第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、「順理則裕(じゅんりそくゆう)」を基本理念としています。これは、「道理に生きることが、すなわち繁栄につながる」ことを意味しています。当社グループはこの理念に従い、企業の社会的責任(CSR)を事業活動の土台とし、環境、ヘルスケア、高機能で、社会に貢献する価値を創りつづけます(CSV:Creating Shared Value)。

当社グループの経営方針は、「不断のポートフォリオ改革」です。収益性が高く成長力のある事業に経営資源を集中し、国内外での積極的な拡大を進めるとともに、資産効率を高め財務体質を強化することにより、「安定性」と「成長力」を備えた、強い「良い東洋紡グループ」をめざします。

 

(2)目標とする経営指標等

2019年3月期から2022年3月期までの2018年中期経営計画において、当社グループが重視する数値目標および経営指標は、「営業利益」、「使用総資本営業利益率(ROA)」です。営業利益は300億円以上、ROAは7%以上をめざします。各事業部およびグループ各社の事業を、損益、ROAおよびキャッシュ・フローという共通の基準で評価し、ポートフォリオ改革に取り組み、目標達成をめざします。

財務体質に関しては、「有利子負債と純資産(非支配株主持分を除く)の比率(D/Eレシオ)」を重視しており、D/Eレシオを1.0倍まで引き下げることを目標にしてきました。当連結会計年度末にD/Eレシオ1.0倍未満の0.81倍を実現しましたが、引き続き、1.0倍未満を維持することに努めます。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題

当社グループは、2014年中期経営計画において、「海外展開の加速」、「新製品の拡大・新事業の創出」、「国内事業の競争力強化」、「資産効率の改善」、「グローバル経営機能の強化」の5つのアクションプランを掲げ、エアバッグ用基布の海外展開、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャイン SRF”の拡販などに取り組んできました。2018年中期経営計画においては、これまで以上に「安定性」と「成長力」を備えた強い「良い東洋紡グループ」をめざして、「各事業に適した事業運営の徹底」、「中長期新商品・新事業開発の強化」、「事業基盤の強化」の3つを重点施策としました。短期的な課題に取り組みつつ、中・長期的な課題にも注力し、加えて企業風土改革など事業基盤づくりも進めていく、という考え方「1/3思考」により、重点施策を以下のとおり実行していきます。

①各事業に適した事業運営の徹底

2014年中期経営計画における、アクションプラン重視の事業運営により、財務基盤の安定性は高まり、利益を安定して出せる体質にはなりましたが、残念ながら、目標の営業利益300億円は達成できませんでした。当社グループには、事業環境の異なる多くの事業が存在しています。成長速度を高め、利益目標を達成するには、それぞれの事業に適した目標設定を行い、環境変化に応じた的確な対処を行うことが重要です。そこで、各事業の状況に合せたKPI(重要業績評価指標)を設定して、重点化した事業運営を推進します。そして、成長分野の事業には、積極的に経営資源を投入していきます。

2018年中期経営計画では、今後の成長分野として「フィルム&コーティング」、「モビリティ」、さらに「ヘルスケア&ウェルネス」を設定しました。
「フィルム&コーティング」分野では、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャイン SRF”、セラミックコンデンサー用離型フィルムの拡大、透明蒸着フィルム“エコシアール”の海外展開に、また「モビリティ」分野では、エアバッグ用基布、エンジニアリングプラスチックなどを中心に経営資源を集中します。

②中長期新商品・新事業開発の強化

「新製品の拡大・新事業の創出」として、これまでも「新」の創出へ注力してきましたが、中長期の成長の実現には、将来へ向けた成長材料のさらなる仕込みが必要です。当社グループは未来へ向けた取り組みとして、従来の設備投資や研究開発費に加えて、戦略的な成長資金の投入をしていきます。特に、将来の成長が期待される「ヘルスケア&ウェルネス」分野では、すでに、神経再生誘導チューブ“ナーブリッジ”を事業化し、骨再生誘導材も事業化に向けて取り組んできましたが、これらの製品開発基盤を生かすと同時に、新製品開発を加速させるため、社外の知識や技術を取り込む「オープンイノベーション」も積極的に推進します。

③事業基盤の強化

当社グループは、「順理則裕」の企業理念のもと、社会の良き一員として世の中のルールを守り、社会の期待に応えていく会社として、事業の基盤づくりに取り組んできましたが、2018年中期経営計画では、あらためて安全最優先、コンプライアンス重視の組織風土構築にも取り組みます。さらには、「接戦を勝ち抜く」組織風土の醸成、成長への意識改革に取り組みます。この組織風土改革の推進のため、「カエルプロジェクト」を発足させ、現行の制度や働き方を見直し、より良い企業風土・文化・人材を創るためのさまざまな活動を推進していきます。

 

当社グループは、これらの重点施策を着実に実行し、社会に役立つ製品やサービス等の提供を通じて、健全で持続可能な社会づくりに貢献していきます。
 

(会社の支配に関する基本方針)

 

当社は、2017年5月11日に開催された取締役会において、「当社株式の大量買付行為への対応策(買収防衛策)」(以下「本プラン」といいます。)の更新を決定しました。本プランは、2017年6月28日開催の当社定時株主総会において、出席株主の議決権の過半数の賛同を得て可決されています。

 

(1)当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要

当社は、上場会社として、株主の皆様による当社株券等の自由な売買を認める以上、当社の支配権の移転を伴う大量買付行為に応じるべきか否かのご判断は、最終的には株主の皆様の意思に基づき行われるべきだと考えています。

しかしながら、最近の我が国の資本市場における株券等の大量買付行為の中には、現経営陣の賛同を得ず一方的に行為を強行する動きも見受けられ、①対象会社に対し高値買取の要求を狙う買収である場合や、重要な資産・技術情報等を廉価に取得するなどして会社の犠牲の下に大量買付者の利益実現を狙う買収である場合、②株主の皆様に株式の売却を事実上強要するおそれがある買収である場合、③株主の皆様に十分な検討時間を与えず、また対象会社の経営陣との十分な協議や合意等のプロセスを経ることなく行われる買収である場合、④対象会社の企業価値向上のために必要な従業員、取引先、お客様等の利害関係者との関係を損なうおそれのある買収である場合等、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益を著しく毀損するおそれがあるものも少なくありません。

