第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当グループは、企業理念「フジッコの心」において私たちの目指す姿を「自然の恵みに感謝し 美味しさを革新しつづけ 全ての人々を元気で幸せにする 健康創造企業を目指します」としており、全社一丸となってその実現に取り組んでまいります。また、企業理念の下で成長戦略と効率経営の両輪を力強く推進し、企業価値の更なる向上に注力してまいります。

 

(2)経営環境

 当グループは、食品業界における惣菜製品、昆布製品、豆製品、ヨーグルト製品、デザート製品、その他製品の製造・販売を主な事業としております。

 食品業界は、生活必需品のため景気変動の影響を受けにくい特性がありますが、少子化に伴う人口減少により国内市場は量的に縮小傾向にあり、競争環境は厳しさを増しております。また、原材料や物流費等の高騰について収束の見通しが立たず先行き不透明な状況が続いております。

 調達・生産面では、原料や物流コストの上昇に対し一層の合理化・効率化が求められております。

 開発面では、多様化する消費者ニーズや新しいトレンドへの対応が求められております。

 流通面では、コンビニエンスストアやインターネットアプリを利用した宅配サービスの伸長等、消費者の流通チャネルの選択が多様化しており、従来のスーパーマーケット主体の販路に固執することなく、成長チャネルを深耕していくことが必要と考えております。

 人事面では、人材の流動性が高まる環境の中、自発的かつ創造的な提案が活発に生まれてくる組織風土の醸成と人材育成により、働きがいやエンゲージメントの高い状態をつくることが求められております。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 このような環境の中、当グループにおきましては2025年度を初年度とする「2025-2027中期経営計画」がスタ―トいたしました。本中期3か年は、『フジッコ2030』ビジョン実現に向けた持続可能な成長基盤を形成する重要な期間として位置付け、基本方針「従業者の力を結集させ、お客様と共に昆布と豆の未来を創造する」を掲げ、4つの基本戦略「コアビジネスの事業強化と領域拡大」・「圧倒的な競争優位性の確保」・「効率経営の追求」・「経営基盤の強化」を実行してまいります。

 定量目標につきましては、2028年3月期の連結売上高600億円台、連結営業利益率5%以上、当期純利益率3%台、PBR1.0倍、ROE3%の達成を目指してまいります。

 

 「2025-2027中期経営計画」のポイントは以下のとおりであります。

① コアビジネスの事業強化と領域拡大

 昆布・豆・ヨーグルトを中心とした開発強化に取り組みます。

 ・自社技術の強みを生かした周辺商品開発

 ・既存品リフレッシュによる商品価値向上

 ・周辺新領域の開発

1)昆布

 高収益の維持と持続的成長へ

 ・産地と連携した昆布資源の保全

 ・原料貯蔵技術の革新による品質向上

 ・価値販売による適正利益確保

2)豆

 リソースを集中させてV字拡大と収益回復を実現

 ・顧客セグメンテーション毎の商品開発

 ・工場稼働率を高めて収益性改善

 ・大豆でフレイル予防啓発

3)ヨーグルト

 持続的成長ドライバーを担い、第3の柱を目指す

 ・独自性の高い商品でファンを増やしシェア向上

 ・新商品の検討・開発

 ・グローバル展開による事業拡大

 

② 圧倒的な競争優位性の確保

 3つの競争力を高め、ブランド価値の強靭化を図ります。

1)お客様満足度向上(商品力)

 ・ブランド価値指標に、購入ロイヤルティ・購入率・リピート率を置き、3つの最適バランスと向上を追求

 ・DXを駆使したお客様ニーズの把握

 ・アジャイル開発を可能とする新しい連携体制

2)イノベーション

 ・新しいエビデンス基礎研究からの事業強化

 ・研究開発投資効率の追求

3)原料調達力強化

 ・“資材BCP”に取り組み、良質・安価・安定の資材調達を実現

 ・グローバル調達と産地深耕を両立

 ・新原料開拓・開発により事業をサポート

 

③ 効率経営の追求

 事業ポートフォリオの再構築を通じて成長スピードと稼ぐ力を取り戻すことが急がれます。昆布は高収益を維持し、豆は再成長からの稼ぐ力の復元、ヨーグルトは成長を加速、おかずは収益性の修復、通販・素材・海外は膠着状態から脱し、それぞれの事業課題の早期解決に取り組んでまいります。

 

④ 経営基盤の強化

 社会価値と経済価値を両立したサステナブル成長とともに、健全経営と内部留保の充実に努め、最適資本配賦バランスを保ちながら株主の皆様へ利益還元を実現します。

1)DX推進

 ・商品開発スピードアップのための支援

 ・品群収支管理会計の高度化

 ・デジタルビジネス変革基盤の整備(風土醸成・環境構築・人財育成)

2)人的資本経営

 ・組織人事

 ・DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)

 ・働きがい改革

3)サステナビリティ

 ・社会と会社のサステナビリティの同時実現

 ・3つの非財務資本エンゲージメント(お客様・パートナーシップ・自然環境)

4)資本政策

 ・株主還元充実:安定配当(年間配当金46円以上)

 ・財務体質強化:営業キャッシュフローの最大化

         財務レバレッジ

 ・成長投資  :持続的成長に繋がる研究開発投資及び設備投資

         M&Aの実行

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

当グループはサステナビリティ基本方針でトップコミットメントを表明しております。その中で、社会価値と経済価値の両方の創出を同時実現させることを目指している旨を明記しており、この取り組みを推進するため、当グループでは理念実践経営の体系を整備しております。

(サステナビリティ基本方針)

