第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、次の3要素をグループ理念体系と位置づけております。グループ理念体系により、めざす方向性を明確にし、一貫性をもった事業活動による成長を図っております。

『創業理念』

日本中の家庭が幸福であり、そこにはいつも温かい家庭の味ハウスがある。~幸せな家庭のマーク~

『グループ理念』

食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。

『ハウスの意(こころ)』

社是(「誠意・創意・熱意を持とう。」)・ハウス十論で構成

 

(2)経営環境

当社の経営環境は、各国のインフレ進行や金利変動による景気減速のリスク、事業コストの上昇、二極化する消費者嗜好、為替の大幅な変動など、先行き不透明な状況が増幅しました。また人的資本の面では、生産労働人口の減少など外部環境変化に対応すべく、人材の多様性を高めることや、様々な人材が集まることで生じる価値観の違いをシナジーに変換していくことが不可欠となってきております。さらに、気候変動など環境問題も世界規模で取り組むべき大きな課題であり、企業の対応強化が求められております。

このような状況下において、当社グループは原材料価格を中心とする事業コストの上昇に対し、一部製品で価格改定を実施するなど足元の環境変化に対応するとともに、将来のあるべき姿を見据え、バックキャスト視点でクオリティ企業への変革を推進しております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略及び会社の対処すべき課題

当社グループは、「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。」というグループ理念の考え方となる、一企業市民として果たすべき「お客さまに対して」「社員とその家族に対して」「社会に対して」という「3つの責任」を企業活動の柱としております。

2024年4月からスタートした第八次中期計画では、中期計画2個分の第九次中期計画までを見据え、“「食で健康」クオリティ企業への変革<第二章>グローバルなバリューチェーン(以下「VC」)構築で成長をめざす”をスローガンに掲げました。第八次から第九次中期計画までの6か年を成長に向けて礎を築く期間に据え、グローバルにプレゼンスあるクオリティ企業をめざし、バックキャスト視点で「3つの責任」の取組を推進しております。

 

①お客様に対する責任

当社グループは、「スパイス系」「機能性素材系」「大豆系」「付加価値野菜系」の4つのVCを自ら価値提供する領域と定め、「食で健康」をグローバルにお届けしてまいります。さらに第八次中期計画では、VC経営による成長加速や体制構築、共創による新価値創出に取り組んでおります。

スパイス系VCでは、スパイス・カレーを取り扱うグループ各社が共創し、川上から川下までのVC全体で価値創出をめざす「VC統合」と、グローバル市場に視野を拡げた「顧客接点の拡大」を中長期的な戦略ストーリーの軸に据えています。「VC統合」では、川上から川下までを俯瞰した製品設計や調達・生産プロセスの変革に取り組むことで、原材料調達の柔軟性を確保するとともに収益基盤強化や生産性向上をめざしております。そうしたなか、成長領域である国内業務用事業では、ハウス食品グループ東北工場㈱を設立いたしました。当事業を推進するハウスギャバン㈱は、多様化するお客様ニーズに柔軟かつ迅速に対応するためDXも活用しながら製品提案のスピードおよび精度の向上を図っております。同社では、新製法を採用することで多品種変量の生産を実現し、製品開発・営業・生産まで一貫した事業体制を構築してまいります。「顧客接点の拡大」では、事業会社ごとに国内外で展開するカレー事業のマネジメント一本化にハウス食品㈱がチャレンジしてまいります。そうしたなか、日本・中国に次ぐ新たな顧客接点の拡大に向けて取り組むインドネシアカレー事業において、新たに工場建設用地の取得契約を締結するとともに、新生産会社を設立いたします。先行して2016年から展開している業務用事業は、同国における外食市場の拡大やカレーメニューの浸透などを背景に販売が伸長しているほか、2024年より開始した家庭用事業は、現地の嗜好に合った味づくりやルウ調理の簡便性が高く評価されるなど順調に事業が立ち上がっております。

機能性素材系VCでは、国内事業の収益構造変革と健康戦略素材(ビタミン・ターメリック・乳酸菌)を軸としたグローバルシフトの推進に取り組んでまいります。国内においては、主要製品の売上拡大と効果的なコスト運用を図ることで収益力の維持・拡大に取り組んでまいります。海外においては、東南アジアにおけるビタミン飲料事業の拡大を進めており、特に既存事業エリアのタイでは、主力製品「C-vitt」のビタミンC配合量を1,000mgへリニューアルしたほか、マルチビタミン市場の創出に向けて新製品「One Day Vitamins」を上市いたしました。また、これに加え新規事業エリアのベトナム・フィリピンでは、ビタミンC飲料市場の開拓を加速してまいります。欧米では乳酸菌BtoB事業の拡大と収益力強化に注力してまいります。

大豆系VCでは、中長期視点でPBF市場におけるプレゼンス拡大に取り組む一方、足元の収益性が低下していることから、収益構造改革による収益力の早期回復が喫緊の課題と捉え取り組んでまいります。主にTOFU事業を展開するハウスフーズアメリカ社は、競合他社による価格攻勢と対峙しており、営業提案力の強化による顧客接点の拡大を進めてまいります。一方、主にPBF事業を展開するキーストーンナチュラルホールディングス社は、高価格帯PBF製品を中心とした販売苦戦や製品ミクスの悪化により収益性が低下しています。製品別損益の見える化に基づく選択と集中を進めることで損益構造の立て直しを図ります。加えて両事業を束ねる大豆系VC全体では、生産・物流などのサプライチェーンや固定費の適正化を推進し収益力の早期回復に努めてまいります。なお、ハウスフーズホールディングUSA社を事業持株会社として機能させるべく、2025年1月に米国豆腐事業各社の戦略機能や販売・マーケティング機能を同社に統合するなど米国豆腐事業の組織再編を実施しました。今後は同体制のもと大豆系VCとしての経営基盤を確立してまいります。

新規事業の位置づけである付加価値野菜系VCでは、引き続き社外パートナーとビジネスモデル構築に向けて取り組み、新規事業を次世代のグループの成長力へと変換してまいります。

 

②社員とその家族に対する責任

第八次中期計画のスローガンである「グローバルなVC構築で成長をめざす」を実現するため、高まりつつある多様性を社員とグループの成長に変換していく必要があります。これに加え、多様な人材がより個性を発揮しながら、組織の壁を超えて協働・共創することが求められることから、「ダイバーシティを力に変える」を取組テーマに据え、以下3つの観点から取組を実行しております。

 

1)多様な個人が集い働きがいを感じられる社内環境整備では、主要事業会社を中心に「役割等級・役割給」を軸とした新人事制度の導入を進めており、当社グループ内の人材流動性を高めると同時に、当社グループ外の労働市場との親和性を高め、キャリア採用の受け入れと活躍を促進する仕組みづくりに取り組んでおります。加えて、多様性を受け入れチャレンジを後押しする組織風土をめざし、組織風土診断結果に基づく改善取組を継続的に実施しております。

2)個と組織の活性化では、女性活躍支援を推進することで女性管理職比率を高めるほか、障がい者雇用も法定雇用率を上回る水準としております。加えて、自律的なキャリア開発を可能にする仕組みを浸透させるなど、社員一人ひとりの「経験」と「適性」の多様性を高める多くの施策を進めております。

3)グローバルなVC構築を実現するための人材ポートフォリオ構築では、4系列VC毎の事業戦略実現に向けて、人材流動性の確保、VC戦略推進においてキーとなるポジションの要件定義、自律的なキャリア開発促進を軸とした人材の充当、これら取組を支える人材データベースなどのインフラ構築を進めております。

 

③社会に対する責任

当社は、食に関わる企業として「人と地球の健康」の実現に向け、VC全体で社会課題の解決に取り組んでおります。第八次中期計画では、循環型モデルの構築への取組を加速するべく、「ハウス食品グループ長期環境戦略2050」を策定し、重要課題を「気候変動への対応」、「資源循環社会の実現」に定めております。

気候変動への対応では、2050年カーボンニュートラルをめざすなか、Scope1・2では多拠点一括エネルギーネットワークサービスの運用開始やハウス食品㈱福岡工場におけるエネルギー由来のCO排出量実質ゼロ化を達成するなど再生可能エネルギーの拡充に取り組んでおります。Scope3では、原材料調達時や家庭内調理時のCO排出量削減に向けた重点テーマを設定し、サプライチェーン全体で排出量削減を図ります。排出量上位4カテゴリー(カテゴリ1:購入した財及びサービス、カテゴリ4:上流の輸送及び流通、カテゴリ11:販売した製品の使用、カテゴリ14:フランチャイズ)は、資材サプライヤーのみなさまと連携し、CO排出量の見える化や製品ごとのCO排出量算定(カーボンフットプリント)に取り組むなど、削減効果の見える化を進めてまいりました。今後は具体的テーマに落とし込み、第八次中期計画では5,000トンのCO排出量削減をめざしてまいります。

