第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは、経営の基本方針を次のとおり「基本理念」として掲げております。

 ① 社会   よき企業市民として社会との調和ある成長を目指す。

        ・企業倫理の徹底をはかり、公正で透明な企業活動の推進。

        ・クリーンで安全な商品を提供することを使命とし、地球環境保護を重視した企業活動の推進。

        ・地域社会の一員としての役割を自覚し、よい社会づくりに貢献。

 ② お客さま 革新的な技術開発、製品開発に努め、お客さまに喜ばれる、よい商品を提供する。

 ③ 株主   将来の発展に向けた革新的経営を進め、株主の信頼に応える。

 ④ 社員   労使相互信頼を基本に、社員の個性を尊重し、安全で働きやすい職場環境をつくる。

 ⑤ 取引先  開かれた取引関係を基本に、互いに研鑚に努め、ともに長期安定的な成長を目指す。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

 当社は持続可能な成長を続けるために、以下の取り組みを推進してまいります。

 

①インテリアスペースクリエイターの実現に向けて、企画提案力と技術開発力の向上に取り組みます。

  ・お客さまの期待を超える移動空間全体の企画実現に向け、重点プロジェクトの企画具体化と顧客への提案

  ・製品領域ごとに手の内化の範囲を定義

  ・プロジェクト受注に向けた最適で先進性のある製品の開発による、圧倒的な競争力の獲得

  ・開発の効率化と新たな原価企画の仕組み構築による技術開発力の強化

 

②サプライチェーン全体で、お客さまに信頼され・選ばれるための「ものづくり競争力」の確保を目指します。

  ・客先稼働に影響されない収益構造への抜本改革

  ・収益性にこだわった工程自働化の推進

  ・グローバルでの品質マネジメントシステム再構築に向けたトレーサビリティの仕組みづくり

 

③世界中のさまざまなお客さまから選ばれるために、販売能力の引き上げを目指します。

  ・2030年売上収益目標達成に向けたターゲットプロジェクトの明確化

  ・顧客から選ばれるための提案力の強化

  ・ターゲットプロジェクトの確実な受注

  ・新たな顧客向けの営業体制構築による営業活動基盤の強化

 

④上記①~③の実践を横断的に支える経営基盤の強化に取り組みます。

  ・事業戦略に必要な人材の確保と、一人ひとりが高いモチベーションを持ち効率的に活躍できる職場環境

づくり

  ・AI活用による効率化の推進

  ・全員参画による企業価値向上に向けたマネジメントツリー※1の浸透・活用

  ・環境取り組みプラン(温暖化抑制・資源循環・自然共生)に基づいた環境経営の実践

  ・適正取引に向けたプロセス構築と、ものづくり力強化によるサプライチェーン強化

  ・全社的なイノベーションの促進による、競争優位と新事業を生む仕組みの構築

 

 当社は、インテリアスペースクリエイターとして快適な移動空間を実現し、製品、顧客の幅を広げながら社会課題の解決に貢献し、経済的価値と社会的価値の両輪を同時に高めていくCSV経営※2により、「社会に必要とされ続ける企業」を目指してまいります。

 

※1 マネジメントツリー:従業員の日々の業務が企業価値向上に繋がっていることを体系的に視覚化したツール

※2 CSV(Creating Shared Value)経営:本業の中で社会課題の解決に取り組み、経済的な価値と社会的な価値の両立を目指す経営

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ

 

[戦略]

トヨタ紡織グループは、創業者である豊田佐吉の考えをまとめた「豊田綱領」に基づき、すべてのステークホルダーから信頼され続けるために「基本理念」を制定し、事業活動において着実に実践しています。持続可能な成長の追求を通じて経済的価値の向上を図り、その成果をステークホルダーのみなさまに還元するとともに、持続可能な成長への投資をすることで、中長期的に企業価値の向上を図り、ステークホルダーのみなさまの期待に応え、国際社会・地域社会の発展に貢献します。

これまでもCSR活動に取り組み、SDGsの達成に貢献してきましたが、世の中の変化に合わせ、2019年3月よりCSRからCSV経営へのシフトを加速させています。そして2020年7月、さまざまな社会課題の中から本業を通じて優先的に取り組む重要な課題を特定し、解決する姿をマテリアリティとして策定しました。

さらに、CSV経営の考え方を明確にするため、CSRの考え方を見直し、2021年11月に取締役会の承認を受け、「トヨタ紡織グループサステナビリティ基本方針」を策定しました。

また、「基本理念」を実践するために、グローバルでの共通の価値観や行動パターンとして「TB Way」「トヨタ紡織グループ行動指針」を制定し、共有しています。

 

 

 

トヨタ紡織グループ サステナビリティ基本方針

トヨタ紡織グループのサステナビリティ基本方針は、「経営の考え方」、「マテリアリティ」、「経営の目指す姿」で構成されています。

 

 

 

1.経営の考え方

トヨタ紡織グループは、「豊田綱領」に基づいて「マテリアリティ」を定め、本業を通じて、社会に貢献していきます。

※トヨタグループの創始者である豊田佐吉の考えをまとめたもの

 

 

 

2.マテリアリティ

インテリアスペースクリエイターとして

快適・安全・安心を創造し、こころ豊かな

暮らしと交通事故死傷者ゼロ社会に貢献

していきます。

また、再生可能エネルギーの活用やサーキュ

ラーエコノミーでカーボンニュートラルの

実現に挑戦していきます。

 

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3.経営の目指す姿

よき企業市民として社会的価値への貢献と、競争

力・経営基盤の強化の取り組みを軸に経済的価値

の向上を図り、ステークホルダーのみなさまの期

待に応えると同時に持続可能な成長を追求して

いくことで、企業価値の向上を目指します。

 

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[ガバナンス]

「CSV推進会議」(議長:CSO(Chief Strategy Officer))で、企業価値向上に向けた課題や方向性の報告、審議を行うとともに、目標を設定し、活動をフォローしています。

CSV推進会議には、ESGの観点で整理し、マテリアリティの進捗を測るESG KPIの責任者である全てのチーフオフィサーが出席し、ESG KPIのモニタリングを実施しています。これらの活動を通して、マテリアリティの達成度合いを正確に把握し、必要に応じてPDCAサイクルを回し、リカバリーを図ります。また、CSV推進会議で報告、審議された内容は取締役会に報告しています。

