第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1)2018年中期経営計画(2018~2021年度)の総括

当社グループは、2018年中期経営計画(2018~2021年度)において、「フィルム&コーティング」「モビリティ」「ヘルスケア&ウェルネス」の3つの成長分野に注力して取り組んできました。成長分野のうち、順調に収益を増やした事業がある一方、拡大が遅れた事業などがあり、2021年度の営業利益は目標としていた300億円に届かず、284億円に留まりました。工業用フィルム事業は、液晶偏光子保護フィルム、セラミックコンデンサ用離型フィルムの拡販が計画通り進み、PCR検査試薬は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、PCR検査需要の増加に対応しましたが、原燃料価格の高騰、およびエアバッグ用基布事業、衣料繊維事業、医薬品製造受託事業の収益性が悪化あるいは改善しなかったことにより、目標を達成することができませんでした。

財務体質に関しては、債務格付けの維持向上と資金調達上の安定性確保の観点から、D/Eレシオを重視し、1.0倍未満の目標に対し、本中計期間を通じて1.0倍近傍を推移し、財務体質の健全性を維持しました。

なお、本中計期間中に、二度の重大な火災事故、および品質の不適切事案が発生し、当社グループに対する信頼性に揺らぎが生じました。当社グループはこの事態を重く受け止め、経営基盤の見直しを最優先の課題として対策を講じてきました。「2025中期経営計画(2022~2025年度)」においても、「安全・防災・品質の徹底」を基本方針の最優先の施策に掲げ、ゆるぎない信頼の確立に向けて全力で取り組んでまいります。

 

(2)経営環境

当社グループを取り巻く環境は、足元では、新型コロナウイルス感染症の感染者数が増減を繰り返すなか、ワクチン接種の進展や財政・金融政策により、経済活動は徐々に回復しています。しかし、近時ではウクライナ情勢の影響を受けて、原燃料価格のこれまで以上の高騰や原材料供給の逼迫がみられ、インフレ圧力が高まる状況にあります。また、自動車産業での半導体不足や部品供給網の混乱が長期化する懸念が強まっています。当社グループにおいては、半導体などの不足による自動車減産、原燃料価格の高騰・高止まりなどが事業に影響を及ぼすことが予想されます。

長期的には、社会が求める脱炭素、循環型経済への移行、およびEV化の流れは、石化由来製品、自動車関連製品を扱っている当社グループにとって、リスクでもあり、事業機会にもなりうると捉えています。

 

(3)サステナブル・ビジョン2030

当社グループは、創業者である渋沢栄一が座右の銘の一つとしていた『順理則裕』を企業理念としています。『順理則裕』とは、「なすべきことをする、なすべからざることはしない。順理を貫くことで、世の中をゆたかにし、自らも成長する。」という会社の創業精神です。いわゆるCSV(Creating Shared Value:社会課題の解決に貢献するとともに、経済的価値の向上を図り、企業価値を高める)の考え方を、当社グループは創業当時から140年間受け継いできました。

2019年、当社グループは、あらためて渋沢栄一の創業精神に立ち戻り、時代の変化に対応しながら、社会への貢献を通じて成長軌道を描き続ける会社となるために、企業理念体系「TOYOBO PVVs」として再整理しました。さらに、この企業理念体系を具体的にするべく、2022年、長期ビジョン「サステナブル・ビジョン2030」を策定しました。

「サステナブル・ビジョン2030」は、今後の事業環境の変化を想定し、企業理念『順理則裕』を基軸として、当社グループの「2030年のありたい姿」と、「サステナビリティ指標」および「アクションプラン」を示すものです。この長期ビジョンでは、「サステナブル・グロース」の実現、すなわち「社会のサステナビリティに貢献するサステナブルな(成長を実現する)会社」の実現をめざします。

「サステナブル・ビジョン2030」では、サステナブル経営に向けたアプローチを「“Innovation”と3つの「P」:“People”“Planet”“Prosperity”」と整理しました。この“Innovation”は、

①「人」と「地球」を最終的な「お客さま」と捉えたマーケティング思考

②「素材+サイエンス」に基づき、独自の工夫やアイデアによるサイエンスベースド・イノベーション

③ 多様なパートナーとのオープンイノベーション等を通じた価値共創

を意味します。また“People”は「人」を中心とした社会課題の解決策、“Planet”は「地球」全体を意識した社会課題の解決策、そして当社の考える“Prosperity”は、当社の企業理念に則り、課題解決を通じて「ゆたか」な社会を実現し、同時に当社グループの企業価値も向上させることを意味します。

当社グループの「めざす姿」は「TOYOBO PVVs」のVisionである「素材+サイエンスで人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループになります(Innovation)」とし、より具体的なめざす姿は、

① 事業を通じて社会の課題解決に貢献

② 持続可能な成長(しっかりした土台+未来への成長軌道)

③ 現場が主役(安全・安心な職場環境、誇りとやりがい、自己成長) としました。

その実現に向けて、2030年前後の社会変化やトレンドを想定し、当社グループが事業等を通じて解決する5つの社会課題を特定しました。5つの社会課題とは、「人(People)」に関する「従業員のウェルビーイング&サプライチェーンの人権」「健康な生活&ヘルスケア」「スマートコミュニティ&快適な空間」、「地球(Planet)」に関する「脱炭素社会&循環型社会」「良質な水域・大気・土地&生物多様性」です。これらの社会課題の解決にチャレンジし、2030年のありたい姿、「安心してくらせる「ゆたか」な社会の実現と企業価値向上のスパイラルアップ(Prosperity)」に向かってまいります。

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ありたい姿の実現に向けて、定量的・定性的な目標を設定いたしました。2030年の主なサステナビリティ指標は、以下のとおりです。

 

[主なサステナビリティ指標]

・重大インシデント:「ゼロ」

・従業員エンゲージメントスコア:70%以上

・GHG排出量削減(2013年度比、Scope1,2):46%以上(2050年度カーボンニュートラル)

・主力事業における原材料のグリーン化比率:60%(フィルム事業を想定)

 

「重大インシデント」については、前回の中期経営計画中に二度の火災事故が発生したことを受け、安全・防災対策を徹底し、改めて重大インシデント「ゼロ」をめざします。

「従業員エンゲージメントスコア」は、エンゲージメントサーベイなどを通して、従業員一人ひとりの誇りややりがいに関する肯定的回答率を把握します。2020年度の従業員エンゲージメントスコアは約50%でしたが、今後、各種施策を検討・展開し、2030年度に70%以上をめざします。

「GHG排出量削減」については、2020年度のGHG排出量は約90万トンで、2013年度比26%の削減率でした。引き続き、省エネ、燃料転換、再生可能エネルギー導入などを推進し、2030年度には2013年度比46%のGHG排出量削減率をめざします(Scope1,2)。2050年度には、ネットゼロをめざし(Scope1,2)、さらには、当社グループバリューチェーン全体から排出されるGHG排出量に対して、当社が提供する海水淡水化膜、浸透圧発電などによるGHG削減貢献量が上回ることを目標としています。

「主力事業における原材料のグリーン化比率」については、フィルム全体の原材料におけるグリーン化比率を、現在の10%未満から、2030年までに60%に高めていく取組みを推進します。ここでのグリーン化とは、バイオマス、リサイクル、減容化を意味します。

その他の指標も含め、2030年のサステナビリティ指標は以下のとおりです。

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以下、2050年度にカーボンニュートラルを達成するためのロードマップです。

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当社グループは、これらのサステナビリティ指標の目標を意識しながら、収益性を高めていきます。2030年度の財務指標および目標(イメージ)は、右記のとおりです。社会課題の解決に貢献する事業を拡大することで、経済的価値も高める取組みを推進します。

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持続可能な成長のためには、しっかりした土台(安全・品質・人的資本・知的財産)が不可欠です。その上に、未来への成長軌道を描くべく、当社のコア技術を駆使し、多様なパートナーとの価値共創によりInnovationを起こします。そこから生まれるソリューションを人と地球に提供することで、安心してくらせる「ゆたか」な社会の実現と同時に当社グループの企業価値向上をめざします。また刻々と変化する社会課題に、イノベーションを通じて対応し、新たなソリューションを提供する---このプロセスを循環させることで、持続的な成長が可能になると考えています(下図ご参照)。

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「サステナブル・ビジョン2030」を策定する過程で、マテリアリティ(サステナブルな会社であるための重要課題)を見直し、再整理しました。従来のマテリアリティの「ソリューション提供力(事業を通じた貢献)」には、さまざまな事業が含まれており、社会課題も各々異なるため、今回、細分化・具体化しました。また、従来のマテリアリティでは、「安全・防災・品質」「コーポレート・ガバナンス」「人権の尊重」を、経営基盤(マテリアリティの前提となる基本事項)」としていましたが、今回、マテリアリティに含めました。(下図ご参照)

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(4)2025中期経営計画(2022~2025年度)

2025中期経営計画(2022~2025年度)は、「サステナブル・ビジョン2030」で掲げる目標達成に向けた通過点として、この4年間を「つくりかえる・仕込む4年」と位置づけ、「4つの施策」を経営方針とし「サステナブル・グロース」への変革を図ります。

