文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1)経営方針
当社グループは、創業者である渋沢栄一が座右の銘の一つとしていた『順理則裕』を企業理念としています。『順理則裕』とは、「なすべきことをする、なすべからざることはしない。順理を貫くことで、世の中をゆたかにし、自らも成長する」という事業運営の姿勢を示すものと解釈しています。『順理則裕』は、いわゆるCSV(Creating Shared Value:社会課題の解決に貢献するとともに、経済的価値の向上を図り、企業価値を高める)の考え方と通底するものであり、当社グループは創業から約140年間、この企業理念を受け継いでまいりました。
2019年、当社グループは、あらためて渋沢栄一の精神の原点に立ち戻り、時代の変化に対応しながら、社会への貢献を通じて成長軌道を描き続ける会社となるために、企業理念『順理則裕』を企業理念体系「TOYOBO
PVVs」として再整理しました。
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[TOYOBO PVVs] ◇理念(Principle) 『順理則裕』 なすべきことをなし、ゆたかにする ◇めざす姿(Vision) 私たちは、素材+サイエンスで、人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループになります ◇大切にすること(Values) 私たちは、変化を恐れず、変化を楽しみ、変化をつくります。 ◇TOYOBO Spirit 挑戦、信頼、協働 |
しかしながら、2020年9月に当社犬山工場で火災事故が発生し、従業員2名が亡くなりました。また年央には、エンジニアリングプラスチックの品質に関する不適切事案も判明しました。当社グループはかかる事態を重大かつ深刻な問題と受け止め、今一度、企業理念体系をグループのすべてのメンバーの判断・行動の拠り所とし、全社一体となって、このような事故や品質問題を繰り返さぬよう、再発防止策の実行を徹底してまいります。
かかる認識のもと、2021年度は「信頼回復」を最優先課題として、経営方針を「持続的な成長に向けて、経営基盤を作り直す」と掲げ、改革に取り組んでまいります。
(2)2018年中期経営計画(2018~2021年度)
当社グループが特に重視する経営指標は、「営業利益」、「自己資本当期純利益率(ROE)」、「総資本営業利益率(ROA)」です。2018年中期経営計画(2018~2021年度)において、営業利益300億円以上、ROE8%以上を目標としています。また、当社グループ内の業績管理指標としてROAを採用し、ROA7%以上を目標としております。
財務体質に関しては、債務格付けの維持向上と資金調達上の安定性確保の観点から、「有利子負債と純資産の比率(D/Eレシオ)」を重視し、D/Eレシオ1.0倍未満を目標にしています。ただし、将来の成長に向けた投資には時機を逸することなく実施することが肝要と考えており、引き続きD/Eレシオに留意しつつも1.0倍にこだわらず、収益力の強化に取組んでまいります。
下表に、2018年中期経営計画における主な経営指標と目標(2018年5月公表)、およびこれまでの実績を示します。
2021年度は、工業用フィルムの増産効果、PCR検査関連製品の堅調な販売を見込んでいますが、原燃料価格上昇、防災・安全関連の費用増などを織り込んだ結果、中期経営計画の最終目標(売上高3,750億円、営業利益300億円、当期純利益160億円)を下回る、売上高3,600億円、営業利益270億円、当期純利益115億円を予想しています。
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[2018中期経営計画(2018年度~2021年度)] |
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経営指標 |
2018年度実績 |
2019年度実績 |
2020年度実績 |
2021年度目標 |
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売上高 |
(億円) |
3,367 |
3,396 |
3,374 |
3,750 |
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海外売上高比率 |
(%) |
30.5 |
32.3 |
33.0 |
35.0 |
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営業利益 |
(億円) |
217 |
228 |
267 |
300 |
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営業利益率 |
(%) |
6.5 |
6.7 |
7.9 |
8.0 |
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親会社株主に帰属する 当期純利益又は親会社株主に 帰属する当期純損失(△) |
(億円) |
△6 |
138 |
42 |
160 |
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ROE |
(%) |
- |
7.8 |
2.3 |
≧8.0 |
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ROA |
(%) |
4.7 |
4.7 |
5.4 |
≧7.0 |
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D/Eレシオ |
(倍) |
0.93 |
0.98 |
1.01 |
<1.0 |
・ROE=当期純利益÷(期首・期末平均自己資本)
・ROA=営業利益÷総資産
(3)経営課題と主な施策
①信頼の回復
2020年度に生じた火災事故、および品質の不適切事案に対する再発防止策として、「安全・防災」「品質」に関する組織体制を抜本的に見直しました。
「安全・防災」については、2020年12月に、グループ全体の安全と保安防災を統一的に管轄し施策を実行する「安全・保安防災推進本部」を設け、「安全をすべてに優先する組織風土」をめざして、防災マスタープラン(基本計画)の実行に着手しました。具体的には、工場単位、事業部門単位、本社・工場間、また当社グループ全体で行う各施策の過不足を検証し、実行と進捗を確実に管理することにより、安全・防災体制を強化するとともに、防災教育・研修を充実させ、安全文化をいっそう醸成してまいります。また、2018年の敦賀事業所の火災を受けて実施した「防災総点検」で計画された安全・防災投資計画の実行を加速し、2024年度までに80%完了する予定です。
「品質」については、2021年4月に全社共通組織として「品質保証本部」を設け、各事業の品質保証プロセスの徹底的な見直しに着手いたしました。今後は、この組織を軸に、グループ全体の「品質保証マネジメント体制」を再構築していきます。また、同日に、社長執行役員を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置し、リスクマネジメント活動(特定・分析・評価・対応)の統括、グループ全体のリスク管理に関する方針策定、組織・仕組みの構築と運用により、リスク管理体制の強化に努めてまいります。組織・仕組みに関しては、事業部門、管理部門、監査部門の3つのディフェンスライン体制を敷きます(リスクマネジメントを強化したガバナンス体制は下図のとおりとなります)。また、製品開発から販売までの各段階でPL/QAのリスク度合いを審査するPL/QAアセスメントを実施しておりますが、その内容・範囲・方法を見直しています。例えば、製品や製造活動における抜き取り・抜き打ち検査を追加いたします。加えて、人事ローテーション、コンプライアンス教育の見直し・強化を継続し、風土・意識を変えていく努力を続けてまいります。
かかる施策を複合的に実施し、当社グループ一体となって信頼の回復に取り組んでまいります。
②事業ポートフォリオの組み換え
収益性と成長性の二つの尺度で、事業を「拡大」「安定・維持」「改善」に層別し、各々の位置づけに応じた事業運営を行います。「拡大」事業は、当社グループに優位性があり、市場拡大が見込めることから、中・長期の成長拡大をめざして積極的な設備投資を行います。「フィルム」「ライフサイエンス」「環境」事業が該当します。「安定・維持」事業は、成長余地を見極めて対応していきます。「改善」事業は収益性が低いため、「改革マスタープラン」を実行していきます。このような事業ポートフォリオの組み換えを実行することで、グループ全体の資産効率の向上を図っていきます。
③未来への仕込み
全社横断の「みらいプロジェクト」を立ち上げ、デジタル社会、ヘルスケア、環境などの分野において、2030年度以降の事業化をめざす開発テーマを設定します。また、デジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の策定と実行、カーボンニュートラルの計画策定にも取り組みます。
④土台の再構築
モノづくりの現場力を高めるとともに、人材育成と風通しの良い職場環境の整備に取り組みます。また、ダイバーシティの推進、内部監査機能の強化・コンプライアンスの徹底など、持続的成長に必要な土台を再構築します。
(4)マテリアリティに対する取組み
当社グループは、2020年5月、マテリアリティ(重要課題)を下図のように特定しました。その一部について説明します。なお、「安全・防災・品質」については、(3)項 ①信頼の回復、に記載したとおりです。
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①温室効果ガス削減 近年、地球温暖化に伴う気候変動の影響が顕在化する中、当社グループでは地球温暖化・気候変動を事業活動の継続に関わる大きなリスクの一つと認識し、2050年度までに温室効果ガスの排出量をネットゼロ(実質ゼロ)とする「カーボンニュートラルの実現」を目標に掲げています。 |