各機能や関係部署と協力し、日々の活動を通じて、トヨタ紡織グループ全体の社会的価値に貢献できるよう取り組みを推進しています。

 

体制図

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[リスク管理]

2019年4月から2020年7月にかけて、全社をあげて重要課題の特定に取り組み、マテリアリティを策定しました。

特定した重要課題は、人と生活を豊かにする「プラスの影響を最大化するもの」と、リスクを回避する「マイナスの影響を最小化するもの」に分類し、それらを「本業を通じて解決する安全・環境・快適に関する課題」と、「競争力を発揮するための源泉となる人・組織に関する課題」に整理。それぞれの課題へ「解決する姿」を加えたものを、トヨタ紡織グループのマテリアリティとしました。

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[指標及び目標]

2021年12月に、社会的価値を測る非財務KPIのESG KPIを設定しました。さらに、2030年中期経営計画策定にともない、2023年10月にESG KPIを見直しました。

ESG KPIで進捗を測りながらマテリアリティ実現に向けた活動を進め、企業価値を向上することで、ステークホルダーのみなさまの期待に応えていきます。

なお、ESG KPIは、CSV推進会議(議長:CSO(Chief Strategy Officer))で、フォローしています。

 

<ESG KPI策定の考え方>

1.ESGの観点で整理

2.トヨタ紡織グループサステナビリティ基本方針に沿っている

3.マテリアリティの進捗を測ることができる

4.コーポレートガバナンスコードに則している

5.社会からの要請に対応している

No (※)

関連する

マテリアリティ

KPI項目

2024年度

目標

2024年度

実績

目標値

2025年度

2030年度

工場GHG排出量削減率(総量)(2019年度比)

▲20%

▲40%

▲25%

▲50%

SCOPE3排出量削減率(総量)(2019年度比)

▲15%

集計中

▲18%

▲30%

再生可能エネルギー導入率

33%

39%

35%

50%

廃棄物排出量削減率(2011年度比)

▲13%

▲19%

▲14%

▲20%

水使用量低減率(2013年度比)

▲5.5%

▲42%

▲6%

▲8%

①③

製品のリサイクル材適用率

リサイクル樹脂開発

リサイクル樹脂開発

リサイクル樹脂開発

完了

25%以上

自然共生(植樹本数)

累計61万本

累計76万本

累計64万本

累計77万本

③④

”人にやさしい” 自働化アイテムの実装件数

①号口導入実施率

②加工費低減目標達成率

①100%

②100%

①71%

②56%

①100%

②100%

①100%

②100%

サプライヤー満足度調査の実施

展開率100%

展開率100%

展開率100%

展開率100%

10

社会貢献活動の推進 参加者数(年間)

延べ

3,000人

延べ

3,085人

延べ

3,100人

延べ

3,500人

11

女性管理職比率

3.5%

3.0%

4.0%

5.0%

12

男性育児休職取得率

80%(希望者100%)

69%(希望者99%)

90%(希望者100%)

90%(希望者100%)

13

外国籍社員数

120人

153人

135人

180人

14

インテリアスペースクリエイターにつながる新製品開発率

15%

15%

30%

15

①②

特許出願数

305件/年

371件/年

320件/年

500件/年

16

①②

社外発表・論文数

82件/年

93件/年

90件/年

120件/年

17

運動習慣がある人の比率(40歳以上)

23%

21%

24%

30%

18

定期健康診断後の精密検査受診率

100%

99%

100%

100%

19

社員の重大災害発生件数

0件

0件

0件

0件

20

③⑤

外来工事業者・外来者の重大災害件数

0件

0件

0件

0件

21

国・地域への持続的な納税の実施

全ての進出国での納税実施

全ての進出国での納税実施

全ての進出国での納税実施

全ての進出国での納税実施

22

行動指針の実践度

90%

89%

90%

90%

23

③⑤

環境異常・苦情発生件数

0件

0件

0件

0件

24

サイバーセキュリティ重大インシデント発生件数

0件

0件

0件

0件

(※) 上記KPIの実績および目標のうち、No.1、2、4、5、6、7、19、20、21、22、23、24は、トヨタ紡織グループグローバル、No.3、8、9、10、11、12、13,14、15、16、17、18は、トヨタ紡織㈱単体の数値です。

 

 

個別項目

 

(2)人的資本

 

1.人的資本経営の取組み

トヨタ紡織グループは2030年目指す姿を「インテリアスペースクリエイターとして快適な移動空間を実現し、製品、顧客の幅を広げながら社会課題の解決に貢献している会社」としています。今後、自動車市場の変化や顧客ニーズの多様化に対応し、ものづくりの競争力を磨き続けることに加え、お客さまへの提供価値の拡大を図り、車室空間全体を企画・提案できるインテリアスペースクリエイターへ成長していくことが必要です。

これを実現するためには、多様なアイデンティティを持つ人材がトヨタ紡織グループに魅力を感じて集まり、自由に意見を出し合い尊重し合うことで、これまでにない新しい価値やアイデアを創出し続けられる環境をつくっていくことが重要です。このため、事業戦略と整合した人材戦略が必要であり、2023年には人的資本経営のフレームワークとして7つの人材戦略を策定するとともに、それぞれの達成度をモニタリングするためのKPIを設定しました。2024年からは人材戦略の実行とKPIを用いた評価によりPDCAサイクルを回し、2030年に向けて必要な人づくりを体系的に進めています。

私たちのありたい姿の実現に向け、人的資本経営のサイクルを確立しレベルアップすることにより、すべての社員、その家族、さらにはお客さまのWell-beingの実現につなげたいと考えています。

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2.取り組むべき人材戦略

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 ※ 人的資本に関する取り組み・KPIの詳細は、「人的資本レポート」をご参照ください。
https://www.toyota-boshoku.com/_assets/dl/company/library/human_capital_2024.pdf

 