フジッコグループは、企業を取り巻く社会環境の変化や社会的課題を中長期的な視点で捉え、フジッコ独自のサステナブル経営として“5つの健康”を打ち出しております。

サステナブル経営の実現のためには、従業者自らが変化し変革を受け入れる姿勢と、共通の価値観である組織風土の変革が必要不可欠と考えております。

企業理念のもと、「社会のサステナビリティ」としてESGを自律的に推進し社会価値を創出することと、「企業のサステナビリティ」として資本コストを意識した持続的な稼ぐ力の発揮で経済価値を創出することの両方を同時実現させることを目指してまいります。

「健康創造企業」として、フジッコ独自の商品とサービスの提供を通じて切実な社会的課題を解決し、お客様からの信頼を築き上げ、その結果として、不確実な時代に生き残るための強靭な事業ポートフォリオを形成してまいります。

自社の価値観として、フジッコのパーパス「5つの健康」(健全経営、健康経営、健康提供、健康社会、地球健康)を置き、すべてのステークホルダーにとっての「健康創造企業」となることを目指しております。「5つの健康」のうち地球健康と健康経営は、サステナビリティの中でもとりわけ重要として扱われる「気候変動」及び「人的資本・多様性」との関係性が強いため、当該2つの健康については取り組み状況を整理のうえ、詳細に開示しております。

 

(2)ガバナンス

当グループは、サステナビリティ基本方針に基づき活動を推進するため、取締役会をサステナビリティに関するリスクと機会の監視・管理に責任を持つガバナンス組織としております。当グループは、サステナビリティをはじめ経営に関する重要事項については経営執行会議で社内協議のうえ取締役会に報告する体制を築いております。(体制図は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。)

なお、取締役会が適切な監視・管理を行うため、3月に開催する取締役会で、サステナビリティに関する一年間の取り組みを報告することを基本としつつ、適宜、次のような議案を上程し、報告・審議を行っております。(「サステナビリティ活動報告の件」「「フジッコレポ―ト(統合報告書)」の開示の件」「原藻昆布購買計画の件」「原穀契約方針の件」「リスクマネジメント委員会・コンプライアンス委員会の活動報告の件」)。また、取締役会に対するけん制機能を有する監査等委員会は、サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する報告を取締役会で受け、サステナビリティ関連のリスクを機会として捉えるパラダイムチェンジを促すなど適宜助言をしております。

当社の取締役会は「リスクマネジメント」スキルを有した取締役が選任されておりますが、現時点では取締役のスキル・マトリックスに「サステナビリティ」スキルは含めておらず、取締役のサステナビリティに関するスキルや能力の保有状況は評価しておりません。しかしながら、既にサステナビリティにかかる担当取締役はSDGs推進委員会委員長として指名しており、SDGs推進委員会ではサステナビリティに関する機会を所管し、サステナビリティ全体の戦略策定やマテリアリティの進捗管理を実施しております。したがいまして、今後はトレーニングを重ねたうえでスキルのひとつとして加えてまいります。また、サステナビリティに関するリスクについては、リスクマネジメント委員会及びコンプライアンス委員会が所管し、委員会から経営執行会議へ報告・審議のうえ、毎年2回取締役会に報告することを基本としております。

 

各組織体の役割

組織体

当事業年度における開催頻度

役割

責任者

取締役会

13回

毎月1回の定期開催を基本とし、必要に応じて臨時に開催しております。法定決議事項のみならず、企業価値向上に資する会社の重要な意思決定や業務執行のモニタリング等を行っております。

代表取締役(議長)

監査等委員会

13回

監査等委員会設置会社を採用し、必要に応じて取締役会に対するけん制機能を有しております。

常勤監査等委員(委員長)

リスクマネジメント委員会

2回

当グループが抱えるリスクを評価、予防し、制御する役割を果たしております。

代表取締役社長執行役員

コンプライアンス委員会

2回

当グループにおける横断的なコンプライアンスリスクの把握、分析を目的とし、倫理基準並びにコンプライアンス・ガイドラインを通じて、法令遵守、企業倫理の維持の重要性を従業者に周知しております。

代表取締役社長執行役員

人権マネジメント推進委員会

2回

当グループにおける人権尊重の取り組みを統括・推進する組織体として設置しております。

取締役上席執行役員(人財担当)

SDGs推進委員会

12回

当グループにおける事業機会を評価・特定の上、持続可能な企業経営につながる取り組みを執行部へ落とし込み、活動を推進しております。

取締役上席執行役員(生産担当)

 

(3)リスク管理

当グループでは、事業部門によるボトムアップで過去に洗い出したリスク情報を元に、発生の頻度及び発生時の影響度から重要なリスクを特定し、管理しております。リスク評価では、発生の頻度及び発生時の影響度をそれぞれ5段階で評価しており、発生の頻度の定量的閾値には「5:年に数回以上、4:年に1回、3:数年に1回、2:十数年に1回、1:20年~50年に1回以下」を、発生時の影響度には「5:10億円以上、4:1億円~10億円、3:3,000万円~1億円、2:500万円~3,000万円、1:500万円以下」を設定しております。また、リスク管理プロセスにおいては、リスクマネジメント委員会及びコンプライアンス委員会を設置しており、各委員会から経営執行会議へ報告・審議され、毎年2回取締役会に報告することを基本としております。

一方、サステナビリティに関する機会を管理する機関としてSDGs推進委員会を設置しております。当委員会では、当グループが特定した8つのマテリアリティに基づき、それぞれ各事業体が識別した機会に対応した取り組み課題を設定しております。それらの課題解決及び進捗管理を当委員会が行っており、当事業年度は委員会を12回開催いたしました。

これらの管理プロセスを経て特定したリスクと機会は、各委員会から経営執行会議で報告・審議のうえ取締役会にも報告、またモニタリングを受ける体制をとることにより当グループの全体的なリスク管理プロセスに統合されております。

 