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2050年度までの経過目標として、天然ガスへの燃料転換、生産効率の向上、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入などを進め、2013年度比で2030年度までに自社活動による温室効果ガス排出量を30%削減することをめざしています(Scope1,Scope2)。すでに、生産および物流における温室効果ガスの排出量削減を推進しており、2013年度比で2020年度は温室効果ガス排出量を26%削減しました。 カーボンニュートラルの実現に向けた取組みとして、2021年4月に「カーボンニュートラル戦略検討会議」および「カーボンニュートラル戦略検討クロスファンクションチーム」を設置しました。「カーボンニュートラル戦略検討会議」では、当社グループの戦略とマイルストーンの策定を目的に活動を始めており、全社横断的に組織される「カーボンニュートラル戦略検討クロスファンクションチーム」では、イノベーションの促進、アライアンスの推進、研究開発の加速、新たなソリューションビジネスの創出など、カーボンニュートラルの実現に向けた取組みを進めてまいります。 当社グループは、2020年1月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に賛同を表明し、「TCFDコンソーシアム」に参画しております。今後は、上記の諸活動と並行して、シナリオ分析を進めます。 |
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②環境負荷低減
当社グループは、フィルム、繊維、エンジニアリングプラスチックなど多くの事業で石化由来製品を扱っており、廃プラスチック問題は事業活動の継続に関わる大きなリスクの一つと認識しています。
すでに、廃プラスチック問題を意識した取組みを推進しており、PETボトルリサイクル樹脂を80%以上使用したPETボトルラベル用フィルム“サイクルクリーン”、ゴミを減らす目的で厚みを従来の半分にしたフィルム“スペースクリーン”、バイオマスを約20%使用したPETフィルム“バイオプラーナ”などを開発・販売しています。2020年度は、環境に配慮した包装用フィルムは、包装用フィルム事業の売上高の約20%を占め、前年度比約5%増加しました。
サーキュラーエコノミー(循環型社会)の定着や生態系への影響低減のため、本取組みをより強化し、リサイクル樹脂、またはバイオマスからなるリニューアブルプラスチックへのシフトを加速していきます。
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例えば、重金属フリーのアルミニウム系ポリエステル触媒“TOYOBO GS Catalyst”の展開を進めています。本触媒を使ったポリエステルはリサイクル性に優れます。 また、サーキュラーエコノミーの実現は一企業だけでは難しく、サプライチェーン全体での取組みが不可欠であるとの認識に基づき、サントリーMONOZUKURI エキスパート㈱など12社と、ケミカルリサイクル技術開発支援を目的とした合弁会社㈱アールプラスジャパンを設立しました。プラスチック課題解決に貢献すべく、回収プラスチックの選別処理、モノマー製造、ポリマー製造、包装容器製造、商社、飲料メーカーなど業界を超えた連携を進めていきます。その他にも、バイオマス100%のポリエチレンフラノエート(PEF)の開発に取り組んでおり、2023年から試験販売を開始する予定です。 |
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さらに、当社は独自に、1998年から環境に配慮した製品を“エコパートナーシステム”製品として認定・登録する取組みを進めています。製品のライフサイクル(原材料〜廃棄まで)を、設計・開発/原材料/製造/流通・包装/使用・消費/リサイクル・廃棄の6つのステージに分け、各ステージの環境影響を、廃棄物削減/温暖化防止/省資源/化学物質削減/その他の5つの環境貢献の観点で評価し、一定基準に達した製品を“エコパートナーシステム”製品として認定しています。現在、認定製品は売上高※1の約30%を占めていますが、今後、さらに本製品群を拡充していきます。
※1)東洋紡単体。環境貢献の複数基準の重複を含む
③人材マネジメント
従業員の一人ひとりが「誇り」と「やりがい」をもって働き、自らの成長を実感できる環境を作ることが、企業の持続性を高めることに通じると考えています。そこで、従業員を支える人事制度を見直し、多様な人材が活躍できるよう、専門人材を処遇し育成する仕組みを作り、併せて、経営人材を早くから育成し管理職層全体の底上げを図る、新しい人事制度を2022年7月から導入する予定です。
現在も、多様な人材が活躍できる会社をめざし、積極的にキャリア採用(中途入社)、女性採用を進めています。2020年度の実績では、全ての大卒採用者に占めるキャリア採用者の比率は約5割、大学新卒の女性入社比率は約4割となりました。今後は、管理職の女性比率も高めてまいります。
④ソリューション提供力(事業を通じた社会貢献)
2020年4月、「ソリューション※2提供力(事業を通じた社会貢献)」の実現のため、従来の製品・技術を軸としたプロダクトアウト型の組織体制から、最終のお客さま、マーケットを意識したソリューション型の組織体制に改編しました。
※2)最終顧客の視点から今と未来の社会課題を解決すること
ⅰ)フイルム・機能マテリアルソリューション
包装用フィルム事業は、現在、国内向けの食品包装用フィルムを中心に展開しています。その一つに、バリア性・防湿性が高く食品の賞味期限を延長しつつ、風味も損なわない透明蒸着フィルム“エコシアール”があります。国内外において、社会課題の一つにフードロスが挙げられており、この課題解決に貢献できる製品です。透明蒸着フィルムの世界市場は、年率10%の成長率とも言われており、2020年度からインドネシアのPT. TOYOBO TRIAS ECOSYAR で生産を開始し、国内のみならず海外に拡販していきます。
工業用フィルム事業は、液晶ディスプレイ用の液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”、セラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”を中心に拡販していきます。“コスモシャインSRF”は、透湿性が低いことによる優れた取り扱い性と価格競争力で、2020年度は前年度比約30%の増収となりました。2020年度に導入した新ライン(3号機)の稼働率を上げて、2021年度は前年度比20%の増収を計画しています。また、平滑性に優れた“コスモピール”は、2020年度は前年度比約20%の増収となりました。2020年度に導入した新加工設備の稼働率を上げ、2021年度は前年度比20%の増収を計画しています。ハイエンドセラミックコンデンサ市場の成長率は年率10%以上と言われており、さらなる加工設備の導入も検討し、引き続き拡販を進めていきます。
また、2019年、帝人㈱が保有する子会社2社の全株式を取得し一体運営を開始しています。そのうちの1社東洋紡フイルムソリューション㈱を、2021年4月において当社に吸収合併しました。これまで以上に、技術・生産・販売での連携を強化し、シナジー効果を発揮していきます。
ⅱ)モビリティソリューション
エンジニアリングプラスチック事業は、日系自動車メーカーへの長年の供給実績、豊富な製品ラインアップを強みに、世界4極での供給体制で国内外に販売を拡大しています。また、世の中のCO2削減の動きに対して、軽量化により金属部品の代替やEV車対応材料を展開していきます。
エアバッグ用基布事業は、東洋紡・PHP Fibers GmbH(独)グループにより、日本、中国、米国、タイ、欧州の世界5拠点でのグローバル展開を推進しています。Indorama Polyester Industries PCLとエアバッグ原糸生産合弁会社を設立し、2022年にエアバッグ用原糸工場(タイ)を稼働する計画です。日系のみならず外資系のお客さまへの販促活動を加速していきます。
さらには、当社グループではスパンボンド、バイロン・ハードレンなど多くの事業で自動車関連製品を販売しています。「モビリティマーケティング戦略部」による、組織を横断した体制・取り組みを強化し、当社グループ内のシナジー創出を図っていきます。
ⅲ)生活・環境ソリューション
海水淡水化膜、VOC(揮発性有機化合物)処理装置、自動車・資材・フィルター用途の高機能不織布、スーパー繊維、衣料繊維などを扱っています。当社独自の膜・フィルター技術、機能素材により、大気汚染、水不足といったさまざまな社会課題の解決に積極的に貢献していきます。
LIB(リチウムイオンバッテリー)セパレーター製造工程で使われる溶剤の処理能力に優れるVOC処理装置は、国内外に拡販していきます。また、現在、海水淡水化膜(RO膜(逆浸透膜))は中東を中心に販売していますが、より省エネルギーで海水を淡水化するFO膜(正浸透膜)や、産業排水の浄化にも有効なBC膜(塩水濃縮膜)などの開発・拡販を進めていきます。
ⅳ)ライフサイエンスソリューション
バイオ事業では、原料酵素から試薬、診断薬、そして機器システムまで開発・販売しています。さまざまな感染症の遺伝子検査薬・機器システムにより、公衆衛生の向上に貢献しています。2020年度には新型コロナウイルス感染症のPCR検査用原料酵素、試薬、診断薬、診断システムを開発・販売し、感染を早期に発見できるよう製・販・開一体で取り組んできました。2021年2月には世の中の緊急かつ強い需要に応えるため、生産量を倍増する体制としました。