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①施策1:安全・防災・品質の徹底

「信頼の回復」を最優先課題とし、当社グループ一丸となって取り組みます。防災に関しては「安全を全てに優先する組織風土:ゼロ災」を目指したマスタープランを着実に実行します。品質保証体制については、品質マネジメントシステムを再構築するとともに、コンプライアンス教育の強化・徹底など、組織風土改革と品質文化づくりに注力します。さらに、リスクマネジメント体制の強化として、リスクの把握、未然防止・早期発見、適切な対応を取るため「リスクマネジメント委員会」を設置・運用していきます。

 

②施策2:事業ポートフォリオの組替え

「収益性」と「成長性」の二軸で各事業を「重点拡大事業」「安定収益事業」「要改善事業」「新規育成事業」に層別し、各々の位置づけに応じた事業運営を行います。「安定収益事業」と「要改善事業」の位置づけについては、ハードルレートに加えて、定性情報も含めて見極め、対策を検討します。

「要改善事業」に位置づけられる「衣料繊維事業」「エアバッグ用基布事業」「医薬品製造受託事業」は、正常化に向けた対策を講じていきます。衣料繊維事業は、すでに進めていますリソース集約を計画通り実行します。エアバッグ用基布事業は、2022年度にインドラマ社との合弁会社の原糸工場を立ち上げ、医薬品製造受託事業は、GMP対応のための製造設備の更新などを進めることで、事業の正常化を図ります。

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「重点拡大事業」に位置付けられるフィルム事業、ライフサイエンス事業は、優位性があり市場の拡大が見込める事業であり、引き続き積極的な投資を実施していきます。また、「環境・機能材」分野は、従来「安定収益事業」に位置付けてきましたが、各商材のもつ潜在力やソリューションビジネスとしての有用性を再評価した結果、この分野を事業ポートフォリオの「第三の柱」とすべく、積極拡大を図ることとしました。具体的には、今般設立計画を公表した三菱商事株式会社との合弁会社での取り組みを通じて、新たな成長領域・分野での事業機会創出に挑戦していく方針です。

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ⅰ)フィルム事業

・環境配慮製品へのシフトを加速し、グリーン化(バイオマス、リサイクル、減容化)比率を2030年度60%、2050年度100%をめざします。

・米国のバイオ化学ベンチャー企業であるアネロテック社(Anellotech Inc.)とともに、環境負荷の少ない効率的な使用済みプラスチックの再資源化技術開発を株式会社アールプラスジャパンの一員として進めます。世界で共通となっているプラスチック問題の解決に貢献すべく、回収プラスチックの選別処理、モノマー製造、ポリマー製造、包装容器製造、商社、飲料・食品メーカーなど業界を超えた連携により、2027年の実用化をめざしていきます。

・透明蒸着フィルム“エコシアール”は、優れたバリア性により食品の保存期間を延ばし、フードロス削減に貢献します。現在は、包装用フィルム事業は国内中心の販売ですが、インドネシアの工場を本格稼働し、グローバルな需要にも対応していきます。

・IT(情報技術)、モビリティ(電動化)市場成長に伴い、セラミックコンデンサ用離型フィルムの市場は成長を続けています。当社は、優れた平滑性を実現する製膜技術、製膜からコーティングまで一貫製造できる強みを生かして販売量を増やしていきます。さらには、2024年度に、ハイエンド向けフィルムをインラインコートで製造する設備を導入します。これは、帝人株式会社から譲り受けたフィルム事業との統合シナジーの一つです。

 

ⅱ)ライフサイエンス事業

・当社は、遺伝子検査の原料酵素、試薬、診断薬、診断装置まで取り扱っています。当社の原料酵素は、遺伝子増幅の正確性に優れ、増幅速度が速いという強みにより、2021年度は、PCR検査関連製品が大きく伸び、感染症分野でのブランディングが向上しました。今後、感染症診断のソリューションビジネスを展開・拡大していきます。

・当社の人工腎臓用中空糸膜は、PVPフリーのため、アレルギー発症が極めて少ないことが強みです。透析患者数がグローバルで増加しており、その需要に応じていくため、ニプロ株式会社と共同で、中空糸膜製造からダイアライザへの加工・製品化までの一貫生産工場を2024年に稼働する予定です。

・抗体医薬品製造時に、抗体とウイルスを分離する工程で使われるウイルス除去膜の販売を開始しています。当社のウイルス除去膜は中空糸構造のため、処理量が多いという強みがあります。抗体医薬品は成長市場であり、需要に応じて増産を計画しています。

・神経再生誘導チューブ“ナーブリッジ”は2022年より米国市場に展開を開始しています。2025年には生産能力を約3倍にし、拡販していきます。

・骨再生誘導材“ボナーク”は、国内医療機関等の口腔領域での使用を目的に、2022年6月より出荷予定です。まず、インプラント用途から始め、顎裂治療については、保険適用申請中です。

 

ⅲ)環境・機能材事業(三菱商事株式会社との新合弁会社の事業)

・当社は、三菱商事株式会社と機能素材の企画、開発、製造および販売を行う合弁会社を設立し、2023年1月頃を目途に、事業を開始する予定です。出資比率は、当社51%、三菱商事株式会社49%です。当社の技術力と、三菱商事株式会社の総合力を融合し、グローバル市場で更なる成長をめざします。

・新会社に移行する事業群は、バイロン・ハードレン、光機能材料、VOC処理装置、スーパー繊維、エンジニアリングプラスチックなどです。

・マーケティング・企画機能強化、グローバルな事業展開、インオーガニックな成長策をとり、本事業をフィルム事業、ライフサイエンス事業に続き、第三の柱としていくよう取組みを推進します。

 

 

③施策3:未来への仕込み

新事業・新技術の探索を進め、環境、ライフサイエンス、デジタル社会等の分野で、新テーマを設定し、事業化をめざします。たとえば、環境に関しては、廃プラを油化まで戻さずBTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)までに留め、ポリエステル原料にするケミカルリサイクル(前述の株式会社アールプラスジャパンでの取組み)や、100%バイオマスプラスチックのポリエチレンフラノエート(PEF)の事業化を進めていきます。ライフサイエンスに関しては、人工腎臓用中空糸膜の慢性血液浄化市場から、腹水濾過膜(CART)や敗血症の治療機器の急性血液浄化市場への進出を探索します。デジタル社会の分野に対しては、有機薄膜太陽電池材料の研究開発を進めています。薄暗い室内で、世界最高レベルの変換効率を実現する電池材料の開発に取り組んでおり、分散型電源用途での展開をめざします。

売上高研究開発費比率は3.6~3.8%を予定しており、売上高の増加に伴い、研究開発費も増やしていきます。

デジタル・トランスフォーメーションとしては、IT基盤を整備しつつ、ビジネスイノベーションに向けた取組みに注力してまいります。

カーボンニュートラルに向けた取組みは、前述しましたように、2050年カーボンニュートラルをめざし、ロードマップに従って進めてまいります。

 

④施策4:土台の再構築

土台の再構築として「人材育成・働き方改革・ダイバーシティ推進」「ガバナンス・コンプライアンス」「モノづくり現場力」「組織風土改革」「事業基盤の整備」を進め、サステナブル・グロースに必要な土台の強化を図ります。

「人材育成・働き方改革・ダイバーシティ推進」では、一人ひとりが成長を感じ、誇りとやりがいを持って働くことができることをめざし、人事制度を大幅に刷新し、昇格要件の見直し、職能給・本人給の見直しを図っています。また、女性活躍をはじめとするダイバーシティの推進として、2025年度に、管理職に占める女性割合が5.0%以上となるよう取り組みます。グローバルコースの新卒採用の女性比率は、近年約40%を維持しており、女性の活躍フィールドの広がりとともに、目標とする女性の管理職比率に近づいていく見込みです。

「ガバナンス・コンプライアンス」では、経営全般に関するスキルを持った社外取締役を1名増員し、取締役10名中5名が社外取締役という構成にします。社外取締役比率を50%に増やすことで、経営状況に対する第三者の視点での意見が増え、健全なガバナンスを維持していきます。また、取締役会の諮問機関として、委員の過半数を社外取締役とする指名・報酬等諮問委員会(委員長は社外取締役)を設置し、取締役等の指名・報酬の決定に関し、更に透明性と客観性の確保を図ってまいります。

「モノづくり現場力」では、技術者教育の再整備、デジタル技術の活用(スマートファクトリーなど)、現場交流などにより、生産革新活動を全社に展開していきます。

「組織風土改革」では、「TOYOBO PVVs」の浸透活動を通じて、部門の垣根を越えて、気づきを改善・改革につなげる働きかけを続けます。

「事業基盤の整備」では、全社・事業所の拠点構想を検討し、リニューアル投資やレガシーシステムの更新などに取り組みます。

 

