第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境および対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、「調和・創造・革新」の経営理念のもと、“顧客、株主、従業員、社会への喜びを創造する企業になる”ことを経営の基本方針としております。

特に、“食”に携わる企業として、“常に安全性を追求し、高品質な食品で安心と健康を顧客ならびに消費者の方へお届けする”ことが、企業活動において果たすべき最重要な使命と認識しております。

 この使命を果たしていく中で得られる顧客との信頼関係を、より広くより強固なものとしていくことが、企業価値を高めることに繋がり、ひいては株主のみなさまの期待にお応えできることになると考えております。

 

(2)経営戦略等

 当社グループは、「製造直販」の販売スタイルを堅持し、技術力を核とした研究開発力の強化、ならびにチルド製品の安全性確保を根底においた独自の「コールドチェーン・システム(低温流通体制)」の整備に努めてまいりました。これらは、顧客ニーズへの迅速で確実な対応ならびに商品の“品質と安全”という面で、当社の強みとなっております。また、これまで安定した成長を維持している中食市場を中心とした業務用食品事業の基盤をより強固なものにするとともに、日本国内の少子高齢化が進行する中で、ヘルスフード事業や海外事業など、新たな成長事業の展開にも積極的に取り組んでまいりました。

 2025年3月期からは、“「需要創造」「収益構造改革」「経営品質向上」により「選ばれる企業」になる”および“「地球環境」「ステークホルダー」「人的資本」を重視した『サステナビリティ経営』を推進する”という方針を経営の軸に据え、事業活動を進めております。長期ビジョン“あじかんV30 ver.2.0”の中では、その方針のもと「食を通じて味わう喜び、ふれあう幸せ、健やかな毎日を世界へ届ける“お役立ち企業”をめざします」というミッションに沿って、収益構造改革の完遂と価値創造ビジネスの展開に取り組んでおります。

 その経営戦略は、国内事業基盤の強化、海外事業やヘルスフード事業の成長、市販事業への本格参入などであり、需要創造するとともにブランド価値の向上を基本としております。また、収益構造改革および経営品質の向上にも取り組み、より安定した収益基盤を構築することに加え、改革を推進する組織と人材の開発により、生産性の向上と環境変化に強い経営基盤を構築してまいります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、主な経営指標として売上高、営業利益率の他に、「資本コストや株価を意識した経営」にも取り組んでおり、ROE(自己資本利益率)、ROIC(投下資本利益率)を判断軸に資本コストを上回る収益基盤の構築に努めてまいります。また、PBR(株価純資産倍率)の向上も図っていくとともに、DOE(自己資本配当率)を基準として、適時適切な株主還元を行ってまいります。

 2030年3月期を着地点とします長期ビジョン“あじかんV30 ver.2.0”においては、売上高 590億円、営業利益率 4.5%以上、ROE 8%以上、ROIC 6%以上、DOE 3%以上、PBR 1倍以上を目標としております。

 

(4)経営環境

 為替や株価の変動は、当社の仕入原価やデリバティブなどの時価評価に大きな影響を与えます。特に近年の金融資本市場は不安定な動きとなっており、安定的な経営成績を確保することが困難になることも予想されます。また、当社主要原材料である鶏卵価格が鳥インフルエンザの影響などから高値で推移していることに加え、人件費、エネルギーコストの上昇など厳しい経営環境が継続しております。

 他方、販売面におきましても、食品の安全・安心への関心が高まる中で、同業他社との販売競争は以前にも増して激しくなってきており、引き続き厳しい経営環境となることを予想しております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題

 当社グループを取り巻く経営環境は、世界情勢の不安定さに加え、原材料費・人件費・物流費などの諸経費の上昇が続くことで需要の減退に繋がっています。また、主要原材料である鶏卵についても価格が高止まりしていることに加え、鳥インフルエンザに対する発生メカニズムも依然として未解明であることから、常に発生のリスクを保有しながらの事業活動となり、引き続き厳しい経営環境になると予想されます。当社は、製品の安定供給に努めるとともに、安定的に利益を確保し、新しい事業へ投資することで、企業の成長促進を加速させていくことが最重点の課題であると認識しております。

 このような状況の中、当社グループは、「“おやくだち”の精神でお客さまや取引先、株主、社会へ貢献し、社員がいきいきと働く風土づくりと安定した収益構造および価値創造ビジネスの推進により、“選ばれる企業”として持続的に成長していく」ことを基本方針とする第13次中期経営計画を達成するため、各施策を展開しております。