医薬事業では、無菌注射剤の製造受託に特化し、日米欧のレギュレーションに対応できることを強みに、拡大する需要に応えていきます。
メディカル事業では、当社のセルロース系中空糸膜を使用した人工透析膜は生体適合性に優れ、アレルギー疾患を持つ患者のアレルギー発症が極めて少なく、安心して使っていただける製品として展開しています。さらには、人工透析膜の技術を発展させて、血液浄化膜にも拡大していきます。また、医療機器においては、神経再生誘導チューブ“ナーブリッジ”、骨再生誘導材“ボナーク”といった再生医療材料の拡販に努めます。
(5)新型コロナウイルス感染症拡大の影響および対応
2020年度は、新型コロナウイルス感染症拡大により、自動車関連製品、衣料繊維が影響を受けました。
自動車関連製品は、2020年度後半には世界的な自動車生産の復調に伴い販売は回復したものの、前半までの新型コロナウイルス感染症拡大による自動車減産の影響を補えませんでした。衣料繊維は、店頭販売が低調でした。特に、アクリル繊維は、中国市場の需要低下、アンチダンピング政策により厳しい事業運営を強いられていた中、新型コロナウイルス感染症拡大により、さらに市場環境が悪化し、減損損失78億円を計上しました。
一方、新型コロナウイルス感染症が拡大する中、世の中のPCR検査需要に応えるため、PCR検査用原料や試薬の生産量を倍増する体制をとりました。
また、新型コロナウイルス感染症拡大による市場規模の急激な収縮等が業績面・財務面に与える悪影響を考慮し、2020年度は全社的なコスト・事業資産・設備投資の圧縮活動OC100(Overcome Corona100) に取り組みました。例えば、機動的な在庫・生産調整により、2019年度に対する在庫増加を「ゼロ」に抑える目標を掲げ、たな卸資産は前年度比43億円の減少を達成しました。また、設備投資の内容を精査し「不急」の案件は実施時期を再考し、265億円の当初計画に対し233億円に抑えました。また、また、通常の国内関係会社でのキャッシュマネジメントシステムに加え、親会社から海外関係会社への緊急融資枠を設定し、不測の事態に備えました。
また、感染から従業員を守る施策として、マスクの着用、手洗いの励行、時差出勤や在宅勤務の推進、大規模会議・研修等の開催延期、不急の出張の延期、体調管理の徹底などに努めております。本社および支社においては、感染リスクの低減、感染拡大・集団感染の防止等を目的とし、出社率を制限する目標を定め在宅勤務を推奨・実施してきました。これを機に、在宅勤務が一般的になり働き方にも変化が見られております。
新たに変異株の感染が増加している中、引き続き必要な措置を講じていきます。
(6)サステナブルな経営に向けて
当社グループは、事業を通じて社会課題の解決に貢献し、従業員が「誇り」と「やりがい」を持って働き続けられる会社、持続的に成長できるサステナブルな会社をめざしています。
2021年度は、経営方針「持続的な成長に向けて、経営基盤を作り直す」を掲げて取り組んでまいります。併せて、2022年度にスタートする新中期経営計画「2025中計」、「サステナブル・ビジョン2030」を策定し、年度後半には公表させていただく予定です。
当社グループの経営成績及び財政状態等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主なリスクは以下のとおりです。ただし、以下に記載したリスクは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。
なお、記載内容のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
当社グループでは、当社グループの企業理念『順理則裕』を事業活動の基盤として、社会に役立つ製品やサービスを提供し、「企業価値」と「社会価値」をともに高めることに取り組んでいます。リスクマネジメントの体制としては、当社は、2021年4月1日付で、グループ全体のリスクを一元的に管理することを目的として、社長執行役員を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置しました。本委員会では、リスクマネジメント活動(特定・分析・評価・対応)を統括するほか、グループ全体のリスク管理に関する方針を策定することでリスクの未然防止・早期発見・再発防止を図るとともに、個別リスク発現時の適切な対応を可能とする実効的かつ持続的な組織・仕組みの構築と運用を目指すことにより、リスク管理体制の強化に努めてまいります。
当社グループでは、中長期的な成長の実現をめざし、2018年中期経営計画を策定しています。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、2018年中期経営計画では2021年度を最終年度とし、当社グループが特に重視する経営指標の目標を示しています。これらの目標については、策定時に当社グループが入手可能な情報に基づいて策定したものですが、2018年および2020年の火災事故、品質不適切事案および新型コロナウイルス感染症などにより一部の事業環境は大きく変化しています。さらに、以下の(1)から(16)のリスクもしくは以下に記載したリスク以外のリスクが顕在化し直接的または間接的に影響を受けるなど外部環境が変化した場合、種々の対策を講じているもののそれらの対策が有効に機能しない場合や想定以上の事態が生じた場合などには、2018年中期経営計画で定めた目標が達成できない可能性があるとともに、当社グループの経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
<既発生もしくは発生の蓋然性の高いリスク>
(1)災害・事故・感染症の発生
当社グループは、国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、事故防止のため、それぞれの工場ほか各事業所で老朽設備の更新や設備管理の充実をはかるとともに、事故を想定した訓練やオペレータ教育を推進するなど、可能な限りその発生を未然に防ぐように努めています。しかしながら、それらの工場ほかで大規模な地震、風水害、雪害などの自然災害や火災等の事故および新型コロナウイルスや新型インフルエンザなどの感染症が発生した場合、あるいは取引先において同様の災害被害等が発生した場合には、当社グループの生産活動ほかに著しい支障が生じるなど、事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
2018年9月の敦賀事業所の火災後、外部専門家の診断・指導等を踏まえ、防災対策を進めてまいりましたが、2020年9月27日に当社犬山工場において火災が発生し、大切な従業員の命を失う大事故を起こしてしまいました。「安全」「防災」を当社グループの最優先課題として、2020年12月より安全および保安防災活動の推進体制を見直し、より強力に対策の実行を開始しました。社会からの信頼を回復できるよう、全社一丸となって安全管理の徹底を図り、再発防止に努めてまいります。また、自然災害に対しては、建物の耐震補強をはじめ事業所および工場のインフラの整備と緊急時の対応訓練などにより減災対応を継続的に実施しています。
新型コロナウイルス感染症再拡大の影響により、国内を含む世界経済の正常化には時間がかかることが予想されます。当社グループにおいては、人の動きの制約解消の時期により特に衣料繊維事業などが影響を受けることが見込まれます。一方、世の中のPCR検査需要に応えるため、PCR検査用試薬、遺伝子検査装置などの提供に尽力していきます。
(2)政治・経済情勢のさらなる悪化
当社グループは、フィルム・機能マテリアル、モビリティ、生活・環境、ライフサイエンスなどの各種製品を、国内外の各地で生産し、国内外の様々な市場で販売しています。このため、当社グループの当該生産拠点や主要市場において、政治的混乱や深刻な景気後退などが生じた場合には、当社グループの生産や販売が縮小するとともに、それらの事象による影響が長期にわたって続くことが予想される場合には、固定資産の減損損失の計上や繰延税金資産の取崩が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、販売に際し、与信取引を行っています。そのため、取引先の信用悪化や経営破綻などによる損失が発生する与信リスクを負っています。当社グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、過去の貸倒実績率等に基づき、貸倒引当金を計上しています。しかしながら、景気後退などにより重要な取引先が破綻した場合には、貸倒引当金を大幅に超える貸倒損失が発生するなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。そのため、与信管理制度のもと、取引先別に限度額を設定し、主な取引先の信用状況を決算期ごとに把握するなど、与信リスクをミニマイズするための対応策をとっています。
当社グループでは、米中摩擦による環境変化により中国経済の勢いが鈍化することを懸念しています。当社グループは、中国向け輸出および中国国内での売上高は連結売上高の約10%を占めています。そのため、中国国内の景気が悪化した場合には、アクリル繊維事業やエンジニアリングプラスチック事業などの販売への影響が懸念されることから、サプライチェーンの見直しや他用途展開などの対策を図っています。
(3)第三者認証登録内容における不適切行為等
当社は、米国の第三者安全科学機関であるUnderwriters Laboratories(以下「UL」といいます)によって認証を受けているエンジニアリングプラスチック製品の一部の品番について、認証に関する確認試験時に、顧客に販売している製品と異なる組成のサンプルを提出していたことや、UL認証を取得している製品を製造する登録を受けていない工場で製造を行っていること等(以下「本件不適切行為」といいます)を確認しました。本件不適切行為についてULに報告等を行った結果、2020年10月28日付でUL認証を取り消された1製品に加えて、3製品について本年2月3日付にてUL認証登録を取り消され、他の3製品の一部品番(以下、本件不適切行為のあった製品を「本件不適合製品」と総称します)について当社よりUL認証登録の取消しを申し入れた結果、3月26日付にて取り消されました。これまで本件不適合製品を使用した最終製品に関して事故等の報告は受けていません。安全性や製品の性能について、今後もお客様のご協力を得て調査を継続してまいります。