資源循環社会の実現では、廃棄物を「減らす」だけでなく、「活かす」「戻す」の方向も含め限りある資源を有効活用してまいります。廃棄物・副産物においては、当社グループ内で発酵と堆肥化させ活用する「自社内資源循環」の取組を推進するほか、社外パートナーの技術活用の検討を進めております。また、食品メーカーとして影響が大きいプラスチックゴミの削減にも取り組んでおり、ハウス食品㈱が手掛ける家庭用製品においてバイオプラスチックを活用するほか、製品サイズ変更によるプラスチック使用量の削減などを推進しております。加えて、水枯渇リスク地域を中心に、生産拠点での水の効率的な使用に努め、節水に配慮した設備の導入や、各国の法律や地域の仕組みに準じ、きれいな状態にして自然環境に戻す取組にも注力してまいります。

④財務資本政策(資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて)

第八次中期計画では、資本コスト(当社方針6%)や株価を意識した経営を推進するべく、ROICマネジメントの導入、資源配分の明確化、株主のみなさまとの価値共有を高める仕掛けに取り組んでまいります。

 

・ROICマネジメントの導入

当社グループは、グループ理念の実現に向けて様々なステークホルダーとつながり「3つの責任」を果たしていきたいという想いを財務資本政策にも反映させており、マルチステークホルダーの観点から、「あるべきプロポーション」として「5つの経営指標」(ATO、ROS、ROA、自己資本比率、ROE)を掲げています。第八次中期計画では、あるべきプロ―ションの実現に向けてこれまで以上にB/S志向の取組を強化していくことや、資本コストをより意識した経営を推進していくためにROICマネジメントを導入しております。

ROICは、「事業ROIC」と「事業性資本割合」に分解し、その双方を改善することで当社グループ全体の投下資本に対する収益性の向上をめざしてまいります。

「事業ROIC」の課題は、コア事業の資本収益性の向上にあることから、限界利益、稼働率、設備効率の視点で資本収益性改善に取り組んでまいります。これに加え、事業及び投資計画精度・モニタリングの強化、設備効率視点の追加、資本コストを上回るハードルレートの設定等、従来の投資判断基準を見直すことで新規投資の収益性及び生産効率の改善にも取り組んでまいります。

「事業性資本割合」の改善に向けては、非事業性資産の縮減に取り組んでおり、特に政策保有株式は第八次中期計画3か年において150億円の縮減を進めてまいります。

 

・資源配分の明確化

第八次中期計画では、営業キャッシュ・フローに加えて新たな資金調達方法を活用し、VC構築に向けて積極投資を継続するほか、資本コストを意識した経営を推進するべく、政策保有株式の縮減など資本効率を高めるとともにその原資を株主還元に充当いたします。事業投資は、4系列VCの成長領域へ500億円、既存領域へ150億円、デジタル変革・環境領域へ50億円の、総額700億円を計画しております。株主還元は、当連結会計年度より利益配分の基本方針を「総還元性向40%以上」「安定配当として年間配当金額1株当たり46円以上を継続的に配当」に変更しております。特に、第八次中期計画3か年においては、政策保有株式の縮減を原資とした自己株式取得による株主還元を進めることから、総還元性向50%以上をめざしてまいります。

 

[ご参考]経営指標推移

投資領域

2025年3月期

第八次中期計画

最終年度目標

ROIC

4.5%

6.0%以上

事業ROIC

5.4%

6.7%

事業性資本割合

83.7%

90.0%超

ATO

0.73回

0.83回

ROS

6.3%

7.5%

EBITDAマージン

10.8%

11.4%

ROA

4.6%

6.2%

ROE

4.3%

7.0%

 

[ご参考]政策保有株式の縮減および自己株式の取得状況

投資領域

2025年3月期

第八次中期計画

最終年度目標

政策保有株式の縮減額

55億円

150億円

自己株式の取得金額

60億円

150億円

 

 

[ご参考]事業投資目標・実績

投資領域

2025年3月期

第八次中期計画

最終年度目標

成長領域

49億円

500億円

既存領域

42億円

150億円

DX・環境領域

14億円

50億円

合計

105億円

700億円

 

⑤コーポレート・ガバナンスの強化

当社グループは、内部統制システムをコーポレート・ガバナンス体制の充実と企業理念・経営目標の実現・達成のための仕組みととらえ、企業価値のさらなる向上と持続的な発展をめざし、グループ経営の視点でリスクマネジメント、コンプライアンスを含めたガバナンス体制の構築と運用の強化を図っております。

当社は、監査等委員会設置会社であり、監査等委員である取締役が取締役会における議決権を有することにより、監査・監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンス体制を一層充実させることを目的としております。監査等委員会は、監査等委員である取締役5名(うち、社外取締役4名)で構成され、取締役の職務の執行および取締役会の決議の適法性、妥当性の監査・監督を行っております。

取締役会は、取締役12名(うち、社外取締役4名)で構成され、当社グループの重要な業務執行を決定するとともに、他の取締役およびグループ会社の業務執行を監視・監督しております。なお、取締役会の運営強化と実効性向上を目的として、全取締役へのアンケート形式による取締役会実効性評価を実施しております。

取締役会の任意の諮問機関として、委員の過半数を独立した社外取締役で構成し、独立社外取締役を委員長とする指名諮問委員会および報酬諮問委員会を設置し、取締役の選任・解任、報酬決定の手続きにおいて、客観性と透明性を確保しております。また、経営会議の諮問機関である投資委員会は、4系列VCの構築に欠かせない資本提携を目的とした合併や買収等において、成長投資資源をより有効に活用するために案件起案時の審議フェーズと、投資実行後のモニタリングフェーズの両面でチェック機能の役割を果たし、企業価値向上につなげております。

取締役(監査等委員である取締役を除く。)の報酬等に係る制度および取締役の報酬等の額については、2024年6月25日開催の定時株主総会における承認を経て、業務執行取締役の報酬構成比率(報酬総額に占める各報酬額水準の割合)の見直しを行いました。業績連動部分の割合を高めることで、短期および中長期の目標達成に向けた動機づけを強化しております。また、譲渡制限付株式報酬については、その比率を高めることに加え、新たに業績達成条件を付すことにより、中期計画達成の意欲を喚起すると同時に、株主のみなさまをはじめとしたステークホルダーのみなさまとの一層の価値共有を図ってまいります。

 

[ご参考]取締役(監査等委員である取締役を除く。)の報酬構成概要

報酬の種類

報酬に占める割合

業績連動

月例報酬(固定報酬)

60%

短期インセンティブ

単年度業績連動報酬

会社業績評価

25%

対象

個人業績評価

中長期インセンティブ

事前交付型譲渡制限付株式報酬

10%

業績連動型譲渡制限付株式報酬

5%

対象

(注)1.監査等委員である取締役の報酬は固定報酬のみとしております。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

 当社グループは、時代を超えて、社会のお役に立てる企業としてあり続けるために、「3つの責任」を全ての活動の根幹とし、グループCSR方針や中期計画に組み込んでいます。

グループCSR方針はグループ理念体系の下に位置付ける大切な方針であり、「お客様への責任」「社員とその家族への責任」「社会への責任」それぞれに企業の持続可能性と地球・社会の持続可能性の観点を織り込み、社員一人一人がその趣旨を理解し、日々の行動の礎とすることをめざしています。

 

<グループCSR方針>

 私たちは本業を通じて、健全な社会とすこやかな暮らしに貢献するため、3つの責任を果たします。

 ~3つの責任の取組み~

 ・お客様とともに

安全・安心で価値ある商品・サービスを提供し続け、心身ともに健康で豊かな暮らしに貢献します。

 ・社員とその家族とともに

雇用を生み出し、社員の基本的人権、多様性を尊重します。また、人としての成長をうながし、社員とその家族の生活を豊かにします。

 ・社会とともに

健全な経営と事業活動により、自らの価値向上に努め、社会の発展に寄与します。

責任ある社会の一員として、法令順守はもとより、道徳観、倫理観を持って行動します。

環境に配慮した企業活動を行い、恵み豊かな地球の存続に貢献します。

 

■ガバナンス

当社グループが現在取り組んでいる第八次中期計画は、「食で健康 クオリティ企業への変革<第二章>グローバルなVC構築で成長をめざす」の実現に向けて、グループCSR方針に基づく3つの責任を軸とした各種重点テーマを設定しており、その計画や目標設定は、グループ本社経営会議で議論した上で、グループ本社取締役会で承認、最終的な意思決定をしています。

また、設定した重点テーマおよび目標の進捗確認は、グループ経営会議及び取締役を中心に構成するグループCSR委員会において年1回以上の報告を行い、経営に対する監督・指導を行うとともに、グループ内の連携強化を図っています。

 

■リスク管理

当社グループの中期計画では、「社員とその家族に対する責任」については人事部門を中心に、また「社会に対する責任」においてはサステナビリティ部門を中心にリスクと機会の評価を行い、その中で優先度の高いリスク機会項目の対応策を検討しています。検討した対応策は全社戦略に織り込み、グループ本社経営会議に答申後、グループ本社取締役会にて意思決定を行っています。対応策の進捗管理については、グループ経営会議や取締役会、グループCSR委員会への報告を年1回以上行っています。

 

■戦略

2024年度からスタートした第八次中期計画における当社の重要な経営課題として、「社員とその家族に対する責任」の重点テーマを「ダイバーシティを力に変える」と設定し、「他者への理解を深めて、自分と組織の固定概念を打破し、イノベーションを創出すること」に取り組んでいます。ダイバーシティを「グローバルなVC構築推進力」に変換するために、「社内環境整備・個と組織の活性化・人材ポートフォリオ整備」の3つの観点から取り組みを進めます。