(4)戦略、指標及び目標

当グループは、経営環境の変化に適応し、適宜マテリアリティの見直しを行っております。2024年度を最終年度とする中期3か年計画の開始にあたり、気候変動への対応、人権尊重の責任、従業員エンゲージメントの向上など当社を取り巻く環境の変化を忠実に捉え、マテリアリティ(重要課題)の見直しを行いました。見直しにあたっては、社内取締役による協議と取締役会での議論を重ね、8項目の特定に至りました。さまざまな取り組みを通じて、理念実践経営を実現してまいります。

 

フジッコ・マテリアリティと取り組み課題

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(5)気候変動

(気候関連財務情報開示タスクフォースTCFD提言に基づく情報開示)

①ガバナンス

当グループは事業等のリスクの内、気候変動に関する課題は企業の持続的成長を求める当グループにとって重要な経営課題と認識しており、2022年4月、リスクマネジメント委員会の専門チームとして「TCFD検討チーム」を設置いたしました。気候変動シナリオの検討と、そのシナリオに基づきリスクの特定及び対応方針を明確にし、リスクを所管する関連部門と協議のうえ、毎年見直しを実施してまいりました。現在はその活動をリスクマネジメント委員会に委ね、引き続きリスクマネジメント委員会から経営執行会議へ報告・審議され、毎年2回取締役会に報告することを基本としております。

以上より、取締役会が監督する体制が構築されております。

 

②戦略

当グループでは気候変動に関する物理的リスク・移行リスクと機会を下記のとおり整理し、2℃シナリオを想定する移行リスクでは炭素価格の高騰が事業への大きなインパクトに、4℃シナリオを想定する物理的リスクでは異常気象の激甚化による原材料の安定確保が事業へ大きなインパクトを与えることが判明しました。これに対して、原料の産地分散や気候変動に耐えうる品種改良の取り組み、あるいは環境に配慮した容器開発を進めることが機会の創出につながると考えております。今後も、継続的にリスク・機会の見直しや対応策の具体化を進め、経営戦略に反映してまいります。なお、特定したリスクと機会に対する取り組みについては優先順位を設けておらず、リスクマネジメント委員会において各々の取り組みについての進捗管理を行っております。

 

気候変動に関するリスクと機会

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③リスク管理

当グループでは、リスクマネジメント委員会が気候変動リスクを含めた全社的なリスクの洗い出しを行い、リスクが事業へ及ぼす影響度や発生頻度からリスクレベルを総合的に評価し、リスク対応課題やリスク対応方針について検討しております。ここで特定された重要リスクへの対応方針は、リスクを所管する関連部門と協議のうえ、毎年見直しを実施しております。なお、当グループにおける機会の識別・評価・管理は、SDGs推進委員会が主体となって包括的に検討しております。

当グループでは、気候変動リスクを重要な事業等のリスクと認識し、リスクマネジメント委員会及びSDGs推進委員会それぞれから、対応方針に基づく取り組み状況が経営層に共有される体制を整備しております。

 

④指標及び目標

当グループは、気候変動に関連する指標をCO₂排出量として、Scope1、2についての実績を開示しております。CO₂排出抑制に向けて、2030年までに30%削減、2050年にはScope1、2でのCO₂排出実質ゼロを目標としております。太陽光発電の設置やCO₂フリー電力の購入、ブルーカーボンと言われる昆布の養殖に積極的に取り組むなど、地球環境に配慮した政策を段階的に進めてまいります。

なお、当事業年度におけるScope3は開示できておりませんが、現在連結子会社を含めた算定作業に取り掛かっており、開示が可能となった時点で早期の情報開示を目指しております。

 

気候関連指標

気候関連指標

目標

CO2排出量(Scope1+2)

2030年度までに30%削減

(基準年:2020年度)

ワンウェイプラスチック使用量

2030年度までに25%削減

(基準年:2019年度)

昆布養殖技術の実用化

2030年度までに達成

 

 

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詳細については2025年6月発行の統合報告書「フジッコレポート2025」をご参考ください。

https://www.fujicco.co.jp/corp/sustainability/report/

 

(6)人的資本・多様性

当グループでは、性別や国籍に関係なく能力や人物本位の人財登用を実施しております。持続的な成長と企業価値の向上のために、多様性を重視し、心理的安全性の高い職場で、一人ひとりが自分らしさを発揮して働ける環境整備に努めております。

 

①戦略

(人財育成方針に関して)

当グループでは、企業理念のひとつ「私たちの目指す姿」に掲げる『自然の恵みに感謝し 美味しさを革新しつづけ 全ての人々を元気で幸せにする』を、まずは従業員が実現することがフジッコのパーパス「5つの健康」の具現化と考え、2024年3月に人財育成方針を策定いたしました。本方針の策定に際しては、「一人ひとりの個性と能力を尊重することがイノベーションの促進、生産性の向上、新たな価値創造につながる」として2023年に制定したダイバーシティ宣言を基盤としました。

なお、人財育成方針は以下の考えに基づいております。

1)年代別キャリア開発研修を継続し、一人ひとりのキャリア自律を支援いたします。

2)『自然の恵みに感謝する心』を大切にし、従業員が豆や昆布に対する関心を深めることで、生産者や産地、ひいては地球環境に思いを馳せ、パーパスの「地球健康」に貢献する活動を意識するように促します。それに関わる当社独自の検定(まめこん検定)の実施も積極的に推進してまいります。

3)論理的思考力やデジタルリテラシーの向上を促進するための研修を実施し、生産性の向上や多様性を含むコミュニケーションの促進を図ってまいります。

これら全ての根幹として2024年より「パーパス・ビジョン実現プロジェクト」を推進し、多様でありながらも共有する想いが持てるように取り組みを進めてまいります。

(フジッコ人財育成方針)