1)必要な人材の明確化

人材ポートフォリオに基づく採用・育成と、人材の活躍状況をモニタリングする仕組みを構築し、活躍の3領域における必要な人材の適時かつ効率的な確保を目指します。2030年に向けて必要な専門スキル別に、必要人数と現在のスキル保有者数を見える化するため、全社員の専門スキルの保有状況を調査しました。その結果、将来においてDX系スキルなど一部のスキルについて人材が不足する可能性があることが分かったため、人材確保に向けた取り組みを立案、推進しています。適性検査などで人員構成を見える化し、各組織へフィードバックを実施した後、スキル別や人材のタイプ別に必要数を達成するためのアクションプランを策定し、人材育成につなげていきます。

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また、日本本社との連携のために海外に派遣している多くの日本人コーディネーター(非ライン長)を適正化し、帰任者が新領域で活躍できるよう、日本以外の国の拠点長・統括会社機能トップポストのローカル化も推進しています。

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2)優秀な人材の確保

インテリアスペースクリエイターの実現・グローバル拡大に向けて、活躍の3領域に必要なスキルや経験を具体的に明示し、それにマッチする優秀な人材を積極的に迎え入れることで、事業戦略の実現につなげていきます。

入社後は、新入社員一人ひとりに職場先輩をつけ、OJTサポートを行っています。具体的には、定期的な面談や成果の発表会を通じて、新入社員の成長を支援します。さらに、月に1回、新入社員の心理状態や上司からの評価をアンケートで確認することで、必要に応じて適切なサポートを提供しています。また、ダイバーシティの観点から、外国籍者や障がい者を積極採用しています。インターンシップなどの機会を提供し、外国籍者に対して2ヶ月半の職場実習、障がい者に対して1DAYイベントを行いました。実際の業務を経験するプログラムを通じて、採用候補者と職場の双方が互いに理解を深め、納得したうえでの採用に努めています。今後も採用を強化していきます。

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※1.正社員、ICT(Intra Company Transferee)の人数

 

3)成長への支援

活躍の3領域それぞれで活躍できる人材育成に注力し、幹部人材や経営者層を育成するとともに、専門分野を超えた教育やキャリア機会の提供、デジタル人材の育成を進めています。社員一人ひとりがキャリアを主体的に考え、挑戦を後押しする制度を拡充し、成長への支援を促進しています。トヨタ紡織グループの将来を担う若手・女性・外国籍社員を中心とした「Next100」を選抜し、グローバル幹部教育プログラムの受講や、人材育成・最適配置の観点でGSC・RSC(※2)においてグループ企業・部門を超えた議論を通じて、計画的な人材育成を実施しています。

2023年度からは、越境学習を目的とした「TBシェアプロ活動」(※3)を開始し、業務革新につながる挑戦を促進しています。2024年度には参加者8人が3チームに分かれ、日頃取引関係のない企業3社さまと協力して企業さまが目指す理想の状態を実現できるよう、個人向け商品販売やイベントを企画しました。新たな知見を得るとともに自身の成長を実感し活動後も主体的に自己成長に励み続けています。

さらに、事業領域の拡大や新規ビジネス創出を目指した「Re:act」「We:ave」プログラムを実施し、アイデア創出ワークショップを開催しました。社員の専門分野を超えた挑戦を後押しするため、社内公募制度の対象を若手社員に拡大し、2024年度には30人の異動を実現しました。また、他部門業務経験を通じてキャリアを広げるため、対象部門限定で社内副業制度の試行運用にも取り組んでいます。これらの取り組みにより、社員の成長とキャリア形成を促進しています。

※2.GSC:Global Succession Committee  RSC:Regional Succession Committee

※3.地域の中小企業・団体の事業推進・経営革新プロジェクトに期間限定で取り組む、越境学習をベースとした実践型人材育成プログラム

 

4)ダイバーシティ&インクルージョンの浸透

2022年、社員の生の声を把握し、経営陣に伝えて問題解決につなげるための従業員ネットワークグループ、ENRG(Employee Network Resources Group)を設立しました。「女性」「若手」「外国人」「シニア」「障がい者」の5つのグループに分かれて総勢100人が活動しています。2023年からは年1回、ENRGが主体となり「D&Iウィーク」を開催しています。妊婦体験、車いす体験、手話体験、多国籍料理紹介、育児休職取得者(男性・女性)の経験談紹介、先進他社の方をお招きしてD&Iに関するパネルディスカッションなどを行いました。

女性社員のキャリア支援では、重点育成対象者を登録し、個別育成計画を立案して各職場で育成しています。女性社員のさらなる活躍促進のため、育休後の復職を見据えた、上司・女性社員・配偶者向けのセミナー、女性主任職を対象としたキャリアセミナー、アンコンシャスバイアス研修などを行っています。

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そして、性別に限らず、育児や介護などさまざまなライフイベントに直面した社員に多様な選択肢を与えることでキャリアとの両立を図れるよう、各種制度の見直しも行ってきました。2024年4月から、家族のケア(育児・介護・配偶者の妊娠サポート)・不妊治療で取得できる「ライフサポート休暇」を新設しました。この休暇は時間単位での取得も可能なため、フレックスタイムの利用ができない技能職場でも、家庭の事情に合わせたフレキシブルな働き方が可能です。また、社員のさまざまな事情に配慮し、名称の問題から取得しがたかった生理休暇やつわり休暇といった女性特有の休暇を統合し、名称を「F(Female)ケア休暇」へと変更しました。育児理由の短時間勤務制度もフレックスやテレワークが可能なことに加え、選択できる勤務時間を拡充し、子どもの年齢が18歳まで利用できます。

仕事と家庭を両立できる環境整備が、社員のモチベーション向上や業務の進め方の見直しにつながると考え、男性の育休への意識向上と職場の理解を推進しています。2023年からは、育児休業給付金の受給後も減少する収入を補填する支援金制度を開始し、育休中の経済面でのサポートを行い、取得を後押ししています。

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5)働きやすさの追求

2024年4月に人材戦略部、総務部の関連機能を統合し、専門組織としてウェルビーイング推進室を設置しました。ウェルビーイング推進室では、社会貢献活動、企業スポーツ推進、会社イベントを通じたWell-beingの実現を追求しつつ、中長期的なロードマップを描き、持続的な活動となるよう取り組みを進めています。