 次期におきましては、第13次中期経営計画のもと、長期ビジョン「あじかんV30 ver.2.0」の実現に向けた設備・人的投資を進めるための収益構造改革の完遂と新たな価値創造へ向けて、営業のシステム化の促進や配合集約などによる生産効率の向上など、既存事業での収益構造の安定化に加え、新設したマーケティング部で、市販事業など当社の次期の柱となる事業を構築してまいります。また、サステナビリティ経営を実践することで、環境に配慮した活動を進めるとともに、人材への成長投資も行い、従業員のエンゲージメントを向上させ、より強い組織を作ってまいります。

 次期の重点取組項目は、以下のとおりです。

 

① 収益構造改革の完遂

 

② 業務用事業の質的成長と拡大

 

③ ヘルスフード事業、海外事業の成長拡大

 

④ ごぼう事業、市販事業の新たな価値の創造

 

⑤ 経営品質の向上

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループは、2003年より環境保全に対して本格的に検討を開始いたしました。その活動の一環として、2003年12月に環境マネジメントシステムの国際規格「ISO14001」の認証を取得するなど、社内体制を整備してまいりました。2021年4月以降は、それまでに培ったノウハウを継承しつつ、環境だけに止まらない取組へと範囲を拡大するため、「ISO14001」の認証を返還し、SDGsに基づく活動へ移行しております。

 サステナビリティマネジメントを推進するにあたり、当社グループでは「環境基本方針」を制定しております。また、代表取締役 社長執行役員をトップとするSDGs推進体制を構築し、SDGs推進連絡会にて検討された方針案や活動内容は、経営層および関係部署が参加するSDGs推進会議にて議論されます。なお、特に重要な案件については、経営審議会の議題とし、取締役や執行役員の意思決定を行ったうえで全社へ展開しております。さらには、その後の活動状況につきましても、半期ごとにSDGs推進会議に報告されており、その場での議論を踏まえ、必要に応じて適宜、軌道修正を行っております。

 当社グループの人的資本に対する考え方や取組内容につきましては、取締役会の中で議論され、課題を抽出したうえで人事部門を中心に具体的な実施内容を検討し実行しております。また、取組を行う上での一連のプロセスについては、社外取締役を主要な構成員とする指名報酬委員会が評価し、その結果を踏まえて取締役会が年に一回実施している取締役会全体の実効性評価を行う中で新たな課題を抽出し、次のアクションプランへと繋げる仕組みを構築しております。

 

(2)リスク管理

 当社グループでは、長期ビジョンや中期経営計画、年度計画の策定時に内外環境における機会と脅威を認識したうえで事業戦略を策定するとともに、サステナビリティ関連の機会と脅威を識別し、その対応策や方針案策定に向けた検討は、SDGs推進連絡会が中心となって行っております。

 なお、主要原材料やエネルギーの価格変動リスクなど、短期的な変動要素が高いリスクにつきましては、毎月実施される経営会議にて状況を把握したうえで対策を講じており、迅速な対応を図っております。

 当社グループの人的資本については、ダイバーシティ(多様性)マネジメントが継続企業の前提にとって不可欠であるとの考えのもと、取締役会全体の実効性評価を行う中で、特に経営陣幹部の多様性の確保や女性活躍推進、多様な人材が活躍できる職場環境の整備が喫緊の課題であると認識し、人事部門を中心に具体的な対応策を検討し、徐々に実行に移しております。

 

(3)戦略

 気候変動は、世界各地で異常気象や大規模な災害をもたらすだけでなく、農作物の作況や漁獲量へ大きく関与するため、当社グループが取り組むべき重要な課題として捉えております。特に当社グループの主要原材料は鶏卵や、干瓢・椎茸・ごぼうなどの農作物、魚肉すり身であり、気候変動がこれらの調達価格や調達量へ大きな影響を与えます。また、家畜の飼料となる穀物の作況は、鶏卵生産事業者のコストアップに繋がるリスクがあり、間接的に当社グループの調達価格や調達量に影響します。

 気候変動リスク抑制を図るため、当社グループでは環境保全に向けた以下の取組を行っております。

 

①食品ロスの削減

 ・工場工程内ロスの削減

 ・原料の未利用部分の活用方法研究

 ・フードバンクの活用など

②CO排出量の低減

 ・太陽光パネルの導入

 ・社有車の燃料使用量の削減など

③プラスチック包材の削減

 ・製品包装形態の見直しによる包装の簡素化

 ・環境にやさしい包装素材への切り替えなど

 

 なお、これらの取り組みは、気候変動リスクの抑制だけでなく、コスト削減や生産性の向上による利益構造改善の機会としても捉えております。

 

 当社グループでは、上記のほか、生産工程で排出される生ゴミの再生利用の研究やSDGsの目標14“海の豊かさを守ろう”に貢献すべく、MSC CoC認証を取得したほか、子供向けの巻寿司教室の開催やSNSを活用した巻寿司文化に関する情報発信などを通じ、食育と日本伝統の食文化の継承にも努めており、人々の健康、おいしいものを食べる喜び、食文化の向上に貢献したいと考えております。

