当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、人が生きていく上で欠かすことのできない食の分野を受け持つ企業グループです。創業以来受け継いできた社是・社訓を大切にしながら、「おいしさ・やさしさ・ユニークさ」で世界の人々の食と健康に貢献することをめざします。
めざす姿の実現に向けて2030年にどうありたいかをまとめた「2030ビジョン」、どのように成長や発展をめざすのかをまとめた「中期経営計画」に基づき、幅広い事業活動を展開していきます。当社グループならではの商品とサービスをお届けするとともに、社会課題の解決にも積極的に取り組みます。
(2) 中長期的な経営戦略、経営環境および対処すべき課題等
[中期経営計画]
当社グループは、「おいしさ・やさしさ・ユニークさ」をもって、世界の食と健康に貢献することをめざし、長期ビジョン「キユーピーグループ 2030ビジョン」を掲げています。
2025-2028年度 中期経営計画では、「~Change&Challenge~ 成熟市場での経営効率化と成長領域への投資加速」をテーマに取り組みます。「国内事業の構造改革」と「グローバル展開の加速」とともに、「食と健康への貢献」「環境への配慮」「人的資本の価値拡大」を推進することで、社会価値と経済価値を創出し、世界のお客様に貢献していきます。
[2025-2028年度 中期経営計画の指標]
2025-2028年度 中期経営計画では、経済価値として「ROE」「国内事業利益率」「海外売上CAGR」を指標とし、資本効率を重視しながら国内・海外ともに稼ぐ力を高めていきます。社会価値については「サラダ喫食数」「プラスチック削減」「食品ロス削減」「従業員エンゲージメント」を経営数値目標として取り組んでいきます。

<サステナビリティ目標>
[2025-2028年度 中期経営計画 キャッシュアロケーション]
キャッシュアロケーションについては、4年間の累積営業キャッシュ・フローを約1,700億円とし、加えて資産売却や資金調達も行い、これを原資として積極的な投資を行います。設備投資は約1,000億円を計画しています。また、株主還元については、配当金54円を下限とし、段階的に引き上げ、4年間累計総還元性向50%以上を基準とします。さらなる成長投資とともに資本効率向上に向けた機動的な自己株式取得など株主還元を強化していきます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)サステナビリティ全般
当社グループは、「おいしさ・やさしさ・ユニークさ」をもって世界の食と健康に貢献することで、社会に貢献し続ける企業でありたいと考えています。サステナビリティ活動を重要な活動と位置づけ、グループ理念と規範の実践を通じて、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、グループの持続的な成長の基盤として、「キユーピーグループ サステナビリティ基本方針」を定め活動を推進します。
サステナビリティ基本方針
1) ガバナンス
サステナビリティ関連の重点課題については、経営会議(代表取締役社長執行役員の諮問機関)から権限を委譲されたサステナビリティ委員会が目標達成に向けた方針・計画の策定を行うとともに、重要事項の決定、重点課題の取り組みを推進しています。サステナビリティ委員会で検討した内容は取締役会でも適宜審議または報告がなされるなど、取締役会による適切な監督体制を整えています。2024年度は取締役会において脱炭素の取り組み状況を報告するとともに、今後の取り組みについて意見交換を実施しました。また、サステナビリティ委員会を4回開催し、気候変動対応を含めたサステナビリティ関連の方針・計画の策定、重要事項の決定、重点課題の取り組みの推進を議論しました。
サステナビリティ推進体制
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会議体・他体制 |
役割・担当 |
2024年度 開催数 |
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取締役会 |
グループの全体方針および最重要事項の選定および気候変動を含めたサステナビリティ関連(全般)の監督 |
1回/ 全12回 |
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サステナビリティ委員会 |
気候変動対応を含めたサステナビリティ関連の方針・計画の策定、重要事項の決定、重点課題の取り組みの推進 |
全4回 |
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サステナビリティ委員会委員長 |
取締役 常務執行役員コーポレート担当 |
- |
2) 戦略
当社グループでは「キユーピーグループ 2030ビジョン」の実現やSDGsへの貢献など、2030年からバックキャスト思考で検討し、以下のサステナビリティに向けての重要課題を特定しました。
・食と健康への貢献
・資源の有効活用・循環
・気候変動への対応
・生物多様性の保全
・持続可能な調達
・人権の尊重
サステナビリティに向けての重点課題は、持続可能な社会の実現への貢献とグループの持続的な成長をめざす上で、事業と社会の双方にとって重要と考えています。社会・地球環境変化に応じて、定期的に重点課題の見直しを行います。
また、「キユーピーグループ サステナビリティ基本方針」に基づく重点課題を指標化したサステナビリティ目標を設定し、取り組みを進めています。
① 食と健康への貢献
昨今の社会変化を踏まえ、世界中で健康に関する意識が高まっております。「健康寿命延伸への貢献」および「子どもの心と体の健康支援」に取り組むことで、当該意識の変化に対応することができ、機会創出につながると考えております。
生涯を通じて健康な食生活を送るためには「栄養」「運動」「社会参加」の3つをバランスよく取り入れることが大切です。当社グループは特に「栄養」に関して、サラダとタマゴで健康課題解決のためのおいしくバランスの良い食生活をサポートしています。
また、講演会やマヨネーズ教室、オープンキッチン、SDGs教室などのさまざまな食育活動を行っています。さらには、子どもたちが食生活に関して主体的に学び・考え・判断する力を育むためのサイト「食生活アカデミー」を立ち上げています。
② 資源の有効活用・循環
限りある食資源や自然エネルギーを無駄なく有効活用することは、食糧危機などのリスクをはらんだ昨今において食品メーカーの重要な責任であると考えており、具体的に「食品ロスの削減・有効活用」「プラスチックの削減・再利用」「水資源の持続的利用」に取り組んでいます。
食品ロスの削減・有効活用では、卵においては、卵黄、卵白は商品や食品原料として使用しているのはもちろんのこと、卵殻においても土壌改良材やカルシウム強化商品として活用、卵殻膜も化粧品として活用することで、卵の100%有効活用を実現しています。
また、野菜の未利用部(キャベツ・レタスなど葉物野菜の残さ)を、乳牛用飼料として再生利用することに成功しました。東京農工大学と当社の共同研究で、この飼料を与えた乳牛は乳量が増加することが報告されています。さらに、パッケージサラダを製造・販売する子会社である株式会社サラダクラブでもパッケージサラダを製造する直営7工場で発生する野菜の外葉や芯などの未利用部を、堆肥や飼料として契約農家などで活用いただくことですべて再資源化しています。
プラスチックの削減・再利用の取り組みの1つである製品で使用するプラスチックについても、石油由来のプラスチックの削減に向け、プラスチックの軽量化や再生プラスチックを使用する取り組みを進めています。また、油付きPETボトルおよびマヨネーズボトルの資源循環に向けて、他社と協働して取り組みを進めております。当期は技術の確立と技術検証を進めるため、大手小売店と連携しながらボトルの回収実証実験を実施しました。
また、水資源の持続的利用においては、事業継続のために水は限りある貴重な資源と認識し、効率的な利用と取水・排水における環境負荷の低減に取り組んでいます。
③ 気候変動への対応
当社は気候変動におけるリスクと機会についてTCFDの枠組みに従い下記「(2)TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に向けた取り組み」のとおり開示しております。気候変動の原因となるCO2排出量削減に向けて、原料調達から消費までのバリューチェーン全体で、省エネルギーや再生エネルギーへの転換を積極的に行うことが重要と考えています。
当社グループでは国内外で再生可能エネルギーの導入を順次進めています。また、生産事業所の各工程にエネルギー測定装置を設置するなど「エネルギー使用の見える化」を進め、設備運用改善・メンテナンスの徹底、省エネ型機器を導入し省エネルギー化を推進しています。さらに輸配送距離の短縮化と積載効率向上による輸配送効率化、低燃費で安全にもつながるエコドライブなどを実施しています。加えて、長距離トラック輸送の鉄道や船舶への切替え(モーダルシフト)を推進して、CO2排出削減を実現しています。
④ 生物多様性の保全
当社グループの事業活動は、豊かな自然環境と密接な関わりを持っています。「良い商品は良い原料からしか生まれない」という考えを大切に、「生物多様性方針」のもと、原料を生み出す自然の恵みに感謝し、豊かな自然と生物多様性の保全に努めていきます。
