文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、
その達成を保証するものではありません。
(1)会社経営の基本方針
当社グループは、創業者である渋沢栄一が座右の銘の一つとしていた『順理則裕』を企業理念としています。『順理則裕』とは、「なすべきことをする、なすべからざることはしない。順理を貫くことで、世の中をゆたかにし、自らも成長する」ということを意味します。いわゆるCSV(Creating Shared Value:社会課題の解決に貢献するとともに、経済的価値の向上を図り、企業価値を高める)の考え方を、創業から約140年間、受け継いでまいりました。
1882年に綿紡績事業からスタートし、1960年代に合成繊維事業に進出し、さらに、蓄積した技術・ノウハウをフィルムなどのスペシャルティ事業に展開してきました。このように、世の中の変化に合わせ、社会課題の解決に貢献できる事業に経営資源を集中させることで、事業ポートフォリオを大きく変えてきました。
2019年、当社グループは、時代の変化に対応しながら、社会への貢献を通じて成長軌道を描きつづける会社となるために、あらためて渋沢栄一の精神の原点に立ち戻り、企業理念『順理則裕』を企業理念体系「TOYOBO PVVs」として再整理しました。
<TOYOBO PVVs>
・理念(Principle)
『順理則裕』なすべきことをなし、ゆたかにする
・めざす姿(Vision)
私たちは、素材+サイエンスで、人と地球に求められるソリューションを提供しつ続けるグループになります
・大切にすること(Values)
私たちは、変化を恐れず、変化を楽しみ、変化をつくります。
・TOYOBO Spirit:挑戦、信頼、協働
企業理念体系を実現するために、2020年4月に、最終のお客様、マーケットを意識したソリューション型の組織体制に改編し、長期成長シナリオの立案とともに、マーケティング機能の強化を図ります。加えて、この企業理念体系が、グループのすべてのメンバーの判断、行動の拠り所となるよう、会社の組織風土・働き方改革を進める全社プロジェクトである「カエルプロジェクト」を通じて、浸透・定着を進めています。
(2)中長期的な経営戦略と課題、および、目標とする経営指標
①2018年中期経営計画(2018~2021年度)
2018年度から4年間の中期経営計画では、短期的な課題に取り組みつつ、中長期的な課題への取組みや、企業風土改革などの事業基盤づくりも進めていく「1/3思考」の考え方のもと、以下の3つの重点施策を実行しています。
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・各事業に適した事業運営の徹底(中短期) 当社グループには、事業環境の異なる多くの事業が存在しているため、それぞれの事業に適したKPI(重要業績評価指標)を設定し、メリハリのある事業運営を推進します。成長分野の事業には、経営資源を集中的に投下し成長速度を高めます。
・中長期新商品・新事業開発の強化 持続的な成長を実現するため、中長期的な成長分野に経営資源を戦略的に投下するとともに、外部との協業も含めた新事業開発の強化を図ります。
・事業基盤の強化 「安全」「防災」「品質」は事業活動を支える重要な基盤であり、重要課題として引き続き対策を進めます。加えて、全社プロジェクト「カエルプロジェクト」を通じて、組織風土・働き方の改革を進め、「従業員ひとり一人が安心して生き生きとして働き続けられる職場づくり」をめざします。 |
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②目標とする経営指標(2018年中期経営計画)
当社グループが特に重視する経営指標は、「営業利益」、「自己資本利益率(ROE)」、「総資本営業利益率(ROA)」です。2018年中期経営計画(2018~2021年度)において、営業利益300億円以上、ROE8%以上を目標としています。また、当社グループ内の業績管理指標としてROAを採用し、ROA7%以上を目標としております。
財務体質に関しては、債務格付けの維持向上と資金調達上の安定性確保の観点から、「有利子負債と純資産の比率(D/Eレシオ)」を重視し、D/Eレシオ1.0倍未満を目標にしています。ただし、将来の成長に向けた投資には時機を逸することなく実施することが肝要と考えており、引き続きD/Eレシオに留意しつつも1.0倍にこだわらず、収益力の強化に取組んでまいります。
下表に、2018年中期経営計画における主な経営指標と目標(2018年5月公表)、およびこれまでの実績を示します。なお、新型コロナウイルス感染症の影響が不透明であり、外部環境の前提が大きく変化しているため、2021年度目標の達成時期が遅れる可能性があります。
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2018年度実績 |
2019年度実績 |
2021年度目標 |
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売上高 |
(億円) |
3,367 |
3,396 |
3,750 |
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海外売上高比率 |
(%) |
30.5 |
32.3 |
35.0 |
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営業利益 |
(億円) |
217 |
228 |
300 |
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営業利益率 |
(%) |
6.5 |
6.7 |
8.0 |
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親会社株主に帰属する 当期純利益又は親会社株主に 帰属する当期純損失(△) |
(億円) |
△6 |
138 |
160 |
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ROE |
(%) |
- |
7.8 |
≧8.0 |
|
ROA |
(%) |
4.7 |
4.7 |
≧7.0 |
|
D/Eレシオ |
(倍) |
0.93 |
0.98 |
<1.0 |
③マテリアリティの特定
2020年5月に、マテリアリティ(重要課題)を特定しました。GRIスタンダード、SASBスタンダード、国連グローバル・コンパクト、ISO26000、各種ESG調査などを参照してロングリストを作成したのち、当社役員・従業員へのアンケート、ヒアリングを経て、重要性を整理しました。そして、理念体系「TOYOBO PVVs」に沿って、マテリアリティ8項目を特定しました。
マテリアリティの前提として、「コーポレート・ガバナンス」「人権の尊重」「安全・防災・品質」の3項目を基本事項と捉えます。マテリアリティは、「ソリューション提供力(事業を通じた貢献)」、「サプライチェーンマネジメント」、「製品のライフサイクルマネジメント」、「人材マネジメント」、「温室効果ガス削減」、「環境負荷低減」、「データ・セキュリティ、プライバシー」、「コンプライアンス」の8項目です。このマテリアリティをもとに、各ステークホルダーとのコミュニケ―ションを拡充していきます。
今後は、本マテリアリティに従い、目標(KPI)設定、施策立案、進捗管理をすると同時に、マテリアリティを長・中期経営計画にも反映していきます。
④2025年度に向けた長期構想
企業理念体系、およびマテリアリティにある「ソリューション提供力(事業を通じた社会貢献)」を実現するため、2020年4月、従来の製品・技術を軸としたプロダクトアウト型の組織体制から、最終のお客様、マーケットを意識したソリューション型の組織体制に改編しました。「フィルム・機能マテリアル」「モビリティ」「生活・環境」「ライフサイエンス」を成長分野と位置づけて、社会をゆたかにする事業に積極投資し、長期的な成長を実現します。
具体的には、2025年度、連結売上高5,000億円をめざし、下表に示します各分野の「めざすべき姿」を設定し、ソリューション提供を加速していきます。
