第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営方針

当社グループは、「売り手によし、買い手によし、世間によし、三方よし」を規範とし、飼料の生産から食品の販売まで取り扱う垂直型メーカーとして「安全・安心」で「良質」な製品を提供することを通じて、豊かな食文化の実現に貢献することを経営理念としております。

また、当社グループは、2024年5月にパーパス、“「生きる力」を生みだす食糧品メーカーである林兼産業は 食の可能性をひろげる商品を生みだすことで 誰もが幸せに生きられる未来をつくるために活動します。”、コーポレートスローガン“おいしさを、生きるちからに。”を公表しております。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、昨年4月からの2ヵ年を、新中期経営計画Challenge2026の期間と位置付け、ROA(当面の目標5%、当期間中の目標3.2%)、EBITDA(当面の目標6%)、ネットD/Eレシオ(当期間中の目標0.7)を経営指標として、事業基盤の盤石化に取組み、安定配当の継続を目指しております。

 

(3) 中長期的な経営戦略

“新中期経営計画『Challenge2026』”では、事業基盤を盤石にするため、これまでの中期経営計画の成果を基にChallengeを続け新たな構造改革を実行し、「成長投資の推進」「財務戦略」「コーポレート・ガバナンス」をベースに、ESG経営の視点を取り入れ、地域社会とともに持続的に発展・成長する会社を目指しております。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取組みも進めております。

経営戦略とする「成長投資の推進」については、成長事業の規模拡大に向けた集中投資と収益力向上につながるDX推進に加え、従業員教育の充実と人財への投資を進めております。「財務戦略」については、資産の戦略的組み替え、経営指標の目標値をROAとEBITDAとして設定し、有利子負債の削減を進めつつ、ネットD/Eレシオ0.7以下を目標として掲げております。「コーポレート・ガバナンス」については、取締役会機能の実効性強化、多様性を重視した経営強化、グループ経営強化を進めております。

 

 

(4)経営環境

当社グループを取巻く原料事情は、国際情勢を背景とした原材料価格高騰やエネルギーコスト高騰に加え、円安水準も継続していることより、引き続き厳しい状況が続くと思われます。魚肉練り製品の主原料であるすり身、食肉加工品の主原料である豚肉、配合飼料の主原料である魚粉・穀物などは、相場変動により当社損益を左右する大きな要因となります。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループは昨年4月から、“中期経営計画『Challenge2026』”(2025年3月期~2026年3月期)を策定し、持続的成長と企業価値向上に向けた経営基盤の強化に取り組んでおります。また、中期経営計画『Challenge2026』の中で、新たにパーパスおよびコーポレートスローガンを策定いたしました。パーパスでは生きる力を生む食糧品を通じて、誰もが幸せに生きられる未来の実現を掲げ、コーポレートスローガンを「おいしさを、生きるちからに。」と定め、当社の目指すべき長期的な方向性を明確に示しました。

中期経営計画の初年度にあたる当連結会計年度は、飼料の輸出拡大や、原材料およびエネルギーコストの上昇に対応した価格改定の実施により、売上高および利益面で計画を上回る実績を残すことができました。

今後も資本コストを意識した経営と、収益構造の見直しや生産体制・設備の最適化、安定的な株主還元、成長投資を通じて構造改革を着実に進めてまいります。あわせて、DXの推進やESGの視点を経営に取り入れ、SDGsの実践、カーボンニュートラル推進、人的資本施策、動物飼養管理など、サステナビリティ経営を進めてまいります。

当社は監査等委員会設置会社であり、取締役会の監査・監督機能の強化ならびに透明性の確保を通じて、より一層コーポレート・ガバナンスの充実を図ります。取締役会の業務執行決定権限を取締役に委任することにより、取締役会の適切な監督のもとで経営の意思決定および執行のさらなる迅速化を進めてまいります。

各事業セグメントにおいては、原材料相場等の事業環境の変化に迅速かつ的確に対応しながら、将来に繋がる事業基盤の確立を目指し、以下のテーマに取組んでまいります。

 