当社グループは、2024年4月に「TNFD(自然関連財務情報タスクフォース)」に賛同し、TNFDフォーラムへ参画しました。さらに、課題に対応すると同時に、新たな機会も見いだし、企業戦略にも活かしていくためのプロジェクトを発足しました。TNFDフレームワークのLEAPアプローチを活用して、当社グループの主要な原料と直接操業(生産拠点)を対象に分析を行っていきます。
TNFD報告書
URL https://www.kewpie.com/sustainability/pdf/sustainability_20250116_tnfd.pdf
⑤ 持続可能な調達
自社だけでなくサプライチェーン全体で環境や人権に与える影響に配慮する必要があると認識しております。特に調達における影響を最小限にする取り組みは重要です。当社グループでは「キユーピーグループ 持続可能な調達のための基本方針」を2018年に策定し、環境や人権に配慮した調達を推進しています。さらにサプライヤーガイドラインを定め、本ガイドラインをもって相互理解のもと、サプライチェーンにおけるさまざまな課題解決を行い、安全性はもとより、環境や人権への影響に配慮した安定調達をお取引先と協働して進めます。また、当社の主要取引先に対してアンケートを実施し、サプライヤーガイドラインに準じた行動がなされているか確認を行いました。そしてアンケートの内容に応じて個別にヒアリングして詳細に把握するなど、サプライヤーとの協力体制を強化しています。
⑥ 人権の尊重
事業活動のすべての過程で、直接または間接的に人権に影響を及ぼす可能性があることを認識し、ビジネスに関わるすべての人の人権を尊重することをめざしています。当社はビジネスに関わる全ての人の人権を尊重するために、「キユーピーグループ人権方針」を策定しています。 また、人権に関する国際基準やヒアリングなどを通じて得られた情報に基づき、外部専門家により特に重要と判断されたリスクも特定しています。 抽出された人権リスクについては、サステナビリティ委員会にて取り上げ、関連する委員会や部門と連携し、対応策の計画や実施を行っています。 また内部統制システムの中に違反行為の発見と是正のための通報・相談窓口「ヘルプライン」を設置しています。 違反行為があれば担当部門との協議の上、再発防止策を実施しています。
当社グループの特に注意すべき重要人権リスクと防止・軽減に向けた対応
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リスク |
対象 |
当社グループにおける 対応・対象のURL |
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|
自社 従業員 |
一次 サプライヤー |
原材料 生産者 |
顧客・消費者 |
||
|
労働安全衛生 |
○ |
○ |
|
|
https://www.kewpie.com/sustainability/human-rights/healthcare-management/#sec02 |
|
強制労働 |
○ |
○ |
○ |
|
https://www.kewpie.com/sustainability/human-rights/initiatives/ |
|
児童労働 |
○ |
○ |
○ |
|
上記と同じ |
|
ハラスメント |
○ |
○ |
|
|
上記と同じ |
|
長時間労働・ 過重労働 |
○ |
|
|
|
日々の時間管理の徹底 注意喚起と啓発 |
|
製品の欠陥による健康・安全の侵害 |
|
|
|
○ |
https://www.kewpie.com/sustain ability/quality/manufacture/ |
3) リスク管理
社内外の経営環境の変化を広く見据え今後リスクおよび機会となりうることを洗い出し、それらの評価を行うことで重要なリスクおよび機会を見極めています。「各リスクの経営への影響の大きさ」と「そのリスクの管理の程度(マネジメントコントロール度)」の2軸で評価し、対策すべきリスクを選定し優先順位づけしています。経営への影響度が大きいにもかかわらずマネジメントコントロールが不十分なリスクは『全社主要リスク』として全社横断的なプロジェクトにより最優先でリスク低減に努めています。活動を通じて対策が効果を上げマネジメントコントロール度が高まったとしても依然として経営への影響度が大きい場合はその後の状況を監査などにより確認しています。経営への影響度が小さく経営課題とならない場合においても感度高く社外情報の収集、モニタリングに努めています。このように社内社外両面からモニタリングを行い状況変化に応じた重要性を適時評価し機敏にリスクに向き合うように努めています。
当社グループでは、経営の継続的、安定的発展に影響しかねない事象をリスクと認識し、リスクマネジメントの実践を通じ、内部統制システムの充実に取り組んでいます。個々のリスクを各担当部門が継続的に監視するとともに、全社的なリスクはリスクマネジメント委員会で情報を共有し、そのリスクを評価し、優先順位や対応策の効果などを包括的に管理し、下記の8つを主要なリスクに位置づけて抑制・回避に努めています。
8つの主要リスク
①市場の動向 ②製造物責任 ③システム障害 ④海外展開 ⑤原材料の調達
⑥自然災害などの不測の事態 ⑦人材、労務関連 ⑧地球環境問題、気候変動
これら全社的なリスク評価やリスク対応の方針・状況については、リスクマネジメント担当執行役員が定期的に取締役会へ報告しています。
4) 指標および目標
当社グループではサステナビリティに向けた重点課題に紐づけ、当社グループとして取り組むテーマごとにサステナビリティ目標を設定しています。従業員一人ひとりが、サステナビリティの意識と視点を持ち、当社グループの理念と規範の実践により、目標達成に向けて取り組んでいます。
◆サステナビリティ目標
目標の詳細や現在の進捗状況については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等<サステナビリティ目標>」および当社ウェブサイトをご参照ください。
https://www.kewpie.com/sustainability/management/materiality/#sec05
(2)TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に向けた取り組み
当社グループは「TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)」へ賛同し、これに賛同する企業や金融機関等が連携する場としての「TCFDコンソーシアム」に参画しました。
そして当社グループ内で「TCFDプロジェクト」を発足し、2021年からTCFDに取り組んでいます。
① ガバナンス
気候変動に対するガバナンスについては 1)ガバナンスに準じます。追記事項として当社は気候変動関連リスクと機会の評価および管理を強化するため、インターナルカーボンプライシング(ICP)を導入しています。ICPの設定および見直しはサステナビリティ委員会で検討、承認されます。その内容は、取締役会に適宜報告され、必要に応じて審議されるなど、取締役会による適切な監督を行っています。
② 戦略
当社グループでは気候変動に伴うさまざまなリスクと機会について、その重要性に応じて短期・中期・長期の観点から特定を行い、また外部環境の変化も踏まえ、定期的に分析・評価の見直しを行っています。リスクと機会の特定においてはIPCC※1や IEA※2などが発表しているシナリオを用いて、2つのシナリオを描いております。1つ目のシナリオは2100年時点において産業革命以前より1.5~2℃気温上昇し、環境政策が進展するシナリオ(以下「環境政策進展シナリオ」と表記)、2つ目のシナリオは2.7~4℃気温上昇し、気候変動に対し必要な施策や追加の対策が講じられない場合の成り行きシナリオ(以下「成り行きシナリオ」と表記)とし、2030年の事業におけるインパクトを算出しました。特定されたリスクと機会について対応策を検討し、単年度計画および中期経営計画に組み込んで、推進しています。
※1 IPCC
IPCCとは、気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)のことで、世界気象機関(WMO)および国連環境計画(UNEP)により 1988年に設立された政府間組織です。各国政府の気候変動に関する政策に必要な科学的情報を提供しています。
※2 IEA
IEAとは、国際エネルギー機関(International Energy Agency)のことで、OECD(経済協力開発機構)の枠内における自律的な機関として第1次石油危機後の1974年に設立された組織です。エネルギー政策に必要な中長期の需給見通しなどの情報を提供しています。
・シナリオ分析の適用
中期経営計画において、段階的に分析範囲を拡張していきます。 分析計画は以下のとおりです。
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年度 |
対象範囲 |
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2021年度 |
マヨネーズ・ごまドレッシング |
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2022年度 |
マヨネーズ・ドレッシング・タマゴ(液卵・加工品) |
|
2023年度 |
マヨネーズ・ドレッシング・タマゴ・パッケージサラダ(キャベツ、レタス) |
|
2024年度 |
マヨネーズ・ドレッシング・タマゴ・パッケージサラダ・惣菜(じゃがいも、にんじん、たまねぎ) |