また、地球温暖化・気候変動を事業活動の継続に関わる大きなリスクの一つと認識し、生産および物流における温室効果ガスの排出量削減に取り組んでいます。天然ガスへの燃料転換、生産効率の向上、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入などを進め、温室効果ガスの排出量を2013年度比で2030年度までに30%、2050年度までに80%削減することをめざします。
当社グループは、ESGへの取り組みを強化する一環として、2020年1月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に賛同を表明するとともに、「TCFDコンソーシアム」に参画しました。また、「国連グローバル・コンパクト」に署名し、「人権尊重」「労働」「環境」「贈収賄を含む腐敗防止」に留意した活動を進めていきます。
(3)経営環境及び各事業部門の取組み
当社グループを取り巻く事業環境については、足元においては新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界経済はリーマンショック以来の大幅な減速となっています。個人消費の落ち込みに加え、自動車産業の減産影響を受け、多くの企業活動が停滞しています。新型コロナウイルス感染の収束時期の見通しが立てにくいうえ、早期に収束した場合でも、経済活動の正常化までに相当時間がかかる状況です。
当社グループにおいては、世界的な自動車減産の動きは、エンジニアリングプラスチック、エアバッグ用基布事業など自動車関連製品に大きな影響を及ぼしています。また、個人消費の落ち込みは、衣料繊維事業などに影響が出ています。その対応策として、国内外の一部の工場休止などを実施し、機動的に在庫・生産調整を進めます。
事業運営においては、従業員の健康・安全を最優先にした運営を心がけています。工場では、感染予防対策、感染者発生時対策、BCP対応手順を策定した上で、生産・出荷活動を続けています。本支社等の従業員に対しては、在宅ワークを推奨し、緊急事態宣言中は出社率20%以下、緊急事態宣言解除後も50%以下を目安に、新たなワークスタイルを推進しています。
なお、不測の事態を想定し、手元資金を厚めに確保すると同時に、在庫の圧縮と不急の支出を見直すOC100(Overcome Corona 100)活動を進めています。
当社グループは足元の厳しい事業環境に対応しつつも、中長期の成長をめざし、下記の取り組みをすすめていきます。なお、以下の記載にあたっては、2020年4月からの組織改編後の組織区分に基づいて記載しています。
①フィルム・機能マテリアル ソリューション
「環境対応製品・ソリューションにおけるグローバルトップランナー」をめざします。
・液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”は、非吸湿性、耐久性に優れ、価格競争力もあり、外部環境が厳しい中、液晶TV用途に販売を着実に伸ばしています。さらなる需要増に応えるべく、新製造設備による増産体制を整えます。
・セラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”は、平滑性に優れており、ハイエンド品向けに販売を伸ばしています。新加工設備により、生産能力を2倍に拡大します。
・フィルム事業基盤をより強固にするため、2019年10月1日付で、帝人株式会社が保有する子会社2社の全株式を取得し、一体運営を開始しています。技術・生産の両面で連携を強化し、シナジー効果を発揮していきます。
・透明蒸着フィルム“エコシアール”は、インドネシアのPT.TOYOBO TRIAS ECOSYAR で生産を開始し、フードロス低減に貢献できるフィルムとして、本格的に国内外に展開していきます。
・PETボトルリサイクル樹脂を80%以上使用、厚みを1/2にした飲料ラベル用フィルム、さらには、植物由来樹脂を使用したフィルムなど、環境に配慮したフィルムの販売拡大に取り組みます。
なお、プラスチック廃棄問題はサプライチェーン全体で考えていくことが重要なため、海洋プラスチックごみ問題の解決に向け、プラスチック製品の持続可能な使用や代替素材の開発・導入を推進することを目的としたCLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)、欧州の軟包装分野の循環型経済の実現を推進するコンソーシアムCEFLEX(Circular Economy for Flexible Packaging)、そして、欧州のポリエステル関連企業のバリューチェーン全体を網羅するコンソーシアムPetcore Europeに参加しています。
②モビリティ ソリューション
「安全・安心・快適なモビリティ空間へのソリューションを提供するオンリーワンカンパニー」をめざします。
・エアバッグ用基布事業は、2018年の火災事故により原糸製造設備が焼失したため、原糸を外部から調達して事業を継続しています。原糸から基布まで一貫生産できるグローバルプレーヤーへの復活に向けて、原糸工場の再建を進めます。
・エンジニアリングプラスチックは、国内だけでなく海外の自動車メーカーへの拡大を図ります。
・当社グループにおけるモビリティ分野について、横断的なマーケティング活動を強化いたします。
③生活・環境 ソリューション
「快適・健康な生活環境づくりに貢献する事業群」をめざします。
・環境ソリューション事業においては、VOC処理装置および吸着エレメントの提供を通じて、国内外の顧客の環境対応の課題解決に引き続き支援するとともに、アクア膜事業は、FO膜など新技術を投入し、世界の水問題の解決にさらに貢献していきます。
・不織布事業においては、当社グループ内にある各種不織布、各種フィルター設計の技術、拠点を融合し、高機能不織布メーカーとして、自動車分野、空調、土木・環境分野に展開を進めます。
・繊維機能材事業においては、スーパー繊維は、自転車タイヤ用途、船舶用ロープ用途など、高強力、軽量などの特性を生かす用途に拡大しています。機能性クッション材“ブレスエアー”は、2018年の火災事故後、2019年9月に工場を再建し、製造・販売を再開しています。
④ライフサイエンス ソリューション
「健康社会の実現・高水準医療提供のために仕組みづくり」をめざします。
・バイオ事業では、1940年代に研究を始めた酵母培養技術を進化させ、自己血糖センサー用酵素、PCR酵素などに注力しています。新型コロナウイルス感染症に対しては、特殊酵素等により遺伝子抽出工程を短くし、増幅速度も速め、最短60分強で新型コロナウイルスを検出・測定するキット(研究用試薬)を開発しました。2020年5月に咽頭拭い液検査、同6月に唾液検査において公的医療保険適用の対象となり、検査機関に出荷しています。
・医用膜事業においては、国内外の人工透析患者の増加に対応するとともに、新製品の開発、事業化を進めてまいります。
なお、新型コロナウイルス感染症に関して、当社は、PCR検査キットのみならず、医療用フェイスシールドに用いるフィルム、医療現場の防護服に活用されるエアバッグ用基布、マスク用材料などを提供しております。
当社グループは、今後は、企業理念実現をめざし、社会課題の解決へのお役立ちを通じて、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
当社グループの経営成績及び財政状態等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主なリスクは以下のとおりです。ただし、以下に記載したリスクは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。
なお、記載内容のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループでは、当社グループのCSR活動の原点である企業理念『順理則裕』を事業活動の基盤として、社会に役立つ製品やサービスを提供し、「企業価値」と「社会価値」をともに高めることに取り組んでいます。リスクマネジメントの体制としては、取締役社長を委員長とする「CSR委員会」を設置し、当社グループ全体にわたって各種のリスクに対応しています。なお、「CSR委員会」は、2020年4月1日付で「サステナビリティ委員会」に名称変更し、グローバルな社会・環境問題を解決する取組みも加え、あらゆるステークホルダーに対する取組みを一元的に把握、監督しています。