また、働き方改革として、テレワークガイドラインの見直し、遠隔地における長期リモートワークの導入、会議体の見直しやノー会議デーの設定など、より柔軟で効率的かつ創造的に働けるよう、環境整備を行っています。同時に、誰もが自分の考えを気兼ねなくオープンにできる「風通しのよい職場風土」を醸成するため、社長との職場懇談会、職場対話会、思いやりコミュニケーション研修、いきいきコミュニケーション活動(コミュニケーション費用を会社が補助)を実施しました。

2024年度より、従来の従業員サーベイから各職場での分析や他社とのベンチマークが可能なトヨタ紡織EX(Employee Experience)サーベイに刷新し、従業員エンゲージメントの肯定回答率を重要なKPIとして捉えていくことにしました。従業員の声を人材戦略・施策・職場改善へ効果的に繋げ、従業員エンゲージメント(組織や業績目標に自発的に貢献しようとする意欲)の向上に向けて、多様な価値観や考え方を持つ社員が協力し合い、ともに成長できる職場づくりを推進します。

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6)健康・安全の増進

「安全衛生基本方針」に基づいて、「社員の健康と安全はすべてに優先する」という企業風土の確立のため、健康経営および安全衛生マネジメントを推進しています。

健康経営では、社員の健康増進を経営課題の一つと捉え、「トヨタ紡織 健康宣言」のもと、一人ひとりが心身ともに健康にいきいきと働くことで、持てる能力を最大限発揮できる会社づくりを進めています。CEOを最高責任者とした関係部署と推進体制を構築し、戦略マップをもとに取り組んでいます。当社の活動が評価され、4年連続で2024年度「健康経営優良法人2025(ホワイト500)」に認定されました。安全衛生では、労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)に沿った活動をグローバルに行っており、安全な職場環境を地域や職種を問わず当社のあらゆる職場で実現できるよう、生産トップによる安全防火点検や安全防火クロスチェックなどを実施しています。

 

7)コンプライアンス・倫理の遵守

「よき企業市民として社会との調和ある成長を目指す」ことを基本理念に掲げ、経営トップの強いリーダーシップのもとで、グローバルにコンプライアンスのあり方、推進体制、活動内容・目標を明確にし、各地域の法務担当者が課題を共有しながらコンプライアンス活動の強化を図っています。コンプライアンスを重視した倫理的な職場づくりとして、ハラスメント防止活動を強化し、2023年度は全ライン長にフォローアップ研修を実施、2024年度はアニメを活用した動画教材を新たに制作して全従業員に展開しました。

また、経営に関わるリスクや外部環境に起因するリスクにも迅速に対応するため、リスクマネジメントの強化とリスク低減にも積極的に取り組んでいます。

 

(3)TCFDへの対応

 

トヨタ紡織グループは「地球環境保護を重視した企業活動の推進」を基本理念に、持続可能な社会の実現に向け、トヨタ紡織グループ一体となって地球環境保護に貢献しています。

2016年に「2050年環境ビジョン」を策定し、2020年には「取引先とともに「ものづくり」の革新を図り、環境負荷のミニマム化を実現する」をマテリアリティ(本業を通じて優先的に取り組む重要課題)として特定し、環境へ配慮した取り組みを推進しています。また、2023年に社会動向を踏まえ「2050年環境ビジョン」を一部見直しました。

2020 年4月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しました。気候変動が事業に与える影響と、それによるリスクと機会をシナリオに基づいて広範に分析することで、それらの対応費用を整理し、経営戦略に反映しています。今後も、シナリオ分析の結果を踏まえ、リスクや機会への対応を強化していくとともに、さらなる情報開示に取り組んでいきます。

 

※ Task Force on Climate-related Financial Disclosures

 

 

[ガバナンス]

気候変動を含む環境問題に関する具体的な取り組み施策は、取締役会での意思決定を経て業務執行し、経営戦略会議、経営企画会議、経営会議などへ報告しています。

取締役会、経営戦略会議、経営企画会議で指示された環境問題への対応方針などは、年3回開催される環境推進会議で共有し、トヨタ紡織グループの環境課題に対する実行計画の策定と進捗管理につなげています。また、実行計画に基づくKPIを設定し、毎月の経営会議に報告し、マネジメントレビューを実施しています。

環境推進会議で報告、議論された内容は、必要に応じて取締役会に報告し、取締役会の指示・監督のもと、戦略への反映を実施しています。

 

[戦略]

気候関連のリスクと機会のシナリオ分析

①シナリオ分析結果

国際エネルギー機関(IEA)による移行面で影響が顕在化する「1.5~2℃シナリオ※1」と、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による物理面で影響が顕在化する「4℃シナリオ※2」を踏まえ、短期・中期・長期のリスクと機会を抽出し、特にリスク・機会の評価が高いものを下表に記載。

 

※1 1.5℃シナリオ:NZE(IEA World Energy Outlook 2021)、2℃未満シナリオ:SDS(IEA World Energy Outlook 2021)

※2 4℃シナリオ:RCP8.5(IPCC第5次評価報告書)

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②重点取り組み

製品材料のサーキュラーエコノミーによるカーボンニュートラルへの挑戦

トヨタ紡織グループは製品のライフサイクルでのGHG排出量の削減を推進しています。

製品の軽量化や植物由来材料(バイオマス)の活用、電動化製品に対応した技術開発に加え、製品のリサイクル性向上も進めます。また、カーボンニュートラルに向け、製品に使われている材料のGHG排出量削減も進めていきます。

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※1 製品を原料として再利用し、新たな製品にすること

※2 使用済製品を化学的に分解して製品の原料として再利用すること

※3 再生可能な生物由来の資源

 

 

 

[リスク管理]

カーボンニュートラル環境センターが気候変動にともなう外部環境の変化と内部環境の変化を全社的にモニタリングし、事業に影響を与えるリスクを洗い出しています。

気候関連リスクは、人事総務本部を担当するCHRO(Chief Human Resource Officer)が議長を務めるリスク管理推進会議で特定します。リスク管理推進会議では、各部からの報告をもとに、気候変動に起因する「台風」「洪水」を含むあらゆるリスクについて議論し、相対的に重要性を判断した上で、最終的に全社にとっての気候関連リスクを特定しています。