2024年度は惣菜(じゃがいも、にんじん、たまねぎ)に対する気候変動リスクと機会の分析を手掛けました。特に主原料の食油・卵・食酢においての穀物を主体とした農作物に加えキャベツ、レタス、じゃがいも、にんじん、たまねぎなどの農作物も気候変動が影響することを認識しました。これに対し、特定の農作物への依存度合いを中長期的に引き下げていく戦略を検討しています。
・主な気候変動リスクと機会
<環境政策進展シナリオ>
厳しい環境規制・高い炭素税が導入され、世界ではカーボンニュートラルが達成されます。農林水産部門ではCO₂ゼロエミッション化を実現する一方で、サプライヤーの環境対応コストが高まります。健康意識が高い消費者が増加し、サラダなど野菜の摂取量が増加します。また、環境意識の高まりから持続可能性が高い商品の需要も増加します。環境政策進展シナリオで特定した当社グループのリスクと機会は以下のとおりです。
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リスク項目 |
リスク |
機会 |
時期※3 |
インパクト |
||
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大分類 |
中分類 |
小分類 |
||||
|
移行リスク |
政策・規制 |
炭素税の導入 |
○ |
|
中期 |
中 |
|
プラスチック・包装材への規制 |
○ |
|
中期 |
小 |
||
|
未利用資源の価値化 |
|
○ |
中期 |
中 |
||
|
市場 |
持続可能性が高い商品の需要増加 |
|
○ |
中期 |
大 |
|
|
環境に配慮した原資材の調達コスト増加 |
○ |
|
中期 |
小 |
||
|
※3 時期の定義:短期:2024年まで 中期:2030年まで 長期:2050年までとしています。 |
||||||
<成り行きシナリオ>
低炭素化は進展するものの、2050年カーボンニュートラルは達成せず、気温が上昇する影響により、自然災害は激甚化・頻発化し、サプライヤー・自社の生産拠点で浸水被害発生頻度が上昇します。熱ストレスによる農作物の収量低下により、原材料調達コストが増加します。一方で気温上昇に伴い免疫事業などの需要が増加します。成り行きシナリオで特定した当社グループのリスクと機会は以下のとおりです。
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リスク項目 |
リスク |
機会 |
時期※3 |
インパクト |
||
|
大分類 |
中分類 |
小分類 |
||||
|
物理リスク |
慢性 |
熱ストレスによる収量減少に伴う農作物の調達コストの増加 |
○ |
|
中期 |
中 |
|
急性 |
洪水による生産設備の被災・停電、操業の停滞・停止 |
○ |
|
短~ 長期 |
小~大 |
|
|
商品・ サービス |
気温の上昇に伴う、新製品・新規事業の需要増加 |
|
○ |
中期 |
大 |
|
|
※3 時期の定義:短期:2024年まで 中期:2030年まで 長期:2050年までとしています。 |
||||||
・気候変動リスクと機会に対する対応策(●リスクに備えた対応 ○機会を活かした取り組み)
シナリオ分析により特定されたリスクと機会に対し、次のテーマを推進し、持続的成長に活かしていきます。
○環境政策の進展した市場への対応
・環境配慮型商品の需要増加への対応
・農作物(食油)などを使いこなす技術革新
・原料相場に強い体質への転換
・容器包装プラスチックの軽量化
・使用したプラスチックの再利用
・再生プラスチックやバイオマスプラスチックの積極導入
・商品の使い方提案による環境負荷低減
○食品ロスの削減と有効活用
・野菜未利用部の有効活用(飼料・肥料化)
○温暖化による感染症への関心拡大
・酢酸菌ビジネスの展開
●CO2排出量の削減
・インターナルカーボンプライシング(ICP)の活用による低炭素投資の促進
・CO2排出量の削減を指標とした設備投資(電化の推進、インターナルカーボンプライシング(ICP)の
導入など)
・製造工程中の加熱や殺菌工程の見直し
・再生可能エネルギーの活用・導入・サプライヤーとの協働
●洪水への備え
・洪水リスク評価に応じ重点的な対策
・主力製品のBCP(被災時に備えた事業継続計画)
インターナルカーボンプライシング(ICP)の活用
当社は、気候変動リスクを財務的視点で評価し、低炭素投資を促進するため、ICPを導入しています。ICPは主に以下の目的で活用されています。
・設備投資の意思決定における炭素排出コストの考慮
・低炭素技術への投資促進
・社内での気候変動リスクに対する意識向上
2022年度より社内炭素価格の運用が開始され、その内部炭素価格をベースに2028年までの環境投資計画の立案を社内で進めています。これまでの運用では投資対効果が薄いとの理由から社内承認が難しい低炭素投資がありましたが、社内炭素価格の導入により、脱炭素を含めたトータルの投資対効果を示すことができ、より脱炭素への取り組みが加速することが期待されます。直近では、太陽光パネル導入などにおいて、社内炭素価格を用いた投資対効果を基に決裁が実行されています。
上記の対応策に関連して2024年度に実施した内容は主に下記のとおりです。
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対応策 |
○環境政策の進展した市場への対応 |
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取り組み |
2月上旬から、ドレッシングやスープの素など、環境に配慮した容器包装の商品に対し、独自のecoラベルの付与を開始 |
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概要 |
容器包装に対する環境配慮基準を策定し、基準を満たした商品には、パッケージに当社グループ独自のecoラベルを付与していきます。
ecoラベルを付与した対象商品(一部)
当社グループecoラベル 表示例 |
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対応策 |
〇使用したプラスチックの再利用 |
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取り組み |
・油付きPETボトル(ドレッシングボトルなど)の資源循環 ・マヨネーズボトルの資源循環 |
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概要 |
油が付着したPETボトルは、リサイクルの洗浄工程で油が残り、再生PETの品質に影響を与えることが懸念されており、リサイクルの仕組みが社会的に実装されていません。また、国内のマヨネーズボトルには、主にポリエチレン(PE)というプラスチック素材が使用されており、PEは食品包装に多く使用されていますが、素材の種類や他素材と複合しているものが多いことから、飲料PETボトルに代表されるような水平リサイクルの仕組みが社会的に実装されていません。 これらの課題に対して企業の枠を超えて協働することで、ボトルを資源循環できる社会をめざします。当期は技術の確立と技術検証を進めるための効率的なサンプル収集のため、小売店の店舗でボトルの回収実証実験を実施しました。
|
③ リスク管理
気候変動に対するリスク管理については
④ 指標と目標
気候変動によるリスクと機会を測定・管理するために用いている指標については
(3) 人的資本
①人材育成方針
当社グループは、国内・海外において幅広い領域に事業を展開しており、これからの市場環境の変化や成長領域の拡大に向けて、より一層、様々なスキルや経験を持った多様な人材の活躍が必要になります。持続的成長を実現する人材を育成していくために、中期経営計画のテーマの一つとして、「多様な人材が活躍できる仕組みづくり」を掲げています。ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの理解につながる機会づくり、多様な従業員の活躍につながる場づくり、成長を実感できるキャリアや学びへの仕組みづくりなどを通して、世界で働く従業員一人ひとりの個性や成長する意欲、個々の能力を最大限に発揮できる企業文化づくりに取り組んでいます。
これまで大切に育んできた理念に共感した一人ひとりの従業員と創意工夫の企業文化は、グループの持続的成長を支える強みとなっています。2025年度より始まる次期中期経営計画からは、人的資本のさらなる価値拡大に向けて、積極的に人的資本投資を進めます。
新しい活躍の機会創出、多様な個の力の強化、人事制度の拡充、の3つの視点で人的資本の強化を行い、従業員エンゲージメント向上と最高のパフォーマンス発揮をめざします。従業員の働きがいと仕事を通じた自己実現への挑戦を持続的成長の原動力として、生産性向上と新たな価値創出を進めます。
② 環境整備・取り組み
◇ダイバーシティ&インクルージョンへの理解につながる機会づくり
・活発な「対話」と「機会の提供」
経営会議など、重要会議の参加者の20%を多様な人材(年代・性別・スキル・キャリア)から構成する「KEEP20」の取組みをグループ内で展開しています。異なる視点から意見を引き出しあうことで、議論の活性化と新たなイノベーションを生み出すことを狙いとしており、従来の参加メンバーと新たな参加メンバーの相互において、気付きや学びが得られる機会となっています。
・ダイバーシティとエンゲージメントの実感調査