フジッコは、個人の強みとチームの多様性を最大限に活かすことで、イノベーションを生み出し、食を通じて社会課題の解決に取り組む『健康創造企業』を目指しています。

そのために、一人ひとりの従業員がキャリア自律によって自己成長を実感しながら、基本となる『豆』や『昆布』の知識を深め、『論理的思考力』『未来構想力』『デジタルリテラシー』などのスキルが身につけられる環境を提供します。

そして、新しい価値を創造する想いと力を発揮できるような人財育成を行います。

 

 

(社内環境整備方針に関して)

人財育成方針に基づく活動を推進するためには、人財投資についても積極的に行い、従業員エンゲージメントを高め、従業員全員の多様な能力から生まれる活力を結集することが必要不可欠であると考えております。そのため当社では、人財育成のため入社以降定期的に研修を実施し、従業員のスキルアップ・キャリア構築に取り組んでおります。教育研修の体系は、「全従業員共通」、「役割・階層別」、「課題別」に分けて階級(ステージ)や入社年数によって整理し、従業員ごとにさまざまな研修プログラムを用意しております。また、賃金の引上げについても、世間動向を見据えて給料及び賞与のベースアップを継続して行い、待遇における不公平感、不満を可能な限り取り除き、成果を上げた人にはしっかりと報えるようなメリハリある報酬体系を構築し、従業員の満足度向上に取り組んでおります。

従業員一人ひとりが持つ個性と才能を最大限に発揮できる環境づくりを行い、また心理的安全な風土のもとで率直かつ真摯な対話を行い、食を通じて社会課題の解決に努めること、これらによって持続的に企業価値を向上させることに注力してまいります。

 

②指標及び目標

当グループは、人的資本及び多様性にかかる課題に対応するため、従業員エンゲージメントの向上に取り組んでおります。人財育成方針に基づき、「論理的思考力」「未来構想力」「デジタルリテラシー」などのスキルを身につけるための教育研修体系、報酬体系、社内環境の3つの整備を重点的に進めており、具体的には以下の指標と目標を設定の上、サステナビリティを推進しております。これら指標及び目標は提出会社(提出会社からの出向者を含む。)の集計となります。なお、フジッコNEWデリカ株式会社の従業員の殆どは提出会社からの出向者であるため、提出会社の指標及び目標はフジッコNEWデリカ株式会社の取り組みも考慮したものとなっております。

株式会社フーズパレットの人事給与システムは提出会社と別のシステムを使用しているため、情報を連携できず連結グループでの運用・管理が困難な状況にありますが、取り組み内容はお互いに共有しており、連結グループとして推進すべき課題の共通認識はできていると考えております。また、将来的にシステムの統合を図っていく必要があることは認識しております。

 

ダイバーシティ指標

ダイバーシティ指標

現状(65期)

目標(71期

女性役員比率(社外取締役を含む。)

22.2

30

女性管理職比率(注)

9.1

16

中途採用比率(内、管理職比率)

37.1(21.2%)

25%(25%)

障がい者雇用率

2.50

3% ※法定雇用率以上

男性育休取得率(休暇含む。)

85.7

100

(注)当グループにおける管理職の定義は、執行役員・部長職・部長補佐職・課長職とし、取締役・特定社員及びエキスパート職は除いております。なお、「第1 企業の概況 5 従業員の状況」に記載の管理職に占める女性労働者の割合は提出会社のみ(提出会社からの出向者を含まず。)の情報を記載しております。

 

健康経営指標

健康経営指標

現状(65期)

目標(71期

1人当たり年間総労働時間

2,035時間

1,940時間

月間平均残業時間

14.79時間

5時間

有給休暇取得率(付与日数対比)

61.3

100

健康診断受診率

100

100

健康診断有所見者率

73.1

55.5

適正体重者率(BMI18.5以上25未満)

63.7

75.0

喫煙率

17.3

9.0

ストレスチェック受検率

100

100

総合健康リスク(注)

95

90

高ストレス者率

17.9

10.0

健康経営優良法人(大規模法人部門)認定

認定済

継続認定

(注)総合健康リスクとは、職場におけるストレス要因が従業者の健康に与える影響の大きさを示す指標のことで、ストレスチェックの結果を基に算出されます。基準値を100として、数値が低いほどリスクが低いことを示します。

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、以下の記載内容及び将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当グループが判断したものであります。

リスク項目

リスクの説明

リスク対策

食品の安全性の

問題

食品業界におきましては、消費者の品質に対する要求は一段と高まってきております。社会全般にわたる一般的な品質問題等が発生した場合、又は当グループ固有の品質問題と直接関係がない場合であっても、風評などにより当グループの経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。

当社では、品質保証部を中心として「ポジティブリスト制」の対応とともに、残留農薬検査システム、遺伝子組み換え検査システム、製品履歴を管理する「フジッコトレースシステム」を早くから運用してまいりました。また、「安心・安全操業」を第一に製品事故の撲滅を目的とした「事故防止委員会」の設置など新・品質保証体制の強化に努めております。

有事の際には、危機管理委員会を開催し、「製品回収マニュアル」等に基づき、対応方針等について決定の上、ホームページ上に適宜情報開示を行います。

自然災害

当グループは、大規模な自然災害の発生により、生産一時休止、物流網の混乱等が生じて商品供給が滞り、業績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

大規模な災害発生の際には、直ちに対策本部を設置し、従業員の安否確認、生産・供給体制の整備を速やかに行います。また、当グループで災害発生による損害が発生した場合、いち早く事業を復旧するため、適宜、事業継続計画(BCP)に基づく訓練の実施、計画そのものの見直しを行っております。

原材料の調達及び

価格の変動

当グループの取扱製品の主原料である昆布、豆は、主に北海道等国内産のものを使用しておりますが、産地の天候等により生産量及び価格が変動し、当グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、当グループは、原材料の一部を海外から調達しており、中長期的な為替変動は、当グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。