当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方としては、当社の財務および基本理念、事業内容、コアテクノロジーを十分理解し長期的視野に立って企業価値ひいては株主共同の利益を高めることを目的とする者であるべきだと考えます。したがいまして、当社は、上記のような当社の企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれのある不適切な大量買付行為またはこれに類似する行為を行う者は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として適切ではなく、このような行為を抑止するための枠組みが必要不可欠であると考えています。

 

(2)基本方針の実現に資する特別な取組みの内容の概要

当社は、綿紡績を祖業としつつ、その後は化学繊維、合成繊維へと事業を拡大、その後には、フィルム、機能樹脂、スーパー繊維、機能膜、診断薬用酵素等の市場へも参入、以来、これらの製品に代表されるスペシャルティ事業の拡大を進めてきました。130年を超える歴史を通じて、当社は、「重合・変性」「加工」「バイオ」のコア技術を育むとともに、販売、開発、生産が一体となって、顧客の要請にきめ細かく応えていくビジネスモデルをつくり上げてきました。このビジネスモデルをもとに、さらに成長軌道に乗せるため、「不断のポートフォリオ改革」を掲げ、事業の維持・拡大を図っています。

当社は、企業価値を「利益、キャッシュフロー、資産効率等の経済的価値」と「ステークホルダーからの信頼・評価を含めた社会的価値」の両方で構成されると考えており、これら両面から企業価値を高めていきます。

 

(3)基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの内容の概要

①本プランの概要

本プランは、大量買付者が大量買付行為を行うにあたり、所定の手続に従うことを要請するとともに、かかる手続に従わない大量買付行為が行われる場合や、かかる手続に従った場合であっても当該大量買付行為が当社の企業価値ひいては株主共同の利益を著しく毀損するものであると判断される場合には、かかる大量買付行為に対する対抗措置として、原則として新株予約権を株主の皆様に無償で割り当てるものです。また、会社法その他の法律および当社の定款上認められるその他の対抗措置を発動することが適切と判断された場合には当該その他の対抗措置が用いられることもあります。

本プランに従って割り当てられる新株予約権(以下「本新株予約権」といいます。)には、大量買付者およびその関係者による行使を禁止する行使条件や、当社が本新株予約権の取得と引換えに大量買付者およびその関係者以外の株主の皆様に当社普通株式を交付する取得条項等を付すことが予定されています。

本新株予約権の無償割当てが実施された場合、かかる行使条件や取得条項により、当該大量買付者およびその関係者の有する議決権の当社の総議決権に占める割合は、大幅に希釈化される可能性があります。

 

②本プランの有効期間

本プランの有効期間は、2017年6月28日開催の定時株主総会の終結の時から2020年3月期に関する定時株主総会の終結の時までとします。

 

(4)本プランが基本方針に沿い、当社株主の共同の利益を損なうものではなく、当社役員の地位の維持を目的とするものではないことおよびその理由

本プランは、以下の理由により、上記(1)の基本方針の実現に沿うものであり、当社株主の共同の利益を損なうものではなく、また当社役員の地位の維持を目的とするものでもないと考えています。

①買収防衛策に関する指針(経済産業省及び法務省が2005年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」)の要件等を完全に充足していること

②企業価値ひいては株主共同の利益の確保または向上を目的として更新されていること

③株主意思を重視するものであること

④独立性の高い社外者(独立委員会)の判断の重視

⑤対抗措置発動に係る合理的な客観的要件の設定

⑥独立した地位にある第三者専門家の助言の取得

⑦デッドハンド型買収防衛策やスローハンド型買収防衛策ではないこと

 

なお、本プランの詳細につきましては、インターネット上の当社のウェブサイト(http://www.toyobo.co.jp/news/2017/)に掲載されている2017年5月11日付「当社株式の大量買付行為への対応策(買収防衛策)の更新に関するお知らせ」をご参照ください。

 

2【事業等のリスク】

当社グループの経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。

なお、記載内容のうち、将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)政治・経済情勢の悪化

当社グループは、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、繊維・商事などの各種製品を、国内外の各地で生産し、国内外の様々な市場で販売しています。このため、当社グループの当該生産拠点や主要市場において、政治的混乱や深刻な景気後退などが生じた場合には、当社グループの生産や販売の縮小が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)販売価格の下落等

当社グループは、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、繊維・商事などの各種製品を、国内外の様々な市場で販売していますが、その製品の多くは、他社製品と競合しています。このため、競合他社製品の値下げなどにより、当社グループ製品の販売価格下落や販売量の減少が生じる場合があります。また、メディカル分野などにおいては、公定価格水準の下落に伴い、当社グループ製品の販売価格が下落する場合があります。これらの場合には、当社グループの売上減少が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)重要な取引先の業績悪化、事業撤退等

当社グループは、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、繊維・商事などの各種製品を、国内外の様々な取引先に販売していますが、一部の製品については、主として特定の取引先に販売しています。このため、そのような取引先において、業績の悪化や当該製品に関連する事業の撤退、大規模な在庫調整、生産調整あるいは当該製品の大幅な値下げ要求などが生じた場合には、当社グループの売上減少が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)海外の主要市場における関税引き上げ、輸入規制等

当社グループは、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、繊維・商事などの各種製品を、国内外の様々な市場で販売しています。将来、海外の主要市場国において、アンチダンピング法などの規制により、関税引き上げ、数量制限などの輸入規制が課せられた場合には、輸出取引が制約を受け、当社グループの売上減少が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)与信状況の変化

当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、過去の貸倒実績率等に基づき、貸倒引当金を計上しています。また、与信管理制度のもと、取引先別に限度額を設定するなど、与信リスクミニマイズへの対応策をとっています。しかしながら、景気後退などにより重要な取引先が破綻した場合には、貸倒引当金を大幅に超える貸倒損失が発生するなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)製品の欠陥等