2017年より、グループ社員を対象として「ダイバーシティアンケート」を実施し、「多様性」、「公正性」、「受容」の各項目に対する、社員の実感を調査しています。数値は着実に向上しており、2024年度においては95%以上が「ダイバーシティ推進に共感している」という結果が得られました。また、エンゲージメントサーベイを2025年度からの中期経営計画における人的資本への投資効果を測る指標と位置づけ、スコアの向上をめざします。調査結果は、「仕事をする上での環境」、「仕事における貢献感・受容感」、「職場で働く意義、モチベ―ション」、「職場における成長実感」の4つの領域に分類して分析を行います。分析結果は上記ダイバーシティアンケートの結果と併せて、グループ内でオープンに共有し、グループの多様な人材が活躍できる環境づくりへの活用を進めます。
エンゲージメントスコアの目標および実績数値※1
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2024年度実績 |
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(グループ国内※2) |
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※1 エンゲージメントスコアは、仕事環境・貢献感・働く意義・成長実感の観点で従業員アンケート
を実施し、第三者機関による分析から、100点満点で点数化しています。
※2 次期中期経営計画より、海外を含むグループ全体に対象を拡大して実施していきます。
◇多様な従業員の活躍につながる場づくり
・挑戦の機会の提供
海外やDXなど、グループとして優先的に進めるべき戦略と位置付けた領域への人材配置にあたり、グループ全社員に対する公募を実施し、高い意欲や、キャリア実現への強い想いを持った従業員を抜擢する取り組みを進めています。2024年は、海外事業への挑戦を希望する人材を対象に、選抜型の海外人材育成プログラムを実施しました。海外駐在に向けた研修や学びを得られる機会づくりを進めています。
また、2012年より実施している、新規事業プラン社内公募「Kewpie Startup Program」も継続して進めており、2024年度は、社外から講師を招き、アイデア発想や、事業創出マインド醸成のワークショップを開催しました。2025年度からは、これから当社グループが更に力を入れて取り組む「サラダ」「ウェルネス」「サステナビリティ」の3つのドメインを踏まえながら、社会価値と経済価値を生み出すビジネスアイデアを募集し、従業員一人ひとりのアイデアの実現と新たな事業の創出につなげます。
・女性従業員の活躍支援
グループの約半数を占める女性従業員が十分に活躍できるよう、女性総合職の育成や、転居を伴う異動のない総合職制度の導入、地域職から総合職への転換、女性管理職勉強会で新任管理職の育成支援などを進めています。人事制度や労務制度に加えて、マネジメントや風土もあわせて変えていくことで、意欲ある女性や共働きの従業員が安心して働き続けられる会社をめざしています。
女性管理職比率 目標および実績数値
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2022年度 実績 |
2023年度 実績 |
2024年度 実績 |
2025年度 目標 |
目標 |
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(キユーピー単体※) |
12.5% |
14.5% |
|
18% |
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(参考:グループ海外含む) |
17.5% |
19.5% |
20.3% |
23% |
30% |
※次期中期経営計画より、海外を含むグループ全体に対象を拡大して女性管理職比率の目標値を定めます。
◇成長を実感できるキャリアや学びへの仕組みづくり
・従業員の自己実現の支援
当社では、従業員のキャリア自律を支援する仕組みとして、キャリア自己申告制度を導入しています。グループの事業領域の広さを活かして、従業員が仕事を通じて自己実現できる環境づくりを進めています。具体的には、各部署の役割や仕事を知る機会の創出、希望の職場への異動実現支援などにより、定量的にキャリア自己申告の実現率の向上を推進しています。
次期中期経営計画では、多様な人材がよりパフォーマンスを発揮できる新人事制度の導入と、専門性を強化する人材育成体系の整備を予定しております。異動による成長だけではなく、一人ひとりが自ら高めたい専門性を描き、その実現を後押しする取り組みを進めます。
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2021年度 実績 |
2022年度 実績 |
2023年度 実績 |
2024年度 実績 |
目標 |
2030年度 目標 |
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自己申告実現率 (キユーピー単体※2) |
8% |
10% |
14% |
|
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30% |
※1 職務の変更希望を申告した従業員のうち、希望の職務に従事できている比率です。
※2 次期中期経営計画より、キャリア自己申告制度の導入をグループ会社にも段階的に拡大し、取り組みを進めます。
・キャリア支援の拡充(セルフ・キャリアドック)
2024年度より、「セルフ・キャリアドック」を開始しました。「キャリア研修」で自分のキャリアの棚卸をした上で、社外専門家との1対1の「キャリアコンサルティング面談」でアドバイスを受け、自ら主体的にキャリアプランを考えることをねらいにしています。当期は約500名の面談を実施しました。今後、段階的に対象を拡大し、グループ全体での継続的な取り組みにしていきます。
この有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるものには、以下の表内のようなものがあります。
当社グループは、これらのリスク発生(顕在化)の可能性を認識したうえで、発生の抑制・回避に努めています。そのためにリスクマネジメント基本規程において当社のリスク管理を体系的に定め、個々のリスクを各担当部門が継続的に監視しています。直近の業績への影響が大きなリスクについては経営会議、全社的なリスクについてはリスクマネジメント委員会、気候変動を含む社会・環境に関するリスクについてはサステナビリティ委員会でそれぞれ情報を共有し、リスクの評価、優先順位および対応策などを管理しています。また、リスクマネジメント担当執行役員は、全社的リスクの評価や対応の方針・状況などを定期的に取締役会へ報告しています。
リスクの評価と選定については、社内外の経営環境の変化を広く見据え今後リスクとなりうることを洗い出し、それらの評価を行うことで重要なリスクを見極めています。「各リスクの経営への影響の大きさ」と「そのリスクの管理の程度(マネジメントコントロール度)」の2軸で評価し、対策すべきリスクを選定し優先順位づけをしています。経営への影響度が大きいにも関わらずマネジメントコントロールが不十分なリスクは『全社主要リスク』として全社横断的なプロジェクトにより、最優先でリスク低減に努めています。活動を通じて対策が効果を上げ、マネジメントコントロール度が高まったとしても、依然として経営への影響度が大きい場合は、その後の状況を監査などにより確認しています。経営への影響度が小さく経営課題とならない場合においても、感度高く社外情報の収集、モニタリングに努めています。このように社内社外両面からモニタリングを行い状況変化に応じた重要性を適時評価し機敏にリスクに向き合うように努めています。
しかしながら、当社グループの取り組みの範囲を超えた事象が発生した場合には、当社グループの信用、業績および財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、以下の表内の内容は、当社グループに係るすべてのリスクを網羅したものではありません。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
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事象 |
リスク |
リスクへの対応策 |
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市場の動向 |
長期にわたり漸次的にその影響が大きくなる可能性がある主なリスクは次のとおりです。
・国内人口減少による長期的な市場縮小 ・野菜価格変動、消費者意識の変化によるサラダ市場の縮小 |
国内では「市販用」と「業務用」の2体制でフレキシブルな市場対応を図り持続的成長につなげています。当社グループの内食・中食・外食への展開力を活かしサラダとタマゴの可能性を広げ、健康寿命延伸に貢献することで事業機会の創出をめざします。 お客様の食生活における悩みの解決や新たな食シーンの創造につながるような商品・サービスをスピーディーに提案し、市場と需要の開拓を推進しています。具体的には、営業の組織形態を大きく変更してマーケティング力と提案力を一層強化しています。また、新商品の製造方法を小規模に試す試験場「仙川SHIPYARD」を立ち上げました。さらに、特に成長が見込まれるドラッグストアなど未開拓販路の開拓に加え、デジタルマーケティングを強化しD2C(Direct to Consumer/消費者直販サイト)市場での取り組みを進めています。 海外では、中国、東南アジアと北米を重点エリアとし、当社グループのこれまでの顧客層である富裕層から中間層へ開拓を進めます。またデジタルコミュニケーションとマーケティング機能を強化し、「キユーピーブランド」の認知率と商品使用率の向上に取り組んでいきます。人材や商品開発、マーケティング、ガバナンスなどに経営資源を集中的に投下し、持続的な成長を図っています。 |