主原料である昆布、豆は、在庫の備蓄により価格変動リスクを可能な限り抑えております。また、原料産地の複数確保、主産地との協働取り組み、将来を見据えた新たな原料開発等を進めております。為替変動リスクについては、為替予約を行う商社の活用や長期契約による購入価格の安定化に取り組み、リスク緩和に努めております。

製品や原材料等の配送

当グループは、全国の販売先にチルド便や常温便を使って製品を配送しており、また、原材料等の調達においても常温便やチルド便等を使用しております。これらの配送は、異常気象や交通事故等の要因による遅延や未着等のリスクがあります。また、ドライバー不足等に起因する物流コストのさらなる上昇が予想されます。

当グループでは、これらのリスクに対応するため、一定の製品在庫を保有し、また、最適な配送ルートを探索するように努めております。物流費の高騰に対しては、物流ロジスティクスに関するSCM部が中心となって、積載効率の向上、共同配送、物流DX等の取り組みを進めております。

保有有価証券の

価格変動

当グループは、売買を目的とした有価証券は保有しておりませんが、取引関係の維持・強化を目的として主要取引先の株式を所有しております。

これらの有価証券のうち、市場価格のあるものについては、全て時価にて評価されており、著しい価格変動等があれば、当グループの業績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

保有有価証券については、取締役会において個別銘柄の継続保有の適否の検証を行っており、段階的に保有する銘柄数及び株式数の縮減を進めております。

法的規制などの影響

当グループは、事業活動を展開する上で様々な法的規制を受けております。

しかしながら、法的規制を遵守できない場合の事業活動の制限に加え、諸外国における輸出入規制をはじめ、法的規制の新たな強化などによる事業活動の制限の可能性があり、当グループの業績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

様々な法的規制について、各主管部門と法務や知財の担当部署が連携し、関連諸法規の遵守に万全の体制で臨んでおります。また、コンプライアンス委員会を設置し、日常の教育・研修の体系化に加え、コンプライアンスにかかる本部・事業別取り組み状況、不正行為等を共有の上、不正の兆候を確認し、重大な不正を未然に防止する機能を強化しております。

 

リスク項目

リスクの説明

リスク対策

情報漏洩・システム管理に関するリスク

災害によってソフトウェアや機器が被災した場合のシステム作動不能や内部情報の消失、想定を超えた技術による不正アクセスや予測不能のコンピュータウイルス感染などによって、システム障害や情報漏洩、改ざんなどの被害を受ける可能性があります。このような事態が発生した場合、当グループの業績・財政状態や社会的信用に影響を及ぼすリスクがあります。

当グループは、販売促進キャンペーン、通信販売等により多数の個人情報をコンピュータにより管理しております。これらの重要な情報の紛失、誤用、改ざん、システム上のトラブルなど、万一の場合に備えて適切な保守・保全の対策を講じております。また、システムダウンについては、コンピュータウイルス感染対策としてウイルスソフトの定期更新、ウイルスメール教育テストの実施、サーバー故障対策としてクラウド化による代替サーバーの設置、定期的なバックアップを講じております。

特定の販売チャネルへの依存

当グループの主要な販売チャネルはスーパーであります。直近の多様な流通チャネルの出現により、新興チャネルの台頭が進んだ場合、当グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。

当グループは、コンビニエンスストア、ドラッグストア、通信販売、業務用食材等の販売チャネルの拡大に取り組み、販売チャネルの分散化に注力しております。

また、人口減の進行による国内市場の縮小が予想され、海外市場の開拓を推進しております。

人手不足

当グループは、親会社における7つの工場と、生産機能を持つ2つの子会社で製品を製造しております。年々、工場作業員の確保に苦慮しており、人手不足からの時給単価の上昇に起因する人件費負担の増加が当グループの業績に影響を及ぼすリスクがあります。

当グループでは、従来、人が行っていた作業を機械に置き換える生産ラインの省人化を進めております。これまでは比較的単純な工程の省人化が中心でしたが、AIやロボットの技術革新により、複雑な作業も機械化できるようになりつつあり、今後はとくに人手がかかっている日配惣菜の計量ライン等でのロボット化を進めてまいります。

人権リスク

原材料の調達から製品の製造、販売に至るまで、多くの人が関与しており、従業員や取引先等に対する人権の尊重が損なわれるようなことがあれば、企業としての社会的責任を果たせず、お客様をはじめとするステークホルダーからの信頼を失うリスクがあります。

当グループでは、従業員への人権の尊重、公正・適正な処遇をさらに推進するため、「フジッコグループ人権方針」を制定・開示し、「人権マネジメント推進委員会」を発足して人権デュー・デリジェンスを進めております。また、取引先との公正・適正な取引を継続するため、「フジッコグループ調達方針」並びに「フジッコグループサプライヤーガイドライン」を定め遵守しております。

新型ウイルス等の感染症の拡大

当グループは、新型ウイルス等の感染拡大により、生産一時停止、物流網の混乱等が生じて商品供給が滞り、業績や財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

平時より一人ひとりの基本的感染対策を行っております。発症までの期間が長い感染症の拡大や治療方法が確立されていない新型ウイルスが発生した場合には、直ちに対策本部を設置し、従業員の健康状態の確認とともに、従業員の安全を配慮した生産・供給体制の整備を速やかに行います。

気候変動の影響

地球温暖化に伴う気候変動が生態系や自然環境に影響を与え、社会にも多大な影響を及ぼしつつあります。当社商品の主原料は昆布や豆をはじめとする農水産物であり、生産地で気候変動の影響による不作が生じた場合、販売機会損失等のリスクがあります。