当社グループは、「地球環境・安全」「PL/QA」各委員会の活動などにより、製品の欠陥などの発生リスクを未然に防止しながら、所定の品質管理基準に従って、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、繊維・商事などの各種製品を生産しています。また、製造物責任賠償については保険に加入しています。しかしながら、全ての製品に欠陥がなく、将来的に不良品が発生しないという保証はなく、また、最終的に負担する賠償額を保険でカバーできるとも限りません。このため、重大な製品の欠陥などが発生した場合には、多額の損害賠償支払いや当社グループの信用失墜が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)原材料の購入

当社グループは、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、繊維・商事などの各種製品を生産するため、様々な取引先から原材料を購入しています。主要な原材料については、リスク管理の観点からも可能なかぎり複数の取引先からの購入を行っていきますが、取引先の破綻や事業撤退、縮小や事故などが発生した場合など、必要量の原材料を確保できない可能性があります。また、量の確保ができた場合でも、原油価格の上昇や当該原材料の需給バランスなどにより、購入価格が高騰する可能性もあります。そのような場合には、当社グループで生産縮小やコスト上昇が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)知的財産

当社グループは、重合・変性・加工・バイオのコアテクノロジーを駆使して、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケアなど強い競争力を持つ高機能製品の事業領域で事業規模の積極拡大を図っています。このため、当社グループでは、他社製品と差別化できる技術とノウハウを蓄積し、その保護に努めておりますが、特定の技術や地域ではそれらの保護が十分ではなく、他社による類似製品の生産販売を阻止できない可能性があり、また、他社による当社グループ製品の模倣を知的財産権で十分排除できない可能性もあります。さらに、当社グループでは、他社の知的財産権に最大限配慮しながら、製品や技術の開発を行っていますが、これらの開発成果が他社の知的財産権を侵害しているとされる可能性もあります。このように、当社グループの知的財産権が侵害され、あるいは当社グループが他社の知的財産権を侵害しているとされた場合には、当社グループで売上減少や損害賠償支払いが生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)新製品や新用途の開発

当社グループは、重合・変性・加工・バイオのコアテクノロジーを駆使して、社会に貢献する価値を、創りつづけるカテゴリー・リーダーを目指して、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケアなど強い競争力を持つ高機能製品の事業領域に研究開発投資を集中させ、新製品や新用途の開発に注力しています。しかしながら、研究開発活動はその性格から、成果の発生が不確実なものであるため、競争力のある新製品や新用途を十分に開発できない可能性もあります。そのような場合には、当社グループの将来の成長と収益性を低下させるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)公的規制

当社グループは、国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、それぞれの事業所が、事業の許認可、租税、環境関連など様々な公的規制を受けています。そのようななか、たとえば、主要な事業所で、環境関連の法規制強化や取水制限などが行われる場合、あるいは、現在使用している化学物質が使用禁止になる場合や使用濃度規制が行われる場合には、生産活動ほかの企業活動が大幅に制約され、あるいは、同規制を遵守するために、多額の設備投資や租税ほかの費用負担を余儀なくされるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)事業運営

当社グループは、公正かつ自由な競争や適正な取引を行うなど、関係法令に十分留意した事業活動を行っています。しかしながら、従業員や取引先の違法行為に起因して問題が発生するなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)訴訟

当社グループは、国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、その過程において、製造物責任、環境、労務、知的財産等に関し、当社グループに対し訴訟を提起される可能性があります。重要な訴訟を提起された場合には、当社グループの経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

なお、前連結会計年度中において係争中であった重要な訴訟については、当連結会計年度で和解に至りました。詳細は「第2 事業の状況 4 経営上の重要な契約等 (3)米国政府(司法省)(以下「原告」)による損害賠償請求訴訟における和解契約」に記載のとおりです。

 

(13)為替レートの大幅変動

当社グループの事業には、海外諸地域における各種製品の販売および生産が相当量含まれています。このため、為替レートの大幅な変動が生じた場合、円換算後の売上減少やコストの上昇、あるいは価格競争力の低下が発生するなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

また、海外の連結子会社や持分法適用会社の経営成績は、連結財務諸表作成において円換算されるため、換算時の為替レートにより円換算後の価値が大幅に変動し、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)金利の大幅上昇

当社グループは、有利子負債の圧縮や支払利率の固定化に努めています。しかしながら、現在の金利水準が大きく上昇した場合には、支払利息の相当な増加が見込まれるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)株価の大幅下落

当社グループは、市場性のある株式を相当量保有しており、株価が大幅に下落した場合には、その他有価証券評価差額金の減少や売却時に損失が発生するなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)地価の大幅下落

当社グループは、休止工場跡地などの土地を保有しており、その多くは土地の再評価に関する法律に基づき再評価を行っていますが、地価が大幅に下落した場合には、減損損失や売却時に損失が発生するなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)退職給付債務・退職給付費用

当社グループの退職給付債務および退職給付費用は、年金数理計算上使用される各種の基礎率と年金資産の運用利回りなどに基づき算出されており、年金数理計算上の前提条件の変更、年金資産の時価の変動、金利動向、退職金・年金制度の変更などにより、退職給付債務の増加および退職給付費用(数理計算上の差異の費用処理額)の増加が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)格付の低下

当社グループは、金融機関からの借入や社債の発行などにより資金調達を行っています。格付機関が、当社の既発行債券などの格付を引き下げた場合、資金調達への大きな影響が考えられるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)繰延税金資産

当社グループは、税務上の繰越欠損金および将来減算一時差異に対して、繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産は、将来の課税所得に関する予測等に基づき、回収可能性を検討し計上していますが、将来の課税所得が予測等と異なり回収可能性の見直しが必要となった場合や税率変更を含む税制の改正などがあった場合には、繰延税金資産の取崩しが生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(20)災害等の発生

当社グループは、国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、災害などについて、それぞれの工場ほか各事業所での設備管理を徹底するなど、可能なかぎりその発生を未然に防ぐように努めています。しかしながら、それらの工場ほかで大規模な地震、風水害、雪害などの自然災害や火災および新型インフルエンザなどの感染症が発生した場合、あるいは取引先において同様の災害被害が発生した場合には、当社グループの生産活動ほかに著しい支障が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(21)海外での事業活動