また、「社会に対する責任」の重点テーマでは、食を生業とする企業として、限りある食資源を価値につなげることのできる「循環型モデルの構築」に向け、ハウス食品グループ長期環境戦略2050を策定し、バリューチェーン全体での環境負荷低減に向けた「気候変動への対応」を推進しております。

 

 

■指標と目標

 第八次中期計画の重点テーマについて、以下の目標を設定しております。

 

KPI

第八次中期計画

(2027年3月期)

社員と

その家族に

対して

主体的なチャレンジ行動

チャレンジ・公募施策に応募したグループ社員の割合

20%以上

組織風土診断結果

多様性受容風土

チャレンジ促進風土

の肯定回答割合

70%以上

女性活躍推進

グループ管理職の女性割合

20%以上

 

 

KPI

第八次中期計画

(2027年3月期)

社会に

対して

Scope1・2

CO2排出総量削減率

(2013年度比)

▲27%

Scope3

サプライチェーン全体の

CO排出削減量

(取組前比)

▲5,000t-CO

廃棄物

売上原単位廃棄物量

(2021年度比)

▲25%

副産物

再資源化率

99.5%

プラスチック

製品における化石資源由来

プラスチック使用量(国内)

(2018年度比)

▲8.5%

 

<気候変動への対応>

当社グループは、食を通じておいしさと健康をお届けする企業として、食品バリューチェーンを持続可能にし、限りある食資源を価値に繋げることのできる循環型モデルの構築をめざしています。

私たちの事業は、スパイスをはじめ原材料の多くを自然の恵みに頼っており、地球の健康なくしては成り立たないものです。気候変動は世界規模で影響を与える問題であり、国内外で事業展開している当社グループにとって、「社会に対する責任」として取り組むべき重要な課題と認識しています。

 

[TCFD提言に基づく情報の開示]

当社グループは、2021年5月に、G20金融安定理事会(FSB)が設置した「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」へ賛同を表明し、TCFDコンソーシアムに加盟しました。そして、2022年度より気候変動問題の主管部門であるサステナビリティ推進部を中心に、TCFD提言に沿った気候変動対応に関する情報開示を行っております。

 

■ガバナンス

当社グループでは、バリューチェーン全体での環境負荷低減をグループの重点課題と位置づけ、CO削減の戦略および目標を中期計画に織り込み推進しています。中期計画の取り組み項目および目標は、グループ本社経営会議で議論した上で、グループ本社取締役会で承認、最終的な意思決定をしています。

また、設定した取り組み項目および目標の進捗確認は、取締役を中心に構成するグループCSR委員会で行い、経営に対する監督・指導を行うとともに、グループ内の連携強化を図っています。

2022年5月に2050年のカーボンニュートラル(Scope1・2)を目標に設定し、開示するとともに、削減取り組みの加速につなげています。

 

 

 気候変動対応の推進体制は以下の通りです。

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会議体

開催頻度

気候変動の役割

監視・監督

グループ本社取締役会

1回/月

・気候変動対応を含め、グループCSR方針に基づく3つの責任に関する取り組みの戦略決議

監視・指導

グループCSR委員会

1回/年

・グループ全体の気候変動対応を含むCSR活動に対する監督

・グループ全体の気候変動対応に関する取組みの効果的、効率的な推進および連携強化のための指導

執行

グループ本社経営会議

2回/月

・気候変動対応を含む戦略および目標を織り込んだ中期計画の検討、取締役会への答申

・中期計画に基づく具体策の遂行責任

 

■リスク管理

当社グループでは気候変動を重要な経営リスクと位置付け、「社会に対する責任」におけるグループの重点課題として取り組んでいます。気候変動対応の主管部署であるサステナビリティ推進部を中心にリスクと機会の評価を行い、その中で優先度の高いリスク機会項目の対応策を検討しています。検討した対応策はハウス食品グループ長期環境戦略2050および全社戦略に織り込み、グループ本社経営会議に答申後、グループ本社取締役会にて意思決定を行っています。

対応策の進捗管理については、各社・各拠点の環境責任者が参加するグループ環境全体会議(事務局・サステナビリティ推進部)を通して進捗確認し、グループCSR委員会への報告を行っています。

 

■戦略

当社グループは自社の生産活動におけるCO削減だけでなく、バリューチェーン全体の気候変動対応を意識した環境活動を展開しています。

2021年度からスタートした第七次中期計画にはCO排出量削減の加速と取り組み領域の拡大をめざし、グローバルの視点かつサプライチェーンの視点で、お取引先さまとの協働・社内の組織活動のあらゆる面から削減対応を進めました。

2022年度は、当グループの中核事業であるスパイス系バリューチェーンを担うハウス食品㈱を対象に、シナリオ分析を実施し、気候関連リスクと機会の特定とその対応策の検討を行いました。

2023年度は、2050年までの長期スパンで実現したい姿を明確化するため、当グループが解決すべき重要課題を特定し、ハウス食品グループ長期環境戦略2050の策定、およびそれに基づく第八次中期計画の策定を行いました。

 

 

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<シナリオ分析の前提>

当社グループは「スパイス系」「機能性素材系」「大豆系」「付加価値野菜系」の4つのバリューチェーンを自ら価値提供する領域と定め、この領域で「食で健康」をお届けしていきます。そのなかでもグループの中核である「スパイス系バリューチェーン」を担うハウス食品㈱を対象に、2025年時点(短期)、2030年時点(中期)、2050年時点(長期)の気候変動による影響についてシナリオ分析を実施しました。

IEA、IPCCのレポートに基づき、2つのシナリオ(1.5℃シナリオ:IEA WEO_NZE2050、4℃シナリオ:IPCC AR6_SSP5-8.5、SSP3-7.0)を設定しました。100以上のリスクと機会を網羅的に抽出した上で、事業に与える影響が大きいと評価した項目は以下の通りです。

 

No.

リスク機会項目

時間軸

影響度

1.5℃

4℃

移行

リスク

調達品に関する規制

短期

消費者の意識の変容

短期

排出量に関するコスト増

中期

排出量の開示・削減等の義務化

中期

機会

エネルギー効率の改善

短期

脱炭素社会に対応した製品開発

中期

物理

リスク

気候変動に起因する災害リスク(サプライチェーン)

中期

気候変動に起因する災害リスク(自社)

中期

気象現象の激甚化等による消費動向の変化

長期

10

製品設計・管理条件の見直しの必要

長期

11

機会

労働環境整備等による評判の向上

中期

12

気候変動に対応する製品開発による売上増

中期

 

 

時間軸が手前かつ重要度の大きいリスク機会項目への検討を優先的に行い、以下の対策を進めています。

No.

バリュー

チェーン

リスク機会

具体的内容

想定される対応策

上流

リスク

調達品に関する規制

低排出なサプライヤーからの原材料調達や調達品に対する課税などにより、調達コストが上昇する。

◎環境負荷の少ない原材料を活用した製品開発

◎包材の軽薄短小による省資源化

・原材料の集約、調達元で加工して仕掛品化することで、調達・配送コストの低減

自社

リスク

排出量に関するコスト増

政府の環境に対する政策変更への対応、省エネ設備の導入コスト、代替エネルギーの調達コストなどが発生する。

◎環境投資による再生可能エネルギーの導入

(太陽光パネルの導入など)

・製法改善による省エネへの取り組み

・製品仕様の変更によるエネルギー使用量の削減

機会

エネルギー効率の改善

省エネ設備の導入や製造工程の効率化により、エネルギー費用の削減を図る。

下流

リスク

消費者の意識の変容

消費者の購買行動が変化し、低炭素化を促す製品(レンジ加熱対応パウチ化など)の開発が求められる。

◎環境配慮製品に対応したマーケティング施策の実施(レンジ加熱対応パウチ化など)

◎環境配慮製品の開発(過剰包装の見直し、容器包装の軽量化、代替肉の使用など)

機会

脱炭素社会に対応した製品開発

脱炭素社会に貢献する製品の開発などにより新たな顧客を取り込む。

上記表中の想定される対応策「◎」項目については、既に取り組みを推進しています。

 

■指標と目標

シナリオ分析の結果、CO排出量を削減することが当社グループのリスク低減・機会の増大となることが改めて確認できたため、グループとして設定しているCO削減目標に継続して取り組んでいます。長期環境戦略2050を踏まえ、2024年4月から始まる第八次中期計画において、新たな指標と目標を設定しました。

 

[CO削減目標]

■Scope1・2

自社から排出されるCOについて、2050年に向けてカーボンニュートラル達成を目標としていることから、指標を原単位から総量に変更し、2030年目標を総量▲38%、第八次中期計画の目標を総量▲27%(ともに2013年度比)と設定しています。

 

■Scope3

第八次中期計画においても、サプライチェーン全体のCO排出量の把握を行い、排出量の大きさから、カテゴリ1:購入した財及びサービス、カテゴリ4:上流の輸送及び流通、カテゴリ11:販売した製品の使用、カテゴリ14:フランチャイズを「重点取り組みカテゴリ」として設定しています。また、全社員の脱炭素社会に向けた意識向上のため、部門ごとに排出削減に関する目標を設定し、全員参加で取り組むだけでなく、サプライチェーン全体のCOを削減するため、第八次中期計画の目標を▲5,000t(取組前比)と設定し、ステークホルダーの皆様と協力しながら削減をめざしています。