⑤財務目標

2025中期経営計画において、「売上高」「営業利益」「営業利益率」「EBITDA」「当期純利益」「自己資本利益率(ROE)」「投下資本利益率(ROIC)」「D/Eレシオ」「Net Debt/EBITDA倍率」を重要財務指標としています。持続的な成長に向けて、積極的な投資マインドを社内に形成するため、営業利益に減価償却費を加えた「EBITDA」を指標に加えるとともに、資本効率を重視した経営を推進する目的で、投下資本利益率(ROIC)を指標に加え、成長性と効率性の両側面から経営資源の最適な配分に努めてまいります。

また、債務格付けの維持向上と資金調達上の安定性確保の観点から、有利子負債と自己資本の比率(D/Eレシオ)を重視しており、前回の中期経営計画では、D/Eレシオ1.0倍未満を目標とし、その目標を達成しました。2025中期経営計画では、将来の成長に向けた先行投資を、時機を逸することなく実施していくため、D/Eレシオの目標を1.2倍未満としています。併せて、キャッシュ・フローの創出力と有利子負債とのバランスを失することなくコントロールするため、Net Debt/EBITDA倍率の指標を加え、財務状態を安定的に管理していく方針です。

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サステナブルな成長のための投資を増やすため、設備投資は前回の中期経営計画に対し約2倍の2,400億円(4年間合計)を計画しています。そのうち、1,150億円をフィルムの製膜・加工ライン、ダイアライザ一貫生産工場、バイオ新棟などの成長投資に充てる予定です。また、事業を維持するための投資、基幹システムの新鋭化など「つくりかえる投資」に920億円、安全・防災・品質対応、自家発電など、「安全・防災・環境投資」に330億円を投じる計画です。

設備投資を増やすことで、外部からの資金調達が増えます。キャッシュアウトは設備投資以外に配当140億円(4年間合計)を予定しています。

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⑥株主還元方針

株主への利益還元は最重要事項の1つであるとの認識のもと、安定的な配当の継続を基本としつつ、持続性のある利益水準、将来投資のための内部留保、財務体質の改善などを勘案した上で、今回の中期経営計画の対象期間においては、総還元性向30%を目安として、自己株式の取得も選択肢に含めた株主還元策を講じてまいります。

 

2【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財政状態等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主なリスクは以下のとおりです。ただし、以下に記載したリスクは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではありません。

なお、記載内容のうち、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

当社グループは、2021年4月1日に、グループ全体のリスクを一元的に管理することを目的として、社長執行役員を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置しました。本委員会は、統括執行役員会議メンバーおよび委員長が指名したメンバーで構成され、設置初年度である2021年度は4回開催しました。

本委員会では、リスクマネジメント活動(特定・分析・評価・対応)を統括する他、グループ全体のリスク管理に関する方針を策定し、実効的かつ持続的な組織・仕組みの構築と運用を目指すことにより、リスク管理体制の強化に努めています。

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当社グループでは、事業を通じて社会課題の解決に貢献し、従業員が誇りとやりがいをもって働き続けられる会社、持続的に成長できるサステナブルな会社をめざし、2025中期経営計画を策定しました。「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおり、2025中期経営計画では2022年度をスタートとし、当社グループが特に重視する経営指標の目標を示しています。これらの目標については、策定時に当社グループが入手可能な情報に基づいて策定したものですが、新型コロナウイルス感染症の流行が繰り返され、さらにウクライナ情勢が見通せないなか、原燃料価格の高騰、為替の動向など事業環境の不透明感は強まっています。加えて、以下の(1)から(16)のリスクもしくは以下に記載したリスク以外のリスクが顕在化し直接的または間接的に影響を受けるなど外部環境が変化した場合、種々の対策を講じているもののそれらの対策が有効に機能しない場合や想定以上の事態が生じた場合などには、2025中期経営計画で定めた目標が達成できない可能性があるとともに、当社グループの経営成績および財政状態等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

<既発生もしくは発生の蓋然性の高いリスク>

(1)災害・事故・感染症の発生

当社グループは、国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、事故防止のため、それぞれの工場ほか各事業所で老朽設備の更新や設備管理の充実をはかるとともに、事故を想定した訓練やオペレータ教育を推進するなど、可能な限りその発生を未然に防ぐように努めています。しかしながら、それらの工場ほかで大規模な地震、風水害、雪害などの自然災害や火災等の事故および新型コロナウイルスや新型インフルエンザなどの感染症が発生した場合、あるいは取引先において同様の災害被害等が発生した場合には、当社グループの生産活動ほかに著しい支障が生じるなど、事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

2020年9月の当社犬山工場における火災事故を踏まえ、当社グループでは、安全・ 防災に関する体制・教育などの見直しを実施しました。2020年12月には、傘下に「保安防災部」と「労働安全部」を持つ社長直轄の「安全・保安防災推進本部」を新設しました。その後、環境関連リスクの重要性が増したことにより2022年4月に「安全防災部」と「環境管理部」を傘下にもつ「安全防災本部」に改編しました。同組織が中心となって安全・保安防災のPDCAを回しています。2021年1月より第3者の視点を入れた防災管理プロジェクトを始動し、火災・爆発リスク低減活動を強化しました。また、「事業部門」「管理部門」「監査部門」が、それぞれの責任を踏まえたリスク低減活動を行う「スリーラインディフェンス」の考え方に基づいた体制を構築し、安全・保安防災リスクの低減に努めています。事業部門では、SMSやEMSに基づく防災総点検、現場総点検を実施、管理部門では、工場、管理プロジェクトでリスクを抽出し、「リスクマップ」に反映します。リスクマネジメント委員会では、リスクマップに基づき、安全防災本部とともに全社レベルでリスク低減を推進します。また取締役会などに、リスク低減のための各種施策を提言します。

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新型コロナウイルス感染症再拡大の波が繰り返されるなか、当社グループにおいては、特に衣料繊維事業などが影響を受けています。一方、新型コロナウイルスによる感染が沈静化した後もPCR検査需要に応じて、引き続き、PCR検査用試薬、遺伝子検査装置などの提供に尽力していきます。

 

 

(2)政治・経済情勢のさらなる悪化

当社グループは、フィルム・機能マテリアル、モビリティ、生活・環境、ライフサイエンスなどの各種製品を、国内外の各地で生産し、国内外の様々な市場で販売しています。このため、当社グループの当該生産拠点や主要市場において、政治的混乱や深刻な景気後退などが生じた場合には、当社グループの生産や販売が縮小するとともに、それらの事象による影響が長期にわたって続くことが予想される場合には、固定資産の減損損失の計上や繰延税金資産の取崩が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、販売に際し、与信取引を行っています。そのため、取引先の信用悪化や経営破綻などによる損失が発生する与信リスクを負っています。当社グループでは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、過去の貸倒実績率等に基づき、貸倒引当金を計上しています。しかしながら、景気後退などにより重要な取引先が破綻した場合には、貸倒引当金を大幅に超える貸倒損失が発生するなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。そのため、与信管理制度のもと、取引先別に限度額を設定し、主な取引先の信用状況を決算期ごとに把握するなど、与信リスクをミニマイズするための対応策をとっています。

当社グループでは、中国において、新型コロナウイルスの流行を受けた移動制限の広がりにより中国経済の景気が減速することを懸念しています。当社グループは、中国向け輸出および中国国内での売上高は連結売上高の約10%を占めています。そのため、中国国内の景気が悪化した場合には、アクリル繊維事業やエンジニアリングプラスチック事業などの販売への影響が懸念されることから、サプライチェーンの見直しや他用途展開などの対策を図っています。

また、当社は、ウクライナを取り巻く状況を深く憂慮しています。当社グループにおいて、当連結会計年度におけるロシア、ウクライナとの取引金額は僅少で、直接的な影響は軽微です。しかし、ロシア・ウクライナ情勢に起因して、原燃料価格の高騰が生じており、最適な調達方法を探索するなど、必要な対策を進めていきます。

 

(3)第三者認証登録内容における不適切行為等

当社は、米国の第三者安全科学機関であるUnderwriters Laboratories(以下「UL」といいます)によって認証を受けているエンジニアリングプラスチック製品の一部の品番について、認証に関する確認試験時に、顧客に販売している製品と異なる組成のサンプルを提出していたことや、UL認証を取得している製品を製造する登録を受けていない工場で製造を行っていること等(以下「本件不適切行為」といいます)を確認しました。本件不適切行為についてULに報告等を行った結果、2020年10月28日付でUL認証を取り消された1製品に加えて、3製品について2021年2月3日付にてUL認証登録を取り消され、他の3製品の一部品番(以下、本件不適切行為のあった製品を「本件不適合製品」と総称します)について当社よりUL認証登録の取消しを申し入れた結果、2021年3月26日付にて取り消されました。これまで本件不適合製品を使用した最終製品に関して事故等の報告は受けていません。

また、本件に関連し、ISO(国際標準化機構)の登録認証機関であるロイドレジスタークオリティアシュアランスリミテッドによる特別審査を受けた結果、2021年1月28日付で、当社が取得しているISO9001認証のうち、本件不適合製品を担当する部門に関わる認証範囲について認証を取り消されるとともに、当該ISO9001認証範囲に含まれる形でマルチサイト認証(統一認証)を取得している部門の認証範囲について認証を一時停止されましたが、一時停止されていた認証範囲については、2021年6月9日付にて一時停止は解除されました。