当社グループは、グローバルな事業展開を積極的に推進しています。また、海外事業活動に伴うリスクに備え、海外リスクマネジメント体制の整備に努めています。しかしながら、各国での予期しない法令、規制や政策等の変更、またはテロ、戦争、政変やその他の要因による社会的混乱などが生じた場合は、経営成績及び財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(22)情報セキュリティ

当社グループは、事業の遂行に関連して顧客情報や機密情報など多くの重要情報を管理しています。これらの情報については、情報システム構築・運用時の物理的な対策や情報管理に関する従業員教育など、十分なセキュリティ対策を講じています。しかしながら、予期せぬ事態により情報が漏洩したり、不正使用された場合など、経営成績及び財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、世界経済において、米国では雇用拡大に伴い景気は堅調に推移し、ユーロ圏では企業業況が好調で景気は拡大しましたが、中国では緩やかな景気減速が続きました。また、国内では、堅調な外需や設備投資を背景に、景気は回復基調が続きました。しかし、一方では、原燃料価格、荷造材料費や物流費の高騰などに留意すべき状況が続きました。

このような環境のもと、当社グループは、「環境、ヘルスケア、高機能で、社会に貢献する価値を、創りつづけるカテゴリー・リーダー」をめざし、特長のある製品を、国内外の市場へ展開しています。当連結会計年度においても、中期経営計画で掲げた「海外展開の加速」、「新製品の拡大・新事業の創出」、「国内事業の競争力強化」、「資産効率の改善」、「グローバル経営機能の強化」の5つのアクションプランに沿って、事業活動を進めました。

「海外展開の加速」においては、エアバッグ用基布事業では、原糸から基布まで一貫生産するグローバルメーカーとして、海外拠点での生産を本格化し、海外顧客向けの販売を拡大しました。また、透明蒸着フィルム“エコシアール”の拡販に向けて、インドネシアにパッケージングフィルム生産の合弁会社を設立しました。

「新製品の拡大・新事業の創出」においては、液晶偏光子保護フィルムとして展開する“コスモシャイン SRF”の販売を大幅に伸ばし、今後のさらなる拡大を視野に、製造設備の新設を決定しました。また、電子ペーパーディスプレイなどに使われる高耐熱性ポリイミドフィルム“ゼノマックス”の事業化に向けて、合弁会社の設立を決定しました。

「国内事業の競争力強化」においては、セラミックコンデンサー市場の拡大に伴い、離型フィルム生産設備の増設を決定しました。

「資産効率の改善」としては、経営資源の有効活用による資産の効率化と働き方改革の推進等を目的として、当社が所有していた本社ビルの信託受益権を譲渡しました。

なお、当連結会計年度においては、本社ビルの信託受益権譲渡による固定資産売却益として104億円を特別利益に計上しました。また、米国の防弾ベストメーカーが製造、販売した防弾ベストに関連して、米国政府から提起されていた訴訟については、原告との間で和解が成立し、和解金等74億円を特別損失として計上しました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は前年度比17億円(0.5%)増の3,311億円となり、営業利益は同6億円(2.5%)増の239億円、経常利益は同2億円(1.1%)減の204億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同36億円(38.1%)増の130億円となりました。

 

セグメント別の概況は、次のとおりです。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更し、以下の前年度比較については、前年度の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で比較しています。

 

(フィルム・機能樹脂事業)

当事業は、想定以上の原燃料価格高騰の影響を受けましたが、フィルム事業と機能樹脂事業の両事業において拡販が進み、前年度に比べ、増収増益となりました。

フィルム事業では、包装用フィルムは、原燃料価格高騰の影響を受け苦戦しました。一方、工業用フィルムは“コスモシャイン SRF”が大手偏光板メーカー向けの出荷を軸に販売を伸ばし、セラミックコンデンサー用離型フィルムも好調に推移しました。

機能樹脂事業では、エンジニアリングプラスチックは、自動車用途の拡販が国内・海外ともに進みました。工業用接着剤“バイロン”は電子材料用途を中心に、ポリオレフィン用接着性付与剤“ハードレン”は自動車・建設用途を中心に、それぞれ堅調に推移しました。また、水現像型感光性印刷版である光機能材料は、海外での拡販が進みました。

この結果、当事業の売上高は前年度比101億円(7.3%)増の1,487億円、営業利益は同10億円(7.6%)増の137億円となりました。

 

 

(産業マテリアル事業)

当事業は、原燃料価格高騰の影響を受けましたが、生活・産業資材が回復し、前年度に比べ、増収増益となりました。

スーパー繊維は、“ザイロン”は販売が伸び悩みましたが、“ツヌーガ”は手袋用途を中心に堅調に推移しました。生活・産業資材は、バグフィルター用PPS繊維“プロコン”の販売が回復しました。エアバッグ用基布は、原燃料価格高騰の影響を受けましたが、海外拠点での本格的生産により販売を伸ばしました。

この結果、当事業の売上高は前年度比35億円(5.9%)増の635億円、営業利益は同4億円(10.0%)増の43億円となりました。

 

(ヘルスケア事業)

当事業は、バイオ・メディカル事業では、海外への拡販が進みましたが、医薬品製造受託事業が苦戦し、前年度に比べ、減収減益となりました。

バイオ・メディカル事業では、診断薬酵素、ライフサイエンス用試薬は海外への販売を伸ばしましたが、医薬品製造受託事業は、GMP(医薬品等の製造および品質管理基準)対応費用の一括計上の影響を受けました。神経再生誘導チューブ“ナーブリッジ”は、国内での適用症例数を着実に伸ばしました。

機能膜・環境事業では、溶剤を回収するVOC処理装置の販売は、中国市場を中心に拡大しました。

この結果、当事業の売上高は前年度比7億円(1.9%)減の357億円、営業利益は同1億円(1.2%)減の52億円となりました。

 

(繊維・商事事業)

当事業は、前年度に比べ、減収減益となりました。

ユニフォーム用途は、堅調に推移しましたが、スポーツ衣料製品は、在庫処理と販売数量減少により苦戦しました。中東向け特化生地は、市況の悪化に伴い販売数量が減少しました。