当社グループでは、中長期的な成長の実現をめざし、2018年中期経営計画を策定しています。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、2018年中期経営計画では2021年度を最終年度とし、当社グループが特に重視する経営指標の目標を示しています。これらの目標については、策定時に当社グループが入手可能な情報に基づいて策定したものですが、2018年9月に発生した当社敦賀事業所の火災事故により、エアバッグ用基布事業など一部の事業環境は大きく変化しています。さらに、以下の(1)から(15)のリスクもしくは以下に記載したリスク以外のリスクが顕在化し直接的または間接的に影響を受けるなど外部環境が変化した場合、種々の対策を講じているもののそれらの対策が有効に機能しない場合や想定以上の事態が生じた場合などには、2018年中期経営計画で定めた目標が達成できない可能性があるとともに、当社グループの経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
<既発生もしくは発生の蓋然性の高いリスク>
(1)災害・事故・感染症の発生
当社グループは、国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、事故防止のため、それぞれの工場ほか各事業所で老朽設備の更新や設備管理の充実をはかるとともに、事故を想定した訓練やオペレータ教育を推進するなど、可能な限りその発生を未然に防ぐように努めています。しかしながら、それらの工場ほかで大規模な地震、風水害、雪害などの自然災害や火災等の事故および新型コロナウイルスや新型インフルエンザなどの感染症が発生した場合、あるいは取引先において同様の災害被害等が発生した場合には、当社グループの生産活動ほかに著しい支障が生じるなど、事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
2018年9月の敦賀事業所の火災後、保安防災活動の見直しを行い、社会からの信頼を再び回復できるよう、全グループ一丸となって取り組んでいます。第三者の専門家によるアドバイスに基づいて構築した「火災リスクの点検要領」を用いて当社グループの主要な生産現場を総点検し、生産現場の消防火設備の機能向上を計画的に推進しています。また、自然災害に対しては、建物の耐震補強をはじめ事業所および工場のインフラの整備と緊急時の対応訓練などにより減災対応を継続的に実施しています。
2019年12月以降に中華人民共和国湖北省武漢市において、新型コロナウイルス感染症が報告されて以降、世界各地に拡大しています。このため、日本を含む世界経済は大幅に停滞し、経済活動の正常化には時間がかかることが予想されます。今後は、世界的な自動車の生産の減少、スマートフォンなどの電子機器の需要減少、個人消費の縮小、サプライチェーンの混乱などが、当社グループのさまざまな事業に影響を及ぼすことが懸念されます。事業への影響については、特に、自動車生産の減少により、エンジニアリングプラスチック事業やエアバッグ用基布事業などに大きな影響を及ぼし、個人消費の低迷は衣料繊維事業などに影響を及ぼしますが、新型コロナウイルス感染症の収束時期が見通せないため、適正かつ合理的に算定することが困難な状況です。今後の対策として、エアバッグ用基布製造設備などにおいて機動的に在庫・生産調整などに取り組み、影響を最小限に抑えるよう努めます。原材料の調達については、有価証券報告書提出日現在において、調達に支障をきたし生産が滞るような状況にはなっていません。また、従業員の安全と健康を最優先に本支社は在宅勤務の徹底、工場は感染予防策、感染者発生時対策、BCP対応手順を策定した上で操業を行っています。財務面では、OC100(Overcome Corona 100)活動として、不急のキャッシュアウト時期の見直しや在庫の削減に取り組み、100億円規模のキャッシュアウトを一時的に減らし、不測の事態に備えます。
(2)政治・経済情勢のさらなる悪化
当社グループは、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、衣料繊維などの各種製品を、国内外の各地で生産し、国内外の様々な市場で販売しています。このため、当社グループの当該生産拠点や主要市場において、政治的混乱や深刻な景気後退などが生じた場合には、当社グループの生産や販売が縮小するとともに、それらの事象による影響が長期にわたって続くことが予想される場合には、固定資産の減損損失の計上や繰延税金資産の取崩が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、販売に際し、与信取引を行っています。そのため、取引先の信用悪化や経営破綻などによる損失が発生する与信リスクを負っています。当社グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、過去の貸倒実績率等に基づき、貸倒引当金を計上しています。しかしながら、景気後退などにより重要な取引先が破綻した場合には、貸倒引当金を大幅に超える貸倒損失が発生するなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。そのため、与信管理制度のもと、取引先別に限度額を設定し、主な取引先の信用状況を決算期ごとに把握するなど、与信リスクをミニマイズするための対応策をとっています。
当社グループでは、米国を中心とした保護主義政策が広がりをみせる中、特に、米中貿易摩擦による影響や中国経済の減速について懸念しています。当社グループは、中国向け輸出および中国国内での売上高は連結売上高の10%弱を占めています。そのため、中国国内の景気の悪化や設備投資の先送りなどにより、アクリル繊維事業やエンジニアリングプラスチック事業などの販売への影響が懸念されます。また、自動車の減産による影響も懸念されます。当該影響が長期化する可能性もあることから、サプライチェーンの見直しや他用途展開などの対策を検討してまいります。
<中長期的なリスク>
(3)原材料の購入
当社グループは、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、衣料繊維分野における各種製品を生産するため、様々な取引先から原材料を購入しています。主要な原材料として、主に石油化学製品であるポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン樹脂などがあります。これらの原材料はリスク管理の観点からも可能なかぎり複数の取引先からの購入を行っていますが、自然災害、疾病、ストライキ、輸送上の問題、取引先の破たんや事業撤退、縮小や事故などが発生した場合、必要量の原材料を確保できない可能性があります。また、新型コロナウイルス感染拡大の影響が長期化した場合、サプライチェーンの混乱や原材料の確保が難しくなり、当社グループの生産、販売へ影響を及ぼす可能性があります。また、都市封鎖や外出制限が実施された際には、物流網も混乱し、必要な原材料調達に支障をきたす可能性もあります。さらに、原材料の確保ができた場合でも、原油価格の上昇や当該原材料の需給バランスなどにより、購入価格が高騰する可能性もあります。そのような場合には、当社グループで生産縮小やコスト上昇が生じる可能性があります。
当社グループでは、適正な取引方針を確立し、持続可能な社会の発展を支える責任ある調達・物流を行っています。法令遵守、公正な取引、人権尊重、環境配慮など、サプライチェーンの中でSDGsを達成していくために、「CSR調達ガイドライン」に基づく調達・物流の実現を目指しています。
(4)製品の欠陥等
