第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、『順理則裕(じゅんりそくゆう)』(なすべきことをなし、ゆたかにする)の企業理念のもと、経営方針である「不断のポートフォリオ改革」を推し進め、収益性が高く、成長力のある事業に経営資源を集中し、国内外での積極的な拡大を進めるとともに、資産効率を高め財務体質を強化することにより、「安定性」と「成長力」を備えた、強い「良い東洋紡グループ」をめざします。

 

(2)目標とする経営指標等

2019年3月期から2022年3月期までの2018年中期経営計画において、当社グループが重視する数値目標および経営指標は、「営業利益」、「使用総資本営業利益率(ROA)」および「自己資本当期純利益率(ROE)」です。営業利益は300億円以上、ROAは7%以上およびROEは8%以上を目標としています。各事業部およびグループ各社の事業を、損益、ROAおよびキャッシュ・フローという共通の基準で評価し、ポートフォリオ改革に取り組み、目標達成をめざします。

財務体質に関しては、「有利子負債と純資産(非支配株主持分を除く)の比率(D/Eレシオ)」を重視しており、D/Eレシオを1.0倍まで引き下げることを目標にしてきました。当連結会計年度末はD/Eレシオ1.0倍未満の0.93倍となり、引き続き、1.0倍未満の維持に努めます。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略および対処すべき課題

当社グループは、2018年中期経営計画では、短期的な課題に取り組みつつ、中長期的な課題への取り組みや企業風土改革などの事業基盤づくりも進めていく、という考え方「1/3思考」のもと、3つの重点施策「各事業に適した事業運営の徹底(中短期)」、「中長期新商品・新事業開発の強化」、「事業基盤の強化」を策定し、以下のとおり実行していきます。

 

①各事業に適した事業運営の徹底(中短期)

当社グループには、事業環境の異なる多くの事業が存在しています。成長速度を高め、利益目標を達成するには、それぞれの事業に適した目標設定を行い、環境変化に応じた的確な対処を行うことが重要です。そこで、各事業の状況に合せたKPI(重要業績評価指標)を設定して、重点化した事業運営を推進します。そして、成長分野の事業には、積極的に経営資源を投入していきます。

2018年中期経営計画では、今後の成長分野として「フィルム&コーティング」、「モビリティ」、さらに「ヘルスケア&ウェルネス」を設定しています。

「フィルム&コーティング」分野では、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”やセラミックコンデンサ用離型フィルムの拡大、透明蒸着フィルム“エコシアール”の海外展開に、また「モビリティ」分野では、エンジニアリングプラスチックやエアバッグ用基布の拡大などを中心に経営資源を集中します。

 

中長期新商品・新事業開発の強化

当社グループは未来へ向けた取組みとして、従来の設備投資や研究開発に加えて、戦略的な成長資金の投入をしていきます。

特に、将来の成長が期待される「ヘルスケア&ウェルネス」分野では、神経再生誘導チューブ“ナーブリッジ”、骨再生誘導材“ボナーク”、人工腎臓用透析膜(医用膜)など、「フィルム&コーティング」分野では、高耐熱性ポリイミドフィルム“ゼノマックス”など、新製品・新事業開発を強化します。また、社外の知識や技術を取り込む「オープンイノベーション」も積極的に推進します。

 

③事業基盤の強化

当社グループは、『順理則裕』の企業理念のもと、社会の良き一員として世の中のルールを守り、社会の期待に応えていく会社として、事業の基盤づくりに取組んできました。しかしながら、2018年9月に火災事故が発生し、あらためて安全・防災対策を見直しました。より一層、安全最優先、コンプライアンス重視の組織風土の構築に取組みます。また、「接戦を勝ち抜く」組織風土の醸成、成長への意識改革に向けて「カエルプロジェクト」を発足し、現行の制度や働き方を見直し、より良い企業風土・文化・人材を創るためのさまざまな活動を推進していきます。

 

当社グループは、これらの取組みを通じて、社会的課題の解決に貢献するとともに、経済的価値の向上を図り、企業価値を高めていきます(CSV:Creating Shared Value)。

 

 

(会社の支配に関する基本方針)

 

当社は、2017年5月11日に開催された取締役会において、「当社株式の大量買付行為への対応策(買収防衛策)」(以下「本プラン」といいます。)の更新を決定しました。本プランは、2017年6月28日開催の当社定時株主総会において、出席株主の議決権の過半数の賛同を得て可決されています。

 

(1)当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針の内容の概要

当社は、上場会社として、株主の皆様による当社株券等の自由な売買を認める以上、当社の支配権の移転を伴う大量買付行為に応じるべきか否かのご判断は、最終的には株主の皆様の意思に基づき行われるべきだと考えています。

しかしながら、最近の我が国の資本市場における株券等の大量買付行為の中には、現経営陣の賛同を得ず一方的に行為を強行する動きも見受けられ、①対象会社に対し高値買取の要求を狙う買収である場合や、重要な資産・技術情報等を廉価に取得するなどして会社の犠牲の下に大量買付者の利益実現を狙う買収である場合、②株主の皆様に株式の売却を事実上強要するおそれがある買収である場合、③株主の皆様に十分な検討時間を与えず、また対象会社の経営陣との十分な協議や合意等のプロセスを経ることなく行われる買収である場合、④対象会社の企業価値向上のために必要な従業員、取引先、お客様等の利害関係者との関係を損なうおそれのある買収である場合等、対象会社の企業価値ひいては株主共同の利益を著しく毀損するおそれがあるものも少なくありません。