 近年、欧米諸国を中心に取組が進んでいるアニマルウェルフェア(家畜の飼育管理を快適な環境下で行うことで動物の生きる状態を改善すること)への対応につきましては、重要な課題として捉え、まずは国内外を含めた情報収集を行うとともに、従業員の知識の醸成に努めております。今後につきましては、我が国の農林水産省の指針に基づき、当社としての対応を検討してまいります。

 また、当社グループでは、ダイバーシティマネジメントの推進に向けて、女性活躍と管理職登用の推進、高年齢者の活躍推進、外国人人材活用の高度化、障がい者雇用の推進などの取組を行っております。さらには、社内環境の整備に向け、総労働時間の短縮や多様で柔軟な勤務形態・体制の整備も進めております。

 特に、女性活躍の推進については、管理職者候補の育成、職域拡大・キャリア形成を意識した人事配置と育成、ライフステージの変化に応じた働きやすさとキャリア形成支援の展開など、次世代行動計画を策定し、具体的な目標設定や個々の状況について開示しております。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは、“共に咲く喜び”を実現するという創業の精神のもと、人々の健康、おいしいものを食べる喜び、食文化の向上に貢献するとともに、環境にやさしいバリューチェーンプロセスを構築し、環境保全に配慮した企業活動を行うことで、「人と環境にやさしい企業」を目指しております。

 環境保全への取り組みでは、以下の指標および目標値を設定し、取り組んでおります。

 

区分

指標

2030年3月期目標値(注)

食品ロスの削減

工場工程内ロス

50%削減

CO₂排出量の低減

再生可能エネルギー比率

5%以上

エネルギー使用量

工場20%低減

営業所10%低減

車輌燃料使用量(ガソリン+軽油)

30%低減

プラスチック包材の削減

プラスチック包材削減率

10%削減

新素材へ切り替え

30%以上

(注)各指標における目標値の基準は、2020年3月期の実績値を用いております。

 

 また、当社グループは、Scope1、Scope2に基づいて温室効果ガス(GHG)排出量を算定し、その結果は以下のとおりであります。なお、GHG排出量削減に向けた取組の詳細は、当社コーポレートサイト(https://www.ahjikan.co.jp/sustainability/)をご参照ください。

 

温室効果ガス(GHG)排出量

区分

2025年3月期

Scope1

12,883t-CO2

Scope2

12,865t-CO2

 

 また、当社では、上記「(3)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針に係る指標について、関連する指標のデータ管理とともに具体的な取組を行っております。また、女性活躍の推進に向け、以下の指標および目標値を設定し、取り組んでおります。

 

指標

目標

実績(当連結会計年度)

管理職に占める女性労働者の割合

2030年3月31日まで5以上

3.1

 

 なお、次世代育成支援法に基づく行動計画の詳細は、当社コーポレートサイト(https://www.ahjikan.co.jp/about/society_action_plan.html)をご参照ください。

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)主要原材料の調達について

当社グループが生産する製品は、鶏卵、干瓢、椎茸、ごぼう、魚肉すり身を主原料としており、契約購買や分散調達により安定した数量の確保と特定の調達先への集中の回避を図っております。しかし、これらの原料は、作況、自然災害や大規模事故等の産地や生産者への影響、相場の変動、漁獲量制限、調達先の経済状況などによって、調達価格や調達量に影響を受ける可能性があります。特に鶏卵においては、近年、鳥インフルエンザの発生が日本各地で拡大する傾向にあり、採卵鶏の減少から需給バランスが崩れ大幅な価格変動や安定的な調達が困難となる可能性があります。

また、調味料、食用油といった副原料や包装資材などの原材料全般にわたって、需給動向や原油価格、穀物価格、為替などにより調達価格が変動し、当社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(2)業界動向および競合などについて

当社の主要取引業態であります中食業態(スーパーマーケット、コンビニエンスストアなど)は、消費者の嗜好の変化および多様化の影響を強く受ける分野であります。そのため当社におきましては、商品開発力ならびに調達力を強化し、当社取扱品の差別化を推し進めるとともに、品揃えの充実を図っております。しかしながら、競合による新製品の投入や販売促進活動により、当社取扱品の競争力低下や販売機会の減少などの影響を受ける可能性があります。

また、中食業界や取引先の経営状態、販売政策などの変化によって、販売機会や販売価格に影響を受ける可能性があります。

 

(3)為替相場の変動による影響について

当社の取扱品には海外からの輸入品が含まれており、為替相場の変動によるリスクをヘッジする目的で、為替予約による対策を講じております。しかしながら、リスクヘッジにより為替相場変動の影響を緩和することは可能であっても、影響をすべて排除することは不可能であり、当社の財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(4)年金債務について