 

 

CO削減目標

KPI

中長期目標

2026年度

2030年

2050年

(第八次中期計画)

Scope1・2

CO排出総量削減率

(2013年度比)

▲27%

▲38%

カーボン

ニュートラル

Scope3

サプライチェーン全体の

CO排出削減量

(取組前比)

▲5,000t-CO

 

 

 

CO排出量実績

2023年度 Scope1・2削減の主な取り組み:積極的な環境投資の実施(太陽光発電システムの導入、燃料転換)

KPI

2022年度

2023年度

Scope1・2排出量

112,803t-CO

109,590t-CO

CO排出総量削減率

(2013年度比)

▲13.6%

▲16.1%

[集計対象]

国内:ハウス食品グループ本社㈱、ハウス食品㈱、サンハウス食品㈱、サンサプライ㈱、ハウスウェルネスフーズ㈱、ハウスビジネスパートナーズ㈱、ハウス物流サービス㈱、ハウスあいファクトリー㈱、朝岡スパイス㈱、㈱デリカシェフ、㈱壱番屋、ハウスギャバン㈱、マロニー㈱、㈱ヴォ―クス・トレーディング、㈱ハウス食品分析テクノサービス、パッチワークキルト㈱

海外:ハウスフーズホールディングUSA社、ハウスフーズアメリカ社、上海ハウス食品社、大連ハウス食品社、浙江ハウス食品社、ギャバンスパイスマニュファクチャリング社、ジャワアグリテック社、ティムフード社

〈2023年度より集計対象に追加〉ハウスフーズベトナム社、エルブリトーメキシカンフードプロダクツ社、キーストーンナチュラルホールディングス社、ネイチャーソイ社、スーペリアナチュラル社

※壱番屋のフランチャイズ店舗は対象外としています。(壱番屋のフランチャイズ店舗のCO排出はScope3で算定対象としています。)

※2022年度および2023年度Scope1・2の実績(GHG排出量の内、エネルギー起源CO排出量)は、第三者認証を取得しています。

 

 

<人的資本>

グループ理念実現において3つの責任をステークホルダーとともに果たしていくことを、一企業市民としての責務と捉え、「社員とその家族に対する責任」として中期計画で設定した取組を実行することを、当社グループにおける人的資本経営の推進であると位置づけています。

第八次中期計画では、全体計画において「グローバルなVC構築で成長をめざす」を掲げています。その実現のためには、高まりつつある多様性を社員とグループの成長に変換していく必要があり、多様な人材がより個性を発揮しながら、組織の壁を超えてダイナミックに協働・共創することが求められます。このことから、第八次中期計画では「ダイバーシティを力に変える」を「社員とその家族に対する責任」の取組テーマとし、「他者への理解を深めて、自分と組織の固定観念を打破し、イノベーションを創出する」ことに取り組んでいきます。

 

 

■ガバナンス

人的資本の取組施策を推進する機関として、人事担当取締役を責任者とし、グループ各社の人事担当者が参画する「ダイバーシティを力に変える委員会」を設置しております。各種施策の進行状況を定期的にモニタリングするとともに、好事例の共有等グループ内の連携を強化しております。

人材の発掘・成長支援を検討する機関として、業務執行取締役をメンバーとした「人材開発会議」を設置しており、次世代リーダー育成、後継者計画等を策定しております。また、取締役候補者の選任にあたっては、委員の過半数を独立した社外取締役で構成し、独立社外取締役を委員長とする「指名諮問委員会」による審議を経たうえで、選任基準にふさわしい人材を取締役会で候補者として決議し、株主総会に付議しております。

 

■リスク管理

リスクマネジメント強化を目的に設置しているグループリスクオーナー会議にて、人的資本に関連するリスクについても分析・評価するとともに、対応策を策定し、その対応策の有効性をモニタリングおよびレビューするリスクマネジメントシステムを運用する事により、継続的な改善に努めております。

人的資本に関連する主要なリスクについては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

■戦略

第八次中期計画では、ダイバーシティを「グローバルなVC構築の推進力」に変換するために、「ダイバーシティを力に変える」を掲げ、取組テーマとして3つの観点から5つの具体的取組を進めます。

 

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多様な人材が集い、働きがいを感じられる社内環境整備の観点では、[取組①]グループ内・外の人材流動性を高めるオープンな仕組みづくりとして、人事制度など、仕組みの転換を進めます。[取組②]多様性を受入れ、チャレンジを後押しする組織風土づくりに取り組み、組織変革・社員の働きがいの追求を進めます。社内環境整備においては、多様な人材が集い、働きがいを感じられるよう、各種取り組みを推進しています。

個と組織の活性化の観点では、[取組③]社員の主体的な自己変革への支援策の拡充や、制限があっても、仕事への貢献ができるよう、育児、介護等のサポート体制の充実を図ります。[取組④]共創を意図した関係性や場の創出については、グループ理念の浸透や中期計画の自分事化を進め、多様性を生かすマネジメントの変革を進めます。

グローバルなVC構築を実現するための人材ポートフォリオの観点では、[取組⑤]グループ社員がグループ内で縦横無尽に活躍できる、グループにおけるポジションマネジメント、タレントマネジメントを進めます。

以上の取組を推進することで、多様性を社員一人ひとりの成長とグループの成長に変換し、グループ会社が共創して「力」を発揮できるハウス食品グループをめざします。

 

■指標と目標

項目

指標

第八次中期計画

(2027年3期期)

2025年3月期

実績

主体的なチャレンジ行動

チャレンジ・公募施策に応募した社員の割合

20%以上

25.3%

組織風土診断結果

「多様性受容風土」の項目への肯定回答割合

70%以上

66.0%

「チャレンジ促進風土」の項目への肯定回答割合

70%以上

62.6%

女性活躍推進

グループにおける女性管理職の割合

20%以上

13.6%

(注)1.第八次中期計画策定に伴い、当有価証券報告書より人的資本の指標及び目標を更新しています。

2.各指標について、グループにおける国内対象会社の合計値から算出した割合となります。

 

3 【事業等のリスク】

当社グループはグループ理念「食を通じて人とつながり、笑顔ある暮らしを共につくるグッドパートナーをめざします。」の実現に向けて、「3つの責任」(お客様に対して、社員とその家族に対して、社会に対して)の全てにおいて企業市民としての責任を果たしながら、“「食で健康」クオリティ企業への変革”を進めております。

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等(以下「財政状態等」)に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。ただし、すべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できないまたは問題視されていないリスクの影響を将来受ける可能性があります。当社グループは、これらのリスク発生(顕在化)の可能性を認識し、発生の抑制・回避に努めております。また、リスクが顕在化した際には、経営および事業リスクの最小化に取り組んでまいります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)お客様に対する責任に関連するリスク

事業会社として持続的に成長し、世の中に独自の価値を提供し続けるための活動に関する主要なリスクは以下のとおりです。

① 国内市場動向に関するリスク

《背景》

《リスク概要・影響》

《主要な対策》

中長期では景気減速や人口減少などにより、国内需要全体が低下する影響があります。

コロナ禍を経て、働き方や食事への接し方など、お客様のライフスタイルが大きく変わってきておりコロナ前の生活には戻らない中で、地政学的リスクによる原材料高騰、物価上昇に伴い、消費動向にも変化が出てきています。

当社グループは売上の約7割以上を国内販売が占めており、国内市場の縮小が当社の財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

また、お客様の変化や物価高に迅速に対応することは新たな成長機会になる一方、対応が遅れた場合には、提供価値(製品・サービス)が毀損するリスクがあります。

新価値創出や生産性向上を進め、リスク対応力の強化と機会獲得に取り組みます。

・事業基盤のある「スパイス系」「機能性素材系」「大豆系」の3つのバリューチェーン(以下「VC」)のグローバル展開により成長を加速

・調達/栽培・加工・生産・販売といった川上~川下の統合により競争力・リスク対応力を強化

・ROIC(投下資本利益率)を活用した、資本コストや株価を意識した経営の実現と投資収益性の向上

・社内外との共創による新価値創出を推進(付加価値野菜系VCによるビジネスモデルの確立など)

 

② 事業拡大に関するリスク

《背景》

《リスク概要・影響》

《主要な対策》

当社グループは、2013年の持株会社体制移行後、2015年に㈱壱番屋を、2016年に㈱ギャバンを、2022年にキーストーンナチュラルホールディングス社をグループに迎えるなど、VCの拡大を進めております。また2017年にはコーポレートベンチャーキャピタルを設立し、事業シナジーが見込まれる企業への投資を通じた新たな価値基盤の創出に取り組んでおります(2023年には2号ファンドを設立)。その結果、企業買収に伴うのれんや無形資産を計上することがあります。

当社グループの成長戦略との親和性が高く、ユニークな強みを持つ事業会社をグループに迎えることで、当社グループのVCの強靭化が図られる一方、事業計画の未達や市場環境の変化等によって、期待されるキャッシュ・フローを生み出せない場合、また当初想定したシナジーが得られない場合、企業買収に伴うのれんや無形資産について減損損失等が生じるリスクがあります。