当社の財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方としては、当社の財務および基本理念、事業内容、コアテクノロジーを十分理解し長期的視野に立って企業価値ひいては株主共同の利益を高めることを目的とする者であるべきだと考えます。したがいまして、当社は、上記のような当社の企業価値ひいては株主共同の利益を毀損するおそれのある不適切な大量買付行為またはこれに類似する行為を行う者は、当社の財務および事業の方針の決定を支配する者として適切ではなく、このような行為を抑止するための枠組みが必要不可欠であると考えています。

 

(2)基本方針の実現に資する特別な取組みの内容の概要

当社は、綿紡績を祖業としつつ、その後は化学繊維、合成繊維へと事業を拡大、その後には、フィルム、機能樹脂、スーパー繊維、機能膜、診断薬用酵素等の市場へも参入、以来、これらの製品に代表されるスペシャルティ事業の拡大を進めてきました。130年を超える歴史を通じて、当社は、「重合・変性」「加工」「バイオ」のコア技術を育むとともに、販売、開発、生産が一体となって、顧客の要請にきめ細かく応えていくビジネスモデルをつくり上げてきました。このビジネスモデルをもとに、さらに成長軌道に乗せるため、「不断のポートフォリオ改革」を掲げ、事業の維持・拡大を図っています。

当社は、企業価値を「利益、キャッシュフロー、資産効率等の経済的価値」と「ステークホルダーからの信頼・評価を含めた社会的価値」の両方で構成されると考えており、これら両面から企業価値を高めていきます。

 

(3)基本方針に照らして不適切な者によって当社の財務および事業の方針の決定が支配されることを防止するための取組みの内容の概要

①本プランの概要

本プランは、大量買付者が大量買付行為を行うにあたり、所定の手続に従うことを要請するとともに、かかる手続に従わない大量買付行為が行われる場合や、かかる手続に従った場合であっても当該大量買付行為が当社の企業価値ひいては株主共同の利益を著しく毀損するものであると判断される場合には、かかる大量買付行為に対する対抗措置として、原則として新株予約権を株主の皆様に無償で割り当てるものです。また、会社法その他の法律および当社の定款上認められるその他の対抗措置を発動することが適切と判断された場合には当該その他の対抗措置が用いられることもあります。

本プランに従って割り当てられる新株予約権(以下「本新株予約権」といいます。)には、大量買付者およびその関係者による行使を禁止する行使条件や、当社が本新株予約権の取得と引換えに大量買付者およびその関係者以外の株主の皆様に当社普通株式を交付する取得条項等を付すことが予定されています。

本新株予約権の無償割当てが実施された場合、かかる行使条件や取得条項により、当該大量買付者およびその関係者の有する議決権の当社の総議決権に占める割合は、大幅に希釈化される可能性があります。

 

②本プランの有効期間

本プランの有効期間は、2017年6月28日開催の定時株主総会の終結の時から2020年3月期に関する定時株主総会の終結の時までとします。

 

(4)本プランが基本方針に沿い、当社株主の共同の利益を損なうものではなく、当社役員の地位の維持を目的とするものではないことおよびその理由

本プランは、以下の理由により、上記(1)の基本方針の実現に沿うものであり、当社株主の共同の利益を損なうものではなく、また当社役員の地位の維持を目的とするものでもないと考えています。

①買収防衛策に関する指針(経済産業省及び法務省が2005年5月27日に発表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」)の要件等を完全に充足していること

②企業価値ひいては株主共同の利益の確保または向上を目的として更新されていること

③株主意思を重視するものであること

④独立性の高い社外者(独立委員会)の判断の重視

⑤対抗措置発動に係る合理的な客観的要件の設定

⑥独立した地位にある第三者専門家の助言の取得

⑦デッドハンド型買収防衛策やスローハンド型買収防衛策ではないこと

 

なお、本プランの詳細につきましては、インターネット上の当社のウェブサイト(https://www.toyobo.co.jp/news/2017)に掲載されている2017年5月11日付「当社株式の大量買付行為への対応策(買収防衛策)の更新に関するお知らせ」をご参照ください。

 

2【事業等のリスク】

当社グループの経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには、以下のようなものがあります。

なお、記載内容のうち、将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものです。

 

(1)政治・経済情勢の悪化

当社グループは、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、繊維・商事などの各種製品を、国内外の各地で生産し、国内外の様々な市場で販売しています。このため、当社グループの当該生産拠点や主要市場において、政治的混乱や深刻な景気後退などが生じた場合には、当社グループの生産や販売の縮小が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)販売価格の下落等

当社グループは、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、繊維・商事などの各種製品を、国内外の様々な市場で販売していますが、その製品の多くは、他社製品と競合しています。このため、競合他社製品の値下げなどにより、当社グループ製品の販売価格下落や販売量の減少が生じる場合があります。また、メディカル分野などにおいては、公定価格水準の下落に伴い、当社グループ製品の販売価格が下落する場合があります。これらの場合には、当社グループの売上減少が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)重要な取引先の業績悪化、事業撤退等