食品事業

事業基盤を盤石にするには、ブランド力・マーケティング力をはじめ、対策を講じるべき課題が複数あると認識しており、各部門の取組みは以下のとおりです。

機能食品部門においては、機能性素材である「エラスチン」・「ヒシエキス」・「アスコフィラン」のエビデンス拡充および機能性表示の提案による国内拡販と認証取得による海外強化を図り、介護食は委託給食会社・配食会社等との法人向け販路拡大に努めてまいります。

加工食品部門においては、魚肉ねり製品は既存取引先との取組み強化と新規取引先開拓を進めるとともに、畜肉加工品はマーケティング機能強化によるブランド力アップと、自社グループで養殖・加工を行っている鰻やブリなどの水産加工品においても販路開拓に努めてまいります。

食肉部門においては、黒豚農場では食品安全・品質確保に係る国際認証(SQF)を取得し、「霧島黒豚」のブランド戦略を構築し販売強化に努めてまいります。

 

飼料事業

水産資源保全や海洋環境保全への対応としての、低魚粉飼料開発のさらなるスピードアップが重要であると認識しております。

養魚用飼料においては、販売数量は伸長しており、引き続き輸出拡大や大手養殖場との取組みを強化するとともに魚粉代替飼料の開発、品質差別化飼料の開発、難治性魚病の疾病対策法の開発や栄養性疾病対策の確立にも努めてまいります。水産物においては、鮮魚販売だけでなく、食品部門との連携を強化し、同部門で培った加工技術を活用して、鰻やブリなどの加工品で高付加価値化を図ってまいります。畜産用飼料においては、霧島黒豚の肉質向上および生産性向上の飼料開発に取組んでまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、持続的成長と中長期的な企業価値の創出のため、様々なステークホルダーとの適切な協働に努めるべきと認識しております。当社取締役会・経営陣は、「売り手によし、買い手によし、世間によし、三方よし」を規範とし、「安全・安心」で「良質」な製品を提供することを通じて、豊かな食文化の実現に貢献するとの経営理念をふまえ、ステークホルダーの権利・立場や健全な事業活動倫理を尊重し、社内集会や広報を通じて、企業文化・風土の醸成に努めております。サステナビリティに関する基本方針や重要事項、具体的施策については、社内規程による決裁権限の基準等に従い、取締役会や経営会議での決議、業務執行取締役の決裁を経て、適切に実施されております。サステナビリティを巡る課題については、「自然環境の保全に積極的に取り組む」旨、「良き企業市民として積極的に社会貢献活動を行う」旨、「国際社会の一員として関係地域の発展に努める」旨を「行動憲章」に定め、実践しております。

 

(2) 戦略

当社グループは、“中期経営計画『Challenge2026』”において、パーパスおよびコーポレートスローガンを策定いたしました。パーパス(存在意義)を“「生きる力」を生みだす食糧品メーカーである林兼産業は 食の可能性をひろげる商品を生みだすことで 誰もが幸せに生きられる未来をつくるために活動します。”とし、コーポレートスローガンを“おいしさを、生きるちからに。”として、当社の長期的な目標を示しました。

当中期経営計画における経営戦略は、これまでの取組をベースとして、成長投資の推進に人財への投資を組入れ、従業員教育の充実や人事制度の改定による従業員のエンゲージメント向上に取組んでおります。カーボンニュートラルの取組では、前中期経営計画の削減目標2020年度対比10%削減を達成し、当中期経営計画の期間中の目標を25%削減(2020年度対比)として、「太陽光発電設備の導入」「省エネ効率の高い機器への設備更新」「再生可能電力の調達」等に取組んでおります。

 

(人的資本に関する戦略)

当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針については、パーパスで謳った「生きる力」を生みだすのは従業員という考えの基、各人の専門性向上を促す研修制度の充実、ケミストリーを誘発する人事ローテーションの実施、女性の活用やグローバル展開に必要な外国人採用、事業環境の変化に対応した中途採用や社員教育の実施、さらに人事制度の随時改定を行うことで、従業員のエンゲージメント向上に取組んでおります。

