文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営の基本方針
① 社是 至誠通天
[至誠通天とは] 人生を送るうえで、悪いことは予告なしに突然に起こってくるが、
よい結果は、ある日突然にうまれてくるものではない。毎日毎日頭
を打ち、すねを打ちながら精一杯前へ前へと進んでいけば、自分の
誠意はいつか必ず天に通じて、よい結果がむくわれてくるものであ
る。
(創業社長小森敏之氏のことば)
② 経営理念 日々の活動に精一杯の真心を込め、誠意を尽くすことにより、社会に貢献します。
③ 経営方針・未来像 丸大食品グループは美味しさと健康を追求し、安全、安心な食品を通してお客様の
幸せな食生活に貢献します。
④ スローガン 「変革」
(2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループを取り巻く今後の経営環境は、世界情勢の不安定化に端を発した、原材料価格やエネルギーコストの上昇を背景に、物価上昇に伴う消費者マインドの低下懸念や、高齢化、国内人口減少などによる人手不足、輸送能力の不足、また消費者の価値観の多様化による市場構造の変化など、先行き不透明な環境が続くと見込まれます。
また、食の安全・安心や健康への関心の高まりに加え、食品ロスなどの環境・社会問題への対応、労働環境の整備、持続可能な調達活動など、企業が果たすべき役割や責任もますます重要になっています。
当社グループでは、こうした経営環境の変化に柔軟に対応すべく、原則として毎年改定を行うローリング方式の中期経営計画として2024年4月を起点とする三ヵ年数値計画を発表しております。この計画を実現することで真に社会的存在価値が認められる企業を目指し、「新たな顧客価値の創造」、「収益構造の改革」、「事業領域の拡大」、「人財育成」、「持続可能な社会への貢献」という5つの基本方針のもと、持続的な成長と更なる企業価値の向上を図ってまいります。
(3) 中期経営戦略(中期三ヵ年経営計画)
2024年4月を起点とした中期三ヵ年経営計画(2024年4月1日~2027年3月31日)の基本方針は以下のとおりであります。
① 新たな顧客価値の創造
・商品開発の強化(お客様視点の強化、外部知見の活用)。
・新規技術の研究と開発の推進(長期保管技術の向上、代替食品の品位向上)。
・ブランド力強化によるお客様の信頼感と愛着感の向上。
② 収益構造の改革
・2023年3月公表の構造改革の推進。
・単体の収益改善、不採算項目の見直し。
・生産性向上、原価低減(原材料調達の最適化)。
・サプライチェーンの最適化(調達/物流/販売~グループ経営の推進による共通化)。
③ 事業領域の拡大
・当社保有の強み(直販チャネル、グループ連携)の活用。
・業務用商品の販売強化。
・新規事業、新規カテゴリーの創出。
④ 人財の育成
・能力開発によるキャリア形成の支援。
・人財不足への対応(採用活動の多様化、人事制度の改革)。
・多様化する働き方への対応。
⑤ 持続可能な社会への貢献
・サステナビリティ戦略の推進(気候変動対策、資源循環型社会への貢献、食品廃棄物の排出削減)。
・社会的責任の遂行(安全安心な商品の提供、地域貢献活動)。
・健康で豊かな生活の実現への貢献(食育活動、スポーツ支援、環境活動)。
(4) 事業別戦略
① 加工食品事業
A ハム・ソーセージ部門
(テーマ)収益の改善
(A)主力カテゴリーの利益確保
・主力商品を中心に販売促進、商品施策を集中投下。
・既存商品(ロングセラー商品)のブラッシュアップ。
・パリ五輪2024TEAM JAPANオフィシャルサポーターとしての取り組み強化。
(B)マーケティング活動の推進
・お客様の声の商品企画への反映。
・SNSを活用した発信力の強化(双方向のコミュニケーション、ECサイトとの連携)。
(C)技術開発推進、製造コスト抑制による競争力の強化
B 調理加工食品部門
(テーマ)売上の伸長
・レトルト商品(カレー、スープ類)の販売強化。
・スナック商品の生産再編による収益改善と商品力強化。
・植物性代替肉・・・業務用商品の開発、他社協業への参画。
・不採算商品の改善、生産工程の見直しによる収益改善。
・お客様の要望に対応した商品企画提案(ロングライフ商品、冷凍食品、食材加工品)。
②食肉事業
(テーマ)事業領域の拡大
・ブランド輸入ビーフの取り扱い強化。
・一次加工商品の開発、外食産業向け販売強化。
・食肉販売会社のエリア拡大と販路拡大。
・食肉加工事業会社の生産拠点の増設、調理惣菜の強化。