当社グループは、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、繊維・商事などの各種製品を、国内外の様々な取引先に販売していますが、一部の製品については、主として特定の取引先に販売しています。このため、そのような取引先において、業績の悪化や当該製品に関連する事業の撤退、大規模な在庫調整、生産調整あるいは当該製品の大幅な値下げ要求などが生じた場合には、当社グループの売上減少が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)海外の主要市場における関税引き上げ、輸入規制等

当社グループは、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、繊維・商事などの各種製品を、国内外の様々な市場で販売しています。将来、海外の主要市場国において、アンチダンピング法などの規制により、関税引き上げ、数量制限などの輸入規制が課せられた場合には、輸出取引が制約を受け、当社グループの売上減少が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)与信状況の変化

当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、過去の貸倒実績率等に基づき、貸倒引当金を計上しています。また、与信管理制度のもと、取引先別に限度額を設定するなど、与信リスクミニマイズへの対応策をとっています。しかしながら、景気後退などにより重要な取引先が破綻した場合には、貸倒引当金を大幅に超える貸倒損失が発生するなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)製品の欠陥等

当社グループは、「地球環境・安全」「PL/QA」各委員会の活動などにより、製品の欠陥などの発生リスクを未然に防止しながら、所定の品質管理基準に従って、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、繊維・商事などの各種製品を生産しています。また、製造物責任賠償については保険に加入しています。しかしながら、全ての製品に欠陥がなく、将来的に不良品が発生しないという保証はなく、また、最終的に負担する賠償額を保険でカバーできるとも限りません。このため、重大な製品の欠陥などが発生した場合には、多額の損害賠償支払いや当社グループの信用失墜が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)原材料の購入

当社グループは、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、繊維・商事などの各種製品を生産するため、様々な取引先から原材料を購入しています。主要な原材料については、リスク管理の観点からも可能なかぎり複数の取引先からの購入を行っていきますが、取引先の破綻や事業撤退、縮小や事故などが発生した場合など、必要量の原材料を確保できない可能性があります。また、量の確保ができた場合でも、原油価格の上昇や当該原材料の需給バランスなどにより、購入価格が高騰する可能性もあります。そのような場合には、当社グループで生産縮小やコスト上昇が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)知的財産

当社グループは、重合・変性・加工・バイオのコアテクノロジーを駆使して、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケアなど強い競争力を持つ高機能製品の事業領域で事業規模の積極拡大を図っています。このため、当社グループでは、他社製品と差別化できる技術とノウハウを蓄積し、その保護に努めていますが、特定の技術や地域ではそれらの保護が十分ではなく、他社による類似製品の生産販売を阻止できない可能性があり、また、他社による当社グループ製品の模倣を知的財産権で十分排除できない可能性もあります。さらに、当社グループでは、他社の知的財産権に最大限配慮しながら、製品や技術の開発を行っていますが、これらの開発成果が他社の知的財産権を侵害しているとされる可能性もあります。このように、当社グループの知的財産権が侵害され、あるいは当社グループが他社の知的財産権を侵害しているとされた場合には、当社グループで売上減少や損害賠償支払いが生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)新製品や新用途の開発

当社グループは、重合・変性・加工・バイオのコアテクノロジーを駆使して、社会に貢献する価値を、創りつづけるカテゴリー・リーダーを目指して、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケアなど強い競争力を持つ高機能製品の事業領域に研究開発投資を集中させ、新製品や新用途の開発に注力しています。しかしながら、研究開発活動はその性格から、成果の発生が不確実なものであるため、競争力のある新製品や新用途を十分に開発できない可能性もあります。そのような場合には、当社グループの将来の成長と収益性を低下させるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)公的規制

当社グループは、国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、それぞれの事業所が、事業の許認可、租税、環境関連など様々な公的規制を受けています。そのようななか、たとえば、主要な事業所で、環境関連の法規制強化や取水制限などが行われる場合、あるいは、現在使用している化学物質が使用禁止になる場合や使用濃度規制が行われる場合には、生産活動ほかの企業活動が大幅に制約され、あるいは、同規制を遵守するために、多額の設備投資や租税ほかの費用負担を余儀なくされるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)事業運営

当社グループは、公正かつ自由な競争や適正な取引を行うなど、関係法令に十分留意した事業活動を行っています。しかしながら、従業員や取引先の違法行為に起因して問題が発生するなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)訴訟

当社グループは、国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、その過程において、製造物責任、環境、労務、知的財産等に関し、当社グループに対し訴訟を提起される可能性があります。重要な訴訟を提起された場合には、当社グループの経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)為替レートの大幅変動

当社グループの事業には、海外諸地域における各種製品の販売および生産が相当量含まれています。このため、為替レートの大幅な変動が生じた場合、円換算後の売上減少やコストの上昇、あるいは価格競争力の低下が発生するなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

また、海外の連結子会社や持分法適用会社の経営成績は、連結財務諸表作成において円換算されるため、換算時の為替レートにより円換算後の価値が大幅に変動し、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(14)金利の大幅上昇