当社は、度重なる不適切な事案を重く受け止め、既に実施した第三者による調査等も踏まえて、実効性のある再発防止策を策定し、確実に実施してまいります。再発防止策の一つとして、2021年4月1日付で新たに品質保証本部を設置しました。これまで各事業部門(ソリューション本部)にあった品質保証統括部および品質保証部を、品質保証本部に統合することで品質保証部門の独立性を担保し、事業部門に対する牽制機能の強化を図りました。また、当社は、2022年3月17日付「品質に関する不適切な事案の類似案件調査に関するご報告」にて公表したとおり、2021年2月から同年3月にかけて無記名式で、2021年7月から2022年1月にかけては記名式で品質に関する不適切な事案の有無を調査する目的のアンケートを国内外の当社グループ役員、社員(契約社員や派遣社員を含む)を対象に実施しました。有価証券報告書提出日現在において、品質に関する重大な不適切事案は確認されていません。引き続き、適切な品質管理体制の再構築やガバナンスの向上に取り組むことにより、信頼の回復に全力で努めます。

今後、本件不適切行為に係る信用低下による受注の減少やお客様等への補償費用を始めとする損失の発生等が生じた場合には、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 

<中長期的なリスク>

(4)原材料の購入

当社グループは、フィルム・機能マテリアル、モビリティ、生活・環境、ライフサイエンス分野における各種製品を生産するため、様々な取引先から原材料を購入しています。主要な原材料として、主に石油化学製品であるポリエステル、ナイロン、ポリオレフィン樹脂などがあります。これらの原材料はリスク管理の観点からも可能なかぎり複数の取引先からの購入を行っていますが、自然災害、疾病、ストライキ、輸送上の問題、取引先の破たんや事業撤退、縮小や事故などが発生した場合、必要量の原材料を確保できない可能性があります。また、新型コロナウイルス変異株の感染拡大の影響やロシア・ウクライナ情勢に起因して、サプライチェーンの混乱や原材料の確保が難しくなり、当社グループの生産、販売へ影響を及ぼす可能性があります。また、都市封鎖や外出制限が実施された際には、物流網も混乱し、必要な原材料調達に支障をきたす可能性もあります。さらに、原材料の確保ができた場合でも、原油価格の上昇や当該原材料の需給バランスなどにより、購入価格が高騰する可能性もあります。そのような場合には、当社グループで生産縮小やコスト上昇が生じる可能性があります。

当社グループでは、適正な取引方針を確立し、持続可能な社会の発展を支える責任ある調達・物流を行っています。法令遵守、公正な取引、人権尊重、環境配慮など、サプライチェーンの中でSDGsを達成していくために、「CSR調達ガイドライン」に基づく調達・物流の実現を目指しています。

 

(5)製品の欠陥等

当社グループは、所定の品質保証を行いながら製品の欠陥などの発生リスクを未然に防止し、フィルム・機能マテリアル、モビリティ、生活・環境、ライフサイエンスなどに関する各種製品を生産しています。しかしながら、全ての製品に欠陥がなく、将来的に不良品が発生しないという保証はありません。特に、エアバッグ用基布などの自動車の安全に係わる製品や医薬品製造受託事業などで何らかの原因で製品の安全性や品質に懸念が生じた場合には、お客様の生命にかかわるとともに、製品回収等により、お客様ならびに関係先に対する補償につながる可能性があります。当社グループは、製造物責任賠償保険に加入していますが、最終的に負担する損害額を保険でカバーできるとも限りません。このため、重大な製品の欠陥などが発生した場合には、多額の損害賠償の支払いや当社グループの信用失墜が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、常設委員会としてPL(Product Liability:製造物責任)およびQA(Quality Assurance:品質保証)を統括する「PL/QA委員会」を設けています。本委員会は、品質保証本部の統括役員を委員長とし、各事業の責任者、スタッフ部門責任者(役員)で構成され、定例委員会を原則として年2回、部長クラスを推進委員とした推進委員会を年6回開催しています。2021年度は計8回開催しました。

また、事業推進から独立した品質保証本部および他部門の品質保証担当者によるPL/QAアセスメントを実施し、各部門、グループ会社のPS(Product Safety:製品安全)活動を確認、改善しています。さらに、PSとPLのリスク度合いを判定する基準を設け、この基準に基づき、製品開発から販売までの各段階で審査を行い、リスクに事前に対応することで、お客さま等に掛かるリスクの低減に努めています。

 

(6)人材の確保

当社グループでは、人材を最も重要な経営の源と考えています。多様な個性や意見を持つ従業員一人ひとりの成長をサポートし、社内で活躍・キャリアアップできる環境を整えることで、グループ全体の存続・発展が可能になると考えています。一方、少子高齢化に伴う労働力人口の減少や雇用情勢の変化などで、高度な専門性を有した人材や将来の幹部になりうるリーダーシップを兼ね備えた人材を確保、育成できない場合は、組織の競争力が低下し、事業活動が停滞するなどの可能性があります。

当社グループでは、成長戦略実現への寄与を目指し、次世代経営人材の育成に力を入れています。併せて、人材の多様性を活かすことを主眼に、キャリア採用者の教育や女性活躍推進活動にも積極的に取り組んでいます。

また、当連結会計年度は新型コロナウイルス感染症の影響で開催出来ていませんが、例年はグローバル対応として、海外事業所の選抜人材を対象とした「ナショナルスタッフ研修」や日本から海外事業所で研修を行う「短期海外業務研修」を企画し、働き方・キャリア・性別・国籍・人種・信条の異なる人たちが互いに認め合い、価値創造を実現するための組織力の向上を目指しています。

 

 

(7)気候変動

地球温暖化に伴う気候変動の影響が、台風や集中豪雨といった自然災害の増加や亜熱帯化による自然生態系の変化といった形で顕在化し、社会にも多大な影響を及ぼしつつあります(物理リスク)。一方、移行リスクとして、温室効果ガス排出に対する規制強化や炭素税導入などにより、原材料価格の上昇や化石燃料の使用が難しくなることなどが想定されます。当社グループは2020年1月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure)提言に賛同し、気候変動が当社グループ事業に及ぼすリスクと機会に関する分析を開始しました。今回は主力事業であり、気候変動影響が比較的大きいことが想定される「フィルム事業」を対象として、2つのシナリオに基づき、気候変動が事業に及ぼす影響を分析し、その対応策を検討しました。

産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑えるシナリオ(主として移行リスク)においては、脱炭素社会への移行に伴う社会変化(例えば、炭素税の導入とそれに伴う原材料価格上昇、再生可能エネルギーの拡大など)が、事業に影響を及ぼす可能性があります。その対応として、製造プロセスの合理化検討や再生エネルギーへの切り替え、CO2フリー燃料(水素やアンモニア等)の導入検討に着手します。

産業革命前からの気温上昇が+4℃となるシナリオ(主として物理リスク)においては、風水害の激甚化による生産設備の損壊や原材料の供給停止などが事業に影響を及ぼす可能性があります。その対応として、BCP訓練強化や在庫水準の見直しや複数購買の検討などを進めます。一方、顧客の低炭素貢献製品への要求の高まりに、当社の技術・製品が対応することなどにより、新たな事業成長機会を獲得できる可能性があると分析しています。

当社グループでは、地球温暖化・気候変動が当社事業に及ぼす影響をリスク・機会の両面から認識し、2030年度は温室効果ガスの排出量を46%削減(Scope1,2、2013年度比)、2050年度までにネットゼロ(実質ゼロ)とする「カーボンニュートラルの実現」を目標に掲げています。事業活動における温室効果ガス排出について、当社の岩国事業所では自家火力発電所を2023年10月の運転開始を目指して更新し、燃料転換(脱石炭)と高効率設備の導入による省エネ化を進めるなど、大幅な排出量削減を進めていきます。また、カーボンニュートラルの実現に向けては、再生可能エネルギーの導入、生産プロセスの電化推進、カーボンフリー燃料(水素やアンモニアなど)への転換等を進め、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)や森林吸収により、2050年度までにネットゼロを目指します。また、製品の軽量化や原材料の見直し、グリーン物流の推進などによりバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量削減に取り組むとともに、当社グループ独自の製品・技術によるソリューションを通じた温室効果ガスの削減貢献量拡大を進めています。具体的には、海水淡水化プラントの省エネ化に貢献するRO中空糸膜の開発や、自動車の燃費向上に貢献するエンジニアリングプラスチックの軽量化、風力発電や浸透圧発電に用いられるフィルムやFO膜などの提供、室内光で世界最高クラスの高発電効率を誇る有機薄膜太陽電池セルの開発、二酸化炭素を分離・回収するカーボンリサイクルの技術開発などを進めていきます。