(5) 機能別戦略
① 人財の育成
・能力開発によるキャリア形成の支援。
・人財不足への対応(ダイバーシティの推進、採用活動の多様化)。
・多様化する働き方への対応(女性活躍推進、エンゲージメント向上に資する人事制度改革)。
② デジタル化の推進
・デジタル活用による業務効率化とコスト削減の推進。
③ 物流業務の改善
・2024年問題への対応。
・物流事務のセンター集約、グループ全体の物流効率化。
④ サステナビリティ推進
・SDGsの取り組みと社会貢献活動、環境活動の継続。
・TCFD提言への対応、温室効果ガス排出削減、資源循環型社会への貢献、フードロスへの取り組み。
(6) サステナビリティを巡る取り組み
① 人財の育成
A 事業成果向上のための施策
・若手社員の育成(若手中堅人財の抜擢人事)。
・次世代幹部候補人財の育成(管理職、経営者候補選抜型研修)。
・多様な価値観・専門性を養成する人財育成の教育マネジメント強化(複線型キャリアを想定した専門職制度設計)。
B 人材活躍・成長のための施策
・エンゲージメント向上に資する人事制度改革。(評価指標の見直し、年功序列の緩和に向けた賃金制度構築)
・ダイバーシティ推進、女性活躍推進に向けた取り組み。
C 健康経営の強化
・ストレスチェック結果等を活用した職場環境の改善。
・高齢化への取り組み。
脳機能サポート素材「プラズマローゲン」の研究開発。
② 持続可能な社会への貢献
A ガバナンス体制の強化
・企業経営について客観性・透明性を高めるため、委員会を設置してガバナンス強化。
コンプライアンス委員会(委員長は独立社外取締役)、指名報酬委員会(独立社外取締役が過半数)。
・丸大食品グループ従業員全員へ「丸大食品グループ行動基準」の周知徹底を図り、毎月定期的に全従業員に対してコンプライアンス教育を実施。
B ESG・SDGsの取り組み
「サステナビリティ基本方針および行動指針」の策定ならびに「サステナビリティ委員会」を設置
(A) 気候変動への適応と緩和
・TCFD提言への対応。
・2023年4月1日付で、「サステナビリティ委員会」の運営と推進のため、「サステナビリティ推進室」を設置。
・環境保全活動の推進、省エネルギー設備導入等、環境負荷低減の強化。
・モーダルシフトなど、物流、輸送に関わる温室効果ガス削減の取り組み強化。
(B) 資源循環型社会への貢献
・包装・容器の軽量化による廃棄物削減の推進。
・包装・容器の3R推進(リデュース、リユース、リサイクル)。
・食料品廃棄物の飼料や肥料へのリサイクル促進。
・環境に配慮した包装・容器採用の推進。
(C) フードロスへの取り組み
・食品廃棄物の削減、再利用の推進。
・食育活動の推進。
(D) 貧困と飢餓への支援
・子ども食堂への食材支援。
・代替ミート商品の開発。
(7) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、経営環境の変化に柔軟に対応するため、原則として毎年改定を行うローリング方式の中期経営計画として三ヵ年数値計画を発表しております。計画数値をあらためて検証の上、見直しを行い、新たに2024年4月を起点とした中期三ヵ年経営計画(2024年4月1日~2027年3月31日)を策定いたしました。
計画最終年度である2027年3月期の連結業績を、売上高2,500億円、営業利益55億円、営業利益率2.2%、ROE(自己資本利益率)5.0%に成長させることを目標とする経営指標といたします。
2025年3月期の連結業績につきましては、原材料価格の上昇など厳しい経営環境が続いておりますが、新たな顧客価値の創造、事業領域の拡大とともに収益構造改革を実施し、売上高2,350億円、営業利益40億円、営業利益率1.7%、ROE5.3%を予想しております。なお、原材料価格の上昇、金融資本市場の変動等による景気の下振れリスクもあるなど、業績見通しは、現時点で見込める影響を考慮したものであり、必要に応じて修正開示を行う可能性があります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
[TCFDの取り組み]
当社グループは、G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)によって設立されたTCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)提言のフレームワークに基づいて分析と開示をしてまいります。