当社は、計画的な購買や複数企業からの購買によって原材料等の安定的な調達に努めております。また、気候変動におけるリスクの特定、評価、対応等についてはリスクマネジメント委員会で検討しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあり、緩やかに回復することが期待されたものの、通商政策など欧米の政策動向による影響や金融・資本市場の変動等により、依然として先行き不透明な状況が続きました。

 食品業界におきましては、物価高騰による消費者の節約志向が高いままで推移しており、厳しい経営環境となりました。

 このような環境の中、当グループにおきましては、市場が縮小傾向にある煮豆製品の再浮上と昆布製品のさらなる強化、ヨーグルト製品の新規顧客獲得等に取り組みました。原材料高騰への対応としては、9月に昆布製品、豆製品、惣菜製品、デザート製品の価格改定を行い、購買を動機付けるプロモーションを強化する方針で進めました。

 販売面では、全ての製品分類が前年実績を上回りました。特に豆製品、ヨーグルト製品、昆布製品が伸長し、売上高は570億77百万円(前期比2.4%増)となりました。

 利益面では、プロモーションの強化により売上高は増加したものの、費用対効果の点では十分な成果といえず、原材料を始めとする各種コストの上昇を吸収しきれなかったため、営業利益は11億31百万円(前期比26.1%減)、経常利益は、15億54百万円(前期比17.4%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券の売却による収入がある一方、浜坂工場の閉鎖に伴う減損損失4億95百万円の計上等により、9億51百万円(前期比14.3%減)となりました。

 

(製品分類別の売上高の状況)

 惣菜製品は、前年実績を上回りました。調味食品や百貨店販売を中心とする中華惣菜等が苦戦を強いられましたが、新規開拓を進めた日配惣菜や育成に注力している包装惣菜「おばんざい小鉢」は伸長しました。

 昆布製品は、主力である「ふじっ子煮」や塩こんぶが好調に推移し、前年実績を上回りました。「ふじっ子煮」は4月から6月及び9月から10月に次世代ユーザーの認知率向上とトライアル促進を狙ったTVCMを放映し、12月から2月にかけては「よろこんぶキャンペーン」を実施いたしました。また、減塩ニーズに対応した新商品として3月より「ふじっ子煮MIRAI 減塩ごま生昆布」「ふじっ子煮MIRAI 減塩しそ生昆布」を販売しております。塩こんぶは、大容量タイプが伸長しました。

 豆製品は、「おまめさん豆小鉢」が全体を牽引し、前年実績を上回りました。「おまめさん豆小鉢」は、食卓における登場頻度を高めるため、そのまま出せて便利な価値を訴求するTVCMを5月から6月にかけて放映いたしました。また、豆を毎日の食事にプラスする「体がよろこぶEveryday Beans!」活動の一環として、1月から3月までディスプレイコンテストを実施し、豆を使ったあらゆる食シーンの提案を行いました。また、3月より、朝食で簡単にたんぱく質を摂取できる新商品として「朝のたんぱく おまめさん 7品目の味わいやさい豆」「朝のたんぱく おまめさん 7品目の味わいひじき豆」を販売しております。

 ヨーグルト製品は、前年実績を上回りました。「カスピ海ヨーグルト」は、新規顧客獲得を狙った菌活マッチングキャンペーンと「とろぉ~もっち食感」を表現したTVCMの放映を展開し、販売を伸ばしました。「まるごとSOYカスピ海ヨーグルト」は、植物性ヨーグルト特集としてメディアに取り上げられ、販売を順調に伸ばしました。

 デザート製品は、前年実績を上回りました。「フルーツセラピー」は、「キャンベルグレープ」が売上の底上げに寄与し、前年実績を上回りました。

 

 

(財政状態の分析)

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ10億47百万円減少し、794億29百万円となりました。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ3億58百万円増加し、345億42百万円となりました。これは主に、昆布の高騰に伴い棚卸資産が増えたこと等によるものです。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ14億5百万円減少し、448億87百万円となりました。これは主に、有形固定資産の減損処理や減価償却が進んだこと、更に投資有価証券を減損処理したことによるものです。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ6億31百万円減少し、87億99百万円となりました。これは主に、未払金の減少等によるものです。

 固定負債は、前連結会計年度末と同水準の20億33百万円となりました。

 純資産は、前連結会計年度末に比べ4億27百万円減少し、685億96百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加と、配当による利益剰余金の減少があったことによるものです。

 自己資本比率は、前連結会計年度末の85.8%から86.4%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ3億52百万円増加し、116億92百万円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益12億58百万円、減価償却費34億77百万円の計上、法人税等の支払5億71百万円等により、44億85百万円の収入(前連結会計年度は28億円の収入)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却5億33百万円の収入がある一方で、有形固定資産の取得31億19百万円等があり、28億19百万円の支出(前連結会計年度は34億23百万円の支出)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、主に配当金の支払により、13億13百万円の支出(前連結会計年度は13億11百万円の支出)となりました。

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。

分類

金額(百万円)

前期比(%)

惣菜製品

19,133

100.7

昆布製品

16,232

102.4

豆製品

10,545

105.7

ヨーグルト製品

6,639

101.8

デザート製品

2,699

103.1

その他製品

2,224

118.5

合計

57,475

102.9

(注)上記金額は、販売価格により表示しております。

 

b.受注実績

 当グループは、市場動向の予測に基づく見込生産を行っており、受注生産は行っておりません。

 

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

分類

金額(百万円)

前期比(%)

惣菜製品

19,064

100.0

昆布製品

15,917

101.3

豆製品

10,483

105.4

ヨーグルト製品

6,759

104.5

デザート製品

2,715

102.3

その他製品

2,138

114.5

合計

57,077

102.4

(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

㈱日本アクセス

7,946

14.3

8,231

14.4

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度におきましては、創業の原点といえる昆布製品と豆製品の強化に取り組みました。