さらに当社グループでは、従業員満足度の向上が顧客満足度、ひいては会社の業績向上に繋がると考え、2020年度から従業員満足度に係る「従業員意識調査」を導入しております。当社が成長していける会社(従業員満足度の高い組織)なのか現状を把握し、今後の改善に繋げることを目的としています。調査は、「働きがい」,「職場環境」,「組織風土」,「福利厚生」,「成長支援」,「コンプライアンス」の分類ごとに設問を設定し、回答結果の分析を各職場にフィードバックし、改善に役立て、より良い職場となることを目指しております。

 

(3) リスク管理

当社のリスク管理体制の整備状況については、非常時に適切かつ合理的に対処するため、リスク管理規程、リスク管理委員会規程、危機管理規程や品質管理規程等の社内規程に基づき危機管理・対処の体制を整備しており、必要に応じて代表取締役社長を本部長とする危機管理対策本部を設置して対処することとしています。また、グループ会社に対しては、毎月リスク報告を義務付けています。気候変動等を起因とする異常気象・自然災害についても、リスク管理規程に基づく「リスク一覧表」のなかで、自然災害の発生により、甚大な人的・物的被害が生じることで生産活動や販売活動が滞ると認識しており、具体的な防止策と応急対処方法を定めております。

 

 

(4) 指標および目標

当社グループは、「事業活動を通じて地域社会の持続的な発展に貢献する企業を目指す」ことを経営ビジョンに取り入れ、サステナビリティ経営の一環としてカーボンニュートラルの取組を開始しており、CO2の削減目標を下記のとおり設定しております。

<目標値の設定>

最終的な目標は2050年のゼロ化達成とし、中間目標については2030年度までに50%削減(2020年度比)するものとしております。

         (t-co2)

 区 分

2020年実績

2023年実績

中期経営計画

Challenge2026

期間中の目標

2030年目標

CO2排出量

27,545

23,902

20,600

13,733

 

 

<取り組み内容>

・ 太陽光発電設備の導入

・ 省エネ効率の高い機器への設備更新

・ 再生可能電力の調達

・ LED照明への切り替え    

・ 事業所毎のCO2排出量を分析し、削減に向けた施策を適時実施
 

(人的資本に関する指標および目標)

当社グループでは、「2(2)戦略」に記載した人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針を進める一環として、次の指標および目標を設けております。

当社は、女性活躍推進法および次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を策定しております。女性活躍を推進するため、計画期間を2027年3月31日まで延長し、目標1として「正社員における女性の構成比率を25%以上」(2025年3月31日時点は21.6%)とするため、女性活躍推進に関する研修や、正社員への転換希望者の募集を継続して実施しております。また、目標2として「平均残業時間を月10時間以内」(2024年4月~2025年3月集計は10.49時間)とするため、各労務管理担当者による残業時間の把握、ノー残業デーの設定等に取組んでいます。次世代育成支援のためには、多様な働き方に対応できるよう、契約社員から正社員への登用や、総合職社員から一般職社員(地域限定社員)への転換制度を実施して、その周知と定着を図っております。今後はさらなる企業価値向上を目指して、女性や外国人の中核人材への登用に努め、測定可能な目標の設定についても議論してまいります。

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅したものではありません。

 

(1) 特定の取引先への依存について

当社グループは、魚肉ねり製品、養魚用飼料の販売において特定取引先への依存度が高く、2025年3月期の連結売上高に占める割合は、養魚用飼料を取り扱う青島天乙吉星国際貿易有限公司が15.6%、株式会社兵殖が11.0%、魚肉ねり製品及び養魚用飼料を取り扱うマルハニチロ株式会社が11.5%となっております。

特定の取引先への依存リスクを低減するため、販売国の分散化や新規取引先の拡大に取り組んでおりますが、これらの取引に支障が生じた場合には、売上の減少などが当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 農畜水産物相場の変動について