当社グループは、「地球環境・安全」「PL/QA」各委員会の活動などにより、製品の欠陥などの発生リスクを未然に防止しながら、所定の品質管理基準に従って、フィルム・機能樹脂、産業マテリアル、ヘルスケア、衣料繊維などの各種製品を生産しています。しかしながら、全ての製品に欠陥がなく、将来的に不良品が発生しないという保証はありません。特に、エアバッグ用基布などの自動車の安全に係わる製品や医薬品製造受託事業などで何らかの原因で製品の安全性や品質に懸念が生じた場合には、お客様の生命にかかわるとともに、製品回収等により、お客様ならびに関係先に対する補償につながる可能性があります。当社グループは、製造物責任賠償保険に加入していますが、最終的に負担する損害額を保険でカバーできるとも限りません。このため、重大な製品の欠陥などが発生した場合には、多額の損害賠償の支払いや当社グループの信用失墜が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、PL/QAアセスメントを実施し、各部門、グループ会社のPS(Product Safety:製品安全)活動を確認、改善しています。さらに、PSとPLのリスク度合いを判定する基準を設け、この基準に基づき、製品開発から販売までの各段階で審査を行い、リスクに事前対応することで、お客様等に掛かるリスクの低減に努めています。
(5)人材の確保
当社グループでは、人材を最も重要な経営の源と考えています。多様な個性や意見を持つ従業員一人ひとりの成長をサポートし、社内で活躍・キャリアアップできる環境を整えることで、グループ全体の存続・発展が可能になると考えています。一方、少子高齢化に伴う労働人口の減少や雇用情勢の変化などで、高度な専門性を有した人材や将来の幹部になりうるリーダーシップを兼ね備えた人材を確保、育成できない場合は、組織の競争力が低下し、事業活動が停滞するなどの可能性があります。
当社グループでは、成長戦略実現への寄与を目指し、次世代経営人材の育成に力を入れています。併せて、人材の多様性を活かすことを主眼に、キャリア採用者の教育や女性活躍推進活動にも積極的に取り組んでいます。また、海外事業所の選抜人材を対象とした「ナショナルスタッフ研修」も開催し、働き方・キャリア・性別・国籍・人種・信条の異なる人たちが互いに認め合い、価値創造を実現するための組織力の向上を目指しています。
(6)気候変動
地球温暖化に伴う気候変動の影響が、台風や集中豪雨といった自然災害の増加や亜熱帯化による自然生態系の変化といった形で顕在化し、社会にも多大な影響を及ぼしつつあります。当社グループでは、気候変動は事業活動の継続に対するリスクが大きいと認識し、生産および物流における温室効果ガスの排出量削減に取り組んでいます。
当連結会計年度において、当社グループは温室効果ガス排出のさらなる削減に向けて、長期ビジョンを定めました。その中で、新たに2050年度までに排出量を「80%削減(2013年度比)」することを目標として設定しました。また、当社は、2020年1月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言への賛同を表明し、「TCFDコンソーシアム」に参画しました。この賛同表明およびコンソーシアムへの参画を機に、気候変動に関するシナリオ分析を進め、事業へのリスクと機会を明らかにした上で中長期の戦略を策定していきます。
(7)環境負荷
近年、海洋プラスチックごみによる海洋汚染問題は、グローバルな共通課題となっており、ポリマー(プラスチック)を基幹素材として幅広く事業展開する当社グループにとって、プラスチックごみ問題は重要な課題と認識しています。今後、グローバルに廃棄プラスチックに関する規制が強化されることで、プラスチック製品の需要が減退し、当社グループの売上が減少するなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、環境への取組みとして、環境負荷低減に貢献する製品・技術の開発を進めるとともに、資源の有効活用にも取り組んでいます。例えば、銘柄によっては製造現場で発生したフィルム屑を溶融して再度原料として使用するなどの取組みを進めています。
また、プラスチック廃棄問題はサプライチェーン全体で考えていくことが重要なため、海洋プラスチックごみ問題の解決に向け、プラスチック製品の持続可能な使用や代替素材の開発・導入を推進することを目的とした
CLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)、欧州の軟包装分野の循環型経済の実現を推進するコンソーシアムCEFLEX(Circular Economy for Flexible Packaging)、そして、欧州のポリエステル関連企業のバリューチェーン全体を網羅するコンソーシアムPetcore Europeに参加しています。
(8)情報セキュリティ
当社グループは、事業の遂行に関連して顧客情報や機密情報など多くの重要情報を管理しています。これらの情報についてセキュリティ対策を講じていますが、自然災害等による通信障害、システムへの不正アクセスやサイバー攻撃を受けた場合など、システムの障害に伴う事業活動の停止、顧客情報や機密情報等の漏洩、詐欺被害などにより、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「情報セキュリティポリシー」を策定し、全情報資産の適切な管理・活用に努めています。また、「サイバーセキュリティ委員会」を設置し、技術的・専門的な対策のみならず、従業員の意識レベル向上や社内専門家の育成などを進めています。今後、事故時の対応力強化などを推進していきます。
(9)法規制およびコンプライアンス
当社グループは、事業を展開する各国において、製品の製造、品質、安全、環境、競争、輸出入、情報、労働、会計などに関する様々な法令等による規制を受けています。たとえば、主要な事業所で、環境関連の法規制強化や取水制限などが行われる場合、あるいは、現在使用している化学物質が使用禁止になる場合や使用濃度規制が行われる場合には、生産活動ほかの事業活動が大幅に制限され、あるいは、同規制を遵守するために、多額の設備投資や租税ほかの費用負担を余儀なくされる可能性があります。海外の主要市場国において、アンチダンピング法などの規制により、関税引き上げ、数量制限などの輸入規制が課せられた場合には、輸出取引が制約を受け、当社グループの売上減少が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、これらの規制に対し、当社グループおよび取引先において、不遵守や違法行為が発生した場合には、当社グループの信用失墜や行政処分など多額の損害が生じる可能性があります。
当社では、企業理念である「順理則裕」のもと、「合理的・論理的に考え、行動すること、道理、倫理、人間としての基本姿勢を尊重すること」をコンプライアンスの核として取組みを進めています。「東洋紡グループコンプライアンスマニュアル」をグループ従業員に配付し、読み合わせを行うなどルールの周知徹底、コンプライアンス意識の向上に努めています。当連結会計年度においては、贈収賄、贈答接待に関する規程の整備や周知・教育を行い、腐敗防止に向けた取組みの強化を行いました。コンプライアンスを推進する体制として、統括執行役員会議のメンバーが委員となり、経営の観点からグループ全体のコンプライアンスを推進するコンプライアンス委員会およびその下に具体的な取組みを検討、推進するコンプライアンス推進委員会を設けて、方針・基準の明確化や教育、研修、予防措置の実行性向上に取り組んでいます。
(10)海外での事業活動
当社グループは、米国をはじめ、欧州、中国、東南アジア、中南米などグローバルに事業を展開しています。そのため、世界経済全体の動向に加え、各国での予期しない法令、規制や政策等の変更、またはテロ、戦争、政変やその他の要因による社会的混乱などが生じた場合は、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、これらリスクに対しては、グループ各社での情報収集や外部コンサルタント情報等を通じて早期に認識し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処ができるよう、国ごとに「危機管理マニュアル」を策定し、海外リスクマネジメント体制の整備に努めています。
また、当社グループでは、各国の税法に準拠し、適正に納税を行っており、適用される各国の移転価格税制などの国際税務リスクについても細心の注意を払っています。しかしながら、税務当局との見解の相違により、結果として追加課税が発生する可能性があります。