また、本件に関連し、ISO(国際標準化機構)の登録認証機関であるロイドレジスタークオリティアシュアランスリミテッドによる特別審査を受けた結果、本年1月28日付で、当社が取得しているISO9001認証のうち、本件不適合製品を担当する部門に関わる認証範囲について認証を取り消されるとともに、当該ISO9001認証範囲に含まれる形でマルチサイト認証(統一認証)を取得している部門の認証範囲について認証を一時停止されましたが、一時停止されていた認証範囲については、本年6月9日付にて一時停止は解除されました。
当社は、度重なる不適切な事案を重く受け止め、引き続き実態把握と原因究明に向け、執行機関からの独立性を確保した対応委員会を主体として調査を進めています。今後の調査と、既に実施した第三者による調査等も踏まえて、実効性のある再発防止策を策定し、確実に実施してまいります。再発防止策の一つとして、本年4月1日付で新たに品質保証本部を設置しました。これまで各事業部門(ソリューション本部)にあった品質保証統括部および品質保証部を、品質保証部門の独立性を担保し、事業部門に対する牽制機能の強化を図ります。引き続き、適切な品質管理体制の再構築やガバナンスの向上に取り組むことにより、信頼の回復に全力で努めます。
今後、本件不適切行為に係る信用低下による受注の減少やお客様等への補償費用を始めとする損失の発生等が生じた場合には、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
<中長期的なリスク>
(4)原材料の購入
当社グループは、フィルム・機能マテリアル、モビリティ、生活・環境、ライフサイエンス分野における各種製品を生産するため、様々な取引先から原材料を購入しています。主要な原材料として、主に石油化学製品であるポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン樹脂などがあります。これらの原材料はリスク管理の観点からも可能なかぎり複数の取引先からの購入を行っていますが、自然災害、疾病、ストライキ、輸送上の問題、取引先の破たんや事業撤退、縮小や事故などが発生した場合、必要量の原材料を確保できない可能性があります。また、新型コロナウイルス変異株の感染拡大の影響により、サプライチェーンの混乱や原材料の確保が難しくなり、当社グループの生産、販売へ影響を及ぼす可能性があります。また、都市封鎖や外出制限が実施された際には、物流網も混乱し、必要な原材料調達に支障をきたす可能性もあります。さらに、原材料の確保ができた場合でも、原油価格の上昇や当該原材料の需給バランスなどにより、購入価格が高騰する可能性もあります。そのような場合には、当社グループで生産縮小やコスト上昇が生じる可能性があります。
当社グループでは、適正な取引方針を確立し、持続可能な社会の発展を支える責任ある調達・物流を行っています。法令遵守、公正な取引、人権尊重、環境配慮など、サプライチェーンの中でSDGsを達成していくために、「CSR調達ガイドライン」に基づく調達・物流の実現を目指しています。
(5)製品の欠陥等
当社グループは、所定の品質保証活動を行いながら製品の欠陥などの発生リスクを未然に防止し、フィルム・機能マテリアル、モビリティ、生活・環境、ライフサイエンスなどに関する各種製品を生産しています。しかしながら、全ての製品に欠陥がなく、将来的に不良品が発生しないという保証はありません。特に、エアバッグ用基布などの自動車の安全に係わる製品や医薬品製造受託事業などで何らかの原因で製品の安全性や品質に懸念が生じた場合には、お客様の生命にかかわるとともに、製品回収等により、お客様ならびに関係先に対する補償につながる可能性があります。当社グループは、製造物責任賠償保険に加入していますが、最終的に負担する損害額を保険でカバーできるとも限りません。このため、重大な製品の欠陥などが発生した場合には、多額の損害賠償の支払いや当社グループの信用失墜が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、PL/QAアセスメントを実施し、各部門、グループ会社の品質保証活動を確認、改善しています。さらに、製品開発から販売までの各段階でPSR(Product Safety Review)を行い、リスクに事前対応することで、お客様等に掛かるリスクの低減に努めています。
(6)人材の確保
当社グループでは、人材を最も重要な経営の源と考えています。多様な個性や意見を持つ従業員一人ひとりの成長をサポートし、社内で活躍・キャリアアップできる環境を整えることで、グループ全体の存続・発展が可能になると考えています。一方、少子高齢化に伴う労働人口の減少や雇用情勢の変化などで、高度な専門性を有した人材や将来の幹部になりうるリーダーシップを兼ね備えた人材を確保、育成できない場合は、組織の競争力が低下し、事業活動が停滞するなどの可能性があります。
当社グループでは、成長戦略実現への寄与を目指し、次世代経営人材の育成に力を入れています。併せて、人材の多様性を活かすことを主眼に、キャリア採用者の教育や女性活躍推進活動にも積極的に取り組んでいます。
また、当連結会計年度は新型コロナウイルス感染症の影響で開催出来ていませんが、例年は海外事業所の選抜人材を対象とした「ナショナルスタッフ研修」も企画し、働き方・キャリア・性別・国籍・人種・信条の異なる人たちが互いに認め合い、価値創造を実現するための組織力の向上を目指しています。
(7)気候変動
地球温暖化に伴う気候変動の影響が、台風や集中豪雨といった自然災害の増加や亜熱帯化による自然生態系の変化といった形で顕在化し、社会にも多大な影響を及ぼしつつあります。当社グループでは、気候変動は事業活動の継続に対するリスクが大きいと認識し、その対応として、カーボンニュートラルの実現を目指しています。具体的には、2050年度までに温室効果ガスの排出量をネットゼロ(実質ゼロ)を目指すことを目標として設定し、事業活動における温室効果ガスの排出量削減に取り組んでいます。また、生産や物流における温室効果ガスの排出削減だけでなくバリューチェーン全体を視野に入れて戦略とマイルストーンを策定し、カーボンニュートラルの実現に着実に取り組むために、「カーボンニュートラル戦略検討会議」を新設しました。さらに、「カーボンニュートラル戦略検討クロスファンクションチーム」を全社横断的に組織し、イノベーションの促進、アライアンスの推進、研究開発の加速、新たなソリューションビジネスの創出などによりカーボンニュートラル実現に向けた削減貢献を進めます。
(8)環境負荷
近年、海洋プラスチックごみによる海洋汚染問題は、グローバルな共通課題となっており、ポリマー(プラスチック)を基幹素材として幅広く事業展開する当社グループにとって、プラスチックごみ問題は重要な課題と認識しています。今後、グローバルに廃棄プラスチックに関する規制が強化されることで、プラスチック製品の需要が減退し、当社グループの売上が減少するなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、環境への取組みとして、環境負荷低減に貢献する製品・技術の開発を進めるとともに、資源の有効活用にも取り組んでいます。例えば、銘柄によっては製造現場で発生したフィルム屑を溶融して再度原料として使用するなどの取組みを進めています。
また、プラスチック廃棄問題はサプライチェーン全体で考えていくことが重要なため、海洋プラスチックごみ問題の解決に向け、プラスチック製品の持続可能な使用や代替素材の開発・導入を推進することを目的とした
CLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)、欧州の軟包装分野の循環型経済の実現を推進するコンソーシアムCEFLEX(Circular Economy for Flexible Packaging)、そして、欧州のポリエステル関連企業のバリューチェーン全体を網羅するコンソーシアムPetcore Europeに参加しています。
(9)情報セキュリティ
当社グループは、事業の遂行に関連して顧客情報や機密情報など多くの重要情報を管理しています。これらの情報についてセキュリティ対策を講じていますが、自然災害等による通信障害、システムへの不正アクセスやサイバー攻撃を受けた場合、従業員の過誤など、システムの障害に伴う事業活動の停止、顧客情報や機密情報等の漏洩、詐欺被害などにより、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、「情報セキュリティポリシー」を策定するとともに各種規程を整備し、全情報資産の適切な管理・活用に努めています。
また、「サイバーセキュリティ委員会」を設置し、技術的・専門的な対策のみならず、従業員の意識レベル向上や社内専門家の育成などを進めています。今後、事故時の対応力強化などを推進していきます。
(10)法規制およびコンプライアンス
当社グループは、事業を展開する各国において、製品の製造、品質、安全、環境、競争、輸出入、情報、労働、会計などに関する様々な法令等による規制を受けています。たとえば、主要な事業所で、環境関連の法規制強化や取水制限などが行われる場合、あるいは、現在使用している化学物質が使用禁止になる場合や使用濃度規制が行われる場合には、生産活動ほかの事業活動が大幅に制限され、あるいは、同規制を遵守するために、多額の設備投資や租税ほかの費用負担を余儀なくされる可能性があります。海外の主要市場国において、アンチダンピング法などの規制により、関税引き上げ、数量制限などの輸入規制が課せられた場合には、輸出取引が制約を受け、当社グループの売上減少が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。さらに、これらの規制に対し、当社グループおよび取引先において、不遵守や違法行為が発生した場合には、当社グループの信用失墜や行政処分など多額の損害が生じる可能性があります。