当社の退職給付費用および退職給付債務は、割引率、年金資産の長期期待運用収益率などの基礎率を前提に算出しております。この前提が経済環境の変化、その他の要因により変動した場合や、年金資産の運用実績が低下した場合には、当社の財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(5)固定資産の減損について

当社グループは、土地、建物、機械装置等の様々な資産を所有しております。工場の新設など新たな投資を行う場合は、投資効果や、回収可能性を十分に検証したうえで、投資をおこなっておりますが、外部環境の急激な変化や、時価の下落などにより、投資額の回収が見込めなくなった場合、減損損失を計上する可能性があり、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(6)人材・労務関連について

当社グループは、継続的な新卒・中途採用による人材確保、労働環境の改善による人材の定着化に取り組んでおりますが、生産や販売を担う人材の不足によって、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。また、生産を担う従業員は、正社員に加え、パート、アルバイト、外国人技能実習生が多数従事しており、これら勤務者の就業等に関する法改正などが行われた場合は製造コストが上昇し、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(7)食品の安全性について

食品業界におきましては、鳥インフルエンザの流行、無認可添加物の使用問題、ノロウイルス、産地の偽装表示などの諸問題が過去に発生しております。

 これらに対し、当社グループでは、製造工程に導入しております「品質保証システム(ISO9001)」や「衛生管理システム(HACCP)」を構築し対処してまいりました。

 また、起源原料まで溯って追査できるトレーサビリティの仕組みに加えて、フードディフェンス面の強化をする目的で、食品安全のための規格である「FSSC22000」を認証取得しており、品質管理については万全な体制で臨んでおりますが、今後も当社グループ固有の品質問題のみならず、社会全般にわたる一般的な食品の安全性や品質に係る問題が発生した場合、当社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(8)自然災害およびウイルス感染症による影響について

当社グループは、国内および中国、米国に複数の拠点を構え、生産および営業活動を行っております。これらの拠点やその周辺で大規模な地震や風水害などが発生した場合に備え、BCP(事業継続計画)を整備することにより早期に復旧できる体制を整えておりますが、自然災害を未然に防止することは困難であり、各拠点での事業活動に支障を来す可能性があります。また、新たなウイルス感染症の発生などにより、今後の事業活動に影響を与える可能性があります。

 

(9)気候変動による影響について

当社グループでは、気候変動などの環境問題に対し、食品ロスの削減、CO₂排出量の低減、プラスチック包材の削減などへの取り組みを進めておりますが、地球温暖化により、主要原材料である農作物などの調達価格、調達量に影響を及ぼす可能性があり、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(10)事業展開に伴うカントリーリスクについて

当社グループは、中国の関係会社に加え、東南アジア諸国の生産委託先にて、日本国内のみならず米国、アジア、オセアニア向けの製品を開発・生産・供給しております。また、近年は中国国内における販売事業へ注力する一方で、米国において販売拠点となる子会社を設立するなど、海外販売事業を強化してまいりました。

当社グループでは、これらの製品の供給先・販売先のカントリーリスクを事前に調査、把握して対処するよう努力しておりますが、不測の政治・経済的環境変化や法規制・税制の改正、反日デモの発生、鳥インフルエンザの感染拡大などにより、製品の生産や調達、販売ができなくなった場合には、当社グループの財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態および経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用や所得環境が改善する中、一部に足踏みが残るものの、景気は緩やかな回復がみられる状況となりました。しかしながら、物価上昇の継続に伴う個人消費の下振れ、関税を含めた米国の政策動向による金融資本市場の大幅な変動など、景気回復を下押しするリスクも台頭しており、先行き不透明な状況で推移いたしました。

 食品業界におきましては、仕入価格や諸経費が高値で推移していることに加え、人手不足に伴う人件費の高騰、物価上昇の継続に伴う個人消費の二極化加速など、厳しい経営環境で推移いたしました。

 このような状況の中、当社グループは「“おやくだち”の精神でお客さまや取引先、株主、社会へ貢献し、社員がいきいきと働く風土づくりと安定した収益構造および価値創造ビジネスの推進により、“選ばれる企業”として持続的に成長していく」ことを基本方針とした第13次中期経営計画の初年度をスタートさせ、第一に「収益構造改革の完遂」、第二に「業務用事業の質的成長と拡大」、第三に「ヘルスフード事業、海外事業の成長拡大」、第四に「ごぼう事業、市販事業の新たな価値の創造」、第五に「経営品質の向上」を重点施策とした取り組みを展開してまいりました。

 

 この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a.財政状態

(資産)

 当連結会計年度末の総資産につきましては、前連結会計年度末に比べ743百万円減少し26,897百万円となりました。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ1,053百万円減少し13,763百万円となりました。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ309百万円増加し13,133百万円となりました。