2022年5月から11月までの間で、経営戦略室を事務局とする部門横断プロジェクト(※)で気候変動シナリオ分析を行いました。分析は加工食品事業、食肉事業において気候変動で受ける影響の大きい自社工場での生産商品を対象とし、気候変動に伴うリスクと機会の重要性を評価しました。また、中期2030年、長期2050年として、2030年の将来を対象に1.5℃シナリオと4℃シナリオを作成し、その内容について影響を評価しました。
(※)参加部門:経営戦略、総務、人事、マーケティング、営業、生産、設備、資材、原料、ロジスティクス
2023年6月からサステナビリティ推進室を事務局として2022年度の当社グループ全体の環境データを収集して、温室効果ガス排出量の影響を評価しました。さらに温室効果ガス排出量の削減を推進していくために、2030年度の目標数値を設定しました。
(1)1.5℃シナリオ、4℃シナリオに基づく将来の世界観
シナリオとしては、以下のとおり2つのシナリオを想定しました。
(2)気候変動リスク・機会及び影響度評価
「(1)1.5℃シナリオ、4℃シナリオに基づく将来の世界観」に記載の1.5℃シナリオ、4℃シナリオのそれぞれについて、部門横断プロジェクトにおいてリスクと機会の発生可能性と影響度の観点から重要度の評価を大・中・小の3段階で行いました。その結果、以下のとおりの項目が抽出されました。
(3)温室効果ガス排出削減のための取り組み内容
以下の項目に取り組んでおります。
(4)その他サステナビリティについての取り組み
以下の項目に取り組んでおります。
〔安全・安心の確保〕
『安全で安心な商品を提供し、全ての人が健康で豊かな生活を送れる社会の実現に努めます。』
〔食育活動〕
『健全な心と体は正しい食生活から。丸大食品は食に関する様々な活動を通じて社会に貢献してまいります。』
〔コミュニケーション〕
『丸大食品はスポーツや社会貢献活動を通じて、お客様とのコミュニケーションを積極的に図ってまいります。』
〔キャリア教育〕
『次世代を担う学生に教育の機会を提供するため、積極的に出前授業や企業訪問を受け入れております。』
(5)丸大食品グループ サステナビリティ基本方針・サステナビリティ行動指針
私たち丸大食品グループには、「日々の活動に精一杯の真心を込め、誠意を尽くすことにより、社会に貢献します」という経営理念があり、世代を超えて今に受け継がれています。
この経営理念のもと、「食を通じて社会に貢献する企業」であり続けるために、美味しさと健康を追求し、安全、安心な食品を通して、お客様の幸せな食生活に貢献してまいります。
〔丸大食品グループ サステナビリティ基本方針〕
私たちは、地球環境や社会問題の解決を人類共通の課題と認識し、「わんぱくでもいい。たくましく育ってほしい。」の想いを子供たちの未来に願い、社会や環境に配慮した事業活動を通じて、持続可能な社会の発展に貢献してまいります。
〔丸大食品グループ サステナビリティ行動指針〕
1.私たちは、すべての事業活動において、法令や社内規程などを遵守し、誠実で透明性の高いコンプライアンス経営に努めます。
2.私たちは、原料調達・製造・物流・販売などのすべての事業活動において環境負荷の低減に努め、エネルギー使用量やCO2排出量の削減に取り組み、環境や社会に配慮した商品の提供を行います。
3.私たちは、安全で安心な商品を提供し、すべての人が健康で豊かな生活を送れる社会の実現に努めます。
4.私たちは、すべての従業員が働きやすい環境を整備し、一人ひとりの個性を尊重することで、ワークライフバランスの実現に努めます。
5.私たちは、「人財育成」に取り組み、すべての従業員へ人権やコンプライアンスについて教育を行い、グループ全体の意識向上に努めます。
6.私たちは、社会貢献活動を通じて、ステークホルダーのみなさまとのコミュニケーションを図ることで、より広い視野での事業活動を推進します。
7.私たちは、丸大食品グループにおけるESG情報を積極的に開示します。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(2) 重要性(マテリアリティ)項目
(1) 経営成績等の状況の概要
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善するなかで、各種政策の効果もあり、景気は緩やかに回復の動きが見られましたが、物価上昇や金融資本市場の変動等の影響、世界的な金融引締めによる景気の下振れリスクなどが懸念され、依然として不透明な状況が続いております。