また、前年度に実施したブラジルにおける繊維事業の休止の影響により、大幅な減収となりました。

この結果、当事業の売上高は前年度比92億円(11.9%)減の683億円、営業利益は同4億円(39.5%)減の6億円となりました。

 

(不動産事業、その他事業)

当事業では、不動産、エンジニアリング、情報処理サービス、物流サービス等のインフラ事業は、それぞれ概ね計画どおりに推移しました。

この結果、当事業の売上高は、前年度比20億円(11.9%)減の150億円となり、営業利益は同5億円(15.7%)減の28億円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度比45億円(16.8%)収入が減少し、224億円の収入となりました。主な内容は、税金等調整前当期純利益182億円および減価償却費157億円による資金の増加と訴訟関連損失の支払額77億円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度比130億円(91.7%)支出が減少し、12億円の支出となりました。主な内容は、有形及び無形固定資産の取得による支出207億円、関係会社株式の取得による支出20億円および有形及び無形固定資産の売却による収入213億円です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、前年度比275億円支出が増加し、278億円の支出となりました。主な内容は、長期借入金の返済による支出381億円、社債の償還による支出100億円および長期借入れによる収入318億円です。

 

この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比63億円減の259億円となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

(イ)生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

フィルム・機能樹脂事業

148,685

6.8

産業マテリアル事業

64,008

9.1

ヘルスケア事業

36,874

△2.8

繊維・商事事業

66,969

△13.8

不動産事業

その他事業(うち製造事業)

23,250

20.8

合計

339,786

2.1

(注)1.金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

2.外注生産を含んでいます。

3.消費税等の処理は税抜方式によっています。

4.不動産事業の生産実績はありません。

5.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度比については前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で比較しています。

 

(ロ)受注実績

当社グループの製品は一部の受注生産を除き見込生産を行っています。

(ハ)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

フィルム・機能樹脂事業

148,667

7.3

産業マテリアル事業

63,454

5.9

ヘルスケア事業

35,723

△1.9

繊維・商事事業

68,317

△11.9

不動産事業

4,284

△3.6

その他事業

10,703

△14.8

合計

331,148

0.5

(注)1.総販売実績に対する販売実績の割合が100分の10以上となる販売先はありません。

2.セグメント間の取引については相殺消去しています。

3.消費税等の処理は税抜方式によっています。

4.当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しており、前連結会計年度比については前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で比較しています。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

①重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたり重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているとおりです。

連結財務諸表の作成にあたっては、経営者の判断の下、一定の前提条件に基づく見積りが必要な場合があり、これらの見積りについては過去の実績等を勘案し合理的に判断しています。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(イ)財政状態の分析

当連結会計年度末の総資産は、前年度末比46億円(1.0%)減の4,462億円となりました。主な内容は、現金及び預金の減少63億円、当社が所有していた本社ビルの信託受益権譲渡等による有形固定資産の減少45億円および投資有価証券の増加51億円です。

当連結会計年度末の負債は、前年度末比182億円(6.5%)減の2,616億円となりました。主な内容は、社債の償還100億円および1年内返済予定の長期借入金を含む長期借入金の減少62億円です。

当連結会計年度末の純資産は、利益剰余金やその他有価証券評価差額金が増加したことなどから、前年度末比136億円(8.0%)増の1,845億円となりました。

 

また、財政状態に関する各種指標(連結ベース)は次のとおりです。

回次

 

第156期

第157期

第158期

第159期

第160期

決算年月

 

2014年3月

2015年3月

2016年3月

2017年3月

2018年3月

自己資本比率

(%)

31.2

33.9

35.3

37.2

40.5

時価ベースの自己資本比率

(%)

31.5

30.9

33.7

38.0

41.8

自己資本当期純利益率

(%)

5.8

5.4

6.4

5.8

7.5

キャッシュ・フロー対

有利子負債比率

(年)

7.1

8.8

5.1

6.3

6.5

インタレスト・カバレッジ・レシオ

(倍)

13.3

11.3

19.4

19.3

16.9

有利子負債自己資本比率
(D/Eレシオ)

(倍)

1.20

1.12

1.05

1.01

0.81

自己資本比率:非支配株主持分を含まない期末純資産/期末総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額[期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数]/期末総資産
自己資本当期純利益率:親会社株主に帰属する当期純利益/非支配株主持分を含まない期末純資産の期首・期末

           平均

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:期末有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/(連結キャッシュ・フロー計算書)利息の支払                 額
有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ):期末有利子負債/非支配株主持分を含まない期末純資産

 

当社グループは、財務の健全性の指標として特に有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)を重視しており、目標を1.0倍未満としています。当連結会計年度末で当該指標は0.81倍となり、目標を達成いたしました。今後も同指標にて、1.0倍未満を維持することを目標に設定しています。

 

(ロ)経営成績の分析

当社グループは、2014年中期経営計画において、営業利益目標300億円を掲げ、「海外展開の加速」、「新製品の拡大・新事業の創出」、「国内事業の競争力強化」、「資産効率の改善」、「グローバル経営機能の強化」の5つのアクションプランに沿って事業活動を進めてきました。

「海外展開の加速」においては、エンジニアリングプラスチック事業で海外の販売拠点を広げました。エアバッグ用基布事業では、海外での生産設備を増強し、販売拡大に向け準備を整えました。「新製品の拡大・新事業の創出」においては、液晶偏光子保護フィルムとして展開する“コスモシャイン SRF”の販売が拡大しつつあります。「国内事業の競争力強化」においては、ペットボトル用樹脂事業やポリエステル原料事業から撤退し、ポリエステルチェーン改革を実行しました。「資産効率の改善」においては、当社が所有していた本社ビルの信託受益権の譲渡やブラジルにおける繊維事業の休止などの不採算事業からの撤退、海外子会社の統廃合などを行いました。「グローバル経営機能の強化」においては、当社グループの標準システムの整備を進めています。

一方で、アクリル繊維事業の中国向け輸出におけるアンチダンピング政策の影響やブラジルの繊維事業の撤退、想定以上の原燃料価格高騰などの環境変化に加え、“コスモシャイン SRF”やエアバッグ用基布生産設備の立ち上げ費用の増加などにより、当連結会計年度の営業利益は239億円に留まり、営業利益の拡大には至りませんでした。しかしながら、売上高営業利益率は向上してきており、ポートフォリオ改革は着実に進んでいるものと判断しています。