当社グループは、有利子負債の圧縮や支払利率の固定化に努めています。しかしながら、現在の金利水準が大きく上昇した場合には、支払利息の相当な増加が見込まれるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)株価の大幅下落

当社グループは、市場性のある株式を相当量保有しており、株価が大幅に下落した場合には、その他有価証券評価差額金の減少や売却時に損失が発生するなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)地価の大幅下落

当社グループは、休止工場跡地などの土地を保有しており、その多くは土地の再評価に関する法律に基づき再評価を行っていますが、地価が大幅に下落した場合には、減損損失や売却時に損失が発生するなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)退職給付債務・退職給付費用

当社グループの退職給付債務および退職給付費用は、年金数理計算上使用される各種の基礎率と年金資産の運用利回りなどに基づき算出されており、年金数理計算上の前提条件の変更、年金資産の時価の変動、金利動向、退職金・年金制度の変更などにより、退職給付債務の増加および退職給付費用(数理計算上の差異の費用処理額)の増加が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)格付の低下

当社グループは、金融機関からの借入や社債の発行などにより資金調達を行っています。格付機関が、当社の既発行債券などの格付を引き下げた場合、資金調達への大きな影響が考えられるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)繰延税金資産

当社グループは、税務上の繰越欠損金および将来減算一時差異に対して、繰延税金資産を計上しています。繰延税金資産は、将来の課税所得に関する予測等に基づき、回収可能性を検討し計上していますが、将来の課税所得が予測等と異なり回収可能性の見直しが必要となった場合や税率変更を含む税制の改正などがあった場合には、繰延税金資産の取崩しが生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(20)災害等の発生

当社グループは、国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、災害などについて、それぞれの工場ほか各事業所での設備管理を徹底するなど、可能なかぎりその発生を未然に防ぐように努めています。しかしながら、それらの工場ほかで大規模な地震、風水害、雪害などの自然災害や火災および新型インフルエンザなどの感染症が発生した場合、あるいは取引先において同様の災害被害が発生した場合には、当社グループの生産活動ほかに著しい支障が生じるなど、経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

なお、2018年9月6日に当社の敦賀事業所第二において火災が発生し、製造設備等が被災しました。当社は早期の復旧に努めています。

 

(21)海外での事業活動

当社グループは、グローバルな事業展開を積極的に推進しています。また、海外事業活動に伴うリスクに備え、海外リスクマネジメント体制の整備に努めています。しかしながら、各国での予期しない法令、規制や政策等の変更、またはテロ、戦争、政変やその他の要因による社会的混乱などが生じた場合は、経営成績及び財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(22)情報セキュリティ

当社グループは、事業の遂行に関連して顧客情報や機密情報など多くの重要情報を管理しています。これらの情報については、情報システム構築・運用時の物理的な対策や情報管理に関する従業員教育など、十分なセキュリティ対策を講じています。しかしながら、予期せぬ事態により情報が漏洩したり、不正使用された場合など、経営成績及び財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における当社グループを取り巻く世界経済は、当連結会計年度の前半は米・中・欧において底堅い成長が続きました。しかし、後半には、米中貿易摩擦、中国経済の減速、英国のEU離脱問題に伴う経済混乱の不安などが要因となり、景気は減速しました。国内においても、当連結会計年度の前半は、景気はゆるやかに回復しましたが、後半は、輸出が低迷するとともに、設備投資の伸びも鈍化し、力強さを欠きました。

このような環境のもと、当社グループは、「フィルム&コーティング」、「モビリティ」、「ヘルスケア&ウェルネス」を成長分野と位置づけた「2018年中期経営計画」をスタートさせました。初年度となる当連結会計年度は、特に「フィルム&コーティング」において、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”やセラミックコンデンサ用離型フィルムの販売を大幅に拡大しましたが、一方で、原燃料価格変動や物流コスト増の影響を大きく受けました。

また、火災事故により、エアバッグ用原糸の製造設備などが焼失したため、当該原糸の代替品調達に関連する費用など138億円を特別損失として計上しました。

以上の結果、当連結会計年度の売上高は前年度比55億円(1.7%)増の3,367億円となり、営業利益は22億円(9.2%)減の217億円、経常利益は同26億円(12.9%)減の178億円、親会社株主に帰属する当期純損失は6億円(前年度は親会社株主に帰属する当期純利益130億円)となりました。

 

セグメント別の概況は、次のとおりです。

 

(フィルム・機能樹脂事業)

当事業は、フィルム事業、機能樹脂事業ともに、原料価格変動の影響を受けましたが、工業用フィルムが売上を伸ばし、前年度に比べ、増収増益となりました。

フィルム事業では、包装用フィルムは、原料価格変動や物流コスト増の影響を受け苦戦しました。一方、工業用フィルムは、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”が、液晶テレビ用途で販売を大きく伸ばし、セラミックコンデンサ用離型フィルムは車載用で販売を拡大しました。

機能樹脂事業では、エンジニアリングプラスチックは、国内外ともに自動車用途の販売を伸ばしましたが、原料価格変動の影響を受けました。工業用接着剤“バイロン”は、電子材料を中心とした接着用途の販売が伸び悩みました。

この結果、当事業の売上高は前年度比76億円(5.1%)増の1,562億円、営業利益は同0億円(0.1%)増の137億円となりました。

 