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原材料(主原料やエネルギー・一般原資材)の調達 |
食油調達においては、大豆や菜種の相場、為替相場および需給などの変動により短期、長期的な価格変動リスクがあります。
鶏卵調達においては、突発的な鳥インフルエンザの発生、産卵鶏の羽数変動、長期的な鶏卵の消費動向などによる価格変動および調達困難リスクがあります。
その他当社グループで使用している原材料調達は、国際的な景気動向や需給バランス、為替の変動、地政学リスクなどによる価格変動リスクがあります。
また、社会的な配慮のもとでの持続可能な調達への取り組みが不十分と評価された場合、漸次的にレピュテーションが低下する可能性があります。 |
当社グループでは、原材料価格の上昇の影響を低減するため、商品の価格改定や付加価値化、生産効率化、グループ連携による調達体制の構築などの取り組みを進めています。また、主原料の相場影響を受けにくい事業構造への転換を進めています。 鶏卵調達においては、大手生産者を中心に各地の生産者との年間数量計画、一定価格契約、相場でのスポット契約の組み合わせ、また一部地域で鳥インフルエンザが発生して卵の移動が制限されたとしても他の地域の工場でカバーできる全国調達・割卵工場体制整備などを実施しています。また、状況に応じて海外からも調達できる体制を整備しています。鳥インフルエンザの猛威による原価上昇と減産による利益減少のリスクについては、発生時期を考慮した原料及び製品在庫を確保するとともに、商品の付加価値化を進め、収益性向上に努めています。 中長期的な持続可能性の観点では、採卵鶏のアニマルウェルフェアの課題に関係する業界や行政と連携しながら取り組んでいます。 社会的な配慮のもとでの持続可能な調達に向けて、当社グループの「持続可能な調達のための基本方針」を定め、原料の品質だけでなく、サプライチェーン上での環境や人権に与える影響の確認を進めています。本基本方針の実現に向けて「キユーピーグループ サプライヤーガイドライン」を定め、サプライヤーとの相互理解のもとサプライチェーンにおけるさまざまな課題解決を行い、持続可能な調達およびサプライヤーとの共存共栄をめざして取り組んでいます。 |
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事象 |
リスク |
リスクへの対応策 |
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製造物責任 |
異物混入や誤表示など、消費者に健康被害を及ぼす恐れのある製品事故は、重篤なリスクとして常に認識しています。 |
当社グループ創業以来の品質第一主義を基本として、食品安全マネジメントシステム(FSSC22000)の認証、グループを横断した品質監査の実施、FA(ファクトリー・オートメーション)を活用した製品保証やトレーサビリティ、また自社モニタリングや調達原料の品質規格書管理システムの構築など、制度・システム面から品質保証の充実を推進しています。 加えて、従業員の品質に対する意識と理解が最も重要なことから、OJTや勉強会などさまざまな機会を通じた知識・技術の習得はもちろん、品質第一主義の浸透にも努めており、永続的な企業発展の基盤となる「安全・安心で高品質な食品の提供」を担保するため、万全な体制で取り組んでいます。 |
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自然災害などの不測の事態 |
巨大台風、豪雨・長雨による洪水や大規模地震などの自然災害の影響が大きくなる可能性があります。それらにより次のようなリスクを想定しています。
・製造や物流施設・設備などの破損 ・原資材やエネルギーの調達困難 ・操業に必要な人員の不足 |
過去の災害の経験を活かし、当社グループ横断で危機発生時の事業継続計画(BCP)を整備し、対策に取り組んでいます。 東京にある本社の代替機能を関西に設置する体制の整備、非常時の通信ネットワークの整備や物資の備蓄、生産設備や物流設備の補強、不測の事態において生産可能状況を確認するシステムの整備、主要商品に関する生産や原資材調達機能および受注機能を2拠点化することなどにより危機発生時に備えており、災害の種類毎にマニュアルを整備しています。 さらにそれらを確実に運用できるようにするために大規模災害対応訓練(初動対応訓練や商品供給訓練、安否確認訓練)も行っています。 |
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システム障害 |
高度化した外部からのサイバー攻撃によりシステムが停止することで事業活動に大きな影響が出る可能性があります。 |
当社グループでは、サイバー攻撃を受けた場合の備えとして「防御システムの多層化」を実施し、迷惑メールや不正アクセスを防ぐ対策に加えて、24時間監視し不審なプログラムの挙動を判定し実行防止するEDRシステムなどによる対策を行っています。 並行して従業員の「リテラシー向上」に向けた対策として、攻撃メールへの対応模擬訓練、情報セキュリティ教育など定期的に実施し、さらに従業員の情報セキュリティ意識を高く保てるよう情報推進委員会が適宜情報を発信しています。 |
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事象 |
リスク |
リスクへの対応策 |
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人材、労務関連 |
人材、労務に関しては、主に次のようなリスクを常に想定しています。
・製造現場の労働力不足 ・ハラスメント ・従業員エンゲージメントの低下 ・専門人材の不足 |
当社グループでは、継続的な採用、教育の充実、労働環境の最適化などにより人材の確保、定着に取り組んでいます。具体的には、作業の効率化、省力化を推進し、負荷がかかる作業や複雑な作業を機械やロボットに置き換えています。加えて外国籍の方が就労し易い環境整備も進め、雇用を拡大しています。 すべての職場の従業員一人ひとりが安心して働くことができ、仕事と家庭生活の両立が実現できる雇用環境の整備を進め、テレワークの積極的な活用、労働時間の適正化や法令に基づく適正な労務管理、ハラスメント予防に関する従業員教育の徹底、内部通報制度(ヘルプライン)の設置などにより労務関連リスクの低減に取り組んでいます。 これらに加え、持続的成長を実現する人材を育成していくために、多様な人材が活躍できる仕組みづくりを実施し、併せて専門性の高い外部人材の採用や登用を推進しています。 |
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海外展開 |
海外展開においては、主に次のようなリスクを想定しています。
・脆弱な経営基盤によるトラブル ・情報管理の不備による漏洩 ・模倣品の流通による競争力の侵害およびブランドイメージ毀損 ・地政学リスク |
海外子会社においても当社グループの理念を浸透させるための現場教育、各種研修などを行っています。また、内部統制システム整備を進めており、具体的には決裁権限の明確化、契約書・規程管理や経理・財務規程、反贈収賄規程、人事評価制度など各種規程や制度の整備・運用、内部通報制度の導入、事業継続計画(BCP)および危機管理訓練などにより経営基盤の強化に取り組んでいます。 さらに会社情報や重要技術情報の取り扱い・セキュリティに関する規程の導入および盤石なICTネットワークの構築に取り組んでいます。 模倣品対策では、市場に出回る当社商標権の侵害品や紛らわしい他社品を排除するとともに、悪意ある商標出願を権利化させないように取り組んでいます。 生産拠点のある地域の政治・経済情勢や法規制の動向を確認し、エリア毎に必要な対応を検討、実施しています。また、国際情勢によって生じるカントリーリスクについては、有形・無形資産の対応、原料調達リスクの分散、知的財産の保護、従業員の退避などの観点で備えています。 |
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事象 |
リスク |
リスクへの対応策 |
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地球環境問題、気候変動 |
地球環境問題、気候変動においては、主に次のようなリスクを想定しています。
・原資材調達難、価格高騰 ・CO2排出規制強化 ・エネルギーコスト増 ・大雨、洪水による生産設備被災
これらサステナビリティへの取り組み、対応が不十分と評価された場合、漸次的にレピュテーションが低下する可能性があります。 |
当社グループでは、サステナビリティにむけての重点課題として環境面では「資源の有効活用・循環」、「気候変動への対応」および「生物多様性の保全」を特定し、グループ全体で取り組んでいます。 当社グループの事業は、自然の恵みに強く依存しているため、原材料の収量の減少や品質の低下、価格高騰など、地球環境の変化や気候変動によるさまざまな影響を受ける可能性があります。機動的な価格適正化や原料相場に強い体質へ転換するため、ポートフォリオの最適化やグループ連携による調達体制の構築を進めています。地球環境の変化や気候変動に関連する事象を経営リスクとして捉えて対応すると同時に、新たな機会を見出し企業戦略へ活かします。
詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。 |
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態および経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループの経営環境は、インバウンド消費の増加や鶏卵相場の落ち着きなどによ
り、緩やかな回復基調にありました。一方で、不安定な国際情勢による景気減速リスクに加え、原材料およびエネ
ルギー価格の高止まりや、物流コスト・人件費の上昇、為替の動向など先行き不透明な状況が続いてきました。こ
のような環境において、海外への資源投下を進め、中国・東南アジア・北米を中心に、KEWPIEブランドの
認知拡大を加速させてきました。国内では引き続きお客様の多様化するニーズに対応するとともに、収益性・生産
性の向上にも取り組みました。また、持続的な成長を実現するために、未来に向けた投資拡大を行いました。
当連結会計年度の売上高は、海外の持続的な成長に加え、国内の基幹商品を中心とした調味料・惣菜の販売回復
および価格改定による単価上昇などにより増収となりました。営業利益は、タマゴ商品の販売増加および主原料高
騰影響の緩和、海外での成長に伴う利益拡大などにより増益となりました。経常利益・親会社株主に帰属する当期
純利益は、営業利益の増加により増益となりました。
当連結会計年度の連結業績は次のとおりです。
(単位:百万円)
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前連結会計年度 (自 2022年12月1日 至 2023年11月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年12月1日 至 2024年11月30日) |
増減(金額) |
増減(比率) |
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売上高 |
455,086 |
483,985 |
28,899 |
6.4% |
|
営業利益 |
19,694 |
34,329 |
14,635 |
74.3% |
|
経常利益 |
20,490 |
36,874 |
16,384 |
80.0% |
|
親会社株主に帰属する 当期純利益 |
13,174 |
21,419 |
8,245 |
62.6% |
◇ セグメント別の状況
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[売上高の内訳] |
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|
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度 (自 2022年12月1日 至 2023年11月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年12月1日 至 2024年11月30日) |
増減(金額) |
増減(比率) |
|
市販用 |
177,395 |
186,747 |
9,352 |
5.3% |
|
業務用 |
165,336 |
170,086 |
4,750 |
2.9% |
|
海外 |
78,277 |
92,199 |
13,922 |
17.8% |
|
フルーツ ソリューション |
16,953 |
17,001 |
48 |
0.3% |
|
ファインケミカル |
11,170 |
11,382 |
212 |
1.9% |
|
共通 |
5,953 |
6,568 |
615 |
10.3% |
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合 計 |
455,086 |
483,985 |
28,899 |
6.4% |
|
[営業利益の内訳] |
|
|
|
(単位:百万円) |
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前連結会計年度 (自 2022年12月1日 至 2023年11月30日) |
当連結会計年度 (自 2023年12月1日 至 2024年11月30日) |
増減(金額) |
増減(比率) |
|
市販用 |
9,939 |
14,277 |
4,338 |
43.6% |
|
業務用 |
4,135 |
11,951 |
7,816 |
189.0% |
|
海外 |
10,308 |
14,366 |
4,058 |
39.4% |
|
フルーツ ソリューション |
320 |
197 |
△123 |
△38.4% |
|
ファインケミカル |
1,040 |
572 |
△468 |
△45.0% |
|
共通 |
1,209 |
1,352 |
143 |
11.8% |
|
全社費用 |
△7,259 |
△8,388 |
△1,129 |
― |
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合 計 |
19,694 |
34,329 |
14,635 |
74.3% |
<市販用>
・調味料の価格改定による単価上昇や惣菜の販売回復などにより増収
・主原料高騰影響の緩和により増益
<業務用>
・調味料およびタマゴ商品の付加価値化による販売増加により増収
・主原料高騰影響の緩和や販売増加により増益
<海外>
・中国・東南アジア・北米が堅調に推移し増収
・中国の新型コロナウイルス感染症影響が前年度から回復したことや北米のブランド品拡大により増益
<フルーツ ソリューション>
・家庭用ジャム・スプレッドが好調に推移したものの、原材料等の高騰影響を受け増収減益
<ファインケミカル>
・原料販売の販売増加があったものの、通信販売のコスト増加により増収減益
<共通>
・食品メーカー向け製造機械の販売増加により増収増益
◇ 財政状態の状況
・総資産は、4,623億72百万円と前期末比363億66百万円増加
主に現金及び預金の増加115億29百万円、受取手形及び売掛金の増加72億67百万円、有価証券の増加80億円、建設仮勘定の増加71億73百万円、退職給付に係る資産の増加89億54百万円によるものです。
・負債は、1,307億34百万円と前期末比160億32百万円増加
主に支払手形及び買掛金の増加113億63百万円、短期借入金の減少149億29百万円、未払金の増加76億41百万円、未払法人税等の増加30億95百万円、長期借入金の増加47億16百万円、繰延税金負債の増加27億66百万円によるものです。
・純資産は、3,316億38百万円と前期末比203億35百万円増加
主に利益剰余金の増加144億69百万円、退職給付に係る調整累計額の増加51億97百万円によるものです。
②キャッシュ・フローの状況
現金及び現金同等物の残高は、805億12百万円と前期末比180億79百万円増加となりました。
各キャッシュ・フローの状況は、下記のとおりです。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が336億38百万円、減価償却費が175億36百万円、仕入債務の増加が114億87百万円、売上債権の増加が74億16百万円となったことなどから631億26百万円の
収入(前期は237億25百万円の収入)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出が181億24百万円、定期預金の預入による支出が112億31百万円となったことなどから238億93百万円の支出(前期は177億21百万円の支出)となりま
した。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済が152億85百万円、配当金の支払いが69億50百万円
となったことなどから211億26百万円の支出(前期は95億14百万円の支出)となりました。
なお、当社グループのキャッシュ・フロー関連指標の推移は、下記のとおりです。
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2020年 11月期 |
2021年 11月期 |
2022年 11月期 |
2023年 11月期 |
2024年 11月期 |
|
自己資本比率(%) |
52.8 |
64.5 |
66.4 |
66.2 |
65.4 |
|
時価ベースの自己資本比率(%) |
68.5 |
84.2 |
84.3 |
84.2 |
103.4 |
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キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
2.3 |
1.1 |
1.2 |
1.4 |
0.4 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
103.7 |
159.0 |
110.6 |
61.1 |
202.5 |
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しています。