また、当社グループでは、コンプライアンス活動の核として企業理念である「順理則裕」を掲げ、コンプライアンスマニュアルの推進に取り組んでいますが、国内外の法令等に抵触するなどのコンプライアンス違反が発生した場合には、当社グループの信用低下や行政処分、損害賠償責任が課されることなどにより、多額の損害が生じるおそれがあります。
当社グループでは、コンプライアンスを推進するため、具体的に様々な取組みを実施しています。例えば、「東洋紡グループ企業行動憲章」および行動規範である「東洋紡グループ社員行動基準」を、当社を含むグループ従業員に配付するとともに、職場にて読合わせを実施しルールの徹底に努めています。また、国内外グループ会社を含めた38社の管理者層を対象としたコンプライアンス勉強会を実施するとともに、法令違反等のトピックを掲載したケーススタディを毎月発行するなどコンプライアンス意識の向上を図っています。コンプライアンス徹底月間には、コンプライアンスアンケートを実施し、遵守状況や推進活動に関する課題の把握に努めるとともに、改善に向けた対応に取り組んでいます。
(11)海外での事業活動
当社グループは、米国をはじめ、欧州、中国、東南アジア、中南米などグローバルに事業を展開しています。
そのため、世界経済全体の動向に加え、各国での予期しない法令、規制や政策等の変更、またはテロ、戦争、政変やその他の要因による社会的混乱などが生じた場合は、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、これらリスクに対しては、グループ各社での情報収集や外部コンサルタント情報等を通じて早期に認識し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処ができるよう、国ごとに「危機管理マニュアル」を策定し、海外リスクマネジメント体制の整備に努めています。
また、当社グループでは、各国の税法に準拠し、適正に納税を行っており、適用される各国の移転価格税制などの国際税務リスクについても細心の注意を払っています。しかしながら、税務当局との見解の相違により、結果として追加課税が発生する可能性があります。
(12)訴訟
当社グループは、当連結会計年度において重要な影響を及ぼす訴訟は提起されていません。当社グループは国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、その過程において、製造物責任、環境、労務、知的財産等に関し、当社グループに対し訴訟を提起される可能性があります。重要な訴訟を提起された場合には、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
<財務リスク>
(13)為替レートの大幅変動
当社は、海外から原材料の一部を輸入し、国内で生産した製品の一部を海外へ輸出しています。製品輸出高と原材料輸入高の差は大きくないため、中期的に見ると為替変動による業績に与える影響額は大きくないものと考えています。しかし、短期的には、外国通貨に対して円高が進行した場合、製造リードタイムが比較的長い製品は業績に対してマイナスの影響を与えます。このようなリスクに対して、先物為替予約などによりリスクを最小限にするよう努めていますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。
また、海外の連結子会社や持分法適用会社の経営成績は、連結財務諸表作成において円換算されるため、換算時の為替レートにより連結財務諸表に影響を及ぼします。加えて、円高が進行した場合、在外子会社等の換算差額を通じて自己資本が減少するなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(14)金利の大幅上昇
当社グループは、事業資金を主に金融機関からの借入や社債の発行などにより調達しています。これらの有利子負債のうち、金利変動リスクに晒されている借入金の一部は、支払金利の変動リスクを回避するために、金利スワップを主としたデリバティブ取引を利用しています。また、当社グループは「有利子負債と純資産(非支配株主持分を除く)の比率(D/Eレシオ)」を重視しており、D/Eレシオ1.0倍未満を目標としています。当連結会計年度末は新型コロナウイルス感染症拡大に伴い手元資金を厚めに保有して流動性を確保したため、D/Eレシオは1.01倍となりました。
(15)株価の大幅下落
当社グループは、市場性のある株式を相当量保有しており、株価変動リスクを負っています。株価が大幅に下落した場合には、その他有価証券評価差額金の減少や売却時に損失が発生する可能性があります。また、当社の企業年金においては、年金資産の一部を市場性のある株式により運用しており、株価の下落は年金資産を減少させるリスクがあります。当社は、純投資目的以外の目的である投資株式について、将来の事業戦略や事業上の関係などを踏まえ、当社の持続的な成長や中長期的な企業価値の向上に資するかどうかを毎年、取締役会で個別に検証を行い、株式保有継続の可否判断を行っています。
(16)固定資産の減損
当社グループは、工場用土地、建物、製造設備など事業用固定資産を保有し、生産・販売活動を行っています。これらの製造設備で生産される製品は市場や技術開発等の環境変化の影響を受け、収益状況が大きく低下する可能性があります。また、土地の時価下落等により保有資産の評価額が著しく低下するリスクもあります。収益性が低下した場合や保有資産価値が大幅に低下した場合、当該資産について減損損失の計上が求められるなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
なお、当連結会計年度において、アクリル繊維事業の事業用資産など89億円の減損損失を計上しました。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度(以下、「当年度」といいます。)における当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」)の感染拡大により、世界経済が甚大な打撃を受けた中、中国は新型コロナ感染拡大をいち早く抑え込み、経済活動が復調しました。米国は、人の動きの制限、財政・金融政策により、徐々に経済活動が回復してきました。しかしながら、感染再拡大のうえ、当第4四半期には、半導体不足、原燃料価格高騰も加わり、今後、国内を含む世界経済の正常化には時間がかかることが予想されます。
こうした事業環境において、当社グループは、新型コロナ感染拡大により、当年度前半を中心に自動車関連製品、衣料繊維が影響を受けました。アクリル繊維事業では、事業用資産の減損損失78億円を計上しました。
一方、新型コロナ感染が拡大する中、世の中のPCR検査需要に応えるため、PCR検査用原料や試薬の生産量を倍増する体制をとりました。また、セラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”は、自動車生産の回復に伴い販売が復調し、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”は、新ライン(3号機)による量産を開始し、販売を伸ばしました。
以上の結果、当連結会計年度の売上高は前年度比22億円(0.6%)減の3,374億円となり、営業利益は39億円(16.9%)増の267億円、経常利益は同27億円(14.8%)増の207億円、親会社株主に帰属する当期純利益は、アクリル繊維事業の事業用資産の減損損失や犬山工場の火災による損失を特別損失に計上したことなどから同96億円(69.5%)減の42億円となりました。
セグメント別の概況は、次のとおりです。
なお、当年度より、報告セグメントの区分を変更しています。以下の前年度比較については、前年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
(フィルム・機能マテリアル)
当セグメントは、フィルム事業が堅調に推移した結果、増収増益となりました。
フィルム事業では、包装用フィルムは、新型コロナ感染拡大の影響により業務用製品等が減少した一方、巣ごもり需要は高まりました。また、火災事故により一部の製品販売は減少しましたが、消費者の環境意識の高まりを背景に環境対応製品は販売を伸ばしました。工業用フィルムは、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”が堅調に販売を伸ばし、セラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”は自動車生産の回復に伴い、当年度後半に復調しました。
機能マテリアル事業では、工業用接着剤“バイロン”、ポリオレフィン用接着性付与剤“ハードレン”は、当年度後半に販売は復調したものの、当年度前半までの新型コロナ感染拡大による販売減少を補えませんでした。一方、水現像型感光性印刷版を扱う光機能材料事業は、中国・欧米向けの販売が堅調に推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比257億円(20.2%)増の1,528億円、営業利益は同54億円(37.3%)増の200億円となりました。
(モビリティ)
当セグメントは、世界的な自動車生産の復調に伴い、当年度後半の販売は回復したものの、第2四半期までの新型コロナ感染拡大による自動車減産の影響を補えず、減収減益となりました。