(産業マテリアル事業)

当事業は、原料価格変動と火災の影響を受け、前年度に比べ、増収減益となりました。

エアバッグ用基布は、海外顧客向けの販売を伸ばしましたが、火災と原料価格変動の影響を受け苦戦しました。スーパー繊維事業では、“ツヌーガ”は手袋用途を中心に販売を伸ばしましたが、“ザイロン”の販売が低調でした。生活・産業資材事業では、衛材用途のポリエステル短繊維は、海外向けに販売を拡大しましたが、原料価格変動の影響を受けました。機能性クッション材“ブレスエアー”は、火災の影響を受け販売が減少しました。

この結果、当事業の売上高は前年度比31億円(4.9%)増の665億円、営業利益は同16億円(38.5%)減の26億円となりました。

 

(ヘルスケア事業)

当事業は、医薬品製造受託事業が苦戦し、前年度に比べ、減収減益となりました。

バイオ・メディカル事業では、診断薬用酵素は、海外への販売が好調に推移しましたが、医薬品製造受託事業は、案件獲得に苦戦し、GMP(医薬品等の製造および品質管理基準)対応にかかる費用がかさみました。

機能膜・環境事業では、海水淡水化用逆浸透膜は受注が足踏みしました。機能フィルターは、事務機器向けなどが減少しましたが、溶剤を回収するVOC処理装置・エレメントは中国などでの環境関連投資の拡大で好調に推移しました。

この結果、当事業の売上高は前年度比10億円(2.9%)減の347億円、営業利益は同0億円(0.2%)減の52億円となりました。

(繊維・商事事業)

当事業は、前年度に比べ、減収増益となりました。

ユニフォーム用途は販売が伸び悩み、中東向け特化生地は市況の悪化により販売数量が減少しました。一方、スポーツ衣料製品は回復しました。

この結果、当事業の売上高は前年度比37億円(5.5%)減の646億円となり、営業利益は同3億円(41.6%)増の9億円となりました。

 

(不動産事業、その他事業)

当事業では、不動産、エンジニアリング、情報処理サービス、物流サービス等のインフラ事業は、それぞれ概ね計画どおりに推移しました。

この結果、当事業の売上高は、前年度比3億円(2.2%)減の147億円となり、営業利益は同6億円(20.8%)減の22億円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度比145億円(64.9%)収入が減少し、78億円の収入となりました。主な内容は、減価償却費158億円による資金の増加と火災による損失の支払額80億円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度比231億円支出が増加し、243億円の支出となりました。主な内容は、有形及び無形固定資産の取得による支出242億円です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、前年度比404億円収入が増加し、126億円の収入となりました。主な内容は、長期借入れによる収入233億円、社債の発行による収入100億円および長期借入金の返済による支出241億円です。

 

この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比37億円減の222億円となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

(イ)生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

フィルム・機能樹脂事業

159,422

7.2

産業マテリアル事業

67,582

5.6

ヘルスケア事業

38,412

4.2

繊維・商事事業

64,907

△3.1

不動産事業

その他事業(うち製造事業)

22,588

△2.8

合計

352,912

3.9

(注)1.金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

2.外注生産を含んでいます。

3.消費税等の処理は税抜方式によっています。

4.不動産事業の生産実績はありません。

 

(ロ)受注実績

当社グループの製品は一部の受注生産を除き見込生産を行っています。

(ハ)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

フィルム・機能樹脂事業

156,241

5.1

産業マテリアル事業

66,540

4.9

ヘルスケア事業

34,675

△2.9

繊維・商事事業

64,585

△5.5

不動産事業

4,197

△2.0

その他事業

10,460

△2.3

合計

336,698

1.7

(注)1.総販売実績に対する販売実績の割合が100分の10以上となる販売先はありません。

2.セグメント間の取引については相殺消去しています。

3.消費税等の処理は税抜方式によっています。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

①重要な会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたり重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しているとおりです。

連結財務諸表の作成にあたっては、経営者の判断の下、一定の前提条件に基づく見積りが必要な場合があり、これらの見積りについては過去の実績等を勘案し合理的に判断しています。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(イ)財政状態の分析

当連結会計年度末の総資産は、前年度末比156億円(3.5%)増の4,610億円となりました。主な内容は、設備投資の増加による有形固定資産の増加50億円、商品及び製品の増加28億円および繰延税金資産の増加21億円です。

当連結会計年度末の負債は、前年度末比188億円(7.2%)増の2,798億円となりました。主な内容は、社債の増加100億円および短期借入金の増加92億円です。

当連結会計年度末の純資産は、その他有価証券評価差額金が増加したものの利益剰余金が減少したことなどから、前年度末比33億円(1.8%)減の1,812億円となりました。

 

また、財政状態に関する各種指標(連結ベース)は次のとおりです。

回次

 

第157期

第158期

第159期

第160期

第161期

決算年月

 

2015年3月

2016年3月

2017年3月

2018年3月

2019年3月

自己資本比率

(%)

33.9

35.3

37.2

40.5

38.3

時価ベースの自己資本比率

(%)

30.9

33.7

38.0

41.8

27.2

自己資本当期純利益率

(%)