2021年4月には、カーボンニュートラルの実現に向けた戦略の策定と推進を目的として、「カーボンニュートラル戦略検討会議」および「カーボンニュートラル戦略検討クロスファンクションチーム」を設置しました。統括執行役員をメンバーとするカーボンニュートラル戦略検討会議は、全社一丸となってカーボンニュートラルの実現に着実に取り組んでいくための戦略とマイルストーンを策定します。全社横断的なメンバーで構成されるカーボンニュートラル戦略検討クロスファンクションチームは、2021年度の活動として、温室効果ガスの排出削減シナリオを策定しました。今後、このシナリオに則り、対応を進めていきます。また、製品毎の温室効果ガス排出量の算定にも着手しています。加えて、長期的な視点でイノベーションの促進、アライアンスの推進、研究開発の加速、新たなソリューションビジネスの創出など、実質的な施策にも取り組んでいきます。

当社は、2022年4月1日から二酸化炭素の排出量を自社の基準で仮想的に費用換算し、設備投資判断の参考とする「インターナルカーボンプライシング制度」を導入しました。今後、同制度を投資判断の基準の一つとして活用していくことで、低炭素・脱炭素設備・省エネ投資はもとより削減貢献量の拡大等を目的とした開発設備への投資など、二酸化炭素の排出量削減に貢献する投資を加速していきます。

 

 

(8)環境負荷

近年、海洋プラスチックごみによる海洋汚染問題は、グローバルな共通課題となっており、ポリマー(プラスチック)を基幹素材として幅広く事業展開する当社グループにとって、プラスチックごみ問題は重要な課題と認識しています。今後、グローバルに廃棄プラスチックに関する規制が強化されることで、プラスチック製品の需要が減退し、当社グループの売上が減少するなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、環境負荷を低減する製品・技術を積極的に展開してきました。主力のプラスチック製品では、リサイクル樹脂やバイオマス(植物由来)原料の使用比率の向上、高い機能性を保持するバイオマスプラスチックの実用化に取り組んでいます。

また、当社グループはさまざまな企業や団体と協力し、循環型経済の時代にふさわしいプラスチックバリューチェーンの構築に貢献するため、各種イニシアチブに積極的に参画しています。2019年8月に欧州のコンソーシアムCEFLEX(Circular Economy for Flexible Packaging)に参加しました。回収システムやレギュレーションなどに関する情報・動向を把握しながら技術や製品の開発・提供に注力していきます。また、海洋プラスチックごみの削減に向けて日本で2019年に設立されたCLOMA(Clean Ocean Material Alliance)にも当初から参加しています。同団体に参加する容器包装などの素材製造事業者や加工事業者、利用事業者と連携しながら、代替素材の開発・普及などに取り組んでいきます。その他、日本バイオプラスチック協会、Petcore Europeなどにも参画しています。

 

(9)情報セキュリティ

当社グループは、事業の遂行に関連して顧客情報や機密情報など多くの重要情報を管理しています。これらの情報についてセキュリティ対策を講じていますが、自然災害等による通信障害、システムへの不正アクセスやサイバー攻撃を受けた場合、従業員の過誤など、システムの障害に伴う事業活動の停止、顧客情報や機密情報等の漏洩、詐欺被害などにより、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、「情報セキュリティポリシー」を策定するとともに各種規程を整備し、全情報資産の適切な管理・活用に努めています。

また、「サイバーセキュリティ委員会」を設置し、技術的・専門的な対策のみならず、従業員の意識レベル向上や社内専門家の育成などを進めています。今後、事故時の対応力強化などを推進していきます。

 

(10)法規制およびコンプライアンス

当社グループは、事業を展開する各国において、製品の製造、品質、安全、環境、競争、輸出入、情報、労働、会計などに関する様々な法令等による規制を受けています。たとえば、主要な事業所で、環境関連の法規制強化や取水制限などが行われる場合、あるいは、現在使用している化学物質が使用禁止になる場合や使用濃度規制が行われる場合には、生産活動ほかの事業活動が大幅に制限され、あるいは、同規制を遵守するために、多額の設備投資や租税ほかの費用負担を余儀なくされる可能性があります。海外の主要市場国において、アンチダンピング法などの規制により、関税引き上げ、数量制限などの輸入規制が課せられた場合には、輸出取引が制約を受け、当社グループの売上減少が生じるなど、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。さらに、これらの規制に対し、当社グループおよび取引先において、不遵守や違法行為が発生した場合には、当社グループの信用失墜や行政処分など多額の損害が生じる可能性があります。

また、当社グループでは、コンプライアンス活動の核として企業理念である「順理則裕」を掲げ、コンプライアンスマニュアルの推進に取り組んでいますが、国内外の法令等に抵触するなどのコンプライアンス違反が発生した場合には、当社グループの信用低下や行政処分、損害賠償責任が課されることなどにより、多額の損害が生じるおそれがあります。

当社グループでは、コンプライアンスを推進するため、具体的に様々な取組みを実施しています。例えば、「東洋紡グループ企業行動憲章」および行動規範である「東洋紡グループ社員行動基準」の解説や違反事例等をまとめたコンプライアンスマニュアルを、当社を含むグループ従業員に配付するとともに、職場にて読合わせを実施しルールの徹底に努めています。また、国内外グループ会社を含めた38社の管理者層を対象としたコンプライアンス勉強会を実施するとともに、法令違反等のトピックを掲載したケーススタディを毎月発行するなどコンプライアンス意識の向上を図っています。コンプライアンス徹底月間には、コンプライアンスアンケートを実施し、遵守状況や推進活動に関する課題の把握に努めるとともに、改善に向けた対応に取り組んでいます。

 

 

(11)海外での事業活動

当社グループは、米国をはじめ、欧州、中国、東南アジア、中南米などグローバルに事業を展開しています。そのため、世界経済全体の動向に加え、各国での予期しない法令、規制や政策等の変更、またはテロ、戦争、政変やその他の要因による社会的混乱などが生じた場合は、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、これらリスクに対しては、グループ各社での情報収集や外部コンサルタント情報等を通じて早期に認識し、顕在化する前に具体的かつ適切な対処ができるよう、国ごとに「危機管理マニュアル」を策定し、海外リスクマネジメント体制の整備に努めています。

また、当社グループでは、各国の税法に準拠し、適正に納税を行っており、適用される各国の移転価格税制などの国際税務リスクについても細心の注意を払っています。しかしながら、税務当局との見解の相違により、結果として追加課税が発生する可能性があります。

 

(12)訴訟

当社グループは、当連結会計年度において重要な影響を及ぼす訴訟は提起されていません。当社グループは国内外の各地で生産活動ほかの企業活動を行っており、その過程において、製造物責任、環境、労務、知的財産等に関し、当社グループに対し訴訟を提起される可能性があります。重要な訴訟を提起された場合には、当社グループの事業等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

<財務リスク>

(13)為替レートの大幅変動

当社は、海外から原材料の一部を輸入し、国内で生産した製品の一部を海外へ輸出しています。製品輸出高と原材料輸入高の差は大きくないため、中期的に見ると為替変動による業績に与える影響額は大きくないものと考えています。しかし、短期的に著しい変動があった場合は、製造リードタイムが比較的長い製品などは業績に対して影響を与える可能性があります。このようなリスクに対して、先物為替予約などによりリスクを最小限にするよう努めていますが、完全にリスクが回避できるわけではありません。

また、海外の連結子会社や持分法適用会社の経営成績は、連結財務諸表作成において円換算されるため、換算時の為替レートにより連結財務諸表に影響を及ぼします。加えて、円高が進行した場合、在外子会社等の換算差額を通じて自己資本が減少するなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)金利の大幅上昇

当社グループは、事業資金を主に金融機関からの借入や社債の発行などにより調達しています。これらの有利子負債のうち、金利変動リスクに晒されている借入金の一部は、支払金利の変動リスクを回避するために、金利スワップを主としたデリバティブ取引を利用しています。また、当社グループは「有利子負債と純資産(非支配株主持分を除く)の比率(D/Eレシオ)」を重視しています。当連結会計年度末ではD/Eレシオは0.98倍となりました。

 

(15)株価の大幅下落

当社グループは、市場性のある株式を保有しており、株価変動リスクを負っています。株価が大幅に下落した場合には、その他有価証券評価差額金の減少や売却時に損失が発生する可能性があります。また、当社の企業年金においては、年金資産の一部を市場性のある株式により運用しており、株価の下落は年金資産を減少させるリスクがあります。当社は、純投資目的以外の目的である投資株式について、将来の事業戦略や事業上の関係などを踏まえ、当社の持続的な成長や中長期的な企業価値の向上に資するかどうかを毎年、取締役会で個別に検証を行い、株式保有継続の可否判断を行っています。当連結会計年度において、当社および当社の子会社は、保有する投資有価証券の一部を売却し、65億円の売却益を計上しました。

 

(16)固定資産の減損

当社グループは、工場用土地、建物、製造設備など事業用固定資産を保有し、生産・販売活動を行っています。これらの製造設備で生産される製品は市場や技術開発等の環境変化の影響を受け、収益状況が大きく低下する可能性があります。また、土地の時価下落等により保有資産の評価額が著しく低下するリスクもあります。収益性が低下した場合や保有資産価値が大幅に低下した場合、当該資産について減損損失の計上が求められるなど、当社グループの業績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