 

(負債)

 負債合計は、前連結会計年度末に比べ2,287百万円減少し9,508百万円となりました。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ2,284百万円減少し8,282百万円となりました。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ3百万円減少し1,225百万円となりました。

 

(純資産)

 純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,544百万円増加し17,388百万円となりました。

 

 この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ7.3ポイント増加し64.6%となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の売上高は業務用食品等、ヘルスフードの両セグメントともに売上が伸長したことで51,045百万円(前連結会計年度比1.6%増加)となり、前連結会計年度の実績を上回りました。

 利益面につきましては、売上高の拡大効果により、営業利益は1,964百万円(前連結会計年度比14.9%増加)となりました。経常利益は、為替差益や持分法による投資利益、長期為替予約評価損の計上などにより2,221百万円(前連結会計年度比2.0%減少)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益や減損損失の計上などにより1,548百万円(前連結会計年度比2.6%増加)となりました。

 

 報告セグメント別の経営成績は次のとおりであります。

 

(業務用食品等)

 販売面におきましては、米や海苔などの価格が高騰したことで当社の主力製品を多く使用した巻寿司の需要が後退したことに加え、2022年冬場に大規模発生した鳥インフルエンザの影響で落ち込んだ鶏卵の需要が完全に回復していないなか、2024年冬場にも鳥インフルエンザが流行したことで卵価が大きく上昇するなど、厳しい環境で推移しました。しかしながら、鶏卵の需要を回復するためのメニュー提案活動を推進したことで、「丼用玉子とじ」や、手軽に調理ができるように複数の製品を組み合わせた「キット品」の売上が伸長しました。加えて、SNSへの積極的な情報発信、フードイベントへの出店など、販促活動を強化したことなどにより、外食チェーンの売上や玉子製品を中心に自社製造製品が伸長し、国内売上高は前連結会計年度実績を上回る結果となりました。他方、海外輸出売上高につきましては、中国における水産加工品の輸入停止措置の影響は依然として継続しているものの、輸出向け製品の品揃え強化を行ったことで北米や香港を中心に需要が拡大し、前連結会計年度実績を上回る結果となりました。

 生産面におきましては、当社の主要原材料である干瓢や椎茸の仕入価格は上昇しました。鶏卵価格は足元では鳥インフルエンザの影響により高騰しているものの、秋口までは比較的安定して推移しました。他方、生産高の伸長により固定費率が低下し、生産効率の向上に努めたこともあり、製造原価率は前連結会計年度に比べ低下しました。

 販売費につきましては、増収に伴い変動費が増加したことに加え、人事制度の改定に伴う人件費の増加や価格改定の受け入れに伴う物流コストの上昇などもあり、前連結会計年度に比べ増加しました。

 これらの結果、外部顧客への売上高は47,000百万円(前連結会計年度比1.3%増加)となり、セグメント利益(営業利益)は3,652百万円(前連結会計年度比8.4%増加)となりました。

 

(ヘルスフード)

 販売面におきましては、通信販売は、テレビCMを中心に積極的な広告宣伝を実施したことなどもあり、「焙煎ごぼう茶ごぼうのおかげW」をはじめとした新製品の機能性表示食品の売上が好調に推移したことで、売上高は前連結会計年度を上回る結果となりました。他方、ドラッグストアなどでの市販品では、新規開拓やインストアプロモーションの強化を行ったことなどにより、売上高は前連結会計年度を上回る結果となりました。加えて、2024年8月より焙煎ごぼうを主原料としたチョコレート風菓子「GOVOCE(ゴボーチェ)」を、2024年11月よりペットボトルタイプのごぼう茶を販売開始しました。なお、「GOVOCE」はジャパン・フード・セレクションにおいてグランプリを獲得するなど、複数の品評会で受賞しており、マスメディアでもたびたび取り上げられ注目されております。

 生産面におきましては、生産高が増加したことで固定費率が低下しましたが、主要原材料であるごぼうが高値で推移したことにより、製造原価率は前連結会計年度に比べ大幅に上昇しました。

 販売費につきましては、増収に伴う変動費の増加に加え、戦略的な広告宣伝の実施、人件費の上昇などにより、前連結会計年度に比べ増加しました。

 これらの結果、外部顧客への売上高は3,585百万円(前連結会計年度比7.1%増加)となりましたが、セグメント利益(営業利益)は214百万円(前連結会計年度比32.5%減少)にとどまりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ159百万円増加し2,255百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、得られた資金は3,455百万円(前連結会計年度比151.0%増加)となりました。これは、法人税等の支払952百万円などもありましたが、売上債権・棚卸資産・仕入債務を合計した運転資金面での資金増加1,155百万円や、減価償却費1,192百万円、税金等調整前当期純利益の計上2,214百万円などが主な内容となっております。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は763百万円(前連結会計年度比30.6%減少)となりました。これは、生産設備の増強投資・メンテナンス投資、データベースの再構築などが主な内容となっております。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、使用した資金は2,578百万円(前連結会計年度比941.5%増加)となりました。これは、短期・長期借入金の返済による支出(純額)2,222百万円、配当金の支払額188百万円、リース債務の返済による支出134百万円などが主な内容となっております。