 当グループの2024年度末(2025年3月31日)の財政状態につきまして、以下のとおり分析しております。

 総資産は、前連結会計年度末に比べ10億47百万円減少し、794億29百万円となりました。これは主に、有形固定資産の減損処理や減価償却が進んだこと、更に投資有価証券を減損処理したことによるものと分析しております。

 負債合計は、前連結会計年度末に比べ6億19百万円減少し、108億33百万円となりました。これは主に、未払金の減少によるものであります。

 純資産は、前連結会計年度末に比べ4億27百万円減少し、685億96百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加と、配当による利益剰余金の減少があったことによるものであります。

 当グループの経営成績につきまして、2024年度の達成状況は以下のとおり分析しております。

指標

2024年度

(期初計画)

2024年度

(修正計画)

2024年度

(実績)

2024年度

(期初計画差)

2024年度

(修正計画差)

売上高

58,500百万円

56,800百万円

57,077百万円

△1,422百万円 (97.6%)

277百万円 (100.5%)

営業利益

2,000百万円

1,000百万円

1,131百万円

△868百万円 (56.6%)

131百万円 (113.1%)

経常利益

2,250百万円

1,400百万円

1,554百万円

△695百万円 (69.1%)

154百万円 (111.0%)

親会社株主に帰属する

当期純利益

1,550百万円

1,000百万円

951百万円

△598百万円 (61.4%)

△48百万円 (95.2%)

 当グループは、原材料の高騰が継続する中、2024年9月より昆布製品、豆製品、惣菜製品、ヨーグルト製品、デザート製品の価格改定を行いました。しかし、製品値上げによる販売数のマイナス影響を、広告宣伝投資の強化でカバーする方針としましたが、リベート等の負担の増加や広告宣伝投資に見合う売上高の確保ができず、2025年1月に業績予想の修正を行っております。昆布製品、豆製品、ヨーグルト製品は、プロモーション実施により計画以上に伸長し、売上高は修正計画に対して2億77百万円の増加(計画比0.5%増)となりました。

 利益面では、9月の価格改定とそれに伴う販売の減少を防ぐための各種プロモーションの実施により、売上高は修正計画を上回りました。営業利益は修正計画に対して1億31百万円の増加(計画比13.1%増)、経常利益は修正計画に対して1億54百万円の増加(計画比11.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、2025年5月の取締役会で決定いたしました浜坂工場の閉鎖に伴う減損損失の計上もあり、修正計画に対して48百万円の減少(計画比4.8%減)となりました。

 当グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、原材料や物流費等の高騰、人口減少による市場縮小や労働力不足等があります。原材料や物流費等の高騰は、収束の見込みが立っておらず、厳しい経営の舵取りを強いられていますが、製品の価値向上と生産性向上の取り組みを進めて企業活動を継続してまいります。人口減少につきましては、新たな需要を創造し、世代を超えて当グループの製品をご愛顧いただけるように取り組むとともに、昆布や豆等の周辺新領域の開発に挑戦してまいります。2025年度は、これまでの成長の原点である昆布製品と豆製品だけでなく、第3の柱としてヨーグルト製品の強化にも一層注力してまいります。労働力不足につきましては、DXによる業務効率化を図るとともに、AI・ロボットを活用した生産技術を実現し抜本的な生産性向上に取り組んでまいります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローとして44億85百万円の収入(前連結会計年度は28億円の収入)があり、本業で稼いできた現金及び預金を手元資金として工場用地の購入や人事労務システムの更新を行いました。投資活動によるキャッシュ・フローは、このような投資がある一方で、投資有価証券の売却等による収入があり、28億19百万円の支出(前連結会計年度は34億23百万円の支出)となりました。また、主に配当金の支払により、財務活動によるキャッシュ・フローとして、13億13百万円の支出(前連結会計年度は13億11百万円の支出)がありました。

 当グループの資本の財源及び資金の流動性に係る情報は次のとおりであります。

 当グループは、従来から製品売上等の営業活動により多くのキャッシュ・フローを得ており、自己資金と高い水準の自己資本比率をもって直近の設備投資等には自己資金を充当してまいりました。

 

 2025年4月より、「2025-2027中期経営計画」がスタートし、持続可能な成長基盤を形成する「従業者の力を結集させ、お客様と共に昆布と豆の未来を創造する」を掲げ、経営改革を推進してまいります。今後の投資計画については、4つの基本戦略「コアビジネスの事業強化と領域拡大」・「圧倒的な競争優位性の確保」・「効率経営の追求」・「経営基盤の強化」に基づき進める方針でありますが、これらの投資資金については直接金融又は間接金融の多様な手段の中から当社にとって有利な手段を選択し、資金調達を検討してまいります。

 「営業活動によるキャッシュ・フロー」の最大化とともに、財務活動により調達した資金については、事業運営上必要な流動性を確保することに努め、機動的かつ効率的に使用してまいります。また、投資計画の妥当性を勘案し、資金の使用時期と金額については慎重に判断してまいります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって必要となる会計上の見積りは、合理的な基準に基づき行っております。当グループでは、特に以下の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定が重要であると考えております。

 

a.未払販売奨励金に係る見積り

 販売奨励金については、支払率が期中を通じて概ね一定のもの、一定期間の販売実績に応じて支払率が変動するもの等、いくつかの形態が存在し、販売から一定期間後に支払額が確定する点に特徴があります。特に取引の都度支払額を交渉する形態については発生の都度、取引条件が異なるため、発生時期や条件が多種多様です。このため、3月分の販売奨励金については、2月までの実際請求額に基づく販売奨励金比率を基礎として3月に発生した増減理由等を加味して見積計上しており、実際の確定額は見積りと異なる可能性があります。