なお、当連結会計年度において、医薬品製造受託事業の事業用資産など94億円の減損損失を計上しました。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度(以下、「当年度」といいます。)における当社グループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルス感染症の感染者数が増減を繰り返すなか、ワクチン接種の進展や財政・金融政策により、経済活動は徐々に回復しました。しかし、近時ではウクライナ情勢の影響を受けて、原燃料価格のこれまで以上の高騰や材料供給の逼迫がみられ、インフレ圧力が高まる状況にあります。国内においては、年度末にかけて新型コロナウイルス変異株による感染者数がピークアウトしたものの、原燃料価格の高止まり、自動車産業での半導体不足や部品供給網の混乱が長期化する懸念が強まっています。

こうした事業環境のもと、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”が新ラインの稼働により販売を伸ばしたほか、PCR検査用原料や試薬の販売も堅調に推移しました。一方で、包装用フィルムをはじめ、エンジニアリングプラスチック、エアバッグ用基布、ポリエステル短繊維や長繊維不織布スパンボンドなどでは、原料価格高騰の影響を受けました。

また、財務面では、資産の効率化および財務体質の健全化を図るため、当社グループが保有する投資有価証券を一部処分し、売却益65億円を特別利益に計上しました。一方、医薬品製造受託事業における事業用資産、衣料繊維事業における休止予定資産、および高耐熱性ポリイミドフィルムを製造販売する当社子会社(ゼノマックスジャパン株式会社)の事業用資産に関して、減損損失94億円を特別損失に計上しました。

以上の結果、当年度の売上高は3,757億円と前年度比11.4%の増収、営業利益は284億円と前年度比6.6%の増益、経常利益は231億円と前年度比11.5%の増益、親会社株主に帰属する当期純利益は、129億円と前年度比206.2%の増益となりました。

 

セグメント別の概況は、次のとおりです。

 

(フィルム・機能マテリアル)

当セグメントは、工業用フィルムが堅調に推移しましたが、原料価格高騰の影響を受けた結果、増収減益となりました。

フィルム事業では、包装用フィルムは、巣ごもり需要が継続しましたが、前年度の火災事故による販売減少や原料価格高騰の影響を受け苦戦しました。工業用フィルムは、液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”が、新ラインの稼働により販売を伸ばしました。セラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”は、新ラインの稼働により、年度前半は堅調に推移しましたが、年度後半の市場環境の変化により販売は伸び悩みました。

機能マテリアル事業では、工業用接着剤“バイロン”は、エレクトロニクス用途の販売が堅調に推移したものの、原料価格高騰の影響を受けました。また、水現像型感光性印刷版用途の光機能材料は、中国・北米・欧州向けに販売を伸ばしました。

この結果、当事業の売上高は前年度比175億円(11.4%)増の1,703億円、営業利益は同1億円(0.7%)減の199億円となりました。

 

(モビリティ)

当セグメントは、前年度に対して販売は回復しましたが、原料価格の高騰、半導体不足などによる自動車減産の影響を受けた結果、増収減益となりました。

エンジニアリングプラスチックは、海外は、中国、米国、タイの販売が堅調に推移したことに加え、原料価格高騰に対して販売価格改定が進みました。一方、国内は、販売価格改定が追いつかず、年度後半は自動車減産の影響を受けました。

エアバッグ用基布は、原料価格高騰に対して販売価格改定が追いつかず、苦戦しました。

この結果、当セグメントの売上高は前年度比81億円(22.3%)増の447億円、営業損失は18億円となりました(前年同期は営業損失16億円)。

 

 

(生活・環境)

当セグメントは、経済活動の復調に伴い一部で需要が回復したものの、原料価格高騰の影響を強く受けた結果、増収減益となりました。

環境ソリューション事業では、溶剤を回収するVOC処理装置がリチウムイオン電池市場の拡大に伴い回復基調にあるものの、前年度の海外での営業活動の停滞により受注が減少し、苦戦しました。

不織布事業では、長繊維不織布スパンボンドは、建材用途で回復しましたが、自動車減産と原料価格高騰の影響を受けました。機能フィルターは、マスク向けの販売が減少しました。

繊維機能材事業のスーパー繊維では、“イザナス”が釣糸用途やロープ用途で堅調に推移し、また、“ザイロン”も自転車タイヤ用途や消防服用途の需要が回復し、それぞれ販売を伸ばしました。一方、ポリエステル短繊維、機能性クッション材“ブレスエアー”は、原料価格高騰の影響を受けました。

衣料繊維事業では、中東向け特化生地は、円安により輸出採算が好転し、インナー用途も市況が回復したものの、スポーツ用途は店頭販売が振るわず、ユニフォーム用途は企業向けが低調でした。

この結果、当セグメントの売上高は前年度比51億円(4.7%)増の1,143億円、営業利益は同9億円(21.1%)減の35億円となりました。

 

(ライフサイエンス)

当セグメントは、PCR検査需要が底堅く、増収増益となりました。

バイオ事業では、PCR検査用原料・試薬、遺伝子検査装置・診断薬の販売が拡大しました。

医薬品製造受託事業は、FDA対応のため、操業度を下げたことが影響し低調でした。

メディカル事業では、人工腎臓用中空糸膜、ウイルス除去フィルターの販売が堅調に推移しました。

この結果、当セグメントの売上高は前年度比79億円(29.2%)増の350億円となり、営業利益は同41億円(91.6%)増の87億円となりました。

 

(不動産、その他)

当セグメントでは、不動産、エンジニアリング、情報処理サービス、物流サービス等のインフラ事業は、それぞれ概ね計画どおりに推移しました。

この結果、当セグメントの売上高は前年度比4億円(3.2%)減の114億円、営業利益は同1億円(3.7%)減の22億円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、前年度比179億円収入が減少し、171億円の収入となりました。主な内容は、減価償却費201億円および税金等調整前当期純利益148億円による資金の増加と棚卸資産の増加による資金の減少182億円です。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、前年度比71億円支出が減少し、246億円の支出となりました。主な内容は、有形及び無形固定資産の取得による支出291億円および投資有価証券の売却による収入115億円です。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、17億円の支出となりました(前年度は53億円の収入)。主な内容は、長期借入れによる収入150億円、長期借入金の返済による支出104億円、社債の発行による収入100億円、社債の償還による支出100億円および配当金の支払額36億円です。

 

この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末比81億円減の264億円となりました。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

(イ)生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

フィルム・機能マテリアル

176,684

14.8

モビリティ

47,299

24.6

生活・環境

117,911

8.1

ライフサイエンス

37,616

33.4

不動産

その他(うち製造)

23,047

16.6

合計

402,558

15.4

(注)1.金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。

2.外注生産を含んでいます。

3.不動産の生産実績はありません。

 

(ロ)受注実績

当社グループの製品は一部の受注生産を除き見込生産を行っています。

(ハ)販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前連結会計年度比(%)

フィルム・機能マテリアル

170,326

11.4

モビリティ

44,721

22.3

生活・環境

114,295

4.7

ライフサイエンス

35,003

29.2

不動産

3,957

△0.1

その他

7,419

△4.9

合計

375,720

11.4

(注)1.総販売実績に対する販売実績の割合が100分の10以上となる販売先はありません。

2.セグメント間の取引については相殺消去しています。

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(イ)財政状態の分析

当連結会計年度末の総資産は、前年度末比266億円(5.4%)増の5,178億円となりました。これは主として棚卸資産が増加したことによります。

当連結会計年度末の負債は、前年度末比181億円(6.0%)増の3,206億円となりました。これは主として支払手形及び買掛金や借入金が増加したことによります。

当連結会計年度末の純資産は、主として利益剰余金が増加したことから、前年度末比85億円(4.5%)増の1,971億円となりました。

 

また、財政状態に関する各種指標(連結ベース)は次のとおりです。

回次

 

第160期

第161期

第162期

第163期

第164期

決算年月

 

2018年3月

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2022年3月

自己資本比率

(%)

40.5

38.3

36.4

37.8

37.6

時価ベースの自己資本比率

(%)

41.8

27.2

20.8

25.8

18.8

自己資本当期純利益率

(%)

7.5

△0.3

7.8

2.3

6.8

キャッシュ・フロー対

有利子負債比率

(年)

6.5

21.0

4.0

5.3

11.2

インタレスト・カバレッジ・レシオ

(倍)

16.9

6.0

32.2

28.0

14.0

有利子負債自己資本比率

(D/Eレシオ)

(倍)

0.81

0.93

0.98

1.01

0.98

自己資本比率:非支配株主持分を含まない期末純資産/期末総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額[期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数]/期末総資産

自己資本当期純利益率:親会社株主に帰属する当期純利益/非支配株主持分を含まない期末純資産の期首・期末平均

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:期末有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/(連結キャッシュ・フロー計算書)利息の支払額

有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ):期末有利子負債/非支配株主持分を含まない期末純資産

 

当社グループは、財務の健全性の指標として特に有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)を重視しています。当連結会計年度末のD/Eレシオは0.98倍となりました。

 

 