また、成長への布石として、“コスモシャイン SRF”およびセラミックコンデンサー用離型フィルムの生産設備増設の決定、さらに高耐熱ポリイミドフィルム“ゼノマックス”の合弁会社設立を決定しています。

 

2017年度

(2014年中期経営計画)

2017年度

(実績)

増減

(中計-実績)

営業利益(億円)

300

239

△61

売上高営業利益率(%)

7.1

7.2

0.1

 

また、このような環境変化を踏まえ、当連結会計年度の期初において当連結会計年度の計画を売上高3,400億円、営業利益250億円、親会社株主に帰属する当期純利益135億円に見直し、事業活動を進めました。計画に対する概況は次のとおりです。

売上高は計画比89億円(2.6%)減の3,311億円となりました。これは主として、繊維・商事事業における中東向け特化生地の市況悪化の影響やスポーツ衣料製品の販売減少、ヘルスケア事業における医薬品製造受託事業の苦戦および包装用フィルム等における価格改定難航によるものです。営業利益は計画比11億円(4.3%)減の239億円となりました。これは主として、フィルム・機能樹脂事業での原燃料価格高騰の影響や物流費の増加、さらに“コスモシャイン SRF”やエアバッグ用基布の海外での設備立ち上げ費用が増加したこともあり計画未達となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は計画比5億円(3.8%)減の130億円となりました。これは主として、本社ビルの信託受益権譲渡による固定資産売却益104億円を特別利益に計上したものの、防弾ベストに関連した訴訟の和解金等の支払いによる特別損失の増加等によるものです。

(単位:億円)

 

2017年度

(計画)

2017年度

(実績)

増減

(実績-計画)

売上高

3,400

3,311

△89

営業利益

250

239

△11

親会社株主に帰属する当期純利益

135

130

△5

 

当社グループでは、以下の商品等を成長ドライバーとして位置付けています。

・フィルム・機能樹脂事業…“コスモシャイン SRF”やセラミックコンデンサー用離型フィルムなどの工業用フィルム、包装用フィルムの海外展開、エンジニアリングプラスチック

・産業マテリアル事業  …エアバッグ用基布

・ヘルスケア事業    …機能フィルター

これらの商品等に対し、積極的に成長への投資を進めながらポートフォリオ改革に取り組み、2018年中期経営計画の営業利益目標300億円以上を目指します。

(ハ)経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりですが、特に、原燃料などの価格動向や為替変動について引き続き留意していく必要があると考えています。

 

(ニ)当社グループの資本の財源および資金の流動性について

a.キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

b.契約債務

2018年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりです。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

短期借入金

32,682

32,682

長期借入金

82,149

23,962

19,274

17,182

21,732

リース債務

763

304

285

121

53

上記の表において、連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めています。

当社グループの第三者に対する保証は、関係会社の借入金等に対する債務保証です。保証した借入金等の債務不履行が保証期間内に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2018年3月31日現在の債務保証額は、2,118百万円です。

c.財務政策

当社グループは、運転資金および設備資金については、内部資金または借入により資金調達することとしています。このうち、借入による資金調達に関しては、短期借入金は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入金および社債は主に設備投資と投融資に係る資金調達です。

2018年3月31日現在、長期借入金の残高は82,149百万円です。また、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計17,500百万円のコミットメントライン契約を締結しています(借入未実行残高17,500百万円)。

4【経営上の重要な契約等】

(1)供与技術契約

契約会社名

契約項目

契約の内容

相手先

契約締結年月

(有効期間)

対価

東洋紡㈱

(当社)

活性炭素繊維

Kフイルターによる溶剤吸着処理装置に関する技術援助の供与

(米国)

Met-Pro
Corporation

1980年7月1日

(1980年7月1日

自動延長)

技術使用料ほか

同上

同上

同上

(英国)

CJB Developments
Limited

1981年3月4日

(1981年3月4日

自動延長)

同上

同上

同上

同上

(ドイツ)

Durr Anlagenbau
GmbH

1984年10月18日

(1984年10月18日

1987年10月17日

自動延長)

同上

同上

同上

同上

(韓国)

斗山機械株式会社

1991年8月5日

(1991年9月25日

1994年9月24日

自動延長)

同上

同上

同上

同上

(台湾)

清隆企業股份有限公司

1993年9月1日

(1993年9月1日

1996年8月31日

自動延長)

同上

同上

同上

同上

(米国)

Durr Industries,
Inc.

1996年12月25日

(1996年12月25日

1999年12月24日

自動延長)

同上

 

(2)固定資産(信託受益権)の譲渡契約

当社は当社が所有する固定資産(信託受益権)の譲渡契約を締結し、2017年10月20日に当該物件の引渡しを完了しました。

①譲渡の理由

経営資源の有効活用による資産の効率化と財務体質の向上を図るため、当社が所有する不動産(信託受益権)の譲渡を行うものです。

 

②譲渡資産の内容

資産の名称

東洋紡本社ビル

所在地

大阪市北区堂島浜二丁目2番8号

土地面積

5,643.92㎡

譲渡益

10,388百万円

現況

本社事務所および賃貸用不動産

(注)譲渡価額、帳簿価額については、譲渡先との守秘義務により開示を控えさせていただきます。

譲渡益は、帳簿価額および譲渡に係る費用等を控除した金額を記載しています。

 

③譲渡先の概要

譲渡先については、譲渡先との守秘義務により開示は控えさせていただきます。なお、譲渡先は国内法人1社ですが、当社との間には、記載すべき資本関係、人的関係および取引関係はなく、また当社の関連当事者に該当する状況ではありません。

 

④譲渡の日程

取締役会決議日

2017年9月22日

契約締結日

2017年9月26日

物件引渡期日

2017年10月20日

 

⑤連結損益に与える影響額

当該固定資産(信託受益権)の譲渡益10,388百万円を、当連結会計年度において「特別利益」の「固定資産売却益」として計上しています。

 