当業界におきましては、人流回復による外食需要などの増加の動きが見られますが、原材料価格の上昇や円安進行により調達コストが増加するなかで、物価上昇に伴う消費者の節約志向が高まるなど厳しい環境が続いております。食肉相場におきましては、国産牛肉は需要減少から前年を下回る一方で、国産豚肉は需要が増加したことなどから前年を上回って推移しております。輸入食肉は、為替の影響などから牛肉、豚肉ともに高値で推移しております。
このような状況のなか、当社グループは、お客様に、より安全でより安心して召し上がっていただける食品を提供する総合食品メーカーとして、真に社会的存在価値が認められる企業を目指し、企業活動を推進してまいりました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
A 財政状態
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ44億41百万円減少し、1,218億19百万円となりました。負債は、前連結会計年度末に比べ18億21百万円増加し、590億68百万円となりました。純資産は、前連結会計年度末に比べ62億62百万円減少し、627億51百万円となりました。
B 経営成績
当連結会計年度における売上高は前年同期比3.1%増の2,288億8百万円、営業利益は31億17百万円(前年同期は営業損失14億円)、経常利益は36億39百万円(前年同期は経常損失8億97百万円)となりました。減損損失122億50百万円や構造改革費用5億30百万円の特別損失を計上したことで、親会社株主に帰属する当期純損失は94億14百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失49億87百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(単位:百万円)
(加工食品事業)
ハム・ソーセージ部門では、主力商品の「燻製屋」シリーズは、企業コラボを実施した新フレーバーの数量限定販売や、様々な食シーンに即したメニュー提案、各種キャンペーンなどを継続的に実施しました。また、環境に配慮したパッケージ資材を使用したロースハムなどの「たっぷり使える」シリーズは、販促活動に努めたことなどにより売上高は堅調に推移しました。市場の縮小傾向から中元・歳暮ギフトの売上高は減少しましたが、これらの諸施策の実施や価格改定の効果もあり、当部門の売上高は前年同期比1.7%の増収となりました。
調理加工食品部門では、本格的な人流回復を背景にコンビニエンスストア向け商品や外食産業向けなどの業務用商品の需要が拡大したことなどにより売上高が伸長したことに加え、ゼリーやホイップ済みクリームなどのデザート類の売上高が堅調に推移しました。また、「スンドゥブ」シリーズでは様々なチャネルを活用した販促活動を実施し売場での取り扱い拡大を図ったほか、レトルトカレー商品については、「ビストロ倶楽部濃厚カレー」などを中心に拡販し売上拡大に努めました。これらの諸施策を実施したことなどから、当部門の売上高は前年同期比5.1%の増収となりました。
以上の結果、加工食品事業の売上高は前年同期比3.6%増の1,524億4百万円となりました。セグメント利益は、原材料価格の上昇などのコスト増加要因があるものの、価格改定による効果や継続的なコスト削減に努めたことなどから、21億25百万円(前年同期は16億53百万円の損失)となりました。
(食肉事業)
牛肉につきましては、外食産業向け販売が堅調に推移した一方で、物価上昇に伴う消費者の節約志向の高まりから量販店向け販売が伸び悩み、売上高は前年を下回りました。豚肉につきましては、外食産業向け販売が順調に推移したことに加え、牛肉から割安感のある豚肉などに需要がシフトしたことから量販店向け販売も伸長し、売上高は前年を上回りました。
以上の結果、食肉事業の売上高は前年同期比2.0%増の762億76百万円となりました。セグメント利益は、前年同期比363.1%増の9億43百万円となりました。
(その他事業)
その他事業の売上高は前年同期比0.5%増の1億28百万円、セグメント利益は前年同期比1.8%減の48百万円となりました。
(単位:百万円)
投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の売却による収入がありましたが、生産設備の増強・合理化や品質向上のための固定資産の取得による支出などから、48億82百万円減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、有利子負債の減少や配当金の支払い、自己株式の取得による支出などから、23億80百万円減少しました。