(ロ)経営成績の分析

当連結会計年度の期初において、新型コロナウイルス感染症再拡大に加え、半導体不足、原燃料価格高騰の影響により、国内を含む世界経済の正常化には時間がかかることが懸念されました。一方で、PCR検査需要に応えるため、PCR検査用試薬、遺伝子検査装置などの提供に尽力するとともに、工業用フィルムの増産計画を踏まえ、売上高3,600億円、営業利益270億円を計画し、事業活動を進めてきました。その結果、原燃料価格高騰の影響を受けましたが、工業用フィルムやPCR検査用原料や試薬の販売が堅調に推移したことから売上高3,757億円、営業利益284億円と計画を上回ることができました。

売上高については、原料価格高騰に伴い各製品の価格転嫁を進めたことに加え、2020年7月から商業生産を開始した液晶偏光子保護フィルム“コスモシャインSRF”の新機台(3号機)が1年間稼働し、販売量は堅調に推移しました。これにより、液晶テレビ保護フィルム市場におけるシェアが50%超となったものと推定しています。また、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用していますが、これによる当連結会計年度の連結財務諸表に与える影響は軽微です。以上の結果、売上高は期初の計画を達成しました。

営業利益についても、売上高の増加理由に加え、変異した新型コロナウイルス感染症の再拡大によりPCR検査用原料・試薬、遺伝子検査装置・診断薬の販売が大きく増加したことから期初計画を達成し、「総資本営業利益率(ROA)」は5.5%となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益については、資産の効率化および財務体質の健全化を図ることを目的として、当社および当社の子会社が保有する投資有価証券の一部を売却し、特別利益として投資有価証券売却益65億円を計上しました。一方、当社の医薬品製造受託事業における事業用資産、衣料繊維事業の休止予定資産および当社の子会社であるゼノマックスジャパン株式会社の事業用資産において減損損失94億円を計上するなど合計148億円の特別損失を計上したことなどから、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は129億円となりました。以上により、「自己資本当期純利益率 (ROE)」は6.8%となりました。

(単位:億円)

 

2021年度

(計画(*))

2021年度

(実績)

増 減

(実績-計画)

売上高

3,600

3,757

157

営業利益

270

284

14

親会社株主に帰属する当期純利益

115

129

14

(*) 期初において計画した計画値

 

 

2019年3月期から2022年3月期までの2018年中期経営計画において、当社グループが重視する経営指標は、「営業利益」、「総資本営業利益率(ROA)」および「自己資本当期純利益率(ROE)」です。数値目標としては、営業利益は300億円以上、ROAは7%以上およびROEは8%以上を目標としてきました。当連結会計年度は2018年中期経営計画の最終年度であり、目標に対して、結果は以下のとおりです。

[2018年中期経営計画(2018年度~2021年度)]

経営指標

2018年度

実績

2019年度

実績

2020年度

実績

2021年度

実績

2021年度

目標

売上高

(億円)

3,367

3,396

3,374

3,757

3,750

海外売上高比率

(%)

30.5

32.3

33.0

34.3

35.0

営業利益

(億円)

217

228

267

284

300

営業利益率

(%)

6.5

6.7

7.9

7.6

8.0

親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)

(億円)

△6

138

42

129

160

ROE

(%)

7.8

2.3

6.8

≧8.0

ROA

(%)

4.7

4.7

5.4

5.5

≧7.0

D/Eレシオ

(倍)

0.93

0.98

1.01

0.98

<1.0

・ROE=親会社株主に帰属する当期純利益÷(期首・期末平均自己資本)

・ROA=営業利益÷総資産

 

2018年中期経営計画の期間中に出来たこと、出来なかったことや新たな課題は以下のとおりと考えています。

(出来たこと)

・企業理念体系「TOYOBO PVVs」の整理

・工業用フィルムの拡大

・バイオ・メディカルの拡大

・財務体質の健全性維持

 

(出来なかったこと、新たな課題)

・信頼性にゆらぎ:大規模火災事故、品質不適切事案

・成長をめざした事業の拡大遅れ

・課題事業の正常化遅れ

 

今後も、信頼回復を最優先課題とし、持続的な成長に向けて、全社一体となって企業価値の向上に取り組んでまいります。

 

(ハ)経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりですが、特に、度重なる火災事故、品質の不適切事案により損なわれた信頼を回復すべく「安全・防災」「品質」を最重要課題として改善に取り組んでまいります。また、新型コロナウイルスの流行を受けた移動制限の広がりによる中国経済の景気動向や半導体不足などによる自動車生産台数の影響について注視するとともに、原燃料などの価格動向や為替変動についても 引き続き注視していく必要があると考えています。

 

 

(ニ)当社グループの資本の財源および資金の流動性について

a.キャッシュ・フロー

当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

b.契約債務

2022年3月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりです。

 

年度別要支払額(百万円)

契約債務

合計

1年以内

1年超3年以内

3年超5年以内

5年超

短期借入金

40,592

40,592

長期借入金

92,100

21,418

38,807

15,207

16,668

リース債務

3,557

864

1,287

531

875

上記の表において、連結貸借対照表の1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めています。

当社グループの第三者に対する保証は、関係会社の借入金等に対する債務保証です。保証した借入金等の債務不履行が保証期間内に発生した場合、当社グループが代わりに弁済する義務があり、2022年3月31日現在の債務保証額は、5,253百万円です。

c.財務政策

当社グループの2025中期経営計画(2022~2025年度)では、安全・防災・環境対応を最優先とし、同時に成長事業へ積極投資を行うとして、成長投資(1,150億円)、つくりかえる投資(920億円)、安全・防災・環境投資(330億円)の合計2,400億円を計画しています。

必要資金に関しては、内部資金または外部調達により資金を調達し、外部調達は、直接金融・間接金融を活用し、D/Eレシオは1.2倍未満、Net Debt/EBITDA倍率は4倍台の範囲になるように管理していきます。

また、マーケット環境の一時的な変化など、不測の事態への対応手段確保のため、当連結会計年度末において、複数の金融機関との間で合計17,500百万円のコミットメントライン契約を締結しています(借入未実行残高17,500百万円)。

 

4【経営上の重要な契約等】

(1)供与技術契約

契約会社名

契約項目

契約の内容

相手先

契約締結年月

(有効期間)

対価

東洋紡㈱

(当社)

活性炭素繊維

Kフィルターによる溶剤吸着処理装置に関する技術援助の供与

(米国)

Met-Pro
Corporation

1980年7月1日

(1980年7月1日

自動延長)

技術使用料ほか

同上

同上

同上

(英国)

CJB Developments
Limited

1981年3月4日

(1981年3月4日

自動延長)

同上

同上

同上

同上

(ドイツ)

Durr Anlagenbau
GmbH

1984年10月18日

(1984年10月18日

1987年10月17日

自動延長)

同上

同上

同上

同上

(韓国)

斗山機械株式会社

1991年8月5日

(1991年9月25日

1994年9月24日

自動延長)

同上

同上

同上

同上

(台湾)

清隆企業股份有限公司

1993年9月1日

(1993年9月1日

1996年8月31日

自動延長)

同上

同上

同上

同上

(米国)

Durr Industries,
Inc.

1996年12月25日

(1996年12月25日

1999年12月24日

自動延長)

同上

 

(2)会社分割(簡易吸収分割)および三菱商事株式会社との合弁会社設立に関する契約締結について

当社は、2022年3月24日開催の取締役会決議に基づき、三菱商事株式会社(以下、「三菱商事」)との間において、当社の機能素材の事業競争力を高め、グローバルにソリューションを提供し続けることを目指す新たな合弁会社(以下、「新会社」)の設立に向けて、新会社を設立した上で当社事業の一部を分割し、三菱商事が新会社へ出資することに関する契約を同日付で締結しました。

 

5【研究開発活動】

当社グループは、「私たちは、素材+サイエンスで人と地球に求められるソリューションを創造し続けるグループになります」というビジョンを掲げています。「素材+サイエンス」として、自社保有のコア技術のさらなる進化に加え、積極的なオープンイノベーションの考え方の下、新製品の拡大、新事業の創出に注力しました。

当社グループの研究開発は、セグメントごとに担当事業部が直接運営する事業部研究部門と、中長期的視点から次代を担う新製品・新技術を開発する全社共通のコーポレート研究部門とに大別されます。これらの研究開発のマネジメントは研究開発委員会方針のもとイノベーション戦略部が担当し、各部門相互の連携を図りながら、当社グループの総合力を発揮した研究開発活動を推進しました。

 

(フィルム・機能マテリアル)

包装用フィルム分野において、環境対応商品の拡販が進みました。薄肉化(プラ減量化)では高強度な熱収縮性ポリエステルフィルム“スペースクリーン”及び高耐熱高剛性ポリプロピレンフィルムの用途が拡大しました。またバイオマス原料を使用した“バイオプラーナ”として、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、シーラントの各該当製品の採用が進みました。更にリサイクル原料を使用したポリエステルフィルム“サイクルクリーン”も順調に採用が増えました。新規開発の一つとして、食品や化粧品などの外装ラベル向けに、レーザー印字対応フィルム“レザイア”を開発し、サンプル提供を開始しました。顧客要望に応じた用途開発にも取り組んでいきます。