(3)米国政府(司法省)(以下「原告」)による損害賠償請求訴訟における和解契約

当社は、米国政府から米国コロンビア特別区連邦地方裁判所に提起されていた2件の米国不正請求禁止法(False Claims Act)等に基づく損害賠償請求訴訟において、2018年3月16日(日本時間)に原告と和解契約を締結し、同年3月22日に和解金6,999百万円(66百万米ドル)を支払いました。

①訴訟および和解の概要

本訴訟は、防弾ベストメーカーから当社製品の“ザイロン”繊維を用いた防弾ベストを購入し、または補助金を支払った原告が、2005年6月(以下「訴訟1」)および2007年6月(以下「訴訟2」)に、当社および当社の米国子会社であるTOYOBO U.S.A., INC.(旧商号:TOYOBO AMERICA, INC.)に対し、米国不正請求禁止法(False Claims Act)等に基づく損害賠償請求訴訟を米国コロンビア特別区連邦地方裁判所に提起しました。なお、訴訟1は、2004年2月にAaron J. Westrick氏が提起した代理訴訟(Qui Tam Action)を米国政府が引き継いだものです。

原告は、「防弾ベストメーカーに販売した“ザイロン”繊維の強度が一定の環境下において早く劣化するということを知りながら、当社がそれを開示せず、また誤解を招くような情報を開示した結果、原告は欠陥のある防弾ベストに対して金銭を支払った」と主張していました。

当社は、これまでの訴訟手続の中で、原告の主張が誤りであり、当社に非がないことを主張してきました。実際、問題とされた“ザイロン”繊維を用いた防弾ベストはいずれも、米国の国立司法研究所(NIJ)が設定した防弾ベストのための性能規格試験に合格していました。しかしながら、訴訟を継続した場合の費用や陪審員評決の不確実性、評決に対する上訴によって本件解決までに更なる時間を要する可能性等を勘案し、代理人弁護士とも十分に協議した上で、和解契約を締結することが妥当と判断し、当社およびTOYOBO U.S.A., INC.は原告との間で和解契約の締結に至ったものです。和解契約においては、当社およびTOYOBO U.S.A., INC.は原告のすべての主張を否定し、法的責任を認めていません。

和解契約の主な内容は、以下のとおりです。

(イ)当社は、和解金として66百万米ドルを原告に支払う。

(ロ)他方、原告は、本件(訴訟1および訴訟2)に関する当社およびTOYOBO U.S.A., INC.に対するその他の請求を放棄する。

(ハ)当社が和解金を支払った直後に、訴訟1および訴訟2について棄却の申立が行われる。

なお、当社またはTOYOBO U.S.A., INC. に対し、上述の防弾ベストに関して係属している訴訟は他にありません。

 

連結損益に与える影響額

当該和解金6,999百万円を、当連結会計年度において「特別損失」の「訴訟関連損失」として計上しています。

 

5【研究開発活動】

当社グループは、「順理則裕」の企業理念のもと、「環境、ヘルスケア、高機能で、社会に貢献する価値を、創りつづけるカテゴリー・リーダー」をめざしています。長年培ってきた「重合・変性」、「加工」、「バイオ」のコア技術群をさらに発展・深化させるとともに、それらを組み合わせ、融合させることで、新製品の拡大、新事業の創出に注力しました。

当社グループの研究開発は、セグメントごとに担当事業部が直接運営する事業部研究部門と、中長期的視点から次代を担う新製品・新技術を開発する全社共通のコーポレート研究部門とに大別されます。これらの研究開発のマネジメントは研究開発管理部が担当し、各部門相互の連携を図りながら、当社グループの総合力を発揮した研究開発活動を推進しました。

 

(フィルム・機能樹脂事業)

包装用フィルム分野では、薄肉化可能な環境対応商品として高強度で縦・横・両方向に収縮可能な熱収縮性ポリエステルフィルム“スペースクリーン”や高耐熱高剛性ポリプロピレンフィルムが用途拡大し、また、環境負荷が少ないバイオマス原料を使用したポリエステルフィルム“バイオプラーナ”やリサイクル原料を使用したポリエステルフィルム“サイクルクリーン”も環境意識が高い大手ユーザーでの採用が拡大しました。加えて、タフネス性を有した高強度ポリエステルフィルム“タフスター”、無機二元蒸着バリアフィルム“エコシアール”等の新商品は認証・採用が継続して拡大しました。食品用途以外の業界についても“オリエステル”等で折り紙やひねるだけで臭いが気にならないおむつ処理袋“ひねってポイ”など更なる採用が進みました。

工業用フィルム分野では、超複屈折フィルム“コスモシャイン SRF”は、液晶ディスプレイの大型化や薄型化とともに、高度な画像再現性やパネル加工特性に対応する新製品に採用されています。その要望量も急拡大しており、専用の製造設備の新設を決定しました。また、情報通信技術の進展によるデータ通信量の増加により、拡大するセラミックコンデンサーの製造に対応できる平滑性に優れた離型フィルムの採用が進んでいます。それに伴い、高度なクリーン環境で加工する離型フィルム製造設備の新設を決定しました。他にも多くの工業分野で、当社の持つ高透明、易接着および平滑性の特性を活かしたフィルムの展開を図っています。

重金属を含まず環境にやさしいポリエステル重合触媒“TOYOBO GS Catalyst”については、その優れた特徴を活かし、太陽電池用高耐久性フィルム用途や特殊繊維用途に加え、機能性フィルムや成形用途での拡大が進んでいます。また、GS触媒ライセンス事業については、海外大手PETメーカーにおける商業生産が開始し、事業の拡大を図っています。

エンジニアリングプラスチック分野では、自動車用途で年々高まる軽量化要求に応えるべく種々の素材で開発を進めました。その結果、金属代替樹脂、ゴム代替樹脂などの用途を中心に日系の自動車主要車において計画通りの採用となりました。特に大型案件として注力化してきました軽量化に伴うダウンサイズエンジン用ダクトに耐熱樹脂として採用されました。同時にさらなる自動車の環境対応ニーズにあわせて超微細発泡技術、超耐熱技術、異種素材接着技術を加味したグレードを高機能性ポリアミド樹脂“グラマイド”と高機能性ポリエステルエラストマー“ペルプレン”を中心にラインナップさせ用途開発を促進させました。高機能性ポリエステル樹脂“バイロペット”ではランプエクステンション材や自動車内装部品において海外での採用が順調に進んでいます。バイオマス原料を用いた高融点ポリアミド樹脂“バイロアミド”については超耐熱と高強度を活かした各種産業用機構部品への採用も始まりました。また、着実な海外拠点拡大を進める中で、強みの自動車内装用途中心に欧米自動車メーカーへの採用も増えつつあります。