 なお、借入金の期末残高は、前連結会計年度末より2,222百万円減少し3,086百万円となっております。

 

③生産、仕入、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度のセグメントの生産実績を製品別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前連結会計年度比(%)

業務用食品等(千円)

23,548,160

106.3

玉子焼類(千円)

15,835,101

112.6

味付かんぴょう・しいたけ類(千円)

4,221,222

100.2

蒲鉾類(千円)

2,213,719

89.0

その他(千円)

1,278,118

91.7

ヘルスフード(千円)

3,848,559

126.9

ごぼう茶関連製品(千円)

3,848,559

126.9

合計(千円)

27,396,720

108.8

 (注)金額は販売価格で表示しております。

 

b.製品仕入実績

 当連結会計年度のセグメントの仕入実績を製品別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前連結会計年度比(%)

業務用食品等(千円)

8,789,553

95.6

玉子焼類(千円)

1,314,634

99.5

味付かんぴょう・しいたけ類(千円)

70,949

100.2

自社企画ブランド品(千円)

6,128,241

94.4

その他(千円)

1,275,727

97.5

ヘルスフード(千円)

92,113

106.4

ごぼう茶関連製品(千円)

92,113

106.4

合計(千円)

8,881,666

95.7

 (注)金額は仕入価格で表示しております。

 

c.商品仕入実績

 当連結会計年度のセグメントの仕入実績を商品別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前連結会計年度比(%)

業務用食品等(千円)

10,684,876

100.6

常温食品(千円)

2,317,600

102.1

冷凍・冷蔵食品(千円)

8,355,993

100.3

その他(千円)

11,283

86.6

ヘルスフード(千円)

19,173

83.0

その他(千円)

19,173

83.0

合計(千円)

10,704,050

100.6

 (注)金額は仕入価格で表示しております。

 

d.受注実績

 当社グループ(当社及び連結子会社)は、主に見込み生産を行っており、受注実績の重要性が乏しいため、記載を省略しております。

 

e.販売実績

 当連結会計年度のセグメントの販売実績を製商品別に示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

前連結会計年度比(%)

業務用食品等(千円)

47,000,378

101.3

玉子焼類(千円)

17,035,305

107.5

味付かんぴょう・しいたけ類(千円)

3,734,436

97.8

蒲鉾類(千円)

2,233,912

92.9

自社企画ブランド品(千円)

7,665,608

95.3

その他(千円)

3,000,800

94.2

製品計(千円)

33,670,063

101.1

常温食品(千円)

3,156,702

104.8

冷凍・冷蔵食品(千円)

10,159,293

100.7

その他(千円)

14,319

95.8

商品計(千円)

13,330,315

101.6

ヘルスフード(千円)

3,585,712

107.1

ごぼう茶関連製品(千円)

3,503,588

107.5

その他(千円)

82,124

92.6

報告セグメント計(千円)

50,586,091

101.7

その他(千円)

459,288

96.4

合計(千円)

51,045,379

101.6

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10に満たないため記載を省略しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態および経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容

a.財政状態

(資産)

 当連結会計年度末の総資産につきましては、前連結会計年度末に比べ743百万円減少し26,897百万円となりました。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ1,053百万円減少し13,763百万円となりました。主な増加要因は、商品及び製品の増加465百万円、売掛金の減少1,429百万円、その他に含まれる為替予約の減少179百万円などであります。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ309百万円増加し13,133百万円となりました。これは、減価償却の進行を上回る取得により有形固定資産が増加したためであります。

 

(負債)

 負債合計は、前連結会計年度末に比べ2,287百万円減少し9,508百万円となりました。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ2,284百万円減少し8,282百万円となりました。主な増減要因は、未払金の増加173百万円、短期借入金の減少2,170百万円、未払法人税等の減少300百万円などであります。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ3百万円減少し1,225百万円となりました。主な増減要因は、繰延税金負債の増加37百万円、リース債務の増加20百万円、長期借入金の減少62百万円などであります。

 

(純資産)

 純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,544百万円増加し17,388百万円となりました。主な増減要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加1,548百万円、為替換算調整勘定の増加155百万円、剰余金の配当による減少190百万円などであります。