(11)訴訟
当社グループは、当連結会計年度において重要な影響を及ぼす訴訟は提起されていません。当社グループは国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、その過程において、製造物責任、環境、労務、知的財産等に関し、当社グループに対し訴訟を提起される可能性があります。重要な訴訟を提起された場合には、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
<財務リスク>
(12)為替レートの大幅変動
当社は、海外から原材料の一部を輸入し、国内で生産した製品の一部を海外へ輸出しています。製品輸出高と原材料輸入高の差は大きくないため、中期的に見ると為替変動による業績に与える影響額は大きくないものと考えています。しかし、短期的には、外国通貨に対して円高が進行した場合、製造リードタイムが比較的長い製品は業績に対してマイナスの影響を与えます。このようなリスクに対して、先物為替予約などによりリスクを最小限にするよう努めていますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。
また、海外の連結子会社や持分法適用会社の経営成績は、連結財務諸表作成において円換算されるため、換算時の為替レートにより連結財務諸表に影響を及ぼします。加えて、円高が進行した場合、在外子会社等の換算差額を通じて自己資本が減少するなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(13)金利の大幅上昇
当社グループは、事業資金を主に金融機関からの借入や社債の発行などにより調達しています。これらの有利子負債のうち、金利変動リスクに晒されている借入金の一部は、支払金利の変動リスクを回避するために、金利スワップを主としたデリバティブ取引を利用しています。また、当社グループは「有利子負債と純資産(非支配株主持分を除く)の比率(D/Eレシオ)」を重視しており、D/Eレシオ1.0倍未満を目標としています。当連結会計年度末ではD/Eレシオは0.98倍であり、目標の1.0倍未満を維持しています。
(14)株価の大幅下落
当社グループは、市場性のある株式を相当量保有しており、株価変動リスクを負っています。株価が大幅に下落した場合には、その他有価証券評価差額金の減少や売却時に損失が発生する可能性があります。また、当社の企業年金においては、年金資産の一部を市場性のある株式により運用しており、株価の下落は年金資産を減少させるリスクがあります。当社は、純投資目的以外の目的である投資株式について、将来の事業戦略や事業上の関係などを踏まえ、当社の持続的な成長や中長期的な企業価値の向上に資するかどうかを毎年、取締役会で個別に検証を行い、株式保有継続の可否判断を行っています。
(15)固定資産の減損
当社グループは、工場用土地、建物、製造設備など事業用固定資産を保有し、生産・販売活動を行っています。これらの製造設備で生産される製品は市場や技術開発等の環境変化の影響を受け、収益状況が大きく低下する可能性があります。また、土地の時価下落等により保有資産の評価額が著しく低下するリスクもあります。収益性が低下した場合や保有資産価値が大幅に低下した場合、当該資産について減損損失の計上が求められるなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における当社グループを取り巻く事業環境は、前半は低金利に支えられ緩やかな景気拡大を維持したものの、後半は、米中貿易摩擦による中国経済の減速の影響などで世界的にデフレ懸念が台頭しました。年度末にかけては、新型コロナウイルス感染症の拡大が加わり、人の移動も含め経済活動の停滞と金融市場の混乱を招くなど、景気は一気に減速しました。
このような環境のもと、当社グループは、「2018年中期経営計画」において成長分野として位置付ける「フィルム&コーティング」、「モビリティ」、「ヘルスケア&ウェルネス」に注力してきました。特に、「フィルム&コーティング」では、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”が、厳しい外部環境にもかかわらず、販売を着実に伸ばしました。さらには、フィルム事業基盤をより強固にするため、2019年10月1日付で、帝人株式会社が保有する子会社2社の全株式を取得し、一体運営を開始しました。
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う世界経済の停滞は、当社グループの自動車関連製品をはじめとするさまざまな事業活動に影響を及ぼしはじめました。一方で、検査機関等の要請に対応し、新型コロナウイルスのPCR検査用試薬を大幅に増産しました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は前年度比29億円(0.9%)増の3,396億円となり、営業利益は11億円(4.9%)増の228億円、経常利益は同2億円(1.4%)増の180億円、親会社株主に帰属する当期純利益は、火災事故の受取保険金106億円を特別利益に計上したこともあり138億円(前年度は親会社株主に帰属する当期純損失6億円)となりました。
セグメント別の概況は、次のとおりです。
(フィルム・機能樹脂事業)
当事業は、フィルム事業、機能樹脂事業ともに好調に推移した結果、前年度に比べ増収増益となりました。
フィルム事業では、包装用フィルムは、世の中の環境意識の高まりを受け、環境に配慮した製品の販売が好調でした。工業用フィルムは、セラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”が電子関連部品の生産調整の影響を受けましたが、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”は生産性を向上し、大手偏光板メーカー向けの販売を順調に拡大しました。
機能樹脂事業では、エンジニアリングプラスチックは、世界的自動車減産の動きの中、新型コロナウイルス感染症による自動車メーカーの操業停止の影響を受け、さらに、中国向けの工作機械用途等の樹脂販売が伸びず苦戦しました。ポリオレフィン用接着性付与剤“ハードレン”は海外向けに販売を伸ばしました。
この結果、当事業の売上高は前年度比26億円(1.7%)増の1,588億円、営業利益は同28億円(20.5%)増の165億円となりました。
(産業マテリアル事業)
当事業は、火災事故の影響と需要減により、前年度に比べ、減収減益となりました。
エアバッグ用基布は、エンジニアリングプラスチックと同様に、自動車業界の生産鈍化に火災事故の影響も加わり、苦戦しました。スーパー繊維事業では、“イザナス”はロープ用途を中心に販売を伸ばし、“ザイロン”は自転車タイヤ用途などで販売を拡大しました。生活・産業資材事業では、機能性クッション材“ブレスエアー”は2019年9月に新工場を立ち上げ、生産・販売を再開しました。
この結果、当事業の売上高は前年度比11億円(1.7%)減の654億円、営業利益は同16億円(60.5%)減の10億円となりました。
(ヘルスケア事業)
当事業は、バイオ・メディカル事業は費用がかさみましたが、機能膜・環境事業はおおむね堅調に推移し、前年度に比べ、増収増益となりました。
バイオ・メディカル事業では、診断薬用酵素は海外への販売が好調に推移しましたが、医薬品製造受託事業は、GMP(医薬品等の製造および品質管理基準)対応にかかる費用がかさみました。
機能膜・環境事業では、機能フィルターは事務機器向けの販売が減少しましたが、溶剤を回収するVOC処理装置・エレメントは中国をはじめ海外の環境規制強化に伴い、販売を大きく伸ばしました。
この結果、当事業の売上高は前年度比47億円(13.7%)増の394億円、営業利益は同4億円(7.3%)増の55億円となりました。
(繊維・商事事業)
当事業は、前年度に比べ、減収減益となりました。
中東向け特化生地は、市況の回復により販売数量が増加し、ユニフォーム用途も企業向け制服の販売が順調に伸びました。一方、インナー用途とアクリル繊維は、原料価格変動と、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、中国向けの輸出が減少し、かつ、同国のサプライチェーンが混乱したことにより、低調な結果となりました。