特定されたリスクは取締役社長であるCRO(Chief Risk Officer)のマネジメントのもと、取締役会へ報告しています。

 

[指標と目標]

中期・長期目標

 

・2050年環境ビジョン

 ライフサイクルGHGネットゼロ

 工場GHGネットゼロ

 

GHG排出量

[目標]

 

スコープ1,2

スコープ3

・2035年目標

・2030年目標

工場GHG排出量2019年度比 ▲100% を目指す

GHG排出量2019年度比 ▲30%

・2030年目標

工場GHG排出量2019年度比 ▲50%

・2025年環境取り組みプラン

工場CO2排出量2019年度比 ▲25%

 

[実績]

 

項目

2024年度(概算)(※1)

2019年度

2019年度比削減率

 

 

GHGスコープ1

59,018  t-CO₂e

76,444  t-CO₂e

▲37%

 

 

GHGスコープ2

153,600  t-CO₂e

260,470  t-CO₂e

 

 

GHGスコープ3

算出中(※2)

 

 

 

※1 KPMGあずさサステナビリティ株式会社による第三者保証を取得予定です。

※2 スコープ3の一部算定方法を変更したため、算出中です。

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成

績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおり

であります。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月10日)現在において当社グループ

が判断したものであります。

 

(1) 経済状況等

 当社グループの事業には、全世界における製品の生産と販売、サービスの提供が含まれております。重要な部分

を占める自動車関連製品の需要は、製品・サービスを提供している国又は地域の経済状況の影響を受けることにな

ります。従って、日本、北中南米、中国、アジア、欧州を含む当社グループの主要市場における景気後退及びそれに伴う自動車需要の縮小は、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの事業は、競合他社が製造を行う地域の経済状況から間接的に影響を受ける場合がありま

す。例えば、競合他社が現地でより低廉な人件費の労働力を雇用した場合、当社グループと同種の製品をより低価

格で提供できることになり、その結果、当社グループの売上が悪影響を受ける可能性があります。さらに、部品や

原材料を製造する地域の現地通貨が下落した場合、当社グループのみならず他のメーカーでも、製造原価が下がる

可能性があります。このような傾向により、輸出競争や価格競争が熾烈化し、いずれも当社グループの業績及び

財務状況に悪影響を及ぼす可能性が生じることになります。

 

(2) 特定の取引先への依存

 当社グループは、自動車内装品をはじめとした各種自動車部品を主にトヨタ自動車㈱に販売しており、当

連結会計年度の売上収益に占める同社への割合は、23.0%となっております。そのため、同社の自動車販売動向に

よっては、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当連結会計年度末現在の同社による当社の議決権の所有割合は、直接所有割合32.5%であります。

 

(3) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク

 当社グループの生産及び販売活動は、日本をはじめ北中南米、中国、アジア、欧州など幅広い市場で展開しているため、これらの地域市場への事業進出には各国諸事情の違いにより次のようないくつかのリスクが内在しております。

①予期しえない法律・規制、不利な影響を及ぼす租税制度の変更

②社会的共通資本(インフラ)が未整備なことによる事業活動への影響

③不利な政治的または経済的要因の発生

④人材の採用・確保と労働問題に係るリスク

⑤テロ、戦争、感染症、その他要因による社会的混乱

 

(4) 為替レートの変動

 当社グループの事業には、全世界における製品の生産と販売、サービスの提供が含まれております。各地域にお

ける売上、費用、資産、負債を含む外貨建ての項目は、連結財務諸表作成のために円換算されております。これら

の項目は換算時の為替レートにより、現地通貨における価値が変わらなくても、円換算後の価値が影響を受ける可

能性があります。一般に、他の通貨に対する円高は、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能

性があります。

 

(5) 価格競争

 自動車業界における価格競争は大変厳しいものとなっております。

 当社グループは、技術、品質、価格に優れた製品を全世界に供給し、顧客の要望に対応できる企業と考え

ておりますが、将来においても有効に競争できるという保証はありません。これは当社グループの属している各製

品市場、地域市場において新しい競合先、既存の競合先間の提携により市場シェアを急速に拡大する可能性がある

ためです。価格面での圧力又は有効に競争できないことによる顧客離れは、当社グループの経営成績及び財務状況

に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 原材料、部品供給元への依存

 当社グループの生産は、原材料・部品を複数のグループ外供給元に依存しております。当社グループは、グルー

プ外供給元と取引基本契約を結び、原材料・部品の安定的な取引を安定的な生産の前提としておりますが、供給逼

迫による世界的な品不足や供給元の不慮の事故・大規模な震災、異常気象等による台風や洪水、感染症の流行など

により、原材料・部品の不足が生じないという保証はありません。その場合、生産の遅れを招き、原価を上昇させ

る可能性があります。また、原材料・部品を生産する際に使用する電気やガスなどのエネルギー価格が著しく上昇した場合も原価を上昇させる可能性があります。

 

(7) 環境規制

当社グループは、基本理念に基づき、地球環境保護を重視した企業活動の推進を活動の基本とし、環境への負荷

低減および適用される法規制遵守を徹底しております。具体的には、環境規制に適応した製品開発、環境負荷

物質の発生を低減させる工法・技術開発、および製造段階で発生する環境負荷物質の低減に努めており

ます。

 しかし、環境に関するさまざまな法規制は、今後も改正や強化される傾向にあり、その対応に遅れた場合には、

製品開発、製品製造の限定・縮小などを引き起こす恐れがあり、当社グループの財政状態や経営成績に悪影響を及

ぼす可能性があると考えています。

 また、環境に関するさまざまな法規制への対応に遅れた場合は、国や自治体、地域住民、顧客からの信頼を失

い、当社の評判及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 新製品の開発力

 当社グループは、経営の基本理念の一つである「革新的な技術開発、製品開発に努め、お客さまに喜ばれる、

良い商品を提供する」のもと、高度化・多様化する市場のニーズを先取りし、顧客の満足が得られるよう、新製品

開発に努めております。今後も継続して新製品を開発し、販売できると考えておりますが、そのプロセスは複雑

かつ不確実なものであり、以下をはじめとする様々なリスクがあります。

 ①新製品や新技術への投資に必要な資金と資源を、今後、十分充当できる保証はありません。

 ②長期的な投資と大量の資源投入が、成功する新製品又は新技術へつながる保証はありません。

 ③技術の急速な進歩と市場ニーズの変化により、当社グループの商品価値が急激に低下する可能性があります。

 ④現在開発中の新技術の商品化の遅れにより、市場の需要に対応できず、収益機会を逸する可能性があります。

 