5.4

6.4

5.8

7.5

△0.3

キャッシュ・フロー対

有利子負債比率

(年)

8.8

5.1

6.3

6.5

21.0

インタレスト・カバレッジ・レシオ

(倍)

11.3

19.4

19.3

16.9

6.0

有利子負債自己資本比率
(D/Eレシオ)

(倍)

1.12

1.05

1.01

0.81

0.93

自己資本比率:非支配株主持分を含まない期末純資産/期末総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額[期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数]/期末総資産
自己資本当期純利益率:親会社株主に帰属する当期純利益/非支配株主持分を含まない期末純資産の期首・期末

           平均

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:期末有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/(連結キャッシュ・フロー計算書)利息の支払

                 額
有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ):期末有利子負債/非支配株主持分を含まない期末純資産

 

当社グループは、財務の健全性の指標として特に有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)を重視しており、目標を1.0倍未満としています。当連結会計年度は、原燃料価格の上昇に伴うたな卸資産の増加や売上高の増加に伴う売上債権の増加により運転資金が増加しました。また、“ゼノマックス”製造設備の新設や“コスモシャインSRF”製造設備の増設工事を開始するなど、設備投資も増加しました。このため、有利子負債は増加しましたが、D/Eレシオは当連結会計年度末で0.93倍と目標の1.0倍未満を維持しました。

(ロ)経営成績の分析

2018年中期経営計画の初年度にあたる当連結会計年度は、期初において売上高3,400億円、営業利益250億円を計画し、事業活動を進めてきました。しかしながら、当連結会計年度の売上高は3,367億円、営業利益は217億円となり、計画に対して未達となりました。成長ドライバーである“コスモシャインSRF”やセラミックコンデンサ用離型フィルムは好調に推移しました。一方、原料価格は2018年10月をピークにその後下落したため、包装用フィルム等は値上げ交渉に苦戦し、原料価格上昇分をカバーするまでには至りませんでした。また、2018年9月の当社敦賀事業所で発生した火災によりエアバッグ用原糸、機能性クッション材“ブレスエアー”および衣料用ナイロンなどの製造設備が被災しました。その結果、内製から外部調達品に切り替えたことによる市況価格とのコスト差や“ブレスエアー”などの販売量が減少したことなどから特に産業マテリアル事業の営業利益は計画を大きく下回る結果となりました。これにより、「使用総資本営業利益率(ROA)」は4.7%となりました。

会社株主に帰属する当期純利益については、期初の計画を130億円としていましたが、火災による損失138億円を特別損失に計上したことなどから、当連結会計年度は赤字となりました。

(単位:億円)

 

2018年度

(計画)

2018年度

(実績)

増 減

(実績-計画)

 売上高

3,400

3,367

△33

 営業利益

250

217

△33

 親会社株主に帰属する当期純利益

または

 親会社株主に帰属する当期純損失(△)

130

△6

△136

 

当社グループは、2018年中期経営計画において、成長への積極的な投資を推進し、「不断のポートフォリオ改革」に取り組んでいます。当連結会計年度に実施した、主な成長への取組みは次のとおりです。

フィルム・機能樹脂事業

 ・高耐熱性ポリイミドフィルム“ゼノマックス”の事業拡大に向けて、生産・販売会社「ゼノマックスジャパン株式会社」を設立し、新工場を立上げ

 ・透明蒸着フィルム“エコシアール”の海外展開に向けて、米州のTerphane社と販売契約を締結

 ・重金属フリーの触媒を使用した、包装用PETフィルム“東洋紡エステルGS”を開発

ヘルスケア事業

 ・中空糸型正浸透膜(FO膜)の実用化に向け、欧州にて浸透圧発電プラントの実証テストを開始

全社共通

 ・「オープンイノベーション」を積極的に推進しており、欧州独立系運用会社Capricorn Venture Partners n.v.が運用する、欧州基盤のベンチャーファンドに参加することを決定

 

これらの先行投資を着実に実らせ、2018年中期経営計画の目標達成に努めます。

 

(ハ)経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりですが、特に、2018年9月の当社敦賀事業所において発生した大規模火災を教訓として防災機能の強化を進めます。また、原燃料などの価格動向や為替変動について引き続き留意していく必要があると考えています。

(ニ)当社グループの資本の財源および資金の流動性について

a.キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

b.契約債務

2019年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりです。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

短期借入金

41,882

41,882

長期借入金

81,442

12,433

13,111

38,812

17,086

リース債務

1,476

290

432

235

520

上記の表において、連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めています。

当社グループの第三者に対する保証は、関係会社の借入金等に対する債務保証です。保証した借入金等の債務不履行が保証期間内に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2019年3月31日現在の債務保証額は、3,349百万円です。

c.財務政策

当社グループは、運転資金および設備資金については、内部資金または借入により資金調達することとしています。このうち、借入による資金調達に関しては、短期借入金は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入金および社債は主に設備投資と投融資に係る資金調達です。

2019年3月31日現在、長期借入金の残高は81,442百万円です。また、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計17,500百万円のコミットメントライン契約を締結しています(借入未実行残高17,500百万円)。

4【経営上の重要な契約等】

供与技術契約

契約会社名

契約項目

契約の内容

相手先

契約締結年月

(有効期間)