当社グループは、販売及び原材料等の仕入れにおいて農畜水産物を多く取り扱っておりますが、これらは市場での需給状況や、生産地域での天候不順、自然災害、疾病の発生などにより相場が大きく変動する可能性があります。

当社グループはこれらの相場変動リスクに対し、販売・仕入先の分散化や、新規ルートの獲得、販売・仕入形態の多様化によるリスク分散に努めておりますが、予想を超える相場変動が生じた場合には、売上高の減少や原材料価格の上昇などが業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 売上債権の回収について

当社グループは販売先に対して信用リスクを有しており、特に配合飼料の販売においては回収サイトが長く、その販売先には信用力の乏しい水畜産物の生産者が多く含まれております。

これらの販売先は、水畜産物相場の下落、台風や赤潮などの自然災害、豚熱や鳥インフルエンザなど疾病の発生による影響を受けやすく、予想できない事象の発生により業績を悪化させた場合には、多額の売上債権が回収困難になる可能性があります。

当社グループはこれらの回収リスクに対し、十分な与信管理を行うとともに、売上債権に対して一定の貸倒引当金を計上しておりますが、貸倒引当金を大幅に超える貸し倒れやその懸念が発生した場合には、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 為替変動リスクについて

当社グループが行う製品の輸出や原材料等の輸入取引は、為替相場の影響を受けております。

当社グループは為替相場の変動リスクに対し、外貨建取引に関しては為替予約によるリスクヘッジを行っておりますが、主に外貨に対する円安傾向が長く続いた場合には、原材料価格の上昇などが業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 金利の変動について

当社グループは、必要資金を金融機関からの借入れやファイナンス・リースにより調達しております。

当社グループは借入金残高の圧縮による有利子負債依存度の低減に努めておりますが、将来の金利情勢や当社グループの信用状態の悪化により金利が上昇した場合には、支払利息の増加が業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 食品の安全性について

当社グループは食の安全を第一とし、ISO22000(食品安全マネジメントシステム)の認証を取得するとともに、品質管理委員会、品質保証部、生産工場の品質管理部門が連携した品質保証体制のもと、品質管理と品質保証の充実に取り組んでおります。

しかしながら、当社グループの取り組みを超えた事象が発生した場合や、食の安全を脅かすような社会全般にわたる問題が発生した場合には、信頼の失墜や風評被害による売上高の減少等が業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

また、製造工程での不測の事故の発生等から、大規模な製品回収や多額の製造物賠償責任が生じた場合には、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 自然災害について

当社グループは、食品や飼料の製造工場を始め養豚場や養鰻場などを主に西日本地区に保有しております。このような中、台風や地震などの予測困難な自然災害が発生した場合に備え「危機管理規程」を制定し、非常時に適切かつ迅速に対処するための体制を定めておりますが、大規模な自然災害等により、当社グループまたは取引先において予想以上の被害を受けた場合には、事業活動の停滞または停止、多額の復旧費用の発生など業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 農畜水産物の疾病や育成成績に関するリスク

当社連結子会社キリシマドリームファーム株式会社が運営する農場においては、豚熱などの疾病の発生リスクに対し、必要な防疫対策を講じております。また、養魚用飼料供給先の大手養殖場における養殖魚の疾病の発生リスクに対しては、現地と情報を共有し当社アクアメディカル・ラボのスタッフによる予防対策や診療行為を講じております。しかしながら、全てのリスクを回避するのは困難であり、未曽有のウイルス感染による疾病が発生した場合の肥育豚の大量処分、あるいは高水温や赤潮等の想定外の自然環境の変化が発生した場合の養魚用飼料の供給停止など、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 法令・規制に関するリスク

当社グループはコンプライアンス経営宣言のもと、法令遵守を重要な企業の責務と認識し、役員・全社員が法令遵守と企業倫理の徹底に取組んでおります。しかしながら、このような取組みを講じても、個人的な不正行為等を含めコンプライアンスに関するリスクや社会的に信用が毀損されるリスクを回避できない可能性があり、万一法令違反等が発生した場合には、社会的信用の失墜や追加費用の発生等により、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度のわが国経済は、一部に足踏みが残るものの、景気は緩やかに持ち直しました。しかしながら、食品業界におきましては、円安による原材料価格やエネルギーコストの高騰など、依然として先行き不透明な厳しい経営環境が続きました。