(9) 知的財産権

 当社グループは、他社製品と差別化を図るため、技術とノウハウの蓄積と、これらの保護について努力を傾注し

ておりますが、特定の地域では知的財産権による完全な保護が困難であり、または限定的にしか保護されない状況

にあります。そのため、第三者が当社グループの類似製品を製造することを防止できない可能性があります。

また、他社が当社グループの製品に類似する、もしくは、より優れている製品を開発し、製造することを防止できない可能性があります。さらに、当社グループは他社の知的財産権に配慮しながら製品や技術の開発を行っておりますが、これらが将来的に他社の知的財産権を侵害していると判断される可能性があります。

 

 

(10) 商品の欠陥

 当社グループは、経営の基本理念の一つに「クリーンで安全な商品を提供することを使命とし、地球環境保護を

重視した企業活動の推進」を掲げ、総力をあげて品質向上に取組んでおります。しかし、全ての製品について欠陥が無く、将来リコールや製造物責任賠償が発生しないという保証はありません。

 また、製造物責任賠償について、保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を完全にカ

バーできるという保証はありません。大規模なリコールや製造物責任賠償につながるような商品の欠陥は、多額のコストや当社グループの評価に重大な影響を及ぼし、売上の低下、収益の悪化などにより、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(11) 大規模災害

 当社グループは、大規模災害による事業活動への影響を最小化する為、事業継続のための体制整備を進め、安否

確認システムの整備、定期的な訓練や生産設備の定期的な検査・点検等の諸施策を行っております。

 しかし、当社グループならびに仕入先企業の生産施設で発生する人的・自然的災害、停電などの中断事象による

影響を完全に防止又は軽減できる保証はありません。特に、当社グループの国内工場や仕入先などの取引先の多く

は、東海地方に所在しており、この地域で大規模な地震、台風、集中豪雨による洪水が発生した場合、

生産・納入活動が遅延・停止する可能性があります。遅延・停止及び混乱が長期間にわたる場合、当社グループの

経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 情報セキュリティ

 当社グループは、日々高度化・巧妙化するサイバー攻撃について、外部からの不正侵入・システムへの不正アク

セスやコンピュータウイルス感染、また機密情報漏洩等を重大なリスクと捉え、セキュリティ対策を推進してい

ます。対策を推進する上で社員に対する啓発活動・教育・訓練による運用面の強化も重要と考えており、システム

面での対策強化に加え、社員に対するセキュリティ意識の底上げを組織的・継続的に行うことで、当社グループの

信頼維持・向上を図っております。また、仕入先と一緒になってセキュリティ強化の取り組みも進めております。

 しかし、サイバー攻撃・意図的な不正・過失等により、情報システム等に障害が生じる場合や、機密情報が外部

に漏洩する可能性があります。このような事象が発生した場合、当社グループの事業活動の停滞や社会的信用の

低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 上記を含むリスクについて、当社グループは、リスク管理推進会議を通じてリスクを統合的に把握・管理すると共に、障害発生時の対応ルール・体制を整備することで、損失を未然に回避・極小化する活動を行っております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」とい

う。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

■事業を取り巻く環境

 当連結会計年度の世界経済は、リスクが高まる中でも底堅い成長を維持しました。世界貿易が回復基調となる一方で、各国のトップや政権交代により政策の不確実性が高い状態が継続しています。当社はこれまで現地生産・現地調達化の取り組みを進めてきましたが、今後も事業活動に影響を及ぼす各国の政策動向を注視し、適切かつ迅速な対応をしていきます。

 自動車業界においては、原材料費や物流費の高止まりは依然としてあるものの、生産量は堅実に推移し、市場全体の売上規模は回復傾向にあった前年度とほぼ同レベルとなりました。一方、カーボンニュートラルに向けたBEV※1市場の成長は、各国における関連政策変更などの影響を受けて鈍化し、市場参入した多くのメーカーによる競争激化や淘汰が進みました。また、自動運転技術やコネクテッドカー技術の進展、SDV※2への関心の高まりなど、業界は技術革新と市場の変動が交錯し、変化に富んだものとなってきています。

 

■当期の事業概況

a.足許の競争力強化

 当社は、原材料費、物流費が高止まりする中で、自動車生産台数の変動に柔軟に対応しつつ、販売価格と調達価格の両面で、適正な価格を維持することに努めてまいりました。また、従来から取り組んできましたシート骨格構成部品から完成シートまでの一貫した開発・生産体制の構築に向け、ものづくりのさらなる競争力強化を進めました。さらに、原価企画やVA※3の推進による変動費改善や、各地域の事業体ごとにきめ細やかな収益改善策を実施し、収益力強化を図りました。

b.中長期目線での取り組み

 2030年中期経営計画で発表した当社の「2030年目指す姿」である「インテリアスペースクリエイター※4として快適な移動空間を実現し、製品、顧客の幅を広げながら社会課題の解決に貢献している会社」の実現に向けて取り組むため、2024年4月1日付で製品事業分野と技術開発分野の組織・体制を見直し、移動空間企画本部、移動空間開発本部、ユニット部品事業本部、技術開発本部に改編しました。車室空間全体の企画提案に適した体制となり、様々な取り組みを加速しています。

 北京国際モーターショー2024では、くつろぎの空間を演出した空間コンセプトモック「LOUNZE」を、上海国際モーターショー2025では、お客さまが多彩なシーンに合わせて自在にアレンジできる居心地の良い車室空間コンセプトモック「MX OASIS」を提案しました。また、人とくるまのテクノロジー展2024では、リサイクル炭素繊維や天然繊維などを使用し軽量化と環境配慮を両立させたリカーボンシェルシートや、ナノレベルの構造制御技術を活用し天然繊維と樹脂(ポリプロピレン)を複合させることで、剛性と耐衝撃特性の両立を実現したCNF※5強化樹脂などを初出品しました。今後も、環境に配慮した技術・製品の開発や、価値を高めた車室空間・移動空間をみなさまにご提案し事業化につなげることで、企業価値向上に努めます。