 

b.事業用資産の減損に係る見積り

 当グループは、事業用資産の減損に係る回収可能性の評価にあたり、各工場を基礎としてグルーピングを行い、収益性が著しく低下した資産グループについては回収可能価額を見積り、固定資産の帳簿価額を回収可能価額まで減損し、減損損失として計上しております。

 回収可能価額は、使用価値又は正味売却価額により測定し、いずれか大きい方の金額としております。使用価値は営業活動から生じる将来キャッシュ・フローをもとに見積っております。土地の正味売却価額は、路線価又は固定資産税評価額に一定の調整を行う方法等により見積っております。ただし、投資期間を通じた長期的な見積りとなるため、社会環境や事業環境等の変化により回収可能性を著しく低下させる変化が見込まれた場合には、減損損失の計上が必要となる場合があります。

 

c.その他有価証券の減損に係る見積り

 当グループは、取引関係の維持・強化のために取引先の株式を保有しております。これらの株式には、価格変動性の高い上場株式と、市場価格のない非上場株式が含まれております。上場株式は、期末日における時価が帳簿価額の50%以上下落した場合、または、2年間連続して30%以上下落した場合には減損処理を行っております。非上場株式については、非上場会社の決算書を基に株式の評価額を見積り、今後の回復可能性を判断して減損処理を行っております。

 

d.繰延税金資産に係る見積り

 繰延税金資産の帳簿価額は毎期見直し、将来において繰延税金資産の全部又は一部が回収できるだけの十分な課税所得を獲得できない可能性が高い部分については、帳簿価額を減額しております。

 将来の課税所得は、事業計画やその時点で入手可能な経済的要因等をもとに仮定しております。ただし、一時差異が解消されるまでの長期的な見積りとなるため、事業環境等に変化が見られた場合には、見積りが実際の結果と異なる可能性があります。

 

e.退職給付債務に係る見積り

 退職給付債務は、数理計算上の仮定に基づいて算出しております。この仮定には、割引率、予想昇給率、退職率等が含まれております。当グループは、使用した数理計算上の仮定は妥当なものと判断しておりますが、将来の不確実性を伴う仮定となるため、景気変動による予想昇給率の変化等、仮定自体の変更により退職給付債務の計上額に影響を与える可能性があります。

 

 

5【重要な契約等】

 特に記載すべき事項はありません。

 

6【研究開発活動】

(1)「豆」に関する研究

 「黒豆ポリフェノール クロノケア®」の機能性研究では、既に機能性表示食品の届出が受理されている「一過性の疲労感の軽減」や「一時的な日中の眠気の軽減」、「パソコンやスマートフォンなどのディスプレイ作業により生じる一過性の疲労感の軽減」の機能に加えて、新たな届出を目指して、起床時の疲労感や睡眠の質に不満をもつ健常男女を対象に臨床試験を実施しました。その結果、起床時の眠気が軽減し、脳波計による解析では寝つきが改善しました。また、合わせて実施した冷水負荷による掌皮膚表面温度の測定では、冷水負荷前後とも皮膚表面温度が高くなりました。血流改善作用や自律神経の調節作用のある「クロノケア」を摂取することで冷えが改善し、寝つきが良くなることで起床時の眠気が軽減した可能性が考えられます。現在投稿中の論文が受理された暁には、機能性表示食品の届出を進めるとともに、健康食品素材「クロノケア®」と、これを配合した通販商品「元気のおまもり」の販売に注力いたします。

 また京都府立医科大学 生体免疫栄養学講座(フジッコ株式会社が参画する寄付講座)の内藤裕二教授らの研究グループは、高齢長寿地域において「豆類」の摂取がフレイルリスクの低下と関連することを明らかにしました。この研究成果は、日本食品科学工学会第71回大会(2024年8月)において発表しました。後期高齢者の著しい増加が見込まれている日本においては、今後ますますフレイルへの予防対策が重要となってくることが予想されます。そこで、『フジッコわくわくフォーラム~お豆で“腸”元気!』と題したフォーラムを開催し(2024年10月)、フレイル対策として「豆類」の活用を広報しました。このように、今後も豆に関する健康および機能性研究に継続して取り組んでまいります。

 

(2)「乳酸菌」に関する研究

 「カスピ海乳酸菌」は室温での発酵が可能なことから、家庭で手軽にヨーグルトの手作りを行えます。武庫川女子大学との共同研究により、小学生の親子を対象に8週間継続して「カスピ海乳酸菌」を用いたヨーグルトの手作りを行ってもらい、生活の質(QOL)を評価しました。その結果、ヨーグルトの手作りを継続すると、子どものQOLの向上、ストレス度合いの低下、及び両親への気持ちの向上が見られました。この研究成果は、日本家政学会第76回大会(2024年5月)にて発表しました。フジッコでは、これまで、「カスピ海乳酸菌」の健康機能として、便秘傾向者への整腸作用や高齢者のフレイル対策へのエビデンスを取得してきました。今回、新たにお子様のQOLの向上にも寄与できるエビデンスが得られたことから、「カスピ海乳酸菌」の活用をより広めていくことで、全ての人々の健康が達成されるよう努めてまいります。

 

(3)「昆布」に関する研究

 地球温暖化に伴う海水温上昇等の影響を受け、コンブの生産量は年々減少しており、特に2024年産の生産量は、過去最低を大幅に更新している状況です。現在、当社は、北海道大学およびコンブ産地との共同研究により高水温などストレス環境に耐性を持つコンブ株の育成や養殖方法の改善に取り組んでおります。これらの研究には時間を要しますが、産地と協力して取り組むことにより、少しでも早くコンブの生産量向上に結び付けていきたいと考えております。

 

 なお、当連結会計年度の研究開発費は1,010百万円であります。