・経営会議等における投資計画の検証(財務的視点での妥当性、事業戦略視点での収益性や成長性リスク等)

・投資計画の検証精度向上に向けた投資判断基準の見直し

・投資委員会(経営会議の諮問委員会)の運営を通じた、M&A等の事業投資に関わる妥当性・効率性の確保、並びに投資前後の各フェーズにおけるチェック体制の強化

 

 

③ 技術革新に関するリスク

《背景》

《リスク概要・影響》

《主要な対策》

成熟した食品産業においては、既存の事業競合に加え、異業種参入や新技術の台頭により競争環境も多様化しております。

お客様や社会が直面する課題の解決に繋がるR&D機能の強化やデジタル化、グローバル化への対応強化による成長機会の獲得に努めておりますが、こうした対応が遅れた場合、競争優位性が低下し、提供価値が陳腐化するリスクがあります。

・R&D重点領域およびテーマの設定と経営資源の集中投下

・イノベーション創出力と実現力向上への意識改革、風土醸成

・グループ企業間の技術課題の解決だけでなく、事業創造をめざしたVC間の連携強化

・特許などでの保護による自社技術の知的財産化と知的財産活用によるオープンイノベーションを通じた共創戦略の推進

・デジタル投資の積極化による基盤構築と新価値創出

 

④ 海外事業展開に関するリスク

《背景》

《リスク概要・影響》

《主要な対策》

進出各国・地域においてカレー・スパイス製品、豆腐・PBF、機能性飲料製品等の事業を展開しております。食文化は元来保守的な性質を有しており、進出各国の食文化へ浸透、定着には、緻密な事前調査や継続的な事業基盤の強化が必要不可欠です。

また、世界情勢が刻々と変化するなか、有事顕在化への備えが求められます。

当社グループが保持する知見・ノウハウを成長領域に積極的に配分することで、早期の事業拡大に取り組んでおります。一方、進出各国・地域の食文化への浸透、定着が想定を下回ることで事業計画の遅れや減損損失が生じる恐れがあります。

また、事業規模に見合う経営基盤の構築や整備の遅れ、各国法令の発布や改正への対応の遅れ、カントリーリスク顕在化等により、利益創出力の低下、ガバナンス機能不全等が生じるリスクがあります。

・食文化の受容性や認知度に関する緻密な市場調査に基づいた市場ポテンシャルの予測

・経営マネジメント人材の継続的な育成・確保、外部機関とも連携した各国法令情報の収集等による事業基盤の強化

・グループ本社と海外事業会社が連携し、事業規模に応じたリスクマネジメント体制の構築・整備

・複数エリアへの事業展開を進めることによる事業基盤分散、カントリーリスク低減

 

⑤ 食の安全・安心に関するリスク

《リスク概要・影響》

《主要な対策》

価値ある商品やサービスをお客様に安全・安心に提供し続けるために、グループ一丸となって品質の維持・向上に取り組んでおります。しかしながら万一、製品、サービスの品質トラブルが発生した場合には、お客様の健康危害や不安の発生、それに伴う企業ブランドの毀損、社会的信用の失墜、対応に係るコスト増加のリスクがあります。

・グループ品質保証会議・グループ品質保証責任者会議を通じて、品質保証に関する重要課題について討議を行い、継続的なグループの品質保証活動を推進

・製品の品質・安全の信頼性向上をめざし、各事業会社の特性に応じたISO9001やFSSC22000等の国際的な品質・食品安全マネジメントシステムの認証取得および運用

・品質情報リスクマネジメント活動を通じて法規制遵守やお客様の安全への関心事をグループ全体で検討・対応することで食品安全の活動を推進

・食の安全、安心をテーマとして、HACCP学習会や製品の表示学習会、または品質の基本などの様々な社内外の活動を通して人材育成を推進

・生産現場の「安全・安心」のための創意・工夫を称賛するプロフェッショナル表彰制度等を通じた品質を重視する組織風土の醸成

・製品設計から販売に至る各工程では、お客様の声を反映した活動を通じて製品の品質向上を図るとともに、製品パッケージやWEB等では、お客様に分かりやすい情報発信を徹底

 

(2)社員とその家族に対する責任に関するリスク

当社グループの中長期的な成長には、性別や国籍などの属性の多様性とともに、一人ひとりが持つ多様な経験や適性をいかしていくことが欠かせません。そのためにも、他者への理解を深めて、自分と組織の固定観念を打破し、イノベーションの創出につなげることが重要と考えております。社員一人ひとりが尊重され、仕事を通じて豊かな人生を過ごしていけるよう、成長や活躍を支援する活動における主要なリスクは、以下のとおりです。

① 多様性のある人材の確保、育成、活躍に関するリスク

《リスク概要・影響》

《主要な対策》

グローバルなVC構築で成長をめざすにあたり、戦略の実現に必要な人材を育成・確保・供給できないことや、多様性やチャレンジを尊重する組織風土が醸成できないことは、イノベーション創出力の毀損、事業における機会損失や優秀人材の流出を起こすリスクがあります。また、社員が事業活動を進める中で、社内外の多様な価値観を尊重しない行動をとるようなことがあった場合には、信用失墜による企業価値の低下や組織風土へ悪影響を及ぼすリスクがあります。

・グループ内・外の人材の流動性を高める役割に基づくオープンな人事制度の導入

・グローバルなVC構築による成長を実現するためのバックキャスト視点での組織構築、人材投下と育成

・高度な専門性や新たな知見を有する社外人材の獲得

・育児・介護などの事情により、主体的なキャリア開発や活躍が妨げられないようにするためのサポート体制の充実

・社内公募制や副業制度、およびグループ内外での人材交流により、社員が多様な成長経験を積むことへの支援

・アセスメントを通じた適性の把握と、適性の強化・拡大に向けた社内外での学習機会の更なる提供

・定期的な組織風土診断の実施と、その結果を受けてのディスカッション等を通じた、性別、国籍、キャリア、障がいの有無等を問わず、多様な人材が成長に向けてチャレンジをできる組織風土づくり

・多様性を力に変える源としてのグループ理念の浸透・「ハウスウェイ」による価値観の共有

・グループ理念やハウスの意、およびハウス食品グループ行動指針・人権方針等の規範を理解・共有することでの差別やハラスメントのないコンプライアンスを遵守する安全・安心な職場環境づくり

 

(3)社会に対する責任に関連するリスク

社会に存在する企業市民として、本業を通じて社会の様々な課題解決に貢献するための活動に関する主要なリスクは以下のとおりです。

① 持続可能な原材料調達に関するリスク

《リスク概要・影響》

《主要な対策》

当社グループはスパイスをはじめ様々な原材料を世界各国から調達しており、持続可能な原材料調達の推進は事業活動を継続する上で必要不可欠です。

原材料の調達にあたっては、国際的な需要の拡大に伴う食資源の調達競争の激化や需給動向の変化、気候変動・生物多様性や地政学的リスク、資材お取引先での感染症集団発生による原材料の供給停止・遅れ、物流業界のドライバー不足や紛争・天候の船舶運航影響等による輸送遅れ、VCの各段階における社会・環境問題への対応の遅れ等により、調達の不全やコストの増加、社会的信用の失墜等に繋がるリスクがあります。

・川上領域の取組強化に向けた各種施策の遂行(産地多様化による安定調達、原材料の使いこなしを推進することによる調達の柔軟性拡大、技術開発・品質向上等における調達地との協働取組、サプライヤー監査の実施等)

・持続可能な調達の実現に向けた仕組みの構築(生産地の社会課題や環境等に配慮した原材料調達の推進(RSPO認証パーム油、FSC認証紙、バイオマスPE)、第三者機関(Sedex)等を活用した人権デューデリジェンスの強化、地政学的リスクを考慮した代替品の検討・輸送ルートの開拓、より効率的な輸送方法への見直し)

・重要原材料の安全在庫基準の見直し、その他原材料の安全在庫基準内での運用

・製品・サービスの適切な価格改定によるコスト増加影響の低減

 

 

② 気候変動に関するリスク

《リスク概要・影響》

《主要な対策》

気候変動は世界規模で影響を与える問題であり、国内外でVCを構築する当社グループにとって重要な課題と認識し対策を実施しております。気温の上昇や異常気象、自然災害等によって原材料の調達不全やコスト増、生産停止等の事業活動の分断、消費動向の変化等が生じるリスクがあります。また、脱炭素への対応が不足および遅延することで、排出量などによるコストの上昇や事業活動の制限、企業価値の毀損が生じるリスクがあります。

・環境方針の改訂

・2050年カーボンニュートラルに向けたグローバルかつバリューチェーン全体での気候変動取組の促進

・環境投資判断基準の策定による環境負荷低減に向けた投資の促進(インターナルカーボンプライシング制度の導入)

・Scope1・2の排出削減取組の加速(再生可能エネルギーへのシフト)、Scope3への対応

※グループ内に電力を融通する、多拠点一括エネルギーネットワークサービスの導入

・TCFDに即した情報開示など、積極的な情報開示によるパートナーシップの強化

 

③ 大規模自然災害、重篤な感染症の流行に関するリスク

《リスク概要・影響》

《主要な対策》

当社グループの事業は、大規模な自然災害の発生・重篤な感染症の大流行により、財政状態等に影響を及ぼすリスクがあります。

・大規模災害発生、重篤な感染症の大流行に際して、食品企業の使命として人命の安全を確保しながらも製品供給を果たすため、生産・供給体制の整備等の危機管理体制の更なる改善を推進

