値:2025年度までに係長級以上の女性比率を6.5%以上にする

 実績値:6.8%(2024年3月31日時点)

 他、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)における公表値については本報告書「第1企業の概況 5従業員の状況」をご参照ください。

 

b.障がい者雇用率

 「障害者の雇用の促進等に関する法律」(昭和35年法律第123号)に基づく法定雇用率及び実績値は以下の通りです。

 目標値:2.3%(2022年度法定雇用率)

 実績値:3.6%(2023年度実績)

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

(1)原材料価格及び調達について

 当社は、原料とうもろこしを主として米国から輸入しておりますが、その価格はシカゴ穀物相場により変動し、為替相場、及び海上輸送運賃等の変動により調達諸費用は変動します。また工場のボイラー用燃料に重油、及び原油価格と連動性の高い都市ガスを使用しておりますが、原油価格の高騰は生産コストの上昇要因となります。原料、副原料、資材、燃料価格の上昇、並びに為替による変動分を製品販売価格に転嫁できない場合は、当社の業績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。これら穀物、為替の市場リスクに対しましては、当社は市場リスク管理規程に基づき投機的な取引を行わず、各種ヘッジ等の措置で変動の影響を低減しております。

 原料とうもろこしや重油等の輸入原燃料におきましては、輸出国の国政状況や自然災害等により適切に調達できない場合、また国内調達の資材等におきましては自然災害等により適切に調達できない場合には、当社の業績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。これらの調達リスクに対しましては、BCPの観点から複数の原料、燃料、資材の供給先を確保しております。

 また輸入されるとうもろこしは食品衛生法等により輸入時に様々な検査が行われ、輸出国に対し日本の輸入基準を満たした品質を求めていますが、国や行政が規定している品質のとうもろこしを輸入できない場合には、当社の業績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。これらの調達リスクに対しましては、輸出国、及び輸出国の積み出し港の選別、変更で対応しております。

(2)法的規制等について

 当社は、原料とうもろこしの輸入及び糖化品部門の主要製品である異性化糖の製造、販売にあたり、国内産いも澱粉、国内産砂糖の事業及び生産者の保護を目的とした法令の適用を受けております。2024年4月1日以降においては、農林水産省の政策方針に基づく異性化糖調整金制度の運用見直しにより、異性化糖調整金がより発生しやすくなる環境となりました。発生する異性化糖調整金につきましては、お取引先様からのご理解の下で販売価格への反映に努めておりますが、適切な反映が実現できない場合には、当社の業績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。また、異性化糖調整金として負担する財源の適正化を図るよう、農林水産省に対して制度運用に関する要望の発信に努めております。

(3)コンプライアンス・ガバナンスについて

 当社は食品素材、工業用素材及び医薬品原料と社会生活に不可欠な様々な製品を製造・販売しており、その事業活動において会社法、税法、食品安全基本法、医薬品医療機器等法、独占禁止法など多くの法令・規制の対象となっております。これらの法令・規制を始めとした求められるコンプライアンス・ガバナンスを十分に実現できない場合、社会的信用が低下し当社の業績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

 これらの法令・規制を遵守するため、当社では「日食行動指針」において「公明正大を旨とする」ことを定め、当社役職員が遵守すべき「役職員行動規範」を制定するとともに、コンプライアンス委員会及びリスク管理委員会を設置し、コンプライアンス委員会においてコンプライアンス体制の周知徹底及び体制の整備、リスク管理委員会においてリスクマネジメントを行っております。

 このような取り組みにおいてもコンプライアンス・ガバナンス上のリスクを排除することはできず、2022年には元社員が約10年間にわたり会社の資金を横領する不正行為が発覚しました。それを受け、当社は調査委員会を設置し不正行為が起こりえた原因を調査するとともに社長を委員長とする社内不祥事再発防止委員会を設置し、①内部統制の強化、②内部通報制度の信頼向上、③組織風土の改善、④不正を予防・早期発見する体制の構築 に関する施策を実行し、再発防止に取り組んでおります。

(4)自然災害による影響

 当社は、主要な生産拠点を東海地区(静岡県富士市)に有しております。地震等による被害を抑えるために補強工事等対策を施しておりますが、この地域において大規模な地震等の災害が発生した場合、その程度によっては工場の生産設備や操業に重大な支障を来たすとともに、その復旧に多額の費用が生じ、当社の業績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