この結果、当事業の売上高は前年度比33億円(5.0%)減の613億円となり、営業利益は同4億円(38.6%)減の6億円となりました。
(不動産事業、その他事業)
当事業では、不動産、エンジニアリング、情報処理サービス、物流サービス等のインフラ事業は、それぞれ概ね計画どおりに推移しました。
この結果、当事業の売上高は前年度比0億円(0.2%)減の146億円、営業利益は同4億円(17.5%)増の26億円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度比364億円収入が増加し、443億円の収入となりました。主な内容は、税金等調整前当期純利益197億円および減価償却費170億円による資金の増加です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度比149億円支出が増加し、392億円の支出となりました。主な内容は、有形及び無形固定資産の取得による支出309億円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年度比144億円支出が増加し、18億円の支出となりました。主な内容は、短期借入金の減少135億円、社債の償還による支出100億円、配当金の支払額36億円および社債の発行による収入250億円です。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比29億円増の251億円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
(イ)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
フィルム・機能樹脂事業 |
160,827 |
0.9 |
|
産業マテリアル事業 |
63,101 |
△6.6 |
|
ヘルスケア事業 |
41,875 |
9.0 |
|
繊維・商事事業 |
60,640 |
△6.6 |
|
不動産事業 |
- |
- |
|
その他事業(うち製造事業) |
22,915 |
1.4 |
|
合計 |
349,358 |
△1.0 |
(注)1.金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
2.外注生産を含んでいます。
3.消費税等の処理は税抜方式によっています。
4.不動産事業の生産実績はありません。
(ロ)受注実績
当社グループの製品は一部の受注生産を除き見込生産を行っています。
(ハ)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
フィルム・機能樹脂事業 |
158,833 |
1.7 |
|
産業マテリアル事業 |
65,405 |
△1.7 |
|
ヘルスケア事業 |
39,412 |
13.7 |
|
繊維・商事事業 |
61,328 |
△5.0 |
|
不動産事業 |
4,405 |
5.0 |
|
その他事業 |
10,224 |
△2.3 |
|
合計 |
339,607 |
0.9 |
(注)1.総販売実績に対する販売実績の割合が100分の10以上となる販売先はありません。
2.セグメント間の取引については相殺消去しています。
3.消費税等の処理は税抜方式によっています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計方針および見積り
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表作成にあたり重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」および「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 追加情報」に記載しているとおりです。
連結財務諸表の作成にあたっては、経営者の判断の下、一定の前提条件に基づく見積りが必要な場合があり、これらの見積りについては過去の実績等を勘案し合理的に判断しています。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(イ)財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前年度末比278億円(6.0%)増の4,889億円となりました。主な内容は、設備投資の増加等による有形固定資産の増加230億円および電子記録債権の増加43億円です。
当連結会計年度末の負債は、前年度末比264億円(9.4%)増の3,062億円となりました。主な内容は、社債の増加150億円および退職給付に係る負債の増加34億円です。
当連結会計年度末の純資産は、その他有価証券評価差額金などその他の包括利益累計額が88億円減少したものの利益剰余金が101億円増加したことなどから、前年度末比14億円(0.8%)増の1,826億円となりました。
また、財政状態に関する各種指標(連結ベース)は次のとおりです。
|
回次 |
|
第158期 |
第159期 |
第160期 |
第161期 |
第162期 |
|
決算年月 |
|
2016年3月 |
2017年3月 |
2018年3月 |
2019年3月 |
2020年3月 |
|
自己資本比率 |
(%) |
35.3 |
37.2 |
40.5 |
38.3 |
36.4 |
|
時価ベースの自己資本比率 |
(%) |
33.7 |
38.0 |
41.8 |
27.2 |
20.8 |
|
自己資本当期純利益率 |
(%) |
6.4 |
5.8 |
7.5 |
△0.3 |
7.8 |
|
キャッシュ・フロー対 有利子負債比率 |
(年) |
5.1 |
6.3 |
6.5 |
21.0 |
4.0 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ |
(倍) |
19.4 |
19.3 |
16.9 |
6.0 |
32.2 |
|
有利子負債自己資本比率 |
(倍) |
1.05 |
1.01 |
0.81 |
0.93 |
0.98 |
自己資本比率:非支配株主持分を含まない期末純資産/期末総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額[期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数]/期末総資産
自己資本当期純利益率:親会社株主に帰属する当期純利益/非支配株主持分を含まない期末純資産の期首・期末
平均
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:期末有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/(連結キャッシュ・フロー計算書)利息の支払
額
有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ):期末有利子負債/非支配株主持分を含まない期末純資産
当社グループは、財務の健全性の指標として特に有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)を重視しており、目標を1.0倍未満としています。当連結会計年度は、帝人株式会社が保有する子会社2社の全株式を取得しました。加えて、“コスモシャインSRF”製造設備の新設や“ブレスエアー”製造設備の再建など、設備投資額が大きく増加しました。このため、有利子負債は増加しましたが、D/Eレシオは当連結会計年度末で0.98倍と目標の1.0倍未満を維持しました。
(ロ)経営成績の分析
2018年中期経営計画の二年目にあたる当連結会計年度は、期初において売上高3,500億円、営業利益220億円を計画し、事業活動を進めてきました。その結果、当連結会計年度の売上高は3,396億円、営業利益は228億円となり、売上高は未達となりましたが、営業利益は計画を達成しました。