対価

東洋紡㈱

(当社)

活性炭素繊維

Kフイルターによる溶剤吸着処理装置に関する技術援助の供与

(米国)

Met-Pro
Corporation

1980年7月1日

(1980年7月1日

自動延長)

技術使用料ほか

同上

同上

同上

(英国)

CJB Developments
Limited

1981年3月4日

(1981年3月4日

自動延長)

同上

同上

同上

同上

(ドイツ)

Durr Anlagenbau
GmbH

1984年10月18日

(1984年10月18日

1987年10月17日

自動延長)

同上

同上

同上

同上

(韓国)

斗山機械株式会社

1991年8月5日

(1991年9月25日

1994年9月24日

自動延長)

同上

同上

同上

同上

(台湾)

清隆企業股份有限公司

1993年9月1日

(1993年9月1日

1996年8月31日

自動延長)

同上

同上

同上

同上

(米国)

Durr Industries,
Inc.

1996年12月25日

(1996年12月25日

1999年12月24日

自動延長)

同上

 

 

5【研究開発活動】

当社グループは、「順理則裕」の企業理念のもと、「環境、ヘルスケア、高機能で、社会に貢献する価値を、創りつづけるカテゴリー・リーダー」をめざしています。長年培ってきた高分子の「重合」、「変性」、「加工」、および、「バイオ」のコア技術群をさらに発展・深化させるとともに、それらを組み合わせ、融合させることで、新製品の拡大、新事業の創出に注力しました。

当社グループの研究開発は、セグメントごとに担当事業部が直接運営する事業部研究部門と、中長期的視点から次代を担う新製品・新技術を開発する全社共通のコーポレート研究部門とに大別されます。これらの研究開発のマネジメントは研究開発企画管理部が担当し、各部門相互の連携を図りながら、当社グループの総合力を発揮した研究開発活動を推進しました。

 

(フィルム・機能樹脂事業)

包装用フィルム分野では、環境対応商品(薄肉化)として高強度で縦・横・両方向に収縮可能な熱収縮性ポリエステルフィルム“スペースクリーン”や高耐熱高剛性ポリプロピレンフィルムの用途が拡大し、環境を意識し、バイオマス原料を使用したポリエステルフィルム“バイオプラーナ”やリサイクル原料を使用したポリエステルフィルム“サイクルクリーン”も環境意識が高い大手ユーザーでの採用が拡大しました。加えて、タフネス性を有した高強度ポリエステルフィルム“タフスター”、無機二元蒸着バリアフィルム“エコシアール”等の新商品は認証・採用が継続して拡大しました。食品用途以外の業界についても“オリエステル”等でショッピングバックや折り紙、ブックカバー、ひねるだけで臭いが気にならないおむつ処理袋“ひねってポイ”に加え、モノマテリアルを意識したポリエステルシーラントとしての採用が進みました。

工業用フィルム分野では、液晶ディスプレイの大画面化が進む中で、超複屈折フィルム“コスモシャインSRF”が、さらに高画質対応やパネル加工性の優れた製品を開発し、採用が進んでいます。拡大している要望量に応える新設備は、2020年稼働に向け、順調に進捗しています。また、情報通信技術の進展により、拡大するセラミックコンデンサは大容量化や高信頼性がもとめられ、それに対応する離型フィルムの開発を進めると同時に、旺盛な需要量に対して、2019年の稼働に向けた新設備の建設を進めています。さらには、折りたたみディスプレイに対応するPETフィルムを開発、発表しました。

重金属を含まず環境に優しいポリエステル重合触媒“TOYOBO GS Catalyst”については、その優れた特徴を活かし、機能性フィルムや特殊繊維用途、成形用途への拡大が進んでいます。また、GS触媒ライセンス事業については、海外大手PETメーカーにおける商業生産が拡大しており、さらなるグローバル展開を図っていきます。

エンジニアリングプラスチック分野では、自動車用途で年々高まる軽量化要求に応えるべく種々の素材で開発を進めました。その結果、金属代替樹脂、ゴム代替樹脂などの用途を中心に日系の自動車主要車において計画通りの採用となりました。同時にさらなる自動車の環境対応ニーズに合わせて超微細発泡技術、超耐熱技術、異種素材接着技術を加味したグレードを高機能ポリアミド樹脂“グラマイド”と高機能性ポリエステルエラストマー“ペルプレン”を中心にラインアップさせ用途開発を促進させました。また、強みの自動車用途で高まる自動運転関連用途、5G関連用途の開発も強化しており、高機能性ポリエステル樹脂“バイロペット”では高放熱グレードをラインアップし、市場からは高く期待されています。バイオマス原料を用いた高融点ポリアミド樹脂“バイロアミド”については超耐熱と高強度を活かした各種産業用機構部品への採用も始まりました。また、着実な海外拠点拡大を進める中で、強みの自動車内装用途中心に欧米自動車メーカーへの採用も増えつつあります。