このような状況のなか、当社グループではHayashikaneだからできる『生きる力』のジャンルトップを目指し「中期経営計画Challenge2026」(2025年3月期~2026年3月期)を策定いたしました。これまでの中期経営計画の成果を基に「新たな構造改革」と称して、資本コストを意識した経営実現、収益構造の見直し、生産体制および設備の最適化、安定配当の継続、将来に向けての投資等を実行してまいりました。

当連結会計年度の売上高は、原材料価格やエネルギーコストの高騰に対応するために行った価格改定や、養魚用飼料の販売数量増加などにより492億67百万円(前期比4.0%増加)となりました。損益面におきましては、養魚用飼料の販売数量が増加したことなどにより、営業利益は10億76百万円(前期比54.1%増加)、経常利益は13億63百万円(前期比49.3%増加)、また、政策保有株式の縮減に伴う投資有価証券売却益もあり、親会社株主に帰属する当期純利益は10億55百万円(前期比40.9%増加)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。

 

食品事業

機能性素材におきましては、エラスチンの国内向け販売数量が増加したことなどにより、増収となりました。

加工食品におきましては、魚肉ねり製品の国内向け販売数量は増加したものの海外向け販売数量の減少などもあり、減収となりました。

肉類におきましては、収益性を重視した取引に努め、販売数量が減少したことなどにより、減収となりました。

これらにより、売上高は223億99百万円(前期比0.7%減少)となりました。損益面におきましては、「霧島黒豚」の農場肥育成績悪化とそれに伴う食肉販売数量の減少等により、セグメント利益(営業利益)は4億63百万円(前期比42.3%減少)となりました。

 

飼料事業

配合飼料におきましては、養魚用飼料の販売数量が増加したことなどにより、増収となりました。

水産物におきましては、相場が低調に推移したことにより、減収となりました。

これらにより、売上高は268億30百万円(前期比8.3%増加)となりました。損益面におきましては、養魚用飼料の販売数量増加および生産効率改善等により、セグメント利益(営業利益)は16億61百万円(前期比77.1%増加)となりました。

 

その他の事業

その他の事業におきましては、売上高は38百万円(前期比8.9%減少)、セグメント利益(営業利益)は27百万円(前期比15.4%減少)となりました。

 

 

当連結会計年度末における資産合計は276億32百万円となり、前連結会計年度末に比べ14億11百万円減少しました。流動資産の減少(前期末比3億40百万円減少)は、主に現金及び預金が6億44百万円、原材料及び貯蔵品が3億79百万円増加したものの、売掛金が13億89百万円減少したことなどによるものであり、固定資産の減少(前期末比10億70百万円減少)は、主にのれんが2億34百万円増加したものの、土地が12億3百万円減少したことなどによるものです。

 

当連結会計年度末における負債合計は158億41百万円となり、前連結会計年度末に比べ21億9百万円減少しました。流動負債の減少(前期末比22億12百万円減少)は、主に契約負債が2億46百万円増加したものの、買掛金が16億73百万円、短期借入金が10億8百万円減少したことなどによるものであり、固定負債の増加(前期末比1億3百万円増加)は、主に長期借入金が2億31百万円増加したことなどによるものです。

 