売上高については、前連結会計年度において連結子会社1社を譲渡したことによる影響等により計画に対して未達となりました。営業利益については、産業マテリアル事業は、世界的な自動車減産等により苦戦しましたが、フィルム・機能樹脂事業は、“コスモシャインSRF”の生産性を高め、販売を伸ばしたことなどから、期初の計画を達成しました。特に、“コスモシャインSRF”は液晶テレビ保護フィルム市場におけるシェアを約35%とし、前連結会計年度から約5ポイント増加したものと推定しています。また、当連結会計年度において、新型コロナウイルス感染症拡大により、海外の一部の国において操業を数週間停止しましたが、利益に与える影響は軽微で限定的でした。以上により、「総資本営業利益率(ROA)」は4.7%となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益については、特別利益に火災事故の受取保険金をほぼ計画どおり106億円計上しましたが、固定資産処分損40億円、火災による損失31億円等の特別損失95億円を計上したことなどから、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は138億円となりました。
(単位:億円)
|
|
2019年度 (計画) |
2019年度 (実績) |
増 減 (実績-計画) |
|
売上高 |
3,500 |
3,396 |
△104 |
|
営業利益 |
220 |
228 |
8 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
170 |
138 |
△32 |
当社グループは、2018年中期経営計画において、成長への積極的な投資を推進し、「不断のポートフォリオ改革」に取り組んでいます。当連結会計年度に実施した、主な成長への取組みは次のとおりです。
フィルム・機能樹脂事業
・フィルム事業基盤をより強固にするため、2019年10月1日付で、帝人株式会社が保有する子会社2社の全株式を取得し、一体運営を開始
・セラコン用離型フィルム“コスモピール”の新加工設備が2019年10月に稼働
・透明蒸着フィルム“エコシアール”の製造子会社であるPT.TOYOBO TRIAS ECOSYARが2019年11月に生産を開始
ヘルスケア事業
・PCR検査用試薬において、「新型コロナウイルス検出キット(研究用試薬)」を開発
全社共通
・中長期の成長のために、企業理念体系を再整理し、「TOYOBO PVVs」として体系化
これらの先行投資等を着実に実らせ、2018年中期経営計画の目標達成に努めます。
(ハ)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりですが、特に、2018年9月の当社敦賀事業所において発生した大規模火災を教訓として防災機能の強化を継続して推し進めます。また、新型コロナウイルス感染症の収束時期等が不透明な状況であり、経済活動の正常化には時間がかかる恐れがあることから、原燃料などの価格動向や為替変動について引き続き留意していく必要があると考えています。
(ニ)当社グループの資本の財源および資金の流動性について
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.契約債務
2020年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりです。
|
|
年度別要支払額(百万円) |
||||
|
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超3年以内 |
3年超5年以内 |
5年超 |
|
短期借入金 |
32,027 |
32,027 |
- |
- |
- |
|
長期借入金 |
84,360 |
8,510 |
27,875 |
30,380 |
17,595 |
|
リース債務 |
3,752 |
775 |
1,330 |
644 |
1,002 |
上記の表において、連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めています。
当社グループの第三者に対する保証は、関係会社の借入金等に対する債務保証です。保証した借入金等の債務不履行が保証期間内に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2020年3月31日現在の債務保証額は、3,102百万円です。
c.財務政策
当社グループは、運転資金および設備資金については、内部資金または借入により資金調達することとしています。このうち、借入による資金調達に関しては、短期借入金は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入金および社債は主に設備投資と投融資に係る資金調達です。
2020年3月31日現在、長期借入金の残高は84,360百万円です。また、マーケット環境の一時的な変化など、不測の事態への対応手段確保のため、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計17,500百万円のコミットメントライン契約を締結しています(借入未実行残高17,500百万円)。
(1)供与技術契約
|
契約会社名 |
契約項目 |
契約の内容 |
相手先 |
契約締結年月 (有効期間) |
対価 |
|
東洋紡㈱ (当社) |
活性炭素繊維 |
Kフィルターによる溶剤吸着処理装置に関する技術援助の供与 |
(米国) Met-Pro |
1980年7月1日 (1980年7月1日 ~ 自動延長) |
技術使用料ほか |
|
同上 |
同上 |
同上 |
(英国) CJB Developments |
1981年3月4日 (1981年3月4日 ~ 自動延長) |
同上 |
|
同上 |
同上 |
同上 |
(ドイツ) Durr Anlagenbau |
1984年10月18日 (1984年10月18日 ~ 1987年10月17日 ~ 自動延長) |
同上 |
|
同上 |
同上 |
同上 |
(韓国) 斗山機械株式会社 |
1991年8月5日 (1991年9月25日 ~ 1994年9月24日 ~ 自動延長) |
同上 |
|
同上 |
同上 |
同上 |
(台湾) 清隆企業股份有限公司 |
1993年9月1日 (1993年9月1日 ~ 1996年8月31日 ~ 自動延長) |
同上 |
|
同上 |
同上 |
同上 |
(米国) Durr Industries, |
1996年12月25日 (1996年12月25日 ~ 1999年12月24日 ~ 自動延長) |
同上 |
(2)株式の取得(子会社化)に関する株式譲渡契約締結
当社は、2019年5月22日開催の取締役会において、帝人フィルムソリューション株式会社およびPT.Indonesia Teijin Film Solutions(本社:インドネシア共和国)のそれぞれの株式を取得し、子会社化することについて決議するとともに、同日付で帝人株式会社との間で株式譲渡契約を締結し、2019年10月1日付で株式取得を完了しました。また、あわせて当該子会社2社の商号を東洋紡フイルムソリューション株式会社およびPT.INDONESIA TOYOBO FILM SOLUTIONSに変更しました。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりです。
当社グループは、「順理則裕」の企業理念のもと、「環境、ヘルスケア、高機能で、社会に貢献する価値を、創りつづけるカテゴリー・リーダー」をめざしています。長年培ってきた「重合」、「変性」、「加工」、「バイオ」のコア技術群をさらに発展・深化させるとともに、それらを組み合わせ、融合させることで、新製品の拡大、新事業の創出に注力しました。
当社グループの研究開発は、セグメントごとに担当事業部が直接運営する事業部研究部門と、中長期的視点から次代を担う新製品・新技術を開発する全社共通のコーポレート研究部門とに大別されます。これらの研究開発のマネジメントは研究開発企画管理部が担当し、各部門相互の連携を図りながら、当社グループの総合力を発揮した研究開発活動を推進しました。
(フィルム・機能樹脂事業)