※有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っているすべての負債を対象としています。
※キャッシュ・フローおよび利払いは、それぞれ連結キャッシュ・フロー計算書の「営業活動によるキャッシュ・フロー」および「利息の支払額」を使用しています。
※2021年11月期において、企業結合に係る暫定的な会計処理の確定を行っており、2020年11月期に係る各数値については、暫定的な会計処理の確定の内容を反映させています。
③ 生産、受注および販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度(百万円) (自 2023年12月1日 至 2024年11月30日) |
前年同期比(%) |
|
市販用 |
117,259 |
98.1 |
|
業務用 |
98,161 |
91.4 |
|
海外 |
57,211 |
110.0 |
|
フルーツ ソリューション |
12,964 |
109.7 |
|
ファインケミカル |
5,551 |
110.5 |
|
共通 |
2,265 |
89.8 |
|
合計 |
293,414 |
98.4 |
b.商品仕入実績
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度(百万円) (自 2023年12月1日 至 2024年11月30日) |
前年同期比(%) |
|
市販用 |
19,148 |
121.2 |
|
業務用 |
12,475 |
65.6 |
|
海外 |
3,406 |
106.4 |
|
フルーツ ソリューション |
1,432 |
113.2 |
|
ファインケミカル |
99 |
84.0 |
|
共通 |
2,640 |
100.4 |
|
合計 |
39,203 |
93.3 |
c.受注実績
主要製品以外の一部の製品について受注生産を行うほかは、すべて見込み生産のため記載を省略しています。
d.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度(百万円) (自 2023年12月1日 至 2024年11月30日) |
前年同期比(%) |
|
市販用 |
186,747 |
105.3 |
|
業務用 |
170,086 |
102.9 |
|
海外 |
92,199 |
117.8 |
|
フルーツ ソリューション |
17,001 |
100.3 |
|
ファインケミカル |
11,382 |
101.9 |
|
共通 |
6,568 |
110.3 |
|
合計 |
483,985 |
106.4 |
(注) 外部顧客に対する売上高を記載しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計基準に基づいて作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債の報告金額および報告期間における収益・費用の報告金額に影響する見積り、判断および仮定を必要としています。過去の実績や状況を踏まえ合理的と考えられるさまざまな要因に基づき、継続的に見積り、判断および仮定を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
なお、連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えています。
(1) 固定資産の減損処理
保有する固定資産について、原則として継続的に収支の把握を行っている管理会計上の区分(会社別、事業別かつ事業所別)を単位としてグルーピングを行い、当該資産グループ単位で減損の兆候を把握しています。減損損失を認識するかどうかの判定および使用価値の算定に際して用いられる将来キャッシュ・フローは、経営環境などの外部要因に関する情報や当社グループが用いている内部の情報に基づき、合理的な仮定を置いて計算しています。将来の市場環境の変化などにより、見積り額と実態に乖離が生じた場合には、減損損失が発生する可能性があります。
なお、将来キャッシュ・フローの見積りの算定における主要な仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
(2) 貸倒引当金の計上基準
貸倒引当金については、債権の貸倒損失に備えるため、一般債権については過年度実績率を基礎とした将来の貸倒予測率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見込額を計上しています。将来、顧客の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上または貸倒損失が発生する可能性があります。
(3) 投資有価証券の減損処理
投資有価証券の評価方法については、市場価格のない株式等以外のものについては時価法を、市場価格のない株式等については原価法を採用しています。保有する有価証券につき、市場価格のない株式等以外のものは株式市場の価格変動リスクを負っていること、市場価格のない株式等は投資先の業績状況等が悪化する可能性があること等から、合理的な基準に基づいて投資有価証券の減損処理を行っています。
この基準に伴い、将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現状の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生し、減損処理が必要となる可能性があります。
(4) 繰延税金資産の回収可能性の評価
繰延税金資産については、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を十分に検討し、回収可能見込額を計上しています。しかし、繰延税金資産の回収可能見込額に変動が生じた場合には、繰延税金資産の取崩しまたは追加計上により利益が変動する可能性があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容
a.財政状態および経営成績の分析
当連結会計年度における財政状態および経営成績の分析につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態および経営成績の状況」に記載のとおりです。
b.資金の財源および資金の流動性
(1) キャッシュ・フロー
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
(2) 資金の需要
さらなる企業価値の向上を図るための設備投資、事業投資、債務の返済および運転資金などの資金需要に備え、資金調達および流動性の確保に努めています。
(3) 資金の調達
必要な資金は内部資金より充当し、不足が生じた場合は銀行借入および社債発行により調達しています。
(4) 資金の流動性
複数の金融機関との当座貸越契約を設定しています。また、当社および国内連結子会社における余剰資金の一元管理を図り、資金効率の向上と金融費用の削減を目的として、キャッシュ・マネジメント・システムを導入しています。
c.目標とする経営指標の達成状況等
当社グループは、2021年度からの4年間を対象とする中期経営計画を策定し、最終年度である2024年11月期において、「ROE(自己資本利益率) 8%以上」「営業利益率 7.5%」「海外売上高伸長率(現地通貨ベース) (年率)10%以上」を目標として掲げています。
当連結会計年度におきましては、ROE(自己資本利益率)が7.3%、営業利益率が7.1%となり目標未達となりましたが、海外売上高伸長率(現地通貨ベース)は前年比11%の増加となり目標達成となりました。
◇経営指標
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2024年11月期 |
2024年11月期目標 |
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ROE(自己資本利益率) |
7.3% |
8%以上 |
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営業利益率 |
7.1% |
7.5% |
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海外売上高伸長率(現地通貨ベース) |
(前年比)11% |
(年率)10%以上 |
該当事項はありません。
当社グループは、世界のお客様の楽しく健やかな食生活に貢献するために、「人の健康」「地球の健康」「未来の食生活の創造」を重点研究領域とし、研究開発に取り組んでいます。マヨネーズやドレッシングをはじめ、様々な分野で培ってきたコア技術を軸に、「キユーピーグループ 2030ビジョン」とその先を見据えた未来創造の実現をめざしています。
「人の健康」領域では、健康機能や栄養面での付加価値向上に注力しています。卵黄コリンを活用した認知機能の一部の維持が期待されるサプリメント「コリンEX」が機能性表示食品として受理され、販売を開始しました。食後血糖値の上昇を抑制する新しい食べ方「さらパン」に関するエビデンスを日本臨床栄養学会で発表し、新しい知見を社会に発信しました。また、ピーマンの苦味を感じるメカニズムと卵黄タンパク質がそれを抑制することを解明し、東京大学と共同で日本農芸化学会にて発表しました。