当連結会計年度末における純資産合計は117億91百万円となり、前連結会計年度末に比べ6億98百万円増加しました。これは主に配当金の支払いによる利益剰余金の減少が1億29百万円、その他有価証券評価差額金の減少が1億32百万円あったものの、親会社株主に帰属する当期純利益を10億55百万円計上したことなどによるものです。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、財務活動によるキャッシュ・フローは減少したものの、営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フローの増加により、前連結会計年度末に比べ6億44百万円増加の31億46百万円(前期末比25.8%増加)となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当連結会計年度における営業活動による資金の増加は11億14百万円(前期は35億79百万円の増加)となりました。これは主に法人税等の支払額が4億19百万円あったものの、税金等調整前当期純利益を16億62百万円計上したことなどによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の増加は8億85百万円(前期は3億99百万円の減少)となりました。これは主に事業譲受による支出が6億43百万円あったものの、有形固定資産の売却による収入が13億98百万円あったことなどによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の減少は13億55百万円(前期は12億41百万円の減少)となりました。これは主に短期借入金の純減少額が10億10百万円、リース債務の返済による支出が3億52百万円あったことなどによるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

食品事業

16,447

△5.0

飼料事業

28,971

5.5

合計

45,418

1.4

 

(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

b.商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

食品事業

5,714

2.7

飼料事業

2,466

15.3

合計

8,181

6.2

 

(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

食品事業

22,399

△0.7

飼料事業

26,830

8.3

その他の事業

38

△8.9

合計

49,267

4.0

 

(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

青島天乙吉星国際貿易有限公司

7,675

15.6

マルハニチロ株式会社

5,910

12.5

5,679

11.5

株式会社兵殖

5,421

11.0

 

(注) 1 総販売実績に対する割合が10%以上のものについて記載しております。

2 販売実績が総販売実績に対して10%以下である相手先については、「金額」「割合」の記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度のわが国経済は、一部に足踏みが残るものの、景気は緩やかに持ち直しました。しかしながら、食品業界におきましては、円安による原材料価格やエネルギーコストの高騰など、依然として先行き不透明な厳しい経営環境が続きました。このような状況のなか、当社グループではHayashikaneだからできる『生きる力』のジャンルトップを目指し「中期経営計画Challenge2026」(2025年3月期~2026年3月期)を策定いたしました。これまでの中期経営計画の成果を基に「新たな構造改革」と称して、資本コストを意識した経営実現、収益構造の見直し、生産体制および設備の最適化、安定配当の継続、将来に向けての投資等を実行してまいりました。

当社グループの当連結会計年度の経営成績につきましては、売上高492億67百万円、営業利益10億76百万円、経常利益13億63百万円、親会社株主に帰属する当期純利益10億55百万円となりました。

売上高は、原材料価格やエネルギーコストの高騰に対応するために行った食品・飼料の価格改定や、養魚用飼料の販売数量増加などにより、18億91百万円の増収となりました。

営業利益は、養魚用飼料の販売数量増加が増加したことなどにより、3億77百万円の増益となりました。

経常利益は、営業利益の増加により、4億50百万円の増益となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、政策保有株式の縮減に伴う投資有価証券売却益もあり、3億6百万円の増益となりました。

当社グループの当連結会計年度末の財政状態につきましては、資産合計276億32百万円、負債合計158億41百万円、純資産合計117億91百万円となりました。

資産は、売掛金が減少したことによる流動資産の減少と不動産売却による固定資産の減少により、前連結会計年度末より14億11百万円の減少となりました。

負債は、買掛金と短期借入金の減少により、前連結会計年度末より21億9百万円の減少となりました。

純資産は、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことなどにより、前連結会計年度末より6億98百万円の増加となりました。

これらの結果、中期経営計画にもとづく全社的な効率化と収益力強化の取り組みにより、財務健全性の数値目標として掲げたネットD/Eレシオは、最終年度目標の0.7以下を達成しました。また、売上高および経常利益も初年度計画値を上回る結果となりました。

 

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。特に、当社グループが取り扱う製商品や原材料の多くは農畜産物や水産物であるため、相場による価格変動が業績に影響を与える可能性があると認識しており、為替予約による為替リスクのヘッジや原材料の調達範囲の拡大等により、リスク要因を分散・低減するよう努めております。また、豚疾病などにより当社グループで運営する農場の肥育豚の大量処分などを余儀なくされる場合には業績に大きな影響を及ぼす可能性があるため、野生動物侵入防止対策や飼養衛生管理に関する教育の徹底など万全な防疫管理を期しております。