高機能共重合ポリエステル樹脂“バイロン”、高耐熱共重合ポリアミドイミド樹脂“バイロマックス”、変性ポリオレフィン樹脂“ハードレン”は、電気電子、自動車周辺部材の塗料、接着用途を中心として開発を進めました。“バイロン”では新規変性樹脂の高密着、高耐久性が評価され、新たな電子製品部材となる接着用途に採用されました。“バイロマックス”はスマートフォン周辺デバイスでの採用製品が拡大しました。“ハードレン”は、引き続き海外向けの技術サービスを強化しており、自動車バンパープライマー用途で成長を続けています。また、“バイロン”と“ハードレン”の素材、変性・配合技術を融合した開発品が高耐久、異種接着性を必要とする積層製品の接着剤に採用され、拡大が期待されています。

以上、当事業に係る研究開発費は51億円です。

 

(産業マテリアル事業)

自動車関連分野では、エアバッグ用基布事業では、海外拠点での生産を本格的に開始し、海外ユーザー向けの販売を拡大しました。

超高強力ポリエチレン繊維“イザナス”は、独自開発した新技術を導入すべく生産設備の改造を行い、新製品の生産を開始しました。

三次元スプリング構造体“ブレスエアー”は、ロゴマークを刷新しました。また、大手高級ベッドメーカーとの共同開発によるマットレスがJR東日本のクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」に採用されるなど、“ブレスエアー”のブランドが広がりました。

環境関連分野では、重金属イオン吸着シート“コスモフレッシュ NANO”を開発し、土木分野を中心に拡販活動を開始しました。

以上、当事業に係る研究開発費は8億円です。

 

(ヘルスケア事業)

バイオケミカル分野では、社外共同研究で血液中に存在するうつ病関連バイオマーカーの測定に用いる酵素の量産技術を確立しました。診断システムでは、国内クリニック向け糖尿病の小型検査装置の販売を開始し、また中国においては遺伝子検査装置のCFDA認証を取得しました。バイオ研究試薬では、ノロウイルス検便検査用試薬で画期的な新製品を開発しシェアを拡大しました。

医療機器分野では、神経再生誘導チューブ“ナーブリッジ”の国内での臨床使用が拡大し、当該製品の有用性が広く認知されました。更に、米国など海外展開を視野に活動を進めています。また、臨床試験を実施し、開発を進めてきた次世代の骨再生誘導材“ボナーク”は歯科・口腔外科領域において2018年度で製造販売承認の取得を見込み、上市準備を進めています。

人工腎臓用中空糸膜では、血液濾過用ならびに血液透析用の非対称膜の開発を進めました。また、これらの商品の生産性の効率を上げるプロセス開発に取り組みました。

水処理膜では、海水淡水化用正浸透膜の開発と、モジュールの高性能化、およびその実用研究を進めました。

フィルター分野では、新型高帯電エレクトレットフィルターを開発し、空気清浄機への販売を開始しました。

以上、当事業に係る研究開発費は15億円です。

 

(繊維・商事事業)

スポーツ分野で培った機能ニット技術を応用し、介護、スクール、ユニフォーム、ビジネス分野の商品開発を進め、採用が進みました。

中東民族衣装向け生地“Royal Mix”は、糸・織・加工の複合技術で新風合い生地の開発が進み、トップブランドとしての評価を高めました。

高強力ナイロン・フィラメント繊維“シルファイン”を用いた薄地織物は、機能と感性を融合させた織物開発を行い、アウトドア用途の他、高級カジュアル用途、レインウェア用途への採用が広がりました。また、当該糸を用いたインナーニット素材の開発も進めていきます。

ウェアラブル向けフィルム状導電素材“COCOMI”を活用した用途開発としては、眠気検知システム用電極ウェアとしてバス会社と協力した実証試験や、東北大学東北メディカル・メガバンク機構が取り組んでいる「産後うつ」研究向け妊婦用インナーウェア、アスリート競技への活用なども進めています。

機能材分野では、ヒートアイランド現象に対する環境対策として開発した保水パネルの“アースキーパー”については建物の屋上や動物園床面での実証実験を重ね、その効果の確認を行いました。こうしたデータを今後の拡販に活かしていきます。

以上、当事業に係る研究開発費は6億円です。

 

(全社共通)

全社共通の研究開発組織であるコーポレート研究所は、当社グループの将来を担う新製品・新技術の開発を行うだけでなく、各種分析・評価業務、コンピューターシミュレーションやAI(Artificial Intelligence)を用いた解析業務を通じて、研究開発全般を支援する全社研究インフラとしての機能も有しています。また、新技術の調査および研究開発のスピードアップを図るため、ナショナルプロジェクトへの参画や国内外の企業、大学、研究機関との連携を通したオープンイノベーション活動を積極的に進めています。

当社の高分子重合技術や成形加工技術を駆使した耐熱性・寸法安定性・絶縁性に優れる新規ポリイミドフィルム“ゼノマックス”については、400~500℃の高温下での加工が必要な薄膜トランジスタ(TFT)の基板材など、従来のポリイミドフィルムでは難しかった超ハイエンド製品を中心に着実に用途を拡大させました。今後、高性能・高耐熱フィルムの市場ニーズに応えるため、より一層の研究開発およびマーケティング活動を進め、お客さまおよび用途のさらなる拡大をめざします。

また、当社はこれまでバイオ由来の原料から重合したバイオ樹脂の製造・販売を実施してきましたが、ガスバリヤ性に優れたポリエチレンフラノエートの製造、フィルム化について国内外の企業と連携しその開発を進めています。

以上、全社共通のコーポレート研究に係る研究開発費は24億円です。