高機能共重合ポリエステル樹脂“バイロン”、高耐熱共重合ポリアミドイミド樹脂“バイロマックス”、変性ポリオレフィン樹脂“ハードレン”、“トーヨータック”は、電気電子、自動車内外装の塗料、接着用途を中心に開発を進めました。“バイロン”では新規変性樹脂の高耐久性が評価され、電子製品分野の接着用途でさらに拡大を続けています。“バイロマックス”はスマートフォン周辺デバイスで採用製品が拡大しています。“ハードレン”は国内海外の自動車外装プラスチック塗料用途に展開し、市場拡大を続けています。“バイロン”と“ハードレン”は共に昨今の環境問題から水性化、ホットメルト化(溶媒フリー)をキーワードに開発を続けています。さらに被着体が異種材料であっても、バイロンとハードレンを組み合わせることで相互に接着性能を補完できるため、他社に出来ない新たな市場を拡大できると期待されています。

以上、当事業に係る研究開発費は53億円です。

 

 

(産業マテリアル事業)

環境関連分野では、重金属イオン吸着シートコスモフレッシュNANOが新技術情報提供システムに登録され、北海道新幹線のトンネル工事で試験施工されるなど実績が出始めました。超高強力ポリエチレン繊維“イザナス”は、昨年に導入した新技術設備にて生産した新製品が順調に推移しました。

エステル短繊維事業では、ASEAN地域における堅調な衛生材料需要により、紙おむつ、ナプキン向け不織布用ビジネスが拡大しました。三次元スプリング構造体“ブレスエアー”は、快適な寝心地感を活かし、旅館向けにビジネスが拡大しました。

以上、当事業に係る研究開発費は8億円です。

 

(ヘルスケア事業)

バイオケミカル分野では、様々な診断薬で汎用されている植物由来酵素を微生物を用いて量産する技術を確立しました。診断システムでは感染症遺伝子検査試薬において肺炎マイコプラズマを30分で検出する簡便な方法を開発し、販売を開始しました。バイオ研究試薬では、次世代シークエンサー周辺試薬の開発に取り組み、画期的な新製品を開発して販売を開始しました。

医療機器分野では、神経再生誘導チューブ“ナーブリッジ”の国内使用例が広がり、手指部から頭頸部などへの適応が加わっています。今後も治療施設、関連学会と連携を取りながら、知覚神経を中心とした機能回復に貢献するよう進めます。骨再生誘導材“ボナーク”は2019年度の上市を見込んでおり、準備を進めています。

人工腎臓用中空糸膜では、血液濾過用ならびに血液透析用の非対称膜の開発を進めました。また、これらの商品の生産性の効率を上げるプロセス開発に取り組みました。

水処理膜では、海水淡水化用正浸透膜の開発と、モジュールの高性能化、およびその実用研究を進めました。

フィルター分野では、新型高帯電エレクトレットフィルターの開発・改良を進め、空気清浄機向けの販売は好調に推移しました。

以上、当事業に係る研究開発費は16億円です。

 

(繊維・商事事業)

独自の特化紡績技術、原綿改質加工技術による商品開発を進め、スポーツ分野では即効消臭機能を持つCLOUD、インナー分野では吸水速乾性の優れた爽快コット、ユニフォーム分野では洗濯耐久性のある天然系改質素材ラフィードを開発し、当社総合展にて好評を得ました。

フィルム状導電素材COCOMIを活用し、東海大学とスポーツ向け生体情報計測ウェアの開発を開始しました。また心拍計測に加え、筋電計測ウェア、呼吸計測用ひずみセンサーの開発、快適で測定精度に優れたスマート衣料の開発などを進めていきます。

機能材分野では、ヒートアイランド現象に対する環境対策として開発した保水パネルのアースキーパーをエアコンの室外機に取り込む空気の冷却装置としてユニット化し、新聞発表、試験販売を開始しました。今後も自然エネルギーを利用した環境対策商品として拡販に努めます。

以上、当事業に係る研究開発費は6億円です。

 

(全社共通)

全社共通の研究開発組織であるコーポレート研究所は、当社グループの将来を担う新製品・新技術の開発を行うだけでなく、各種分析・評価業務、コンピューターシミュレーションやAI(Artificial Intelligence)を用いた解析業務を通じて、研究開発全般を支援する全社研究インフラとしての機能も有しています。また、新技術の調査および研究開発のスピードアップを図るため、ナショナルプロジェクトへの参画や国内外の企業、大学、研究機関との連携を通したオープンイノベーション活動を積極的に進めています。

当社の高分子重合技術や成形加工技術を駆使した耐熱性・寸法安定性に優れる新規ポリイミドフィルム“ゼノマックス”については、長瀬産業株式会社との合弁により、生産・販売会社「ゼノマックスジャパン株式会社」を設立し、それに伴い、生産設備を新設し、操業開始に向けて順調に準備を進めています。今後、電子ペーパーディスプレー向け薄膜トランジスタ(TFT)基盤材の需要増に対応するとともに、ハイエンド製品を中心にさらなる用途の拡大をめざします。

また、当社は「持続可能な化学」という考えに基づいて、機能材、食品、飼料、繊維、燃料などの分野における成長企業に投資を行うベンチャーファンド「Capricorn Sustainable Chemistry Fund」に参加しました。今後、ファンドを通じて得られる新技術、新事業の情報を活用し、持続可能な化学分野での事業拡大に注力していきます。

以上、全社共通のコーポレート研究に係る研究開発費は27億円です。