 

セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。

 

食品事業

魚肉ねり製品の海外向け販売数量減少に加え、肉類の収益性重視の取り組みによる販売数量減少の結果、売上高は223億99百万円(前期比0.7%減少)となりました。損益面におきましては、「霧島黒豚」の農場肥育成績悪化とそれに伴う食肉販売数量の減少等により、セグメント利益(営業利益)は4億63百万円(前期比42.3%減少)となりました。

現在、「霧島黒豚」の農場肥育成績の改善やブランド戦略の強化が必要であると認識しており、農場における肥育成績向上に向けた取り組みを推進するとともに、マーケティング機能の強化によるによるブランド価値向上を図ってまいります。

また、今後成長が期待される機能性食品市場においては、「エラスチン」「ヒシエキス」「アスコフィランHS」などの機能性素材について、エビデンスの更なる充実と機能性表示食品としての提案を推進し、国内外における販売展開を加速させることで、持続的な収益基盤の強化を目指してまいります。

 

飼料事業

飼料事業配合飼料におきましては、原材料価格高騰に対応した価格改定や養魚用飼料の海外向け販売数量増加により、増収となりました。水産物におきましては、相場が低調に推移したことにより、減収となりました。これらにより、売上高は268億30百万円(前期比8.3%増加)となりました。損益面におきましては、養魚用飼料の販売数量増加および生産効率の改善により、セグメント利益(営業利益)は16億61百万円(前期比 77.1%増加)となりました。

なお、水産物においては、昨年11月に養鰻事業の拡大を目的として、他の養鰻業者から事業を譲り受けたことにより、養鰻許認可枠が増加しました。今後、養鰻生産量の増大を図ってまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローおよび投資活動によるキャッシュ・フロー)は、売上高の増加に伴う税金等調整前当期純利益の増加や有形固定資産の売却などにより19億99百万円増加しました。

当社グループは、自己資本比率とネットD/Eレシオ(ネット有利子負債÷自己資本)を財務健全性の指標としております。未だ有利子負債の比率が高く磐石な体質には達していないと認識していることから、継続的に安定した利益を確保するとともに、棚卸資産の圧縮を進めつつ財務健全性の向上を図ってまいります。

フリー・キャッシュ・フローにつきましては、中長期的な企業価値の向上に資する設備投資への備え、業績に応じた適切な利益配分に基づく株主還元、財務健全性を向上させるべく有利子負債の圧縮に活用してまいります。

財源及び資金の流動性については、運転資金及び設備資金は自己資金または金融機関からの借入れにより調達することとし、安定的な資金調達により十分な流動性を確保することを方針としております。また、短期流動性を確保するため、資金余剰状態にあるグループ会社から当社が資金を借入れ、資金需要が発生しているグループ会社へ貸出しを行うグループ資金管理の効率化に取り組んでおります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループ(当社及び連結子会社)は、日本の食卓を安全で、豊かで、楽しいものにすることを基本方針として、新しい食品素材の開発から製品の開発、環境に配慮した配合飼料の開発等、幅広い研究開発活動を行っております。

研究開発体制は、当社の食品事業部(機能食品研究室、商品開発課)、および飼料事業部(アクアメディカル・ラボ、研究課)の研究開発部門が推進しております。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は279百万円です。

 

セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりです。

 