・国内外グループ会社の事業特性や事業規模に応じた事業継続計画(BCP)の策定と定期的な訓練等を通じた事業継続マネジメント(BCM)の運用の強化

 

(4)その他共通のリスク

① 法的規制とソフトローに関するリスク

《リスク概要・影響》

《主要な対策》

当社グループは、国内・海外を問わず、適用される法令等を遵守して事業活動を行っております。しかしながら、社会環境の変化、価値観の多様化のなかで、各国において新たな法令等が制定され、また、さまざまな形で、企業として遵守すべき規範が形成されております。

既存の法令等の改正情報はもちろん、新しい法令等に関する情報を適時入手し、その内容にそった実務対応が適切にできていない場合、また、多様化した価値観を尊重し、道徳観、倫理観をもった事業活動ができていない場合には、事業活動が制限される可能性があるほか、お客様利益の損失、処罰や事業活動の制限を受けた場合の対応コストの増加、信用失墜による企業価値の低下等につながるリスクがあります。

・グループ共通の価値観である「ハウスウェイ」や行動原則である「ハウス食品グループCSR方針」「ハウス食品グループ行動指針」に基づく、役員・社員一人ひとりの関係各国における法令・国際ルールの遵守、現地の人権、文化、伝統、慣習の尊重による友好的な関係の維持・促進

・当社グループの取締役等で構成される「グループCSR委員会」を通じて、グループ全体のCSR重要テーマの取組状況のモニタリング・レビューの実施

・CSR重要テーマであるコンプライアンスについては、「コンプライアンス推進委員会」を設置し、各社の課題解決を推進

・コンプライアンス上の問題の早期発見、解決に向けた「グループ共通コンプライアンス・ヘルプライン」の整備、周知徹底

・各種法令に係る主管部門や法務部門による新規法律情報、法改正情報の収集とその実務対応

 

 

② 情報セキュリティに関するリスク

《リスク概要・影響》

《主要な対策》

当社グループ(海外拠点含む)は、開発・生産・物流・販売・労務等の情報や通信販売等によるお客様の個人情報について、多くをITシステムにより管理しております。災害によりソフトウエアや機器が被災した場合のシステム作動不能や内部情報の消失、想定を超えたサイバー攻撃等によるシステム障害や情報漏洩、改ざん等の被害が発生した場合、また働き方の多様化に伴う情報の持ち出しや不適切な取扱いにより社有情報の外部漏洩が発生した場合、財政状態等や社会的信用に影響を及ぼすリスクがあります。

・海外拠点含む情報セキュリティを包括的に管理するための組織体制強化と、各国独自法令を含むルールの徹底

・ソフトウエアや機器によるシステムセキュリティ対策、社員教育の実施

・在宅勤務やWEB会議等の働き方の多様化に対する定期的な社内調査による現状確認と対策の実施

・守るべき社有情報の特定と影響評価の実施、適切な情報漏洩防止策の設定と実施の徹底

・情報漏洩が発生した際に、迅速に対応し、被害の極小化を図るため、インシデント対応マニュアルの整備と周知・訓練の実施

 

③ 為替・金利変動に関するリスク

《リスク概要・影響》

《主要な対策》

当社グループが海外から調達する原材料において、為替変動の影響により調達コストが増加する可能性があります。

当社グループの外貨建て債権債務については、為替変動の影響により為替差損益が発生する可能性があります。

当社グループの海外売上高比率は2割超の水準でありますが、海外事業展開の加速に取り組んでおり、今後重要性が高まることを見込んでおります。連結財務諸表作成のため、展開各エリアの現地通貨で作成された財務諸表を円換算しており、為替変動の影響があります。

当社グループの有利子負債については、金利上昇による直接的な影響は当面軽微であると見込んでおりますが、将来的な金利上昇局面においては資金調達による金利負担が増大する可能性があります。

(海外から調達する原材料)

・合理的な範囲で輸入原料の国内在庫を積み増すことで将来的な為替変動によるリスクを低減

(外貨建て債権債務)

・為替予約や通貨スワップ等により将来的な為替変動によるリスクのヘッジ

(金利変動)

・金利動向に応じた調達方法や金利スワップ等により将来的な金利変動によるリスクのヘッジ

 

④ 投資有価証券に関するリスク

《リスク概要・影響》

《主要な対策》

当社グループが保有する投資有価証券については、大幅な株式相場の下落や投資先における企業価値の毀損が生じた場合には、保有有価証券を減損処理する可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・投資有価証券の保有状況を毎年取締役会に報告し、保有の是非や保有規模を継続的に検証

・中期計画に基づく政策保有株式の縮減実施

 

 

⑤ 固定資産の減損に関するリスク

《リスク概要・影響》

《主要な対策》

当社グループが保有する固定資産について、将来の収益性低下等により減損処理が必要となった場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・一定額以上の投資案件については、社内基準に基づき回収可能性に基づく投資判断を実施

・投資実行後に投資効果検証を行い、継続的なモニタリングを実施

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものであります。

 

(1)経営成績

当社グループは、2024年4月よりスタートした第八次中期計画において、“「食で健康」クオリティ企業への変革<第二章>グローバルなバリューチェーン(以下「VC」)構築による成長” をテーマに掲げ、グローバルにVC体制を構築し、将来に向け持続的に成長できる礎を築くと同時に、資本コストを意識した経営に向けてROIC(投下資本利益率)を新たな経営指標として導入するなど、企業価値向上に向けた取組を進めております。

こうしたなか当連結会計年度の経営環境は、各国のインフレ進行や金利変動による景気減速のリスク、事業コストの上昇、二極化する消費者嗜好、為替の大幅な変動など、先行き不透明な状況が増幅しました。

当連結会計年度は香辛・調味加工食品事業が前期価格改定の残存効果やコストダウンの取組により全体をけん引したことで営業利益・経常利益ベースでは増収増益を確保いたしましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に計上した退職給付制度改定益の反動や、第4四半期連結会計期間に計上したキーストーンナチュラルホールディングス社ののれんに関する減損損失により減益となりました。

 

これらの結果、当社グループの経営成績は以下のとおりとなりました。

 

2025年3月期

金額(百万円)

前期比(%)

売上高

315,418

105.3

営業利益

20,004

102.7

経常利益

21,388

101.4

親会社株主に帰属する当期純利益

12,493

71.1

 

当社が重視する経営指標は次のとおりとなりました。

 

2024年3月期

2025年3月期

ROIC(投下資本利益率)

4.6%

4.5%

ATO(総資産回転率)

0.72回

0.73回

ROS(売上高営業利益率)

6.5%

6.3%

ROA(総資産営業利益率)

4.7%

4.6%

ROE(自己資本当期純利益率)

6.2%

4.3%

 

 

 セグメント別の経営成績の概況(セグメント間取引消去前)は、次のとおりであります。

事業の種類別

セグメント

売上高

営業利益

(セグメント利益又は損失(△))

金額

(百万円)

前期比

(%)

金額

(百万円)

前期比

(%)

香辛・調味加工食品事業

131,402

104.1

12,816

118.3

健康食品事業

17,043

101.1

2,437

98.9

海外食品事業

62,407

110.7

3,044

99.2

外食事業

60,986

110.6

3,604

106.2

その他食品関連事業

54,405

98.8

1,235

64.0

小計

326,242

105.3

23,136

106.7

調整(消去)

△10,824

△3,132

合計

315,418

105.3

20,004

102.7

(注)1.調整(消去)の内容は、セグメントに配分していない損益およびセグメント間取引に係る相殺消去であります。

 

<香辛・調味加工食品事業>

ハウス食品㈱を中心とする当事業セグメントの家庭用事業は、前期、前々期と二度行った価格改定後の販売数量の回復に努めるとともに、コストダウンテーマの推進による持続的な収益力強化に取り組みました。売上高は、スナックが物流効率改善のため価格改定を行うも販売面で苦戦しましたが、ルウカレー、レトルトカレーを中心に堅調に推移し増収となりました。ハウスギャバン㈱が推進する業務用事業に関しても大手外食向けを中心に売上が拡大したことから、事業セグメントとして原材料価格の上昇を増収効果と価格改定効果で吸収し、増収増益となりました。

以上の結果、香辛・調味加工食品事業の売上高は1,314億2百万円、前期比4.1%の増収、営業利益は128億16百万円、前期比18.3%の増益となりました。結果、売上高営業利益率は9.8%となり、前期より1.2pt向上いたしました。

 

<健康食品事業>

当事業セグメントを担うハウスウェルネスフーズ㈱は、国内事業の更なる収益基盤強化とグローバルでの機能性素材系バリューチェーンの構築に取り組んでおります。

ビタミン事業は「1日分のビタミンゼリー」の販売が国内ゼリー市場の競争激化もあり前期並みで推移した一方、「C1000」の販売がプロモーションの強化や第4四半期連結会計期間に発売したバラエティ品の貢献により売上が拡大した結果、当事業セグメントは増収となり、原材料価格の上昇はあったものの前期並みの営業利益を確保しました。