エンジニアリングプラスチックは、当年度後半に国内外の需要は回復し、当第4四半期には前年同四半期以上に販売が伸びましたが、当年度前半の自動車減産による販売減少を補うには至りませんでした。エアバッグ用基布は、当年度後半に需要は回復してきたものの、原料逼迫により、苦戦が続きました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比73億円(16.7%)減の366億円、営業損失は16億円となりました(前年同期は営業損失7億円)。
(生活・環境)
当セグメントは、新型コロナ感染拡大により需要が減少し、スーパー繊維、衣料繊維が低調に推移し、減収減益となりました。
環境ソリューション事業では、溶剤を回収するVOC処理装置は、新型コロナ感染拡大により、新規案件の獲得に苦戦したものの、受注残の販売により通年では堅調でした。海水淡水化用逆浸透膜は、交換膜の受注時期が当年度後半にシフトし、通年では販売を伸ばしました。
不織布事業では、長繊維不織布スパンボンドは、建築・土木用途の販売が伸び悩みました。機能フィルターは、空気清浄機やマスク向けの販売は堅調でしたが、事務機器向けが苦戦しました。
繊維機能材事業では、ポリエステル短繊維は衛生材料用途、機能性クッション材“ブレスエアー”は寝装用途の販売が堅調に推移しました。一方、スーパー繊維は、“ツヌーガ”が、世界各地での工場稼働率低下により耐切創手袋の需要が縮小した影響を受け、“イザナス”は、国内のロープ用途の需要減退の影響を受けました。
衣料繊維事業では、スポーツ、インナー、スーツ用途の店頭販売などが不振で、受注が大幅に減少しました。中東向け特化生地は、中東各国での外出制限の影響で店頭販売が低調でした。
アクリル繊維は、中国市場の需要低下、アンチダンピング政策により厳しい事業運営を強いられていた中、新型コロナ感染拡大によりさらに市場環境が悪化し、苦戦しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比193億円(15.0%)減の1,091億円、営業利益は同16億円(26.3%)減の44億円となりました。
(ライフサイエンス)
当セグメントは、医薬品製造受託事業が苦戦したものの、PCR検査用試薬の需要が急拡大し、増収増益となりました。
バイオ事業では、生化学診断薬用原料の需要が減少しましたが、新型コロナ感染拡大に伴い、PCR検査用試薬、遺伝子検査装置などは需要が高まり、販売を大きく伸ばしました。
医薬品製造受託事業は、操業の一時停止、GMP対応に係る費用が増加し、苦戦しました。
メディカル事業では、医用膜において、人工腎臓用中空糸膜の販売が堅調に推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比15億円(6.1%)増の271億円となり、営業利益は同7億円(18.9%)増の45億円となりました。
(不動産、その他)
当セグメントは、不動産、エンジニアリング、情報処理サービス、物流サービス等のインフラ事業は、それぞれ概ね計画どおりに推移しました。
この結果、当セグメントの売上高は前年度比29億円(19.6%)減の118億円、営業利益は同3億円(12.2%)減の23億円となりました。
②キャッシュ・フローの状況
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度比92億円収入が減少し、350億円の収入となりました。主な内容は、減価償却費191億円及び減損損失89億円による資金の増加です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度比75億円支出が減少し、317億円の支出となりました。主な内容は、有形及び無形固定資産の取得による支出275億円です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、53億円の収入となりました(前年度は18億円の支出)。主な内容は、短期借入金の純増加85億円、長期借入れによる収入120億円、長期借入金の返済による支出95億円及び配当金の支払額36億円です。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比94億円増の345億円となりました。
③生産、受注及び販売の実績
(イ)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
フィルム・機能マテリアル |
153,963 |
19.6 |
|
モビリティ |
37,947 |
△16.1 |
|
生活・環境 |
109,107 |
△12.8 |
|
ライフサイエンス |
28,201 |
7.4 |
|
不動産 |
- |
- |
|
その他(うち製造) |
19,770 |
△17.3 |
|
合計 |
348,987 |
△0.1 |
(注)1.金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。
2.外注生産を含んでいます。
3.消費税等の処理は税抜方式によっています。
4.不動産の生産実績はありません。
5.当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更し、「前連結会計年度比(%)」については前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
(ロ)受注実績
当社グループの製品は一部の受注生産を除き見込生産を行っています。
(ハ)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
|
フィルム・機能マテリアル |
152,842 |
20.2 |
|
モビリティ |
36,573 |
△16.7 |
|
生活・環境 |
109,148 |
△15.0 |
|
ライフサイエンス |
27,087 |
6.1 |
|
不動産 |
3,959 |
△10.1 |
|
その他 |
7,798 |
△23.7 |
|
合計 |
337,406 |
△0.6 |
(注)1.総販売実績に対する販売実績の割合が100分の10以上となる販売先はありません。
2.セグメント間の取引については相殺消去しています。
3.消費税等の処理は税抜方式によっています。
4.当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更し、「前連結会計年度比(%)」については前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(イ)財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、前年度末比23億円(0.5%)増の4,912億円となりました。これは主として新型コロナ感染拡大の影響を考慮して、手元流動性を高めるために金融機関からの借入による資金調達を行い、現金及び預金が増加した一方で、減損損失による影響で有形固定資産が減少したことによります。
当連結会計年度末の負債は、前年度末比37億円(1.2%)減の3,026億円となりました。これは主としてその他の流動負債や電子記録債務が減少したことによります。
当連結会計年度末の純資産は、主として退職給付に係る調整累計額などその他の包括利益累計額が増加したことから、前年度末比60億円(3.3%)増の1,886億円となりました。
また、財政状態に関する各種指標(連結ベース)は次のとおりです。
|
回次 |
|
第159期 |
第160期 |
第161期 |
第162期 |
第163期 |
|
決算年月 |
|
2017年3月 |
2018年3月 |
2019年3月 |
2020年3月 |
2021年3月 |
|
自己資本比率 |
(%) |
37.2 |
40.5 |
38.3 |
36.4 |
37.8 |
|
時価ベースの自己資本比率 |
(%) |
38.0 |
41.8 |
27.2 |
20.8 |
25.8 |
|
自己資本当期純利益率 |
(%) |
5.8 |
7.5 |
△0.3 |
7.8 |
2.3 |
|
キャッシュ・フロー対 有利子負債比率 |
(年) |
6.3 |
6.5 |
21.0 |
4.0 |
5.3 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ |
(倍) |
19.3 |
16.9 |
6.0 |
32.2 |
28.0 |
|
有利子負債自己資本比率 |
(倍) |
1.01 |
0.81 |
0.93 |
0.98 |
1.01 |
自己資本比率:非支配株主持分を含まない期末純資産/期末総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額[期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数]/期末総資産
自己資本当期純利益率:親会社株主に帰属する当期純利益/非支配株主持分を含まない期末純資産の期首・期末
平均
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:期末有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/(連結キャッシュ・フロー計算書)利息の支払
額
有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ):期末有利子負債/非支配株主持分を含まない期末純資産
当社グループは、財務の健全性の指標として特に有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)を重視しており、目標を1.0倍未満としています。当連結会計年度は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う不測の事態に備えるため手元資金を厚めに保有し流動性を確保したため、D/Eレシオは当連結会計年度末で1.01倍となりました。