(5)市場における競合の状況について

 当社は、食品業界及び製紙業界等に澱粉及びその加工製品を販売しております。経済活動の正常化が進む中、世界的に穀物需給が回復傾向にありますが、依然として天候不順やウクライナ情勢、中東情勢といった地政学リスクの高まり等により、穀物相場の上昇懸念が収まりをみせておりません。また、パナマ運河の水位低下による物流停滞も原料調達におけるリスクとして懸念されております。一方、国内においては、物流2024年問題により、生産拠点から遠隔地への輸送に影響が出る可能性があり、更には異性化糖調整金負担といったコスト上昇が業績に影響を与える可能性があります。競合他社の競争においても、シェア確保を前提とした今後の動向が予測困難な状況が続いており、原料相場動向に合致しない過剰な価格下落が懸念されます。経済活動が再開されたことを受け、人流回復による外出機会増加と外食産業の営業時間延長等、国内市場での当社製品に対する需要増が期待されますが、今後の競合製品の輸入動向、さらには国内市場の動向によっては、当社の業績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

(6)物流2024年問題について

 当社は、東海地区(静岡県富士市)及び中国地区(岡山県倉敷市)の東西2拠点で製品を製造しており、主要消費地への製品輸送距離の面では比較的有利な立地条件となっております。しかしながら、物流2024年問題によりドライバーの拘束時間が更に厳格化される中、様々な見直しが必要であり、場合によっては、安定的な配送の維持が困難となる、大幅なコストアップに繋がる等の可能性もあり、当社の業績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。それらを可能な限り回避するため、物流業者との日々の情報交換及び課題解決に向けた施策の検討および実施に努めております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度における我が国経済は、コロナ禍の3年間を乗り越え、インバウンドやレジャー需要・サービス消費回復の動きが続く一方で、エネルギー価格上昇・生活必需品の値上げ等の物価高による消費者マインド低下や、長期化する人手不足等の影響により緩やかな回復に留まりました。また、欧米各国の金融引き締めや円安進行の継続、ウクライナや中東の地政学リスク、能登半島地震等により先行きは極めて不透明な状況となりました。

 原料とうもろこしのシカゴ相場は、期初657セント/ブッシェル台で始まり米国主産地の高温乾燥予報及び作柄報告の悪化から6月中旬には一時671セント/ブッシェル台迄値を上げましたが、米国の収穫が順調に進んだことやブラジルの天候回復等から2月下旬には399セント/ブッシェル台迄値を下げました。しかしその後、ブラジルの高温乾燥気候や3月末に発表された米国の作付意向面積が市場予想を下回ったこと等から値を上げ、期末時点では442セント/ブッシェル台、通期平均では505セント/ブッシェル台となりました。

 WTI原油相場は期初80ドル/バレル台で始まり、欧米利上げによる景気減退観測やイラン核合意再建により原油供給が増加する見込み等から67ドル/バレル台迄値を下げましたが、ウクライナ情勢の緊迫による地政学リスクの高まりやOPECプラス等の減産による供給減少懸念から9月下旬には93ドル/バレル台迄値を上げ、期末時点では83ドル/バレル台、通期平均では77ドル/バレル台となりました。

 米国から日本までの穀物海上運賃は、期初53ドル/トン台で始まり荷動きが低調に推移し、船舶余剰感から43ドル/トン台迄値を下げました。しかしその後、原油相場の高騰に伴う船舶燃料油の上昇や南米産穀物の荷動き増加等から値を上げ、更にパナマ運河の水位低下に伴う航行制限による長期滞船等から一時63ドル/トン台迄値を上げましたが、長期滞船は解消されつつあり値を下げ、期末時点では56ドル/トン台、通期平均では52ドル/トン台となりました。

 為替相場は、期初133円/ドル台で始まり、好調な米国経済指標等から米金利上昇が継続する一方、本邦では金融緩和を継続し、日米金融政策の違いを背景にしたドル買いによる円安が進行しました。その後も市場予想を上回る米経済指標を受け追加利上げ観測が強まったことや本邦金融政策の現状維持が発表されたことに加え、FRB議長の強硬的な発言等から11月中旬には151円/ドル台迄円安が進行しました。しかしその後、日銀総裁発言によるマイナス金利解除観測の高まりや、米国にて2024年中に利下げが行われる予想等から12月下旬には一時141円/ドル台迄円高が進行しましたが、能登半島地震が経済に与える影響への懸念や日銀が3月の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除等を決めたものの今後も緩和的な金融環境が続くという見通しから円安が進行し、期末時点では151円/ドル台、通期平均では144円/ドル台となりました。