以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末から27億52百万円増加し、96億68百万円となりました。
A 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当社グループは、主として消費動向の予測に基づく見込み生産によっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
A 経営成績
(売上高)
売上高は、人流回復により外食産業やコンビニエンスストア向け商品、デザート類などの販売が伸長したことや、価格改定の効果もあり、前年同期比3.1%増の2,288億8百万円となりました。各セグメント別の売上高は、加工食品事業が前年同期比3.6%増の1,524億4百万円、食肉事業が同2.0%増の762億76百万円、その他事業が同0.5%増の1億28百万円となりました。
(売上原価、売上総利益)
売上原価は、原材料価格の上昇などから前年同期比1.4%増の1,941億32百万円となりましたが、価格改定や合理化による収益改善などから、売上原価率が前年同期比1.5%低下したことにより、売上総利益は、前年同期比13.8%増の346億76百万円となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は、継続的なコスト削減に努めたことなどから、前年同期比1.0%減の315億58百万円となりました。
営業利益は、売上総利益率の改善や販売費及び一般管理費の削減により、31億17百万円の黒字となりました(前年同期は営業損失14億円)。
各セグメント別の損益は、加工食品事業が21億25百万円のセグメント利益(前年同期は16億53百万円の損失)、食肉事業が前年同期比363.1%増の9億43百万円のセグメント利益、その他事業が同1.8%減の48百万円のセグメント利益となりました。なお、各セグメント別の状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 B 経営成績」に記載のとおりであります。
(経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益)
経常利益は、営業利益が黒字となったことなどから、36億39百万円となりました(前年同期は経常損失8億97百万円)。
親会社株主に帰属する当期純利益は、減損損失122億50百万円、構造改革費用5億30百万円を特別損失として計上したことで、94億14百万円の親会社株主に帰属する当期純損失となりました(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失49億87百万円)。
(単位:百万円)
(中期経営計画の進捗状況)
当社グループは、経営環境の変化に柔軟に対応するため、原則として毎年改定を行うローリング方式の中期経営計画として三ヵ年数値計画を発表しております。計画数値をあらためて検証の上、見直しを行い、新たに2024年4月を起点とした中期三ヵ年経営計画(2024年4月1日~2027年3月31日)を策定いたしました。
なお、中期三ヵ年経営計画の内容につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
B 財政状態
(単位:百万円)
当連結会計年度末における総資産は、投資有価証券が44億76百万円、受取手形及び売掛金が41億21百万円、現金及び預金が27億52百万円増加しましたが、有形固定資産が148億88百万円減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ44億41百万円減少し、1,218億19百万円となりました。
負債は、有利子負債が11億43百万円減少しましたが、支払手形及び買掛金が17億37百万円、繰延税金負債が9億78百万円増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ18億21百万円増加し、590億68百万円となりました。
純資産は、その他有価証券評価差額金30億96百万円の増加がありましたが、親会社株主に帰属する当期純損失94億14百万円の計上、剰余金5億円の配当などから、前連結会計年度末に比べ62億62百万円減少し、627億51百万円となりました。