以上の結果、健康食品事業の売上高は170億43百万円、前期比1.1%の増収、営業利益は24億37百万円、前期比1.1%の減益となりました。結果、売上高営業利益率は14.3%となり、前期より0.3pt減少いたしました。

 

<海外食品事業> 連結対象期間:主として2024年1月~12月

当事業セグメントは、主要3エリア(米国・中国・タイ)の持続的成長に向けた基盤強化および課題解決に取り組んでおります。

米国の豆腐事業は、ハウスフーズアメリカ社の販売がチャネル別営業施策により伸長したものの、キーストーンナチュラルホールディングス社の販売苦戦に伴う収益性低下をカバーするには至らず、増収減益となりました。

中国のカレー事業は、家庭用事業がコロナ禍の影響で膨らんだ社内在庫・流通在庫の適正化に注力したことにより、減収減益となりました。なお、下期より流通チャネルの変化に対応した配荷型の営業戦略へ転換し、業績は回復傾向にあります。業務用事業は外食を中心に新規顧客開拓が進み増収増益となりました。以上により、中国カレー事業全体では減収減益となりましたが、日本円換算では為替影響により増収減益となりました。

東南アジアで展開する機能性飲料事業は、タイ国内のビタミン飲料市場の再構築に取り組み、主力製品「C-vitt」の販売が回復したことから増収増益となりました。なお、下期は「C-vitt」のビタミンC配合量の増量および新フレーバーの発売、マルチビタミン領域の新製品発売など、今後の市場活性化に向けた製品施策の展開に注力しております。

以上の結果、海外食品事業の売上高は624億7百万円、前期比10.7%の増収、営業利益は30億44百万円、前期比0.8%の減益となりました。結果、売上高営業利益率は4.9%となり、前期より0.6pt減少いたしました。

<外食事業> 連結対象期間:㈱壱番屋は2024年3月~2025年2月、海外子会社は2024年1月~12月

当事業セグメントは、国内既存事業の収益力強化、海外事業の拡大、新業態の育成に取り組んでおります。

売上高は、㈱壱番屋が推進する国内事業において各種営業施策に加え、8月に価格改定を実施したことなどから増収となりました。利益面は、米をはじめとする食材の価格高騰や人件費、物流費など本部販管費が増加したものの、価格改定効果により吸収して増益を確保しました。

以上の結果、外食事業の売上高は609億86百万円、前期比10.6%の増収、営業利益は36億4百万円、前期比6.2%の増益となりました。結果、売上高営業利益率は5.9%となり、前期より0.2pt減少いたしました。

 

<その他食品関連事業>

㈱デリカシェフは、総菜・デザートの販売が減少する一方で労務費などの増加により大幅な減収減益となり、赤字に転落しております。

㈱ヴォークス・トレーディングは、当上期に発生した一部商材のコスト増加影響が大きく減収減益となりました。

以上の結果、その他食品関連事業の売上高は544億5百万円、前期比1.2%の減収、営業利益は12億35百万円、前期比36.0%の減益となりました。結果、売上高営業利益率は2.3%となり、前期より1.2pt減少いたしました。

 

 生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

香辛・調味加工食品事業

114,705

106.4

健康食品事業

16,618

104.1

海外食品事業

43,736

110.7

外食事業

14,702

104.7

その他食品関連事業

21,260

98.4

合計

211,021

106.1

(注)1.金額は販売価格により算出しております。

 

② 受注状況

主要製品の受注生産は行っておりません。

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

香辛・調味加工食品事業

131,402

104.1

健康食品事業

17,043

101.1

海外食品事業

62,407

110.7

外食事業

60,986

110.6

その他食品関連事業

54,405

98.8

小計

326,242

105.3

調整(消去)

△10,824

合計

315,418

105.3

(注)1.調整(消去)の内容は、セグメントに配分していない損益およびセグメント間取引に係る相殺消去であります。

2.当連結会計年度における主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

加藤産業㈱

34,788

11.6

36,293

11.5

三菱食品㈱

17,123

5.7

17,444

5.5

 

(2)財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べて32億38百万円増加し4,350億74百万円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べて185億94百万円増加し1,898億2百万円、固定資産は、前連結会計年度末に比べて153億56百万円減少し2,452億72百万円となりました。

流動資産の増加の主な要因は、現金及び預金が167億21百万円、商品及び製品が11億36百万円増加したことなどによるものです。

固定資産の減少の主な要因は、建設仮勘定が29億70百万円、退職給付に係る資産が15億57百万円増加した一方で、投資有価証券が173億46百万円、のれんが55億62百万円減少したことなどによるものです。

当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べて19億69百万円増加し1,121億96百万円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べて26億57百万円減少し631億21百万円、固定負債は、前連結会計年度末に比べて46億26百万円増加し490億75百万円となりました。

流動負債の減少の主な要因は、未払金が19億10百万円減少したことなどによるものです。

固定負債の増加の主な要因は、繰延税金負債が28億97百万円減少した一方で、長期借入金が63億56百万円増加したことなどによるものです。

当連結会計年度末の純資産は、その他有価証券評価差額金が減少したほか、「信託型社員持株インセンティブ・プラン(E-Ship®)」の導入に伴う自己株式の取得により自己株式が増加した一方で、為替換算調整勘定が増加したことや、親会社株主に帰属する当期純利益により利益剰余金が増加したことなどから、前連結会計年度末と比べて12億69百万円増加の3,228億78百万円となりました。

この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の67.7%から67.3%となり、1株当たり純資産が3,016円19銭から3,113円86銭となりました。

なお、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定に伴い、前連結会計年度については、取得原価の当初配分額の見直しが反映された後の金額を使用しております。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」をご参照ください。

 

(3)キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローにつきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー265億68百万円に対し、「有形固定資産の取得」「定期預金の預入」などの投資活動によるキャッシュ・フロー△122億81百万円、「自己株式の取得」「配当金の支払」などの財務活動によるキャッシュ・フロー△90億60百万円を減じました結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は883億57百万円となり、期首残高より81億92百万円増加いたしました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の増加は265億68百万円(前期比+9億97百万円)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益201億98百万円、減価償却費129億40百万円などによるものであります。

また、前連結会計年度に比べての増加は、売上債権の増減額の減少(前期比+40億51百万円)、税金等調整前当期純利益の減少(前期比△70億78百万円)、投資有価証券売却損益の増加(前期比△20億9百万円)、退職給付制度改定益の減少(前期比+69億88百万円)などが要因であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の減少は122億81百万円(前期比△99億83百万円)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出131億56百万円によるものであります。

また、前連結会計年度に比べての減少は、定期預金の預入による支出の増加(前期比△65億86百万円)、有価証券の取得による支出の増加(前期比△37億2百万円)などが要因であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の減少は90億60百万円(前期比△16億78百万円)となりました。これは主に自己株式の取得による支出80億89百万円、配当金の支払額45億95百万円、長期借入れによる収入66億57百万円などによるものであります。

また、前連結会計年度に比べての減少は、自己株式の取得による支出の増加(前期比△60億87百万円)、短期借入金の純増減額の減少(前期比△17億52百万円)、長期借入れによる収入の増加(前期比+66億57百万円)などが要因であります。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性について

(財務戦略の基本的な考え方)

当社グループは、財務体質の健全性の維持と資金効率の向上を両立しつつ、企業価値向上のために資金を適切に配分することを財務戦略の基本方針としております。

財務体質の健全性の維持に関しては、「シングルA(安定的)」以上の信用格付の取得・維持を目指し、信用力及び透明性の向上を図ります。

資金効率の向上に関しては、当社及び国内子会社においてCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入することにより、国内子会社における余剰資金を当社へ集中し、一元管理を行うことで資金効率の向上を図っております。

企業価値向上に関しては、第八次中期計画では、営業キャッシュ・フローに加えて新たな資金調達方法を活用し、VC構築に向けて積極投資を継続する他、資本コストを意識した経営を推進するべく、政策保有株式の縮減など資本効率を高めるとともにその原資を株主還元に充当いたします。事業投資は、4系列VCの成長領域へ500億円、既存領域へ150億円、デジタル変革・環境領域へ50億円の、総額700億円を計画しております。株主還元は、当連結会計年度より利益配分の基本方針を「総還元性向40%以上」「安定配当として年間配当金額1株当たり46円以上を継続的に配当」に変更しております。特に、第八次中期計画3か年においては、政策保有株式150億円の縮減(2024年3月期比30%縮減)を原資とした自己株式取得による株主還元を進めることから、総還元性向50%以上を目指してまいります。

なお、各国のインフレ進行や金利変動による景気減速のリスク、事業コストの上昇、二極化する消費者嗜好、為替の大幅な変動など、先行き不透明な状況が増幅しております。また人的資本の面では、生産労働人口の減少など外部環境変化に対応すべく、人材の多様性を高めることや、様々な人材が集まることで生じる価値観の違いをシナジーに変換していくことが不可欠となってきております。さらに、気候変動など環境問題も世界規模で取り組むべき大きな課題であり、企業の対応強化が求められております。

このような状況下で、当社グループは原材料価格を中心とした事業コストの上昇に対し、一部製品で価格改定を実施するなど足元の環境変化に対応するとともに、将来のあるべき姿を見据え、バックキャスト視点でクオリティ企業への変革を推進しております。