(ロ)経営成績の分析
当連結会計年度は、第1四半期連結会計期間において、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、世界的な自動車の生産の減少、個人消費の縮小、サプライチェーンの混乱など、当社グループのさまざまな事業に影響を及ぼすことが懸念されたことから、前連結会計年度実績と比べ減収、減益の売上高3,300億円、営業利益200億円を計画しましたが、PCR検査用原料や試薬、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”などが販売を伸ばしました。この結果、当連結会計年度の売上高は3,374億円、営業利益は267億円となり、売上高、営業利益ともに計画を上回ることができました。当連結会計年度における新型コロナウイルス感染症拡大による影響は、当社グループのそれぞれの事業で濃淡はあるものの、影響は限定的でした。
新型コロナウイルス感染症拡大による当社グループの事業への影響
|
セグメント |
主なプラス影響 |
主なマイナス影響 |
|
フィルム・ 機能マテリアル |
外出自粛から、家庭内で使用される食品の包装用フィルムの増加 |
外出自粛に伴う500mlのPETボトルラベル、業務用包装フィルムの需要減少 |
|
モビリティ |
- |
・2020年度前半の自動車生産減少による影響 ・外出制限等により海外子会社で工場の一時休止 |
|
生活・環境 |
マスク、除菌ウェットシート、防護服などのコロナ対策製品の受注増 |
・海外渡航困難によるVOC処理装置などの新規案件受注活動に制限 ・百貨店等の休業や世界的な個人の活動制限による衣料繊維の需要減少 ・外出制限等により国内外子会社で工場の一時休止や稼働率の低下 |
|
ライフサイエンス |
PCR検査用試薬の受注増 |
生化学診断薬用原料、一般検査の需要減少 |
|
共通 |
出張旅費等の経費削減 |
工事遅延による新設備の稼働遅れ |
また、当連結会計年度は、原燃料価格の低下による増益寄与に加え、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”やセラコン用離型フィルム“コスモピール”の販売拡大等が増益に寄与しました。“コスモシャインSRF”は新ラインの生産が開始し、液晶テレビ保護フィルム市場におけるシェアが約45%となり、前連結会計年度から約10ポイント増加したものと推定しています。“コスモピール”も同様に新加工設備が本格稼働し、下期からの車載用途の回復に伴って販売が拡大しました。以上により、営業利益は267億円となり、「総資本営業利益率(ROA)」は5.4%となりました。
当連結会計年度は、158億円の特別損失を計上しました。主な内容として、アクリル繊維事業において減損損失78億円を計上しました。当該事業は、主要輸出先の中国市場における需要の低下、同国アンチダンピング政策の影響を受け、厳しい経営状況が続いていましたが、2020年初からの新型コロナウイルス感染症拡大により中国をはじめ欧州市場環境のさらなる悪化が続き、継続的な赤字計上が避けられない状況となったため、第3四半期連結会計期間において減損損失を計上しました。今後、当該事業については、競争力の維持・向上のため、アクリル系機能資材等の競争力のある商品・分野に経営資源を重点的に投入し選択と集中を徹底します。また、2020年9月に発生した犬山工場の火災事故により火災による損失19億円を計上したことなどから当連結会計年度の特別損失は158億円となりました。
以上から当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は42億円となり、「自己資本当期純利益率(ROE)」は2.3%となりました。
(単位:億円)
|
|
2020年度 (計画(*)) |
2020年度 (実績) |
増 減 (実績-計画) |
|
売上高 |
3,300 |
3,374 |
74 |
|
営業利益 |
200 |
267 |
67 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益 |
70 |
42 |
△28 |
(*) 第1四半期連結会計期間において計画した計画値
2019年3月期から2022年3月期までの2018年中期経営計画において、当社グループが重視する数値目標および経営指標は、「営業利益」、「総資本営業利益率(ROA)」および「自己資本当期純利益率(ROE)」です。営業利益は300億円以上、ROAは7%以上およびROEは8%以上を目標としてきました。しかしながら、2018年度、2020年度の火災事故、品質の不適切事案に加え、新型コロナウイルス感染症拡大など、中期経営計画策定時に比べ足元の事業環境は大きく変化しました。まずは、「安全・防災」「品質」に関して、最優先で改善に取り組み、信頼回復に努めます。事業面では、世の中のPCR検査需要に応えるため、PCR検査用試薬、遺伝子検査装置などの提供に尽力していきます。また、セラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”の増産を計画し、電子機器の強い需要に対応していきます。
今後も、信頼回復を最優先課題とし、持続的な成長に向けて、全社一体となって改善に取り組んでまいります。
(ハ)経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりですが、特に、度重なる火災事故、品質の不適切事案により損なわれた信頼を回復すべく「安全・防災」「品質」を最重要課題として改善に取り組んでまいります。また、新型コロナウイルス感染症の収束時期等が不透明な状況であり、経済活動の正常化には時間がかかる恐れがあることから、人の動きの制約による個人消費の回復遅れに留意していくとともに、原燃料などの価格動向や為替変動についても引き続き注視していく必要があると考えています。
(ニ)当社グループの資本の財源および資金の流動性について
a.キャッシュ・フロー
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
b.契約債務
2021年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりです。
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年度別要支払額(百万円) |
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契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超3年以内 |
3年超5年以内 |
5年超 |
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短期借入金 |
40,767 |
40,767 |
- |
- |
- |
|
長期借入金 |
87,153 |
10,107 |
44,980 |
14,104 |
17,962 |
|
リース債務 |
4,038 |
905 |
1,574 |
782 |
777 |
上記の表において、連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めています。
当社グループの第三者に対する保証は、関係会社の借入金等に対する債務保証です。保証した借入金等の債務不履行が保証期間内に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2021年3月31日現在の債務保証額は、4,049百万円です。
c.財務政策
当社グループは、運転資金および設備資金については、内部資金または借入により資金調達することとしています。このうち、借入による資金調達に関しては、短期借入金は主に営業取引に係る資金調達であり、長期借入金および社債は主に設備投資と投融資に係る資金調達です。
2021年3月31日現在、長期借入金の残高は87,153百万円です。また、マーケット環境の一時的な変化など、不測の事態への対応手段確保のため、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計17,500百万円のコミットメントライン契約を締結しています(借入未実行残高17,500百万円)。
(1)供与技術契約
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契約会社名 |
契約項目 |
契約の内容 |
相手先 |
契約締結年月 (有効期間) |
対価 |
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東洋紡㈱ (当社) |
活性炭素繊維 |
Kフィルターによる溶剤吸着処理装置に関する技術援助の供与 |
(米国) Met-Pro |
1980年7月1日 (1980年7月1日 ~ 自動延長) |
技術使用料ほか |
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同上 |
同上 |
同上 |
(英国) CJB Developments |
1981年3月4日 (1981年3月4日 ~ 自動延長) |
同上 |
|
同上 |
同上 |
同上 |
(ドイツ) Durr Anlagenbau |
1984年10月18日 (1984年10月18日 ~ 1987年10月17日 ~ 自動延長) |
同上 |
|
同上 |
同上 |
同上 |
(韓国) 斗山機械株式会社 |
1991年8月5日 (1991年9月25日 ~ 1994年9月24日 ~ 自動延長) |
同上 |
|
同上 |
同上 |
同上 |
(台湾) 清隆企業股份有限公司 |
1993年9月1日 (1993年9月1日 ~ 1996年8月31日 ~ 自動延長) |
同上 |
|
同上 |
同上 |
同上 |