(1) 食品事業

食品事業における研究開発の基本方針として、

① 大手食品メーカー等との協働型新規食品の開発

② 受託食肉加工品(OEM)の迅速かつ効率的開発

③ 超高齢社会に対応した健康志向食品及び機能性食品の開発

④ 天然物由来機能性素材(健康食品及び化粧品素材)の研究・開発

以上4項目を研究開発テーマとし、食品事業部(機能食品研究室、商品開発課)の研究開発部門が研究開発活動を推進しております。

研究開発テーマの内、特に注力しているのは天然物由来機能性素材の研究・開発であり、当連結会計年度は主に以下機能性素材のエビデンス蓄積と成果発表に取り組みました。

エラスチンについては、肌や血管、関節への効果に関する研究を大学と共同で実施しており、新規ペプチドの機能性に関する特許を取得いたしました。

ヒシエキスについては、本素材の有する強力な抗糖化作用による健康への効果に関する研究を継続しており、新訴求に関するエビデンス取得を進めました。

アスコフィランHSについては、免疫賦活作用による「感染症の予防」「抗腫瘍」に関する研究開発を継続しており、新たな用途に関する開発を進めました。

これら3素材の研究成果については、学術誌への投稿や学会発表などで公表しており、特許出願も進めております。また、これらの研究については、随時当社ホームページで情報提供しております。

さらに、大学及び異業種企業との共同研究により、有望な機能性を有する食品及び素材の開発、製品化についても引き続き推進しております。

なお、当連結会計年度における研究開発費は154百万円です。

 

 

(2) 飼料事業

飼料事業における研究開発は、「食の安全・安心」を基本として、生産物の安全性と環境への配慮を重視した配合飼料の開発に重点をおき、素材から製品まで幅広い分野で行っております。 

養魚用飼料は、「自然に魚に人にやさしい飼料」を研究開発の基本方針として、

① 環境への負担が少なく生産性向上能力を併せ持つ高性能EP飼料の開発と普及 

② 魚が本来有する恒常性維持能力や健康維持能力の向上を目的とした機能性飼料の開発と普及

③ 見た目と味で満足させる高品質養殖魚の生産に寄与する肉質改善飼料開発

④ 供給量や価格が不安定である「魚粉・魚油」に依存しない魚粉・魚油代替飼料の開発

⑤ 難治性魚病に対応する対策薬の開発及び最適な投与方法の開発

以上5項目をテーマに掲げて、アクアメディカル・ラボと研究課が連携して研究開発活動に取り組んでおります。

当連結会計年度におけるアクアメディカル・ラボの主な研究活動については、魚病対策に特化した水産獣医師を中心に、これまで当社が開発した難治性魚病の診療方法を用いて野外診療(ブリ属のベコ病、フグのヤセ病)を実施しながら結果を分析し、より合理的で最適な投与方法についての研究開発を実施し、成果を上げております。

今年度の難治性魚病の対策方法の開発の成果としては、ノカルジア症及びエドワジエラ症の細胞内寄生細菌対策を確立しました。細胞内寄生細菌症は対策が非常に難しいとされている疾病ですが、実際に養殖場で新規薬剤を用いて投与方法を検討した結果、大幅な成績改善が認められたため現在特許申請中です。この技術は当社独自のものでありますが、今後も野外診療を実施しながらデータを蓄積し、養殖業界へ貢献する予定です。

その他、昨年度、水産庁の養殖業成長産業化提案公募型実証事業に、魚病分野で2題採択されました。これまで対策方法がなかった「ブリ属のミコバクテリウム症対策」および、近年発生が認められている「ブリ属の微胞子虫性脳脊髄炎症対策」です。これらの研究は2年目(期間は3年間)となりますので継続して研究開発を実施しております。

研究課の主な研究活動については、昨年度に事業化した関連会社で発生して未利用であったブリ残渣を魚粉化したあら粕を配合した飼料の野外実証試験を行い、購入している魚粉と同等の品質であることを確認し、主にマダイ用飼料に順次配合を開始しています。また、魚油に依存しない飼料開発として、今年度はチキンオイルの配合試験を行い、有効性が確認されたためチキンオイルの使用を開始しました。今後も漁獲した水産資源に依存しない飼料開発を進めています。

さらに大学及び、大規模養殖場との共同研究により、有望な機能性を有する素材の開発、未利用資源の飼料への利用、SDGsの観点から漁獲された海洋資源に依存しない低魚粉飼料の開発を引き続き推進してまいります。

畜産用飼料については、養豚用飼料で肉質向上および生産性向上の飼料開発に注力してまいります。

なお、当連結会計年度における研究開発費は124百万円です。