 販売面では、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の扱いが2類から5類へ移行し、社会経済活動の正常化が進んだことにより、人流が回復し、またインバウンドの増加も重なり、観光、イベントといった分野でチラシ・パンフレットに使用される澱粉製品の需要が回復傾向でありました。一方、新聞、雑誌のデジタル化から、紙の生産量の減少傾向は依然続いており、製紙向け澱粉の販売数量は前事業年度に比べ減少しました。糖化製品は、大型連休も天候に恵まれ、夏の猛暑の影響により飲料向けを中心に販売数量は増加しました。物価上昇の影響で一般消費者の節約志向が強まり、需要が減退する場面もありましたが、人流回復と外出機会増加により外食産業を始めとする業務用需要は回復傾向であり、業務用途の販売数量を含め、糖化製品全体では販売数量が増加する結果となりました。なお、原料とうもろこし及び原油相場高騰による製造費用上昇を背景とした製品価格の適正化が進捗したことにより、糖化製品、澱粉製品いずれも製品価格は前事業年度に比べて上昇しました。一方で、澱粉製品は販売数量減少の影響により、副産物は穀物相場が下落したことや輸入品の影響から販売価格が下落したため、売上高は前事業年度に比べ減少しました。

 また、資本効率性向上の観点から、2023年5月に当社が保有していた株式会社サニーメイズの全株式の譲渡を行いました。これに伴い、同社を関連会社から除外し、関係会社株式売却益566百万円を特別利益として計上しております。一方、同様の観点で2023年10月に当社が保有している静岡県富士市内の倉庫用地の売却を決議したことに伴い、減損損失322百万円を特別損失として計上しております。なお、当該倉庫用地については2024年3月に売却が完了しております。

 この結果、当事業年度における当社の売上高は666億7千万円(前事業年度比3.2%増)、営業利益は25億6千万円(前事業年度比27.6%減)、経常利益は30億円(前事業年度比10.0%減)、当期純利益は24億3千万円(前事業年度比6.6%減)となりました。

 次に、各部門の販売概況は以下のとおりであります。

(澱粉部門)

 澱粉部門は、社会経済活動が再開したことにより食品向け澱粉需要は回復傾向にあるものの、製紙向け澱粉需要が全体的に減少したことを受け、澱粉製品の販売数量は減少しました。売上高は140億円(前事業年度比0.5%減)となりました。

(糖化品部門)

 糖化品部門は、経済再開により外出機会が増加したことで業務用販売が回復、更に夏の猛暑の影響により飲料向け販売数量が増加しました。売上高は423億8千万円(前事業年度比5.7%増)となりました。

(ファインケミカル部門)

 ファインケミカル部門は、社会経済活動の正常化が進んだ影響により製品販売が回復傾向となり、売上高は22億9千万円(前事業年度比8.3%増)となりました。

(副産物部門)

 副産物部門は、主製品の販売増により生産量は増加しましたが、穀物相場の下落と輸入品の影響から販売価格も影響を受け下落し、売上高は80億円(前事業年度比3.8%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下資金という。)の残高は、前事業年度末より1億9千万円減少し、2億1千万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 営業活動の結果、獲得した資金は67億7千万円となりました。これは主として、税引前当期純利益32億5千万円に減価償却費24億1千万円及び仕入債務の増加額13億6千万円を加算した額等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動の結果、使用した資金は24億5千万円となりました。これは主として、関係会社株式の売却による収入6億1千万円から当社工場設備への投資などの有形固定資産の取得による支出29億7千万円を控除した額等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 財務活動の結果、使用した資金は45億1千万円となりました。これは主として、借入金の減少(純額)29億9千万円及び配当金の支払額13億8千万円等によるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

 当事業年度において、前事業年度に比べファインケミカル部門の生産高が著しく増加しております。主な要因は、販売数量の増加によるものです。

 

a. 生産実績

 当事業年度における生産実績を事業部門別に示すと、次のとおりであります。

事業部門の名称

生産高(百万円)

前事業年度比(%)

澱粉部門

10,824

102.8

糖化品部門

41,559

105.8

ファインケミカル部門

2,338

124.7

副産物部門

8,052

96.1

合計

62,775

104.5

(注)1 金額は、販売価格によっております。

   2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

b. 受注実績

 当社は受注生産を行っておりません。

 

c. 販売実績

 当事業年度における販売実績を事業部門別に示すと、次のとおりであります。

事業部門の名称

販売高(百万円)

前事業年度比(%)

澱粉部門

14,000

99.5

糖化品部門

42,381

105.7

ファインケミカル部門

2,292

108.3

副産物部門

8,002

96.2

合計

66,676

103.2

 

(注)1 主な相手先の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前事業年度

(自 2022年 4月 1日

至 2023年 3月31日)