以上の結果、当連結会計年度末の自己資本比率は前連結会計年度末から3.2%低下し50.9%となりましたが、当社グループの財務体質は一定の健全性を保っていると判断しております。
また、セグメントごとの資産は、加工食品事業が719億9百万円(前年同期は836億15百万円)、食肉事業が204億14百万円(前年同期は206億33百万円)、その他及び全社資産が294億96百万円(前年同期は220億11百万円)であります。加工食品事業における主な資産の減少要因は、固定資産の減損損失計上によるものであります。
C キャッシュ・フロー並びに資本の財源及び資金の流動性
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
※ 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。
※ 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※ 営業キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。
※ 有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
※ 2022年3月期の期首より会計方針の変更をしております。2021年3月期の数値につきましては、当該会計方針の変更を反映した遡及適用後の数値を記載しております。
当社グループは事業活動のための適切な資金を確保し、資金の流動性を維持するとともに、健全な財政状態を目指すための安定的な営業キャッシュ・フローの創出が資本財源の最優先事項の一つであると考えております。
また、株主価値をさらに高めていくためにも、強固な財務体質を維持しながら、継続的な成長経営を基盤とする資金調達が出来る環境を作っておきたいと考えております。
2020年3月期は減価償却費を上回る設備投資を行いましたが、2021年3月期~2024年3月期においては設備投資が減価償却を下回りました。そのなかで自己資本比率やキャッシュ・フロー対有利子負債比率、インタレスト・カバレッジ・レシオなど当社グループは一定の財務健全性を有し、成長戦略に向けての資金調達が可能な財務基盤を維持していると判断しております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりでありますが、営業活動によるキャッシュ・フローは100億14百万円増加し、投資活動によるキャッシュ・フローは48億82百万円減少した結果、フリー・キャッシュ・フローは51億32百万円増加しました。有利子負債は15億97百万円減少し、配当金を5億1百万円支払い、自己株式を2億77百万円取得、現金及び現金同等物は27億52百万円増加しました。
配当政策につきましては、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりでありますが、当社グループは、株主の皆様への利益還元を経営上の最重要課題の1つとして位置付けており、連結業績や財務状況等を総合的に勘案しつつ、安定配当を継続するという基本方針に基づき、当事業年度の配当につきましては、1株当たり普通配当20円とすることを決定いたしました。
当社グループは、中期経営計画を策定する上での参考や政策保有株式保有の合理性検証のため、資本コストを試算しております。当社グループの資本コストは5%程度(※)と認識しており、2024年4月を起点とした中期三ヵ年経営計画の計画最終年度である2027年3月期には、ROEを5.0%まで高めることを目標としています。尚、資本コストは投資家が期待するリターンでありますので、機関投資家等との対話を通じて適切な資本コストの認識に努め、事業計画や株主還元に活かすことで、企業価値の向上に取り組んでまいります。
(※)CAPM(資本資産評価モデル)ベース
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品製造のための原材料費、労務費、経費や販売費及び一般管理費等の営業費用であり、投資を目的とした資金需要の主なものは、生産設備の増強・合理化や品質向上のための設備投資によるものであります。これらの必要資金は、主に営業キャッシュ・フローを源泉とする自己資金により調達しております。なお、当連結会計年度において増資や社債発行等の重要な資金調達は実施しておりません。2025年3月期の設備投資予定総額(資産ベース)は、73億円であり、これらの大半は自己資金及びリースによる調達を予定しております。