 この結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ7.3ポイント増加し64.6%となりました。

 

b.経営成績

 当連結会計年度の売上高は、国内販売におきましては、メニュー提案活動を推進したことやSNSへの積極的な情報発信、フードイベントへの出店など、販促活動を強化したことなどにより、外食チェーンの売上や玉子製品を中心に自社製造製品が伸長するなど、好調に推移しました。他方、ヘルスフードにおきましては、テレビCMを中心に積極的な広告宣伝を実施したこともあり、新製品の機能性表示食品の売上が好調に推移したことで、通信販売・市販ともに前連結会計年度に比べ増加しました。また、海外販売におきましては、中国における水産加工品の輸入停止措置の影響はありましたが、輸出向け製品の品揃え強化を行ったことで北米や香港を中心に需要が拡大した結果、前連結会計年度に比べ増加いたしました。以上より、売上高全体では増収(前連結会計年度比1.6%増加)となりました。

 営業利益は、主要原材料価格の上昇に加え、人件費や物流コストなど諸経費の増加もありましたが、売上高の拡大効果や生産効率の向上に努めたことなどにより、増益(前連結会計年度比14.9%増加)となりました。

 経常利益は、為替差益や持分法による投資利益、長期為替予約評価損の計上などにより、減益(前連結会計年度比2.0%減少)となりました。一方、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益や減損損失の計上もありましたが、増益(前連結会計年度比2.6%増加)となりました。

 

 セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(業務用食品等)

 販売面におきましては、米や海苔などの価格が高騰したことで当社の主力製品を多く使用した巻寿司の需要が後退したことに加え、2022年冬場に大規模発生した鳥インフルエンザの影響で落ち込んだ鶏卵の需要が完全に回復していないなか、2024年冬場にも鳥インフルエンザが流行したことで卵価が大きく上昇するなど、厳しい環境で推移しました。しかしながら、鶏卵の需要を回復するためのメニュー提案活動を推進したことで、「丼用玉子とじ」や、手軽に調理ができるように複数の製品を組み合わせた「キット品」の売上が伸長しました。加えて、SNSへの積極的な情報発信、フードイベントへの出店など、販促活動を強化したことなどにより、外食チェーンの売上や玉子製品を中心に自社製造製品が伸長しました。他方、海外輸出売上高につきましては、中国における水産加工品の輸入停止措置の影響は依然として継続しているものの、輸出向け製品の品揃え強化を行ったことで北米や香港を中心に需要が拡大しました。以上の結果、外部顧客への売上高は増収(前連結会計年度比1.3%増加)となりました。

 利益面におきましては、主要原材料価格の上昇に加え、人件費や物流コストなど諸経費が増加しましたが、増収による効果があったことや、生産効率の向上に努めた結果、セグメント利益(営業利益)は増益(前連結会計年度比8.4%増加)となりました。今後におきましては、営業と開発部門の連携をさらに強化するためにマーケティング部を新設するなど、引き続き需要創造型の営業・開発を推進してまいります。

 

(ヘルスフード)

 販売面におきましては、通信販売は、テレビCMを中心に積極的な広告宣伝を実施したことなどもあり、「焙煎ごぼう茶ごぼうのおかげW」をはじめとした新製品の機能性表示食品の売上が好調に推移しました。他方、ドラッグストアなどでの市販品につきましては、新規開拓やインストアプロモーションの強化を行ったことなどにより、外部顧客への売上高は増収(前連結会計年度比7.1%増加)となりました。

 利益面におきましては、主要原材料であるごぼうが高値で推移したことや、戦略的な広告宣伝の実施、人件費の上昇などにより、セグメント利益は減益(前連結会計年度比32.5%減少)となりました。今後におきましては、環境変化に適した新製品開発を進めるとともに、ごぼう関連製品のさらなる販路拡大に向け、新市場開拓を進めてまいります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源および資金の流動性に係る情報

 当社は、フリーキャッシュ・フローを営業活動により獲得したキャッシュ・フローと投資活動により支出したキャッシュ・フローの合計として定義しております。当社は、フリーキャッシュ・フローを借入金などの負債の返済に充当可能な資金であるとともに、戦略的投資など、事業拡大に充当可能な資金として有用な指標と考えております。前連結会計年度と当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、次のとおりであります。

 

 

前連結会計年度

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

当連結会計年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

キャッシュ・フロー増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

1,376百万円

3,455百万円

+2,078百万円

投資活動によるキャッシュ・フロー

△1,100

△763

+337

フリーキャッシュ・フロー

275

2,691

+2,415

 

 営業活動により獲得したキャッシュ・フローが前連結会計年度より2,078百万円増加し、投資活動に使用したキャッシュ・フローが前連結会計年度より337百万円減少した結果、フリーキャッシュ・フローは前連結会計年度より2,415百万円増加いたしました。加えて、財務活動によるキャッシュ・フローのうち、短期・長期借入金の返済額は2,222百万円(純額)となっており、負債を返済しつつ、経営資源となる資金を確保しております。