包装用フィルム分野では、環境対応商品(薄肉化)として高強度で縦・横・両方向に収縮可能な熱収縮性ポリエステルフィルム“スペースクリーン”及び高耐熱高剛性ポリプロピレンフィルムの用途が拡大し、環境を意識し、バイオマス原料を使用したポリエステルフィルム“バイオプラーナ”やリサイクル原料を使用したポリエステルフィルム“サイクルクリーン”も採用が拡大しました。さらに、ナイロンフィルムでもバイオ原料を使用した製品を上市し、環境意識が高い大手ユーザーでの採用が進みました。食品用途以外の業界についても“オリエステル”等でショッピングバックや折り紙、ブックカバー、ひねるだけで臭いが気にならないおむつ処理袋“ひねってポイ”に加え、モノマテリアルを意識したポリエステルシーラントとしての採用が進みました。
工業用フィルム分野では、情報通信技術の進展により拡大するセラミックコンデンサの小型大容量化や高信頼性に対応する離型フィルム“コスモピール”の開発を継続的に進めています。また新生産機は、2020年に稼働し、より高機能でクリーンな製品を提供します。超複屈折フィルム“コスモシャインSRF”は、ディスプレイの高画質対応やパネル加工性の優れた製品を開発し、採用が進んでいます。拡大している要望量に応える新生産機は、2020年生産開始します。さらに環境に配慮した製品の開発も積極的に行い、リサイクル樹脂を使用したフィルム“リシャイン”、“クリスパー”、“カミシャイン”の採用も増えています。
重金属を含まず環境に優しいポリエステル重合触媒“TOYOBO GS Catalyst”については、その優れた特徴を活かし、機能性フィルムや特殊繊維用途、成形用途への拡大が進むなど、循環型経済に貢献しています。また、GS触媒ライセンス事業については、海外大手PETメーカーにおける商業生産が拡大しており、さらなるグローバル展開を図っていきます。また、環境を意識したバイオ由来の樹脂開発にも取り組んでいます。
エンジニアリングプラスチック分野では、自動車用途で年々高まる軽量化要求に応えるべく種々の素材で開発を進めました。その結果、金属代替樹脂、ゴム代替樹脂などの用途を中心に日系の自動車主要車において計画通りの採用となりました。また、環境対応ニーズの高まりに合わせて超微細発泡技術、超耐熱技術、異種素材接着技術を加味したグレードを軸に自動車の軽量化などに提案する一方で、未来のMaaSに先行すべき緻細化対応できる素材の開発も強化しています。バイオマス原料を用いた高融点ポリアミド樹脂“バイロアミド”については超耐熱を活かした電子部品用途を増やしています。また、着実な海外拠点拡大を進める中で、強みの自動車内装用途中心に欧米自動車メーカーへの採用も増えつつあります。
高機能共重合ポリエステル樹脂“バイロン”、高耐熱共重合ポリアミドイミド樹脂“バイロマックス”、変性ポリオレフィン樹脂“ハードレン”、“トーヨータック”は、電気電子、自動車内外装の塗料、接着用途でさらに拡大を続けています。“バイロン”では5Gに対応する高周波でも伝送損失が少ない低誘電性接着剤を新たにラインナップし、電子製品分野の接着用途でさらに拡大を続けています。“バイロマックス”は高耐熱と高耐久性が評価され、スマートフォン周辺デバイスでの採用が拡大しています。“ハードレン”は接着が難しいポリオレフィン用の接着付与材として、国内外の自動車外装プラスチック塗料用途に展開し、市場拡大を続けています。“バイロン”、“ハードレン”共に昨今の環境問題から水性化、ホットメルト化をキーワードに開発を続けています。
以上、当事業に係る研究開発費は
(産業マテリアル事業)
高強力繊維“ツヌーガ”は、優れた耐切創性能を生かした手袋向けの販売が好調ですが、アプリケーション開発にも力を入れ、さらに用途の拡大を目指しています。
超高強力ポリエチレン繊維“イザナス”では、紡糸技術を深化させることにより、これまでよりも強度と耐久性を高めたグレードを開発しました。主に釣糸向けの販売拡大に寄与しています。
エステル短繊維事業では、新興国のニーズにマッチした原綿の開発が加速しました。今後もローカルニーズを的確に捉えた素材開発を行うと共に、持続可能な社会づくりを目指して、環境配慮型の短繊維の研究開発も進めます。
三次元スプリング構造体“ブレスエアー”は、2019年9月に新工場が稼働し、自社生産を再開しました。鉄道分野、自動車分野では、“ブレスエアー”の快適性や安全性が認められ、新型車両のシートに採用されました。また、繊研新聞社が企画する第50回繊研合繊賞ヒット賞を受賞しました。
以上、当事業に係る研究開発費は
(ヘルスケア事業)
バイオケミカル分野では、糖尿病検査に使用される抗体の開発に成功し、販売を開始しました。診断システムでは尿沈渣検査装置をバージョンアップし、さらに精度の高い診断を実現しました。バイオ研究試薬では、核酸精製不要PCRの自社技術を生かした新型コロナウイルス検出試薬キットを開発し、検査時間短縮に貢献しました(販売開始は2020年4月)。
医療機器分野では、神経再生誘導チューブ“ナーブリッジ”が手指部などで標準治療となりつつあり、患者様の治癒に貢献しています。骨再生誘導材“ボナーク”は保険適用も含めた上市準備を進めています。
人工腎臓用中空糸膜では、血液濾過用ならびに血液透析用の製品ラインアップの充実に向けて開発を進めました。また、引き続き商品の生産効率の向上に向けたプロセスの開発に取り組みました。
水処理膜では、海水淡水化用正浸透膜の開発と、モジュールの高性能化、およびその実用研究を進めました。
VOC排気ガス処理分野では、吸着濃縮装置“ハニロータ―”の新型装置の開発、ならびに新型“Kフィルター”窒素脱着式回収装置の開発を進めました。
フィルター分野では、“静電フィルターエリトロン”の高性能化により、新型空気清浄フィルターユニットならびに素材の開発を進めました。
電池分野では、各種電池関連素材の開発に取り組みました。
以上、当事業に係る研究開発費は
(繊維・商事事業)
繊維・糸構造の制御技術を活用した商品開発を進め、スポーツ分野ではポリウレタン繊維不使用で今までにない伸縮性を実現した新素材“ニュートロン”、インナー分野では快適性を追求した超速乾素材“速衣-mix”、ユニフォーム分野ではSDGs対応でオールシーズン展開が可能な多機能エコ素材“オールフレックス”を開発し、当社総合展にて好評を得ました。
フィルム状導電素材“COCOMI”では、心拍計測用標準ウェアを4タイプ発表し、2020年度から販売を開始します。また、サイクリング用心拍計測ウェア、畜産用心拍計測ベルト、心拍数・呼吸状態同時計測システムなど、他分野への応用検討を進めていきます。
機能材分野では、活性汚泥法に適した水処理用精密ろ過(MF)膜“FILPLATE”を開発、販売を開始しました。膜性能の耐久性が高く、従来法に比べシステムの大幅な省スペースが可能で、今後環境対策商品として拡販に努めます。
以上、当事業に係る研究開発費は
(全社共通)
全社共通の研究開発組織であるコーポレート研究所は、当社グループの将来を担う新製品・新技術の開発を行うだけでなく、各種分析・評価業務、コンピューターシミュレーションやAI(Artificial Intelligence)を用いた解析業務を通じて、研究開発全般を支援する全社研究インフラとしての機能も有しています。また、新技術の調査および研究開発のスピードアップを図るため、ナショナルプロジェクトへの参画や国内外の企業、大学、研究機関との連携を通したオープンイノベーション活動を積極的に進めています。
当社の高分子重合技術や成形加工技術を駆使した耐熱性・寸法安定性に優れる新規ポリイミドフィルム“ゼノマックス”については、生産・販売会社「ゼノマックスジャパン株式会社」にて操業を開始しました。今後、電子ペーパーや各種センサー、次世代ディスプレー用途などでのさらなる展開を図るとともに、5Gや6G時代を見据えた開発も進めていきます。
また、当社は世界トップレベルのベンチャーアクセラレーター「Plug and Play」とパートナーシップ契約を締結、直近でも欧州を拠点にサステナブルな技術の社会実装を目指す企業に特化したベンチャーファンド「Capricorn Sustainable Chemistry Fund」への投資を実施するなど、当社のコア技術が応用できるスタートアップ企業とのオープンイノベーションをさらに推進し、これからの社会に役立つ製品開発を進めています。
以上、全社共通のコーポレート研究に係る研究開発費は29億円です。