食品企業の使命として人命の安全を確保しながらも製品供給を果たすため、今後も当社グループの企業価値向上に努めてまいります。

 

(経営資源の配分に関する考え方)

当社グループは、適正な手元資金の水準について、事業上の資金を回収するまでの運転資金調達期間の観点と不測の事態に対応できる安全資産の額の観点から検証し、適正な水準として売上高の2.0か月分を設定しております。適正な水準を超える分については、追加的に配分可能な経営資源と認識し、企業価値向上のために既存領域での生産性向上による収益力強化と国内外の成長事業領域への経営資源の重点配分に取り組んでまいります。

 

(資金需要の主な内容)

当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では、製品製造のための材料費、労務費、経費、販売費及び一般管理費等の営業費用などがあります。投資活動に係る資金支出では、香辛・調味加工食品事業において、業務用レトルト食品新工場の建設(ハウス食品グループ東北工場㈱)や工場増築(ハウスギャバン㈱)などがあり、海外食品事業において、堅調な豆腐需要に応えるための工場生産設備更新(ハウスフーズアメリカ社)などがあります。また、持続的な成長の実現のため、既存領域だけでなく、4系列バリューチェーンによる成長実現を目指し、成長領域や新規領域についても、投資を行ってまいります。

 

(資金調達)

当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、営業活動によるキャッシュ・フローを内部的な資金の源泉と考えており、設備投資のための資金については、主として内部資金により充当することとしており、必要に応じて金融機関からの借入金や社債の発行等により充当することとしております。

 

(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5 【重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

1.香辛・調味加工食品事業、健康食品事業、海外食品事業

当社グループ(当社および当社の関係会社)は、“「食で健康」クオリティ企業への変革”というテーマを掲げております。国内市場で長年にわたりご愛顧をいただいている各製品ブランド力の維持・強化に努めると共に、成熟した市場の中で「食で健康」という領域にフォーカスし、お客さまの立場に立った新しい価値をご提供し続けることができるよう、研究開発活動を行っております。

当社グループにおきましては、研究開発本部、ハウス食品㈱の開発研究所(千葉県四街道市)、ハウスウェルネスフーズ㈱の開発研究所(千葉県四街道市、兵庫県伊丹市)、ハウスギャバン㈱開発部(東京都中央区、千葉県四街道市)の4部門が、研究開発活動を担っており、「新たな需要の創造」と「確かな設計」の両立を目指し、変化する社会にあって安心してご使用いただけ、ご満足をいただける食品を創出するために、広範な研究開発を実施しております。

 

(1)研究開発取組概要

① 製品開発・技術開発分野

製品開発・技術開発分野では、日本の成熟市場では潜在化しやすいお客さまニーズを掘り起こし、「新しい価値」を有した製品づくりに努めるとともに、お客さまの食生活と健康に貢献するべく、「よりおいしく、より簡便に、より健康に」にこだわりを持ち、品質の一層の向上に努め、独自性のある技術に裏打ちされた製品の開発に取り組んでおります。

香辛・調味加工食品事業におきましては、ハウス食品レトルトカレー史上最大量 (「最大の肉量」は牛肉・豚肉における充填量) のお肉が入った「カレーでニクる。」<牛肉><豚肉>を開発いたしました。肉の旨みや香りを閉じ込め、噛めば噛むほど肉のおいしさが染み出す新技術「お肉パラダイス製法」(特許出願中)で、お肉のおいしさを徹底追求した、肉好きには堪らない一品となっております。また、色味付けの効果があるターメリックや唐辛子などのスパイスを極限まで減らし、白さを引き立たせた「ホワイトカレー」<中辛>と、長時間煮込んだような深みのある黒さを目指し、カレーソースを煮込む製造工程で焦げる直前ギリギリまで加熱して黒さを引き出した「ブラックカレー」<中辛>を開発しました。家庭用カレーに“彩り”と“華やかさ”をコンセプトに、見栄えの価値を付与した一品に仕上げています。

健康食品事業におきましては、発売35年のロングセラーブランド「C1000」シリーズを大幅にリニューアルしました。「C1000ビタミンレモン」は、従来よりも日常的にビタミンCを補給できる飲みやすさを求め、果汁・皮など果物が持つ複雑な味わいを表現し、甘さを抑えつつ、程よい酸味とのバランスを追求しました。「C1000ビタミンゼリーレモン」は、常温でもおいしく飲める味の開発に挑戦しました。常温でも酸味を抑えさっぱり飲める新技術(特許出願中)を採用することで、いつでもおいしく飲むことができる製品に仕上げました。また、シリーズからの新提案として糖類が気になる方に嬉しい「C1000ビタミンレモンゼロシュガー」と、シリーズ最大量のクエン酸配合で強い酸味が味わえる「C1000ビタミンゼリークエン酸5000」を開発いたしました。

 

② 基礎研究分野

基礎研究分野では、食品科学のみならず、生化学、植物育種・栽培学、化学工学、生理学など多方面からの研究を行い、高水準の技術保有に努めております。当連結会計年度では、弘前大学大学院医学研究科の共同研究講座「食と健康 科学講座」において、健康寿命延伸につながる新たな食スタイルを提案することを目指して、青森県の岩木健康増進プロジェクト健診・いきいき健診や沖縄県のやんばる版プロジェクト健診での味覚感受性試験、食生活アンケートを行ない、味覚や食事内容、食生活と様々な健康指標との関連性の解析を進めました。食生活と健康指標との関連については日本栄養・食糧学会大会にて「コロナ禍の調理等の食生活の変化とメンタルヘルスへの影響」を口頭発表しました。また、過去にドライアイ検査への活用を検討していたタマネギ催涙因子発生技術を活用した涙液回収キットについては、日本香辛料研究会学術講演会にて「トレーニング時の涙液中乳酸変動」を口頭発表しました。涙液研究については、これまで採取できる涙液量が少ないことがボトルネックとなって進んでいなかったと考えており、今後はこのキットをテスト販売してのニーズの検証や用途探索を計画しています。また、食物アレルギーに対する取り組みとして、表示義務化が検討されているカシューナッツの検査法開発や、必要最小限のアレルゲン除去に基づく診療現場での食事指導に必要となる情報の提供、離乳期の食べ進めのための乳児用食品を製造・販売する株式会社ビー・ケースへの出資などを行いました。食の安全に対する取り組みでは、「加工食品中の昆虫種の同定技術」の研究成果について、日本缶詰びん詰レトルト食品協会の逸見賞を受賞しました。当社が作出した独自素材であるスマイルボール(涙の出ないタマネギ)に関しては、「涙のでないタマネギ『スマイルボール』とその関連技術の開発」という成果に対して、公益社団法人 日本農芸化学会より農芸化学技術賞を授与頂きました。作出に至るまでに天然物有機化学、酵素化学、分子生物学、育種学といった多岐にわたる分野を網羅した研究を行ったことが評価されました。今後も、より高品質なものを安定的にお客様へお届けするために、継続的な品種改良と並行して生産地に密着した形でより本品種に適した栽培方法の研究を進めております。また日本固有のスパイスである山椒におきまして、当社グループ(ハウス食品グループ本社㈱、㈱ヴォークス・トレーディング)、株式会社杉本商店、南九州大学、山椒生産者と共同で、宮崎県高千穂郷・熊本県奥阿蘇にて2022年より山椒栽培の実証研究を行ってまいりました。更に2025年4月から山椒の生産者拡大を目指した「産地形成プロジェクト」を本格始動しております。

健康関連の分野では、健康維持に必要なビタミンや、さまざまな生理機能があるといわれるスパイスに加え、近年その健康維持への効果が期待されている乳酸菌につきまして、これらの効果を検証するための試験、ならびに、新しい作用を見出すための基礎研究を継続して精力的に取り組んでおります。当連結会計年度では、「乳酸菌による腸管バリア機能改善作用」に関する原著論文が学術誌に掲載されました。また、「ウコンエキスの成分による神経炎症抑制作用とその作用メカニズム」に関する研究成果を国内の学術研究会において発表いたしました。

 

(2)研究体制・しくみ

当社グループの3つの研究所と開発部は、基礎研究・機能性研究、製品開発、技術開発、容器包装開発、お客様生活研究、グループ技術連携、研究企画、運営の各部門で構成しており、それぞれの部門において専門的な研究開発活動に取り組む一方、リノベーションを行った千葉研究センターを中心に、部門間の垣根を越え、お互いが有機的に連携して相乗効果を高める取組み(One Day a Weekなど)を継続して進めております。また、海外事業における製品開発サポート体制も継続的に強化しております。

さらに、これらの研究活動から生まれた知的財産については、国内、国外において戦略的に権利化を行い、ハウス食品グループの強みとし共創活動を推進しております。

組織をフラットな小グループ制とし、柔軟性ある運用により市場の変化と商品の多様化にフレキシブルに対応するとともに、保有技術を目に見えるサービスにいかに具現化していくかというこだわりを持って運営にあたっております。

 

(3)研究開発費

 当連結会計年度における研究開発費の総額は4,776百万円であります。

 なお、当社グループの研究開発費用は、報告セグメント別に区分することが困難であるため総額で記載しております。

 

2.外食事業、その他食品関連事業

 特に記載すべき事項はありません。