工業フィルムでは環境に配慮したリサイクル原料を使用したフィルム製品“クリスパー”、“カミシャイン”、“リシャイン”の開発・改良、販売促進に加え、環境負荷の少ないリサイクルシステムの開発も積極的に進めています。さらに電子情報通信分野、自動車分野で拡大しているセラミックコンデンサ用離型フィルム“コスモピール”においても、薄層化、リサイクルによる環境対応に注力しています。また、液晶ディスプレイに最適な超複屈折フィルム“コスモシャインSRF”も、薄層化対応の新製品の開発を積極的に進めています。また、力学的・熱的特性に優れたポリエチレンナフタレートフィルム“テオネックス”の開発を進め、エネルギー分野に貢献する商品としていきます。

重金属を含まず環境に優しいポリエステル重合触媒“TOYOBO GS Catalyst”については、その優れたリサイクル性を活かし、用途展開が進み循環型経済に貢献しています。GS触媒ライセンス事業についても海外大手PETメーカーにおける商業生産が拡大しています。また、環境に配慮したバイオ由来の優れたバリア性の樹脂開発や植物由来原料を100%使用したバイオPET樹脂の重合にも成功し、プラスチックとの共生社会を目指し、再生可能な素材へのシフトを加速しています。

高機能共重合ポリエステル樹脂“バイロン”、高耐熱共重合ポリアミドイミド樹脂“バイロマックス”、変性ポリオレフィン樹脂“ハードレン”は、電気電子、自動車内外装の塗料、リチウムイオンバッテリー用包材接着用途等で開発を進めています。“バイロン”では通信、電子製品分野の接着用途で次世代高速通信に対応する高周波でも伝送損失が少ない低誘電性接着剤を新たにラインナップし、“バイロマックス”は、高耐熱と高耐久性が評価され、スマートフォン周辺デバイスでさらに拡大を続けています。“ハードレン”は接着が難しいポリオレフィン用の接着付与剤として、国内外の自動車外装プラスチック塗料用途での展開を強化し、リチウムイオンバッテリー用の包材接着剤としても拡大を続けています。“バイロン”、“ハードレン”共に、北米、欧州、中国での環境問題から、自己架橋型、水性化、ホットメルト化、低温養生をキーワードに取り組みを強化しています。

以上、当事業に係る研究開発費は55億円です。

 

(モビリティ)

エンジニアリングプラスチック分野では、自動車産業における100年に一度の変革期の流れで、CASE、MaaSのキーワードに乗った、自動車の電動化、電気電子部品の増加に向け、特長を有する材料の開発を進めています。具体的なニーズとして、熱伝導、電磁波シールド、低誘電率、高熱伝導、高CTI、防音機能が、実現するシーズとして、カウンタープレッシャー発泡、有機無機複合材料の組合せ、新規ポリマー重合等により新商品提案を実現しています。さらに、環境負荷低減としてカーボンニュートラルを進める材料が、新たな切り口での採用も検討されています。これらの材料開発だけでなく、コンピューターによる解析技術(CAE解析(Computer Aided Engineering)、DX(Digital transformation)、MI(Materials Informatics))の導入によるメリットも享受し、お客様へのトータルソリューションの提案を続けています。

エアバッグ事業分野ではグローバルでの生産販売体制の拡大を継続的に進めています。特にタイでの原糸新工場の建設をインドラマ・ベンチャーズと実施中で来年から本格生産の予定です。原糸から基布に至る体制強化と新商品を含めた品揃えをグローバルで展開しています。

以上、当事業に係る研究開発費は12億円です。

 

 

(生活・環境)

スーパー繊維“イザナス”は、浮体式洋上風力発電設備などの長期係留索用途を目指した高耐クリープ性を有する原糸の開発を進め、スケールアップに向けた生産技術開発を検討しています。“ツヌーガ”は、用途拡大を目指して多色糸の研究開発を進めています。

エステル短繊維や三次元スプリング構造体“ブレスエアー”及びスパンボンドは、環境に配慮した製品づくりへの取り組みを行い、環境負荷低減に貢献できる商品開発を進めています。

フィルター材料においては、主力製品である静電フィルター“エリトロン”をベースに高機能、高耐久化を図っています。更に、環境対応の製品開発も進めています。

水処理膜では、中空糸RO、FO膜の開発とモジュールの高性能化、ならびに省エネ海水淡水化や浸透圧発電、BC濃縮技術を用いた排水処理などの応用研究を進め、実用化に進んでいます。

また、VOC排気ガス処理分野では市場ニーズに対応した溶剤回収装置の処理量増大や省エネ化によるCO2削減技術の開発を進めました。

繊維では、高密度ニット生地“スクラムテック”を開発。独自の特殊高捲縮糸と高弾性糸を組み合わせて高密度に編み上げることで高いストレッチ性を獲得し、優れた保形性も備えました。従来の布帛やニットとは一線を画す緻密な素材感の生地で、スポーツウェア用途のみならず、シャツ・ジャケット・セットアップなど幅広い用途で好評を得ました。

フィルム状導電素材“COCOMI”では、心拍計測用サイクリングシャツの販売を一般消費者向けに開始しました。また畜産用心拍計測ベルトなどのアニマル関連分野への検討、スマートテキスタイルのヘルスケア関連分野への検討に加え、高精度心拍計測により導きだされる自律神経活動指標マップ“ANAIM”、心拍と呼吸の同時計測技術の利用による理想呼吸誘導システム“BREASsist”など、生体情報を利用したサービスの提案、検討を始めました。

工業材料分野では、省エネ・安全資材として遮熱シートおよび防炎シートの用途開発および拡販を行いました。またマスク分野では医療グレード不織布マスクを厚生労働省向けに納品しました。

機能資材分野では、海外拠点と連携したアルコール消毒綿・特殊防護服など、環境衛生や生活分野の製品を上市し拡販しました。

以上、当事業に係る研究開発費は18億円です。

 

(ライフサイエンス)

診断原料分野では、富山大学との共同研究でSARS-CoV-2に対する抗体の開発に成功し販売を開始しました。診断システムでは、全社共通部門であるコーポレート研究所の協力を得て、SARS-CoV-2抗原検査の診断薬の開発に成功し、販売を開始しました。研究試薬では、理化学研究所との共同研究で1細胞からのmRNAで遺伝子発現解析が可能な逆転写システムの開発に成功し、販売を開始しました。

医療機器分野では、米国の薬事承認である510(k)を取得していた神経再生誘導チューブ“ナーブリッジ”が2021年10月に米国市場へ本格展開を開始しました。また、骨再生誘導材である“ボナーク”は2022年度上市に向け、販売準備を進めています。

人工腎臓用中空糸膜では、透析患者の負担を低減しつつ老廃物を効率よく除去できる製品の開発を進めました。また、製薬の精製工程で用いられるプロセス用中空糸膜の開発に取り組みました。

以上、当事業に係る研究開発費は16億円です。

 

 

(全社共通)

イノベーション部門においては、全社成長戦略(ソリューション志向)に基づいた価値提供領域及び大型テーマの設定と加速を進めました。

全社共通の研究開発組織であるコーポレート研究所は、当社グループの将来を担う新製品・新技術の開発を行うだけでなく、各種分析・評価業務、コンピューターシミュレーションなどデジタル技術を用いた解析業務を通じて、研究開発全般を支援する全社研究インフラとしての機能も有しています。また、昨年度、総合研究所長直下に設置したDX推進室の活動においては、MI(Materials Informatics)技術の展開を所内全域に広め、一部の研究所、技術センターにおいては研究員が自走できるような体制を整えるに至っています。

具体的な研究開発内容として、コーポレート研究所、リニューアブル・リソース事業開発部、フイルム・機能マテリアルソリューション本部は、サントリーグループと米国バイオ化学ベンチャー企業・アネロテック社が共同開発した、植物由来原料を100%使用したペットボトルの試作にあたり、原料となる100%バイオPET樹脂の重合に成功するなど、当社使用原料のサステナブル化に向けて検討を続けています。

加えて、ライフサイエンスソリューション本部と共同で、コーポレート研究所が基礎検討を行っていたイムノクロマト技術をSARS-CoV-2抗原検査に適用展開し、診断薬の早期開発に寄与しました。

新規事業企画・開発においては、引き続き、オープンイノベーションの考え方の下、ナショナルプロジェクトへの参画や国内外の企業、大学、研究機関との連携を積極的に進めています。

例えば、有機光ダイオードにおいては、フランス政府系研究機関のCommissariat à l'énergie atomique et aux énergies alternativesとの共同研究により、世界トップクラスの高感度モジュールの試作に成功しました。

また、スタートアップ企業への投資活動拡大のために、材料メーカー4社とともにJMTC ケミカル&マテリアルズファンドを立ち上げて、事業化への道のりが長い、材料系スタートアップ企業の支援を行う一方、バイオベンチャー企業のDMC Biotechnologies Inc.(米国)に出資を行いました。そのほかにも数社のベンチャー企業への出資、共同研究なども順次立ち上がっています。

以上、全社共通のコーポレート研究に係る研究開発費は37億円です。