「地球の健康」領域では、プラスチック資源の循環利用やCO₂排出量削減をめざした取り組みを進めています。当期は、味の素株式会社・株式会社イトーヨーカ堂と連携し、使用済みマヨネーズボトルの店頭回収と水平リサイクルの実証実験を開始しました。また、日清オイリオグループ株式会社・イオン株式会社と連携し、使用済みドレッシングボトルの店頭回収と水平リサイクルの実証実験を開始しました。さらに、再生PET樹脂を使用したボトルを拡大採用することで、年間約430トンのプラスチック削減を見込んでいます。また、この取り組みが2024日本パッケージングコンテスト食品包装部門賞を受賞しました。
「未来の食生活の創造」領域では、アレルギー低減卵の臨床試験結果を日本小児アレルギー学会で発表しました。また、農林水産省のフェーズ3基金事業への採択を受け、応用研究を本格化させました。生産技術のカテゴリーでは、グループ惣菜工場での蓋閉め作業の自動化技術を実装しました。また、未来型食品工場コンソーシアムに参画し、食品産業全体の効率化と品質向上に貢献しています。
なお、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は
また、報告セグメントにおける研究開発活動の概要とその成果は下記のとおりです。
(1)市販用
市販用では、新商品の開発に加え、既存品の改良を通じたさらなるおいしさや機能性の追求、用途拡大に向けた提案を実施しています。
マヨネーズカテゴリーでは、プラントベースフードの需要に応え、「GREEN KEWPIE 植物生まれのマヨネーズタイプ」を新たに発売しました。また、幅広い料理に合う「キユーピー 具だくさんレモンタルタル」を発売し、夏場の需要拡大に貢献しました。さらに、「キユーピー 燻製マヨネーズ」は燻製香を向上させるリニューアルを実施し、顧客満足度を一層高めました。
ドレッシングカテゴリーでは、人気の「キユーピー 深煎りごまドレッシング」に大容量商品(1000ml)とカロリーハーフ版を追加し、お客様のニーズに応える商品展開を行いました。また、ノンオイルドレッシングシリーズを塩分・糖質25%カットの新コンセプトでリニューアルし、健康志向の消費者に新たな価値を提供しています。
調理カテゴリーでは、「あえるパスタソース たらこ」「あえるパスタソース 明太子」を改良し、パスタカテゴリーを強化しました。さらに、新商品「あえるパスタソース ゆず香る和風たらこ」を発売し、ゆずの爽やかな風味を楽しめる和風ソースを提案しました。プラントベースフードとして「GREEN KEWPIE 植物生まれのボロネーゼ」「GREEN KEWPIE 植物生まれのカルボナーラ」を発売しました。
ベビーフード・介護食カテゴリーでは、「やさいとなかよし」シリーズを拡充し、新たに「キユーピー やさいとなかよし おやこどん風の素」と「鮭チャーハン風の素」を発売しました。
サラダ・惣菜カテゴリーでは、株式会社サラダクラブにおいて「鮮度長持ち製法」を展開し、パッケージサラダの消費期間を延長する取り組みを進めました。また、フードロス削減に配慮した「千切りキャベツ 極細カット」や「ざく切りキャベツ ダイスカット」を発売しました。デリア食品株式会社では、新たな挑戦として「デリア」ブランドで「野菜ポテトサラダ」を発売し、惣菜市場でのブランド価値向上を図っています。
中食領域では、昨年に引き続き特定ユーザー向けにアップサイクル商品の開発を進めました。これまで廃棄や粉砕し家畜飼料などにされてきた野菜の食品未利用部を活用して、にんじんジュースを製造する過程で発生する搾りかす「にんじんパルプ」で具材感を出した「トマトの冷製スープ」、キャベツ芯のすりおろしで独特の甘みを付けた「かぼちゃのスープ」、さらにブロッコリーの選果や加工工程で発生する花蕾(花部)や茎の原料化を北海道の生産加工者とともに進め「ブロッコリースープ」を発売しました。また、ロングライフサラダの開発技術を卵加工品に応用した「キユーピーのたまご ネギダレで食べる」シリーズを2品開発しました。サラダと卵加工の技術を持つ当社ならではの商品として、夕食のおかずやお酒のおつまみの一品になり、ごはんにのせれば、簡単にボリュームのある丼物ができる商品で想定以上にヒット商品になりました。また、Amazonフレッシュにおいて「好吃卵(ハオツーたまご)」(調理用液卵+具材のキット)のテスト販売を開始しました。
(2)業務用
業務用では、原材料高騰や人手不足など、業務用ユーザーが直面する課題解決に向けた独自性のある開発を実施し、おいしさと機能性の両立をめざした、多様なニーズに応える商品を展開しています。
ドレッシングカテゴリーでは、健康志向を反映したカロリー・脂質・糖質ゼロの「トリプルZEROノンオイル和風」と「ノンオイル柑橘」の2品を発売しました。さらに、レストランやデリカ向けには「具たっぷりソース ガーリックオニオン」と「ゆず醤油」の2品を新たに発売しました。独自のすりおろし技術を活用した具材感のあるソースが、新たなメニューの創出を後押ししています。加えて、ベーカリー業態にはプラントベースフードの需要を受け、「GREEN KEWPIE ソイツナフィリング」を発売しました。ホテルやレストランでは、料理の仕上げに彩りと手作り感を加える「キユーピー ドレスアップソース パセリ&ケール」「アップル&セロリ」「キャロット&レモン」の3品が注目されています。また、簡単に本格的なパスタを提供できる「スノーマン カルボナーラソースベース」や「ほしえぬ パスタソースたらこ(パキッテ)」など4品をリニューアルし、使いやすさとおいしさをさらに向上させました。
ロングライフサラダカテゴリーでは、「キユーピーのサラダ たまごマカロニサラダ」を開発しました。この商品は卵の風味や手作り感が特徴で、サラダ以外にもグラタンメニューやベーカリーでの採用が進んでいます。また、簡便性と高品質を両立した「スノーマン なめらか食感茶碗蒸し(おぼろ状)」や「スノーマン とろっと 親子丼の素」を発売しました。「スノーマン 料亭風シリーズ たまごやき」「だしまきたまご」は、こだわりのだしを使用し、ふっくらジューシーな食感に仕上げました。
キユーピー醸造株式会社では、醸造酢の持つ機能性を生かし、洋風酢として「リッシュフェルメンテ ワインビネガー2024」を数量限定で発売しました。日本ワインを原料にした最高峰のビネガーで、今年はルミエール(山梨県)のワインを使用した赤ワインビネガーと白ワインビネガーの2種類を展開しました。また、トマトビネガーやエンハンスビネガーも外食向けに1Lペットボトルを追加し、幅広い用途での利用を促進しています。デリカ・米飯・加工業態向けには、おいしさと日持ちを両立させた「台湾風ピリ辛ベース」を発売しました。この商品は「やみつきになるニンニクの風味」と「持続する唐辛子の辛さ」が特徴で、たまご商品との共通レシピも提案しています。さらに、寿司米飯市場向けに2種類のしょうゆと自家製だしを組み合わせた味飯用調味液を開発し、汎用性の高い商品として展開しています。
(3)海外
海外では、各国の開発拠点を中心に現地の嗜好性やトレンドにあった開発を進めています。
中国では、先行販売している「油酢汁」をシリーズ化し、新たに「酸甜風味」と「ガーリック風味」の2品を開発・発売しました。これにより、野菜サラダのみならず、幅広い食事メニューへの需要を取り込むことをめざしています。また、業務用カテゴリーの強化として、顧客ニーズに迅速に対応するための新たな拠点を上海に設け、体制を強化しました。
ベトナムでは、ドレッシング市場におけるトップメーカーとしての地位を生かし、市場拡大をめざしています。特に、健康志向の高まりを受け、ベトナム初となる健康訴求タイプのごまドレッシングを発売し、新たな価値を提供しました。
インドネシアでは、業務用ルートで好評を博しているヨーグルトテイストのマヨネーズを、家庭向けリテール市場にも展開しました。これにより、フルーツサラダなどにとどまらず、家庭でのマヨネーズ使用機会をさらに広げることをめざしています。
タイでは、外食市場でのトレンドを捉えたトリュフドレッシングを発売し、サラダをより楽しめる提案を行っています。また、健康志向の高まりに対応し、脂肪分を50%削減したマヨネーズタイプ調味料を開発・提供しています。
(4)フルーツ ソリューション
フルーツ ソリューションでは、フルーツ摂取を通じて心と体の健康を支援することをめざし、「香りと色彩」「食感」「栄養機能」「利便性」「環境」など多面的な視点から研究開発に取り組んでいます。当期は、日常生活におけるフルーツ摂取の新しいシーンを創出し、さらなる市場拡大を図りました。
新商品として、冷凍フルーツ「アヲハタ まるかじゅり」2品を発売しました。この商品は、大きめの果肉を冷凍庫から取り出してそのまま食べられるワンハンドタイプで、もみほぐしながら食べる新感覚の楽しさとジューシーさが特徴です。忙しい日常の中で手軽にフルーツを楽しめます。
ジャム・スプレッドカテゴリーでは、人気の「55ジャム」シリーズに季節限定品3品を追加し、フルーツの組み合わせによる選ぶ楽しさを提供しました。加えて、スプーンを使わず簡単に使えるボトル容器入りのフルーツスプレッド「アヲハタ Spoon Free」全6品を全面リニューアルしました。
(5)ファインケミカル
ファインケミカルでは、ヒアルロン酸、たまご成分、酢酸菌といった独自の機能性素材の可能性を最大限に引き出す研究と商品開発を進めています。これらの素材を通じて、新たな価値を市場に提供し、健康と生活の質の向上に寄与しています。
ヒアルロン酸カテゴリーでは、外部研究機関との共同研究を通じ、修飾ヒアルロン酸の新たな機能開発を推進しました。
酢酸菌カテゴリーでは、機能性表示食品の表示許可を取得した免疫機能の改善効果をうたった「ディアレプラス」を発売しました。また酢酸菌の機能を原料販売先ユーザーにも提案し、酢酸菌市場の活性化を進めました。
(6)共通
該当事項はありません。