 

※1 BEV(Battery Electric Vehicle):電気自動車

※2 SDV(Software Defined Vehicle):自動車を制御するソフトウェアのアップデートによって製造・販売されたあとも継続的に進化

する自動車

※3 VA(Value Analysis):提案製品の品質や機能を落とすことなく設計変更や工程変更によりコストダウンを実現するための手法の

一つ

※4 インテリアスペースクリエイター:構成部品一つからトータルコーディネートまで、お客さまの期待を超えるソリューションを創

造し、QUALITY OF TIME AND SPACE(すべてのモビリティーへ提供する“上質な時空間”)を提供できるリーディングカンパニー

※5 CNF(Cellulose Nano Fiber):セルロースナノファイバー

 

 当連結会計年度の業績につきましては、連結売上収益は、グローバルでの生産台数の減少はあるものの、為替

影響により、前連結会計年度に比べ5億円(0.0%)増加の1兆9,542億円となりました。利益につきましては、

減産影響や諸経費の増加に加え、減損損失の計上により、連結営業利益は、前連結会計年度に比べ368億円(△46.5%)減少の423億円、税引前利益は、前連結会計年度に比べ409億円(△46.5%)減少の470億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ418億円(△71.4%)減少の167億円となりました。

 

 当連結会計年度末の財政状態につきましては、資産は、営業債権及びその他の債権の減少などにより、前連結会計年度末に比べ336億円減少の1兆948億円となりました。一方、負債は、前連結会計年度末に比べ300億円減少し、6,047億円となりました。主な要因は、営業債務及びその他の債務の減少によるものです。資本は、前連結会計年度末に比べ35億円減少し、4,900億円となりました。主な要因は、在外営業活動体の外貨換算差額の減少などによるものです。

セグメントごとの業績は、次のとおりであります。

 

<日本>

 売上収益は、生産台数は減少しているものの、車種構成の変化により、前連結会計年度に比べ164億円(1.8%)増加の9,392億円となりました。営業利益は、前年度の体質強化費用の影響やモデルチェンジに伴う新製品効果、車種構成の変化はあるものの、諸経費の増加や減損損失の計上により、前連結会計年度に比べ4億円(△4.5%)減少の101億円となりました。

 

<北中南米>

 売上収益は、為替影響はあるものの、生産台数の減少などにより、前連結会計年度に比べ112億円(△2.3%)減少の4,890億円となりました。営業損失は、合理化はあるものの、減産影響に加え、減損損失の計上により、260億円(前年同期は営業利益6億円)となりました。

 

<中国>

 売上収益は、生産台数の減少などにより、前連結会計年度に比べ27億円(△1.1%)減少の2,335億円となりました。営業利益は、合理化や為替影響はあるものの、減産影響などにより、前連結会計年度に比べ19億円(△10.4%)減少の165億円となりました。

 

<アジア>

 売上収益は、為替影響により、前連結会計年度に比べ122億円(4.5%)増加の2,862億円となりました。営業利益は、合理化や為替影響はあるものの、車種構成の変化や諸経費の増加により、前連結会計年度に比べ14億円(△3.7%)減少の361億円となりました。

 

<欧州・アフリカ>

 売上収益は、生産台数の減少などにより、前連結会計年度に比べ130億円(△10.0%)減少の1,181億円となりました。営業利益は、合理化や為替影響はあるものの、減産影響や車種構成の変化により、前連結会計年度に比べ64億円(△54.2%)減少の54億円となりました。

 

なお、当社は2024年3月15日に取得したSHIROKI AUTOMOTIVE INDIA PRIVATE LIMITED(現TOYOTA BOSHOKU DEVICE INDIA PRIVATE LIMITED)に係る暫定的な会計処理が、当連結会計年度において確定しています。これらの影響を遡及修正した後の数値に基づき、前連結会計年度との対比を行っております。

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物の期末残高は、2,497億円と前連結会計年度末に

比べ55億円(2.3%)の増加となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

 営業活動の結果増加した現金及び現金同等物は1,218億円となりました。これは主に、税引前利益470億円、減価償却費及び償却費560億円などにより資金が増加したことによるものです。

 

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

 投資活動の結果減少した現金及び現金同等物は609億円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による

支出726億円などにより資金が減少したことによるものです。

 

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

 財務活動の結果減少した現金及び現金同等物は543億円となりました。これは主に、リース負債の返済による支出

330億円、配当金の支払153億円などにより資金が減少したことによるものです。

 

 

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

                                           (単位:百万円)

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 前年同期比(%)

日本

876,205

0.8

北中南米

454,121

△3.0

中国

209,644

0.7

アジア

256,306

4.1

欧州・アフリカ

97,554

△9.4

合計

1,893,832

△0.3

 (注) 1 金額は、販売価格によっております。

2 北中南米セグメントにおいて、生産台数の減少などにより、生産実績が減少しております。

 

b.受注実績

 当社グループは、主にトヨタ自動車株式会社をはじめとする各納入先より、四半期毎及び翌月の生産計画の提示を受け、生産能力を勘案して生産計画を立て生産しております。

 

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

                                           (単位:百万円)

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 前年同期比(%)

日本

863,370

1.8

北中南米

483,972

△2.3

中国

222,065

△1.2

アジア

269,372

5.4

欧州・アフリカ

115,438

△10.8

合計

1,954,218

0.0

 (注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 日本セグメントにおいて、生産台数の増加などにより、販売実績が増加しております。

3 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 相手先

 前連結会計年度

(自 2023年4月1日

  至 2024年3月31日)

 当連結会計年度

(自 2024年4月1日

  至 2025年3月31日)

 金額(百万円)

 割合(%)

 金額(百万円)

 割合(%)