 また、現金及び現金同等物につきましては、厳密な目標水準は定めていませんが、事業展開に伴う資金需要への対応、および有利子負債の返済に対して必要十分な額を保有しているものと考えます。

 当社グループの資本の財源および資金の流動性につきましては、持続的な成長拡大のための積極的投資と株主への安定的な利益還元に必要な資金の確保、並びに財務基盤の安定化を目的とし、安定的な営業キャッシュ・フローの創出に努めております。

 当連結会計年度末時点において、株主資本の増加を必要とする資本的支出の予定はなく、運転資金および設備投資資金については、主として自己資金から充当し、必要に応じて金融機関からの借入により調達していく方針です。

 

③重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積りは、過去の実績や最も合理的と判断される前提に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。

 

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【重要な契約等】

 該当事項はありません。

6【研究開発活動】

 近年、食品業界におきましては、顧客ニーズの多様化が進んでおり、安全・安心かつ高品質な製品であることに加え、健康志向も一層高まっております。その一方で、食品ロス削減をはじめとしたSDGsの取組推進など、幅広く、きめ細やかな対応が求められております。

 このような状況の中、当社開発本部では、安全性と美味しさの両立を基本に、当社の独自技術を活かした高付加価値製品の開発を志向しており、近年では賞味期限延長や添加物低減を志向した技術の研究、ならびにごぼうの新たな機能性・用途の研究にも注力しております。

 

 当連結会計年度におきましては、当社の重点施策であります「収益構造改革の完遂」「業務用事業の質的成長と拡大」「ヘルスフード事業、海外事業の成長拡大」「ごぼう事業、市販事業の新たな価値の創造」「経営品質の向上」に基づき、以下の6つのテーマに重点を置いて、研究開発活動を推進してまいりました。

 

 ① ごぼうの基礎研究および製品開発

 ② 美味しさと安心安全に繋がる新技術開発

 ③ 高品質な玉子焼の開発

 ④ 業務用事業、海外事業の成長拡大に寄与する新製品開発

 ⑤ 新市場・新業態に適合した製品の開発

 ⑥ SDGsへの取組

 

 なお、研究開発費につきましては、各セグメントに配分できない基礎研究費用76百万円が含まれており、当連結会計年度の研究開発費の総額は402百万円となりました。

 

(1)業務用食品等

 プロパー製品におきましては、各シリーズの品揃え拡充を図りました。ちらし寿司具材では、日本料理店監修によるこだわりの「具材を味わう釜炊きすし具」、針生姜の風味を活かした「醤油と生姜香るすし具」を製品化しました。また、ご飯にかけるだけの手軽な調理で本格的なメニューに仕上がる簡単キットシリーズでは、「エビトマトクリームのオムライスキット」、「オムバターチキンカレーキット」を製品化しました。さらに、若鶏のおつまみシリーズでは「若鶏のおつまみせせり炭火焼」、「若鶏のおつまみ炭火焼ハラミ」を、デザートでは「かりんとうたい焼き(粒あん・カスタード味)」を製品化しました。その結果、15アイテムを開発し、市場へ投入しております。

 他方、顧客限定製品におきましては、生産部門や営業部門と適切な連携を取りながら効率的かつ確実な顧客要望の把握を行い、開発精度の向上と納期の短縮に注力してまいりました。その結果、42アイテムを開発し、市場へ投入しております。

 

 これらの活動の結果、業務用食品等に係る研究開発費は259百万円となりました。

 

(2)ヘルスフード

 ヘルスフード市場におきましては、味や香りなど食品としての基本的な品質だけでなく、健康に良いとされる機能性も備えた付加価値の高い製品の需要が年々高まっております。当社では、特にごぼうの機能性に着目し、基礎研究および応用開発を推進してまいりました。当連結会計年度においては、新たに3アイテムを開発し、市場へ投入いたしました。

 ドラッグストアなどの市販向け製品におきましては、食物繊維のイヌリンを豊富に含むごぼうと菊芋に、食後血糖値の上昇抑制に有効とされるサラシアを配合した機能性表示食品「菊芋ごぼう茶サラシアブレンド」を発売いたしました。

 他方、通信販売向けと市販向けの共通製品におきましては、14年の開発期間を要して実現した手軽に飲めるペットボトルタイプの「おいしい!ごぼう茶」に加え、前連結会計年度に実施したクラウドファンディングのテスト販売にて好評を博した、カカオ不使用のチョコレート風菓子「GOVOCE(ゴボーチェ)」を製品化し、発売いたしました。

 

 これらの活動の結果、ヘルスフードに係る研究開発費は67百万円となりました。