当事業年度

(自 2023年 4月 1日

至 2024年 3月31日)

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

三菱商事株式会社

11,016

17.1

10,907

16.3

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

1)財政状態

 当事業年度における総資産は464億2千万円となり、前事業年度末と比較して7千万円の減少となりました。その主な要因は、有形固定資産が9億5千万円増加したものの、原材料及び貯蔵品が11億円減少したこと等によるものです。また、負債については、前事業年度末と比較して17億円の減少となりました。その主な要因は、買掛金が13億6千万円増加したものの、借入金(純額)30億9千万円減少したこと等によるものです。

 なお、純資産は243億3千万円となり、自己資本比率は前事業年度末と比較して3.6ポイント増加し、52.4%となりました。

2)経営成績

 当社の当事業年度の経営成績は、売上高666億7千万円、営業利益25億6千万円、経常利益30億円、当期純利益24億3千万円となり、前事業年度と比較して増収減益となりました。まず、増収の主な要因は、夏の猛暑の影響による糖化製品の販売数量増加に加え、原料とうもろこし及び原油相場高騰による製造費用上昇を背景とした製品価格の適正化が進捗したことによるものであります。また、減益の主な理由は、穀物相場の下落や輸入品の影響から副産物の販売価格が下落したことや前述の製造費用の上昇等によるものであります。

 経営上の目標達成状況を判断する為の客観的な指標について、当社は「中期経営計画2022-24年度(中経2024)」において、連結経常利益ベースで単年度17±4億円を指標として掲げており、次期見通しとしては、売上高625億円、営業利益13億円、経常利益17億円、当期純利益13億円を見込んでおります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当事業年度におけるキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 当社の資本の財源及び資金の流動性については、製造設備の更新及び製品品質向上に係る工事等の支出に対し、その資金の調達財源としては主としてグループファイナンスの活用によっております。

 なお、当事業年度末における借入金の残高は79億円となっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 この財務諸表の作成にあたって、当事業年度末現在における資産・負債及び当事業年度における収益・費用等に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績や現在の状況に応じて合理的と思われる方法によって判断をしておりますが、見積りには不確実性があるため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 当事業年度末現在における資産・負債及び当事業年度における収益・費用等に影響を与える見積りは、主に繰延税金資産、退職給付引当金、賞与引当金となります。

 財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 財務諸表(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社と三菱商事株式会社との代理店契約の締結

 1961年7月に当社の製品販売について三菱商事株式会社と代理店契約を締結し、現在に至っております。

 

6【研究開発活動】

 当事業年度における研究開発活動の主な目的は、市場ニーズにタイムリーに応え、かつお客様の要望に応えた製品を迅速に開発することであります。そのため、人々の健康と環境に配慮した製品の開発およびその高機能化・高付加価値化を推進するとともに、利用・用途開発研究を推進することにより新しい市場の開拓に取り組みました。

また、製品品質および生産効率の向上を図るために、最新の科学技術を適用した新製品・新技術開発にも積極的に取り組み、お客様の商品開発に繋がる提案を進めてきました。

 当期の研究開発費の金額は231百万円であります。

 次に、部門別の研究開発活動は以下のとおりであります。

(1)澱粉部門

 環境ニーズへの対応として澱粉をベースとしたバイオマス材料の開発を推進し、澱粉を70%配合したポリプロピレン系材料である「スタークロス70PPi」を上市しました。また、食品用加工澱粉分野において、さまざまなお客様のニーズに応えるべく、新たな食感を付与した澱粉の開発を行い、フライ食品用に適した澱粉として「日食テクスターチ#01」を上市するとともに、各種タピオカ加工澱粉の用途開発を推進しました。

 当部門における研究開発費は、81百万円であります。

(2)糖化品部門

 複数の新機能性糖質の開発を進めるとともに、種々のオリゴ糖の用途研究を推進しました。また、糖質の開発に必要な酵素生産菌の探索から培養、育種、生産酵素の基礎的諸性質の検討及び商業利用への推進を行いました。さらには、糖化品を原料とする食物繊維の開発も継続、その生理機能の解明や用途開発を推進しました。

 当部門における研究開発費は、120百万円であります。

(3)ファインケミカル部門

 シクロデキストリンやオリゴ糖及びそれらの誘導体の研究開発を進め、化粧品や医薬品等への用途拡大に取り組みました。

 当部門における研究開発費は、22百万円であります。

(4)副産物部門

 副産物の利用に関する研究開発を行い、用途開発に取り組みました。

 当部門における研究開発費は、7百万円であります。