また、当社グループは効率的な資金調達を行うため取引銀行と当座貸越契約を締結しており、その契約に基づく当連結会計年度末の借入未実行残高は236億2百万円であります。当連結会計年度末の現金及び預金96億68百万円との合計は332億70百万円であり、当連結会計年度の平均月商を超えていることから、緊急の資金需要に対しては一定の水準を保っていると判断しております。また、当連結会計年度末において、新規発行未定ながら発行予定額を200億円として社債の発行登録をしており、設備資金、投融資資金、借入金返済資金及び運転資金の資金需要に備えております。
② 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成のために必要となる見積りにつきましては、合理的な基準をもとに算定を行っております。
これらの見積りについて、過去の実績やその時点で入手可能な情報などから、妥当と考えられる様々な要素をもとに判断をしておりますが、見積りの前提となる条件や事業環境が変化した場合など、見積りと将来の実績が異なることがあります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループでは、基礎研究に裏付けられた安全で鮮度の高い商品開発と、戦略的なマーケティングに支えられた企画を推進しております。最新のマーケティングデータや市場分析を踏まえた企画・開発を行っております。消費者調査をはじめとするマーケティングリサーチを徹底して行い、お客様のニーズに沿った商品開発を展開することで、よりお客様に必要とされるメーカーとなるべく努めています。私たちが大切にしているのは、心から「美味しい」と言っていただくための商品作りです。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は
(加工食品事業)
ハム・ソーセージ部門では、消費者の多様化する嗜好性に対応するため、「燻製屋」シリーズから、熟成により引き出されたお肉の旨みと沖縄南部島唐辛子のシャープな辛さが相性抜群の「燻製屋熟成あらびきポークウインナー 沖縄南部島唐辛子」を数量限定で発売しました。健康志向の高まりから、塩分を25%カットしながらも、麹を用いた発酵調味料を使用することでしっとりまろやかな味わいにこだわった「おいしい減塩」シリーズのロースハムとブロックベーコンを発売しました。調理の簡便化のニーズから、カットの手間を省いた「短冊カット パンチェッタ」や、どんなラーメンにも合う味に仕上げた「具のっけ亭」シリーズの「厚切りチャーシュー」、カット済みでそのまま使える「キザミハム」を発売しました。また、環境に配慮したパッケージ資材を使用した「たっぷり使える」シリーズからロースハム・ベーコンに加えてウインナーを発売しました。
調理加工食品部門では、「シェフの匠」シリーズから、青唐辛子の刺激的な辛さにレモングラスの爽やかな香りとココナッツミルクのまろやかな味わいが特徴の「グリーンカレー」を発売しました。また、スナック類からは、「Cafelf」シリーズから、生地にビター感のあるキャラメルを使用することで、固形のキャラメルキャンディとキャラメルチョコチップの甘さが際立つ「おいしいひと休みCafelf キャラメルスコーン」を発売しました。デザート類では、お家で専門店の和スイーツを楽しみたいという消費者ニーズに応えた、人気の「わらび餅」シリーズから、クリーミーソース、加賀棒ほうじ茶や黒糖を使用したわらび餅、蜜漬け小豆を組み合わせた新感覚デザートの「ほうじ茶と黒糖のわらび餅」を発売しました。
中央研究所では、プラントベース食品の開発を事業部開発部門とともに取り組んでおります。プラントベース食品は環境問題、健康への意識の高まり、動物福祉の観点から世界的に注目されている分野です。さらに、次世代たんぱく質素材としてプラントベース食品だけでなく、他の有望な原料についても検討を開始しており、将来予想されているたんぱく質不足を見据えた研究開発を実施しています。鶏由来プラズマローゲンは、脳機能改善市場の堅実な成長を背景に新規顧客の獲得と既存顧客からのリピートが増加しております。2024年度も引き続き研究による新知見をニュースリリース、展示会、業界サイト、勉強会などを通じて広く告知し、プラズマローゲンの認知度向上に努めてまいります。
(食肉事業及びその他)
特記すべき内容はありません。