トヨタ自動車㈱

450,992

23.1

448,758

23.0

トヨタ車体㈱

199,711

10.2

220,899

11.3

トヨタ モーター ノース アメリカ㈱

228,214

11.7

207,926

10.6

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針及び4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、連結売上収益が、前連結会計年度に比べ5億円(0.0%)増加の1兆9,542億円となりました。連結営業利益は、前連結会計年度に比べ368億円(△46.5%)減少の423億円となりました。連結税引前利益は、前連結会計年度に比べ409億円(△46.5%)減少の470億円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ418億円(△71.4%)減少の167億円となりました。

 なお、当社グループは、経営成績に重要な影響を与える要因として、取引先である自動車メーカーの自動車生産

台数、販売台数及び販売車種等の変動の影響を受けております。

 

 

a.売上収益

 売上収益は、グローバルでの生産台数の減少はあるものの、為替影響により、前連結会計年度に比べ5億円(0.0%)増加の1兆9,542億円となりました。

b.営業利益

 営業利益は、減産影響や諸経費の増加に加え、減損損失の計上により、前連結会計年度に比べ368億円

(△46.5%)減少の423億円となりました。

c.税引前利益

 税引前利益は、営業利益の減少などにより、前連結会計年度に比べ409億円(△46.5%)減少の470億円となりました。

d.法人所得税費用

 法人所得税費用は、前連結会計年度に比べ14億円(7.1%)増加の212億円となりました。また、税引前

利益に対する比率は、前連結会計年度の22.6%から45.2%となりました。

e.親会社の所有者に帰属する当期利益

 親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ418億円(△71.4%)減少の167億円となり、基本的1株当たり当期利益は93円65銭となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フロー

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッ

シュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

b.経営及び財務に関する考え方

 当社グループは、経済的価値向上の成果をステークホルダーに長期安定的に還元するとともに、将来の成長分野へ積極的に投資することで、中長期的に企業価値の向上をはかることを「経営の目指す姿」とし、経営基盤と競争力を強化しつつ、お客さまや社会に対する提供価値の多面化や事業領域の拡大を進めております。

 

c.資金調達の方針及び方法

当社グループは、事業活動の継続、適切な流動性の維持及び財務構造の安定化、成長への投資を目的として、

資金調達を実施しております。資金調達の方法については、直接金融、間接金融双方の市場環境を踏まえ、資金

調達方法の多様化や経済合理性の観点から総合的に判断し、決定しております。

設備投資や研究開発費などの長期資金需要については、金融機関からの長期借入金及び社債の発行にて対応し

ております。その際、返済負担の軽減を図るために、年度別の返済・償還額の平準化をしております。運転資金需要については短期借入金にて対応しております。

また、多様化する資金調達環境下において、安定的に資金調達可能な環境を確保すべく、当社グループは国

内の格付機関から格付を取得しております。本報告書提出日現在において、株式会社日本格付研究所より格付

AA(安定的)を付与されております。こうした外部機関からの当社グループへの財務状況に対する評価は一定

のキャッシュポジションを維持していることなどによるものであります。

また、緊急的な資金需要に対して、コミットメントラインを設定し、資金を確保できる体制を整えておりま

す。

 

④経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成の状況を判断するための客観的な指標等

 2023年11月に発表した中期経営計画において、2030年目指す姿を「インテリアスペースクリエイターとして快適な移動空間を実現し、製品、顧客の幅を広げながら社会課題の解決に貢献している会社」とし、2030年の財務目標として、売上収益2兆2,000億円、営業利益1,500億円、営業利益率7%を目標に掲げました。

 2024年度の財務実績は、売上収益は、前期比5億円増加の1兆9,542億円、営業利益は、減損損失を計上したことなどにより、前期比368億円減少の423億円となりました。

 2030年中期経営計画で定めた目標を達成するために、付加価値を向上させた新製品の投入や米国を中心とした収益改善活動を着実に進め、安定した収益構造の確立に取り組むとともに、人材戦略投資や研究開発などの先行投資を効率的に執行してまいります。

 

5【重要な契約等】

 該当する事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

研究開発活動の基本方針

 当社グループでは、「お客さまに信頼と満足をお届けする製品の開発」という基本的な考えのもと、当社独自の技術や仕組みにより、世界のあらゆるお客さまの期待に応えられる魅力的で高品質な商品開発に取り組んでおります。

 そのために、年々高度化・多様化するお客さまのニーズを先取りし、他社を凌駕する魅力的な技術・商品開発、

及びコア技術の更なる熟成を図っております。また、各地域統括会社が、それぞれの地域のニーズに即した製品

開発を行うことで、グループをあげて、グローバルマーケットを視野に入れた最適な開発体制を構築しております。

 また、新興国市場の急激な拡大にも対応できる徹底した良品廉価活動による競争力の強化を進めてまいります。

 なお、無形資産に計上された開発費を含む当連結会計年度の研究開発費は、55,108百万円であり、セグメント別の

活動状況及び研究開発費は、次のとおりであります。

 

①日本

 移動空間(シート・内外装)事業におきましては、クルマ屋目線で移動空間全体を企画・提案でき、圧倒的な競争力があるインテリアスペースクリエイターを目指し、事業拡大を推進しております。最近の主な成果としては、快適性と省エネに寄与するサーマルコンフォートシートのほか、環境に配慮したモノマテリアル※1カバーシートとドアトリムなどの革新的な新製品・新技術を開発しています。

 また、ユニット部品事業におきましては、コア技術を軸に、最近の主な成果としては、ハイドロジェンパワーシステム※2による電動アシストを搭載した”水素自転車”をはじめとする、より高付加価値な電動製品の開発を推進しております。

 当地域に係る研究開発費は、54,622百万円であります。

 

※1モノマテリアル:リサイクルの効率化や環境負荷の低減を目的に、単一の素材で構成された製品や包装材のこと

※2ハイドロジェンパワーシステム:小型の燃料電池ユニットのこと

 

 

②北中南米

 特に記載すべき活動状況はありません。

 当地域に係る研究開発費は、486百万円であります。

 

③中国

 特に記載すべき事項はありません。

 

④アジア

 特に記載すべき事項はありません。

 

⑤欧州・アフリカ

 特に記載すべき事項はありません。