(米国) Durr Industries, |
1996年12月25日 (1996年12月25日 ~ 1999年12月24日 ~ 自動延長) |
同上 |
(2)東洋紡フイルムソリューション株式会社との合併
当社は、2020年12月25日開催の取締役会において、2021年4月1日を効力発生日として、当社の連結子会社である東洋紡フイルムソリューション株式会社を吸収合併することを決定し、2020年12月25日付で合併契約を締結しました。
詳細は、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりです。
当社グループは、「順理則裕」の企業理念のもと、「私たちは、素材+サイエンスで人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループになります」というビジョンを掲げています。「素材+サイエンス」として、自社保有のコア技術のさらなる進化に加え、積極的なオープンイノベーションの考え方の下、新製品の拡大、新事業の創出に注力しました。
当社グループの研究開発は、セグメントごとに担当事業部が直接運営する事業部研究部門と、中長期的視点から次代を担う新製品・新技術を開発する全社共通のコーポレート研究部門とに大別されます。これらの研究開発のマネジメントはイノベーション戦略部が担当し、各部門相互の連携を図りながら、当社グループの総合力を発揮した研究開発活動を推進しました。
(フィルム・機能マテリアル)
包装用フィルム分野では、環境対応商品(薄肉化)として高強度で縦・横・両方向に収縮可能な熱収縮性ポリエステルフィルム“スペースクリーン”及び高耐熱高剛性ポリプロピレンフィルムの用途が拡大し、環境を意識し、バイオマス原料を使用したポリエステルフィルム“バイオプラーナ”やリサイクル原料を使用したポリエステルフィルム“サイクルクリーン”も採用が拡大しました。さらに、ナイロンフィルムやシーラントでもバイオ原料を使用した製品を上市し、環境意識が高い大手ユーザーでの採用が進みました。食品用途以外の業界についても“オリエステル”等でショッピングバックや折り紙、ブックカバー、ひねるだけで臭いが気にならないおむつ処理袋“ひねってポイ”に加え、モノマテリアルを意識したポリエステルシーラントとしての採用が進みました。
工業フィルム分野では、電子情報通信分野、自動車分野での要求が一層増しているセラミックコンデンサの生産に寄与する離型フィルム“コスモピール”の開発を精力的に進めています。液晶ディスプレイに最適な超複屈折フィルム“コスモシャインSRF”は、新製品の開発に努めるとともに、新生産機での生産を開始し販売を伸ばしています。また電子部品の高機能化要望にお応えする力学的・熱的特性に優れたポリエチレンフタレートフィルム“テオネックス”の開発、さらに環境に配慮したフィルム製品“クリスパー”、“カミシャイン”、“リシャイン”の開発、販売促進に加え、環境負荷の少ないリサイクルシステムの開発も積極的に進めています。
重金属を含まず環境に優しいポリエステル重合触媒“TOYOBO GS Catalyst”については、その優れたリサイクル性を活かし、用途展開が進み循環型経済に貢献しています。GS触媒ライセンス事業についても海外大手PETメーカーにおける商業生産が拡大しています。また、環境に配慮したバイオ由来の優れたバリア性の樹脂開発にも取り組み、プラスチックとの共生社会を目指し、再生可能な素材へのシフトを加速しています。
高機能共重合ポリエステル樹脂“バイロン”、高耐熱共重合ポリアミドイミド樹脂“バイロマックス”、変性ポリオレフィン樹脂“ハードレン”は、電気電子、自動車内外装の塗料、接着用途でさらに検討を進めています。“バイロン”では5Gに対応する高周波でも伝送損失が少ない低誘電性接着剤を新たにラインナップし、通信、電子製品分野の接着用途でさらに拡大を続けています。“バイロマックス”は、高耐熱と高耐久性が評価され、スマートフォン周辺デバイスでの引き合いが増加しています。“ハードレン”は接着が難しいポリオレフィン用の接着付与剤として、例えば国内外の自動車外装プラスチック塗料用途に展開し、市場拡大を続けています。“バイロン”、“ハードレン”共に、北米、欧州、中国での環境問題から、水性化、ホットメルト化をキーワードに開発を進めています。
以上、当事業に係る研究開発費は
(モビリティ)
エンジニアリングプラスチック分野では、自動車用途での軽量化の要求に応えるための開発を進めました。特に超高剛性材料の開発、発泡成形用材料の新規素材を開発し、日系の自動車において採用されました。これらの材料開発技術は保有する他材料(硬質ポリエステル、硬質ポリアミド、軟質ポリエステル)のすべてに適応でき、さらなる拡大が期待出来ます。また、軟質ポリエステル樹脂における発泡成形では、独立発泡、連続発泡など発泡状態をコントロールする技術にも取組んでおり、新たな用途が期待出来ます。自動車市場では電動化が拡大していますが、必要な素材技術として熱伝導性、シールド性などの開発も進めています。これらの材料開発に合わせて、コンピューターによる解析技術(CAE解析(Computer Aided Engineering)、DX、MI(Materials Informatics))も進めて、お客様への形状提案に繋げる予定です。
エアバッグ事業分野ではグローバルでの生産販売体制の拡大を継続的に進めています。特にタイでの原糸新工場の建設をインドラマ・ベンチャーズと開始しました。原糸から基布に至る体制強化と、新商品を含めた品揃えをグローバルで図っています。
以上、当事業に係る研究開発費は
(生活・環境)
スーパー繊維“イザナス”は、紡糸技術の深化により高強度グレードを開発しました。高強度グレードの開発で確立した微細結晶構造制御技術は、繊維学会の技術賞を受賞しました。また、クリープに対する耐久性を飛躍的に高める基本技術を確立し洋上風力発電の係留索などへの応用を目指して研究開発を進めています。
エステル短繊維や三次元スプリング構造体“ブレスエアー”およびスパンボンドは、持続的に発展できる社会の実現に向けて環境配慮型の製品開発を進めています。
フィルター材料においては、静電フィルター“エリトロン”を軸に高性能・高機能化を進め、空気清浄機、自動車内用フィルター等を拡販しました。
水処理膜では、各種中空糸膜の開発とモジュールの高性能化、ならびに省エネ海水淡水化や発電、排水処理など応用研究を進めました。
VOC排気ガス処理分野では、活性炭素繊維“Kフィルター”を用いた濃縮用吸着材、ならびに溶剤回収システムの高性能化の開発を進めました。
繊維の微細構造をコントロールする技術を活用した商品開発を進め、緻密な組織を有し仕立て映えのするスポーツ用“アクセンシャルゼブラ”を学生服に拡販しました。抗ウイルス性を持った“ヴァイアブロック”不織布マスクの販売、ポリエステル生地に“ナノバリアー”加工をした洗えるマスク素材など清潔関連商品を上市し拡販しました。
フィルム状導電素材“COCOMI”では、心拍計測用サイクリングシャツを発表し、2021年度から一般消費者向け販売を開始します。また、畜産用心拍計測ベルト、心拍計測用ドッグウェアなどによるアニマル、関連分野への検討、伸張センサを応用した心拍数・呼吸状態同時計測によるヘルスケア関連分野への検討など、他分野への応用検討を進めていきます。
工業材料・機能資材分野では、海外拠点と連携したアルコール消毒綿・特殊防護服など、環境衛生や生活分野の製品を上市し拡販しました。
以上、当事業に係る研究開発費は
(ライフサイエンス)
バイオケミカル分野では、富山大学との共同研究でSARS-CoV-2に対する抗体の開発に取組みました。診断システムでは、全自動遺伝子解析装置をバージョンアップ(モデルC)すると共に、同装置の専用試薬としてSARS-CoV-2診断薬の開発に成功し、販売を開始しました。バイオ研究試薬では、核酸精製不要PCRの自社技術を生かし、唾液からSARS-CoV-2を直接測定可能な試薬の開発に成功し、販売を開始しました。
医療機器分野では、神経再生誘導チューブ“ナーブリッジ”が指尖部で神経再建の標準治療となり、患者様の治癒に貢献しました。さらに、新たな再生誘導材ある骨再生誘導材“ボナーク”の2021年度上市に向け、保険適用申請や量産準備等を進めています。
人工腎臓用中空糸膜では、透析患者に優しい製品のラインアップの充実に向けて開発を進めました。また、生産効率を引き上げるプロセスの開発に取り組みました。
以上、当事業に係る研究開発費は
(全社共通)
全社共通の研究開発組織であるコーポレート研究所は、当社グループの将来を担う新製品・新技術の開発を行うだけでなく、各種分析・評価業務、コンピューターシミュレーションやAI(Artificial Intelligence)を用いた解析業務を通じて、研究開発全般を支援する全社研究インフラとしての機能も有しています。加えて、総合研究所長直下の組織として、DX推進室を設置し、MI技術を導入、展開しました。
当社の高分子重合技術や成形加工技術を駆使した耐熱性・寸法安定性に優れる新規ポリイミドフィルム“ゼノマックス”については、生産・販売会社「ゼノマックスジャパン株式会社」を事業部門に移管する一方、引き続き、コーポレート研究所において次世代品の開発を継続しています。
オープンイノベーション活動に関しては、新技術の調査および研究開発のスピードアップを図るため、ナショナルプロジェクトへの参画や国内外の企業、大学、研究機関との連携を積極的に進めています。さらに、世界トップレベルのベンチャーアクセラレーター「Plug and Play」とのパートナーシップ契約を、スマートシティープログラムに拡大し、よりソリューション志向を強めることとしました。また、当社として第3のベンチャーファンド投資として、「リアルテックファンド3号投資事業有限責任組合」へ参加し、当社のコア技術が応用できるスタートアップ企業とのオープンイノベーションをさらに推進し、これからの社会に役立つ製品開発を進めています。
以上、全社共通のコーポレート研究に係る研究開発費は31億円です。